JP2019033638A - 電圧調整装置及び電圧調整装置の判定方法 - Google Patents

電圧調整装置及び電圧調整装置の判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断では負荷側に電圧一定制御機能を備えた機器が連系されている場合に誤判断するという問題がある【解決手段】変電所方向記憶部179Aに記憶されている電源変電所方向に基づいて電圧調整手段が電源変電所の存在しない側の電圧を規定の電圧範囲内に調整し、変電所判断部175がその電圧調整による電圧の変化量を用いて電源変電所方向を判断する電圧調整装置において、電圧調整による無効電力のタップ切換前後の変化量を検出する無効電力変化量算出部177と、無効電力変化量検出部177の検出結果を用いて電力一定制御機能を備えた機器が配電線路に連系されているか否かを判定する判定部178とを備えることにより、不適正な変電所方向情報に基づく電圧調整動作を防止することができる。【選択図】図4

Description

本発明は、配電系統に設置される電圧調整装置に関するものである。
例えば、電力を供給する変電所(以下、「電源変電所」という。)とその電力を消費する需要家(負荷)とを結ぶ配電線の途中に設置される配電用自動電圧調整装置(Step Voltage Regulator。以下、「SVR」という)は、負荷の増減によって絶えず変動する配電線の電圧を規定の許容電圧範囲内に自動的に収める制御を行う電力機器である。SVRは、電源変電所が存在する線路側の電圧(以下、「電源側電圧」という。)は規定の電圧値に安定化されているとして、反対の線路側の電圧(以下、「負荷側電圧」という。)を監視し、負荷側電圧が許容電圧範囲を外れると、電圧調整用のタップ付き変圧器(以下、「調整変圧器」という。)のタップを切り換えて負荷側電圧を許容電圧範囲内に収めるように構成されている。
図12は、SVRが設置される配電系統モデルの一例を示す図である。
図12に示す配電系統モデルは、SVRの一方側(図12では左側)の配電線PLに遮断器FCBを介して変電所DSが接続され、SVRの他方側(図12では右側)の配電線PLに遮断器FCBを介して変電所DSが接続され、配電線PLと配電線PLの両線路の途中に負荷Rと負荷Rが接続された構成である。配電系統モデルは、遮断器FCBを「閉状態」(図12では黒色で示している。)とし、遮断器FCBを「開状態」(図12では白色で示している。)として変電所DSから負荷R,Rに電力を供給する構成を通常の構成とし、例えば、配電線PLに事故が生じた場合などには遮断器FCB,FCBをそれぞれ「開状態」と「閉状態」に切り換えて変電所DSから負荷R,Rに電力を供給することができる配電系統のモデルである。
図12(a)は、遮断器FCBを「閉状態」とし、遮断器FCBを「開状態」として変電所DSから負荷R,Rに電力を供給する電力供給モード(以下、「順送電−順潮流モード」という。)の構成を示し、図12(b)は、遮断器FCBを「開状態」、遮断器FCBを「閉状態」に切り換えて変電所DSから負荷R,Rに電力を供給する電力供給モード(以下、「逆送電−逆潮流モード」という。)の構成を示している。
配電線PLをSVRの調整変圧器の一次側に接続される線路とし、配電線PLをSVRの調整変圧器の二次側に接続される線路とすると、順送電−順潮流モードでは、変電所DSが電源変電所となり(SVRに対して電源変電所が存在する方向(以下、「電源変電所方向」という。)が調整変圧器の一次側となり)、負荷側電圧が調整変圧器の二次側の電圧となる。一方、逆送電−逆潮流モードでは、変電所DSが電源変電所となり(電源変電所方向が調整変圧器の二次側となり)、負荷側電圧が調整変圧器の一次側の電圧となる。
配電系統の電力供給モードによって電圧調整の対象となる電圧が変化するので、SVRは、電源変電所方向の情報を有し、その電源変電所方向の情報が二次側の場合に調整変圧器の一次側の電圧を自動調整する一次側電圧調整モードと、その電源変電所方向の情報が一次側の場合に調整変圧器の二次側の電圧を自動調整する二次側電圧調整モードを有している。SVRは、順送電−順潮流モードでは調整変圧器の二次側の電圧を監視し、その電圧が許容電圧範囲内から外れないように電圧調整動作を行う。また、SVRは、逆送電−逆潮流モードでは調整変圧器の一次側の電圧を監視し、その電圧が許容電圧範囲内から外れないように電圧調整動作を行う。
SVRは、電源変電所方向が変化することがあるので、例えば、調整変圧器のタップ切換えが行われる毎に電源変電所方向を判断し、その判断結果に応じた電圧調整モードで動作するようになっている。図12に示す配電系統モデルでは、電源変電所の方向が変化するのに応じて潮流の方向が変化するので、SVRは、例えば、内蔵された計器用変流器によって潮流を監視し、その潮流の方向によって電源変電所の方向を判断している。通常、潮流は電源変電所側から負荷側に向かって流れるので、SVRは、潮流が調整変圧器の一次側から二次側に向かって流れている場合は、電源変電所方向は調整変圧器の一次側であると判断し、二次側電圧調整モードで電圧調整動作を行い、潮流が調整変圧器の二次側から一次側に向かって流れている場合は、電源変電所方向は調整変圧器の二次側であると判断し、一次側電圧調整モードで電圧調整動作を行う。
近年、図13に示すように、配電線PL,PLの線路上に負荷R,Rとともに太陽光発電を初めとする分散型電源G,Gが多数設置され、これらの分散型電源G,Gを配電系統に連系させることが多くなっている。分散型電源G,Gから配電系統に供給される電力が多くなると、潮流方向が逆になることが生じる。図13(a)は、順送電において、配電線PLに設置された分散型電源Gからの電力供給が変電所DS側に流れ込む電力供給モード(以下、「順送電−逆潮流モード」という。)を示し、図13(b)は、逆送電において、配電線PLに設置された分散型電源Gからの電力供給が変電所DS側に流れ込む電力供給モード(以下、「逆送電−順潮流モード」という。)を示している。
潮流によって電源変電所方向を判断する方法は、例えば、調整変圧器の一次側から二次側に向かって流れる潮流を検出した場合、電源変電所方向は調整変圧器の一次側であると判断されるが、電力供給モードが逆送電−順潮流モードの場合は、電源変電所方向は調整変圧器の二次側であるので、その判断は誤った判断となる。調整変圧器の二次側から一次側に向かって流れる潮流を検出した場合も、電源変電所方向は調整変圧器の二次側であると判断されるが、電力供給モードが順送電−逆潮流モードの場合は、電源変電所方向は調整変圧器の一次側であるので、その判断は誤った判断となる。
従来、上記の電源変電所方向の誤判断を防止する方法として、例えば、特許文献1に、SVRがタップ切換え動作をしたとき、調整変圧器の一次側若しくは二次側の電圧、又は両側の電圧のタップ切換え前後の変化量を検出し、一次側の電圧の変化量と二次側の電圧の変化量、又は一方側の電圧の変化量を用いて電源変電所方向を判断する技術が記載されている。この技術は、タップ切換え前後の電圧の変化量は、電源変電所が存在する線路側の電圧の変化量が負荷の存在する線路側の電圧の変化量よりも小さくなるという現象を利用して、例えば、一次側の電圧の変化量と二次側の電圧の変化量を比較し、電圧の変化量が小さい側を電源変電所方向と判断する技術である。
この技術によれば、電力供給モードが順送電−順潮流モード(図12(a)参照)又は順送電−逆潮流モード(図13(a)参照)の場合は、図14(a)に示すように、タップ切換前後の一次側の電圧の変化量|Δv|が二次側の電圧の変化量|Δv|よりも小さくなるので、電源変電所方向は調整変圧器の一次側であるという正しい判断がされる。また、電力供給モードが逆送電−逆潮流モード(図12(b)参照)又は逆送電−順潮流モード(図13(b)参照)の場合は、図14(b)に示すように、タップ切換時の二次側の電圧の変化量|Δv|が一次側の電圧の変化量|Δv|よりも小さくなるので、電源変電所方向は調整変圧器の二次側であるという正しい判断がされる。
特許第3992212号公報
近年、図15に示すように、SVRの負荷側に、電圧自動調整機能(Automatic Voltage Regulator機能 以下、「AVR機能」という。)により線路の電圧を一定に制御する機能(電圧一定制御機能)を備えた電力機器を連系することが多くなっている。電圧一定制御機能を備えた電力機器とは、例えば、静止型無効電力補償装置(Static var Compensator 以下、「SVC」という。)、太陽光発電用パワーコンディショナー(Power Conditioning System 以下、「PCS」という。)、同期発電機などである。
SVRの負荷側に、AVR機能を備えた電力機器が連系されると、SVRがタップを切り換えて電圧調整を行っても電力機器が瞬時にSVRの負荷側の電圧変動をキャンセルする制御を行うので、SVRは、タップ切換え前後の一次側の電圧の変化量と二次側の電圧の変化量とを用いた電源変電所方向の判断を正しく行うことが出来ないという問題がある。
AVR機能を備えた電力機器は、連系している線路の電圧が大きく変化すると、瞬時(例えば、0.1秒以内)に無効電力を線路に供給して当該線路の電圧を一定に保持する動作をする。AVR機能を備えた電力機器が電圧一定制御をすると、タップ切換えによる電圧の変化量は、SVRの一次側の電圧検出地点から一次側の電圧固定点までのインピーダンス(すなわち、SVRから電源変電所までのインピーダンス)とSVRの二次側の電圧検出地点から二次側の電圧固定点までインピーダンス(すなわち、SVRから電圧一定制御を行う電力機器の連系点までのインピーダンス)のインピーダンス比で分担されることから、必ずしも負荷側の電圧の変化量が電源変電所側の電圧の変化量よりも大きくなるとは限らなくなる。
図16は、SVRがタップ切換えをした直後にAVR機能を備えた電力機器が電圧一定制御をしたときの調整変圧器の一次側の電圧の変化量と二次側の電圧の変化量の一例を示す図である。
図16(a)に示す電圧波形は、AVR機能を備えた電力機器が電圧一定制御をしなかった場合の一次側の電圧の変化量|Δv|と二次側の電圧の変化量|Δv|を示す波形であり、図16(b)に示す電圧波形は、AVR機能を備えた電力機器が電圧一定制御をした場合の一次側の電圧の変化量|Δv|と二次側の電圧の変化量|Δv|を示す波形である。
AVR機能を備えた電力機器が電圧一定制御をした場合は、タップ切換えによるタップ間の電圧の変化量Δvが一次側の電圧の変化量|Δv|と二次側の電圧の変化量|Δv|に分担されるので、図16(b)に示すように、|Δv|>|Δv|となる場合も生じることがあり、この場合、電圧の変化量の小さい二次側が電源変電所方向と判断されることになる。
AVR機能を有する電力機器の電圧一定制御の速度は、SVRにおける電圧の変化量の検出速度よりも速いので、SVRがタップ切換えをしたときにAVR機能を有する電力機器が二次側の電圧を一定に制御する動作を行うと、SVRは、タップ切換前の電圧とタップ切換後にAVR機能を有する電力機器が電圧一定制御の動作をした後の電圧との差分をタップ切換前後の一次側の電圧の変化量と二次側の電圧の変化量として検出することになる。すなわち、SVRは、図16(b)に示す|Δv|と|Δv|を検出することになる。このため、SVRは、電源変電所が一次側にあるにも拘わらず、電源変電所は二次側にあるという誤った判断をすることがある。
SVRは、二次側電圧調整モードで電圧調整動作している期間に二次側が電源変電所方向であるという誤った判断をすると、電圧調整モードを一次側電圧調整モードに切り換え、一次側に電源変電所があるにも拘わらず、二次側が電源変電所方向であるとの情報に基づき一次側の電圧を誤って自動調整するようになる。
この結果、SVRは、正常な電圧調整ができず、「タップ暴走」と呼ばれる、極限のタップまでタップを切り換え、そのタップ位置を保持し続けるという制御不能な状態が発生してしまい、配電電圧が適正値から大きく逸脱するという事態になる。
特に、PCSは、当該PCSの連系点の電圧が規定の電圧を下回る又は上回ると、AVR機能を動作させるものが多い。SVRは、負荷側に存在するPCSがどの時点でAVR機能を働かせたのかを知ることが出来ないので、知らない間にタップ暴走を発生して配電系統に異常が生じるケースが太陽光発電の普及とともに多くなっている。
上記のように、SVRが設置されている配電線路上にAVR機能を備えた電力機器が連系され、SVRの電圧調整動作に応じて電力機器により電力一定制御が行われると、SVRの電圧調整動作に悪影響を与える。従って、SVRは、配電線路上にAVR機能を備えた電力機器が連系されているか否かを把握し、その電力機器が連系されている場合には通常の電圧調整動作とは異なるより適切な電圧調整動作を行うことが重要である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、負荷側にAVR機能を有する電力機器が連系され、電圧調整時の電圧の変化がその電力機器によりキャンセルされるような構成になっている場合でも電源変電所方向を正常に判断することができる電圧調整装置を提供することを目的とする。
本発明に係る電圧調整装置は、複数のタップを有する電圧調整用変圧器を有し、配電線路の電圧が規定の電圧範囲を逸脱したときに電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換えて電圧を電圧範囲内に自動的に調整する電圧調整装置において、電圧調整用変圧器のタップ切換動作による無効電力、位相及び力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量を検出する変化量検出手段と、変化量検出手段の検出結果を用いて、配電線路に電圧一定制御機能を備えた電力機器が連系されているか否かを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする電圧調整装置である。
