JP2019030914A - 切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】切刃部を安定的に固定できるとともに、簡素な構成を有する切削工具を提供する。【解決手段】軸線を中心とした環状をなす外周面、及び、外周面から径方向内側に凹むとともに周方向に間隔をあけて形成された複数の取付穴4を有する工具本体1と、工具本体1よりも線膨張係数の大きい材料から形成されて、各取付穴4内にそれぞれ隙間嵌めされたインサート3と、工具本体1の外周面から径方向外側に突出するように、各インサート3における径方向外側の端部にそれぞれ固定された切刃部2と、を備え、インサート3は、切刃部2から伝達される切削熱によって膨張することで取付穴4の内周面に締まり嵌めされる。【選択図】図2

Description

本発明は、切削工具に関する。
機械要素の一種として、遊星ギア等に用いられる円筒ギア(又は内歯車)と呼ばれるものが知られている。円筒ギアは、円筒状をなす部材の内周面に複数のギア歯を形成することで得られる。円筒ギアを製作するに当たっては、近年スカイビング加工が主として用いられている。スカイビング加工とは、複数の切刃を有する歯車型の切削工具を、円筒状のワークの内周面に対して相対回転させることで、当該内周面に歯切りを行う加工法である。
このような切削工具の具体例として、下記特許文献1、及び下記特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された切削工具は、円盤状のカッタヘッドの外周面に、複数の切刃を周方向に配列することで形成されている。特許文献2は、これらの切刃を、従来のばねや油圧を用いる構成に代えて、工具本体に対してクランプによってそれぞれ固定する固定構造を提案している。
特表2016−516602号公報 特表2016−516603号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載された構成では、切刃の固定に要するスペースを小さくできる一方で以下の欠点がある。即ち、切削時に切刃とワークとの間で生じる摩擦熱(切削熱)によって、切刃及びカッタヘッドがともに熱膨張するため、結果としてこれら切刃とカッタヘッドとの間の隙間が大きくなったり、不均一になったりする。そのため、当該切刃にがたつきや脱落を生じる可能性がある。さらに、切刃を適宜冷却するための装置も必要となることから、工具全体の構成が大掛かりになってしまう。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、構造の複雑化を避けながら切刃部を安定的に固定できる切削工具を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様によれば、切削工具は、軸線を中心とした環状をなす外周面、及び、該外周面から径方向内側に凹むとともに周方向に間隔をあけて形成された複数の取付穴を有する工具本体と、該工具本体よりも線膨張係数の大きい材料から形成されて、各前記取付穴内にそれぞれ隙間嵌めされたインサートと、前記工具本体の外周面から径方向外側に突出するように、各前記インサートにおける径方向外側の端部にそれぞれ固定された切刃部と、を備え、 前記インサートは、前記切刃部から伝達される切削熱によって膨張することで前記取付穴の内周面に締まり嵌めされる。
この構成によれば、インサートの線膨張係数が、工具本体の線膨張係数よりも大きいため、インサートの膨張量が工具本体の膨張量を上回ることになる。したがって、加工時に切刃部から伝達された切削熱によってインサートが膨張することで、当該インサートが工具本体の取付穴の内周面に対して締まり嵌めされる。これにより、切刃部及びインサートを工具本体に対して強固かつ安定的に固定することができる。さらに、切削熱が切刃部及びインサートの固定に積極的に利用されることから、この切削熱を除去するための冷却構造を別途設ける必要がない。これにより、装置を簡素化することも可能となる。
本発明の第二の態様によれば、切削工具では、前記インサートの径方向内側の端部には、径方向外側に凹没する第一凹部が形成され、前記第一凹部に締まり嵌めされた第一凸部が設けられていてもよい。
この構成によれば、切削を行っていない状態、即ち冷間時であっても、インサートの第一凹部が、取付穴に設けられた第一凸部に対して締まり嵌めされた状態となる。即ち、冷間時であっても、インサートを取付穴に対して安定的に固定することができる。
本発明の第三の態様によれば、前記工具本体は、前記取付穴における前記第一凸部に対して、外周側に間隔をあけて設けられた第一位置決め部を有し、前記第一位置決め部は、前記インサートが前記切刃部から伝達される切削熱によって膨張した状態で、前記インサートの外周面に締まり嵌めされてもよい。
