以下、本発明に係る電圧調整装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、配電線路上に配設され、配電線路の電圧を調整する電圧調整装置の例について説明する。なお、実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1は、三相の配電線路上に配置された、実施の形態1に係る電圧調整装置1Aの構成を示す図である。図2は、同電圧調整装置1Aの調整変圧器11とタップ切換器12の構成を示す図、図3は、同電圧調整装置1Aの一次側電圧調整指令回路13A及び二次側電圧調整指令回路13Bの回路構成を示す図である。
三相の電圧調整装置に設けられるU相、V相、W相の各相の電圧を調整する電圧調整回路の結線方法には、三相Y型結線と三相V型結線があるが、図1に示す電圧調整装置1Aは、三相Y型結線の電圧調整回路が設けられた例である。電圧調整装置1Aの電圧調整回路は、三相V型結線であってもよい。図1に示す電圧調整装置1Aは、UW線間の電圧を調整する電圧調整回路の部分を示し、VW線間,WU線間の電圧を調整する電圧調整回路の部分は省略している。従って、以下の説明では、UW線間の配電線路の電圧調整について説明する。
電圧調整装置1Aは、配電線路の当該電圧調整装置1Aよりも左側にある線路L1の電圧v1又は配電線路の当該電圧調整装置1Aよりも右側にある線路L2の電圧v2を規定の電圧範囲内に自動的に調整する動作をする電圧調整回路と、その電圧調整回路の電圧調整動作を制御する制御部とを有する。線路L1は、電圧調整装置1A内の電圧調整用の変圧器11(以下、「調整変圧器11」という。図2参照)の一次側に接続されており、線路L2は、同調整変圧器11の二次側に接続されているので、以下の説明では、必要に応じて線路L1を「一次側線路L1」と称し、線路L2を「二次側線路L2」と称して説明する場合がある。また、一次側線路L1の電圧(U相の線路LUとW相の線路LWの間の電圧)と二次側線路L2の電圧(U相の線路LUとW相の線路LWの間の電圧)をそれぞれ「一次側電圧v1」、「二次側電圧v2」と称して説明する。
電圧調整装置1Aの電圧調整回路は、例えば、完全逆送形のタップ切換式電圧調整回路(SVR)である。電圧調整回路は、調整変圧器11、タップ切換器12,12'、一次側電圧調整指令回路13A、二次側電圧調整指令回路13B、電圧調整モード設定回路14を備える。
調整変圧器11は、図2に示すように、複数個のタップt1〜tnを有する単巻変圧器で構成されている。調整変圧器11のタップ付き巻線の一方端(図2では上端)はタップ切換器12の第1タップ端子t1に接続され、他方端(図2では下端)は中性点Nに接続されている。なお、図2では、調整変圧器11が有するW相、V相にそれぞれ対応する単巻変圧器は省略している。また、W相のタップ切換器12'も、U相のタップ切換器12と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
タップ付き巻線の一方端寄りの部分の所定の位置から(n−1)個のタップが引き出され、それぞれタップ切換器12の第2タップ端子t2から第nタップ端子tnに接続されている。また、タップ付き巻線の第rタップ(但し、1<r<n。図2では第4タップ)の位置は、素通しタップの位置となっており、その位置にU相の二次側の線路LUが接続されている。
タップ切換器12は、コモン端子tcと、n個のタップ端子ti(iは、タップの番号。i=1,2,…n)と、コモン端子tcとn個のタップ端子tiのいずれかを接続する接触子(図示省略)とを有し、コモン端子tcにU相の一次側の線路LUが接続されている。タップ切換器12は、負荷が接続された状態でコモン端子tcに接続するタップ端子tiを切り換えることにより、一次側電圧v1又は二次側電圧v2を調整する。
一次側電圧v1の調整は、例えば、図12(b)や図13(b)に示したように、電力を供給する変電所(電源変電所)が電圧調整装置1Aの二次側に存在する場合に電圧調整装置1Aが行う電圧調整である。また、二次側電圧v2の調整は、例えば、図12(a)や図13(a)に示したように、電源変電所が電圧調整装置1Aの一次側に存在する場合に電圧調整装置1Aが行う電圧調整である。
電圧調整装置1Aは、電源変電所方向によって調整対象の電圧が異なるので、一次側電圧v1を調整する一次側電圧調整モードと二次側電圧v2を調整する二次側電圧調整モードの2種類の電圧調整モードを有する。電源変電所方向とは、電圧調整装置1Aに対して電源変電所が存在する配電線路上の方向である。電源変電所は、一次側線路L1と二次側線路L2のいずれかに接続されているので、本明細書では、電源変電所が一次側線路L1に接続されている場合の電源変電所方向を「一次側」、電源変電所が二次側線路L2に接続されている場合の電源変電所方向を「二次側」と称する。
電圧調整装置1Aは、調整対象の電圧vが目標電圧vcの許容範囲±Δv([vc−Δv]〜[vc+Δv]の電圧範囲。以下、「目標電圧範囲VAR」という。)の上限値VARU(=vc+Δv)よりも大きくなると、タップ切換器12,12'のタップを調整対象の電圧vが降下する方向(降圧方向)に切り換えてその電圧vが上限値VARUよりも小さくなるように電圧調整を行う。また、電圧調整装置1Aは、調整対象の電圧vが目標電圧範囲VARの下限値VARD(=vc−Δv)よりも小さくなると、タップ切換器12,12'のタップを調整対象の電圧vが上昇する方向(昇圧方向)に切り換えてその電圧vが下限値VARDよりも大きくなるように電圧調整を行う。
調整変圧器11の一次巻線の巻数(コモン端子tcに接続されているタップの位置と中性点Nとの間の巻数)をN1とし、二次巻線の巻数(第rタップの位置と中性点Nとの間の巻数)をN2とすると、一次側電圧v1と二次側電圧v2の間には、v1/v2=N1/N2の関係がある。一次側電圧調整モードでは、二次側線路L2に存在する電源変電所によって二次側電圧v2の変化量Δv2が小さく抑えられる(理想的には変化量Δv2は略ゼロになる)ので、一次側電圧v1は、タップを切り換えることによって、巻数N1に比例するように変化する。一方、二次側電圧調整モードでは、一次側線路L1に存在する電源変電所によって一次側電圧v1の変化量Δv1が小さく抑えられる(理想的には変化量Δv2は略ゼロになる)ので、二次側電圧v2は、タップを切り換えることによって、巻数N1に反比例するように変化する。
従って、電圧調整装置1Aは、一次側電圧調整モードでは、一次側電圧v1が一次側の目標電圧範囲VAR1の上限値VARU1(=vc1+Δv1)よりも大きくなると、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数N1よりも小さい巻数N1を有するタップ位置の方向(タップ番号が増加する方向)に切り換えて一次側電圧v1の電圧調整を行う。逆に、一次側電圧v1が一次側の目標電圧範囲VAR1の下限値VARD1(=vc1−Δv1)よりも小さくなると、電圧調整装置1Aは、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数N1よりも大きい巻数N1を有するタップ位置の方向(タップ番号が減少する方向)に切り換えて一次側電圧v1の電圧調整を行う。
また、電圧調整装置1Aは、二次電圧調整モードでは、二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2の上限値VARU2(=vc2+Δv2)よりも大きくなると、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数N1よりも大きい巻数N1を有するタップ位置の方向(タップ番号が減少する方向)に切り換えて二次側電圧v2の電圧調整を行う。逆に、二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2の下限値VARD2(=vc2−Δv2)よりも小さくなると、電圧調整装置1Aは、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数N1よりも小さい巻数N1を有するタップ位置の方向(タップ番号が増加する方向)に切り換えて二次側電圧v2の電圧調整を行う。
タップ切換器12,12'には、一次側電圧調整指令回路13Aで生成された電圧調整指令Ctaと二次側電圧調整指令回路13Bで生成された電圧調整指令Ctbのいずれかが電圧調整モード設定回路14から入力される。タップ切換器12,12'は、電圧調整モード設定回路14から入力される電圧調整指令Cta又はCtbで指示されたタップ端子tiをコモン端子tcに接続する。すなわち、タップ切換器12,12'は、一次側線路L1に接続する調整変圧器11のタップ位置を電圧調整指令Cta又はCtbで指示されたタップ位置(タップ端子ti)に切り換える。
一次側電圧調整指令回路13Aは、一次側電圧v1を監視し、一次側電圧v1が一次側の目標電圧範囲VAR1から逸脱すると、一次側電圧v1を目標電圧範囲VAR1内に収めるための電圧調整指令値Ctaを出力する。電圧調整指令値Ctaは、例えば、一次側電圧v1を降圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ増加する方向に変化させる指令値であり、一次側電圧v1を昇圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ減少する方向に変化させる指令値である。電圧調整指令値Ctaは、電圧調整モード設定回路14に入力され、電圧調整モードが一次電圧調整モードに設定されている場合に、電圧調整モード設定回路14からタップ切換器12,12'に入力される。
