JP2019025755A - 可塑性材料の混練シミュレーション方法 - Google Patents

可塑性材料の混練シミュレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バンバリーミキサーの混練性能を事前に評価する。【解決手段】フィラー含有可塑性材料に対するバンバリーミキサーの混練性能を事前評価するためのシミュレーション方法であって、前記シミュレーション方法は、予め定めた条件に基づいて、チャンバーモデル内に前記可塑性材料モデルを配置しかつ前記ロータモデルを回転させることにより、チャンバーでの可塑性材料が練られた状態をシミュレーションする計算ステップS2を含んでおり、前記計算ステップS2は、前記可塑性材料の分散状態に関するパラメータを計算するステップを含むシミュレーション方法。【選択図】図4

Description

本発明は、可塑性材料を混練するバンバリーミキサーの混練性能を調べるための方法に関する。
下記非特許文献1は、例えば、ポリマーを混練するバンバリーミキサーの混練性能(例えば、ポリマーの分散性能)を評価するための方法を提案している。下記非特許文献1では、先ず、混練中のポリマーからせん断速度γ、及び、渦度ωが測定され、下式を用いて、ポリマーの分散状態に関するパラメータ(せん断応力λ)が計算される。
λ=|γ|/(|γ|+|ω|)
Ica Manas-Zloczower著、「Mixing and Compounding of Polymers」、第2版、Hanser Gardner Pubns、2009年
ところで、バンバリーミキサーは、チャンバー内に回転するロータを具えている。このロータには、チャンバーの外周面に接近するように突出したチップ部が設けられている。バンバリーミキサーでは、チップ部とチャンバーの外周面との間の隙間(チップクリアランス)において、ポリマーの圧縮及びせん断が効果的に行われる。従って、ポリマーの分散状態に関するパラメータの計算には、チップ部の影響を考慮することが重要である。
しかしながら、上記非特許文献1の方法では、チップ部の影響が考慮されていないため、バンバリーミキサーの混練性能を評価するには十分でないという問題があった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ロータのチップ部の影響を考慮したバンバリーミキサーの混練性能を評価しうる方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、可塑性材料を混練するための空間であるチャンバーと、前記チャンバー内で回転する少なくとも1本のロータとを有し、前記ロータが前記チャンバーの外周面に接近するように突出したチップ部を具え、前記可塑性材料がフィラーを含むものであるバンバリーミキサーの混練性能を調べるためのシミュレーション方法であって、コンピュータに、前記ロータを有限個の要素で分割してロータモデルを入力するステップと、前記コンピュータに、前記チャンバーを有限個の要素で分割してチャンバーモデルを入力するステップと、前記コンピュータに、前記可塑性材料をモデル化した可塑性材料モデルを入力するステップと、予め定めた条件に基づいて、前記チャンバーモデル内に前記可塑性材料モデルを配置しかつ前記ロータモデルを回転させることにより、前記チャンバーでの前記可塑性材料が練られた状態をシミュレーションする計算ステップとを含み、前記計算ステップは、下記式(1)により、前記可塑性材料の分散状態に関するパラメータDを計算するステップを含む可塑性材料の混練シミュレーション方法。

ここで、
V:可塑性材料モデルの体積
R:フィラーの半径
t:単位時間
T:可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間
Q:チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量
τ:可塑性材料モデルのせん断応力
γ:可塑性材料モデルのせん断速度
α、τ:定数
本発明に係る前記可塑性材料の混練シミュレーション方法において、前記計算ステップは、前記ロータモデルが1回転以上する期間において、前記パラメータDの時間平均を計算するステップをさらに含んでもよい。
本発明の可塑性材料の混練シミュレーション方法は、予め定めた条件に基づいて、前記チャンバーモデル内に前記可塑性材料モデルを配置しかつ前記ロータモデルを回転させることにより、前記チャンバーでの前記可塑性材料が練られた状態をシミュレーションする計算ステップを含んでいる。前記計算ステップは、下記式(1)により、前記可塑性材料の分散状態に関するパラメータDを計算するステップを含んでいる。

ここで、
V:可塑性材料モデルの体積
R:フィラーの半径
t:単位時間
T:可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間
Q:チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量
τ:可塑性材料モデルのせん断応力
γ:可塑性材料モデルのせん断速度
α、τ:定数
上記式(1)では、可塑性材料モデルのせん断応力τ、及び、せん断速度γとともに、前記チップ部に関するパラメータ(時間T、流量Q)が含まれている。従って、本発明の可塑性材料の混練シミュレーション方法は、ロータのチップ部の影響を考慮して、バンバリーミキサーの混練性能を評価することができる。