本発明に係る電圧調整装置によれば、電圧調整用変圧器のタップ切換えによって変化した無効電力、位相、力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータの変化量を用いて、配電線路に電圧一定制御機能を備えた電力機器が連系されているか否かを判定するので、電圧調整装置がその電力機器の悪影響を受け、電圧調整動作で不適切なタップ切換えを行い、延いてはタップ暴走の状態になることを防止することができる。
上記の電圧調整装置において、判定手段は、変化量検出手段の検出値を閾値と比較し、検出値が閾値以上の場合は配電線路に電力機器が連系されていると判定し、検出値が閾値よりも小さい場合は配電線路に電力機器が連系されていないと判定するとよい。
上記の構成によれば、無効電力、位相、力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量が閾値以上の場合に電圧一定制御機能を備える電力機器が配電線路に連系されていると判定するので、電力機器の連系を確実に知ることができる。
また、上記の電圧調整装置において、電圧調整用変圧器のタップ切換動作による配電線路の電圧のタップ切換前後の変化量を用いて配電線路への電力供給源である電源変電所方向を判断する判断手段を備え、判断手段は、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていると判定した場合は電源変電所方向の判断を行わず、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていないと判定した場合に電源変電所方向の判断を行うとよい。
上記の構成によれば、配電線路に電力一定制御機能を備えた電力機器が設置されている場合は、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断をせず、現在の変電所方向情報を維持するので、不正な判断結果に基づくタップ切換えによりタップ暴走が発生するのを防止することができる。
また、上記の電圧調整装置において、電圧調整用変圧器に対して電源変電所が存在する方向を示す変電所方向情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている変電所方向情報に基づいて配電線路の電源変電所が存在しない側の電圧を監視し、その電圧が電圧範囲を逸脱したときに当該電圧が当該電圧範囲内に収まるように電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換えるタップ切換制御手段と、判断手段の判断結果を用いて記憶手段に記憶されている変電所方向情報を更新する情報更新手段と、を備え、情報更新手段は、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていると判定した場合は、記憶手段に記憶されている変電所方向情報の更新を行わず、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていないと判定した場合に記憶手段に記憶されている変電所方向情報の更新を行うとよい。
上記の構成によれば、配電線路に電力一定制御機能を備えた電力機器が設置されている場合は、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断をせず、記憶手段に記憶している変電所方向情報を維持するので、間違った変電所方向情報に基づく不適切なタップ切換えを防止することができ、その不適切なタップ切換えの連鎖によるタップ暴走の発生を防止することができる。
また、上記の電圧調整装置において、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていると判定した場合、電圧調整用変圧器のタップ位置を所定のタップ位置に修正するタップ位置修正手段を備えるとよい。
上記の構成によれば、電圧調整用変圧器のタップ位置を所定のタップ位置に修正するので、配電線路に存在する電力機器の電圧一定制御により不適切なタップ切換えが行われていた場合でも電圧調整用変圧器のタップ位置をより適切なタップ位置に修正することができる。
また、上記の電圧調整装置において、タップ位置修正手段は、電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換える前のタップ位置に修正するとよい。
上記の構成によれば、電圧調整用変圧器のタップ位置をタップ切換え前の状態(電圧調整をする前の状態)に戻すので、配電線路に存在する電力機器の電圧一定制御により不適切なタップ切換えが行われていた場合にはそのタップ切換え動作(電圧調整動作)をキャンセルすることができる。
また、上記の電圧調整装置において、タップ位置修正手段は、電圧調整用変圧器のタップ位置を予め決められたタップ位置に修正するとよい。例えば、タップ位置修正手段は、電圧調整用変圧器のタップ位置を素通しタップのタップ位置に修正するとよい。
上記の構成によれば、電圧調整用変圧器のタップ位置を所定のタップ位置(例えば、素通しタップのタップ位置)に固定するので、配電線路に存在する電力機器の電圧一定制御による電圧調整用変圧器のタップ切換え動作への悪影響を防止することができる。
上記の電圧調整装置において、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていると判定した場合、変化量検出手段が検出したパラメータの変化量がないと仮定した場合の電圧の変化量を算出する電圧変化量算出手段と、電圧変化量算出手段が算出した電圧の変化量を用いて電源変電所の方向を判断する第2の判断手段と、を備えるとよい。
上記の構成によれば、例えば、配電線路に存在する電圧一定制御機能を備えた電力機器の無効電力の出力により電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断が不適正となる恐れがある場合、電力機器が無効電力を出力していないと仮定した電圧のタップ切換前後の変化量を推定し、その電圧の変化量を用いて電源変電所方向を判断するので、電力機器の電圧一定制御による電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断への悪影響を防止することができる。
また、上記の電圧調整装置において、判定手段が配電線路に電力機器が連系されていると判定した場合、その判定結果を出力する出力手段を備えるとよい。好ましくは、電圧調整装置に有線又は無線で接続される端末装置に判定結果を出力するとよい。
上記の構成によれば、配電線路に電圧一定制御機能を有する電力機器が連系されているとの判定結果を、例えば、作業員の端末装置などの外部装置に出力するので、作業員は、電圧調整装置の電圧調整動作が電力機器の電圧一定制御による悪影響を受けているか否かを認知でき、悪影響を受けている場合は、作業者は、例えば、電圧調整装置の移設や電力機器の電圧一定制御の停止などの対策を講じることができる。
本発明に係る電圧一定制御機器の連系に関する判定方法は、複数のタップを有する電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換えて配電線路の電圧を規定の電圧範囲内に調整する電圧調整装置の電圧一定制御機器の存在に関する判定方法であって、電圧調整用変圧器のタップ切換動作による無効電力、位相及び力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量を検出し、その検出結果を用いて配電線路に電圧一定制御機器が連系されているか否かを判定する判定方法である。
上記の構成によれば、無効電力、位相、力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量を用いて、配電線路に電圧一定制御機能を備えた電力機器が連系されているか否かを判定するので、電圧調整装置がその電力機器の悪影響を受け、不適切なタップ切換えを行う状態になることを防止することができる。
上記の電圧一定制御機器の存在に関する判定方法において、パラメータのタップ切換前後の変化量の検出値を閾値と比較し、検出値が閾値以上の場合は配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定し、検出値が閾値よりも小さい場合は配電線路に電圧一定制御機器が連系されていないと判定するとよい。
上記の構成によれば、無効電力、位相、力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量が閾値以上の場合に電圧一定制御機能を備える電力機器が配電線路に連系されていると判定するので、電力機器の連系を確実に知ることができる。
本発明に係る電圧調整装置等によれば、電圧調整装置が電圧一定制御機能を備えた電力機器の悪影響を受け、電圧調整動作で不適切なタップ切換えを行い、延いてはタップ暴走の状態になることを防止することができる。
実施の形態1に係る電圧調整装置の構成を示す図 同電圧調整装置の調整変圧器とタップ切換器の回路構成の一例を示す図 同電圧調整装置の電圧調整指令回路の回路構成の一例を示す図 同電圧調整装置の制御回路の内部構成を示すブロック図 同電圧調整装置の制御回路の電圧調整動作の処理手順を示すフローチャート 実施の形態2に係る電圧調整装置の構成を示す図 同電圧調整装置の制御回路の内部構成を示すブロック図 同電圧調整装置の制御回路の電圧調整動作の処理手順を示すフローチャート 実施の形態3に係る電圧調整装置の制御回路の内部構成を示すブロック図 同電圧調整装置の制御回路の電圧調整動作の処理手順を示すフローチャート 実施の形態1に係る電圧調整装置の変形例の構成を示す図 SVRが設置される配電系統モデルの送電及び潮流のモードを示す図 分散電源が設置された配電系統モデルの送電及び潮流のモードを示す図 タップ切換えによる電圧の変化量の一例を示す図 AVR機能を備えた電力機器が設置された配電系統モデルの一例を示す図 AVR機能を備えた電力機器が電圧一定制御をしたときと電圧一定制御をしなかったときの一次側の電圧の変化量と二次側の電圧の変化量の相違を示す図
以下、本発明に係る電圧調整装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、配電線路上に配設され、配電線路の電圧を調整する電圧調整装置の例について説明する。なお、実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1は、三相の配電線路上に配置された、実施の形態1に係る電圧調整装置1Aの構成を示す図である。図2は、同電圧調整装置1Aの調整変圧器11とタップ切換器12の構成を示す図、図3は、同電圧調整装置1Aの一次側電圧調整指令回路13A及び二次側電圧調整指令回路13Bの回路構成を示す図である。
三相の電圧調整装置に設けられるU相、V相、W相の各相の電圧を調整する電圧調整回路の結線方法には、三相Y型結線と三相V型結線があるが、図1に示す電圧調整装置1Aは、三相Y型結線の電圧調整回路が設けられた例である。電圧調整装置1Aの電圧調整回路は、三相V型結線であってもよい。図1に示す電圧調整装置1Aは、UW線間の電圧を調整する電圧調整回路の部分を示し、VW線間,WU線間の電圧を調整する電圧調整回路の部分は省略している。従って、以下の説明では、UW線間の配電線路の電圧調整について説明する。
電圧調整装置1Aは、配電線路の当該電圧調整装置1Aよりも左側にある線路Lの電圧v又は配電線路の当該電圧調整装置1Aよりも右側にある線路Lの電圧vを規定の電圧範囲内に自動的に調整する動作をする電圧調整回路と、その電圧調整回路の電圧調整動作を制御する制御部とを有する。線路Lは、電圧調整装置1A内の電圧調整用の変圧器11(以下、「調整変圧器11」という。図2参照)の一次側に接続されており、線路Lは、同調整変圧器11の二次側に接続されているので、以下の説明では、必要に応じて線路Lを「一次側線路L」と称し、線路Lを「二次側線路L」と称して説明する場合がある。また、一次側線路Lの電圧(U相の線路LとW相の線路Lの間の電圧)と二次側線路Lの電圧(U相の線路LとW相の線路Lの間の電圧)をそれぞれ「一次側電圧v」、「二次側電圧v」と称して説明する。
電圧調整装置1Aの電圧調整回路は、例えば、完全逆送形のタップ切換式電圧調整回路(SVR)である。電圧調整回路は、調整変圧器11、タップ切換器12,12'、一次側電圧調整指令回路13A、二次側電圧調整指令回路13B、電圧調整モード設定回路14を備える。
調整変圧器11は、図2に示すように、複数個のタップt〜tを有する単巻変圧器で構成されている。調整変圧器11のタップ付き巻線の一方端(図2では上端)はタップ切換器12の第1タップ端子tに接続され、他方端(図2では下端)は中性点Nに接続されている。なお、図2では、調整変圧器11が有するW相、V相にそれぞれ対応する単巻変圧器は省略している。また、W相のタップ切換器12'も、U相のタップ切換器12と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
