発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、下記の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。下記の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、観察装置の一例である顕微鏡100の模式図である。顕微鏡100は、ステージ110、制御部120、照明部130、対物光学系140、画像検出部150、レーザ装置160、励起部170、上側CARS光検出部180、および下側CARS光検出部190を備える。
顕微鏡100において、照明部130は第1の照射部を、レーザ装置160は、第2の照射部をそれぞれ形成する。また、画像検出部150は第1の検出部を、上側CARS光検出部180は第2の検出部を、下側CARS光検出部190は第3の検出部をそれぞれ形成する。
ステージ110は、顕微鏡100の観察対象となるサンプル112を支持する。これにより、ステージ110に置かれたサンプル112に対して、照明部130からの照明光を図中上方から照射できる。また、ステージ110に置かれたサンプル112は、上側CARS光検出部180により図中上側から観察できる。
ステージ110は、サンプル112の図中下面を露出させる開口を有する。これにより、ステージ110に置かれたサンプル112に対して、レーザ装置160および励起部170により図中下側からレーザ光を照射できる。また、ステージ110に置かれたサンプル112は、画像検出部150および下側CARS光検出部190により、図中下側から観察できる。
また、ステージ110は、ステージスキャナ111に結合される。ステージスキャナ111は、図中に矢印x−yにより示すように、サンプル112が置かれた面と平行にステージ110を移動させる。これにより、顕微鏡100においては、光学系の光軸を固定したまま、サンプル112の広い範囲を観察できる。
制御部120は、処理装置122、キーボード124、マウス126および表示部128を有する。処理装置122は、制御手順を実行させるプログラムを汎用パーソナルコンピュータに実装することにより形成できる。
キーボード124およびマウス126は、処理装置122に接続され、処理装置122にユーザの指示を入力する場合に操作される。表示部128は、キーボード124およびマウス126によるユーザの操作に対してフィードバックを返すと共に、処理装置122が生成した画像または文字列をユーザに向かって表示する。
制御部120は、画像検出部150、上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190の検出結果に基づいて、表示部128に表示する画像を生成する。また、制御部120は、ステージスキャナ111、照明部130、レーザ装置160および励起部170の各部に結合され、ユーザから受け付けた指示に応じてこれらの動作を制御する。
照明部130は、照明光源131、コレクタレンズ132、リレーレンズ133、135、138、リング絞り134および視野絞り136を有する。視野絞り136は、対物光学系140の焦点位置P11に対して共役な位置P12に配される。リング絞り134の位置については後述する。照明光源131は、例えばハロゲンランプ等により白色のインコヒーレントな照明光を発生する。コレクタレンズ132により集められた照明光は、リレーレンズ133、138、リング絞り134、視野絞り136を介し、帯域通過フィルタ139で可視光帯域の光のみを透過して、サンプル112に照射される。
対物光学系140は、ステージ110に対して互いに反対側に配された上側対物レンズ142および下側対物レンズ144を有する。図中上側の上側対物レンズ142は、照明部130から照射された照明光を、ステージ110に置かれたサンプル112に集光する。そのため上側対物レンズ142はコンデンサレンズとも呼ばれる。なお、対物レンズとして使用することを目的とした収差補正がされていない照明用のコンデンサレンズであっても、例えば上側対物レンズ142として用いることができる場合もある。また、図中下側の下側対物レンズ144は、励起部170から照射された励起光を、サンプル112の内部で集光させる。
なお、対物光学系140において、上側対物レンズ142および下側対物レンズ144は、互いに略等しい開口数を有することが好ましい。これにより、コヒーレントな照射光をサンプル112に照射することで発生するコヒーレントな射出光を観察する場合に、画像あるいはスペクトルにアーチファクトが重畳されて、検出精度が低下することを防ぐことができる。より具体的には、上側対物レンズ142の開口数と下側対物レンズ144の開口数との比RNAは、右式[0.8<RNA<1.2]を満たすことが好ましい。
画像検出部150は、ダイクロイックミラー151、結像レンズ152、リレーレンズ154、帯域通過フィルタ155、開口絞り156、リレーレンズ157およびCCDカメラ158を有する。ダイクロイックミラー151は、サンプル112から射出された光のうち、可視光帯域の光を反射し、レーザ光源161、162からサンプル112に照射される波長帯域の光を透過させる。これにより、照明部130がサンプル112に照射した照明光のうち、サンプル112において透過または散乱した照明光が、画像検出部150に導入される。
