本発明のスクアリリウム化合物は、下記式(1)で表されるものである。下記式(1)において、R1とR6はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3以上の分岐状アルキル基を表し、R2とR7はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数5以上の直鎖状アルキル基を表し、R3、R4、R8およびR9はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、環Aおよび環Bはそれぞれ独立して、5員以上の含窒素複素環を表し、当該含窒素複素環はR1とR6以外に置換基を有していてもよい。
式(1)で表されるスクアリリウム化合物は、有機溶媒や樹脂への溶解性に優れるものとなる。そのため、樹脂組成物中にスクアリリウム化合物を高濃度に含有させることが可能になり、当該樹脂組成物から光学フィルターを形成する場合など、厚みを薄く形成しても、スクアリリウム化合物に由来して赤色〜近赤外領域の光を好適に吸収させることができる。また、スクアリリウム化合物をセキュリティインクに使用する場合などは、インク中にスクアリリウム化合物を高濃度に含有させることができ、インクの発色性を高めることができる。式(1)で表されるスクアリリウム化合物はまた、樹脂硬化物中でも、スクアリリウム化合物本来の吸収スペクトルに従って、可視光領域の光を高い透過率で透過させつつ、赤色〜近赤外領域の光を選択的に吸収することが可能となる。
スクアリリウム化合物には、共鳴関係にある化合物が存在している場合がある。式(1)のスクアリリウム化合物と共鳴関係にある化合物としては、例えば、下記式(1a),(1b)で表される化合物が挙げられる。本発明のスクアリリウム化合物はこれら全ての共鳴関係にある化合物を含むものとし、具体的には、式(1)のスクアリリウム化合物には、下記式(1a),(1b)で表されるような共鳴関係にある化合物が含まれる。
式(1)において、スクアリリウム骨格の一方側と他方側に結合した基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。すなわち、R1、R2、R3、R4および環AはそれぞれR6、R7、R8、R9および環Bと同一または異なっていてもよい。スクアリリウム骨格の一方側と他方側に結合した基が同一の場合は、スクアリリウム化合物の熱や光に対する耐久性の向上が期待できる。スクアリリウム骨格の一方側と他方側に結合した基が互いに異なる場合は、スクアリリウム化合物の分子どうしの会合や凝集が抑制され、溶剤や樹脂に対する溶解性の向上が期待できる。
式(1)で表されるスクアリリウム化合物は、R1、R2、R6、R7をアルキル基として、その炭素数が増えるに従って、有機溶媒や樹脂への溶解性が高くなる傾向を示す。その際、R1とR6を分岐状アルキル基とすることによって、スクアリリウム化合物の有機溶媒や樹脂への溶解性を効果的に高めることができる。また、スクアリリウム化合物は本来、赤色〜近赤外領域の光を選択的に吸収し、可視光領域の光を高い透過率で透過させるという分光特性を有するが、R1とR6が直鎖状アルキル基である場合は、スクアリリウム化合物が樹脂硬化物中で可視光領域(例えば、波長500nm〜600nmの範囲)に新たな吸収ピークを示す場合があるところ、R1とR6が分岐状アルキル基であれば、そのような懸念も不要となり、樹脂硬化物中でも可視光領域の光を高い透過率で透過させることができる。一方、R2とR7が直鎖状アルキル基であれば、スクアリリウム化合物は耐熱性が高まる傾向となり、スクアリリウム化合物を樹脂に配合して加熱成形したり加熱硬化する際など、スクアリリウム化合物の分解を抑えることができる。そのため、加熱処理を経た樹脂硬化物中においても、スクアリリウム化合物を高濃度に存在させることが可能となる。
R1とR6のアルキル基は、分岐状であることから、その炭素数(置換基を除く炭素数)は3以上となる。R1とR6の分岐状アルキル基の炭素数の上限は特に限定されないが、20以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下がさらにより好ましい。R1とR6の分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、tert−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
R2とR7の直鎖状アルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、有機溶媒や樹脂への溶解性を確保する点から5以上であり、6以上が好ましく、7以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。R2とR7の直鎖状アルキル基の炭素数の上限は特に限定されないが、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、18以下がさらにより好ましい。R2とR7の直鎖状アルキル基としては、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。
R1とR6の分岐状アルキル基およびR2とR7の直鎖状アルキル基は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基等が挙げられる。なお、R1とR6の分岐状アルキル基およびR2とR7の直鎖状アルキル基は置換基を有しないことが好ましい。
式(1)のR3、R4、R8およびR9の有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基等が挙げられる。式(1)のR3、R4、R8およびR9の極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
R3、R4、R8およびR9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の環状(脂環式)アルキル基等が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有する置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。ハロゲノ基を有するアルキル基としては、モノハロゲノアルキル基、ジハロゲノアルキル基、トリハロメチル単位を有するアルキル基、パーハロゲノアルキル基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。アルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1〜20が好ましく、具体的には、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば炭素数1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5であり、環状のアルキル基であれば炭素数4〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。
R3、R4、R8およびR9のアルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基に含まれるアルキル基の具体例は、上記のアルキル基に関する説明が参照される。
R3、R4、R8およびR9のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基等が挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、6〜20が好ましく、より好ましくは6〜12である。
R3、R4、R8およびR9のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アラルキル基は置換基を有していてもよく、アラルキル基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、7〜25が好ましく、より好ましくは7〜15である。
R3、R4、R8およびR9のアリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基に含まれるアリール基の具体例は、上記のアリール基に関する説明が参照される。
R3、R4、R8およびR9のヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、ヘテロアリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、2〜20が好ましく、より好ましくは3〜15である。
