以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態とも称呼する。」)について図面を参照しながら説明する。尚、説明に用いる各図は、概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
先ず、本実施形態の自動変速機用油圧制御装置10(以下、単に「油圧制御装置10」と称呼する。)が適用される自動変速機1について説明する。自動変速機1は、図1に示すように、駆動源であるエンジンのクランクシャフト(図示省略)の回転がトルクコンバータ2を介してインプットシャフト3に入力されるようになっている。このインプットシャフト3に入力された回転が、変速機構部4により適宜の変速比に変速されてアウトプットシャフト5から出力される。尚、自動変速機1は、図2に示すように、トルクコンバータ2にロックアップクラッチ8が設けられている。ロックアップクラッチ8は、係合状態においてクランクシャフト側の回転を直接的にインプットシャフト3に伝達する。
変速機構部4は、図2に示すように、インプットシャフト3と連結された第一列のプラネタリギヤG1と、第二列のプラネタリギヤG2と、第三列のプラネタリギヤG3と、を備えている。変速機構部4は、複数(五つ)の摩擦係合要素としての第一摩擦クラッチC1と、第二摩擦クラッチC2と、第三摩擦クラッチC3と、第一摩擦ブレーキB1と、第二摩擦ブレーキB2と、を有しており、自動変速機1のハウジング6に収容されている。
変速機構部4は、シフトレバー7の走行レンジ又は非走行レンジへの操作に応じて、後に詳述するように、これら第一摩擦クラッチC1〜第三摩擦クラッチC3、第一摩擦ブレーキB1及び第二摩擦ブレーキB2の係合状態又は解放状態が選択的に制御されることで、変速段及び所定のシフトパターンが切り替えられるようになっている。尚、第一摩擦クラッチC1〜第三摩擦クラッチC3、第一摩擦ブレーキB1及び第二摩擦ブレーキB2は、それぞれ、図1に示すように、油圧制御装置10から供給される指令圧(油圧)が高圧に設定されることで係合状態とされ、油圧制御装置10から供給される指令圧が低圧に設定されることで解放状態となる。
第一列のプラネタリギヤG1は、サンギヤS1、リングギヤR1、ダブルピニオンギヤPG1及びキャリアPC1を備えている。サンギヤS1は、インプットシャフト3と一体回転する。リングギヤR1は、第三摩擦クラッチC3に接続される。ダブルピニオンギヤPG1は、サンギヤS1とリングギヤR1との間に配設される。キャリアPC1は、ハウジング6に固定されるとともにダブルピニオンギヤPG1を回転可能に支持する。
第二列のプラネタリギヤG2は、サンギヤS2、リングギヤR2、ピニオンギヤPG2及びキャリアPC2を備えている。サンギヤS2は、第一摩擦クラッチC1及びシャフト41を介してインプットシャフト3と一体回転する。リングギヤR2は、第三摩擦クラッチC3及びシャフト42を介してリングギヤR1と一体回転し、又は、第一摩擦ブレーキB1を介してハウジング6に固定される。ピニオンギヤPG2は、サンギヤS2とリングギヤR2との間に配設される。キャリアPC2は、第二摩擦クラッチC2及びシャフト43を介してインプットシャフト3と一体回転するとともにピニオンギヤPG2を回転可能に支持する。
第三列のプラネタリギヤG3は、サンギヤS3、リングギヤR3、ピニオンギヤPG3及びキャリアPC3を備えている。サンギヤS3は、第一摩擦クラッチC1及びシャフト41を介してインプットシャフト3と一体回転する。リングギヤR3は、キャリアPC2と一体回転し、又は、第二摩擦ブレーキB2を介してハウジング6に固定される。ピニオンギヤPG3は、サンギヤS3とリングギヤR3との間に配設される。キャリアPC3は、アウトプットシャフト5と一体回転するとともにピニオンギヤPG3を回転可能に支持する。
自動変速機1は、図3及び図4に示すように、シフトレバー7の操作に応じて、Pレンジと、Rレンジと、Nレンジと、Dレンジにおける一速から四速のアンダードライブと、Dレンジにおける五速及び六速のオーバードライブと、を有する前進六段後進一段の変速段を形成可能な変速機である。ここで、Rレンジが後進レンジであり、Dレンジが前進レンジであり、Pレンジ及びNレンジが非走行レンジである。
具体的に、Pレンジにおいては、図3に示すように、第二摩擦ブレーキB2のみが係合され、車両を停車させるようになっている。又、Rレンジにおいては、第二摩擦係合要素としての第三摩擦クラッチC3及び第二摩擦ブレーキB2のみが係合され、インプットシャフト3に対してアウトプットシャフト5の回転を逆転させて車両をリバース走行させるようになっている。又、Nレンジにおいては、第二摩擦ブレーキB2のみが係合され、車両を停車させるようになっている。
又、Dレンジにおいては、第一摩擦係合要素としての第一摩擦クラッチC1、及び、第二摩擦ブレーキB2のみが係合されると一速に、第一摩擦クラッチC1及び第一摩擦ブレーキB1のみが係合されると二速になるようになっている。又、Dレンジにおいては、第一摩擦クラッチC1及び第三摩擦クラッチC3のみが係合されると三速に、第一摩擦クラッチC1及び第二摩擦クラッチC2のみが係合されると四速になるようになっている。更に、Dレンジにおいては、第二摩擦クラッチC2及び第三摩擦クラッチC3のみが係合されると五速に、第二摩擦クラッチC2及び第一摩擦ブレーキB1のみが係合されると六速になるようになっている。ここで、特に、第一摩擦クラッチC1及び第三摩擦クラッチC3は、車両を車庫に駐車させる場合等、シフトレバー7がNレンジを介してDレンジとRレンジとが切り替えられることにより係合する第一摩擦係合要素及び第二摩擦係合要素である。
