しかし、上記特許文献1及び2の構成では、グロメットが1つしか設けられていない。従って、電線を引き出す箇所が制限され、電線の取回しが必ずしも容易であるとはいえなかった。一方で、特許文献1及び2の構成においてグロメットを複数有するように変更した場合、構成が複雑になる中で防水機能及び組立性を良好に確保する必要があり、この点で改善の余地が残されていた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、防水及び組立性が良好な電気接続箱を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の構成の電気接続箱が提供される。即ち、この電気接続箱は、ケース本体と、第1カバーと、第2カバーと、グロメットと、を備える。前記ケース本体には、電装部品を収容する収容空間が形成される。前記第1カバーは、前記ケース本体に固定される。前記第2カバーは、前記ケース本体を介して前記第1カバーと対向するように当該ケース本体に固定される。前記グロメットは、電線が通過可能である。前記ケース本体において前記収容空間を取り囲むように配置された壁のうち、第1壁と、前記第1壁と向かい合って又は隣り合って配置される第2壁と、の何れにも、凹部が形成されている。前記第1壁に形成される前記凹部は、前記第1カバーに近い側が開放される。前記第2壁に形成される前記凹部は、前記第2カバーに近い側が開放される。それぞれの前記凹部と、前記第1カバー又は前記第2カバーと、から形成された開口部に前記グロメットが配置されている。
これにより、電気接続箱から電線を様々な方向に振り分けて引き出すことができるので、複雑な電線のレイアウトにも容易に対応することができる。また、ケース本体とカバーとが接合される面にグロメットが配置される場合、その配置場所が防水上の弱点となり易いが、本実施形態では凹部の開放側の向きが第1壁と第2壁とで逆になっているので、防水性能の低下を効果的に抑制することができる。更に、第1壁に対してグロメットを取り付ける作業と、第2壁に対してグロメットを取り付ける作業と、を容易に切り分けることができるので、組立作業の分担等を柔軟に行うことができる。
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この電気接続箱は、第1パッキンと、第2パッキンと、を備える。前記第1パッキンは、前記ケース本体と前記第1カバーとの間に配置される。前記第2パッキンは、前記ケース本体と前記第2カバーとの間に配置される。前記第1パッキンは、前記第1壁に形成される前記凹部において、前記グロメットと前記第1カバーとの間で挟み込まれる。前記第2パッキンは、前記第2壁に形成される前記凹部において、前記グロメットと前記第2カバーとの間で挟み込まれる。
これにより、パッキンとグロメットによる複合的な防水構造により、ケース本体と第1カバー又は第2カバーとの間を良好に防水することができる。
前記の電気接続箱においては、前記第1壁と前記第2壁とが互いに垂直に接続されていることが好ましい。
これにより、電線を電気接続箱から多様な向きに引き出し易くすることができる。
前記の電気接続箱においては、前記第1壁及び前記第2壁のうち少なくとも何れか一方において、前記凹部は複数形成されていることが好ましい。
これにより、1つの壁の複数箇所から電線を引き出すレイアウトを実現することができる。
前記の電気接続箱においては、前記第1壁及び前記第2壁のうち少なくとも何れか一方において、複数形成された前記凹部の間に、当該凹部が開放された部分を閉鎖する前記第1カバー又は前記第2カバーと、前記ケース本体と、を接合するためのネジ止め部が設けられていることが好ましい。
これにより、1つの壁の複数の場所から電線を引き出すことができる。また、電線が引き出される場所に配置される複数のグロメットに対して第1カバー又は第2カバーから加えられる締付力に偏りを生じにくくすることができるので、全体としての防水性能を向上させることができる。
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この電気接続箱は、前記グロメットの内部に配置されたインナー部材を備える。前記インナー部材の外周にはリブが形成される。前記凹部の内壁には溝が形成される。前記リブと前記溝とが、前記グロメットを挟んで対向する。
これにより、外力等によるグロメットの内側への変形を、インナー部材のリブによって防止することができる。従って、防水性能を安定して発揮させることができる。