R3、R4、R8およびR9のアミノ基としては、式:−NRa1Ra2で表され、Ra1およびRa2がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は、上記のこれらの基の説明が参照され、アルケニル基とアルキニル基としては、上記に例示したアルキル基の炭素−炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わった基が挙げられる。Ra1とRa2は互いに連結して環形成していてもよい。
R3、R4、R8およびR9のアミド基としては、式:−NH−C(=O)−Ra3で表され、Ra3がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は、上記のこれらの基の説明が参照される。
R3、R4、R8およびR9のスルホンアミド基としては、式:−NH−SO2−Ra4で表され、Ra4がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は、上記のこれらの基の説明が参照される。
R3、R4、R8およびR9のハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
式(1)のR3、R4、R8およびR9はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミド基または水酸基であることが好ましい。このようなスクアリリウム化合物は製造が比較的容易であり、またR3、R4、R8およびR9を適宜選択することで、スクアリリウム化合物の最大吸収波長を所望の波長域に制御することが可能となる。なかでも、スクアリリウム化合物の安定性や製造容易性の点から、R3、R4、R8およびR9はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であることが好ましい。この場合のアルキル基は、直鎖状または分岐状であることが好ましく、またその炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。
式(1)の環Aおよび環Bはそれぞれ独立して、5員以上の含窒素複素環を表す。環Aと環Bの含窒素複素環は、環Aまたは環Bが縮環したベンゼン環のスクアリリウム骨格の結合位置のパラ位の炭素原子に窒素原子が結合した複素環である。環Aと環Bがこのような含窒素複素環から形成されていれば、スクアリリウム化合物の最大吸収ピークが長波長側(例えば685nm以上)にシフトして、赤色領域の光の透過率を高めて、透過光の色味を実際のものに近付けることが容易になる。なお、環Aと環Bの含窒素複素環には、環Aまたは環Bが縮環するベンゼン環のスクアリリウム骨格の結合位置のパラ位の炭素原子に結合する窒素原子に、上記に説明した置換基R1またはR6が結合しており、含窒素複素環はR1とR6以外に置換基を有していてもよい。環Aと環Bは、非芳香族含窒素複素環であることが好ましい。
環Aと環Bの含窒素複素環は、環を構成するヘテロ原子として、窒素原子1つのみを有していてもよく、ヘテロ原子を2つ以上有していてもよい。ヘテロ原子を2つ以上有する場合は、少なくとも1つの窒素原子を必須的に有し、さらにN(窒素原子)、S(硫黄原子)およびO(酸素原子)から選ばれる少なくとも1種以上の原子を1つ以上有する。環Aと環Bの含窒素複素環としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ヘキサメチレンイミン環、ヘプタメチレンイミン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピペラジン環等が挙げられる。スクアリリウム化合物の製造容易性の点からは、環Aと環Bの含窒素複素環は、ヘテロ原子として窒素原子を1つのみ有することが好ましい。すなわち、環Aまたは環Bが縮環するベンゼン環のスクアリリウム骨格の結合位置のパラ位の炭素原子に結合した窒素原子以外は、環Aと環Bは炭素原子が繋がって環形成されていることが好ましい。また環Aと環Bは、ベンゼン環と縮環した炭素−炭素結合以外は、単結合により炭素原子と窒素原子または炭素原子どうしが結合して環形成していることが好ましい。
環Aと環Bの含窒素複素環は、R1とR6以外に置換基を有していてもよい。すなわち、環Aと環Bの含窒素複素環は、環Aまたは環Bが縮環するベンゼン環のスクアリリウム骨格の結合位置のパラ位の炭素原子に結合する窒素原子以外の環構成原子に置換基が結合してもよく、そのような置換基としては、上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。なかでも、環Aと環Bが有していてもよいR1とR6以外の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基が好ましく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲノアルキル基がより好ましい。この場合のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基の炭素数は1〜8が好ましく、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜3であり、アリール基の炭素数は6〜12が好ましく、6〜10がより好ましく、アラルキル基の炭素数は7〜13が好ましく、7〜11がより好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。なお、環Aと環Bは、R1とR6以外に置換基を有していなくてもよい。
環Aと環Bの環員数は5以上であり、6以上が好ましく、また12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。特に環Aと環Bの環員数が6以上であれば、赤色〜近赤外領域に極大吸収を有する吸収ピークをシャープなものにすることができ、当該吸収ピークの短波長側の傾斜部の傾きを吸収なものとすることができる。そのため、透過波長域と吸収波長域との境目がシャープに形成され、吸収ピークに対応した波長域の光を選択的にカットすることが可能となる。
上記に説明した環Aと環Bの構成に関し、特に好ましいスクアリリウム化合物として、下記式(2)で表されるスクアリリウム化合物が示される。
式(2)において、R1〜R4、R6〜R9は上記に説明した通りである。R5は、環Aを構成する炭素原子に結合する水素原子または置換基を表し、R10は、環Bを構成する炭素原子に結合する水素原子または置換基を表し、mおよびnは1以上の整数(好ましくは1〜7の整数、より好ましくは1〜5の整数、さらに好ましくは1〜3の整数)を表す。複数のR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR10は互いに同一であっても異なっていてもよい。R5とR10の置換基としては、上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。式(2)のスクアリリウム化合物は、環Aと環Bが、ヘテロ原子として窒素原子を1つのみ有する6員以上の複素環となっており、ベンゼン環と縮環した炭素−炭素結合以外は、単結合により炭素原子と窒素原子または炭素原子どうしが結合して環形成している。
R5およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、および水酸基よりなる群から選ばれる基または原子であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、およびハロゲノアルキル基よりなる群から選ばれる基または原子であることがより好ましく、水素原子、アルキル基、およびハロゲノアルキル基よりなる群から選ばれる基または原子であることがさらに好ましい。この場合のアルキル基、ハロゲノアルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。
式(2)で表されるスクアリリウム化合物の特に好ましい例として、下記式(3)で表される化合物が具体的に挙げられる。下記式(3)において、R1〜R4、R6〜R9は上記の説明が参照される。すなわち、環Aと環Bは、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つのみ有する6員の含窒素複素環であり、当該含窒素複素環はR1とR6以外の置換基を有しないことが好ましい(環を構成する原子のうち、ベンゼン環と縮環しない炭素原子には置換基が結合していないことが好ましい)。
本発明のスクアリリウム化合物は、トルエン中で測定される波長450nm〜1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長650nm〜950nmの範囲に最大吸収ピークを有することが好ましい。すなわちスクアリリウム化合物は、トルエン中で吸収スペクトルを測定したとき、波長650nm〜950nmの範囲に吸収極大を有するピークを有し、かつ当該吸収ピークの吸収極大が波長450nm〜1100nmの範囲で最大値をとることが好ましい。なお、最大吸収ピークの吸収極大波長を、極大波長λmaxと称する。スクアリリウム化合物がこのような吸収スペクトルを示すものであれば、赤色〜近赤外領域の光を効果的に吸収できる。極大波長λmaxは、670nm以上がより好ましく、685nm以上がさらに好ましく、また900nm以下がより好ましく、850nm以下がさらに好ましく、800nm以下がさらにより好ましい。
