JP2019035353A - クラッチ制御装置 - Google Patents

クラッチ制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2019035353A
JP2019035353A JP2017155824A JP2017155824A JP2019035353A JP 2019035353 A JP2019035353 A JP 2019035353A JP 2017155824 A JP2017155824 A JP 2017155824A JP 2017155824 A JP2017155824 A JP 2017155824A JP 2019035353 A JP2019035353 A JP 2019035353A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
engine
clutch
clutch torque
torque command
shaft
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017155824A
Other languages
English (en)
Inventor
誠之 西村
Masayuki Nishimura
誠之 西村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin Seiki Co Ltd filed Critical Aisin Seiki Co Ltd
Priority to JP2017155824A priority Critical patent/JP2019035353A/ja
Publication of JP2019035353A publication Critical patent/JP2019035353A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが可能な新規な方式の押し掛け始動を実現すること。【解決手段】実施形態によるクラッチ制御装置において、クラッチトルク指令出力部は、エンジンがオフ状態で、かつ、エンジンの第1シャフトと、当該第1シャフトにクラッチを介して接続される第2シャフトと、の回転数の偏差が閾値を超えている状況で運転操作が検出された場合、車両の減速度が、偏差に応じて予め設定された目標減速度に従って変化するようにクラッチトルクを上昇させるためのクラッチトルク指令を出力し、第1シャフトの回転数を上昇させることでエンジンを始動させる押し掛け始動を実施する。【選択図】図2

Description

本発明の実施形態は、クラッチ制御装置に関する。
従来、エンジンと、変速機とを備えた車両において、エンジンおよび変速機の間に設けられるクラッチによる動力伝達を自動で制御する技術が知られている。このような技術では、たとえば、クラッチが解放された状態での走行、つまり惰行時に、ドライバによる運転操作に応じて、クラッチを解放された状態から継合された状態に切り替える(復帰させる)ことがある。
上記のような復帰を実現するためには、エンジンがオフ状態になっている場合は当該エンジンを始動させてオン状態にする必要がある。そこで、従来から、惰行状態からの復帰時にエンジンを始動させるための方法として、スタータによってエンジンに動力を与えながら燃料を消費してエンジンの回転数を引き上げてエンジンを始動させるスタータ始動という方法と、クラッチを徐々に継合させることでエンジンの回転数を徐々に引き上げてエンジンを始動させる押し掛け始動という方法と、が知られている。
特開2012−172578号公報
スタータ始動は、比較的短時間でエンジンを始動させることが可能である。しかしながら、スタータ始動は、クラッチが遮断された状態で実施されるものであるため、スタータ始動によってエンジンを始動させたとしても、エンジンの始動後にクラッチが継合するまでは車両の挙動が発生しない。つまり、スタータ始動では、ドライバの運転操作に対する応答が得られない時間(無応答時間)が存在するので、ドライバのフィーリング(ドライバビリティ)が損なわれる場合がある。
一方、押し掛け始動は、スタータ始動と異なり、燃料の消費を伴わない。また、押し掛け始動は、クラッチを継合させながらエンジンを始動させる手法であるため、車両の挙動を比較的早いタイミングで発生させることが可能である。つまり、押し掛け始動は、ドライバに無応答時間を感じさせるのを抑制することが可能であるので、ドライバビリティを向上させることが可能である。
しかしながら、押し掛け始動によって発生する車両の挙動は、減速であるため、たとえば大きな減速を回避するためにクラッチを少しずつ徐々に継合させる方式で押し掛け始動を実施すると、エンジンが始動するまでにかかる時間(始動時間)が長くなり、結果としてドライバビリティが損なわれることがある。
このように、従来では、惰行状態からの復帰時にエンジンを始動させる場合において、ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが困難であった。
そこで、本発明の実施形態の課題の一つは、ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが可能な新規な方式の押し掛け始動を実現することが可能なクラッチ制御装置を提供することである。
実施形態によるクラッチ制御装置は、車両を加速または減速させるための運転操作を検出する操作検出部と、エンジンの第1シャフトと、当該第1シャフトにクラッチを介して接続される第2シャフトと、の回転数を取得する回転数取得部と、クラッチにより伝達されるクラッチトルクを変化させるためのクラッチトルク指令を出力するクラッチトルク指令出力部と、を備え、クラッチトルク指令出力部は、エンジンがオフ状態で、かつ第1シャフトと第2シャフトとの回転数の偏差が閾値を超えている状況で運転操作が検出された場合、車両の減速度が、偏差に応じて予め設定された目標減速度に従って変化するようにクラッチトルクを上昇させるためのクラッチトルク指令を出力し、第1シャフトの回転数を上昇させることでエンジンを始動させる押し掛け始動を実施する。これにより、押し掛け始動の実施時の目標減速度を予め設定しておくことで、車両の挙動が急激に変動するのを抑制しながら、第1シャフトの回転数がより早く上昇するような新規な方式の押し掛け始動を実現することができる。すなわち、ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが可能な新規な方式の押し掛け始動を実現することができる。
上記のクラッチ制御装置において、たとえば、クラッチトルク指令出力部は、エンジンがオフ状態で、かつ偏差が閾値を超えている状況で運転操作が検出された場合、押し掛け始動がエンジンの始動を実現するのに要する始動時間をシミュレーションにより予測し、当該始動時間の予測値が所定時間より短い場合に、押し掛け始動を実施する。これにより、押し掛け始動によってエンジンを始動させるのに所定時間以上かかる場合は、始動時間がより短い他の方法でエンジンを始動させるという選択をとることができる。
また、上記のクラッチ制御装置において、たとえば、クラッチトルク指令出力部は、運転操作が車両を加速させるための加速操作である場合、当該加速操作の度合に応じて変化する判定時間を所定時間として用いて、押し掛け始動を実施するか否かを決定する。これにより、ドライバの加速意思の度合を反映しながら、押し掛け始動を実施するか否かを決定することができる。
