JP2019033281A - 蓄電デバイスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性セパレータを用いてESRを低減した蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】表面に誘電体皮膜を有する陽極体と、陽極体に対向する陰極体と、陽極体と陰極体との間に介在するセパレータとを有する蓄電素子基体に、電解液を含浸した蓄電デバイスの製造方法において、第1面および該第1面の裏側の第2面を有するセパレータ基材を用意する第1工程と、セパレータ基材の第1面に、導電性高分子を溶媒または分散媒に溶解または分散させた液剤を塗着する第2工程と、液剤を第1面からセパレータ基材の内部へ浸み込ませる第3工程と、液剤の溶媒または分散媒を蒸発させることにより、セパレータ基材に導電性高分子が被着したセパレータを形成する第4工程と、セパレータ基材の第1面を陽極体に、セパレータ基材の第2面を陰極体に、それぞれ対向させて蓄電素子基体を形成する第5工程と、蓄電素子基体に、電解液を含浸する第6工程とを備える。
【選択図】図3

Description

本発明は各種電子機器、産業機器、自動車用機器等に使用される蓄電デバイスの製造方法に関する。
電子機器の高周波化に伴い、蓄電デバイスのひとつである電解コンデンサにおいても高周波領域での等価直列抵抗(以下、ESRという)特性に優れた大容量の電解コンデンサが求められている。最近では、このような高周波領域におけるESRを低減するために、電解質として従来の電解液よりも電気伝導度の高い導電性高分子等の固体電解質を用いた固体電解コンデンサが検討され製品化されている。また、その大容量化の要求に対しては、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回した素子の内部に導電性高分子を充填した構成を有する、巻回型固体電解コンデンサが製品化されてきている。
しかしながら、上記のような固体電解コンデンサにおいては、電解質として誘電体酸化皮膜の修復性の乏しい固体電解質のみを用いているため、従来の電解液を用いた電解コンデンサに比べて、漏れ電流の増大や誘電体酸化皮膜欠陥の発生に伴うショート故障などが発生しやすい。そのため、固体電解コンデンサは、耐電圧の高いコンデンサを構成することが困難である。
一方、上記課題を改善する目的で、導電性高分子で形成された固体電解質と電解液の両方を電解質に利用した電解コンデンサが提案されている。この電解コンデンサでは、セパレータ基材としてマニラ紙またはクラフト紙等のセパレータ紙、あるいは多孔質フィルムまたは合成繊維不織布などを用いる。このセパレータ基材を、導電性高分子を被着させることによって導電化し、その導電化されたセパレータ(以下、導電性セパレータ)を陽極箔と陰極箔の間に介在させてコンデンサ素子を形成する。このようにして形成したコンデンサ素子に電解液を含浸させて用いている(例えば、特許文献1)。
特開平7−283086号公報
上記のように、固体電解質と電解液の両方を電解コンデンサの電解質に利用することで、ESRと耐電圧を両立させてきた。しかしながら近年の電子機器の高周波化においては、電解コンデンサに更なるESRの低減が求められている。
そこで、本発明は、蓄電デバイスにおいて、特にESRを低減した蓄電デバイスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、表面に誘電体皮膜を有する陽極体と、前記陽極体に対向する陰極体と、前記陽極体と前記陰極体との間に介在するセパレータとを有する蓄電素子基体に、電解液を含浸した蓄電デバイスの製造方法であって、紙または不織布からなり、第1面および該第1面の裏側の第2面を有するセパレータ基材を用意する第1工程と、前記第1工程の後、前記セパレータ基材の第1面に、導電性高分子を溶媒または分散媒に溶解または分散させた液剤を塗着する第2工程と、前記第2工程の後、前記液剤を前
記第1面から前記セパレータ基材の内部へ浸み込ませる第3工程と、前記第3工程の後、前記液剤の溶媒または分散媒を蒸発させることにより、前記セパレータ基材に前記導電性高分子が被着した前記セパレータを形成する第4工程と、前記第4工程の後、前記セパレータ基材の第1面を前記陽極体に、前記セパレータ基材の第2面を前記陰極体に、それぞれ対向させて前記蓄電素子基体を形成する第5工程と、前記第5工程の後、前記蓄電素子基体に、前記電解液を含浸する第6工程とを備える。
本発明に係る蓄電デバイスの製造方法によれば、蓄電デバイスのESRを低減できる。
