JP2019038981A - 防曇剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い防曇性能を発揮することを可能とし、かつ、高い貯蔵安定性を有する防曇剤組成物と、それより形成される塗膜の提供を目的とする。【解決手段】(A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位及びアミド基を有する単量体に由来する構成単位を有する(メタ)アクリル系樹脂と、(B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、(C)シクロアミジン系化合物と、(D)有機酸化合物と、を含む、防曇剤組成物である。【選択図】なし

Description

本明細書は、貯蔵安定性に優れた防曇剤組成物に関する。
自動車の前照灯などの照明装置は、光源の前方にガラスやプラスチックなどで形成される透明部材が配置され、光源が発する光が透明部材を介して外部に照射されるように構成されている。このような照明装置では、例えば、透明部材の内側に曇りが発生する場合に、照射光の強度が低下するとともに、照射光の美観が損なわれることがある。そこで、こうした透明部材の内側には、曇りを防止するためのコーティング剤が塗布されていることがある。
特許文献1には、(メタ)アクリル系共重合体と、多官能ブロックイソシアネート化合物と、界面活性剤(アニオン系界面活性剤とベタイン系界面活性剤)からなる防曇剤組成物が開示されている。
特許文献2には、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、特定のN−置換アルキル(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリレート単量体の共重合から得られるイソシアネート基を有する共重合体と水酸基価150〜650mgKOH/gのポリオールを反応して得られる単位面積当たり1〜100g/mの吸水特性を有する防曇組成物層から構成される積層防曇フィルムが開示されている。
特開2016−169287号公報 特開2014−117839号公報
前記公知の組成物は、貯蔵安定性は良好であるものの高温での焼き付けが必要であったり(特許文献1)、低温での硬化が可能であるものの、貯蔵安定性が悪いなど(特許文献2)、必ずしも満足できるものではなかった。すなわち、防曇剤組成物の貯蔵安定性と、穏やかな環境(低温)での硬化塗膜形成はトレードオフの関係にあり、貯蔵安定性が優れ、かつ、穏やかな環境(低温)で硬化塗膜を形成する防曇剤組成物を得ることは困難であった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、(A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位、アミド基を有する単量体に由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂と、(B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、(C)シクロアミジン系化合物と、(D)有機酸化合物と、を組み合わせることにより、貯蔵安定性が良好で低温硬化可能な防曇剤組成物を得ることが出来た。
本明細書によれば、
(A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位、アミド基を有する単量体に由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂と、
(B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、
(C)シクロアミジン系化合物と、
(D)有機酸化合物と、を含み、
前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合が30質量%以上90質量%以下であり、
かつ、前記(メタ)アクリル系樹脂100gあたりに含まれる前記アセトアセトキシ基が15mmol以上280mmol以下である、
防曇剤組成物が提供される。
本発明によれば、高い防曇性能を発現する塗膜を得ることが出来、かつ、低温硬化性と貯蔵安定性が優れた防曇剤組成物を提供することが出来る。
本発明の効果の発現機構は定かではないが、以下のように推定される。
本発明の防曇剤組成物から形成される塗膜は、高い防曇性能を有している。通常、曇りは塗膜表面に細かな水滴が付着し、その水滴に光が乱反射することで発生する。本発明の防曇剤組成物から形成される塗膜は、水蒸気が当てられた際、(A)樹脂に存在するアミド基の作用によって水蒸気(水分)が吸収されるため、塗膜表面への水滴の付着を防ぐことが出来、曇りによる視認性の悪化を防止することができると推定される。
また、本発明の防曇剤組成物における(A)樹脂と(B)化合物は、(A)樹脂中のアセトアセトキシ基と(B)化合物中のアクリレート基のマイケル付加反応を利用し硬化塗膜を形成する。(C)成分は、その反応の「触媒」となり低温条件下での硬化塗膜形成に寄与すると推測される。さらに、(D)成分は「安定化剤」として貯蔵中のマイケル付加反応を抑制し、貯蔵安定性に寄与すると推定される。前記のメカニズムによって、本発明の防曇剤組成物は、良好な貯蔵安定性と穏やかな環境(低温条件)下での硬化塗膜形成という、相反する特性を両立することが出来た。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書中において、「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。また本実施形態の防曇剤組成物のことを、単に「本防曇剤組成物」と呼ぶこともある。
<防曇剤組成物>
本発明における防曇剤組成物は、
(A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位及びアミド基を有する単量体に由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂と、
(B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、
(C)シクロアミジン系化合物と、
(D)有機酸化合物と、を含み、
前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合が30質量%以上90質量%以下であり、
かつ、前記(メタ)アクリル系樹脂100gあたりに含まれる前記アセトアセトキシ基が15mmol以上280mmol以下である。
以下で、本発明における本防曇剤組成物の各成分について説明する。
<(A)(メタ)アクリル系樹脂>
本防曇剤組成物は(メタ)アクリル系樹脂を含む。
本発明における(メタ)アクリル系樹脂としては、(а−1)アセトアセトキシ基を有する単量体と、(a−2)アミド基を有する単量体と、必要に応じて(a−3)その他の単量体を共重合する事で得られる樹脂化合物を採用できる。
[(a−1)アセトアセトキシ基を有する単量体]
(a−1)アセトアセトキシ基を有する単量体は、一般式(1)に示すアセトアセトキシ基を有するエチレン性不飽和化合物である。
(*は結合手を示す。)
アセトアセトキシ基を有する単量体は、硬化塗膜の形成に寄与し、本防曇剤組成物から得られる塗膜に耐水性を付与することが出来る。本防曇剤組成物は、防曇性能に寄与する(A)樹脂のアミド基が多いと、得られる塗膜は耐水性が悪くなる傾向があるが、アセトアセトキシ基を有することで、耐水性を向上することが出来る。アセトアセトキシ基は、後述する(B)多官能アクリレートのアクリレート基とマイケル付加反応し硬化塗膜の形成に寄与すると推定される。すなわち(A)樹脂が有するアセトアセトキシ基は、マイケル付加反応における「反応点」となる。
(a−1)アセトアセトキシ基を有する単量体としては、一般式(1)に示すアセトアセトキシ基を有するエチレン性不飽和化合物であれば、特に限定はしないが、例えば、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アセトキシ基を有する単量体の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全単量体100質量%に対して、3〜60質量%であることが好ましく、5〜55質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。アセトキシ基を有する単量体の含有量は、3質量%以上では本防曇剤組成物が低温条件化でも硬化塗膜を形成し、その塗膜の耐水性が向上する傾向があり、60質量%以下では、塗膜の防曇性が向上する傾向がある。
[(а−2)アミド基を有する単量体]
アミド基を有する単量体は、一般式(2)で示すアミド基を有するエチレン性不飽和化合物である。
(R及びRは水素原子又は、炭素数1以上の炭素水素基を示し、*は結合手を示す。)
アミド基を有する単量体は(メタ)アクリル系樹脂に吸湿性を付与し、本防曇剤組成物から得られる塗膜に防曇性能を付与することが出来る。また、後述する(E)界面活性剤が持つ効果と相まって、本防曇剤組成物から形成される塗膜の防曇性能を、より一層向上させることが出来る。
また、一般的にアミド結合は、エステル結合と比較し加水分解を受けにくい。そのため、アミド基を有する単量体を用いると、シクロアミジン系化合物といった強塩基を触媒として用いた場合でも塗膜が劣化しにくいという利点もある。
アミド基を有する単量体としては般式(2)で示すアミド基を有するエチレン性不飽和化合物であれば、特に限定はしないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アミド基を有する単量体は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
N−置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、水酸基含有(メタ)アクリルアミド、カルボニル基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
カルボニル基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
以上で列挙したもののほか、例えば、N−アリル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド等も挙げられる。
アミド基を有する単量体は、N−置換(メタ)アクリルアミドを含むことが好ましく、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含むことがより好ましく、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド又はN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドを含むことがさらに好ましく、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドを含むことが特に好ましい。
アミド基を有する単量体の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全単量体100質量%に対して、30〜90質量%であることが好ましく、35〜80質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。アミド基を有する単量体の含有量は、30質量%未満では、本防曇剤組成物から得られる塗膜の防曇性が十分にならず、90質量%を超えると、他の単量体を含む余地がなく塗膜の耐水性が劣る傾向がある。
[(а−3)その他の単量体]
(メタ)アクリル系樹脂は、(a−1)、(a−2)に加えて、必要に応じて(a−3)その他の単量体に由来する構成単位を有していても良い。
(a―3)その他の単量体は、(a−1)、(a−2)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物である。
(a―3)その他の単量体は、(メタ)アクリル系樹脂と後述する多官能アクリレート化合物との相溶性の調整や、合成される(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)の調整など、本防曇剤組成物の各種特性の調整のために使用する。