バンバリーミキサーの一例を示す部分断面図である。 可塑性材料を混練しているバンバリーミキサー1の一例を示す部分断面図である。 可塑性材料の混練シミュレーション方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。 可塑性材料の混練シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。 ミキサーモデル入力ステップの処理手順の一例を示すフローチャートである。 バンバリーミキサーモデルの一例を示す断面図である。 図6の部分拡大図である。 チャンバーモデル及びロータモデルの斜視図である。 チャンバーモデルの断面図である。 チャンバーモデルを分解して示す断面図である。 計算ステップの処理手順の一例を示すフローチャートである。 可塑性材料モデルと気相モデルとが混在して配置されたチャンバーモデルを示す断面図である。 ランド幅が互いに異なる第1ロータ及び第2ロータについて、可塑性材料の分散状態に関するパラメータDと時刻tとの関係を示すグラフである。 本発明の他の実施形態の計算ステップの処理手順の一例を示すフローチャートである。 ランド幅が互いに異なる第1ロータ及び第2ロータについて、可塑性材料の分散状態に関するパラメータDの時間平均と時刻tとの関係を示すグラフである。 実施例の可塑性材料の分散状態に関するパラメータDと時刻tとの関係を示すグラフである。 比較例のせん断応力と時刻tとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の可塑性材料の混練シミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある。)では、コンピュータを用いて、可塑性材料を混練するバンバリーミキサーの混練性能が評価される。さらに、本実施形態では、評価されたバンバリーミキサーの混練性能に基づいて、高い混練性能を発揮しうるロータの形状等が設計されている。
ここで、「混練」とは、例えば、ゴム材料や樹脂材料を含む可塑性材料の成形時の前処理として、原材料の薬品、粉体などと液状バインダを分散させながら互いに濡らし、それらを均質にする作用乃至操作として定義される。代表的な混練工程は、バンバリーミキサー(混練機)を用いて行われる。図1は、バンバリーミキサーの一例を示す部分断面図である。図2は、可塑性材料5を混練しているバンバリーミキサー1の一例を示す部分断面図である。
図1に示されるように、バンバリーミキサー1は、可塑性材料5(図2に示す)を混練するための空間であるチャンバー4と、チャンバー4内で回転する少なくとも1本のロータ3(本実施形態では、一対のロータ3、3)とを含んで構成されている。さらに、本実施形態のバンバリーミキサー1は、チャンバー4を画定する内壁面9を具えたケーシング2を具えている。本実施形態のケーシング2は、筒状に形成されている。
各ロータ3は、円筒状の基部3aと、基部3aから筒状に形成されたケーシング2の内壁面9に向かってのびる翼部3bとを含んで構成されている。図2に示されるように、翼部3bは、チャンバー4の外周面4o(ケーシング2の内壁面9)に接近するように突出したチップ部8を具えている。このチップ部8とチャンバー4の外周面4oとの間の隙間(チップクリアランス)10において、可塑性材料5の圧縮及びせん断が効果的に行われる。
チップ部8のロータ周方向の長さであるランド幅L1は、例えば、混練対象の可塑性材料5の配合等に応じて適宜設定される。なお、ランド幅L1が大きいと、可塑性材料5を短時間で混練することができるが、可塑性材料5が加熱しやすい傾向がある。逆に、ランド幅L1が小さいと、可塑性材料5の加熱を抑えることができるが、可塑性材料5の混練時間が増大する傾向がある。従って、バンバリーミキサー1の混練性能の評価には、チップ部8の影響(ランド幅L1)を考慮することが重要である。
図1に示されるように、チャンバー4は、ロータ3、3と、ケーシング2との間に区画される。本実施形態のチャンバー4は、断面横向きの略8の字状に形成されている。なお、チャンバー4は、このような形状に限定して解釈されるものではない。
図2に示されるように、本実施形態の可塑性材料5は、架橋前のゴム材料である。ただし、このようなゴム材料以外にも、樹脂材料やエラストマー等の流動性を有するものを、可塑性材料5として採用することができる。また、可塑性材料5は、十分に練られて安定的な流動状態(流体)とみなすことができる状態のものが前提とされる。このような状態としては、架橋前のゴムの場合、十分に練られて約80℃程度まで昇温した状態が相当する。
可塑性材料5には、フィラー(図示省略)が含まれている。フィラーとしては、例えば、シリカ、カーボンブラック、又は、アルミナ等が採用される。このようなフィラーは、バンバリーミキサー1による混練によって細かくすり潰され、可塑性材料5に万遍なく分散される。
図3は、可塑性材料の混練シミュレーション方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ6は、本体6a、キーボード6b、マウス6c及びディスプレイ装置6dを含んでいる。本体6aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置6a1、6a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。図4は、可塑性材料の混練シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、コンピュータ6に、図1に示したバンバリーミキサー1をモデル化したバンバリーミキサーモデル11が入力される(モデル入力ステップS1)。図5は、モデル入力ステップS1の処理手順の一例を示すフローチャートである。図6は、バンバリーミキサーモデル11の一例を示す断面図である。図6において、チャンバーモデル14の要素H(i)(図9に示す)を省略して表示している。
本実施形態のモデル入力ステップS1では、先ず、コンピュータ6に、ケーシング2(図1に示す)を有限個の要素F(i)(i=1、2、…)で分割したケーシングモデル12が入力される(ステップS11)。ステップS11では、ケーシング2(図1に示す)の設計データ(例えば、CADデータ)に基づいて、ケーシング2の輪郭の少なくとも一部が、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素F(i)で離散化(モデル化)される。これにより、ケーシングモデル12が定義される。ケーシングモデル12には、ケーシング2の内壁面9(図1に示す)を定義した内壁面モデル19を有している。