油圧制御装置10は、図1及び図4に示すように、コントロールバルブユニット11を有しており、変速機構部4に第一指令圧PO1及び第二指令圧PO2を供給することにより、上述した変速段を形成する変速機構部4の変速動作を制御するものである。油圧制御装置10は、インプットシャフト3に設けられた油圧源Yを構成するオイルポンプ21から供給されたライン圧PLを調圧し、本実施形態においては、特に、後述するように生成された第一指令圧PO1又は第二指令圧PO2を第一摩擦係合要素である第一摩擦クラッチC1及び第二摩擦係合要素である第三摩擦クラッチC3に出力する。
油圧源Yは、図4に示すように、オイルポンプ21、オイルパン22及び調圧バルブ23から構成される。これにより、オイルポンプ21は、図4に示すように、油液を貯留するリザーバとしてのオイルパン22から油液を汲み上げて、調圧バルブ23によってライン圧PLに調圧された油液を主配管24に出力する。主配管24には、シフトレバー7の前進レンジであるDレンジへの操作に応じて前進レンジ圧PDを生成するとともにシフトレバー7の後進レンジであるRレンジへの操作に応じて後進レンジ圧PRを生成するレンジ圧生成部としてのマニュアルバルブ25が接続されている。マニュアルバルブ25は、スプール25aを有するスプール弁であり、スプール25aがシフトレバー7に機械的に接続されている。
これにより、マニュアルバルブ25は、シフトレバー7の非走行レンジであるNレンジからDレンジ又はRレンジへの操作に伴ってスプール25aが変位する。そして、マニュアルバルブ25は、ライン圧PLから生成した前進レンジ圧PDを前進レンジ圧出力ポート25bから出力する。又、マニュアルバルブ25は、ライン圧PLから生成した後進レンジ圧PRを後進レンジ圧出力ポート25cから出力する。マニュアルバルブ25の前進レンジ圧出力ポート25bは、第一接続配管26を介してコントロールバルブユニット11に連通している。マニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cは、第二接続配管27を介してコントロールバルブユニット11に連通している。
コントロールバルブユニット11は、図1に示すように、自動変速機1のハウジング6の下方に固定されている。本実施形態において、コントロールバルブユニット11は、板状に形成されており、図4に示すように、第一電磁弁としての第一リニアソレノイドバルブ12、アキュムレータ13、第二電磁弁としての第二リニアソレノイドバルブ14、逆止弁15、オリフィス16、逆止弁17、及び、オリフィス18が液密に組み付けられている。
第一リニアソレノイドバルブ12は、スリーブに形成された入力ポート12a、出力ポート12b及びドレンポート12cを有するとともに、スリーブの内部にリニアソレノイド12dによって駆動されるスプール(図示省略)を有している。入力ポート12aは、コントロールバルブユニット11に形成された第一レンジ圧供給油路11aの一端に接続されている。第一レンジ圧供給油路11aの他端はマニュアルバルブ25に連通する第一接続配管26に接続されている。
出力ポート12bは、第一摩擦クラッチC1の油圧サーボ(図示省略)に連通するように、コントロールバルブユニット11に形成された第一出力油路11bに接続されている。これにより、出力ポート12bは、第一レンジ圧供給油路11aを介して供給された前進レンジ圧PDから生成される第一指令圧PO1を第一摩擦クラッチC1に出力する。ドレンポート12cは、油液中の空気及び第一摩擦クラッチC1の油圧サーボの油液を排出するため、逆止弁を介して、例えば、油圧源Yのオイルパン22に接続される。リニアソレノイド12dは、後述する制御装置Eにより駆動制御されて、スプールを入力ポート12a、出力ポート12b及びドレンポート12cに対応するように変位させる。
アキュムレータ13は、図4及び図5に示すように、シリンダ13aと、ピストン13bと、を備えている。シリンダ13aは、例えば、有底円筒状の穴としてコントロールバルブユニット11に形成される。尚、開口側の端部は、キー部材13a1により密閉される。ピストン13bは、シリンダ13aの内部を液密に区画して第一室13c(図6も参照)を形成する第一ピストン部材13b1とシリンダ13aの内部を液密に区画して第二室13d(図7も参照)を形成する第二ピストン部材13b2とから構成される。ここで、図5に示すように、シリンダ13aの底面は第一室13cを形成する第一面13a2であり、シリンダ13aの開口を密閉するキー部材13a1の密閉面はシリンダ13aの軸線Jの方向(長手方向)にて第一面13a2と互いに対向して第二室13dを形成する第二面13a3である。
又、第一ピストン部材13b1は、図5に示すように、シリンダ13aの内部に第一室13cを形成した状態で、第二ピストン部材13b2に向けて立設された第一円筒部13b3を有しており、有底円筒状に形成されている。同様に、第二ピストン部材13b2は、シリンダ13aの内部に第二室13dを形成した状態で、第一ピストン部材13b1に向けて立設された第二円筒部13b4を有しており、有底円筒状に形成されている。
