JP2019025498A - ダイカスト用金型およびダイカスト鋳造方法 - Google Patents

ダイカスト用金型およびダイカスト鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Al(合金)の金型壁面への凝着(焼付き)等を長期的に抑止できるアルミニウム合金のダイカスト用金型を提供する。【解決手段】本発明は、加圧されたアルミニウム合金の溶湯に接触する表面の少なくとも一部に、Siを含まない熱硬化性樹脂からなる硬化樹脂層を有するダイカスト用金型である。硬化樹脂層は、Hv500以上の表面硬さを有する硬質面上に設けられている。熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂またはエポキシ樹脂である。硬化樹脂層の厚さは、例えば、0.1〜30μmである。硬質面は、金型の基材面のままでもよいが、改質面(例えばDLC−Si)からなると好ましい。硬化樹脂層は、さらに、熱硬化性樹脂中に無機粒子が分散した複合層であると、その耐熱性がさらに向上して好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、アルミニウム合金製鋳物の製造に用いられるダイカスト用金型等に関する。
アルミニウム合金等の溶湯を金型のキャビティへ加圧充填し、急冷凝固させて精密な鋳造品を得るダイカスト(金型鋳造方法)が多用されている。ダイカストを行う際、得られた製品(鋳物)と金型の成形面(キャビティ内壁面)との間で、離型性の確保や焼付防止を図るため、溶湯充填前の成形面へ液状の離型剤が噴霧塗布される。このような離型剤に関する記載が、例えば、下記の特許文献にある。
特開2013−173183号公報
特許文献1は、鉱油に固体潤滑剤、高分子化合物および熱硬化性樹脂(フェノール樹脂)を添加した離型剤(組成物)を提案している。特許文献1では、熱硬化性樹脂を離型剤のバインダー成分として用いると共に、高温な溶湯と接触した熱硬化性樹脂が熱分解することを利用して、鋳造毎(ショット毎)に金型壁面に塗布される離型剤被膜の剥離性(離型剤残渣の除去性)を向上させている。
しかし、このような離型剤では、ショット毎に熱硬化性樹脂を硬化させる一定の時間(例えば30秒:引用文献1の[0038]等)が必要となり、サイクルタイムの増加に伴う生産性の低下を招く。
また、ショット数が増加すると、各ショット毎に完全に除去されない離型剤の残渣が金型表面に多く残存するようになり、離型剤本来の被膜特性も得られなくなる。このため、離型剤の塗布のみにより、離型性の確保や焼付防止等を安定的に図ることは難しい。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、離型剤ではなく、溶湯に接触し得る金型自体の表面を改良することにより、Al等が金型表面へ付着(凝着等)し難くするダイカスト用金型等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、金型表面にSiを含まない熱硬化性樹脂層を設けることにより、鋳造後に金型表面へAl等が付着し難くなることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《ダイカスト用金型》
(1)本発明は、加圧されたアルミニウム合金の溶湯に接触する表面の少なくとも一部に、Siを含まない熱硬化性樹脂からなる硬化樹脂層を有し、該硬化樹脂層は、Hv500以上の表面硬さを有する硬質面上に設けられているダイカスト用金型である。
(2)本発明のダイカスト用金型(単に「金型」ともいう。)によれば、ダイカスト鋳造(単に「鋳造」ともいう。)を行う回数(単に「ショット数」ともいう。)が増加しても、鋳造時の焼付きや、鋳造後の金型表面に凝着するAl等(合金成分も含めて、単に「Al」という。)を従来の金型よりも大幅に低減できる。
このような優れた特性が得られる理由は定かではないが、現状、次のように推察される。先ず、本発明者は、金型表面に生じたSi系ガラス層がAlと反応することにより、金型表面にAl等が凝着することを解明した。本発明の金型によれば、その最表面側にSiを含まない硬化樹脂層が有るため、Al等の凝着要因となるSi系ガラス層の形成自体が抑止され、Al等の凝着が大幅に抑制される。
