JP2019028012A - 複素誘電率測定用回路、複素誘電率測定装置及び複素誘電率の測定方法 - Google Patents

複素誘電率測定用回路、複素誘電率測定装置及び複素誘電率の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑オイルや蓄電池の電解液の劣化の原因解明や、食品の製造ラインで成分の変化の監視に使用される複素誘電率の測定方法を提供する。【解決策】複素誘電率が既知の誘電体基板の一方の面に、電極ピッチが前記基板の厚さよりも小さいくし形電極を形成したくし形電極基板を用い、このくし形電極基板の大気中のアドミタンスを測定してくし形電極単体が大気中に浮いていると仮定した場合の静電容量C0を求めるとともに、くし形電極基板の電極面を少なくともくし形電極のピッチよりも大きな厚さの被測定誘電体で覆った状態のアドミタンスを測定し、静電容量C0と誘電体基板の複素誘電率を用いて、被測定誘電体の複素誘電率を求める。【選択図】図9

Description

本発明は、液体を含む誘電体の複素誘電率を測定するための複素誘電率測定用回路、複素誘電率測定装置及び複素誘電率の測定方法に関するものであり、特に周波数に対する複素誘電率が既知の基板にくし形電極を形成したくし形電極基板を有する複素誘電率測定用回路及びそれを用いた複素誘電率の測定方法に関する。
物質の誘電率や導電率などの電気物性は,物質の内部構造を反映しているので,物質の構造や内部の状態変化を知る手段として、例えば、潤滑オイルや蓄電池の電解液の劣化の原因解明や、食品の製造ラインで成分の変化をオンラインで計測する手段など、広い分野で注目されている。
測定周波数の増加と共に誘電体の誘電率が減少する誘電緩和現象は、複素誘電率という概念を用いることにより、物質の誘電率と導電率の変化を同時に考えることができることが良く知られている。
物質の複素誘電率の測定には、誘電分光法や平板コンデンサ法など、いくつかの測定方法があり、被測定誘電体の状態や形状、さらには、測定周波数などにより適宜最適な方法が選ばれている。
図1は、平板コンデンサ法の測定原理の説明図であり、被測定誘電体10を挟んで上面電極11と下面電極12が平行に対向してコンデンサを形成している。平板コンデンサ法は、図1のコンデンサの所定の周波数におけるアドミタンスの測定値から被測定誘電体10の複素誘電率を測定する方法であり、図1の上面電極11と下面電極12の面積をA [m2],電極間距離をd [m]とすると、まず、被測定誘電体が無い状態の静電容量C0[F]は(1)式で与えられる。(1)式において、ε0は、真空あるいは大気の誘電率で、8.854×10-12[F/m]である。
Figure 2019028012
被測定誘電体の複素誘電率ε*は(2)式で定義されているので、図1のコンデンサの静電容量C*は(3)式で与えられ、この静電容量C*のアドミタンスをRpとCpの並列回路で表すと(4)式を介して、それぞれ、(5)式、および(6)式で与えられる。平板コンデンサ法は、このRpとCp より、複素誘電率ε*の実部ε1および虚部ε2を、それぞれ、(7)式および(8)式により求める方法である。
(4)式、(6)式、(8)式のω0は、周波数f0に対する角周波数でω0=2πf0であり、以下の計算式においても同様である。
(2)式〜(8)式で与えられる複素誘電率ε*およびその実部ε1と虚部ε2は、それぞれ、材料の複素誘電率を真空の誘電率ε0で除した値で、本来はそれぞれ、複素比誘電率というのが正しいが、以下の説明では、表現を簡単にするために単に複素誘電率と呼ぶことにする。また、以下の説明の中で、複素誘電率、複素誘電率ε*、複素誘電率ε11、ε12など、異なった表現が用いられているが、複素誘電率は、(2)式で表されるように、実部と虚部を有する複素数なので、いずれもこれを簡単に表現したものである。
Figure 2019028012
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(従来技術とその課題)
特許文献1には、平板コンデンサ法を用いて、潤滑オイルの複素インピーダンスを測定し、その逆数のアドミタンスの実部を抵抗成分とみなして導電率を求めるとともに、複素インピーダンスの逆数の虚部を容量成分とみなして誘電率を求めて、導電率と誘電率の変化からオイルの劣化・変質を検出する方法が開示されている。