又、アキュムレータ13は、シリンダ13aの軸線の方向にて互いに離間し、シリンダ13aの一端側に形成された第一ポート13e、他端側に形成された第二ポート13f及び第一ポート13eと第二ポート13fとの中間部分に形成された第三ポート13gを有している。第一ポート13eは、シリンダ13aの内部に形成された(区画された)第一室13cに連通している。第一ポート13eは、図4に示すように、第一レンジ圧供給油路11aに連通する第一接続油路11cに接続されており、第一室13cに対して前進レンジ圧PDを導入するとともに第一室13cから前進レンジ圧PDを加圧した第一アキュムレータ圧PA1を第一レンジ圧供給油路11a即ち第一リニアソレノイドバルブ12に供給する。
第二ポート13fは、シリンダ13aの内部に形成された(区画された)第二室13dに連通している。第二ポート13fは、図4に示すように、第二接続配管27に連通する第二レンジ圧供給油路11dに接続されて連通する第二接続油路11eに接続されている。第二ポート13fは、第二室13dに対して後進レンジ圧PRを導入するとともに第二室13dから後進レンジ圧PRを加圧した第二アキュムレータ圧PA2を第二レンジ圧供給油路11d即ち第二リニアソレノイドバルブ14に供給する。第三ポート13gは、シリンダ13aの内部(第一室13c又は第二室13d)から油液をオイルパン22に排出する。
又、アキュムレータ13は、図5に示すように、第一ピストン部材13b1と第二ピストン部材13b2との間に配置された付勢部材としてのスプリング13hを有している。より具体的に、スプリング13hは、第一ピストン部材13b1に設けられた第一円筒部13b3及び第二ピストン部材13b2に設けられた第二円筒部13b4の内周側に収容されている。そして、スプリング13hは、第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて付勢するとともに第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて付勢する。
これにより、第一ピストン部材13b1は、シリンダ13aの軸線の方向に沿ってスプリング13hとともにスプリング13hを圧縮しながら第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて押圧して移動することにより、第一室13cの容積を可変するようになっている(図6を参照)。又、第二ピストン部材13b2は、シリンダ13aの軸線の方向に沿ってスプリング13hとともにスプリング13hを圧縮しながら第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて押圧して移動することにより、第二室13dの容積を可変するようになっている(図7を参照)。
第二リニアソレノイドバルブ14は、図4に示すように、スリーブに形成された入力ポート14a、出力ポート14b及びドレンポート14cを有するとともに、スリーブの内部にリニアソレノイド14dによって駆動されるスプール(図示省略)を有している。入力ポート14aは、第二レンジ圧供給油路11dに接続されている。出力ポート14bは、第三摩擦クラッチC3の油圧サーボ(図示省略)に連通するように、コントロールバルブユニット11に形成された第二出力油路11fに接続されている。これにより、出力ポート14bは、第二レンジ圧供給油路11dを介して供給された後進レンジ圧PRから生成される第二指令圧PO2を第三摩擦クラッチC3に出力する。ドレンポート14cは、油液中の空気及び第一摩擦クラッチC1の油圧サーボの油液を排出するため、逆止弁を介して、例えば、油圧源Yのオイルパン22に接続される。リニアソレノイド14dは、制御装置Eにより駆動制御されて、スプールを入力ポート14a、出力ポート14b及びドレンポート14cに対応するように変位させる。
逆止弁15は、第一レンジ圧供給油路11aにおいて、第一接続油路11cとの接続位置Saに対して、マニュアルバルブ25側に設けられている。逆止弁15は、マニュアルバルブ25から第一リニアソレノイドバルブ12及びアキュムレータ13に向けた油液の流れを許容し、第一リニアソレノイドバルブ12及びアキュムレータ13からマニュアルバルブ25に向けた油液の流れを禁止する。
オリフィス16は、接続位置Saよりもマニュアルバルブ25側にて第一レンジ圧供給油路11aに設けられた逆止弁15を迂回し、且つ、第一レンジ圧供給油路11aに連通する第一迂回油路11gに設けられている。オリフィス16は、第一迂回油路11gを流れる油液の流量を絞ることにより、第一リニアソレノイドバルブ12側の第一レンジ圧供給油路11aの油圧(前進レンジ圧PD及び後述の第一アキュムレータ圧PA1)の低下を緩やかにする。
逆止弁17は、第二レンジ圧供給油路11dにおいて、第二接続油路11eとの接続位置Sbに対して、マニュアルバルブ25側に設けられている。逆止弁17は、マニュアルバルブ25から第二リニアソレノイドバルブ14及びアキュムレータ13に向けた油液の流れを許容し、第二リニアソレノイドバルブ14及びアキュムレータ13からマニュアルバルブ25に向けた油液の流れを禁止する。
オリフィス18は、接続位置Sbよりもマニュアルバルブ25側にて第二レンジ圧供給油路11dに設けられた逆止弁17を迂回し、且つ、第二レンジ圧供給油路11dに連通する第二迂回油路11hに設けられている。オリフィス18は、第二迂回油路11hを流れる油液の流量を絞ることにより、第二リニアソレノイドバルブ14側の第二レンジ圧供給油路11dの油圧(後進レンジ圧PR及び後述の第二アキュムレータ圧PA2)の低下を緩やかにする。
