JP2019043946A - 分子精製用リガンド、分子精製用タグペプチド及びこれらを用いた分子精製方法 - Google Patents

分子精製用リガンド、分子精製用タグペプチド及びこれらを用いた分子精製方法 Download PDF

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【課題】 pH感受性色素化合物と担体結合部位を備えるリンカーを含む、分子精製用リガンドと、当該分子精製用リガンドの構造変化によって結合及び解離をすることができる分子精製用タグペプチド、並びにこれらを用いた分子精製方法を提供する。【解決手段】 フェノールフタレイン等のpH感受性色素化合物と、精製用のレジンやビーズ等の担体と結合することできる担体結合部位を備えるPEG等のリンカーを含む分子精製用リガンドを提供する。また、pH変化によるpH感受性色素化合物の可逆的な構造変化によって、当該分子精製用リガンドと特異的に結合及び解離することができる分子精製用タグペプチドと、これによって簡便かつ容易に行うことができる分子精製方法を提供する。【選択図】 図11

Description

本発明は、分子精製用リガンド、当該分子精製用リガンドに結合及び解離する分子精製用タグペプチド、並びにこれらを用いた分子精製方法に関する。より詳細には、pH感受性色素化合物と担体結合部位を備えるリンカーを含む分子精製用リガンドと、当該分子精製用リガンドの構造変化によって結合及び解離をすることができる分子精製用タグペプチドに関する。
様々な混合物を含んだ試料から目的分子のみを取り出す操作である分子精製には、蒸留、再結晶、再沈殿、昇華、クロマトグラフィー等の手法があり、石油精製の他、電子材料、食品、農薬、医薬品等の製造等、様々な分野で用いられている。
中でもタンパク質の精製は、構造解析、プロテオミクス、医薬品探索をはじめとするバイオサイエンスの様々な分野において必須の操作である。精製効率を高めて高純度の目的タンパク質を得ることは、研究結果を大きく左右し、その後の研究開発にも大きく影響する。そのため、現在、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、疎水性相互クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の様々な精製方法が開発されている。
特に、特定の分子(リガンドと呼ばれる)に対して親和性を示す特定のペプチド配列(タグ)を目的タンパク質に遺伝子組換え技術で組み込んでおくと、アフィニティークロマトグラフィーによって高純度の目的のタンパク質を得ることができる。このため、現在、様々なタグが開発されている。
例えば、ヒスチジンのイミダゾール環が、ニッケルイオンやコバルトイオンと強く結合する性質を利用したHisタグ(6〜10残基のヒスチジンからなる)と、上記金属イオンを配位結合したアフィニティー担体とを用いたクロマトグラフィーを行なうと、Hisタグが結合した目的のタンパク質を回収・精製することができることが知られている(特許文献1:以下、「従来技術1」という)。
基質であるグルタチオンとの親和性を利用したグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(以下、「GST」という。)タグは、GSTをタグとして組み込んだ組換えタンパク質をアフィニティークロマトグラフィー精製した後にプロテアーゼで処理をすることにより、目的のタンパク質を取得することができることが知られている。(以下、「従来技術2」という)。
約40 kDaのマルトース結合タンパク質(以下、「MBP」という)をタグとして利用するMBPタグは、マルトースとの親和性を利用した精製に使用することができる(以下、「従来技術3」という)。また、MBPは、長鎖マルトデキストリン(アミロース)とも結合できるため、アミロースを担持したアフィニティー担体を用いて、MBP融合タンパク質を精製することもできる。
Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(図1の(A))の8残基のアミノ酸配列からなるStrep(II)タグは、ストレプタクチン(ストレプトアビジンの遺伝子工学的改変物)との親和性を利用した、目的のタンパク質の精製に使用することができる(以下、「従来技術4」という)。
Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(図1の(B))の8残基のアミノ酸配列からなるFLAG(登録商標)タグはを目的のタンパク質に組み込んで発現させると、抗FLAGタグ抗体を結合させたアフィニティー担体を用いた目的のタンパク質の精製に使用することができる(特許文献2:以下、「従来技術5」という)。
進化分子工学とは、自然界で行われてきた緩やかな分子進化の過程を、試験管内で超高速化し、高機能性を獲得した新規生体高分子を目的に応じて創製する理論や技術を研究する学問である。
その中で、遺伝子の情報(以下、「遺伝子型」という)と、その遺伝子を発現させて得られたタンパク質の情報(以下、「表現型」という)とを1対1で対応付ける技術が開発されている。cDNAディスプレイ法は進化分子工学における、遺伝子型・表現型対応付け技術の一つである。
cDNAディスプレイ法は、先ず、3’末端にピューロマイシンが結合した核酸リンカーに、1012〜14のDNAライブラリより転写によって得られたmRNAをライゲーションさせる。次いで、無細胞翻訳系によってピューロマイシン上に当該mRNAに対応するタンパク質を結合(ディスプレイ)させる。その後、逆転写反応によって、核酸リンカー上にcDNAを結合させ、cDNAディスプレイを得る。
上記cDNAディスプレイの調製途中又は調製後に分離及び精製を行い、目的のタンパク質が結合している可能性の高いcDNAディスプレイ分子(以下、単に「cDNAディスプレイ」ということがある)をセレクションし、ライブラリの中から候補タンパク質を絞っていく。
cDNAディスプレイ上のcDNAをPCRで二本鎖DNAにし、これを転写して得られたmRNAを、再びピューロマイシンが結合した核酸リンカーとライゲーションさせ、無細胞翻訳、逆転写、分離・精製という一連の操作を繰り返し行うことで、膨大な数のDNAライブラリから、目的のタンパク質を試験管内超高速でセレクション(淘汰)していくのが、cDNAディスプレイ法であることが知られている(非特許文献1、従来技術6)。cDNAディスプレイのセレクションの精製時に、従来技術1〜5のタグが使用されている。
特開昭63-251095 特表平2−501112
Naimuddin et al, Molecular Brain 2011, 4:2
従来技術1は、Hisタグ配列が単純で分子量が小さいことから、目的タンパク質の立体構造への影響が少ない、Hisタグ部分の立体構造に変化がないため、精製時に変性剤の回収効率への影響が小さい、及びタグ部分が免疫原性をほとんど示さない、という点では優れた発明である。
しかし、Hisタグを用いた精製では、金属キレートアフィニティーカラムに、Hisタグを有する組換えタンパク質を結合させたあと、組換えタンパク質を溶出させるためには、イミダゾールを添加し、溶出液からイミダゾールを除去するためのバッファー交換が必要となる。このため、精製の操作が煩雑になり、得られる組換えタンパク質の収率も低くなるという問題があった。
従来技術2は、GSTタグの親水性が非常に高いため、目的タンパク質を可溶画分に発現させる可能性が高く、また、酵素・基質反応を利用した精製を行なうため、アフィニティー特異性が高いという点で優れた発明である。
しかし、GSTタグは分子量が大きく(約28 kDa)、分子量の大きなタンパク質の発現には不向きである。また、目的タンパク質の機能や構造解析を行う場合や、目的タンパク質を抗体作成用の抗原とする場合には、タグの部分が邪魔になる。このため、組換えタンパク質の精製後に、発現ベクターごとにプロテアーゼを選択してタグを切断しなければならず、精製操作が煩雑になって時間を要するという問題があった。
従来技術3は、非常によく可溶性発現するMBPタグを使用するため、目的タンパク質のN末端にMBPを融合させた組換えタンパク質を作製すると、この組換えタンパク質全体として可溶性発現しやすくなるという点で優れた発明である。しかし、MBPタグは分子量が大きく(約42.5 kDa)、GSTタグを使用した場合と同様の問題があった。
従来技術4は、Strep(II)タグが分子量約1 kDaと小さいことから、組換えタンパク質の構造や機能に対する影響が少なく、構造解析の際でもタグを切断せずに使用できるという点で優れた発明である。
しかし、ストレプクチンカラムでは、サンプル中に存在するビオチン化タンパク質の非特異吸着が起こりやすいため、バッファー中に適宜アビジンを添加して、ビオチン化タンパク質を除去する操作が必要になる。このため、精製操作が煩雑になって時間を要するという問題があった。
従来技術5は、FLAGタグが短い人工配列であるため、目的のタンパク質に影響を与えにくく、精製条件も中性付近で穏やかな条件下で行うことができるという点では優れた発明である。しかし、抗体によるアフィニティー精製が必要であり、目的に応じた抗FLAG抗体を選択しなければならないため、コストの面で問題があった。
また、従来技術6は、微生物を使用しない無細胞翻訳系を採用しているため、短時間でセレクションを行うことができる。しかし、従来技術1〜5のタグを用いると操作が煩雑になるため、セレクションサイクル時の精製操作が律速段階になり、ハイスループット処理ができないという問題があった。
以上から、タンパク質のハイスループット処理に際して、低分子のタグペプチド及び前記タグペプチドと高い親和性を示し、簡便な精製操作が可能なリガンドに関する強い社会的要請があった。
本発明の発明者らは、以上のような状況の下で鋭意研究を進め、本発明を完成したものである。
すなわち、下記一般式(1)で表されるpH感受性色素化合物と担体結合部位を備えるリンカーを含む、分子精製用リガンドである。
Figure 2019043946
一般式(1)中、Xは-SO又は-COであり、Yは、リンカー結合部位であり、環Arは炭素数6又は12の芳香環であり;環Ar及び環Arが炭素数6の芳香環のとき、R及びRは水素原子、炭素数1〜3の分岐鎖を有してもよいアルキル基又はハロゲン、R及びRは水素原子又は炭素数1〜3の分岐鎖を有してもよいアルキル基、及びR及びRは水素原子又はハロゲンであり;環Ar及び環Arが炭素数12の芳香環のとき、R〜Rはいずれも水素原子である。
ここで、前記pH感受性色素化合物は、フェノールフタレイン、チモールブルー、チモールフタレイン、ナフトールフタレイン、フェノールレッド、クレゾールフタレイン、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、クロロフェノールレッド、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープルからなる群から選ばれるいずれかであることが、入手容易性及びpHによる変色範囲が周知であることから好ましく、フェノールフタレイン、チモールブルー、チモールフタレイン、ナフトールフタレイン、フェノールレッド、クレゾールフタレイン、クレゾールレッドからなる群から選ばれるいずれかであることが、中性〜弱アルカリ性側で変色範囲を有することからより好ましい。
前記pH感受性色素化合物は、溶液が呈する色の変化によって検出可能な構造変化によって、分子精製用タグペプチドと結合又は解離することが、識別容易性の観点から好ましく、前記構造変化はpHの変化に対応することが、操作容易性の観点からより好ましい。また、前記分子精製用リガンドは、分子精製用タグペプチドと解離及び結合を繰り返すことができることが、精製を繰り返し行う際の操作簡便性の観点から好ましい。
前記リンカーは、ポリエチレングリコールリンカー、アルキルリンカー、核酸リンカー及びペプチドリンカーからなる群から選ばれる少なくとも一つのリンカーであることが、柔軟な構造骨格を有することから好ましい。
前記担体結合部位は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、アジド基、アルキニル基、マレイミド基及びカルボニル基からなる群から選ばれるいずれかであることが、固定化用担体と固定させる際の反応容易性の観点から好ましい。
本発明の別の態様は、上記分子精製用リガンドと結合することができる、下記一般式(2)のアミノ酸配列を含むアミノ酸残基が6〜8の分子精製用タグペプチドである。
-X-X-X-X-X (2)
一般式(2)中、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)からなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸であり、X及びXは任意の一のアミノ酸である。
ここで、前記分子精製用タグペプチドは、LVFLIWWM(配列番号1)、YLYVWLWF(配列番号2)、WVIWILFF(配列番号3)、MWFFMFWM(配列番号4)、FWLWVYLY(配列番号5)、FFLIWIVW(配列番号6)、LLLLLLLL(配列番号7)及びWWWWWWWW(配列番号8)からなる群から選ばれるいずれかであることが、前記分子精製用リガンドとの疎水結合による高親和性の観点から好ましい。
本発明の他の態様は、上記分子精製用リガンドと結合することができる、下記の(3)式で表されるアミノ酸配列(配列番号25)を含む分子精製用タグペプチドである。
WXXWXXWXXWXXWXX (3)
(上記式(3)中、Wはトリプトファンであり、Xは固定的に特定されないアミノ酸である。)
ここで、前記アミノ酸配列が、WKIWYRWRKWKKWKR(配列番号26)、WKRWKVWRSWKKWRK(配列番号27)、WVLWAHWPWWRVWYR(配列番号28)、WHRWPDWAYWGIWRL(配列番号29)、WRSWGRWRLWQWWWD(配列番号30)、及びWKKWRRWFRWSLWRK(配列番号35)からなる群から選ばれるいずれかであることが、前記分子精製用リガンドとの疎水結合による高親和性の観点から好ましい。
また、前記分子精製用タグペプチドは、前記分子精製用リガンドと解離及び結合を繰り返すことができることが、精製を繰り返し行う際の操作容易性及び低コストの観点から好ましい。
本発明のさらに別の態様は、前記分子精製用リガンドと前記分子精製用タグペプチドを用いた、分子精製方法である。
本発明のさらに別の態様は、前記分子精製用リガントと固定化用担体が結合した固定化リガンド、pH調整剤、洗浄バッファー及びセレクションバッファーを備える、分子精製用キットである。
本発明によれば、分子精製用リガンドと、当該分子精製用リガンドと結合及び解離する精製用タグペプチドが提供される。また、pHを変化させるだけで、分子精製用リガンドの構造を可逆的に変化させて、分子精製用リガンドと分子精製用タグペプチドとの結合及び解離が制御できるため、精製操作を簡便かつ容易に行うことができる分子精製方法が提供される。
図1の(A)は、Strep(II)タグのアミノ酸配列を示し、図1の(B)は、FLAG(登録商標)タグのアミノ酸配列を示す。 図2は、pHを変化させたときの、NH2-PEG2-フェノールフタレイン(以下、「PhP」という)を用いた分子精製用リガンド(以下、「PhPリガンド」ということがある)の吸光度の変化を示したグラフである。 図3は、図2の極大吸収波長554 nmにおける吸光度からラクトン環保持時のPhP(以下、「HA」という)とラクトン環開環時のPhP(以下、「A-」という)の存在比を算出し、横軸にその対数、縦軸にpHをとりプロットしたグラフである。 図4は、NHS-activated Sepharose 4 Fast Flowで固定化したPhPリガンドの、pH変化による呈色変化を示した写真である。カラムの下に、着色の度合いを、−〜++で示した。−は着色なし、+が多くなるほど着色が濃くなっている。 図5は、後述する3Aライブラリ構築時における、ランダムアミノ酸配列のアミノ酸の出現比率を示したグラフである。