この構成によれば、切削を行っている状態、即ち入熱時に、第一位置決め部の内周面が、切削熱によって膨張したインサートの外周面に対して締まり嵌めされる。これにより、インサートを工具本体に対して安定的に固定することができるとともに、膨張時におけるインサート及び切刃部の位置決めを精緻に行うことができる。言い換えると、膨張時におけるインサート及び切刃部の配列(アラインメント)のずれを抑制することができる。
本発明の第四の態様によれば、前記インサートの径方向外側の端部には、径方向内側に凹没する第二凹部が形成され、前記切刃部の径方向内側の端部には、前記第二凹部に締まり嵌めされた第二凸部が設けられていてもよい。
この構成によれば、切削を行っていない状態、即ち冷間時であっても、インサートの第二凹部が、切刃部に設けられた第二凸部に対して締まり嵌めされる。即ち、冷間時であっても、切刃部をインサートに対して安定的に固定することができる。
本発明の第五の態様によれば、前記切刃部における前記第二凸部に対して、外周側に間隔をあけて設けられた第二位置決め部を有し、前記第二位置決め部は、前記インサートが前記切刃部から伝達される切削熱によって膨張した状態で、前記インサートの外周面に締まり嵌めされてもよい。
この構成によれば、切削を行っている状態、即ち入熱時に、第二位置決め部の内周面が、切削熱によって膨張したインサートの外周面に対して締まり嵌めされる。これにより、切刃部をインサートに対して安定的に固定することができるとともに、膨張時におけるインサート及び切刃部の位置決めを精緻に行うことができる。言い換えると、膨張時におけるインサート及び切刃部の配列(アラインメント)のずれを抑制することができる。
本発明の第六の態様によれば、前記インサートは、径方向内側に位置するインサート本体と、該インサート本体の径方向外側の端部に設けられるとともに、径方向外側の端部が切刃部の内部まで延びている延長部と、を有し、前記切刃部には前記延長部が挿入される挿入凹部が形成されていてもよい。
この構成によれば、切刃部の挿入凹部内に、インサートの延長部が挿入された状態となる。これにより、切刃部で生じた切削熱をより効率的に延長部(インサート)に伝えることができる。即ち、インサートを十分に膨張させることができるため、当該インサートを工具本体に対してより安定的に固定することができる。
本発明の第七の態様によれば、切削工具は、前記切刃部を、前記工具本体に対して固定する固定ピンをさらに備えてもよい。
この構成によれば、冷間時であっても、切刃部をより安定的に固定することができる。
本発明の切削工具によれば、構造の複雑化を避けながら切刃部を安定的に固定することができる。
本発明の第一実施形態に係る切削工具の構成を示す全体図である。 本発明の第一実施形態に係る切削工具の構成を示す断面図であって、切削加工を行っていない状態を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る切削工具の構成を示す断面図であって、切削加工を行っている状態を示す図である。 本発明の第二実施形態に係る切削工具の構成を示す断面図であって、切削加工を行っていない状態を示す図である。 本発明の第二実施形態に係る切削工具の構成を示す断面図であって、切削加工を行っている状態を示す図である。 本発明の第二実施形態に係る切削工具の変形例を示す断面図である。 本発明の第三実施形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。 本発明の第四実施形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。
[第一実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る切削工具1は、被加工物である円筒状のワークWの内周面に、複数のギア歯Gを形成するための工具である。具体的には、切削工具1は、軸線A1を中心とする円盤状の工具本体1と、当該工具本体1の外周面上で周方向に間隔をあけて配列された複数の切刃部2と、当該切刃部2を工具本体1に対して支持固定するインサート3(図2、図3参照)と、を備えている。なお、図2、図3は、軸線A1を含む平面における切削工具1の断面図である。
工具本体1は、軸線A1を中心とした円周曲面状(環状)の外周面を有している。この外周面には、軸線A1の周方向に等間隔をあけて複数の取付穴4が形成されている。それぞれの取付穴4は、軸線A1の径方向に延びており、その径方向外側の端部は、上記外周面上に開口している。
