JP7135915B2 - 電動車両の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、運転者によるペダルの踏み込み操作に対応して駆動力および制動力を制御する電動車両の制御装置に関し、特に、一つのペダル(例えば、アクセルペダル)のみの操作によって駆動力および制動力の両方を制御して走行すること(ワンペダルモード)が可能な電動車両の制御装置に関するものである。
特許文献1には、モータを駆動力源とする電動車両が記載されている。この特許文献1に記載された電動車両は、走行中に運転者がアクセルペダルを解放した際に、コースト走行してモータを回生させる。その際に、「弱回生モード」と「強回生モード」との目標駆動力特性が異なる二つのモードが規定されている。それら「弱回生モード」および「強回生モード」は、運転者による回生モード選択スイッチの操作によって選択的に設定される。「弱回生モード」は、アクセルペダル解放時のコースト回生力による制動力の発生領域を、従来のエンジンブレーキに相当する負の目標駆動力領域に設定する。この「弱回生モード」では、減速時に、エンジンブレーキに相当するコースト回生力を維持したまま推移する。その後、コースト回生力が徐々に減少し、停車領域に入ると正の目標駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態に移行する。「強回生モード」は、アクセルペダル解放時のコースト回生力による制動力の発生領域を、上記の「弱回生モード」と比べて拡大し、アクセルペダル解放時のコースト回生力による減速度のコントロール性を高めている。この「強回生モード」では、減速時に、エンジンブレーキに相当するコースト回生力が増大する。その後、コースト回生力が急減し、停車領域に入ると正の目標駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態に移行する。また、「強回生モード」では、ほとんどの減速シーンにおいてブレーキペダルの操作を必要とせず、アクセルペダルのみの操作によって車両の駆動力および制動力の両方が制御される。したがって、この「強回生モード」は、一つのペダル(アクセルペダル)のみの操作により、駆動力および制動力の両方を制御して走行することが可能ないわゆるワンペダルモードである。一般に、ワンペダルモードでは、アクセルペダルの操作量に対して、相対的に小さい操作量に対応する減速領域と、相対的に大きい操作量に対応する加速領域とが設定される。減速領域では、アクセルペダルの操作量が減少するほど車両の制動力が増大する。加速領域では、アクセルペダルの操作量が増加するほど車両の駆動力が増大する。
なお、特許文献2には、少なくともモータで擬似的なクリープトルクを出力することが可能な電動車両が記載されている。この特許文献2に記載された電動車両は、車速が規定値以下であり、かつ、アクセル開度がほぼ0であり、かつ、ブレーキペダルの踏み込み状態が制動力を増加させる方向である場合は、モータの出力トルクを速やかに0にする。車速が規定値以下であり、かつ、アクセル開度がほぼ0であり、かつ、ブレーキペダルの踏み込み状態が制動力を減少させる方向である場合には、ブレーキペダルの踏み込み量に応じたトルク(擬似クリープトルク)をモータで出力する。そのような擬似クリープトルクにより、電動車両を極低車速で走行させるいわゆるクリープ走行が可能である。
国際公開2018/190021号 特開2004-320850号公報
上記の特許文献1に記載された電動車両における「強回生モード」、すなわち、ワンペダルモードでは、運転者がアクセルペダルを踏み込むことにより発生させた駆動力で車両を走行させている状態から、アクセルペダルの踏み込みを戻すことにより、制動力を増大させて車両を減速させる。但し、特許文献1に記載された電動車両におけるワンペダルモードでは、アクセル開度が0%のときに、車速が所定車速以下の極低車速領域で、擬似クリープトルクを発生する。そのため、車速を0にして電動車両を完全に停止させるには、ブレーキをONにして制動力を発生させなければならない。また、擬似クリープトルクによって発進する際には、ブレーキをOFFにして制動力を解除しなければならない。したがって、特許文献1に記載された電動車両は、ワンペダルモードではあっても、停止時や発進時にはブレーキ操作を行わなければならず、アクセルペダルだけでは擬似クリープトルクをコントロールできない。