次に、金型表面は鋳造時に相当な高温となるため、前述した特許文献等にもあるように、金型表面に形成された硬化樹脂層は、一見すると、熱損傷や熱分解による消失等を生じると考えられる。しかし、本発明者は、硬化樹脂層が形成される下地の表面硬さ(単に「下地硬さ」ともいう。)を一定以上にすることにより、硬化樹脂層でも長期的に維持され、優れた耐久性を発揮し得ることを新たに見出した。
硬化樹脂層を硬質面上に形成することにより、その耐久性が向上する理由も定かではないが、現状、次のように考えられる。ダイカスト鋳造時の高温な加圧溶湯により、硬化樹脂層は高温下に曝された状態で大きな加圧を受ける。このため、本来なら、硬化樹脂層には、曲げ応力や熱応力等に相応した大きな引張歪みが作用する。しかし、本発明に係る硬化樹脂層は、硬質な下地(硬質面)によりバックアップされた状態となっている。この結果、硬化樹脂層は破損、割れ等に至る大きな引張歪みを受けずに、多くのショット後でも維持されるようになったと考えられる。
《ダイカスト鋳造方法》
本発明は、金型としてのみならず、それを用いたダイカスト鋳造方法(単に「鋳造方法」ともいう。)としても把握できる。例えば、Al合金の溶湯を加圧注湯する注湯工程と、キャビティ内の溶湯を冷却して凝固させた鋳物を得る凝固工程と、鋳物を金型から取り出す取出工程とを備え、Al合金の溶湯が接触する金型の少なくとも一部の表面に硬化樹脂層が設けられており、硬化樹脂層は、Hv500以上の表面硬さを有する硬質面上に設けられている鋳造方法である。
所定のショット数の経過後に、劣化した古い硬化樹脂層を除去して、新しい硬化樹脂層を形成する再生工程を備えてもよい。硬化樹脂層の再生は、硬質面上に付着(塗布等)させた熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより比較的容易に行える。なお、劣化した硬化樹脂層を除去する際、その下地である硬質面で金型表面は保護された状態となっている。このため、硬化樹脂層の除去と再生を繰り返しても、金型表面の損傷は殆どない。
また、本発明に係る硬化樹脂層を有する表面にも、従来と同様に、各種の離型剤を塗布する塗布工程を行ってから鋳造しても当然よい。なお、硬化樹脂層はSiを含まないが、その硬化樹脂層上へ噴霧、塗布等される離型剤にはSiが含まれてもよい。
《その他》
(1)本明細書でいう「Siを含まない」熱硬化性樹脂とは、主骨格にSiを含むシリコーン樹脂等ではないと共に、官能基や末端基にもSiが含まれない樹脂である。
本明細書でいう「金型」には、キャビティを構成する鋳型のみならず、キャビティ内の溶湯を局部加圧するピン(スクイズピン)、溶湯が圧送される湯路等も含まれる。硬化樹脂層は、溶湯が接触する表面の全部に設けられてもよいが、Alの付着等が生じ易い一部表面にのみ設けられてもよい。
本明細書でいう「ダイカスト」には、溶湯を(超)低速充填した後に高加圧するスクイズダイカストも含まれる。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
Si基を有する酸化物層を設けた金型表面に付着するAl量がショット数に応じて増加する過程を示す金型表面の外観写真である。 金型表面に設けた複合層(試料D4/10%アルミナ)に係る溶湯浸漬試験前・後の外観写真である。 金型表面に設けた複合層(試料D5/10%チタニア)に係る溶湯浸漬試験前・後の外観写真である。
本明細書で説明する内容は、ダイカスト用金型のみならず、それを用いた鋳造方法およびその鋳造方法により得られた鋳物にも該当し得る。本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を、本発明の構成要素として任意に付加し得る。製造方法に係る構成要素は物に係る構成要素ともなり得る。
《硬化樹脂層》
(1)硬化樹脂層は、金型の硬質面に付着させた熱硬化性樹脂を熱硬化させてなる。熱硬化性樹脂の付着は、熱硬化性樹脂液を硬質面へ噴霧または塗布したり、熱硬化性樹脂液槽へ金型を浸漬等することにより行える。噴霧法によれば、均一的に薄い硬化樹脂層の形成が容易となる。