本実施形態の要素F(i)としては、例えば、3次元のソリッド要素が採用されている。ソリッド要素は、精度がよく、しかも接触面の設定が容易な6面体要素が好ましいが、複雑な形状を表現するのに適した4面体要素や多面体要素等でもよい。なお、これらの要素以外にも、ソフトウェアで使用可能な3次元のソリッド要素や2次元のシェル要素であれば、特に限定されない。各要素F(i)には、要素番号、節点(図示省略)の番号、及び、節点の座標値等の数値データや熱条件等が定義される。また、各要素F(i)には、外力が作用しても変形不能な剛体として定義される。これにより、ケーシングモデル12での応力計算を省略することができるため、計算コストを低減しうる。ケーシングモデル12は、コンピュータ6(図3に示す)に記憶される。
なお、本実施形態のシミュレーション方法は、バンバリーミキサー1で練られる可塑性材料5の混練状態の計算に特化しているため、内壁面モデル19のみでケーシングモデル12が定義されてもよい。この場合、要素F(i)として、2次元のシェル要素が採用されるのが望ましい。
次に、本実施形態のモデル入力ステップS1では、コンピュータ6に、ロータ3を有限個の要素G(i)(i=1、2、…)で分割してロータモデル13が入力される(ステップS12)。ステップS12では、各ロータ3、3(図1に示す)の設計データ(例えば、CADデータ等)に基づいて、図1に示した基部3a及び翼部3bの輪郭が、有限個の要素G(i)で離散化(モデル化)される。これにより、基部モデル13a及び翼部モデル13bをそれぞれ含む一対のロータモデル13、13が定義される。一対のロータモデル13、13は、ケーシングモデル12の内部に配置される。また、一対のロータモデル13、13は、その中心Oa、Obの周りで回転可能な回転領域として定義される。
図7は、図6の部分拡大図である。図7では、図6に示した要素G(i)を省略して表示している。翼部モデル13bの先端には、ケーシングモデル12の内壁面モデル19(チャンバーモデル14の外周面14o)に接近するように突出したチップ部18が設けられている。チップ部18のランド幅L2は、ロータ3のチップ部8のランド幅L1(図2に示す)に基づいて設定される。
図6に示されるように、本実施形態の要素G(i)としては、要素F(i)と同様に、3次元のソリッド要素を採用することができ、変形不能な剛性が定義される。なお、ロータモデル13は、ケーシングモデル12と同様に、ロータ3の表面のみがモデル化されたものでもよい。一対のロータモデル13、13は、コンピュータ6(図3に示す)に記憶される。
次に、本実施形態のモデル入力ステップS1では、コンピュータ6に、チャンバー4(図1に示す)を有限個の要素H(i)(i=1、2、…)で分割してチャンバーモデル14が入力される(ステップS13)。図8は、チャンバーモデル14及びロータモデル13の斜視図である。図9は、チャンバーモデル14の断面図である。図10は、チャンバーモデル14を分解して示す断面図である。図10では、要素H(i)の形状を単純化して表示している。
本実施形態のステップS13では、図1に示したケーシング2及び一対のロータ3、3の設計データ(例えば、輪郭等)に基づいて、ケーシング2の内壁面9と、一対のロータ3、3の外周面3oとで閉じられた3次元空間(輪郭)が、図9に示した有限個の要素H(i)で離散化(モデル化)される。これにより、密閉状態のチャンバーモデル14が入力される。チャンバーモデル14は、図6及び図8に示されるように、ケーシングモデル12の内壁面モデル19によって区画される外周面14oと、一対のロータモデル13、13の外周面13oで区画される内周面14iとを有している。
図9及び図10に示されるように、要素H(i)は、例えば、オイラー要素が採用されている。要素分割(離散化)は、例えば、四面体、六面体などの他、多面体セルによって行われる。なお、これらの要素以外にも、ソフトウェアで使用可能な3次元の格子状の要素であれば、特に限定されない。また、各要素H(i)には、後述する可塑性材料モデル16や気相モデル17について、圧力、温度、又は、速度等の物理量が計算される。
本実施形態のチャンバーモデル14は、図10に分離して示されるように、一対の回転可能な回転部14A、14Bと、一対の回転部14A、14B間を継ぎ、かつ、一対の回転部14A、14Bが収容される外枠部14Cとが含まれる。従って、チャンバーモデル14は、3つの部分(即ち、一対の回転部14A、14B、及び、外枠部14C)を含んで構成されている。
回転部14A、14Bは、各々、円形の外周14Ao、14Boと、ロータモデル13の外周面13o(図6に示す)に等しい内周14Ai、14Biとを有している。回転部14A、14Bは、外枠部14Cの内部にそれぞれ填め込まれる。また、回転部14A、14Bは、ロータモデル13、13とともに、中心(回転軸)Oa、Obの周りで回転可能に定義されている。このような回転部14A、14B内の要素H(i)により、図1に示したロータ3、3の回転に伴うチャンバー4の容積形状の変化が表現されうる。
外枠部14Cは、回転部14A、14Bを囲む筒状に形成されている。外枠部14Cの軸方向両端は、両端面14t(図8に示す)によって閉じられている。外枠部14Cは、各回転部14A、14Bと接触する凹円弧面14Coを有している。外枠部14Cの凹円弧面14Coと、回転部14A、14Bの外周14Ao、14Boとは、スライディングサーフェース等の境界条件が定義されている。これにより、ロータモデル13、13を回転させる後述の計算ステップS2において、チャンバーモデル14の回転部14A、14B内で生じる物理的な作用(力及び熱等)が、この凹円弧面14Coを介して外枠部14Cへと伝達される。チャンバーモデル14は、コンピュータ6(図3に示す)に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ6が、チャンバー4での可塑性材料5が練られた状態を計算(シミュレーション)する(計算ステップS2)。本実施形態の計算ステップS2では、予め定めた条件(本実施形態では、境界条件)に基づいて、チャンバーモデル14内に可塑性材料モデル16を配置し、かつ、ロータモデル13を回転させている。これにより、計算ステップS2では、チャンバー4での可塑性材料5が練られた状態(図2に示す)がシミュレーションされる。図11は、計算ステップS2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の計算ステップS2では、先ず、コンピュータ6に、可塑性材料5(図2に示す)をモデル化した可塑性材料モデル16が入力される(ステップS21)。図12は、可塑性材料モデル16と気相モデル17とが混在して配置されたチャンバーモデル14を示す断面図である。なお、図12において、可塑性材料モデル16が着色されて表示されている。