図6は、3Aライブラリのフルコンストラクトの模式図である。 図7は、3Aライブラリのダイレクトシーケンスの解析結果(ランダム配列部分)を示したグラフである。 図8は、後述するWIライブラリ構築時における、ランダムアミノ酸配列のアミノ酸の出現比率を示したグラフである。 図9は、WIライブラリのフルコンストラクトの模式図である。 図10は、WIライブラリのダイレクトシーケンスの解析結果(ランダム配列部分)を示したグラフである。
図11は、本発明の分子精製用リガンドと分子精製用タグペプチドを使用した精製工程を含む、cDNAディスプレイ法によるセレクションサイクルを示した模式図である。 図12は、後述するcnvKリンカーの構造を示した図である。
図13は、cDNAディスプレイ法によるcDNAディスプレイ形成の有無を検討した結果を示すゲル電気泳動写真である。(A)は3AライブラリのcDNAディスプレイを形成した場合、(B)はWIライブラリからcDNAディスプレイを形成した場合の結果を示す。 図14は、3Aライブラリからのセレクションの1stラウンドにより、PhPリガンドと結合するタグペプチドを有するcDNAディスプレイの存在を検討した結果を示すゲル電気泳動写真である。図中、FTは素通り画分を示す。 図15は、3Aライブラリからのセレクションの2ndラウンド後の定量PCRによる各分画におけるDNA存在比率を表したグラフである。
図16は、3Aライブラリからのセレクションの3rd〜6thのラウンドで得られたNaOH溶出画分の各ラウンドのcDNAディスプレイの回収率を示したグラフである。 図17は、3Aライブラリからのセレクションの7thラウンドで得られた各溶出分画におけるcDNAディスプレイの回収量を表したグラフである。 図18は、後述するLV59のcDNAディスプレイをPhPリガンドで精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。図中、Pはビーズで固定化したPhPリガンドを、Nは固定化用担体のみの場合を表している(以下、同じ)。
図19は、後述するL8及びW8のリンカー複合体をPhPリガンドで精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。 図20は、後述するLV59Rのリンカー複合体をPhPリガンドで精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。 図21は、pHを変化させてLV59のcDNAディスプレイをPhPリガンドで精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。
図22は、後述するPDOとの融合タンパク質をディスプレイさせたcDNAディスプレイを、PhPリガンドで精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。 図23は、LV59のリンカー複合体を一度PhPリガンドで精製した際の素通り画分を再度PhPリガンドで精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。 図24は、精製後のPhPリガンドをpH変化によりLV59から解離させた後、再度LV59のリンカー複合体を精製したときの結果を示すゲル電気泳動写真である。 図25は、塩濃度の変化によるLV59とPhPリガンドとの親和性を示すゲル電気泳動写真である。 図26は、トリプトファンとフェノールフタレインとの間でπスタッキングを形成する部分を示す図である。 図27は、WIライブラリからの1stセレクションのSDS溶出物(ドデシル硫酸ナトリウム)中の標的産物(A)を示すゲル電気泳動像と、cDNAディスプレイの構造の変性(B)を示す模式図である。 図28は、定量PCRによるWIライブラリからの3rd〜7thセレクションの際のcDNAディスプレイの回収量の評価の結果を示すグラフである。 図29は、PhP(+)ビーズとPhP(-)ビーズとを用いたときの、定量PCRによるWIライブラリからの8回目の淘汰の際のcDNAディスプレイの回収量の評価の結果を示すグラフである。 図30は、WIライブラリから得られた候補ペプチド配列の結合効率を示すゲル電気泳動像である。A.にPhP1及び3を、B.にPhP2、PhP4〜7を、C.にPhP8〜10の結合効率を示す。cDNAディスプレイで見られる2本のバンドのうち、上側が正しく形成されたcDNAディスプレイ、下の濃いバンドはcDNA単体である。 図31は、PhP3とLv59との結合効率(A)、PhPの有無による相違(B)、及びフェノールフタレインの認識の可否(C)を示すゲル電気泳動像である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、上述したように、上記一般式(1)で表されるpH感受性色素化合物と担体結合部位を備えるリンカーを含む、分子精製用リガンドに関する。構成要素である(a)pH感受性色素化合物、(b)リンカー、及び(c)担体固定部位について、以下にそれぞれ説明する。
(a)pH感受性色素化合物
本明細書中、「pH感受性」とは溶媒等の外部環境のpHの変化により化学構造が変化する性質を有することを表し、「pH感受性色素化合物」とは、当該化学構造の変化に伴って呈色変化が生じる化合物を表す。
一般的にpH感受性色素化合物は、構造的に、(i)カルボン酸の環状エステルであるラクトン環を有するラクトン系色素化合物、(ii)スルホン酸の環状エステルであるサルトン環を有するサルトン系色素化合物、(iii)3個のベンゼン環が1つの炭素に結合しているトリフェニルメタン系色素化合物、及び(iv)ジアゾ基を有するジアゾ系色素化合物に大別される。
このうち、本願においては、pH変化によって化学構造が大きく変化し、後述する分子精製用タグペプチドと結合又は解離させる観点から、ラクトン系色素化合物及びサルトン系色素化合物を用いることが好ましい。
ラクトン系色素化合物には、フェノールフタレイン(以下、「PhP」と略すことがある。)、チモールフタレイン、ナフトールフタレイン及びクレゾールフタレイン等が含まれ、これらをリガンドとして使用することができる。
また、サルトン系色素化合物には、チモールブルー、フェノールレッド、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、クロロフェノールレッド、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープル等が含まれ、これらをリガンドとして使用することができる。
pH感受性色素化合物は、pHの変化による化学構造の変化によって、後述する分子精製用タグペプチドと結合及び解離する部位として機能する。例えば、フェノールフタレインの場合、下記式(3)のように、pHが約8.2未満のときはラクトン環が閉じ無色であるが、pHが約8.2以上のときは、ラクトン環が開裂してピンク色を呈する。
Figure 2019043946
また、例えば、ブロモフェノールブルーの場合では、下記式(4)のように、pHが3.0より大きいとき、フェノール性水酸基が脱プロトン化して黄色から青色に変色するとされる。なお、条件によってpHが4.6以上のときに変色することがあるため、式(4)のようにpHの範囲を記載した。
Figure 2019043946
このようなpH変化による化学構造の変化を起こすpH感受性色素化合物と結合及び解離する性質を有するタグペプチドを、目的のタンパク質に組み込んでおくことで、当該pH感受性色素化合物を有する精製用リガンドを用いて、呈色変化を視認しながら目的のタンパク質の精製を簡単に短時間で行うことができる。
(b)リンカー
リンカーは、上記pH感受性色素化合物と、後述する担体結合部位との間に位置する直鎖状又は分岐鎖状化合物であり、リンカー結合部位で前記上記pH感受性色素化合物に結合されている。目的タンパク質の精製効率を上げるため、疎水性のpH感受性色素化合物に対しては親水性化合物をリンカーとして使用することが、担体表面の親水性を向上させ、また表面電荷を抑制する性質を有することから好ましい。
例えば、ポリエチレングリコールリンカー、アルキルリンカー、核酸リンカー、ペプチドリンカー、及びこれらを組み合わせたリンカーが好ましい。ポリエチレングリコールリンカーは、非イオン性化合物であり、また単結合周りの回転運動が容易で柔軟な構造骨格を有することから、タンパク質の不特異吸着を抑制できる点で特に好ましい。
当該リンカーは、担体結合部位で結合したビーズやレジン等の担体と、pH感受性色素化合物との間に一定の距離を与え、これによって、pH感受性色素化合物と分子精製用タグペプチドとの結合を容易にするという機能を有する。リンカーの長さは特に限定されないが、担体に結合した隣接する分子精製用リガンド同士によって、分子精製用タグペプチドとの結合に影響を与えないような長さであることが好ましい。
(c)担体結合部位
担体固定部位は、分子精製用リガンドを精製用の任意のビーズ又はレジン等の担体に結合させて固定化する部位である。アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、アジド基、アルキニル基、マレイミド基及びカルボキシル基などの反応性官能基を有する。これにより、所望の担体が有する官能基と特異的に結合できる。
例えば、担体固定部位にアミノ基がある場合、このアミノ基が担体上のイソチオシアネート基、イソシアネート基、アシルアジド基、アルデヒド基、エポキシ基、スクシンイミドエステル基、カルボジイミド基等と特異的して、分子精製用リガンドを固定化することができる。また、担体固定部位にマレイミド基を有する場合、中性付近の条件下で担体上のスルフヒドリル基と特異的に反応して、安定したチオエーテル結合を形成させて分子精製用リガンドを固定化することができる。
上記の分子精製用リガンドは、化学合成によって調製することができる。例えば、pH色素感受性色素化合物にフェノールを使用した場合、以下のように合成することができる。例えば、3〜4 gの30〜50 mmolフェノールと、3〜4gの15〜25 mmolの4-ニトロフタル酸無水物を、5〜15 mLのメタンスルホン酸に溶解させ、85〜95℃で一晩撹拌する。
反応後に、反応溶液を室温まで冷却し、氷水を加えて撹拌する。これによって生じた沈殿物を濾過して回収し乾燥させる。乾燥物をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としてシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、淡黄色固体のニトロフェノールフタレインを得る。
次いで、350〜400 mgの0.5〜1.5 mmolのニトロフェノールフタレインと、0.5〜1.5 mLの9〜13 mmol無水酢酸を、0.5〜1.5 mLのピリジン中に混合し、0〜5 ℃で20〜40分間撹拌する。その後、室温で一晩撹拌し、得られた反応物に氷水を加えて更に撹拌する。生じた沈殿物を濾過して回収し乾燥させ、クリーム色のアセチル化ニトロフェノールフタレインを得る。
続いて、75〜125 mgの0.20〜0.24 mmolのアセチル化ニトロフェノールフタレインと、200〜220 mgの1.10〜1.14 mmolの塩化スズ(II)を、2.0〜3.0 mlのエタノールに溶解させ、65〜75℃で20〜40分間撹拌する。室温まで冷却した後、分液ロートを用いて分離操作を行う。
分離した有機層を回収し、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した後に濾過及び濃縮し、残留物をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色のアセチル化アミノフェノールフタレインを得る。
次いで、50〜70 mgの0.12〜0.16 mmolのアセチル化アミノフタレイン、45〜50 mgの0.10〜0.14 mmolのFmoc-NH-PEG2-CH2CH2COOH、及び0.4〜0.8 mmolの110〜120 mgの水溶性カルボジイミドを分液ロートに加え、ここに、2.5〜7.5 mlのジクロロメタンを加えて、室温で一晩撹拌する。当該反応液を、ジクロロメタンで30〜50 mLにメスアップし、等量の1 N HClを加えて洗浄する。
有機層を回収して水と飽和水溶液で洗浄した後、回収した有機層に無水マグネシウムを加えて脱水する。濾過及び濃縮して得られた残留物を、ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体のFmoc-NH-PEG2-アセチル化フェノールフタレインを得る。
次いで、28〜33 mgの0.03〜0.05 mmolのFmoc-NH-PEG2-アセチル化フェノールフタレインを、6〜10 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、1〜3 mLのピペリジンを加えて室温で5〜15分間撹拌する。減圧濃縮して回収した残留物を、0.05〜0.15%TFA水溶液と、0.05〜0.15 % TFAを含む80%アセトニトリル水溶液を移動相に用いて、HPLCにて精製を行い、下記式(5)で表される白色固定のPhPを分子精製用リガンドとして得ることができる
Figure 2019043946
上記のようにして合成した分子精製用リガンドは、担体結合部位の反応性官能基と特異的に結合する官能基を有する任意の担体へ固定化して、目的のタンパク質の精製に利用する。例えば、上記PhPの場合、Dynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)などカルボキシル基を有するレジンや磁気ビーズをN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基またはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド基により活性化させ、当該分子精製用リガンドの担体結合部位のアミド基と特異的に結合させることで、固定化することができる。
NHS基を有する活性化されたレジンや磁気ビーズは市販品を購入しもよい。例えば、NHS-activated Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア・ジャパン(株)製)のレジン、並びに、NHS-Activated Magnetic Beads(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、及びNHS Mag Sepharose(GEヘルスケア・ジャパン(株)製)の磁気ビーズを使用することができる。
PhPの分子精製用リガントの担体への固定化は、例えば、NHS-activated Sepharose 4 Fast Flowを使用した場合、以下のように行うことができる。まず、MicroSpin Columns(GEヘルスケア・ジャパン(株)製)に200〜400μlのNHS-activated Sepharose 4 Fast Flowを入れて保存液を除き、0.5〜1.5 mlの1mM HClで洗浄する。
次いで、300 nmolのPhPを混合したカップリングバッファー(0.2 M 炭酸水素ナトリウム / 0.5 M NaCl (pH 8.3))を150〜250μl加え、2〜4時間撹拌する。撹拌後、400〜600μlのカップリングバッファーで洗浄し、0.5〜1.5 mLの3M エタノールアミンを加え、室温で2〜4時間撹拌して固定化する。