タップ付き巻線の一方端寄りの部分の所定の位置から(n−1)個のタップが引き出され、それぞれタップ切換器12の第2タップ端子tから第nタップ端子tに接続されている。また、タップ付き巻線の第rタップ(但し、1<r<n。図2では第4タップ)の位置は、素通しタップの位置となっており、その位置にU相の二次側の線路Lが接続されている。
タップ切換器12は、コモン端子tと、n個のタップ端子t(iは、タップの番号。i=1,2,…n)と、コモン端子tとn個のタップ端子tのいずれかを接続する接触子(図示省略)とを有し、コモン端子tにU相の一次側の線路Lが接続されている。タップ切換器12は、負荷が接続された状態でコモン端子tに接続するタップ端子tを切り換えることにより、一次側電圧v又は二次側電圧vを調整する。
一次側電圧vの調整は、例えば、図12(b)や図13(b)に示したように、電力を供給する変電所(電源変電所)が電圧調整装置1Aの二次側に存在する場合に電圧調整装置1Aが行う電圧調整である。また、二次側電圧vの調整は、例えば、図12(a)や図13(a)に示したように、電源変電所が電圧調整装置1Aの一次側に存在する場合に電圧調整装置1Aが行う電圧調整である。
電圧調整装置1Aは、電源変電所方向によって調整対象の電圧が異なるので、一次側電圧vを調整する一次側電圧調整モードと二次側電圧vを調整する二次側電圧調整モードの2種類の電圧調整モードを有する。電源変電所方向とは、電圧調整装置1Aに対して電源変電所が存在する配電線路上の方向である。電源変電所は、一次側線路Lと二次側線路Lのいずれかに接続されているので、本明細書では、電源変電所が一次側線路Lに接続されている場合の電源変電所方向を「一次側」、電源変電所が二次側線路Lに接続されている場合の電源変電所方向を「二次側」と称する。
電圧調整装置1Aは、調整対象の電圧vが目標電圧vの許容範囲±Δv([v−Δv]〜[v+Δv]の電圧範囲。以下、「目標電圧範囲VAR」という。)の上限値VARU(=v+Δv)よりも大きくなると、タップ切換器12,12'のタップを調整対象の電圧vが降下する方向(降圧方向)に切り換えてその電圧vが上限値VARUよりも小さくなるように電圧調整を行う。また、電圧調整装置1Aは、調整対象の電圧vが目標電圧範囲VARの下限値VARD(=v−Δv)よりも小さくなると、タップ切換器12,12'のタップを調整対象の電圧vが上昇する方向(昇圧方向)に切り換えてその電圧vが下限値VARDよりも大きくなるように電圧調整を行う。
調整変圧器11の一次巻線の巻数(コモン端子tに接続されているタップの位置と中性点Nとの間の巻数)をNとし、二次巻線の巻数(第rタップの位置と中性点Nとの間の巻数)をNとすると、一次側電圧vと二次側電圧vの間には、v/v=N/Nの関係がある。一次側電圧調整モードでは、二次側線路Lに存在する電源変電所によって二次側電圧vの変化量Δvが小さく抑えられる(理想的には変化量Δvは略ゼロになる)ので、一次側電圧vは、タップを切り換えることによって、巻数Nに比例するように変化する。一方、二次側電圧調整モードでは、一次側線路Lに存在する電源変電所によって一次側電圧vの変化量Δvが小さく抑えられる(理想的には変化量Δvは略ゼロになる)ので、二次側電圧vは、タップを切り換えることによって、巻数Nに反比例するように変化する。
従って、電圧調整装置1Aは、一次側電圧調整モードでは、一次側電圧vが一次側の目標電圧範囲VAR1の上限値VARU1(=vc1+Δv)よりも大きくなると、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数Nよりも小さい巻数Nを有するタップ位置の方向(タップ番号が増加する方向)に切り換えて一次側電圧vの電圧調整を行う。逆に、一次側電圧vが一次側の目標電圧範囲VAR1の下限値VARD1(=vc1−Δv)よりも小さくなると、電圧調整装置1Aは、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数Nよりも大きい巻数Nを有するタップ位置の方向(タップ番号が減少する方向)に切り換えて一次側電圧vの電圧調整を行う。
また、電圧調整装置1Aは、二次電圧調整モードでは、二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2の上限値VARU2(=vc2+Δv)よりも大きくなると、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数Nよりも大きい巻数Nを有するタップ位置の方向(タップ番号が減少する方向)に切り換えて二次側電圧vの電圧調整を行う。逆に、二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2の下限値VARD2(=vc2−Δv)よりも小さくなると、電圧調整装置1Aは、タップ切換器12,12'のタップ位置を現在のタップ位置の巻数Nよりも小さい巻数Nを有するタップ位置の方向(タップ番号が増加する方向)に切り換えて二次側電圧vの電圧調整を行う。
タップ切換器12,12'には、一次側電圧調整指令回路13Aで生成された電圧調整指令Ctaと二次側電圧調整指令回路13Bで生成された電圧調整指令Ctbのいずれかが電圧調整モード設定回路14から入力される。タップ切換器12,12'は、電圧調整モード設定回路14から入力される電圧調整指令Cta又はCtbで指示されたタップ端子tをコモン端子tに接続する。すなわち、タップ切換器12,12'は、一次側線路Lに接続する調整変圧器11のタップ位置を電圧調整指令Cta又はCtbで指示されたタップ位置(タップ端子t)に切り換える。
一次側電圧調整指令回路13Aは、一次側電圧vを監視し、一次側電圧vが一次側の目標電圧範囲VAR1から逸脱すると、一次側電圧vを目標電圧範囲VAR1内に収めるための電圧調整指令値Ctaを出力する。電圧調整指令値Ctaは、例えば、一次側電圧vを降圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ増加する方向に変化させる指令値であり、一次側電圧vを昇圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ減少する方向に変化させる指令値である。電圧調整指令値Ctaは、電圧調整モード設定回路14に入力され、電圧調整モードが一次電圧調整モードに設定されている場合に、電圧調整モード設定回路14からタップ切換器12,12'に入力される。
二次側電圧調整指令回路13Bは、二次側電圧vを監視し、二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2から逸脱すると、二次側電圧vを目標電圧範囲VAR2内に収めるための電圧調整指令値Ctbを出力する。電圧調整指令値Ctbは、例えば、二次側電圧vを降圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ減少する方向に変化させる指令値であり、二次側電圧vを昇圧方向に変化させる場合は、タップ切換器12,12'の現在のタップ位置をタップ番号が1つ増加する方向に変化させる指令値である。電圧調整指令値Ctbは、電圧調整モード設定回路14に入力され、電圧調整モードが二次電圧調整モードに設定されている場合に、電圧調整モード設定回路14からタップ切換器12,12'に入力される。
一次側電圧調整指令回路13Aと二次側電圧調整指令回路13Bは、同一の回路構成を有し、例えば、図3に示す回路構成を有している。
図3に示す電圧調整指令回路13は、計器用変圧器131、電圧調整継電器132、線路電圧降下補償器133、変流器134を備える。電圧調整継電器132と線路電圧降下補償器133は、計器用変圧器131の二次巻線に直列に接続され、変流器134の出力線が電圧調整継電器132に接続されている。そして、一次側電圧調整指令回路13Aでは、計器用変圧器131の一次巻線が一次側のU相の線路LとW相の線路Lの間に接続され、変流器134が一次側のU相の線路Lに取り付けられた構成となっており、二次側電圧調整指令回路13Bでは、計器用変圧器131の二次巻線が二次側のU相の線路LとW相の線路Lの間に接続され、変流器134が二次側のU相の線路Lに取り付けられた構成となっている。
なお、変流器134は、U相の線電流iとW相の線電流iの合成電流が(i−i)となるように、U相の線路LとW相の線路Lに結線されている。これは、変流器134の検出電流iをU相の線電流iにすると、検出電流iが入力される線路電圧降下補償器133の印加電圧との間にπ/6の位相差が生じるので、その位相差をなくすために線電流iと線電流iの合成電流(U相とW相の線間電流)を検出するようにしたものである。
計器用変圧器131は、一次巻線に高圧v(例えば、数千[V])が印加されると、二次巻線から高圧vを巻線比に応じた低圧v(例えば、百数十[V])に変成して出力する。一次側電圧調整指令回路13Aの計器用変圧器131は、一次側電圧vを巻線比に応じた低圧v'に変成して出力する。また、二次側電圧調整指令回路13Bの計器用変圧器131は、二次側電圧vを巻線比に応じた低圧v'に変成して出力する。
電圧調整継電器132は、例えば、90リレーで構成されている。電圧調整継電器132は、継電器両端の電圧vb2を検出し、その検出電圧vb2が目標電圧範囲VAR'から外れている場合にタップの切換えを指示する電圧調整指令Cを生成し、電圧調整モード設定回路14に出力する。
線路電圧降下補償器133(Line Drop Compensator。以下、「LDC133」という。)は、変流器134が取り付けられた線路の線路インピーダンスを模擬した抵抗とリアクタンスとで構成されている。一次側電圧調整指令回路13Aの線路電圧降下補償器133は、一次側線路Lの線路インピーダンスを模擬した抵抗とリアクタンスとで構成され、二次側電圧調整指令回路13Bの線路電圧降下補償器133は、二次側線路Lの線路インピーダンスを模擬した抵抗とリアクタンスとで構成されている。
線路電圧降下補償器133は、変流器134の検出電流iを流すことによって線路インピーダンスによる電圧降下vb1を発生する。線路電圧降下補償器133が電圧降下vb1を発生することにより、電圧調整継電器132の両端には計器用変圧器131が検出した電圧vを電圧降下vb1だけ低下した電圧vb2=(v−vb1)が印加される。
従って、一次側電圧調整指令回路13Aの線路電圧降下補償器133は、一次側線路vの線路インピーダンスによる電圧降下v1b1を発生し、一次側電圧調整指令回路13Aの電圧調整継電器132の両端電圧は、計器用変圧器131が検出した電圧v1bを電圧降下v1b1だけ低下した電圧v1b2=(v1b−v1b1)となる。また、二次側電圧調整指令回路13Bの線路電圧降下補償器133は、二次側線路vの線路インピーダンスによる電圧降下v2b1を発生し、一次側電圧調整指令回路13Aの電圧調整継電器132の両端電圧は、計器用変圧器131が検出した電圧v2bを電圧降下v2b1だけ低下した電圧v2b2=(v2b−v2b1)となる。
電圧vb2が逸脱する目標電圧範囲VAR'は、変流器134が取り付けられた線路の高圧vが逸脱する目標電圧範囲VARに対応している。電圧調整継電器132は、高圧vが目標電圧範囲VARを逸脱すると、高圧vを目標電圧範囲VAR内に収めるための電圧調整指令Cを生成する。電圧vb2は、計器用変圧器131が検出した電圧vを線路インピーダンスによる電圧降下vb1だけ低下した電圧であるので、電圧調整継電器132が出力する電圧調整指令Cによりタップを切り換えて変化させる線路の高圧vは、線路インピーダンスによる電圧降下分が補償されたものとなっている。
従って、一次側電圧調整指令回路13Aの電圧調整継電器132は、一次側電圧vが目標電圧範囲VAR1を逸脱すると、一次側電圧vを一次側の目標電圧範囲VAR1内に収めるための電圧調整指令Ctaを生成する。この電圧調整指令Ctaによりタップを切り換えて変化させる一次電圧vは、一次側線路Lの線路インピーダンスによる電圧降下分が補償されたものである。また、二次側電圧調整指令回路13Bの電圧調整継電器132は、二次側電圧vが目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、二次側電圧vを二次側の目標電圧範囲VAR2内に収めるための電圧調整指令Ctbを生成する。この電圧調整指令Ctbによりタップを切り換えて変化させる二次電圧vは、二次側線路Lの線路インピーダンスによる電圧降下分が補償されたものである。
電圧調整モード設定回路14は、制御部から入力される電圧調整モードの情報Cに基づいて、電圧調整モードを一次側電圧調整モードと二次側電圧調整モードのいずれかのモードに設定する。
電圧調整モード設定回路14は、電圧調整モードの情報Cが二次側電圧調整モードである場合、二次側電圧調整指令回路13Bから入力される電圧調整指令Ctbをタップ切換器12,12'に出力する。一方、電圧調整モードの情報Cが一次側電圧調整モードである場合、電圧調整モード設定回路14は、一次側電圧調整指令回路13Aから入力される電圧調整指令Ctaをタップ切換器12,12'に出力する。
なお、電圧調整モード設定回路14で電圧調整指令Cta,Ctbのタップ切換器12,12'への入力を制御するのではなく、制御回路17が一次側電圧調整モードの場合は一次側電圧調整指令回路13Aを動作させて電圧調整指令Ctaをタップ切換器12,12'に入力し、二次側電圧調整モードの場合は二次側電圧調整指令回路13Bを動作させて電圧調整指令Ctbをタップ切換器12,12'に入力するように制御してもよい。
