JP2019042707A - 油水分離フィルター - Google Patents
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Abstract
Description
図1に示すように、本実施形態の油水分離装置10は、水と油とを含む混合液体11が流入する筒状の混合液体流入部12と、混合液体11の油を水から分離するシート状の油水分離フィルター13と、油水分離フィルター13で分離した水14を集める漏斗状の集水部16と、集水部16から流入する水14を貯える有底筒状の貯水部17とを備える。混合液体流入部12の上方には混合液体の流入管18が設けられ、貯水部17の底部には排水管19が設けられる。図示しないが、油水分離フィルター13の下面全体には、混合液体流入部12内の混合液体の液圧にフィルター13が耐えられるように、金属製の多孔質の支持板が設けられ、油水分離フィルター13とこの支持板は 混合液体流入部12と集水部16により挟持される。
本実施形態の油水分離フィルター13は、不織布とこの不織布の繊維表面に形成された油水分離膜とを備える。図2に示すように、この油水分離フィルター13の主たる構成要素である不織布20は、水と油とを含む混合液体が流入する一面20aと、この一面20aに対向する他面20bを有し、単一層からなる。図3に示すように、上層の不織布30と下層の不織布40の二層の積層体により構成される油水分離フィルター23でもよい。この場合、上層の不織布30の上面が水と油とを含む混合液体が流入する一面30aとなり、下層の不織布40の下面がこの一面30aに対向する他面40bとなる。なお、積層体は二層に限らず、三層、四層等の複数層から構成することもできる。
〔不織布の準備〕
先ず、0.3〜10ml/cm2/秒の通気度を有する不織布を準備する。具体的には、後述する油水分離膜が不織布の繊維表面に形成された油水分離フィルターになった状態で、0.05〜10ml/cm2/秒の通気度を有する不織布を準備する。油水分離膜が不織布1m2当り上記範囲にて多目に厚膜で形成される場合には、通気度の大きい不織布が選定され、油水分離膜が不織布1m2当り上記範囲にて少な目に薄膜で形成される場合には、通気度の小さい不織布が選定される。
本実施の形態の不織布の繊維表面に油水分離膜を形成するには、後述する油水分離膜形成用液組成物を、後述する沸点が120℃未満の炭素数1〜4の範囲にあるアルコールで、液組成物に対する質量比(液組成物:アルコール)が1:1〜50の割合になるように希釈した液を調製し、この希釈液に不織布をディッピングして希釈液から引上げ、大気中、室温で不織布を水平な金網等の上に拡げて一定の液分量になるまで脱液する。別法として、引き上げた不織布をマングルロール(絞り機)に通して脱液する。脱液した不織布は、大気中、25〜140℃の温度で0.5〜24時間乾燥する。これにより、図2の拡大図に示すように、不織布20を構成している繊維20cの表面に油水分離膜21が形成される。油水分離膜は、不織布1m2当り0.1〜30gの範囲内で、脱液量が少ない場合には、厚膜に不織布の繊維表面に形成され、脱液量が多い場合には、薄膜に不織布の繊維表面に形成される。
油水分離膜を形成するための液組成物は次の方法により製造される。
〔混合液の調製〕
先ず、ケイ素アルコキシド(A)としてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、エポキシ基含有シラン(B)と、フッ素含有シラン(C)、沸点が120℃未満の炭素数1〜4の範囲にあるアルコールと、水とを混合して混合液を調製する。このケイ素アルコキシド(A)としては、具体的には、テトラメトキシシラン、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、耐久性の高い油水分離膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
上記調製された混合液と有機酸、無機酸又はチタン化合物からなる触媒とを混合する。このとき液温を好ましくは30〜80℃の温度に保持して好ましくは1〜24時間撹拌する。これにより、ケイ素アルコキシド(A)とエポキシ基含有シラン(B)とフッ素含有シラン(C)の加水分解物(D)(以下、シリカゾル加水分解物ということもある。)が調製される。加水分解物(D)は、ケイ素アルコキシドを2〜50質量%、エポキシ基含有シランを最大30質量%まで、フッ素含有シランを0.005〜3質量%、炭素数1〜4の範囲にあるアルコールを20〜98質量%、水を0.1〜40質量%、有機酸、無機酸又はチタン化合物を触媒として0.01〜5質量%の割合で混合してケイ素アルコキシド、エポキシ基含有シラン及びフッ素含有シランの加水分解反応を進行させることで得られる。フッ素含有シラン(C)が下限値の0.005質量%未満では、形成した膜に撥水撥油性が生じにくく、上限値の3質量%を超えると、不織布の繊維表面に密着しにくい。
本実施の形態の油水分離膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、前述したフッ素含有シラン(C)を含むシリカゾル加水分解物(D)と、溶媒とを含む。このフッ素含有シランは、上記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造を有し、シリカゾル加水分解物中、0.01〜10質量%含まれる。