帯域通過フィルタ155は、照明部130がサンプル112に照射した照明光の波長帯域の光に限って透過させ、他の波長の光を遮断する。結像レンズ152は、サンプル112により散乱した照明光による像を一次像面153に形成する。更に、リレーレンズ154、157は、CCDカメラ158の撮像面にその像を再結像する。CCDカメラ158は、照明光の帯域に感度を有するので、再結像された像を、暗視野観察像として撮像する。
レーザ装置160は、複数のレーザ光源161、162と、コンバイナ163とを有する。レーザ光源161は発光波長λSのパルスレーザを、レーザ光源162は、発光波長λPのパルスレーザを、それぞれ個別に発生する。レーザ光源161、162の発光波長λS、λPは、互いに異なる波長である。また、レーザ光源161、162の発光波長λS、λPは、帯域通過フィルタ139が透過する波長帯域とも異なる。
レーザ光源161、162としては、例えば、モードロックピコ秒Nd:YVO4レーザ、モードロックピコ秒イットリビウムレーザー等を用いることができる。なお、レーザ光源161、162の一方を、レーザ光源161、162の他方が発生したパルスレーザの波長を変換する光パラメトリック発振器に置き換えてもよい。
レーザ光源161、162により発生したピコ秒パルスのうち、短い方の波長λPを有するパルスレーザは、CARS光観察におけるポンプ光として利用される。また、レーザ光源161、162の発生するピコ秒パルスのうち、長い方の波長λSを有するパルスレーザは、CARS光観察におけるストークス光として利用される。
レーザ光源161、162から射出されたレーザ光は、コンバイナ163に入射されて単一のビームになる。これにより、ポンプ光とストークス光とを併せた励起光をサンプル112に照射してCARS光を発生させることができる。
なお、レーザ装置160は、レーザ光源161、162が発生するポンプ光とストークス光とを同期させる目的で遅延光路を備えてもよい。遅延光路は、互いの間隔を変更できる複数の反射鏡により形成できる。また、レーザ装置160においては、フォトニック結晶ファイバを用いてストークス光を広帯域化してもよい。
励起部170は、ガルバノスキャナ171およびスキャンレンズ172を有する。ガルバノスキャナ171は、互いに向きが異なる2軸の周りを揺動する反射鏡を備え、入射した照射光の光路を、光軸と交差する方向に二次元的に変位させる。
なお、スキャンレンズ172は、ガルバノスキャナ171から射出された照射光を、予め定められた一次像面173上に合焦させる。これにより、レーザ装置160から射出された照射光でサンプル112の観察領域を走査させ、予め定められた広さを有する観察領域に照射光を照射できる。
上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190のそれぞれは、ダイクロイックミラー181、191、リレーレンズ182、192、183、193、帯域通過フィルタ184、194および光電子増倍管185、195を有する。ダイクロイックミラー181、191は、照明部130が照明光として発生する可視光帯域の光を透過し、励起部170からの励起光を透過し、サンプル112において発生したCARS光を反射する。これにより、ダイクロイックミラー181、191は、サンプル112において発生したCARS光を、上側CARS光検出部180または下側CARS光検出部190に導入する。
更に、帯域通過フィルタ184、194は、CARS光を透過し、照明部130からの照明光および励起部170からの励起光を含む、CARS光以外の波長の光を遮断する。これにより、光電子増倍管185、195は、CARS光を選択的に検出できる。よって、顕微鏡100においては、CARS光観察と暗視野観察とを同時に実行できる。
なお、照明部130において、視野絞り136およびリレーレンズ138の間には、反射鏡137が配される。また、励起部170においても、スキャンレンズ172および結像レンズ175の間に、反射鏡174が配される。反射鏡137、174は、照明光または励起光の光路を折り曲げることにより、顕微鏡100の構造物が過剰に高くなることを防止する。
上記のような顕微鏡100は、サンプル112に対して、照明部130および画像検出部150を用いた暗視野観察に使用できる。また、顕微鏡100は、レーザ装置160、励起部170、上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190を用いたCARS光観察にも使用できる。
また、顕微鏡100においては、照明部130および励起部170の反射鏡137、174と、画像検出部150、上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190のダイクロイックミラー151、181、191とは、いずれも対物光学系140の光軸Q上に配される。よって、暗視野観察とCARS光観察との両方において対物光学系140が共通に使用される。
ここで、顕微鏡100においては、暗視野観察の照明光を形成するリング絞り134を、上側CARS光検出部180と上側対物レンズ142との間ではなく、リレーレンズ138、135からなるリレー光学系を介することにより照明部130に配している。即ち、リング絞り134は、上側対物レンズ142の射出瞳の位置P1と光学的に共役な位置P2に配される。
