JP2019029193A - 電子放出素子、電子放出素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子放出素子で、中間層である半導電部を形成するための混合液を有効利用することおよび、大型化をするにあたり、初期の性能にばらつきを抑制する。【解決手段】 第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極の間に設けられた絶縁部であって、所定の開口部を有するものと、前記第1電極および前記第2電極の間において前記開口部に配設された半導電部とを備える電子放出素子において、第1電極の電子放出領域内において絶縁部を有し、半導電部には導電性微粒子および光触媒性能を有する絶縁性微粒子が含まれている。【選択図】図1

Description

本発明は、電子放出素子、電子放出素子の製造方法に関する。
本出願人は、大気中で動作可能な、新規な構造を有する電子放出素子を開発した(例えば特許文献1参照)。
特許文献2には、電子加速層(中間層)の劣化を抑制でき、真空中だけでなく大気圧中でも効率よく安定した電子放出を可能とし、さらに機械的強度を高めて形成される、電子放出素子が開示されている。具体的には、この電子放出素子は、電極基板と、電極基板上に形成された開口部を有する絶縁層と、絶縁層上に形成された電子加速層(中間層)と、電子加速層(中間層)上に形成された薄膜電極とを備える。電子加速層(中間層)は、絶縁性微粒子と導電性微粒子とが分散されたバインダー樹脂を含んでおり、このバインダー樹脂の混合液をスピンコート法又はスプレー法によって、絶縁層が形成された電極基板上に塗布することによって形成している。
特許文献3には、電子放出素子の大型化を可能にするために、電圧の与え方による薄膜電極での電位勾配の形成を抑制するため、つまり、薄膜電極面内には電位分布のほとんどない一様な電圧印加が可能となるようにするために、電極基板、微粒子層、薄膜電極および電気絶縁層を含んで、複数の開口部を有する構成であり、微粒子層は絶縁性微粒子および導電性微粒子を含んで構成される第1微粒子層と、絶縁性微粒子を含んで構成される第2微粒子層からなっている。
特開2009−146891号公報(特許第4303308号公報) 特開2010−198850号公報 特開2013−37784号公報
しかしながら、特許文献2に開示された電子放出素子は、ミクロンオーダーの電子加速層(中間層)を形成するために、スピンコート法又はスプレー法を採用して電子加速層(中間層)を形成しているので、電極基板上であって、かつ、開口部にのみに、絶縁性微粒子と導電性微粒子とが分散されたバインダー樹脂の混合液を塗布しようとしても、絶縁層上への塗布や素子以外への塗布や流出が起こり、当該混合液(塗液)、つまり絶縁性微粒子と導電性微粒子の有効利用の点において改善の余地があった。
また、特許文献3に開示された電子放出素子は上記の特許文献2と同様の課題とともに、大型化をするにあたり、薄膜電極面内にはほとんど一様な電圧印加が可能となるようにするために、電気絶縁層がアクリル樹脂からなり、複雑な構成となっているために、初期の性能にばらつきがある。
そこで、本発明は、中間層である半導電部を形成するための混合液を有効利用することおよび、大型化をするにあたり、初期の性能にばらつきを抑制することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明によれば、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた絶縁部であって、所定の開口部を有するものと、前記第1電極および前記第2電極の間において前記開口部に配設された半導電部とを備え、前記第1電極および前記第2電極の間に電圧を印加することによって前記第2電極から電子を放出させる電子放出素子であって、前記第1電極の電子放出領域内において前記絶縁部を有し、前記半導電部は導電性微粒子および光触媒性能を有する絶縁性微粒子が含まれることを特徴とする。
また、前記絶縁部は、前記第1電極の酸化物からなってもよい。
また、前記絶縁部は、前記第1電極の表面より上部だけでなく、前記第1電極の内部にも存在してもよい。
また、前記第1電極における前記電子放出領域で、前記半導電部と前記絶縁部による海島構造を持ってもよい。
また、前記海島構造は並列状あるいは千鳥状、不定形状であってもよい。
また、前記第1電極における前記電子放出領域で、前記半導電部と前記絶縁部に関して、前記半導電部の面積比は30〜80%であってもよい。
また、前記第1電極は陽極酸化により酸化皮膜が形成できる金属板あるいは金属膜が形成された基板から成ってもよい。
前記開口部は、前記第1電極と前記第2電極の間を貫くものであってもよい。 また、第1電極上に所定の開口部を有する絶縁部を形成する絶縁部形成工程、前記第1電極上であって前記開口部内に中間層である半導電部を形成する半導電部形成工程、前記半導電部および前記絶縁部上に電子を放出するための第2電極を形成する第2電極形成工程からなり、前記半導電部形成工程では、電気泳動堆積によって前記半導電部を形成する工程を含み、前記絶縁部形成工程では、少なくとも電子放出領域内に前記所定の開口部を有する前記絶縁部を形成することを特徴とする、電子放出素子の製造方法が提供される。
また、前記絶縁部形成工程では前記第1電極の陽極酸化によって前記絶縁部が形成されることを特徴とする。
また、前記絶縁部形成工程で前記第1電極の前記電子放出領域内に前記絶縁部を形成するにあたり、前記絶縁部または前記半導電部が海島構造になるように前記絶縁部を形成することを特徴とする。
また、本発明によれば、前記半導電部は導電性微粒子と絶縁性微粒子を含んでおり、前記導電性微粒子が前記絶縁性微粒子に担持された担持粒子からなることを特徴とする。
また、本発明によれば、前記半導電部形成工程が、所定の前記開口部を有する前記絶縁部を形成した前記第1電極上に絶縁性微粒子層を形成する絶縁性微粒子層形成工程と、前記絶縁性微粒子層を構成する前記絶縁性微粒子に前記導電性微粒子を担持する導電性微粒子担持工程からなることを特徴とする。