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記グロメットの外周には、前記インナー部材のリブと対応する位置にリップ部が形成される。前記凹部に形成された前記溝の内壁に、前記リップ部が押し潰されながら接触する。
これにより、リップ部の部分で強力な防水を実現することができる。
前記の電気接続箱においては、前記凹部は、前記ケース本体から外側に突出するように設けられた接続凸部に形成されていることが好ましい。
これにより、グロメットがケース本体の内部へ突出しにくくなるので、収容空間を広く確保することができる。
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1カバーは、前記ケース本体の下側に固定される。前記第1壁に設けられた前記凹部は、前記第2壁に設けられた前記凹部より大きく形成されている。
これにより、例えば、第1壁の下部から太い幹線の電線束を引き出し、第2壁から細い支線の電線束を引き出すようなレイアウトを実現することができる。
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記凹部において、当該凹部が開放された部分を閉鎖する前記第1カバー又は前記第2カバーに向かい合う部分に丸みが付けられている。前記グロメットは、前記丸みに対応して丸みを有する形状に構成されている。
これにより、防水上の弱点となり易い角張った部分を減らすことができるので、防水性能を向上させることができる。
前記の電気接続箱においては、前記第1カバー及び前記第2カバーのうち何れかが、前記ケース本体の上側に固定されるとともに、この上側のカバーに通気防水構造が設けられていることが好ましい。
これにより、電気接続箱内の圧力の変化を防止することができる。また、電気接続箱の内部で生じた熱を、上部の通気防水構造を介して外部へ容易に逃がすことができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電気接続箱1の全体的な構成を示す分解斜視図である。
図1に示す電気接続箱1は、車の様々な電装部品が実装された電子基板95を収容するために用いられている。この電気接続箱1は、主として、ケース本体10と、下カバー(第1カバー)3と、上カバー(第2カバー)4と、グロメット2,2a,2bと、を備える。ケース本体10、下カバー3及び上カバー4は、合成樹脂を射出成形することによって形成されている。
電子基板95に接続される電線80が、ケース本体10に取り付けられている複数のグロメット2,2a,2bのうち何れかを介して、電気接続箱1の内部から引き出されている。電線80は、グロメット2,2a,2bの開口を通過して電気接続箱1から引き出され、その端部に固定される図略のコネクタを介して、車両に搭載される様々な電気機器に接続される。
ケース本体10は、上下方向の両側を開放させた形状となっている。ケース本体10の下側は下カバー3によって閉鎖され、上側は上カバー4によって閉鎖される。下カバー3及び上カバー4は、複数のネジ96を締め付けることにより、ケース本体10と接合されている。
ケース本体10と下カバー3との間に下パッキン(第1パッキン)103が設けられ、ケース本体10と上カバー4との間に上パッキン(第2パッキン)104が設けられている。下パッキン103はループ状に形成され、ケース本体10と下カバー3との接合部分における外周部に配置される。上パッキン104も同様にループ状に形成され、ケース本体10と上カバー4との接合部分における外周部に配置される。これにより、ケース本体10と下カバー3との間、及び、ケース本体10と上カバー4との間を密封することができる。
ケース本体10は、何れもほぼ平板状に形成された、第1壁11と、第2壁12と、第3壁13と、第4壁14と、を備える。
第1壁11、第2壁12、第3壁13及び第4壁14は、空間(後述の収容空間85)を取り囲むように、平面視で矩形をなすように配置される。第1壁11及び第3壁13は長方形の長辺に相当し、互いに向かい合うように平行に配置される。第2壁12及び第4壁14は長方形の短辺に相当し、互いに向かい合うように平行に配置される。
第1壁11は、一端で第2壁12と垂直に接続し、他端で第4壁14と垂直に接続する。
第2壁12は、一端で第1壁11と垂直に接続し、他端で第3壁13と垂直に接続する。
第3壁13は、一端で第2壁12と垂直に接続し、他端で第4壁14と垂直に接続する。
第4壁14は、一端で第3壁13と垂直に接続し、他端で第1壁11と垂直に接続する。
以上のように、4つの壁を互いに接続することにより、ケース本体10における収容空間85が形成される。この収容空間85に、電子基板95を収容することができる。