二次側電圧調整指令回路13Bは、二次側電圧v2を監視し、二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2から逸脱すると、二次側電圧v2を目標電圧範囲VAR2内に収めるための電圧調整指令値Ctbを出力する。電圧調整指令値Ctbは、例えば、二次側電圧v2を降圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ減少する方向に変化させる指令値であり、二次側電圧v2を昇圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ増加する方向に変化させる指令値である。電圧調整指令値Ctbは、電圧調整モード設定回路14に入力され、電圧調整モードが二次電圧調整モードに設定されている場合に、電圧調整モード設定回路14からタップ切換器12,12'に入力される。
一次側電圧調整指令回路13Aと二次側電圧調整指令回路13Bは、同一の回路構成を有し、例えば、図3に示す回路構成を有している。
図3に示す電圧調整指令回路13は、計器用変圧器131、電圧調整継電器132、線路電圧降下補償器133、変流器134を備える。電圧調整継電器132と線路電圧降下補償器133は、計器用変圧器131の二次巻線に直列に接続され、変流器134の出力線が電圧調整継電器132に接続されている。そして、一次側電圧調整指令回路13Aでは、計器用変圧器131の一次巻線が一次側のU相の線路LUとW相の線路LWの間に接続され、変流器134が一次側のU相の線路LUに取り付けられた構成となっており、二次側電圧調整指令回路13Bでは、計器用変圧器131の二次巻線が二次側のU相の線路LUとW相の線路LWの間に接続され、変流器134が二次側のU相の線路LUに取り付けられた構成となっている。
なお、変流器134は、U相の線電流iUとW相の線電流iWの合成電流が(iU−iW)となるように、U相の線路LUとW相の線路LWに結線されている。これは、変流器134の検出電流iDをU相の線電流iUにすると、検出電流iDが入力される線路電圧降下補償器133の印加電圧との間にπ/6の位相差が生じるので、その位相差をなくすために線電流iUと線電流iWの合成電流(U相とW相の線間電流)を検出するようにしたものである。
計器用変圧器131は、一次巻線に高圧va(例えば、数千[V])が印加されると、二次巻線から高圧vaを巻線比に応じた低圧vb(例えば、百数十[V])に変成して出力する。一次側電圧調整指令回路13Aの計器用変圧器131は、一次側電圧v1を巻線比に応じた低圧v1'に変成して出力する。また、二次側電圧調整指令回路13Bの計器用変圧器131は、二次側電圧v2を巻線比に応じた低圧v2'に変成して出力する。
電圧調整継電器132は、例えば、90リレーで構成されている。電圧調整継電器132は、継電器両端の電圧vb2を検出し、その検出電圧vb2が目標電圧範囲VAR'から外れている場合にタップの切換えを指示する電圧調整指令Ctを生成し、電圧調整モード設定回路14に出力する。
線路電圧降下補償器133(Line Drop Compensator。以下、「LDC133」という。)は、変流器134が取り付けられた線路の線路インピーダンスを模擬した抵抗とリアクタンスとで構成されている。一次側電圧調整指令回路13Aの線路電圧降下補償器133は、一次側線路L1の線路インピーダンスを模擬した抵抗とリアクタンスとで構成され、二次側電圧調整指令回路13Bの線路電圧降下補償器133は、二次側線路L2の線路インピーダンスを模擬した抵抗とリアクタンスとで構成されている。
線路電圧降下補償器133は、変流器134の検出電流iDを流すことによって線路インピーダンスによる電圧降下vb1を発生する。線路電圧降下補償器133が電圧降下vb1を発生することにより、電圧調整継電器132の両端には計器用変圧器131が検出した電圧vbを電圧降下vb1だけ低下した電圧vb2=(vb−vb1)が印加される。
従って、一次側電圧調整指令回路13Aの線路電圧降下補償器133は、一次側線路v1の線路インピーダンスによる電圧降下v1b1を発生し、一次側電圧調整指令回路13Aの電圧調整継電器132の両端電圧は、計器用変圧器131が検出した電圧v1bを電圧降下v1b1だけ低下した電圧v1b2=(v1b−v1b1)となる。また、二次側電圧調整指令回路13Bの線路電圧降下補償器133は、二次側線路v2の線路インピーダンスによる電圧降下v2b1を発生し、一次側電圧調整指令回路13Aの電圧調整継電器132の両端電圧は、計器用変圧器131が検出した電圧v2bを電圧降下v2b1だけ低下した電圧v2b2=(v2b−v2b1)となる。
電圧vb2が逸脱する目標電圧範囲VAR'は、変流器134が取り付けられた線路の高圧vaが逸脱する目標電圧範囲VARに対応している。電圧調整継電器132は、高圧vaが目標電圧範囲VARを逸脱すると、高圧vaを目標電圧範囲VAR内に収めるための電圧調整指令Ctを生成する。電圧vb2は、計器用変圧器131が検出した電圧vbを線路インピーダンスによる電圧降下vb1だけ低下した電圧であるので、電圧調整継電器132が出力する電圧調整指令Ctによりタップを切り換えて変化させる線路の高圧vaは、線路インピーダンスによる電圧降下分が補償されたものとなっている。
従って、一次側電圧調整指令回路13Aの電圧調整継電器132は、一次側電圧v1が目標電圧範囲VAR1を逸脱すると、一次側電圧v1を一次側の目標電圧範囲VAR1内に収めるための電圧調整指令Ctaを生成する。この電圧調整指令Ctaによりタップを切り換えて変化させる一次電圧v1は、一次側線路L1の線路インピーダンスによる電圧降下分が補償されたものである。また、二次側電圧調整指令回路13Bの電圧調整継電器132は、二次側電圧v2が目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、二次側電圧v2を二次側の目標電圧範囲VAR2内に収めるための電圧調整指令Ctbを生成する。この電圧調整指令Ctbによりタップを切り換えて変化させる二次電圧v2は、二次側線路L2の線路インピーダンスによる電圧降下分が補償されたものである。
電圧調整モード設定回路14は、制御部から入力される電圧調整モードの情報Cjに基づいて、電圧調整モードを一次側電圧調整モードと二次側電圧調整モードのいずれかのモードに設定する。
電圧調整モード設定回路14は、電圧調整モードの情報Cjが二次側電圧調整モードである場合、二次側電圧調整指令回路13Bから入力される電圧調整指令Ctbをタップ切換器12,12'に出力する。一方、電圧調整モードの情報Cjが一次側電圧調整モードである場合、電圧調整モード設定回路14は、一次側電圧調整指令回路13Aから入力される電圧調整指令Ctaをタップ切換器12,12'に出力する。
なお、電圧調整モード設定回路14で電圧調整指令Cta,Ctbのタップ切換器12,12'への入力を制御するのではなく、制御回路17が一次側電圧調整モードの場合は一次側電圧調整指令回路13Aを動作させて電圧調整指令Ctaをタップ切換器12,12'に入力し、二次側電圧調整モードの場合は二次側電圧調整指令回路13Bを動作させて電圧調整指令Ctbをタップ切換器12,12'に入力するように制御してもよい。
電圧調整装置1Aの制御部は、一次側電圧検出器15A、二次側電圧検出器15B、二次側電流検出器16、制御回路17を備える。
一次側電圧検出器15Aは、一次側電圧v1を検出するものであり、二次側電圧検出器15Bは、二次側電圧v2を検出するものである。一次側電圧検出器15Aと二次側電圧検出器15Bは、例えば、計器用変圧器131と同一構成の変圧器で構成されている。一次側電圧検出器15Aは、一次側線路L1のU相の線路LUとW相の線路LWの間に設けられ、二次側電圧検出器15Bは、二次側線路L2のU相の線路LUとW相の線路LWの間に設けられている。一次側電圧検出器15Aの検出電圧v1と二次側電圧検出器15Bの検出電圧v2は、制御回路17に入力される。
二次側電流検出器16は、二次側電流i2を検出するものである。二次側電流検出器16は、例えば、変流器134と同一の構成の変流器で構成される。二次側電流検出器16は、二次側線路L2のU相の線路LUに設けられている。二次側電流検出器16の検出電流i2は、制御回路17に入力される。
制御回路17は、電圧調整回路の電圧調整動作を制御する。より具体的には、制御回路17は、電圧調整回路に対する電源変電所方向の変化を監視し、電源変電所方向が変化するのに応じて電圧調整モード設定回路14に設定する電圧調整モードを制御する。制御回路17は、例えば、MPU(Micro−processing unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含むマイクロコンピュータで構成され、MPUがRAMを用いてROMに格納されている電圧調整用の所定のプログラムを実行することにより、電圧調整回路による一次側電圧v1又は二次側電圧v2の自動電圧調整動作を制御する。なお、制御回路17は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)で実現してもよい。
図4は、制御回路17の内部構成を示すブロック図である。
制御回路17は、電源変電所方向に基づく電圧調整モードの制御に関する処理ブロックとして、瞬時電圧検出部171,173、電圧変化量算出部172,174、変電所方向判断部175、無効電力検出部176、無効電力変化量算出部177、判定部178、電圧調整モード設定部179を備える。また、電圧調整モード設定部179は、調整変圧器11に対して配電線路への電力供給源である電源変電所が存在する方向を示す変電所方向情報を記憶する変電所方向記憶部179Aを備える。
瞬時電圧検出部171は、一次側電圧検出器15Aから入力される一次側電圧v1の瞬時値を検出し、瞬時電圧検出部173は、二次側電圧検出器15Bから入力される二次側電圧v2の瞬時値を検出する。瞬時電圧検出部171,173は、同一の構成を有し、例えば、ピーク検出回路、トラックホールド(T/H)回路、A/D変換回路を備える。