また、本発明によれば、前記電気泳動堆積では、前記絶縁性微粒子または前記担持粒子を分散媒に分散させた懸濁溶液中に、所定の開口部を有する前記絶縁層を形成した前記第1電極を陽極もしくは陰極として、対極である陰極または陽極とともに浸漬し、ついで制御された電圧および/または電流を印加することにより、前記絶縁性微粒子層または前記半導電部を構成する担持粒子層を所定の前記開口部を有する前記絶縁部を形成した前記第1電極上に形成させることを特徴とする。
また、本発明によれば、前記第1電極は陽極酸化により酸化皮膜が形成できる金属板あるいは金属膜が形成された基板から成ることを特徴とする。
また、本発明によれば、前記絶縁性微粒子は平均一次粒子径が1nm〜1000nmであることを特徴とする。
また、本発明によれば、前記絶縁性微粒子は光触媒性能を有する絶縁性微粒子であることを特徴とする。
また、本発明によれば、前記導電性微粒子は3nm〜80nmであることを特徴とする。
本発明によれば、半導電部を形成する際に電気泳動堆積法を用いることにより、効率的に絶縁性微粒子と導電性微粒子の有効利用することができ、初期の性能にばらつきを抑制することができる。
本発明の第1の実施の形態の電子放出素子の概略断面図である。 図1の電子放出素子の平面図である。 図1の電子放出素子の製造工程を示す概略断面図である。 図1の電子放出素子の製造工程を示す概略断面図である。 図1の電子放出素子の製造工程を示す概略断面図である。 図1の電子放出素子の製造工程を示す概略断面図である。 図1に示す電子放出素子1における半導電部5を構成する絶縁性微粒子層5dを形成する手法の説明図である。 図1に示す電子放出素子1における半導電部5を形成する手法の説明図である。 比較例2の電子放出素子50の概略断面図および電子放出素子50を切断面線A−Aから見た図である。 電子放出素子に対して実施する電子放出実験の測定系を示す説明図である。 電子放出素子1の電子放出領域7内に形成される海島構造の配列の例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態の電子放出素子について、図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態の電子放出素子の概略断面図である。図2は、図1(a)、(b)に示す電子放出素子の平面図である。
電子放出素子1は、電極基板とも称される第1電極2と、所定の開口部4を有する絶縁部3と、絶縁部3の開口部4内に形成された電子加速層とも称される中間層である半導電部5と第2電極6とを備える。
電子放出装置では電源の負極は第1電極2に接続され、電源の正極は第2電極6に接続される。このため、電子放出素子1を流れる電子は、半導電部5において第1電極2から第2電極6に向けて加速され、一部の電子がホットエレクトロンとして第2電極6から放出される。このような電子放出装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置において、感光体ドラム表面を帯電させる帯電装置として好適に使用することができる。それ以外にも、電子線硬化装置や、発光体と組み合わせることによる画像表示装置、放出された電子が発生させるイオン風を利用するイオン風発生装置等に適用することができる。
第1電極2は、金属板などの電気伝導性を備えた支持体からなり、十分な電気伝導性を備えていれば良く、また、陽極酸化により酸化皮膜が形成できる金属であれば良い。具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレスなどの導電性を有する材料から形成される。第1電極2は、これ自体の剛性を持たせるために、表面に金属膜が形成されたガラス基板やプラスティック基板などとすることもできる。たとえば、FTO透明導電性基板や透明導電膜(ITO膜)ガラス基板を用いても良い。このとき、ガラス基板のような絶縁基板であるとき、金属膜との間に導電層を形成し、金属膜と導電層とを電極として用いてもよい。電極として機能する電極膜(陽極酸化後に残存する部分)の厚さは、例えば、10μm以上であることが好ましい。
絶縁部3は、第1電極2から第2電極6に対して直接的に電子が移動することで電子放出が妨げられることを防止するために、電気的に絶縁性を有すればよい。絶縁部3の厚みは、1μm〜5μm程度とすればよい。1μmより薄いと短絡の危険性が増し、5μmより大きいと電子放出性能に影響を与える。
絶縁部3は、第1電極2の酸化物からなる。より具体的には、第1電極2にアルミを用い、金属酸化膜である酸化アルミニウム(Al)を、第1電極2上に陽極酸化処理などによって形成すればよい。陽極酸化を用いた場合、図1(b)のようにできた酸化膜が電極内部まで形成され、つまり第1電極の表面より上部と下部に酸化物が存在する構造になってもかまわない。
電子放出領域7内に存在する絶縁部3あるいは半導電部5は海島構造をとりうる。海島構造は、千鳥状、並列状、不定形状等の配列をとりうる。図11には海島構造の配列の例を示す。島状部分が絶縁部3あるいは半導電部5である。具体的な配列は、図11(a)丸千鳥、(b)丸並列、(c)角千鳥、(d)角並列、(e)長角並列、(f)菱形、(g)亀甲である。
絶縁部3には、第1電極2で発生された電子を放出させるための開口部4が設けられている。例えば、開口部4は、第1電極2にアルミを用い、絶縁部3を陽極酸化処理などによって作製する場合、陽極酸化処理時にマスクをするか、全面に陽極酸化処理を施した後に、苛性ソーダなどを用いてエッチング処理を行うことで形成することで作製が可能である。
半導電部5は、第1電極2上であって開口部4内に形成される。半導電部5の厚みは、0.3μm〜5μm程度のとすればよい。