電圧調整装置1Aの制御部は、一次側電圧検出器15A、二次側電圧検出器15B、二次側電流検出器16、制御回路17を備える。
一次側電圧検出器15Aは、一次側電圧vを検出するものであり、二次側電圧検出器15Bは、二次側電圧vを検出するものである。一次側電圧検出器15Aと二次側電圧検出器15Bは、例えば、計器用変圧器131と同一構成の変圧器で構成されている。一次側電圧検出器15Aは、一次側線路LのU相の線路LとW相の線路Lの間に設けられ、二次側電圧検出器15Bは、二次側線路LのU相の線路LとW相の線路Lの間に設けられている。一次側電圧検出器15Aの検出電圧vと二次側電圧検出器15Bの検出電圧vは、制御回路17に入力される。
二次側電流検出器16は、二次側電流iを検出するものである。二次側電流検出器16は、例えば、変流器134と同一の構成の変流器で構成される。二次側電流検出器16は、二次側線路LのU相の線路Lに設けられている。二次側電流検出器16の検出電流iは、制御回路17に入力される。
制御回路17は、電圧調整回路の電圧調整動作を制御する。より具体的には、制御回路17は、電圧調整回路に対する電源変電所方向の変化を監視し、電源変電所方向が変化するのに応じて電圧調整モード設定回路14に設定する電圧調整モードを制御する。制御回路17は、例えば、MPU(Micro−processing unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含むマイクロコンピュータで構成され、MPUがRAMを用いてROMに格納されている電圧調整用の所定のプログラムを実行することにより、電圧調整回路による一次側電圧v又は二次側電圧vの自動電圧調整動作を制御する。なお、制御回路17は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)で実現してもよい。
図4は、制御回路17の内部構成を示すブロック図である。
制御回路17は、電源変電所方向に基づく電圧調整モードの制御に関する処理ブロックとして、瞬時電圧検出部171,173、電圧変化量算出部172,174、変電所方向判断部175、無効電力検出部176、無効電力変化量算出部177、判定部178、電圧調整モード設定部179を備える。また、電圧調整モード設定部179は、調整変圧器11に対して配電線路への電力供給源である電源変電所が存在する方向を示す変電所方向情報を記憶する変電所方向記憶部179Aを備える。
瞬時電圧検出部171は、一次側電圧検出器15Aから入力される一次側電圧vの瞬時値を検出し、瞬時電圧検出部173は、二次側電圧検出器15Bから入力される二次側電圧vの瞬時値を検出する。瞬時電圧検出部171,173は、同一の構成を有し、例えば、ピーク検出回路、トラックホールド(T/H)回路、A/D変換回路を備える。
一次側電圧vをV・sin(ω・t)とすると、瞬時電圧検出部171は、所定の周期Δtで、ピーク検出回路によりV・sin(ω・t)のピーク値(アナログ信号のピークレベル)を検出し、トラックホールド(T/H)回路によりそのピーク値を保持し、A/D変換回路によりそのピーク値をデジタル信号に変換して出力する。従って、瞬時電圧検出部171は、周期Δtで一次側電圧v=V・sin(ω・t)の瞬時値(デジタル値)を検出する。
また、二次側電圧vをV・sin(ω・t)とすると、瞬時電圧検出部173は、周期Δtで、ピーク検出回路によりV・sin(ω・t)のピーク値(アナログ信号のピークレベル)を検出し、トラックホールド(T/H)回路によりそのピーク値を保持し、A/D変換回路によりそのピーク値をデジタル信号に変換して出力する。従って、瞬時電圧検出部173は、周期Δtで二次側電圧v=V・sin(ω・t)の瞬時値(デジタル値)を検出する。
電圧変化量算出部172は、瞬時電圧検出部171が周期Δtで検出する一次電圧vの瞬時値の変化量Δvを算出する。電圧変化量算出部172は、前回検出した一次電圧vの瞬時値v[k−1]((k−1)は、サンプリング番号)を保持し、今回検出した一次電圧vの瞬時値v[k](kは、サンプリング番号)との差分の絶対値|v[k]−v[k−1]|を変化量Δvとして算出する。
電圧変化量算出部174は、瞬時電圧検出部173が周期Δtで検出する二次電圧vの瞬時値の変化量Δvを算出する。電圧変化量算出部174は、前回検出した二次電圧vの瞬時値v[k−1]((k−1)は、サンプリング番号)を保持し、今回検出した二次電圧vの瞬時値v[k](kは、サンプリング番号)との差分の絶対値|v[k]−v[k−1]|を変化量Δvとして算出する。
変電所方向判断部175は、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧vの変化量Δvと電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧vの変化量Δvを用いて電源変電所方向を判断する。背景技術で説明したように、配電線路にSVCなどの電圧一定制御を行う電力機器(以下、「電圧一定制御機器」という。)が設けられていない状態では、電圧調整回路がタップ切換えを行ったときのタップ切換え前後の電圧の変化量は、電源変電所が存在する線路側の電圧の変化量が負荷の存在する線路側の電圧の変化量よりも小さくなることが知られている。変電所方向判断部175は、この特性を利用して、電圧調整回路がタップ切換えを行ったときのタップ切換え前後の一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを比較することにより、電源変電所方向を判断する。
具体的には、変電所方向判断部175は、Δv>Δvであれば、電源変電所方向は、二次側であると判断し、Δv<Δvであれば、電源変電所方向は、一次側であると判断する。また、変電所方向判断部175は、Δv≒Δvであれば、前回判断した電源変電所方向と同じであると判断する。タップ切換器12,12'がタップ切換え動作を行っていない期間では、周期Δtでの一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvの差は微小であるから、Δv≒Δvとなる。
本発明の課題で説明したように、配電線路LにSVCなどの電圧一定制御を行う機器が設けられており、電圧調整回路がタップ切換えを行うと同時にSVCが電圧一定制御を行っている場合は、タップ切換え時の電圧の変化量の特性が上記の特性と異なり、誤判断が生じる恐れがある。タップ切換え時にSVCが電圧一定制御を行っていると推定される場合、変電所方向判断部175は、上記の一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行わない。
無効電力検出部176は、周期Δtで二次側線路Lの無効電力Qを検出する。無効電力検出部176には、二次側電圧検出器15Bが検出する二次側電圧vと二次側電流検出器16が検出する二次側電流iが入力される。無効電力検出部176は、例えば、二次側電圧v(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、二次側電流i(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、二次側電圧v(デジタル値)を積分する積分回路と、二次側電圧vの積分値と二次側電流iを乗算する乗算回路とを備えた構成である。この構成では、無効電力検出部176は、二次側電圧vの位相を積分回路でπ/2だけ遅らせた後、二次側電流iと乗算することにより無効電力Qを算出する。
無効電力Qは、例えば、二次側の三相電圧信号vuv,vvw,vwuを互いに直交する二相電圧信号V,Vに変換し、二次側の三相電流信号i,i,iを互いに直交する二相電流信号I,Iに変換し、(−V,I+V,I)の演算処理をすることによっても算出することができる。
無効電力検出部176を、例えば、二次側の三相電圧信号vuv,vvw,vwuを二相電圧信号V,Vに変換する第1の三相/二相変換回路と、第1の三相/二相変換回路の出力から高調波を除去して基本波成分を抽出する第1のフィルタ回路と、二次側の三相電流信号i,i,iを二相電流信号I,Iに変換する第2の三相/二相変換回路と、第2の三相/二相変換回路の出力から高調波を除去して基本波成分を抽出する第2のフィルタ回路と、無効電力算出回路とで構成し、無効電力算出回路で第1のフィルタ回路の出力(V,V)と第2のフィルタ回路の出力(I,I)と用いて(−V,I+V,I)の演算処理をすることにより、無効電力Qを検出するようにしてもよい。
無効電力変化量算出部177は、無効電力検出部176が周期Δtで検出する無効電力Qの変化量ΔQを算出する。無効電力変化量算出部177は、前回検出した二次側線路Lの無効電力Q[k−1]((k−1)は、サンプリング番号)を保持し、今回検出した無効電力Q[k](kは、サンプリング番号)との差分の絶対値|Q[k]−Q[k−1]|を変化量ΔQとして算出する。
判定部178は、配電線路に、SVC、PCS、同期発電機などの電圧一定制御機能を備えた電力機器(電圧一定制御機器)が連系されているか否かを判定する。判定部178は、無効電力変化量算出部177から出力される無効電力Qの変化量ΔQを予め設定された閾値QTHと比較し、その比較結果に基づく判定結果を変電所方向判断部175に出力する。判定部178は、例えば、ΔQ>QTHであれば、二次側線路Lに設置されている電圧一定制御機器から電圧一定制御のための無効電力Qが出力されている、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定する。また、判定部178は、ΔQ≦QTHであれば、二次側線路Lに電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されていない、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器は連系されていないと判定する。
タップ切換え時に電圧一定制御機器により無効電力Qが出力されると、変電所方向判断部175は適正な電源変電所方向の判断ができない可能性があるので、判定部178の判定は、変電所方向判断部175による一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断の適否を判定しているとも言える。判定部178は、判定結果を変電所方向判断部175に出力する。
変電所方向判断部175は、上述したように、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」(変電所方向判断部175の電源変電所方向の判断結果は適正)の判定結果が入力されると、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行う。一方、変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」(変電所方向判断部175の電源変電所方向の判断結果は不適正)の判定結果が入力されると、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行わない。
電圧調整モード設定部179は、変電所方向判断部175から入力される判断結果に基づいて、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を更新するとともに、電圧調整モード設定回路14への電圧調整モードの設定を制御する。変電所方向記憶部179Aには、変電所方向情報のディフォルト値として、例えば、電源変電所が二次側線路Lに存在していることを示す情報(「電源変電所方向は二次側」の情報)が記憶されている。
電圧調整モード設定部179は、変電所方向判断部175から入力される判断結果を用いて変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を更新する。変電所方向判断部175から入力される判断結果が「電源変電所方向は一次側」の場合、変電所方向記憶部179Aに記憶されている「電源変電所方向は二次側」の情報は、「電源変電所方向は一次側」の情報に更新される。変電所方向判断部175から入力される判断結果が「電源変電所方向は二次側」の場合は、変電所方向記憶部179Aの情報を更新しても記憶内容は実質的に変化しない。この場合は、変電所方向記憶部179Aの情報の更新処理をしないようにしてもよい。
電圧調整モード設定部179は、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報に基づいて電圧調整モード設定回路14に電圧調整モードを設定する。例えば、変電所方向記憶部179Aに「電源変電所方向は一次側」の情報が記憶されている場合、電圧調整モード設定部179は、電圧調整モード設定回路14に二次電圧調整モードを設定する。また、変電所方向記憶部179Aに「電源変電所方向は二次側」の情報が記憶されている場合、電圧調整モード設定部179は、電圧調整モード設定回路14に一次電圧調整モードを設定する。
次に、電圧調整装置1Aの動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
以下の説明では、電源変電所は一次側に存在し、電圧調整装置1Aの変電所方向記憶部179Aには変電所方向情報のディフォルト値として「電源変電所方向は一次側」の情報が記憶されているものとする。そして、電圧調整装置1Aは、運転開始時は電圧調整モード設定回路14に二次電圧調整モードが設定され、二次側電圧調整指令回路13Bが二次側電圧vを監視し、二次電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、二次側電圧調整指令回路13Bから出力される電圧調整指令Ctbによってタップ切換器12,12'がタップの切り換え動作をするものとする。