一次側電圧v1をV1・sin(ω・t)とすると、瞬時電圧検出部171は、所定の周期Δtで、ピーク検出回路によりV1・sin(ω・t)のピーク値(アナログ信号のピークレベル)を検出し、トラックホールド(T/H)回路によりそのピーク値を保持し、A/D変換回路によりそのピーク値をデジタル信号に変換して出力する。従って、瞬時電圧検出部171は、周期Δtで一次側電圧v1=V1・sin(ω・t)の瞬時値(デジタル値)を検出する。
また、二次側電圧v2をV2・sin(ω・t)とすると、瞬時電圧検出部173は、周期Δtで、ピーク検出回路によりV2・sin(ω・t)のピーク値(アナログ信号のピークレベル)を検出し、トラックホールド(T/H)回路によりそのピーク値を保持し、A/D変換回路によりそのピーク値をデジタル信号に変換して出力する。従って、瞬時電圧検出部173は、周期Δtで二次側電圧v2=V2・sin(ω・t)の瞬時値(デジタル値)を検出する。
電圧変化量算出部172は、瞬時電圧検出部171が周期Δtで検出する一次電圧v1の瞬時値の変化量Δv1を算出する。電圧変化量算出部172は、前回検出した一次電圧v1の瞬時値v1[k−1]((k−1)は、サンプリング番号)を保持し、今回検出した一次電圧v1の瞬時値v1[k](kは、サンプリング番号)との差分の絶対値|v1[k]−v1[k−1]|を変化量Δv1として算出する。
電圧変化量算出部174は、瞬時電圧検出部173が周期Δtで検出する二次電圧v2の瞬時値の変化量Δv2を算出する。電圧変化量算出部174は、前回検出した二次電圧v2の瞬時値v2[k−1]((k−1)は、サンプリング番号)を保持し、今回検出した二次電圧v2の瞬時値v2[k](kは、サンプリング番号)との差分の絶対値|v2[k]−v2[k−1]|を変化量Δv2として算出する。
変電所方向判断部175は、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧v1の変化量Δv1と電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧v2の変化量Δv2を用いて電源変電所方向を判断する。背景技術で説明したように、配電線路にSVCなどの電圧一定制御を行う電力機器(以下、「電圧一定制御機器」という。)が設けられていない状態では、電圧調整回路がタップ切換えを行ったときのタップ切換え前後の電圧の変化量は、電源変電所が存在する線路側の電圧の変化量が負荷の存在する線路側の電圧の変化量よりも小さくなることが知られている。変電所方向判断部175は、この特性を利用して、電圧調整回路がタップ切換えを行ったときのタップ切換え前後の一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を比較することにより、電源変電所方向を判断する。
具体的には、変電所方向判断部175は、Δv1>Δv2であれば、電源変電所方向は、二次側であると判断し、Δv1<Δv2であれば、電源変電所方向は、一次側であると判断する。また、変電所方向判断部175は、Δv1≒Δv2であれば、前回判断した電源変電所方向と同じであると判断する。タップ切換器12,12'がタップ切換え動作を行っていない期間では、周期Δtでの一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2の差は微小であるから、Δv1≒Δv2となる。
本発明の課題で説明したように、配電線路LにSVCなどの電圧一定制御を行う機器が設けられており、電圧調整回路がタップ切換えを行うと同時にSVCが電圧一定制御を行っている場合は、タップ切換え時の電圧の変化量の特性が上記の特性と異なり、誤判断が生じる恐れがある。タップ切換え時にSVCが電圧一定制御を行っていると推定される場合、変電所方向判断部175は、上記の一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行わない。
無効電力検出部176は、周期Δtで二次側線路L2の無効電力Qを検出する。無効電力検出部176には、二次側電圧検出器15Bが検出する二次側電圧v2と二次側電流検出器16が検出する二次側電流i2が入力される。無効電力検出部176は、例えば、二次側電圧v2(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、二次側電流i2(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、二次側電圧v2(デジタル値)を積分する積分回路と、二次側電圧v2の積分値と二次側電流i2を乗算する乗算回路とを備えた構成である。この構成では、無効電力検出部176は、二次側電圧v2の位相を積分回路でπ/2だけ遅らせた後、二次側電流i2と乗算することにより無効電力Qを算出する。
無効電力Qは、例えば、二次側の三相電圧信号vuv,vvw,vwuを互いに直交する二相電圧信号Va,Vbに変換し、二次側の三相電流信号iu,iv,iwを互いに直交する二相電流信号Ia,Ibに変換し、(−Va,Ib+Vb,Ia)の演算処理をすることによっても算出することができる。
無効電力検出部176を、例えば、二次側の三相電圧信号vuv,vvw,vwuを二相電圧信号Va,Vbに変換する第1の三相/二相変換回路と、第1の三相/二相変換回路の出力から高調波を除去して基本波成分を抽出する第1のフィルタ回路と、二次側の三相電流信号iu,iv,iwを二相電流信号Ia,Ibに変換する第2の三相/二相変換回路と、第2の三相/二相変換回路の出力から高調波を除去して基本波成分を抽出する第2のフィルタ回路と、無効電力算出回路とで構成し、無効電力算出回路で第1のフィルタ回路の出力(Va,Vb)と第2のフィルタ回路の出力(Ia,Ib)と用いて(−Va,Ib+Vb,Ia)の演算処理をすることにより、無効電力Qを検出するようにしてもよい。
無効電力変化量算出部177は、無効電力検出部176が周期Δtで検出する無効電力Qの変化量ΔQを算出する。無効電力変化量算出部177は、前回検出した二次側線路L2の無効電力Q[k−1]((k−1)は、サンプリング番号)を保持し、今回検出した無効電力Q[k](kは、サンプリング番号)との差分の絶対値|Q[k]−Q[k−1]|を変化量ΔQとして算出する。
判定部178は、配電線路に、SVC、PCS、同期発電機などの電圧一定制御機能を備えた電力機器(電圧一定制御機器)が連系されているか否かを判定する。判定部178は、無効電力変化量算出部177から出力される無効電力Qの変化量ΔQを予め設定された閾値QTHと比較し、その比較結果に基づく判定結果を変電所方向判断部175に出力する。判定部178は、例えば、ΔQ>QTHであれば、二次側線路L2に設置されている電圧一定制御機器から電圧一定制御のための無効電力Qが出力されている、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定する。また、判定部178は、ΔQ≦QTHであれば、二次側線路L2に電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されていない、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器は連系されていないと判定する。
タップ切換え時に電圧一定制御機器により無効電力Qが出力されると、変電所方向判断部175は適正な電源変電所方向の判断ができない可能性があるので、判定部178の判定は、変電所方向判断部175による一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断の適否を判定しているとも言える。判定部178は、判定結果を変電所方向判断部175に出力する。
変電所方向判断部175は、上述したように、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」(変電所方向判断部175の電源変電所方向の判断結果は適正)の判定結果が入力されると、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行う。一方、変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」(変電所方向判断部175の電源変電所方向の判断結果は不適正)の判定結果が入力されると、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行わない。
電圧調整モード設定部179は、変電所方向判断部175から入力される判断結果に基づいて、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を更新するとともに、電圧調整モード設定回路14への電圧調整モードの設定を制御する。変電所方向記憶部179Aには、変電所方向情報のディフォルト値として、例えば、電源変電所が二次側線路L2に存在していることを示す情報(「電源変電所方向は二次側」の情報)が記憶されている。
電圧調整モード設定部179は、変電所方向判断部175から入力される判断結果を用いて変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を更新する。変電所方向判断部175から入力される判断結果が「電源変電所方向は一次側」の場合、変電所方向記憶部179Aに記憶されている「電源変電所方向は二次側」の情報は、「電源変電所方向は一次側」の情報に更新される。変電所方向判断部175から入力される判断結果が「電源変電所方向は二次側」の場合は、変電所方向記憶部179Aの情報を更新しても記憶内容は実質的に変化しない。この場合は、変電所方向記憶部179Aの情報の更新処理をしないようにしてもよい。