半導電部5は、絶縁性微粒子5aと、導電性微粒子5bを含んでいる。特に光触媒性能を有する絶縁性微粒子5aに導電性微粒子5bが担持された担持粒子を複数含んでいるのが好ましい。また、バインダーである絶縁性樹脂を含んでいても構わない。バインダー樹脂は、絶縁性を有する材料であれば特に限定は無く、殆どの樹脂が使用可能である。例えば、シリコーン樹脂を使用でき、その硬化タイプも特に限定されない。絶縁性微粒子5aと導電性微粒子5bは量的には絶縁性微粒子5aが多く、サイズ的には絶縁性微粒子5aの二次粒子径は導電性微粒子5bの粒子径より大きい必要がある。
絶縁性微粒子5aの平均二次粒子径は0.05μm〜5.0μmであることが好ましい。電気泳動堆積法で絶縁性微粒子を堆積させることを考えた場合、0.05μmより小さいと分散させることが難しくなり、5.0μmより大きいと半導電部の膜厚が厚くなりすぎるため、導通路を形成できなくなり電子放出デバイスとして機能しない。また、平均一次粒子径は、1nm〜1000nmであることが好ましく、5nm〜400nmがより好ましく、さらに20nm〜200nmが好ましい。
絶縁性微粒子5aの材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、タンタル酸ナトリウム(NaTaO)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マンガン等の金属酸化物、LaTiON、CaTaON、SrTaON、BaTaON、LaTaON、CaNbON、SrNbON、BaNbON、LaNbONといった遷移金属を含むタンタル(ニオブ)系酸窒化物、酸窒化タンタル等の酸窒化物、窒化アルミ、窒化ガリウム、窒化タンタル等の窒化物、硫化カドミウム等の硫化物などを用いることができる。特に、光触媒性能を有する絶縁性微粒子5aの材料としては、半導体材料であってもよく、光触媒機能を有する金属酸化物、酸窒化物、窒化物、硫化物が好ましく、例えば酸化チタン(TiO),チタン酸バリウム(BaTiO),チタン酸ストロンチウム(SrTiO),酸化タングステン(WO)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO)、酸化亜鉛、硫化カドミウムなどを用いることができる。又は、これらの組み合わせて使うことも可能である。特に、後述する光析出法を用いた製造方法を適用するためには光触媒として機能する金属酸化物、酸窒化物、窒化物、硫化物であることが必須となる。この中で、好適には酸化チタン(TiO)を用いる。酸化チタンの結晶構造は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれであってもよい。酸化チタンは、平均二次粒子径が0.1μm〜5.0μm、平均一次粒子径は、1nm〜1000nmであることが好ましい。
導電性微粒子5bは、絶縁性微粒子5aで担持可能であれば、どのような導電体でも用いることができる。ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、抗酸化力が高い導電体である必要があり、金属が好ましく、さらに貴金属が好ましい。例えば、金、銀、銅、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、コバルトといった材料が挙げられる。また、導電性微粒子5bの材料は、フラーレン類やカーボンナノチューブ類などの金属以外の微小粉体も使用できる。導電性微粒子5bは絶縁性微粒子5aよりも粒径が小さく、その範囲は3nm〜80nmであり、好ましくは5nm〜10nmの範囲である。
第2電極6は、これに限定されるものではないが、全体としては過剰な破壊が防止されるように、金などの金属材料、半導体、ITO(indium tin oxide)、カーボン等のように電気伝導性の高い複数の導電性材料の薄膜によって構成することができる。第2電極6の総層厚は、その面内抵抗と電子放出量とを考慮して決定するとよいが、一例を示すと、例えば、0.01μm〜0.1μmとすればよい。第2電極6は、各層を順次成膜して積み上げてもよいし、一層形成後に当該層にイオン注入を行って変質させてもよい。
図3〜図6は、図1(a)、(b)の電子放出素子1の製造工程の1例を示す概略平面図である。
工程(1):絶縁部3形成工程
図3に示すように、第1電極2上に、絶縁部3を形成する。図3では例として電子放出領域7内に、絶縁部3の海島構造の配列として丸千鳥(図11(a))の場合を示している。例えば、第1電極2は、アルミニウム板を使用した場合、絶縁部3は、スクリーン印刷法によって、半導電部5に電流を流す領域のための開口部4を有するようにパターニング形成した後に、陽極酸化処理により絶縁部3部分にアルマイトを形成させることができる。なお、実際には、絶縁部3をアルマイトとすると、開口部4の端部は図1(a)、(b)に示すようにきれいな壁状とはならず、logカーブのような鈍った形状となる。
工程(2):絶縁性微粒子層5d形成工程
図4に示すように、第1電極2上であって開口部4内に、半導電部5を構成する絶縁性微粒子5aからなる絶縁性微粒子層5dを形成する。形成する方法としては、後述する電気泳動堆積法によって形成することができる。
工程(3):導電性微粒子5b担持工程
図5に示すように、絶縁部3及び絶縁性微粒子5aからなる絶縁性微粒子層5dを形成した第1電極2のうち、絶縁性微粒子5aに導電性微粒子5bを担持させ担持粒子5cを形成する。導電性微粒子5bを担持させる手法については無電解メッキや担持させたい金属イオンを含む水溶液を還元して金属を担持させる方法として含浸法、クエン酸還元法、空気還元法や後述する光析出法がある。
工程(4):第2電極6形成工程
図6に示すように、半導電部5上に、第2電極6を、例えば金属を用いて真空蒸着法又はスパッタ法を用いて電極を形成する。第2電極6が2層以上の構成の場合は、各種金属をそれぞれのパターンに合わせて順次、真空蒸着法又はスパッタ法等を用いて形成する。
上述の工程で、上記工程(2)と(3)を以下の工程(2a)と(3a)で置き換えることも可能である。
