JP2019026044A - 車室前部の補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】前突時におけるフロアブレースの上端支持を維持可能な、車室前部の補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】フロアブレース14は、カウルトゥブレース12の後端に上端が接合され、当該上端から下端に向かって車両後方に傾斜するように配置され、フロアトンネル26の側壁26Aに下端が接合される。カウルトゥブレース12の後端とフロアブレース14の上端は、車両前後方向で互いに重なり合う重複部60A,60Bを備える。カウルトゥブレース12とフロアブレース14の重複部60A,60Bには、車両幅方向にボルト接合される第一ボルト接合部62A,62B及び第二ボルト接合部64A,64Bが形成される。カウルトゥブレース12とフロアブレース14の重複部60A,60Bの一方には、第一ボルト接合部62A,62Bと第二ボルト接合部64A,64Bの間を横断する脆弱部86が形成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、車室前部にてステアリング等を支持する補強構造に関する。
自動車のステアリングやオーディオ等を支持する、車室前部の補強構造として、インストルメントパネルリインフォースメントパイプ(以下適宜、インパネR/Fパイプと記載する)、フロアブレース及びカウルトゥブレースが用いられる。
例えば図18に例示するように、インパネR/Fパイプ100は円筒形状のパイプ部材であって、車両幅方向に延設され、その両端が図示しないフロントピラー(Aピラー)に固定される。インパネR/Fパイプ100にはステアリングサポート102及びステアリングブラケット104を介してステアリングコラム106が支持される。
カウルトゥブレース108は車両前後方向に配置され、インパネR/Fパイプ100を主に車両前後方向に支持する。カウルトゥブレース108の前端は車体のカウルパネル110に接合される。またカウルトゥブレース108は前端から後端に向かって車両下側に傾斜するように配置され、その後端はブラケット112を介してインパネR/Fパイプ100に接合される。
フロアブレース114は車両上下方向に配置され、主にインパネR/Fパイプ100を車両上下方向に支持する。また、フロアブレース114の上端と下端との間には、車両衝突時の乗員(ドライバー)の膝を保護するためのニーエアバッグ118が取り付けられている。
フロアブレース114の上端はブラケット112を介してインパネR/Fパイプ100に接合される。フロアブレース114は上端から下端に向かって車両後方に傾斜するように配置され、その下端はフロアトンネル116の側壁116Aに接合される。
具体的にはフロアブレース114の下端には、フロアトンネル116の側壁116Aと車両幅方向にボルト接合されるボルト接合部121Aが設けられる。この幅方向のボルト接合により、フロアブレース114に長手方向(上下方向)の荷重が入力された際に、ボルト軸部にせん断応力が働いてフロアブレース114の上下移動を抑えることができる。
フロアブレース114の上端とブラケット112も同様にして、車両幅方向にボルト接合される。具体的には、フロアブレース114には車両幅方向にボルト接合されるボルト接合部121B,121Cが設けられる。2つのボルト接合部121B,121Cを用いた2点支持とすることで、フロアブレース114の回動が規制される。
すなわち、カウルトゥブレース108がフロアトンネル116に対して車両前後方向に相対移動するとき、フロアブレース114にはボルト接合部121Aを支点とした回転荷重が加わる。仮にフロアブレース114がボルト接合部121Aを支点として回動するとフロアブレース114とブラケット112との設置角度(相対角度)が変化することになるが、フロアブレース114とブラケット112は2つのボルト接合部121B,121Cにより接合されており、そのような回動が規制される。
ここで、例えば特許文献1では、上記のようなボルト接合について、骨格部材同士をスタッドボルトとボルト穴を用いて接合する際に、スタッドボルトが挿通されるボルト穴を、一部切り欠きを設けたU字穴としている。
特開2007−331614号公報
ところで、従来構造では、車両前方からの衝突(以下適宜、前突と記載する)の際に、フロアブレースの支持について改善の余地がある。図19に例示するように、前突時、障害物(バリア)によってエンジンユニット120が車両後方に後退させられる。これに伴い、エンジンユニット120後方の機器やパネル等も後退させられる。具体的には、エンジンユニット120後方に設けられた排気管122が変形しながら後退させられる。さらに排気管122の後方のダッシュパネル124が排気管122に押されて後退させられる。これに伴い、ダッシュパネル124上端に接合されたカウルパネル110と、カウルパネル110に接合されたカウルトゥブレース108が後退させられる。カウルトゥブレース108の後退に伴い、その後端に接合されたフロアブレース114の上端も後退させられる。
