ところが、上記特許文献1に記載されたキャップでは、ライナーが非接着状態で挿入される天板部の内面から離れた下部突起部の先端が上部突起部の先端と半径方向に同位置、または上部突起部の先端よりも半径方向内側に位置することになるので、上部突起部の先端がライナーの外周縁より半径方向内側に位置していても、この上部突起部によってライナーを確実に係止することが困難となってライナーがキャップから抜け外れてしまうおそれがある。その一方で、これとは逆に、例えばすべての上部突起部の先端が下部突起部の先端よりも半径方向外方に位置していると、非接着状態のライナーを挿入する際にライナーの外周縁が上部突起部の先端に引っ掛かってフックされずに挿入が不完全となるおそれがある。
また、キャップの開栓時には、上述のようにベントホールからボトル内のガスの内圧が開放されるが、このとき特許文献1に記載されたキャップのようにベントホールの上部突起部の先端が下部突起部の先端よりも半径方向外側に位置していると、内圧が開放されたボトル内のガスと一緒に排出された飲料等のボトルの内容物が、下部突起部の内面からベントホールを通って飛沫として漏れ出てしまい、開栓した人の手を汚してしまうおそれもある。
さらに、上記ボトルが口部に雄ネジ部が形成されたネジ付きのボトル缶等であり、キャップには上記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成されている場合、ボトルへの内容物の充填時に雄ネジ部に付着した飲料等を、キャップ取付後にベントホールから注入した洗浄水によって洗浄しようとしても、上部突起部の先端が下部突起部の先端よりも半径方向外側に位置しているため、ベントホールを通して洗浄水を下部突起部の内面から雄ネジ部に注入することが困難でもある。
本発明は、このような背景の下になされたもので、ライナーを確実に係止してキャップからの抜け外れを防止することができるとともに、ライナーが非接着状態で挿入される場合でも挿入が不完全となるようなことがなく、またキャップを開栓したときにボトル内の内圧が開放されても内容物の飛沫の漏出によって手を汚すことも少なく、さらにネジ付きのボトル缶等において内容物が雄ネジ部に付着しても、ベントホールから注入した洗浄水によって確実に洗浄することが可能なキャップおよびキャップ付きボトルを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のキャップは、キャップ中心線を中心とした円板状の天板部と、この天板部の外周から上記キャップ中心線を中心として円筒状に延びる周壁部とが一体に成形されたキャップ本体と、このキャップ本体の上記天板部の内面に配設される円板状のライナーとを備えたキャップであって、上記キャップ本体の上記周壁部における上記天板部寄りの部分には、周方向にスリット状に延びるベントホールと、このベントホールの上部開口部および下部開口部を上記キャップ中心線に対する半径方向内周側に曲折した上フックおよび下フックとを有する複数のフック部が周方向に間隔をあけて形成されており、上記フック部においては、上記上フックの内周端が上記ライナーの外周縁より上記半径方向内周側に位置するとともに上記下フックの内周端よりも上記半径方向内周側に位置した上フック突出部と、上記下フックの内周端が上記ライナーの外周縁より上記半径方向内周側に位置するとともに上記上フックの内周端よりも上記半径方向内周側に位置した下フック突出部とが設けられていることを特徴とするものである。
また、本発明のキャップ付きボトルは、このようなキャップを、ボトル本体のキャップ取付部に取り付けたことを特徴とする。
このように構成されたキャップおよびキャップ付きボトルでは、キャップにおけるフック部において、下フック突出部は特許文献1に記載されたキャップおよびキャップ付きボトルと同様に、下フックの内周端が上フックの内周端よりもキャップ中心線に対する半径方向内周側に位置している一方で、上フック突出部は特許文献1に記載されたキャップおよびキャップ付きボトルとは逆に、上フックの内周端が下フックの内周端よりも半径方向内周側に突出している。
そして、この上フック突出部の上フックの内周端は、ライナーの外周縁より上記半径方向内周側に位置しているので、この上フック突出部によりライナーは係止されて抜け止めされることになり、ライナーが配設されるキャップ本体の天板部により近い位置でライナーを係止することができるので、ライナーを確実に係止してキャップ本体から抜け外れるのを防ぐことが可能となる。