本発明のスクアリリウム化合物は、トルエン中で測定される波長450nm〜1100nmの範囲における吸収スペクトルが、最大吸収ピークの極大波長λmaxにおける吸光度を1としたときに、極大波長λmaxよりも短波長側の吸光度0.5における傾きS0.5が3.00×10-2nm-1以上となることが好ましい。このようなスクアリリウム化合物は、吸収スペクトルを測定したときに、最大吸収ピークの短波長側の傾斜部の傾きが急峻なものとなるため、透過波長域と吸収波長域との境目をシャープに形成することができる。そのため、最大吸収ピークに対応した波長域の光を選択的にカットすることが可能となり、例えば、近赤外領域の光を選択的にカットしつつ、それより短波長側の可視光領域の光を赤色光も含めて高い透過率で透過させることが可能となり、透過光の色味を実際のものに近付けることができる。吸光度0.5における傾きS0.5は、3.15×10-2nm-1以上がより好ましく、3.25×10-2nm-1以上がさらに好ましく、3.35×10-2nm-1以上がさらにより好ましい。傾きS0.5の上限は特に限定されないが、例えば5.00×10-2nm-1以下であってもよく、4.00×10-2nm-1以下であってもよく、3.75×10-2nm-1以下であってもよい。
吸収スペクトルは、波長450nm〜1100nmの範囲で測定ピッチ1nmごとに吸光度を測定することにより求める。測定ピッチ(1nm)未満における波長の吸光度の値は、1nmピッチの吸光度の測定値から線形補間することにより算出する。トルエン中のスクアリリウム化合物の濃度は、波長450nm〜1100nmの範囲で吸光度の最大値(最大吸収ピークにおける吸光度の最大値)が1±0.003となるように調整する。本発明では、このような条件で吸収スペクトルを測定したときに、最大吸収ピークの吸収波長λmaxにおける吸光度が1になるものと見なす。
極大波長λmaxよりも短波長側の吸光度0.5における傾きS0.5は、λmaxよりも短波長側で吸光度が0.55となる波長をλ0.55、吸光度が0.45となる波長をλ0.45としたときに、式:S0.5=(0.55−0.45)/(λ0.55−λ0.45)により求める。吸光度が0.55となる波長λ0.55、吸光度が0.45となる波長λ0.45は、1nmピッチの吸光度の測定値から線形補間することにより求める。なお、λ0.55は、λmaxよりも短波長側で吸光度が0.55となるλmaxに最も近い波長を意味し、λ0.45は、λmaxよりも短波長側で吸光度が0.45となるλmaxに最も近い波長を意味する。
最大吸収ピークは、吸収極大λmaxよりも短波長側でショルダーピークができるだけ観測されないことが好ましい。具体的には、吸収スペクトルは、最大吸収ピークの極大波長λmaxから短波長側100nmの範囲において、吸光度が0.05以上増加する吸収極大が存在しないことが好ましい。すなわち、1nmピッチで測定した吸収スペクトルにおいて、λmax−100(nm)からλmax(nm)の波長範囲で吸収極大が存在しないか、吸収極大が存在する場合でも、それより長波長側および短波長側と比べて吸光度の増加が0.05未満に収まることが好ましい。これにより、透過波長域と吸収波長域との境目をシャープに形成することができる。ショルダーピークにおける吸光度の増加は0.03未満であることがより好ましく、0.01未満がより好ましく、ショルダーピークの吸収極大が存在しないことが特に好ましい。
本発明のスクアリリウム化合物は、最大吸収ピークの極大波長λmaxにおける吸光度を1としたときに、波長450nm〜600nmの範囲の平均吸光度が0.03以下であることが好ましく、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましく、これにより可視光領域における光の透過率を高めることができる。波長450nm〜600nmの範囲の平均吸光度は、波長450nm〜600nmの範囲で1nmピッチで測定した151点の吸光度の値を平均することにより求める。
本発明のスクアリリウム化合物は有機溶媒への溶解性に優れることから、次の特性を満足することが好ましい。すなわち、スクアリリウム化合物1質量部とトルエン99質量部とを配合した溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過したろ液をトルエンで2500倍に希釈した溶液の吸収スペクトルが、波長450nm〜1100nmの範囲の最大吸光度が1.0以上となることが好ましい。スクアリリウム化合物が有機溶媒への溶解性が高いものであれば、スクアリリウム化合物をトルエンに加えたときに、スクアリリウム化合物のより多くの部分が溶解し、溶け残り量が少なくなるため、これをフィルターでろ過すれば、スクアリリウム化合物がトルエン中に溶解した状態でろ液側に移行することになる。そのため、このろ液の吸収スペクトルを測定すれば、スクアリリウム化合物に由来する吸収ピークがより強く現れることとなる。なお、スクアリリウム化合物のトルエン溶液のろ過、希釈、吸光度測定の各操作の詳細は、実施例に基づくものとする。
本発明のスクアリリウム化合物は、下記式(4−1)の化合物と下記式(4−2)の化合物をスクアリン酸と反応させることにより製造することができる。下記式(4−1)および式(4−2)中、R1〜R4、R6〜R9、環Aおよび環Bは、上記の式(1)における意味と同じであり、その好適態様も上記に説明した通りである。式(4−1)の化合物と式(4−2)の化合物は同一であってもよい。
スクアリン酸と上記化合物との反応は、溶媒存在下で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロトルエン、ジクロロベンゼン等の塩素系芳香族類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スクアリン酸との反応において、反応温度は適宜設定すればよく、例えば30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、また170℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。当該反応は還流下で行うことが好ましい。反応時間は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、また48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。反応時の雰囲気は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気とすることが好ましい。
スクアリリウム化合物の製造は、次の論文を参照することもできる:Serguei Miltsov et al.,“New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines”, Tetrahedron Letters, Vol.40, Issue 21, p.4067-4068 (1999)。
得られたスクアリリウム化合物は、必要に応じて、ろ過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。スクアリリウム化合物の化学構造は、質量分析法、単結晶X線構造解析法、フーリエ変換赤外分光法、核磁気共鳴分光法などの公知の分析方法により解析することができる。
本発明のスクアリリウム化合物は、樹脂成分と混合して、樹脂組成物とすることができる。本発明の樹脂組成物は、例えばフィルム等の樹脂成形体とすることで、光学フィルターに好適に適用することができる。樹脂成形体はまた、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、可視光および近赤外光を利用した太陽電池用材料、プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の特定波長吸収フィルター等への適用も可能である。
樹脂組成物は、本発明のスクアリリウム化合物と樹脂成分を少なくとも含むものである。樹脂組成物に含まれるスクアリリウム化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明のスクアリリウム化合物は一種の色素と見なすことができるが、本発明の樹脂組成物は、用途に応じた所望の性能が確保される限り、本発明のスクアリリウム化合物とともに他の色素を含有していてもよい。樹脂組成物に含まれていてもよい色素としては、例えば、本発明のスクアリリウム化合物以外のスクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。これら他の色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なかでも、本発明のスクアリリウム化合物と特開2016−074649号公報に開示されるスクアリリウム化合物(下記式(5)で表されるスクアリリウム化合物)とを組み合わせて用いることが好ましく、これにより近赤外領域に広い吸収波長域を有し、かつこれより短波長側では可視光領域の広い範囲で高い透過率を示す樹脂組成物を形成することが容易になる。
