〔1.オキソカーボン系化合物〕
本発明のオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム骨格を有する下記式(1)またはクロコニウム骨格を有する下記式(2)で表されるものである。
式(1)および式(2)中、R1〜R4はそれぞれ独立して、下記式(3)で示される構造単位を表す。
式(3)中、環Aは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、または、これらの環構造を含む置換基を有していてもよい縮合環を表し、R5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表すか、R5とR6は互いに連結して環を形成しており、*は式(1)中の4員環または式(2)中の5員環との結合部位を表し、環AおよびR7に含まれるπ電子の合計数は12個以上である。
式(1)および式(2)において、R1とR2は同一または異なっていてもよく、R3とR4は同一または異なっていてもよい。R1とR2が異なる場合またはR3とR4が異なる場合は、オキソカーボン系化合物の分子どうしの会合や凝集が抑制され、溶剤や樹脂に対する溶解性の向上が期待できる。一方、R1とR2が同一の場合またはR3とR4が同一の場合は、オキソカーボン系化合物の熱や光に対する耐久性の向上が期待できる。
スクアリリウム骨格を有する化合物(以下、「スクアリリウム化合物」と称する)とクロコニウム骨格を有する化合物(以下、「クロコニウム化合物」と称する)には、それぞれ、共鳴関係にある化合物が存在している場合がある。式(1)のスクアリリウム化合物と共鳴関係にある化合物としては、例えば、下記式(1a),(1b)で表される化合物が挙げられる。式(2)のクロコニウム化合物と共鳴関係にある化合物としては、例えば、下記式(2a)〜(2c)で表される化合物が挙げられる。本発明のオキソカーボン系化合物はこれら全ての共鳴関係にある化合物を含むものとし、具体的には、式(1)のスクアリリウム化合物には、下記式(1a),(1b)で表されるような共鳴関係にある化合物が含まれ、式(2)のクロコニウム化合物には、下記式(2a)〜(2c)で表されるような共鳴関係にある化合物も含まれる。
スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に結合する式(3)で示される構造単位において、*は式(1)で示されるスクアリリウム骨格の4員環または式(2)で示されるクロコニウム骨格の5員環との結合部位を表している。
本発明のオキソカーボン系化合物は、環Aと置換基R7に含まれるπ電子の合計数が12個以上となっている。このようにπ電子系が形成されることにより、オキソカーボン系化合物は、より長波長側の近赤外線を効果的に吸収することができ、例えば850nmを超える波長域の光線を効果的に吸収することができる。一方、オキソカーボン系化合物は、可視光領域の光線透過率が高いため、可視光下での不可視性に優れるものとなる。なお、本発明のオキソカーボン系化合物が850nmを超える波長域の光線を吸収する場合、850nmを超える全波長域の光線を吸収する必要はなく、例えば850nm〜1300nmの波長範囲の一部の波長域の光線を一定程度吸収できるものであればよい。
式(3)中、環Aは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。オキソカーボン系化合物は、環Aを有することにより、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格からピロール環を介して環Aにかけてπ電子系が広い範囲に広がって形成され、吸収波長の長波長化を実現できる。
環Aの芳香族炭化水素環は、炭素原子と水素原子から構成され、芳香族性を有する環構造であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、フルオランテン環、ベンゾフルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Aの芳香族複素環は、N(窒素原子)、O(酸素原子)およびS(硫黄原子)から選ばれる1種以上の原子を環構造に含み、芳香族性を有するものであれば特に限定されず、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。芳香族複素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。これらの環構造を含む縮合環は、芳香族炭化水素環と芳香族複素環とが縮環した構造を有するものであり、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。これらの環構造は、任意の位置で式(3)中のピロール環と縮環していればよい。
環Aに含まれるπ電子の数、すなわち上記の芳香族炭化水素環、芳香族複素環またはこれらの環構造を含む縮合環に含まれるπ電子の数は特に限定されず、例えば4個以上であってもよく、6個以上であってもよい。なお、オキソカーボン系化合物のπ電子系を距離的により広い範囲に広げて、吸収波長の長波長化を図りやすくする点から、環Aに含まれるπ電子の数は10個以上が好ましく、12個以上がより好ましく、14個以上がさらに好ましく、16個以上がさらにより好ましい。一方、環Aに含まれるπ電子数の上限は特に限定されないが、オキソカーボン系化合物の製造容易性や溶剤溶解性を考慮すると、環Aに含まれるπ電子数は、26個以下が好ましく、24個以下がより好ましく、22個以下がさらに好ましい。なお、環Aに含まれるπ電子数とは、環Aとピロール環とが共有する炭素−炭素結合のπ電子を含む数である。
環Aが有していてもよい置換基(以下、「置換基X」と称する)としては、有機基または極性官能基が挙げられる。置換基Xの有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミド基、スルホンアミド基、エチレン含有基、イミン含有基、カルボキシ基(カルボン酸基)、ベンゾチアゾール基、ハロゲノアルキル基、シアノ基等が挙げられる。置換基Xの極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の脂環式アルキル基;等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6であり、特に脂環式アルキル基の場合には3以上が好ましい。前記アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有する置換基としては、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
前記アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)としては、例えば、メチルチオオキシ基(メチルチオ基)、エチルチオオキシ基(エチルチオ基)、プロピルチオオキシ基(プロピルチオ基)、ブチルチオオキシ基(ブチルチオ基)、ペンチルチオオキシ基(ペンチルチオ基)、ヘキシルチオオキシ基(ヘキシルチオ基)、ヘプチルチオオキシ基(ヘプチルチオ基)、オクチルチオオキシ基(オクチルチオ基)、ノニルチオオキシ基(ノニルチオ基)、デシルチオオキシ基(デシルチオ基)、ウンデシルチオオキシ基(ウンデシルチオ基)、ドデシルチオオキシ基(ドデシルチオ基)、トリデシルチオオキシ基(トリデシルチオ基)、テトラデシルチオオキシ基(テトラデシルチオ基)、ペンタデシルチオオキシ基(ペンタデシルチオ基)、ヘキサデシルチオオキシ基(ヘキサデシルチオ基)、ヘプタデシルチオオキシ基(ヘプタデシルチオ基)、オクタデシルチオオキシ基(オクタデシルチオ基)、ノナデシルチオオキシ基(ノナデシルチオ基)、イコシルチオオキシ基(イコシルチオ基)等が挙げられる。アルキルチオオキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルキルチオオキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等の無置換アルコキシカルボニル基の他、トリフルオロメチルオキシカルボニル基等の置換アルコキシカルボニル基が挙げられる。ここで置換基としては、ハロゲノ基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜5である。前記アルコキシカルボニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
前記アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基の置換または無置換のアルキルスルホニル基等が挙げられる。アルキルスルホニル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。前記アルキルスルホニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよく環状であってもよい。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ペンタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。前記アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられる。前記アラルキル基は置換基を有していてもよく、アラルキル基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜25が好ましく、より好ましくは7〜15である。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ピレニルオキシ基、インデニルオキシ基、アズレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、クオーターフェニルオキシ基、ペンタレニルオキシ基、ヘプタレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールチオオキシ基(アリールチオ基)としては、例えば、フェニルチオオキシ基、ビフェニルチオオキシ基、ナフチルチオオキシ基、アントリルチオオキシ基、フェナントリルチオオキシ基、ピレニルチオオキシ基、インデニルチオオキシ基、アズレニルチオオキシ基、フルオレニルチオオキシ基、ターフェニルチオオキシ基、クオーターフェニルチオオキシ基、ペンタレニルチオオキシ基、ヘプタレニルチオオキシ基、ビフェニレニルチオオキシ基、インダセニルチオオキシ基、アセナフチレニルチオオキシ基、フェナレニルチオオキシ基等が挙げられる。アリールチオオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等の置換または無置換のフェニルオキシカルボニル基;1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基等の置換または無置換のナフチルオキシカルボニル基;等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基の炭素数は、7〜25が好ましく、より好ましくは7〜15である。
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、2−フルオロフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、3−フルオロフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基等の置換または無置換のフェニルスルホニル基;1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基等の置換または無置換のナフチルスルホニル基;等が挙げられる。アリールスルホニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、2−クロロフェニルスルフィニル基、2−メチルフェニルスルフィニル基、2−メトキシフェニルスルフィニル基、2−ブトキシフェニルスルフィニル基、2−フルオロフェニルスルフィニル基、3−メチルフェニルスルフィニル基、3−クロロフェニルスルフィニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3−シアノフェニルスルフィニル基、3−ニトロフェニルスルフィニル基、4−メチルフェニルスルフィニル基、4−フルオロフェニルスルフィニル基、4−シアノフェニルスルフィニル基、4−メトキシフェニルスルフィニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等の置換または無置換のフェニルスルフィニル基;1−ナフチルスルフィニル基、2−ナフチルスルフィニル基等の置換または無置換のナフチルスルフィニル基;等が挙げられる。アリールスルフィニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