また、図1に示すように、例えば、擬似クリープトルクを発生しない電動車両では、ワンペダルモードで発進する際には、アクセルペダルを操作してアクセル開度を増大することにより、加速度を発生させる。図1に示す例では、アクセル開度を0%から5%に増大することにより、所定の加速度を発生させている。その際に、例えば、車速をコントロールするためにアクセルペダルの踏み込みを戻すと、ワンペダルモードの特性によって減速度が発生する。図1に示す例では、破線の矢印で示すように、アクセル開度を5%から0%に低下させることにより、所定の加速度が生じている状態から一転して減速度が発生する。そのため、電動車両は大きく減速されてしまう。また、電動車両を低車速に維持するためには、アクセルペダルを微小な踏み込み量で踏み続けなければならない。例えば、図1に示す例において、一点鎖線の矢印で示すように、アクセル開度を5%に保つようにアクセルペダルを踏み続けなければならない。
このように、従来の電動車両において、ワンペダルモードで、発進時や停止時に極低車速で走行する場合、アクセルペダルだけの操作で、容易に車速や加速度をコントロールするためには、未だ改良の余地がある。
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、電動車両をワンペダルモードで極低車速のいわゆるクリープ走行させる際に、車速を容易にコントロールすることが可能な電動車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、少なくともモータを有する駆動力源と、アクセルペダルと、運転者による前記アクセルペダルの操作量に応じて変化するアクセル開度、および、車速を検出する検出部と、前記アクセル開度および前記車速に基づいて前記モータを制御するコントローラと、を備え、前記運転者による前記アクセルペダルのみの操作によって加速および減速を行うワンペダルモードで走行することが可能な電動車両の制御装置であって、前記コントローラは、前記アクセルペダルが踏み込み操作され、かつ、前記車速が所定車速以下であり、かつ、前記踏み込み操作によって増大する前記アクセル開度が所定開度未満の場合に、前記踏み込み操作における前記アクセル開度の最大値を求め、前記アクセルペダルが踏み込み操作され、かつ、前記車速が所定車速以下であり、かつ、前記踏み込み操作によって増大する前記アクセル開度が所定開度未満である場合に、前記最大値に基づく前記車速で走行するための駆動トルクを前記モータに出力させることを特徴とするものである。
なお、この発明における前記コントローラは、前記アクセル開度が前記最大値のときに発生する加速度で走行し得る前記車速に収束するように、前記駆動トルクを制御することを特徴とするように構成してもよい。
あるいは、この発明における前記コントローラは、前記アクセル開度が前記最大値のときの前記車速を維持するように、前記駆動トルクを制御することを特徴とするように構成してもよい。
この発明の電動車両の制御装置では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に基づいて、電動車両の駆動力および制動力の両方を制御する、いわゆるワンペダルモードで車両を走行させることが可能である。そして、例えば、ワンペダルモードで電動車両を発進させる際に、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行い、その際の車速が所定車速以下の極低車速で、かつ、アクセル開度が所定開度未満の低開度である場合は、その際のアクセル開度の最大値に基づいて設定される車速(目標車速)で走行するように、モータが制御される。したがって、ワンペダルモードで、上記のような極低車速の走行状態で運転者がアクセルペダルを戻した場合は、一連のアクセルペダルの踏み込み操作において到達したアクセル開度の最大値に基づく車速で走行する。例えば、アクセル開度の最大値に対応する目標加速度で走行可能な車速に収束するように走行する。あるいは、アクセル開度が最大値となった時点の車速を維持するように走行する。すなわち、従来のワンペダルモードのように、直ちに制動力を発生するのではなく、アクセルペダルを戻した場合であっても、所定の駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態が維持される。そのため、この発明の電動車両の制御装置によれば、ワンペダルモードで極低車速で走行する際に、アクセルペダルの操作のみで、電動車両の車速を容易にコントロールすることができる。ひいては、ワンペダルモードで運転操作する電動車両のドライバビリティを向上させることができる。