また、上記のクラッチ制御装置において、たとえば、クラッチトルク指令出力部は、目標減速度に基づいて、押し掛け始動を実施した場合における第1シャフトの回転数の変化をシミュレートし、当該回転数がエンジンを始動させるのに十分な大きさまで上昇するのに要したシミュレーション上の時間を、始動時間の予測値として算出する。これにより、第1シャフトの回転数の変化のシミュレーションに基づき、始動時間の予測値を容易に算出することができる。
また、上記のクラッチ制御装置は、たとえば、始動時間の予測値が所定時間より長い場合に、エンジンに設けられるスタータを制御することでエンジンを始動させるスタータ始動を実施するスタータ制御部をさらに備え、クラッチトルク指令出力部は、始動時間の予測値が所定時間より長い場合、スタータ始動によってエンジンが始動するまで、クラッチトルクをゼロにするためのクラッチトルク指令を出力する。これにより、押し掛け始動を実施すると始動時間が比較的長時間となってドライバビリティが低下することが予測される場合に、他の方法としてのスタータ始動を実施することで、ドライバビリティの低下を回避することができる。
また、上記のクラッチ制御装置において、たとえば、目標減速度は、偏差と、車両を加速させるための運転操作である加速操作の度合と、に応じて異なるように設定されており、クラッチトルク指令出力部は、押し掛け始動を実施する場合、偏差と、加速操作の度合と、に応じて目標減速度を決定する。これにより、押し掛け制御の実施時に実現すべき目標減速度を、第1シャフトおよび第2シャフトの回転数の接近度合と、ドライバの加速意思と、の両方を考慮して決定することができる。
また、上記のクラッチ制御装置は、たとえば、目標減速度は、偏差および加速操作の度合に加えて、さらに、変速機が有する複数の変速段に応じて異なるように設定されており、クラッチトルク指令出力部は、押し掛け始動を実施する場合、偏差および加速操作の度合に加えて、さらに、複数の変速段のうち現在選択されている変速段に応じて、目標減速度を決定する。これにより、現在の車両の加速(減速)性能をさらに考慮して、押し掛け制御の実施時に実現すべき目標減速度を決定することができる。
図1は、実施形態による車両の概略的構成を示した例示的なブロック図である。 図2は、実施形態によるクラッチ制御装置の構成(機能)を示した例示的なブロック図である。 図3は、実施形態において用いられうる目標減速度マップを示した例示的な図である。 図4は、実施形態において用いられうる判定時間マップを示した例示的な図である。 図5は、実施形態によるクラッチ制御装置が惰行状態から通常走行状態への復帰時に実行する一連の処理を示した例示的なフローチャートである。 図6は、実施形態によるクラッチ制御装置が実行する始動時間の予測処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。 図7は、実施形態によるクラッチ制御装置が実行するクラッチトルクの制御処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。 図8は、実施形態において実施されうる押し掛け始動を説明するための例示的なタイミングチャートである。 図9は、実施形態において実施されうるスタータ始動を説明するための例示的なタイミングチャートである。
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
図1は、実施形態による車両1の概略的構成を示した例示的なブロック図である。図1に示されるように、実施形態による車両1は、エンジン11と、変速機12と、クラッチ13と、エンジンECU(Electronic Control Unit)14と、クラッチECU15と、を備える。
エンジン11は、車両1の動力源である。エンジン11は、エンジンECU14の制御に応じて動力(トルク)を出力し、エンジンシャフト11aを回転させる。エンジンシャフト11aは、「第1シャフト」の一例である。以下では、エンジン11から出力されるトルクを、エンジントルクと記載する。
ここで、実施形態によるエンジン11には、後述するスタータ始動の実施時に作動するスタータ11bが設けられている。スタータ11bは、たとえばモータを有しており、当該モータの駆動に応じて出力される動力によってエンジン11を始動させる。なお、スタータ11bは、エンジンECU14またはクラッチECU15の制御に基づいて作動する。
変速機12は、エンジン11の動力を、トルクや回転数、回転方向などを変えて車軸16(および車軸16に接続された車輪17)に伝達する装置である。変速機12には、エンジンシャフト11aとの間で動力の伝達を行うためのインプットシャフト12aと、当該インプットシャフト12aの回転速度の変速を実現する変速機構12bと、が設けられている。変速機構12bは、複数の変速段(ギヤ段)を有している。各変速段の変速比は、ドライバによるシフトレバー(不図示)の操作などに応じて決定される。なお、インプットシャフト12aは、「第2シャフト」の一例である。
クラッチ13は、エンジンシャフト11aと、インプットシャフト12aと、の間に設けられている。クラッチ13は、ドライバによるクラッチペダル(不図示)の操作や、クラッチECU15の制御などに応じて、エンジンシャフト11aとインプットシャフト12aとの間で伝達される動力(トルク)を変化させる。以下では、クラッチ13により伝達されるトルクを、クラッチトルクと記載する。
クラッチ13は、クラッチトルクを変化させることで、エンジンシャフト11aとインプットシャフト12aとの間の動力伝達が遮断された遮断状態(解放状態)と、エンジンシャフト11aとインプットシャフト12aとが完全に接続(継合)した状態で動力を伝達する伝達状態(継合状態)と、エンジンシャフト11aとインプットシャフト12aとが摩擦部材などを介して滑りながら動力(の一部)を伝達する半伝達状態(半継合状態)と、を実現する。なお、クラッチ13は、クラッチアクチュエータ13aによって駆動される。
エンジンECU14は、プロセッサやメモリなどといったコンピュータ資源を備えており、メモリなどに記憶されたコンピュータプログラムをプロセッサによって実行することで、エンジントルクを制御する。同様に、クラッチECU15は、プロセッサやメモリなどといったコンピュータ資源を備えており、メモリなどに記憶されたコンピュータプログラムをプロセッサによって実行することで、クラッチトルクを制御する。なお、エンジンECU14と、クラッチECU15とは、互いに通信可能に接続されている。
ところで、従来では、クラッチ13を遮断状態にしたまま車両1を走行させる場合がある。この場合、エンジンシャフト11aとインプットシャフト12aとの間の動力伝達が遮断されているので、車両1は、慣性のみで走行する惰行状態となる。なお、惰行状態は、エンジン11がオン状態になっている場合と、エンジン11がオフ状態になっている場合と、の2種類に分類可能であるが、以下の説明では、後者の場合の惰行状態のみを想定する。
惰行状態では、エンジンシャフト11aの回転数は、クラッチ13が伝達状態となっている通常走行状態よりも大きく下降する一方、インプットシャフト12aの回転数は、ギヤ段に応じた回転数を保つ。したがって、惰行状態では、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差が比較的大きい。
ここで、車両1を加速または減速させるために、車両1を惰行状態から通常走行状態へ復帰させる場合を想定する。この場合、オフ状態となっているエンジン11を始動させてオン状態にする必要がある。一般に、惰行状態からの復帰時にオフ状態のエンジン11を始動させるための方法として、スタータ始動と、押し掛け始動と、の2種類の方法が知られている。