NHS Mag Sepharoseを担体に使用した場合の固定化は、例えば、以下のように行うことができる。まず、Protein LoBind Tube(エッペンドルフ社製)に、40〜60μlのNHS Mag Sepharoseを入れ、90〜110μlの1mM HClで洗浄する。40 nmolのPhPを混合した40〜50μlのカップリングバッファーを加え、4℃で一晩撹拌する。
次いで、90〜110μlのカップリングバッファーを加えて洗浄した後、400〜600μlの3M エタノールアミンを加えて室温で3時間撹拌して固定化させる。
Dynabeads MyOne Carboxylic Acidを担体に使用した場合の固定化は、例えば、以下のように行うことができる。まず、Protein LoBind Tubeに、90〜110μlのDynabeads MyOne Carboxylic Acidを入れ、90〜110μlのDMFで3回洗浄する。洗浄後、40〜60μlの200 mM N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム及び40〜60μlの200 mM 1‐エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加え、室温で2時間撹拌することで活性化を行う。
次いで、適量の超純水で洗浄し、40 nmolのPhPを混合した30μlのDMFを加え、室温で一晩撹拌する。90〜110μlの3M エタノールアミンで洗浄した後、400〜600μlの3M エタノールアミンを加えて室温で2時間撹拌して固定化する。
NHS-Activated Magnetic Beadsを担体に使用した場合の固定化は、例えば、以下のように行うことができる。まず、Protein LoBind Tubeに、90〜110μlのNHS-Activated Magnetic Beadsを入れ、氷冷の90〜110μlの1mM HClで洗浄し、40 nmolのPhPを混合した20〜40μlのカップリングバッファーを加え、4℃で一晩撹拌する。次いで、90〜110μlのカップリングバッファーで洗浄し、400〜600μlの3M エタノールアミンを加えて室温で2時間撹拌して固定化する。
上記のようにして、レジン又は磁気ビーズに固定化した分子精製用リガンドを用いて、後述する分子精製用タグペプチドを有する組み換えタンパク質の精製を行うことができる。
本発明の別の態様である、分子精製用リガンドと結合及び解離する分子精製用タグペプチドについて、以下に説明する。
本明細書中、「タグペプチド」とは、組み換えタンパク質に含まれ、特定のリガンドと結合及び解離するペプチドを表す。特に、本発明の分子精製用タグペプチドは、上記分子精製用リガンドのpH感受性色素化合物と結合及び解離する6〜8アミノ酸残基からなるペプチド(以下、「TP1」ということがある。)または配列番号25で示されるトリプトファンを5個含む15残基のペプチド(以下、「TP2」ということがある。)を表す。
上記分子精製用タグペプチドのうちTP1は、上述したようにその配列中の4箇所の特定部位に、それぞれ独立して疎水性アミノ酸である、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)のいずれかが配置されている。TP2は、例えば、後述する表5に示すように、上記配列中の特定の位置にトリプトファン(W)が配置されている。
当該分子精製用タグペプチドは、それと結合及び解離する分子精製用リガンドを用いてcDNAディスプレイ法によって取得することができる。以下に、図13及び図14を参照しつつ説明する。
まず、pH感受性色素化合物の構造に着目したDNAライブラリを構築する。その際、プロテインAのBドメイン(以下、「BDA」という)や、PDO(POU specific DNA - binding domain of Oct-1)ドメイン等を基盤にして、そのN末端側又はC末端側にランダムペプチド領域を融合させるようにライブラリを構築する。この場合、目的タンパク質のN末端側にペプチド領域を配置することが、組み替えタンパク質のC末端側で結合するcDNAライブラリ上のピューロマイシンの影響を受けにくい点で好ましい。
次いで、当該DNAライブラリを転写してmRNAを取得する。得られたmRNAを任意のピューロマイシンリンカーにライゲーションさせる。この際、光架橋によってライゲーションをすることができる、3-シアノビニルカルバゾール(以下、「cnvK」という)を有するリンカー(以下、「cnvKリンカー」という:図14)を使用するのが、高速でセレクションを行ううえで好ましい。
続いて、当該リンカーに結合しているmRNAを翻訳し、リンカーのピューロマイシン上にランダムペプチドを融合させた組み換えタンパク質をディスプレイし、mRNAディスプレイ(以下、「IVV」ということがある)を調製する。その後、逆転写を行ってcnvKリンカーとcDNAが連結したcDNAディスプレイを取得する。
次いで、cDNAディスプレイ上のタンパク質中のランダムペプチドを、レジン担体に固定化された分子精製用リガンドを含むカラムに通して結合させる。カラムの代わりに分子精製用リガンドを固定した磁気ビーズを用いることもできる。分子精製用リガンドに結合したcDNAディスプレイを、バッファー中のpHを変化させることで分子精製用リガンドから解離させて溶出させる。
溶出してきたcDNAディスプレイ上のcDNAをPCRによって増幅させ、次のセレクションに利用する。この一連セレクションサイクルを何回か行うことで、分子精製用リガンドと親和性の高いタグペプチドを有するcDNAディスプレイが淘汰されていく。
任意の回数のセレクションサイクルによる淘汰によって得られたcDNAディスプレイ上のタグペプチド配列を、次世代シークエンサーによって解析する。得られた解析結果から、共通する配列を抽出し、当該共通配列を有するペプチドを分子精製用タグペプチドの候補とする。
候補に選ばれたペプチド配列を含むcDNAディスプレイを上記のようにして調製し、分子精製用リガンドを含むカラムまたは磁気ビーズに通す。pH変化によって溶出してきた画分のゲル電気泳動の結果から、分子精製用リガンドと結合及び解離する分子精製用タグペプチドを決定する。
以下に、PhPを分子精製用リガンドとした場合を例に挙げて、分子精製用タグペプチドの取得方法について説明する。
(1)DNAライブラリの構築
DNAライブラリを構築する際、例えば、本発明のpH感受性色素化合物中に3つの芳香環を有することに着目し、π−π相互作用を考慮して芳香族アミノ酸を豊富に有するランダムペプチド配列を設計する。
また、例えば、テンプレートDNAとしてBDAを含む2重鎖DNAを使用する場合は、当該ランダムペプチド配列をPCRによってBDA配列のN末端側又はC末端側に融合させる。例えば、1回目のPCRで使用するプライマーは、ランダムペプチド配列とBDAを含む配列の5’末端側に、例えばΩ配列及びKozak配列を有するプライマー(以下、「フォワードプライマー1」という)をフォワードプライマーにする。リバースプライマーには、例えば、上記のcnvKリンカーの一部との相補性配列を有する配列(以下、「RevプライマーA」という)を用いることができる。
上記テンプレートDNAと上記フォワードプライマー1とRevプライマーAを用いて、アニーリング温度を67〜70℃、伸長時間10〜30秒、20〜30サイクルでPCRを行う。得られたPCR反応液は、市販のキット、例えばFavorPrepTM PCR Clean-Up Mini Kit(Favorgen Biotech社製)やQIAquick PCR Purification Kit(Qiagen社製)等を用いて、製品のマニュアルに従って精製する。
精製したDNAサンプルをテンプレートにして、プロモーター配列、例えばT7プロモーター配列とΩ配列を有するプライマーをフォワードプライマーに用い、リバースプライマーにRevプライマーAを用いて、アニーリング温度を67〜70℃、伸長時間10〜30秒、20〜30サイクルの条件で2回目のPCRを行う。
PCR反応液を、4%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、「4%変性PAGE」という)による切り出し精製を行う。その後、エタノール沈殿によって得られたPCR産物を、フォワードプライマーに例えば、T7プロモーター配列の一部(以下、「Newleft」ということがある)(配列番号10)を使用し、リバースプレイマーにRevプライマーAを用いて、アニーリング温度を67〜70℃、伸長時間10〜30秒、20〜30サイクルの条件で3回目のPCRを行い、目的のDNAライブラリのフルコンストラクトを作製する。上記使用するプライマーは、外部のDNA合成会社に委託して合成することができる。
(2)cDNAディスプレイの作製
cDNAディスプレイを作製する際に使用するリンカーは、特許第4318721号に開示されているリンカー、特開2013-39060で開示されているリンカー、WO2014/142020で開示されているリンカー等を使用することができるが、WO2016/159211に開示されているcnvKを利用した光架橋型リンカーであるcnvKリンカーを使用することが、セレクションサイクルを高速で行うことができる点で好ましい。
cnvKリンカー(以下、「cnvK rG Linker」ということがある)は、例えば以下のようにして調製することができる。まず、主鎖となるビオチンフラグメントを、下記配列のように合成する。当該塩基配列中、hはグアノシン(rG)を、VはAminoC6-dT(つくばオリゴサービス(株)製)を、Kは3-シアノビニルカルバゾール(cnvK)をそれぞれ表す。
5'AAhAATTTCCAKGCCGCCCCCCGVCCT 3' (配列番号9)
また、上記主鎖の5'末端にはBiotin-TEGが結合している。また、側鎖となるピューロマイシンセグメントを、5' (5S)TCTFZZCCPのように合成する。当該塩基配列中、Pは、タンパク質結合部位としてのピューロマイシンを表す。また、(5S)は5'Thiol C6(つくばオリゴサービス(株)製)を、FはFITC-dT(つくばオリゴサービス(株)製)を、そしてZは Spacer18(つくばオリゴサービス(株)製)をそれぞれ表す。上記主鎖と側鎖は、外部のDNA合成会社に委託して合成することができる。
次いで、0.1〜0.3 Mリン酸ナトリウム(pH 7.8)に、上記主鎖のビオチンセグメントを終濃度が140〜160μM、及びEMCS((株)同仁化学研究所製)を終濃度が15〜18 mMになるよう加え、37℃で20〜40分間インキュベートする。その後、市販のキット、例えば、Quick-Precip Plus Solution(Edge BioSystems社製)を用いてエタノール沈殿を行う。
続いて、側鎖のピューロマイシンセグメントを終濃度が400〜430 μMとなるように、50 mMのDTTを含む1Mのリン酸水素二ナトリウム水溶液に溶解し、シェーカーを用いて室温で30分〜1時間半撹拌する。適当なカラムを用いて、30 mMのNaClを含む20 mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)にバッファーを交換する。
次いで、上記ピューロマイシン-セグメント溶液を、上記のEMCS修飾済みビオチン-フラグメントのエタノール沈殿産物と混合し、4℃で一晩放置する。DTTを終濃度45〜55 mMとなるように上記反応液に投入し、室温で15〜45分間撹拌する。その後、エタノール沈殿を行い、得られた沈殿物のHPLC精製を行う。
蛍光及び紫外吸収(280 nm)の両方のピークが見られた画分を集め、溶媒を蒸発させた後、エタノール沈殿を行って目的のcnvKリンカーを得ることができる。
上記のようにして得られたリンカーに、上記のようにして作製したDNAライブラリのコンストラクトDNAを転写して得られたmRNAをライゲーションさせる。転写は、T7 RiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega社製)及びin vitro Transcription T7 Kit(タカラバイオ(株)製)等の市販のキットを使用し、添付されたマニュアルに従って行うことができる。
また、得られた転写産物は、After Tri-Reagent RNA Clean-Up Kit(Favogen Biotech Corp.製)及びRNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen社製)等を使用し、添付されたマニュアルに従って精製する。
精製したmRNAとリンカーをライゲーションさせて、mRNA-リンカーを調製する。例えば、リンカーにcnvKリンカーを使用した場合、まず、精製したmRNA及び当該mRNAと等量のcnvKリンカーに、NaCl(終濃度 0.2 M)及びTris-HCl(pH 7.5、終濃度 0.05 M)を加え、90℃で1〜2分間インキュベートする。
次いで、0.1〜0.2℃/秒の速度で70℃まで降下させ、70度で30秒〜1分30秒間インキュベートする。0.01〜0.03℃/秒の速度で25℃まで降温させ、1〜3℃/秒の速度で10℃まで降温させ、cnvK polyA LinkerをmRNAの3'末端側にハイブリダイズさせる。その後、365 nmのUVを405 mJ照射し、cnvK poly A LinkerとmRNAを光架橋させ、mRNA-リンカーを得ることができる。
上記にようにして得られたmRNA-リンカーを、無細胞翻訳系によってピューロマイシン上にランダムペプチドを組み込んだ融合タンパク質をディスプレイする。例えば、10〜20 pmolのmRNA−リンカーに対して、100〜150μLのスケールで、例えば、ウサギ網状赤血球ライセート等の無細胞翻訳系を使用して、約30℃で15〜25分間インキュベートする。その後、MgCl2及びKClをそれぞれ所望の濃度で加えて、37℃で20〜80分間インキュベートし、mRNA-リンカーにタンパク質がディスプレイしたmRNAディスプレイを形成させる。
上記のように処理した翻訳反応液に、所望の結合バッファーで洗浄した所望の量のストレプトアビジン付きの磁性ビーズと混合し、所望の温度で所望の時間撹拌する。例えば、ストレプトアビジン用の1×結合バッファーで洗浄済みの磁性ビーズ、例えば、Dynabeads MyOne C1 ストレプトアビジン100〜200μLと混合し、約20〜30℃で約20〜60分撹拌する。
その後、逆転写を行いmRNA-リンカー上のmRNAとcDNAをハイブリダイズさせる。例えば、約200μLのストレプトアビジン用の1×結合バッファーで2〜4回洗浄し、例えば、ReverTra Ace(登録商標)に付属のプロトコルに従って、約100μLの逆転写用反応液を投入し、約42℃で10〜60分間撹拌して逆転写を行い、cDNAディスプレイを調製する。
調製したcDNAディスプレイは、所望量の1×His-tag洗浄バッファーを加え、その後所望量のRNase T1を加えて、所望の温度で所望の時間攪拌し上清を回収する。例えば、100〜200μLの1×His-tag洗浄バッファーで洗浄し、その後、最終濃度4〜6 U/μlとなるようRNase T1を加えて、37℃で10〜30分間撹拌し、cDNAディスプレイを回収する。
(3)分子精製用タグペプチドのセレクション
以下の3つのステップで、分子精製用タグペプチドのセレクションを行う。
(3−1)ステップ1:PhPリガンドと結合するcDNAディスプレイのセレクション
上記にようにして調製したcDNAディスプレイを、所望の担体に固定化させたPhPリガンドを詰めたカラムに通し、所望のセレクションバッファーで洗浄後、所望の温度で所望の時間インキュベートし、PhPリガンドとcDNAディスプレイを結合させる。