しかしながら、この特許文献1に記載の方法では、対向電極の間隔が、潤滑オイルに加わる圧力や温度の変化などにより変化したり、対向電極の間にごみなどが挟まったりして、正しい測定ができなくなるという問題がある。また、対向電極の構造が立体的になるため、センサ部が大きくなるという問題がある。
非特許文献1には前記、平板コンデンサ法の欠点を除去した方法として、誘電体基板の一方の面にくし形電極を形成して2端子型誘電センサとし、くし形電極を覆うように被測定誘電体を接触させ、そのときのアドミタンスを測定して被測定誘電体の誘電率と導電率を測定する方法が示されている。この中では、被測定誘電体の誘電率に起因する静電容量Cmutを求めるために、誘電センサ全体の静電容量Ctotからくし形電極の基板材料に起因する静電容量Cbaseを差し引く方法が示されているが、基板材料の複素誘電率の寄与を含めて被測定誘電体の複素誘電率を求める方法は示されていない。さらに、非特許文献1には、被測定誘電体の誘電率に起因する静電容量Cmutを求めるために必要な、このくし形電極だけが空中に浮いていると仮定した場合の静電容量Cairを求めるために、導電率がほとんど無視でき、誘電率が既知の液体を用いて測定する方法が示されているが、この方法では、
・標準液体として用いる試料の測定周波数による特性変化の補正や、経時変化の影響の補正が行われていないために、測定精度が低下するという問題がある。
・さらに、非特許文献1に記載の方法では、くし形電極の基板材料に起因する静電容量Cbase の中に、基板の厚さの影響が考慮されていないため、もし、薄い基板を用いた場合には、実効的な複素誘電率の値が小さくなる上に、基板の裏側に何か物体が近接した場合、その近接した物体の誘電特性の影響を受け、測定精度が低下するという問題がある。
・さらに、非特許文献1に記載の方法では、くし形電極を覆うように接触させている被測定誘電体の厚さの影響も考慮されていないため、被測定誘電体の厚さにより、測定値が変化するという問題がある。
・また、特許文献1や非特許文献1に開示されているインピーダンスあるいはアドミタンスの測定には、専用の計測装置を用いており、特に、誘電センサを個々の蓄電池などに搭載しようとした場合には使用が困難である。
特開2009−2693号公報
The Handbook of Dielectric Analysis and Cure Monitoring ; Lambient Technologies
本発明は、従来の平板コンデンサ法の欠点である、対向電極の間隔が変化したり、対向電極の間にごみなどが挟まったりして、測定精度が低下するという問題を解決するとともに、従来のくし形電極法の欠点である、標準液体として用いる試料の測定周波数や経時変化の影響の補正が行われていないことや、くし形電極の基板の厚さや被測定試料の厚さの影響が考慮されていないことなどによる測定精度の低下や、専用の計測装置を用いて測定する必要があるという問題点を解決することを課題として、被測定誘電体の材料定数としての複素誘電率を高精度に測定可能な複素誘電率測定用回路、複素誘電率測定装置及び複素誘電率の測定方法を提供するものである。
本発明の複素誘電率測定用回路は、複素誘電率が既知の誘電体基板の一方の面にくし形電極が形成され2端子構成された、同一特性を有する2つのくし形電極基板と、並列接続された2つのくし形電極基板の一方の端子に電圧を印加したときの、前記2つのくし形電極基板を流れる電流の差分に対応する信号を出力する差分検出器と、前記印加電圧と前記差分検出器の出力信号との位相に対応する信号を出力する位相検出器とを備えることを特徴とする。
本発明の複素誘電率測定装置は、上記構成の複素誘電率測定用回路と、差分検出器の出力信号及び位相検出器との出力信号に基づいて、2つのくし形電極基板のうちの一方のくし形電極基板のくし形電極を覆うように配置された被測定誘電体の複素誘電率を求める演算処理手段とを備えることを特徴とする。
本発明の複素誘電率の測定方法は、上記構成の複素誘電率測定用回路の2つのくし形電極基板の一方の端子に電圧を印加し、前記2つのくし形電極基板を流れる電流の差分に対応する差分検出器の出力信号と、印加電圧と差分検出器の出力信号との位相に対応する位相検出器の出力信号とに基づいて、2つのくし形電極基板のうちの一方のくし形電極基板のくし形電極を覆うように配置された被測定誘電体の複素誘電率を演算処理により求めることを特徴とする。
本発明によれば、
