JP2020010681A - 細胞凍結方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】剥離及び分散等の必要がなく、簡便に細胞を凍結する方法の提供。【解決手段】細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結することを含む、細胞凍結方法、凍結細胞の生産方法、及び、凍結細胞を含む容器の生産方法。【選択図】図2
Description
本発明は、細胞凍結方法又は凍結細胞の生産方法等に関する。
ES細胞及びiPS細胞等の幹細胞の研究によって、近年再生医療が注目を浴びている。再生医療とは欠損、損傷、又は機能低下した組織を、患者の体外で培養した細胞や組織を用いて再生を行う治療法であり、臓器移植等にかわる治療法として期待されている。
幹細胞等の培養細胞は、培養の合間に凍結して保存されることが一般的である。細胞の凍結保存法は、液体窒素などを用いて急速に試料を凍結するガラス化法と、冷却速度を−1℃/分程度に制御する緩慢凍結法の2種類の方法に大別される。iPS細胞等の幹細胞は一般に通常の培養細胞に比べて凍結に弱いことから、凍結保存には緩慢凍結法が採用されている。緩慢凍結法では、プレートに接着している細胞を剥離し、凍結保護液中に細胞を分散させ、バイアルに分注した後コンテナに収納し、-80℃冷凍庫内にて緩慢な冷却速度により凍結状態に至らしめる。緩慢凍結法は、例えばプログラムフリーザーによる冷凍制御等の方法によって行われる(例えば特許文献1)。
上記のように、緩慢凍結法は細胞の剥離、分散及びバイアルへの分注工程を含む。このような従来の緩慢凍結方法では、剥離及び分散時等に細胞にストレスが生じ、また細胞をバイアルに分散させてからの凍結には手間がかかる。さらに、凍結、解凍後に細胞が正常化するまで2〜4週間と長い期間が必要である等の問題がある。
本発明は、剥離及び分散等の必要がなく、細胞へのダメージを抑えながら細胞を簡便に凍結する方法を提供すること等を課題とする。
本発明者は、細胞を含む凍結保護溶液の一部を急冷して該部位に氷晶核を発生させながら、溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結することにより、細胞へのダメージを抑えながら細胞を簡便に凍結することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、細胞凍結方法。
(2)細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、凍結細胞の生産方法。
(3)細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、凍結細胞を含む容器の生産方法。
(4)前記溶液の一部を、氷晶核の形成まで−3℃/min〜−10℃/minの速度で冷却する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記溶液の他の部位を、−0.05℃/min〜−2℃/minの速度で冷却する、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記溶液の他の部位を、−0.5℃/min〜−2℃/minの速度で冷却する、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(7)前記容器の一部を冷却することによって前記溶液の一部を急冷することを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)細胞が接着細胞である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)容器が培養容器である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)細胞が幹細胞である、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)急冷が、−50℃以下の伝熱手段を溶液又は容器の一部に接触させることによって行われる、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(1)細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、細胞凍結方法。
(2)細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、凍結細胞の生産方法。
(3)細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、凍結細胞を含む容器の生産方法。
(4)前記溶液の一部を、氷晶核の形成まで−3℃/min〜−10℃/minの速度で冷却する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記溶液の他の部位を、−0.05℃/min〜−2℃/minの速度で冷却する、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記溶液の他の部位を、−0.5℃/min〜−2℃/minの速度で冷却する、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(7)前記容器の一部を冷却することによって前記溶液の一部を急冷することを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)細胞が接着細胞である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)容器が培養容器である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)細胞が幹細胞である、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)急冷が、−50℃以下の伝熱手段を溶液又は容器の一部に接触させることによって行われる、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