工程(2a):担持粒子5c作製工程
絶縁性微粒子5aへの導電性微粒子5bを担持させ、担持粒子5cを作製する。担持させる方法には、含浸法、イオン交換法、析出沈殿法、共沈法、グラフティング(接着)法などがある。例えば、含浸法は、金属ナノ粒子が分散したコロイド溶液中に、担持媒体粉体を浸漬した後、コロイド溶媒を蒸発乾固させて得られた乾固物を水素還元する方法である。また、イオン交換法は、金属のカチオン又は錯体アニオンを、担持媒体粉体の表面の水素イオン又は水酸化イオンとイオン交換した後、水洗、ろ過して得られたものを、乾燥、焼成、還元する方法である。析出沈殿法は、金属塩水溶液のpHを調節することにより、担持媒体粉体の表面にだけ金属水酸化物の沈殿を析出担持し、水洗、ろ過して得られたものを、乾燥、焼成、還元する方法である。共沈法は、触媒金属や金属酸化物などを担持した担持媒体複合体の原料となる各々の金属塩を混合水溶液とし、アルカリを加えることによって得られる不溶性水酸化物又は炭酸塩を水洗し、ろ過して得られたものを、乾燥、焼成、還元する方法である。グラフティング法は、例えば、有機金属錯体の蒸気を担持媒体粉体の表面に吸着させ、それを大気中で焼成した後、水素還元を行う方法などである。
工程(3a):担持粒子層5e形成工程
第1電極2上であって開口部4内に、半導電部5を構成する担持粒子5cからなる担持粒子層5eを形成する。形成する方法としては、後述する電気泳動堆積法によって形成することができる。
上述の工程のほかに絶縁性微粒子層5dの密着性を高め、剥離を予防するために、上記工程(2)と(3)の間で絶縁性微粒子層5dのアニール工程を加えることも可能である。
工程(2’):絶縁性微粒子層5dアニール工程
工程(2)で形成した絶縁性微粒子層5dにアニール処理を施す。アニール処理は空気中あるいは非酸化性雰囲気、真空中で、例えば100℃〜500℃の温度で、約1時間〜4時間行うことでできる。
また、半導電部5にバインダーを含ませる構造を作製するためには、上記工程(3)と(4)の間で、以下の工程を追加することも可能である。
工程(3’):バインダー含有工程
バインダーである絶縁性樹脂を担持粒子5cかつ/または絶縁部3の上に供給して担持粒子5cを含んだ半導電部5を形成する。このバインダー含有工程では、絶縁性樹脂の供給量や方法等によって半導電部5の厚さを調整することで、第1電極2と第2電極6との距離を調整することができる。バインダーを含んだ半導電部5の形成は、例えばスピンコート法やスプレーコート法を用いてシリコーン樹脂などを塗布して硬化させるなどの方法を用いることができる。
図7および図8は、図1(a)、(b)に示す電子放出素子1における半導電部5を形成する一部の手法について示しており、図7(a)、(b)は電気泳動堆積法に関し、図8は光析出法に関する簡易説明図である。
電気泳動堆積法:
電気泳動堆積法は微粒子を堆積させたい基板に形成するために、微粒子を分散媒に懸濁させた溶液中に、該基板を陽極もしくは陰極として、対極である陰極または陽極とともに浸漬した後、該基板と対極間に制御された電流および/または電圧を印加し、懸濁させた微粒子を該基板上に電気泳動で堆積させる方法である。ここで、懸濁させる微粒子は正または負に帯電し得るものである必要がある。また、分散媒としては、微粒子堆積を行っている間に分散媒自体の電気分解が起こること等による、微粒子堆積を阻害しない限り、特に制限がない。分散媒としては、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、プロピレンカーボネートやジメチルカーボネートのカーボネート類、ジメチルエーテルやエチルメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチルや酢酸メチル等のエステル類、テトラヒドロフラン等のフラン類などがある。分散媒以外に界面活性剤等の分散助剤を用いることも可能である。分散させるための微粒子の濃度は0.1〜10wt%が好ましい。分散する微粒子の粉体物性にもよるが、10wt%より大きいと分散が十分でない場合があり、0.1wt%より小さい場合は堆積する量が少なくなる場合がある。
懸濁する微粒子の粒子表面を正あるいは負に帯電させるには添加剤として帯電剤を使用することも可能である。例えば、正に帯電させるためには、ヨウ素が使用できる。また、負に帯電させるためにはH+を受け取るもの( プロトン受容体)としての塩基性化合物が使用できる。塩基性化合物としては、カルボン酸誘導体、脂肪族アミン、複素環アミン、芳香族アミン等が挙げられる。具体的には、カルボン酸誘導体としては、例えば、テトラメチルグアニジン( T M G ) 、グアニジン、ジフェニルグアニジン等が、脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、トリエチルアミン( T E A ) 、トリブチルアミン等が、複素環アミンとしては、ピリジン( P y )等 が、芳香族アミンとしてはアニリン等が挙げられる。
図7(a)、(b)は、例えば、絶縁性微粒子5aとして酸化チタン(TiO)を用いた場合の、電気泳動堆積法による絶縁性微粒子層5dの形成に関する簡易説明図である。
図7(a)には、絶縁性微粒子5aであるTiOが分散されたヨウ素とアセトンとを含む懸濁溶液200が反応容器100中に存在していることを示している。
図7(b)には、図7(a)に示す懸濁溶液200を用い、電源300に接続された電気泳動装置によって、第1電極2に絶縁性微粒子5aであるTiOを付着させた状態を示している。第1電極2を陽極電極として、対極400としてアルミニウムなどを用いて陰極電極として、電源300に接続した。陰極電極は、一般的には、SUSやPt(板、ワイヤー)等を用いられることが多い。この電源300は、定電流、定電流パルス、定電圧、定電圧パルス、定電力等、電流および/または電圧を制御することが可能であり、制御された電流および/または電圧を陽極電極と陰極電極との間に供給することが可能である。