その他の単量としては、(а―1)、(а―2)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物であれば、特に限定はしないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マクロモノマー、窒素含有(メタ)アクリル酸エステル、その他のビニル系単量体等が挙げられる。その他の単量体は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有アルキル基、水酸基含有アリール基又は水酸基含有アリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有アルキル基、水酸基含有アリール基又は水酸基含有アリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが有するアルキル基や芳香環に水酸基が結合したもの、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
マクロモノマーとしては、例えば、片末端(メタ)アクリレート変性ポリアルキレングリコール、片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
片末端(メタ)アクリレート変性ポリアルキレングリコールとしては、例えば、新中村化学製NKエステル20G、40G、90G、230G、日油株式会社製日油ブレンマーPEシリーズ及びAEシリーズ等が挙げられる。
片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンとしては、例えば、JNC株式会社製サイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725等、信越化学工業株式会社製X−22−174DX、X−22−2426等、及び、東亞合成株式会社製AK−5、AK−32等が挙げられる。
窒素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの各種ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他のビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルや、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはジビニルベンゼンなどの各種スチレン系芳香族単量体(芳香族ビニル系単量体)ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネートなどのマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などによって代表される各種のジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル等が挙げられる。
その他の単量体としては、(a−1)、(a−2)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物であれば、特に限定はしないが、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであれば、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を調整することが容易となる。アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の構成単位となるその他の単量体の含有量は、該樹脂を構成する全単量体100質量%に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
その他の単量体は、70質量%以下であれば、(メタ)アクリル系樹脂と多官能アクリレート化合物との相溶性を調整したり、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)の調整を容易にできる。
また、本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐擦傷性を向上するという観点からその他の単量体として、片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンを含むことが好ましい。片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンは、ポリジメチルシロキサンの構造単位を有するものであれば、特に限定はしないが、例えば、下記の一般式に(3)に表される片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンを含むことが好ましい。
(nは1以上の整数である。Rは水素原子または、メチル基を示す。Rは2価の有機基であれば、特に限定はしないが、アルキレン基であることが好ましい)
片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンが有するポリジメチルシロキサンは、極性が低いため塗膜表面に配向して、塗膜の摩擦抵抗を下げ、例えば、塗膜に衝撃が与えられたとき、衝撃そのものを逃がすことが出来ると考えられる。そのため、片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンは、本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐擦傷性を向上することが出来る。
片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、500〜40,000であることが好ましく、1,000〜20,000であることがより好ましく、3,000〜10,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が500以上であると塗膜の摩擦抵抗を低下させることができ、重量平均分子量が40,000以下では、相溶性が良好となりやすく塗膜の透明性が向上する傾向がある。
片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンの含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全単量体100質量%に対して、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましい。
片末端(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンの含有量は、0.5質量%以上であれば、本防曇剤組成物から得られる塗膜の摩擦抵抗を低下させることができ、30質量%以下であれば相溶性が良好になりやすく、透明な塗膜を得ることが出来る。
[(A)(メタ)アクリル系樹脂の重合について]
((メタ)アクリル系樹脂の重合)
(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、(a−1)アセトアセトキシ基を有する単量体、(а−2)アミド基を有する単量体、必要に応じて、(а−3)その他の単量体を混合した単量体混合物を有機溶剤に溶解又は分散し、重合開始剤の存在下、反応温度は80℃〜200℃程度、反応時間は1〜10時間程度で撹拌しながら加熱することによって得ることができる。(メタ)アクリル系樹脂は、ラジカル重合反応で得られてもよく、アニオン重合反応のようなイオン重合反応で得られた樹脂であってもよい。
(重合反応に用いられる有機溶剤)
上記反応に用いられる有機溶剤(以下、重合溶剤いう)としては、特に限定はしないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アセテート類、芳香族などが、挙げられる。重合溶剤は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、オクタノール、ノナノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、酢酸エチレングリコール、酢酸ジエチレングリコール等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、クラウンエーテル、ベンジルエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、二塩基酸エステル類等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
アセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
芳香族としては、例えばキシレン、トルエン等が挙げられる。
後述するように、本防曇剤組成物を塗料として用いる場合の重合溶剤は、上記の有機溶剤であれば、特に限定はしないが、エーテル類、ケトン類、アセテート類が好ましい。
これらの重合溶剤は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
後述するように、本防曇剤組成物をインキとして用いる場合の重合溶剤は、上記の有機作用剤であれば、特に限定はしないが、沸点が150℃以上の有機溶剤が含まれることが好ましく、沸点が180℃以上の有機溶剤が含まれることがより好ましく、シクロヘキサノン、二塩基酸エステル類等が特に好ましい。これらの重合溶剤は、1種類に限らず複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
本防曇剤組成物をインキとして用いる場合の重合溶剤は、シクロヘキサノンや二塩基酸エステル類といった高沸点の有機溶剤が好ましい。
重合溶剤に沸点の高い有機溶剤は、インキの乾燥性を遅らせ、印刷適性が向上する。
(重合開始剤)
重合開始剤は、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等の一般的な重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
アゾ系重合開始剤としては、例えば、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス−2−メチルブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂の性質について、ガラス転移温度(Tg)が20〜120℃であることが好ましく、40〜110℃であることがより好ましく、45〜100℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が20℃以上では、本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐水性が向上する傾向があり、120℃以下では、塗膜の耐擦傷性が向上する。
本防曇剤組成物における(メタ)アクリル系樹脂100gあたりに含まれる、アセトアセトキシ基の数(以下、[X]という)は、15〜280mmolであることが好ましい。さらに20〜260mmolであることが好ましく、特に45〜190mmolであることが好ましい。
(メタ)アクリレート系樹脂に含まれるアセトアセトキシ基は、後述する多官能アクリレート化合物のアクリレート基と反応し、本防曇剤組成物の硬化塗膜の形成に寄与する。すなわち、アセトアセトキシ基の数[X]は、(メタ)アクリル樹脂中の「反応点」の数を表している。
(メタ)アクリル系樹脂100gあたりの[X]が、15mmol未満では、十分な硬化塗膜を得ることが出来ず耐水性が劣り、280mmol超えると(a−2)の成分を含む余地が少なるため防曇性が劣る傾向がある。
(メタ)アクリル系樹脂の数平均分子量(以下、Mnという)は、好ましくは、1,000〜100,000であり、より好ましくは1,500〜50,000であり、重量平均分子量(以下、Mwという)は5,000〜200,000であることが好ましく、8,000〜100,000であることがより好ましい。
Mnが1,000以上、Mwが5,000以上であると、本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐水性、防曇性が向上し、Mnが100,000以下、Mwが200,000以下では、本防曇剤組成物を塗布する時の作業性が向上する傾向がある。
