JP2019041683A - 加熱殺菌容器詰飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱殺菌容器詰飲料に特有の異臭味が改善された飲料およびその製造方法の提供。【解決手段】フルフラールの濃度が3ppm以上であり、酢酸エチルの濃度が10ppm以上であり、pHが2.5〜4.5であり、かつ糖度が4〜50である、加熱殺菌容器詰飲料を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、加熱殺菌容器詰飲料に特有の異臭味が改善された飲料およびその製造方法に関する。
フルフラールは、味に厚みのある特有のナッツ様の香ばしい香気を有することが知られている。
しかしながら、フルフラールをソフトフルーツ系の飲料(柑橘系飲料以外の飲料)に含有させた場合に、フルフラールがどのような呈味成分や香味成分となるのかについては全く知られていない(例えば、特許文献1参照)。
特開2015−104323号
本発明者らは、ソフトフルーツ系飲料に代表的な香気成分である酢酸エチルと、フルフラールとを一定量以上で同時に飲料中に含まれる場合には好ましい味の厚みを有する一方で、特有の異臭味が生じてソフトフルーツ系飲料の果実感が損なわれることを見出した。また、本発明者らは、飲料中のpHおよび糖度を一定範囲内に調整することにより、この特有の異臭味を抑制できることも同時に見出した。本発明はこれらの知見によるものである。
従って、本発明は、味の厚みを有しつつ、特有の異臭味が抑制された加熱殺菌容器詰飲料を提供することを目的とする。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)フルフラールの濃度が3ppm以上であり、酢酸エチルの濃度が10ppm以上であり、pHが2.5〜4.5であり、かつ糖度が4〜50である、加熱殺菌容器詰飲料。
(2)フルフラールの濃度が5〜30ppmである、(1)に記載の加熱殺菌容器詰飲料。
(3)酢酸エチルの濃度が10〜100ppmである、(1)または(2)に記載の加熱殺菌容器詰飲料。
(4)炭酸飲料である、(1)〜(3)のいずれかに記載の加熱殺菌容器詰飲料。
(5)食品法上許容される色素を含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の加熱殺菌容器詰飲料。
(6)下記工程(a)〜(d)を含む、フルフラールの濃度が3ppm以上であり、かつ酢酸エチルの濃度が10ppm以上である容器詰飲料の製造方法:
(a)該容器詰飲料のpHが2.5〜4.5となるようにpHを調整する工程、
(b)該容器詰飲料の糖度が4〜50となるように糖度を調整する工程、
(c)工程(a)および工程(b)においてpHおよび糖度を調整した飲料製造液を加熱殺菌する工程、および
(d)工程(c)の後に、フルフラールおよび酢酸エチルを含有する飲料製造液を容器に充填する工程。
(7)フルフラールの濃度を3ppm以上に調整し、酢酸エチルの濃度を10ppm以上に調整し、pHを2.5〜4.5に調整し、かつ糖度が4〜50に調整することを特徴とする、加熱殺菌容器詰飲料の異臭味抑制方法。
本発明によれば、味の厚みを有しつつ、特有の異臭味が抑制された加熱殺菌容器詰飲料を提供することができる。
発明の具体的説明
本発明によれば、フルフラールの濃度が3ppm以上であり、酢酸エチルの濃度が10ppm以上であり、pHが2.5〜4.5であり、かつ糖度が4〜50である、加熱殺菌容器詰飲料を提供できる。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中のフルフラールの濃度は、3ppm以上であれば特に限定されるものではないが、好ましくは5ppm以上であり、より好ましくは5〜30ppmであり、さらに好ましくは5〜20ppmである。ここで、特有の異臭味とは酢酸エチル由来の甘い香味と、フルフラール由来の香味とが混ざり合って感じられる特有のえぐ味を伴う焦げ臭を意味する。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中のフルフラールの濃度は、例えばGC/MSにより測定することができる。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中の酢酸エチルの濃度は、10ppm以上であれば特に限定されるものではないが、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは20〜100ppmであり、さらに好ましくは20〜50ppmである。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中の酢酸エチルの濃度は、例えばGC/MSにより測定することができる。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中のフルフラールと酢酸エチルとの含有量比(フルフラールの含有量:酢酸エチルの含有量)は特に限定されるものではないが、好ましくは、それぞれ1:0.4〜1:30であり、より好ましくは、それぞれ1:1〜1:20であり、さらに好ましくは1:2〜1:10である。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中に含まれるフルフラールと酢酸エチルとの合計含有量(総量)は、特に限定されるものではないが、好ましくは13ppm以上であり、より好ましくは25ppm以上であり、さらに好ましくは25〜130ppmであり、よりさらに好ましくは25〜70ppmであり、最も好ましくは30ppm〜70ppmである。