前記ヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは3〜15である。
前記アミド基としては、式:−NHCORa1で表され、Ra1がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基としては上記に例示した置換基が具体的に挙げられ、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
前記スルホンアミド基としては、式:−NHSO2Ra2で表され、Ra2がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基としては上記に例示した置換基が具体的に挙げられ、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
前記エチレン含有基としては、式:−CRa3=CRa4−Ra5で表され、Ra3〜Ra5が水素、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基(特にピリジル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基であるもの等が挙げられ、これらの基は置換基を有していていてもよい。Ra3〜Ra5の脂肪族炭化水素基は飽和または不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは不飽和である。このような脂肪族炭化水素基としては、−(CH=CH)k−(kは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である)で表される繰り返し単位を有する基が好ましく、例えばビニル基が挙げられる。また、1,1−ジシアノエチレン基や1−シアノエチレン基なども好ましい。脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは1〜10のものが挙げられる。Ra3〜Ra5のアリール基とヘテロアリール基とアルコキシカルボニル基としては、上記に例示したアリール基とヘテロアリール基とアルコキシカルボニル基が挙げられる。
前記イミン含有基としては、式:−CH=N−Ra6で表され、Ra6が置換基を有していてもよいアミノ基であるもの等が挙げられる。Ra6のアミノ基は、置換または無置換のいずれであってもよい。置換基を有するアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基等が挙げられる。Ra6のアミノ基に結合するアルキル基やアリール基としては、上記に例示したアルキル基やアリール基が挙げられる。
前記ハロゲノアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、6−フルオロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基等のモノハロゲノアルキル基;ジクロロメチル基等のジハロゲノアルキル基;1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−プロピル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ブチル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基等のトリハロメチル単位を有するアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基等のパーハロゲノアルキル基;等が挙げられる。ハロゲノアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。ハロゲノアルキル基のハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
前記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
置換基Xとしては、上記の中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ハロゲノ基、ニトロ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基、ハロゲノ基、アリール基がより好ましく、これによりオキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めたり、最大吸収波長を所望の波長域へより細かく制御することが容易になる。さらに、オキソカーボン系化合物の製造が容易になるといった効果も得られる。この場合、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2であり、アルコキシカルボニル基の炭素数は2〜6が好ましく、より好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは2〜3であり、アリール基、アリールオキシカルボニル基の炭素数は6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。なお、環Aは置換基Xを有さなくてもよい。環Aが置換基Xを有する場合は、その数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。環Aが複数の置換基Xを有する場合は、複数の置換基Xは同一であっても異なっていてもよい。
式(3)中、R5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表すか、R5とR6は互いに連結して環を形成している。R5〜R7の有機基または極性官能基としては、置換基Xの有機基や極性官能基として例示した基が挙げられる。R5とR6から形成される環構造としては、炭化水素環や複素環が挙げられ、これらの環構造は芳香族性を有していても有していなくてもよい。
R5とR6が互いに連結せず独立した基である場合、R5とR6はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、または、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基であることが好ましい。これらの基の具体例は、置換基Xとして例示した各基が示される。R5とR6がこのような基であれば、オキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めたり、最大吸収波長を所望の波長域へより細かく制御することが容易になる。さらに、オキソカーボン系化合物の製造が容易になるといった効果も得られる。
R5またはR6がアルキル基またはアルコキシカルボニル基である場合、これらの基に含まれるアルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜20が好ましく、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜10であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が好ましく挙げられる。なお、R5またはR6がアルキル基である場合、アルキル基が有していてもよい置換基にはアリール基は含まれない。R5またはR6がアリール基またはアリールオキシカルボニル基である場合、これらの基に含まれるアリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は6〜10が好ましい。アリール基としては、フェニル基やナフチル基等が好ましく挙げられる。R5またはR6がアラルキル基である場合、その炭素数(置換基を除く炭素数)は7〜20が好ましく、より好ましくは7〜15である。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。R5とR6の各基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基等が好ましく挙げられる。
R5とR6が互いに連結して環を形成している場合、上記式(3)の構造単位は下記式(4)のように表される。R5とR6により形成される環構造、すなわち下記式(4)における環Bは任意の環構造であればよく、環Bは置換基を有していてもよい。環Bとしては、置換基および/または縮合環構造を有していてもよい炭化水素環、または、置換基および/または縮合環構造を有していてもよい複素環であることが好ましい。
環Bの炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数3〜10の単環のシクロアルカン;シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(例えば、1,3−シクロヘキサジエン)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、等の炭素数3〜10の単環のシクロアルケン等が挙げられる。環Bの複素環としては、前記に説明したような炭化水素環の環を構成する炭素原子の1個以上が、N(窒素原子)、S(硫黄原子)およびO(酸素原子)から選ばれる少なくとも1種以上の原子に置き換わった環構造等が挙げられ、例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、チオフェン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラン環、テトラヒドロピラン環等が挙げられる。これらの炭化水素環や複素環は他の環と縮環した縮合環構造を有していてもよく、そのような環構造としては、例えば、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。
環Bの炭化水素環や複素環は置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、アルキルアミド基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。ハロゲノアルキル基は、アルキル基の有する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子によって置換されたものであればよく、アルキル基の有する水素原子の全てがハロゲン原子によって置換されたパーハロゲノアルキル基であることが好ましい。ハロゲノアルキル基としては、フルオロアルキル基がより好ましく、パーフルオロアルキル基がさらに好ましい。また、ハロゲノアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。
オキソカーボン系化合物の吸収波長の長波長化の観点からは、環Bはπ電子を含むことが好ましく、そのような環構造としては、例えば、シクロヘキサジエン環、ピロール環、ピラン環、インデン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾピラン環、フルオレン環、キサンテン環等が挙げられる。この場合の上記式(4)で表される構造単位としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−12)で表される構造単位が示される。
式(4−1)〜(4−12)中、R8とR9は、R5とR6により形成される環構造に結合する基または原子を表し、R8とR9はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、およびアリールスルホニル基よりなる群から選ばれる基または原子を表すことが好ましい。ハロゲノアルキル基の好適態様等の詳細は、上記に説明した通りである。R8とR9の各環に結合する数は環構造に応じて変わり、R8またはR9が複数結合する場合は、複数のR8またはR9は同一であっても異なっていてもよい。なかでも、R8とR9はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、およびシアノ基よりなる群から選ばれる基または原子であることが好ましく、水素原子、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、およびシアノ基よりなる群から選ばれる基または原子であることがより好ましい。この場合、R5とR6により形成される環構造に結合するR8とR9の全てが水素原子ではないことが好ましい。すなわち、R5とR6により形成される環構造には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、およびシアノ基よりなる群から選ばれる置換基が結合していることが好ましく、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、およびシアノ基よりなる群から選ばれる置換基が結合していることがより好ましい。これにより、オキソカーボン系化合物の吸収波長の長波長化を図ることができる。