なお、この発明の電動車両の制御装置では、上記のように、ワンペダルモードで、極低車速の走行状態で運転者がアクセルペダルを戻した場合は、一連のアクセルペダルの踏み込み操作において到達したアクセル開度の最大値に基づく車速で走行する。具体的には、アクセル開度の最大値に対応する目標加速度で走行可能な車速に収束するように走行する。したがって、微小な操作量でアクセルペダルを踏み込んだ後に、そのアクセルペダルの踏み込みを戻した場合は、従来のワンペダルモードのように直ちに制動力を発生するのではなく、所定の駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態が維持される。そのため、この発明の電動車両の制御装置によれば、ワンペダルモードで極低車速で走行する際に、アクセルペダルの操作のみで、電動車両の車速を容易にコントロールすることができる。
あるいは、この発明の電動車両の制御装置では、上記のように、ワンペダルモードで、極低車速の走行状態で運転者がアクセルペダルを戻した場合は、一連のアクセルペダルの踏み込み操作において到達したアクセル開度の最大値に基づく車速で走行する。具体的には、アクセル開度が最大値となった時点の車速を維持するように走行する。したがって、微小な操作量でアクセルペダルを踏み込んだ後に、そのアクセルペダルの踏み込みを戻した場合は、従来のワンペダルモードのように直ちに制動力を発生するのではなく、所定の駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態が維持される。そのため、この発明の電動車両の制御装置によれば、ワンペダルモードで極低車速で走行する際に、アクセルペダルの操作のみで、電動車両の車速を容易にコントロールすることができる。
従来技術の制御内容および課題を説明するため図である。 この発明の電動車両の制御装置で制御の対象とする電動車両の構成および制御系統の概要を示す図である。 この発明の電動車両の制御装置によって実行される制御の第1実施例(アクセルペダルの踏み込みを戻した際に、踏み込み時の最大アクセル開度に対応するクリープ車速へ収束させる例)を説明するためのフローチャートである。 図3のフローチャートで示す制御において、車速とアクセル開度との関係から目標加速度を求めるマップの一例、および、図3のフローチャートで示す制御の内容を説明するための図である。 図3のフローチャートで示す制御を実行した場合の車両の挙動を説明するためのタイムチャートである。 この発明の電動車両の制御装置によって実行される制御の第2実施例(アクセルペダルの踏み込みを戻した際に、車速を維持させる例)を説明するためのフローチャートである。 図6のフローチャートで示す制御において、車速とアクセル開度との関係から目標加速度を求めるマップの一例、および、図6のフローチャートで示す制御の内容を説明するための図である。 図6のフローチャートで示す制御を実行した場合の車両の挙動を説明するためのタイムチャートである。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
図2に、この発明の実施形態で制御対象にする電動車両の駆動系統および制御系統の一例を示してある。図2に示す電動車両(以下、車両)Veは、駆動力源としてモータ1を搭載した電気自動車である。車両Veは、主要な構成要素として、駆動輪2、アクセルペダル3、検出部4、および、コントローラ(ECU)5を備えている。なお、この発明の実施形態における駆動力源は、モータ1および他のモータ(図示せず)の複数のモータを備えていてもよい。また、モータ1およびエンジン(図示せず)を備えていてもよい。あるいは、モータ1およびエンジン(図示せず)、ならびに、動力分割機構や変速機などのトランスミッション(図示せず)を備えたハイブリッド駆動ユニットであってもよい。
モータ1は、例えば、永久磁石式の同期モータ、あるいは、誘導モータなどによって構成されており、駆動輪2に動力伝達可能に連結されている。モータ1は、少なくとも、電力が供給されることにより駆動されてトルクを出力する原動機としての機能を有している。また、モータ1は、外部からトルクを受けて駆動されることによって電力を発生する発電機として機能させてもよい。すなわち、モータ1は、原動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えたいわゆるモータ・ジェネレータであってもよい。モータ1には、インバータ(図示せず)およびバッテリ(図示せず)を有する電源装置6が接続されている。したがって、バッテリに蓄えられている電力をモータ1に供給し、モータ1を原動機として機能させて、駆動トルクを出力することができる。また、駆動輪2から伝達されるトルクによってモータ1を発電機として機能させて、その際に発生する回生電力をバッテリに蓄えることもできる。モータ1は、後述するコントローラ5によって出力回転数や出力トルクが電気的に制御される。また、モータ・ジェネレータであれば、上記のような原動機としての機能と発電機としての機能との切り替えなどが電気的に制御される。