そして、暗視野観察像を形成する開口絞り156が、下側対物レンズ144と下側CARS光検出部190との間ではなく、結像レンズ152とリレーレンズ154からなるリレー光学系を介することにより画像検出部150に配される。即ち、開口絞り156は、下側対物レンズ144の射出瞳の位置P3と光学的に共役な位置P4に配される。
また、上側CARS光検出部180のダイクロイックミラー181は、上側対物レンズ142と照明部130との間に配され、下側CARS光検出部190のダイクロイックミラー191は、下側対物レンズ144と画像検出部150との間に配される。
図中に矢印Mで示すように、リング絞り134は、光軸Qと平行な方向に移動させることができる。さらに、図中に点線で示す光学部材G1を、リング絞り134とリレーレンズ135との間に挿抜することもできる。光学部材G1としては、レンズ、平行平面ガラス等を使用する。これらにより、顕微鏡100においては、上側対物レンズ142とリング絞り134との間の光路長を変化させることができる。特に光学部材G1の挿抜では、上側対物レンズ142とリング絞り134との間の光路長を大きく変化させても、ケーラー照明に必要なリング絞り134と照明光源131の結像関係を保つことができる。
よって、例えば、ピント調節のためなどで上側対物レンズ142を上下させてリレーレンズ138との間隔を変えた場合に、リング絞り134の位置を光軸Qと平行な方向に移動させて、上側対物レンズ142とリング絞り134との間の光路長を調節する。
また、観察倍率等の異なる光学特性が求められる場合や、上側対物レンズ142がサンプル112等に接触して汚染された場合等で、上側対物レンズ142を倍率や開口数の異なる別の対物レンズに交換すると、上側対物レンズ142の射出瞳の位置P1の位置が大きく変わることもあるし、リング絞り134の適切なリングの大きさも変わることがある。その場合には、リング絞り134を適切な大きさのものに交換し、光学部材G1を追加したり交換したりして、上側対物レンズ142とリング絞り134との間の光路長をおおよそ合わせ、その後にリング絞り134の位置を光軸Qと平行な方向に移動させて、上側対物レンズ142とリング絞り134との間の光路長を微調節する。
このとき、リング絞り134と光学部材G1が一体となった交換可能なリング絞りブロックとして構成されていてもよい。その場合には、上側対物レンズ142の交換と合わせて、適切なリング絞りブロックに一括で交換することができるので、操作を簡単化できるし、さらには上側対物レンズ142の交換に連動して自動的に交換される機構にする場合にも交換機構を単純化しやすいので都合が良い。
リング絞り134の位置の調節は、ユーザがサンプル112を暗視野観察しながら、照明光の直接光が漏れずに観察像が最も鮮明になる位置にリング絞り134を移動させてもよい。また、暗視野像のコントラストを評価して、最もコントラストが高くなる位置にリング絞り134を移動させる仕組みを設けてもよい。このように、リング絞り134の位置を調節可能にすることにより、リング絞り134の位置を上側対物レンズ142の入射瞳の位置P1と光学的に共役な位置P2に精度よく合わせて、暗視野顕微鏡としての解像度の低下を防止できる。
また、開口絞り156も、光軸Qと平行な方向に移動させることができる。さらに、図中に点線で示す光学部材G2を、開口絞り156とリレーレンズ154との間に挿抜することもできる。光学部材G2としては、レンズ、平行平面ガラス等を使用する。これらにより、顕微鏡100においては、下側対物レンズ144と開口絞り156との間の光路長を変化させることができる。特に光学部材G2の挿抜では、下側対物レンズ144と開口絞り156との間の光路長を大きく変化させても、開口絞り156とリレーレンズ157の光路長を保つことができるので、CCDカメラ158で適切にサンプル112からの射出光を受けることができる。
よって、例えば、ピント調節のためなどで下側対物レンズ144を上下させて結像レンズ152との間隔を変えた場合に、開口絞り156の位置を光軸Qと平行な方向に移動させて、下側対物レンズ144と開口絞り156との間の光路長を調節する。
また、観察倍率等の異なる光学特性が求められる場合や、下側対物レンズ144がサンプル112等に接触して汚染された場合等で、下側対物レンズ144を倍率や開口数の異なる別の対物レンズに交換すると、下側対物レンズ144の射出瞳の位置P3の位置が大きく変わることもあるし、開口絞り156の適切な開口の大きさも変わることがある。その場合には、開口絞り156の開口を適切な大きさに変えたり、適当な大きさの開口絞りに交換したり、光学部材G2を追加したり交換したりして、下側対物レンズ144と開口絞り156との間の光路長をおおよそ合わせ、その後に開口絞り156の位置を光軸Qと平行な方向に移動させて、下側対物レンズ144と開口絞り156との間の光路長を微調節する。
このとき、開口絞り156と光学部材G2が一体となった交換可能な開口絞りブロックとして構成されていてもよい。その場合には、下側対物レンズ144の交換と合わせて、適切な開口絞りブロックに一括で交換することができるので、操作を簡単化できるし、さらには下側対物レンズ144の交換に連動して自動的に交換される機構にする場合にも交換機構を単純化しやすいので都合が良い。
リング絞りブロックと開口絞りブロックの交換は、上側対物レンズ142および下側対物レンズ144の交換と合わせて、電動機構により自動的に行われることが、顕微鏡100を操作する操作者の負荷が最も少なくて都合が良い。