また、排気管122の変形後退に伴い、その排気管122を収容するフロアトンネル116も前方から変形させられる。ここで、フロアトンネル116に下端が接合されるフロアブレース114は、上端から下端に向かって車両後方に向かって傾斜するように延設されるという構造上、その下端はフロアトンネル前端から幾分後方に配置される。したがって前突時には、フロアブレース114下端のボルト接合部121Aまで変形が及ぶには時間が掛かり、その前にフロアブレース114の上端に後退荷重が加わる場合がある。このときフロアブレース114には、下端のボルト接合部121Aを支点とし、上端を力点とするような側面視で時計回りの回転荷重F1が加わる。
ここで、特許文献1のようにフロアブレース114のボルト接合部121B,121Cのボルト穴がU字穴であると、回転荷重F1によってフロアブレース114がブラケット112から抜けて、フロアブレース114の上端が支持されなくなるおそれがある。
一方、フロアブレース114のボルト接合部121B,121Cのボルト穴を閉じた丸穴とすると、上述したように2点支持によりフロアブレース114の回動が規制され、図19に例示するようにフロアブレース114が撓む。この撓みに伴ってボルト接合部121B,121Cのボルト軸部にせん断力が加わる。前突の衝撃が大きく、フロアブレース114の撓み量が大きいときには、ボルト軸部に加わるせん断力が過大となってボルトの破断や抜けが生じて、フロアブレース114の上端が支持されなくなるおそれがある。
上記いずれの場合においても、フロアブレース114の上端の支持が抜けることで、フロアブレース114に取り付けられたニーエアバッグ118の支持もまた不安定となる。このように従来構造はフロアブレース114の支持、ひいてはフロアブレース114に固定されたニーエアバッグ118の支持という観点で改善の余地がある。
そこで本発明は、前突時におけるフロアブレース114の上端支持を維持可能な、車室前部の補強構造を提供することを目的とする。
本発明は、車室前部の補強構造に関する。当該構造は、インパネR/Fパイプ、カウルトゥブレース、及びフロアブレースを備える。インパネR/Fパイプは、車両幅方向に延設されステアリングコラムを支持する。カウルトゥブレースは、車両前後方向に延設され、インパネR/Fパイプより車両前方に配置されたカウルパネルに前端が接合され、当該前端と後端との間に、インパネR/Fパイプに接合される接合部を備える。フロアブレースは、カウルトゥブレースの後端に上端が接合され、当該上端から下端に向かって車両後方に傾斜するように配置され、フロアトンネルの側壁に下端が接合される。カウルトゥブレースの後端とフロアブレースの上端は、車両前後方向で互いに重なり合う重複部を備える。カウルトゥブレースとフロアブレースの重複部には、車両幅方向にボルト接合される第一ボルト接合部及び第二ボルト接合部が形成される。カウルトゥブレースとフロアブレースの重複部の一方には、第一ボルト接合部と第二ボルト接合部の間を横断する脆弱部が形成される。
上記構成によれば、前突時にフロアブレースに回転荷重が加わったときに、回動を規制する第一ボルト接合部と第二ボルト接合部との間の脆弱部が、フロアブレースの他の部位に先駆けて破断する。このとき、第一ボルト接合部と第二ボルト接合部の一方は、フロアブレースとカウルトゥブレースとの接合関係、つまりフロアブレースの上端支持が維持される。さらに脆弱部による破断に伴ってフロアブレースの上端支持が2点支持から1点支持に変更されることから、フロアブレースは回転荷重に応じて回動可能となる。その結果、フロアブレースの撓みが解消され、脆弱部以外の箇所の破断が防止可能となる。
また、上記発明において、脆弱部の横断方向は車両上下方向とは非平行であってよい。
上記構成によれば、車両の上下振動時に脆弱部がせん断力を受け難い構造となっているため、車両の通常運転中における脆弱部の破断を抑制可能となる。
また、本発明の別態様に係る車室前部の補強構造は、インパネR/Fパイプ、カウルトゥブレース、及びフロアブレースを備える。インパネR/Fパイプは、車両幅方向に延設されステアリングコラムを支持する。カウルトゥブレースは、車両前後方向に延設され、インパネR/Fパイプより車両前方に配置されたカウルパネルに前端が接合され、当該前端と後端との間に、インパネR/Fパイプに接合される接合部を備える。フロアブレースは、カウルトゥブレースの後端に上端が接合され、当該上端から下端に向かって車両後方に傾斜するように配置され、フロアトンネルの側壁に下端が接合される。カウルトゥブレースの後端とフロアブレースの上端は、車両前後方向で互いに重なり合う重複部を備える。カウルトゥブレースとフロアブレースの重複部の一方には、車両幅方向に穿孔された第一ボルト穴及び第二ボルト穴が形成され、他方には車両幅方向に延設される第一ボルト軸部及び第二ボルト軸部が形成される。第一ボルト穴と第二ボルト穴の一方は閉じた丸穴であって、他方は一部が切り欠かれたU字穴である。