特に、防曇剤組成物を塗料用として用いる場合、(メタ)アクリル系樹脂のMnは、4,000〜100,000であることが好ましく、7,000〜50,000であることがより好ましく、Mwは、8,000〜200,000であることが好ましく、14,000〜100,000であることがより好ましい。Mnが4,000〜100,000、Mwが8,000〜200,000といった範囲では、防曇剤組成物を塗装する際に作業性が向上する傾向がある。
同様に、防曇剤組成物をインキとして用いる場合、(メタ)アクリル系樹脂のMnは、1,000〜50,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましく、Mwは、5,000〜70,000であることが好ましく、7,000〜50,000であることがより好ましく9,000〜30,000であることがさらに好ましい。Mnが4,000〜100,000、Mwが8,000〜70,000といった範囲では、防曇剤組成物を印刷するときに、印刷適性が向上する傾向がある。
<(B)多官能アクリレート化合物>
本防曇剤組成物は(B)多官能アクリレート化合物を含む。
多官能アクリレート化合物は、一般式(4)に示すアクリレート基を1分子内に2個以上有する化合物である。
(*は結合手を示す)
多官能アクリレート化合物のアクリレート基は、(メタ)アクリル系樹脂のアセトアセトキシ基とマイケル付加反応する。すなわち、多官能アクリレート化合物は、硬化塗膜の形成に寄与し、本防曇剤組成物から得られる塗膜に耐水性を付与する。
多官能アクリレート化合物は、一般式(4)に表されるようなアクリレート基を1分子内に2個以上有する化合物であれば、特に限定はしないが、例えば、1分子中にアクリレート基を2個有する2官能アクリレートモノマー、1分子内にアクリレート基を3個以上有する多官能アクリレートモノマー、多官能アクリレートオリゴマー、多官能アクリレートポリマー等が挙げられる。多官能アクリレート化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
2官能アクリレートモノマーとしては、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
多官能アクリレートモノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールグリシジルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリアクリレート及びトリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等のポリアルキレングリコール変性トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサアクリレート等が挙げられる。
多官能アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。多官能アクリレートオリゴマーは、自ら製造しても良いし、市販品を用いても良い。
多官能アクリレートポリマーとしては、例えば、アクリルアクリレート系樹脂等が挙げられる。多官能アクリレートポリマーは、自ら製造しても良いし、市販品を用いても良い。
アクリルアクリレート系樹脂としては、例えば、グリシジル基を有する単量体を共重合した(メタ)アクリル系樹脂のグリシジル基にカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートを付加したもの、またはカルボキシ基を有する単量体を共重合した(メタ)アクリル系樹脂にグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを付加したもの、水酸基を有する単量体を共重合した(メタ)アクリル系樹脂の水酸基に、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを付加したもの、又は、イソシアネート基を有する単量体を共重合した(メタ)アクリル系樹脂に水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加したもの等が挙げられる。
アクリルアクリレート系樹脂は、自ら製造しても良いし、市販品を用いても良い。
多官能アクリレート化合物は、3個以上有するものが好ましく、より具体的には、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレートから選ばれる1種類以上であることがさらに好ましい。これらの多官能アクリレートを用いることで、本防曇剤組成物は、硬化塗膜を形成し、塗膜に十分な耐水性を付与することが出来る。
また、別の観点から、多官能アクリレート化合物は、「特定の化学構造」を導入することで、本防曇剤組成物から得られる塗膜にさらに機能を持たせることもできる。
「特定の化学構造」としては、例えば、ε−カプロラクトン由来の構造(下記の一般式(5)で表される構造)、アルキレンオキサイド構造(下記の一般式(6)で表される構造)等が挙げられる。これらの「特定の化学構造」は本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐擦傷性を向上することが出来る。多官能アクリレート化合物は、これらの「特定の化学構造」を単独で有していても良いし、併有していても良い。
(式中のnはε-カプロラクトンを開環した構造の繰返し単位数であり、nは1以上である。*は結合手を示す。)
(式中のnはアルキレンオキサイド構造の繰り返し単位数であり、nは1以上の整数である。Rはアルキレン基を示し、*は結合手を示す。)
これらの「特定の化学構造」は、適度に柔軟で弾力性を有しているため、塗膜の柔軟性、弾力性を高めることが出来、外力を吸収し塗膜への傷を残りにくくすると推定される。
「特定の化学構造」を有する多官能アクリレート化合物は、公知の方法で製造でき、自ら製造しても良いし、市販のものを使用しても良い。
ε−カプロラクトン由来の構造を有する多官能アクリレート化合物を自ら製造する場合は、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることで得ることが出来る。
ここでポリイソシアネート化合物としては、2個以上のイソシアネート基を有すれば、特に限定はしないが、芳香族系ジイソシアネート、非環式脂肪族系ジイソシアネート、脂環式系ジイソシアネート等のジイソシアネートを用いて、アロファネート構造、ヌレート構造、ビウレット構造等を有する多量体化したポリイソシアネート系化合物が挙げられる。
芳香族系ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
非環式脂肪族系ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
脂環式系ジイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物の中でも、非環式脂肪族系ジイソシアネートが好ましく、その中でも、非環式脂肪族系ジイソシアネート用いて得られるポリイソシアネート系化合物がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いて得られるポリイソシアネート系化合物がさらに好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型多量体またはヌレート型多量体が特に好ましい。
ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートしては、例えば、株式会社ダイセル製「プラクセルFAシリーズ」が挙げられる。より具体的には、プラクセFA1、プラクセルFA1D、プラクセルFA2D、プラクセルFA5、プラクセルFA10L等が挙げられる。
ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートは、ポリカプロラクトンの付加モル数が1〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。この範囲であれば、本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐擦傷性が向上する傾向がある。
市販品のε−カプロラクトン由来の構造を有する多官能アクリレート化合物としては、例えば、NK−エステルA−9300−1CL、NK−エステルA−9300−3CL(新中村化学工業株式会社製)、KAYARAD DPCA(日本化薬製)などが挙げられる。
アルキレンオキサイド構造を有する多官能アクリレート化合物、例えば、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と ポリエチレングリコールモノアクリレートを反応させることで得ることが出来る。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、上記のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物の中でも、非環式脂肪族系ジイソシアネートが好ましく、その中でも、非環式脂肪族系ジイソシアネート用いて得られるポリイソシアネート系化合物がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いて得られるポリイソシアネート系化合物がさらに好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型多量体またはヌレート型多量体が特に好ましい。
ポリエチレングリコールモノアクリレートしては、例えば、日油株式会社製「ブレンマーAEシリーズ」、AE−90、AE−200、AE−400等が挙げられる。
ポリエチレングリコールモノアクリレートは、ポリエチレングリコールの付加モル数が、1〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。この範囲であれば、本防曇剤組成物から得られる塗膜の耐擦傷性が向上する傾向がある。
市販品のアルキレンオキサイド構造を持つ多官能アクリレート化合物としては、例えば新中村化学工業製NK−エステルATM−35E、NKエステルA−9300、NK−エステルA−GLY−9E、日本化薬製KAYARAD RP−1040、ダイセル・オルネクス株式会社製EBECRYL135等が挙げられる。
本防曇剤組成物における多官能アクリレート化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは1.5〜90質量部、さらに好ましくは10〜80質量部である。1質量部以上では低温条件下でも硬化塗膜を得ることが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向があり、100質量部以下では貯蔵安定性が向上する傾向がある。
多官能アクリレート化合物のアクリレート基は、(メタ)アクリル系樹脂に含まれるアセトアセトキシ基と反応し、硬化塗膜を形成する。
(メタ)アクリル系樹脂中のアセトアセトキシ基と多官能アクリレート化合物中のアクリレート基との比は、式(1):
[(B)化合物中のアクリレート基の数]/[(A)樹脂中のアセトアセトキシ基の数]・・・(1)
で表すことが出来る。
式(1)で求められる値が1の時は、本防曇組成物中のアクリレート基の数とアセトアセトキシ基の数が等しいことを表している。
式(1)で求められる値が0.1〜3.0であることが好ましく、0.2〜2.5であることがより好ましく、0.5〜2.0であることがさらに好ましい。
式(1)で求められる値が、0.1以上では、本防曇剤組成物は低温条件下でも硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向があり、3.0以下では貯蔵安定性が向上する傾向がある。
<(C)シクロアミジン系化合物>
本防曇剤組成物は、(C)シクロアミジン系化合物を含む。
シクロアミジン系化合物は、シクロアミジン骨格を有する化合物である。