また、この電源300によって印加する電圧は、約2V〜10Vとすればよい。この電源300から定電流/定電圧パルスを供給する場合には、1Hz〜1000Hzの周波数とすればよい。
さらに、電気泳動装置によって第1電極2を処理する時間は、約10秒〜5分とすればよい。この印加電圧が高いほど、また、処理時間が長いほど、半導電部5の厚みが増すので、絶縁部3の厚さとの兼ね合いで、これらの電圧値または電流値及び処理時間を決定すればよい。
光析出法
ここでの光析出法とは、光触媒性能を持つ絶縁性材料上に、担持させたい金属に関連する金属イオン等を含む溶液(反応溶液)を接触させ、接触させた状態で、光触媒性能を発揮する光を当てることにより、光触媒性能を持つ絶縁性材料(半導体材料も含む)で励起した電子により、金属イオン等を還元し、光触媒性能を持つ絶縁性材料上に金属を担持させる方法である。ここで、担持させたい金属に関連する金属イオン等を含む溶液に用いられる溶媒としては、担持させたい金属に関連する金属イオン等が溶解する溶媒であれば特に制限がない。ただ、金属イオンが金属に還元されるので、それと対をなす光触媒性能を持つ絶縁性材料上でおこる酸化反応が、金属イオンの還元を邪魔しない溶媒であればよい。好適な溶媒としては水、メタノール水溶液がある。アルコール溶媒を含むと光触媒材料のバンドギャップ以上のエネルギーをもつ光を照射することで価電子帯の電子が励起して伝導帯へ移り、価電子帯に生じた電子の穴、すなわち正孔と反応してアルコールを酸化させる。正孔が反応で消費されることで、励起電子と正孔の再結合を抑制し、還元反応を促進させることができる。光析出法は撹拌することでより反応が進行するため、撹拌しながらAgを担持させてもよい。また、光を当てる際に用いる光源としては、光触媒性能を発揮することのできる波長を有する光源を用いる。例えば、酸化チタン(TiO)の場合では、紫外線ランプを用いることができる。
図8には、絶縁性微粒子5aに導電性微粒子5bを担持させたる光析出法の例を示す。この例では、絶縁性微粒子5aとして酸化チタン(TiO)上に導電性微粒子5bとして銀を担持させることとした場合、反応溶液500として硝酸塩水溶液が入れられた容器600に、光触媒性能を持つ絶縁性微粒子(TiO)から成る絶縁性微粒子層5dを形成した第1電極2を投入して、光析出法によって銀を析出させるために、光源700として紫外線照射器から紫外線を照射した。こうして、絶縁性微粒子5aであるTiOに対して、導電性微粒子5bである銀を担持させることができる。
以下の実施例では本発明の電子放出素子1について説明する。なお、この実施例は一例であって、本発明を制限するものではない。実施例に用いる電子放出素子1は以下のように製造した。
工程(1―1):
第1電極2として厚み0.5mmのアルミ基板を用い、5mm×5mmの電子放出領域7内について、絶縁部3の海島構造の配列として角並列(図11(d))にするために下記の実施例1〜3及び比較例1で示したサイズ、絶縁部3の海島構造の配列として丸千鳥(図11(a))にするために下記の実施例4で示したサイズ、そして、半導電部5の海島構造の配列として角並列(図11(d))にするために下記の実施例5で示したサイズでマスキングし、20℃±1℃の15wt%硫酸浴で、電流密度1A/dmで、250秒間アルミ基板を陽極酸化した。その後蒸留水(pH:6.0、90℃)で約30分間、封孔処理することで、厚さ2μmの絶縁層3を作製した。尚、封孔処理にはpH:5.5〜7.5の蒸留水を90〜100℃で行うことが可能である。
工程(1―2):
次に中間層5の電気泳動堆積法によって絶縁性微粒子層5dを形成させた。電気泳動堆積に用いる分散させた懸濁溶液200は、以下のように調製した。TiO粒子(X線粒径:200nm)0.08g、よう素0.02g、アセトン100mlを混合し、30分間撹拌した。その後3分間超音波分散させ、TiOを分散させた懸濁溶液(0.8g/L)を調製した。次に、図7(b)に示す、陰極に工程(1―1)で作製した絶縁層3を形成した第1電極2、対極400にアルミニウム板(厚さ0.5mm)を設置し、電圧10V、20秒間で略針状のTiO2粒子をアルミニウム基板が露出している部分に堆積させた。ここで、電極間の距離は1cmとしている。膜厚は1.3μmであった。
工程(1―3):
次に、図8に示す光析出法により、略針状のTiO粒子状に導電性微粒子を担持させた。担持させたい金属の金属イオンを含む反応溶液500として5μmol/L硝酸銀水溶液100mlを用い、絶縁性微粒子層5dが浸る位置まで絶縁性微粒子層5dを形成した第1電極2を設置し、絶縁性微粒子層5dに紫外線が当たるよう、光源700に紫外線ランプを用い、照射した。酸化チタンの光触媒性能により、銀イオンがTiO2上で還元されて銀のナノ粒子を生成し、銀の微粒子が担持された担持粒子5cを得た。
これを室温雰囲気中で一晩自然乾燥させ、担持粒子5Cからなる中間層5を持つ図5に示す構造体を作製した。
工程(1―4):
続いてマグネトロンスパッタ装置を用いて、中間層5上にAuを材料とする層厚40nm、素子面積よりも一回り大きい7mm×7mmの範囲をスパッタリングして第2電極6を形成することにより、実施例の電子放出素子1を得た。
[実施例1]
上記工程(1−1)で図11(d)に示すピッチp1、p2:400μm、線幅d1、d2:200μm、とし、半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7の面積×100):75%とした絶縁部3の角並列状の海島構造を持つように形成し、工程(1−2)〜(1−4)を行うことにより電子放出素子1を得た。
[実施例2]
上記工程(1−1)で図11(d)に示すピッチp1、p2:400μm、線幅d1、d2:100μm、とし、半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7の面積×100):44%とした絶縁部3の角並列状の海島構造を持つように形成し、工程(1−2)〜(1−4)を行うことにより電子放出素子1を得た。