本実施形態の可塑性材料モデル16は、図10に示したオイラー要素が採用されたチャンバーモデル14の要素H(i)によって定義される。チャンバーモデル14の要素H(i)には、可塑性材料5(図2に示す)の物性(例えば、せん断粘度、比熱、及び、熱伝導率等)が定義される。なお、本実施形態のステップS21では、フィラー(図示省略)を含んだ可塑性材料5の物性が定義される。従って、可塑性材料5に含まれるフィラーの種類によって、異なる物性が定義される。これにより、ステップS21では、チャンバーモデル14に配置された可塑性材料モデル16が設定される。本実施形態の可塑性材料モデル16は、圧力によって密度が変化しない非圧縮流体として定義される。また、チャンバーモデル14には、境界条件を設定する後述のステップS23において、可塑性材料モデル16の充填率が設定される。
せん断粘度は、例えば、解析対象となる可塑性材料5(図2に示す)から粘弾性特性(G'及びG”)が複数の温度条件で測定され、Cox-Merz則などを用いてせん断粘度に変換することで得られる。このようにして得られたせん断粘度ηは、例えば、特許文献(特許第5514236号公報)に記載の式(1)と同様に、べき乗法則で近似される。
比熱は、解析対象の可塑性材料5(図2に示す)から、例えば断熱型連続法(@25℃)にて測定される。熱伝導率は、解析対象の粘性流体から、例えば熱線法(@25℃)にて測定される。可塑性材料モデル16は、コンピュータ6(図3に示す)に入力される。
次に、本実施形態の計算ステップS2では、コンピュータ6(図3に示す)に、チャンバー4(図1に示す)内に存在する空気(図示省略)を、有限個の要素でモデル化した気相モデル17が入力される(ステップS22)。本実施形態の気相モデル17は、可塑性材料モデル16と同様に、図10に示したオイラー要素が採用されたチャンバーモデル14の要素H(i)によって定義される。チャンバーモデル14の要素H(i)には、空気の粘度、及び、比重といった物性が定義される。これにより、ステップS22では、チャンバーモデル14に配置された気相モデル17が設定される。
本実施形態の気相モデル17は、可塑性材料モデル16と同様に、圧力によって密度が変化しない非圧縮流体として定義されている。なお、チャンバーモデル14には、境界条件を設定する後述のステップS23において、気相モデル17の充填率が設定される。気相モデル17は、コンピュータ6(図3に示す)に入力される。
次に、本実施形態の計算ステップS2では、コンピュータ6(図3に示す)に、可塑性材料モデル16の流動計算に必要な境界条件等の各種の条件が定義される(ステップS23)。本実施形態の境界条件としては、図6に示されるように、チャンバーモデル14の外周面14oに定義される流速境界条件、及び、温度境界条件が含まれている。
本実施形態の流速境界条件としては、壁面スリップ条件が採用される。壁面スリップ条件において、チャンバーモデル14の可塑性材料モデル16(図12に示す)は、ケーシングモデル12の内壁面モデル19(チャンバーモデル14間の外周面14o)において流速を持っている。この場合、可塑性材料モデル16とチャンバーモデル14との接触面のスリップ現象は、例えば、特許文献(特許第5514236号公報)に記載のシミュレーション方法と同様に、Navier's Lawなどが用いられることにより、シミュレートされうる。
温度境界条件としては、全てのチャンバーモデル14の外面温度が温調温度(例えば50℃)に設定される条件、又は、断熱条件のいずれかが採用される。なお、断熱条件は、チャンバーモデル14の各外面において、熱が外に逃げない条件である。本実施形態では、計算負荷を軽減する観点より、チャンバーモデル14の温度境界条件として、断熱条件が採用されている。
他の条件としては、流動計算の初期状態、シミュレーションの単位時間(微小時間)の大きさ、内部処理でのイタレーションの反復回数、計算終了時刻、及び、フィラーの半径Rなど含まれる。フィラーの半径Rは、可塑性材料5(図2に示す)に配合されているフィラーに基づいて設定される。
さらに、他の条件としては、ロータモデル13の回転数(図10に示したチャンバーモデル14の回転部14A、14Bの回転数)、チャンバーモデル14の外周面14oのスリップ率、チャンバーモデル14の容積に対する可塑性材料モデル16及び気相モデル17の充填率などが含まれる。このような充填率が設定されることにより、粘性流体の充填率が100%以下(例えば、50%〜90%)の状態での流動計算が実施されうる。
図12に示されるように、初期状態のチャンバーモデル14は、チャンバーモデル14を横切る水平な境界面Sを基準として、それよりも上部を気相モデル17の領域Aとし、それよりも下部を可塑性材料モデル16の領域Mとして混在配置される。境界面Sは、可塑性材料モデル16及び気相モデル17の充填率に基づいて設定される。また、境界面Sのレベルが変更されることにより、可塑性材料モデル16の充填率が調節されてもよい。これらの条件は、シミュレーションの目的等に応じて任意に定められる。
次に、本実施形態の計算ステップS2では、ロータモデル13、13を回転させて、チャンバーモデル14での可塑性材料モデル16が練られた状態がシミュレーションされる(ステップS24)。ステップS24では、ロータモデル13、13の回転に基づいて、可塑性材料モデル16の流動計算が行われる。流動計算では、例えば、特許文献(特許第5514236号公報)に記載のシミュレーション方法と同様に、流体の運動状態を特定する3方向(x,y,z)の速度成分と、流体の内部状態を特定する未知量である圧力p及び温度Tとが計算される。本実施形態の圧力pには、内壁面モデル19の少なくとも可塑性材料モデル16が接触している部分の圧力を含んでいる。また、本実施形態では、非圧縮性流れの場合のNavier-Stokes方程式とし、可塑性材料モデル16及び気相モデル17の各密度を一定としている。