制御装置Eは、マイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、図示を省略する駆動回路を介して、第一リニアソレノイドバルブ12のリニアソレノイド12d及び第二リニアソレノイドバルブ14のリニアソレノイド14dの作動を制御する。尚、リニアソレノイド12d,14d及びスプールの構成及びその作動については、例えば、特開2009−236308号公報等に開示されているように、広く知られたものであり、必要があれば、特開2009−236308号公報等を参照することができる。
次に、油圧制御装置10の作動を、シフトレバー7の操作に応じて、a.非走行レンジと前進レンジとの間の切り替え時、及び、b.非走行レンジと後進レンジとの間の切り替え時の順に説明する。尚、以下の説明においては、前進レンジがDレンジ(第一速)であり、後進レンジがRレンジであり、非走行レンジがNレンジであるとする。
<a.非走行レンジと前進レンジとの間の切り替え時>
シフトレバー7がNレンジからDレンジに切り替えられる場合、図6に示すように、マニュアルバルブ25においては、スプール25aがシフトレバー7の操作に連動して変位する。これにより、マニュアルバルブ25は、油圧源Yのオイルポンプ21から供給されたライン圧PLを入力し、コントロールバルブユニット11に対して、前進レンジ圧出力ポート25bから前進レンジ圧PDを供給する。具体的に、マニュアルバルブ25は、第一接続配管26を介して、コントロールバルブユニット11の第一レンジ圧供給油路11aに前進レンジ圧PDを供給する。
第一レンジ圧供給油路11aに供給された前進レンジ圧PD(より詳しくは、前進レンジ圧PDに加圧された油液)は、主として逆止弁15を通過して第一リニアソレノイドバルブ12及び第一レンジ圧供給油路11aに連通する第一接続油路11cを介してアキュムレータ13に供給される。
シフトレバー7がNレンジからDレンジに切り替えられる場合、制御装置Eは、第一リニアソレノイドバルブ12を第一摩擦クラッチC1に対して第一指令圧PO1を出力させるように制御する。この制御により、第一リニアソレノイドバルブ12は、第一指令圧PO1を第一摩擦クラッチC1に出力する。これにより、第一摩擦クラッチC1は解放状態から係合状態に移行し、Dレンジ(第一速)を形成する。尚、第二摩擦ブレーキB2は、例えば、油圧源Yからライン圧PLが供給されており、係合状態になっている。従って、第一摩擦クラッチC1が係合状態に移行することで、Dレンジが形成される。
シフトレバー7がNレンジからDレンジに切り替えられる場合、アキュムレータ13は、第一接続油路11cを介して供給された前進レンジ圧PD(より詳しくは、前進レンジ圧PDに加圧された油液)を第一室13cに蓄圧する。ここで、シフトレバー7がNレンジからDレンジに切り替えられる場合、マニュアルバルブ25は、前進レンジ圧出力ポート25bから前進レンジ圧PDを第一レンジ圧供給油路11aにのみ出力する。換言すれば、シフトレバー7がNレンジからDレンジに切り替えられる場合、図6に示すように、マニュアルバルブ25は第二レンジ圧供給油路11dに対して何ら油圧を供給しないので、アキュムレータ13の第二室13dは前進レンジ圧PDよりも低い圧力(例えば、大気圧)に維持される。
従って、アキュムレータ13においては、第一接続油路11cを介して第一室13cに前進レンジ圧PDが供給されると、第一ピストン部材13b1がスプリング13hとともに第一室13cの圧力上昇に伴って第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて押圧する。そして、第二ピストン部材13b2が第二面13a3に当接すると、第一ピストン部材13b1は、スプリング13hを圧縮しながら更に第二面13a3に向けて移動し、第一ピストン部材13b1に形成された第一円筒部13b3と第二ピストン部材13b2に形成された第二円筒部13b4とが当接するまで移動する。これにより、アキュムレータ13は、シフトレバー7がNレンジからDレンジに切り替えられる場合において、前進レンジ圧PDを第一室13cに蓄圧することができる。
ここで、スプリング13hは、第一ピストン部材13b1の第一円筒部13b3及び第二ピストン部材13b2の第二円筒部13b4の内周側に収容されている。これにより、上述したように第一ピストン部材13b1によって圧縮された場合であっても、スプリング13hは、座屈することがなく、圧縮変形に伴う適正な弾性力、即ち、第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて付勢する付勢力を発生させることができる。
一方、シフトレバー7がDレンジからNレンジに切り替えられる場合、シフトレバー7の操作に連動してマニュアルバルブ25のスプール25aが変位する。これにより、第一レンジ圧供給油路11aはマニュアルバルブ25の前進レンジ圧出力ポート25bを介してマニュアルバルブ25のドレンポートに連通し、マニュアルバルブ25は第一レンジ圧供給油路11a内の前進レンジ圧PDの排出を開始する。