周波数f0における複素誘電率が既知の誘電材料からなる誘電体基板の一方の面に、電極ピッチが少なくとも誘電体基板の厚さよりも小さいくし形電極を形成してくし形電極基板からなる誘電センサとし、周波数f0における誘電センサの大気中におけるアドミタンスから並列等価回路定数Cp1とRp1を求め、このRp1とCp1および誘電体基板の複素誘電率の値を用いてくし形電極単体が大気中に浮いていると仮定した場合の静電容量C0を求めるとともに、誘電センサの電極面を、少なくともくし形電極のピッチよりも大きな厚さの被測定誘電体で覆った状態の並列等価回路定数Cp2とRp2を求め、このCp2とRp2、静電容量C0および誘電体基板の複素誘電率を用いて、被測定誘電体の複素誘電率を求めることを特徴とする複素誘電率の測定方法および誘電センサが得られる。
また、本発明によれば、
特性のほぼ等しい2個の上記誘電センサを近接して配置し、それぞれの誘電センサの一方の端子を接続して周波数f0の交流電圧を印加するとともに、それぞれの誘電センサの他方の端子をそれぞれオペアンプで構成される仮想接地型電流−電圧変換回路に接続して、それぞれの誘電センサを流れる電流を検出可能とし、一方の誘電センサのくし形電極部を少なくともくし形電極のピッチよりも大きな厚さの被測定誘電体で覆った状態におけるそれぞれの誘電センサを流れる電流の差を求め、この電流の差を印加電圧で除した商から被測定誘電体によるアドミタンス変化を求め、このアドミタンス変化の並列等価回路定数△Rpと△Cpと、誘電体基板の複素誘電率の値を用いて、被測定誘電体の複素誘電率を求めることを特徴とする複素誘電率の測定方法および誘電センサが得られる。
本発明によれば、誘電体基板の複素誘電率の影響、基板の厚さの影響、および被測定誘電体の厚さの影響を含めて、被測定誘電体の複素誘電率の値を正しく測定することができる。
また、本発明によれば、簡単な回路で、複素誘電率を求めるための被測定誘電体によるアドミタンス変化△Yを求めることが可能となり、アドミタンスを測定するための計測器が不要となる。
平板コンデンサ法の測定原理説明図である。 本発明のくし形電極基板からなる誘電センサの構造例の概略を示す平面図である。 図2に示した本発明のくし形電極基板からなる誘電センサの概略断面図である。 図3に示した本発明のくし形電極基板からなる誘電センサの電極面が被測定誘電体で覆われた状態を示す概略断面図である。 被測定誘電体が無い場合の基板の厚さに対するRpとCpの計算結果である。 被測定誘電体の厚さに対するRpとCpの計算結果である。 二つの等しいアドミタンスの一方にアドミタンス△Yが付加された場合の△Yを求める方法の説明図である。 二つの等しいアドミタンスの一方にアドミタンス△Yが付加された場合の△Yを求める方法の説明図である。 本発明の誘電センサを用いて構成した付加アドミタンス△Yを求める回路構成例を示す回路ブロック図である。 本発明のくし形電極基板の別の電極構成の一例を示す平面図である。
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら,かかる実施の形態例が,本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(本発明のくし形電極基板の構造と複素誘電率の測定原理の説明)
図2は、本発明のくし形電極基板からなる誘電センサの構造例の概略を示す平面図である。図2において、誘電体基板20の一方の面に、帯状電極21および22が複数個形成され、それぞれ、一つおきの帯状電極がそれぞれ共通電極23および24に接続され、それぞれ、測定端子25および26に接続されている。したがって、図2に示した本発明の2端子型くし形電極基板からなる誘電センサは、測定端子25および測定端子26から見ると、一つのコンデンサと考えることができる。
図3は、図2に示した本発明のくし形電極基板からなる誘電センサの概略断面図であり、帯状電極21、22が、ガラスエポキシなどの誘電体基板20の一方の面に形成されている。
図4は、図3に示した本発明のくし形電極基板からなる誘電センサの電極面が被測定誘電体で覆われた状態を示す概略断面図であり、帯状電極21、22が、ガラスエポキシなどの誘電体基板20の一方の面に形成され、くし形電極部分が、被測定誘電体47で覆われている。
図2、図3、および図4においては、帯状電極の形状、寸法などは、構造の理解を容易にするために、概略的に示されており実際のものと異なっている。
図2〜図4において、くし形電極が空中に浮いていると仮定した場合の静電容量C01は(9)式で与えられる。
Figure 2019028012