本実施形態において、可塑性材料モデル16は、全温度領域で流体として扱われる。このため、流体の方程式(Navier-Stokes 方程式、質量保存式、及び、エネルギー方程式の連立)を解くことになる。また、本実施形態では、可塑性材料5(図2に示す)と空気(図示省略)との2つの流体を一度に扱う必要があるため、自由界面の流れの計算で用いられるVOF(Volume of Fluid)法が用いられる。VOF法では、2つ流体(即ち、可塑性材料5及び空気)の界面の移動を直接計算するのではなく、各要素(「セル」ということもある。)の体積中の流体の充填率(体積分率)を定義して自由界面を表現するものである。なお、支配方程式(運動方程式、質量保存式、エネルギー方程式、及び、体積分率輸送方程式)は、例えば、特許文献(特許第5514236号公報)に記載のとおりである。流動計算は、例えば、ANSYS社のFLUNETやCFX、又は、Siemens PLM Software社のSTAR-CCM+の汎用の流体解析ソフトウェアが用いられることにより、容易に計算されうる。
また、本実施形態において、支配方程式は、圧力ベースの分離型解法で解かれている。圧力方程式と運動方程式とのカップリングには、例えばSIMPLE(Semi-Implicit Method for Pressure-Linked Equations)アルゴリズムが用いられるのが望ましい。
これにより、ステップS24では、図2に示したチャンバー4での可塑性材料5が練られた状態を、単位時間(時刻t)毎にシミュレーションすることができる。本実施形態のステップS24では、チャンバーモデル14内の可塑性材料モデル16を構成する各要素H(i)について、せん断応力τ及びせん断速度γが、単位時間(時刻t)毎に計算される。せん断応力τ及びせん断速度γ等の計算結果は、コンピュータ6(図3に示す)に記憶される。
次に、本実施形態の計算ステップS2では、下記式(1)により、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態に関するパラメータDが計算される(ステップS25)。本実施形態の可塑性材料の分散状態に関するパラメータDは、その数値が大きくなるほど、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態が良好であることを示している。

ここで、
V:可塑性材料モデルの体積
R:フィラーの半径
t:時刻
T:可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間
Q:チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量
τ:可塑性材料モデルのせん断応力
γ:可塑性材料モデルのせん断速度
α、τ:定数
上記式(1)の可塑性材料モデルの体積Vは、チャンバーモデル14内に定義された可塑性材料モデル16(図12に示す)の体積である。上記式(1)のフィラーの半径Rは、上述の境界条件を入力するステップS23で入力されたパラメータである。上記式(1)の時刻tは、単位時間毎に刻まれたシミュレーションの時間である。
上記式(1)の時間Tは、可塑性材料モデル16(図10に示す)がロータモデル13のチップ部18(図7に示す)を通過するのに要する時間を示している。時間Tは、チップ部18のランド幅L2を、チップ部18とチャンバーモデル14の外周面14oとの間の隙間(チップクリアランス)20(図7に示す)を通過する可塑性材料モデル16の速度vで除することで求めることができる。速度vは、時刻tにおいて、ロータモデル13のチップ部18の幅方向(ロータ周方向)の中心部18cでの接線と平行な(本実施形態では、チップ部18に沿った方向の)可塑性材料モデル16の速度成分として定義される。このような時間Tは、その値が大きいほど、チップ部18を可塑性材料モデル16が通過するのに多くの時間を要しており、可塑性材料モデル16の圧縮及びせん断が効果的に行われるため、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態が良好であることを意味する。
上記式(1)の流量Qは、チップ部18(図7に示す)を通過する可塑性材料モデル16(図10に示す)の単位時間当たりの流量を示している。流量Qは、現在の時刻tよりも一つ前の時刻t−1において、隙間(チップクリアランス)20に配置されている可塑性材料モデル16の要素H(i)(図10に示す)のうち、現在の時刻tにおいて、隙間20から排出された要素H(i)の合計体積として求められる。このような流量Qは、その値が大きいほど、多くの可塑性材料モデル16が圧縮及びせん断が行われるため、可塑性材料の分散状態が良好であることを意味している。
本実施形態において、隙間20に配置されている可塑性材料モデル16の要素H(i)(図10に示す)とは、図7に示されるように、チップ部18のロータ周方向の各端部18t、18tからチャンバーモデル14の外周面14oにのびる境界面21、21間で囲まれる領域22に配置される要素である。本実施形態の境界面21、21は、チップ部18の幅方向(ロータ周方向)の中心部18cでの接線と直交する方向(本実施形態では、チップ部18と直交する方向)に対して平行にのびている。
上記式(1)の可塑性材料モデルのせん断応力τは、時刻tにおいて、可塑性材料モデル16を構成する各要素H(i)のうち、チップ部18とチャンバーモデル14の外周面14oとの間の隙間(チップクリアランス)20に配置されている要素H(i)で計算されたせん断応力の平均値である。上記式(1)の可塑性材料モデルのせん断速度γも、せん断応力τと同様に、隙間(チップクリアランス)20に配置されている要素H(i)で計算されたせん断速度の平均値である。
上記式(1)の定数αは、可塑性材料5(図2に示す)の材料定数である。また、上記式(1)の定数τは、可塑性材料5が塑性変形するか否かの境界を示す臨界せん断応力である。これらの定数α、τは、例えば、可塑性材料5を用いた実験や測定結果等に基づいて適宜設定することができる。本実施形態の計算ステップS2では、例えば、論文(Ica Manas-Zloczower著、「Mixing and Compounding of Polymers」、(デンマーク)、UNIVERSITE CATHOLIQUE DE LOUVAIN、第2版、Hanser Gardner Pubns、2009年)に基づいて、下記のように定義される。