ここで、第一レンジ圧供給油路11aには、逆止弁15及びオリフィス16が設けられている。従って、第一レンジ圧供給油路11a、より厳密に、オリフィス16からマニュアルバルブ25に向けた第一レンジ圧供給油路11aの下流側においては、前進レンジ圧PDが速やかに低下する。一方、オリフィス16から第一リニアソレノイドバルブ12に向けた第一レンジ圧供給油路11aの上流側においては、下流側に比べて、前進レンジ圧PDが緩やかに低下する。
制御装置Eにおいては、シフトレバー7がDレンジからNレンジに切り替えられることに応じて、第一摩擦クラッチC1を係合状態から解放状態に切り替えるために、第一リニアソレノイドバルブ12の作動を制御する。即ち、制御装置Eは、第一リニアソレノイドバルブ12のドレンポート12cを介して第一指令圧PO1が排出されるように、第一リニアソレノイドバルブ12のリニアソレノイド12dを作動させる。
アキュムレータ13においては、第一ピストン部材13b1がスプリング13hの付勢力により第一室13cの容積を減少させるように移動する。これにより、アキュムレータ13は、第一ポート13e及び第一接続油路11cを介して、第一レンジ圧供給油路11aの上流側に対して、徐々に減少していく前進レンジ圧PDを加圧した第一アキュムレータ圧PA1を供給する。
このように、アキュムレータ13の第一室13cから第一アキュムレータ圧PA1が第一レンジ圧供給油路11aの上流側に供給されることにより、第一摩擦クラッチC1の油圧サーボにおける油圧変化(油圧低下)が緩やかになる。その結果、シフトレバー7がDレンジからNレンジに切り替えられる場合において、第一摩擦クラッチC1は係合状態から解放状態に緩やかに(滑らかに)移行する。そして、アキュムレータ13においては、図4に示すように、第一ピストン部材13b1が第一面13a2に当接すると、第一アキュムレータ圧PA1の供給を停止する。
<b.非走行レンジと後進レンジとの間の切り替え時>
シフトレバー7がNレンジからRレンジに切り替えられる場合、図7に示すように、マニュアルバルブ25においては、スプール25aがシフトレバー7の操作に連動して変位する。これにより、マニュアルバルブ25は、油圧源Yのオイルポンプ21から供給されたライン圧PLを入力し、コントロールバルブユニット11に対して、後進レンジ圧出力ポート25cから後進レンジ圧PRを供給する。具体的に、マニュアルバルブ25は、第二接続配管27を介して、コントロールバルブユニット11の第二レンジ圧供給油路11dに後進レンジ圧PRを供給する。
第二レンジ圧供給油路11dに供給された後進レンジ圧PR(より詳しくは、後進レンジ圧PRに加圧された油液)は、主として逆止弁17を通過して第二リニアソレノイドバルブ14及び第二レンジ圧供給油路11dに連通する第二接続油路11eを介してアキュムレータ13に供給される。
シフトレバー7がNレンジからRレンジに切り替えられる場合、制御装置Eは、第二リニアソレノイドバルブ14を第三摩擦クラッチC3に対して第二指令圧PO2を出力させるように制御する。この制御により、第二リニアソレノイドバルブ14は、第二指令圧PO2を第三摩擦クラッチC3に出力する。これにより、第三摩擦クラッチC3は解放状態から係合状態に移行し、Rレンジを形成する。尚、Rレンジにおいても、第二摩擦ブレーキB2は、例えば、油圧源Yからライン圧PLが供給されており、係合状態になっている。従って、第三摩擦クラッチC3が係合状態に移行することで、Rレンジが形成される。
シフトレバー7がNレンジからRレンジに切り替えられる場合、アキュムレータ13は、第二接続油路11eを介して供給された後進レンジ圧PR(より詳しくは、後進レンジ圧PRに加圧された油液)を第二室13dに蓄圧する。ここで、シフトレバー7がNレンジからRレンジに切り替えられる場合、マニュアルバルブ25は、後進レンジ圧出力ポート25cから後進レンジ圧PRを第二レンジ圧供給油路11dにのみ出力する。換言すれば、シフトレバー7がNレンジからRレンジに切り替えられる場合、図7に示すように、マニュアルバルブ25は第一レンジ圧供給油路11aに対して何ら油圧を供給しないので、アキュムレータ13の第一室13cは後進レンジ圧PRよりも低い圧力(例えば、大気圧)に維持される。
従って、アキュムレータ13においては、第二接続油路11eを介して第二室13dに後進レンジ圧PRが供給されると、第二ピストン部材13b2がスプリング13hとともに第二室13dの圧力上昇に伴って第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて押圧する。そして、第一ピストン部材13b1が第一面13a2に当接すると、第二ピストン部材13b2は、スプリング13hを圧縮しながら更に第一面13a2に向けて移動し、第二ピストン部材13b2に形成された第二円筒部13b4と第一ピストン部材13b1に形成された第一円筒部13b3とが当接するまで移動する。これにより、アキュムレータ13は、シフトレバー7がNレンジからRレンジに切り替えられる場合において、後進レンジ圧PRを第二室13dに蓄圧することができる。
ここで、スプリング13hは、第一ピストン部材13b1の第一円筒部13b3及び第二ピストン部材13b2の第二円筒部13b4の内周側に収容されている。これにより、上述したように第二ピストン部材13b2によって圧縮された場合であっても、スプリング13hは、座屈することがなく、圧縮変形に伴う適正な弾性力、即ち、第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて付勢する付勢力を発生させることができる。