駆動輪2は、駆動力源が出力する駆動トルクが伝達されること、すなわち、図2に示す例では、モータ1の出力トルクが伝達されることにより、車両Veの駆動力を発生する車輪である。図2に示す例では、駆動輪2は、デファレンシャルギヤ7、および、ドライブシャフト8を介して、モータ1の出力軸1aに連結されている。車両Veは、駆動トルク(モータ1の出力トルク)を後輪に伝達して駆動力を発生させる後輪駆動車であってもよい。また、この発明の実施形態における車両Veは、駆動トルクを前輪に伝達して駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、駆動トルクを前輪および後輪の両方に伝達して駆動力を発生させる四輪駆動車であってもよい。
なお、図2では示していないが、この発明の実施形態における車両Veは、駆動力源と駆動輪2との間に、所定の変速機構あるいは減速機構を備えていてもよい。例えば、モータ1の出力側に自動変速機を設け、モータ1の出力トルクを増減して駆動輪2側へ伝達する構成であってもよい。また、図2では示していないが、この発明の実施形態における車両Veは、駆動力源と駆動輪2との間に、トルクコンバータに代わる発進装置として、発進クラッチを備えていてもよい。例えば、車両Veが、駆動力源としてモータ1と共にエンジンを搭載するハイブリッド車両であれば、エンジンと駆動輪2との間に、発進クラッチを設けた構成であってもよい。その場合、発進クラッチは、例えば、伝達トルク容量を連続的に変化させることができる摩擦クラッチが用いられる。したがって、エンジンが出力するトルクを駆動輪2に伝達する際に、発進クラッチの係合状態を制御して伝達トルク容量を連続的に変化させることにより、スムーズな動力伝達を行うことができる。あるいは、スムーズな発進を行うことができる。
車両Veは、運転者が駆動力を調整して車両Veの加速操作を行うためのアクセルペダル3を備えている。アクセルペダル3が操作されることにより、その操作量(踏み込み量、あるいは、アクセルペダルポジション)に応じてアクセル開度が変化する。そのアクセル開度に対応して駆動力源(図1に示す例では、モータ1)が駆動トルクを出力し、車両Veの駆動力が発生する。したがって、運転者によってアクセルペダル3が踏み込まれて、アクセル開度が増大することにより、車両Veの駆動力が増大する。反対に、アクセルペダル3の踏み込みが戻されて、アクセル開度が低下することにより、車両Veの駆動力が減少する。それとともに、図1に示す例のように、駆動力源としてモータ1を搭載している場合は、モータ1がいわゆる回生ブレーキとして機能し、すなわち、モータ1が出力する回生トルクにより、車両Veに制動力が発生する。あるいは、駆動力源としてエンジンを搭載する場合は、アクセルペダル3の踏み込みが戻されることにより、いわゆるエンジンブレーキが作用し、車両Veの制動力が増大する。例えば、エンジンのフリクショントルクやポンピングロスが駆動トルクに対する抵抗力(制動トルク)となり、車両Veに制動力が発生する。
上記のように、アクセルペダル3は、運転者の操作によって車両Veの駆動力および制動力を調整する。後述するように、このアクセルペダル3には、運転者によるアクセルペダル3の操作量を検出するためのアクセルポジションセンサ4aが設けられている。アクセルポジションセンサ4aにより、アクセルペダル3の操作量(アクセルペダルポジション、アクセル開度)および操作速度を検出できる。アクセルポジションセンサ4aによってアクセルペダル3の操作速度を検出することにより、運転者によるアクセルペダル3の操作状態および操作方向を判断することができる。すなわち、運転者によってアクセルペダル3が踏み込まれている状態であるか、あるいは、運転者によってアクセルペダル3の踏み込みが戻されている状態であるかを判断することができる。
検出部4は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するためのセンサ、機器、装置、および、システム等を総称している。特に、この発明の実施形態における検出部4は、後述するように、運転者によるアクセルペダル3の操作に対応するモータ1の制御を適切に実行するためのデータを検出する。そのために、検出部4は、少なくとも、運転者のアクセルペダル3の操作に対応して変化するアクセル開度に関連するデータを検出するセンサを有している。例えば、運転者によるアクセルペダル3の操作量(踏み込み量、踏み込み速度、アクセルポジションなど)を検出するアクセルポジションセンサ4aを有している。その他に、検出部4は、例えば、車両Veの車速を検出するための車速センサ(または、車輪速センサ)4b、車両Veの加速度を検出するための加速度センサ4c、モータ1の回転数を検出するモータ回転数センサ(または、レゾルバ)4d、モータ1の入力電流を検出するモータ電流センサ4e、および、ブレーキペダル(図示せず)の操作量や踏力を検出するブレーキストロークセンサ4fなどの各種センサを有している。そして、検出部4は、後述するコントローラ5と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・システム等の検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ5に出力する。