ここに、Seとdeはそれぞれ、くし形電極の形状や寸法によって定まる実効的な電極面積および実効的な電極間隔であり、それぞれ別々に求めることは難しいが、Seとdeの比は定数となる。
次に、このくし形電極が複素誘電率ε1*の材料の中に埋もれていると仮定した場合の静電容量C1*は(10)式で与えられる。
Figure 2019028012
同様に、このくし形電極が複素誘電率ε2*の材料の中に埋もれている場合の静電容量C2*は(11)式で与えられる。
Figure 2019028012
従って、図4に示すように、このくし形電極の下半分が複素誘電率ε1*の材料で覆われ、上半分が複素誘電率ε2*の材料で覆われている場合の静電容量C12*は、(10)式の静電容量C1*と(11)式の静電容量C2*の半分ずつの和で与えられると考えられ、(12)式で与えられる。
Figure 2019028012
(12)式で表されるコンデンサの静電容量C12は、図4に示すように、くし形電極基板の電極面が被測定誘電体で覆われている場合の静電容量と考えられるので、このアドミタンスY2を求めると(13)式で与えられ、さらに、アドミタンスY2を(13)式で示すように、抵抗Rp2とコンデンサCp2の並列回路で表すと、Rp2、Cp2は、それぞれ、(14)式、(15)式で与えられる。
Figure 2019028012
Figure 2019028012
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一方、くし形電極基板単体のアドミタンスY1を抵抗Rp1と容量Cp1の並列回路で表した場合、Rp1とCp1は、(14)式と(15)式において、被測定誘電体の複素誘電率として真空の複素誘電率を用いてε21=1、ε22=0とすることにより得られ、それぞれ、(16)式と(17)式で与えられる。
Figure 2019028012
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したがって、くし形電極基板単体とくし形電極基板の電極面を被測定誘電体で覆った場合の並列抵抗の変化と並列容量の変化をそれぞれ、△Rp、△Cpとすると、それぞれ、(18)式および(19)式で与えられる。
Figure 2019028012
Figure 2019028012
したがって、もしC01と誘電体基板の複素誘電率ε11とε12が既知の場合、△Rp、△Cpがわかれば、被測定誘電体の複素誘電率ε21およびε22は、それぞれ(20)式、(21)式から求めることができる。
Figure 2019028012
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また、C01が不明な場合には、誘電体基板の複素誘電率ε11とε12がわかれば、くし形電極基板単体の並列容量Cp1を測定することにより、(17)式により求めることができる。
(9)式〜(21)式の手順で説明したように、本発明では、あらかじめ誘電体基板の複素誘電率を知る必要があるが、誘電体基板の複素誘電率は、前述した(1)式〜(8)式の手順により、厚さDが既知の基板材料の両面に面積Aの対向電極を形成し、所望とする周波数におけるアドミタンスYを測定し、並列等価回路定数RpとCpを求めることにより、所望とする周波数における誘電体基板の複素誘電率ε11とε12の値を容易に求めることができる。
以上の手順により、非特許文献1に記載されているくし形電極基板を用いた測定方法では不可能であった、誘電体基板の複素誘電率の影響を考慮した状態で被測定誘電体の複素誘電率を測定することができる。
(くし形電極基板の厚さと被測定誘電体の厚さに要求される特性の確認)
以上の説明では、くし形電極が複素誘電率ε1*の物体や複素誘電率ε2*の物体の中に埋もれていると仮定しており、誘電体基板の厚さや被測定誘電体の厚さは十分に厚いと暗黙的に仮定している。しかしながら、実用的には、誘電体基板や被測定誘電体の厚さは薄い方が望ましいため、どの程度の厚さが適しているのかを、確認するために、実測した誘電体基板の複素誘電率の値と、被測定誘電体として複素誘電率の値が一般的に知られているグリセリンの値を用いて有限要素法により計算した。
図5は、被測定誘電体が無い場合の誘電体基板の厚さに対するRpとCpの計算結果であり、基板材質として、ε11=5.5、ε12=0.1のエポキシ基板を用い、導体幅0.25mm、電極間隔0.25mm、電極長さ7mm、電極対数8個としている。