電圧調整モード設定部179は、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報に基づいて電圧調整モード設定回路14に電圧調整モードを設定する。例えば、変電所方向記憶部179Aに「電源変電所方向は一次側」の情報が記憶されている場合、電圧調整モード設定部179は、電圧調整モード設定回路14に二次電圧調整モードを設定する。また、変電所方向記憶部179Aに「電源変電所方向は二次側」の情報が記憶されている場合、電圧調整モード設定部179は、電圧調整モード設定回路14に一次電圧調整モードを設定する。
次に、電圧調整装置1Aの動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
以下の説明では、電源変電所は一次側に存在し、電圧調整装置1Aの変電所方向記憶部179Aには変電所方向情報のディフォルト値として「電源変電所方向は一次側」の情報が記憶されているものとする。そして、電圧調整装置1Aは、運転開始時は電圧調整モード設定回路14に二次電圧調整モードが設定され、二次側電圧調整指令回路13Bが二次側電圧v2を監視し、二次電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、二次側電圧調整指令回路13Bから出力される電圧調整指令Ctbによってタップ切換器12,12'がタップの切り換え動作をするものとする。
(ステップS101)瞬時値検出部171及び電圧変化量算出部172は、一次側電圧v1の変化量Δv1を算出する。また、瞬時値検出部173及び電圧変化量算出部174は、二次側電圧v2の変化量Δv2を算出する。
(ステップS102)無効電力検出部176及び無効電力変化量算出部177は、二次側線路L2の無効電力Qの変化量ΔQを算出する。
(ステップS103)変電所方向判断部175と判定部178は、一次側電圧調整指令回路13Aから電圧調整指令Cta又は二次側電圧調整指令回路13Bから電圧調整指令Ctbが出力されたか否か、すなわち、タップ切換器12,12'のタップが切り換えられたか否かを判別する。タップ切換器12,12'のタップが切り換えられていなければ(S103:N)、変電所方向判断部175は、電源変電所方向の判断処理をせず、また、判定部178は、電圧一定制御機器による電圧一定制御の有無の判定をせず、ステップS101に戻る。また、タップ切換器12,12'のタップが切り換えられていると(S103:Y)、ステップS104に進む。
タップ切換器12,12'のタップが切り換えられなければ、変電所方向判断部175から電圧調整モード設定部179に電源変電所方向の判断結果が出力されないので、電圧調整モード設定部179は、現在の電圧調整モードを維持する(変電所方向記憶部179Aの変更処理をしない)。電圧調整動作を開始したときは、電圧調整装置1Aは、二次側電圧調整モードで動作しているので、二次側電圧調整モードの動作が維持される。
(ステップS104)判定部178は、無効電力変化量算出部177が算出した無効電力Qの変化量ΔQと閾値QTHを比較し、その比較結果に基づく判定結果を変電所方向判断部175に出力する。判定部178は、ΔQ>QTHであれば(S104:Y)、電圧一定制御有りの判定結果を変電所方向判断部175に出力し、ステップS101の処理に戻る。変電所方向判断部175は、電圧一定制御有りの判定結果により電源変電所方向の判断処理をしない。
一方、判定部178は、ΔQ≦QTHでれば(S104:N)、電圧一定制御無しの判定結果を変電所方向判断部175に出力し、ステップS105の処理に進む。
(ステップS105)変電所方向判断部175は、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧v1の変化量Δv1が、電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧v2の変化量Δv2よりも大きいか否かを判断する。変電所方向判断部175は、Δv1>Δv2であれば(S105:Y)、ステップS106の処理に進み、Δv1≦Δv2であれば(S105:N)、ステップS108の処理に進む。
(ステップS106)変電所方向判断部175は、電源変電所は二次側線路L2に存在すると判断し、「電源変電所方向は二次側」の判断結果を電圧調整モード設定部179に出力する。
(ステップS107)電圧調整モード設定部179は、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を変電所方向判断部175から入力された電源変電所方向の判断結果(電源変電所方向は二次側)で更新し、更新後の変電所方向情報に基づき電圧調整モード設定回路14に一次側電圧調整モードを設定して、ステップS101の処理に戻る。
(ステップS108)変電所方向判断部175は、二次側電圧v2の変化量Δv2が一次側電圧v1の変化量Δv1よりも大きいか否かを判断する。変電所方向判断部175は、Δv2>Δv1であれば(S108:Y)、ステップS109の処理に進み、Δv1=Δv2であれば(S108:N)、ステップS101の処理に戻る。
(ステップS109)変電所方向判断部175は、電源変電所は一次側線路L1に存在すると判断し、「電源変電所方向は一次側」の判断結果を電圧調整モード設定部179に出力する。
(ステップS110)電圧調整モード設定部179は、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を変電所方向判断部175から入力された電源変電所方向の判断結果(電源変電所方向は一次側)で更新し、更新後の変電所方向情報に基づき電圧調整モード設定回路14に二次側電圧調整モードを設定して、ステップS101の処理に戻る。
図5のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
電圧調整装置1Aが設置されている配電系統が図12(a)に示す順送電−順潮流モード又は図13(a)に示す順送電−逆潮流モードで配電している場合、電源変電所は一次側の線路PL1に存在する変電所DS1であるので、電圧調整装置1Aは、「電源変電所方向は一次側」という正しい変電所方向情報を保持している。
従って、電圧調整装置1Aは、その変電所方向情報に基づき二次側電圧v2を監視し、二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、タップ切換器12,12'のタップを切り換えて二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2に収まるように電圧調整動作を行う。そして、電圧調整装置1Aは、タップ切換器12,12'がタップ切換え動作を行う毎に、タップ切換え前後の一次側電圧v1及び二次側電圧v2の変化量Δv1,Δv2を算出し、両変化量Δv1,Δv2を用いて電源変電所方向の判断を行う。この判断処理は、電源変電所方向が変化しているか否か、すなわち、配電系統が、例えば、図12(b)に示す逆送電−逆潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードに変化しているか否かの確認処理に相当している。
タップ切換え時に電源変電所方向の変化を確認するのは、タップ切換えが行われない期間では一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2の差が微小であるが、タップ切換えが行われると、その前後での一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2では電源変電所が存在する側の変化量が大きくなるという現象が生じ(図14参照)、この現象を利用して電源変電所方向を判断するからである。
配電系統にSVRなどの電圧一定制御機器が設置されておらず、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態で、電圧調整装置1Aが「電源変電所方向は一次側」という情報に基づいて二次側電圧v2を二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するタップ切換え動作を繰り返す場合は、図5のフローチャートにおいて、ステップS101〜S105,S108〜S110,S101のループ処理が繰り返される。このループ処理では、電圧調整装置1Aがタップ切換え毎に行う電源変電所方向の判断で、タップ切換え時に保持している変電所方向情報と同一の情報が取得される。電圧調整装置1Aは、タップ切換えを行う毎に正しい変電所方向情報を取得するので、正常な電圧調整動作を繰り返すことになる。
一方、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態から図12(b)に示す逆送電−順潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−逆潮流モードに切り換えられた場合、電源変電所方向は一次側から二次側に変化するが、電圧調整装置1Aは、「電源変電所方向は一次側」という情報を保持しているので、送電−潮流のモードが切り換えられた後も二次側電圧v2を監視する。そして、電圧調整装置1Aは、二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、タップ切換器12,12'のタップを切り換えて二次側電圧v2が二次側の目標電圧範囲VAR2に収まるように電圧調整動作を行う。
送電−潮流のモードが切り換えられた後の最初のタップ切換えにおける電源変電所方向の判断では、電源変電所が二次側の線路PL2に存在する変電所DS2に切り換わっているので、タップ切換え前後の一次側電圧v1の変化量Δv1は、図14(b)に示すように、二次側電圧v2の変化量Δv2よりも大きくなる。このため、図5に示すフローチャートにおいては、ステップS101〜S107,S101のループ処理が行われる。このループ処理により、電圧調整装置1Aは、「電源変電所方向は二次側」という正しい判断を行い、変電所方向記憶部179Aに記憶している「電源変電所方向は一次側」の情報を「電源変電所方向は二次側」の内容に変更するとともに、電圧調整モード設定回路14を一次側電圧調整モードに切り換える。