例えば、cDNAディスプレイを、セファロースレジンに固定化させたPhPリガンドを詰めたBio-Spin(登録商標)Disposable Chromatography Columns(Bio-Rad Laboratories社製)に加え3〜5℃で20〜40分間インキュベートする。インキュベート後、セレクションバッファー(50 mM Tris-HCl(pH 7.4)、0.5 M NaCl、1mM EDTA、0.05% Tween 20、以下断りの無い限り、セレクションバッファーはこの組成を有する。)で洗浄する。
その後、PhPリガンドと結合しているcDNAディスプレイを溶出する際に、PhPリガンドのフェノールフタレインと結合しているcDNA上のペプチドを変性させて当該リガンドから解離させるため、所望の濃度のSDSを加えて所望の温度で所望の時間撹拌して、溶出サンプルを回収する。
例えば、0.5〜1.5%のSDSをカラムに加えて室温下で10分〜20分間撹拌してcDNA上のペプチドを変性させて溶出サンプルを回収する。
その後、エタノール沈殿によって沈殿させた溶出サンプルを、所望のプライマーを用いて、所望のアニーリング温度で所望の時間PCRを行う。PCR産物の変性PAGEを行い、溶出画分に現れたバンドをPhPリガンドに結合するcDNAディスプレイとして、次のセレクションサンプルに供する。その際、PhPリガンドが固定化されていないセファロースレジンを詰めたカラムから溶出したcDNAディスプレイをマーカーとして使用する。
例えば、cnvK NewYtag for poly A(配列番号11)とΩRT-L new(配列番号14)をプライマーとして用いて、アニーリング温度67〜69℃、伸長反応20〜40秒の条件でPCRを行った後、PCR産物の4%変性PAGEを行う。
(3−2)ステップ2:pH応答結合性タグペプチドのセレクション
次いで、上記のセレクションで得られたPhPリガンドと結合するcDNAディスプレイを、所望のプライマーを用いて、所望のアニーリング温度で所望の時間PCRを行うことでフルコンストラクトのDNAを再生する。得られたPCR産物を用いて、上述したセレクションサイクルを所望の回数を行ったあと、得られたcDNAディスプレイを、所望の担体で固定化したPhPリガンドのカラムを通して、cDNAディスプレイとPhPリガンドを結合させる。
洗浄バッファーで数回洗浄したあと、所望の濃度のNaOHを加え、PhPリガンド上のフェノールフタレインの立体構造を変化させることで、PhPリガンドからcDNAディスプレイを溶出させて回収し、pHの変化によってPhPリガンドと結合及び解離するpH応答結合性タグペプチドを有するcDNAディスプレイをセレクションする。
例えば、PhPリガンドと結合するcDNAディスプレイを、cnvK NewYtag for poly AとΩRT-L newをプライマーとして用いて、アニーリング温度67〜69℃、伸長反応20〜40秒の条件でPCRを行って得られたPCR産物を用いて、2〜6回セレクションサイクルを行う。
セレクションで得られたcDNAディスプレイをNHS-Activated Magnetic Beads(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)又はDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で固定化させたPhPリガンドを詰めたBio-Spin(登録商標)Disposable Chromatography Columnに加え、PhPリガンドとcDNAディスプレイを3〜40℃で20〜40分間反応させる。反応産物を80 mM NaOHを使用して30分間反応後に溶出を行い、溶出サンプルを回収する。
(3−3)ステップ3:PhP特異的結合性タグペプチドのセレクション
続いて、上記セレクションで得られたpH応答性タグペプチドに結合性を有するcDNAディスプレイを、再度所望のプライマーを用いて、所望のアニーリング温度で所望の時間PCRを行う。得られたPCR産物を用いて、上述したセレクションサイクルを所望の回数を行ったあと、得られたcDNAディスプレイを、所望の担体で固定化したPhPリガンドのカラムを通して、cDNAとPhPリガンドを結合させる。
洗浄バッファーで数回洗浄したあと、所望の濃度のプロテアーゼを加え、cDNAディスプレイ上のペプチドを分解する。分解されて溶出されたcDNAディスプレイを回収し、cDNAディスプレイ上の核酸によるPhPリガンドとの非特異結合によって得られたcDNAディスプレイを除き、PhPリガンドと特異的に結合するタグペプチドを有するcDNAディスプレイをセレクションする。
例えば、cnvK NewYtag for poly AとΩRT-L newをプライマーとして用いて、アニーリング温度67〜69℃、伸長反応20〜40秒の条件でPCRを行って得られたPCR産物を用いて、1〜数回セレクションサイクルを行う。セレクションで得られたcDNAディスプレイを、Dynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で固定化させたPhPリガンドを詰めたBio-Spin(登録商標)Disposable Chromatography Columnに加え、PhPリガンドとcDNAディスプレイを3〜40℃で5〜15分間反応させる。
反応産物をプロテアーゼ Kを加え1時間〜3時間反応後に溶出を行い、PhPリガンドと特異的に結合するペプチドを有するcDNAディスプレイを回収する。なお、上記ステップ1〜3の順番は任意に変えて行うこともできる。
(4)分子精製用タグペプチドの配列決定
上記セレクションによって得られた複数のcDNAディスプレイの中から、次世代シーケンサーを用いて各ペプチド配列を解析し、多くのペプチドに共通にみられる配列を抽出する。
抽出した共通配列の中から、任意の一つのペプチドを選択して上記の方法で当該ペプチド配列を含むDNAコンストラクトを構築し、上記の方法でcDNAディスプレイを調製する。得られたcDNAディスプレイと、ビーズ等に固定化されたPhPリガンドを反応・溶出させ、溶出液(精製産物)のSDS-PAGEを行うことで、当該ペプチドが実際にPhPリガンドと可逆的に結合できる分子精製用タグペプチド配列であるか否かを決定する。
上記のようにして取得した分子精製用リガンド及び分子精製用タグペプチドは、分子精製用リガンドのpH感受性色素化合物の可逆的な構造変化によって、互いの結合及び解離を繰り返すことができる。そのため、例えばビーズで固定化したPhPリガンドを詰めたカラムにcDNAディスプレイを加えて結合させたのち、NaOHによってpHを変化させて当該cDNAディスプレイを解離させて溶出させた後、pH調整剤によって元のpHに戻すことで、再度cDNAディスプレイを結合させることが可能となる。
(実施例1)分子精製用リガンドの調製
3.76 gの40 mmol フェノールと、3.86 gの20 mmol 4−ニトロフタル酸無水物を10 mlのメタンスルホン酸に溶解させ、90℃で一晩撹拌した。反応後、反応溶液を室温まで冷却した後、氷水を加えて撹拌した。生じた沈殿物を、濾取して乾燥させた。残留物を、ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。精製物を減圧濃縮して淡黄色固体を4.83 g得た。
得られた固体のNMRスペクトル分析は、AVANCE500(Bruker社製)を用いて行った。重クロロホルムや重メタノールを溶媒とした場合、化学シフトはテトラメチルシランを内部標準物質として用いδ値を示した。重DMSOの場合は、(CHD2)SCD3由来のピークを基準とした。以下に示した分析結果より、得られた淡黄色固体は下記式(6)のニトロフェノールフタレイン混合物であることが分かった。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ = 6.77 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 7.09 (d, J = 7.7 Hz, 2.4H), 7.12 (d, J = 7.7 Hz, 1.6H), 8.03 (d, J = 8.5 Hz, 0.6H), 8.17 (d, J = 8.5 Hz, 0.4H), 8.41-8.44 (m, 0.8H), 8.57 (d, J = 2.0 Hz, 0.6H ), 8.60 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 0.6H), 9.17 (br, 2H)
Figure 2019043946
365 mgの1.0 mmol ニトロフェノールフタレインと1.04 mlの11 mmol 無水酢酸とを、1.04 mlのピリジン中に混合し、窒素風船を用いて0℃で30分間撹拌した。室温で一晩撹拌した後、得られた反応物に氷水を加えて撹拌した。生じた沈殿物を濾取して乾燥し、クリーム色の固体を447 mg得た。この固体のNMRスペクトル分析を行った。以下の示した分析結果より、下記式(7)のアセチル化ニトロフェノールフタレインが得ることができた。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ = 2.30 (s, 6H), 7.10-7.13 (m, 4H), 7.26-7.33 (m, 4H), 7.73 (d, J = 7.3 Hz, 0.6H), 8.13 (d, J = 7.5 Hz, 0.4H), 8.38 (d, J = 2.0 Hz, 0.4H), 8.44 (dd, J = 2.0 Hz, 7.5 Hz, 0.4H), 8.57 (dd, J = 2.0 Hz, 7.3 Hz, 0.6H), 8.77 (d, J = 2.0 Hz, 0.6 H)
Figure 2019043946
100 mgの0.22 mmol アセチル化ニトロフェノールフタレインと212 mgの1.12 mmol 塩化スズ(II)を2.5 mlのエタノールに溶解させ、70 ℃で30分間撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチルおよび水を加え分液ロートに入れて通常の分離操作を行った。有機層を水及び飽和食塩水で洗った後に回収し、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。セライト濾過及び減圧濃縮し、残留物をヘキサン/酢酸エチル(=1/1)を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を減圧濃縮して75 mgの淡黄色の固体を得た。
当該淡黄色の固体のNMRスペクトル分析を行ったところ、以下の分析結果から、下記式(8)で表されるアセチル化アミノフェノールフタレインを得ることができた。
1H NMR (500 MHz, MeOH-d4) δ = 2.26 (s, 6H), 7.00 (dd, J = 1.5 Hz, 8.5 Hz, 0.6H), 7.04 (d, J = 1.5 Hz, 0.4H), 7.08-7,13 (m, 5H), 7.33-7.40 (m, 4.4H), 7.68 (d, J = 8.5 Hz, 0.6H)
Figure 2019043946
60 mgの0.14 mmol アセチル化アミノフェノールフタレイン、48 mgの0.12 mmol Fmoc-NH-PEG2-CH2CH2COOH、及び115 mgの0.6 mmol 水溶性カルボジイミド(以下、「WSCD」という)を反応容器に加え、ここに5 mlのジクロロメタンを加えて室温で一晩撹拌した。反応液をジクロロメタンで30〜40 mlにメスアップし、等量の1N HClを加えて洗浄した。有機層を回収し、水と飽和食塩水で洗浄したのち、回収した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。
セライト濾過及び減圧濃縮し、残留物をヘキサン/酢酸エチル(=1/1)を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を減圧濃縮して48 mgの白色の固体を得た。当該白色の固体のNMRスペクトル分析を行ったところ、以下の分析結果から、下記式(9)で表されるFmoc-NH-PEG2-アセチル化フェノールフタレインを得ることができた。前段階まで混入していた異性体はRf値が異なるためカラムクロマトグラフィーで除去された。
1H NMR (500 MHz, MeOH-d4) δ = 2.24 (s, 6H), 3.22 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.50 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.61-3.64 (m, 4H), 3.83 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 4.13-4.15 (m, 1H), 4.27 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 4.47-4.79 (m, 2H), 7.07 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 7.25 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 7.30-7.35 (m, 6H), 7.59 (d, J = 8.5 Hz, 3H), 7.73 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.87 (dd, J = 2.0 Hz, 6.5 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H)
Figure 2019043946
31 mgの0.04 mmol Fmoc-NH-PEG2-アセチル化フェノールフタレインを、8 mlのN,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という)に溶解し、2 mlのピペリジンを加えて室温で10分間撹拌した。減圧濃縮して回収した残留物を、0.1%TFA水溶液と、0.1%TFAを含む80%アセトニトリル水溶液の混合物を移動相に用いて、C18カラムを用いた逆相HPLCにて精製を行った。目的化合物を含むフラクションを凍結乾燥した後に、5.7 mgの白色の固体を得た。
当該白色の固体のNMRスペクトル分析を行ったところ、以下の分析結果から、目的のリガンドである下記式(5)のNH2-PEG2-フェノールフタレイン(PhP)を得ることができた。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ = 2.60 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.94 (q, J = 5.2 Hz, 2H), 3.37-3.33 (m, 4H), 3.57-3.55 (m, 2H), 3.72 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 6.76 (d, J = 8.7 Hz, 4H), 7.07 (d, J = 8.7 Hz, 4H ), 7.70 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.76 (br, 2H), 7.84 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.25 (s, 1H), 9.67 (s, 2H), 10.4 (s, 1H); MS (MALDI) m/z calcd for C27H29N2O7 493.2 (M+H+), found 493.1.