熱硬化性樹脂は、Siを含まないが、N、S等を含んでもよい。もっとも、熱硬化性樹脂は、C、HおよびOからなると好ましい。いずれにしても、熱硬化性樹脂は、耐熱性に優れると共に、硬質面への付着性や濡れ性等に優れるものが好ましい。例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂またはエポキシ樹脂のいずれか一種以上を用いるとよい。
(2)硬化樹脂層は、厚さが0.1〜30μmさらには0.5〜20μmであると好ましい。厚さが過小であると耐久性が低下し易くなり、厚さが過大であるとクラック等が入り易くなる。本明細書でいう「厚さ」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られる試料断面を画像処理して求まる平均厚さ、または硬化樹脂重量を、比重および表面積で除して求まる平均厚さである。特に断らない限り後者により特定する。
硬化樹脂層は、熱硬化性樹脂のみであっても良いし、熱硬化性樹脂を含む複合材からなってもよい。例えば、硬化樹脂層は、熱硬化性樹脂中に無機粒子が分散した複合層からなってもよい。この場合、熱硬化性樹脂は、無機粒子を保持するマトリックスとして機能する。無機粒子は、Al合金溶湯に接触しても変質しない耐熱性粒子、例えば、アルミナ、チタニア等のセラミックス粒子が好ましい。このような無機粒子との複合化により、硬化樹脂層の耐熱性がより向上し得る。
無機粒子は、硬化樹脂層の厚さに鑑みて、一次粒子の最大粒径がその厚さ以下、例えば、1μm以下、さらには0.1μm以下である微粒子が好ましい。なお、本明細書でいう「粒径」は、入手した粉末中に含まれる一次粒子の最大長とする。
複合層は、その全体を100質量%として、無機粒子を0.1〜25質量%さらには1〜15質量%含むと好ましい。無機粒子が過少では複合層とする意義が乏しく、無機粒子が過多になると複合層が剥離し易くなる。
《硬質面》
硬質面は、所望の表面硬さを有する限り、金型の基材面でも良いし、その基材面を改質(被覆を含む)した表面(改質面)でもよい。硬質な基材として、炭素工具鋼(SK材)、合金工具鋼(SKS材)、ダイス鋼(SKD材)等の鋼材を用いると好ましい。なお、これらの基材は、焼入れ、焼戻し等の熱処理が施されて、所望の硬さに調整(調質)され得る。
改質面は、金型の基材面に、窒化処理、浸炭処理等の硬質処理を施した処理面でも良いし、基材面に硬質膜を設けた被覆面でもよい。硬質膜として、硬質メッキ膜(例えば、Ni−Pメッキ膜、Crメッキ膜)、非晶質炭素膜(単に「DLC」という。)等がある。
DLCは、Hを含むDLCでも、Hを実質的に含まないDLC(例えば、H濃度が5原子%以下)でもよい。一般的に、H量が少ないほどDLCは硬質となるが、H含有DLCでも硬化樹脂層のバックアップ層としては十分である。H含有DLCは、その最表面にできる−OH基が硬化樹脂層(熱硬化性樹脂)と化学結合して、その付着性や耐剥離性を向上させ得る。
DLCは、H以外に、種々のドープ元素(例えば、Si、Cr、B等)を含んでもよい。特に、Siを含むDLC(単に「DLC−Si」という。)は、耐熱性が高く、硬化樹脂層のバックアップ層として好ましい。一方、硬化樹脂層との密着性を確保する観点から、Siの含有量は低い方が好ましい。そこでDLC−Siは、その全体を100原子%としてSi量が30原子%以下、さらには18原子%以下であると好ましい。なお、DLCに含まれるH量は弾性反跳検出分析(ERDA)により求まり、DLCに含まれるドープ元素量(例えばSi量)は電子線マイクロアナライザ(EPMA)により求まる。
硬質面の表面硬さは、Hv500以上、550Hv以上さらには600Hv以上であると好ましい。その表面硬さが過小では硬化樹脂層のバックアップ層として不十分である。なお、硬質面の表面硬さは、硬化樹脂層がない状態の金型表面(基材面または改質面)に対して、ビーカス硬さ試験を行うことにより求まる。金型表面に圧子を押し付ける荷重(試験力)は20Kgとする。
先ず、金型表面にAlが付着する挙動を解析した。次に、多くの試料に基づいて硬化樹脂層の有効性を評価した。以下、そのような具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