コントローラ5は、例えばマイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、この図2に示す例では、主に、モータ1を制御する。また、車両Veが自動変速機や発進クラッチなどを備えた構成であれば、コントローラ5は、それら自動変速機や発進クラッチをそれぞれ制御する。コントローラ5には、上記の検出部4で検出または算出された各種データが入力される。コントローラ5は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ5は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のような、モータ1の動作を制御するように構成されている。なお、図2では一つのコントローラ5が設けられた例を示しているが、コントローラ5は、例えば制御する装置や機器毎に、あるいは制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
この発明の実施形態における車両Veは、運転者による車両Veの駆動力および制動力の制御形態として、運転者によるアクセルペダル3の操作量に基づいて駆動力および制動力の両方を制御する、いわゆるワンペダルモードで走行することが可能である。なお、車両Veが従来と同様のブレーキペダルを備えている場合は、アクセルペダル3およびブレーキペダルのそれぞれの操作量に基づいて駆動力および制動力を制御する通常モードで走行することも可能である。すなわち、通常モードおよびワンペダルモードの二つの走行モードを選択的に適宜切り替えて走行することが可能である。
通常モードでは、従来一般的な車両Veと同様に、運転者によるアクセルペダル3およびブレーキペダルの操作により、車両Veの加速および減速が行われる。なお、この発明の実施形態における車両Veは、必ずしも通常モードおよびワンペダルモードの二つの走行モードを設定する構成でなくともよい。ブレーキペダルを設けず、アクセルペダル3だけで車両Veの駆動力および制動力の両方を制御する構成、すなわち、ワンペダルモードのみで車両Veを走行させる構成であってもよい。
ワンペダルモードでは、運転者によるアクセルペダル3のみの操作により、車両Veの加速および減速が行われる。具体的には、この発明の実施形態における車両Veでは、例えば、アクセルペダル3の操作量の範囲に対して、相対的に大きい操作量に対応する加速領域と、相対的に小さい操作量に対応する減速領域とが設定されている。アクセルペダル3の操作量に対する減速領域と加速領域とを区画する操作量を切り替え操作量とすると、アクセルペダル3の操作量が0から切り替え操作量までの領域が減速領域となる。そして、アクセルペダル3の操作量が切り替え操作量から最大操作量までの領域が加速領域になる。アクセルペダル3の操作量が減速領域にある状態では、操作量が減少するほど車両Veの制動力が増大する。アクセルペダル3の操作量が加速領域にある状態では、操作量が増加するほど車両Veの駆動力が増大する。アクセルペダル3の最大操作量は、例えばアクセルペダル3の操作量をアクセル開度で表した場合、アクセル全開の状態、すなわち、アクセル開度が100%の状態となる。
したがって、ワンペダルモードにおける加速領域では、アクセルペダル3は通常の状態(すなわち、通常モードの状態)のアクセルペダルとして機能する。すなわち、加速領域では、アクセルペダル3の操作量の増加に対応して車両Veの駆動力が増大するように制御される。例えば、アクセルペダル3の操作量が大きくなるほど、車両Veの駆動力が増大するように制御される。
一方、ワンペダルモードにおける減速領域では、アクセルペダル3の操作量の減少に対応して車両Veの制動力が増大するように制御される。例えば、アクセルペダル3の操作量が小さくなるほど、車両Veの制動力が増大するように制御される。この場合の制動力は、前述したように、駆動力源としてモータ1を備えている場合は、モータ1で発生する回生トルクによる制動力、および、ブレーキ装置(図示せず)を作動させることにより発生させる制動力の両方を含んでいる。また、駆動力源としてエンジンを備えている場合は、エンジンブレーキ力も含まれる。要求される制動力を満たすように、上記のような各種の制動力がそれぞれ協調して制御される。