これにより、電圧調整装置1Aは、その後、「電源変電所方向は二次側」の情報に基づき一次側電圧v1を監視し、一次側電圧v1が一次側の目標電圧範囲VAR1を逸脱すると、タップ切換器12,12'のタップを切り換えて一次側電圧v1が一次側の目標電圧範囲VAR1に収まるように電圧調整動作を行うことになる。
以上のように、配電系統に電圧一定制御機器が設置されておらず、電圧調整装置1Aの電圧調整動作に応じて当該電圧一定制御機器が電力一定制御動作をしない場合は、配電系統の送電−潮流のモードが切り換えられた直後のタップ切換えでは正しい電圧調整動作になっていない場合が生じるとしても、電圧調整装置1Aは、そのタップ切換え時に正しい電源変電所方向を確認することができる。このため、その後、電圧調整装置1Aは、正しい変電所方向情報に基づいて適切な電圧調整動作をすることができる。
次に、例えば、図12(a)に示す順送電−順潮流モードの配電系統において、例えば、図15に示すように、二次側の配電線PL2にAVR機能を有するSVCが設置された構成に変化した場合は、電圧調整装置1Aは、以下のように動作する。
電圧調整装置1Aが「電源変電所方向は一次側」の情報に基づいて二次側電圧v2を二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するためにタップ切換えをすると、そのタップ切換えにより、二次側電圧v2は調整変圧器11のタップ切換えに対応する電圧変化量だけ変化する。例えば、タップ切換えが1タップで、そのタップ切換えによる電圧変化量が100[V]であれば、二次側電圧v2は凡そ100[V]変化する。二次側電圧v2が変化すると、配電線PL2に設置されたSVCが瞬時に無効電力Qを出力して二次側電圧v2の変化をキャンセルするように動作する。すなわち、二次側電圧v2が100[V]上昇する変化をすると、SVCは直ちに二次側電圧v2を100[V]下降させるように動作し、二次側電圧v2が100[V]下降する変化をすると、SVCは直ちに二次側電圧v2を100[V]上昇させるように動作する。
電圧調整装置1Aは、タップ切換え前後の二次側線路L2の無効電力Qの変化量ΔQを検出しており、SVCが無効電力Qを出力して電圧一定制御をした場合は、比較的大きい変化量ΔQを検出する。電圧調整装置1Aは、検出した無効電力Qの変化量ΔQを予め決められた閾値QTHと比較し、ΔQ>QTHであれば、二次側線路L2に設置されたSVCが電圧一定制御をしたと判断する。SVCが電圧一定制御をした場合は、タップ切換えに対応する電圧変化量が一次側電圧v1と二次側電圧v2に振り分けられる形で両電圧v1,v2を変化させるので、図16(b)に示したように、変化量|Δv1|及び変化量|Δv2|の両方が大きくなる。例えば、上記の例では、1タップ分の電圧変化量100[V]が、例えば、一次側電圧v1の変化量Δv1≒−50[V]と二次側電圧v2の変化量Δv2≒+50[V]となって表れる。このため、変化量Δv1及び変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断は適正とはいえなくなる。
従って、順送電−順潮流モードの配電系統において、二次側線路L2に設置されたSVCが電圧一定制御をした場合は、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS101〜S104,S101のループ処理が行われる。このループ処理では、電圧調整装置1Aは、一次側電圧v1の変化量Δv1と一次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行わないので、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも二次側電圧調整モードに保持されることになる。
なお、図12(b)又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードの配電系統において、一次側の線路PL1にSVCが設置され、電圧調整装置1Aが一次側電圧v1の電圧調整動作をしているときにSVCが電圧一定制御をした場合も、電圧調整装置1Aは、同様の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Aは、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS101〜S104,S101のループ処理を行い、タップ切換え前後の一次側電圧v1の変化量Δv1と一次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行わない。従って、電圧調整装置1Aの変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも一次側電圧調整モードに保持される。
上記のように、実施の形態1による電圧調整装置1Aでは、電圧調整装置1Aが変電所方向情報に基づいて電圧調整をする側の線路にSVCなどの電圧一定制御機器が設置され、電圧調整装置1Aがタップ切換え動作をしたときに電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断(又は確認)をせず、現在の変電所方向情報を維持するようにしている。これにより、実施の形態1によれば、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断で誤判断をする恐れを回避することができる。
例えば、順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードにおけるタップ切換え時の電源変電所方向の判断で、電圧調整装置1Aが電源変電所方向を誤り、変電所方向記憶部179Aに記憶している変電所方向情報を「電源変電所方向は二次側」に変更すると、電圧調整装置1Aは、その後、一次側電圧調整モードで一次側電圧v1の電圧調整を行うようになる。電源変電所は一次側線路L1に存在するので、電圧調整装置1Aが一次側電圧調整指令回路13Aからの電圧調整指令Ctaによってタップ切換えを行うようになると、タップ切換えを行う毎に一次側電圧v1は一次側の目標電圧範囲VAR1から外れる方向に変化し、タップ切換器12,12'の限界のタップ位置(図2では、単巻変圧器の上端の第1タップ又は下端の第nタップ)までタップ切換えを繰り返した後、そのタップ位置を保持するという状態(タップ暴走の状態)が発生する。
実施の形態1に係る電圧調整装置1Aでは、タップ切換え毎の電源変電所方向の判断において、電源変電所方向の誤判断を回避できるので、上記のタップ暴走の発生を防止することができる。
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る電圧調整装置1Bの構成を示す図である。
実施の形態2に係る電圧調整装置1Bは、タップ切換えをしたときに電圧調整をする側の線路に設置されたSVCなどの電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、さらにタップ切換器12,12'のタップ位置を所定のタップ位置に切り換える動作をするようにしたものである。実施の形態1に係る電圧調整装置1Aは、既に行われたタップ切換え動作の結果を次のタップ切換え動作まで維持するが、実施の形態2に係る電圧調整装置1Bは、既に行われたタップ切換え動作をキャンセルするように、タップ切換器12,12'のタップ位置を所定のタップ位置に切り換える点が電圧調整装置1Aとは異なる。
実施の形態2では、SVCなどの電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、その直前に行われたタップ切換え動作が電源変電所方向の正しい認識の下に行われたものであるのかが疑わしく、電源変電所方向の誤認識に基づく不適切なタップ切換えの場合も考えられるので、自動電圧調整で切り換えられたタップ位置を所定のタップ位置に修正するものである。
図6に示す電圧調整装置1Bは、図1に示す電圧調整装置1Aに対して、制御回路17'からタップ切換器12,12'にタップ切換え信号CSを入力する構成になっている点が異なる。図7に示す調整変圧器11、タップ切換器12,12'、一次側電圧調整指令回路13A、二次側電圧調整指令回路13B、電圧調整モード設定回路14、一次側電圧検出器15A、二次側電圧検出器15B及び二次側電流検出器16の機能及び構成は、電圧調整装置1Aの説明で説明した内容と同じであるから、その説明を省略する。
図7は、実施の形態2に係る電圧調整装置1Bの制御回路17'の内部構成を示すブロック図である。
図7に示す制御回路17'のブロック図は、図4に示す制御回路17のブロック図において、タップ位置修正部180を追加したものである。瞬時値検出部171,173、電圧変化量算出部172,174、無効電力検出部176、無効電力変化量算出部177及び電圧調整モード設定部179の機能及び構成は、制御回路17の説明で説明した内容と同じであるから、その説明は省略し、変電所方向判断部175、判定部178及びタップ位置修正部180の機能と構成について説明する。
判定部178は、無効電力変化量算出部177から出力される無効電力Qの変化量ΔQを予め設定された閾値QTHと比較し、その比較結果に基づく判定結果を変電所方向判断部175とタップ位置修正部180に出力する。判定部178は、例えば、ΔQ>QTHであれば、二次側線路L2に設置されている電圧一定制御機器から電圧一定制御のための無効電力Qが出力されている、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定する。また、判定部178は、ΔQ≦QTHであれば、二次側線路L2に電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されていない、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器は連系されていないと判定する。判定部178は、判定結果を変電所方向判断部175とタップ位置修正部180に出力する。
