JP2019024325A - ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法 - Google Patents

ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法 Download PDF

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Abstract

【課題】解凍後の生存率を高めるためのヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法を提供する。【解決手段】凍結槽11内に磁場を発生させる手段(16,22)と、凍結槽内の温度を可変制御する手段(14,15,25)を備えた冷凍装置1を用い、心筋細胞に凍結保存液を加えたサンプルが収納された容器を凍結槽内に配置して凍結槽内の温度を初期温度T1からサンプルの凍結温度よりも低い温度T3まで冷却する過程でサンプルが過冷却状態となる温度T2で所定時間維持するように凍結槽内の温度を制御し、当該冷却する過程でサンプルに30Hz以上60Hz以下の周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mT以下の交流磁場を印加するヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法としている。【選択図】図5

Description

本発明はヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法に関する。
近年、ヒト多能性幹細胞(ヒトES細胞、ヒトiPS細胞)を用いた再生医療技術が注目されている。再生医療では、体細胞や受精卵からヒト多能性幹細胞を樹立し、そのヒト多能性幹細胞から移植に必要な細胞や組織に分化誘導する手順が必要となる。とくに成人の心筋細胞は、ほとんど増殖しないため、虚血性心疾患等で欠損した心筋細胞は不可逆的な損傷となることからヒト多能性幹細胞由来心筋細胞を用いた再生医療技術に期待が集められている。
ところで、多能性幹細胞の樹立、およびその後の移植に供される心筋細胞までの分化には多大な時間を要する。そこでヒト多能性幹細胞から分化誘導した心筋細胞を凍結保存しておくことで、多能性幹細胞の樹立およびその後の分化誘導に要する期間を省略することが考えられる。もちろん心筋細胞は、心疾患のin vitro研究や、生理学的、薬理学的な研究に使用できる。したがって人工多能性由来心筋細胞を凍結保存することは、解凍によって必要なときに必要な量の心筋細胞を入手することを可能にし、上述した心筋細胞を用いた研究を強力に支援することにもつながる。そして以下の非特許文献1に記載されているように、凍結済みの心筋細胞が製品としてすでに提供されている。また以下の非特許文献2には、細胞を凍結する際によく利用されている細胞凍結容器(あるいは凍結処理容器)について記載されている。
なお多能性幹細胞、あるいは多能性幹細胞から分化された細胞の凍結保存技術については、以下の非特許文献3〜5に記載されている。また以下の非特許文献6には、従来の細胞組織の凍結保存方法や解凍方法、および細胞組織用の凍結保存液の概略について記載されている。そして以下の特許文献1には多能性幹細胞から心筋細胞を製造する技術について記載されている。さらに以下の特許文献2には本発明に関連する冷凍技術について記載されている。
特表2011−515064号公報 国際公開第2001/024647号公報
タカラバイオ株式会社、"ヒト心筋細胞"、[online]、[平成28年8月9日検索]、インターネット<URL:http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100007058> コスモバイオ株式会社、"ミスターフロスティー(細胞凍結容器)"、[online]、[平成28年8月9日検索]、インターネット<URL:http://www.cosmobio.co.jp/product/detail/000284.asp?entry_id=877> Yuichiro Nishiyama,Akio Iwanami,Jun Kohyama,Go Itakura,Soya Kawabata,Keiko Sugai,Soraya Nishimura,Rei Kashiwagi,Kaori Yasutake,Miho Isoda,Morio Matsumoto,Masaya Nakamura,Hideyuki Okano、「Safe and efficient method for cryopreservation of human inducedpluripotent stem cell-derived neural stem and progenitor cellsby a programmed freezer with a magnetic field」、Neuroscience Research 107 (2016)、 pp.20-29 Pei-Yi Lin,Yao-Chen