このようなリング絞り134および開口絞り156の配置により、顕微鏡100においては、図中上側の上側CARS光検出部180から上側対物レンズ142までの間の光路上からリング絞り134が排除される。また、図中下側の下側CARS光検出部190から下側対物レンズ144までの光路上から開口絞り156が排除される。
顕微鏡100においては、例えば、下記の表1に記載する波長特性の組み合わせとした場合に、暗視野観察とCARS光観察とを同時に実行できる。この場合、サンプル112から発生するCARS光の波長は、800〜1010[nm]である。ただし、励起光およびフィルタ類の特性の組み合わせが下記のものに限られないことはもちろんである。また、リング絞り134に換えて、中央を遮光した偏った開口を有する偏心絞りを用いても、顕微鏡100を用いてサンプル112を暗視野観察できる。
図2は、上記のように設定された顕微鏡100による暗視野観察を説明する模式図である。顕微鏡100における暗視野観察においては、対物光学系140および制御部120に加えて、照明部130および画像検出部150を使用する。
図中に点線で示すように、照明部130において照明光源131が射出した照明光は、それぞれリレーレンズ133、135、138を介して、リング絞り134、視野絞り136および帯域通過フィルタ139を通じて、照明部130から射出される。これにより、ステージ110上のサンプル112に対して、照射角度が上側対物レンズの開口数の周辺部分だけの環状に制限された照明光が、図中上方から照射される。
サンプル112に照射された照明光のうち大部分はサンプル112を通過するときに直進する。そして下側対物レンズ144で取り込まれ、画像検出部150のダイクロイックミラー151で反射されてCCDカメラ158の方向に向かうが、開口絞り156で遮光されCCDカメラ158までは到達しないので検出されない。しかしながら、照明光の一部は、サンプル112を通過するときに散乱されてその進む方向を変えられ、開口絞り156を通過し、CCDカメラ158に到達して検出される。よって、サンプル112により散乱された照明光により暗視野像が観察できるのである。
画像検出部150は、そのような散乱光を検出して、サンプル112の形状に応じた明暗像を検出する。このような暗視野観察は、サンプル112が透明でコントラストが低い場合であっても、微小構造・微小病原体・微小スクラッチ傷を容易に確認できる。
図3は、顕微鏡100によるCARS光観察を説明する模式図である。顕微鏡100におけるCARS光観察においては、対物光学系140および制御部120に加えて、レーザ装置160、励起部170、上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190を使用する。
図中に点線で示すように、励起部170から射出された励起光は、ダイクロイックミラー151、191を透過して、ステージ110上のサンプル112に図中下方から照射される。下側対物レンズ144により励起光をサンプル112の内部に集光させることにより、サンプル112においては、サンプル112に含まれる分子の組成に応じた波長を有するCARS光が発生する。
よって、顕微鏡100において、上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190を用いて、サンプル112を観察できる。ここで、顕微鏡100においては、リング絞り134、開口絞り156等の光量を減少させる光学素子が、サンプル112においてCARS光を発生させる励起光の光路上にも、サンプル112で発生したCARS光の光路上にも、配置されていない。よって、励起光の利用効率を向上させることができる。また、発生したCARS光を効率よく検出できるので、観察に要する作業時間も短縮できる。
なお、サンプル112に対して励起部170と同じ側に配置された下側CARS光検出部190により観察するCARS光は、恰もサンプル112により反射された、言わば反射CARS光である。一方、サンプル112に対して励起部170と反対側に配置された上側CARS光検出部180により観察するCARS光は、恰もサンプル112を透過した、言わば透過CARS光である。
図4は、反射CARS光による観察で分解可能な空間周波数の領域を示す図である。図5は、透過CARS光による観察で分解可能な空間周波数の領域を示す図である。ここで、分解可能な空間周波数の領域とは、観察対象を仮に複数の空間周波数に分解すなわちフーリエ変換した場合に、複数の空間周波数のうち、像の形成に寄与する空間周波数を含む領域である。
なお、図4および図5において、図中右側に示すスケールにおいて、図中上端側は光強度が高いことを示し、図中下端側は光強度が低いことを示す。また、各図の中央付近に表示される観察画像の各々においては、図中で中央側の光強度が高く、外周側の光強度が低いことを示しており、表示画像の濃淡が、それぞれ上記スケールに示された濃淡に対応している。
図4に示すように、反射CARS光による観察の分解可能な空間周波数の領域と、図5に示す透過CARS光による観察の分解可能な空間周波数の領域とは、互いに異なり、互いに排他的である。よって、サンプル112を観察する目的に応じて、上側CARS光検出部180と下側CARS光検出部190とを適宜使い分けることが好ましい。また、上側CARS光検出部180の検出結果と下側CARS光検出部190の検出結果とを組み合わせることにより、より広い周波数領域を観察することができる。