シクロアミジン系化合物は、アセトアセトキシ基とアクリレート基のマイケル付加反応の「触媒」になる。本防曇剤組成物は、シクロアミジン系化合物の触媒効果によって低温条件下で硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向がある。
シクロアミジン系化合物としては、例えば、シクロアミジン類、シクロアミジン類の塩等が挙げられる。シクロアミジン系化合物は1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
シクロアミジン類としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)系と1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)系と1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)系等が挙げられる。
1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)系としては、例えば、6−(ジブチルアミノ)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBA−DBU)、6−(2−ヒドロキシプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(OH−DBU)、OH−DBUの水酸基をウレタン化等で変性した化合物等が挙げられる。
1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)系としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)等が挙げられる。
1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)系としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)等が挙げられる。
シクロアミジン類の塩としては、例えば、DBU系の塩、DBN系の塩等が挙げられる。
DBU系の塩としては、例えば、DBUのフェノール塩(商品名:U−CAT SA1(サンアプロ株式会社製))、DBUのオクチル酸塩(商品名:U−CAT SA102(サンアプロ株式会社製))、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(商品名:U−CAT SA506(サンアプロ株式会社製))等が挙げられる。
DBN系の塩としては、例えば、DBNのオクチル酸塩(商品名:U−CAT 1102(サンアプロ株式会社製))等が挙げられる。
シクロアミジン系化合物の中でも、シクロアミジン類の塩であることが好ましい。
本防曇剤組成物におけるシクロアミジン系化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.01〜3質量部が好ましく、0.05〜2.5質量部より好ましく、0.1〜2.0質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上では低温条件化で硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向があり、3質量部以下では貯蔵安定性が向上する傾向がある。
また、シクロアミジン系化合物の物質量に注目して言いかえると、シクロアミジン系化合物の物質量(以下[Y]という)は、(メタ)アクリル系樹脂100gに対して、0.05〜15mmolであることが好ましく、0.1〜15mmolであることがより好ましく、0.5〜10mmolであることがさらに好ましい。
本防曇剤組成物におけるシクロアミジン系化合物の含有量は、[Y]が、0.05mmol以上では、「触媒」量が十分であり低温条件下で硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向があり、15mmol以下では貯蔵安定性が向上する傾向がある。
また、触媒活性の観点から考えると、シクロアミジン系化合物の物質量[Y]と、アセトアセトキシ基の物質量[X]の比は、適切に調整する必要がある。
シクロアミジン系化合物[Y]とアセトアセトキシ基[X]の比は式(2):
[Y]/[X]・・・(2)
で表すことが出来る。
すなわち、式(2)で求められる値は、「触媒」と「反応点」の比を表すことが出来る。
式(2)で求められる値が大きいほど、アセトアセトキシ基に対して、シクロアミジン系化合物が多いことを示している。
本防曇剤組成物におけるシクロアミジン系化合物の含有量は、式(2)で求められる値が、0.0004〜0.1であることが好ましく、0.005〜0.09であることがより好ましく、0.01〜0.05であることがさらに好ましい。
式(2)で求められる値がこのような範囲であれば、「反応点」に対して「触媒」が適切に調整されており低温条件下でのマイケル付加反応が可能になると考えられる。その結果、本防曇剤組成物の低温条件下での硬化塗膜形成と貯蔵安定性を両立することが出来ると考えられる。
<(D)有機酸化合物>
本防曇剤組成物は有機酸化合物を含む。
有機酸化合物は、酸性基を有する有機化合物である。
有機酸化合物は、本防曇剤組成物の貯蔵中、シクロアミジン系化合物の触媒活性を抑制する。また、本防曇剤組成物は有機酸化合物が揮発すると、マイケル付加反応が進行し、硬化塗膜を形成することが出来る。すなわち、有機酸化合物は、本防曇剤組成物の貯蔵安定性に寄与し、「安定化剤」として作用すると推測される。
有機酸化合物としては、酸性基を有する有機化合物であれば、特に限定はしないが、カルボン酸、スルホン酸、ホスフィン酸等が挙げられる。有機酸化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、アニス酸、アミノ安息香酸、安息香酸、イソ吉草酸、イソ酪酸、オキサロ酪酸、オクタン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ウンレシル酸、ラウリン酸、2−キノリンカルボン酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、クロトン酸、クロロ安息香酸、クロロ酢酸、クロロプロピオン酸、ケイ皮酸、コハク酸、シアノ安息香酸、シアノ酢酸、酒石酸、ナフトエ酸、ニコチン酸、ニトロ安息香酸、乳酸、尿酸、ピメリン酸、ピリジンジカルボン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、フマル酸、フルオロ安息香酸、フルオロ酢酸、ブロモ安息香酸、ブロモ酢酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、マンデル酸、ヨード安息香酸、ヨード酢酸、リンゴ酸、レブリン酸等が挙げられる。
スルホン酸としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸などが挙げられる。
ホスフィン酸としては、例えば、ブチルホスフィン酸、オクチルホスフィン酸、(3−ヒドロキシプロピル)ブチルホスフィン酸、(3−ヒドロキシプロピル)オクチルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、3−ヒドロキシプロピルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。
防曇剤組成物における有機酸化合物は、本防曇剤組成物の製造中や貯蔵中に揮発しにくく、硬化塗膜を形成する際に揮発することが好ましい。
そのため、有機酸化合物の沸点は、90℃〜350℃の範囲が好ましく、特に95℃〜300℃が好ましく、さらには100〜250℃の範囲がより好ましい。
有機酸化合物の沸点が90℃以上では、本防曇剤組成物の製造中や貯蔵中の有機酸化合物の揮発が抑制され、貯蔵安定性が向上する傾向がある。有機酸化合物の沸点が350℃以下では、本防曇剤組成物は、低温条件下でも有機酸化合物が揮発し、硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向がある。
有機酸化合物の酸解離定数(pKa)は、0〜7が好ましく、特に1〜6が好ましく、さらに2〜5が好ましい。有機酸化合物のpKaは0以上では防曇剤組成物との相溶性が良く塗膜の透明性が高くなる傾向があり、7以下では貯蔵安定性が向上する傾向がある。
有機酸化合物は、カルボン酸が好ましく、カルボン酸の中でも、ギ酸と酢酸がより好ましい。
本防曇剤組成における、有機酸化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.05〜25質量部が好ましく、より0.07〜20質量部がより好ましい。0.05質量部以上では貯蔵安定性が向上する傾向があり、25質量部以下では、低温条件下で硬化塗膜を形成することが出来、耐水性が向上する傾向がある。
また有機酸化合物の物質量に注目して言い換えれば、有機酸化合物の物質量(以下、[Z]という)は、(メタ)アクリル系樹脂100gに対して、好ましくは1〜400mmol、より好ましくは1.5〜350mmol、さらに好ましくは2〜300mmolである。1mmol以上では貯蔵安定性が向上する傾向があり、400mmol以下では低温条件下で硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向がある。
別の観点から、有機酸化合物は、シクロアミジン系化合物「触媒」に対して「安定化剤」として作用すると考えられる。
そのため、本防曇剤組成物の貯蔵安定性と、低温条件下での硬化塗膜形成を両立させるには、シクロアミジン系化合物の物質量[Y]と有機酸化合物の物質量[Z]の比を適切に調整する必要がある。
シクロアミジン系化合物の物質量[Y]と有機酸化合物の物質量[Z]の比は式(3):
[Z]/[Y]・・・(3)
で表すことが出来る。
式(3)から求められる値は、「触媒」と「安定化剤」の比率を表すことが出来る。
式(3)から求められる値が大きいほど、シクロアミジン系化合物に対して有機酸化合物が多いことを表している。
本防曇剤組成物における有機酸化合物の含有量は、式(3)で求められる値が、5〜40であることが好ましく、5〜35であることより好ましく、5〜30であることがさらに好ましい。
式(3)で求められる値がこのような範囲であれば、「触媒」に対して「安定化剤」が適度に含まれていて、「触媒」を十分に安定化できると考えられる。結果、本防曇剤組成物の低温条件下での硬化塗膜形成と貯蔵安定性を両立することが出来ると考えられる。
また有機酸化合物は、「触媒」に作用するだけではなく、(メタ)アクリル系樹脂が有するアセトアセトキシ基「反応点」に対しても「安定化剤」として作用すると考えられる。
アセトアセトキシ基は、通常、ケト型とエノール型との平衡状態で存在している。
有機酸化合物は、アセトアセトキシ基のケトエノール互変異性の平衡をエノール型に偏らせることが出来ると考えられる。その結果、本防曇剤組成物は、貯蔵中のマイケル付加反応が抑えられ、貯蔵安定性が向上すると推定される。
そのため、本防曇剤組成物の貯蔵安定性を向上するには、アセトアセトキシ基の数[X]とシクロアミジン系化合物の物質量[Y]の総量と、有機酸化合物の物質量[Z]の比を適性に調整することが重要である。
アセトアセトキシ基の数[X]とシクロアミジン系化合物の物質量[Y]の総量と有機酸化合物の物質量[Z]の比は、式(4):
[Z]/([X]+[Y])・・・(4)
で表すことが出来る。
式(4)で求められる値は、「反応点」と「触媒」の総量と「安定化剤」の比を表すことが出来る。
式(4)で求められる値が大きいほど、アセトアセトキシ基とシクロアミジン系化合物の総量に対して、有機酸化合物が多いことを示している。
本防曇剤組成物において、有機酸化合物の含有量は、式(4)で求められる値が、0.01〜4、0.1〜3.5であることが好ましく、0.2〜3.3であることがより好ましい。
式(4)で求められる値が、0.01以上ではアセトアセトキシ基とシクロアミジン系化合物の総量に対して有機酸化合物が十分量含まれており、本防曇剤組成物の貯蔵安定性が向上する傾向があり、4以下では低温条件下でマイケル付加反応が十分に進行し硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向がある。