前述したように、この発明の実施形態におけるコントローラ5は、上記のようなワンペダルモードで走行することが可能な車両Veを対象にして、ワンペダルモードで、いわゆる擬似クリープトルクによるクリープ走行を行う際に、車速や加速度を容易にコントロールすることを目的として構成されている。そのためにコントローラ5で実行する擬似クリープトルク制御の例を、図3および図6のフローチャートに示してある。
〔第1実施例〕
図3のフローチャートに示す制御は、運転者によってアクセルペダル3が踏み込まれた場合に実行される。先ず、ステップS11では、車両Veの車速が所定のクリープ車速以下であるか否かが判断される。この場合のクリープ車速は、車速が、前述したような擬似クリープトルクで車両Veが走行する際の極低車速であるか否かを判断するための閾値として設定された所定車速である。クリープ車速は、例えば、走行実験やシミュレーション等の結果を基に、予め設定されている。
車速がクリープ車速よりも高いことにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、ステップS12へ進む。
ステップS12では、アクセル開度の最大値がクリアされる。後述するように、この発明の実施形態における擬似クリープトルク制御では、擬似クリープトルクで車両Veをクリープ走行させる際のアクセル開度の最大値をラッチする。それに対して、このステップS12では、車速がクリープ車速よりも高く、上記のステップS11で否定的に判断されたことによって、以降の擬似クリープトルク制御は実行しないため、以前にラッチされたアクセル開度の最大値をクリアし、その後、この図3のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
一方、車速がクリープ車速以下であることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS13へ進む。
ステップS13では、アクセル開度が、通常のクリープトルク相当のアクセル開度よりも小さいか否かが判断される。従来、エンジンの出力トルクをトルクコンバータおよび自動変速機を介して駆動輪に伝達する一般的な車両では、エンジンが稼働している間はトルクコンバータの作用によって常にクリープトルクが生じている。このステップS13では、その従来一般的な車両のクリープトルクに相当する駆動トルクを通常のクリープトルクと称して、現時点のアクセル開度が、その通常のクリープトルクを出力するアクセル開度よりも小さいか否かが判断される。具体的には、図4に一点鎖線で示すような、通常のクリープトルク相当のアクセル開度よりも小さいか否かが判断される。
アクセル開度が、通常のクリープトルク相当のアクセル開度以上であることにより、このステップS13で否定的に判断された場合は、ステップS12へ進み、従前と同様の制御が実行される。それに対して、アクセル開度が、通常のクリープトルク相当のアクセル開度よりも小さいことにより、ステップS13で肯定的に判断された場合には、ステップS14へ進む。
ステップS14では、アクセル開度の最大値がラッチされる。具体的には、この図3のフローチャートで示す制御の開始時点から現時点までの操作におけるアクセル開度の最大値が、例えば、コントローラ5に内蔵されたRAM[Random Access Memory]に格納される。
そして、ステップS15では、アクセル開度の最大値相当の駆動トルクが擬似クリープトルクとして付加される。具体的には、上記のステップS14で記憶したアクセル開度の最大値と、そのアクセル開度の最大値を記憶した時点の車速とに基づいて設定される目標加速度(あるいは、要求駆動力)を出力するための駆動トルク(すなわち、擬似クリープトルク)を出力するように、モータ1が制御される。そしてその後、この図3のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
なお、通常のクリープトルクに相当する加速度よりも大きい加速度要求があった場合、すなわち、上記のステップS13で否定的に判断される場合であって、図4に一点鎖線で示すような、通常のクリープトルク相当のアクセル開度よりも大きいアクセル開度となるアクセルペダル3の踏み込みがあった場合は、上記のような擬似クリープトルク制御は実行しない。そして、ワンペダルモードにおけるアクセルペダル3の操作に対応した通常の駆動力および制動力の制御が実行される。