また、上側CARS光検出部180と下側CARS光検出部190とで、レーザ装置160を共通の光源として用いているため、観察対象における同一の位置を同時に検出することができる。これにより、反射CARS光による画像と透過CARS光による画像とに位置ずれが生じることなく、別々の装置で用いて行う場合に比べてより正確な画像を取得することができる。
図6はレーザ顕微鏡100において、観察対象がCARS光を発生するCARS過程を説明する模式図である。CARS過程は、互いに異なる光周波数ω1、ω2を有するポンプ光およびストークス光の二つのレーザ光を含む励起光を被観察物(サンプル112)に照射して、ポンプ光の光周波数ω1とストークス光の光周波数ω2との差[ω1−ω2]が、被観察物に含まれる分子の固有振動の角振動数ω0と一致した場合に発生する。
CARS過程により、被観察物に含まれる特定の分子構造の振動モードが励振されると、分子振動が光周波数ω3を有する第3のレーザ光であるプローブ光と相互作用することにより、三次の非線形分極に由来するCARS光が発生する。
更に、ポンプ光はプローブ光としても利用できるので、[ω1=ω3]という条件の下で、CARS光が発生する。被観察物において発生するCARS光は、[ωCARS=ω1−ω2+ω3]を満たす光周波数を有する。
よって、被観察物から射出されたCARS光を検出することにより、被観察物に含まれる特定の分子構造、例えば官能基の存在を検出できる。また、励起光を被観察物に照射する位置を変えながら繰り返しCARS光を検出することにより、被観察物における特定の分子構造の分布を画像化することができる。
CARS光は自発ラマン散乱光等に比べると光強度が高いので、光電気変換素子を用いた場合に短時間で検出できる。よって、単に、検出に要する時間が短くなるばかりではなく、ビデオレートでの観察もできる。
これにより、特定分子構造の分布だけではなく、分布の変化も検出することができる。また、被観察物に照射する励起光の帯域を、生細胞に与えるダメージが少ない赤外帯域とすることにより、被観察物の生細胞を生かしたまま観察することができる。
更に、非線形光学効果により生じるCARS光は、下側対物レンズ144により励起光が絞り込まれた極めて狭い領域において発生する。このため、CARS光検出の対象となる領域は、照射光の光軸に交差する方向と、光軸と平行な方向の両方に関して狭い領域となる。よって、CARS光による被観察物の観察は、立体的に高い解像度を有する。
従って、赤外帯域または近赤外帯域の照射光を用いて、観察平面を被観察物の内部に形成してもよい。また、観察平面を、被観察物の深さ方向に順次移動させることにより、特定の分子構造の三次元的な分布を反映した画像を生成できる。
なお、上記のように、コヒーレントな照射光をサンプル112に照射した場合に非線形光学効果を生じる現象として、CARS光の他に誘導ラマン散乱等のラマン散乱光を生じる現象や、多光子励起による蛍光を生じる現象や、第二高調波、第三高調波などの高調波を生じる現象などが知られている。これらの非線形現象により生じた光のうち、例えばラマン散乱光を検出することにより、サンプル112における特定の分子構造の三次元的な分布を反映した画像を生成できる。また、ラマン散乱光以外の光でも、サンプル112の三次元的な構造を反映した画像を生成することができる。このため、顕微鏡100において、レーザ装置160が射出するレーザ光の波長や各種フィルタの波長特性等を適切に調整することにより、顕微鏡100を用いて、多光子励起蛍光、第二高調波、第三高調波、誘導ラマン散乱等によるサンプル112の観察が実行できる。
図7は、顕微鏡100を用いたサンプル112の観察手順を示す流れ図である。まず、サンプル112をステージ110に保持させる(ステップS101)。一旦ステージ110に保持させたサンプル112は、続いて説明する一連の観察手順が完了するまで移動させない。
次に、サンプル112を広域観察する。本実施例では、図2に示したように、照明部130を点灯してサンプル112を暗視野観察する(ステップS102)。暗視野観察にかかる時間は短く、ステージスキャナ111を駆動してステージ110の位置を変えながらサンプル112をリアルタイムで観察できるので、サンプル112が存在する空間的な領域(対物光学系の焦点に対するサンプル112の位置)を素早く把握することができる。
即ち、CARS光観察等の非線形光学効果を利用した観察方法においては、励起される領域が狭く、焦点深度が浅いので、検出対象となる分子がサンプル112に含まれていないためにサンプルからのCARS光が検出できない場合と、励起光の焦点がサンプル112からはずれているためにサンプルからのCARS光が検出できない場合とを区別できない。しかしながら、サンプル112の表面を含む広い範囲を暗視野観察することにより、サンプル112が存在する空間的領域を把握しておけば、サンプル112が存在しない領域をCARS光観察するという無効な観察を防止できる。
更に、顕微鏡100は、暗視野観察等の広域観察とCARS光観察等の非線形光学効果による観察とを同時に実行できるので、広域観察により対物光学系の焦点がサンプル112の内部にあることを確認しながら、同時に非線形光学効果による観察をすることができる。そこで、図示の手順においては、観察手法としてCARS光観察を用いて予備CARS光観察を実行する(ステップS103)。