その一方で、非接着状態のライナーを挿入する際には、下フック突出部において下フックの内周端が上フックの内周端よりも半径方向内周側に突出しているので、この突出した下フックによってライナーの外周縁を弾性変形させつつ案内して、上フック突出部の上フックの内周端を乗り越えるように挿入することができ、引っ掛かりを生じることなく確実かつスムーズにライナーを天板部の内面に配設することが可能となる。
また、上フック突出部において上フックの内周端が下フックの内周端よりも内周側に位置していることにより、キャップ中心線に沿った断面において上フックの内周面も、その下端では下フックの内周端よりも半径方向内周側に位置することになる。このため、キャップの開栓時にベントホールからボトル内のガスの内圧が開放されたときに、ガスはベントホールから排出される一方で、ガスと一緒に排出されようとする内容物は上フック突出部の上フックの内周面と下フック突出部の下フックの内周面によって案内してキャップ本体内に留まらせることができ、内容物がガスとともに飛沫となってベントホールから漏れ出ることにより開栓した人の手が汚れてしまうのを抑えることが可能となる。
さらに、上フック突出部において上フックの内周端が下フックの内周端よりも内周側に位置しているので、キャップをネジ付きのボトル缶等のボトル本体におけるキャップ取付部に取り付けた状態で、洗浄水をベントホールに向けて噴射すると、洗浄水は半径方向内周側に曲折させられた上フック突出部の上フックの外周面を伝わってベントホールからボトル本体のキャップ取付部の雄ネジ部に注入される。このため、ボトルへの内容物の充填時に雄ネジ部に付着した飲料等を洗浄水によって確実に洗浄することができる。
なお、上記フック部においては、キャップ本体の周方向に1つの上フック突出部と複数の下フック突出部とが並んでいたり、逆に複数の上フック突出部と1つの下フック突出部とが並んでいたり、あるいは複数ずつの上フック突出部と下フック突出部とが並んでいたりしてもよいが、ライナーをさらに確実に係止しつつ一層スムーズな挿入を図るには、それぞれ複数の上フック突出部と下フック突出部とが周方向に1つずつ交互に設けられていることが望ましい。
また、上記フック部においては、キャップ中心線から上記下フック突出部における下フックの内周端までの半径を、キャップ中心線から上記上フック突出部における上フックの内周端までの半径よりも小さくすることにより、ライナーを挿入する際にライナーの外周縁をより大きく弾性変形させて上フック突出部への引っ掛かりを確実に防ぎ、さらに一層スムーズな挿入を促すことが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、フック部の上フック突出部においてライナーを確実にキャップ本体に係止して抜け外れを防ぐことができるとともに、下フック突出部によってライナーをスムーズに挿入することができ、さらにキャップを開栓したときにボトル内の内圧が開放されてもガスとともに内容物が飛沫として漏れ出して開栓した人の手が汚れるのも抑えることができ、またネジ付きのボトル缶等において内容物が充填時に雄ネジ部に付着したとしても、ベントホールから洗浄水を注入することによって確実に洗浄することが可能となる。
図1ないし図6は、本発明のキャップの一実施形態を示すものである。本実施形態のキャップは、雄ネジ部が形成されたキャップ取付部を有するネジ付きボトル缶用のキャップであって、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属材料により形成されてキャップ中心線Oを中心とした有底円筒状のキャップ本体1を備えている。すなわち、このキャップ本体1においては、円板状の天板部2と、この天板部2の外周からキャップ本体1の下端側(図1および図3、図5において下側)に向けて上記キャップ中心線Oを中心とする円筒状に延びる周壁部3とが一体に成形されている。