上記式(5)中、R11およびR12はそれぞれ独立して、下記式(6)で表される基を表し、下記式(6)中、環Pは、4〜9員の不飽和炭化水素環を表し、環Qは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、R13は、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R14は、有機基または極性官能基を表し、*は式(5)中の4員環(スクアリリウム骨格)との結合部位を表し、kは0〜6の整数であり、かつh以下(ただし、hは環Pの構成員数から3を引いた値である)であり、kが2以上である場合、複数のR14は同一であっても異なっていてもよい。
R13とR14の有機基と極性官能基の詳細は、R3、R4、R8およびR9の有機基と極性官能基の説明が参照される。R13としては、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましい。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、環状(脂環式)のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。R13がアルキル基またはアリール基である場合、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。R14としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、アリール基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、アルキル基または水酸基がより好ましく、当該アルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく挙げられる。なお、環Pは置換基R14を有しないことも好ましく、すなわちkが0であることも好ましい。
環Pの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。なかでも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましく、シクロヘキセン、シクロヘプテン、またはシクロオクテンがより好ましい。
環Qの芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Qの芳香族複素環は、N(窒素原子)、O(酸素原子)およびS(硫黄原子)から選ばれる1種以上の原子を環構造に含み、芳香族性を有するものであり、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。芳香族複素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Qのこれらの環構造を含む縮合環は、芳香族炭化水素環と芳香族複素環とが縮環した構造を有するものであり、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。
環Qは置換基を有していてもよく、当該置換基としては上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。なかでも、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜2のアルキルチオ基)、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基、インドリニル基等の電子供与性基;ハロゲノ基(好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基(カルボン酸基)、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホ基(スルホン酸基)、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましく挙げられる。これらの中でも、電子吸引性基がより好ましく、ハロゲノ基が特に好ましい。なお、環Qは置換基を有さなくてもよい。環Qが置換基を有する場合、その数は1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、さらに好ましくは1である。
式(5)で表されるスクアリリウム化合物の具体例としては、特開2016−074649号公報の実施例に記載のスクアリリウム化合物01〜スクアリリウム化合物30が挙げられる。なお、式(5)で表されるスクアリリウム化合物としては、環Pがシクロヘキセン環またはシクロオクテン環であるものが好ましく、シクロオクテン環がより好ましく、環Qは、置換基を有していてもよいベンゼン環または置換基を有していてもよいナフタレン環であるものが好ましい。式(5)で表されるスクアリリウム化合物の詳細は、特開2016−074649号公報の記載が参照される。
本発明のスクアリリウム化合物と上記式(5)のスクアリリウム化合物とを組み合わせて用いる場合、本発明のスクアリリウム化合物の含有量は、本発明のスクアリリウム化合物と上記式(5)のスクアリリウム化合物との合計100質量%に対し、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、また80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
樹脂組成物が、本発明のスクアリリウム化合物と上記式(5)のスクアリリウム化合物以外の他の色素をも含有する場合、他の色素の含有量は、本発明のスクアリリウム化合物と上記式(5)のスクアリリウム化合物との合計100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
樹脂組成物中のスクアリリウム化合物の含有量(2種以上のスクアリリウム化合物を用いる場合はそれらの合計含有量)は、所望の性能を発現させる点から、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物の成形性や成膜性等を高める点から、樹脂組成物中のスクアリリウム化合物の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。樹脂組成物が本発明のスクアリリウム化合物以外の色素も含有する場合は、これらの合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。
樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、公知の樹脂を用いることができる。樹脂成分としては、透明性が高く、本発明のスクアリリウム化合物を溶解できるものが好ましい。他の色素を併用する場合は、樹脂成分は、他の色素も溶解できるものが好ましい。このような樹脂成分を選択することにより、透過させたい波長域における高透過率と、遮断したい波長域における高吸収性を両立させることができる。
樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。本発明においては、いずれの樹脂も樹脂成分に含まれる。なお後者の場合は、重合反応で得られた反応液中に存在する、未反応物、反応性末端官能基、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等により、スクアリリウム化合物の構造の一部または全部が分解してしまうこともあり得る。従って、そのような懸念がある場合には、重合が完結した樹脂にスクアリリウム化合物を配合して、樹脂組成物を形成することが望ましい。
樹脂成分としては、透明性の高い樹脂を用いることが好ましく、これにより樹脂組成物に含まれるスクアリリウム化合物の光選択吸収特性を好適に活用することができる。樹脂成分は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、シクロオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアリレート樹脂等)、ポリスルホン樹脂、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。これらの中でも、透明性や耐熱性に優れる観点から、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素化芳香族ポリマーが好ましい。