CARS光は、励起光を非常に細く収束させた場合に生じる光線形光学効果により発生するので、観察できる範囲が狭い。そこで、顕微鏡100においては、ガルバノスキャナ171等により励起光を走査させて、走査した領域から検出したCARS光により観察画像を生成する。このように、CARS光による観察は、走査により観察画像を生成するので、単位面積あたりの観察に要する時間が長い。
そこで、顕微鏡100を用いた予備CARS光観察(ステップS103)においては、間隔をおいて設定した複数の予備観察領域についてCARS光観察することにより、サンプル112の全体、または、広い領域を概観する。ここで、個々の予備観察領域117は狭いので、予備CARS光観察に係る時間を短縮できる。また、顕微鏡100においては、ステージスキャナ111を併用することにより、広い間隔で予備観察領域を配置できる。こうして、サンプル112全体の状態を、短時間で把握することができる。
図8は、顕微鏡100によりサンプル112を観察する場合の、予備CARS光観察におけるサンプル112内の予備観察領域117の分布を例示する模式図である。予備CARS光観察においては、間隔をおいて設定され、個々の領域は狭い複数の予備観察領域117を、サンプル112全体にわたって観察する。これにより、予備CARS光観察においては、短時間でサンプル112全体を概観できる。
なお、予備CARS光観察においては、予備観察領域117相互の間隔を広くすることに加えて、個々の予備観察領域117内における走査速度を高くしてもよい。更に、個々の予備観察領域117は1点の観察点であってもよいし、走査により形成された2次元的な拡がりを有する領域であってもよい。
このように、顕微鏡100においては、制御部120によりステージスキャナ111およびガルバノスキャナ171を制御することにより、サンプル112における観察領域の位置に関連付けられる情報を取得する第1の観察系を形成できる。図1に示した例では、制御部120、レーザ装置160、励起部170、上側CARS光検出部180および下側CARS光検出部190で第1の観察系を形成できる。
また、顕微鏡100における予備CARS光観察では、CARS光観察と暗視野像観察とを同時に実行できるので、サンプル112における励起光の照射位置、特に、励起光がサンプル112内に合焦して照射されているか否かを実時間で把握できる。よって予備CARS光観察において、サンプル112における励起光の焦点位置を継続的に監視して、励起光の照射位置がサンプル112からはずれることを防止できる。これにより、観察画像の取得に時間を要するCARS過程による観察を効率よく実行できる。
また、例えば、サンプル112として、生細胞と死細胞とが混在する細胞シートを観察した場合に、死細胞であることが予備CARS光観察の段階で歴然としている領域は、後述する特定観察領域118の抽出候補から省くことができる。同様に、サンプル112において、生細胞であることが予備CARS光観察の段階で歴然としている領域も、特定観察領域118の抽出候補から省くことができる。よって、少ない領域を高精度に観察することにより、サンプル112全体を高精度に観察した場合と同様の観察精度が得られ、実効的な観察のスループットを向上させることができる。
再び図7を参照すると、上記のように、暗視野像観察と予備CARS光観察とを併用することにより、サンプル112において予め定められた条件に合致する領域、例えば、サンプル112において変色、変形、変質等の変異が認められた、詳細に観察すべき特定観察領域118が予備観察領域117から抽出されて特定される(ステップS104)。この場合、検出すべき変異は、暗視野像観察により見いだしたものであっても、CARS光観察により見いだしたものであってもよい。
また、暗視野像観察および予備CARS光観察により変異が検出された場合、制御部120は、サンプル112における当該変異の位置に関連する情報を取得する。なお、ひとつのサンプル112に対して複数の特定観察領域118が特定された場合は、特定観察領域118の数に応じて、例えばその表面を基準として、サンプル112において当該領域が存在する深さ方向の位置にひも付けられた位置情報が取得できる。これにより、後述する詳細CARS光観察において、特定観察領域118を確実且つ迅速に観察できる。
図9は、詳細CARS光観察におけるサンプル112内の詳細観察領域119の分布を例示する模式図である。サンプル112における詳細観察領域119の各々は、予備CARS光観察において位置が特定された特定観察領域118を含む。特定観察領域118の位置は、例えば、ガルバノスキャナ171およびステージスキャナ111による走査位置と、予備CARS光観察により取得された、サンプル112の深さにひも付けられたサンプル112の深さ方向の位置情報Z1、Z2、Z3に基づいて特定できる。
図示の例において、詳細観察領域119の各々は、各々が対応する特定観察領域118よりも広い。更に、詳細観察領域119におけるCARS光観察においては、ガルバノスキャナ171による励起光の走査速度を低くしてもよい。これにより、詳細観察領域119においては、CARS光観察の高い解像度で特定観察領域118とその周辺を観察できる。このように、顕微鏡100においては、制御部120によりステージスキャナ111およびガルバノスキャナ171を制御して、サンプル112における観察領域の画像を取得する第2の観察系を形成する。