本発明の実施の形態1における電解コンデンサの断面図 (a)図1に示す電解コンデンサのコンデンサ素子12の斜視図、(b)図1に示す電解コンデンサのコンデンサ素子における陽極体、陰極体及びセパレータの積層関係を説明するための図 図2に示すコンデンサ素子の部分断面模式図 図2に示すコンデンサ素子の他の例を示す部分断面模式図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお図面では理解しやすいように寸法を変えて示している。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における蓄電デバイスの一例である電解コンデンサの断面図である。図2(a)は図1に示す蓄電デバイスの蓄電素子であるコンデンサ素子12の斜視図である。図2(b)は、コンデンサ素子12における陽極体21、陰極体22及びセパレータ23の積層関係を説明するための図である。図3は、図2に示すコンデンサ素子12において、陽極体21と陰極体22との間に介在するセパレータ23及び電解液16を説明するための部分断面模式図である。
図1に示すように、電解コンデンサ1は、コンデンサ素子12と外装体15と電解液16とを有する。コンデンサ素子12は、図2(a)に示すように、陽極箔からなる陽極体21と、陰極箔からなる陰極体22と、陽極体21と陰極体22との間に介在するセパレータ23とを備える。
陽極体21には陽極リード11Aが接続され、陰極体22には陰極リード11Bが接続されている。コンデンサ素子12は、図2(b)に示すように、陽極体21とセパレータ23と陰極体22とが積層され、積層された状態において一端部から巻回されてコンデンサ素子12が構成されている。外装体15は、有底筒状のケース13と封口体14とにより構成され、コンデンサ素子12と電解液16とを封じている。
陽極体21は、アルミニウム等の弁金属からなる金属箔21Aをエッチング処理することにより表面を粗面化し、さらにその表面を化成処理することにより形成されている。すなわち、陽極体21は表面に誘電体酸化皮膜21Bを有する。一方、陰極体22はアルミニウム等の金属で形成されている。また、陰極体22は、アルミニウム等の金属の表面に、化成皮膜や、異種金属や非金属の被膜が設けられていてもよい。異種金属や非金属としては、例えば、チタンのような金属やカーボンのような非金属などを挙げることができる。
陽極リード11A、陰極リード11Bの少なくとも陽極体21、陰極体22との接合部
分は、陽極体21、陰極体22と同じ材料で構成されていることが好ましい。
図2(b)に示すように、帯状の陽極体21、陰極体22には、一端が扁平に形成された陽極リード11A、陰極リード11Bがそれぞれ、超音波溶着や針カシメ等により接合されている。陽極リード11A、陰極リード11Bの他方の端部はコンデンサ素子12の同一端面より引出されている。
セパレータ23は、セパレータ基材24と、セパレータ基材24に被着した導電性高分子25とで構成されている。すなわち、セパレータ23は導電性セパレータの一種である。なお、図3は、繊維状のセパレータ基材24の断面を示している。セパレータ基材24には、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、レーヨン、ガラス質等、非導電性の繊維を含む紙又は不織布を用いることができる。あるいはセパレータ基材24として織布を用いてもよい。
導電性高分子25としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
導電性高分子25は、ドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのアニオンが挙げられる。なかでも、ポリスチレンスルホン酸由来のポリアニオンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独モノマーの重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
導電性高分子25は電解コンデンサ1の陰極として機能する。なお、導電性高分子25は、微粒子にしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等を分散媒に分散した分散液やポリアニリン等を溶媒に溶解した溶液などの液剤をセパレータ基材24に含浸させ、その後、乾燥することで、セパレータ基材24に被着される。導電性高分子25は繋がった粒子状あるいは膜状に形成され、セパレータ基材24を構成する繊維に被着している。セパレータ23は内部に空隙を有する多孔質であり、その空隙に電解液16が入り込んでいる。なお、図3は、微粒子状の導電性高分子25をセパレータ基材24に被着させた状態を示している。
導電性高分子の分散液を用いて導電性高分子25をセパレータ基材24に被着させる場合、導電性高分子の微粒子の大きさは、直径1μm以下であることが好ましい。導電性高分子の微粒子の大きさが直径1μmよりも大きい場合は、セパレータ基材24の空隙部分に導電性高分子の微粒子が充填されにくく、電解コンデンサのESRが高くなってしまう。
また分散媒や溶媒としては、水や低級アルコールなどの低粘度の溶剤が好ましい。分散媒や溶媒として低粘度の溶剤を用いると、導電性高分子25のセパレータ基材24への充
填効果が高まる。さらに、分散媒や溶媒として揮発性が高い溶剤を用いたほうが、セパレータ基材24に液剤を含浸した後、分散媒や溶媒を除去しやすいため、液剤の乾燥を容易にできる。