変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」の判定結果が入力されると、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行う。一方、変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」の判定結果が入力されると、電源変電所方向の判断を行わない。
タップ位置修正部180は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」の判定結果が入力されると、タップ切換器12,12'への修正指令信号Csの出力を行わない。一方、タップ位置修正部180は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」の判定結果が入力されると、タップ切換器12,12'にタップ位置を所定のタップ位置に修正する修正指令信号Csを出力する。
所定のタップ位置は、例えば、タップ切換え前のタップ位置若しくは予め決められたタップ位置である。タップ切換え前のタップ位置とは、例えば、タップ切換器12,12'が電圧調整モード設定回路14から出力される電圧調整指令Cta又は電圧調整指令Ctbによって現在のタップ位置(例えば、第sタップ)から隣のタップ位置(第(s+1)タップ又は第(s−1)タップ)に切り換えられた場合、第sタップの位置である。タップ切換えによって切り換えられたタップ位置を切り換え前のタップ位置に修正する処理は、実質的にタップ切換えをしない状態に戻す処理に相当している。
予め決められたタップ位置とは、例えば、素通しタップの位置(図1,図5の例では、第4タップの位置)である。素通しタップの位置は、調整変圧器11の一次巻線と二次巻線比が「1」となる位置である。
タップ位置修正部180は、タップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置に修正する場合は、電圧調整指令Cta又は電圧調整指令Ctbで行われたタップの切換え動作とは逆方向にタップ位置を切り換えることを指示する修正指令信号Csをタップ切換器12,12'に出力する。また、タップ位置修正部180は、タップ切換器12,12'を所定のタップ位置に修正する場合は、所定のタップ位置を示すタップ番号を含む修正指令信号Cs(例えば、素通しタップの場合、タップ番号「4」を含むタップ位置の修正を指示する修正指令信号)をタップ切換器12,12'に出力する。
図8は、電圧調整装置1Bの電圧調整動作の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS104で無効電力Qの変化量ΔQが閾値QTHより大きい場合(S104:Y)、ステップS101に戻る途中にステップS111の処理を追加したものである。ステップS111の処理は、タップ位置修正部180がタップ切換器12,12'に修正指令信号Csを出力してタップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置又は予め決められたタップ位置に修正する処理である。
ステップS101〜S110の各処理の内容は、図5のフローチャートを用いた電圧調整装置1Aの動作説明の内容と同じであるから、各ステップの処理の説明は省略し、以下では、電圧調整装置1Bの動作の概要を説明する。
電圧調整装置1Bが設置されている配電系統が図12(a)に示す順送電−順潮流モード又は図13(a)に示す順送電−逆潮流モードで給電している場合の電圧調整装置1Bの電圧調整動作は、上述した電圧調整装置1Aの電圧調整動作と同様である。また、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態から図12(b)に示す逆送電−順潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−逆潮流モードに切り換えられた場合の電圧調整装置1Bの電圧調整動作も、上述した電圧調整装置1Aの送電−潮流モードが切り換えられた場合の電圧調整動作と同様である。
次に、例えば、図12(a)に示す順送電−順潮流モードの配電系統において、例えば、図15に示すように、二次側の配電線PL2にAVR機能を有するSVCが設置された構成に変化した場合は、電圧調整装置1Bは、以下のように動作する。
電圧調整装置1Bが「電源変電所方向は一次側」の情報に基づいて二次側電圧v2を二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するためにタップ切換えをすると、そのタップ切換えによる二次側電圧v2の変化に対して、配電線PL2に設置されたSVCが瞬時に無効電力Qを出力して二次側電圧v2の変化をキャンセルするように動作する。
電圧調整装置1Bは、タップ切換えによる二次側線路L2の無効電力Qの変化量ΔQを検出し、その変化量ΔQを予め決められた閾値QTHと比較する。そして、電圧調整装置1Bは、ΔQ>QTHであれば、二次側線路L2に設置されたSVCが電圧一定制御をしたと判断する。SVCが電圧一定制御をした場合は、上述したように、タップ切換えに対応する電圧変化量が一次側電圧v1と二次側電圧v2に振り分けられる形で両電圧v1,v2を変化させるので、変化量Δv1及び変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断は適正とはいえなくなる。
従って、順送電−順潮流モードの配電系統において、二次側線路L2に設置されたSVCが電圧一定制御をした場合は、図8に示すフローチャートにおいては、ステップS101〜S104,S111,S101のループ処理が行われる。このループ処理では、電圧調整装置1Bは、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行わないので、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも二次側電圧調整モードに保持されることになる。また、電圧調整装置1Bは、タップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置若しくは予め決められたタップ位置などの所定のタップ位置に修正する。
なお、図12(b)又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードの配電系統において、一次側の線路PL1にSVCが設置され、電圧調整装置1Bが一次側電圧v1の電圧調整動作をしているときにSVCが電圧一定制御をした場合も、電圧調整装置1Bは、同様の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Bは、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS101〜S104,S111,S101のループ処理を行い、タップ切換え時に一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断を行わない。従って、電圧調整装置1Bの変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも一次側電圧調整モードに保持される。
また、電圧調整装置1Bは、タップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置若しくは予め決められたタップ位置などの所定のタップ位置に修正する。
上記のように、実施の形態2による電圧調整装置1Bでは、電圧調整装置1Bがタップ切換え動作をしたときに電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断(又は確認)をせず、現在の変電所方向情報を維持するようにしているので、一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断で誤判断をする恐れを回避することができる。
また、実施の形態2でも、タップ切換え毎の電源変電所方向の判断において、電源変電所方向の誤判断を回避できるので、上記のタップ暴走の発生を防止することができる。
さらに、実施の形態2では、タップ切換え後の判定処理で、電圧調整装置1Bが、配電線路に電圧一定制御機器が連系され、その電圧一定制御機器が電圧一定制御のために無効電力Qを出力していると判定した場合、タップ切換器12,12'のタップ位置を切換え前のタップ位置又は予め決められたタップ位置(例えば、素通しタップの位置)に修正するので、直前に行われたタップ切換え動作が電源変電所方向の誤認識に基づく不適切なタップ切換えの場合にはそのタップ切換えよりも適切なタップ位置に修正することができる。
電源変電所方向の誤認識に基づく不適切なタップ切換えを放置すると、例えば、判定の度に1タップずつ不適正な方向に切り換わってしまい、上述したタップ暴走や本来調整すべき電圧方向でない方向の電圧に変化させてしまい目標電圧範囲VARを逸脱するなどの不具合が発生する恐れがあるが、実施の形態2によれば、タップ位置をタップ切換え前のタップ位置又は素通しタップの位置に修正することにより、その不具合の発生を低減することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る電圧調整装置1Cは、タップ切換えをしたときに電圧調整をする側の線路に設置されたSVCなどの電圧一定制御機器が無効電力Qを出力して電圧一定制御をしたと推定される場合は、その電圧一定制御機器による電圧一定制御がなかったと仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'と二次側電圧v2の変化量Δv2'を推定し、両変化量Δv1',Δv2'(推定値)を用いて電源変電所方向を判断するようにしたものである。