環Bとしては、置換基を有していてもよい縮合環構造を有する炭化水素環、または、置換基を有していてもよい縮合環構造を有する複素環が好ましく、これによりオキソカーボン系化合物の吸収波長のさらなる長波長化を図ることができる。縮合環構造を有する炭化水素環または複素環は、π電子共役系が縮合環に広がって形成されていることが好ましく、このような観点から、環Bに含まれるπ電子数は6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上がさらにより好ましい。環Bに含まれるπ電子数の上限は特に限定されないが、オキソカーボン系化合物の製造容易性や溶剤溶解性を考慮すると、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下がさらに好ましい。なお、環Bに含まれるπ電子数とは、環Bの環構造中のπ電子数を意味し、環Bが縮合環構造を有する場合は縮合環構造に含まれるπ電子も含み、環Bの有しうる置換基に含まれるπ電子は含まれない。
環Bとしては、インデン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾピラン環、フルオレン環、キサンテン環が好ましく挙げられる。上記の式(4−1)〜(4−12)で表される構造単位では、式(4−2)、(4−3)、(4−4)、(4−6)、(4−8)、(4−9)、(4−11)、(4−12)で表される構造単位が好ましい。吸収波長の長波長化の観点からは、環Bとしては、置換基を有していてもよいフルオレン環または置換基を有していてもよいキサンテン環が特に好ましく、上記の式(4−1)〜(4−12)で表される構造単位では、式(4−4)、(4−12)で表される構造単位が特に好ましい。これらの構造単位では、フルオレン環またはキサンテン環に含まれるベンゼン環に結合するR8の全てが水素原子ではなく、かつR9の全てが水素原子ではなく、上記に挙げた置換基(特に、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、またはシアノ基)が各ベンゼン環に少なくとも1つ結合していることが好ましい。
R7は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基と置換基を有していてもよいアリール基の詳細は、上記のR5とR6に関する説明が参照される。R7が置換基を有していてもよいアリール基であれば、オキソカーボン系化合物のπ電子系が広がり、吸収波長を長波長シフトできる点で好ましい。このときのR7に含まれるπ電子数は、オキソカーボン系化合物の製造容易性の点から、6個〜10個が好ましい。具体的には、R7のアリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。なお、R7はπ電子を有しなくてもよく、水素原子やアルキル基(特に炭素数1〜4のアルキル基)であってもよい。この場合、オキソカーボン系化合物の溶剤溶解性を高めやすくなることやオキソカーボン系化合物の製造が容易になる点で好ましい。なお、R7に含まれるπ電子数とは、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格からR7にかけて繋がって形成されるπ電子系のR7に含まれるπ電子数を意味する。
オキソカーボン系化合物は、環AとR7に含まれるπ電子の合計数が12個以上であり、14個以上がより好ましく、16個以上がさらに好ましく、これにより、より長波長側の近赤外線(例えば、850nmを超える波長域の光線)を効果的に吸収できる。なお、本発明のオキソカーボン系化合物では、環Aに含まれるπ電子数がこのような範囲にあることがより好ましく、これによりπ電子系が距離的により広い範囲に広がり、吸収波長の長波長化を図りやすくなる。この場合の環Aとしては、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、フルオランテン環、ベンゾフルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環、アクリジン環、カルバゾール環等が挙げられる。一方、環AとR7に含まれるπ電子の合計数の上限は特に限定されないが、オキソカーボン系化合物の製造容易性や溶剤溶解性を考慮すると、30個以下が好ましく、28個以下がより好ましく、26個以下がさらに好ましい。
上記式(4)で表される構造単位のうち、製造が比較的容易であり、より長波長域の光線を吸収できるオキソカーボン系化合物を与えることができる構造単位の例を下記に示す。下記式(4−21)〜(4−26)に示した構造単位は、上記式(4−4)の構造単位の具体例を表し、下記式(4−27)〜(4−32)に示した構造単位は、上記式(4−12)の構造単位の具体例を表す。下記式(4−21)〜(4−32)において、R7〜R9の説明は上記の説明が参照される。式(4−21)、(4−22)、(4−27)、(4−28)では環Aとしてフルオランテン環が設けられ、式(4−23)、(4−24)、(4−29)、(4−30)では環Aとしてフェナントレン環が設けられ、式(4−25)、(4−26)、(4−31)、(4−32)では環Aとしてアントラセン環が設けられている。これらの環構造のピロール環への結合(縮環)様式は、下記式に示した態様に限定されない。また、環Aとして、これらの環構造以外のものが設けられていてもよい。
上記式(4)で表される構造単位を有するオキソカーボン系化合物としては、より長波長域の光線を吸収できる点から、式(2)で表されるクロコニウム化合物であることが好ましい。また、式(2)において、R3とR4の環Aが同一の環構造を有することが好ましく、R3とR4の環Bが同一の環構造を有することが好ましい。より好ましくは、式(2)において、R3とR4の環Aが同一の構造(環Aの環構造とそれに結合し得る置換基も含めた構造)を有し、また、R3とR4の環Bが同一の構造(環Bの環構造とそれに結合し得る置換基も含めた構造)を有する。
本発明のオキソカーボン系化合物は、850nmを超える波長域における光線の吸収率を高める点から、極大吸収波長が835nm以上であることが好ましく、840nm以上がより好ましく、845nm以上がさらに好ましい。極大吸収波長の上限は特に限定されず、例えば1300nm以下であってもよく、1100nm以下であってもよい。
可視光透過率としては、極大吸収波長における透過率を10%(あるいは10%以下)としたとき、波長400nm〜700nmの平均透過率が83%以上であることが好ましく、84%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
以上説明したように、本発明のオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格から環Aにかけて(あるいはさらに置換基R7にかけて)π電子系が広がって構成され、環Aと置換基R7に含まれるπ電子の合計数が12個以上となっているため、より長波長側の近赤外線を吸収することができ、例えば850nmを超える波長域の光線を効果的に吸収することができる。一方、オキソカーボン系化合物そのものは、可視光領域の光線透過率が高くなるため、可視光下での不可視性に優れるものとなる。例えば、フタロシアニン系化合物の中には850nmを超える波長域に極大吸収波長を有するものもあるが、フタロシアニン系化合物は400nm付近の波長域にsoret帯由来の吸収ピークを有し、緑色を呈する場合があるのに対し、本発明のオキソカーボン系化合物は、近赤外吸収色素として機能しつつ、不可視性に優れるものとなる。
本発明のオキソカーボン系化合物は、下記式(5)で表される縮合複素環化合物を、スクアリン酸またはクロコン酸と反応させることにより製造することができる。下記式(5)中、環AおよびR5〜R7は上記の式(3)における意味と同じであり、環AおよびR7に含まれるπ電子の合計数は12個以上である。環AやR5〜R7の好適態様も上記に説明した通りである。
式(5)で表される縮合複素環化合物は、本発明のオキソカーボン系化合物の原料として好適に用いられ、これにより、本発明のオキソカーボン系化合物を容易に製造することができる。すなわち、式(5)で表される縮合複素環化合物をスクアリン酸またはクロコン酸と反応させ、式(1)または式(2)で表されるオキソカーボン系化合物を得る工程を有する製造方法により、本発明のオキソカーボン系化合物を製造することができる。具体的には、式(1)で表されるスクアリリウム化合物は、式(5)の縮合複素環化合物をスクアリン酸と反応させることにより得ることができ、式(2)で表されるクロコニウム化合物は、式(5)の縮合複素環化合物をクロコン酸と反応させることにより得ることができる。
縮合複素環化合物をスクアリン酸またはクロコン酸と反応させる際の縮合複素環化合物の使用量は、スクアリン酸またはクロコン酸に対し、1倍mol以上が好ましく、より好ましくは1.5倍mol以上であり、さらに好ましくは2倍mol以上であり、また5倍mol以下が好ましく、より好ましくは4倍mol以下であり、さらに好ましくは3倍mol以下である。
スクアリン酸またはクロコン酸と縮合複素環化合物との反応は、溶媒存在下で実施することが好ましい。使用できる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロトルエン、ジクロロベンゼン等の塩素系芳香族類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、反応溶媒としてアルコール類を使用する場合は、3級アルコールを使用することが好ましい。前記溶媒の使用量(合計)は、スクアリン酸またはクロコン酸に対して、1質量倍以上が好ましく、5質量倍以上がより好ましく、10質量倍以上がさらに好ましく、また100質量倍以下が好ましい。
スクアリン酸またはクロコン酸と縮合複素環化合物との反応において、反応温度は適宜設定すればよく、例えば30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、また170℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。当該反応は還流下で行うことが好ましい。反応時間は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、また48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。反応時の雰囲気は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気とすることが好ましい。
スクアリリウム化合物は、縮合複素環化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、次の論文に記載の合成法によってスクアリリウム化合物を合成することができる:Serguei Miltsov et al.,“New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines”, Tetrahedron Letters, Vol.40, Issue 21, p.4067-4068 (1999)。
クロコニウム化合物の合成方法は特に限定されないが、縮合複素環化合物とクロコン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法でクロコニウム化合物を合成することができる。
式(5)の縮合複素環化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成でき、例えば下記の反応式に従って製造することができる。下記反応式において、環AおよびR5〜R7は上記の式(3)における意味と同じである。
例えば、環Aがフルオランテン環、R5とR6がメチル基でR7が水素原子である縮合複素環化合物は、フルオランテニルヒドラジン塩酸塩と3−メチル−2−ブタノンとを反応させることにより合成できる。このように、芳香族炭化水素環、芳香族複素環またはこれらの環構造を含む縮合環のヒドラジン塩酸塩(上記式(6)の化合物)と、ジメチルケトン誘導体(上記式(7)の化合物)とを反応させることにより、式(5)の縮合複素環化合物を合成することができる。縮合複素環化合物の合成は、次の論文も参考にできる:Sajjadifar et al.,“New 3H-Indole Synthesis by Fischer's Method. Part I”, Molecules, Vol.15, p.2491-2498 (2010)。