また、分散液に界面活性剤を添加することにより、セパレータ基材24への導電性高分子25の充填性をより高めることができる。添加する界面活性剤としては、アニオン性の界面活性剤、カチオン性の界面活性剤、ノンイオン性の界面活性剤、両イオン性の界面活性剤などが挙げられる。
なお、コンデンサ素子12は、セパレータ23を介して陽極体21、陰極体22を積層した積層型としてもよい。
電解液16は、電解コンデンサの陰極として機能する。電解液16は、セパレータ23内部の空隙や、陽極体21のエッチングピットにより形成された孔に入り込んでいる。
電解液16は、有機溶媒に溶質を溶解して調製されている。有機溶媒として、アルコール類や、非プロトン性のアミド系溶剤、ラクトン類、スルホキシド類等を用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロプレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、グリコール類の重縮合物などが挙げられる。アミド系溶剤としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、α−バレロラクトン、γ−バレロラクトンなどが挙げられる。スルホキシド類としては、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。なお、中高圧用の電解コンデンサにおいて、溶媒としては、エチレングリコールを用いることが好ましい。
また、溶質である電解質成分の塩基成分としては、アルキル置換アミジン基を有する化合物、で、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式アミジン化合物(ピリミジン化合物、イミダゾリン化合物)などが挙げられる。また、電解質成分の塩基成分としては、アルキル置換アミジン基を有する化合物の4級アンモニウムを用いることもでき、アルキル置換アミジン基を有する化合物の4級アンモニウムとしては、炭素数1〜11のアルキル基またはアリールアルキル基で4級化されたイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式アミジン化合物(ピリミジン化合物、イミダゾリン化合物)などが挙げられる。また、塩基成分として、アンモニウム、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンエチレンジアミン、モノエタノールアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジフェニルアミン、ジエタノールアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、ト
リエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、トリエタノールアミン等)を用いてもよい。なお、中高圧の電解コンデンサにお
いて溶質である電解質成分の塩基成分は、アンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミンを用いることが好ましい。
また電解質成分の酸成分としては、脂肪族カルボン酸である飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、芳香族カルボン酸等を用いることができる。脂肪族飽和カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げら
れる。脂肪族不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イコタン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸を含む。芳香族カルボン酸は、フタル酸、サリチル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、安息香酸、レゾルシン酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸などが挙げられる。また、これらのカルボン酸以外にもカルボン酸のニトロ誘導体やスルホン酸誘導体、無機酸であるリン酸誘導体やホウ酸誘導体などを電解質の酸成分として用いることができる。
電解質成分において、酸成分が塩基成分よりもモル比で多く含まれることが好ましい。この場合、電解液の酸性度が増加し、セパレータ23の脱ドープ反応の抑制に効果を発揮することができる。なお、中高圧の電解コンデンサにおいて溶質である電解質成分の酸成分として、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸等の有機酸、あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物を用いることが好ましい。
