JP2019026612A - ナフタレン含有油の脱酸方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ナフタレン含有油の脱酸方法の提供。
【解決手段】ナフタレンを含有するナフタレン含有油にアルカリを添加し、前記ナフタレン含有油に含まれるタール酸をタール酸塩として分離してタール酸が除去された脱酸ナフタレン油を得る、ナフタレン含有油の脱酸方法であって、前記ナフタレン含有油は、コールタールを蒸留して得られたカルボル油および/またはナフタレン油からなる成分Aと、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bからなる成分Bとの混合物であり、前記蒸留残渣油Aは、コークス炉ガス精製設備において、コークス炉ガス中の粗軽油分を吸収した吸収油から駆り出した粗軽油を蒸留して軽油を得た際の蒸留残渣であり、前記蒸留残渣油Bは、無水フタル酸製造設備において、原料の脱酸ナフタレンを蒸留し粗ナフタレンを得た際の蒸留残渣であり、前記ナフタレン含有油中の成分Bの混合割合が、成分Aと成分Bの合計質量に対して35質量%以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ナフタレン含有油の脱酸方法に関する。
コークス炉において石炭を乾留してコークスを製造した際には、副生物としてコークス炉ガス(以下、「Cガス」ともいう。)、コールタール等が得られる。Cガスやコールタールには、ベンゼン、トルエン等の軽油や、ナフタレン、タール酸等の工業上重要な化学物質が含まれるため、従来から、これらの化学物質を分離して回収する検討が行われている。
例えば、特許文献1、2には、Cガス中の軽油を吸収油を用いて吸収し、この軽油を吸収した吸収油(含ベン吸収油)から駆出塔を用いて、Cガス中の軽油を回収する軽油の回収方法が記載されている。特許文献3には、コールタールから得られるタール酸の精製方法であって、タール酸に水酸化アルカリの水溶液を加えて、タール酸をタール酸塩の水溶液にし、この水溶液を活性炭と接触させて不純物を吸着除去するタール酸の精製方法が記載されている。
特開2003−165979号公報 特開昭62−292886号公報 特開平9−53080号公報
図2は、コークス炉から排出されたCガスおよびコールタールを処理する従来の処理設備の一例を示す概略図である。図2に示す処理設備は、コークス炉ガス(Cガス)を処理するコークス炉ガス(Cガス)精製設備と、コールタールを処理するタール蒸留設備と、ナフタレン油脱酸設備と、無水フタル酸製造設備とを有する。上述したとおり、Cガスやコールタールには、ベンゼン、トルエン等の軽油や、ナフタレン、タール酸等の工業上重要な化学物質が含まれている。
(Cガス精製工程)
コークス炉から排出されたCガスは、Cガス精製設備に送られる。Cガス精製設備では、CガスからBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)を得るCガス精製工程が行われる。
Cガス精製設備では、Cガスを、クレオソート油、アントラセン油等の吸収油と接触させ、Cガス中の粗軽油分(ベンゼン、トルエン、キシレン等の混合物)を吸収油に吸収して捕集する。粗軽油分を捕集した吸収油(含ベン吸収油)は、駆出塔(ベンゾールストリッパー)に装入される。駆出塔では、蒸気を使って吸収油中の粗軽油を駆り出し(追い出し)、塔頂より粗軽油を回収する。また、駆出塔の塔底からは粗軽油を駆り出された吸収油(脱ベン吸収油)を抜き出し、吸収油として再利用している。
前記駆出塔から回収された粗軽油は、粗軽油蒸留塔に装入されて蒸留処理され、蒸留留分として回収される軽油と、軽油を留去した後の蒸留残渣油Aに分離される。この際、前記軽油は、約80〜144℃の留分として得られる。蒸留残渣油Aは、前記軽油を留去した後の蒸留残渣である。この蒸留残渣油Aには、40質量%程度のナフタレンが含まれる。前記軽油は、さらに、水添脱硫、精製蒸留され、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)が得られる。なお、本明細書における留分、沸点等の温度は、特に断らない限り常圧でのものを意味する。
(タール蒸留工程)
図2に示すように、コールタールは、タール蒸留設備に送られる。タール蒸留設備では、コールタールをタール蒸留塔により分留処理して、カルボル油、ナフタレン油等の留分に分留するタール蒸留工程が行われる。この際、前記カルボル油は、約170〜200℃の留分として得られ、前記ナフタレン油は、約200〜250℃の留分として得られる。