実施の形態3に係る電圧調整装置1Cの構成は、図6に示す電圧調整装置1Bの構成と同じになり、制御回路17"のブロック構成が異なる。従って、電圧調整装置1Cの制御回路17"以外の構成の説明は省略する。
図9は、実施の形態3に係る電圧調整装置1Cの制御回路17"の内部構成を示すブロック図である。
図9に示す制御回路17"のブロック図は、図4に示す制御回路17のブロック図において、一次側電圧変化量推定部181と二次側電圧変化量推定部182を追加したものである。瞬時値検出部171,173、電圧変化量算出部172,174、無効電力検出部176、無効電力変化量算出部177及び電圧調整モード設定部179の機能及び構成は、制御回路17の説明で説明した内容と同じであるから、その説明は省略し、変電所方向判断部175、判定部178、一次側電圧変化量推定部181及び二次側電圧変化量推定部182の実施の形態3に特有の動作に関する機能と構成について説明する。
判定部178は、無効電力変化量算出部177から出力される無効電力Qの変化量ΔQを予め設定された閾値QTHと比較し、その比較結果に基づく判断結果を変電所方向判断部175に出力する。判定部178は、例えば、ΔQ>QTHであれば、二次側線路L2に設置されている電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されている、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定する。また、判定部178は、ΔQ≦QTHであれば、二次側線路L2に電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されていない、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器は連系されていないと判定する。判定部178は、判定結果を変電所方向判断部175に出力する。
変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」の判定結果が入力されると、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧v1の変化量Δv1と電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧v2の変化量Δv2を用いて電源変電所方向の判断を行う。一方、変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」の判定結果が入力されると一次側電圧変化量推定部181が推定した、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'(推定値)と、二次側電圧変化量推定部182が推定した、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の二次側電圧v2の変化量Δv2'(推定値)を用いて電源変電所方向の判断を行う。そして、変電所方向判断部175は、その判断結果を電圧調整モード設定部179に出力する。
一次側電圧変化量推定部181は、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'を算出する。一次側電圧変化量推定部181は、以下の方法で一次側電圧v1の変化量Δv1'を算出する。
例えば、一次側電圧変化量推定部181には、予め求められている一次側のSVRから所定の電圧固定点までの系統インピーダンスのリアクタンス分x1が既定値として入力されているとする。一次側電圧変化量推定部181は、無効電力変化量算出部177が算出した無効電力Qの変化量ΔQを一次側電圧v1で除することにより、一次側の無効電流の変化量ΔiQ1を算出する。
そして、一次側電圧変化量推定部181は、一次側の無効電流の変化量ΔiQ1とリアクタンス分x1を乗算することにより一次側の無効電圧の変化量ΔvQ1を算出し、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧v1の変化量Δv1から無効電圧の変化量ΔvQ1をベクトル的に減算することにより、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'を算出する。
また、二次側電圧変化量推定部182は、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の二次側電圧v2の変化量Δv2'を算出する。二次側電圧変化量推定部182も一次側電圧変化量推定部181と同様の方法で二次側電圧v2の変化量Δv2'を算出する。
すなわち、二次側電圧変化量推定部182には、予め求められている二次側のSVRから所定の電圧固定点までの系統インピーダンスのリアクタンス分x2が既定値として入力されている。二次側電圧変化量推定部182は、無効電力変化量算出部177が算出した無効電力Qの変化量ΔQを二次側電圧v2で除することにより、二次側の無効電流の変化量ΔiQ2を算出する。
そして、二次側電圧変化量推定部182は、二次側の無効電流の変化量ΔiQ2とリアクタンス分x2を乗算することにより二次側の無効電圧の変化量ΔvQ2を算出し、電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧v2の変化量Δv2から無効電圧の変化量ΔvQ2をベクトル的に減算することにより、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の二次側電圧v2の変化量Δv2'を算出する。
図10は、電圧調整装置1Cの電圧調整動作の処理手順を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS111の処理をステップS112,S113の処理に置き換え、ステップS113の処理の後、ステップS105に進む手順に変更したものである。
ステップS112の処理は、一次側電圧変化量推定部181が、無効電力Qがないと仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'を算出し、二次側電圧変化量推定部182が、無効電力Qがないと仮定した場合の二次側電圧v2の変化量Δv2'を算出する処理である。
ステップS113の処理は、瞬時値検出部171及び電圧変化量算出部172が検出した一次側電圧v1の変化量Δv1を一次側電圧変化量推定部181が算出した一次側電圧v1の変化量Δv1'に置き換え、瞬時値検出部173及び電圧変化量算出部174が検出した二次側電圧v2の変化量Δv2を二次側電圧変化量推定部182が算出した二次側電圧v2の変化量Δv2'に置き換える処理である。
ステップS101〜S110の各処理の内容は、図4のフローチャートを用いた電圧調整装置1Aの動作説明でした内容と同じであるから、各ステップの処理の説明は省略し、以下では、電圧調整装置1Cの動作の概要を説明する。
電圧調整装置1Cが設置されている配電系統が図12(a)に示す順送電−順潮流モード又は図13(a)に示す順送電−逆潮流モードで給電している場合の電圧調整装置1Cの電圧調整動作は、上述した電圧調整装置1Aの電圧調整動作と同様である。また、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態から図12(b)に示す逆送電−順潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−逆潮流モードに切り換えられた場合の電圧調整装置1Cの電圧調整動作も、上述した電圧調整装置1Aの送電−潮流モードが切り換えられた場合の電圧調整動作と同様である。
次に、例えば、図12(a)に示す順送電−順潮流モードの配電系統において、例えば、図15に示すように、二次側の配電線PL2にAVR機能を有するSVCが設置された構成に変化した場合は、電圧調整装置1Cは、以下のように動作する。
電圧調整装置1Cが「電源変電所方向は一次側」の情報に基づいて二次側電圧v2を二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するためにタップ切換えをすると、そのタップ切換えによる二次側電圧v2の変化に対して、配電線PL2に設置されたSVCが瞬時に無効電力Qを出力して二次側電圧v2の変化をキャンセルするように動作する。
電圧調整装置1Cは、タップ切換えによる二次側線路L2の無効電力Qの変化量ΔQを検出し、その変化量ΔQを予め決められた閾値QTHと比較する。そして、電圧調整装置1Cは、ΔQ>QTHであれば、二次側線路L2に設置されたSVCが電圧一定制御をしたと判断する。SVCが電圧一定制御をした場合は、上述したように、タップ切換えに対応する電圧変化量が一次側電圧v1と二次側電圧v2に振り分けられる形で両電圧v1,v2を変化させるので、変化量Δv1及び変化量Δv2を用いた電源変電所方向の判断は適正とはいえなくなる。
電圧調整装置1Cは、順送電−順潮流モードの配電系統において、二次側線路L2に設置されたSVCが電圧一定制御をした場合は、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS104からステップS112,S113を経由してステップS105に進む処理を行う。
なお、図12(b)又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードの配電系統において、一次側の線路PL1にSVCが設置され、電圧調整装置1Cが一次側電圧v1の電圧調整動作をしているときにSVCが電圧一定制御をした場合も、電圧調整装置1Cは、同様の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Cは、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS104からステップS112,S113を経由してステップS105に進む処理を行う。