スタータ始動とは、スタータ11bを用いてエンジン11を始動させる方法である。より具体的に、スタータ始動とは、スタータ11bによってエンジン11に動力を与えながら、燃料を消費してエンジン11の回転数を所定の始動回転数(完爆回転数)まで上昇させることで、エンジン11を自立運転可能な状態にする方法である。
スタータ始動は、比較的短時間でエンジン11を始動させることが可能である。しかしながら、スタータ始動は、クラッチ13が遮断された状態で実施されるものであるため、スタータ始動によってエンジン11を始動させたとしても、エンジン11の始動後にクラッチ13が継合するまでは車両1の挙動が発生しない。つまり、スタータ始動では、ドライバの運転操作に対する応答が得られない時間(無応答時間)が存在するので、ドライバのフィーリング(ドライバビリティ)が損なわれる場合がある。
一方、押し掛け始動とは、スタータ11bを用いずにエンジン11を始動させる方法である。より具体的に、押し掛け始動とは、クラッチ13を遮断状態から伝達状態に切り替え、インプットシャフト12aの回転を用いてエンジンシャフト11aの回転数を少なくとも所定の始動回転数まで上昇させることで、燃料を消費することなく、エンジン11を自立運転可能な状態にする方法である。
押し掛け始動は、スタータ始動と異なり、燃料の消費を伴わない。また、押し掛け始動は、クラッチ13を継合させながらエンジン11を始動させる手法であるため、車両1の挙動を比較的早いタイミングで発生させることが可能である。つまり、押し掛け始動は、ドライバに無応答時間を感じさせるのを抑制することが可能であるので、ドライバビリティを向上させることが可能である。
しかしながら、押し掛け始動によって発生する車両1の挙動は、減速であるため、たとえば大きな減速を回避するためにクラッチ13を少しずつ徐々に継合させる方式で押し掛け始動を実施すると、エンジン11が始動するまでにかかる時間(始動時間)が長くなり、結果としてドライバビリティが損なわれることがある。
このように、従来では、惰行状態からの復帰時にエンジン11を始動させる場合において、ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが困難であった。
そこで、実施形態は、以下に説明するようなクラッチ制御装置100をクラッチECU15内に実現し、惰行状態からの復帰時にエンジン11を始動させる場合に、ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが可能な新規な方式の押し掛け始動を実施する。
図2は、実施形態によるクラッチ制御装置100の構成(機能)を示した例示的なブロック図である。このクラッチ制御装置100は、たとえばクラッチECU15のプロセッサが所定のプログラムを実行した結果としてクラッチECU15内に実現される。なお、実施形態では、図2に示された機能の一部または全部が専用のハードウェア(回路など)によって実現されてもよい。
図2に示されるように、クラッチ制御装置100は、操作検出部101と、回転数取得部102と、クラッチトルク指令出力部103と、エンジントルク指令出力部104と、スタータ制御部105と、記憶部106と、を備える。
操作検出部101は、車両1を加速または減速させるための運転操作を検出する。運転操作は、アクセルペダル(不図示)を用いた加速操作や、ブレーキペダル(不図示)を用いた減速操作などを含む。したがって、操作検出部101は、アクセルペダルや、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの操作ペダルのストロークを検出する各種ストロークセンサ(不図示)などの出力値に基づいて、運転操作を検出する。また、操作検出部101は、変速機12の(現在設定されている)ギヤ段を検出することも可能である。たとえば、操作検出部101は、変速機構12bのシフトポジションを検出するシフトセンサ(不図示)の出力値に基づいて、現在のギヤ段を検出する。
回転数取得部102は、インプットシャフト12aおよびエンジンシャフト11aの近傍に設けられる回転数センサ(不図示)などの出力値に基づいて、インプットシャフト12aおよびエンジンシャフト11aの回転数を検出する。前述したように、惰行状態では、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差が比較的大きくなるので、インプットシャフト12aおよびエンジンシャフト11aの回転数を検出すれば、それらの偏差に基づいて、車両1が惰行状態であるか否かを判定することが可能である。
クラッチトルク指令出力部103は、クラッチトルクを変化させるためのクラッチトルク指令を、クラッチ13を駆動するクラッチアクチュエータ13aに出力する。また、エンジントルク指令出力部104は、エンジントルクを変化させるためのエンジントルク指令を、エンジンECU14に出力する。
スタータ制御部105は、エンジン11に設けられるスタータ11bを制御する。また、記憶部106は、後述する目標減速度マップ300(図3参照)や判定時間マップ400(図4参照)などといった、実施形態において実現される制御に用いられる各種のデータを記憶する。
ここで、実施形態によるクラッチ制御装置100は、惰行状態から通常走行状態への復帰要求としての運転操作(たとえば加速操作)が行われ、オフ状態のエンジン11を始動させてオン状態にする必要が生じた場合、クラッチ13の継合時に発生する車両1の挙動(減速)をドライバビリティの良い挙動にコントロールすることを目的とした新規な方式の押し掛け始動を実施する。
より具体的に、実施形態によるクラッチトルク指令出力部103は、惰行状態から通常走行状態への復帰要求が行われた場合、車両1の減速度が、以下で説明するような目標減速度マップ300で定義される目標減速度の変化に従って変化するようにクラッチトルクを上昇させるためのクラッチトルク指令を出力することで、押し掛け始動を実施する。
図3は、実施形態において用いられうる目標減速度マップ300を示した例示的な図である。図3に示されるように、目標減速度マップ300には、押し掛け始動時に実現されるべき車両1の減速度としての目標減速度と、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差と、の対応関係が設定されている。
ところで、車両1の走行特性は、変速機12のギヤ段に応じて異なるので、目標減速度も、ギヤ段に応じて異なるものとして設定すべきである。したがって、実施形態では、目標減速度マップ300が、変速機12が有する複数のギヤ段に対応するように複数設けられている。そして、クラッチトルク指令出力部103は、押し掛け始動を実施中に選択されているギヤ段に応じた目標減速度マップ300を用いて、目標減速度を決定する。
さらに、ドライバビリティの観点では、目標減速度の変化のさせ方を、ドライバの加速意思の度合に応じて異ならせることが好ましい。たとえば、ドライバが急ぎの加速意思を持っている場合、減速度が多少大きくなったとしても、より早く車両1の挙動を発生させた方が良く、逆に、ドライバがそれほど急ぎの加速意思を持っていない場合、車両1の挙動をそれほど早く発生させる必要は無いと言える。
したがって、実施形態では、以下に説明するように、目標減速度マップ300で定義される目標減速度の変化が、ドライバの加速意思の度合を表すアクセルペダル(不図示)のストロークの大きさに応じて複数パターン存在している。なお、以下では、アクセルペダル(不図示)のストロークを、単にアクセルストロークと表記する場合がある。