(ナフタレン油脱酸工程)
前記カルボル油、前記ナフタレン油には、ナフタレンの他、タール酸等の酸成分が多く含まれるため、ナフタレン油脱酸設備に送り、酸成分を除去するナフタレン油脱酸工程を行う。
このナフタレン油脱酸工程では、ナフタレンを含有するナフタレン含有油から、沸点がナフタレンと近く蒸留操作では分離することが困難なフェノールやクレゾール等の有機酸性油(タール酸)を分離する。一例として、ナフタレン油脱酸工程では、タール酸分の含有濃度が1.0g/100mL以下(タール酸分≦1.0g/100mL)の脱酸ナフタレン油を得る。
具体的には、このナフタレン油脱酸工程では、カルボル油およびナフタレン油の混合油にアルカリを添加してミキサーに装入し撹拌する。前記アルカリとしては、48質量%濃度のNaOHを純水で10〜12質量%程度に濃度調整したNaOH水溶液を用いることが好ましい。一例として、ミキサーへのナフタレン含有油(カルボル油および/またはナフタレン油)の装入量は約5.3m/hであり、この流量でナフタレン含有油を連続して装入する。ミキサー内では、カルボル油、ナフタレン油に含まれるタール酸分がアルカリ(NaOH)と反応し、タール酸塩(フェノレート)が生成されるとともに、タール酸が除去された脱酸ナフタレン油が生成される。
次いで、ミキサー内で生成した脱酸ナフタレン油とタール酸塩を含む混合液は、セパレーターに装入される。セパレータに装入された混合液は、セパレーター内で約80℃で滞留静置され、脱酸ナフタレン油を含む油相とタール酸塩を含む水相の二相に分離される。一例として、セパレーター内での混合液の滞留時間は約1.9時間である。その後、セパレーターの上部より脱酸ナフタレン油を、底部よりタール酸塩をそれぞれ払い出して分離する。
(無水フタル酸製造工程)
上記ナフタレン油脱酸工程で得られた脱酸ナフタレン油は、無水フタル酸製造設備に送られて、無水フタル酸を製造する際の原料として用いられる。無水フタル酸製造設備では、前記脱酸ナフタレン油から無水フタル酸を製造する無水フタル酸製造工程が行われる。
無水フタル酸製造設備では、まず、前記脱酸ナフタレン油をナフタレン蒸留塔に装入して蒸留処理し、塔頂から回収される粗ナフタレンと、粗ナフタレンを留去した後の蒸留残渣油Bに分離する。この際、前記粗ナフタレンは、約220℃の留分として得られる。蒸留残渣油Bは、前記粗ナフタレンを留去した後の蒸留残渣である。この蒸留残渣油Bには、ナフタレンが40質量%程度含まれる。
この際に得られる粗ナフタレンは、ナフタレン純度が95%以上まで高められたものである。粗ナフタレンには、アミン類、含窒素複素環化合物類等の窒素化合物や、チオフェン類、チオール類、チオナフテンなどの硫黄化合物が含まれるため、さらに窒素分を除去する脱窒処理、硫黄分を除去する脱硫処理が施されて、精製ナフタレンとされた後、これを酸化することで、無水フタル酸を製造する。
以上のようなCガスおよびコールタールの処理設備において、Cガス精製設備の粗軽油蒸留塔で軽油と分離された蒸留残渣油A、無水フタル酸製造設備のナフタレン蒸留塔で粗ナフタレンと分離された蒸留残渣油Bには、ナフタレンが多く含まれている。また、これらの蒸留残渣油にはタール酸も含まれている。そのため、蒸留残渣油A、蒸留残渣油Bから、ナフタレン、タール酸をそれぞれ分離して回収することで、より無駄のない効率的なCガスおよびコールタールの処理フローを構築できる。
ここで、上記蒸留残渣油A、上記蒸留残渣油Bから、ナフタレンを分離して回収する方法としては、上記ナフタレン油脱酸工程と同様にして蒸留残渣油A、蒸留残渣油Bを脱酸処理する方法が考えられる。すなわち、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bにアルカリを添加し、ミキサーで混合して、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bに含まれるタール酸をアルカリと反応させてタール酸塩を生成するとともに、タール酸が除去された脱酸ナフタレン油を生成する。その後、ミキサー内で生成した脱酸ナフタレン油とタール酸塩を含む混合液をセパレーターに装入し、セパレーター内で滞留静置して脱酸ナフタレン油を含む油相とタール酸塩を含む水相の二相に分離し、セパレーターから脱酸ナフタレン油とタール酸塩をそれぞれ払い出して回収する。
しかし、本発明者による検討によると、蒸留残渣油A、蒸留残渣油Bを、上記ナフタレン油脱酸工程と同様に脱酸処理した場合、セパレーター内でエマルション相が発生して分離不良が起こり、脱酸ナフタレン油を安定して得られないことがわかった。