上記構成によれば、前突時にフロアブレースに回転荷重が加わったときに、一方のボルト軸部がU字穴から外れ、フロアブレースは丸穴を支点として回動可能となる。また、回動後も丸穴及びボルト軸部による支持は維持されることから、フロアブレースの上端支持が維持される。
本発明によれば、前突時におけるフロアブレースの上端支持を維持可能となる。
第一実施形態に係る車室前部の補強構造を例示する斜視図である。 インパネR/Fパイプ、カウルトゥブレース、及びフロアブレースを例示する斜視図である。 カウルトゥブレースの接合部周辺の拡大斜視図である。 カウルトゥブレースの接合部周辺の拡大平面図である。 電磁成形による接合を説明する図である。 フロアブレースの裏表の構造を例示する斜視図である。 脆弱部の横断方向を車両上下方向としたときにおける、脆弱部への荷重入力について説明する図である。 前突前の車室前部の補強構造及びその周辺構造を例示する側面図である。 前突時の車室前部の補強構造及びその周辺構造を例示する側面図である。 カウルトゥブレースに脆弱部を設けた例を示す側面図である。 脆弱部の変形例を例示ずる斜視図である。 第二実施形態に係るフロアブレースの構造を例示する斜視図である。 第二実施形態に係るフロアブレース及びカウルトゥブレースの構造を例示する斜視図である。 前突前の車室前部の補強構造及びその周辺構造を例示する側面図である。 前突時の車室前部の補強構造及びその周辺構造を例示する側面図である。 第二実施形態の変形例を例示する側面図である。 第二実施形態の更なる変形例を例示する斜視図である。 従来の車室前部の補強構造を例示する斜視図である。 従来の車室前部の補強構造における、前突時の様子を説明する側面図である。
図1には、第一実施形態に係る車室前部の補強構造が例示されている。なお、図1〜図11において、車両前後方向を記号FRで表される軸で示し、車両幅方向を記号RWで表される軸で示し、鉛直方向を記号UPで表される軸で示す。記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは車両前方方向を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、幅方向軸RWは右幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
図1に示されているように、これらFR軸、RW軸、UP軸は互いに直交する。以下、本実施形態に係る車室前部の補強構造を説明する際には、これら3軸を基準に適宜説明する。例えば「前端」は任意の部材のFR軸正方向側の端部を指し、「後端」は任意の部材のFR軸負方向側の端部を指す。「幅内側」はRW軸に沿って相対的に車両の幅方向内側を指すものとし、「幅外側」はRW軸に沿って相対的に車両の幅方向外側を指すものとする。さらに「上端」は任意の部材のUP軸正方向側の端部を指し、「下端」は任意の部材のUP軸負方向側の端部を指す。
図1には、右ハンドル車の運転席及び助手席から車両前方側を含めた車両内部構造が例示されている。なお図1では、車室とその前方にあるエンジンルームとを隔てるダッシュパネルの図示を省略している。加えてステアリングホイール21とインパネR/Fパイプ10とを隔てるインストルメントパネル(インパネ)は図示を省略している。
車室前部の補強構造は、車両の骨格構造の一部を構成し、インパネR/Fパイプ10、カウルトゥブレース12及びフロアブレース14を備える。
インパネR/Fパイプ10は車両幅方向に延設される円筒部材である。インパネR/Fパイプ10には、ステアリングコラム16、カウルトゥブレース12、フロアブレース14、及び図示しないオーディオ機器やフロントエアバッグ等が取り付けられる。
インパネR/Fパイプ10は複数部材を介して車体に支持固定される。幅方向の支持構造として、インパネR/Fパイプ10の両端は、サイドブラケット18,18を介してフロントピラー48,48に支持される。また主に車両前後方向の支持構造として、インパネR/Fパイプ10は、カウルトゥブレース12を介してカウルパネル40に支持される。さらに主に車両上下方向の支持構造として、インパネR/Fパイプ10は、フロアブレース14を介してフロアトンネル26に支持される。