このように、図3のフローチャートで示す擬似クリープトルク制御を実行することにより、上記のようなクリープ車速以下の極低車速で、運転者がアクセルペダル3の踏み込みを戻した場合は、一連のアクセルペダル3の踏み込み操作において到達したアクセル開度の最大値に基づく車速で走行する。具体的には、図4に実線で示すように、アクセル開度の最大値α(%)と車速とに基づいて設定される目標加速度で車両Veが走行するように、モータ1が制御される。すなわち、上記のように設定される目標加速度で車両Veを走行させるための駆動トルク(擬似クリープトルク)がモータ1で出力される。その結果、車両Veは、アクセル開度の最大値αに対応する目標加速度で走行可能な車速に収束するように走行する。
上記のような状況で、従来の擬似クリープトルクを発生しないワンペダルモードでは、アクセルペダル3の踏み込みが戻されると、図4に二点鎖線の矢印で示すように、直ちに制動力が発生して車両が減大きく減速される。それに対して、上記の図3のフローチャートで示すような擬似クリープトルク制御では、運転者がアクセルペダル3の踏み込みを戻した場合であっても、直ちに制動力を発生するのではなく、アクセル開度の最大値α(%)に基づく所定の駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態が維持される。その結果、図5のタイムチャートに示すように、時刻t11でアクセルペダル3の踏み込み操作が開始された後に、時刻t12でアクセルペダル3の踏み込みが戻されると、その時刻t12のアクセル開度が最大値αになる。そして、そのアクセル開度の最大値αに基づいて、具体的には、図4に示すようなアクセル開度α(%)のマップに基づいて、目標加速度が設定され、その目標加速度を実現する駆動トルク(擬似クリープトルク)を出力するように、モータ1が制御される。その結果、車両Veの車速は、上記のように設定される目標加速度で走行可能な車速に収束する。この場合の目標加速度は、アクセル開度に応じて変化する。そのため、上記のように収束する車速も、アクセル開度、すなわち、運転者が操作するアクセルペダル3の踏み込み量に応じて変化する。したがって、上記のようにワンペダルモードでクリープ走行する際に、アクセルペダル3の操作のみで、車両Veの車速を容易にコントロールすることができる。
〔第2実施例〕
図6のフローチャートに示す制御は、運転者によってアクセルペダル3が踏み込まれた場合に実行される。先ず、ステップS21では、車両Veの車速が所定のクリープ車速以下であるか否かが判断される。この場合のクリープ車速は、車速が、前述したような擬似クリープトルクで車両Veが走行する際の極低車速であるか否かを判断するための閾値として設定された所定車速である。クリープ車速は、例えば、走行実験やシミュレーション等の結果を基に、予め設定されている。
車速がクリープ車速よりも高いことにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図6のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。それに対して、車速がクリープ車速以下であることにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、ステップS22へ進む。
ステップS22では、アクセル開度が、車速維持に必要な駆動トルク相当のアクセル開度よりも小さいか否かが判断される。要するに、現時点のアクセル開度が、現時点の車速を維持して走行するために必要な駆動トルクを出力するアクセル開度よりも小さいか否かが判断される。アクセル開度が、車速維持に必要な駆動トルク相当のアクセル開度よりも小さくなる場合は、アクセルペダル3の踏み込みが戻されたと判断できる。
アクセル開度が、車速維持に必要な駆動トルク相当のアクセル開度以上であることにより、このステップS22で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図6のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。すなわち、この場合は、アクセルペダル3の踏み込み量が維持されている、または、アクセルペダル3の踏み込み量が増加した状態であり、アクセルペダル3の踏み込みは戻されていないと判断される。それに対して、アクセル開度が、車速維持に必要な駆動トルク相当のアクセル開度よりも小さいことにより、ステップS22で肯定的に判断された場合には、ステップS23へ進む。