第1壁11の構成について説明する。第1壁11には、グロメット2を接続することが可能な2つの接続凸部5と、下カバー3との接合に用いられる第1下ネジ止め部31及び第2下ネジ止め部32と、上カバー4との接合に用いられる第1上ネジ止め部41と、が設けられている。
2つの接続凸部5は、それぞれ、ケース本体10から外側に突出するように形成されている。接続凸部5が第1壁11から突出する方向は、第1壁11に垂直な方向であり、ケース本体10と下カバー3とを接合する向きに対して垂直な方向である。
接続凸部5は、第1壁11に、互いに間隔をあけて2つ形成されている。2つの接続凸部5のそれぞれには、下側を開放させたU字状の凹部7が形成されている。
この構成で、それぞれの凹部7に、電線80を通過させたグロメット2を下側からスライドして嵌め込み、この状態で下カバー3をケース本体10に固定する。これにより、図2に示すように、凹部7が開放された部分を下カバー3で閉鎖して形成された開口部70にグロメット2を配置するとともに、当該グロメット2が開口部70から外れないように固定することができる。また、下カバー3をケース本体10に固定するネジ96の締付けによって、グロメット2の縁部が周囲に密着し、これにより防水を実現することができる。
グロメット2においてケース本体10と下カバー3とで挟み込まれる部分(後述の嵌込部20)は、上下方向に細長い矩形状となっている。この部分が有する矩形の4つの角のうち、ケース本体10に近い側の2つの角について、大きな丸みが付けられる一方、下カバー3に近い側の2つの角については小さな丸みが付けられている。これに対応して、凹部7は上下方向に細長い矩形状の凹部とされ、下カバー3に向かい合う部分に位置する2つの角に大きな丸みが付けられている。これにより、防水上の弱点となる角張った部分をなくして、水の侵入を良好に防止することができる。
第1壁11において、凹部7の内壁には、ケース本体10の外部から内部に向かって順に、第1溝71と、第2溝72と、第3溝73と、が形成されている。第1溝71、第2溝72、及び第3溝73は、何れもU字状の凹部7に沿った細長い溝として形成されており、互いに平行に配置されている。
第1上ネジ止め部41は、第1壁11の上端部に配置されている。
第1下ネジ止め部31は、第1壁11の下端部に設けられている。また、第1下ネジ止め部31は、上下方向(即ち、ケース本体10と下カバー3とを接合する方向)で見たときに、2つの接続凸部5a,5bの間に配置されている。このように、2つの接続凸部5の間に第1下ネジ止め部31を設けることで、ネジ96を締め付けるとき、何れかのグロメット2に偏ることなく、2つのグロメット2に締付力を均等に作用させ易くなる。この結果、全体的な密封性の向上を図ることができる。
第2下ネジ止め部32は、第1壁11の下端部に設けられている。第2下ネジ止め部32は、第1壁11と第2壁12とが接続する箇所の近傍であって、図1に示す接続凸部5bの近傍に配置されている。
第2壁12の構成について説明する。第2壁12には、グロメット2a,2bを接続することが可能な2つの第2接続凸部6と、上カバー4との接合に用いられる第2上ネジ止め部42と、が設けられている。
第2接続凸部6は、それぞれ、ケース本体10から外側に突出するように形成されている。第2接続凸部6が第2壁12から突出する方向は、第2壁12に垂直な方向であり、また、ケース本体10と上カバー4とを接合する向きに対して垂直な方向である。また、第2接続凸部6が突出する方向は、接続凸部5が第1壁11から突出する方向に対して垂直となっている。
第2接続凸部6は、第2壁12に、互いに間隔をあけて2つ形成されている。2つの第2接続凸部6のそれぞれには、上側を開放させたU字状の凹部7が形成されている。
これにより、それぞれの凹部7に、電線80を通過させたグロメット2a,2bを上側からスライドして嵌め込み、この状態で上カバー4をケース本体10に固定することで、凹部7が開放された部分を上カバー4で閉鎖して、グロメット2a,2bが凹部7から外れないように固定することができる。また、上カバー4をケース本体10に固定するネジ96の締付けによって、グロメット2a,2bの縁部が周囲に密着し、これにより防水を実現することができる。
グロメット2a,2bがケース本体10と上カバー4とで挟み込まれる部分は、上下方向に細長い矩形状となっている。この部分が有する矩形の4つの角は、何れも小さな丸みが付けられている。これに対応して、凹部7は上下方向に細長い矩形状の凹部とされ、上カバー4と向かい合う部分に位置する2つの角に小さな丸みが付けられている。これにより、防水上の弱点となる角張った部分をなくして、水の侵入を良好に防止することができる。