たとえば、図3に示される例では、1速用の目標減速度マップ300に、L301〜L303で示される3パターンの目標減速度の変化が定義されている。L301は、アクセルストロークが比較的小さい場合の目標減速度の変化を表し、L302は、アクセルストロークが中程度の大きさの場合の目標減速度の変化を表し、L303は、アクセルストロークが比較的大きい場合の目標減速度の変化を表す。
L301〜L303から分かるように、実施形態による目標減速度マップ300は、アクセルストロークが大きい程、目標減速度の変化の度合が大きくなるように設定されている。したがって、目標減速度マップ300に従って押し掛け始動を実施すれば、ドライバの加速意思が強い程、車両1の挙動が早く発生するようになるので、ドライバビリティが向上する。
また、L301〜L303における目標減速度は、いずれも、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差が押し掛け始動の開始時に対応した初期値Xから小さくなるにつれて、最初は徐々に増加し、当該増加によって一定値に達した後の所定期間は当該一定値を保持し、その後は徐々に低下するように設定されている。このように目標減速度を設定し、当該目標減速度に従って車両1の減速度をコントロールしながら押し掛け始動を実施すれば、当該押し掛け始動の実施時に車両1の挙動が急激に変動することがないので、ドライバビリティが向上する。
このように、実施形態では、押し掛け始動の実施時に実現されるべき目標減速度が、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差と、加速操作の度合としてのアクセルペダルのストロークと、押し掛け始動の実施時に選択されているギヤ段と、に応じて、上記の目標減速度マップ300のような形式で予め設定されている。
そして、クラッチトルク指令出力部103は、押し掛け始動を実施する場合、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差と、加速操作の度合としてのアクセルストロークと、変速機12のギヤ段と、を引数として、目標減速度マップ300を用いて目標減速度を決定し、決定した目標減速度に基づいて算出される目標クラッチトルクに応じたクラッチトルク指令を出力する。
なお、目標クラッチトルクは、下記の式(1)に基づいて算出される。
目標クラッチトルク=目標減速度×車両定数 …(1)
上記の式(1)において、車両定数とは、下記の式(2)に基づいて算出される、車両1のスペックに応じた定数である。
車両定数= 車両重量×タイヤ半径÷総減速比 …(2)
ところで、前述したように、惰行状態から通常走行状態への復帰要求が行われた際にエンジン11を始動させる方法としては、押し掛け始動の他にも、スタータ始動が存在する。押し掛け始動およびスタータ始動のそれぞれの利害得失については既に述べたが、復帰要求が行われてからエンジン11が始動するまでに要する始動時間の観点で見ると、場合によっては、目標減速度マップ300に基づく押し掛け始動よりも、スタータ始動の方が、始動時間が短くなることもありうる。
そこで、実施形態は、惰行状態から通常走行状態への復帰要求が行われた場合、目標減速度マップ300に基づく押し掛け始動がエンジン11の始動を実現するまでに要する始動時間をシミュレーションにより予測し、当該始動時間の予測値が所定時間より短い場合、目標減速度マップ300に基づく押し掛け始動を実施し、始動時間の予測値が所定時間より長い場合、スタータ始動を実施する。
なお、始動時間の予測値が所定時間と等しい場合に押し掛け始動またはスタータ始動のいずれを実施するかは、設定によって決めることが可能であるが、以下では、始動時間の予測値が所定時間と等しい場合はスタータ始動を実施する例を説明する。
また、始動時間の予測値の算出方法としては、様々な方法が考えられるが、実施形態では、一例として、目標減速度マップ300に基づく押し掛け始動を実施するという条件下におけるエンジンシャフト11aの回転数の変化をシミュレートする方法が用いられるものとする。
以下、実施形態において用いられうる始動時間の予測値の算出方法について簡単に説明する。以下では、エンジンシャフト11aの回転数を、単にエンジン回転数と表記する場合がある。
一般に、エンジン11およびクラッチ13を含む駆動系(ドライブトレーン)においては、下記の式(3)が成立する。
エンジントルク+目標クラッチトルク=エンジン慣性×エンジン回転数の変化量 …(3)
上記の式(3)は、上記の式(1)に基づき、下記の式(4)のように変形できる。
エンジン回転数の変化量=(エンジントルク+目標減速度×車両定数)÷エンジン慣性 …(4)
上記の式(4)において、車両定数およびエンジン慣性は、車両1のスペックに応じた定数であるため、エンジントルクおよび目標減速度が分かれば、エンジン回転数の変化量(の推定値)を求めることができる。
ここで、実施形態では、エンジン11がオフ状態となっている場合の惰行状態から復帰する状況を想定しているため、上記の式(4)において、エンジントルクは、エンジン11の冷却水の水温などに基づいて決定される負トルクとしてのフリクショントルクとすることができる。フリクショントルクは、エンジン11の冷却水の水温に対応するものとして、たとえば、フリクショントルクと水温とエンジンシャフト11aの回転数との対応関係が設定されたマップを用いて取得することができる。また、実施形態では、前述したように、目標減速度は、目標減速度マップ300を用いて取得することができる。
したがって、実施形態では、目標減速度マップ300に従って目標減速度を変化させた場合のエンジン回転数の変化量の推移をシミュレートすることが可能であり、結果として、下記の式(5)に基づき、エンジン回転数そのものの推移をシミュレートすることが可能である。
エンジン回転数の今回の推定値=エンジン回転数の前回の推定値+エンジン回転数の変化量 …(5)
このように、実施形態によるクラッチトルク指令出力部103は、惰行状態から通常走行状態への復帰要求が行われた場合、目標減速度マップ300に基づく押し掛け始動を実施した場合におけるエンジン回転数の変化をシミュレートし、当該回転数がエンジン11を始動させるのに十分な大きさ(始動回転数)まで上昇するのに要したシミュレーション上の時間を、始動時間の予測値として算出する。そして、クラッチトルク指令出力部103は、始動時間の予測値が所定時間より短い場合に、目標減速度マップ300に基づく押し掛け始動を実施する。
ところで、実施形態では、始動時間の予測値との比較対象となる所定時間が、ドライバの加速意思を反映するように可変になっていれば、より効果的である。たとえば、ドライバの加速意思の度合が比較的大きい場合、車両1の挙動をより早く発生させた方がドライバビリティの観点では良いので、押し掛け始動が実施される可能性をより高くした方が効果的である。逆に、ドライバの加速意思の度合が比較的小さい場合、車両1の挙動をそれほど早く発生させる必要はないので、押し掛け始動が実施される可能性をより低くしても、特に問題ないと言える。
そこで、実施形態によるクラッチトルク指令出力部103は、運転操作が車両1を加速させるための加速操作である場合、以下に説明するような判定時間マップ400で定義される判定時間を所定時間として用いて、押し掛け始動を実施するか否かを決定する。
図4は、実施形態において用いられうる判定時間マップ400を示した例示的な図である。図4に示されるように、判定時間マップ400には、加速操作の度合としてのアクセルストロークと、判定時間と、の対応関係が設定されている。