なお、CARS光観察は、検出対象となる分子の立体的な分布を反映した画像を形成することもできる。よって、特定観察領域118および詳細観察領域119の少なくとも一方を立体的な領域として設定してもよい。例えば、予備CARS光観察におけるサンプル112の深さ方向の間隔に応じて、立体的な詳細観察領域119の深さ方向の幅(高さ)を決定してもよい。
図10は、顕微鏡100により予備CARS光観察をする場合の、サンプル112内における予備観察領域117の他の形状を例示する模式図である。図示の予備CARS光観察においては、サンプル112内で間隔をおいて立体的に配された予備観察領域117の各々が、サンプル112の深さ方向に幅を有する。これにより、予備CARS光観察において、予備観察領域117から抽出して特定された個々の特定観察領域118における変異等の空間的な分布の傾向を把握できる。
図11は、上記のような予備観察領域117による予備CARS光観察により特定した詳細観察領域119の形状を例示する模式図である。図示の詳細観察領域119のそれぞれは、対応する予備観察領域117を内側に含み、予備観察領域117よりも立体的に広い範囲に形成される。これにより、変異が生じている予備観察領域117の周囲を詳細に観察して、サンプル112に生じた変異の画像を迅速且つ確実に取得できる。
なお、図示の詳細観察領域119の深さ方向の幅(高さ)は、立体的に配列された予備観察領域117の、サンプル112の深さ方向の間隔により決定してもよい。図は予備観察領域117の深さ方向の間隔の1倍とした場合である。または特定観察領域118を中央に配してその幅を間隔の2倍としても良い。これにより、サンプル112における詳細観察領域119の深さ方向の幅に関しては、取り損ねる可能性のある領域を最小にした十分なものとなる。
図12は、顕微鏡100を用いて、サンプル112を位相差観察する場合の設定を示す図である。なお、図12に示す設定は、次に説明する部分を除くと、図1に示した顕微鏡100と変わらない。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
暗視野観察とCARS光観察とを併用する場合に使用した顕微鏡100は、第2の光学部材として画像検出部150に組み込んだ開口絞り156を取り外し、その代わりに、位相リング146を配することにより位相差観察にも使用できる。位相リング146は、下側対物レンズ144の射出瞳の位置P3と光学的に共役であり、射出瞳の実像ができる位置P4に組み込まれる。なお、一般的には位相差観察をする場合に用いられるリング絞り134の径は、暗視野観察の場合に用いるリング絞り134よりも小さい。
上記のように設定することにより、顕微鏡100を用いて、ステージ110に置いたサンプル112を位相差観察できる。また、図1に示した設定の場合と同様に、位相差観察の設定を維持したまま、CARS光観察も同時に実行できる。
なお、下側対物レンズ144とダイクロイックミラー191との間で、下側対物レンズ144の射出瞳の位置P3と光学的に共役であり、射出瞳の実像ができる位置に位相リング146を配置しても、CARS光観察を実行することができる。この場合、サンプル112に照射される励起光が位相リング146を透過することにより減衰するので、サンプル112を励起してCARS光を発生させることができるものの、検出されるCARS光の光強度は低下する。
図13は、顕微鏡100を用いて、サンプル112を微分干渉観察する場合の設定を示す図である。図13に示す設定は、次に説明する部分を除くと、図1に示した顕微鏡100と変わらない。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示の顕微鏡100は、第1の光学部材として、リング絞り134に換えて、ポラライザ232およびウォラストンプリズム234が照明部130に組み込まれる。また、この設定の顕微鏡100では、第2の光学部材として、開口絞り156に換えて、ウォラストンプリズム236およびアナライザ238が画像検出部150に組み込まれる。これにより、顕微鏡100を用いて、サンプル112の微分干渉観察ができる状態になる。なお、ウォラストンプリズム234、236は、ノマルスキー型であってもよい。
ウォラストンプリズム234は、これによって分離される常光線と異常光線の交差点が上側対物レンズ142の射出瞳の位置P1と光学的に共役な位置P2になるように決められたP2の近傍の位置に組み込まれ、ポラライザ232はそのすぐ隣の照明光源131側に配される。ポラライザ232は、照明光源131が発生した照明光を直線偏光に変換し、ウォラストンプリズム234は照明光を振動方向が互いに直交する2つの直線偏光に分離する。
ウォラストンプリズム236は、これによって合成される常光線と異常光線の交差点が下側対物レンズ144の射出瞳の位置P3と光学的に共役な位置P4になるように決められたP4の近傍の位置に組み込まれ、アナライザ238はそのすぐ隣のCCDカメラ158側に配される。ウォラストンプリズム236は、分離されていた2つの直線偏光を1つに合成し、アナライザ238で特定の方向の偏光成分だけが透過される。