α=1.3×10-5[μm/Pa]
τ=72000[Pa]
上記式(1)において、フィラーの半径Rを時刻tで微分したdR/dtは、時刻tでのフィラーの半径Rの減少量を示している。
上記式(1)において、可塑性材料モデル16のせん断応力τが、定数(臨界せん断応力)τ以下である場合、図2に示したバンバリーミキサー1において、隙間10に配置されている可塑性材料5が塑性変形せず、フィラー(図示省略)の大きさが変化しないと判断される。この場合、フィラーの半径の減少量dR/dtには、0が定義される。
他方、上記式(1)において、可塑性材料モデル16のせん断応力τが、定数(臨界せん断応力)τよりも大である場合、図2に示したバンバリーミキサー1において、隙間10に配置される可塑性材料5が塑性変形し、フィラー(図示省略)の大きさが小さくなると判断される。この場合、フィラーの半径の減少量dR/dtには、−(α(τ−τ)γ)/3R2が定義される。
上記式(1)の−(α(τ−τ)γ)/3R2は、材料定数α、せん断応力と臨界せん断応力との差τ−τ、及び、せん断速度γに比例して、フィラーの半径Rの減少量を大きく(即ち、負の数であるdR/dtを小さく)するものである。計算式の詳細等については、上記論文に記載のとおりである。このように、フィラーの半径の減少量dR/dtは、その値が小さい(絶対値が大きい)ほど、フィラーが細かく粉砕されて、可塑性材料の分散状態が良好であることを意味している。
上記式(1)の可塑性材料の分散状態に関するパラメータDは、フィラーの半径の減少量に−1を乗じた−dR/dt、可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間T、及び、チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量Qを乗じ、さらに、可塑性材料モデルの体積Vで除することで求められている。
上述したように、可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間T、及び、チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量Qは、その値が大きいほど、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態が良好であることを示している。
他方、フィラーの大きさの減少量dR/dtは、その値が小さいほど、フィラーの半径Rの減少量が大きくなり、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態が良好であることを示すものである。このため、フィラーの大きさの減少量dR/dtと、時間T及び流量Qとは、大小関係が互いに異なる。このため、上記式(1)では、フィラーの大きさの減少量dR/dtに−1が乗じられることで正の数に変換されるため、時間T及び流量Qと大小関係を一致させている。
上記式(1)のうち、正の値に変換されたフィラーの半径の減少量−dR/dt、可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間T、及び、チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量Qを乗じたパラメータ−dR/dt・T・Qは、その値が大きいほど、時刻tにおいて、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態が良好であることを示している。ただし、パラメータ−dR/dt・T・Qは、例えば、複数のバンバリーミキサー1の混練性能(可塑性材料5の分散状態)の比較に用いられる場合、図12に示したチャンバーモデル14に配置される可塑性材料モデル16の体積Vが同一であることが前提となる。
このような前提を不要とするために、本実施形態では、パラメータ−dR/dt・T・Qに、可塑性材料モデルの体積Vで除することで、可塑性材料モデル16の単位体積当たりの分散状態に関するパラメータDが求められている。パラメータDは、その値が大きくなるほど、時刻tにおいて、可塑性材料モデル16の分散効率が良好であり、バンバリーミキサー1の混練性能が良好であることを意味している。
このように、上記式(1)では、可塑性材料モデルのせん断応力τ、及び、せん断速度γとともに、図2に示したチップ部8(図7に示したチップ部18)に関するパラメータ(時間T、流量Q)が含まれている。従って、本実施形態の混練シミュレーション方法は、ロータ3のチップ部8の影響を考慮して、バンバリーミキサー1の混練性能(可塑性材料5の分散状態)を評価することができる。可塑性材料の分散状態に関するパラメータDは、コンピュータ6に記憶される。
次に、計算ステップS2では、現在の時刻tが計算終了時刻に至っているか否かが判断される(ステップS26)。計算終了時刻は、境界条件等を定義するステップS23で適宜設定される。
ステップS26において、現在の時刻tが計算終了時刻に至っていると判断された場合(ステップS26で、「Y」)、計算ステップS2の一連の処理が終了する。他方、ステップS26において、現在の時刻tが計算終了時刻に至っていないと判断された場合(ステップS26で、「N」)、単位時間(時刻t)を一つ進めて(ステップS27)、ステップS24〜ステップS26が再度実施される。これにより、計算ステップS2では、計算開始から計算終了時刻に至るまでの間、図6に示したロータモデル13、13を単位時間毎に回転させて、チャンバー4での可塑性材料5が練られた状態をシミュレーションすることができる。さらに、計算ステップS2では、時刻t毎に、可塑性材料5(図2に示す)の分散状態に関するパラメータDを計算することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、バンバリーミキサー1(図1に示す)の混練性能が、良好か否かが判断される(ステップS3)。バンバリーミキサー1の混練性能が良好か否かの判断は、適宜実施することができる。本実施形態では、時刻t毎に計算された可塑性材料5の分散状態に関するパラメータDが、予め定められた閾値以上である場合に、バンバリーミキサー1の混練性能が良好であると判断している。閾値については、バンバリーミキサー1に求められる混練性能に応じて適宜設定することができる。