ステップS112,S113では、電圧調整装置1Cは、無効電力Qがない(SVCの電圧一定制御がない)と仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'と二次側電圧v2の変化量Δv2'を算出し、ステップS101で検出した一次側電圧v1の変化量Δv1と二次側電圧v2の変化量Δv2をそれぞれ変化量Δv1'と変化量Δv2'に置き換える処理を行う。
そして、電圧調整装置1Cは、ステップS105,S108で一次側電圧v1の変化量Δv1'と二次側電圧v2の変化量Δv2'を用いて電源変電所方向の判断を行う。
一次側電圧v1の変化量Δv1'と二次側電圧v2の変化量Δv2'は、SVCが電圧一定制御をしなかったと仮定した場合の推定値であるから、例えば、二次側電圧調整モードの場合、変化量Δv1',Δv2'は、図16(a)に示すように、|Δv2'|>|Δv1'|の関係となっている。従って、変化量Δv1',Δv2'を用いた電源変電所方向の判断では、電圧調整装置1Cは、ステップS108〜S110の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Cは、「電源変電所方向は一次側」という正しい判断を行い、変電所方向記憶部179Aに記憶している「電源変電所方向は一次側」の情報を維持するとともに、電圧調整モード設定回路14を二次側電圧調整モードに保持する。
また、一次側電圧調整モードの場合、一次側電圧v1の変化量Δv1'と二次側電圧v2の変化量Δv2'は、|Δv1'|>|Δv2'|の関係となる。従って、変化量Δv1',Δv2'を用いた電源変電所方向の判断では、電圧調整装置1Cは、ステップS105〜S107の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Cは、「電源変電所方向は二次側」という正しい判断を行い、変電所方向記憶部179Aに記憶している「電源変電所方向は一次側」の情報を「電源変電所方向は二次側」の内容に変更するとともに、電圧調整モード設定回路14を一次側電圧調整モードに切り換える。
上記のように、実施の形態3による電圧調整装置1Cでは、電圧調整装置1Cがタップ切換えをしたときに電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、電圧一定制御機器が電圧一定制御をしなかったと仮定した場合の一次側電圧v1の変化量Δv1'と二次側電圧v2の変化量Δv2'を用いて電源変電所方向の判断(又は確認)を行うので、電圧一定制御機器の電圧一定制御の影響を受けることなく、電源変電所方向の判断処理で正しい判断をすることができる。
また、実施の形態3でも、タップ切換え毎の電源変電所方向の判断において、電源変電所方向の誤判断を回避できるので、上記のタップ暴走の発生を防止することができる。
上記の実施の形態1〜3では、タップ切換えによる電圧変動に対して電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたか否かを無効電力Qの変化量ΔQによって判断しているが、二次側電圧v2と二次側電流i2の位相φの変化量Δφ又は力率cos(φ)の変化量Δcos(φ)を用いて電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたか否かを判断するようにしてもよい。
すなわち、電圧調整装置1A,1B,1Cは、タップ切換器12,12'がタップ切換えを行うと、そのタップ切換え前後の位相φの変化量Δφを算出し、その変化量Δφを予め設定した閾値φTHと比較する。そして、電圧調整装置1A,1B,1Cは、Δφ>φTHであれば、電圧一定制御機器が無効電力Qを出力して電圧一定制御をしている(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は不適正)と判断し、Δφ≦φTHであれば、電圧一定制御機器は無効電力Qを出力していない(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は適正)と判断するようにしても良い。
なお、二次側電圧v2と二次電流i2の位相φは、例えば、二次側電圧v2がゼロレベルを負から正にクロスするゼロクロスタイミングtv0と二次側電流i2がゼロレベルを負から正にクロスするゼロクロスタイミングti0を検出し、両検出値の差分(|tv0−ti0|)を演算することにより取得すればよい。
また、電圧調整装置1A,1B,1Cは、タップ切換器12,12'がタップ切換えを行うと、そのタップ切換え前後の力率cos(φ)の変化量Δcos(φ)を算出し、その変化量Δcos(φ)を予め設定した閾値RTHと比較する。そして、電圧調整装置1A,1B,1Cは、Δcos(φ)>RTHであれば、電圧一定制御機器が無効電力Qを出力して電圧一定制御をしている(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は不適正)と判断し、Δcos(φ)≦RTHであれば、電圧一定制御機器は無効電力Qを出力していない(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は適正)と判断するようにしても良い。なお、二次側の力率cos(φ)は、上記の方法で取得した位相φに対してcos(φ)の演算を行って取得すればよい。
あるいは、電圧調整装置1A,1B,1Cは、タップ切換え前後の無効電力Qの変化量ΔQ、位相φの変化量Δφ、力率cos(φ)の変化量Δcos(φ)のうち、2以上のパラメータを組み合わせて電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたか否かを判断するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態1〜3において、無効電力Qの変化量ΔQを用いて電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと判断した場合は、図11に示すように、その判断結果を出力するようにしてもよい。ここに、判断結果の出力とは、ディスプレイなどの表示装置への表示、プリンタなどの印字装置での印字、音声による報知、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。
図11に示す電圧調整装置1Dは、図1に示す電圧調整装置1Aに通信部19と出力部20を設けたものである。電圧調整装置1Dでは、判定部178の判定結果を変電所方向判断部175に出力するだけでなく、通信部19からネットワーク3を介して外部の情報端末2に送信し、出力部20で判定結果を出力する。
通信部19は、判定結果を外部の端末装置2に通信する機能ブロックである。通信部19と端末装置2との通信は、有線と無線のいずれでもよく、有線と無線を組み合わせたものでもよい。従って、通信部19は、有線又は無線の通信手段で構成される。また、出力部20は、通常、表示手段と音声出力手段を含み、表示手段で判定結果を文字、画像で表示し、音声出力手段で判定結果を音声出力する。
出力部20の表示手段は、画像表示が可能なディスプレイでもよく、ランプなどの表示灯でもよい。表示手段がディスプレイの場合は、判定結果が文字や画像などで表示される。また、出力部20の表示手段が表示灯の場合は、例えば、電圧一定制御機器が存在しない場合は消灯し、電圧一定制御機器が存在する場合に点灯して電圧調整装置が適正に動作する状態か否かが報知される。
判定結果を受信した情報端末2では、記録媒体への判定結果の蓄積、端末装置2のディスプレイへの判定結果の表示、情報端末2のスピーカから判定結果の音声出力などの出力処理が行われる。端末装置2を介して他の表示装置への判定結果の表示、プリンタ等の印字装置による判定結果の印字などを行ってもよい。情報端末2は、例えば、電力系統を管理する事業所などに設置される端末で、図11は、情報端末2を介して事業所の作業員に判定部178の判定結果を報知することができる構成である。
なお、電圧調整装置1Bと電圧調整装置1Cについても電圧調整装置1Aと同様に、通信部19及び出力部20を設け、判定部178の判定結果を変電所方向判断部175に出力するだけでなく、通信部19からネットワーク3を介して外部の情報端末2に送信し、出力部20で判定結果を出力するとよい。
図11に示す電圧調整装置1Dの構成によれば、事業者は、電圧一定制御機器によるSVRの電圧調整動作へ悪影響を把握することができ、悪影響が大きい場合は、例えば、SVRの移設、AVR機能を備えた電力機器の電圧一定制御の停止又は禁止などの対策を講じることができる。
以上のように、本発明は、SVC、PCSなどが電圧一定制御を行っている中でのSVRが不要なタップ切換えとそのときの電源変電所方向の誤判断による更なる不要なタップ切換えの発生をSVR自身が自律的に防止できるので、本発明は、SVRの非常に有用な機能ということができる。
本発明は、SVC、PCS及び分散電源対応型のSVRの普及促進にも貢献し得るものである。特に近年の連系量が増大している太陽光発電用PCSにおいて、電圧一定制御を用いて連系点電圧を一定電圧以上に抑制する出力抑制機能が働いてもSVRのタップ暴走を防止でき、太陽光発電の系統連系量拡大にも大きく寄与するものである。
本実施の形態1〜3では、直接切換方式の調整変圧器を用いた電圧調整装置について説明したが、本発明は、間接切換方式の調整変圧器を用いた電圧調整装置に適用できることは言うまでもない。また、本実施の形態1〜3では、三相の配電線路上に設けられる三相用の電圧調整装置について説明したが、本発明が単相用の電圧調整装置にも適用できることは言うまでもない。