L401から分かるように、実施形態による判定時間マップ400は、アクセルストロークが小さい程判定時間が長くなり、アクセルストロークが小さい程判定時間が短くなるように設定されている。したがって、判定時間マップ400に従って決定した判定時間を用いれば、ドライバの加速意思の度合が比較的大きい場合は押し掛け始動が実施される可能性がより高くなり、逆に、ドライバの加速意思の度合が比較的小さい場合に押し掛け始動が実施される可能性がより低くなるので、ドライバビリティの向上がより効果的に実現する。
このように、実施形態によるクラッチトルク指令出力部103は、目標減速度マップ300に基づいた押し掛け始動を実施した場合におけるエンジン11の始動時間の予測値を前述したような方法で算出した後、加速操作の度合としてのアクセルストロークを引数として、判定時間マップ400を用いて判定時間を決定する。そして、クラッチトルク指令出力部103は、始動時間の予測値の比較対象となる所定時間として判定時間を用いて、押し掛け始動を実施するかスタータ始動を実施するかを決定する。
前述したように、実施形態では、始動時間の予測値が判定時間より短い場合、押し掛け始動が実施される。したがって、この場合、クラッチトルク指令出力部103は、車両1の減速度が、目標減速度マップ300で設定された目標減速度に従って変化するようにクラッチトルクを上昇させるためのクラッチトルク指令を出力する。
また、前述したように、実施形態では、始動時間の予測値が判定時間より長い場合(等しい場合も含む)、スタータ始動が実施される。したがって、この場合、スタータ制御部105は、エンジン11に設けられるスタータ11bを制御してスタータ始動を実施し、クラッチトルク指令出力部103は、スタータ始動によってエンジン11が始動するまで、クラッチトルクをゼロにするためのクラッチトルク指令を出力する。
次に、実施形態の動作についてフローチャートを用いて詳細に説明する。
図5は、実施形態によるクラッチ制御装置100が惰行状態から通常走行状態への復帰時に実行する一連の処理を示した例示的なフローチャートである。この図5に示される一連の処理は、車両1が惰行状態になっていること、すなわち、エンジン11がオフ状態で、かつエンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の差が閾値を超えていることを前提として実行される。
図5に示されるように、実施形態では、まず、S501において、クラッチ制御装置100は、操作検出部101の検出結果に基づき、惰行状態から通常走行状態への復帰要求、すなわち加速操作や減速操作などといった車両1の運転操作が行われたか否かを判断する。
S501において、復帰要求が行われなかったと判断された場合、処理が終了する。一方、S501において、復帰要求が行われたと判断された場合、S502に処理が進む。
S502において、クラッチ制御装置100は、目標減速度マップ300に基づいた押し掛け始動がエンジン11の始動を実現するのに要する始動時間が予測済か否かを判断する。
S502において、始動時間がまだ予測されていないと判断された場合、S503に処理が進む。そして、S503において、クラッチ制御装置100は、以下に説明するような始動時間の予測処理を実行する。
図6は、実施形態によるクラッチ制御装置100が実行する始動時間の予測処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。
図6に示されるように、実施形態では、まず、S601において、クラッチ制御装置100のクラッチトルク指令出力部103は、回転数取得部102の検出結果に基づき、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差を算出する。
そして、S602において、クラッチトルク指令出力部103は、S601で算出された偏差と、操作検出部101の検出結果に基づいて取得されるアクセルストロークおよびギヤ段と、を引数として、記憶部106に記憶された目標減速度マップ300を用いて、目標減速度を取得する。
そして、S603において、クラッチトルク指令出力部103は、S602で取得された目標減速度に基づき、エンジン回転数の変化量を推定する(上記の式(4)など参照)。
そして、S604において、クラッチトルク指令出力部103は、S603で算出したエンジン回転数の変化量(の推定値)に基づいて、エンジン回転数を推定する(上記の式(5)など参照)。
そして、S605において、クラッチトルク指令出力部103は、S604で算出したエンジン回転数(の推定値)が、エンジン11が自立運転可能になる所定の始動回転数以上か否かを判断する。
S605において、エンジン回転数が始動回転数より小さいと判断された場合、S601に処理が戻り、(シミュレーション上の)次のタイムステップでの各種パラメータが算出(推定)され、その後再びS605の判断処理が実行される。
一方、S605において、エンジン回転数が始動回転数以上であると判断された場合、S606に処理が進む。そして、S606において、エンジン回転数がエンジン11を始動させるのに十分な大きさ(始動回転数)まで上昇するのに要したシミュレーション上の時間を、始動時間の予測値として算出する。そして、処理が戻る。
このようにして、図5におけるS503の始動時間の予測処理が終了し、S504に処理が進む。なお、S502において、始動時間が予測済であると判定された場合にも、S504に処理が進む。
S504において、クラッチ制御装置100は、以下に説明するようなクラッチトルクの制御処理を実行する。
図7は、実施形態によるクラッチ制御装置100が実行するクラッチトルクの制御処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。
図7に示されるように、実施形態では、まず、S701において、クラッチ制御装置100のクラッチトルク指令出力部103は、操作検出部101の検出結果に基づいて取得されるアクセルストロークを引数として、記憶部106に記憶された判定時間マップ400を用いて、判定時間を決定する。以下に説明するように、判定時間は、押し掛け始動を実施するかスタータ始動を実施するかの判定基準として用いられる。
そして、S702において、クラッチトルク指令出力部103は、上述した図5のS503(図6のS601〜S606)の処理によって算出された始動時間(の予測値)が、S701で決定した判定時間よりも短いか否かを判定する。
S702において、始動時間が判定時間よりも短いと判断された場合、前述したように、スタータ始動を実施するよりも押し掛け始動を実施した方が、ドライバビリティの観点で適切であると判断できる。したがって、この場合、クラッチトルク指令出力部103は、S703において、回転数取得部102の検出結果に基づきエンジン回転数をモニタリングし、エンジン回転数が、エンジン11が自立運転可能になる所定の始動回転数よりも小さいか否かを判断する。
S703において、エンジン回転数が始動回転数よりも大きいと判断された場合、既にエンジン11が自立運転可能になっているので、クラッチトルクを上昇させてエンジン回転数を上昇させる必要は無い。したがって、この場合、クラッチトルク指令出力部103は、S704において、目標クラッチトルクをゼロに設定する。
一方、S703において、エンジン回転数が始動回転数よりも小さいと判断された場合、クラッチトルクを上昇させてエンジン回転数を少なくとも始動回転数まで上昇させる押し掛け始動を実施する必要がある。ただし、前述したように、実施形態では、ドライバビリティの観点から、押し掛け始動を実施する際、車両1の減速度を、予め設定された目標減速度の変化に従って変化させる必要がある。