なお、本実施形態における取付穴4の断面形状は円形であるが、設計や仕様に応じて、この断面形状を矩形や他の多角形とすることも可能である。これら取付穴4の深さ(径方向における寸法)は、後述するインサート3の径方向における寸法とおおむね同等か、わずかに大きな寸法に設定されている。この工具本体1は、外部の駆動源(不図示)によって、軸線A1回りに回転駆動される。工具本体1は、工具鋼によって一体に形成されている。
切刃部2は、上記の取付穴4に挿入された棒状のインサート3によって支持固定されることで、工具本体1の外周面よりも径方向外側に突出している。切刃部2の外周側の端面は、ワークWの内周面と当接することでこれを切削できるように、刃が設けられている。それぞれの切刃部2は、工具鋼によって一体に形成されている。即ち、切刃部2は、ワークWに対して切削加工を施すに十分な強度、硬度、耐摩耗性等の各種特性を備えている。なお、切刃部2の具体的な寸法や形状は、所望される円筒ギアのギア歯Gの寸法や形状に準じて適宜決定される。さらに、切刃部2は、工具本体1と同様に、工具鋼によって一体に形成されている。
インサート3は、軸線A1の径方向に延びる棒状をなしている。インサート3の径方向外側の端部には、上記の切刃部2が支持固定されている。詳しくは図示しないが、本実施形態では、切刃部2は、インサート3に対してボルトやピン、溶接等によって固定されている。インサート3の断面形状は、上述の取付穴4の断面形状に対応している。即ち、本実施形態では、取付穴4が円形断面を有していることから、インサート3も円形断面を有している。切削加工を行っていない状態(即ち、冷間時)では、インサート3の径寸法は、取付穴4の内径寸法よりも小さく設定されている。言い換えると、冷間時には、インサート3は取付穴4に対して隙間嵌めされた状態となっている。
インサート3は、工具本体1よりも大きな線膨張係数を有する材料によって一体に形成されている。具体的には、工具本体1を構成する工具鋼の線膨張係数が11.1であることから、インサート3は、これよりも大きな線膨張係数を有するアルミニウム(線膨張係数:23)、SUS304(線膨張係数:17.3)、銅(線膨張係数:16.8)や、ニッケル(線膨張係数:12.8)等の中から適宜選択された材料によって形成されている。詳しくは後述するが、インサート3がこのような材料によって形成されていることから、切削加工を行っていない状態(冷間時)では、上述のように取付穴4に対して隙間嵌めされた状態となっている。
一方で、切削加工を行っている状態では、切刃部2とワークWとの間で生じた摩擦熱(切削熱)がインサート3に伝達されることで、当該インサート3は、工具本体1よりも大きく熱膨張する。その結果、インサート3の外周面は、工具本体1の取付穴4の内周面に対して当接し、最終的には締まり嵌めされた状態となる。なお、インサート3の外周面は全域にわたって取付穴4の内周面に当接してもよいし、部分的に当接してもよい。これにより、インサート3は内周側に向かってわずかに弾性変形した状態で取付穴4内に固定された状態となる。
インサート3と取付穴4との相対的な形状は、冷間時(外部から切削熱が供給されていない時)は隙間嵌めとなり、切削熱が供給されている時は締まり嵌めとなるように設定されている。このようなインサート3及び取付穴4の相対的な形状は、インサート3及び工具本体1の熱膨張係数を把握した上で、インサート3に供給される切削熱をシミュレーションにより解析することで容易に設定することができる。
なお、インサート3を構成する材料の選定(線膨張係数の決定)は、切削工具1の製作に先立って行われる数値シミュレーションによって得られた切削反力の値と、切刃部2に作用する遠心力の値とに基づいて適宜行われる。
続いて、本実施形態に係る切削工具1の動作について説明する。切削工具1は、図示しない駆動源から供給される駆動力によって、軸線A1回りに回転駆動される。即ち、切削工具1は、ワークWの内周面に対して相対速度を持ってワーク軸線Aw回りに回転する。本実施形態では、ワーク軸線Awは、軸線A1に略平行である。(なお、ワーク軸線Awが、軸線A1に対して直交しない角度で交差していてもよい。)ワークWの内周面に当接する一部の切刃部2は、当該内周面に対して歯切り加工を施す。このような加工をワークWの内周面の全域にわたって施すことで、所望の形状の円筒ギアを得ることができる。
ここで、複数の切刃部2のうち、回転中にワークWの内周面に接触している一部の切刃部2に対しては、ワークWとの間で生じる切削熱が伝達される。この切削熱は、当該切刃部2に一体に接続されたインサート3にも伝達される。上述のように、インサート3は、切刃部2及び工具本体1を構成する工具鋼よりも大きな線膨張係数を有する材料によって形成されていることから、これら切刃部2、及び工具本体1よりも大きな熱膨張を生じる。その結果、インサート3の外周面は、工具本体1の取付穴4の内周面に対して全域にわたって当接し、最終的には締まり嵌めされた状態となる。より具体的には、インサート3は内周側に向かってわずかに弾性変形した状態で取付穴4内に固定された状態となる。