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを縮重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリイミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリム(登録商標)、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。なお、カルボニル基含有環構造には、イミド基などのカルボニル基誘導体基を含有する構造も含む。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004−168882号公報、特開2008−179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007−31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物(プレポリマー)を硬化剤や硬化触媒の存在下で架橋化することで硬化させることができる樹脂である。エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オグソール(登録商標)PG−100)、三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)828EL)や水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)YX8000)、ダイセル社製の脂環式液状エポキシ化合物(セロキサイド(登録商標)2021P)等を用いることができる。
ポリエステル樹脂は、主鎖の繰り返し単位にエステル結合を含む重合体であり、例えば、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)とを縮重合させることにより得ることができる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のOKPシリーズ、帝人社製のTRNシリーズ、テオネックス(登録商標)、デュポン社製のライナイト(登録商標)、三菱化学社製のノバペックス(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のノバデュラン(登録商標)、東レ社製のルミラー(登録商標)、トレコン(登録商標)、ユニチカ社製のエリーテル(登録商標)等を用いることができる。
ポリアリレート樹脂は、2価フェノール化合物と2塩基酸(例えば、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸)とを重縮合して得られる重合体であり、主鎖の繰り返し単位に芳香族環とエステル結合とを含む繰り返し単位を有する。ポリアリレート樹脂は、例えば、クラレ社製のベクトラン(登録商標)、ユニチカ社製のUポリマー(登録商標)やユニファイナー(登録商標)等を用いることができる。
ポリアミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合を含む重合体であり、例えば、ジアミンとジカルボン酸とを縮重合させることにより得ることができる。ポリアミド樹脂は主鎖に脂肪族骨格を有するものであってもよく、このようなアミド樹脂として、例えばナイロンを用いることができる。ポリアミド樹脂は芳香族骨格を有するものであってもよく、このようなポリアミド樹脂としてアラミド樹脂が知られている。アラミド樹脂は、耐熱性に優れ、強い機械強度を有する点から好ましく用いられ、例えば、帝人社製のトワロン(登録商標)、コーネックス(登録商標)、デュポン社製のケブラー(登録商標)、ノーメックス(登録商標)等を用いることができる。
ポリカーボネート樹脂は、主鎖の繰り返し単位にカーボネート基(−O−(C=O)−O−)を含む重合体である。ポリカーボネート樹脂としては、帝人社製のパンライト(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロン(登録商標)、ノバレックス(登録商標)、ザンター(登録商標)、住化スタイロンポリカーボネート社製のSDポリカ(登録商標)等を用いることができる。
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(−SO2−)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P−1700等を用いることができる。
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008−181121号公報に記載されたものを用いることができる。
樹脂成分は透明性が高いことが好ましく、これにより樹脂組成物を光学用途に好適に適用しやすくなる。樹脂成分は、例えば、厚さ0.1mmでの全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。樹脂成分の前記全光線透過率の上限は特に限定されず、全光線透過率は100%以下であればよいが、例えば95%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K 7105に基づき測定する。
樹脂成分はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより、樹脂組成物やこれから得られる各種成形体の耐熱性を高めることができる。樹脂成分のガラス転移温度は、例えば、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。樹脂成分のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、樹脂組成物の成形加工性を確保する点から、例えば380℃以下が好ましい。
樹脂組成物は、溶媒を含有するものであってもよく、塗料化されたものであってもよい。塗料化された樹脂組成物は、溶媒を含むことにより樹脂組成物の塗工が容易になる。塗料化された樹脂組成物は、例えば、スクアリリウム化合物を樹脂成分を含む溶媒に溶解させたり、スクアリリウム化合物を樹脂成分を含む溶媒(分散媒)に分散させることにより得ることができる。溶媒は、スクアリリウム化合物の溶媒(溶剤)として機能するものであっても、分散媒として機能するものであってもよい。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体類(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、例えば50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量をこのような範囲内に調整することにより、スクアリリウム化合物濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
なお、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等は、スクアリリウム化合物を分解するおそれがあるため、使用量は少ない方が好ましい。そのためアミド類の含有量は、樹脂組成物100質量%中、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらにより好ましく、0質量%が特に好ましい(すなわち、アミド類を含まない)。
樹脂組成物は、例えば、350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物(紫外線吸収剤)を含んでいてもよい。これらの化合物の存在により、350nm〜400nm波長域の光に起因する樹脂組成物の劣化を抑制することができる。350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を併用する場合、350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ、三共化成社製のジスライザー(登録商標)シリーズ、アデカ社製のアデカスタブ(登録商標)シリーズ、住友化学社製のスミソーブ(登録商標)シリーズ、共同薬品社製のバイオソーブ(登録商標)シリーズ、シプロ化成社製のシーソーブ(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
樹脂組成物は表面調整剤を含んでいてもよく、これにより、樹脂組成物を硬化して樹脂層を形成した際に、樹脂層にストライエーションや凹み等の外観上の欠陥を生じることを抑制することができる。表面調整剤の種類は特に限定されず、シロキサン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系レベリング剤などを用いることができる。表面調整剤としては、例えば、ビックケミー社製のBYK(登録商標)シリーズや信越化学工業社製のKFシリーズ等を用いることができる。