そこで、実施形態では、S705において、クラッチトルク指令出力部103は、回転数取得部102の検出結果に基づいて、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差を算出する。
そして、S706において、クラッチトルク指令出力部103は、S705で算出された偏差と、操作検出部101の検出結果に基づいて取得されるアクセルストロークおよびギヤ段と、を引数として、記憶部106に記憶された目標減速度マップ300を用いて、目標減速度を決定する。
そして、S707において、クラッチトルク指令出力部103は、目標クラッチトルクを、S706で決定された目標減速度に応じた値に設定する(上記の式(1)など参照)。
なお、S702において、始動時間が判定時間よりも長いと判断された場合(等しい場合も含む)、前述したように、押し掛け始動を実施するよりもスタータ始動を実施した方が、ドライバビリティの観点で適切であると判断できる。したがって、この場合、クラッチトルク指令出力部103は、S708において、目標クラッチトルクをゼロに設定し、S709において、スタータ制御部105を用いてスタータ始動を実施する。
S704、S707、またはS709の処理が終了すると、S710に処理が進む。そして、S710において、クラッチトルク指令出力部103は、直近のS704、S707、またはS708の処理で設定された目標クラッチトルクに応じたクラッチトルク指令を出力する。そして、処理が戻る。
このようにして、図5におけるS504のクラッチトルクの制御処理が終了し、惰行状態からの復帰時に実行される一連の処理が終了する。
以上の構成および動作により、実施形態では、惰行状態から通常走行状態への復帰時に、以下に説明するようなタイミングチャートに沿った押し掛け始動またはスタータ始動が実施される。
まず、押し掛け始動が実施された場合における車両1の各種パラメータの経時変化について説明する。
図8は、実施形態において実施されうる押し掛け始動を説明するための例示的なタイミングチャートである。図8において、L801は、アクセルストロークの経時変化を表す。また、L802は、インプットシャフト12aの回転数の経時変化を表し、L803は、エンジンシャフト11aの回転数の経時変化を表す。また、L804は、クラッチトルクの経時変化を表し、L805は、エンジントルクの経時変化を表す。また、L806は、車両1に発生する減速度の経時変化を表す。
図8に示される例では、タイミングt801で、惰行状態から通常走行状態への復帰要求が行われる(L801参照)。これに伴い、車両1の減速度が目標減速度マップ300に従って変化するように、クラッチトルクが上昇し始める(L804およびL806参照)。そして、所定の遅れを経て、エンジンシャフト11aの回転数が上昇し始める(L803参照)。
エンジンシャフト11aの回転数が所定の始動回転数RSを上回ると、エンジン11が自立運転可能になり、押し掛け始動の目的が達成される。したがって、図8に示される例では、エンジンシャフト11aの回転数が所定の始動回転数RSを上回るようになるタイミングt802でクラッチトルクがゼロになるように、タイミングt802よりも前にクラッチトルクが低下し始める(L803およびL804参照)。そして、タイミングt802でクラッチトルクがゼロになると、押し掛け始動が終了する。
なお、図8に示される例では、インプットシャフト12aの回転数は、クラッチトルクの上昇に伴い、徐々に低下し、エンジンシャフト11aの回転数が始動回転数RSを上回ったタイミングt802からその後のタイミングt803にかけて、略一定となる(L802参照)。また、エンジントルクは、押し掛け始動が実施される場合はフリクショントルクとなるので、負トルクとなる(L803参照)。実施形態において、フリクショントルクは、エンジン11の冷却水の水温に対応するものとして、たとえば、フリクショントルクと水温とエンジンシャフト11aの回転数との対応関係が設定されたマップに基づいて決定される。
ここで、実施形態では、前述したように、押し掛け始動時に実現すべき目標として設定される目標減速度の変化が、アクセルストロークの大きさ(およびギヤ段)に応じて複数パターン存在している(図3参照)。したがって、図8に示される例では、押し掛け始動によってエンジンシャフト11aの回転数が始動回転数RSに到達するまでに要する時間、つまりタイミングt801からタイミングt802に至るまでの時間T800の長さは、常に一定というわけではなく、アクセルストロークの大きさ(L801の縦軸方向の大きさ)などに応じて変化しうる。
次に、スタータ始動が実施された場合における車両1の各種パラメータの経時変化について説明する。
図9は、実施形態において実施されうるスタータ始動を説明するための例示的なタイミングチャートである。図9において、L901は、アクセルストロークの経時変化を表す。また、L902は、インプットシャフト12aの回転数の経時変化を表し、L903は、エンジンシャフト11aの回転数の経時変化を表す。また、L904は、クラッチトルクの経時変化を表し、L905は、エンジントルクの経時変化を表す。また、L906は、車両1に発生する減速度の経時変化を表す。
図9に示される例では、タイミングt901で、惰行状態から通常走行状態への復帰要求が行われる(L901参照)。これに伴い、スタータ始動が実施され、エンジントルクが上昇し始める(L905参照)。そして、所定の遅れを経て、エンジンシャフト11aの回転数が上昇し始める(L903参照)。
スタータ始動は、エンジンシャフト11aの回転数を少なくとも所定の始動回転数RSまで上昇させるように、スタータ11bでエンジン11に動力を与えながら燃料を消費することでエンジンシャフト11aの回転数を変化させる処理である。図9に示される例では、スタータ始動の実施によってエンジンシャフト11aの回転数が始動回転数RSに到達したタイミングt902で、エンジントルクの引き下げが開始される(L903およびL905参照)。そして、エンジントルクの変化が終了してゼロになるタイミングt903で、スタータ始動が終了する(L905参照)。
なお、スタータ始動の開始前は、エンジン11がオフ状態になっているので、スタータ始動の開始前におけるエンジントルクは、前述した押し掛け始動の実施時と同様に、エンジン11の冷却水の水温などに基づいて決定される負トルクとしてのフリクショントルクとなっている(L905参照)。
ここで、スタータ始動の実施時においては、前述した押し掛け始動の実施時とは異なり、クラッチ13が常に遮断状態になっているので、インプットシャフト12aの回転数およびクラッチトルクは、特に変化することがない。したがって、図9に示される例では、インプットシャフト12aの回転数は、スタータ始動が終了するタイミングt903に至るまで常に一定を保ち、クラッチトルクも、タイミングt903に至るまで常にゼロのまま一定を保っている(L902およびL904参照)。
なお、スタータ始動は、上述したように、スタータ11bを用いてエンジントルクを設定に従って変化させる処理であるので、ドライバの加速意思の度合とは関係なく実行される処理である。したがって、図9に示される例では、スタータ始動によってエンジン回転数が始動回転数RSに到達するまでに要する時間、つまりタイミングt901からタイミングt902に至るまでの時間T900の長さは、アクセルストロークの大きさ(L901の縦軸方向の大きさ)に影響されることはない。