すなわち、式(4)で求められる値がこのような範囲であれば、「反応点」と「触媒」の総量に対して「安定化剤」の量を適切に調整することが出来ると考えられる。その結果、本防曇剤組成物の低温条件下での硬化塗膜形成と貯蔵安定性を両立することが出来ると考えられる。
<(E)界面活性剤>
本防曇剤組成物は、(A)〜(D)の成分に加えて(E)界面活性剤を含有しても良い。
(E)の成分は塗膜表面に吸収しきれずに付着した水分の表面張力を低下させ、塗膜表面に水膜を形成させることにより後述する耐スチーム性を向上させることができる。
しかし、界面活性剤を使用することで、界面活性剤「特有の課題」が発生する傾向がある。
「特有の課題」としては、一つは水たれ跡が挙げられる。界面活性剤を使用することで、後述する耐スチーム性は向上するが水たれ跡評価の際に、界面活性剤に起因する塗膜の白化が発生する傾向がある。
もう一つの「特有の課題」としては、防曇持続性が挙げられる。塗膜が、大量の蒸気にさらされると、界面活性剤は塗膜からブリードアウトしてしまい、高い耐スチーム性が持続しにくく、後述する防曇持続性の評価が悪くなる傾向がある。
しかし、本塗料組成物において、界面活性剤は(メタ)アクリル系樹脂が有するアミド基との相乗効果で、水たれ跡が発生しにくく、かつ高い防曇持続性を持つ防曇剤組成物を得ることが出来る。
界面活性剤としては、従来公知のものであれば、特に限定はしないが、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
「特有の問題」としては、一つは水たれ跡が挙げられる。界面活性剤を使用することで、後述する耐スチーム性は向上するが水たれ跡評価の際に、界面活性剤に起因する塗膜の白化が発生する傾向がある。
もう一つの「特有の問題」としては、防曇持続性が挙げられる。塗膜が、大量の蒸気にさらされると、界面活性剤は塗膜からブリードアウトしてしまい、高い耐スチーム性が持続しにくく、後述する防曇持続性の評価が悪くなる傾向がある。
しかし、適切な界面活性剤を選択することで水たれ跡が発生しにくく、かつ高い防曇持続性を持つ防曇剤組成物を得ることが出来る。
界面活性剤としては、従来公知のものを使用することができる。界面活性剤としては、例えばノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアシルエステル類、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル類、リン酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、セルロースエーテル類、ノニオン性フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の中では、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ノニオン性フッ素系界面活性剤を用いることが好ましく、その中でも、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ノニオン性フッ素系界面活性剤がさらに好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステル類としては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステル類の中でも、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルが好ましく、その中でも、ショ糖ラウリン酸エステルがより好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
ノニオン性フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基を含有するエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基を含有するアミンオキサイド、パーフルオロアルキル基を含有するオリゴマー等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、アルキルベンゼンスルホン酸類塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩類、フッ素系アニオン系界面活性剤類、ジアルキルホスフェート塩類、ポリオキシエチレンサルフェート塩類等挙げられる。
アニオン性界面活性剤の中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類が好ましい。
ジアルキルスルホコハク酸塩類としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸アルキル金属塩系界面活性剤が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸アルキル金属塩系界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムやジアルキルスルホコハク酸カリウム等が挙げられ、その中でも、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムがより好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、エタノールアミン類、アミン塩類、第4級アンモニウム塩類等が使用される。その中でも、第4級アンモニウム塩類等を用いることが好ましい。4級アンモニウム塩類としては、脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸両性界面活性剤類、スルホン酸両性界面活性剤類、アルキルグリシン類等が挙げられる。両性界面活性剤の中でも、脂肪酸両性界面活性剤類、スルホン酸両性イオン性界面活性剤類を用いることが好ましい。
脂肪酸両性界面活性剤類としては、例えば、カルボベタイン、アミドベタイン等が挙げられる。スルホン酸型両性界面活性剤類としては、例えば、スルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。
脂肪酸両性界面活性剤類の中でも、スルホン酸型両性界面活性剤が好ましく、アミドスルホベタインがより好ましい。
本防曇剤組成物における界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは0.8〜20質量部、さらに好ましくは1〜15質量部含まれると良い。界面活性剤の含有量が0.5質量部〜30質量部の範囲では、防曇性がさらに向上する傾向がある。
<防曇剤組成物の製造方法>
本防曇剤組成物の製造方法としては特に限定されるものではなく、上記の各構成成分を公知の方法により混合することで製造することができる。例えば、上記の各成分を全て一括で混合し、公知の高速分散機等で撹拌することにより製造することができる。
本防曇剤組成物を製造するに当たっては、前記のように全ての成分を混合し、いわゆる1液型の防曇剤組成物としても良いし、(メタ)アクリル系樹脂を含む成分(以下、主剤ともいう)と、多官能アクリレート化合物を含む成分(以下、硬化剤ともいう)とをそれぞれ別に製造し、塗装する直前にその両方の成分を混ぜ合わせて使用するような、いわゆる2液型の防曇剤組成物としても良い。この場合、シクロアミジン系化合物、有機酸化合物、界面活性剤は、主剤と硬化剤のどちらに配合するかについては特に限定されるものではなく、どちらに配合してもよい。
本防曇剤組成物の用途は特に限定されず、インク、インキ、塗料等の技術分野において使用できる。特に、本防曇剤組成物はインキ、塗料としての用途によって好適に使用できる。
<塗膜>
本発明の塗膜は、本防曇剤組成物の硬化物からなる。
塗膜の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、基材上に、公知の方法により本防曇剤組成物を塗布し、硬化させることで形成することができる。
[塗膜の製造方法]
(基材)
基材としては、特に限定はしないが、例えば、プラスチック等の有機素材、ガラス、セラミックス及び金属等の無機素材が挙げられる。上記プラスチックとしては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアルキレン及びこれらの混合物が挙げられる。
(塗布方法)
防曇剤組成物の塗布方法としては、例えば、塗装方法と印刷方法などが挙げられ、公知の方法を適用することができ、塗膜を形成することができる。
塗装方法としては、例えば、スプレー塗装法、静電塗装法、カーテンコート塗装法、スピンコート塗装法、ディッピング塗装法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等などが挙げられる。
防曇剤組成物を塗料として用いる場合の塗布方法としては、スプレー塗装法、静電塗装法、カーテンコート塗装法、スピンコート塗装法、ディッピング塗装法が好ましく、その中でも、スプレー塗装法、カーテンコート塗装法、ディッピング塗装法を適応することがより好ましい。塗膜の厚みとしては、用途に応じて適宜設計できるが、乾燥膜厚で、たとえば1〜200μmとすることができる。
防曇剤組成物をインクとして用いる場合の塗装方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法が好ましい。その中でも、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法がより好ましい。
(硬化塗膜形成)
本防曇剤組成物から得られる塗膜の硬化方法としては、特に限定されないが、公知の熱硬化性樹脂の硬化方法にて実施することができる。硬化温度としては50℃〜200℃、好ましくは60℃〜170℃、より好ましくは65〜150℃で行い、硬化時間としては、前記硬化温度にて、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは3分〜12時間、さらに好ましくは10分〜2時間加熱することで硬化塗膜を得ることが出来る。このような硬化温度及び硬化時間の範囲内であれば、耐水性に優れた塗膜を得ることができる。
<塗膜を備える物品>
上述のような方法によって得られる塗膜を備える塗装物品としては、特に限定はしないが、例えば、洗面所鏡、浴室鏡、ゴーグル、保護メガネ、メガネ又はカメラのレンズ、建物の窓、建物の外装材、自動車の窓、自動車ランプ類のレンズ又はカバー、自動車のサイドミラー又はルームミラー、カーブミラー、道路反射鏡、農業用ハウスの被覆材料、及び冷凍庫のショーケース等が挙げられ、有機素材、無機素材を問わず使用できる。
これら対象となる物品に対して、本防曇剤組成物を直接塗布することもできるし、あらかじめ、別の基材に本防曇剤組成物を塗布してフィルム又はシートにしたものを対象となる物品に貼り付けて使用することもできる。また、上述の調湿効果から建物の内装用壁紙等に使用できる。
本発明の実施形態を、実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
<(A):(メタ)アクリル系樹脂の合成>
[合成例1]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた4つ口フラスコにPGM−AC(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)150質量部を仕込み110度まで撹拌しながら加温した。ついで、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)30質量部、ジメチルアクリルアミド(DMAA)50質量部、メタクリル酸メチル(MMA)10質量部、メタクリル酸ブチル(BMA)10質量部、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル(和光純薬工業株式会社製 V−40)0.6質量部を混ぜた混合液を滴下ロートより2時間かけて前記フラスコに連続滴下した。
滴下後、110℃で4時間撹拌し、反応させた。加熱を止めて室温まで冷却し、(A−1)の(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物(固形分比率約40質量%)を得た。
得られた(メタ)アクリル系樹脂(A−1)のMnは14,000、Mwは51,000であった。なお、使用した単量体の配合比から後述の「フォックス(Fox)の式」を用いて計算した(メタ)アクリル系樹脂(A−1)のガラス転移温度(Tg)は70℃であった。