樹脂組成物は分散剤を含んでいてもよく、これにより、樹脂組成物中でのスクアリリウム化合物の一部が分散状態で存在しても、分散性を安定化され、スクアリリウム化合物の再凝集を抑制することができる。分散剤の種類は特に限定されず、エフカアディティブズ社製のEFKAシリーズ、ビックケミー社製のBYK(登録商標)シリーズ、日本ルーブリゾール社製のソルスパース(登録商標)シリーズ、楠本化成社製のディスパロン(登録商標)シリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパー(登録商標)シリーズ、信越化学工業社製のKPシリーズ、共栄社化学社製のポリフローシリーズ、ディーアイシー社製のメガファック(登録商標)シリーズ、サンノプコ社製のディスパーエイドシリーズ等を用いることができる。
樹脂組成物は、シランカップリング剤やその加水分解物あるいは加水分解縮合物を含んでいてもよく、これにより樹脂組成物を基板上で硬化させて樹脂層を形成した場合に、樹脂層の基板への密着性を高めることができる。
樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
樹脂組成物は、硬化することにより硬化物とすることができる。樹脂組成物は、加熱(軟化)および冷却することによって硬化するものであってもよく、樹脂成分の反応(例えば、重合反応や架橋反応)によって硬化するものであってもよく、樹脂組成物に含まれる溶媒が除去されて硬化するものであってもよい。樹脂組成物としては、例えば、射出成形や押出成形等により成形することができる熱可塑性樹脂組成物や、スピンコート法、溶媒キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等により塗工できるよう塗料化された樹脂組成物を用いることができる。
樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、当該樹脂組成物を、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形等をすることにより硬化物を得ることができる。この方法では、熱可塑性樹脂にスクアリリウム化合物を配合し、加熱成形することにより成形品を得ることができる。例えば、ベース樹脂の粉体またはペレットにスクアリリウム化合物を添加し、150℃〜350℃程度に加熱し、溶解させた後、成形するとよい。成形品の形状は特に限定されるものではないが、板状、シート状、粒状、粉状、塊状、粒子凝集体状、球状、楕円球状、レンズ状、立方体状、柱状、棒状、錐形状、筒状、針状、繊維状、中空糸状、多孔質状等が挙げられる。また樹脂を混練する際に、可塑剤等の通常の樹脂成形に用いる添加剤を加えてもよい。
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、スクアリリウム化合物を含む液状またはペースト状の樹脂組成物を、基板(例えば、樹脂板、フィルム、ガラス板等)上に塗工することで、厚さ200μm以下のフィルム状や、厚さ200μm超のシート状の硬化物を得ることができる。このようにして得られた硬化物は、基材から剥離してフィルムやシートとして取り扱うこともできるし、基材と一体化して取り扱うこともできる。
樹脂組成物の硬化物は、単一の樹脂層(樹脂組成物が硬化して形成された層)から構成されていてもよく、複数の樹脂層から構成されていてもよい。硬化物が基材と一体化して取り扱われる場合は、硬化物は基材の一方面のみに形成されてもよく、両面に形成されてもよい。なお、硬化物と基材とが一体化したものは、樹脂組成物から形成された成形体を基材と熱圧着したり化学結合することによっても形成することができる。
本発明の樹脂組成物は、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途で用いられるフィルター形成用の樹脂組成物として好ましく使用できる。樹脂組成物およびその硬化物は、例えば、近赤外線カットフィルター等の光学フィルターに好適に適用することができる。このようなフィルターは、単一または複数の樹脂層から形成されてもよく、支持体と一体化されて形成されてもよい。
支持体と一体化されたフィルターは、例えば、樹脂組成物を、支持体表面(または、支持体と樹脂層との間にバインダー層等の他の層を有する場合は、当該他の層の表面)にスピンコート法や溶媒キャスト法により塗布し、乾燥または硬化することにより形成することができる。また、支持体に対して、樹脂組成物から形成された面状成形体を熱圧着することによりフィルターを形成してもよい。
樹脂組成物から形成された樹脂層は、支持体の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。樹脂層の厚さは特に限定されないが、所望の近赤外線カット性能を確保する点から、例えば0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましく、また1mm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。支持体上に塗料化された樹脂組成物を塗工するなどして樹脂層を形成する場合は、支持体によってフィルターの強度を確保することができるため、樹脂層の厚さをさらに薄くすることができる。支持体上に樹脂層を形成する場合の樹脂層の厚さは、例えば、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましい。
支持体としては、樹脂板、樹脂フィルム、ガラス板等の透明基板を用いることが好ましい。支持体に用いられる樹脂板または樹脂フィルムは、例えば、上記に説明した樹脂成分から形成されたものが好ましく用いられる。光学フィルターの耐熱性を高める観点からは、支持体としてガラス基板を用いることが好ましく、このように形成された光学フィルターは、例えば、半田リフローにより電子部品に実装することが可能となる。またガラス基板は、高温にさらされても割れや反りが起こりにくいため、樹脂層との密着性を確保しやすくなる。支持体としてガラス基板を用いる場合は、支持体と樹脂層の間に、例えばシランカップリング剤から形成されたバインダー層を設けてもよく、これにより樹脂層とガラス基板との密着性を高めることができる。なお、樹脂層を形成する樹脂組成物に、密着性向上剤としてシランカップリング剤を含めるようにしても、樹脂層とガラス基板との密着性を高めることができる。
支持体(基板)の厚みは、例えば、強度を確保する点から、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、また薄型化の点から、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
樹脂組成物から形成された樹脂層には、第2の樹脂層として、当該樹脂層と同一または異なる樹脂から構成された保護層を積層させてもよい。保護層を設けることにより、樹脂層に含まれるスクアリリウム化合物の耐久性(耐分解性)を高めることができる。保護層は、樹脂層の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。樹脂層が支持体上に設けられる場合は、保護層は、樹脂層の支持体とは反対側の面に設けられることが好ましい。
本発明の樹脂組成物から光学フィルターを形成する場合、光学フィルターは、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性や防眩性を有する層(反射防止膜)、傷付き防止性能を有する層、その他の機能を有する透明基材等を有していてもよい。
光学フィルターは、樹脂層上に近赤外線反射膜(例えば、700nm〜800nmの波長域の反射膜)を有していてもよい。近赤外線反射膜は、樹脂層よりも入光側に設けられていることが好ましい。光学フィルターに近赤外線反射膜が設けられていれば、光学フィルターの透過光から近赤外線をよりカットすることができる。なお、近赤外線反射膜は、紫外線反射機能を兼ね備えるものであってもよい。
近赤外線反射膜や反射防止膜(可視光反射防止膜)は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜から構成することができる。従って、このような機能を光学フィルターに付与する場合は、光学フィルターは誘電体多層膜を有することが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素をドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
光学フィルターはまた、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化スズを少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜等を有していてもよい。