外装体15は、コンデンサ素子12より引き出された陽極リード11A、陰極リード11Bのそれぞれの端部を外部に導出するようにしてコンデンサ素子12と電解液16とを封じている。
外装体15は、ケース13と、封口体14とを有する。ケース13はコンデンサ素子12と電解液16とを収納している。封口体14には、陽極リード11A、陰極リード11Bをそれぞれ挿通させる貫通孔14A、14Bが設けられている。封口体14はケース13の開口部に配置され、ケース13の外周面を絞り加工部13Aで絞ることによって圧縮されることで、ケース13の開口部を封止している。
なお、コンデンサ素子12に電解液16を含浸した後にコンデンサ素子12をケース13に収納してもよい。これに限らず、例えば、コンデンサ素子12をケース13に収納後にケース13に電解液16を注入し封止してもよいし、ケース13に電解液を注入した後にコンデンサ素子12をケース13に収納し封止してもよい。
封口体14には、エチレンプロピレンゴムやイソブチルとイソプレンの共重合体であるブチルゴム等のゴム材料のほか、エポキシ樹脂などの樹脂材料などを用いることができる。
ケース13は金属製である。軽量化の観点から、ケース13はアルミニウムで形成することが好ましい。
次に、図2(b)、図3を参照しながらセパレータ23の構成について詳細に説明する。
図2(b)、図3に示すように、セパレータ23は、陽極体21に対向する第1面231Aと、陰極体22に対向する第2面232Aとを有するセパレータ基材24と、このセパレータ基材24の第1面231Aおよびその近傍と、第2面232Aおよびその近傍とに被着した導電性高分子25とを備える。なお、第1面231A及び第2面232Aは、セパレータ23の外形を構成する面の一部である。また、陽極体21の金属箔21Aには、前述のとおり、エッチングピットが形成されており、誘電体酸化皮膜21Bはエッチングピットの形状に沿って形成されている。このように、エッチングピットを有する陽極体21は、陽極体21を構成する面の一部がセパレータ23と接触する。
セパレータ基材24の第1面231A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材
24の単位面積当たりの被着量は、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材24の単位面積当たりの被着量よりも多くなっている。
実施の形態1におけるセパレータ23の形成方法について説明する。
ここでは、陽極体21とセパレータ23と陰極体22とを巻回してコンデンサ素子12を形成する前の段階で、セパレータ基材24に導電性高分子25を被着させてセパレータ23を形成する方法について説明する。
セパレータ基材24の一方の面である第1面231Aに導電性高分子25の溶液又は分散液である液剤を塗着して、この液剤をセパレータ基材24の第1面231Aからセパレータ基材24の内部へ浸み込ませる。その後、液剤に含まれる溶媒又は分散媒を蒸発させる。
セパレータ基材24に塗着された液剤中の溶媒又は分散媒が蒸発した後に、セパレータ基材24に、導電性高分子25が被着する。
このとき、セパレータ基材24の第1面231A上に被着する導電性高分子25の、セパレータ基材24の単位面積当たりの被着量を、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25の、セパレータ基材24の単位面積当たりの被着量よりも多くするために、例えば、セパレータ基材24の第1面231Aに塗着する液剤の量、導電性高分子の濃度、塗着回数、セパレータ基材24の密度などを制御する。
なお、導電性高分子25をセパレータ基材24に被着させる方法として、セパレータ基材24の第1面231Aと第2面232Aとの両方の面から液剤を塗着する方法も適用できる。この場合、セパレータ基材24の第1面231Aと第2面232Aとから塗着する液剤の量や濃度を制御すればよい。
このように、セパレータ基材24に導電性高分子25を被着させることによって、セパレータ23に導電性が付与され、電解コンデンサのESRを下げることが出来る。そして、セパレータ基材24の第1面231A上に被着する導電性高分子25の、セパレータ基材24の単位面積当たりの被着量を、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25の、セパレータ基材24の単位面積当たりの被着量よりも多くすることで、電解コンデンサ1の陽極体21近傍に存在する導電性高分子25の量、或いは陽極体21に接触する導電性高分子25の量が多くなり、電解コンデンサのESRの低減が図られる。
なお、本実施の形態において、電解コンデンサのESRの低減効果を得るためには、セパレータ基材24の第1面231A上に被着した導電性高分子25のセパレータ基材24の単位面積当たりの被着量を、第2面232A上に被着した導電性高分子25のセパレータ基材24の単位面積当たりの被着量よりも5%(重量)以上多くすることが好ましく、10%(重量)以上多くすることがより好ましい。