一方、シフトレバー7がRレンジからNレンジに切り替えられる場合、シフトレバー7の操作に連動してマニュアルバルブ25のスプール25aが変位する。これにより、第二レンジ圧供給油路11dはマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cを介してマニュアルバルブ25のドレンポートに連通し、マニュアルバルブ25は第二レンジ圧供給油路11d内の後進レンジ圧PRの排出を開始する。
ここで、第二レンジ圧供給油路11dには、逆止弁17及びオリフィス18が設けられている。従って、第二レンジ圧供給油路11d、より厳密に、オリフィス18からマニュアルバルブ25に向けた第二レンジ圧供給油路11dの下流側においては、後進レンジ圧PRが速やかに低下する。一方、オリフィス18から第二リニアソレノイドバルブ14に向けた第二レンジ圧供給油路11dの上流側においては、下流側に比べて、後進レンジ圧PRが緩やかに低下する。
制御装置Eにおいては、シフトレバー7がRレンジからNレンジに切り替えられることに応じて、第三摩擦クラッチC3を係合状態から解放状態に切り替えるために、第二リニアソレノイドバルブ14の作動を制御する。即ち、制御装置Eは、第二リニアソレノイドバルブ14のドレンポート14cを介して第二指令圧PO2が排出されるように、第二リニアソレノイドバルブ14のリニアソレノイド14dを作動させる。
アキュムレータ13においては、第二ピストン部材13b2がスプリング13hの付勢力により第二室13dの容積を減少させるように移動する。これにより、アキュムレータ13は、第二ポート13f及び第二接続油路11eを介して、第二レンジ圧供給油路11dの上流側に対して、徐々に減少していく後進レンジ圧PRを加圧した第二アキュムレータ圧PA2を供給する。
このように、アキュムレータ13の第二室13dから第二アキュムレータ圧PA2が第二レンジ圧供給油路11dの上流側に供給されることにより、第三摩擦クラッチC3の油圧サーボにおける油圧変化(油圧低下)が緩やかになる。その結果、シフトレバー7がRレンジからNレンジに切り替えられる場合において、第三摩擦クラッチC3は係合状態から解放状態に緩やかに(滑らかに)移行する。そして、アキュムレータ13においては、図4に示すように、第二ピストン部材13b2が第二面13a3に当接すると、第二アキュムレータ圧PA2の供給を停止する。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態の自動変速機用油圧制御装置10は、油液を加圧してライン圧PLを供給する油圧源Yと、シフトレバー7の前進レンジ(Dレンジ)への操作に応じてライン圧PLから前進レンジ圧PDを生成して出力し、シフトレバー7の後進レンジ(Rレンジ)への操作に応じてライン圧PLから後進レンジ圧PRを生成して出力し、シフトレバー7の非走行レンジ(Nレンジ)への操作に応じて前進レンジ圧PD及び後進レンジ圧PRを排出するレンジ圧生成部としてのマニュアルバルブ25と、係合状態又は解放状態に切り替えられることにより前進レンジ(Dレンジ)における変速段を形成する第一摩擦係合要素としての第一摩擦クラッチC1、及び、係合状態又は解放状態に切り替えられることにより後進レンジ(Rレンジ)における変速段を形成する第二摩擦係合要素としての第三摩擦クラッチC3と、を備えた自動変速機に適用され、マニュアルバルブ25に連通する第一接続配管26に接続されて前進レンジ圧PDが供給される第一レンジ圧供給油路11a、マニュアルバルブ25に連通する第二接続配管27に接続されて後進レンジ圧PRが供給される第二レンジ圧供給油路11d、第一レンジ圧供給油路11aを介して供給された前進レンジ圧PDから第一指令圧PO1を生成して第一指令圧PO1を第一摩擦クラッチC1に出力する第一電磁弁としての第一リニアソレノイドバルブ12、及び、第二レンジ圧供給油路11dを介して供給された後進レンジ圧PRから第二指令圧PO2を生成して第二指令圧PO2を第三摩擦クラッチC3に出力する第二電磁弁としての第二リニアソレノイドバルブ14を有するコントロールバルブユニット11を備えた自動変速機用油圧制御装置である。
コントロールバルブユニット11は、一端側が第一レンジ圧供給油路11aに連通する第一接続油路11cに接続されるとともに他端側が第二レンジ圧供給油路11dに連通する第二接続油路11eに接続されたシリンダ13aと、シリンダ13aの内部にて、第一接続油路11cに連通する第一室13cを液密に区画する第一ピストン部材13b1及び第二接続油路11eに連通する第二室13dを液密に区画する第二ピストン部材13b2から構成されるピストン13bと、シリンダ13aの軸方向にて互いに対向して第一室13cを形成する第一面13a2及び第二室13dを形成する第二面13a3のうちの第一面13a2に向けて第一ピストン部材13b1を付勢するとともに第二面13a3に向けて第二ピストン部材13b2を付勢するように第一ピストン部材13b1と第二ピストン部材13b2との間に配置された付勢部材としてのスプリング13hと、を有するアキュムレータ13を備える。