第2壁12において、凹部7の内壁には、ケース本体10の外部から内部に向かって順に、第1溝71と、第2溝72と、が形成されている。第1溝71及び第2溝72は、何れもU字状の細長い溝として形成されており、互いに平行に配置されている。
このように、本実施形態においては、第1壁11に凹部7が設けられるとともに、第1壁11に垂直に接続される第2壁12にも凹部7が設けられている。更に、第1壁11及び第2壁12の何れにおいても、凹部7が複数設けられている。これにより、車内の電気機器のレイアウト等を考慮して、電線80を複数に分けて多様な向きに引き出すことが容易になる。
また、本実施形態では、第1壁11と、第2壁12とで、凹部7の開放側の向きが互いに逆となるように構成されている。即ち、第1壁11に設けられた凹部7は、下カバー3に向かって開放される。第2壁12に設けられた凹部7は、(ケース本体10からみて下カバー3と反対側に配置された)上カバー4に向かって開放される。このように凹部7の開放側の向きを壁ごとに振り分けることで、防水しにくくなる箇所が集中して配置されるのを回避して、全体としての防水性能を向上させることができる。
第2壁12は第1壁11よりも狭く形成されているので、電線80を引き出すためのスペースを確保することが比較的難しい。これに対応して、第2壁12に形成されている凹部7は、第1壁11に形成されている凹部7よりも、小さくなっている。これにより、例えば、電線80の束が多い幹線は第1壁11の下部に配置されたグロメット2に接続し、束が少ない支線は第2壁12の上部に配置されたグロメット2a,2bに接続する、というように、電線80の引出しスペースを考慮したレイアウトを実現することができる。
第2上ネジ止め部42は、第2壁12の上端部に設けられている。また、第2上ネジ止め部42は、上下方向(即ち、ケース本体10と上カバー4とを接合する方向)で見たときに、2つの第2接続凸部6の間に配置されている。これにより、第1壁11の第1下ネジ止め部31と同様に、ネジ96の締付時に何れかのグロメット2a,2bに偏ることなく、2つのグロメット2a,2bに締付力を均等に作用させ易くなる。
第3壁13には、図示しない第3接続凸部が設けられており、この第3接続凸部には、第1壁11と同様に凹部が形成されている。また、第3壁13の上端部には、第3上ネジ止め部43が設けられるとともに、第3壁13の下端部には、図示しない下ネジ止め部が設けられている。
第4壁14の上端部には、第4上ネジ止め部44が設けられるとともに、第4壁14の下端部には、図示しない下ネジ止め部が設けられている。
次に、下カバー3を説明する。図3は、下カバー3の構成を示す斜視図である。
下カバー3は、図3に示すように、下パッキン103を嵌め込むために設けられたパッキン溝37と、4つの側面のそれぞれに1個乃至複数個設けられた下カバーネジ止め部38a,38b,38c,38d,38e,38fと、ケース本体10における第1壁11の凹部7及び第3壁13の凹部に対応して形成された下カバー接続凸部39と、を有する。
パッキン溝37は、ケース本体10に近い側(上側)を開放させた細長い溝として形成されており、下カバー3の周縁部に沿ってループ状に配置されている。
図1には示されていないが、下パッキン103には、ケース本体10に近い側(上方)を開放させた溝が形成されている。この溝に、ケース本体10の下端部の周縁にループ状に形成された図略のリブを差し込むことで、下パッキン103をケース本体10に密着させて取り付けることができる。そして、この下パッキン103をパッキン溝37に嵌め込むことで、下パッキン103を下カバー3に密着させ、これにより防水を実現することができる。
なお、凹部7において、下パッキン103は、ケース本体10と下カバー3の間ではなく、グロメット2と下カバー3との間に挟み込まれる。これにより、ケース本体10と下カバー3の間で、下パッキン103とグロメット2による複合的な防水構造を実現することができる。
下カバーネジ止め部38a,38b,38c,38d,38e,38fは、ケース本体10のそれぞれの側面(第1壁11、第2壁12、第3壁13及び第4壁14)に配置された第1下ネジ止め部31、第2下ネジ止め部32等に対応する位置に設けられている。
下カバー接続凸部39は、ケース本体10の接続凸部5又は前記第3接続凸部に対応して、下カバー3の側面から外側に突出するように設けられている。この下カバー接続凸部39は、ケース本体10から遠い側のグロメット2の周縁部に接触しつつ、凹部7の開放部分を閉鎖することができる。
次に、上カバー4を説明する。図4は、上カバー4の構成を示す斜視図である。図4では、図1と異なり、上カバー4を上下逆にした様子が描かれている。