また、図3に示すように、セパレータ23の厚さ方向の中央から第1面231Aまでの部分を第1セパレータ半体23Pと定義し、セパレータ23の厚さ方向の中央から第2面232Aまでの部分を第2セパレータ半体23Nと定義すると、第1セパレータ半体23Pに被着する導電性高分子25の量が、第2セパレータ半体23Nに被着する導電性高分子25の量よりも多くなっている。このような構成とすることで、電解コンデンサのESRをさらに低減することができる。
また、図3に示すように、第1面231A上に被着する導電性高分子25と第2面232A上に被着する導電性高分子25とは導電性高分子25を介して導通している。このような構成とすることで、ESRをさらに低減することが出来る。
なお、本実施の形態では、導電性高分子25をセパレータ基材24の第1面231A上から第2面232A上にかけて被着させているが、セパレータ基材24の第1面231A上からセパレータ基材24の厚さ方向の途中まで被着させて、第2面232A上に導電性高分子25が被着しないようにすれば、電解コンデンサの耐電圧も向上することができる。
なお、セパレータ基材24の第1面231Aへの液剤の塗着と塗着後の液剤に含まれる溶媒又は分散媒の蒸発とを複数回繰り返し実施すれば、セパレータ基材24の第1面231A近傍に被着する導電性高分子の量をより多くできるので、電解コンデンサのESRをさらに低減することができる。
なお、セパレータ基材24の第1面231A上または第2面232A上に被着する導電性高分子の単位面積当たりの被着量は、EDAX(エネルギー分散型X線分析装置)によって表面の特定元素(使用する導電性高分子の構成元素により決められる)の分布状態を分析することによって求めることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2について図4を参照しながら説明する。
実施の形態2における電解コンデンサは、セパレータ23において、セパレータ基材24が異なること以外は実施の形態1と同じであるので、実施の形態1と同じ部分については一部説明を省略する。
図4に示すように、セパレータ23は、陽極体21に対向する第1面231Aを含む第1面側23Lと、陰極体22に対向する第2面232Aを含む第2面側23Hとを有するセパレータ基材24と、このセパレータ基材の第1面231A上およびその近傍と第2面232A上およびその近傍とに被着した導電性高分子25とを備える。そして、セパレータ基材24の第1面側23Lの密度は、第2面側23Hの密度よりも低くなっており、セパレータ基材24の第1面231A上に被着する導電性高分子25の、セパレータ基材24の単位面積当たりの被着量は、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材24の単位面積当たりの被着量よりも多くなっている。
ここで、セパレータ基材24の第1面側23Lとは、セパレータ基材24の第1面231Aを含み第2面側23Hと重ならない領域であり、セパレータ基材24の第2面側23Hとは、セパレータ基材の第2面232Aを含み第1面側23Lと重ならない領域である。
実施の形態2におけるセパレータ23の形成方法について説明する。
セパレータ基材24の第1面231Aに導電性高分子の溶液又は分散液である液剤を塗着して、この液剤をセパレータ基材24の第1面231Aからセパレータ基材24の内部へ浸み込ませる。その後、液剤に含まれる溶媒又は分散媒を蒸発させる。
液剤中の溶媒又は分散媒が蒸発した後に、セパレータ基材24に導電性高分子25が被着する。このとき、セパレータ基材24の第1面側23Lの密度を、第2面側23Hの密度よりも低くしているので、セパレータ基材24の第1面側23Lに被着する導電性高分
子25の被着量が、第2面側23Hに被着する導電性高分子25の被着量よりも多くなり、第1面231A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材単位面積当たりの被着量も、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材単位面積当たりの被着量よりも多くなる。
このように、セパレータ基材24の第1面側23Lの密度を、第2面側23Hの密度よりも低くすれば、塗着する液剤の量や導電性高分子の濃度等の制御を必要とせずに、或いは簡易な制御をするだけで、セパレータ基材24の第1面231A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材24の単位面積当たりの被着量を、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材24の単位面積当たりの被着量よりも多くすることができ、その結果電解コンデンサのESRを低減することができる。
まず、陽極体21にセパレータ基材24の密度の低い第1面側23Lを対向させ、陰極体にはセパレータ基材24の密度の高い第2面側23Hを対向させて、陽極体21とセパレータ基材24と陰極体22とを重ねて巻回し、導電性高分子を被着させる前のコンデンサ素子12を形成する。