図6は、被測定誘電体として、ε21=34、ε22=0.47のグリセリンを用いた場合の被測定誘電体の厚さに対するRpとCpの計算結果であり、誘電体基板の厚さを1mmに固定し、図5と同じくし形電極を用いている。
図5と図6の結果から、誘電体基板の厚さと被測定誘電体の厚さが、くし形電極のピッチ(=導体幅+電極間隔)よりも大きい領域で、RpとCpの値がほぼ一定の値を示しており、誘電体基板の厚さと被測定誘電体の厚さは、少なくともくし形電極のピッチ以上にする必要があり、望ましくは、くし形電極のピッチの2倍程度とするのが良いことがわかる。このようにすることにより、非特許文献1の方法で不明確であった、誘電体基板の厚さの影響と被測定誘電体の厚さの影響を無くすとともに、誘電体基板の裏側に近接する材料の影響を無くした状態で、被測定誘電体の複素誘電率を高精度の測定が可能になる。
(本発明の誘電センサの等価回路と具体的な付加アドミタンス△Yの求め方)
図7と図8は、二つの等しいアドミタンスの一方にアドミタンス△Yが付加された場合の△Yを求める方法の説明図であり、図7は、二つのアドミタンスY1とY2が並列に接続された回路に電圧Vを印加した場合に、それぞれのアドミタンスを流れる電流I1およびI2を示しており、I1とI2は(22)式で与えられる。
Figure 2019028012
図8は、図7においてY2=Y1+△Yとした場合の回路を示しており、△Yに流れる電流△Iは(23)式で与えられる。(23)式より、電圧Vは実数、△Iと△Yが複素数であることから、△Iの位相と△Yの位相が等しいことがわかる。
Figure 2019028012
また、(23)式より、付加アドミタンス△Yは(24)式で与えられる。
Figure 2019028012
つまり、アドミタンスY1およびY2を流れる電流I1とI2を検出し、それらの差の電流△Iを求めると(24)式より△Yを求めることができる。
ここで、付加アドミタンス△Yを△Y=1/△Rp+jω△Cpと置くと、△Rpと△Cpは、(25)式および(26)式で与えられ、△Rpと△Cpが求められると、(20)式、(21)式を用いて、被測定誘電体の複素誘電率を求めることかできる。(25)式、(26)式においてθは、付加アドミタンス△Yの位相であり、前述したように、前記差の電流△Iの位相に等しい。
Figure 2019028012
Figure 2019028012
以上に説明したように、本発明では、誘電センサのくし形電極面を所定の厚さの被測定誘電体で覆ったときの、付加アドミタンス△Yから付加抵抗△Rpと付加容量△Cpを求め、あらかじめ既知の誘電体基板の複素誘電率の値、および、くし形電極が空中に浮いていると仮定した場合の静電容量を用いて、被測定誘電体の複素誘電率を求めることができる。
(付加アドミタンス△Yを求める回路構成例)
図9は、本発明のくし形電極基板である誘電センサを用いて構成した付加アドミタンス△Yを求める回路構成例を示す回路ブロック図であって、複素誘電率測定用回路の構成例を示す。図9においては、特性の等しい2個の前記誘電センサ92と93の一方の端子が接続されて、さらに周波数f0の交流電圧Vを出力する発振回路91に接続され、それぞれの誘電センサの他方の端子が電流−電圧変換回路94および95に接続されている。電流−電圧変換回路94および95の出力電圧はそれぞれ差動増幅器96(差分検出器)に接続され、差動増幅器96の出力と前記発振回路91の出力は、位相検波回路97に接続されて、付加アドミタンスΔYの位相θを表す位相検波回路(位相検出器)97の出力信号は、位相信号端子98に接続され、付加アドミタンスΔYを表す差動増幅回路96の出力信号は、付加アドミタンス△Y信号端子99に接続されている。
図9の回路では、2個の誘電センサ92と93の内の一方の誘電センサのくし形電極部を被測定誘電体で覆った場合、誘電センサ92と93を流れる電流に違いが発生し、電流−電圧変換回路94および95の出力電圧がこれに応じて変化する。したがって、差動増幅器96の出力電圧はこの電流の差に比例した値となる。前述の(23)式、(24)式で説明したように、この電流の差△Iは付加アドミタンス△Yに比例し、△Iと△Yの印加電圧Vに対する位相は等しくなる。したがって、回路系の比例定数がわかれば、差動増幅器96出力と位相検波回路97出力から、前記(25)式および(26)式を用いて、付加アドミタンス△Y、すなわち付加並列抵抗△Rpおよび付加並列容量△Cpが得られ、さらに前記(20)式および(21)式により、被測定誘電体の複素誘電率を求めることができる。被測定誘電体の複素誘電率は、差動増幅器96出力と位相検波回路97出力をデジタル処理して、上述した演算式による演算を行う集積回路や汎用のコンピュータ装置などの演算処理手段に入力されて求められる。本発明の複素誘電率測定装置は、図9に示す複素誘電率測定用回路と複素誘電率を演算で求める演算処理手段とを有して構成され、複素誘電率測定用回路と演算処理手段とは一体的に構成されてもよく、また別々の部品の組み合わせとして構成されてもよい。