以上説明したように、実施形態によるクラッチ制御装置100は、エンジン11がオフ状態で、かつ、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差が閾値を超えている状況で運転操作が検出された場合、車両1の減速度が、偏差に応じて予め設定された目標減速度に従って変化するようにクラッチトルクを上昇させるためのクラッチトルク指令を出力し、エンジンシャフト11aの回転数を上昇させることでエンジン11を始動させる押し掛け始動を実施するクラッチトルク指令出力部103を備えている。これにより、押し掛け始動の実施時の目標減速度を予め設定しておくことで、車両1の挙動が急激に変動するのを抑制しながら、エンジンシャフト11aの回転数がより早く上昇するような新規な方式の押し掛け始動を実現することができる。すなわち、ドライバビリティの向上と、燃費の向上と、の両立を図ることが可能な新規な方式の押し掛け始動を実現することができる。
また、実施形態では、上述したように、クラッチトルク指令出力部103は、エンジン11がオフ状態で、かつエンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差が閾値を超えている状況で運転操作が検出された場合、押し掛け始動がエンジン11の始動を実現するのに要する始動時間をシミュレーションにより予測し、当該始動時間の予測値が所定時間より短い場合に、押し掛け始動を実施する。これにより、押し掛け始動によってエンジン11を始動させるのに所定時間以上かかる場合は、始動時間がより短い他の方法(たとえばスタータ始動)でエンジン11を始動させるという選択をとることができる。
また、実施形態では、上述したように、クラッチトルク指令出力部103は、運転操作が車両1を加速させるための加速操作である場合、当該加速操作の度合としてのアクセルストロークに応じて変化する判定時間を所定時間として用いて、押し掛け始動を実施するか否かを決定する。これにより、ドライバの加速意思の度合を反映しながら、押し掛け始動を実施するか否かを決定することができる。
また、実施形態では、上述したように、クラッチトルク指令出力部103は、目標減速度に基づいて、押し掛け始動を実施した場合におけるエンジンシャフト11aの回転数の変化をシミュレートし、当該回転数がエンジン11を始動させるのに十分な大きさの始動回転数まで上昇するのに要したシミュレーション上の時間を、始動時間の予測値として算出する。これにより、エンジンシャフト11aの回転数の変化のシミュレーションに基づき、始動時間の予測値を容易に算出することができる。
また、実施形態では、上述したように、クラッチトルク指令出力部103は、始動時間の予測値が所定時間より長い場合、スタータ制御部105が実施するスタータ始動によってエンジン11が始動するまで、クラッチトルクをゼロにするためのクラッチトルク指令を出力する。これにより、押し掛け始動を実施すると始動時間が比較的長時間となってドライバビリティが低下することが予測される場合に、他の方法としてのスタータ始動を実施することで、ドライバビリティの低下を回避することができる。
また、実施形態では、上述したように、目標減速度は、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の偏差と、加速操作の度合としてのアクセルストロークと、変速機12が有する複数のギヤ段と、に応じて異なる大きさに設定されており、クラッチトルク指令出力部103は、押し掛け始動を実施する場合、偏差と、アクセルストロークと、複数のギヤ段のうち現在選択されているギヤ段と、に応じて目標減速度を決定する。これにより、押し掛け制御の実施時に実現すべき目標減速度を、エンジンシャフト11aおよびインプットシャフト12aの回転数の接近度合と、ドライバの加速意思と、現在の車両の加速(減速)性能と、を考慮して決定することができる。
なお、実施形態では、上述したように、記憶部106が、目標減速度とアクセルストロークとギヤ段との対応関係が設定された目標減速度マップ300と、判定時間とアクセルストロークとの対応関係が設定された判定時間マップ400と、を記憶している。これにより、アクセルストロークおよびギヤ段に応じて目標減速度を決定する処理と、アクセルストロークに応じて判定時間を決定する処理と、をマップ形式の情報に基づいて容易に実行することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 車両
11 エンジン
11a エンジンシャフト(第1シャフト)
11b スタータ
12 変速機
12a インプットシャフト(第2シャフト)
13 クラッチ
13a クラッチアクチュエータ
100 クラッチ制御装置
101 操作検出部
102 回転数取得部
103 クラッチトルク指令出力部
104 エンジントルク指令出力部
105 スタータ制御部
106 記憶部
300 目標減速度マップ
400 判定時間マップ

Claims (7)

  1. 車両を加速または減速させるための運転操作を検出する操作検出部と、
    エンジンの第1シャフトと、当該第1シャフトにクラッチを介して接続される第2シャフトと、の回転数を取得する回転数取得部と、
    前記クラッチにより伝達されるクラッチトルクを変化させるためのクラッチトルク指令を出力するクラッチトルク指令出力部と、
    を備え、
    前記クラッチトルク指令出力部は、前記エンジンがオフ状態で、かつ前記第1シャフトと前記第2シャフトとの回転数の偏差が閾値を超えている状況で前記運転操作が検出された場合、前記車両の減速度が、前記偏差に応じて予め設定された目標減速度に従って変化するように前記クラッチトルクを上昇させるための前記クラッチトルク指令を出力し、前記第1シャフトの回転数を上昇させることで前記エンジンを始動させる押し掛け始動を実施する、
    クラッチ制御装置。
  2. 前記クラッチトルク指令出力部は、前記エンジンがオフ状態で、かつ前記偏差が前記閾値を超えている状況で前記運転操作が検出された場合、前記押し掛け始動が前記エンジンの始動を実現するのに要する始動時間をシミュレーションにより予測し、当該始動時間の予測値が所定時間より短い場合に、前記押し掛け始動を実施する、
    請求項1に記載のクラッチ制御装置。
  3. 前記クラッチトルク指令出力部は、前記運転操作が前記車両を加速させるための加速操作である場合、当該加速操作の度合に応じて変化するように設定された判定時間を前記所定時間として用いて、前記押し掛け始動を実施するか否かを決定する、
    請求項2に記載のクラッチ制御装置。
  4. 前記クラッチトルク指令出力部は、前記目標減速度に基づいて、前記押し掛け始動を実施した場合における前記第1シャフトの回転数の変化をシミュレートし、当該回転数が前記エンジンを始動させるのに十分な大きさまで上昇するのに要したシミュレーション上の時間を、前記始動時間の予測値として算出する、
    請求項2または3に記載のクラッチ制御装置。
  5. 前記始動時間の予測値が前記所定時間より長い場合に、前記エンジンに設けられるスタータを制御することで前記エンジンを始動させるスタータ始動を実施するスタータ制御部をさらに備え、
    前記クラッチトルク指令出力部は、前記始動時間の予測値が前記所定時間より長い場合、前記スタータ始動によって前記エンジンが始動するまで、前記クラッチトルクをゼロにするための前記クラッチトルク指令を出力する、
    請求項2〜4のいずれか1項に記載のクラッチ制御装置。
  6. 前記目標減速度は、前記偏差と、前記車両を加速させるための前記運転操作である加速操作の度合と、に応じて異なるように設定されており、