(ステップS101)瞬時値検出部171及び電圧変化量算出部172は、一次側電圧vの変化量Δvを算出する。また、瞬時値検出部173及び電圧変化量算出部174は、二次側電圧vの変化量Δvを算出する。
(ステップS102)無効電力検出部176及び無効電力変化量算出部177は、二次側線路Lの無効電力Qの変化量ΔQを算出する。
(ステップS103)変電所方向判断部175と判定部178は、一次側電圧調整指令回路13Aから電圧調整指令Cta又は二次側電圧調整指令回路13Bから電圧調整指令Ctbが出力されたか否か、すなわち、タップ切換器12,12'のタップが切り換えられたか否かを判別する。タップ切換器12,12'のタップが切り換えられていなければ(S103:N)、変電所方向判断部175は、電源変電所方向の判断処理をせず、また、判定部178は、電圧一定制御機器による電圧一定制御の有無の判定をせず、ステップS101に戻る。また、タップ切換器12,12'のタップが切り換えられていると(S103:Y)、ステップS104に進む。
タップ切換器12,12'のタップが切り換えられなければ、変電所方向判断部175から電圧調整モード設定部179に電源変電所方向の判断結果が出力されないので、電圧調整モード設定部179は、現在の電圧調整モードを維持する(変電所方向記憶部179Aの変更処理をしない)。電圧調整動作を開始したときは、電圧調整装置1Aは、二次側電圧調整モードで動作しているので、二次側電圧調整モードの動作が維持される。
(ステップS104)判定部178は、無効電力変化量算出部177が算出した無効電力Qの変化量ΔQと閾値QTHを比較し、その比較結果に基づく判定結果を変電所方向判断部175に出力する。判定部178は、ΔQ>QTHであれば(S104:Y)、電圧一定制御有りの判定結果を変電所方向判断部175に出力し、ステップS101の処理に戻る。変電所方向判断部175は、電圧一定制御有りの判定結果により電源変電所方向の判断処理をしない。
一方、判定部178は、ΔQ≦QTHでれば(S104:N)、電圧一定制御無しの判定結果を変電所方向判断部175に出力し、ステップS105の処理に進む。
(ステップS105)変電所方向判断部175は、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧vの変化量Δvが、電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧vの変化量Δvよりも大きいか否かを判断する。変電所方向判断部175は、Δv>Δvであれば(S105:Y)、ステップS106の処理に進み、Δv≦Δvであれば(S105:N)、ステップS108の処理に進む。
(ステップS106)変電所方向判断部175は、電源変電所は二次側線路Lに存在すると判断し、「電源変電所方向は二次側」の判断結果を電圧調整モード設定部179に出力する。
(ステップS107)電圧調整モード設定部179は、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を変電所方向判断部175から入力された電源変電所方向の判断結果(電源変電所方向は二次側)で更新し、更新後の変電所方向情報に基づき電圧調整モード設定回路14に一次側電圧調整モードを設定して、ステップS101の処理に戻る。
(ステップS108)変電所方向判断部175は、二次側電圧vの変化量Δvが一次側電圧vの変化量Δvよりも大きいか否かを判断する。変電所方向判断部175は、Δv>Δvであれば(S108:Y)、ステップS109の処理に進み、Δv=Δvであれば(S108:N)、ステップS101の処理に戻る。
(ステップS109)変電所方向判断部175は、電源変電所は一次側線路Lに存在すると判断し、「電源変電所方向は一次側」の判断結果を電圧調整モード設定部179に出力する。
(ステップS110)電圧調整モード設定部179は、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報を変電所方向判断部175から入力された電源変電所方向の判断結果(電源変電所方向は一次側)で更新し、更新後の変電所方向情報に基づき電圧調整モード設定回路14に二次側電圧調整モードを設定して、ステップS101の処理に戻る。
図5のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
電圧調整装置1Aが設置されている配電系統が図12(a)に示す順送電−順潮流モード又は図13(a)に示す順送電−逆潮流モードで配電している場合、電源変電所は一次側の線路PLに存在する変電所DSであるので、電圧調整装置1Aは、「電源変電所方向は一次側」という正しい変電所方向情報を保持している。
従って、電圧調整装置1Aは、その変電所方向情報に基づき二次側電圧vを監視し、二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、タップ切換器12,12'のタップを切り換えて二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2に収まるように電圧調整動作を行う。そして、電圧調整装置1Aは、タップ切換器12,12'がタップ切換え動作を行う毎に、タップ切換え前後の一次側電圧v及び二次側電圧vの変化量Δv,Δvを算出し、両変化量Δv,Δvを用いて電源変電所方向の判断を行う。この判断処理は、電源変電所方向が変化しているか否か、すなわち、配電系統が、例えば、図12(b)に示す逆送電−逆潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードに変化しているか否かの確認処理に相当している。
タップ切換え時に電源変電所方向の変化を確認するのは、タップ切換えが行われない期間では一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvの差が微小であるが、タップ切換えが行われると、その前後での一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvでは電源変電所が存在する側の変化量が大きくなるという現象が生じ(図14参照)、この現象を利用して電源変電所方向を判断するからである。
配電系統にSVRなどの電圧一定制御機器が設置されておらず、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態で、電圧調整装置1Aが「電源変電所方向は一次側」という情報に基づいて二次側電圧vを二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するタップ切換え動作を繰り返す場合は、図5のフローチャートにおいて、ステップS101〜S105,S108〜S110,S101のループ処理が繰り返される。このループ処理では、電圧調整装置1Aがタップ切換え毎に行う電源変電所方向の判断で、タップ切換え時に保持している変電所方向情報と同一の情報が取得される。電圧調整装置1Aは、タップ切換えを行う毎に正しい変電所方向情報を取得するので、正常な電圧調整動作を繰り返すことになる。
一方、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態から図12(b)に示す逆送電−順潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−逆潮流モードに切り換えられた場合、電源変電所方向は一次側から二次側に変化するが、電圧調整装置1Aは、「電源変電所方向は一次側」という情報を保持しているので、送電−潮流のモードが切り換えられた後も二次側電圧vを監視する。そして、電圧調整装置1Aは、二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2を逸脱すると、タップ切換器12,12'のタップを切り換えて二次側電圧vが二次側の目標電圧範囲VAR2に収まるように電圧調整動作を行う。
送電−潮流のモードが切り換えられた後の最初のタップ切換えにおける電源変電所方向の判断では、電源変電所が二次側の線路PLに存在する変電所DS2に切り換わっているので、タップ切換え前後の一次側電圧vの変化量Δvは、図14(b)に示すように、二次側電圧vの変化量Δvよりも大きくなる。このため、図5に示すフローチャートにおいては、ステップS101〜S107,S101のループ処理が行われる。このループ処理により、電圧調整装置1Aは、「電源変電所方向は二次側」という正しい判断を行い、変電所方向記憶部179Aに記憶している「電源変電所方向は一次側」の情報を「電源変電所方向は二次側」の内容に変更するとともに、電圧調整モード設定回路14を一次側電圧調整モードに切り換える。
これにより、電圧調整装置1Aは、その後、「電源変電所方向は二次側」の情報に基づき一次側電圧vを監視し、一次側電圧v1が一次側の目標電圧範囲VAR1を逸脱すると、タップ切換器12,12'のタップを切り換えて一次側電圧vが一次側の目標電圧範囲VAR1に収まるように電圧調整動作を行うことになる。
以上のように、配電系統に電圧一定制御機器が設置されておらず、電圧調整装置1Aの電圧調整動作に応じて当該電圧一定制御機器が電力一定制御動作をしない場合は、配電系統の送電−潮流のモードが切り換えられた直後のタップ切換えでは正しい電圧調整動作になっていない場合が生じるとしても、電圧調整装置1Aは、そのタップ切換え時に正しい電源変電所方向を確認することができる。このため、その後、電圧調整装置1Aは、正しい変電所方向情報に基づいて適切な電圧調整動作をすることができる。
次に、例えば、図12(a)に示す順送電−順潮流モードの配電系統において、例えば、図15に示すように、二次側の配電線PLにAVR機能を有するSVCが設置された構成に変化した場合は、電圧調整装置1Aは、以下のように動作する。
電圧調整装置1Aが「電源変電所方向は一次側」の情報に基づいて二次側電圧vを二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するためにタップ切換えをすると、そのタップ切換えにより、二次側電圧vは調整変圧器11のタップ切換えに対応する電圧変化量だけ変化する。例えば、タップ切換えが1タップで、そのタップ切換えによる電圧変化量が100[V]であれば、二次側電圧vは凡そ100[V]変化する。二次側電圧vが変化すると、配電線PLに設置されたSVCが瞬時に無効電力Qを出力して二次側電圧vの変化をキャンセルするように動作する。すなわち、二次側電圧vが100[V]上昇する変化をすると、SVCは直ちに二次側電圧vを100[V]下降させるように動作し、二次側電圧vが100[V]下降する変化をすると、SVCは直ちに二次側電圧vを100[V]上昇させるように動作する。
電圧調整装置1Aは、タップ切換え前後の二次側線路Lの無効電力Qの変化量ΔQを検出しており、SVCが無効電力Qを出力して電圧一定制御をした場合は、比較的大きい変化量ΔQを検出する。電圧調整装置1Aは、検出した無効電力Qの変化量ΔQを予め決められた閾値QTHと比較し、ΔQ>QTHであれば、二次側線路Lに設置されたSVCが電圧一定制御をしたと判断する。SVCが電圧一定制御をした場合は、タップ切換えに対応する電圧変化量が一次側電圧vと二次側電圧vに振り分けられる形で両電圧v,vを変化させるので、図16(b)に示したように、変化量|Δv|及び変化量|Δv|の両方が大きくなる。例えば、上記の例では、1タップ分の電圧変化量100[V]が、例えば、一次側電圧vの変化量Δv≒−50[V]と二次側電圧vの変化量Δv≒+50[V]となって表れる。このため、変化量Δv及び変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断は適正とはいえなくなる。
従って、順送電−順潮流モードの配電系統において、二次側線路Lに設置されたSVCが電圧一定制御をした場合は、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS101〜S104,S101のループ処理が行われる。このループ処理では、電圧調整装置1Aは、一次側電圧vの変化量Δvと一次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行わないので、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも二次側電圧調整モードに保持されることになる。
なお、図12(b)又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードの配電系統において、一次側の線路PLにSVCが設置され、電圧調整装置1Aが一次側電圧vの電圧調整動作をしているときにSVCが電圧一定制御をした場合も、電圧調整装置1Aは、同様の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Aは、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS101〜S104,S101のループ処理を行い、タップ切換え前後の一次側電圧vの変化量Δvと一次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行わない。従って、電圧調整装置1Aの変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも一次側電圧調整モードに保持される。