インパネR/Fパイプ10はパイプ部材であり、例えばアルミ板を曲げ加工した、いわゆる板巻きパイプから構成される。また特に図2に詳細に記載されているように、インパネR/Fパイプ10は、D席パイプ10AとP席パイプ10Bを備える。D席パイプ10Aはドライバー(Driver)席側に配置される円筒部材であり、P席パイプ10Bは助手(Passenger)席側に配置される円筒部材である。D席パイプ10AはP席パイプ10Bよりも径が太くなるように構成されており、剛性が高められている。図2に示されるように、D席パイプ10AのP席パイプ側端部には縮径部10Cが形成され、例えば当該縮径部10C内にP席パイプ10Bが挿入されて全周溶接等により両者が接合される。
図1に戻り、インパネR/Fパイプ10はステアリングコラム16を支持する。ステアリングコラム16は車両前後方向に配置される。より詳細には、車両後方から前方に向かって、車両上方から下方に傾斜するようにステアリングコラム16が配置される。ステアリングコラム16はステアリングサポート20及びステアリングブラケット22を介してインパネR/Fパイプ10に支持される。ステアリングコラム16の後端にはステアリングホイール21が取り付けられる。
カウルトゥブレース12は、車両前後方向に延設される補強部材である。より具体的には、カウルトゥブレース12は、車両前方から後方に向かって、上方から下方に傾斜するように配置される。
図2を参照し、カウルトゥブレース12は肉抜き部に複数のリブ43が設けられた(張り巡らされた)構造であって、その前端にはボルト等の締結部材が挿入される支持穴42が形成される。カウルトゥブレース12の前端は、支持穴42を介して、インパネR/Fパイプ10より前方に配置されたカウルパネル40(図1参照)に固定される。
カウルトゥブレース12の前端と後端との間には、インパネR/Fパイプ10と接合されるリング形状の接合部46が形成されている。接合部46はインパネR/Fパイプ10と全周に亘って接合される。この接合により、インパネR/F10の中心軸C2回りの回動が抑制される。
例えば、インパネR/Fパイプ10をカウルトゥブレース12に組み付ける際には、接合部46がインパネR/Fパイプ10のP席パイプ10Bに嵌挿される(差し込まれる)。接合部46(カウルトゥブレース12)がP席パイプ10Bの所定の被接合箇所50まで嵌挿されると、接合部46は全周に亘ってP席パイプ10B(の被接合箇所50)に接合される。
この接合は、例えば図3、図4に例示するように、全周溶接(全周隅肉溶接)によって行ってもよい。全周溶接部52は、図4に例示するようにカウルトゥブレース12の両側面に形成させてもよい。または、P席パイプ10Bの被接合箇所50の外周面と接合部46の内周面とを接着剤やロウ付けによって全周に亘って固定させてもよい。
または、図5に例示するように、電磁成形加工によって接合部46とP席パイプ10Bを全周に亘ってかしめてもよい。電磁成形加工は既知の技術であることから、ここでは簡単に説明すると、アルミや銅などの高導電率材料から構成されるパイプ材に電磁コイルを挿入する。さらにパルス状の大電流を電磁コイルに供給すると、電磁コイルに磁束が発生するとともにパイプ材に誘導電流が誘起される。このとき、誘導電流が誘起されたパイプ材には径方向外側にローレンツ力が働き、その結果、パイプ材が拡管される。
例えばカウルトゥブレース12の接合部46をP席パイプ10Bに嵌挿して被接合箇所50(図2参照)まで差し込んだ状態で電磁成形加工が行われる。ここで、スムーズな嵌挿のために接合部46の内周径(リング内径)はP席パイプ10Bの外周径より若干大きく形成される。さらにP席パイプ10B内の、被接合箇所50に対応する位置に電磁コイル47が挿入される。このとき、電磁コイル47の幅(RW軸方向幅)は、接合部46の幅(RW軸方向幅)を超過するように電磁コイル47が形成される。
さらに電磁コイル47にパルス電流を供給すると、P席パイプ10Bの、電磁コイル47を覆う箇所が拡管(拡径)される。つまり被接合箇所50及びその幅方向両脇部分が拡径される。この構成において、接合部46が軸C2周りに回動しようとすると、被接合箇所50と接合部46の内周面、及び、拡管部52A,52Bの側面と接合部46の側面とに摩擦力が働いて、接合部46の回動が抑制される。
図1、図2に戻り、カウルトゥブレース12の後端はフロアブレース14の上端と車両前後方向に重なり合う重複部60Aを備える。例えばカウルトゥブレース12の接合部46から後方の部分は後方に向かって徐々に上下方向の幅が狭くなるような尖端形状となっており、その最後端が重複部60Aとなる。