以上、説明したように、上述の構成によれば、インサート3の線膨張係数が、工具本体1の線膨張係数よりも大きいため、インサート3の膨張量が工具本体1の膨張量を上回ることになる。したがって、加工時に切刃部2から伝達された切削熱によってインサート3が膨張することで、当該インサート3が工具本体1の取付穴4の内周面に対して締まり嵌めされる。これにより、切刃部2及びインサート3を工具本体1に対して強固かつ安定的に固定することができる。即ち、インサート3、及び切刃部2のがたつきや脱落の可能性を低減することができる。さらに、切削熱が切刃部2及びインサート3の固定に積極的に利用されることから、この切削熱を除去するための冷却構造を別途設ける必要がない。これにより、装置を簡素化することが可能となる。
本発明の第一実施形態について図面を参照して説明した。なお、上記の構成は一例であり、これに種々の変更や改良を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、冷間時におけるインサート3は、工具本体1の取付穴4に対して隙間嵌めされている構成を例に説明した。しかしながら、冷間時におけるインサート3の固定方法は隙間嵌めに限定されず、中間嵌めであってもよい。この構成によれば、冷間時であってインサート3、及び切刃部2を工具本体1に対して、より安定的かつ強固に固定することができる。即ち、インサート3、及び切刃部2のがたつきや脱落の可能性をさらに低減することができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図4、図5を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図4に示すように、本実施形態では、工具本体1の取付穴4内に、第一凸部5、及び第一位置決め部6が設けられている。
第一凸部5は、取付穴4の径方向内側の端面上(即ち、取付穴4の底面上)に設けられた円形の突起である。より具体的には、第一凸部5は、取付穴4の底面から、径方向外側に向かって突出している。径方向から見た場合、第一凸部5は、上記底面の中心を軸とする円形をなしている。
第一位置決め部6は、取付穴4の径方向内側の端面上(即ち、取付穴4の底面上)に設けられたリング状の突起である。第一位置決め部6は、上記の第一凸部5を外周側から囲むようにして設けられている。より具体的には、第一位置決め部6は、取付穴4の底面から、径方向外側に向かって突出している。径方向から見た場合、第一位置決め部6は、上記底面の中心を軸とするリング状をなしている。即ち、第一位置決め部6と第一凸部5とは、同一の軸を有している。さらに、第一位置決め部6と第一凸部5とは、同一の突出寸法(径方向寸法)を有している。第一位置決め部6の外周面と、取付穴4の内周面との間には、径方向に広がる隙間が形成されている。
インサート3の径方向内側の端面には、第一凹部7が形成されている。第一凹部7は、インサート3の径方向内側の端面から、径方向外側に向かって円形に凹没している。円形をなす第一凹部7の中心は、インサート3の中心軸(即ち、軸線A1の径方向)と一致している。さらに、第一凹部7の深さ(径方向における寸法)は、上述の第一凸部5、及び第一位置決め部6の突出寸法と同一か、わずかに小さく設定されている。
第一凹部7よりも外周側の部分、即ちインサート3の径方向内側の端部における外周面は、他の部分に比べて小径となる第一小径部8とされている。冷間時において、第一小径部8の外周面は、上述の第一位置決め部6に対して径方向に隙間をあけた状態で対向している。第一小径部8の径方向における寸法は、上記の第一凹部7の径方向における寸法とおおむね同一である。
切削加工を行っていない状態(冷間時)では、第一凹部7の内径寸法は、上述の第一凸部5の外径寸法と同一かわずかに小さく設定されている。即ち、冷間時には、工具本体1の第一凸部5は、インサート3の第一凹部7に対して締まり嵌めされた状態となっている。
さらに、本実施形態では、切刃部2とインサート3との接続部分にも、上記と同様の構成が用いられている。より具体的には、切刃部2の径方向内側の端面には、第二凸部9、及び第二一意決め部が設けられている。
第二凸部9は、切刃部2の径方向内側の端面上に設けられた円形の突起である。より具体的には、第二凸部9は、切刃部2の端面から、径方向内側に向かって突出している。