上記のように、実施の形態1による電圧調整装置1Aでは、電圧調整装置1Aが変電所方向情報に基づいて電圧調整をする側の線路にSVCなどの電圧一定制御機器が設置され、電圧調整装置1Aがタップ切換え動作をしたときに電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断(又は確認)をせず、現在の変電所方向情報を維持するようにしている。これにより、実施の形態1によれば、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断で誤判断をする恐れを回避することができる。
例えば、順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードにおけるタップ切換え時の電源変電所方向の判断で、電圧調整装置1Aが電源変電所方向を誤り、変電所方向記憶部179Aに記憶している変電所方向情報を「電源変電所方向は二次側」に変更すると、電圧調整装置1Aは、その後、一次側電圧調整モードで一次側電圧vの電圧調整を行うようになる。電源変電所は一次側線路Lに存在するので、電圧調整装置1Aが一次側電圧調整指令回路13Aからの電圧調整指令Ctaによってタップ切換えを行うようになると、タップ切換えを行う毎に一次側電圧vは一次側の目標電圧範囲VAR1から外れる方向に変化し、タップ切換器12,12'の限界のタップ位置(図2では、単巻変圧器の上端の第1タップ又は下端の第nタップ)までタップ切換えを繰り返した後、そのタップ位置を保持するという状態(タップ暴走の状態)が発生する。
実施の形態1に係る電圧調整装置1Aでは、タップ切換え毎の電源変電所方向の判断において、電源変電所方向の誤判断を回避できるので、上記のタップ暴走の発生を防止することができる。
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る電圧調整装置1Bの構成を示す図である。
実施の形態2に係る電圧調整装置1Bは、タップ切換えをしたときに電圧調整をする側の線路に設置されたSVCなどの電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、さらにタップ切換器12,12'のタップ位置を所定のタップ位置に切り換える動作をするようにしたものである。実施の形態1に係る電圧調整装置1Aは、既に行われたタップ切換え動作の結果を次のタップ切換え動作まで維持するが、実施の形態2に係る電圧調整装置1Bは、既に行われたタップ切換え動作をキャンセルするように、タップ切換器12,12'のタップ位置を所定のタップ位置に切り換える点が電圧調整装置1Aとは異なる。
実施の形態2では、SVCなどの電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、その直前に行われたタップ切換え動作が電源変電所方向の正しい認識の下に行われたものであるのかが疑わしく、電源変電所方向の誤認識に基づく不適切なタップ切換えの場合も考えられるので、自動電圧調整で切り換えられたタップ位置を所定のタップ位置に修正するものである。
図6に示す電圧調整装置1Bは、図1に示す電圧調整装置1Aに対して、制御回路17'からタップ切換器12,12'にタップ切換え信号Cを入力する構成になっている点が異なる。図7に示す調整変圧器11、タップ切換器12,12'、一次側電圧調整指令回路13A、二次側電圧調整指令回路13B、電圧調整モード設定回路14、一次側電圧検出器15A、二次側電圧検出器15B及び二次側電流検出器16の機能及び構成は、電圧調整装置1Aの説明で説明した内容と同じであるから、その説明を省略する。
図7は、実施の形態2に係る電圧調整装置1Bの制御回路17'の内部構成を示すブロック図である。
図7に示す制御回路17'のブロック図は、図4に示す制御回路17のブロック図において、タップ位置修正部180を追加したものである。瞬時値検出部171,173、電圧変化量算出部172,174、無効電力検出部176、無効電力変化量算出部177及び電圧調整モード設定部179の機能及び構成は、制御回路17の説明で説明した内容と同じであるから、その説明は省略し、変電所方向判断部175、判定部178及びタップ位置修正部180の機能と構成について説明する。
判定部178は、無効電力変化量算出部177から出力される無効電力Qの変化量ΔQを予め設定された閾値QTHと比較し、その比較結果に基づく判定結果を変電所方向判断部175とタップ位置修正部180に出力する。判定部178は、例えば、ΔQ>QTHであれば、二次側線路Lに設置されている電圧一定制御機器から電圧一定制御のための無効電力Qが出力されている、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定する。また、判定部178は、ΔQ≦QTHであれば、二次側線路Lに電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されていない、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器は連系されていないと判定する。判定部178は、判定結果を変電所方向判断部175とタップ位置修正部180に出力する。
変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」の判定結果が入力されると、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行う。一方、変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」の判定結果が入力されると、電源変電所方向の判断を行わない。
タップ位置修正部180は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」の判定結果が入力されると、タップ切換器12,12'への修正指令信号Cの出力を行わない。一方、タップ位置修正部180は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」の判定結果が入力されると、タップ切換器12,12'にタップ位置を所定のタップ位置に修正する修正指令信号Cを出力する。
所定のタップ位置は、例えば、タップ切換え前のタップ位置若しくは予め決められたタップ位置である。タップ切換え前のタップ位置とは、例えば、タップ切換器12,12'が電圧調整モード設定回路14から出力される電圧調整指令Cta又は電圧調整指令Ctbによって現在のタップ位置(例えば、第sタップ)から隣のタップ位置(第(s+1)タップ又は第(s−1)タップ)に切り換えられた場合、第sタップの位置である。タップ切換えによって切り換えられたタップ位置を切り換え前のタップ位置に修正する処理は、実質的にタップ切換えをしない状態に戻す処理に相当している。
予め決められたタップ位置とは、例えば、素通しタップの位置(図1,図5の例では、第4タップの位置)である。素通しタップの位置は、調整変圧器11の一次巻線と二次巻線比が「1」となる位置である。
タップ位置修正部180は、タップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置に修正する場合は、電圧調整指令Cta又は電圧調整指令Ctbで行われたタップの切換え動作とは逆方向にタップ位置を切り換えることを指示する修正指令信号Cをタップ切換器12,12'に出力する。また、タップ位置修正部180は、タップ切換器12,12'を所定のタップ位置に修正する場合は、所定のタップ位置を示すタップ番号を含む修正指令信号C(例えば、素通しタップの場合、タップ番号「4」を含むタップ位置の修正を指示する修正指令信号)をタップ切換器12,12'に出力する。
図8は、電圧調整装置1Bの電圧調整動作の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS104で無効電力Qの変化量ΔQが閾値QTHより大きい場合(S104:Y)、ステップS101に戻る途中にステップS111の処理を追加したものである。ステップS111の処理は、タップ位置修正部180がタップ切換器12,12'に修正指令信号Cを出力してタップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置又は予め決められたタップ位置に修正する処理である。
ステップS101〜S110の各処理の内容は、図5のフローチャートを用いた電圧調整装置1Aの動作説明の内容と同じであるから、各ステップの処理の説明は省略し、以下では、電圧調整装置1Bの動作の概要を説明する。
電圧調整装置1Bが設置されている配電系統が図12(a)に示す順送電−順潮流モード又は図13(a)に示す順送電−逆潮流モードで給電している場合の電圧調整装置1Bの電圧調整動作は、上述した電圧調整装置1Aの電圧調整動作と同様である。また、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態から図12(b)に示す逆送電−順潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−逆潮流モードに切り換えられた場合の電圧調整装置1Bの電圧調整動作も、上述した電圧調整装置1Aの送電−潮流モードが切り換えられた場合の電圧調整動作と同様である。
次に、例えば、図12(a)に示す順送電−順潮流モードの配電系統において、例えば、図15に示すように、二次側の配電線PLにAVR機能を有するSVCが設置された構成に変化した場合は、電圧調整装置1Bは、以下のように動作する。
電圧調整装置1Bが「電源変電所方向は一次側」の情報に基づいて二次側電圧vを二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するためにタップ切換えをすると、そのタップ切換えによる二次側電圧vの変化に対して、配電線PLに設置されたSVCが瞬時に無効電力Qを出力して二次側電圧vの変化をキャンセルするように動作する。
電圧調整装置1Bは、タップ切換えによる二次側線路Lの無効電力Qの変化量ΔQを検出し、その変化量ΔQを予め決められた閾値QTHと比較する。そして、電圧調整装置1Bは、ΔQ>QTHであれば、二次側線路Lに設置されたSVCが電圧一定制御をしたと判断する。SVCが電圧一定制御をした場合は、上述したように、タップ切換えに対応する電圧変化量が一次側電圧vと二次側電圧vに振り分けられる形で両電圧v,vを変化させるので、変化量Δv及び変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断は適正とはいえなくなる。
従って、順送電−順潮流モードの配電系統において、二次側線路Lに設置されたSVCが電圧一定制御をした場合は、図8に示すフローチャートにおいては、ステップS101〜S104,S111,S101のループ処理が行われる。このループ処理では、電圧調整装置1Bは、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行わないので、変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも二次側電圧調整モードに保持されることになる。また、電圧調整装置1Bは、タップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置若しくは予め決められたタップ位置などの所定のタップ位置に修正する。
なお、図12(b)又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードの配電系統において、一次側の線路PLにSVCが設置され、電圧調整装置1Bが一次側電圧vの電圧調整動作をしているときにSVCが電圧一定制御をした場合も、電圧調整装置1Bは、同様の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Bは、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS101〜S104,S111,S101のループ処理を行い、タップ切換え時に一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断を行わない。従って、電圧調整装置1Bの変電所方向記憶部179Aに記憶されている変電所方向情報はタップ切換え前の状態が保持され、電圧調整モード設定部179に設定されている電圧調整モードも一次側電圧調整モードに保持される。
また、電圧調整装置1Bは、タップ切換器12,12'のタップ位置をタップ切換え前のタップ位置若しくは予め決められたタップ位置などの所定のタップ位置に修正する。
上記のように、実施の形態2による電圧調整装置1Bでは、電圧調整装置1Bがタップ切換え動作をしたときに電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断(又は確認)をせず、現在の変電所方向情報を維持するようにしているので、一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断で誤判断をする恐れを回避することができる。
また、実施の形態2でも、タップ切換え毎の電源変電所方向の判断において、電源変電所方向の誤判断を回避できるので、上記のタップ暴走の発生を防止することができる。