そして、この構成において、アキュムレータ13は、マニュアルバルブ25から第一レンジ圧供給油路11aを介して第一リニアソレノイドバルブ12に前進レンジ圧PDが供給されているときに、第一ピストン部材13b1がスプリング13hとともに第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて押圧して第一室13cに前進レンジ圧PDを蓄圧するとともに、マニュアルバルブ25が第一リニアソレノイドバルブ12から前進レンジ圧PDを排出しているときに、スプリング13hによって押圧された第一ピストン部材13b1が第一面13a2に向けて移動して蓄圧した前進レンジ圧PDを加圧した第一アキュムレータ圧PA1を第一リニアソレノイドバルブ12に供給し、マニュアルバルブ25から第二レンジ圧供給油路11dを介して第二リニアソレノイドバルブ14に後進レンジ圧PRが供給されているときに、第二ピストン部材13b2がスプリング13hとともに第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて押圧して第二室13dに後進レンジ圧PRを蓄圧するとともに、マニュアルバルブ25が第二リニアソレノイドバルブ14から後進レンジ圧PRを排出しているときに、スプリング13hによって押圧された第二ピストン部材13b2が第二面13a3に向けて移動して蓄圧した後進レンジ圧PR加圧した第二アキュムレータ圧PA2を第二リニアソレノイドバルブ14に供給するように構成される。
これらによれば、アキュムレータ13は、シフトレバー7のDレンジへの操作に応じてマニュアルバルブ25が第一レンジ圧供給油路11aに前進レンジ圧PDを供給しているときには、第一室13cに前進レンジ圧PDを蓄圧することができる。そして、アキュムレータ13は、シフトレバー7のDレンジからNレンジへの操作に応じてマニュアルバルブ25が第一レンジ圧供給油路11a即ち第一リニアソレノイドバルブ12から前進レンジ圧PDを排出しているときには、第一室13cから第一アキュムレータ圧PA1を第一リニアソレノイドバルブ12に供給することができる。
又、アキュムレータ13は、シフトレバー7のRレンジへの操作に応じてマニュアルバルブ25が第二レンジ圧供給油路11dに後進レンジ圧PRを供給しているときには、第二室13dに後進レンジ圧PRを蓄圧することができる。そして、アキュムレータ13は、シフトレバー7のRレンジからNレンジへの操作に応じてマニュアルバルブ25が第二レンジ圧供給油路11d即ち第二リニアソレノイドバルブ14から後進レンジ圧PRを排出しているときには、第二室13dから第二アキュムレータ圧PA2を第二リニアソレノイドバルブ14に供給することができる。
従って、アキュムレータ13は、第一室13c又は第二室13dへの蓄圧作動及び第一アキュムレータ圧PA1又は第二アキュムレータ圧PA2の供給作動において、別途切り替えのための機器や制御を必要とすることなく、マニュアルバルブ25による前進レンジ圧PDの供給、後進レンジ圧PRの供給、又は、前進レンジ圧PD及び後進レンジ圧PRの排出に対応して作動することができる。これにより、第一リニアソレノイドバルブ12及び第二リニアソレノイドバルブ14は極めて簡素な構成によってアキュムレータ13を共用することができ、その結果、アキュムレータの数を減らして自動変速機用油圧制御装置10の小型化を達成することができる。
又、アキュムレータ13は、DレンジからNレンジ又はRレンジからNレンジの切り替えに応じて、適切に第一アキュムレータ圧PA1と第二アキュムレータ圧PA2とを切り替えて、第一摩擦クラッチC1又は第三摩擦クラッチC3に供給することができる。従って、第一摩擦クラッチC1又は第三摩擦クラッチC3に供給される第一指令圧PO1又は第二指令圧PO2の急激な低下を抑制することができ、レンジ切替に伴うショックの発生をより効果的に抑制することができる。
更に、第一リニアソレノイドバルブ12と第二リニアソレノイドバルブ14とがアキュムレータ13を共用して自動変速機用油圧制御装置10におけるアキュムレータの数を減らすことにより、例えば、シリンダ13aの加工数やシリンダ13aを密閉するキー部材13a1等の構成部品の数を大幅に低減することができる。これにより、自動変速機用油圧制御装置10の製造コストの増大を抑制することができる。
この場合、第一ピストン部材13b1は、シリンダ13aの内部に第一室13cを形成した状態で、第二ピストン部材13b2に向けて立設された第一円筒部13b3を有する有底筒状に形成されており、第二ピストン部材13b2は、シリンダ13aの内部に第二室13dを形成した状態で、第一ピストン部材13b1に向けて立設された第二円筒部13b4を有する有底筒状に形成されており、スプリング13hが、第一円筒部13b3及び第二円筒部13b4の内周側に収容される。
これによれば、第一円筒部13b3及び第二円筒部13b4は、スプリング13hが第一ピストン部材13b1又は第二ピストン部材13b2によって圧縮された場合において、スプリング13hが座屈することを防止することができる。これにより、スプリング13hは第一ピストン部材13b1及び第二ピストン部材13b2を適切に押圧することができる。従って、アキュムレータ13は、確実に第一室13c又は第二室13dに前進レンジ圧PDまたは後進レンジ圧PRを蓄圧することができ、適切な大きさの第一アキュムレータ圧PA1又は第二アキュムレータ圧PA2を供給することができる。
又、第一円筒部13b3及び第二円筒部13b4によってスプリング13hの座屈及び組み付け姿勢を維持することができるため、別途、スプリング13hを保持する部材を設ける必要がない。従って、これによっても、自動変速機用油圧制御装置10の製造コストの増大を抑制することができる。