重複部60Aは、第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aを備える。後述するように、カウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aは、フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bと車両幅方向にボルト接合される。カウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aは、カウルトゥブレース12の長手方向に沿って(車両前後方向に沿って)所定間隔を空けて設けられる。図2では、第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aとして、車両幅方向に延設されたスタッドボルト66,68が例示される。
なお後述するように、図2の変形例として、フロアブレース14の重複部60Bの第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bをスタッドボルト66,68とした場合には、カウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aを車両幅方向に穿孔されたボルト穴70,72としてもよい。
フロアブレース14は車両上下方向に延設される補強部材である。より具体的には、フロアブレース14は車両上端から下端に向かって、車両後方に傾斜するように配置される。なお、図1〜図17では、フロアブレース14として、ドライバー席側に設けられるD席フロアブレースのみを図示し、助手席側に設けられるP席フロアブレースは図示を省略している。
フロアブレース14(D席フロアブレース)はカウルトゥブレース12及びフロアトンネル26に固定される。図6には、フロアブレース14の両面(表面及び裏面)斜視図が示される。例示されているようにフロアブレース14は、側面視で「への字」構造またはブーメラン構造をしており、相対的に車両前後方向に延設される上側部分と相対的に車両上下方向に延設される下側部分を含む。
またフロアブレース14は、車両幅方向に薄肉となった肉抜き部28を備えており、この肉抜き部28にはその長手方向に沿ってリブ30が形成されている。また、フロアブレース14の上端と下端との間、例えば肉抜き部28の長手方向中間部には、ニーエアバッグ32(図1参照)を支持固定するためのフランジ34が形成されている。
フロアブレース14の下端は、図1に示すようにフロアトンネル26の側壁26Aに支持固定される。図1及び図6に例示されるように、フロアブレース14の下端には第三ボルト接合部67が設けられる。第三ボルト接合部67は、フロアトンネル26の側壁26Aと車両幅方向に接合される。例えば第三ボルト接合部67は、車両幅方向に穿孔されたボルト穴から構成される。またフロアトンネル26の側壁26Aにも車両幅方向に穿孔されたボルト穴が形成される。両ボルト穴が位置合わせされた状態で、図2に示すようなボルト78の軸部が両ボルト穴に挿入され、ボルト穴から突き出された軸部がナット80に螺合される。
フロアブレース14の上端はカウルトゥブレース12の後端に接合される。具体的には、フロアブレース14の上端は、カウルトゥブレース12の重複部60Aと重なり合う重複部60Bを備える。重複部60Bは、例えば底壁部82とその両脇に立設された側壁部84A,84Bを備えてよい。底壁部82と側壁部84A,84Bとによって構成される断面コ字上の空間にカウルトゥブレース12の重複部60Aが収容される。
なお、側壁部84A,84Bの少なくとも一方は、フロアブレース14の上端部先端まで延設されずに途中で切れていてもよい。このようにすることで、後述する前突時に、カウルトゥブレース12に対するフロアブレース14の回動が側壁部84A,84Bに阻害されずに済む。また、両側壁部84A,84Bとも、後述する脆弱部86の延長線上は壁が途切れていてよい。これにより前突時の脆弱部86の破断が容易となる。
フロアブレース14の重複部60Bには、カウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aに対応する、第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bが設けられる。フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bは、例えば車両幅方向に穿孔されたボルト穴70,72であってよい。
なお後述するように、図2の変形例として、カウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aがボルト穴70,72である場合には、フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bはスタッドボルト66,68であってよい。フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bはフロアブレース14の長手方向に沿って所定間隔を空けて形成される。