Figure 2019043946
(実施例2)分子精製用リガンドの固相担体への結合
実施例1で調製したPhPリガンドに、以下のレジン(NHS-activated Sepharose 4 Fast Flow)と磁気ビーズ(NHS-Activated Magnetic Beads、Dynabeads MyOne Carboxylic Acid、及びNHS Mag Sepharose)を担体として用いて固相へ結合させた。反応には下記表1のバッファーを使用した。
Figure 2019043946
PhPと各担体との結合効率(固定化効率とも言う)は、反応前後のPhP溶液を10 mM NaOHで100倍希釈し、Nanodrop 1000(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて吸光度を測定することで見積もった。
(1)NHS-activated Sepharose 4 Fast Flowに対する固定化
MicroSpin Columnsに、300μlのNHS-activated Sepharose 4 Fast Flow(いずれも、GEヘルスケア・ジャパン(株)製)を入れて保存液を除いた。氷冷の1 mlの1 mM HClで洗浄し、300 nmolのPhPを混合した195μlのカップリングバッファーを加えて3時間撹拌した。
反応後、500μlのカップリングバッファーで洗浄し、1 mlの3M エタノールアミンを加えて室温で3時間撹拌した。その後、500μlの洗浄バッファー1と洗浄バッファー2を使用して、交互に5回洗浄した。得られたNHS-activated Sepharose 4 Fast Flow固定化PhP(以下、「レジン固定化PhP」ということがある)を1 X PBS (pH 7.4)中に4℃で保存した。固定化効率は81.6%であった。
(2)NHS Mag Sepharoseに対する固定化
Protein LoBind Tube 1.5 ml(エッペンドルフ社製)に、50μlのNHS Mag Sepharose(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を入れ、氷冷の100μlの1mM HClで洗浄した。40 nmolのPhPを混合した30μlのカップリングバッファーを加え、4℃で一晩撹拌した。
100μlのカップリングバッファーを加えて洗浄した後、500μlの3M エタノールアミンを加えて室温で3時間撹拌した。その後、500μlの洗浄バッファー1と洗浄バッファー2を使用して、交互に5回洗浄した。得られたNHS Mag Sepharose固定化PhPを1 X PBS (pH 7.4)中に4℃で保存した。固定化効率は85.2%であった。
(3)Dynabeads MyOne Carboxylic Acidに対する固定化
Protein LoBind Tube 1.5 ml(エッペンドルフ社製)に、100μlのDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を入れ、100μlの25 mM MES buffer, pH 6で10分撹拌して洗浄を2回行う。洗浄後、50μlの200 mM N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム及び50μlの200 mM 1‐エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加え、室温で30分撹拌した。200μlの25 mM MESバッファー(pH 6)で2回洗浄し、40 nmolのPhPを混合した40μlの25 mM MESバッファー(pH 6)を加え、4℃で一晩撹拌した。
500μlの3M エタノールアミンを加えて室温で1時間撹拌した。200μlの3M エタノールアミンで4回洗浄し、100μlの70%エタノールで洗浄し、200μlのセレクションバッファーで洗浄し、得られたDynabeads MyOne Carboxylic Acid固定化PhPを100μlのセレクションバッファー (pH 7.4)中に4℃で保存した。固定化効率は88.2%であった。
(4)NHS-Activated Magnetic Beadsに対する固定化
Protein LoBind Tube 1.5 ml(エッペンドルフ社製)に、100μlのNHS-Activated Magnetic Beadsを入れ、氷冷の100μlの1mM HClで洗浄し、40 nmolのPhPを混合した30μlのカップリングバッファーを加え、4℃で一晩撹拌した。
反応後、100μlのカップリングバッファーで洗浄し、500μlの3M エタノールアミンを加えて室温で2時間撹拌した。1 mlのMilli-Q水で1 mLで洗浄し、得られたNHS-Activated Magnetic Beads固定化PhPを1 X PBS (pH7.4)中に4℃で保存した。固定化効率は82.5%であった。
(実施例3)分子精製用リガンドの物性評価
(1)PhPリガンドのpKa値
pH 7〜pH 12まで0.5刻みの0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液を用いて、実施例1で調製したPhPリガンドを1,000倍に希釈し、それぞれUV測定を行った。極大吸収波長554 nmにおける吸光度は、塩基性が強いほど増加することが示された(図2)。
また、上記pHにおける吸光度を、pH 12.0の吸光度で規格化し、HAをラクトン環保持のPhP、A-をラクトン環開環時のPhPとして横軸に存在比(対数)、縦軸にpHをとりプロットした(図3)。これより、PhPのpKaは9.59であることが分かった。フェノールフタレインのpKaが9.23±0.3であるので、近似のpKa値をとることが示された。
(2)レジン固定化PhPのpH応答性
実施例2で調製したレジン固定化PhPの吸光変化を観察した。その結果、当該レジンへ固定化後も、吸光変化が保持されることが確認された(図4)。
(実施例4)分子精製用タグ配列を有するライブラリの構築
実施例2で調製した、分子精製用リガンドのレジン固定化PhPに結合する分子精製用タグ配列をcDNAディスプレイ法により取得するために、当該方法で必要となるDNAライブラリを以下のようにして3Aライブラリ、WIライブラリ及びSKVライブラリという、3つのDNAライブライブラリを考案した。
下記PCRにおいては、酵素はPrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ(株)製)を、精製はFavorPrepTM PCR Clean-Up Mini Kit(Favorgen Biotech社製)を、エタノール沈殿はQuick-PrecipTM Plus Solution(Edge Bio社製)を用い、キットのマニュアルに従って行った。また、使用した下記表2に記載のプライマーは、ユーロフィンジェノミクス(株)及びつくばオリゴサービス(株)に合成を依頼した。なお本明細書中の配列中のNは、A、T、G及びCの等量混合物であることを示す。またKはT及びGの等量混合物である。また、R、Y、及びMは、A、T、G、及びCのいずれかであることを示す。






















Figure 2019043946
(1)3Aライブラリの構築
3Aライブラリは、ランダムアミノ酸8残基からなる芳香族アミノ酸を豊富に含むようデザインし、図5に示すアミノ酸の出現比率で設計した。具体的には、上記配列中のR, Y, Mをぞれぞれ(A, T, G, C)=(15, 40, 15, 30),(30, 30, 30, 10),(0, 33.3, 33.3, 33.3)となるようにした。
まず、テンプレートDNAにBDA全長配列を、プライマーにΩ-Random-BDAとcnvK NewYtag for poly A、及び上記酵素を用いて、アニーリング温度68℃、伸長時間20秒、25サイクルの条件でPCRを行った。
次いで、PCR反応物を、上記キットを用いて精製したあと、精製したDNAサンプルをテンプレートにし、プライマーにT7ΩとcnvK NewYtag for poly A、及び上記酵素を用いて、アニーリング温度60℃、伸長時間24秒、12サイクルの条件でPCRを行った。PCR反応物を4%変性PAGEにて切り出し精製を行い、エタノール沈殿後の残留物を、プライマーにNewleftとcnvK NewYtag for poly A、及び上記酵素を用いて、アニーリング温度69℃、伸長時間24秒、5サイクルの条件でPCRを行った。
得られた3Aライブラリのフルコンストラクト(図6)の塩基配列を下記に示した(配列番号21)。また、当該フルコンストラクトは400bp、ライブラリサイズは3×1010であった。また、ダイレクトシーケンスの解析結果から、目的の位置に目的のランダム配列が導入されていることが示された(図7)。
5’GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGRYMRYMRYMRYMRYMRYMRYMRYMGGCGGAAGCGATAACAAATTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTACATTTACCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCCTAAAAGATGACCCAAGCCAAAGCGCTAACCTTTTAGCAGAAGCTAAAAAGCTAAATGATGCTCAAGCACCAAAAGCTGACAACAAATTCAACGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCGGAAGCAGGACGGGGGGCGGCGTGGAAA 3’ (配列番号21)
(2)WIライブラリの構築
WIライブラリは、ランダムアミノ酸10残基にトリプトファンを規則的に5個導入できるようデザインし、図8に示すアミノ酸の出現比率で設計した。最初のPCRの際にプライマーにΩ-W-Random-BDAとcnvK NewYtag for poly Aを使用した以外、上記3Aライブラリと同じ条件でPCRを行い、WIライブラリのフルコンストラクトを調製した(図9)。当該フルコンストラクトの塩基配列を下記に示した(配列番号22)。
5’GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGTGGNNKNNKTGGNNKNNKTGGNNKNNKTGGNNKNNKTGGNNKNNKGGCGGAAGCGATAACAAATTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTACATTTACCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCCTAAAAGATGACCCAAGCCAAAGCGCTAACCTTTTAGCAGAAGCTAAAAAGCTAAATGATGCTCAAGCACCAAAAGCTGACAACAAATTCAACGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCGGAAGCAGGACGGGGGGCGGCGTGGAAA 3’ (配列番号22)
当該フルコンストラクトは421 bp、ライブラリサイズは1×1013であった。また、ダイレクトシーケンスの解析結果から、目的の位置にトリプトファンとランダム配列が導入されていることが示された(図10)。
(3)SKVライブラリの構築
SKVライブラリは、ランダムアミノ酸10残基の両端に、セリン-リシン-バリン-イソロイシン-ロイシン-フェニルアラニン-グルタミン酸の配列を導入し、環状ペプチドを形成するようデザインした。この配列を両端に導入すると環状ペプチドを形成する事が報告されている(Marks et al., Chem. Biol., 11, 347-356 (2004))。
Ω7TACAAとT7Ωnewを上記酵素を用いてアニーリング温度58℃、伸長時間10秒、10サイクルの条件でextensionした。
SKVILFE-Random11-SKとGAPG-SKVILFE-GGGS-His (Ytag cnvK)を上記酵素を用いてアニーリング温度68℃、伸長時間10秒、10サイクルの条件でextensionした。
次に、2種類のextension産物を上記酵素を用いてアニーリング温度66℃、伸長時間10秒、15サイクルの条件でextensionした。
PCR反応物を4%変性PAGEにて切り出し精製を行い、エタノール沈殿後の残留物を、プライマーにNewleftとcnvK NewYtag for poly A、及び上記酵素を用いて、アニーリング温度69℃、伸長時間17秒、5サイクルの条件でPCRを行った。
得られたSKVライブラリのフルコンストラクトの塩基配列を下記に示した(配列番号23)。また、当該フルコンストラクトは286 bp、ライブラリサイズは2×1014であった。また、ダイレクトシーケンスの解析結果から、目的の位置に目的のランダム配列が導入されていることが示された。
5’GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGGCGGTGGCAGTAAAGTTATCCTATTTGAGGGTCCAGCTGGANNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKGGTGCTCCAGGAAGCAAGGTCATATTATTCGAAGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCGGAAGCAGGACGGGGGGCGGCGTGGAAA 3’ (配列番号23)
(実施例5)cDNAディスプレイの作製
実施例4で調製した、3AライブラリとWIライブラリを用いて、cDNAディスプレイ法のセレクションサイクル(図11)により、それぞれのcDNAディスプレイを以下のように調製した。使用するバッファーは下記表3に記載した。
Figure 2019043946
(1)cnvK rG Linkerの調製