上カバー4は、図4に示すように、上パッキン104を嵌め込むために設けられたパッキン溝45と、4つの側面のそれぞれに設けられた上カバーネジ止め部46と、ケース本体10における第2壁12の凹部7に対応して形成された上カバー接続凸部47と、を有する。
パッキン溝45は、ケース本体10に近い側(下側)を開放させた細長い溝として形成されており、上カバー4の周縁部に沿ってループ状に配置されている。
図1には示されていないが、上パッキン104には、ケース本体10に近い側(下方)を開放させた溝が形成されている。この溝に、ケース本体10の上端部の周縁にループ状に形成されたリブ17を差し込むことで、上パッキン104をケース本体10に密着させて取り付けることができる。そして、この上パッキン104をパッキン溝45に嵌め込むことで、上パッキン104を上カバー4に密着させ、これにより防水を実現することができる。
なお、凹部7において、上パッキン104は、ケース本体10と上カバー4の間ではなく、グロメット2a,2bと上カバー4との間に挟み込まれる。これにより、ケース本体10と上カバー4の間で、上パッキン104とグロメット2a,2bによる複合的な防水構造を実現することができる。
上カバーネジ止め部46は、ケース本体10のそれぞれの側面(第1壁11、第2壁12、第3壁13及び第4壁14)に配置された第1上ネジ止め部41、第2上ネジ止め部42、第3上ネジ止め部43及び第4上ネジ止め部44のそれぞれに対応する位置に設けられている。
上カバー接続凸部47は、ケース本体10の第2接続凸部6に対応して、上カバー4の側面から外側に突出するように設けられている。この上カバー接続凸部47は、ケース本体10から遠い側のグロメット2a,2bの周縁部に接触しつつ、凹部7の開放部分を閉鎖することができる。
上カバー4の側面の適宜位置には、ベント孔48が形成され、このベント孔48にベントフィルタ93が取り付けられている。ベントフィルタ93は、通気性を有し、防水機能も確保できる公知のフィルタから構成される。
電気接続箱1は、パッキン103,104等によりシールした密閉構造であるため、電気接続箱1内の温度変化等により内部の空気圧が変動する。しかしながら、ベントフィルタ93を介して空気を流通させることにより、圧力の変化による上パッキン104及び下パッキン103の歪みを緩和することができる。また、ベントフィルタ93は、ケース本体10の上側に固定される上カバー4に配置される。従って、電気接続箱1の内部で電装部品等が発熱することにより生じた熱を、上部の当該ベントフィルタ93を経由して容易に逃がすことができる。
次に、第1壁11に取り付けられるグロメット2について、図1及び図5等を参照して説明する。図5は、凹部7の内壁にグロメット2が接触する様子を示す断面斜視図である。
グロメット2は、例えばゴム等の弾性材料を素材とし、ケース本体10に嵌め込まれる嵌込部20と、電線80を通過させる筒部24と、を一体的に成形して構成されている。
嵌込部20は、上下方向に細長い矩形の板状に構成されている(ただし、上述のとおり、矩形の角部は適宜丸められている)。この嵌込部20の中央に、中空状の筒部24が突出状に設けられている。嵌込部20は中空状に形成され、この内部空間と、筒部24の内部空間とが互いに接続されている。
嵌込部20の外周には、図5に示すように、筒部24に近い順に、第1突出部21と、第2突出部22と、第3突出部23と、が並べて設けられている。第1突出部21、第2突出部22及び第3突出部23は、互いに平行に配置された細長い突出部として構成されており、何れも嵌込部20の全周にわたって設けられている。
図5に示すように、第1突出部21、第2突出部22、及び第3突出部23は、凹部7の内壁に形成された第1溝71、第2溝72及び第3溝73に嵌め込むことができる。
第2突出部22が突出している外端面の中央部には、第2突出部22の外周全体にわたって、当該外端面よりも更に外側に小さく突出する第1リップ部25が形成されている。当該第1リップ部25の幅は、前記外端面よりも細くなっている。
同様に、第3突出部23が突出している外端面の中央部には、第3突出部23の外周全体にわたって、小さく更に突出する第2リップ部26が形成されている。当該第2リップ部26の幅は、前記外端面よりも細くなっている。
第2突出部22に対応するグロメット2の内周面29には、第1内溝部27が全周にわたって形成されている。同様に、第3突出部23に対応するグロメット2の内周面29には、第2内溝部28が全周にわたって形成されている。