なお、式(5)の縮合複素環化合物を、スクアリン酸またはクロコン酸と反応させることにより得られたオキソカーボン系化合物は、必要に応じて、ろ過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。得られたオキソカーボン系化合物の化学構造は、質量分析法、単結晶X線構造解析法、フーリエ変換赤外分光法、核磁気共鳴分光法などの公知の分析方法により解析することができる。
〔2.樹脂組成物〕
本発明のオキソカーボン系化合物は、樹脂成分と混合して、樹脂組成物とすることができる。樹脂組成物は、本発明のオキソカーボン系化合物と樹脂成分を少なくとも含むものである。本発明の樹脂組成物は、近赤外領域の光線、例えば850nmを超える波長域の光線を効果的に吸収することができるため、フィルム等の樹脂成形体とすることで、暗視用撮像素子等の光学フィルタに好適に適用することができる。このように形成された光学フィルタは、近赤外領域の短波長側における光学特性の入射角度依存性が低減され、視野角度が改善されたものとなり、また可視光領域の透過率が高く、可視光下で使用する撮像素子に対しても好適に適用することができる。樹脂成形体はまた、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、可視光および近赤外光を利用した太陽電池用材料、プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の特定波長吸収フィルタ等への適用も可能である。
本発明の樹脂組成物は、レーザー溶着用途にも好適に用いることができる。レーザー溶着法による樹脂の接合は、レーザー光を透過する光透過性樹脂とレーザー光を吸収する光吸収性樹脂を重ねて、光透過性樹脂側からレーザー光を照射することにより行うことができる。照射されたレーザー光は光透過性樹脂を透過して、光吸収性樹脂の表面でエネルギーが吸収されて発熱し、これにより光吸収性樹脂が溶け、さらに熱伝導により光透過性樹脂も溶けて、両樹脂を溶着することができる。光吸収性樹脂としては、カーボンブラックや黒色染料等を含有した着色樹脂を用いる場合があるが、レーザー溶着には800nm〜1300nmの波長を有するレーザー光(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー)が用いられるため、光吸収性樹脂を本発明の樹脂組成物から形成することにより、透明樹脂どうしのレーザー溶着が実現できる。つまり、本発明のオキソカーボン系化合物は、レーザー光の吸収材すなわち発熱源として機能させることができる。レーザー溶着法では、本発明の樹脂組成物を、2つの光透過性樹脂の間に挟むレーザー光の吸収体として用いることもできる。
樹脂組成物に含まれるオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム化合物であってもよいし、クロコニウム化合物であってもよいし、両者が含まれていてもよい。樹脂組成物に含まれるオキソカーボン系化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
樹脂組成物には、上記式(1)で表されるスクアリリウム化合物が2種以上含まれていてもよく、あるいは、上記式(2)で表されるクロコニウム化合物が2種以上含まれていてもよい。このように形成された樹脂組成物は、近赤外領域の光線を効果的に吸収できるとともに、オキソカーボン系化合物の樹脂に対する溶解性が向上し、オキソカーボン系化合物を高濃度に含む樹脂組成物を形成することが容易になる。この場合、オキソカーボン系化合物の樹脂に対する溶解性を高める点から、樹脂組成物は、上記式(1)においてR1とR2が互いに異なる構造を有するスクアリリウム化合物を少なくとも含むことが好ましく、あるいは、上記式(2)においてR3とR4が互いに異なる構造を有するクロコニウム化合物を少なくとも含むことが好ましい。樹脂組成物はオキソカーボン系化合物を3種以上含むことがより好ましく、そのような樹脂組成物としては、例えば、上記式(1)においてR1とR2がともにRxであるスクアリリウム化合物と、R1とR2がともにRyであるスクアリリウム化合物と、R1がRxでありR2がRyであるスクアリリウム化合物を含む樹脂組成物や、上記式(2)においてR3とR4がともにRxであるクロコニウム化合物と、R3とR4がともにRyであるクロコニウム化合物と、R3がRxでありR4がRyであるクロコニウム化合物を含む樹脂組成物が示される。このような樹脂組成物は、オキソカーボン系化合物を複数種含みながら、製造が容易な点で好ましい。なお、ここで説明したRxとRyは、上記式(3)で表される任意の構造単位を表し、RxとRyは同一ではない。
本発明のオキソカーボン系化合物は一種の色素と見なすことができるが、本発明の樹脂組成物は、用途に応じた所望の性能が確保される限り、本発明のオキソカーボン系化合物とともに他の色素を含有していてもよい。樹脂組成物に含まれていてもよい色素としては、例えば、本発明のオキソカーボン系化合物以外のスクアリリウム系色素やクロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。これら他の色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が他の色素をも含有する場合、他の色素の含有量は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素の合計100質量%に対し、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、他の色素を実質的に含まないことが特に好ましい。
樹脂組成物中の本発明のオキソカーボン系化合物の含有量は、所望の性能を発現させる点から、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物の成形性や成膜性等を高める点から、樹脂組成物中の本発明のオキソカーボン系化合物の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。樹脂組成物が他の色素も含有する場合は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素との合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。なお、樹脂組成物の固形分の質量は、樹脂組成物から液媒体を除いた質量を意味する。
樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、公知の樹脂を用いることができる。樹脂成分としては、透明性が高く、本発明のオキソカーボン系化合物を溶解または分散できるものが好ましい。他の色素を併用する場合は、樹脂成分は、他の色素も溶解または分散できるものが好ましい。このような樹脂成分を選択することにより、透過させたい波長域における高透過率と、遮断したい波長域における高吸収性を両立させることができる。
樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。本発明においては、いずれの樹脂も樹脂成分に含まれる。なお後者の場合は、重合反応で得られた反応液中に存在する、未反応物、反応性末端官能基、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等により、オキソカーボン系化合物の構造の一部または全部が分解してしまうこともあり得る。従って、そのような懸念がある場合には、重合が完結した樹脂にオキソカーボン系化合物を配合して、樹脂組成物を形成することが望ましい。
樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、シクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィンコポリマー、ノルボルネン系樹脂等を含む)、石油樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン等)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂等)、ポリスルホン樹脂、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース等)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、フッ素化ポリアリールエーテルケトン、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリアミド酸、フッ素化ポリエーテルニトリル等)、ジアリルフタレート樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。
樹脂成分は透明性が高いことが好ましく、これにより樹脂組成物を光学用途やレーザー溶着用途に好適に適用しやすくなる。樹脂成分は、例えば、厚さ0.1mmでの全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。樹脂成分の前記全光線透過率の上限は特に限定されず、全光線透過率は100%以下であればよいが、例えば95%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K 7105に基づき測定する。
樹脂成分はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより、樹脂組成物やこれから得られる各種成形体の耐熱性を高めることができる。樹脂成分のガラス転移温度は、例えば、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。樹脂成分のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、樹脂組成物の成形加工性を確保する点から、例えば380℃以下が好ましい。
樹脂組成物は、射出成形や押出成形等の成形に用いることのできる熱可塑性樹脂組成物であってもよく、スピンコート法、溶媒キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等により塗工できるよう塗料化された樹脂組成物であってもよい。
樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、当該樹脂組成物を、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形等をすることにより成形品を得ることができる。この方法では、樹脂成分として熱可塑性樹脂を用い、当該熱可塑性樹脂にオキソカーボン系化合物を配合し、加熱成形することにより成形品が得られる。例えば、ベース樹脂の粉体またはペレットにオキソカーボン系化合物を添加し、150℃〜350℃程度に加熱し、溶解させた後、成形するとよい。成形品の形状は特に限定されるものではないが、板状、シート状、粒状、粉状、塊状、粒子凝集体状、球状、楕円球状、立方体状、柱状、棒状、錐形状、筒状、針状、繊維状、中空糸状、多孔質状等が挙げられる。成形品は任意の異形品であってもよい。また樹脂を混練する際に、紫外線吸収剤、可塑剤等、通常の樹脂成形に用いる添加剤を加えてもよい。
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、オキソカーボン系化合物を含む液状またはペースト状の樹脂組成物を、透明基板(例えば、樹脂板、フィルム、ガラス板等)上に塗工することで、厚さ200μm以下のフィルムや、厚さ200μm超の板状物等の面状成形体を形成することができる。塗料化された樹脂組成物は、オキソカーボン系化合物と樹脂成分と液媒体を含んで構成され、例えば、オキソカーボン系化合物を、樹脂成分を含む溶媒に溶解させたり、オキソカーボン系化合物を、樹脂成分を含む分散媒に分散させることにより、塗料化された樹脂組成物を得ることができる。
樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、樹脂成分としては、有機溶剤に可溶な溶剤可溶性樹脂を用いることが好ましい。なお溶剤可溶性樹脂とは、有機溶剤に可溶な樹脂を意味し、有機溶剤100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂が好ましい。樹脂成分が溶剤可溶性樹脂であれば、例えばスピンコート法や溶媒キャスト法等により成膜することで、厚みの薄いフィルムを容易に作製することができる。溶剤可溶性樹脂は、架橋反応(硬化反応)することが可能な反応性基(例えば、エポキシ基やオキセタン環、エチレンスルフィド基等の開環重合性基や、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基および/または付加硬化性基)を有するものであってもよい。溶剤可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