[合成例2−17]
下記表1、2の配合比に従い、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系樹脂(A−2)〜(A−17)を合成し、各(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物を得た。
(表1、表2中の用語の説明)
・AAEM:2-アセトアセトキシエチルメタクリレート
・DMAA:ジメチルアクリルアミド
・DEAA:ジエチルアクリルアミド
・MMA:メタクリル酸メチル
・BMA:メタクリル酸ブチル
・FM‐0721:サイラプレーン FM−0721
片末端メタクリレート変性ポリジメチルシロキサン:分子量5,000(JNC株式会社製)
・V−40:1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル
・PGM−AC:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・二塩基酸エステル:No.23エステルDBE(三協化学株式会社製)
なお、数平均分子量、重量平均分子量、ガラス転移温度の求め方は以下の通り。
(数平均分子量、重量平均分子量の測定)
以下のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム測定条件で行った。
使用機器:HLC8220GPC(東ソー(株)製)
使用カラム:TSKgel SuperHZM−M、TSKgel GMHXL−H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(東ソー(株)製)
検出器:RI
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
(ガラス転移温度の計算)
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、当該樹脂の原料として用いられる単量体成分に含まれている単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、
式(5):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn・・・ (5)
〔式中、Tgは、求めようとしている(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。
1.防曇剤組成物の製造と評価
<防曇剤組成物の製造>
[実施例1]
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を含む樹脂組成物250質量部(固形分としては100質量部)、多官能アクリレート化合物(新中村化学株式会社製A−DPH、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)14質量部、DBU(サンアプロ株式会社製、ジアザビシクロウンデセン)0.5質量部、88%ギ酸水溶液4.5質量部を配合し撹拌した。さらに、イソプロパノールで希釈し防曇剤組成物(固形分比率30質量%)を得た。
(A−1)の(メタ)アクリル系樹脂100gあたりのアセトアセトキシ基の数[X]は140mmolであり、(メタ)アクリル系樹脂100gに対してのDBUの物質量[Y]は3.3mmol、ギ酸の物質量[Z]は87mmolであった。
[実施例2〜33、比較例1〜7]
表3〜9記載の配合比に従い、実施例1と同様に実施例2〜51、比較例1〜7の各防曇剤組成物を得た。なお、表の配合量は(メタ)アクリル系樹脂100質量部対しての有効成分あたりの添加量を記載している。
(試験板の作成)
ポリカーボネート樹脂板(エンジニアリングテストサービス製 厚み2mm 70mm×70mm)に、得られた各防曇剤組成物をスプレー塗装した。得られた塗装物を80℃に設定した乾燥炉に60分間静置し加熱硬化させ、厚み10μmの塗膜を備えたポリカーボネート板(以下、試験板という)を得た。
<防曇剤組成物の評価>
[貯蔵安定性(60℃促進)]
JIS K5600−2−7の常温貯蔵安定性の操作に準拠して各防曇剤組成物の貯蔵安定性を評価した。容量約250mlの密閉できるガラス容器に200ml充填し、60℃で10日間静置した防曇剤組成物について、試験前の粘度と試験後の粘度を評価した。
B型粘度計[型番「TVB−10M」、東機産業(株)製、回転数60rpm]により、JIS K7117−1に準じて25℃での粘度を測定した。
増粘率(促進試験後の粘度/促進試験前の粘度)を算出し、下記の評価基準で評価した。
△以上であれば実用上問題はない。
◎・・・増粘率が1.5未満
○・・・増粘率1.5以上2未満
□・・・増粘率2以上4未満
△・・・増粘率4以上
×・・・ゲル状態(防曇剤組成物を撹拌しても動かなくなった)
<試験板の評価>
[低温硬化性]
(耐水性)
耐水性によって、本防曇剤組成物が試験板作成条件(80℃、60分)という低温条件で、硬化塗膜を形成しているかを確認した。
JIS K−5600−6−1塗膜の化学的性質―耐液体性(一般的方法)に準拠した方法により、試験板を、25℃の水で24時間浸漬させた。24時間経過後、水から試験板を取り出して室温で24時間乾燥させたのち、塗膜外観を目視で観察した。評価は下記の基準で行った。
耐水性が良好であれば、本防曇剤組成物は十分に硬化していると判断できる。
△以上であれば、試験板作成条件(80℃、60分)の低温条件下で硬化塗膜を形成しており、実用上問題ない。
◎・・・無変化
○・・・塗膜の白化、フクレが塗膜全体の5%未満の面積で、認められる。
□・・・塗膜の白化、フクレが塗膜全体の5%以上10%未満で認められる。
△・・・塗膜の白化、フクレが塗膜全体の10%以上で認められる。
×・・・塗膜が溶解している。(十分に硬化していない)
[防曇性]
(耐スチーム性)
40℃に保った温水浴の水面から3cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からの蒸気を塗膜に連続照射し、照射から曇る時間を目視で評価した。
△以上であれば実用上問題はない。
◎・・・30秒以上曇らない。
○・・・10秒から30秒で曇らない。
□・・・5秒から10秒で曇る。
△・・・3秒から5秒で曇る。
×・・・0秒から3秒で曇る。もしくは、塗膜が溶け出す。
(表3〜9の用語の説明)
・DPHA:A−DPHジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学株式会社製)
・DBU:ジアザビシクロウンデセン(サンアプロ株式会社製)
・DBN:ジアザビシクロノネン(サンアプロ株式会社製)
・DBUオクチル酸塩:U‐CAT SA 102 ジアザビシクロウンデセンオクチル酸塩(サンアプロ株式会社製)
・DBNオクチル酸塩:U―CAT 1102 ジアザビシクロノネンオクチル酸塩(サンアプロ株式会社製)
・ギ酸:蟻酸(88%:三菱ガス株式会社)*有効成分量にて記載
・酢酸:酢酸(一級:和光純薬工業株式会社)
・ラウリン酸:ラウリン酸(一級:和光純薬工業株式会社)
<表3:アセトアセトキシ基を有する単量体の影響>
表3に示す比較例1は、(A)樹脂中に、アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位が無いため、塗膜が硬化せず、耐水性が悪い結果となった。
すなわち、本防曇剤組成物におけるアセトアセトキシ基は「反応点」となることが判る。
表3に示す実施例1〜5からは、(A)樹脂中のアセトアセトキシ基「反応点」の数が多いと低温条件下でも硬化塗膜を形成することが可能で、塗膜の耐水性が向上することが判る。また、「反応点」数が少ないと、塗膜の耐スチーム性が向上することが判る。アセトアセトキシ基の数を適切に調整することで、低温条件下で十分に硬化塗膜を形成することが可能で、塗膜の耐水性と耐スチーム性を両立させることが出来ると考えられる。
これらの結果から、本防曇剤組成物は、1液型の防曇剤組成物として好適に使用が可能なことが判る。
<表4:アミド基を有する単量体の影響>
表4に示す比較例2および3からは、(A)樹脂中にアミド基を有する単量体に由来する構造単位が無い又は少ないため、得られる塗膜の吸湿性能が低く防曇性が劣ることが判る。
また、表4に示す実施例1、6〜7からは、(A)樹脂中のアミド基を有する単量体に由来する構造単位が多いほど防曇性の高くなる傾向があることが判る。
表4に示す実施例1、11からは、アミド基を有する単量体のジメチルアクリルアミドとジエチルアクリルアミドを比較すると、ジメチルアクリルアミドの方が防曇性能に効果があることが判る。(A)樹脂中のアミド基が塗膜の吸湿性に関与し、防曇性能に効果があることが推定される。
<表5:(C)シクロアミジン系化合物と(D)有機酸化合物の影響>
表5に示す比較例4からは、(D)の成分が含まれていないと本防曇剤組成物貯蔵中にもマイケル付加反応が進行し、貯蔵安定性が悪くなることが判る。
表5に示す比較例5、6からは(C)の成分が含まれていないと、塗膜形成時マイケル付加反応が進行せず、得られる塗膜の耐水性が悪いことが判る。
すなわち、有機酸化合物は、「安定化剤」として作用することで貯蔵中のマイケル付加反応を抑制し、シクロアミジン系化合物は、「触媒」となって硬化塗膜形成時のマイケル付加反応を促進すると推定される。
表5に示す実施例1、12〜14からは、アセトアセトキシ基の数[X]とシクロアミジン化合物の物質量[Y]の比[Y]/[X]の値が大きくなると、塗膜の耐水性が良くなることが判る。
すなわち、アセトアセトキシ基「反応点」に対して、シクロアミジン系化合物「触媒」が十分に添加されていると、マイケル付加反応が十分に進行し低温条件化で硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上すると考えられる。
また、表5に示す実施例15〜18からは、シクロアミジン系化合物の物質量[Y]と有機酸化合物の物質量[Z]の比[Z]/[Y]から求められる値が大きくなるほど、本防曇剤組成物の貯蔵安定性が向上する事が判る。
すなわち、シクロアミジン系化合物「触媒」に対して、有機酸化合物「安定化剤」が十分に添加されていることで、本防曇剤組成物の貯蔵安定性が向上する事が判る。
本防曇剤組成物の貯蔵安定性には、[Z]/[Y]から求められる値が影響し、値が大きいほど貯蔵中のマイケル付加反応を抑制する事ができると推定される。
<表6:(C)シクロアミジン系化合物種の影響>
表6に示す実施例1、15、19〜26からは、[Z]/[Y]から求められる値が5以上ならば、シクロアミジンの種類によらず本防曇剤組成物の貯蔵安定性は良好なことが判る。
また、シクロアミジン系化合物の中では、シクロアミジンよりも、シクロアミジンの塩を用いると貯蔵安定性が向上する傾向がある。シクロアミジンの塩の中でも、シクロアミジンのオクチル酸塩が本防曇剤組成物の貯蔵安定性が良好であることが判る。シクロアミジンのオクチル酸塩は、シクロアミジンの酢酸塩よりも、触媒活性が穏やかである。そのため、本防曇剤組成物の貯蔵安定性は向上すると考えられる。
<表7:(D)有機酸化合物種の影響>
表7に示す実施例1、27,28からは、有機酸化合物の種類は、沸点の低いギ酸や酢酸の方が、沸点の高いラウリン酸よりも、得られた塗膜の耐水性が向上する傾向があることが判る。沸点の低い有機酸化合物は低温条件化で塗膜形成中に揮発し、マイケル付加反応が十分に進行すると推定される。
<表8:(C)シクロアミジン系化合物の量と(D)有機酸化合物の量の影響>
表8に示す実施例5、29、30、31からは、[Z]/[Y]から求められる値(「触媒」と「安定化剤」の比)が同等であるが、貯蔵安定性に違いがあることが判る。
さらに、実施例5、29は、実施例30、31よりも、[Y]/[X]から求められる値が大きい(「反応点」に対して「触媒」が多い)にもかかわらず、本防曇剤組成物の貯蔵安定性が優れる傾向があることが判る。
[Z]/([X]+[Y])から求められる値に注目すると、[Z]/([X]+[Y])から求められる値が大きいと、本防曇剤組成物の貯蔵安定性が向上する傾向があることが判る。このことから、(A)樹脂中の「反応点」と「触媒」の総量に対しての「安定化剤」の量が本防曇剤組成物の貯蔵安定性に影響していることが判る。