第二位置決め部10は、切刃部2の径方向内側の端面上に設けられたリング状の突起である。第二位置決め部10は、上記の第二凸部9を外周側から囲むようにして設けられている。より具体的には、第二位置決め部10は、切刃部2の端面から、径方向内側に向かって突出している。第二位置決め部10と第二凸部9とは、同一の軸を有している。さらに、第二位置決め部10と第二凸部9とは、同一の突出寸法(径方向寸法)を有している。第二位置決め部10の外周面と、取付穴4の内周面との間には、径方向に広がる隙間が形成されている。
インサート3の径方向外側の端面には、第二凹部11が形成されている。第二凹部11は、インサート3の径方向外側の端面から、径方向内側に向かって円形に凹没している。円形をなす第二凹部11の中心は、インサート3の中心軸と一致している。さらに、第二凹部11の深さ(径方向における寸法)は、上述の第二凸部9、及び第二位置決め部10の突出寸法と同一か、わずかに小さく設定されている。
第二凹部11よりも外周側の部分、即ちインサート3の径方向内側の端部における外周面は、他の部分に比べて小径となる第二小径部12とされている。冷間時において、第二小径部12の外周面は、上述の第二位置決め部10に対して径方向に隙間をあけた状態で対向している。第二小径部12の径方向における寸法は、上記の第二凹部11の径方向における寸法とおおむね同一である。
さらに、上記第一実施形態と同様に本実施形態においても、インサート3は、工具本体1及び切刃部2よりも線膨張係数の大きな材料によって一体に形成されている。
切削加工を行っていない状態(冷間時)では、第二凹部11の内径寸法は、上述の第二凸部9の外径寸法と同一かわずかに小さく設定されている。即ち、冷間時には、切刃部2の第二凸部9は、インサート3の第二凹部11に対して締まり嵌めされた状態となっている。
続いて、本実施形態に係る切削工具1の動作について説明する。切削加工を行っている状態では、切刃部2から伝達された切削熱によって、インサート3が熱膨張する。この時、図5に示すように、インサート3の外周面は、取付穴4の内周面に当接した後、最終的には当該内周面に対して締まり嵌めされた状態となる。
同時に、インサート3が膨張することで、当該インサート3に形成された上述の第一凹部7の内径寸法が増加する。これにより、第一凹部7と、工具本体1に設けられた第一凸部5との間の締まり嵌めが解除される。なおもインサート3が膨張を続けることで、インサート3の第一小径部8の外周面が、工具本体1に設けられた第一位置決め部6の内周面に当接する。最終的には、第一小径部8の外周面は、第一位置決め部6の内周面に対して締まり嵌めされた状態となる。
同様にして、インサート3が膨張することで、当該インサート3に形成された上述の第二凹部11の内径寸法も増加する。これにより、第二凹部11と、切刃部2に設けられた第二凸部9との間の締まり嵌めが解除される。なおもインサート3が膨張を続けることで、インサート3の第二小径部12の外周面が、切刃部2に設けられた第二位置決め部10の内周面に当接する。最終的には、第二小径部12の外周面は、第二位置決め部10の内周面に対して締まり嵌めされた状態となる。
以上、説明したように、上述の構成によれば、切削を行っていない状態、即ち冷間時であっても、インサート3の第一凹部7が、取付穴4に設けられた第一凸部5に対して締まり嵌めされる。即ち、冷間時であっても、インサート3を取付穴4に対して安定的に固定することができる。
さらに、上述の構成によれば、切削を行っている状態、即ち入熱時に、第一位置決め部6の内周面が、切削熱によって膨張したインサート3の外周面に対して締まり嵌めされる。これにより、インサート3を工具本体1に対して安定的に固定することができるとともに、膨張時におけるインサート3及び切刃部2の位置決めを精緻に行うことができる。言い換えると、膨張時におけるインサート3及び切刃部2の配列(アラインメント)のずれを抑制することができる。他方で、インサート3に第一位置決め部6を設けない場合、当該インサート3の端面に対して高精度な面出し加工が必要となる。しかしながら、上記構成では、第一位置決めを設けることにより、このような加工を行うことなく、高精度な切削工具1を得ることができる。
加えて、上述の構成によれば、切削を行っていない状態、即ち冷間時であっても、インサート3の第二凹部11が、切刃部2に設けられた第二凸部9に対して締まり嵌めされる。即ち、冷間時であっても、切刃部2をインサート3に対して安定的に固定することができる。
さらに加えて、上述の構成によれば、切削を行っている状態、即ち入熱時に、第二位置決め部10の内周面が、切削熱によって膨張したインサート3の外周面に対して締まり嵌めされる。これにより、切刃部2をインサート3に対して安定的に固定することができるとともに、膨張時におけるインサート3及び切刃部2の位置決めを精緻に行うことができる。言い換えると、膨張時におけるインサート3及び切刃部2の配列(アラインメント)のずれを抑制することができる。他方で、インサート3に第二位置決め部10を設けない場合、当該インサート3の端面に対して高精度な面出し加工が必要となる。しかしながら、上記構成では、第二位置決めを設けることにより、このような加工を行うことなく、高精度な切削工具1を得ることができる。