本発明は、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bを含むナフタレン含有油から、脱酸ナフタレン油を安定的に得ることができるナフタレン含有油の脱酸方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を備える。
[1]ナフタレンを含有するナフタレン含有油に、アルカリを添加し、前記ナフタレン含有油に含まれるタール酸をタール酸塩として分離して、タール酸が除去された脱酸ナフタレン油を得る、ナフタレン含有油の脱酸方法であって、前記ナフタレン含有油は、コールタールを蒸留して得られたカルボル油および/またはナフタレン油からなる成分Aと、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bからなる成分Bとの混合物であり、前記蒸留残渣油Aは、コークス炉ガス精製設備において、コークス炉ガス中の粗軽油分を吸収した吸収油から駆り出した粗軽油を、蒸留して軽油を得た際の蒸留残渣であり、前記蒸留残渣油Bは、無水フタル酸製造設備において、原料の脱酸ナフタレン油を蒸留し、粗ナフタレンを得た際の蒸留残渣であり、前記ナフタレン含有油中の成分Bの混合割合が、成分Aと成分Bの合計質量に対して35質量%以下である、ナフタレン含有油の脱酸方法。
本発明によれば、Cガスを処理する過程で生じた蒸留残渣油Aおよび/またはコールタールを処理する過程で生じた蒸留残渣油Bを含むナフタレン含有油から、脱酸ナフタレン油を安定的に得ることができるナフタレン含有油の脱酸方法を提供することができる。
本発明によれば、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bを有効に活用して、これらの蒸留残渣油を含むナフタレン含有油から、脱酸ナフタレン油を安定的に回収でき、より無駄のない効率的なCガスおよびコールタールの処理フローを構築できる。
本発明のナフタレン含有油の脱酸方法を実施するナフタレン油脱酸設備を含む処理設備の一実施形態を示す概略図である。 Cガスおよびコールタールを処理する従来の処理設備の一例を示す概略図である。
以下、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法の一実施形態について、図1を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法を実施するナフタレン油脱酸設備を含む処理設備の一実施形態を示す概略図である。図1に示す処理設備は、コークス炉ガス(Cガス)を処理するコークス炉ガス(Cガス)精製設備と、コールタールを処理するタール蒸留設備と、ナフタレン油脱酸設備と、無水フタル酸製造設備とを有する。
なお、図1に示すCガス精製設備で実施されるCガス精製工程、タール蒸留設備で実施されるタール蒸留工程、無水フタル酸製造設備で実施される無水フタル酸製造工程は、それぞれ図2に示すCガス精製設備で実施されるCガス精製工程、タール蒸留設備で実施されるタール蒸留工程、無水フタル酸製造設備で実施される無水フタル酸製造工程と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
(ナフタレン油脱酸工程)
図1に示すナフタレン油脱酸設備では、ナフタレン含有油から酸成分を除去するナフタレン油脱酸工程が行われる。このナフタレン油脱酸工程では、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法が実施される。
本発明のナフタレン含有油の脱酸方法は、ナフタレンを含有するナフタレン含有油に、アルカリを添加し、前記ナフタレン含有油に含まれるタール酸をタール酸塩として分離して、タール酸が除去された脱酸ナフタレン油を得るものであり、この際のナフタレン含有油として、コールタールを蒸留して得られたカルボル油および/またはナフタレン油からなる成分Aと、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bからなる成分Bとの混合物を用いる。
上述したように、蒸留残渣油Aは、Cガス精製設備において、Cガス中の粗軽油分を吸収した吸収油から駆り出した粗軽油を、蒸留して軽油を得た際の蒸留残渣である。また、蒸留残渣油Bは、無水フタル酸製造設備において、原料の脱酸ナフタレン油を蒸留し、粗ナフタレンを得た際の蒸留残渣である。