フロアブレース14の上端が第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bにより2点支持されることで、カウルトゥブレース12とフロアトンネル26とが相対移動したときにおける、フロアブレース14の回動が規制される。
また、フロアブレース14の重複部60Bには脆弱部86が設けられる。脆弱部86は、フロアブレース14等の棒状部材の両端に曲げ荷重が加えられた際に、当該棒状部材の他の部位と比較して曲げ強度やせん断強度が低くなるように意図的に形成された特定の部位である。脆弱部86は、第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bの間を横断するように形成される。例えば第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bがフロアブレース14の長手方向に沿って配置されているのに対して、脆弱部86はフロアブレース14の短手方向に沿って形成される。例えば脆弱部86はフロアブレース14の短手方向両端に亘って設けられる。
図6右上の側面図に例示されているように、脆弱部86の肉厚は底壁部82と比較して薄く形成される。例えば脆弱部86の肉厚は底壁部82の肉厚の80%程度となるように構成される。また図6に例示されているように脆弱部86はフロアブレース14の短手方向に延設される溝から構成される。
なお、脆弱部86の延設方向(横断方向)は、車両上下方向とは非平行であることが好適である。図7には、脆弱部86を車両上下方向と平行に延設させた例が示されている。路面の凹凸に応じて車両が上下振動する。このとき脆弱部86には上下方向のせん断力が加わる。せん断力と平行に肉薄の脆弱部86が延設されることで、車両の通常運転時に脆弱部86が破断し易くなる。これを踏まえて脆弱部86は車両上下方向とは非平行に延設(横断)させることが好適である。
<前突時の挙動>
図8、図9を用いて、第一実施形態に係る車室前部の補強構造の、前突時の挙動について説明する。図8には前突前の車室前部の補強構造及びその周辺構造が例示され、図9には前突時の車室前部の補強構造及びその周辺構造が例示される。
前突時には、車室前部の補強構造の前方にあるエンジンユニット88が障害物(バリア)によって車両後方に後退させられる。これに伴い、エンジンユニット88後方に設けられた排気管90が変形しながら後退させられる。さらに排気管90の後方のダッシュパネル92が排気管90に押されて後退させられる。これに伴い、ダッシュパネル92上端に接合されたカウルパネル40と、カウルパネル40に接合されたカウルトゥブレース12が後退させられる。カウルトゥブレース12の後退に伴い、その後端に接合されたフロアブレース14の上端も後退させられる。
また、排気管90の変形後退に伴い、その排気管90を収容するフロアトンネル26も前方から変形させられる。ここで、フロアブレース14がその上端から下端に向かって車両後方に向かって傾斜するように延設されるという構造上、下端の第三ボルト接合部67はフロアトンネル26の前端から幾分か後方に配置される。したがって前突発生時点からフロアトンネルの26の変形が第三ボルト接合部67に及ぶまでには時間遅れを伴い、この時間遅れの間にフロアブレース14の上端に後退荷重が加わる場合がある。このときフロアブレース14には、下端の第三ボルト接合部67を支点とし、上端を力点とするような側面視で時計回りの回転荷重F1が加わる。
上端が2点支持されることで回動が規制されているフロアブレース14は、回転荷重F1の入力に伴って撓む。またこの撓みに起因して、脆弱部86に荷重が入力される。例えば回転荷重F1の接線方向のせん断力が脆弱部86に加えられる。前突によるフロアブレース14の撓み量が大きくなると、フロアブレース14の他の部位に先駆けて脆弱部86が破断する。この破断により、フロアブレース14は第一ボルト接合部62A,62Bによる接合関係が解消され、第二ボルト接合部64A,64Bによる1点支持となる。2点支持から1点支持になることで、カウルトゥブレース12の後退に伴うフロアブレース14の回動が可能となる。この回動によりフロアブレース14の撓みが解消され、更なる破断が抑制される。つまり、フロアブレース14の上端支持が維持される。
<第一実施形態の変形例>