Yang,Shih-Han Hung,Sheng-Yang Lee,Maw-Sheng Lee,I-Ming Chu,Shiaw-Min Hwang、「Cryopreservation of human embryonic stem cells by a programmed freezer with an oscillating magnetic field」、Cryobiology 66(2013)、 pp.256-260 Shunichi Kojima,Masato Kaku,Toshitsugu Kawata,Hiromi Sumi,Hanaka Shikata,Tahsin Raquib Abonti, Shotoku Kojima, Tadashi Fujita, Masahide Motokawa, Kazuo Tanne、「Cryopreservation of rat MSCs by use of a programmed freezerwith magnetic field」、Cryobiology 67(2013)、 pp.258-263 日本全薬工業株式会社、"STEM-CELLBANKER GMP grade 製品案内(「STEM-CELLBANKER」は登録商標)"、[online]、[平成28年8月9日検索]、インターネット<URL:http://www.zenoaq.jp/cellbanker/ja/stem-cellbanker.html>
凍結保存された細胞を移植、あるいは研究用途に供するためには、凍結された細胞が解凍後に生存し、さらには解凍した際には凍結前と同等の機能や遺伝子発現状態が維持されていることが必要である。周知のごとく、細胞は、極低温まで冷却されて凍結されると、その細胞が損傷していなければその極低温下で半永久的に保存される。したがって解凍後の細胞の生存率を挙げるためには、凍結に際して細胞の損傷を防止することが重要となる。現在では、プログラムフリーザーを用いたり、上記非特許文献2に記載の細胞凍結容器を用いたりして細胞を凍結させる周知の緩慢凍結法が主流であるが、解凍後の心筋細胞の生存率は決して高いとは言えず、本発明者の知見では、40%程度である。また製品として販売されている上記非特許文献1に記載の凍結心筋細胞では解凍後の心筋細胞の生存率は概ね50〜60%程度である。
一方、上記非特許文献3〜5に記載されている細胞の凍結技術は、細胞を冷却して凍結させる際に交流磁場を印加している。それによって緩慢凍結法と比較して解凍後の細胞の生存率を高めている。そして非特許文献3、4、および5に記載の凍結技術では、それぞれヒトiPS細胞由来神経幹細胞、ヒト胚性幹細胞、およびラットMSCを凍結の対象としている。しかし交流磁場を印加しながら心筋細胞を凍結させる技術については検討がなされていない。
そこで本発明は、解凍後の心生存率を高めるためのヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明は、凍結槽と、当該凍結槽内に磁場を発生させる手段と、前記凍結槽内の温度を可変制御する手段とを備えた冷凍装置を用いてヒト多能性幹細胞由来心筋細胞を凍結する方法であって、
前記心筋細胞に凍結保存液を加えてなる細胞懸濁液をサンプルとして、当該サンプルが収納された容器を漸次冷却して当該サンプルを凍結させる冷却ステップと、
前記冷却ステップの実行中に前記サンプルに対して交流磁場を印加する磁場印加ステップと、
を含み、
前記冷却ステップでは、前記凍結槽内に前記サンプルが収納された容器を配置した上で、前記凍結槽内の温度を初期温度T1から前記サンプルの凍結温度よりも低い温度T3まで冷却するとともに、前記温度T3に至る過程で前記凍結保存液が過冷却状態となる温度T2で所定時間維持するように前記凍結槽内の温度を制御し、
前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに30Hz以上60Hz以下の周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mT以下の交流磁場を印加する、
ことを特徴とするヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法としている。
好ましくは、前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに30Hzの周波数で0.5mT以上1.0mT以下の磁場を印加するか、あるいは60Hzの周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mTの磁場を印加することである。
前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに30Hzの周波数で0.5mTの磁場を印加するか、あるいは前記サンプルに60Hzの周波数で磁束密度が0.5mT以上1.0mT以下交流磁場を印加することとしてもよい。前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに60Hzの周波数で磁束密度が0.5mT以上1.0mT以下の交流磁場を印加すればさらに好ましい。