さらに、実施の形態2では、タップ切換え後の判定処理で、電圧調整装置1Bが、配電線路に電圧一定制御機器が連系され、その電圧一定制御機器が電圧一定制御のために無効電力Qを出力していると判定した場合、タップ切換器12,12'のタップ位置を切換え前のタップ位置又は予め決められたタップ位置(例えば、素通しタップの位置)に修正するので、直前に行われたタップ切換え動作が電源変電所方向の誤認識に基づく不適切なタップ切換えの場合にはそのタップ切換えよりも適切なタップ位置に修正することができる。
電源変電所方向の誤認識に基づく不適切なタップ切換えを放置すると、例えば、判定の度に1タップずつ不適正な方向に切り換わってしまい、上述したタップ暴走や本来調整すべき電圧方向でない方向の電圧に変化させてしまい目標電圧範囲VARを逸脱するなどの不具合が発生する恐れがあるが、実施の形態2によれば、タップ位置をタップ切換え前のタップ位置又は素通しタップの位置に修正することにより、その不具合の発生を低減することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る電圧調整装置1Cは、タップ切換えをしたときに電圧調整をする側の線路に設置されたSVCなどの電圧一定制御機器が無効電力Qを出力して電圧一定制御をしたと推定される場合は、その電圧一定制御機器による電圧一定制御がなかったと仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'と二次側電圧vの変化量Δv'を推定し、両変化量Δv',Δv'(推定値)を用いて電源変電所方向を判断するようにしたものである。
実施の形態3に係る電圧調整装置1Cの構成は、図6に示す電圧調整装置1Bの構成と同じになり、制御回路17"のブロック構成が異なる。従って、電圧調整装置1Cの制御回路17"以外の構成の説明は省略する。
図9は、実施の形態3に係る電圧調整装置1Cの制御回路17"の内部構成を示すブロック図である。
図9に示す制御回路17"のブロック図は、図4に示す制御回路17のブロック図において、一次側電圧変化量推定部181と二次側電圧変化量推定部182を追加したものである。瞬時値検出部171,173、電圧変化量算出部172,174、無効電力検出部176、無効電力変化量算出部177及び電圧調整モード設定部179の機能及び構成は、制御回路17の説明で説明した内容と同じであるから、その説明は省略し、変電所方向判断部175、判定部178、一次側電圧変化量推定部181及び二次側電圧変化量推定部182の実施の形態3に特有の動作に関する機能と構成について説明する。
判定部178は、無効電力変化量算出部177から出力される無効電力Qの変化量ΔQを予め設定された閾値QTHと比較し、その比較結果に基づく判断結果を変電所方向判断部175に出力する。判定部178は、例えば、ΔQ>QTHであれば、二次側線路Lに設置されている電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されている、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器が連系されていると判定する。また、判定部178は、ΔQ≦QTHであれば、二次側線路Lに電圧一定制御機器から無効電力Qが出力されていない、すなわち、配電線路に電圧一定制御機器は連系されていないと判定する。判定部178は、判定結果を変電所方向判断部175に出力する。
変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御無し」の判定結果が入力されると、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧vの変化量Δvと電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧vの変化量Δvを用いて電源変電所方向の判断を行う。一方、変電所方向判断部175は、判定部178から「電圧一定制御機器の電圧一定制御有り」の判定結果が入力されると一次側電圧変化量推定部181が推定した、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'(推定値)と、二次側電圧変化量推定部182が推定した、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の二次側電圧v2の変化量Δv2'(推定値)を用いて電源変電所方向の判断を行う。そして、変電所方向判断部175は、その判断結果を電圧調整モード設定部179に出力する。
一次側電圧変化量推定部181は、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'を算出する。一次側電圧変化量推定部181は、以下の方法で一次側電圧vの変化量Δv'を算出する。
例えば、一次側電圧変化量推定部181には、予め求められている一次側のSVRから所定の電圧固定点までの系統インピーダンスのリアクタンス分xが既定値として入力されているとする。一次側電圧変化量推定部181は、無効電力変化量算出部177が算出した無効電力Qの変化量ΔQを一次側電圧vで除することにより、一次側の無効電流の変化量ΔiQ1を算出する。
そして、一次側電圧変化量推定部181は、一次側の無効電流の変化量ΔiQ1とリアクタンス分xを乗算することにより一次側の無効電圧の変化量ΔvQ1を算出し、電圧変化量算出部172が算出した一次側電圧vの変化量Δvから無効電圧の変化量ΔvQ1をベクトル的に減算することにより、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'を算出する。
また、二次側電圧変化量推定部182は、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の二次側電圧vの変化量Δv'を算出する。二次側電圧変化量推定部182も一次側電圧変化量推定部181と同様の方法で二次側電圧vの変化量Δv'を算出する。
すなわち、二次側電圧変化量推定部182には、予め求められている二次側のSVRから所定の電圧固定点までの系統インピーダンスのリアクタンス分xが既定値として入力されている。二次側電圧変化量推定部182は、無効電力変化量算出部177が算出した無効電力Qの変化量ΔQを二次側電圧vで除することにより、二次側の無効電流の変化量ΔiQ2を算出する。
そして、二次側電圧変化量推定部182は、二次側の無効電流の変化量ΔiQ2とリアクタンス分xを乗算することにより二次側の無効電圧の変化量ΔvQ2を算出し、電圧変化量算出部174が算出した二次側電圧vの変化量Δvから無効電圧の変化量ΔvQ2をベクトル的に減算することにより、無効電力Qが出力されていないと仮定した場合の二次側電圧vの変化量Δv'を算出する。
図10は、電圧調整装置1Cの電圧調整動作の処理手順を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS111の処理をステップS112,S113の処理に置き換え、ステップS113の処理の後、ステップS105に進む手順に変更したものである。
ステップS112の処理は、一次側電圧変化量推定部181が、無効電力Qがないと仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'を算出し、二次側電圧変化量推定部182が、無効電力Qがないと仮定した場合の二次側電圧vの変化量Δv'を算出する処理である。
ステップS113の処理は、瞬時値検出部171及び電圧変化量算出部172が検出した一次側電圧vの変化量Δvを一次側電圧変化量推定部181が算出した一次側電圧vの変化量Δv'に置き換え、瞬時値検出部173及び電圧変化量算出部174が検出した二次側電圧vの変化量Δvを二次側電圧変化量推定部182が算出した二次側電圧vの変化量Δv'に置き換える処理である。
ステップS101〜S110の各処理の内容は、図4のフローチャートを用いた電圧調整装置1Aの動作説明でした内容と同じであるから、各ステップの処理の説明は省略し、以下では、電圧調整装置1Cの動作の概要を説明する。
電圧調整装置1Cが設置されている配電系統が図12(a)に示す順送電−順潮流モード又は図13(a)に示す順送電−逆潮流モードで給電している場合の電圧調整装置1Cの電圧調整動作は、上述した電圧調整装置1Aの電圧調整動作と同様である。また、配電系統が順送電−順潮流モード又は順送電−逆潮流モードの状態から図12(b)に示す逆送電−順潮流モード又は図13(b)に示す逆送電−逆潮流モードに切り換えられた場合の電圧調整装置1Cの電圧調整動作も、上述した電圧調整装置1Aの送電−潮流モードが切り換えられた場合の電圧調整動作と同様である。
次に、例えば、図12(a)に示す順送電−順潮流モードの配電系統において、例えば、図15に示すように、二次側の配電線PLにAVR機能を有するSVCが設置された構成に変化した場合は、電圧調整装置1Cは、以下のように動作する。
電圧調整装置1Cが「電源変電所方向は一次側」の情報に基づいて二次側電圧vを二次側の目標電圧範囲VAR2内に自動調整するためにタップ切換えをすると、そのタップ切換えによる二次側電圧vの変化に対して、配電線PLに設置されたSVCが瞬時に無効電力Qを出力して二次側電圧vの変化をキャンセルするように動作する。
電圧調整装置1Cは、タップ切換えによる二次側線路Lの無効電力Qの変化量ΔQを検出し、その変化量ΔQを予め決められた閾値QTHと比較する。そして、電圧調整装置1Cは、ΔQ>QTHであれば、二次側線路Lに設置されたSVCが電圧一定制御をしたと判断する。SVCが電圧一定制御をした場合は、上述したように、タップ切換えに対応する電圧変化量が一次側電圧vと二次側電圧vに振り分けられる形で両電圧v,vを変化させるので、変化量Δv及び変化量Δvを用いた電源変電所方向の判断は適正とはいえなくなる。
電圧調整装置1Cは、順送電−順潮流モードの配電系統において、二次側線路Lに設置されたSVCが電圧一定制御をした場合は、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS104からステップS112,S113を経由してステップS105に進む処理を行う。
なお、図12(b)又は図13(b)に示す逆送電−順潮流モードの配電系統において、一次側の線路PLにSVCが設置され、電圧調整装置1Cが一次側電圧vの電圧調整動作をしているときにSVCが電圧一定制御をした場合も、電圧調整装置1Cは、同様の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Cは、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS104からステップS112,S113を経由してステップS105に進む処理を行う。
ステップS112,S113では、電圧調整装置1Cは、無効電力Qがない(SVCの電圧一定制御がない)と仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'と二次側電圧vの変化量Δv'を算出し、ステップS101で検出した一次側電圧vの変化量Δvと二次側電圧vの変化量Δvをそれぞれ変化量Δv'と変化量Δv'に置き換える処理を行う。
そして、電圧調整装置1Cは、ステップS105,S108で一次側電圧vの変化量Δv'と二次側電圧vの変化量Δv'を用いて電源変電所方向の判断を行う。
一次側電圧vの変化量Δv'と二次側電圧vの変化量Δv'は、SVCが電圧一定制御をしなかったと仮定した場合の推定値であるから、例えば、二次側電圧調整モードの場合、変化量Δv',Δv'は、図16(a)に示すように、|Δv'|>|Δv'|の関係となっている。従って、変化量Δv',Δv'を用いた電源変電所方向の判断では、電圧調整装置1Cは、ステップS108〜S110の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Cは、「電源変電所方向は一次側」という正しい判断を行い、変電所方向記憶部179Aに記憶している「電源変電所方向は一次側」の情報を維持するとともに、電圧調整モード設定回路14を二次側電圧調整モードに保持する。
また、一次側電圧調整モードの場合、一次側電圧vの変化量Δv'と二次側電圧vの変化量Δv'は、|Δv'|>|Δv'|の関係となる。従って、変化量Δv',Δv'を用いた電源変電所方向の判断では、電圧調整装置1Cは、ステップS105〜S107の処理を行う。すなわち、電圧調整装置1Cは、「電源変電所方向は二次側」という正しい判断を行い、変電所方向記憶部179Aに記憶している「電源変電所方向は一次側」の情報を「電源変電所方向は二次側」の内容に変更するとともに、電圧調整モード設定回路14を一次側電圧調整モードに切り換える。
上記のように、実施の形態3による電圧調整装置1Cでは、電圧調整装置1Cがタップ切換えをしたときに電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと推定される場合は、電圧一定制御機器が電圧一定制御をしなかったと仮定した場合の一次側電圧vの変化量Δv'と二次側電圧vの変化量Δv'を用いて電源変電所方向の判断(又は確認)を行うので、電圧一定制御機器の電圧一定制御の影響を受けることなく、電源変電所方向の判断処理で正しい判断をすることができる。