樹脂としては、透明性や耐熱性に優れる観点から、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリイミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008−181121号公報に記載されたものを用いることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。なお、カルボニル基含有環構造には、イミド基などのカルボニル基誘導体基を含有する構造も含む。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004−168882号公報、特開2008−179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007−31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(−SO2−)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P−1700等を用いることができる。
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物(プレポリマー)を硬化剤や硬化触媒の存在下で架橋化することで硬化させることができる樹脂である。エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オグソール(登録商標)PG−100)、三菱化学社製のビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)828EL)や水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(JER(登録商標)YX8000)、ダイセル社製の脂環式液状エポキシ化合物(セロキサイド(登録商標)2021P)等を用いることができる。
ポリアリレート樹脂は、2価フェノール化合物と2塩基酸(例えば、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸)とを重縮合して得られる重合体であり、主鎖の繰り返し単位に芳香族環とエステル結合とを含む繰り返し単位を有する。ポリアリレート樹脂は、例えば、クラレ社製のベクトラン(登録商標)、ユニチカ社製のUポリマー(登録商標)やユニファイナー(登録商標)等を用いることができる。
ポリカーボネート樹脂は、主鎖の繰り返し単位にカーボネート基(−O−(C=O)−O−)を含む重合体である。ポリカーボネート樹脂としては、帝人社製のパンライト(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロン(登録商標)、ノバレックス(登録商標)、ザンター(登録商標)、住化スタイロンポリカーボネート社製のSDポリカ(登録商標)等を用いることができる。
樹脂組成物は、有機溶剤などの液媒体を含有するものであってもよく、例えば、樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、液媒体を含むことにより樹脂組成物の塗工が容易になる。液媒体としては、オキソカーボン系化合物の溶媒(溶剤)として機能するものであっても、分散媒として機能するものであってもよい。液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体類(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジプチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。これらの液媒体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液媒体の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。液媒体の含有量をこのような範囲内に調整することにより、オキソカーボン系化合物濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
なお、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等は、オキソカーボン系化合物を分解するおそれがあるため、使用量は少ない方が好ましい。そのためアミド類の含有量は、樹脂組成物100質量%中、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらにより好ましく、0質量%が特に好ましい(すなわち、アミド類を含まない)。
樹脂組成物は、例えば、350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物(紫外線吸収剤)を含んでいてもよい。これらの化合物の存在により、350nm〜400nm波長域の光に起因する樹脂組成物の劣化を抑制することができる。350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を併用する場合、350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ、三共化成社製のジスライザー(登録商標)シリーズ、アデカ社製のアデカスタブ(登録商標)シリーズ、住友化学社製のスミソーブ(登録商標)シリーズ、共同薬品社製のバイオソーブ(登録商標)シリーズ、シプロ化成社製のシーソーブ(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
樹脂組成物は表面調整剤を含んでいてもよく、これにより、樹脂組成物を硬化して樹脂層を形成した際に、樹脂層にストライエーションや凹み等の外観上の欠陥を生じることを抑制することができる。表面調整剤の種類は特に限定されず、シロキサン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系レベリング剤などを用いることができる。表面調整剤としては、例えば、ビックケミー社製のBYK(登録商標)シリーズや信越化学工業社製のKFシリーズ等を用いることができる。
樹脂組成物は分散剤を含んでいてもよく、これにより、樹脂組成物中でのオキソカーボン系化合物の分散性を安定化し、再凝集を抑制することができる。分散剤の種類は特に限定されず、エフカアディティブズ社製のEFKAシリーズ、ビックケミー社製のBYK(登録商標)シリーズ、日本ルーブリゾール社製のソルスパース(登録商標)シリーズ、楠本化成社製のディスパロン(登録商標)シリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパー(登録商標)シリーズ、信越化学工業社製のKPシリーズ、共栄社化学社製のポリフローシリーズ、ディーアイシー社製のメガファック(登録商標)シリーズ、サンノプコ社製のディスパーエイドシリーズ等を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
〔3.光学フィルタ(樹脂組成物の適用例)〕
本発明の樹脂組成物は、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途で用いられるフィルタ形成用の樹脂組成物として好ましく使用できる。光学用途のフィルタとしては、特に暗視用撮像素子の光学フィルタに好適に適用することができ、これにより、近赤外領域における光学特性の入射角度依存性が低減され、視野角度が改善された暗視用撮像素子に適した光学フィルタとすることができる。フィルタは、単一または複数の樹脂層から形成されてもよく、支持体と一体化されて形成されてもよい。
支持体と一体化されたフィルタは、例えば、樹脂組成物を、支持体表面(または、支持体と樹脂層との間にバインダー層等の他の層を有する場合は、当該他の層の表面)にスピンコート法や溶媒キャスト法により塗布し、乾燥または硬化することにより形成することができる。また、支持体に対して、樹脂組成物から形成された面状成形体を熱圧着することによりフィルタを形成してもよい。
樹脂組成物から形成された樹脂層は、支持体の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。樹脂層の厚さは特に限定されないが、所望の近赤外線カット性能を確保する点から、例えば0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましく、1mm以下が特に好ましい。
支持体としては、樹脂板、樹脂フィルム、ガラス板等の透明基板を用いることが好ましい。支持体に用いられる樹脂板または樹脂フィルムは、例えば、上記に説明した樹脂成分から形成されたものが好ましく用いられる。支持体としてガラス板を用いる場合は、支持体と樹脂層の間に、例えばシランカップリング剤から形成されたバインダー層を設けることが好ましい。これにより樹脂層とガラス支持体との密着性を高めることができる。なお、樹脂層を形成する樹脂組成物に、密着性向上剤としてシランカップリング剤を含めるようにしても、樹脂層とガラス支持体との密着性を高めることができる。
樹脂組成物から形成された樹脂層には、第2の樹脂層として、当該樹脂層と同一または異なる樹脂から構成された保護層を積層させてもよい。保護層を設けることにより、樹脂層に含まれるオキソカーボン系化合物の耐久性(耐分解性)を高めることができる。保護層は、樹脂層の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。樹脂層が支持体上に設けられる場合は、保護層は、樹脂層の支持体とは反対側の面に設けられることが好ましい。
保護層は、樹脂層に含まれるオキソカーボン系化合物の分解を抑える点から、酸素透過率が低く形成されていることが好ましく、例えば、JIS K 7126−2法に従って測定した23℃、ドライ条件での酸素透過率が100cc/m2/day以下であることが好ましく、70cc/m2/day以下がより好ましく、50cc/m2/day以下がさらに好ましい。酸素透過率の下限は特に限定されず、0cc/m2/dayであってもよい。なお、酸素透過率の測定は、試験片を挟んだ一方側のチャンバに酸素ガスを導入し、他方側のチャンバに窒素ガスを導入して行う。また、オキソカーボン系化合物の分解を抑える点から、樹脂層および/または保護層に紫外線吸収剤が含まれていてもよい。
本発明の樹脂組成物から光学フィルタを形成する場合、光学フィルタは、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性や防眩性を有する層(反射防止膜)、傷付き防止性能を有する層、その他の機能を有する透明基材等を有していてもよい。
光学フィルタは、樹脂層上に近赤外線反射膜(例えば、700nm〜800nmの波長域の反射膜)を有していてもよい。近赤外線反射膜は、樹脂層よりも入光側に設けられていることが好ましい。近赤外線反射膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化スズを少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜等を用いることができる。光学フィルタに近赤外線反射膜が設けられていれば、光学フィルタの透過光から近赤外線をよりカットすることができる。なお、近赤外線反射膜は、紫外線反射機能を兼ね備えるものであってもよい。
近赤外線反射膜や反射防止膜(可視光反射防止膜)は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜から構成することができる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化スズ、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素をドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