上述したように、可塑性材料の分散状態に関するパラメータDには、図2に示したロータ3のチップ部8の影響が考慮されている。このため、上記非特許文献1の方法に比べて、バンバリーミキサー1の性能を精度よく評価することができる。
ステップS3において、バンバリーミキサー1の混練性能が良好であると判断された場合(ステップS3において、「Y」)、バンバリーミキサーモデル11(図6に示す)に基づいて、バンバリーミキサー1が製造される(ステップS4)。他方、ステップS3において、バンバリーミキサー1の混練性能が良好でないと判断された場合(ステップS3において、「N」)、図1及び図2に示したバンバリーミキサー1(ロータ3)の設計因子(例えば、チップ部8のランド幅L1等)等が変更され(ステップS5)、ステップS1〜ステップS3が再度実行される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、高い混練性能を発揮しうるバンバリーミキサー1(ロータ3を含む)を確実に設計することができる。
本実施形態のシミュレーション方法では、図12に示されるように、チャンバーモデル14内に、可塑性材料モデル16及び気相モデル17が定義されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、チャンバーモデル14内に可塑性材料モデル16のみが定義されてもよい。これにより、チャンバーモデル14の計算対象を、可塑性材料モデル16のみに限定されるため、計算負荷を小さくすることができる。さらに、チャンバーモデル14内に可塑性材料モデル16のみが充填される場合、VOF法を省略して有限体積法のみで計算することができるため、計算負荷を小さくすることができる。
図13は、ランド幅L2(図7に示す)が互いに異なる第1ロータモデル及び第2ロータモデルについて、可塑性材料の分散状態に関するパラメータDと時刻tとの関係を示すグラフである。第2ロータモデルのランド幅L1は、第1ロータモデルのランド幅L1の1.1倍に設定されている。
ところで、時刻t毎に計算された可塑性材料の分散状態に関するパラメータDに基づいて、例えば、一対の第1ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル(図示省略)の混練性能と、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル(図示省略)の混練性能とを比較すると、図13に示されるように、第1ロータモデルのパラメータDと、第2ロータモデルのパラメータDとの大小関係が入れ替わり、混練性能の優劣を評価することが難しい場合がある。このようなパラメータDの大小関係の入れ替わりは、ランド幅L1の相違によって、第1ロータモデル及び第2ロータモデルの各チップ部8周辺の可塑性材料モデル16の流れ(即ち、可塑性材料モデル16がチップ部8を通過する時刻、可塑性材料モデル16にせん断が作用する時刻、及び、せん断速度等)がそれぞれ異なることによるものと考えられる。
可塑性材料の分散状態に関するパラメータDの大小関係を明確にするために、計算ステップS2では、ロータモデル13が1回転以上する期間において、パラメータDの時間平均を計算するステップS28がさらに含まるのが望ましい。図14は、本発明の他の実施形態の計算ステップS2の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
本実施形態のステップS28では、ロータモデル13(図6に示す)が1回転する期間において、パラメータDの時間平均が計算される。例えば、ロータモデル13が1回転する期間が1.0秒であり、かつ、単位時間が0.1秒である場合、1回転した時刻t(1.0秒)でのパラメータDの時間平均は、時刻t(0秒)から時刻t(1.0秒)までに単位時間(0.1秒)毎に計算された11個のパラメータDの平均値として求められる。
また、1回転した時刻t(1.0秒)から単位時間0.1秒が経過した時刻t(1.1秒)でのパラメータDの時間平均は、時刻t(0.1秒)から時刻t(1.1秒)までに単位時間(0.1秒)毎に計算された11個のパラメータDの平均値として求められる。このようなパラメータDの時間平均は、ロータモデルが1回転に要する時刻t(1.0秒)から計算終了時刻までの間、単位時間(0.1秒)毎に計算される。
図15は、ランド幅L1が互いに異なる第1ロータモデル及び第2ロータモデルについて、可塑性材料の分散状態に関するパラメータDの時間平均と時刻tとの関係を示すグラフである。図15に示されるように、ステップS28では、全ての時刻tにおいて、第2ロータモデルのパラメータDの時間平均は、第1ロータモデルのパラメータDの時間平均よりも大きく計算されている。従って、この実施形態では、パラメータDの時間平均を求めることで、バンバリーミキサー1の混練性能を確実に評価することができる。
この実施形態のパラメータDの時間平均は、ロータモデル13が1回転する期間毎に計算されたが、ロータモデル13が1回転以上する期間であれば、適宜設定された期間毎に、パラメータDの時間平均が計算されてもよい。なお、期間が長いと、パラメータDの時間平均のサンプル数が少なくなるおそれがある。このような観点より、パラメータDの時間平均が計算される期間は、ロータモデル13が3回転する期間よりも短いのが望ましい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
[実施例A]
図4及び図5に示した処理手順に従って、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル、及び、第2ロータモデルとはチップ部のランド幅が異なる一対の第3ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルがコンピュータに入力された(実施例1、比較例)。実施例1、及び、比較例では、各バンバリーミキサー内に可塑性材料モデルを配置して、チャンバーでの可塑性材料が練られた状態をシミュレーションする計算ステップがそれぞれ実施された。