図1〜図9に示す例では、カウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aをスタッドボルト66,68とし、フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bをボルト穴70,72としたが、この構成を適宜入れ替えてもよい。例えばカウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aをボルト穴70,72とし、フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bをスタッドボルト66,68としてもよい。さらにはカウルトゥブレース12の第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aをボルト穴70及びスタッドボルト68とし、フロアブレース14の第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bをスタッドボルト66及びボルト穴72としてもよい。
また図1〜図9に示す例では、フロアブレース14に脆弱部86を設けたが、その代わりに図10に示すように、カウルトゥブレース12に脆弱部86を設けてもよい。要するに、フロアブレース14の重複部60Bに設けられた第一ボルト接合部62B及び第二ボルト接合部64Bの間か、カウルトゥブレース12の重複部60Aに設けられた第一ボルト接合部62A及び第二ボルト接合部64Aの間に脆弱部86を設ければよい。
さらに図1〜図9に示す例では、脆弱部86は、フロアブレース14の短手方向に延設される溝から構成されていたが、この形態に限らない。例えば図11に例示するように、脆弱部86の構造として、短手方向に間欠的に穿孔されたいわゆるミシン目構造であってよい。
<第二実施形態>
図12〜図17を用いて、第二実施形態に係る車室前部の補強構造について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材や構成については同一符号を付して適宜説明を省略する。
図12には第二実施形態に係るフロアブレース14の両面斜視図が例示される。第一実施形態と異なる点として、フロアブレース14の重複部60Bに、車両幅方向に穿孔された第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96が形成される。
第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96の一方は閉じた丸穴であって、他方は一部が切り欠かれたU字穴に形成される。図12では第一ボルト穴94をU字穴とし、第二ボルト穴96を丸穴としている。U字穴の切り欠き方向は、前突時にフロアブレース14の回動(側面視で時計回り)が可能となるような方向とする。例えば図12に例示されているように、車両斜め下方に切り欠くようにU字穴を形成する。
また、図13に例示するように、カウルトゥブレース12の重複部60Aには、第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96に対応して、車両幅方向に延設されるスタッドボルト66(第一ボルト軸部),68(第二ボルト軸部)が形成される。
図13に例示されるように、組み付けの際には、カウルトゥブレース12のスタッドボルト66が第一ボルト穴94に挿入され、スタッドボルト68が第二ボルト穴96に挿入される。さらに第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96から突き出されたスタッドボルト66,68の軸部がナット98,99により螺合される。
なお、U字穴である第一ボルト穴94に挿入されるスタッドボルト66へのナット98の締結に関して、通常運転時のフロアブレース14の回動を抑制し、かつ、前突時にはフロアブレース14の回動を許容するような締結であることが好適である。例えば、第一ボルト穴94に挿入されるスタッドボルト66に対するナット98の螺合は、回動を許容するピン接合と、回動を完全に押さえ込む剛性接合との中間接合である半剛性接合とする。
<前突時の挙動>
図14、図15を用いて、第二実施形態に係る車室前部の補強構造の、前突時の挙動について説明する。図14には前突前の車室前部の補強構造及びその周辺構造が例示され、図15には前突時の車室前部の補強構造及びその周辺構造が例示される。
第一実施形態と同様にして、前突時、フロアブレース14には、下端の第三ボルト接合部67を支点とし、上端を力点とするような、側面視で時計回りの回転荷重F1が加わる。
上端が2点支持されることで回動が規制されているフロアブレース14は、回転荷重F1の入力に伴って撓む。このとき、フロアブレース14の撓みを解消するように、図15右上の拡大図に例示されるように、スタッドボルト66が第一ボルト穴94内をスライドする。このスライドにより、フロアブレース14が第三ボルト接合部67を支点として回動する。その結果、フロアブレース14の上端支持が維持される。