そして上記いずれかに記載のヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法では、前記ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞をiPS細胞とすることができる。
本発明に係るヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法によれば、解凍後の心筋細胞の生存率を高めることができる。
本発明の実施例に係るヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法において使用した冷凍装置の概略構造を示す図である。 上記冷凍装置の凍結槽内に設置されるサンプルホルダーの概略構造を示す図である。 ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞を含むサンプルを上記冷凍装置を用いて凍結させる際の冷却手順を示す図である。 上記サンプルを上記冷凍装置を用いて凍結させる際にサンプルに印加した磁場の周波数と磁束密度を示す図である。 上記サンプルを凍結させる際の条件と、解凍後のサンプル内の心筋細胞の生存率との関係を示す図である。 上記冷凍装置を用いて凍結させた心筋細胞の生存率をサンプルに印加する磁場周波数ごとに纏めた図である。 上記冷凍装置を用いて凍結させた心筋細胞の生存率をサンプルに印加する磁場の磁束密度ごとに纏めた図である。 上記サンプルを凍結させる際の磁場の印加条件と、解凍後のサンプル内の心筋細胞の生存率との関係を示す図である。 本発明の実施例に係る方法で凍結させた心筋細胞の凍結前と解凍後の1分間当たりの拍動数を示す図である。 本発明の実施例に係る方法で凍結させた心筋細胞の凍結前と解凍後の遺伝子発現状態を示す図である。 本発明の実施例に係る方法で凍結させた心筋細胞におけるTnTとα−アクチニンの染色画像を示す図である。
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。
===CAS冷凍技術について===
本発明の実施例は、ヒト多能性幹細胞から分化誘導された心筋細胞の凍結保存方法であり、解凍後の心筋細胞の生存率を飛躍的に高めることができる。そして本実施例の特徴の一つは、上記特許文献2や非特許文献3〜5にも記載されている、CAS(Cell Alive System:「CAS」「Cell Alive System」は登録商標)冷凍技術と呼ばれる技術を用いて心筋細胞を凍結させる点にある。
CAS冷凍技術は、磁界や電界、気流などのエネルギー(以下、便宜上CASエネルギーと称する)を凍結対象物に与えながら冷却することで、細胞の破壊を最小限に抑制し、例えば、生鮮食料品などの鮮度を保ったまま凍結させるというものである。このCAS冷凍技術を用いた細胞の凍結メカニズムについては、エネルギーを印加しながら凍結対象物である細胞を冷却すると、凍結対象物が過冷却の状態で維持され、凝固が開始されるとほぼ瞬時に凍結されるので、細胞の損傷の原因となる細胞内の水の結晶化が抑制される、という理論が提唱されている。
===本発明に想到する過程===
上述したように、CAS冷凍技術を医療や生物工学(バイオテクノロジー)分野で利用する例としては上記非特許文献3〜5に記載の凍結技術がある。とくに非特許文献3に記載の技術では、ヒトiPS細胞から分化誘導された神経幹細胞を凍結させている。そこで本発明者は、この非特許文献3に記載の技術は、ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞を凍結する際の指標になり得ると考えた。そして非特許文献3には、神経幹細胞は30Hzの周波数で0.22mT〜0.40mT程度の交流磁場を印加しながら神経幹細胞を凍結させることで解凍後の神経幹細胞の生存率を最大で70%程度にまで高めることができることが記載されていた。また非特許文献3の記載内容から、磁束密度が0.5mT以上の高い磁場を印加すると却って生存率が低下することが分かった。
さらに非特許文献4や5に記載されている内容について検討や調査をしてみたところ、引用文献4に記載の技術は、60Hzの周波数で0.1mTの磁場を印加しながらヒトES細胞を凍結させることで解凍後のヒトES細胞の生存率を高めており、引用文献5に記載の技術では、18Hzの周波数で0.1mTの磁場を印加しながらラット間葉系細胞(MSC)を凍結させることで解凍後のMSCの生存率を高めている。
そして以上の非特許文献3〜5に記載の技術についての検討や調査の結果、凍結の対象が異なるものの、いずれも0.1〜0.4mTの範囲の磁場を印加しながら細胞を凍結させることで生存率を高めていることが分かった。また、いずれも磁束密度を当該範囲よりも大きくすると生存率が低下する傾向があることもわかった。