成分Aとしては、カルボル油とナフタレン油の混合油を用いることが好ましい。前記成分A中のカルボル油とナフタレン油との混合割合は、特に限定されないが、一例として、前記成分A中のナフタレン含有量が60質量%程度となるように両者の混合割合を調整することができる。また、成分Bとしては、蒸留残渣油Aと蒸留残渣油Bの混合油を用いることが好ましい。前記成分B中の蒸留残渣油Aと蒸留残渣油Bとの混合割合は、特に限定されないが、一例として、前記成分B中のナフタレン含有量が40質量%程度となるように両者の混合割合を調整することができる。蒸留残渣油Aと蒸留残渣油Bのナフタレン含有量はともに通常40質量%程度なので、蒸留残渣油Aと蒸留残渣油Bとを任意の割合で混合することができる。
成分Aと成分Bの混合方法は、特に限定されないが、カルボル油とナフタレン油の混合油に対して、蒸留残渣油Aと蒸留残渣油Bの混合油を添加することが好ましい。その際、蒸留残渣油Aおよび蒸留残渣油Bを、予めタンク等の容器に貯留しておき、この容器から蒸留残渣油Aと蒸留残渣油Bの混合油を供給して、カルボル油とナフタレン油の混合油に添加することが好ましい。
ここで、本発明者の検討によると、蒸留残渣油A、蒸留残渣油Bを含むナフタレン含有油に、アルカリ(NaOH水溶液)を添加し、ミキサーで混合した混合液を、セパレーターに装入すると、エマルションが発生するという問題が生じる。エマルションが発生すると、セパレーター内で混合液を滞留静置させた場合に、脱酸ナフタレン油からなる油相と、タール酸塩を含む水相に加え、泡状のエマルション相が発生する。このエマルション相は、水相中に0.2〜50μm程度の油の粒が分散している状態であると考えられる。エマルション相がセパレーター内での滞留時間中に解消されないと、脱酸ナフタレン油とタール酸塩との分離不良が起こり、脱酸ナフタレン油中のタール酸分の濃度が上昇し、また、フェノレート中のナフタレン分の濃度が上昇して、ナフタレン油脱酸設備が操業不可能となる。セパレーター内でのエマルション相を解消するには、セパレーターへの混合液の装入量を減らし、かつ、滞在時間を延長することが効果的である可能性があるが、この場合、ナフタレン含有油の処理量が減少してしまい、脱酸ナフタレン油の回収効率が低下するという問題が生じる。
本発明者は、エマルションの発生原因が各油の装入割合の変化であると予測し、各油の装入割合を変化させ、エマルションの生成が起こる条件について検討した。その結果、カルボル油およびナフタレン油の混合油と、蒸留残渣油Aおよび蒸留残渣油Bの混合油を含むナフタレン含有油において、蒸留残渣油の割合が増加するとエマルションが発生することがわかった。更に、ミキサーへの各油の装入割合を変更して脱酸試験を行った結果、エマルションを発生させずにナフタレン含有油を脱酸して安定的に脱酸ナフタレン油を得るには、カルボル油および/またはナフタレン油からなる成分Aと、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bからなる成分Bとの混合物であるナフタレン含有油のミキサーへの装入量5.3m/hのうち、成分Bを1.85m/h以下で管理することが必須条件であることを見出した。
すなわち、図1に示すように、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法は、ミキサーとセパレーターを使用してナフタレン含有油から脱酸ナフタレン油とタール酸塩とを分離する方法であり、このとき、ミキサーへのカルボル油および/またはナフタレン油からなる成分Aと、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bからなる成分Bとの混合物であるナフタレン含有油の装入量のうち、成分Bの混合割合を、成分Aと成分Bの合計質量に対して35質量%以下(一例として、ナフタレン含有油の装入量(成分Aと成分Bの合計装入量)5.3m/hのとき、成分Bの装入量を1.85m/h以下)に設定する。好ましくは34質量%以下(一例として、ナフタレン含有油の装入量5.3m/hのとき、成分Bの装入量を1.8m/h以下)に設定する。さらに、ミキサーへの成分Aと成分Bとの混合物であるナフタレン含有油の装入量を5.3m/h以下に設定することが好ましい。