[実施例3]
上記工程(1−1)で図11(d)に示すピッチp1、p2:500μm、線幅d1、d2:100μm、とし、半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7の面積×100):36%とした絶縁部3の角並列状の海島構造を持つように形成し、工程(1−2)〜(1−4)を行うことにより電子放出素子1を得た。
[比較例1]
上記工程(1−1)で海島構造のない状態とし、半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7の面積×100):100%とした絶縁部3を形成し、工程(1−2)〜(1−4)を行うことにより電子放出素子1を得た。
[実施例4]
上記工程(1−1)で図11(a)に示すピッチp3、p4:400μm、直径φ1:200μmとし、半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7×100):61%とした絶縁部3の丸千鳥状の海島構造を持つように形成し、工程(1−2)〜(1−4)を行うことにより電子放出素子1を得た。
[実施例5]
上記工程(1−1)で図11(d)に示すピッチp1、p2:400μm、線幅d1、d2:50μm、とし、半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7の面積×100):77%とした半導電部5の角並列状の海島構造を持つように形成し、工程(1−2)〜(1−4)を行うことにより電子放出素子1を得た。
[比較例2]
特許文献3に示された実施するための形態と同様に作製した図9の電子放電素子50について示す。
電極基板52は、厚さ0.7mm、縦横41mm×45mmのガラス基板の表面に、スパッタ法によって、モリブデンを20nm成膜し、さらに重ねてアルミニウムを10nm成膜し、再びモリブデンを20nm成膜したものである。
まず、電気絶縁層形成工程では、電気絶縁層55および開口部56を形成する。電極基板52の表面に、感光性アクリル樹脂を含んだ溶液をスピンコート塗布法によって塗布して成膜し、硬化後に2μmの膜厚となるように形成する。感光性アクリル樹脂のベースポリマーは、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとのポリマーであり、感光部分が現像液に溶解するものである。具体的には、粘度27cpのアクリル樹脂を用意し、用意したアクリル樹脂を、洗浄済の電極基板52の表面へ、スピン回転数1000rpmで塗布する。続いて、アクリル樹脂が塗布された電極基板52を100℃に加熱し、感光性アクリル樹脂の溶媒、乳酸エチル等の溶媒の乾燥を行い、熱硬化させる。
次に、アクリル樹脂が塗布された電極基板52に対して、開口部56を形成するための金属マスクパターンを重ね露光を行う。開口部56によって形成される開口56Aは、60μm角の正方形である。金属マスクパターンは、縦横32.2mm×32.2mmの領域に、縦横135個×135個で計18225個の開口パターンが形成されている。
金属マスクパターンが重ねられて露光されたアクリル樹脂を、露光後に、アルカリ性溶液、ここではテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイドの溶液で現像処理する。アルカリ性溶液によって、露光された部分のアクリル樹脂がエッチングされて、所望の形状の開口部56が得られる。
さらに、開口部56が形成されたアクリル樹脂は、純水によって、表面に残った現像液が洗浄された後、加熱され、架橋反応によって硬化させる。開口部56が形成されたアクリル樹脂である電気絶縁層55および電極基板52は、オーブン内に設置され、200℃で加熱される。
次の微粒子層形成工程では、微粒子層53を形成する。10mLの試薬瓶にn−ヘキサン溶媒を1.5g入れ、さらに絶縁性微粒子57Aとして0.25gのシリカ粒子を投入して、試薬瓶を超音波分散器にかけて分散させる。ここでシリカ微粒子は、キャボット社製の平均粒子径50nmのフェームドシリカC413である。このシリカ微粒子の表面は、ヘキサメチルシジラザン処理されている。5分間分散器にかけることによって、シリカ微粒子は、n−ヘキサン溶媒内に乳白色に分散する。
続いて、導電性微粒子57Bとして0.06gの銀ナノ粒子を投入し、同様に超音波分散器にかけて分散させる。この銀ナノ粒子は、応用ナノ研究所製であり、アルコラートの絶縁被覆を有した平均粒子径10nmのものである。ここで銀ナノ粒子を分散させた分散液を分散液Aとする。
同様に、10mLの試薬瓶にn−ヘキサン溶媒を1.5g入れ、絶縁性微粒子57Aとして0.25gのフェームドシリカC413のシリカ粒子を投入して、同様に試薬瓶を超音波分散器にかけて分散させる。次に、シリコーン樹脂溶液を0.036g投入し、同様に超音波分散器にかけて分散させる。このシリコーン樹脂は、東レ・ダウコーニング製の室温・湿気硬化タイプのSR2411シリコンレジンである。ここでシリコーン樹脂を分散させた分散液を分散液Bとする。
電極基板52に形成された、開口部56を有する電気絶縁層55の表面に、分散液Aを滴下し、スピンコート法を用いて第1微粒子層531を形成する。第1微粒子層531が形成された電極基板52は、150℃のホットプレートを用いて1分間加熱乾燥(以下、「仮焼成」という)させる。さらに、分散液Bを用いて同様に成膜して第2微粒子層532を形成する。第2微粒子層532が形成された電極基板52も同様に、150℃のホットプレートを用いて1時間加熱乾燥(以下「本焼成」という)させる。
スピンコート法による成膜条件は、500回転/分(以下「RPM」という)で回転している間に、分散液Aまたは分散液Bを、電気絶縁層55の表面へ滴下し、続いて3000RPMにて10秒間の回転を行う。