[挙動解析]
(1)ダイカスト用金型として、表面処理をしていないSKD61からなるピン(φ10×50mm)を用意した。その表面(壁面)に離型剤をショット毎にスプレー(噴霧)塗布して、Al合金のダイカスト鋳造を行った。
離型剤には、主成分である変性シリコーンオイルを界面活性剤により水溶化した原液(変性シリコーン10〜20%)を、さらに水で30倍に希釈(原液1に対して水29の体積割合)、混合したものを用いた。
Al合金にはADC12(JIS)を用いた。ダイカスト鋳造は、500トンのダイカスト機を用いて、溶湯温度:650℃、鋳造圧力(射出圧力):60MPa、射出速度:2m/s として行った。なお、特に断らない限り、他のダイカスト鋳造も同条件で行った。
(2)SiによるAl焼付き促進の影響を調べるため、Si基を有する酸化物層を表面に形成したピンを用意した。このピンを用いて、ショット毎に前述した離型剤を塗布しつつダイカスト鋳造を行った。15ショット後、45ショット後および90ショット後の各ピンの外観を図1に示した。
図1から明らかなように、15ショットまでは、ピン表面に殆どAlの付着は見られない。しかし、それ以降、ショット数が増加すると、Al付着量が急増することがわかった。これはSi基を有する酸化物層が溶湯中のAlやMgと反応しやすいため、Al付着量が増えたと考えられる。
[第1実施例]
(1)金型
表1に示す各鋼種(基材)からなる複数のピンを用意した。各ピンの表面にレゾール型フェノール樹脂(熱硬化性樹脂)を刷毛塗りした。刷毛塗りはフェノール樹脂をエタノール等の溶剤で10重量%に希釈した溶液を用いて刷毛塗りした。なお、溶剤を用いた希釈濃度の調整により膜厚制御を行った。
噴霧したフェノール樹脂の乾燥後、大気雰囲気中で200℃×30分間加熱した。こうして各ピンの表面(基材面)に硬化樹脂層を形成した複数の試料を製作した。特に断らない限り、硬化樹脂層の厚さはいずれも1μmとした(以下同様)。
また、鋼材(SKD61)の表面にDLC−Si(下地層)を形成した後、その表面(改質面)に硬化樹脂層を同様に形成した試料も製作した。なお、DLC−Siは、プラズマCVD法により形成し、含有Si量は15.6原子%であった。
さらに、金型の表面処理として従来から利用されている市販のタフトライド処理を、鋼材(SKD61)の表面に施したピンも用意した。このピンには硬化樹脂層を形成しなかった。
(2)測定
各ピンの表面硬さをビーカス硬度計(荷重:20Kg)により測定し、その結果を表1に併せて示した。
各ピンを用いて前述したダイカスト鋳造を繰り返し行った。90ショット後と180ショット後のAl付着量(Al焼付き量)を測定した。Al付着量は、ピンの初期重量に対するダイカスト鋳造後の重量増加として測定した。その結果を表1に併せて示した。また、90ショット後の各ピンの外観を観察し、Alの焼付き状態を判定した。その結果も表1に併せて示した。
(3)評価
表1から明らかなように、表面硬さが500Hv以上さらには600Hv以上の下地上に硬化樹脂層を設けた試料は、90ショット後でもAl付着が少なく、良好な外観を維持していることがわかった。なお、下地の表面硬さが450Hvである試料A2の場合、Alの付着は多くないが、全体に薄い焼付きがみられた。さらに、下地の表面硬さがかなり低い試料A1の場合、硬化樹脂層の効果が殆どなく、タフトライド処理した試料C1と同等にAlの付着が多かった。
また、試料B1と試料C1の比較から明らかなように、硬質面上に硬化樹脂層を設けることにより、Alの付着を大幅に低減できた。具体的にいうと、90ショット後であれば、試料B1のAl付着量は試料C1の1/10以下となった。180ショット後でも、試料B1のAl付着量は、90ショット後の試料C1のAl付着量よりもさらに少なかった。なお、90ショット後の試料B1のAl付着量は、Si基を有する酸化物層を設けたピンを用いた場合の約1/5でもあった(図1参照)。