cnvK rG Linkerの構造を図12に示す。主鎖となるビオチンフラグメントの配列は下記配列番号9に記載された配列を有する。ここで、上記主鎖の5'末端にはBioTEGが結合しており、また、塩基配列中のgはグアノシン、VはAmino C6-dTを、Kは3-シアノビニルカルバゾールをそれぞれ表す。また、側鎖となるピューロマイシンセグメントは、5' (5S)TCTFZZCCの配列を有する。
5'AAgAATTTCCAKGCCGCCCCCCGVCCT 3' (配列番号9)
また、上記側鎖配列中の遊離末端となるPは、タンパク質結合部位としてのピューロマイシンを表す。また、(5S)は5' Thiol C6を、FはFITC-dTを、そしてZは Spacer 18をそれぞれ表す。上記の主鎖及び側鎖の化学合成は、つくばオリゴサービス(株)に委託した。
まず、0.2Mのリン酸ナトリウム(pH 7.2)に、15 nmolのビオチンフラグメント(終濃度150μM)及びEMCS((株)同仁化学研究所製、終濃度16.7 mM)を加え、37℃で30分インキュベートした。その後、Quick-Precip Plus Solution (Edge BioSystems社製)を用いてエタノール沈殿させた。
次に37.5 nmol分のピューロマイシン-セグメントを終濃度417μMとなるように、50 mMのDTTを含む1Mのリン酸水素二ナトリウム水溶液に溶解し、シェーカーを用いて室温で1時間撹拌した。次いで、NAP5カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて、0.03 MのNaClを含む0.02 Mのリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.0)にバッファーを交換した。
上記バッファー交換済みの還元ピューロマイシンセグメント溶液を、上記のEMCS修飾済みビオチンフラグメントのエタノール沈殿産物と混合し、4℃で一晩放置した。続いて、DTTを終濃度50 mMとなるように上記反応液に投入し、室温で30分間撹拌した。その後、Quick-Precip Plus Solution (Edge BioSystems社製)を用いて、エタノール沈殿を行なった。エタノール沈殿産物を、100μLのNuclease-free water(ナカライテスク(株)製)に溶解し、以下の条件でC 18カラムによるHPLC精製を行った。
A液:0.1 Mの酢酸トリメチルアンモニウム(超純水中)
B液:80%アセトニトリル
プログラム:A液とB液との組成比は、開始時のA液85%を45分かけて65%とするグラディエント
流速:1mL/分
分画:1mL
画分中の成分は、蛍光及び紫外吸収(280 nm)で確認した。30〜32分までの画分では、蛍光とUVの両方でピークが見られた。30〜32分までの画分を集め、画分中の溶媒を真空エバポレターを用いて蒸発させた。その後、Quick-Precip Plus Solutionを用いてエタノール沈殿を行ない、目的のcnvK poly A Linkerを得た。得られたcnvK rG LinkerはNuclease-free waterに溶解して−20℃で保存した。
(2)転写
上記3Aライブラリ及びWIライブラリのコンストラクトDNAを、T7 RiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega社製)を使用し、添付されたマニュアルに従って転写した。使用したDNAは1stラウンドで5.3μg、2ndラウンド以降は1.32μgとした。得られた転写産物は、RNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen社製)を使用し、添付されたマニュアルに従って精製した。
(3)ライゲーション
精製した20 pmol mRNA及び20 pmol cnvK rGリンカーに、NaCl(終濃度 0.2 M)及びTris-HCl(pH 7.5、終濃度 0.05 M)を加え、90 ℃で1分間インキュベートした。その後、0.1 ℃/秒の速度で70℃まで降温させ、70 ℃で1分間インキュベートした。次いで、0.02 ℃/秒の速度で25℃まで降温させ、2 ℃/秒の速度で10 ℃まで降温させ、cnvK rGリンカーをmRNAの3' 末端側にハイブリダイズさせた。
その後、CL-1000 Ultraviolet Crosslinker(フナコシ(株)製)を使用して、365 nmのUVを405 mJ照射し、cnvK rGリンカーとmRNAを光架橋させ、mRNA-リンカーを得た。
(4)mRNAディスプレイの調製
6 pmolのmRNA-リンカーを、50μLスケールの無細胞翻訳系(Rabbit reticulocyte Lysate (nuclease-treated)、Promega社製)を用いて、30 ℃で20分間インキュベートした。次いで、MgCl2及びKClをそれぞれ最終濃度75 mM、900 mMとなるように加えて37℃で1時間インキュベートし、mRNA-リンカー上のピューロマイシンにmRNAに対応するペプチドをディスプレイした。次いで、EDTA(pH 8.0)を最終濃度70 mM になるように加えて、37 ℃で5分間インキュベートし、mRNA-リンカーに結合しているリボソームを除去し、mRNAディスプレイを形成させた。
(5)cDNAディスプレイの調製
1×結合バッファーで洗浄済みのDynabeads MyOne C1 ストレプトアビジン(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製) 60μlに上記mRNAディスプレイをすべて加えて、冷却サーモブロックローテーター((株)日伸理化製、SNP-24B)を用いて、25℃で60分間撹拌した。100μlの1×結合バッファーで3回洗浄した後、100μlの1×ReverTraAce(登録商標)バッファー(東洋紡(株)製)で洗浄した。
その後、ReverTra Ace(東洋紡(株)製)に付属のプロトコルに従って、逆転写用反応液を加え。冷却サーモブロックローテーターを用いて、42℃で30分間撹拌して逆転写を行った。逆転写後、100μlのHisタグ結合バッファーで洗浄した。その後、RNase T1を最終濃度5 U/μlになるようHisタグ結合バッファー(50μl)を加えて、37℃で15分間撹拌し、cDNAディスプレイ(crude)を得た。
(6)Hisタグによる精製
20μlのHis Mag Sepharose Ni(GEヘルスケアサイエンス社製)を、100μlのHisタグ結合バッファーで洗浄し,上記のcDNAディスプレイサンプルをすべて加えて,25℃で2時間撹拌した。その後、100μlのHisタグ洗浄バッファーで洗浄し、Hisタグ溶出バッファー(20-40μl)を加えて室温で20分間撹拌し、cDNAディスプレイ(His tag溶出液)を回収した。
(7)cDNAディスプレイの形成率確認
回収したcDNAディスプレイ(crude)、Hisタグ上清、His tag溶出液を10×NEバッファー2とRNase Hを用いて20μLスケールに調製し、37℃で30分間インキュベートした。またmRNAディスプレイ(IVV)、streptavidinビーズとIVVの反応後の上清(SA)、及びmRNAリンカーについてもサンプルを用意した。これらの泳動サンプルを2×SDS サンプルバッファーで40 μLスケールに調製し、8 M尿素を含む条件下(以下同じ)でSDS-PAGE電気泳動を行った。
3AライブラリのcDNAディスプレイ等の電気泳動の結果、各分子の形成効率(=翻訳に供したmRNA量を1とした場合の、各サンプルに含まれる目的分子の存在比)はIVVが16.6%、cDNAディスプレイ(crude)中のcDNAディスプレイ分子が14.6%、Hisタグ溶出液中のcDNAディスプレイ分子が2.0%であった(図13の(A))。WIライブラリのcDNAディスプレイ等の電気泳動の結果、各形成効率はIVVが18.3%,cDNAディスプレイが8.1%、His tag溶出液中の分子が3.1%であった(図13の(B))。
(8)ペプチド・リンカー複合体(単にリンカー複合体とも言う)の形成
興味のペプチド配列についてPhPリガンドとの結合を確認したい場合には、前述のcDNAディスプレイの簡易版としてペプチド・リンカー複合体を形成させて評価を実施する場合がある。この手順としては、Protein Lobind Tubeに、Dynabeads Myone streptavidin C1(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を60μl入れ、100μlのセレクションバッファーで洗浄した後、上記(1)−(4)の方法で調製したmRNAディスプレイを加え、25℃で30分間撹拌した。200μlの結合バッファーで3回洗浄し、100μlのセレクションバッファーで洗浄した。洗浄後、39.8μlのセレクションバッファーと、0.2μlの1,000 U/μlのRNase T1とを加え37℃15分撹拌することによってリンカー複合体を得た。
(実施例6)分子精製用タグペプチドのセレクション
(1)PhPリガンドと結合する分子精製用タグペプチドのセレクション
PhPリガンドと結合する分子精製用タグを取得するため、実施例5で取得した3Aライブラリから調製したcDNAディスプレイを用いて、セレクションの1stラウンドを以下の方法で行った。
まず、PhPリガンドが固定されていないセファロースレジンを適量詰めた、Bio-Spin(登録商標)Disposable Chromatography Columns(Bio-Rad Laboratories社製)を、セレクションバッファーで3回洗浄した。洗浄後、3Aライブラリから調製したcDNAディスプレイを加え、4℃で30分間インキュベートした。この時のcDNAディスプレイの調製は実施例5に記す量の18倍で行った。インキュベート後、自然落下及び遠心機でスピンダウンを行い、cDNAディスプレイを回収し、一部をPCRに供した。このように、リガンドが固定されていない担体に対してcDNAディスプレイライブラリを作用させることで非特異結合分子を除去する操作をプレセレクションと称する。
次いで、回収したcDNAディスプレイを、PhPリガンドが固定されたセファロースレジンを適量詰めたBio-Spin(登録商標)Disposable Chromatography Column(Bio-Rad Laboratories社製)(実施例2で調製)に加え、4℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、セレクションバッファーで3回洗浄した(サンプル名:洗浄画分1〜3)。
cDNAディスプレイ上のペプチドを変性させるため、1%SDSを加えて室温で15分撹拌し、溶出液を回収するという操作を2回繰り返して溶出サンプルを回収した。回収した溶出サンプルを常法に従ってエタノール沈殿を行い、PCR用サンプルに供した。
cnvK NewYtag for poly AとΩRT-L newをプライマーとして用いて、アニーリング温度68℃、伸長反応24秒の条件でPCRを行った後、PCR産物を4%変性PAGEを行った。電気泳動の結果より、洗浄画分1〜3以外にも、SDS変性によってレジン固定化PhPリガンドから遊離したcDNAディスプレイの溶出が示された(図14)。
以上のセレクションの1stラウンドにより、PhPリガンドと結合するタグペプチドを有するcDNAディスプレイを取得することができた。
(2)pH応答性結合タグペプチドの取得
上記、セレクションの1stラウンド後のcDNAディスプレイを用いて、pHに応答して結合及び解離するcDNAディスプレイのセレクションを行った。
セレクションの1stラウンド後のcDNAディスプレイをカラムで精製した後、cnvK NewYtag for poly AとT7Ωnewを用いて、アニーリング温度68℃、伸長反応24秒の条件でPCRを行った。PCR産物をカラムで精製したあと、得られた精製物をセレクションの2ndラウンドに供した。
プレセレクションを3回行い、洗浄を6回行い、80 mM NaOHを使用して溶出したこと、cDNAディスプレイ分子の調製を実施例5で記した量の6倍から行ったことを除いて、1stラウンドと同じ条件でセレクションサイクル進めた。NaOH溶出により回収したサンプルは、1MのTris-HCl(pH 6.6)で中和した後に次の操作を行った。以下、各洗浄液についても同様の操作を行なった。セレクション後のサンプルを、THUNFERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡(株)製)のマニュアルに従って定量PCRで評価した。定量PCRを行なった全てのサンプルについて、プライマーとして配列番号15と配列番号11とを用いた。その結果、洗浄回数が増えるにつれてDNAの溶出量が減少する一方で、NaOH溶出画分のDNA回収量が多いことが示された(図15)。
NaOHによる溶出画分を回収したcDNAディスプレイをPCRにより増幅し、以降のラウンドのセレクションに使用した。3rdラウンドでは、プレセレクションを4回行ったこと、cDNAディスプレイ分子の調製を実施例5で記した量の2倍から行ったことを除いて、2ndラウンドと同じ条件でセレクションサイクルを進めた。セレクション後のサンプルを上記と同様に定量PCRで評価した。
セレクションの4thラウンドでは、PhPリガンドをNHS-Activated Magnetic Beads(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化したビーズ固定化PhPリガンド(実施例2で調製)を用いた。プレセレクションを3回行った後、当該ビーズ固定化PhPリガンドとcDNAディスプレイを4℃で30分間反応させた。本ラウンド以降では、cDNAディスプレイ分子の調製は実施例5に記した量で行った。その後、80 mM NaOHを使用して4℃で30分間反応後に溶出を行い、セレクション後のサンプルを回収した。回収したサンプルを同様に定量PCRで評価した。
セレクションの5thラウンドでは、プレセレクションを1回行い、それ以外は4thラウンドと同じ条件でセレクションサイクルを進めた。得られたサンプルを同様に定量PCRで評価した。