また、天板部2の内面(下面)2aには、樹脂製の円板状のライナー4が配設される。このライナー4は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを主とする硬質樹脂製で天板部2側に内面2aと非接着状態で配置される大径の摺動層4aと、この摺動層4aの天板部2とは反対側に直接またはバリア層等の中間層を介して配置されるエラストマー樹脂の摺動層4aよりも軟質な樹脂製で小径の密封層4bとを備えた多層構造とされている。摺動層4aは厚さが略均一な平板状とされる一方、密封層4bは外周縁部が厚肉で内周部は天板部2側に凹んだ薄肉とされ、これら内周部と外周縁部との間の段差部は内周側に向かうに従い天板部2側に向かうテーパ面状とされている。
キャップ本体1の周壁部3には、天板部2寄りの上端部側に、下端側に向けてキャップ中心線Oに対する外周側に膨らむナール5と、このナール5の下端に連なり、ナール5のよりも外径が小径のグルーブ6とが形成されている。一方、天板部2とは反対側の周壁部3の下端部側には、上端部側から下端部側に向けて順に、やはり外周側に膨らむビード7と、このビード7よりも外径が小径の破断容易部8と、この破断容易部8よりも外径が大径とされてキャップ本体1の下端に延びる円筒状のフレア(開放端部)9とが形成されている。
破断容易部8には、側面視に周方向に延びてキャップ中心線Oに対する半径方向内周側に凹むスリット部8aが周方向に等間隔をあけて複数形成されるとともに、これらのスリット部8aの間の部分はブリッジ部8bとされている。スリット部8aには、該スリット部8aの上端部側の長辺に、周壁部3を貫通するスリット8cが形成されている。また、フレア9は、ボトル缶の上記キャップ取付部へのキャッピングの際に、キャップ取付部の雄ネジ部の下端部側に形成された膨出部の下端部に裾巻きされる。
さらに、周壁部3の上端部側のグルーブ6と下端部側のビード7との間の部分は、ボトル缶の上記キャップ取付部へのキャッピングの際にキャップ取付部の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成される雌ネジ形成予定部10とされている。この雌ネジ形成予定部10の外径は、グルーブ6の外径よりも大きく、ビード7の外径よりは小さな略一定の外径とされている。
一方、ナール5には、キャップ本体1の周壁部3が内周側に凹まされるように成形されたナール凹部5aが、周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では12)形成されている。これらのナール凹部5aは、ボトル缶にキャッピングされたキャップ本体1を開栓するときに、キャップ本体1とこれを把持する指との摩擦抵抗を増大させるためのものであり、これにより手を滑らせることなく容易に開栓が可能となる。
さらに、周方向においてこれらのナール凹部5aの間には、外周側から見て図1に示すような涙滴形、または円形や楕円形をなし、同じくキャップ本体1の内周側に凹まされるようにして、周方向にスリット状に延びて図3に示すように周壁部3を貫通するベントホール11と、このベントホール11の上部開口部および下部開口部をキャップ中心線Oに対する半径方向内周側(図3において右側)に曲折した上フック12および下フック13とを有するフック部14が複数(本実施形態では12)形成されている。このフック部14も、本実施形態ではやはり周方向に等間隔をあけるとともに、ナール凹部5aとも周方向に等間隔をあけて交互に複数形成されている。
そして、これらのフック部14においては、図3および図4に示すように、上フック12の内周端12aが、ライナー4をキャップ中心線Oと同軸に配置した状態で、このライナー4の外周縁(摺動層4aの外周縁)より半径方向内周側に位置しているとともに、下フック13の内周端13aよりも半径方向内周側に位置した上フック突出部14Aと、図5および図6に示すように、同じくライナー4をキャップ中心線Oと同軸に配置した状態で、下フック13の内周端13aがライナー4の外周縁より半径方向内周側に位置するとともに、上フック12の内周端12aよりも半径方向内周側に位置した下フック突出部14Bとが設けられている。
ここで、本実施形態では、それぞれ複数(6つ)の上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとが、周方向にナール凹部5aを間にして1つずつ交互に設けられている。また、キャップ中心線Oから下フック突出部14Bにおいて半径方向内周側に突出した下フック13の内周端13aまでの半径RBは、キャップ中心線Oから上フック突出部14Aにおいて半径方向内周側に突出した上フック12の内周端12aまでの半径RAよりも小さくされており、すなわち下フック突出部14Bにおける下フック13の内周端13aは上フック突出部14Aにおける上フック12の内周端12aよりも半径方向内周側に大きく突出している。