次の除去工程では、開口部56によって形成される開口56Aに成膜された微粒子層53をそのまま残し、電気絶縁層55の表面に成膜された微粒子層のみを、スクレーパーを使用して除去する。電気絶縁層55を傷つけないために、ここでは、ポリプロピレンの刃を用いて、電気絶縁層55の表面を掻き取り、開口部56によって形成される開口56Aに成膜された微粒子層53をそのまま残し、電気絶縁層55の表面に成膜された微粒子層のみを除去する。掻き取る際に生じた微粒子のダストは、エアガンで吹き飛ばして清浄する。
次に成膜工程では、薄膜電極54を形成する。10mLの試薬瓶にエタノール溶媒を1.0g入れ、球形遮蔽体として0.1gのシリカ粒子を投入して、超音波分散器用いて5分間分散させる。ここでシリカ微粒子は、株式会社トクヤマ製の平均粒子径8μmのフュームドシリカSE−5Vであり、シリカ微粒子の表面は、ヘキサメチルシジラザン処理されたものである。ここでシリカ微粒子を分散させた分散液を分散液Cとする。
電極基板52に形成された電気絶縁層55および微粒子層53の表面に、分散液Cを滴下し、スピンコート法を用いて球形遮蔽体を均一に散布させる。散布後、電極基板52に形成された電気絶縁層55および微粒子層53が形成された電極基板52は、150℃のホットプレートを用いて1分間加熱され、溶媒を蒸発させる。
薄膜電極54の形状に対応する領域、具体的には、薄膜電極54が配置される35mm×35mmの正方形の領域が開口するメタルマスクを、球形遮蔽体が散布された電気絶縁層55および微粒子層53の表面に重ね、抵抗過熱式蒸着機を用いて、アモルファスカーボン層58を蒸着し、続けてスパッタ装置を用いて、金パラジウム(以下「Au―Pd」という)ターゲットを使用して成膜し、多孔電極層59Aの元となるAu―Pdの電極膜を得る。アモルファスカーボン層58の膜厚は10nmであり、Au―Pdの電極膜の膜厚は20nmである。
メタルマスクを取り外した後、ドライエアーを用いて薄膜電極54の表面をブローし、球形遮蔽体を除去する。球形遮蔽体が除去されたAu―Pdの電極膜が、多孔電極層59Aである。球形遮蔽体が存在していたために、アモルファスカーボン層58および多孔電極層59Aが積層されなかった部分は、薄膜電極54の孔部541を形成するための孔である。
続いて、アモルファスカーボン層58および多孔電極層59Aの形成に用いたメタルマスクを、アモルファスカーボン層58および多孔電極層59Aを積層した位置と同じ位置に、再び重ね、多孔電極層59Aが形成された部分の全面に、スパッタ法にてAu―Pdからなるベタ電極層59Bを成膜する。ベタ電極層59Bの膜厚は、20nmである。ベタ電極層59Bは、金属材料の薄膜である。ベタ電極層59Bを成膜した後、メタルマスクを取り除く。メタルマスクを取り除くことによって、ベタ電極層59Bが完成し、電子放出素子50の表面を形成する薄膜電極54が形成される。アモルファスカーボン層58および多孔電極層59Aが積層されなかった部分には、孔部541が形成されている。
以上により、本比較例2に係る電子放出素子50を作製した。
[評価]
評価装置:
図10に電子放出実験に用いた測定系を示す。電子放出素子1の第1電極2と第2電極6との間には、電源11AによりVdの電圧が印加され、対向電極12にはVeの電圧がかかるようになっている。第2電極6と電源11Aとの間を流れる電流を素子内電流Id、対向電極12に生じる電流を放出電流Ieとして測定する。このような測定系を大気中に配置して素子評価を行った。
電子放出特性:
図10の測定系について説明する。第1電極2に印加する電圧を駆動電圧Vdとし、駆動電圧Vdを印加して第2電極6まで生じた電流値を素子内電流Idとする。第2電極6と対向するように対向電極12を設置し、放出した電子に起因して生じる電流値を放出電流Ieとした。素子内電流Idに対して放出電流Ieの割合がどれくらいになるのかを効率η(=Ie/Id)で表す。回収電極と第2電極6のギャップは0.5mm、対向電極の電圧Veは600Vとした。第1電極2に印加する駆動電圧Vdは0〜26Vで、第2電極6の電位はグランド電位とした。
実施例1〜5、比較例1、2についてそれぞれ10個作成し、10個それぞれの放出電流Ieの最大値を測定し、10個内のばらつきを算出した。
[結果]
実施例1についてのばらつき具合は10個の平均値に対して±40%であった。実施例2については10個の平均値に対して±38%であった。実施例3については10個の平均値に対して±43%であった。比較例1については10個の平均値に対して±65%であった。実施例4については10個の平均値に対して±35%であった。実施例5については10個の平均値に対して±41%であった。また、10個のうちの最も大きい放出電流Ieは7×10−6A/cmであった。比較例2については10個の平均値に対して±47%であった。また、10個のうちの最も大きい放出電流Ieは2×10−6A/cmであった。
実施例1〜5及び比較例1から半導電部5の面積率(半導電部5の面積/電子放出領域7×100)が30%から80%であれば放出電流Ieのばらつきが抑えられることがわかった。また、比較例2に比べ、実施例5は簡易な構成であるにもかかわらず、放出電流Ieにおいて性能がアップすることが判明した。これについては定かではないが、絶縁部を第1電極の陽極酸化により形成していることから、電極との居粉密着性が関与していることが考えられる。
また、実施例1〜5における工程(1―2)で絶縁性微粒子層5dを形成するために用いた塗液の有効利用率は絶縁性微粒子5aを分散させた懸濁溶液200は絶縁性微粒子5aの補充を行えば、その後も使用可能であるので100%である。比較例2の微粒子層53をスピンコート法で形成した場合は、スピンコートで用いた塗液の有効利用率は電子放出素子の外にも流出してしまうので10%以下であった。
本発明に係る電子放出素子は、放電を伴わないためオゾンの発生が無く、また、安定な大気圧動作が可能である。よって、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の帯電装置や、電子線硬化装置、或いは発光体と組み合わせることにより画像表示装置、または放出された電子が発生させるイオン風を利用することにより送風装置等に、好適に適用することができる。