さらに、硬質面上に硬化樹脂層を設けた試料(例えば試料B1)の場合、180ショット後でも、表面に付着していたAlは容易に剥離した。つまり、一見、硬化樹脂層の表面に焼付きついているようにみえるAlは、付着している程度で、凝着には至っていないこともわかった。これは、Siを含まない硬化樹脂層が溶湯中のAlと反応(化学結合等)していないためと考えられる。
従って、表面硬さが十分な硬質面上に形成した硬化樹脂層を金型表面に設けることにより、高い耐焼付性を長期的に確保できることが明らかとなった。また、その硬化樹脂層上にAlが付着しても容易に剥離でき、その表面を清浄な状態に回復し易いことも明らかとなった。なお、劣化した硬化樹脂層は、硬質面上に形成されているため、金型表面を損傷することなく除去できる。また、その除去した硬質面上に熱硬化性樹脂を噴霧、塗布することにより、新たな硬化樹脂層の再生も容易に行える。
[第2実施例]
(1)金型
DLC−Si上に熱硬化性樹脂のみからなる硬化樹脂層を形成した試料D1(既述した試料B1と同様)と、その硬化樹脂層を熱硬化性樹脂と無機粒子からなる複合層に変更した試料D2〜D7を用意した。
複合層は、表2に示す各無機粒子をフェノール樹脂に混合した混合樹脂を用いて、既述した試料の硬化樹脂層と同様に、各ピンのDLC−Si上に形成した。複合層の厚さも1μmとした。
無機粒子として、2種類のセラミックス粒子(アルミナ粒子とチタニア粒子)を用意した。それらの最大粒径はそれぞれ0.05μm、0.01μmであった。フェノール樹脂と各無機粒子の混合は、アルミナ粒子の水分散液、チタニア粒子のブタノール分散液を用いて直接混合し、超音波処理を10分行った。表2に示した無機粒子の添加量は、複合層全体に対する質量割合である。
(2)溶湯浸漬試験
各試料に係るピンを、上述したAl合金の溶湯(600℃)中に、1分間浸漬した。いずれのピンにもAlの付着(焼付き)は見られなかった。試料D4に係るピンの試験前後の外観を図2に、試料D5に係るピンの試験前後の外観を図3にそれぞれ示した。
なお、無機粒子の添加量を30質量%とした試料D7に係るピンのみ、試験後に複合層の一部が剥離した。無機粒子が過多になると、硬化樹脂層が脆くなり易いと考えられる。
(3)熱重量測定
試料D1に係る硬化樹脂層と試料D4、D5に係る複合層とについて、それぞれ熱重量測定(TG)を行った。具体的にいうと、窒素雰囲気中で500℃まで昇温後に、500℃×30分間保持した後、各重量(残存重量)を測定した。試験前の重量に対する残存重量の割合を表2に併せて示した。
表2から明らかなように、無機粒子を混在さた複合層は、熱硬化性樹脂のみからなる硬化樹脂層よりも残存重量が大きく(熱重量変化が小さく)、耐熱性に優れることがわかった。

Claims (9)

  1. 加圧されたアルミニウム合金の溶湯に接触する表面の少なくとも一部に、Siを含まない熱硬化性樹脂からなる硬化樹脂層を有し、
    該硬化樹脂層は、Hv500以上の表面硬さを有する硬質面上に設けられているダイカスト用金型。
  2. 前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂またはエポキシ樹脂のいずれか一種以上からなる請求項1に記載のダイカスト用金型。
  3. 前記硬化樹脂層は、無機粒子が前記熱硬化性樹脂中に分散した複合層からなる請求項1または2に記載のダイカスト用金型。
  4. 前記無機粒子は、前記複合層全体を100質量%として0.1〜25質量%含まれる請求項3に記載のダイカスト用金型。
  5. 前記硬化樹脂層は、厚さが0.1〜30μmである請求項1〜4のいずれかに記載のダイカスト用金型。
  6. 前記硬質面は、金型の基材面または該基材の改質面である請求項1〜5のいずれかに記載のダイカスト用金型。
  7. 前記改質面は、Siを含む非晶質炭素膜(単に「DLC−Si」という。)からなる請求項6に記載のダイカスト用金型。
  8. 前記DLC−Siは、該DLC−Si全体を100原子%としてSiを30原子%以下含む請求項7に記載のダイカスト用金型。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のダイカスト用金型を用いたダイカスト鋳造方法。
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