光学フィルターの厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、例えば、撮像素子の小型化への要請に十分に応えることができる。光学フィルターの厚みは、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは150μm以下であり、また30μm以上が好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
光学フィルターは、イメージセンサー(撮像素子)、照度センサー、近接センサー等のセンサーの構成部材の一つとして用いることができる。例えばイメージセンサーは、被写体の光を電気信号等に変換して出力する電子部品として用いられ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等が挙げられる。イメージセンサーは、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に用いることができる。センサーは、上記の光学フィルターを1または2以上含み、必要に応じて、さらに他のフィルター(例えば、可視光線カットフィルター、赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター等)やレンズを有していてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)化合物の合成
(1−1)合成例1:スクアリリウム化合物Aの合成
300mLの4口フラスコに、ジメチルホルムアミド5g、炭酸カリウム2.2g、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン1.07g(0.008mol)、2−ヨードプロパン1.4gを入れ、窒素流通下(10mL/min)、撹拌羽を用いて撹拌しながら80℃条件にて4時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を、水酸化カリウム水溶液50mLと酢酸エチル50mLの入ったビーカーに、撹拌させながら加えた。水溶液はアルカリ性を示していた。しばらく撹拌したのち分液ロートにて有機相を抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。留去後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、中間体A1を0.9g得た。1,2,3,4−テトラヒドロキノリンに対する収率は64.2mol%であった。
次いで、50mLの2口フラスコに、窒素流通下(10mL/min)、中間体A1を2.80g(0.0160mol)と硫酸46gを入れ、撹拌羽を用いて撹拌しながらフラスコ内の温度が0〜5℃となるように氷冷した。そこへ、硝酸1.6gと硫酸6.6gからなる混酸8.2gをフラスコ内の温度が0〜5℃を維持できるよう静かに滴下し、滴下終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、得られた反応液を200gの氷水へ投入し、水酸化カリウム60gを少しずつ加えて中和した。水酸化カリウム添加後、水溶液はアルカリ性を示していた。そこに酢酸エチル200gを加えてしばらく撹拌した後、分液ロートにて有機相を抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。留去後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、中間体A2を3.1g得た。中間体A1に対する収率は88.0mol%であった。
次いで、100mLの2口フラスコに、中間体A2を2.64g(0.012mol)、濃塩酸(塩酸濃度36重量%)を9.0g入れ、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、塩化スズ・2水和物9.1gと濃塩酸(塩酸濃度36重量%)9.1gの入った溶液を、反応熱に注意しながら少しずつ添加した。添加後、3時間ほど室温にて撹拌した。その後、純水100gと酢酸エチル100gの入ったビーカーに、得られた反応液を撹拌させながら加えた。そこに水酸化カリウム溶液を少しずつ添加し、水溶液のpHが10付近になったところでしばらく撹拌した後、分液ロートにて有機相を抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を濃縮後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、中間体A3を0.96g得た。中間体A2に対する収率は42.0mol%であった。
次いで、100mLの3口フラスコに、中間体A3を2.72g(0.0143mol)、超脱水クロロホルムを50g入れ、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、トリエチルアミンを4.34g(0.0429mol)、n−デカノイルクロリドを5.45g(0.0286mol)加え、室温にて12時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をイオン交換水に加えて酢酸エチルで抽出を行った。抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を濃縮後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、中間体A4を3.10g得た。中間体A3に対する収率は62.9mol%であった。
次いで、300mLの2口フラスコに、中間体A4を4.93g(0.0143mol)、スクアリン酸0.82g(0.0072mmol)、1−ブタノール30g、トルエン30gを入れ、窒素流通下(10mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて3時間反応させた。反応終了後室温まで冷却させ、析出物をろ別した。ろ別した析出物をメタノールで洗浄し、再び析出物のみをろ過して、得られたケーキ(固形物)をアルミナによるカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)によって精製を行った。得られた精製物を真空乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、目的物であるスクアリリウム化合物Aを3.9g得た。スクアリン酸に対する収率は71.1mol%であった。
(1−2)合成例2:スクアリリウム化合物Bの合成
合成例1において、n−デカノイルクロリドをパルミトイルクロリド(n−ヘキサデカノイルクロリド)に変更したこと以外は、合成例1と同様の手順により表1に示すスクアリリウム化合物Bを得た。スクアリン酸に対する収率は86.1mol%であった。
(1−3)合成例3:スクアリリウム化合物Cの合成
300mLの4口フラスコに、クロロホルム110g、酢酸1.8g、7−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン5.4g(0.0303mol)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド12.84g(0.0606mol)を入れ、窒素流通下(10mL/min)、撹拌羽を用いて撹拌しながらイソブチルアルデヒド4.37g(0.0606mol)を10分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応液を水300gに加え、塩酸を用いて中和した。そこに酢酸エチル300gを加え、分液ロートにて有機相を抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を濃縮後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、中間体C1を6.13g得た。7−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンに対する収率は86.4mol%であった。次いで、中間体C1から、合成例1の中間体A2から中間体A3の合成手順に従い(ただし中間体A2を中間体C1に変更する)、中間体C2を合成した。中間体C2の中間体C1に対する収率は83.0mol%であった。さらに、中間体C2から、合成例1の中間体A3から中間体A4の合成手順に従い(ただし中間体A3を中間体C2に変更する)、中間体C3を合成した。中間体C3の中間体C2に対する収率は92.0mol%であった。次いで、中間体C3から、合成例1の中間体A4からスクアリリウム化合物Aの合成手順に従い(ただし中間体A4を中間体C3に変更する)、スクアリリウム化合物Cを合成した。スクアリリウム化合物Cのスクアリン酸に対する収率は63.5mol%であった。
(1−4)合成例4:スクアリリウム化合物Dの合成