又、これらの場合、第一接続油路11cの第一レンジ圧供給油路11aに対する接続位置Saとマニュアルバルブ25との間、及び、第二接続油路11eの第二レンジ圧供給油路11dに対する接続位置Sbとマニュアルバルブ25との間にて、マニュアルバルブ25から第一リニアソレノイドバルブ12及び第二リニアソレノイドバルブ14に向けての油液の流れを許容し、第一リニアソレノイドバルブ12及び第二リニアソレノイドバルブ14からマニュアルバルブ25に向けての油液の流れを禁止する逆止弁15及び逆止弁17と、逆止弁15を迂回する第一迂回油路11g及び逆止弁17を迂回する第二迂回油路11hに油液の流れを絞るオリフィス16及びオリフィス18と、を設けることができる。
これによれば、第一レンジ圧供給油路11aの上流側における前進レンジ圧PD及び第一アキュムレータ圧PA1の低下や、第二レンジ圧供給油路11dの上流側における後進レンジ圧PR及び第二アキュムレータ圧PA2の低下を、第一レンジ圧供給油路11aの下流側における前進レンジ圧PDの低下や、第二レンジ圧供給油路11dの下流側における後進レンジ圧PRの低下よりも緩やかにすることができる。これにより、第一リニアソレノイドバルブ12を介して第一摩擦クラッチC1に供給される第一指令圧PO1及び第二リニアソレノイドバルブ14を介して第三摩擦クラッチC3に供給される第二指令圧PO2の急激な低下をより抑制することができ、レンジ切替に伴うショックの発生をより効果的に抑制することができる。
(実施形態の変形例)
上記実施形態においては、第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて付勢するとともに、第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて付勢するように、一つのスプリング13hを設けるようにした。これに代えて、図8に示すように、シリンダ13aの内周面に内方に向けて突出する凸部13a4を形成し、付勢部材として、凸部13a4と第一ピストン部材13b1との間に配置されて第一ピストン部材13b1を第一面13a2に向けて付勢する第一付勢部材としての第一スプリング13iと、凸部13a4と第二ピストン部材13b2との間に配置されて第二ピストン部材13b2を第二面13a3に向けて付勢する第二付勢部材としての第二スプリング13jと、から構成することも可能である。尚、この場合において、第一スプリング13iは第一円筒部13b3の内周側に収容され、第二スプリング13jは第二円筒部13b4の内周側に収容される。
このように、シリンダ13aの内周面に内方に向けて突出する凸部13a4を設けて、付勢部材を第一付勢部材としての第一スプリング13i及び第二付勢部材としての第二スプリング13jから構成した場合には、アキュムレータ13から供給される第一アキュムレータ圧PA1の大きさと第二アキュムレータ圧PA2の大きさ、とを容易に異ならせることができる。即ち、第一スプリング13iの付勢力(より詳しくは、弾性係数)と第二スプリング13jの付勢力(より詳しくは、弾性係数)とを異ならせることにより、第一アキュムレータ圧PA1の大きさと第二アキュムレータ圧PA2の大きさを任意に設定することができる。
これにより、例えば、第一リニアソレノイドバルブ12が要求する油圧の大きさと、第二リニアソレノイドバルブ14が要求する油圧の大きさと、が異なる場合であっても、極めて容易に且つ簡素な構成により、アキュムレータ13は第一アキュムレータ圧PA1又は第二アキュムレータ圧PA2を供給することができる。
本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記実施形態及び変形例においては、第一ピストン部材13b1に第一円筒部13b3を設けるとともに第二ピストン部材13b2に第二円筒部13b4を設けるようにした。これに代えて、図9に示すように、第一ピストン部材13b1及び第二ピストン部材13b2に対して、スプリング13h、第一スプリング13i及び第二スプリング13jを保持するばね座13b5及びばね座13b6を形成して、第一円筒部13b3及び第二円筒部13b4を省略することも可能である。
又、上記実施形態及び上記変形例においては、アキュムレータ13に接続されて第一アキュムレータ圧PA1が供給される第一摩擦係合要素として第一摩擦クラッチC1及び第二アキュムレータ圧PA2が供給される第二摩擦係合要素として第三摩擦クラッチC3を例示して説明した。しかしながら、自動変速機1を構成する他の摩擦係合要素(第二摩擦クラッチC2、第一摩擦ブレーキB1及び第二摩擦ブレーキB2)にアキュムレータ13を接続し、これらの摩擦係合要素に第一アキュムレータ圧PA1または第二アキュムレータ圧PA2を供給することも可能である。
更に、上記実施形態及び上記変形例においては、第一摩擦クラッチC1が第一指令圧PO1の供給に伴って解放状態から係合状態に移行するノーマルオープンタイプの摩擦クラッチ(摩擦係合要素)であるとした。又、第三摩擦クラッチC3が第二指令圧PO2の供給に伴って解放状態から係合状態に移行するノーマルオープンタイプの摩擦クラッチ(摩擦係合要素)であるとした。これに代えて、第一摩擦クラッチC1及び第三摩擦クラッチC3が第一指令圧PO1及び第二指令圧PO2の供給に伴って係合状態から解放状態に移行するノーマルクローズタイプの摩擦クラッチ(摩擦係合要素)とすることも可能である。