なお、本実施形態では、上フック突出部14Aの下フック13の内周端13aおよび下フック突出部14Bの上フック12の内周端12aもライナー4の外周縁(摺動層4aの外周縁)より半径方向内周側に位置している。また、それぞれ半径方向内周側に突出した上フック突出部14Aの上フック12の内周端12aと下フック突出部14Bの下フック13の内周端13aとは、ライナー4の密封層4bの外周縁よりは半径方向外周側に位置している。
さらに、本実施形態では図3および図5に示すように、下フック13はベントホール11の下部開口部を外周側に凸曲するようにして半径方向内周側に折り曲げられているだけであるのに対し、上フック12はベントホール11の上側開口部を外周側に凸曲するように半径方向内周側に大きく折り曲げた後、その下端部を上端部に対して外周側に凹曲するように下向きに折り曲げつつ下端部側に向かうに従い半径方向内周側に延びるように形成されている。
さらにまた、同じく図3および図5に示すように、本実施形態においては、上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとで、キャップ中心線Oから上フック12の内周端12aまでの半径RAが互いに等しく、キャップ中心線Oから下フック13の内周端13aまでの半径RBを異なる大きさとすることにより、上述のように上フック突出部14Aでは上フック12の内周端12aが下フック13の内周端13aよりも半径方向内周側に突出し、下フック突出部14Bでは下フック13の内周端13aが上フック12の内周端12aより半径方向内周側に突出するようにしている。
ただし、これとは逆に、上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとで、キャップ中心線Oから下フック13の内周端13aまでの半径RBを互いに等しくし、キャップ中心線Oから上フック12の内周端12aまでの半径RAを異なる大きさとしてもよい。また、キャップ中心線Oから上フック12の内周端12aまでの半径RAと、キャップ中心線Oから下フック13の内周端13aまでの半径RBとを、上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとで互いに異なる大きさとしてもよい。
このようなボトル缶用キャップのキャップ本体1を製造するには、まず上記アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属材料よりなる所定の元板厚の圧延板材を円板状のブランク材に打ち抜き、このブランク材の外周部を、円形孔を有するダイの上面に配置して上記円形孔と同軸の円形孔を有する押さえとの間に挟み込んで支持するとともに、押さえの円形孔からダイの円形孔に円柱状のパンチを挿入することにより絞り込んで有底円筒状のキャップシェルを成形する。
このとき、キャップ本体1の天板部2となるキャップシェルの天板部の厚さは、圧延板材の元板厚と略等しくなる。また、このキャップシェルを成形する際に、同時にキャップシェルの開放端部をトリミングしてキャップ中心線O方向の高さを揃える。しかる後、このキャップシェルの周壁部に、ナール凹部5aとフック部14を備えたナール5と、グルーブ6、ビード7、スリット部8aを備えた破断容易部8、フレア9、および雌ネジ形成予定部10とを成形することにより、上述のようなキャップ本体1が製造される。
また、このようなキャップ本体1の天板部2の内面2aにライナー4を配設するには、例えば予め上述のような多層構造とされて円板状に切断されたライナー4を、弾性変形しつつフック部14の上フック12の内周端12aと下フック13の内周端13aとの間を通して、キャップ本体1内の天板部2の内面2a側に挿入する。あるいは、特許文献1に記載されているように、円板状に切断したライナー4の摺動層4aをキャップ本体1内の天板部2の内面2a側に挿入した上で、モールド成形用の金型をキャップ本体1内に挿入し、この金型によって密封層4bをモールド成形する。または、例えば特開2015−003325号公報に記載されているように、ライナー4の摺動層4aと密封層4bとを、それぞれモールド成形用の金型を用いてこの順にモールド成形してもよい。