    前記クラッチトルク指令出力部は、前記押し掛け始動を実施する場合、前記偏差と、前記加速操作の度合と、に応じて前記目標減速度を決定する、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のクラッチ制御装置。
  7. 前記目標減速度は、前記偏差および前記加速操作の度合に加えて、さらに、変速機が有する複数の変速段に応じて異なるように設定されており、
    前記クラッチトルク指令出力部は、前記押し掛け始動を実施する場合、前記偏差および前記加速操作の度合に加えて、さらに、前記複数の変速段のうち現在選択されている変速段に応じて、前記目標減速度を決定する、
    請求項6に記載のクラッチ制御装置。
JP2017155824A 2017-08-10 2017-08-10 クラッチ制御装置 Pending JP2019035353A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017155824A JP2019035353A (ja) 2017-08-10 2017-08-10 クラッチ制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017155824A JP2019035353A (ja) 2017-08-10 2017-08-10 クラッチ制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019035353A true JP2019035353A (ja) 2019-03-07

Family

ID=65636980

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017155824A Pending JP2019035353A (ja) 2017-08-10 2017-08-10 クラッチ制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019035353A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114838120A (zh) * 2020-12-04 2022-08-02 浙江吉利控股集团有限公司 混合动力系统的离合器起动控制方法、控制系统及车辆

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004190498A (ja) * 2002-12-06 2004-07-08 Toyota Motor Corp 車両用内燃機関の制御装置
JP2012172578A (ja) * 2011-02-21 2012-09-10 Toyota Motor Corp 車両制御装置
JP2015014231A (ja) * 2013-07-04 2015-01-22 スズキ株式会社 エンジンの再始動制御装置
JP2017065384A (ja) * 2015-09-29 2017-04-06 日野自動車株式会社 ハイブリッド車両の制御装置
US20170183010A1 (en) * 2015-12-24 2017-06-29 Audi Ag Method for operating a drive device for a motor vehicle and corresponding drive device
JP2017122389A (ja) * 2016-01-04 2017-07-13 日立オートモティブシステムズ株式会社 車両用制御装置

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004190498A (ja) * 2002-12-06 2004-07-08 Toyota Motor Corp 車両用内燃機関の制御装置
JP2012172578A (ja) * 2011-02-21 2012-09-10 Toyota Motor Corp 車両制御装置
JP2015014231A (ja) * 2013-07-04 2015-01-22 スズキ株式会社 エンジンの再始動制御装置
JP2017065384A (ja) * 2015-09-29 2017-04-06 日野自動車株式会社 ハイブリッド車両の制御装置
US20170183010A1 (en) * 2015-12-24 2017-06-29 Audi Ag Method for operating a drive device for a motor vehicle and corresponding drive device
JP2017122389A (ja) * 2016-01-04 2017-07-13 日立オートモティブシステムズ株式会社 車両用制御装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114838120A (zh) * 2020-12-04 2022-08-02 浙江吉利控股集团有限公司 混合动力系统的离合器起动控制方法、控制系统及车辆

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5991441B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP7024326B2 (ja) ハイブリッド車両
EP2902292B1 (en) Method and system for controlling the regenerative braking of a vehicle
CN108025735B (zh) 车辆控制装置
CN114763132A (zh) 混合动力车辆的控制方法、装置、介质和设备
JP7135915B2 (ja) 電動車両の制御装置
US9988051B2 (en) System and method of controlling vehicle driving
CN111634281A (zh) 车辆的能量回收控制方法及装置
JP6302269B2 (ja) 車両用制御装置
WO2016175221A1 (ja) 車両制御装置
JP2014159207A (ja) ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置
JP2019035353A (ja) クラッチ制御装置
JP2019107980A (ja) 車両の制御装置
JP5960657B2 (ja) フライホイール回生システム及びその制御方法
JP2017044136A (ja) 内燃機関の制御装置
JP2005233356A (ja) 発進クラッチの制御装置
JP2010284979A (ja) 制駆動力制御装置
JP2013091383A (ja) 制御装置
JP2017206992A (ja) 車両の制御装置
JP6350676B2 (ja) 車両用駆動装置の制御装置
JP6300184B2 (ja) エンジンの制御装置
JP2009018627A (ja) ハイブリッド車両の駆動力制御装置
JP2014105690A (ja) 走行制御装置
JP6477177B2 (ja) ハイブリッド車両の制御装置
JP5935312B2 (ja) ハイブリッド車両用駆動装置のクラッチ制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200714

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210511

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20211102