実施例1の計算ステップでは、図11に示した処理手順に従って、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル、及び、一対の第3ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルについて、上記式(1)の可塑性材料の分散状態に関するパラメータDが計算された。図16は、実施例1の可塑性材料の分散状態に関するパラメータDと時刻tとの関係を示すグラフである。
比較例の計算ステップでは、上記非特許文献1と同様の手順に従って、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル、及び、一対の第3ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルについて、ポリマーの分散状態に関するパラメータ(せん断応力λ)が計算された。図17は、比較例のせん断応力と時刻tとの関係を示すグラフである。
そして、実施例及び比較例において、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル、及び、一対の第3ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルの混練性能がそれぞれ評価された。共通仕様は、次のとおりである。
バンバリーミキサー(バンバリーミキサーモデル):
ロータ(ロータモデル)の個数:2個
一方のロータ(ロータモデル)の回転数:42rpm
他方のロータ(ロータモデル)の回転数:38rpm
粘性流体(粘性流体モデル)の充填率:70%
第3ロータモデルのチップ部のランド幅:第2ロータモデルのチップ部のランド幅の1/3倍
テストの結果、実施例1では、図16に示されるように、全ての時刻において、第2ロータモデルのパラメータDは、第3ロータモデルのパラメータDよりも大きく計算された。これにより、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルは、一対の第3ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルよりも混練性能が優れることを評価することができた。
他方、比較例では、図17に示されるように、第2ロータモデルのせん断応力と、第3ロータモデルのせん断応力とが互いに近似しており、優劣を評価することができなかった。
このように、実施例1では、比較例に比べて、ロータのチップ部の影響を考慮して、バンバリーミキサーの混練性能を評価できた。
[実施例B]
図4及び図5に示した処理手順に従って、一対の第1ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル、及び、一対の第2ロータモデルモデルを有するバンバリーミキサーモデルがコンピュータに入力された(実施例2)。実施例2では、各バンバリーミキサー内に可塑性材料モデルを配置して、チャンバーでの可塑性材料が練られた状態をシミュレーションする計算ステップが実施された。
実施例2の計算ステップでは、図14に示した処理手順に従って、一対の第1ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデル、及び、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーモデルについて、ロータモデルが1回転する期間において、上記式(1)の可塑性材料の分散状態に関するパラメータDの時間平均が計算された。
そして、一対の第1ロータモデルを有するバンバリーミキサー、及び、一対の第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーの混練性能が評価された。共通仕様は、第2ロータモデルのチップ部のランド幅を除いて、実施例Aと同一である。
第2ロータモデルのチップ部のランド幅:第1ロータモデルのチップ部のランド幅の1.1倍
図15に示したように、実施例2では、全ての時刻tにおいて、第2ロータモデルのパラメータDの時間平均は、第1ロータモデルのパラメータDの時間平均よりも大きく計算された。従って、実施例2は、チップ部のランド幅が互いに近似する第1ロータモデル、第2ロータモデルを有するバンバリーミキサーの混練性能を、確実に評価できた。
S2 計算ステップ

Claims (2)

  1. 可塑性材料を混練するための空間であるチャンバーと、前記チャンバー内で回転する少なくとも1本のロータとを有し、前記ロータが前記チャンバーの外周面に接近するように突出したチップ部を具え、前記可塑性材料がフィラーを含むものであるバンバリーミキサーの混練性能を調べるためのシミュレーション方法であって、
    コンピュータに、前記ロータを有限個の要素で分割してロータモデルを入力するステップと、
    前記コンピュータに、前記チャンバーを有限個の要素で分割してチャンバーモデルを入力するステップと、
    前記コンピュータに、前記可塑性材料をモデル化した可塑性材料モデルを入力するステップと、
    予め定めた条件に基づいて、前記チャンバーモデル内に前記可塑性材料モデルを配置しかつ前記ロータモデルを回転させることにより、前記チャンバーでの前記可塑性材料が練られた状態をシミュレーションする計算ステップとを含み、
    前記計算ステップは、下記式(1)により、前記可塑性材料の分散状態に関するパラメータDを計算するステップを含む、
    可塑性材料の混練シミュレーション方法。

    ここで、
    V:可塑性材料モデルの体積
    R:フィラーの半径
    t:単位時間
    T:可塑性材料モデルがチップ部を通過するのに要する時間
    Q:チップ部を通過する可塑性材料モデルの単位時間当たりの流量
    τ:可塑性材料モデルのせん断応力
    γ:可塑性材料モデルのせん断速度
    α、τ:定数
  2. 前記計算ステップは、前記ロータモデルが1回転以上する期間において、前記パラメータDの時間平均を計算するステップをさらに含む請求項1記載の可塑性材料の混練シミュレーション方法。
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