本発明は、各実施の形態で説明されたものに限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明に係る電子放出素子は、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置及びその帯電装置、電子線硬化装置、あるいは発光体と組み合わせることにより自発光デバイス、放出された電子が発生させるイオン風を利用することにより冷却装置等の各種装置に用いることができる。
1 電子放出素子
2 第1電極
3 絶縁部(絶縁層)
4 誘電体層
5 半導電部(中間層)
5a 絶縁性微粒子
5b 導電性微粒子
5c 担持粒子
5d 絶縁性微粒子層
6 第2電極
7 電子放出領域
11A 電源(電源部)
11B 電源
12 対向電極
50 電子放出素子
52 電極基板
53 微粒子層
54 薄膜電極
55 電気絶縁層
56 開口部
56A 開口
57A 絶縁性微粒子
57B 導電性微粒子
58 アモルファスカーボン層
59A 多孔電極層
59B べた電極層
100 反応容器
200 懸濁溶液
300 電源
400 対極
500 反応溶液
600 容器
700 光源

Claims (15)

  1. 第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた絶縁部であって、所定の開口部を有するものと、前記第1電極および前記第2電極の間において前記開口部に配設された半導電部とを備え、
    前記第1電極および前記第2電極の間に電圧を印加することによって前記第2電極から電子を放出させる電子放出素子であって、
    前記第1電極の電子放出領域内において前記絶縁部を有し、
    前記半導電部には導電性微粒子および光触媒性能を有する絶縁性微粒子が含まれることを特徴とする、電子放出素子。
  2. 前記絶縁部は、前記第1電極の酸化物からなることを特徴とする、請求項1記載の電子放出素子。
  3. 前記絶縁部は、前記第1電極の表面より上部だけでなく、前記第1電極の内部にも存在することを特徴とする、請求項2に記載の電子放出素子。
  4. 前記第1電極における前記電子放出領域で、前記半導電部と前記絶縁部による海島構造を持つことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  5. 前記海島構造は並列状あるいは千鳥状、不定形状であることを特徴とする、請求項4に記載の電子放出素子。
  6. 前記第1電極における前記電子放出領域で、前記半導電部の面積率は30〜80%であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  7. 前記第1電極は陽極酸化により酸化皮膜が形成できる金属板あるいは金属膜が形成された基板から成ることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  8. 前記開口部は、前記第1電極と前記第2電極の間を貫くものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  9. 前記第1電極上に所定の開口部を有する絶縁部を形成する絶縁部形成工程、
    前記第1電極上であって前記開口部内に中間層である半導電部を形成する半導電部形成工程、
    前記半導電部および前記絶縁部上に電子を放出するための第2電極を形成する第2電極形成工程を有し、
    前記半導電部形成工程は、電気泳動堆積によって前記半導電部を形成する工程を含み、
    前記絶縁部形成工程では、少なくとも電子放出領域内に前記所定の開口部を有する前記絶縁部を形成することを特徴とする、電子放出素子の製造方法。
  10. 前記絶縁部形成工程では前記第1電極の陽極酸化によって前記絶縁部が形成されることを特徴とする、請求項9に記載の電子放出素子の製造方法。
  11. 前記絶縁部形成工程で前記第1電極の前記電子放出領域内に前記絶縁部を形成するにあたり、前記絶縁部または前記半導電部が海島構造になるように前記絶縁部を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の電子放出素子の製造方法。
  12. 前記半導電部は導電性微粒子と絶縁性微粒子を含んでおり、前記導電性微粒子が前記絶縁性微粒子に担持された担持粒子からなることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
  13. 前記導電性微粒子は、光析出法により前記絶縁性微粒子に担持されるようになることを特徴とする請求項12に記載の電子放出素子の製造方法。
  14. 前記半導電部形成工程が、
    所定の前記開口部を有する前記絶縁部を形成した前記第1電極上に絶縁性微粒子層を形成する絶縁性微粒子層形成工程と、
    前記絶縁性微粒子層を構成する前記絶縁性微粒子に前記導電性微粒子を担持する導電性微粒子担持工程からなることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
  15. 前記電気泳動堆積では、前記絶縁性微粒子または前記担持粒子を分散媒に分散させた懸濁溶液中に、所定の開口部を有する前記絶縁層を形成した前記第1電極を陽極もしくは陰極として、対極である陰極または陽極とともに浸漬し、ついで制御された電圧および/または電流を印加することにより、前記絶縁性微粒子層または前記半導電部を構成する担持粒子層を所定の前記開口部を有する前記絶縁部を形成した前記第1電極上に形成させることを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
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