<第二実施形態の変形例>
図12〜図15に示す例では、第一ボルト穴94をU字穴とし、第二ボルト穴96を閉じた丸穴としたが、この形態に限らない。例えば図16に例示するように、第一ボルト穴94を閉じた丸穴とし、第二ボルト穴96をU字穴としてもよい。この場合、第二ボルト穴96の切り欠き方向は、前突時にフロアブレース14に掛かる回転荷重に基づいて、車両上斜め方向とすることが好適である。
また図12〜図15に示す例では、フロアブレース14の重複部60Bに第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96を設けたが、その代わりに図17に示すように、カウルトゥブレース12の重複部60Aに第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96を設けてもよい。この場合、フロアブレース14の重複部60Bにはスタッドボルト66,68が設けられる。
また加えて、フロアブレース14の重複部60Bに第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96の一方、ならびにスタッドボルト66,68の一方を設け、カウルトゥブレース12の重複部60Aに第一ボルト穴94及び第二ボルト穴96の他方、ならびにスタッドボルト66,68の他方を設けてもよい。
10 インパネR/Fパイプ、12 カウルトゥブレース、14 フロアブレース、16 ステアリングコラム、20 ステアリングサポート、21 ステアリングホイール、22 ステアリングブラケット、26 フロアトンネル、26A フロアトンネル側壁、32 ニーエアバッグ、40 カウルパネル、60A カウルトゥブレース側重複部、60B フロアブレース側重複部、62A カウルトゥブレース側第一ボルト接合部、62B フロアブレース側第一ボルト接合部、64A カウルトゥブレース側第二ボルト接合部、64B フロアブレース側第二ボルト接合部、66,68 スタッドボルト、67 フロアブレースの第三ボルト接合部、70,72 フロアブレース側ボルト穴、78 フロアブレース下端用ボルト、80 フロアブレース下端用ナット、86 脆弱部、88 エンジンユニット、90 排気管、92 ダッシュパネル、94 第一ボルト穴、96 第二ボルト穴。

Claims (3)

  1. 車両幅方向に延設されステアリングコラムを支持するインパネR/Fパイプと、
    車両前後方向に延設され、前記インパネR/Fパイプより車両前方に配置されたカウルパネルに前端が接合され、当該前端と後端との間に、前記インパネR/Fパイプに接合される接合部を備えるカウルトゥブレースと、
    前記カウルトゥブレースの前記後端に上端が接合され、当該上端から下端に向かって車両後方に傾斜するように配置され、フロアトンネルの側壁に前記下端が接合されるフロアブレースと、
    を備え、
    前記カウルトゥブレースの前記後端と前記フロアブレースの前記上端は、車両前後方向で互いに重なり合う重複部を備え、
    前記カウルトゥブレースと前記フロアブレースの重複部には、車両幅方向にボルト接合される第一ボルト接合部及び第二ボルト接合部が形成され、
    前記カウルトゥブレースと前記フロアブレースの重複部の一方には、前記第一ボルト接合部と前記第二ボルト接合部の間を横断する脆弱部が形成された、
    車室前部の補強構造。
  2. 請求項1に記載の車室前部の補強構造であって、
    前記脆弱部の横断方向は車両上下方向とは非平行である、車室前部の補強構造。
  3. 車両幅方向に延設されステアリングコラムを支持するインパネR/Fパイプと、
    車両前後方向に延設され、前記インパネR/Fパイプより車両前方に配置されたカウルパネルに前端が接合され、当該前端と後端との間に、前記インパネR/Fパイプに接合される接合部を備えるカウルトゥブレースと、
    前記カウルトゥブレースの前記後端に上端が接合され、当該上端から下端に向かって車両後方に傾斜するように配置され、フロアトンネルの側壁に前記下端が接合されるフロアブレースと、
    を備え、
    前記カウルトゥブレースの前記後端と前記フロアブレースの前記上端は、車両前後方向で互いに重なり合う重複部を備え、
    前記カウルトゥブレースと前記フロアブレースの重複部の一方には、車両幅方向に穿孔された第一ボルト穴及び第二ボルト穴が形成され、他方には車両幅方向に延設される第一ボルト軸部及び第二ボルト軸部が形成され、
    前記第一ボルト穴と前記第二ボルト穴の一方は閉じた丸穴であって、他方は一部が切り欠かれたU字穴である、車室前部の補強構造。
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