さらに、このようにしてライナー4が配設されたキャップ本体1をボトル缶等のボトル本体にキャッピングして本発明の一実施形態のキャップ付きボトルを製造するには、飲料等の内容物が充填されたボトル本体のキャップ取付部にキャップ本体1を被せて、天板部2の上面外周部をキャッピング装置のプッシャーブロックによってキャップ取付部の開口縁に押圧して絞り加工することにより、ライナー4の密封層4bのうち厚肉とされた外周縁部を開口縁に圧着する。
そして、この状態のまま、キャッピング装置の裾巻きローラによってキャップ本体1のフレア9をキャップ取付部の上記膨出部の下端部に裾巻きするとともに、ボトル本体がキャップ取付部に雄ネジ部を有しているネジ付きのボトル缶等の場合には、ネジ切りローラをこの雄ネジ部のネジ谷部に沿って螺旋状に移動させることにより、キャップ本体1の雌ネジ形成予定部10に雌ネジ部を成形する。これにより、キャップ本体1がキャップ取付部に螺着されてボトル本体内が封止され、本発明の一実施形態のキャップ付きボトルが製造される。
上記構成のキャップ、およびこのキャップを上述のようにボトル本体のキャップ取付部に取り付けたキャップ付きボトルでは、キャップにおけるフック部14の上フック突出部14Aにおいて、ベントホール11の上部開口部をキャップ中心線Oに対する半径方向内周側に曲折した上フック12の内周端12aが、下部開口部を半径方向内周側に曲折した下フック13の内周端13aよりも内周側に位置していて、上フック12が下フック13よりも半径方向内周側に突出している。そして、この上フック12の内周端12aは、上フック12とキャップ本体1の天板部2の内面2aとの間に配設されるライナー4の外周縁より半径方向内周側に位置しているので、ライナー4は上フック12によって係止されて抜け止めされることになる。
このため、特許文献1に記載されたキャップのように、上部突起部の先端が下部突起部の先端と半径方向に同位置または半径方向外周側に位置しているのに比べ、ライナー4が配設されるキャップ本体1の天板部2により近い位置でライナー4を確実に係止することができる。従って、キャッピングの際やキャッピングされたキャップを開栓した際などにライナー4がキャップ本体1から抜け外れるのを防止することが可能となり、キャップ付きボトルを製造するときや開栓したキャップを再びキャップ取付部に取り付けてリシール(閉栓)する際に、ボトル本体内を確実に封止することができる。
また、このように上フック突出部14Aにおける上フック12の内周端12aが下フック13の内周端13aよりも内周側に位置しているのに伴い、内周端12aに連なる上フック12の内周面12bも、その下端部の内周端12a側では、キャップ中心線Oに沿った断面において図3に示したように、下フック13の内周端13aより半径方向内周側に位置することになる。
このため、キャップの開栓時にライナー4とキャップ取付部の開口縁との圧着が解かれることによりボトル本体内のガスの内圧が開口縁からベントホール11を介して開放されるとき、ガス自体はベントホール11から排出される一方で、ガスと一緒に排出されようとする飲料等の内容物は上フック12の内周面12bによって案内してキャップ本体1内に留まらせることができ、内容物がガスとともに飛沫となってベントホール11から漏れ出てしまって開栓した人の手が汚れてしまうのを抑制することができる。
さらに、このようなキャップを上述のようにネジ付きのボトル缶のボトル本体におけるキャップ取付部に取り付ける場合に、キャップ取り付け前にボトル本体内に飲料等の内容物を充填する際、内容物がキャップ取付部の開口部外周から雄ネジ部の上端部にかけて付着することがある。このような場合には、製造されたキャップ付きボトルの洗浄工程において洗浄水を噴射してベントホール11から注入することにより、付着した内容物を洗浄した後に乾燥するようにしている。