以上、本発明の第二実施形態について説明した。なお、上記の構成は一例であり、これに種々の変更や改良を施すことが可能である。例えば、上記第二実施形態では、第一位置決め部6、及び第二位置決め部10をそれぞれ工具本体1、切刃部2に設ける構成を例に説明した。しかしながら、図6に示すように、第一位置決め部6、及び第二位置決め部10を設けない構成を採ることも可能である。このような構成によれば、各部材の構成を簡素化することができることから、加工に要するコストを削減することが可能となる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図7に示すように、本実施形態では、インサート3は、径方向内側の部分であるインサート本体31と、インサート本体31の径方向外側に位置するともに、切刃部2の内部に挿入される延長部32と、を有している。
インサート本体31は、円形断面を有する棒状をなしている。インサート本体31は、冷間時において、工具本体1の取付穴4に対して隙間嵌めされている。言い換えると、インサート本体31の外径寸法は、取付穴4の内径寸法よりもわずかに小さく設定されている。さらに、インサート本体31の長さ寸法(軸線A1の径方向における寸法)は、取付穴4の深さ寸法(軸線A1の径方向における寸法)よりも、十分に小さく設定されている。
延長部32は、インサート本体31よりも小さな外径寸法を有している。延長部32は、インサート本体31に対して同一の材料によって当該インサート本体31と一体に形成されている。さらに、延長部32は、インサート本体31と同軸の円形断面を有している。延長部32の径方向外側の端部は、取付穴4の開口よりも径方向外側に位置している。即ち、本実施形態では、インサート3の長さ寸法は、取付穴4の深さ寸法よりも十分に大きく設定されている。
切刃部2の径方向内側の端面には、上記の延長部32が挿入される挿入凹部21が形成されている。挿入凹部21の底面(径方向外側の面)は、切刃部2の刃に可能な限り近接する部分に位置している。挿入凹部21よりも径方向内側には、延長部32を外周側から覆うつば部22が設けられている。つば部22は、挿入凹部21の開口端から、径方向内側に向かって延びる筒状をなしている。冷間時において、延長部32は挿入凹部21のつば部22に対して隙間嵌めされた状態となっている。即ち、挿入凹部21、及びつば部22の内径寸法は、延長部32の外径寸法よりもわずかに大きく設定されている。
さらに、上記各実施形態と同様に本実施形態においても、インサート3は、工具本体1及び切刃部2よりも線膨張係数の大きな材料によって一体に形成されている。
なお、インサート3の長さ寸法(軸線A1の径方向における寸法)と、切刃部2の長さ寸法との比率、及び、インサート3の延長部32の長さ寸法と、切刃部2のつば部22の長さ寸法との比率、ならびにインサート3を構成する材料の選定(線膨張係数の決定)は、それぞれ切削工具1の製作に先立って行われる数値シミュレーションによって得られた切削反力の値と、切刃部2に作用する遠心力の値とに基づいて適宜行われる。
上述の構成によれば、切刃部2の挿入凹部21内に、インサート3の延長部32が挿入された状態となる。即ち、インサート3の一部である延長部32が、切刃部2の刃に対して十分に近接した状態となる。これにより、切刃部2の刃で生じた切削熱をより効率的に延長部32(インサート3)に伝えることができる。即ち、インサート3を十分に膨張させることができるため、当該インサート3を工具本体1に対してより安定的に固定することができる。
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明した。なお、上記の構成は一例であり、これに種々の変更や改良を施すことが可能である。例えば、第三実施形態に係る構成に、上述の第二実施形態で説明した、第一凸部5、第一位置決め部6、及び第二凸部9、第二位置決め部10をインサート3に設け、第一凹部7を工具本体1に設け、さらに第二凹部11を切刃部2にも受ける構成を採ることも可能である。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図8を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態に係る切削工具1では、上記の第三実施形態と同様に、インサート3は、インサート本体31と、延長部32と、を有している。さらに、この切削工具1は、切刃部2のつば部22、及び工具本体1に挿通される固定ピンPを備えている。固定ピンPは、軸線A1の径方向に直交する方向に延びる棒状をなしている。即ち、固定ピンPは、インサート3に対して直交する方向に延びている。つば部22の一部には、この固定ピンPが挿通される第一穴部H1が形成されている。同様に、工具本体1には、固定ピンPが挿通される第二穴部H2が形成されている。第一穴部H1と第二穴部H2とは、互いに同軸で連通している。固定ピンPは、第一穴部H1と第二穴部H2とにまたがるようにしてこれら穴部に挿通されている。なお、上記各実施形態と同様に本実施形態においても、インサート3は、工具本体1及び切刃部2よりも線膨張係数の大きな材料によって一体に形成されている。