そこで本発明者は、本願発明が対象としている心筋細胞についても、非特許文献3〜5を参考にして交流磁場を印加しながら凍結すれば解凍後の生存率が向上するものと考え、非特許文献3〜5に記載の凍結技術を参考にして心筋細胞を凍結させてみた。しかしながら凍結した心筋細胞の解凍後の生存率は、例えば、上記非特許文献1に記載の製品として提供されている凍結心筋細胞と変わらず、CAS冷凍技術を用いた効果を得ることができなかった。したがって心筋細胞に関しては従来の凍結技術の延長線上では解凍後の生存率を向上させることが難しい。そして本発明はCAS冷凍技術を応用しつつ心筋細胞を特化した凍結方法について鋭意研究を重ねた結果なされたものである。
===実施例===
本発明の実施例に係るヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法では、iPS細胞由来の心筋細胞(以下、HCMとも言う)をCAS冷凍技術を用いて凍結させている。本実施例では、凍結槽内にCASエネルギーとして磁場を発生することができるとともに、凍結槽内の温度を可変制御できるプログラムフリーザー(Cells Alive-1:株式会社アビー製、以下、CAS冷凍装置とも言う)を用いてHCMを凍結させている。概略的には凍結保存液中にHCMを含ませた細胞懸濁液(以下、サンプルとも言う)が収納されたクライオチューブを上記のCAS冷凍装置の凍結槽内に配置することでHCMを凍結させている。なお凍結保存液としては、上記非特許文献6に記載されているジメチルスルホキシド(DMSO)を含む周知の細胞用の凍結保存液(例えば、STEM-CELLBANKER(登録商標)がよく知られている。そして本実施例は、凍結に至るサンプルの冷却手順や磁場の印加条件に特徴を有して解凍後のHCMの生存率を高めている。以下ではCAS冷凍装置の構成について説明し、その上で本実施例に係るHCMの凍結方法について説明する。
<冷凍装置>
図1は実施例に用いたCAS冷凍装置1の概略構成を示す図である。図1(A)はCAS冷凍装置1の外観図であり、図1(B)はCAS冷凍装置1の機能ブロック構成の概略を示す図である。図1(A)に示したように、CAS冷凍装置1は、水平面に載置した状態で上下方向に長い箱状の冷凍装置本体(以下、本体10とも言う)と本体10とケーブル2で接続されて本体10の動作を制御したり、その動作状態を監視したりするための制御ユニット20とから構成されている。図1(B)に示したように、本体10は内部に凍結槽11、スターリング冷凍機12、熱交換器である冷却ヘッド13、ヒーター14、凍結槽11内の温度を監視する温度センサ15、および凍結槽11内に磁場を発生させるためのコイル16などを含んで構成されている。なおコイル16を構成する導線は上下方向を軸として凍結槽11の周囲に矩形状に巻回されている。また冷却ヘッド13は上面が凍結槽の底面を構成し、この冷却ヘッド13内にヒーター14と温度センサ15が組み込まれている。それによって凍結槽11内がこの冷却ヘッド13を介して直接冷却あるいは加温される。
制御ユニット20は、自身20と本体10を動作させるための電力を供給するための電源21と、コイル制御部22と、温度制御部25を備えている。コイル制御部22と温度制御部25は、それぞれにユーザインタフェースとして入力部(23、26)と表示部(24、27)を備えている。コイル制御部22は、入力部23を介して設定された磁束密度と周波数に応じた電流をコイル16に与えて凍結槽内に磁場を発生させる。またその磁束密度や周波数を表示部に表示する。温度制御部25は、入力部26を介して設定された温度制御手順に従ってスターリング冷凍機12やヒーター14を制御するとともに、本体10の温度センサ15から出力される信号に基づいてスターリング冷凍機12やヒーター14をフィードバック制御する。それによって凍結槽11内の温度が精密に制御される。また設定温度やその制御手順、あるいは温度センサ15からの信号に基づく凍結槽11内の温度を表示部27に表示する。なお図1(A)に示したように、CAS冷凍装置1の本体10上部は凍結槽11の蓋3であり、この蓋3は図中の紙面奥行き側に設けられたヒンジにより開閉するようになっている。
凍結槽11内には複数のクライオチューブを立設させた状態で保持するためのサンプルホルダーが設置される。図2にサンプルホルダー30の概略構造を示した。サンプルホルダー30は、実質的に非特許文献2に記載の凍結保存容器における「バイアルホルダー」を兼ねており、上下方向を軸40として、円柱状の樹脂製ブロック31に、上面32に開口を有する有底の孔35が形成された構造を有している。各孔35はクライオチューブを立設させるためものであり、ここに示した例では、孔35は、内周側の同心円33に沿って6箇所、外周側の同心円34に沿って12箇所に等角度間隔で形成されて、合計18カ所に形成されている。またブロックの上面中央には把手となる細い円錐台状の突起36が形成されており、当該突起36を掴むことでサンプルホルダー30を容易に凍結槽内に出し入れすることができるようになっている。
===冷却手順、解凍手順===