次に、コンデンサ素子12の一部を構成するセパレータ基材24に導電性高分子を被着させる。
導電性高分子の溶液又は分散液である液剤に、コンデンサ素子12の巻回部分が全て浸かるように浸漬して、コンデンサ素子12に液剤を含浸させる。含浸時間は、コンデンサ素子12のサイズにもよるが、例えば1秒〜5時間、好ましくは1分〜30分である。また、含浸は、減圧下、例えば10kPa〜100kPa、好ましくは40kPa〜100kPaの圧力下で行ってもよい。コンデンサ素子12に液剤を含浸させながら、コンデンサ素子12または液剤に超音波振動を付与してもよい。
そして、液剤からコンデンサ素子12を取り出して、加熱、或いは減圧などの方法により、コンデンサ素子12に含浸されている液剤に含まれる溶媒又は分散媒を蒸発させる。この操作により、コンデンサ素子12の一部を構成しているセパレータ基材24に導電性高分子が被着する。
このとき、セパレータ基材24の第1面側23Lの密度を、第2面側23Hの密度よりも低くしているので、セパレータ基材24の第1面側23Lに被着する導電性高分子25の被着量が、第2面側23Hに被着する導電性高分子25の被着量よりも多くなり、その結果、陽極体21と対向するセパレータ基材24の第1面231A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材単位面積当たりの被着量も、セパレータ基材24の第2面232A上に被着する導電性高分子25のセパレータ基材単位面積当たりの被着量よりも多くなる。
次に実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1について説明する。
まずセパレータ基材として、非導電性の天然繊維を用い、厚みが60μmで、密度が0.50g/cmのものを使用した。
セパレータ基材に被着させる導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンとし、このポリエチレンジオキシチオフェンの微粒子を分散媒に分散させた分散液を塗着用の液剤とした。
陽極体となる陽極箔は、エッチング処理により表面を粗面化した後に、陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔とした。
陰極体となる陰極箔は、エッチング処理をしたアルミニウム箔とした。
詳しく説明すると、ポリエチレンジオキシチオフェンの分散液である液剤をセパレータ基材の陽極体と対向させる側の第1面に塗着し、液剤をセパレータ基材の内部に含浸させた後、塗着した液剤中の分散媒を揮発させることにより、セパレータ基材の第1面から第2面にかけて導電性高分子を被着させた。これによって、セパレータ基材の第1面上と第2面上とには導電性高分子が被着する。ここで、セパレータ基材の第1面からのみ液剤を塗着して含浸させているので、第1面上に被着した導電性高分子の被着量は、第2面上に被着した導電性高分子の被着量よりも多くなっている。
このとき、セパレータ基材の第1面上に被着した導電性高分子の被着量は、第2面上に被着した導電性高分子の被着量の105%(重量)であった。
なお、本実施例では、第1面上に被着した導電性高分子と第2面上に被着した導電性高分子とが、導電性高分子を介して電気的に導通している。
そして、導電性高分子を被着させたセパレータ基材の第1面に陽極体を対向させ、第2面に陰極体の一方の面を対向させ、さらに陰極体の他方の面に、上記陰極体の一方の面に対向させた導電性高分子が被着したセパレータ基材とは同じ仕様であるが、別個体の導電性高分子が被着したセパレータ基材の第2面を対向させて巻回し、コンデンサ素子を形成した。
次に、巻回して形成したコンデンサ素子を、エチレングリコールに1,6−デカンジカルボン酸アンモニウムを溶解して調整した電解液に減圧条件下で浸漬し、コンデンサ素子の空隙部に電解液を含浸した。
そして、電解液が含浸されたコンデンサ素子を、樹脂加硫ブチルゴムの成形体である封口体と共に有底筒状のアルミニウム製のケースに挿入した後、ケースの開口部をカーリング処理により封止した。
これにより、定格電圧450V、静電容量10μFの電解コンデンサを作製した。
(実施例2)
実施例2について説明する。
実施例2では、使用するセパレータ基材が異なる以外は実施例1と同様に電解コンデンサを作製した。
実施例2では、セパレータ基材として、非導電性の天然繊維で密度と厚みの異なる2種類のセパレータ紙、つまり、密度が0.75g/cmで厚みが15μmのセパレータ紙と、密度が0.45g/cmで厚みが45μmのセパレータ紙と、を積層した2層構造のものを使用した。
そして、密度が0.45g/cmのセパレータ紙側を陽極体と対向させる第1面とし
、密度が0.75g/cmのセパレータ紙側を陰極体と対向させる第2面とし、第1面側から液剤を塗着した。
実施例2において、陽極体と対向するセパレータ基材の密度が低い第1面上に被着した導電性高分子の被着量は、陰極体と対向する密度が高い第2面上に被着した導電性高分子の被着量の120%(重量)であった。