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料のpHは、2.5〜4.5の範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは2.5〜4.0であり、より好ましくは2.5〜3.5であり、さらにより好ましくは3.0〜3.5である。pHの調整は、例えば酸味料やpH調整剤によりおこなうことができる。飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、東亜電波工業株式会社製pHメーター)を使用して容易に測定することができる。加熱殺菌容器詰飲料が炭酸飲料である場合には、飲料中に溶存している炭酸ガスを十分に脱気してから20℃でpH測定を行う。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料の糖度は、4〜50の範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは8〜14であり、より好ましくは8〜12である。飲料の糖度は市販の糖度計(例えば、アタゴ社製糖度計)を使用して容易に測定することができる。また、本発明の加熱殺菌容器詰飲料の糖度は、例えば果糖ブドウ糖液糖を用いて調整することができる。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料中に含まれるフルフラールおよび酢酸エチルの合計含有量(総量)と糖度との比(フルフラールおよび酢酸エチルの合計含有量:糖度)は、特に限定されるものではないが、好ましくは、それぞれ1:0.2〜1:0.5であり、より好ましくはそれぞれ1:0.2〜1:0.45である。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料は、特に限定されるものではないが、本発明の特有の異臭味の発生の課題を特に生じることから、無果汁飲料であることが好ましい。また、同様に特有の異臭味の発生の課題を生じにくいコーヒー、野菜、穀類等の植物抽出液は本発明の加熱殺菌容器詰飲料に含まれないことが好ましい。また、本発明の加熱殺菌容器詰飲料は、更に特有の異臭味の発生を抑制することができることから、炭酸飲料であることが好ましい。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料が炭酸飲料である場合には、炭酸ガス圧は0.25〜0.40であることが好ましく、0.30〜0.35であることがより好ましい。炭酸飲料の炭酸ガス圧は、例えば、京都電子製ガスボリューム計GVA−500により20℃で測定することができる。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料には食品法上許容される色素を含有することが好ましく、カロテン色素、アントシアニン色素、およびパプリカ色素からなる群から選択される1種以上の色素がより好ましく、カロテン色素とアントシアニン色素の組み合わせ、および/またはパプリカ色素がさらに好ましい。ここで、食品法上許容される色素とは、食品衛生法において規定されている指定添加物と既存添加物に記載の色素を意味する。食品法上許容される色素は特有の苦味を有するが、これが特有の異臭味を抑制することから、本発明の加熱殺菌容器詰飲料に含まれることが好ましい。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料の酸度は、特に限定されるものではないが、クエン酸換算として、0.02〜0.55%が好ましく、0.03〜0.4%がより好ましく、0.04〜0.25%がさらに好ましく、0.05〜0.1%が特に好ましい。このような酸度の範囲とすることにより、飲料全体の香味が適当なものとなるため、特有の異臭味をより抑制することができる。
本発明の加熱殺菌容器詰飲料の容器は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、透明容器であることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、下記工程(a)〜(d)を含む、フルフラールの濃度が3ppm以上であり、酢酸エチルの濃度が10ppm以上である容器詰飲料の製造方法が提供される:
(a)該容器詰飲料のpHが2.5〜4.5となるようにpHを調整する工程、
(b)該容器詰飲料の糖度が4〜50となるように糖度を調整する工程、
(c)工程(a)および工程(b)においてpHおよび糖度を調整した飲料製造液を加熱殺菌する工程、および
(d)工程(c)の後に、フルフラールおよび酢酸エチルを含有する飲料製造液を容器に充填する工程。
本発明の製造方法において、pHの調整は、本発明の加熱殺菌容器詰飲料と同様に、例えば酸味料やpH調整剤により行うことができる。
本発明の製造方法において、糖度の調整は、本発明の加熱殺菌容器詰飲料と同様に、例えば果糖ブドウ糖液糖により行うことができる。
本発明の製造方法において、加熱殺菌工程は、例えば、下記の実施例のように行ってもよく、また飲料をペットボトルに充填した後に行ってもよい。
本発明の製造方法の工程(d)の飲料製造液に含まれるフルフラールおよび酢酸エチルは、容器詰飲料の製造工程のどの段階で含まれていても良い。例えば、容器詰飲料の製造工程のいずれかの段階でフルフラールを添加してもよいし、結果として飲料中にフルフラールが含まれていてもよいし、またはそれらの両方であってもよい。また、酢酸エチルもフルフラールと同様に、容器詰飲料の製造工程のいずれかの段階で酢酸エチルを添加してもよいし、結果として飲料中に酢酸エチルが含まれていてもよいし、またはそれらの両方であってもよい。
本発明の容器詰飲料の製造方法におけるフルフラールおよび酢酸エチルの濃度等は、本発明の加熱殺菌容器詰飲料と同じであってもよい。