本実施例に係るHCMの凍結方法の効果を確認するために、従来の方法で凍結させたサンプルと、CAS冷凍装置を用いて様々な磁場印加条件で凍結させたサンプルのそれぞれについて、解凍後のHCMの生存率を比較した。また凍結させずに培養したHCMの生存率も調べた。以下では、まず、従来の冷却手順とCAS冷凍装置を用いた冷却手段、およびサンプルの解凍手順について説明する。
<従来の冷却手順>
従来の冷却手順としては、上記非特許文献2に記載されている細胞凍結容器を用いた方法がよく知られている。細胞凍結容器は樹脂製の有底円筒状の容器本体と、当該容器本体の開口を密封する樹脂製のキャップと、「バイアルホルダー」と呼ばれるサンプルホルダーから構成されている。細胞凍結容器を用いてサンプルを凍結させる手順としては、まずサンプルを収納したクライオチューブをサンプルホルダーの孔に保持させ、そのサンプルホルダーをイソプロピルアルコールを満たした容器本体内に収納する。そして容器本体の開口をキャップで密封し、細胞凍結容器を−80℃の温度に維持された凍結槽内に配置する。それによって、サンプルが1℃/min程度のゆっくりとした降温速度で冷却され凍結に至る。すなわち細胞凍結容器は、降温速度を精密に制御できないディープフリーザーを用いても、プログラムフリーザーを用いた周知の緩慢凍結法と同様の冷却手順でサンプルを凍結させることができる。
<CAS冷凍装置を用いた冷却手順>
一方、本実施例に係るHMCの凍結方法では、図1に示した冷凍装置を利用し、凍結対象物にCASエネルギー(本実施例では、交流磁場)を印加しながら凍結対象物を冷却し凍結させることとしている。そしてCAS冷凍技術では、過冷却の状態で維持され、凝固が開始されるとほぼ瞬時に凍結されるというメカニズムに基づいて凍結対象物を凍結することから、CAS冷凍装置を用いて凍結させるサンプルについては、過冷却状態がより維持されやすいような手順で冷却している。概略的には、サンプルを凍結させる過程で、凍結槽内の温度(以下、庫内温度とも言う)を過冷却状態となる温度近傍で一定時間維持し、その後は徐々に庫内温度を下げてサンプルを凍結させることとしている。
図3は、CAS冷凍装置に対する温度設定の状態と、庫内温度の時系列変化の概略を示している。CAS冷凍装置の当初の庫内温度は、室温T1(≒25℃)であり、CAS冷凍装置は、庫内温度を監視し、その庫内温度を設定されたプログラムに従って制御する。設定温度の制御手順としては、図中点線の折れ線で示したように、まず、−5℃の温度T2に設定する。次にCAS冷凍装置は、庫内温度が−5℃の温度T2になったらば、その温度T2を所定時間t(=15分)維持する。その後、庫内温度をサンプルが凍結する温度よりも低い−30℃の温度T3に設定する。
このような設定温度に対し、庫内温度は、図中点線の折れ線で示したように、設定温度に対し、25℃/hの速度で緩慢に冷却(以下、緩慢冷却とも言う)されていく。またサンプルは、上記のサンプルホルダーに保持された状態で、上述したように温度制御された凍結槽内に配置される。実際のサンプルの温度は、図中一点鎖線で示したように、典型的な過冷却状態から凍結に至る経路を辿る。すなわち、室温T1(=25℃)から温度T2(=−5℃)まで緩慢冷却されていく。当該温度T2に達したならば、この温度T2で所定時間t(=15分)維持され、過冷却状態となる。その後サンプルは、温度T3(=−30℃)に向けて緩慢冷却されていく。それによってサンプルは、温度T2からT3に向けて過冷却状態を維持したまま冷却されていき、凍結が開始されると潜熱を放出して温度が上昇し、次いでほぼ一瞬で凍結する。そして、以後は庫内温度に追従していく。なおこの例では、凍結状態で−30℃にまで冷却されたサンプルは、冷却開始後180分経過した時点でサンプルホルダーごとイソプロピルアルコールで満たされた上記の細胞凍結容器の容器本体内に移され、当該容器のキャップを閉じて−80℃の温度に維持された別の凍結槽(ディープフリーザーなど)に配置される。それによってCAS冷凍装置の凍結槽内で凍結されたサンプルは、その凍結槽内と細胞保存容器内とによって最終的に−80℃の温度まで緩慢に冷却されるとともに、凍結状態で保存される。
===凍結、解凍試験===
次に、iPS細胞からHCMを分化誘導させ、そのHCMを異なる条件で凍結させ、そのHCMの解凍後に生存しているHCMの数を調べた。ここではクライオチューブ内の凍結保存液に、iPS細胞からの分化誘導後30日が経過したHCMを加えたものをサンプルとして用意し、各サンプルを異なる条件で凍結させた。また生物学的反復(Biological replicate、以下nと記す)を3(n=3)とした。すなわち同じ凍結条件ごとに3個のサンプルを用意した。そして、各サンプルを凍結状態で24時間保存した後、サンプルを解凍した。サンプルの解凍には、サンプルの入ったクライオチューブを予め37℃に温めておいた温水に浸漬させてサンプル中のHCMを融解させる周知の急速融解法を用いた。そして解凍直後、および解凍後のサンプル中から分離したHCMを48時間培養した時点で生存しているHCMの細胞数を心筋トロポニンT遺伝子(TNNT2)をマーカーとした免疫染色法を用いて数えた。なおサンプルの解凍方法やその後のHCMの培養方法については、上記非特許文献6に記載されている方法に従った。さらに比較例に係るサンプルとして、iPS細胞から分化誘導後30日が経過したHCMを凍結させずに48時間培養したものも用意した。比較例に係るサンプルについてもn=3とし、その比較例に係るサンプルの培養前後でのHCMの数を調べた。