光学フィルタは、撮像素子の構成部材の一つとして用いることができる。撮像素子は、固体撮像素子やイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号等に変換して出力する電子部品である。撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサ)を有し、レンズを有していてもよい。撮像素子は、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物から形成された光学フィルタを備えた撮像素子は、暗視用として監視カメラ等に好適に適用することができる。撮像素子は、上記の光学フィルタを1または2以上含み、必要に応じて、さらに他のフィルタ(例えば、可視光線カットフィルタ、赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタ等)を有していてもよい。
本発明の樹脂組成物は、上記に説明した光学用途のフィルタ以外に、任意の基材に塗工して用いることができる。このときの基材としては、樹脂組成物を塗工することで樹脂層を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、鉄鋼、非鉄金属(軽金属、貴金属、レアメタル、レアアース、銅、亜鉛、鉛、スズ等)、木、ガラス、コンクリート、石、セラミックス、樹脂、ゴム、皮革、紙、布、毛髪、皮膚等が挙げられる。基材の形状も特に限定されず、粒状、粉状、塊状、これらの凝集体状、板状、シート状、球状、楕円球状、立方体状、柱状、棒状、錐形状、筒状、針状、繊維状、中空糸状、多孔質状等が挙げられる。
〔4.インク組成物〕
本発明のオキソカーボン系化合物は、インク組成物に適用することができる。インク組成物は、本発明のオキソカーボン系化合物と液媒体を少なくとも含むものである。本発明のインク組成物は、例えば850nmを超える波長域の光線を効果的に吸収できるとともに、可視光透過率が高く、不可視性に優れるものとなるため、セキュリティインクとして好適に用いることができる。
インク組成物に含まれるオキソカーボン系化合物は、スクアリリウム化合物であってもよいし、クロコニウム化合物であってもよいし、両者が含まれていてもよい。インク組成物に含まれるオキソカーボン系化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
インク組成物には、上記式(1)で表されるスクアリリウム化合物が2種以上含まれていてもよく、あるいは、上記式(2)で表されるクロコニウム化合物が2種以上含まれていてもよい。このように形成されたインク組成物は、近赤外領域の光線を効果的に吸収できるとともに、オキソカーボン系化合物の液媒体に対する溶解性が向上し、オキソカーボン系化合物を高濃度に含むインク組成物を形成することが容易になる。この場合、オキソカーボン系化合物の液媒体に対する溶解性を高める点から、インク組成物は、上記式(1)においてR1とR2が互いに異なる構造を有するスクアリリウム化合物を少なくとも含むことが好ましく、あるいは、上記式(2)においてR3とR4が互いに異なる構造を有するクロコニウム化合物を少なくとも含むことが好ましい。インク組成物はオキソカーボン系化合物を3種以上含むことがより好ましく、そのようなインク組成物としては、例えば、上記式(1)においてR1とR2ともにRxであるスクアリリウム化合物と、R1とR2がともにRyであるスクアリリウム化合物と、R1がRxでありR2がRyであるスクアリリウム化合物を含むインク組成物や、上記式(2)においてR3とR4がともにRxであるクロコニウム化合物と、R3とR4がともにRyであるクロコニウム化合物と、R3がRxでありR4がRyであるクロコニウム化合物を含むインク組成物が示される。このようなインク組成物は、オキソカーボン系化合物を複数種含みながら、製造が容易な点で好ましい。なお、ここで説明したRxとRyは、上記式(3)で表される任意の構造単位を表し、RxとRyは同一ではない。
インク組成物は、用途に応じた所望の性能が確保される限り、本発明のオキソカーボン系化合物とともに他の色素を含有していてもよい。他の色素の詳細は、樹脂組成物に含まれてもよい他の色素の説明が参照される。なお、セキュリティインクとして使用する場合などは、他の色素の含有量は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素の合計100質量%に対し、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
インク組成物中の本発明のオキソカーボン系化合物の含有量は、インク組成物100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、また40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。インク組成物が他の色素も含有する場合は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素との合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。このような範囲に調整することにより、十分な濃度の印字面を得やすくなり、またオキソカーボン系化合物や他の色素のインク組成物中での安定性を確保しやすくなる。
液媒体は、オキソカーボン系化合物の溶媒(溶剤)として機能するものであっても、分散媒として機能するものであってもよい。液媒体としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコール誘導体類(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピロオン酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;等が挙げられる。これらの液媒体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液媒体の含有量は、インク組成物100質量%中、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、また95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。液媒体の含有量をこのような範囲内に調整することにより、オキソカーボン系化合物の溶解性や分散性を高めることができるとともに、オキソカーボン系化合物濃度の高いインク組成物を得ることが容易になる。
インク組成物は、液媒体に加えて樹脂成分を有していてもよい。樹脂成分を配合することにより、インク組成物の粘度や密着性等を高めることができる。樹脂成分は、インク組成物に使用される公知の樹脂を使用することができ、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、シクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィンコポリマー、ノルボルネン系樹脂等を含む)、石油樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン等)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂等)、ポリスルホン樹脂、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース等)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、フッ素化ポリアリールエーテルケトン、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリアミド酸、フッ素化ポリエーテルニトリル等)、ジアリルフタレート樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。樹脂成分を配合する場合の配合量は、インク組成物100質量%中、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
インク組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、表面調整剤、分散剤、電導度調整剤、重合禁止剤、レベリング剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の詳細は、樹脂組成物における添加剤の説明が参照される。
インク組成物は、公知の方法によって製造できる。例えば、本発明のオキソカーボン系化合物を含む色素、液媒体、および、必要に応じて重合性モノマーや重合開始剤、各種添加剤を、サンドミル等の混合機を用いて混合することによって調製できる。必要であれば、このようにして得られた混合液を、孔径3μm以下や1μm以下のフィルタでろ過してもよい。
本発明のインク組成物は、スクリーン印刷用インク、グラビア印刷用インク、オフセット印刷用インク、フレキソ印刷用インク、インクジェット記録用インク等に使われる通常の溶剤型インク、光(紫外線、可視光、赤外光)硬化型インク、水性インク等の各種インクに適用することができる。
インク組成物は任意の材料に印刷(塗工)して使用して、印刷物を形成することができる。印刷対象物となる基材しては、例えば、紙、布、木、ガラス、コンクリート、石、セラミックス、樹脂、ゴム、皮革、鉄鋼、非鉄金属(軽金属、貴金属、レアメタル、レアアース、銅、亜鉛、鉛、スズ等)、毛髪、皮膚等が挙げられる。印刷対象物となる基材の形状も特に限定されず、シート状、板状、球状、楕円球状、立方体状、柱状、棒状、錐形状、筒状、粒状、粉状、塊状、粒子凝集体状、針状、繊維状、中空糸状、多孔質状等が挙げられる。
〔5.その他〕
本発明のオキソカーボン系化合物は、上記に説明したような樹脂組成物、樹脂成形体、レーザー溶着用の光熱変換材料、インク組成物以外に、加圧や加熱による不具合の生じにくい光を利用した光定着法用材料(フラッシュ定着法用の静電荷現像用トナー)や、近赤外線を吸収またはカットする機能を有する化粧品用材料、光検出と測距(LIDAR)システム用材料等への適用も可能である。
本願は、2016年2月25日に出願された日本国特許出願第2016−034756号と2016年12月27日に出願された日本国特許出願第2016−254310号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年2月25日に出願された日本国特許出願第2016−034756号と2016年12月27日に出願された日本国特許出願第2016−254310号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)色素化合物の合成
(1−1)合成例1(クロコニウム化合物1の合成)
300mLの4口フラスコに塩酸60mLを入れ、フラスコ内の温度を−10℃以下に冷却し、フラスコ内の温度が0℃を超えないようにしながら、3−アミノフルオランテン5.13g(0.024mol)を加えて溶解させた。発熱が収まった後に、フラスコ内の温度を−10℃以下に維持したまま、亜硝酸ナトリウム1.63g(0.024mol)を蒸留水11gに溶かした溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに塩化スズ・2水和物26.63g(0.118mol)を塩酸27mLに溶かした溶液を、フラスコ内の温度が0℃を超えないように1時間かけて滴下し、反応を進行させた。反応終了後、ろ別して得たケーキを真空乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、フルオランテン−3−ヒドラジン塩酸塩を5.5g得た。3−アミノフルオランテンに対する収率は87.2mol%であった。
次いで、50mLの4口フラスコに、上記で得られたフルオランテン−3−ヒドラジン塩酸塩3.01g(0.011mol)、3−メチル−2−ブタノン0.96g(0.011mol)、溶媒として1−ブタノール20gを仕込み、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、60℃にて4時間反応させて、縮合複素環化合物を得た。反応終了後、縮合複素環化合物を含む溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、得られたろ液を200mLの4口フラスコに移した。そこへクロコン酸0.78g(0.006mol)とトルエン20gを加えて、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて6時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をエバポレーターで濃縮し、得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製し、精製された単離物をさらにメタノール中で再結晶して、目的物であるクロコニウム化合物1を0.45g得た。クロコン酸に対する収率は12.2mol%であった。