本発明の別の態様によれば、フルフラールの濃度を3ppm以上に調整し、酢酸エチルの濃度を10ppm以上に調整し、pHを2.5〜4.5に調整し、かつ糖度が4〜50に調整することを特徴とする、加熱殺菌容器詰飲料の異臭味抑制方法が提供される。本発明の加熱殺菌容器詰飲料の異臭味抑制方法におけるフルフラールおよび酢酸エチルの濃度等は、本発明の加熱殺菌容器詰飲料と同じであってもよい。
各香気成分は経時的に変化するが、加熱殺菌容器詰飲料の製造日から少なくとも6ヶ月の期間内に異臭味を抑制できれば、本発明の効果を奏するといえる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例により本発明が限定されるものではない。
試験例1
水にメロンフレーバーと任意の量のフルフラールを添加し、pHを1.7に調整した後、ペットボトル容器に充填し、80℃3分の条件で加熱殺菌を行った。更に、50℃で5日間放置した後、フルフラールと酢酸エチルの濃度を分析すると共に、官能評価に供した。飲料中のフルフラールおよび酢酸エチルの濃度の分析は、GC/MSにより測定した。飲料のpHはpHメーター(東亜電波工業株式会社製)を使用して測定した。
官能評価
訓練されたパネラー6名が下記表1および2の基準に基づき評価を行った。評価は各人の平均を採用したが、予めパネラー間の評価を擦り合わせ、パネラーごとに評価軸の大きな乖離が無いことを確認した上で、標準偏差が0.5以内であることも確認した。
Figure 2019041683
Figure 2019041683
評価結果
Figure 2019041683
上記結果から、フルフラールの濃度が3ppm以上であれば「味の厚み」が感じられるが、飲料中に更に一定量の酢酸エチルが含まれる場合には、特有の異臭味が非常に強く感じられることが分かった。
試験例2:異臭味に与えるpHの影響
水にメロンフレーバーとフルフラールを添加し、下記表4に記載の通り、リン酸によりpHを調整した後、ペットボトル容器に充填し、80℃3分の条件で加熱殺菌を行った。更に、50℃下で5日放置した後、フルフラールおよび酢酸エチルの濃度を分析すると共に、表1および2に基づき官能評価に供した。評価結果を下記表4に示す。フルフラールおよび酢酸エチルの濃度の分析は試験例1と同様にGC/MSにより測定した。飲料中の糖度は果糖ブドウ糖液糖を用いて10に調整した。飲料のpHはpHメーター(東亜電波工業株式会社製)を使用して測定し、飲料の糖度は糖度計(アタゴ社製)を使用して測定した。
評価結果
Figure 2019041683
上記の結果から、飲料のpHを2.5〜4.5とすることにより、一定量のフルフラールおよび酢酸エチルが同時に飲料中に含まれる場合であっても特有の異臭味が抑制されることが分かり、また飲料のpHが3.5では特有の異臭味が感じられないことが分かった。一方、試験区13〜20の飲料ではいずれも味の厚みは感じられた。
試験例3:異臭味に与える糖度の影響
水にメロンフレーバーとフルフラールを添加し、果糖ブドウ糖液糖を用いて下記表5に記載の通りに果糖ブドウ糖液糖により糖度を調整し、pHをリン酸により3.5に調整した後、ペットボトル容器に充填し80℃3分の条件で加熱殺菌を行った。更に、50℃下で5日放置した後、フルフラールと酢酸エチルの濃度を分析すると共に、表1および2に基づき官能評価に供した。評価結果を下記表5に示す。フルフラールおよび酢酸エチルの濃度の分析は試験例1と同様にGC/MSにより測定した。飲料のpHはpHメーター(東亜電波工業株式会社製)を使用して測定し、飲料の糖度は糖度計(アタゴ社製)を使用して測定した。
評価結果
Figure 2019041683
上記の結果から、飲料の糖度を4〜50とすることにより、一定量のフルフラールおよび酢酸エチルが同時に飲料中に含まれる場合であっても特有の異臭味が抑制されることが分かり、また飲料の糖度が8〜14では特有の異臭味が感じられないことが分かった。一方、試験区21〜28の飲料ではいずれも味の厚みは感じられた。

Claims (7)

  1. フルフラールの濃度が3ppm以上であり、酢酸エチルの濃度が10ppm以上であり、pHが2.5〜4.5であり、かつ糖度が4〜50である、加熱殺菌容器詰飲料。
  2. フルフラールの濃度が5〜30ppmである、請求項1に記載の加熱殺菌容器詰飲料。
  3. 酢酸エチルの濃度が10〜100ppmである、請求項1または2に記載の加熱殺菌容器詰飲料。
  4. 炭酸飲料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱殺菌容器詰飲料。
  5. 食品法上許容される色素を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱殺菌容器詰飲料。
  6. 下記工程(a)〜(d)を含む、フルフラールの濃度が3ppm以上であり、かつ酢酸エチルの濃度が10ppm以上である容器詰飲料の製造方法:
    (a)該容器詰飲料のpHが2.5〜4.5となるようにpHを調整する工程、
    (b)該容器詰飲料の糖度が4〜50となるように糖度を調整する工程、
    (c)工程(a)および工程(b)においてpHおよび糖度を調整した飲料製造液を加熱殺菌する工程、および
    (d)工程(c)の後に、フルフラールおよび酢酸エチルを含有する飲料製造液を容器に充填する工程。
  7. フルフラールの濃度を3ppm以上に調整し、酢酸エチルの濃度を10ppm以上に調整し、pHを2.5〜4.5に調整し、かつ糖度が4〜50に調整することを特徴とする、加熱殺菌容器詰飲料の異臭味抑制方法。
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