合成例3において、n−デカノイルクロリドをパルミトイルクロリドに変更したこと以外は、合成例3と同様の手順により表1に示すスクアリリウム化合物Dを得た。スクアリン酸に対する収率は77.4mol%であった。
(1−5)合成例5:比較スクアリリウム化合物Aの合成
合成例2において、2−ヨードプロパンをヨードメタンに変更したこと以外は、合成例2と同様の手順により表1に示す比較スクアリリウム化合物Aを得た。スクアリン酸に対する収率は51.8mol%であった。
(1−6)合成例6:比較スクアリリウム化合物Bの合成
合成例4において、イソブチルアルデヒドをプロピオンアルデヒドに変更したこと以外は、合成例4と同様の手順により表1に示す比較スクアリリウム化合物Bを得た。スクアリン酸に対する収率は69.9mol%であった。
(1−7)合成例7:比較スクアリリウム化合物Cの合成
合成例6において、パルミトイルクロリドをバレリルクロリド(n−ペンタノイルクロリド)に変更したこと以外は、合成例6と同様の手順により表1に示す比較スクアリリウム化合物Cを得た。スクアリン酸に対する収率は77.3mol%であった。
(1−8)合成例8:比較スクアリリウム化合物Dの合成
合成例4において、パルミトイルクロリドをバレリルクロリドに変更したこと以外は、合成例4と同様の手順により表1に示す比較スクアリリウム化合物Dを得た。スクアリン酸に対する収率は48.2mol%であった。
(1−9)合成例9:比較スクアリリウム化合物Eの合成
米国特許第5,543,086号明細書のFormula 17に開示されるスクアリリウム化合物を参考に、表1に示す比較スクアリリウム化合物Eを合成した。
(2)樹脂組成物の調製
(2−1)硬化触媒の調製
国際公開第1997/031924号に記載された合成法に従って、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%の安藤パラケミー社製アイソパー(登録商標)E溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下して白色結晶を析出させ、これを室温まで冷却した後、吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥し、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析とGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。得られたTPB・水錯体2.0gとトルエンを1.1gとを配合し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.6g添加し、室温で60分間混合し、TPB触媒の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒とした。
(2−2)シラン加水分解物溶液の調製
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、ofs−6040)24.7質量部と2−プロパノール32.1質量部と蒸留水3.4質量部とを配合し、25℃で均一に混合した。そこに、ギ酸1.54質量部を加えて90分間混合し、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解反応を進行させて、シラン加水分解物溶液を得た。
(2−3)樹脂組成物1の調製
エポキシ樹脂として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル社製、EHPE3150)を100質量部、溶媒としてトルエン150質量部とo−キシレン75質量部、上記の合成例2で得られたスクアリリウム化合物Bを8.9質量部、表面調整剤としてビックケミー社製BYK−306(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.3質量部配合し、40℃で均一に混合した。得られた混合物を25℃に降温後、上記で得られたカチオン硬化触媒2.5質量部とシラン加水分解物溶液10質量部を加えて均一に混合し、これを孔径0.45μmのフィルター(ジーエルサイエンス社製、クロマトディスク非水系13N)でろ過して異物を取り除き、樹脂組成物1を得た。
(2−4)樹脂組成物2の調製
上記の樹脂組成物1の調製例において、スクアリリウム化合物Bの代わりに合成例6で得られた比較スクアリリウム化合物Bを用いたこと以外は、同様の手順によりエポキシ樹脂組成物2を得た。
(3)光学フィルターの作製
上記で得られた各樹脂組成物を、ガラス基板(Schott社製、D263Teco)上に2cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−D7)を用い、0.2秒間かけて1600回転にし、20秒間その回転数で保持し、その後0.2秒間かけて0回転になるようにして、樹脂組成物をガラス基板上に成膜した。樹脂組成物を成膜したガラス基板を、精密恒温器(ヤマト科学社製、DH611)を用いて100℃で3分間初期乾燥した。その後、イナートオーブン(ヤマト科学社製、DN610I)を用いて50℃で30分間窒素置換した後、15分程度で190℃に昇温し、窒素雰囲気下で190℃で30分間乾燥することにより、ガラス基板上に樹脂層(吸収層)を形成した。ガラス基板上に形成した樹脂層の厚みは2μmであった。なお、樹脂層の厚みは、樹脂層を形成したガラス基板の厚みとガラス基板単独の厚みをそれぞれマイクロメーターにより測定し、両者の差から求めた。
(4)評価
(4−1)溶解性
表1に示した各スクアリリウム化合物0.1gにトルエン9.9gを加え40℃で1時間加熱撹拌した後、室温で1時間撹拌して、得られた溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルター(ジーエルサイエンス社製、クロマトディスク13N)でろ過した。ろ液を1mLホールピペットで50mLメスフラスコに量り取りトルエンでメスアップしよく混ぜた。得られた希釈液をさらに1mLホールピペットで50mLメスフラスコに量り取りトルエンでメスアップしよく混ぜた。このようにして得られた溶液(2500倍希釈液)について分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)を用いて、吸収スペクトルを測定ピッチ1nmで測定し、波長300nm〜1100nmの範囲における最大吸光度を求め、表2にまとめた。各スクアリリウム化合物のトルエン中の最大吸光波長はいずれも約700nmであり、また、可視光領域の波長450nm〜600nmの範囲では実質的に吸収ピークは示さなかった。
(4−2)光学フィルターの透過スペクトル
ガラス基板上に樹脂層を形成した各光学フィルターについて、分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)を用いて透過スペクトルを測定ピッチ1nmで測定し、波長300nm〜1100nmにおける光の透過率を求めた。スクアリリウム化合物Bを含有する樹脂組成物1から形成した光学フィルターの透過スペクトルを図1に示し、比較スクアリリウム化合物Bを含有する樹脂組成物2から形成した光学フィルターの透過スペクトルを図2に示す。
比較スクアリリウム化合物Bを含有する樹脂組成物2から形成した光学フィルターは、波長700nm付近に吸収極大を有する吸収ピークを示すとともに、波長560nm付近に吸収極大を有する吸収ピークを示した。比較スクアリリウム化合物Bは、樹脂硬化物中では、溶液中で示したような比較スクアリリウム化合物B本来の分光特性を示さなかった。一方、スクアリリウム化合物Bを含有する樹脂組成物1から形成した光学フィルターは、波長700nm付近に吸収極大を有する吸収ピークを示し、可視光領域の波長450nm〜600nmの範囲では実質的に吸収ピークは示さなかった。比較スクアリリウム化合物B以外のスクアリリウム化合物は、樹脂硬化物中で、溶液中で示したようなスクアリリウム化合物本来の分光特性を示した。
(4−3)まとめ
スクアリリウム化合物A〜Dは、上記式(1)のR1とR6が炭素数3以上の分岐状アルキル基であり、R2とR7が炭素数5以上の直鎖状アルキル基であったため、トルエンへの溶解度が高く、溶け残り量が少なくなり、トルエン溶液中の最大吸光度が高いものとなった。樹脂硬化物中では、スクアリリウム化合物本来の吸収スペクトルに従って、可視光領域の光を高い透過率で透過させつつ、赤色〜近赤外領域の光を選択的に吸収するものとなった。一方、比較スクアリリウム化合物A,C〜Eは、上記式(1)のR1とR6が直鎖状アルキル基、またはR2とR7が炭素数4以下のアルキル基であったため、トルエンへの溶解度が低く、トルエン溶液中の最大吸光度が低いものとなった。比較スクアリリウム化合物Bは、トルエンへの溶解度は高かったが、樹脂硬化物中で、溶液中では見られなかった波長560nm付近に極大吸収を有する吸収ピークを新たに示すものとなり、可視光透過率に劣るものとなった。