ここで、そのような場合でも、上記構成のキャップおよびキャップ付きボトルでは、フック部14における上フック突出部14Aにおいて、上フック12の内周端12aが下フック13の内周端13aよりも半径方向内周側に位置していることにより、キャップをキャップ取付部に取り付けた状態で洗浄水をベントホール11に向けて噴射すると、洗浄水は半径方向内周側に曲折させられた上フック12の外周面12cを伝わってベントホール11からキャップ本体1の周壁部3とキャップ取付部の雄ネジ部との間に注入され易くなる。このため、上述のようにキャップ取付部に飲料等の内容物が付着しても、これを洗浄水によって確実に洗浄することが可能となる。
その一方で、上記構成のキャップおよびキャップ付きボトル缶では、下フック突出部14Bにおいては上フック突出部14Aとは逆に、下フック13の内周端13aが上フック12の内周端12aよりも半径方向内周側に突出している。このため、上述のように非接着状態のライナー4を挿入して天板部2の内面2aに配設する場合には、下フック突出部14Bにおいて上フック12よりも半径方向内周側突出した下フック13によってライナー4の外周縁(摺動層4aの外周縁)を弾性変形させつつ案内して、上フック突出部の上フック12の内周端12aを乗り越えるように挿入することができ、引っ掛かりを生じることなく確実かつスムーズにライナー4を配設することが可能となる。
なお、本実施形態においては、フック部14において、それぞれ複数の上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとが周方向に1つずつ交互に設けられているが、例えばフック部14において、キャップ本体1の周方向に1つの上フック突出部14Aと複数の下フック突出部14Bとが交互に並んでいたり、逆に複数の上フック突出部14Aと1つの下フック突出部14Bとが交互に並んでいたり、あるいは複数ずつの上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとが交互に並んでいたりしてもよい。
ただし、このように複数の上フック突出部14Aや下フック突出部14Bが配設されていると、上フック突出部14Aの数が下フック突出部14Bよりも多すぎるような場合には、ライナー4を挿入する際に下フック突出部14Bが無い部分で引っ掛かりを生じるおそれがある一方、逆に下フック突出部14Bの数が上フック突出部14Aよりも多すぎるような場合には、下フック突出部14Bが多い部分でライナー4を確実に係止することができなくなるおそれが生じる。このため、フック部14においては、本実施形態のように互いに同数のそれぞれ複数の上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとが周方向に1つずつ交互に設けられるのが望ましい。
また、本実施形態では、フック部14において、キャップ中心線Oから下フック突出部14Bにおける下フック13の内周端13aまでの半径RBを、キャップ中心線Oから上フック突出部14Aにおける上フック12の内周端12aまでの半径RAよりも小さくしている。このため、ライナー4を挿入する際にライナー4の外周縁(本実施形態では、摺動層4aの外周縁)を大きく弾性変形させて上フック突出部14Aの上フック12を乗り越えさせることができ、上フック突出部14Aへのライナー4の引っ掛かりを確実に防いで一層スムーズな挿入を図ることが可能となる。
なお、本実施形態では、キャップ本体1の周壁部3におけるナール5にナール凹部5aとフック部14とが周方向に交互かつ等間隔に形成されているが、これらナール凹部5aやフック部14が形成されない非形成領域をナール5に設け、この非形成領域に、スリット5bやベントホール11よりも周方向に長い弱化スリットや弱化スコアを形成したり、さらにこれら弱化スリットや弱化スコアに凹部によって薄肉化されたりスリット加工されたりして周囲よりもさらに弱化された開口基点部を設けたりしてもよい。このような弱化スリットや弱化スコアを設けることにより、キャップを一旦開栓してから閉栓した後にボトル内の内容物が腐敗したり発酵したりして内圧が上昇したときでも、弱化スリットや弱化スコアが押し広げられることにより内部のガスを放出する、防爆機能をキャップ本体1に付与することができる。
次に、本発明の実施例を挙げて、本発明の効果について実証する。本実施例では、元板厚0.25mmのアルミニウム合金製の圧延板材を円板状に打ち抜いたブランク材から外径38mmのキャップシェルを成形し、このキャップシェルの周壁部に、ナール凹部5aとフック部14を備えたナール5と、グルーブ6、ビード7、スリット部8aを備えた破断容易部8、フレア9、および雌ネジ形成予定部10とを成形することによって上記実施形態に基づくキャップ本体1を製造した。