以下の表1に各サンプルに対する凍結条件を示した。
表1において、サンプル1は比較例に係るサンプルであり、凍結を経ていない非凍結のHCMである。サンプル2は細胞凍結容器を用いた従来の冷却手順によってHCMを凍結させたものである。サンプル3〜11は、CAS冷凍装置を用いて凍結させたものであり、サンプル3〜11は、それぞれ、上記の「実施例の冷却方法」に従ってサンプル凍結させる際に印加する磁場の磁束密度と周波数が異なっている。図4にサンプル3〜11に対する磁場の印加条件を示した。図中ではサンプル3〜11に対応する磁場の印加条件を「黒丸」で示した。また同じ図中には、上記非特許文献3、4、および5のそれぞれに示されている磁場の印加条件が白抜き四角形で示されているとともに、各四角形の位置には、上記非特許文献3、4、および5に記載されている磁場の印加条件に対応して、「hiPSC-NS」、「rat MSC」、および「hESC」が付記されている。
<TNNT2陽性率比、付着率、生存率>
まず、凍結させたサンプルについて、凍結前後での生存しているHCMのTNNT2陽性率の比(TNN2positive ratio)をTNNT2陽性率比として、当該TNNT2陽性率比を調べた。具体的にはサンプル2〜11についてのTNNT2陽性率比は、凍結前におけるTNNT2陽性細胞の数をAとし、解凍後におけるTNNT2陽性細胞の数をBとしたときの割合B/Aを百分率で表したものである。サンプル1のTNNT2陽性率比については、再播種した時点でのTNNT2陽性細胞の数をaとし、再播種後に接着したTNNT2陽性細胞の割合bとしたときの割合b/aを百分率で表したものである。
以下の表2に各サンプルのTNNT2陽性率比を示した。
表2に示したように、従来の方法で凍結させたサンプル2と、4.75Hzの周波数で磁束密度0.1mTの磁場を印加したサンプル3以外のサンプル1、4〜11は高いTNNT2陽性率比を示した。なお、磁場を印加させながら凍結させたサンプル3〜11のうち、サンプル4〜11については、サンプル2に対して有意水準p<0.001での有意差があった。またサンプル4〜11は非凍結のHCM(サンプル1)に対し有意差がなかった。
図5に表1に示したサンプル1〜11におけるHCMの付着率(Attachment Efficiency)と48時間の培養前後での生存率(Survival rate)を示した。図5(A)は付着率を示しており、サンプル2〜11の付着率については、上記Aに対し、解凍後48時間経過後のTNNT2陽性細胞の数Cの割合C/Aを百分率で表したものであり、サンプル1の付着率については上記aに対し、培養後48時間経過した時点でのTNNT2陽性細胞の数cに対する割合c/aを百分率で表したものである。すなわち付着率は、サンプル2〜11については、凍結前から解凍後48時間培養後までのTNNT2陽性細胞の変化を表していることから、この付着率が凍結前後でのHCMの実質的な「生存率」を表しているとも言える。
そして図5(A)に示したように、付着率については、非凍結のHCM(サンプル1)は、48時間の培養の前後で95.0%の付着率であった。そして従来の方法で凍結したサンプル2では26.7%の付着率であった。一方、CAS冷凍技術を用いて凍結させたサンプル3〜11のうち、サンプル4〜11ではサンプル2よりも付着率が向上した。そしてサンプル5では、サンプル2に対して有意水準p<0.05での有意差があった(図中「*」)サンプル6〜11では、サンプル2に対して有意水準p<0.001での有意差があった(図中「***」)。またサンプル10、およびサンプル11では比較例との有意差がなかった(図中「N.S.」)。すなわち非凍結のHCM(サンプル1)と同等の付着率が得られた。
図5(B)は、TNNT2陽性率比に対する付着率の割合を示している。すなわち48時間の培養前後での各サンプル1〜11のTNNT2陽性率の変化を示している。なお、図5(B)では、図5(A)の付着率と区別するために当該培養前後でのTNNT2陽性率の変化を便宜的に「生存率」と称することとしている。そして図中では、図5(A)における有意水準p<0.001、およびp<0.05の他に、有意水準p<0.01での有意差を「**」で示している。
図5(B)に示したように、非凍結のHCM(サンプル1)では、48時間の培養の前後で99.2%の生存率であった。従来の方法で凍結したサンプル2では41.7%の生存率であった。一方、CAS冷凍技術を用いて凍結させたサンプル3〜11ではすべてのサンプルにおいてサンプル2よりも生存率が向上した。そしてサンプル9では、サンプル2に対して有意水準p<0.05での有意差があった。サンプル6では、サンプル2に対して有意水準p<0.01での有意差があった。サンプル7、10、11では、サンプル2に対して有意水準p<0.001での有意差があった。そしてサンプル7、10、11では、比較例であるサンプル1との有意差がなかった。すなわち、サンプル7,10、11の条件でHCMを凍結させれば、解凍後に生存しているHCMは、48時間の培養後でも非凍結のHCMと同等に生存していることになる。なおサンプル3〜5とサンプル8についてはサンプル2に対して有意差がなかった。