得られた化合物は、質量分析計(島津製作所社製「LCMS−2020」、M/Z=50−2000、ポジティブ・ネガティブ同時スキャン)により同定した。具体的には、得られた化合物約1mgをガラス棒に塗布して付着させ、直接イオン化ユニット(DART)(島津製作所社製「DART−OS」、ヒーター温度500℃)にてイオン化し、質量分析計に導入することにより、当該化合物のマススペクトルを測定した。
(1−2)合成例2(クロコニウム化合物2の合成)
合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2−メチルアセト酢酸エチルを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物2を得た。クロコン酸に対する収率は5.8mol%であった。
(1−3)合成例3(クロコニウム化合物3の合成)
300mLの4口フラスコに、窒素流通下、3−(トリフルオロメチル)フェニルアセトン4.45g(0.022mol)を入れ、フラスコ内の温度を−10℃以下に冷却し、フラスコ内の温度が0℃を超えないようにしながら、ヘキサメチルジシラザンリチウム(1.3M テトラヒドロフラン溶液)19.06g、N,N’−ジメチルプロピレンウレア8.46g(0.066mol)、塩化マンガン2.77g(0.022mol)、臭化ベンジル4.14g(0.024mol)を順に加えた後、温度を制御せずに一晩撹拌を行った。得られた反応液を希塩酸でクエンチした後、酢酸エチルで抽出し、ブラインにて3回洗浄した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーターで濃縮した後、得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、4−フェニル−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ブタン−2−オンを5.0g得た。3−(トリフルオロメチル)フェニルアセトンに対する収率は78.1mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに4−フェニル−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ブタン−2−オンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物3を得た。クロコン酸に対する収率は10.1mol%であった。
(1−4)合成例4(クロコニウム化合物4の合成)
合成例3において臭化ベンジルの代わりに(2−ヨードエチル)ベンゼンを用いた以外は、合成例3と同様にして、5−フェニル−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン−2−オンを得た。3−(トリフルオロメチル)フェニルアセトンに対する収率は86.6mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに5−フェニル−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン−2−オンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物4を得た。クロコン酸に対する収率は8.3mol%であった。
(1−5)合成例5(クロコニウム化合物5の合成)
合成例3において3−(トリフルオロメチル)フェニルアセトンの代わりに3,4−ジメトキシフェニルアセトンを用い、臭化ベンジルの代わりに(2−ヨードエチル)ベンゼンを用いたこと以外は、合成例3と同様にして、3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−フェニルペンタン−2−オンを得た。3,4−ジメトキシフェニルアセトンに対する収率は95.1mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−フェニルペンタン−2−オンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物5を得た。クロコン酸に対する収率は15.4mol%であった。
(1−6)合成例6(クロコニウム化合物6の合成)
合成例3において臭化ベンジルの代わりに1−ヨードヘプタンを用いたこと以外は、合成例3と同様にして、3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)デカン−2−オンを得た。3−(トリフルオロメチル)フェニルアセトンに対する収率は89.1mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)デカン−2−オンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物6を得た。クロコン酸に対する収率は9.2mol%であった。
(1−7)合成例7(クロコニウム化合物7の合成)
合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに1,1−ジフェニルアセトンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物7を得た。クロコン酸に対する収率は1.8mol%であった。
(1−8)合成例8(クロコニウム化合物8の合成)
水浴中に設置した300mLの4口フラスコに、窒素流通下、発熱に注意しながらカリウムtert−ブトキシド6.73g(0.060mol)、超脱水テトラヒドロフラン35g、フルオレン3.32g(0.020mol)、酢酸エチル3.52g(0.040mol)を順に加えた後、湯浴で加熱しながら還流条件にて3時間撹拌した。得られた反応液を冷却後、希塩酸でクエンチした後、酢酸エチルで抽出し、ブラインにて3回洗浄した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーターで濃縮した後、得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、9−アセチル−9H−フルオレンを4.1g得た。フルオレンに対する収率は97.6%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと、溶媒として1−ブタノールの代わりにtert−アミルアルコールを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物8を得た。クロコン酸に対する収率は30.5mol%であった。
(1−9)合成例9(クロコニウム化合物9の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりに2−ブロモ−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして2−ブロモ−9−アセチル−9H−フルオレンを得た。2−ブロモ−9H−フルオレンに対する収率は97.1mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2−ブロモ−9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物9を得た。クロコン酸に対する収率は10.4mol%であった。
(1−10)合成例10(クロコニウム化合物10の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりに2−ヨード−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして2−ヨード−9−アセチル−9H−フルオレンを得た。2−ヨード−9H−フルオレンに対する収率は95.8mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2−ヨード−9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物10を得た。クロコン酸に対する収率は18.9mol%であった。
(1−11)合成例11(クロコニウム化合物11の合成)
Organic Letters, vol.16, p.4268-4271 (2014) に記載の手法を用いて2−トリフルオロメチル−9H−フルオレンを合成した。次いで、合成例8において、フルオレンの代わりに2−トリフルオロメチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして2−トリフルオロメチル−9−アセチル−9H−フルオレンを得た。2−トリフルオロメチル−9H−フルオレンに対する収率は91.4mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2−トリフルオロメチル−9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物11を得た。クロコン酸に対する収率は10.1mol%であった。
(1−12)合成例12(クロコニウム化合物12の合成)
The Journal of Organic Chemistry, vol.69, p.987-990 (2004) に記載の手法を用いて2−シアノ−9H−フルオレンを合成した。次いで、合成例8において、フルオレンの代わりに2−シアノ−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして2−シアノ−9−アセチル−9H−フルオレンを得た。2−シアノ−9H−フルオレンに対する収率は95.9mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2−シアノ−9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物12を得た。クロコン酸に対する収率は12.4mol%であった。
(1−13)合成例13(クロコニウム化合物13の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりに2,7−ジブロモフルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして9−アセチル−9H−2,7−ジブロモフルオレンを得た。2,7−ジブロモフルオレンに対する収率は95.9mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに9−アセチル−9H−2,7−ジブロモフルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物13を得た。クロコン酸に対する収率は18.5mol%であった。
(1−14)合成例14(クロコニウム化合物14の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりに2−ブロモ−7−ヨード−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして2−ブロモ−7−ヨード−9−アセチル−9H−フルオレンを得た。2−ブロモ−7−ヨード−9H−フルオレンに対する収率は95.9mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2−ブロモ−7−ヨード−9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物14を得た。クロコン酸に対する収率は19.3mol%であった。
(1−15)合成例15(クロコニウム化合物15の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりに2,7−ジ−tert−ブチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして2,7−ジ−tert−ブチル−9−アセチル−9H−フルオレンを得た。2,7−ジ−tert−ブチル−9H−フルオレンに対する収率は97.3mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに2,7−ジ−tert−ブチル−9−アセチル−9H−フルオレンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物15を得た。クロコン酸に対する収率は9.3mol%であった。
(1−16)合成例16(クロコニウム化合物16の合成)