このとき、実施例1としては、図1ないし図6に示したようにそれぞれ複数(6つ)の上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとが周方向に1つずつ交互に形成されたキャップ本体1を成形した。また、実施例2としては、合計12のフック部14のうち1つの上フック突出部14Aと2つの下フック突出部14Bとが周方向に交互に形成されたキャップ本体1を成形し、さらに実施例3として、同じく合計12のフック部14のうち2つの上フック突出部14Aと1つの下フック突出部14Bとが周方向に交互に形成されたキャップ本体1を成形した。また、これら実施例1〜3に対する比較例1として12のフック部14がすべて下フック突出部14Bであるキャップ本体1と、比較例2として12のフック部14がすべて上フック突出部14Aであるキャップ本体1も成形した。
なお、これら実施例1〜3および比較例1、2において、上フック突出部14Aにおけるキャップ中心線Oから上フック12の内周端12aまでの半径RAと下フック13の内周端13aまでの半径RBとの差は0.2mmであり、下フック突出部14Bにおけるキャップ中心線Oから上フック12の内周端12aまでの半径RAと下フック13の内周端13aまでの半径RBとの差も0.2mmであった。また、これら実施例1〜3および比較例1、2では、図3および図5に示したように上フック突出部14Aと下フック突出部14Bとでキャップ中心線Oから上フック12の内周端12aまでの半径RAが等しく、キャップ中心線Oから下フック13の内周端13aまでの半径RBが異なっている。
そして、このような実施例1〜3および比較例1、2のキャップ本体1を100個成形して、キャップ本体1の天板部2の内面2aとフック部14における上フック12との間に、予め摺動層4aと密封層4bとが多層構造に積層されたライナー4を挿入してキャップを製造し、その際のライナー挿入性を判定した。なお、ライナー4は、キャップ中心線Oと同軸に配設した状態で、摺動層4aの外周縁が上フック12の内周端12aよりも半径方向外周側に0.4mmの位置となるものであった。ここで、このライナー挿入性の判定は、100個製造したキャップのうちライナー4が1個当たり12のフック部14の1つにでも係止されていないキャップの数で判定した。この結果(ライナー4が係止されていなかったキャップの数)を表1に示す。
また、次に、こうしてライナー4を挿入して製造したキャップのうち、すべてのフック部14にライナー4が係止されているものを実際にネジ付きボトル缶のボトル本体におけるキャップ取付部にキャッピングし、このキャップを開栓した後のライナー4のフック部14からの外れ易さを、フック外れ度数という指標を用いて比較して良否を判定した。ここで、このフック外れ度数は、特許文献1に記載されているのと同様に、開栓したキャップを目視して、1つのキャップ本体1において12のフック部14のうちライナー4が外れたフック部14の数とキャップの数(缶数)との積を総和したものを、評価したキャップの総数(缶の総数)で除した度数であり、すなわち平均して1つのキャップで幾つのフック部14が外れたかを示すものである。この結果も表1に併せて示す。
この表1の結果より、ライナー挿入性については、実施例1〜3および比較例1においては、100個のキャップ本体1における12のフック部14のうち1つでもライナー4が係止されていないものは無かったのに対し、すべてのフック部14において上フック12の内周端12aが下フック13の内周端13aよりも半径方向内周側に突出した比較例2では、10個のキャップにおいてライナー4がフック部14に係止されていないものがあり、ライナー4が不完全に挿入されていることが認められた。
また、開栓後のライナー4のフック部14からの外れ易さを示すフック外れ度数については、実施例1〜3では0.1以下であって、開栓後もライナー4がフック部14から外れ難かったのに対し、比較例2では0.5、比較例1では0.7と、キャップ製造時にはフック部14に係止されていても、開栓後は実施例1〜3に比べて数倍もライナー4が外れ易いことが分かった。