グロメット2の嵌込部20の内部には、当該グロメット2の変形を防止するために合成樹脂等により構成されたインナー部材90が取り付けられている。インナー部材90は、グロメット2の内周面29の形状に沿った外周形状を有し、その外周面に、第1リブ91と、第2リブ92と、が全周にわたって突出するように形成されている。第1リブ91及び第2リブ92は、グロメット2の第1内溝部27及び第2内溝部28に嵌め込むことができる。
この構成で、グロメット2を図6に示すように下から上にスライドさせて凹部7に嵌合するとき、第1リブ91と第2溝72との間で第1リップ部25が押し潰され、第2リブ92と第3溝73との間で第2リップ部26が押し潰される。従って、グロメット2と凹部7との間で強い密着を実現することができ、防水性を向上させることができる。こうして、ケース本体10と下カバー3とから図2のように形成された開口部70と、当該開口部70に設けられたグロメット2と、の間に水が侵入するのを防止することができる。
更に、図6に示すように、グロメット2の筒部24の内部には、電線80を通過させた状態でシリコン97が充填され、止水構造が実現されている。このシリコン97としては、公知の1液型のシリコンを用いることができる。これにより、電線80を伝って筒部24から電気接続箱1の内部に水が侵入することを防止できる。
なお、第2壁12に取り付けられるグロメット2a,2bは、上述の第3突出部23が省略されていること等を除いて、第1壁11に取り付けられるグロメット2と実質的に同一の構成となっている。ただし、グロメット2bについては、電線80が引き出される向きが下に向けられている。このように、本実施形態の電気接続箱1によれば、複数の場所から電線80を多様な向きに引き出すことができる。
更に、本実施形態では、第1壁11のグロメット2はケース本体10と下カバー3の間で固定され、第2壁12のグロメット2a,2bはケース本体10と上カバー4の間で固定される。従って、電気接続箱のメーカーにおいて第1壁11にだけグロメット2を取り付けた状態(ケース本体10に下カバー3を固定した状態)の半製品を自動車メーカーに納品し、第2壁12にグロメット2a,2bを取り付ける作業(ケース本体10に上カバー4を固定する作業)は自動車メーカー側で行う、というような組立作業の分担も容易である。
以上に説明したように、本実施形態の電気接続箱1は、ケース本体10と、下カバー3と、上カバー4と、グロメット2,2a,2bと、を備える。ケース本体10には、電装部品を収容する収容空間85が形成される。下カバー3は、ケース本体10に固定される。上カバー4は、ケース本体10を介して下カバー3と対向するようにケース本体10に固定される。グロメット2,2a,2bは、電線80が通過可能である。ケース本体10において収容空間85を取り囲むように配置された壁のうち、第1壁11と、第1壁11と隣り合って配置される第2壁12と、の何れにも、凹部7が形成されている。第1壁11に形成される凹部7は、下カバー3に近い側が開放される。第2壁12に形成される凹部7は、上カバー4に近い側が開放される。それぞれの凹部7と、下カバー3又は上カバー4と、から形成された開口部70にグロメット2,2a,2bが配置されている。
これにより、電気接続箱1から電線80を様々な方向に振り分けて引き出すことができるので、複雑な電線80のレイアウトにも容易に対応することができる。また、ケース本体10とカバー3,4とが接合される面にグロメット2,2a,2bが配置される場合、その配置場所が防水上の弱点となり易いが、本実施形態では凹部7の開放側の向きが第1壁11と第2壁12とで逆になっているので、防水性能の低下を効果的に抑制することができる。更に、第1壁11に対してグロメット2を取り付ける作業と、第2壁12に対してグロメット2a,2bを取り付ける作業と、を容易に切り分けることができるので、組立作業の分担等を柔軟に行うことができる。
また、本実施形態の電気接続箱1は、下パッキン103と、上パッキン104と、を備える。下パッキン103は、ケース本体10と下カバー3との間に配置される。上パッキン104は、ケース本体10と上カバー4との間に配置される。下パッキン103は、第1壁11に形成される凹部7において、グロメット2と下カバー3との間で挟み込まれる。上パッキン104は、第2壁12に形成される凹部7において、グロメット2a,2bと上カバー4との間で挟み込まれる。
これにより、パッキン103,104とグロメット2,2a,2bによる複合的な防水構造が実現され、ケース本体10と下カバー3又は上カバー4との間を良好に防水することができる。
また、本実施形態の電気接続箱1において、(凹部7が形成される)第1壁11と第2壁12とが互いに垂直に接続されている。
これにより、電線80を電気接続箱1から多様な向きに引き出し易くすることができる。