上述の構成によれば、切刃部2の挿入凹部21内に、インサート3の延長部32が挿入された状態となる。即ち、インサート3の一部である延長部32が、切刃部2に対して十分に近接した状態となる。これにより、切刃部2で生じた切削熱をより効率的に延長部32(インサート3)に伝えることができる。即ち、インサート3を十分に膨張させることができるため、当該インサート3を工具本体1に対してより安定的に固定することができる。さらに上述の構成によれば、固定ピンPによって、切刃部2が工具本体1に対して固定されるため、冷間時であっても、当該切刃部2をより安定的に固定することができる。
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明した。なお、上記の構成は一例であり、これに種々の変更や改良を施すことが可能である。例えば、上記第四実施形態では、固定ピンPが1つのみ設けられる構成について説明した。しかしながら、固定ピンPの個数は1つのみに限定されず、2つ、又は3つ以上であってもよい。
100…切削工具
1…工具本体
2…切刃部
3…インサート
4…取付穴
5…第一凸部
6…第一位置決め部
7…第一凹部
8…第一小径部
9…第二凸部
10…第二位置決め部
11…第二凹部
12…第二小径部
21…挿入凹部
22…つば部
31…インサート本体
32…延長部
A1…軸線
Aw…ワーク軸線
G…ギア歯
H1…第一穴部
H2…第二穴部
P…固定ピン
W…ワーク

Claims (7)

  1. 軸線を中心とした環状をなす外周面、及び、該外周面から径方向内側に凹むとともに周方向に間隔をあけて形成された複数の取付穴を有する工具本体と、
    該工具本体よりも線膨張係数の大きい材料から形成されて、各前記取付穴内にそれぞれ隙間嵌めされたインサートと、
    前記工具本体の外周面から径方向外側に突出するように、各前記インサートにおける径方向外側の端部にそれぞれ固定された切刃部と、
    を備え、
    前記インサートは、前記切刃部から伝達される切削熱によって膨張することで前記取付穴の内周面に締まり嵌めされる切削工具。
  2. 前記インサートの径方向内側の端部には、径方向外側に凹没する第一凹部が形成され、
    前記取付穴の径方向内側の端部には、前記第一凹部に締まり嵌めされた第一凸部が設けられている請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記工具本体は、前記取付穴における前記第一凸部に対して、外周側に間隔をあけて設けられた第一位置決め部を有し、
    前記第一位置決め部は、前記インサートが前記切刃部から伝達される切削熱によって膨張した状態で、前記インサートの外周面に締まり嵌めされる請求項2に記載の切削工具。
  4. 前記インサートの径方向外側の端部には、径方向内側に凹む第二凹部が形成され、
    前記切刃部の径方向内側の端部には、前記第二凹部に締まり嵌めされた第二凸部が設けられている請求項1又は2に記載の切削工具。
  5. 前記切刃部における前記第二凸部に対して、外周側に間隔をあけて設けられた第二位置決め部を有し、
    前記第二位置決め部は、前記インサートが前記切刃部から伝達される切削熱によって膨張した状態で、前記インサートの外周面に締まり嵌めされる請求項4に記載の切削工具。
  6. 前記インサートは、径方向内側に位置するインサート本体と、該インサート本体の径方向外側の端部に設けられるとともに、径方向外側の端部が切刃部の内部まで延びている延長部と、を有し、
    前記切刃部には前記延長部が挿入される挿入凹部が形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の切削工具。
  7. 前記切刃部を、前記工具本体に対して固定する固定ピンをさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載の切削工具。
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