セレクションの6thラウンドでは、PhPリガンドをDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化したビーズ固定化PhPリガンド(実施例2で調製)を用いた。プレセレクションを1回行い、当該ビーズ固定化PhPリガンドとcDNAディスプレイを25℃で20分間反応させた。80 mM NaOHを使用して室温で20分間反応させた後に溶出を行った。
上記3rd〜6thのラウンドで得られたNaOH溶出画分の定量PCRの結果から、各ラウンドのcDNAディスプレイの回収率を算出した(図16)。その結果、セレクションを進めるにつれ、ビーズで固定化したPhPリガンド(図16のPhP(+)ビーズ)からの回収量が増加すること、及び担体自体(図16のPhP(-)ビーズ)からの回収量が比較的少ないことから、フェノールフタレインに特異的に結合し、pHに応答して解離するcDNAディスプレイが得られていることが示された。
(3)pH特異的結合タグペプチドの取得
上記6thラウンド後に取得したNaOH溶出画分を用いて、7thラウンドのセレクションを行った。7thラウンドでは、cDNAディスプレイ上の核酸によるPhPリガンドとの非特異結合を除くため、プロテイナーゼ Kを用いて、cDNAディスプレイ上のペプチドを分解した。その後、cDNAディスプレイを80 mM NaOHを使用して室温で10分間反応させた後に溶出を行った。得られたプロテイナーゼ溶出画分およびNaOH溶出画分を定量PCRで回収量を評価した(図17)。
その結果、プロテアーゼで溶出されたビーズ固定化PhPリガンドの回収率がNaOH溶出より多く、かつ担体自体に結合するペプチドが少ないことが示された(図18)。このことから、PhPリガンドに当該タグペプチドが特異的に結合し、pHに応答して解離する候補ペプチドが淘汰されていることが示された。
(実施例7)PhPリガントと結合又は解離する精製用タグペプチドの配列決定
上記7thラウンドのプロテアーゼ溶出画分に含まれるペプチド配列の解析は、次世代シーケンサー(MiSeq:イルミナ社製)を用いて、(株)ファスマックに依頼して行った。解析結果から共通する配列を有するペプチドを選び、実施例4及び5に記載の方法でcDNAディスプレイを調製し、実施例1で調製したPhPリガンドと反応させ、NaOH溶出画分のSDS-PAGE電気泳動を行った。
その結果、LVFLIWWMからなるペプチド配列(以下、「LV59」という)において、ビーズで固定化したPhPリガンドの溶出画分でcDNAディスプレイのバンドが確認された(図19)。これよりpHの変化によってPhPリガンドと結合又は解離する精製用タグペプチドを取得することができた。
同様に、YLYVWLWFからなるペプチド配列、WVIWILFFからなるペプチド配列、及びMWFFMFWMからなるペプチド配列においても、pHの変化によってPhPリガンドと結合又は解離し、精製用タグペプチドとして使用できることが示された。
また、上記タグペプチド配列中に、ロイシン及びトリプトファン等の疎水性アミノ酸が多く含まれることから、LLLLLLLLからなるペプチド配列(以下、「L8」という)、及びWWWWWWWWからなるペプチド配列(以下、「W8」という)を含むリンカー複合体を、実施例4及び5の記載の方法で調製し、PhPリガンドをDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化したビーズ固定化PhPリガンド(実施例2で調製)と反応させ、NaOH溶出画分のSDS-PAGE電気泳動を行った。
その結果、L8及びW8においても、pHの変化によってPhPリガンドと結合又は解離し、精製用タグペプチドとして使用できることが示された(図19)。このときのW8を有するcDNAディスプレイの回収率は6.4%であり、L8を有するcDNAのそれは13.3%であった。
更に、LV59のアミノ酸配列を反転させたMWWILFVLからなるペプチド配列(以下、「LV59R」という)においても、PhPリガントと結合およびpHに応じて解離することが確認された(図20)。このことから、本発明の精製用タグペプチドは、その配列を逆にした場合においても精製用タグペプチドとして使用できることが示された。
(実施例8)pH変化によるLV59タグペプチドとPhPリガンドとの親和性について
LV59タグペプチドを有するcDNAディスプレイを実施例5の方法で調製し、溶出時のpHを下記のように変化させたときの、当該タグペプチドとPhPリガンドとの親和性の検討を行った。
Protein Lobind Tubeに、PhPリガンドをDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化したビーズ固定化PhPリガンド(実施例2で調製)を各25μl入れ、各100μlのセレクションバッファーで洗浄した後、各50μlのcDNAディスプレイを加え、25℃で30分間撹拌した。100μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した後、それぞれ0.1 mM、1 mM、10 mM、50 mM及び100 mMのNaOHを14μl加え、室温で15分間撹拌し回収した。Tris-HCl(1 M, pH 6.6)を4μl加えて溶出液を中和した。実施例5(7)と同様にRNase Hで処理した後、各溶出液のSDS-PAGEを行った。
その結果、pH 11まで確認できなかったcDNAディスプレイのバンドがpH 12で現れ始め、pH 12.5で濃いバンドが確認された(図21)。このことから、LV59とPhPリガンドとの親和性はpH依存性であることが示された。
(実施例9)融合ペプチドによるPhPリガンドとの結合の検証
実施例8の実験では、実施例5の方法により作製した、BDAとLV59の融合ペプチドがディスプレイされたcDNAディスプレイによるPhPリガンドとの結合実験を行った。そこで、cDNAディスプレイとPhPリガンドとの親和性がBDAではなく、LV59に起因することを確認するため、別のペプチドとの融合ペプチドを用いて検討した。当該ペプチドには、PDO(POU specific DNA-binding domain of Oct-1)を用いた。
LV59とPDOの融合ペプチドを有するcDNAディスプレイを取得するため、以下のようにして、フルコンストラクトを構築した。まず、テンプレートDNAに全長PDOを用い、プライマーにユーロフィンジェノミクス(株)に依頼して合成した下記プライマー(配列番号24)とcnvK NewYtag for poly A(配列番号11)を用いた。
5’TACAACTACAAGCCACCATGCTTGTGTTCCTGATTTGGTGGATGGGCGGAAGCGACCTTGAGGAGCTTGA 3’ (配列番号24)
PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ(株)製)をPCR用の酵素を使用してキットのマニュアルに従って、アニーリング温度72℃、伸長時間20秒、25サイクルの条件でPCRを行った。精製はFavorPrepTM PCR Clean-Up Mini Kit(Favorgen Biotech社製)を用いて、キットのマニュアルに従って行った。
精製したDNAサンプルをテンプレートにし、プライマーにT7Ω(配列番号12)とcnvK NewYtag for poly A(配列番号11)を用い、上記酵素を用いて、アニーリング温度72℃、伸長時間25秒、25サイクルの条件でPCRを行った。PCR反応物を4%変性PAGEにて切り出し精製を行った。
得られたLV59とPDOの融合タンパク質をコードするDNAのフルコンストラクトを用いて、T7 RiboMAX Large Scale RNA Production Systemのマニュアルに従い転写を行った。得られたmRNAの精製は、RNeasy MinElute Cleanup Kitのマニュアル従って行った。
精製した20 pmolのmRNA及び1μlの20μM cnvK rG Linkerに、4μlの1M NaCl、超純水6.5μl及び0.25 M Tris-HCl(pH 7.5)を4μl加え、90℃で1分間インキュベートした。その後、0.1℃/秒の速度で70℃まで降下させ、70度で1分間インキュベートした。次いで、0.02℃/秒の速度で25℃まで降温させ、2℃/秒の速度で10℃まで降温させ、cnvK rG LinkerをmRNAの3'末端側にハイブリダイズさせた。
その後、CL-1000 Ultraviolet Crosslinker(フナコシ(株)製)を使用して、365 nmのUVを405 mJ照射し、cnvK rG LinkerとmRNAを光架橋させ、mRNA-リンカーを得た。
得られたmRNA-リンカー(6 pmol)を、50μLスケールの無細胞翻訳系(Rabbit reticulocyte Lysate (nuclease-treated)、Promega社製)を用いて、30℃で20分間インキュベートした。次いで、MgCl2及びKClをそれぞれ最終濃度75 mM、900 mMとなるように加えて37 ℃で1時間インキュベートし、mRNA-リンカー上のピューロマイシンに融合タンパク質をディスプレイさせた。次いで、EDTA(pH 8.0)を最終濃度70 mM になるように加えて、37 ℃で5分間インキュベートし、mRNA-リンカーに結合しているリボソームを除去し、IVVを形成させた。
1×結合バッファーで洗浄済みのDynabeads MyOne C1 ストレプトアビジン(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製) 60μlに上記mRNAディスプレイをすべて加えて、冷却サーモブロックローテーター((株)日伸理化製、SNP-24B)を用いて、25℃で30分間撹拌した。200μlの1×結合バッファーで3回洗浄した後、100μlの1×ReverTraAce(登録商標)バッファー(東洋紡(株)製)で洗浄した。
その後、ReverTra Ace(登録商標)(東洋紡(株)製)に付属のプロトコルに従って、逆転写用反応液を加え。冷却サーモブロックローテーターを用いて、42℃で30分間撹拌して逆転写を行った。逆転写後、100μlのセレクションバッファーで洗浄した。その後、RNase T1を最終濃度5 U/μlになるようセレクションバッファーを加えて、37℃で15分間撹拌し、cDNAディスプレイを得た。
PhPリガンドをDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化したビーズ固定化PhPリガンド(実施例2で作製)を用い、当該ビーズ固定化PhPリガンドとcDNAディスプレイを室温で2時間反応させた。その後、50 mM NaOHを使用して室温で15分間反応させた後に溶出を行った。Tris-HCl(1M, pH 6.6)を4μl加えて溶出液を中和した。RNase Hで処理した後、各溶出液のSDS-PAGEを行った。その結果、固定化したPhPリガンドと結合したcDNAディスプレイのバンドが確認され、cDNAディプレイ上のLV59によってPhPリガンドと結合していることが示された(図22)。
(実施例10)LV59タグペプチドの再使用及びPhPリガンドの再利用
精製時の素通り画分の再使用と、PhPリガンドの再利用について検討を行った。
(1)Lv59タグペプチドの再使用
Protein Lobind Tubeに、実施例2で調製したビーズ固定化PhPリガンドを25μl加え、100μlの70%エタノール、100μl洗浄バッファー及び100μlセレクションバッファーで洗浄後、実施例4および5(8)に従った方法によって作製した38μlのLV59ペプチドのリンカー複合体を加え、室温で30分間撹拌した。素通り画分(1回目)を回収し、新しいビーズ固定化リガンド25μlをそこに加え、室温で30分間撹拌した。素通り画分(2回目)を回収した後、ビーズを100μlのセレクションバッファーで洗浄し、50 mM NaOHを加えて結合分子を溶出させた。1回目で用いたビーズからも同様に溶出を行った。その後、溶出画分のSDS-PAGEを行った。その結果、2回目の溶出画分においてもLV59のバンドが確認され、素通り画分(フロースルー:FT)からの再精製により目的タンパク質の回収量を上げられることが示された(図23)。
(2)PhPリガンドの再利用
Protein Lobind Tubeに、実施例2で調製したビーズ固定化PhPリガンドを25μl加え、100μlの70%エタノール、100μl洗浄バッファー及び100μlセレクションバッファーで洗浄後、実施例4および5(8)に従った方法によって作製した38μlのリンカー複合体(LV59ペプチド)を加え、室温で30分間撹拌した。
素通り画分を回収し、100μlのセレクションバッファーでビーズを洗浄し、50 mM NaOHを加えて溶出させた。溶出後、Tris-HCl(1 M, pH 6.6)でビーズ固定化PhPリガンドを中和させた後、新たに調製したリンカー複合体を再度加え、攪拌の後50 mMのNaOHで溶出させた。その後、溶出画分のSDS-PAGEを行った。その結果、2回目の溶出画分においてもLV59のバンドが確認された。このことから、一度使用したPhPリガンドは、pHを変化させてその構造を変化させることで再使用できることが示された(図24)。
(実施例11)塩濃度と親和性の関係
溶出時におけるセレクションバッファーの塩濃度の変化によるLV59とPhPリガンドとの親和性を検討した。
実施例10と同様に調製したリンカー複合体をビーズ固定化PhPリガンドを用いて精製する際に、0 M、0.5 M及び4 MのNaClを含むセレクションバッファーを使用した。溶出方法及びSDS−PAGEは実施例10と同じ条件で行った。
その結果、塩濃度が0 M NaClの場合では溶出画分にLV59のバンドは認められなかったが、0.5 M及び4 M NaClの場合ではLV59のバンドが確認できた(図25)。このときのリンカー複合体の回収率は0.5 M NaClの場合は9.2%で、4 M NaClの場合は17.2%であり、塩濃度が高くなると親和性が高くなることが示された。以上より、3Aライブラリを用いてcDNAディスプレイ法によるセレクションを行った結果、LV59ペプチドがフェノールフタレイン誘導体(PhP)固定担体に対して、中性バッファー(pH 7.4)で結合し、塩基性バッファー(50 mM NaOH)で解離することが示された。