また、本実施形態の電気接続箱1においては、第1壁11及び第2壁12の両方において、凹部7は複数形成されている。
これにより、1つの壁の複数箇所から電線80を引き出すレイアウトを実現することができる。
また、本実施形態の電気接続箱1において、例えば第1壁11では、複数形成された凹部7の間に、当該凹部7が開放された部分を閉鎖する下カバー3と、ケース本体10と、を接合するための第1下ネジ止め部31が設けられている。なお、第2壁12においても同様に、複数の凹部7の間に第2上ネジ止め部42が設けられている。
これにより、1つの壁の複数の場所から電線80を引き出すことができる。また、電線80が引き出される場所に配置される複数のグロメット2に対して下カバー3から加えられる締付力に偏りを生じにくくすることができるので、全体としての防水性能を向上させることができる。
また、本実施形態の電気接続箱1は、グロメット2の内部に配置されたインナー部材90を備える。インナー部材90の外周には第1リブ91及び第2リブ92が形成される。凹部7の内周には第2溝72及び第3溝73が形成される。第1リブ91と第2溝72とがグロメット2を挟んで対向し、第2リブ92と第3溝73とがグロメット2を挟んで対向する。
これにより、外力等によるグロメット2の内側への変形を、インナー部材90の第1リブ91及び第2リブ92によって防止することができる。従って、防水性能を安定して発揮させることができる。
また、本実施形態の電気接続箱1において、グロメット2の外周には、インナー部材90の第1リブ91及び第2リブ92と対応する位置に第1リップ部25及び第2リップ部26が形成される。凹部7に形成された第2溝72及び第3溝73の内壁に、第1リップ部25及び第2リップ部26が押し潰されながら接触する。
これにより、第1リップ部25及び第2リップ部26の部分で強力な防水を実現することができる。
また、本実施形態の電気接続箱1において、凹部7は、ケース本体10から外側に突出するように設けられた接続凸部5に形成されている。
これにより、グロメット2がケース本体10の内側へ突出しにくくなるので、収容空間85を広く確保することができる。
また、本実施形態の電気接続箱1において、下カバー3は、ケース本体10の下側に固定される。第1壁11に設けられた凹部7は、第2壁12に設けられた凹部7より大きく形成されている。
これにより、例えば、第1壁11の下部から太い幹線の電線束を引き出し、第2壁12から細い支線の電線束を引き出すようなレイアウトを実現することができる。
また、本実施形態の電気接続箱1では、凹部7において、当該凹部7が開放された部分を閉鎖する下カバー3又は上カバー4に向かい合う部分に大きな又は小さな丸みが付けられている。グロメット2,2a,2bは、前記丸みに対応して丸みを有する形状に構成されている。
これにより、防水上の弱点となり易い角張った部分を減らすことができるので、防水性能を向上させることができる。
また、本実施形態の電気接続箱1において、上カバー4が、ケース本体10の上側に固定されるとともに、この上カバー4に、通気防水構造を有するベントフィルタ93が設けられている。
これにより、電気接続箱1内の圧力の変化を防止することができる。また、電気接続箱1の内部で生じた熱を、上部の通気防水構造を介して外部へ容易に逃がすことができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上カバー4に近い側が開放された凹部7を、第2壁12の代わりに、第1壁11と向かい合って配置される第3壁13に設けるように変更することができる。この場合、第3壁13を、本発明の「第2壁」として把握することができる。
凹部7は、接続凸部5のように凸となっている部分に形成することに代えて、凸となっていない部分に形成することもできる。
下パッキン103及び上パッキン104を嵌め込むパッキン溝をケース本体10に設け、下カバー3及び上カバー4に、下パッキン103又は上パッキン104の溝部が装着されるリブを設けるように変更することができる。
凹部7は、下カバー3又は上カバー4に近い側が開放されている限り、任意の形状とすることができる。また、第2壁12に形成されている凹部7を、第1壁11に形成されている凹部7よりも大きく形成することもできる。
第1壁11に凹部7を1つ又は3つ以上形成することもできる。同様に、第2壁12に凹部7を1つ又は3つ以上形成することもできる。
インナー部材90に形成されるリブの数は、2つに代えて、1つ又は3つ以上とすることができる。同様に、グロメット2に形成されるリップ部の数も、2つに代えて、1つ又は3つ以上とすることができる。