ケイ素アルコキシド(A)としてテトラメトキシシラン(TMOS)の3〜5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)8.52gと、エポキシ基含有シラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS:信越化学工業社製、商品名:KBM−403)0.48gと、フッ素系化合物として式(22)で表わされるフッ素含有シラン(C)(R:エチル基)0.24gと、有機溶媒としてエタノール(EtOH)(沸点78.3℃)17.58gとを混合し、更にイオン交換水3.37gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒として濃度35質量%の塩酸0.05gを添加し、40℃で2時間撹拌した。これにより、シリカゾル加水分解物(D)からなる油水分離膜形成用液組成物を調製した。この調製内容を表1に示す。
実施例2〜6及び比較例2〜4について、表1に示すように、油水分離フィルターの不織布の種類及びフッ素系化合物(フッ素含有シラン)の種類を選定し、実施例1に示されるTMOSの添加量、GPTMSの添加量及びフッ素含有シランの添加量をそれぞれ変更した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6、比較例2〜4の油水分離膜形成用液組成物を得た。これらの液組成物に実施例1と同一の工業アルコールを添加し、実施例1と同様にして、不織布ディッピング用の希釈液を調製した。これらの希釈液に表2に示す不織布を実施例1と同様にディッピングし、乾燥して、表2に示す特性を有する油水分離フィルターを得た。
比較例1では、実施例1と同一の不織布を用いたが、シリカゾル加水分解物中にフッ素含有シランを含まなかった。
比較例5では、油水分離フィルターの基材として、市販されている目開き1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のメンブランフィルターを未処理のまま用いて、これを油水分離フィルターとした。実施例1のような油水分離膜形成用液組成物の希釈液にはディッピングしなかった。
フッ素系化合物として、特許文献1の撥油性付与基及び親水性付与基(撥油親水性)を有する合成例1で示される下記式(30)で示されるフッ素系化合物を準備した。このフッ素系化合物0.5gを実施例1と同一の工業アルコール99.5gに溶解し、希釈液(濃度0.5質量%)を調製した。
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた12種類の油水分離フィルターを、それぞれ別々に、図1に示す油水分離装置10に取り付けた。乳化油としては、日立産機製スクリュー圧縮機用油HISCREW OIL NEXT0.25gとイオン交換水5リットルとを9000rpmで3分間混合し、白濁した油濃度が50ppmである乳化油(水と油とを含む混合液体)を用いた。この乳化油を混合液体流入部12に供給し、油水分離フィルター13でろ過した。油水分離フィルター13を通過して貯水部17に貯えられたろ過液を採取し、そのろ過液の濁度と、ろ過液の油濃度を次の方法により評価した。その結果を表3に示す。
ろ過液の濁度は、ラコムテスター濁度計TN−100(アズワン社製)を用いて測定した。濁度は小さい方が油水分離性が良好であり、1.5以下が合格水準である。
ろ過液の油濃度は、油分測定計(堀場製作所社製、OCMA−555)を用いてろ過液の残留油分を測定し、ろ過液の油濃度とした。この油分測定計の検出限界は油種により異なるが、用いた乳化油では1ppmである。
20 不織布
20a 不織布の一面
20b 不織布の他面
20c 不織布の繊維
20d 不織布の気孔
21 油水分離膜
22 油粒子
Claims (5)
- 水と油とを含む混合液体が流入する一面と、この一面に対向する他面との間を貫通する多数の気孔が繊維間に形成された不織布を含む油水分離フィルターであって、
前記繊維表面に油水分離膜が前記不織布1m2当り0.1〜30gの割合で形成され、
前記油水分離膜は、撥水性及び撥油性の双方の機能を有するフッ素含有シランを含むシリカゾル加水分解物を有し、
前記フッ素含有シランは、前記シリカゾル加水分解物中、0.01〜10質量%の割合で含まれ、
前記油水分離フィルターの通気度が0.05〜10ml/cm2/秒であって、 前記フッ素含有シランは、下記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造を含むことを特徴とする油水分離フィルター。
- 前記シリカゾル加水分解物は、更に炭素数2〜7のアルキル基成分を0.5〜20質量%含む請求項1記載の油水分離フィルター。
- 前記不織布が単一層により構成されるか、又は複数層の積層体により構成される請求項1又は2記載の油水分離フィルター。
- 前記不織布を構成する繊維がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ガラス、アルミナ、炭素、セルロース、パルプ、ナイロン及び金属からなる群より選ばれた1種又は2種以上の繊維である請求項1ないし3いずれか1項に記載の油水分離フィルター。
- 前記水と油とを含む混合液体が流入する一面に相当する不織布を構成する繊維がガラス繊維である請求項4記載の油水分離フィルター。
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