上記のような光学部材を装着することにより、顕微鏡100の画像検出部150においては、照明部130側のウォラストンプリズム234により分離された2つの直線偏光が、サンプル112を透過する際にサンプル112の位相分布に応じた位相差を生じ、画像検出部150側のウォラストンプリズム236とアナライザ238を透過する際に干渉を生じる。よって、画像検出部150において検出される画像に、サンプル112の屈折率分布の微分量に応じたコントラストが生じる。
図14は、顕微鏡100を用いて、サンプル112を変調コントラスト観察する場合の設定を示す図である。図14に示す設定は、次に説明する部分を除くと、図1に示した顕微鏡100と変わらない。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示の顕微鏡100には、第1の光学部材として、リング絞り134に換えて、偏光板231およびスリット絞り235が照明部130に組み込まれる。また、顕微鏡100は、第2の光学部材として、開口絞り156に換えて、モジュレータ233が画像検出部150に組み込まれる。これにより、顕微鏡100を用いて、サンプル112の変調コントラスト観察ができる状態になる。
スリット絞り235は、上側対物レンズ142の射出瞳の位置P1と光学的に共役な位置P2に組み込まれ、光軸からはずれた位置に開口する矩形のスリットを有する。モジュレータ233は、下側対物レンズ144の射出瞳の位置P3と光学的に共役な位置P4に組み込まれる。スリット絞り235とモジュレータ233は光学的に共役な位置に配される。モジュレータ233は、透過光に対して透明な透明領域と、透過光を減衰させて透過するグレー領域と、透過光を遮断する暗黒領域とを有する。モジュレータ233のグレー領域は、スリット絞り235のスリット像が形成される位置に配される。これにより、サンプル112の屈折率の勾配に応じて透過光が屈折して偏向し、モジュレータ233を透過する透過光の割合が変わるので、画像検出部150において検出される検出画像に明暗を生じる。
なお、このほかに、スリット絞り235の開口部の一部に偏光板が取り付けられ、そして偏光板231がスリット絞り235のすぐ隣の照明光源131側に配されていてもよい。この場合は、偏光板231を回転させることで検出画像のコントラストを調節できる。
図15は、顕微鏡101を用いて、サンプル112を暗視野観察する場合の他の設定を示す図である。図15における設定は、次に説明する部分を除くと、図1に示した顕微鏡100と変わらない。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示の設定においては、画像検出部150が、上側対物レンズ142と上側CARS光検出部180との間に配される。この場合、画像検出部150の開口絞り156は、上側対物レンズ142の射出瞳の位置P1と光学的に共役な位置P5に配される。さらに、顕微鏡100の画像検出部150で用いられていたダイクロイックミラー151は、波長特性の異なるダイクロイックミラー159に交換される。
ダイクロイックミラー159は、サンプル112から発生したCARS光を透過し、照明部130からの照明光の一部を透過するとともにサンプル112から射出された光のうちの可視光帯域の光の一部を反射する。これにより、画像検出部150は、サンプル112で散乱して再び上側対物レンズ142に戻った照明光を検出して暗視野像を生成する。ダイクロイックミラー159は、例えば、下記の表2に記載する波長特性を持つ。
なお、上記の例では、画像検出部150を、上側対物レンズ142と上側CARS光検出部180との間に配置した。しかしながら、画像検出部150を、上側CARS光検出部180および照明部130の間に配置しても、同様に、暗視野観察とCARS光観察とを同時に実行できる。
図16は、他の顕微鏡102の構造を示す模式図である。顕微鏡102は、次に説明する部分を除いて、顕微鏡100と同じ構造を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
顕微鏡102は、全体で共通するステージ110、制御部120、および対物光学系140と、照明部130および画像検出部150を含むひとつの観察系と、レーザ装置160、励起部170、上側CARS光検出部180、および下側CARS光検出部190を含む他の観察系とを備える点で、図1等に示した顕微鏡100と共通する。
顕微鏡100と比較すると、顕微鏡102においては、第1の照射部を形成する照明部130が、ステージ110に対して、第2の照射部となる励起部170と、上側対物レンズ142および下側対物レンズ144の光軸と平行な方向について同じ側に配される。また、画像検出部150は、ステージ110に対して照明部130と上記方向について反対側において、上側CARS光検出部180に隣接して配される。
このようにレイアウトした顕微鏡102は、図1に示した顕微鏡100と同じ操作により、サンプル112を同じように観察できる。更に、それぞれが熱源であると共に消費電力が大きいレーザ装置160および照明部130をまとめて配置できるので、熱的および電力的な管理が容易になる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示している場合、および、前の処理の出力を後の処理において用いる場合を除き、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明した場合も、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。