つぎに図5に示した各サンプルの付着率と生存率から、凍結したHCMを解凍後に培養した後まで効率的に生存させるための磁場の印加条件について検討する。まず図5(A)より、30Hz以上60Hz以下の周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mT以下の磁場をサンプルに印加すれば、細胞凍結容器を用いた従来のHCM凍結方法で凍結させたサンプル2よりも有意差をもって付着率が向上する。したがって、結保存液にHCMを加えた細胞懸濁液をサンプルとして、当該サンプルを過冷却状態となる温度で所定時間維持した後、凍結温度まで緩慢冷却するするとともに、その冷却過程において、30Hz以上60Hz以下の周波数で磁束密度が0.5mT以上1.0mT以下の磁場をサンプルに印加することが本発明の実施例に係るHCMの凍結方法となる。
また、サンプルに30Hzの周波数で0.5mT以上1.0mT以下の磁場を印加するか、あるいは60Hzの周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mTの磁場を印加すれば、付着率が従来例(サンプル2)に対して有意水準p>0.001となる。さらに図5(B)からサンプルに30Hzの周波数で0.5mTの磁場を印加するか、あるいは60Hzの周波数で磁束密度が0.1mT以上0.5mTの磁場を印加すれば、解凍後に48時間培養しても非凍結のHCMと同等の生存率となる。そして60Hzの周波数で磁束密度0.5mTの磁場を印加したサンプル10と、同じ周波数で磁束密度1.0mTの磁場を印加したサンプル11の付着率は、非凍結のHCMであるサンプル1n付着率に対して有意差がないことから、60Hzの周波数で0.5mT以上1.0mTの磁束密度の磁場を印加すれば、凍結保存したHCMの解凍後の生存率を劇的に向上させることができる。
つぎに凍結保存後のHCMの生存率を向上させるための要因を見極めるために、サンプル3〜11に対する冷却時の磁場印加条件を周波数や磁束密度ごとに纏めてみた。図6はCAS冷凍技術を用いて凍結させたサンプル3〜11の付着率を磁束密度ごとに纏めた結果であり、図7は、サンプル3〜11の付着率を交流磁場の周波数ごとに纏めた結果である。図6から、サンプルに印加する交流磁場の周波数が4.75Hzのサンプル3〜5のグループAと、周波数が30Hzのサンプル6〜8のグループBおよび周波数が60Hzのサンプル9〜11のグループCでは有意水準p<0.001での有意差がある。したがって、サンプルに印加する交流磁場の周波数は30Hz〜60Hzとすることが望ましい。またグループBとCでは、0.5mTの磁束密度で生存率が極大値を示した。また図7から、磁束密度が0.1mT、0.5mT、および1.0mTのグループa、b、およびcの間では有意差は見られなかった。すなわち、CAS冷凍技術を用いてHCMを凍結する際に、HCMの生存率の向上に寄与する主因は、磁束密度よりも周波数にあると考えられる。
図8は、図4における各サンプルのそれぞれの磁場印加条件にHCMの付着率を付記した図である。図8より、本実施例に係るHCMの凍結方法における交流磁場の印加条件は、非特許文献3〜5に記載のCAS冷凍技術を用いた従来の細胞の凍結方法での印加条件から乖離している。とくに、これら非特許文献3〜5に記載の方法からでは解凍後の生存可能性が低下することが予想されていた高い磁束密度の領域でHCMの付着率が向上している。すなわち、本初の実施例に係るHCMの凍結方法は、上述した非特許文献3〜5に記載の細胞の凍結方法(以下先行技術とも言う)からでは想到し得なかったものである。
なお、上記先行技術から本発明の実施例に係るHCMの凍結方法に想到し得なかった理由としては、先行技術では、上記の付着率を改善させる因子として、主に磁束密度が検討の対象とされており、先行技術を参考にしても本発明の実施例に想到することは極めて難しかった。そして本実施例では、磁場の周波数に着目したことでHCMを効果的に凍結保存できるようにしたものである。先行技術では、交流磁場の周波数と付着率や生存率との関係について検討されていなかったのは、HCM以外の細胞では付着率や生存率に寄与する因子が磁束密度であるとの前提に基づいていたためと考えることができる。言い換えれば、HCM以外の細胞では、交流磁場の周波数を調整しても付着率や生存率の向上が見込まれないものと思われる。
===解凍後のHCMの機能===