ステップS23では、上記のような車速維持に必要な駆動トルクが擬似クリープトルクとして付加される。具体的には、現時点の車速(すなわち、車速の最大値)を維持して走行するために必要な駆動トルク(すなわち、擬似クリープトルク)を出力するように、モータ1が制御される。その後、この図6のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
なお、車速がクリープ車速よりも高い車速で走行している場合、すなわち、上記のステップS21で否定的に判断される場合であって、図7に破線で示すような、通常のクリープトルクにより定速走行(クリープ走行)する車速よりも高い車速で走行している場合は、上記のような擬似クリープトルク制御は実行しない。そして、ワンペダルモードにおけるアクセルペダル3の操作に対応した通常の駆動力および制動力の制御が実行される。
このように、図6のフローチャートで示す擬似クリープトルク制御を実行することにより、上記のようなクリープ車速以下の極低車速で、運転者がアクセルペダル3の踏み込みを戻した場合は、一連のアクセルペダル3の踏み込み操作において到達した車速の最大値で走行する。具体的には、図7に実線の矢印で示すように、一連のアクセルペダル3の踏み込み操作におけるアクセル開度の最大値β(%)で走行した際の車速の最大値を維持して走行するように、モータ1が制御される。すなわち、上記のような車速の最大値を維持して車両Veを走行させるための駆動トルク(擬似クリープトルク)がモータ1で出力される。その結果、車両Veは、一定の車速で定速走行する。
上記のような状況で、従来の擬似クリープトルクを発生しないワンペダルモードでは、アクセルペダル3の踏み込みが戻されると、図7に二点鎖線の矢印で示すように、直ちに制動力が発生して車両が減大きく減速される。それに対して、上記の図6のフローチャートで示すような擬似クリープトルク制御では、運転者がアクセルペダル3の踏み込みを戻した場合であっても、直ちに制動力を発生するのではなく、所定の車速を維持するための駆動力(擬似クリープトルク)を発生する状態が維持される。その結果、図8のタイムチャートに示すように、時刻t21でアクセルペダル3の踏み込み操作が開始された後に、時刻t22で、アクセル開度が、車速維持に必要な駆動トルク相当のアクセル開度よりも小さくなると、すなわち、アクセルペダル3の踏み込みが戻されると、その時刻t22のアクセル開度が最大値βになる。そして、そのアクセル開度の最大値βに基づいて、具体的には、図7に示すようなアクセル開度β(%)のマップに基づいて、目標加速度が設定され、その目標加速度を実現する駆動トルク(擬似クリープトルク)を出力するように、モータ1が制御される。その結果、車両Veは、アクセル開度が最大値βとなった時点の車速を維持するように走行する。この場合の車速の大きさは、アクセル開度に応じて変化する。すなわち、運転者が操作するアクセルペダル3の踏み込み量に応じて変化する。したがって、上記のようにワンペダルモードでクリープ走行する際に、アクセルペダル3の操作のみで、車両Veの車速を容易にコントロールすることができる。
1…モータ(駆動力源)、 1a…(モータの)出力軸、 2…駆動輪、 3…アクセルペダル、 4…検出部、 4a…アクセルポジションセンサ、 4b…車速センサ(または、車輪速センサ)、 4c…加速度センサ、 4d…モータ回転数センサ(または、レゾルバ)、 4e…モータ電流センサ、 4f…ブレーキストロークセンサ、 5…コントローラ(ECU)、 6…電源装置、 7…デファレンシャルギヤ、 8…ドライブシャフト、 Ve…車両(電動車両)。

Claims (1)

  1. 少なくともモータを有する駆動力源と、アクセルペダルと、運転者による前記アクセルペダルの操作量に応じて変化するアクセル開度、および、車速を検出する検出部と、前記アクセル開度および前記車速に基づいて前記モータを制御するコントローラと、を備え、前記運転者による前記アクセルペダルのみの操作によって加速および減速を行うワンペダルモードで走行することが可能な電動車両の制御装置であって、
    前記コントローラは、
    前記アクセルペダルが踏み込み操作され、かつ、前記車速が所定車速以下であり、かつ、前記踏み込み操作によって増大する前記アクセル開度が所定開度未満である場合の期間における、前記踏み込み操作における前記アクセル開度の最大値を求め、
    記アクセルペダルが踏み込み操作され、かつ、前記車速が所定車速以下であり、かつ、前記踏み込み操作によって増大する前記アクセル開度が所定開度未満である場合に、前記最大値に基づく前記車速で走行するための駆動トルクを前記モータに出力させる
    ことを特徴とする電動車両の制御装置。
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