すなわち、有機酸化合物は、シクロアミジン系化合物「触媒」に対して「安定化剤」として作用するだけでなく、(A)樹脂中のアセトアセトキシ基「反応点」に対しても「安定化剤」として作用すると推定される。
有機酸化合物は、(A)樹脂中のアセトアセトキシ基のケトエノール互変異性の平衡をエノール型へ偏らせることで、本防曇剤組成物貯蔵中のマイケル付加反応を抑制し、貯蔵安定性を向上させることができると考えられる。
<表9:(B)多官能アクリレート量の影響>
表9に示す比較例7からは、本防曇剤組成物は多官能アクリレート化合物を含まないと、硬化塗膜を形成せず、得られる塗膜の耐水性が悪いことが判る。
表9に示す実施例1、32、33からは、多官能アクリレート化合物が少ないと得られる塗膜の防曇性が向上する傾向があり、多官能アクリレート化合物が多いと低温条件化でも硬化塗膜を形成することが出来、塗膜の耐水性が向上する傾向があることが判る。
(A)樹脂中のアセトアセトキシ基の数と(B)中のアクリレート基の数の比を適切に調節することで、本防曇剤組成物から得られる塗膜の防曇性と耐水性を両立できると考えられる。
2.「特定の化学構造」を有する(B)化合物の合成と、それを用いた防曇剤組成物の評価
<B:多官能アクリレート化合物の合成>
[「特定の化学構造」を有する多官能アクリレート化合物の合成]
(b−1:ε−カプロラクトン由来の構造を有する多官能アクリレート化合物(n=1))
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井化学株式会社製タケネートD−170N、イソシアネート含有量:20.9%)44質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製プラクセルFA1)56部、ジブチル錫ラウレート0.02質量部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、撹拌しながら70℃で5時間保持した。赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT−IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認し、反応を終了し、εカプロラクトン変性アクリレート化合物(b−1)を得た。なお、このε−カプロラクトン変性アクリレート化合物におけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は1である。
また、表中では、化合物(b−1)を「ε−カプロラクトン変性体(n=1)」と表記している。
(b−2:ε−カプロラクトン由来の構造を有する多官能アクリレート化合物(n=2))
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井化学株式会社製タケネートD−170N、イソシアネート基含有量:20.9質量%)36質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製、プラクセルFA―2D)を64質量部、ジブチル錫ラウレート0.02質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2部およびを仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温した。その後、同温度で5時間保持した。赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT−IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認した後、反応を終了し、ε−カプロラクトン変性アクリレート化合物(b−2)を得た。
なお、このε−カプロラクトン変性アクリレート化合物におけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は2である。
また、表中では、化合物(b−2)を「ε−カプロラクトン変性体(n=2)」と表記している。
(b−3:ε−カプロラクトン由来の構造を有する多官能アクリレート化合物(n=5))
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井化学株式会社製タケネートD−170N)22部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製プラクセルFA5)78質量部、ジブチル錫ラウレート0.02質量部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、撹拌しながら70℃で5時間保持した。赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT−IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認した後、反応を終了し、ε−カプロラクトン変性アクリレート化合物(b−3)を得た。
なお、このε−カプロラクトン変性アクリレート化合物におけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は5である。
また、表中では、化合物(b−3)を「ε−カプロラクトン変性体(n=5)」と表記している。
(b−4:アルキレンオキサイド構造を有する多官能アクリレート化合物(n=4.5))
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(三井化学株式会社製タケネートD−170N、イソシアネート基含有量:20.9質量%)42質量部、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油株式会社製ブレンマーAE−200(水酸基価:205(mgKOH/g))58質量部、ジブチル数ラウレート0.02質量部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を仕込んだ。そして、70℃で撹拌しながら5時間保持して反応を行った。赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT−IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認した後、反応を終了し、ポリエチレンオキサイド変性アクリレート化合物(b−4)を得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのエチレングリコール単位の繰り返し数は4.5である。
また、表中では、化合物(b−1)表中では「エチレンオキサイド変性体(n=4.5)」と表記している。
<実施例34〜40>
[防曇剤組成物の製造]
上記の実施例1の工程に準じて、表10に示す成分組成の防曇剤組成物を得た。
[試験板の作成]
上記の実施例1の工程に準じて、試験板を得た。
<防曇剤組成物と試験板の評価>
上記「1、防曇剤組成物の製造と評価」で行った防曇剤組成物の評価と同様の評価を行った。(貯蔵安定性、耐水性、耐スチーム性)
[試験板の評価]
(追加評価(1))
「特定の化学構造」を有する多官能アクリレート化合物を含む防曇剤組成物は、上記評価に加えて、追加評価(1):耐擦傷性も評価した。
≪耐擦傷性≫
試験板に、ペーパータオルを500g(直径36mm 500g分銅)の荷重をかけた状態で乗せ50回往復させた。その後目視にて、1cm以上の長さの傷の数を確認し、以下の基準に従って評価を行った。
◎・・・まったく傷がつかない。
○・・・傷が5本未満。
△・・・傷が5本以上20本未満。
×・・・傷が20本以上。
<表10:「特定の化学構造」を有する多官能アクリレートの影響>
表10に示す実施例4、34〜40からは、(B)多官能アクリレート化合物が、「特定の化学構造」であるε−カプロラクトン由来の構造や、アルキレンオキサイド構造を有する多官能アクリレート化合物を含むことで、耐擦傷性が向上することが判る。
更に、多官能アクリレート化合物のポリカプロラクトンの付加モル数とアルキレンオキサイドの付加モル数が2以上で耐擦傷性が向上することが判る(実施例34〜37)。
「特定の化学構造」であるε−カプロラクトン由来の構造、アルキレンオキサイド構造は、適度に柔軟で弾力性を有しているため、塗膜の柔軟性、弾力性を高めることができ、外力を吸収し、塗膜への傷を残りにくくすると推定される。
さらに、本防曇剤組成物において、ポリジメチルシロキサンの構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いると、耐擦傷性が向上する傾向がある(実施例35、38〜40)。ポリジメチルシロキサンの構成単位は、塗膜表面に配向し、塗膜の表面抵抗を下げることが出来ると考えられる。その結果、得られる塗膜の耐擦傷性が向上したと推定される。
3.(E)界面活性剤を含む防曇剤組成物の調整と、その評価
<実施例41〜53>
[防曇剤組成物の調製]
上記の実施例1の工程に準じて、表11及び12に示す成分組成の防曇剤組成物を得た。
[験板の作成]
上記の実施例1の工程に準じて、試験板を得た。
<防曇剤組成物と試験板の評価>
上記「1.防曇剤組成物の製造と評価」で行った防曇剤組成物の評価と同様の貯蔵安定性、耐水性、耐スチーム性の3つ評価を行った。
[試験板の作成]
(追加評価(2))
防曇剤組成物は界面活性剤を使用することで、界面活性剤由来の「特有の問題」が発生する傾向にある。
例えば、耐スチーム性の試験後に、ブリードアウトした界面活性剤が流れ落ち、界面活性剤が流れ落ちた跡が白化する現象(水たれ跡)が起こる。
また、耐スチーム性の試験を繰り返すと、界面活性剤は塗膜の表面からブリードアウトしてしまい、高い耐スチーム性が持続しにくくなるという傾向がある。
これらの、(E)成分を含む防曇剤組成物「特有の問題」を評価するため、(E)を含む防曇剤組成物は、上記の評価に加えて、追加評価(2):水たれ跡、防曇持続性も評価した。
≪水たれ跡≫
耐スチーム性の試験後の試験板を垂直に立て、室温で30分乾燥させた。乾燥後の塗膜上の水たれ跡の状態について目視で観察を行い、以下の基準に従って評価を行った。
◎・・・水たれ跡は確認できない。
○・・・光の当て方によって、うっすらと水たれ跡が見える。
△・・・水たれ跡がはっきりと見え、若干の塗膜白化が生じる。
×・・・水たれ跡がはっきりと確認でき、塗膜の白化が著しい。
≪防曇持続性≫
40℃に保った温水浴の水面から3cmの高さの所に、塗膜面が下向きになるように試験板を設置し、温水浴からの水蒸気を塗膜に10秒間当て、その後、5分間常温で乾燥させるというサイクルを1工程とし、当該工程を10回繰り返した。その後、再度蒸気をあて、照射から曇る時間を目視で評価した。曇る時間を目視で確認し、以下の基準に従って評価を行った。
◎・・・30秒以上曇らない。
○・・・10秒以上30秒未満曇らない。
□・・・5秒以上10秒未満曇らない。
△・・・3秒以上5秒未満曇らない。
×・・・3秒未満で曇る。もしくは、塗膜外観が劣化する。
(表11,12の用語の説明)
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、A−DPH(新中村化学株式会社製)
・ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート:レオドール TW−L106(有効成分100% 花王株式会社製)
・ショ糖ラウリン酸エステル:リョートーシュガーL−1695(有効成分95% 三菱ケミカルフーズ株式会社製)
・ポリグリセリン10モノラウリン酸エステル:PGLE ML10(有効成分100% 株式会社ダイセル製)
・フッ素系界面活性剤:サーフロンS−242(有効成分100% AGCセイミケミカル株式会社製)
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム:サンモリンOT−70(有効成分70% 三洋化成株式会社製)
・ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート:カチオーゲンES−L−9(有効成分90% 第一工業製薬株式会社製)
・ラウリン酸アミドプロピルベタイン:ソフタゾリンLPB(有効成分30% 川研ファインケミカル株式会社製)
・ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン:ソフタゾリンLSB(有効成分30% 川研ファインケミカル株式会社製)