上述したように、HCMを、CAS冷凍装置を用いて所定の冷却手順と所定の磁場印加条件とによって凍結させることで、HCMの解凍後の付着率や生存率を向上させることができる。しかし生存後のHCMが正常に機能してなければ、凍結保存したHCMを移植用途はもちろん研究用途に利用することができない。そこで上記サンプル10の磁場印加条件で凍結させたHCMについて、凍結前と解凍後の拍動を調べてみた。図9に60Hz,0.5mTの条件で凍結させたHCMの凍結前と解凍後の拍動を示した。図示したように凍結前と解凍後での一分あたりの拍動数(bpm)に有為差がなく、凍結後に解凍したHCMが凍結前と同様に正常に機能することが確認できた。
またサンプル10におけるHCMの凍結前と解凍後の遺伝子の発現状態も調べてみた、図10に凍結前におけるサンプル10におけるHCMのTnT、MYL2およびMYH6の各マーカーの陽性率に対する解凍後の陽性率との比(post/pre)を示した。図示したように、各マーカーは、凍結前と解凍後で陽性率の比に差がなく、同様の遺伝子が同様の陽性率で発現していることが確認できた。参考までに図11にサンプル10におけるHCMの解凍後の心筋トポロニン(cTnT)とα−アクチニン(α-Actinin)のDAPI染色画像を示した。
===その他の実施例===
上記実施例ではiPS細胞由来のHCMを凍結させていたが、周知のごとく、iPS細胞から分化誘導されたHCMと他のヒト多能性幹細胞から分化誘導されたHCMとにはほとんど差異がない。すなわち本発明の実施例における凍結の対象は、あらゆるヒト多能性幹細胞由来のHCMとすることができる。なおiPS細胞は体細胞から作製することができ、受精卵から作製されるES細胞に対して倫理的な問題が少ないという利点がある。またiPS細胞を用いれば、ドナーとレピシエントが同じであれば拒絶反応のない自家移植が可能となることから、ドナーが将来の移植に備えて自身の体細胞から作製したiPS細胞に由来する心筋細胞を凍結保存させておくこともできる。
HCMを凍結する際の冷却手順は、上記実施例における冷却手順に限らない。例えば、サンプルを過冷却状態にするために−5℃の温度を15分維持していたが、過冷却状態が得られるのであれば温度や時間は適宜に設定できる。またその後の徐冷速度も1.0℃/minなお、細胞内に氷晶が生成されないのであれば、適宜に設定できる。
1 CAS冷凍装置、10 冷凍装置本体、11 凍結槽、15 温度センサ、
16 コイル、20 制御ユニット、22 コイル制御部、25 温度制御部、
30 サンプルホルダー、35 孔

Claims (5)

  1. 凍結槽と、当該凍結槽内に磁場を発生させる手段と、前記凍結槽内の温度を可変制御する手段とを備えた冷凍装置を用いてヒト多能性幹細胞由来心筋細胞を凍結する方法であって、
    前記心筋細胞に凍結保存液を加えてなる細胞懸濁液をサンプルとして、当該サンプルが収納された容器を漸次冷却して当該サンプルを凍結させる冷却ステップと、
    前記冷却ステップの実行中に前記サンプルに対して交流磁場を印加する磁場印加ステップと、
    を含み、
    前記冷却ステップでは、前記凍結槽内に前記サンプルが収納された容器を配置した上で、前記凍結槽内の温度を初期温度T1から前記サンプルの凍結温度よりも低い温度T3まで冷却するとともに、前記温度T3に至る過程で前記サンプルが過冷却状態となる温度T2で所定時間維持するように前記凍結槽内の温度を制御し、
    前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに30Hz以上60Hz以下の周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mT以下の交流磁場を印加する、
    ことを特徴とするヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法。
  2. 請求項1において、前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに30Hzの周波数で0.5mT以上1.0mT以下の磁場を印加するか、あるいは60Hzの周波数で磁束密度が0.1mT以上1.0mTの磁場を印加することを特徴とするヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法。
  3. 請求項1において、前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに30Hzの周波数で0.5mTの磁場を印加するか、あるいは前記サンプルに60Hzの周波数で磁束密度が0.5mT以上1.0mT以下交流磁場を印加することを特徴とするヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法。
  4. 請求項1において、前記磁場印加ステップでは、前記サンプルに60Hzの周波数で磁束密度が0.5mT以上1.0mT以下の交流磁場を印加することを特徴とするヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ヒト多能性幹細胞由来心筋細胞をiPS細胞とすることを特徴とするヒト多能性幹細胞由来心筋細胞の凍結方法。
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