(実施例12)トリプトファン固定ライブラリからのセレクションと活性評価
(1)ライブラリ作製
実施例7〜11に示したように、PhPと結合-解離が可能なLV59ペプチドには、トリプトファン(W)が比較的多く含まれており、疎水相互作用及びπスタッキング(図26)による相互作用が親和性に寄与していると考えられた。このため、実施例4に記したWIライブラリを作製した。ライブラリの塩基配列は配列番号22の通りである。またアミノ酸配列は配列番号25の通りである。下記の配列中、Wはトリプトファンを、また、Xはランダムなアミノ酸を示す。このライブラリについてのIVV、cDNAディスプレイ及びHisタグ溶出物の形成効率については既に実施例5で述べたとおりである。
WXXWXXWXXWXXWXX (配列番号25)
(2)cDNAの各ラウンドにおける産生物等の確認
実施例6(1)と同じ条件で、WIライブラリについて1stラウンドのセレクションを行なった。SDSで溶出した1stラウンドでのセレクションの結果を図27Aに示す。図27Aより、フロースルーと洗浄とを比べると、洗浄の回数を重ねるについて標的のバンドは薄くなり、洗浄5以降は検出されなることが明らかになった。
これは、図27Aに示すように、PhPリガンドと結合していたcDNAディスプレイ分子は、SDSによって溶出されること、及び溶出の際にはcDNAディスプレイ分子が変性していることによるものと考えられた(図27B)。続いて、定量PCRを行なわなかった点を除き、上記実施例6(2)と同様の条件で2ndラウンドのセレクションを行った。
溶出されたWIライブラリを用いてさらにセレクションを行なった。3rd〜7thラウンドでのセレクションにおいては、PhPリガンドをDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化したビーズ固定化PhPリガンド(実施例2で調製、以下、「PhP(+)ビーズ」という。)を担体に用いて、室温でcDNAディスプレイ分子と2時間インキュベートした。セレクションバッファーで担体を洗浄した後、溶出は50 mM NaOH溶液を用いて行った。cDNA display分子は実施例5のスケールで合成を行った。
3rd〜5thラウンドではNaOHによる溶出時間を15分から1分まで短縮し、6th、7thラウンドでは担体と結合させる際、用いるcDNA display分子の濃度を低くした。これにより、より結合性の高い分子のみの取得を行った。実施例6と同様に定量PCRを行い、cDNAディスプレイの回収率を求めた。結果を図28に示す。
図28に示すように、ラウンドが進むについて、PhP(+)ビーズを使用したときのcDNAディスプレイの回収率は増加する傾向が見られ、7thラウンドでは、回収率が約8%と3rdラウンドのPhP(+)ビーズを使用したときと比べて、30倍以上高くなっていた。また、PhP(−)ビーズ(PhPリガンドを固定していない担体そのものをいう。以下同じ。)を使用したときには、回収量は低く1%未満であった。
また、第8ラウンドのセレクションの結果を図29に示す。8thラウンドではcDNAディスプレイをプロテイナーゼKで消化することでペプチド依存性に結合するcDNAディスプレイ分子のみを回収した(図29B)。PhP(-)ビーズを使用した場合と比べてPhP(+)ビーズを使用した場合では、19倍程回収率が高くなっていた(図29A)。
以上のようにして得られたcDNAディスプレイ分子を、次世代シーケンサー(NGS)で分析したところ、PhPに特異的に結合する候補ペプチドとして、以下の配列を有するものが得られた。これらを上からPhP1-PhP10と命名した。
Figure 2019043946
上記表5に示されるように、PhPに特異的に結合し、pHに応じて解離する可能性が高いペプチドが淘汰により得られた。こうしたペプチドは、全体的に疎水性のアミノ酸の構成比率が1/3以上と高くなっていた。
(3)淘汰されたWIライブラリ(PhP1〜10)の結合能の評価
上記PhP1〜10をWIライブラリのランダム部分に導入したDNAを常法により作製し実施例5に従ってcDNA display化させたものをPhP(+)ビーズと室温で2時間インキュベートして結合させ、NaOH(50 mM)で溶出した。ビーズに添加した溶液と溶出液のSDSゲル電気泳動を行うことで、結合能を確認した。SDSゲル電気泳動は、4%スタッキングゲル−6%分離用ゲル、20mAで2時間の条件で行った。結果を図30A〜Cに示す。溶出物のバンドの濃さから、PhP3が最も高い結合効率を有することが明らかになった。またPhP6〜Ph9については有意な結合が確認できず、非特異的な増幅配列と考えられた。
(4)PhP3とLV59との溶出効率の比較
実施例7で得られたLV59と、上記PhP3を用いて、上記(3)と同様の条件でcDNAディスプレイ分子を作製後、ビーズに結合・溶出させ、上記(3)と同じ条件でSDSゲル電気泳動に供した。結果を図31A〜Cに示す。PhP3とLV59との溶出物の量を比較したところ、結合に供したディスプレイ分子の量を100%としたときに、PhP3は32.3%、LV59は4.3%となり、PhP3の結合・溶出効率がLV59のそれよりも大幅に高いことが明らかになった(図31A)。
またPhP3をPhP(+)ビーズと、PhP(-)ビーズとを用いて溶出物中のPhP3の量を確認したところ、PhP(+)ビーズを使用した場合にのみ溶出されることが確認された(図31B)。
また、Phビーズ(実施例2に記した方法に従い、PhPリガンドに替えてフェノールをDynabeads MyOne Carboxylic Acid(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化した対照実験用ビーズ)とPhP(+)ビーズとを用いて、洗浄液及び溶出液中のPhP3の量をSDSゲル電気泳動で確認した。SDSゲル電気泳動は、6%スタッキングゲル−15%分離用ゲル、20mAで2時間の条件で行った。その結果、Phビーズを用いた場合には溶出されず、PhP(+)ビーズを使用した場合には溶出されることが明らかになった(図31C)。
以上より、PhP3はフェノールフタレインの構造を認識していること、及びフェノールフタレインとの間のπスタッキング相互作用に変化があると溶出されることが明らかとなった。
本願発明は、生体分析、診断薬及び医薬の分野において有用である。
配列番号1:分子精製用タグペプチド配列
配列番号2:分子精製用タグペプチド配列
配列番号3:分子精製用タグペプチド配列
配列番号4:分子精製用タグペプチド配列
配列番号5:分子精製用タグペプチド配列
配列番号6:分子精製用タグペプチド配列
配列番号7:分子精製用タグペプチド配列
配列番号8:分子精製用タグペプチド配列
配列番号9:cnvKリンカーのビオチンフラグメント
配列番号10:PCR用プライマー
配列番号11:PCR用プライマー
配列番号12:PCR用プライマー
配列番号13:PCR用プライマー
配列番号14:PCR用プライマー
配列番号15:PCR用プライマー
配列番号16:PCR用プライマー
配列番号17:PCR用プライマー
配列番号18:PCR用プライマー
配列番号19:PCR用プライマー
配列番号20:PCR用プライマー
配列番号21:3Aライブラリのフルコンストラクト
配列番号22:WIライブラリのフルコンストラクト
配列番号23:SKVライブラリのフルコンストラクト
配列番号24:PCR用プライマー
配列番号25:WIライブラリのペプチド配列
配列番号26:WIライブラリから得られたペプチド配列(1)
配列番号27:WIライブラリから得られたペプチド配列(2)
配列番号28:WIライブラリから得られたペプチド配列(3)
配列番号29:WIライブラリから得られたペプチド配列(4)
配列番号30:WIライブラリから得られたペプチド配列(5)
配列番号31:WIライブラリから得られたペプチド配列(6)
配列番号32:WIライブラリから得られたペプチド配列(7)
配列番号33:WIライブラリから得られたペプチド配列(8)
配列番号34:WIライブラリから得られたペプチド配列(9)
配列番号35:WIライブラリから得られたペプチド配列(10)

Claims (16)

  1. 下記一般式(1)で表されるpH感受性色素化合物と担体結合部位を備えるリンカーを含む、分子精製用リガンド。
    Figure 2019043946
    (一般式(1)中、Xは-SO又は-COであり、Yは、リンカー結合部位であり、環Arは炭素数6又は12の芳香環であり;環Ar及び環Arが炭素数6の芳香環のとき、R及びRは水素原子、炭素数1〜3の分岐鎖を有してもよいアルキル基又はハロゲン、R及びRは水素原子又は炭素数1〜3の分岐鎖を有してもよいアルキル基、及びR及びRは水素原子又はハロゲンであり;環Ar及び環Arが炭素数12の芳香環のとき、R〜Rはいずれも水素原子である。)
  2. 前記pH感受性色素化合物は、フェノールフタレイン、チモールブルー、チモールフタレイン、ナフトールフタレイン、フェノールレッド、クレゾールフタレイン、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、クロロフェノールレッド、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープルからなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の分子精製用リガンド。
  3. 前記pH感受性色素化合物は、フェノールフタレイン、チモールブルー、チモールフタレイン、ナフトールフタレイン、フェノールレッド、クレゾールフタレイン、クレゾールレッドからなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項2に記載の分子精製用リガンド。
  4. 前記リンカーは、ポリエチレングリコールリンカー、アルキルリンカー、核酸リンカー及びペプチドリンカーからなる群から選ばれる少なくとも一つのリンカーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分子精製用リガンド。
  5. 前記担体結合部位は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、アジド基、アルキニル基、マレイミド基及びカルボニル基からなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の分子精製用リガンド。
  6. 前記pH感受性色素化合物は、溶液が呈する色の変化によって検出可能な構造変化によって、分子精製用タグペプチドと結合又は解離することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の分子精製用リガンド。
  7. 前記構造変化はpHの変化に対応することを特徴とする、請求項6に記載の分子精製用リガンド。
  8. 前記分子精製用タグペプチドと解離及び結合を繰り返すことができることを特徴とする、請求項6又は7に記載の分子精製用リガンド。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の分子精製用リガンドと結合することができる、下記一般式(2)のアミノ酸配列を含むアミノ酸残基が6〜8の分子精製用タグペプチド。
    -X-X-X-X-X (2)
    (一般式(2)中、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)からなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸であり、X及びXは任意の一のアミノ酸である。)
  10. 前記アミノ酸配列が、LVFLIWWM(配列番号1)、YLYVWLWF(配列番号2)、WVIWILFF(配列番号3)、MWFFMFWM(配列番号4)、FWLWVYLY(配列番号5)、FFLIWIVW(配列番号6)、LLLLLLLL(配列番号7)及びWWWWWWWW(配列番号8)からなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項9に記載の分子精製用タグペプチド。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の分子精製用リガンドと結合することができる、下記の(3)式で表されるアミノ酸配列(配列番号25)を含む分子精製用タグペプチド。
    WXXWXXWXXWXXWXX (3)
    (式(3)中、Wはトリプトファンであり、Xは固定的に特定されないアミノ酸である。)
  12. 前記アミノ酸配列が、WKIWYRWRKWKKWKR(配列番号26)、WKRWKVWRSWKKWRK(配列番号27)、WVLWAHWPWWRVWYR(配列番号28)、WHRWPDWAYWGIWRL(配列番号29)、WRSWGRWRLWQWWWD(配列番号30)、及びWKKWRRWFRWSLWRK(配列番号35)からなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項11に記載の分子精製用タグペプチド。
  13. 前記分子精製用リガンドと解離及び結合を繰り返すことができることを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の分子精製用タグペプチド。
  14. 請求項1〜8のいずれかに記載の分子精製用リガンドと、前記分子精製用リガンドと結合可能な分子精製用タグペプチドを用いた、分子精製方法。
  15. 前記分子精製用タグペプチドは、請求項9〜12のいずれかに記載の分子精製用タグペプチドであることを特徴とする、請求項14に記載の分子精製方法。
  16. 請求項1〜8のいずれかに記載の分子精製用リガンドと固定化用担体が結合した固定化リガンド、pH調整剤、洗浄バッファー及びセレクションバッファーを備える、分子精製用キット。
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