<表11:(E)界面活性剤の影響>
※1、※2:水たれ跡、防曇持続性は、(E)成分を含む防曇剤組成物「特有の課題」であるため、(E)成分を含まない実施例1では、水たれ跡はそもそも発生せず、防曇持続性の低下も発生しないため、このような良好な結果となっている。
ここで、実施例1を再掲載しているのは、界面活性剤を添加したことによる、耐スチーム性の向上を示すためである。
表11に示す実施例1、41〜49からは、本防曇剤組成物に界面活性剤を添加すると耐スチーム性が向上することが判る。界面活性剤は、塗膜表面に付着した水分の表面張力を低下させ、塗膜表面に水膜を形成させることにより防曇性を向上させることができると推定される。
特に、界面活性剤の中でも、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ノニオン性フッ素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩類を使用すると防曇持続性が良好で、水たれ跡が良好な結果となった。
特に、界面活性剤の中でも、ショ糖ラウリン酸エステルといったショ糖脂肪酸エステル類、ノニオン性フッ素系界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムといったジアルキルスルホコハク酸塩類を使用すると防曇持続性が良好で、水たれ跡が良好な結果となった。
<表12:「特定の化学構造」を有する(B)化合物と、(E)成分の併用>
表12に示す実施例50〜53からは
「特定の化学構造」を有する(B)化合物と(E)成分とを併用することで、耐擦傷性と、耐スチーム性を両立させることが出来た。
4.インキ用防曇剤組成物の製造と、その評価
<インキ用防曇剤組成物の製造>
[実施例54]
(メタ)アクリル系樹脂(A−15)を含む樹脂組成物200質量部(固形分としては100質量部)、多官能アクリレート化合物(新中村化学株式会社製A−DPH、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)14質量部、DBUオクチル酸塩(サンアプロ株式会社製SA−102)0.5質量部、88%ギ酸水溶液4.5質量部を配合し撹拌し、インキ用防曇剤組成物(固形分比率53質量%)を得た。得られたインキ用防曇剤組成物の粘度は2200(mPa・s)であった。
(実施例55〜56)
表13記載の配合比に従い、実施例54と同様に各インキ用防曇剤組成物を得た。なお、表の配合量は表3〜12と同様に(メタ)アクリル系樹脂100g対しての固形分の添加量を記載している。
(印刷板の作成)
実施例54〜56について、インキ用防曇剤組成物を易接着処理PETフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャイン A4300)に、スクリーン印刷法にて、#150メッシュのスクリーン(印刷パターン100mm×100mm)を用い、印刷を行った。得られた印刷物を100℃に設定した乾燥炉に60分間静置し加熱硬化させ、厚み10μmの塗膜を備えたPETフィルム(以下、印刷板という)を得た。
[インキ用防曇剤組成物の評価]
(粘度)
B型粘度計[型番「TVB−10M」、東機産業(株)製、回転数60rpm]により、JIS K7117−1に準じて25℃での粘度を測定した。
(貯蔵安定性)
上記「1.防曇剤組成物の製造と評価」で行った防曇剤組成物と同様の条件で貯蔵安定性の評価を行った。
[印刷適性の評価]
(印刷外観)
印刷板の印刷外観を目視で確認し、印刷外観の評価を行った。ハジキ、カスレ及びエッジ部転写不良の有無を以下の基準にしたがって評価した
◎・・・ハジキ、カスレ及びエッジの部転写不良が印刷板全体の5%未満で認められる。
○・・・ハジキ、カスレ及びエッジの部転写不良が印刷板全体の5%以上10%未満で認められる。
△・・・ハジキ、カスレ及びエッジの部転写不良が印刷板全体の10%以上15%未満で認められる。
×・・・ハジキ、カスレ及びエッジの部転写不良が印刷板全体の15%以上で認められる。
(連続印刷適性)
前記の条件でスクリーン印刷法にて連続で印刷を行った。印刷板を目視で確認し、印刷外観不良のない回数を以下の基準に従って評価した。前記印刷外観の評価が○以上を印刷外観に不良がないとものと判断した。
◎・・・100回の連続印刷で、印刷外観に不良がない。
〇・・・80〜99回の連続印刷で、印刷外観に不良がある。
△・・・50〜79回の連続印刷で、印刷外観に不良がある。
×・・・1〜49回の連続印刷で、印刷外観に不良がある。
[印刷板の評価]
上記「1、防曇剤組成物の製造と評価」で行った試験板の評価と同様の耐水性、耐スチーム性の2つの評価を行った。
<表13:インキ用防曇剤組成物>
表13に示す実施例54〜56からは、本防曇剤組成物をインキ用防曇剤組成物として用いても、インキ用防曇剤組成物の貯蔵安定性、インキ用防曇剤組成物から得られる塗膜の耐水性と防曇性に影響がないことが判る。
インキ用防曇剤組成物の(メタ)アクリル系樹脂の分子量が小さいと印刷外観評価が良好であることが判る。
また、シクロヘキサノンや二塩基酸エステルといった沸点の高い有機溶剤を使用することで、連続印刷の際、溶剤の揮発を防ぎ、スクリーンの目詰まりなどを抑制すると推定される。
<まとめ>
表3〜表13に示す実施例から、(A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位及びアミド基を有する単量体に由来する構成単位を有する(メタ)アクリル系樹脂と、(B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、(C)シクロアミジン系化合物と、(D)酸性化合物とを組み合わせた実施例1〜56は、高い防曇性能を発現する塗膜を得ることが出来、かつ、低温硬化が可能で貯蔵安定性が優れていることが判った。



<塗膜を備える物品>
上述のような方法によって得られる塗膜を備える塗装物品としては、特に限定はしないが、例えば、洗面所鏡、浴室鏡、ゴーグル、保護メガネ、メガネ又はカメラのレンズ、建物の窓、建物の外装材、自動車の窓、自動車ランプ類のレンズ又はカバー、自動車のサイドミラー又はルームミラー、カーブミラー、道路反射鏡、農業用ハウスの被覆材料、及び冷凍庫のショーケース等が挙げられ、有機素材、無機素材を問わず使用できる。
これら対象となる物品に対して、本防曇剤組成物を直接塗布することもできるし、あらかじめ、別の基材に本防曇剤組成物を塗布してフィルム又はシートにしたものを対象となる物品に貼り付けて使用することもできる。また、上述の調湿効果から建物の内装用壁紙等に使用できる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
[1]
防曇剤組成物であって、
(A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位及びアミド基を有する単量体に由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂と、
(B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、
(C)シクロアミジン系化合物と、
(D)有機酸化合物と、を含み、
前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合が30質量%以上90質量%以下であり、
かつ、前記(メタ)アクリル系樹脂100gあたりに含まれる前記アセトアセトキシ基が15mmol以上280mmol以下である、
防曇剤組成物。
[2]
前記(C)シクロアミジン系化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系樹脂100gに対して0.05mmol以上15mmol以下である、[1]に記載の防曇剤組成物。
[3]
前記(D)有機酸化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系樹脂100gに対して1mmol以上400mmol以下である、[1]または[2]に記載の防曇剤組成物。
[4]
前記(D)有機酸化合物の含有量が、前記有機酸化合物と前記シクロアミジン系化合物の当量比[有機酸化合物/シクロアミジン系化合物]が5以上40以下である、[1]乃至[3]いずれか1つに記載の防曇剤組成物。
[5]
前記(D)有機酸化合物は、酸解離定数pKaが0以上7以下、かつ、カルボキシ基を有する有機酸化合物を含む、[1]乃至[4]いずれか1つに記載の防曇剤組成物。
[6]
前記多官能アクリレート化合物は、ε−カプロラクトン由来の構造、および/または、アルキレンオキサイド構造を有する多官能アクリレート化合物を含む、[1]乃至[5]いずれか1つに記載の防曇剤組成物。
[7]
(E)界面活性剤を含む、[1]乃至[6]いずれか1つに記載の防曇剤組成物。
[8]
塗料用である、[1]乃至[7]いずれか1つに記載の防曇剤組成物。
[9]
インキ用である、[1]乃至[7]いずれか1つに記載の防曇剤組成物。
[10]
[1]乃至[9]いずれか1つに記載の防曇剤組成物の硬化物からなる塗膜。
[11]
[10]に記載の塗膜を備える物品。

Claims (11)

  1. 防曇剤組成物であって、
    (A)アセトアセトキシ基を有する単量体に由来する構成単位及びアミド基を有する単量体に由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂と、
    (B)1分子中に2個以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート化合物と、
    (C)シクロアミジン系化合物と、
    (D)有機酸化合物と、を含み、
    前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記アミド基を有する単量体に由来する構成単位の割合が30質量%以上90質量%以下であり、
    かつ、前記(メタ)アクリル系樹脂100gあたりに含まれる前記アセトアセトキシ基が15mmol以上280mmol以下である、
    防曇剤組成物。
  2. 前記(C)シクロアミジン系化合物の含有量は、
    前記(メタ)アクリル系樹脂100gに対して0.05mmol以上15mmol以下である、
    請求項1に記載の防曇剤組成物。
  3. 前記(D)有機酸化合物の含有量は、
    前記(メタ)アクリル系樹脂100gに対して1mmol以上400mmol以下である、
    請求項1乃至2いずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  4. 前記(D)有機酸化合物の含有量が、
    前記有機酸化合物と前記シクロアミジン系化合物の当量比[有機酸化合物/シクロアミジン系化合物]が5以上40以下である、
    請求項1乃至3いずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  5. 前記(D)有機酸化合物は、
    酸解離定数pKaが0以上7以下、かつ、カルボキシ基を有する有機酸化合物を含む、
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  6. 前記多官能アクリレート化合物は、
    ε−カプロラクトン由来の構造、および/または、アルキレンオキサイド構造を有する多官能アクリレート化合物を含む、
    請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  7. (E)界面活性剤を含む、
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  8. 塗料用である、
    請求項1乃至7のいずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  9. インキ用である、
    請求項1乃至7のいずれか1項に記載の防曇剤組成物。
  10. 請求項1乃至9いずれか1項に記載の防曇剤組成物の硬化物からなる塗膜。
  11. 請求項10に記載の塗膜を備える物品。

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