また、実施の形態3でも、タップ切換え毎の電源変電所方向の判断において、電源変電所方向の誤判断を回避できるので、上記のタップ暴走の発生を防止することができる。
上記の実施の形態1〜3では、タップ切換えによる電圧変動に対して電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたか否かを無効電力Qの変化量ΔQによって判断しているが、二次側電圧vと二次側電流iの位相φの変化量Δφ又は力率cos(φ)の変化量Δcos(φ)を用いて電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたか否かを判断するようにしてもよい。
すなわち、電圧調整装置1A,1B,1Cは、タップ切換器12,12'がタップ切換えを行うと、そのタップ切換え前後の位相φの変化量Δφを算出し、その変化量Δφを予め設定した閾値φTHと比較する。そして、電圧調整装置1A,1B,1Cは、Δφ>φTHであれば、電圧一定制御機器が無効電力Qを出力して電圧一定制御をしている(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は不適正)と判断し、Δφ≦φTHであれば、電圧一定制御機器は無効電力Qを出力していない(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は適正)と判断するようにしても良い。
なお、二次側電圧vと二次電流iの位相φは、例えば、二次側電圧vがゼロレベルを負から正にクロスするゼロクロスタイミングtv0と二次側電流iがゼロレベルを負から正にクロスするゼロクロスタイミングti0を検出し、両検出値の差分(|tv0−ti0|)を演算することにより取得すればよい。
また、電圧調整装置1A,1B,1Cは、タップ切換器12,12'がタップ切換えを行うと、そのタップ切換え前後の力率cos(φ)の変化量Δcos(φ)を算出し、その変化量Δcos(φ)を予め設定した閾値RTHと比較する。そして、電圧調整装置1A,1B,1Cは、Δcos(φ)>RTHであれば、電圧一定制御機器が無効電力Qを出力して電圧一定制御をしている(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は不適正)と判断し、Δcos(φ)≦RTHであれば、電圧一定制御機器は無効電力Qを出力していない(すなわち、電圧の変化量を用いた電源変電所方向の判断は適正)と判断するようにしても良い。なお、二次側の力率cos(φ)は、上記の方法で取得した位相φに対してcos(φ)の演算を行って取得すればよい。
あるいは、電圧調整装置1A,1B,1Cは、タップ切換え前後の無効電力Qの変化量ΔQ、位相φの変化量Δφ、力率cos(φ)の変化量Δcos(φ)のうち、2以上のパラメータを組み合わせて電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたか否かを判断するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態1〜3において、無効電力Qの変化量ΔQを用いて電圧一定制御機器が電圧一定制御をしたと判断した場合は、図11に示すように、その判断結果を出力するようにしてもよい。ここに、判断結果の出力とは、ディスプレイなどの表示装置への表示、プリンタなどの印字装置での印字、音声による報知、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。
図11に示す電圧調整装置1Dは、図1に示す電圧調整装置1Aに通信部19と出力部20を設けたものである。電圧調整装置1Dでは、判定部178の判定結果を変電所方向判断部175に出力するだけでなく、通信部19からネットワーク3を介して外部の情報端末2に送信し、出力部20で判定結果を出力する。
通信部19は、判定結果を外部の端末装置2に通信する機能ブロックである。通信部19と端末装置2との通信は、有線と無線のいずれでもよく、有線と無線を組み合わせたものでもよい。従って、通信部19は、有線又は無線の通信手段で構成される。また、出力部20は、通常、表示手段と音声出力手段を含み、表示手段で判定結果を文字、画像で表示し、音声出力手段で判定結果を音声出力する。
出力部20の表示手段は、画像表示が可能なディスプレイでもよく、ランプなどの表示灯でもよい。表示手段がディスプレイの場合は、判定結果が文字や画像などで表示される。また、出力部20の表示手段が表示灯の場合は、例えば、電圧一定制御機器が存在しない場合は消灯し、電圧一定制御機器が存在する場合に点灯して電圧調整装置が適正に動作する状態か否かが報知される。
判定結果を受信した情報端末2では、記録媒体への判定結果の蓄積、端末装置2のディスプレイへの判定結果の表示、情報端末2のスピーカから判定結果の音声出力などの出力処理が行われる。端末装置2を介して他の表示装置への判定結果の表示、プリンタ等の印字装置による判定結果の印字などを行ってもよい。情報端末2は、例えば、電力系統を管理する事業所などに設置される端末で、図11は、情報端末2を介して事業所の作業員に判定部178の判定結果を報知することができる構成である。
なお、電圧調整装置1Bと電圧調整装置1Cについても電圧調整装置1Aと同様に、通信部19及び出力部20を設け、判定部178の判定結果を変電所方向判断部175に出力するだけでなく、通信部19からネットワーク3を介して外部の情報端末2に送信し、出力部20で判定結果を出力するとよい。
図11に示す電圧調整装置1Dの構成によれば、事業者は、電圧一定制御機器によるSVRの電圧調整動作へ悪影響を把握することができ、悪影響が大きい場合は、例えば、SVRの移設、AVR機能を備えた電力機器の電圧一定制御の停止又は禁止などの対策を講じることができる。
以上のように、本発明は、SVC、PCSなどが電圧一定制御を行っている中でのSVRが不要なタップ切換えとそのときの電源変電所方向の誤判断による更なる不要なタップ切換えの発生をSVR自身が自律的に防止できるので、本発明は、SVRの非常に有用な機能ということができる。
本発明は、SVC、PCS及び分散電源対応型のSVRの普及促進にも貢献し得るものである。特に近年の連系量が増大している太陽光発電用PCSにおいて、電圧一定制御を用いて連系点電圧を一定電圧以上に抑制する出力抑制機能が働いてもSVRのタップ暴走を防止でき、太陽光発電の系統連系量拡大にも大きく寄与するものである。
本実施の形態1〜3では、直接切換方式の調整変圧器を用いた電圧調整装置について説明したが、本発明は、間接切換方式の調整変圧器を用いた電圧調整装置に適用できることは言うまでもない。また、本実施の形態1〜3では、三相の配電線路上に設けられる三相用の電圧調整装置について説明したが、本発明が単相用の電圧調整装置にも適用できることは言うまでもない。
1A,1B,1C,1D 電圧調整装置
11 変圧器(電圧調整用変圧器)
12,12' タップ切換器
13 電圧指令回路
13A 一次側電圧調整指令回路(タップ切換制御手段)
13B 二次側電圧調整指令回路(タップ切換制御手段)
131 計器用変圧器
132 電圧調整継電器
133 線路電圧降下補償器(LDC)
134 変流器
14 電圧調整モード設定回路
15A 一次側電圧検出器
15B 二次側電圧検出器
16 二次側電流検出器
17 制御回路
171,173 瞬時値検出部
172,174 電圧変化量算出部
175 変電所方向判断部(判断手段、第2の判断手段)
176 無効電力検出部(変化量検出手段の要素)
177 無効電力変化量算出部(変化量検出手段の要素)
178 判定部(判定手段)
179 電圧調整モード設定部(情報更新手段)
179A 変電所方向記憶部(記憶手段)
180 タップ位置修正部(タップ位置修正手段)
181 一次側電圧変化量推定部(電圧変化量算出手段)
182 二次側電圧変化量推定部(電圧変化量算出手段)
19 通信部(出力手段)
20 出力部(出力手段)
2 情報端末
3 ネットワーク

Claims (12)

  1. 複数のタップを有する電圧調整用変圧器を有し、配電線路の電圧が規定の電圧範囲を逸脱したときに前記電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換えて前記電圧を前記電圧範囲内に自動的に調整する電圧調整装置において、
    前記電圧調整用変圧器のタップ切換動作による無効電力、位相及び力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量を検出する変化量検出手段と、
    前記変化量検出手段の検出結果を用いて、前記配電線路に電圧一定制御機能を備えた電力機器が連系されているか否かを判定する判定手段と、
    を備えたことを特徴とする電圧調整装置。
  2. 前記判定手段は、前記変化量検出手段の検出値を閾値と比較し、検出値が閾値以上の場合は前記配電線路に前記電力機器が連系されていると判定し、前記検出値が前記閾値よりも小さい場合は前記配電線路に前記電力機器が連系されていないと判定する、請求項1記載の電圧調整装置。
  3. 前記電圧調整用変圧器のタップ切換動作による前記配電線路の電圧のタップ切換前後の変化量を用いて前記配電線路への電力供給源である電源変電所方向を判断する判断手段を備え、
    前記判断手段は、前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていると判定した場合は前記電源変電所方向の判断を行わず、前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていないと判定した場合に前記電源変電所方向の判断を行う、請求項1又は2記載の電圧調整装置。
  4. 前記電圧調整用変圧器に対して前記電源変電所が存在する方向を示す変電所方向情報を記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶されている変電所方向情報に基づいて前記配電線路の前記電源変電所が存在しない側の電圧を監視し、その電圧が前記電圧範囲を逸脱したときに当該電圧が当該電圧範囲内に収まるように前記電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換えるタップ切換制御手段と、
    前記判断手段の判断結果を用いて前記記憶手段に記憶されている変電所方向情報を更新する情報更新手段と、
    を備え、
    前記情報更新手段は、前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていると判定した場合は、前記記憶手段に記憶されている変電所方向情報の更新を行わず、前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていないと判定した場合に前記記憶手段に記憶されている変電所方向情報の更新を行う、請求項3記載の電圧調整装置。
  5. 前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていると判定した場合、前記電圧調整用変圧器のタップ位置を所定のタップ位置に修正するタップ位置修正手段を備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電圧調整装置。
  6. 前記タップ位置修正手段は、前記電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換える前のタップ位置に修正する、請求項5に記載の電圧調整装置。
  7. 前記タップ位置修正手段は、前記電圧調整用変圧器のタップ位置を予め決められたタップ位置に修正する、請求項5に記載の電圧調整装置。
  8. 前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていると判定した場合、前記変化量検出手段が検出した前記パラメータの変化量がないと仮定した場合の前記電圧の変化量を算出する電圧変化量算出手段と、
    前記電圧変化量算出手段が算出した電圧の変化量を用いて前記電源変電所の方向を判断する第2の判断手段と、
    を備える、請求項1又2記載の電圧調整装置。
  9. 前記判定手段が前記配電線路に前記電力機器が連系されていると判定した場合、その判定結果を出力する出力手段を備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電圧調整装置。
  10. 前記出力手段は、電圧調整装置に有線又は無線で接続される端末装置に前記判定結果を出力する、請求項9記載の電圧調整装置。
  11. 複数のタップを有する電圧調整用変圧器のタップ位置を切り換えて配電線路の電圧を規定の電圧範囲内に調整する電圧調整装置の電圧一定制御機器の連系に関する判定方法であって、
    前記電圧調整用変圧器のタップ切換動作による無効電力、位相及び力率のいずれか1つ又は2つ以上のパラメータのタップ切換前後の変化量を検出し、その検出結果を用いて前記配電線路に前記電圧一定制御機器が連系されているか否かを判定することを特徴とする判定方法。
  12. 前記判定において、前記パラメータのタップ切換前後の変化量の検出値を閾値と比較し、検出値が閾値以上の場合は前記配電線路に前記電圧一定制御機器が連系されていると判定し、前記検出値が前記閾値よりも小さい場合は前記配電線路に前記電圧一定制御機器が連系されていないと判定する、請求項11記載の判定方法。
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