合成例8に記載される方法により9−アセチル−9H−フルオレンを得るとともに、合成例13に記載される方法により9−アセチル−9H−2,7−ジブロモフルオレンを得た。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに9−アセチル−9H−フルオレンおよび9−アセチル−9H−2,7−ジブロモフルオレンをモル比率1:1で用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物16(混合物)を得た。クロコン酸に対する収率は12.1mol%であった。
(1−17)合成例17(クロコニウム化合物17の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりにインデンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして1−(1H−インデン−1−イル)エタン−1−オンを得た。インデンに対する収率は74.8mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに1−(1H−インデン−1−イル)エタン−1−オンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表2に示すクロコニウム化合物17を得た。クロコン酸に対する収率は1.5mol%であった。
(1−18)合成例18(クロコニウム化合物18の合成)
合成例8において、フルオレンの代わりにキサンテンを用いたこと以外は、合成例8と同様にして9−アセチル−9H−キサンテンを得た。キサンテンに対する収率は84.2mol%であった。これ以降の合成手順は、合成例1において3−メチル−2−ブタノンの代わりに9−アセチル−9H−キサンテンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして表1に示すクロコニウム化合物18を得た。クロコン酸に対する収率は11.7mol%であった。
(1−19)合成例19(比較クロコニウム化合物1の合成)
50mLの4口フラスコに、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドール0.73g(0.004mol)、クロコン酸0.25g(0.002mol)、溶媒として1−ブタノール10gおよびトルエン10gを仕込み、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて6時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をエバポレーターで濃縮し、得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製し、精製された単離物をさらにメタノール中で再結晶して、表2に示す比較クロコニウム化合物1を0.30g得た。クロコン酸に対する収率は32.7mol%であった。
(1−20)合成例20(比較フタロシアニン化合物1の合成)
特開2007−56105号公報の実施例2に記載の合成法により、表3に示す比較フタロシアニン化合物1を得た。
(2)樹脂の調製
(2−1)フッ素化芳香族樹脂の調製
温度計、冷却管、ガス導入管、および、撹拌機を備えた反応器に、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル16.74質量部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン10.5質量部、炭酸カリウム4.34質量部、ジメチルアセトアミド90質量部を仕込んだ。反応器に仕込んだ混合物を80℃に加温し、8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく撹拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物をろ別し、蒸留水およびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族樹脂を得た。フッ素化芳香族樹脂のガラス転移温度(Tg)は242℃であり、数平均分子量(Mn)は70,770であった。なお、数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算にて求めた。
(2−2)アクリル系樹脂の調製
温度計、冷却管、ガス導入管、および、撹拌機を備えた反応器に、単量体としてα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AMA)21.0質量部、N−フェニルマレイミド9.0質量部、重合溶媒として酢酸エチル45.0質量部を仕込み、窒素ガスの流通下、撹拌しながら昇温した。反応器内の温度が70℃で安定した後、アゾ系ラジカル重合開始剤(日本ファインケム社製、ABN−V)0.03質量部を添加し、重合反応を開始した。反応器内の温度を69℃〜71℃に維持しながら3.5時間反応させ、その後、室温まで冷却した。希釈溶媒としてテトラヒドロフランを加え、貧溶媒としてn−ヘキサンを用いて再沈殿処理を行い、沈殿物を吸引ろ過により分離した。得られた沈殿物を減圧乾燥器を用いて減圧下80℃で2時間乾燥し、アクリル系樹脂を得た。ゲル透過クロマトグラフィーにより測定したアクリル系樹脂の重量平均分子量は31,600であった。また、示差走査熱量計により測定したアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は152℃であった。
(3)フィルタ(樹脂積層基板)の製造例
(3−1)製造例1
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)E−2000)を2質量部、クロコニウム化合物7を0.02質量部、クロロホルム18質量部を混合して、色素含有樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をガラス基板(SCHOTT社製、D263Teco、60mm×60mm×0.3mm、平均透過率91%)上に約1cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−D7)を用いて塗布した。樹脂組成物を成膜したガラス基板を、イナートオーブン(ヤマト科学社製、DN610I)を用いて100℃で30分間窒素雰囲気下で乾燥することにより、ガラス基板上に樹脂層を形成した樹脂積層基板1を得た。樹脂層の厚みは約2μmであった。
(3−2)製造例2
製造例1において、使用した樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにシクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア(登録商標)1410R)を用い、またクロロホルムの代わりにジクロロベンゼンを用いたこと以外は、製造例1と同様にして樹脂積層基板2を作製した。
(3−3)製造例3
製造例1において、使用した樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにシクロオレフィン系樹脂の一種であるノルボルネン系樹脂(JSR社製、アートン(登録商標)RX4500)を用い、クロコニウム化合物7の代わりにクロコニウム化合物8を用い、さらにクロロホルムの代わりにトルエンを用いたこと以外は、製造例1と同様にして樹脂積層基板3を作製した。
(3−4)製造例4
製造例1において、使用した樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにシクロオレフィン系樹脂の一種であるシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製、TOPAS(登録商標)5013)を用い、クロコニウム化合物7の代わりにクロコニウム化合物8を用い、さらにクロロホルムの代わりにメチルシクロヘキサンを用いたこと以外は、製造例1と同様にして樹脂積層基板4を作製した。
(3−5)製造例5
製造例1において、使用した樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりに上記(2−1)で調製したフッ素化芳香族樹脂を用い、クロコニウム化合物7の代わりにクロコニウム化合物8を用い、さらにクロロホルムの代わりにトルエンを用いたこと以外は、製造例1と同様にして樹脂積層基板5を作製した。
(3−6)製造例6
製造例1において、使用した樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりに上記(2−2)で調製したアクリル系樹脂を用い、クロコニウム化合物7の代わりにクロコニウム化合物8を用い、さらにクロロホルムの代わりにトルエンを用いたこと以外は、製造例1と同様にして樹脂積層基板6を作製した。
(3−7)比較製造例1
製造例1において、クロコニウム化合物7の代わりに比較フタロシアニン化合物1を用いたこと以外は、製造例1と同様にして比較樹脂積層基板1を作製した。
(4)評価
(4−1)色素化合物と樹脂積層基板の分光測定
合成例1〜20で得た各色素化合物のクロロホルム溶液を調製し、波長400nm〜1100nmにおける吸収スペクトル(透過スペクトル)を測定した。色素化合物のクロロホルム溶液は、極大吸収波長における透過率が10%(±0.05%)となるように濃度を調整し、分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)を用いて、測定ピッチ1nmで光線透過率を測定し、波長400nm〜1100nmの範囲で吸収が最大となる波長(極大吸収波長λmax)、極大吸収波長よりも長波長側で透過率が30%となる波長(%T30)、波長400nm〜700nmの平均透過率(可視光透過率)、波長400nmにおける透過率(%T(400nm))をそれぞれ求めた。また、製造例1〜6および比較製造例1で作製した各樹脂積層基板についても、上記と同様にして波長400nm〜1100nmにおける吸収スペクトル(透過スペクトル)を測定し、極大吸収波長における透過率を10%(±0.05%)としたときの極大吸収波長λmax、%T30、可視光透過率、%T(400nm)をそれぞれ求めた。
各色素化合物のクロロホルム溶液の分光測定結果を表4にまとめ、クロコニウム化合物1、比較クロコニウム化合物1、比較フタロシアニン化合物1の各透過スペクトルを図1に示した。クロコニウム化合物1〜18は環Aと置換基R7のπ電子の合計数が16個であり、極大吸収波長λmaxが892nm〜934nm、%T30が918nm〜963nm、可視光平均透過率が85.2%〜92.2%であった。一方、比較クロコニウム化合物1は環Aと置換基R7のπ電子の合計数が10個であり、極大吸収波長λmaxが810nm、%T30が830nm、可視光平均透過率が92.8%であった。クロコニウム化合物1(クロコニウム化合物1〜18の中で%T30が最も低波長となるクロコニウム化合物)と比較クロコニウム化合物1のπ電子数と%T30の波長との関係を線形補間すると、π電子数が12個以上であれば%T30の波長が850nm以上となり、850nmを超える波長域の光線を効果的に吸収できることが分かる。%T30の波長が850nm以上であれば、例えば、セキュリティインクやレーザー溶着用途に好適に用いることができる。なお、比較フタロシアニン化合物1は、極大吸収波長λmaxが904nmと850nmを超える波長域の光線を吸収することができるものの、可視光平均透過率が80.8%と低く、不可視性の点でやや劣るものとなった。
表5には、各樹脂積層基板の分光測定結果をまとめた。樹脂積層基板1〜2には色素としてクロコニウム化合物7が含まれており、樹脂積層基板3〜6には色素としてクロコニウム化合物8が含まれており、比較樹脂積層基板1には色素として比較フタロシアニン化合物1が含まれているが、いずれも樹脂の種類によらず、樹脂積層基板の極大吸収波長λmaxの値はクロロホルム溶液中のそれとほぼ近い値となった。また可視光透過率は、樹脂積層基板1〜6の方が比較樹脂積層基板1よりも高くなった。樹脂積層基板1〜6は、例えば暗視用撮像素子の光学フィルタに好適に適用することができる。
(4−2)インク組成物としたときの保存安定性
合成例7で得たクロコニウム化合物7を5mg秤量し、これをクロロホルムで希釈して100mLに調製した。得られたクロロホルム溶液をホールピペットを用いて5mL分取して、さらにクロロホルムで希釈して50mLに調製し、インク組成物1を得た。得られたインク組成物1を室温にて遮光下で1ヶ月間保存した。調製直後と1ヶ月保存後のインク組成物1について、上記と同様にして波長400nm〜1100nmにおける吸収スペクトル(透過スペクトル)を測定し、極大吸収波長における透過率と可視光透過率をそれぞれ求めた。クロコニウム化合物7を含むインク組成物1は、1ヶ月が経過しても分光特性上の劣化は確認されず、保存安定性に優れていることが確認された。