本発明によれば、被測定誘電体の複素誘電率ε*の実部と虚部を別々に測定することができるが、被測定誘電体の特性によっては、実部だけが大きく変化し、虚部がほとんど変化しない場合や、逆に実部の変化は少ないのに、虚部が大きく変化する場合などある。この場合には、複素誘電率ε*の絶対値の変化、すなわち、前記2個の誘電センサのアドミタンスの差△Yの絶対値の変化や、あるいは、前記2個の誘電センサを流れる電流の差△Iの絶対値の変化によっても、実用的に有用な被測定誘電体の特性変化を測定できる。
以上の説明では、くし形電極基板の構造を、図2に示すように、誘電体基板の一方の面に、複数個の帯状電極を形成して2端子構造とした場合について述べたが、電極の構成は必ずしも帯状電極に限定されるものではない。
図10は、本発明のくし形電極基板の別の電極構成の一例を示す平面図であり、誘電体基板100の一方の面に同心円状の線状電極101、102が形成され、図10に示すように、互いに両隣りの線状電極を接続して2端子構造となって、接続端子103、104に接続されている。
本発明における複素誘電率測定用回路、複素誘電率測定装置及び複素誘電率の測定方法は、例えば、潤滑オイルや蓄電池の電解液の劣化の原因解明や、食品の製造ラインで成分の変化の監視に使用することができる。
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
10:被測定誘電体
11:上面電極
12:下面電極
20:誘電体基板
21:帯状電極
22:帯状電極
23:共通電極
24:共通電極
25:測定端子
26:測定端子
47:被測定誘電体
91:発振回路
92、93:本発明の誘電センサ
94、95:電流―電圧変換回路
96:差動増幅器
97:位相検波回路
98:位相信号端子
99:付加アドミタンス△Y信号端子
100:誘電体基板
101、102:線状電極
103、104:接続端子

Claims (6)

  1. 複素誘電率が既知の誘電体基板の一方の面にくし形電極が形成され2端子構成された、同一特性を有する2つのくし形電極基板と、
    並列接続された前記2つのくし形電極基板の一方の端子に電圧を印加したときの、前記2つのくし形電極基板を流れる電流の差分に対応する信号を出力する差分検出器と、
    前記印加電圧と前記差分検出器の出力信号との位相に対応する信号を出力する位相検出器とを備えることを特徴とする複素誘電率測定用回路。
  2. 複素誘電率測定対象となる被測定誘電体が、前記2つのくし形電極基板のうちの一方のくし形電極基板のくし形電極を覆うように配置されることを特徴とする請求項1に記載の複素誘電率測定用回路。
  3. 前記誘電体基板の厚さ及び前記被測定誘電体の厚さは、前記くし形電極のピッチより大きいことを特徴とする請求項2に記載の複素誘電率測定用回路。
  4. 請求項1に記載の複素誘電率測定用回路と、
    前記差分検出器の出力信号及び前記位相検出器との出力信号に基づいて、前記2つのくし形電極基板のうちの一方のくし形電極基板のくし形電極を覆うように配置された被測定誘電体の複素誘電率を求める演算処理手段とを備えることを特徴とする複素誘電率測定装置。
  5. 前記誘電体基板の厚さ及び前記被測定誘電体の厚さは、前記くし形電極のピッチより大きいことを特徴とする請求項4に記載の複素誘電率測定装置。
  6. 請求項1に記載の複素誘電率測定用回路の前記2つのくし形電極基板の一方の端子に電圧を印加し、
    前記2つのくし形電極基板を流れる電流の差分に対応する前記差分検出器の出力信号と、前記印加電圧と前記差分検出器の出力信号との位相に対応する前記位相検出器の出力信号とに基づいて、前記2つのくし形電極基板のうちの一方のくし形電極基板のくし形電極を覆うように配置された被測定誘電体の複素誘電率を演算処理により求めることを特徴とする複素誘電率の測定方法。
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