(比較例)
次に、比較例について説明する。
比較例では、セパレータ基材に塗着する液剤と、セパレータ基材への液剤の塗着方法とが異なる以外は実施例1と同様にして電解コンデンサを作製した。
比較例では、セパレータ基材に塗着する液剤中の導電性高分子の濃度を、実施例1の2分の1とした。そしてセパレータ基材の一方の面に、実施例1でセパレータ基材の第1面に塗着した液剤の塗着量と同じ量の液剤を塗着し、液剤をセパレータ基材の内部に含浸させた後、塗着した液剤中の分散媒を揮発させることにより、セパレータ基材に導電性高分子を被着させ、さらに、セパレータ基材の他方の面からも、セパレータ基材の一方の面に塗着した液剤の量と同じ量の液剤を塗着し、液剤をセパレータ基材の内部に含浸させた後、塗着した液剤中の分散媒を揮発させることにより、セパレータ基材に導電性高分子を被着させた。
これによって、セパレータ基材全体に被着する導電性高分子の被着量を、実施の形態1と略同じ被着量とするとともに、セパレータ基材の陽極体と対向する面上に被着した導電性高分子の、セパレータ基材の単位面積当たりの被着量と、陰極体と対向する面上に被着した導電性高分子の、セパレータ基材の単位面積当たりの被着量とを略同等にしている。(評価)
実施例1、2及び比較例の電解コンデンサをそれぞれ20個作製し、10個を耐電圧測定に、10個をESR測定に供した。耐電圧は、105℃の雰囲気において5mAの定電流を電解コンデンサに流して、絶縁破壊の起きる電圧を測定し、この電圧を耐電圧として評価した。ESRは、20℃の環境で、100kHzにおいて測定した。これらの結果を表1に示す。なお、表1に記載の耐電圧及びESRの値は、比較例1を100とした場合の相対値である。
表1に示すように、セパレータ基材の陽極体と対向する側となる第1面上に被着する導電性高分子の、セパレータ基材の単位面積当たりの被着量を、セパレータ基材の陰極体と対向する側となる第2面上に被着する導電性高分子の、セパレータ基材の単位面積当たりの被着量よりも多くした実施例1、2では、セパレータ基材の陽極体に対向する一方の面上に被着する導電性高分子の、セパレータ基材の単位面積当たりの被着量を、セパレータ基材の陰極体に対向する他方の面上に被着する導電性高分子の、セパレータ基材の単位面積当たりの被着量に対して同じにした比較例よりもESRが低くなっている。
本発明は、電解液と固体電解質である導電性高分子とを併用する蓄電デバイスに適用す
ることで、蓄電デバイスの低ESR化を実現することができる。
11A 陽極リード
11B 陰極リード
12 コンデンサ素子
13 ケース
13A 絞り加工部
14 封口体
14A,14B 貫通孔
15 外装体
16 電解液
21 陽極体(陽極箔)
21A 金属箔
21B 誘電体酸化皮膜
22 陰極体(陰極箔)
23 セパレータ
23L 第1面側
23H 第2面側
23P 第1セパレータ半体
23N 第2セパレータ半体
24 セパレータ基材
25 導電性高分子
231A 第1面
232A 第2面

Claims (3)

  1. 表面に誘電体皮膜を有する陽極体と、前記陽極体に対向する陰極体と、前記陽極体と前記陰極体との間に介在するセパレータとを有する蓄電素子基体に、電解液を含浸した蓄電デバイスの製造方法であって、
    紙または不織布からなり、第1面および該第1面の裏側の第2面を有するセパレータ基材を用意する第1工程と、
    前記第1工程の後、前記セパレータ基材の第1面に、導電性高分子を溶媒または分散媒に溶解または分散させた液剤を塗着する第2工程と、
    前記第2工程の後、前記液剤を前記第1面から前記セパレータ基材の内部へ浸み込ませる第3工程と、
    前記第3工程の後、前記液剤の溶媒または分散媒を蒸発させることにより、前記セパレータ基材に前記導電性高分子が被着した前記セパレータを形成する第4工程と、
    前記第4工程の後、前記セパレータ基材の第1面を前記陽極体に、前記セパレータ基材の第2面を前記陰極体に、それぞれ対向させて前記蓄電素子基体を形成する第5工程と、
    前記第5工程の後、前記蓄電素子基体に、前記電解液を含浸する第6工程とを備える、蓄電デバイスの製造方法。
  2. 前記第3工程において、前記液剤の少なくとも一部を前記第2面上にまで浸み込ませることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
  3. 前記陽極体として、表面に誘電体皮膜を有する陽極箔を用い、
    前記陰極体として、陰極箔を用い、
    前記第4工程において、前記セパレータ基材の第1面を前記陽極箔に、前記セパレータ基材の第2面を前記陰極箔に、それぞれ対向させて巻回することにより、前記蓄電素子基体を形成することを特徴する請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
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