ミキサーには、上記のように設定したナフタレン含有油とともに、純水で濃度調整したNaOH水溶液を装入して撹拌する。その後、ミキサー内の混合液をセパレーターに送り、脱酸ナフタレン油と、タール酸塩(フェノレート)に分離するため約80℃で静置分離を行う。セパレーター内での混合液の滞留時間は約1.9時間である。これにより、蒸留残渣油A、蒸留残渣油Bを含むナフタレン含有油を脱酸した場合であっても、エマルションの発生を抑制でき、セパレーター内でのエマルション相の発生が抑制され、タール酸分が1.0g/100mL以下(タール酸分≦1.0g/100mL)の脱酸ナフタレン油を安定的に得ることが可能となる。
以上、説明したとおり、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法によれば、Cガスを処理する過程で生じた蒸留残渣油Aおよび/またはコールタールを処理する過程で生じた蒸留残渣油Bを含むナフタレン含有油から、脱酸ナフタレン油を安定的に得ることができる。
本発明によれば、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bを有効に活用して、これらの蒸留残渣油を含むナフタレン含有油から、脱酸ナフタレン油を安定的に回収でき、より無駄のない効率的なCガスおよびコールタールの処理フローを構築できる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
図1に示す処理設備により、Cガスおよびコールタールを処理した。すなわち、図1に示すナフタレン油脱酸設備において、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法を実施した。
ナフタレン含有油としては、コールタール蒸留設備でコールタールを蒸留して得られたカルボル油とナフタレン油との混合油(成分A)と、Cガス精製設備において、Cガス中の粗軽油分を吸収した吸収油から駆り出した粗軽油を、蒸留して軽油を得た際の蒸留残渣油Aと、無水フタル酸製造設備において、原料の脱酸ナフタレン油を蒸留し、粗ナフタレンを得た際の蒸留残渣油Bとの混合油(成分B)との混合物を用いた。なお、成分A中のナフタレン含有量が約60質量%、成分B中のナフタレン含有量が約40質量%となるように、各油の混合割合を調整した。また、成分Bとしては、蒸留残渣油Aおよび蒸留残渣油Bを一旦タンクに貯留したものを用い、このタンクから蒸留残渣油Aおよび蒸留残渣油Bの混合油を供給した。
上記ナフタレン含有油を、純水で10〜12質量%の濃度に調整したNaOH水溶液とともに、ミキサーに装入し、撹拌を行った。この際、ナフタレン含有油の装入量を5.3m/hとし、そのうちの成分B(蒸留残渣油Aおよび蒸留残渣油B)の装入量を1.6m/hとした。その後、ミキサー内の混合液をセパレーターに送り、約80℃で1.9時間の静置分離を行い、脱酸ナフタレン油とタール酸塩とに分離してそれぞれ回収した。その結果、エマルションを発生させることなく、タール酸分≦1.0g/100mLの脱酸ナフタレン油を安定的に得ることができた。更に、成分A(ナフタレン油およびカルボル油の混合油)の装入量を3.5m/hに固定し、成分B(蒸留残渣油Aおよび蒸留残渣油B)の装入量を0.6m/hから1.8m/hまで段階的に増加させて脱酸した場合でも、エマルションを発生させることなく安定的にタール酸分≦1.0g/100mLの脱酸ナフタレン油が得られることを確認した。
以上より、本発明のナフタレン含有油の脱酸方法によれば、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bを含むナフタレン含有油から、脱酸ナフタレン油を安定的に得られることが確認できた。

Claims (1)

  1. ナフタレンを含有するナフタレン含有油に、アルカリを添加し、前記ナフタレン含有油に含まれるタール酸をタール酸塩として分離して、タール酸が除去された脱酸ナフタレン油を得る、ナフタレン含有油の脱酸方法であって、
    前記ナフタレン含有油は、コールタールを蒸留して得られたカルボル油および/またはナフタレン油からなる成分Aと、蒸留残渣油Aおよび/または蒸留残渣油Bからなる成分Bとの混合物であり、
    前記蒸留残渣油Aは、コークス炉ガス精製設備において、コークス炉ガス中の粗軽油分を吸収した吸収油から駆り出した粗軽油を、蒸留して軽油を得た際の蒸留残渣であり、
    前記蒸留残渣油Bは、無水フタル酸製造設備において、原料の脱酸ナフタレン油を蒸留し、粗ナフタレンを得た際の蒸留残渣であり、
    前記ナフタレン含有油中の成分Bの混合割合が、成分Aと成分Bの合計質量に対して35質量%以下である、ナフタレン含有油の脱酸方法。
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