本発明により、細胞へのダメージを抑えながら細胞を簡便に凍結することができる。これにより、幹細胞等の培養細胞の培養効率を顕著に改善することができる。
一態様において、本発明は、細胞凍結方法又は凍結細胞の生産方法に関する。本発明の方法は、細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結することを含む。
本明細書において、「細胞」の種類は限定されず、動物由来細胞等、好ましくは哺乳類動物由来細胞等であってよく、培養細胞であってよい。細胞は、好ましくは幹細胞である。本明細書において「幹細胞」とは、様々な種類の細胞に分化することができる能力と、自己複製能力の両方を有する細胞を指す。幹細胞の例としては、骨髄、血液、皮膚、及び脂肪等の生体組織に存在する未分化な状態の細胞(総称して、体性幹細胞という)、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、例えばフィーダーフリー細胞等が挙げられる。このような幹細胞は、公知の方法によって作製することができるが、所定の機関より入手し、また市販品を購入することもできる。これら幹細胞は、初代培養細胞及び継代培養細胞のいずれであってもよい。幹細胞は、公知の方法によって分化させてもよい。また、細胞の形状は限定せず、シート状であってもよい。細胞は、細胞シート、例えば幹細胞シート、又は心筋シートであってもよい。
細胞は、スフェロイドであってもよい。本明細書において、「スフェロイド」とは、複数の細胞が凝集した細胞塊を指し、例えば300μm以上、例えば300〜2000μmの直径を有する細胞塊を指す。スフェロイドを作製する方法は公知であり、例えばスフェロイド形成用プレート(例えば、EZSPHERE(登録商標) 35mm Dish:4860-900)を用いて培養を行うことによりスフェロイドを作製することができる。例えば、細胞が幹細胞である場合、スフェロイドは細胞の大量調製、及び/又は分化のために用いることができる。
本明細書において、「凍結保護溶液」は、凍結中に細胞を保護する物質を含有している溶液を指す。凍結保護溶液の種類は限定されず、例えばDMSO、プロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ホルムアミド、ソルビトール及びマンニトール等の糖、CP-5E等の市販の凍結保護溶液、並びにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
凍結保護溶液を入れた容器の材質は限定されず、例えばガラス又はプラスチック等が挙げられる。容器は培養容器であることが特に好ましい。これは、培養を行った細胞を剥離及び分散等することなくそのまま凍結し、解凍して再び培養を行うことができるためである。培養容器は、細胞を培養又は保存する際に使用されるものであればいかなるものであってもよく、例えば、細胞培養皿、マルチウェルプレート、細胞培養ボトル(又はフラスコ)、バッグ(例えば、細胞培養又は保存用バッグ)等が挙げられる。一実施形態において、容器は、凍結保護に用いられるクライオチューブではない。
細胞は、接着細胞であっても浮遊細胞であってもよいが、好ましくは接着細胞である。接着細胞では、特に剥離及び分散等を行わずにそのまま凍結を行った場合の生存率が非常に低く、本発明の方法を適用することで生存率を顕著に向上させることができるからである。
本発明の方法は、溶液の一部を、急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結することを含む。溶液の一部を急冷して氷晶核を発生させる(本明細書では、この工程を「植氷する」とも記載する)ことにより、溶液の他の部位を、過冷却を生ずることなく緩慢に凍結することが可能となり、これにより凍結の際の細胞へのダメージを低減することができる。急冷は−50℃以下で行うことができる。
本発明における「一部」の範囲は、上記の様な他の部位での過冷却を防止し、緩慢な凍結が可能である限り限定しない。例えば、「一部」の表面積は、溶液又は溶液を含む容器の表面積全体を100%とした場合、10%以下、8%以下、4%以下、3%以下であってよく、0.25%以上、0.5%以上、1%以上であってよく、例えば0.25%〜10%、0.5%〜4%、1%〜3%又は約2%であってよい。また、「一部」の表面積は、例えば0.03〜3cm2、0.1〜0.8cm2、0.2〜0.4cm2、約0.3cm2であってよい。
前記溶液の一部を急冷した場合、該部位で過冷却が生じ、ある温度(例えば約−20℃)において氷晶核が生ずると、過冷却は解除される。急冷は、例えば−50℃以下、例えば−60℃以下又は−70℃以下、好ましくは−80℃以下で、また−150℃以上又は−120℃以上、好ましくは−90℃以上の温度で行うことができる。急冷は、例えば上記温度の伝熱手段を前記溶液又は該溶液を含む容器に接触させることによって行うことができる。伝熱手段の材質は問わず、アルミ等の金属性であってよく、その形状も問わず、例えば、ロッド状であってよい。また、急冷の速度は、例えば氷晶核の形成まで−3℃/min以上、−3.5℃/min以上、好ましくは−3.9℃/min以上、−4.0℃/min以上、又は−4.1℃/min以上の速度の冷却であってよい。また、急冷は−10℃/min以下、−8℃/min以下、−7℃/min以下、−6℃/min以下、好ましくは−5℃/min以下、−4.5℃/min以下又は−4.3℃/min以下の速度の冷却であってよい。本明細書において、「急冷」は過冷却が解除されるまでの急速な冷却を指し、容器の一部に対する冷却は過冷却の解除後も続いてよいが、他の部位との冷却速度の差は、過冷却の解除前と比べて小さくなる。急冷を行う時間は限定されないが、例えば5分以上、7分以上、又は8分以上、また、20分以下、15分以下、又は12分以下、例えば約10分である。
急冷は、凍結保護溶液自体の一部を直接冷却することによって行ってもよいが、冷却手段を直接溶液に適用する際のコンタミネーションのリスクを避けるため、容器の一部を冷却することによって間接的に溶液の一部を急冷することが好ましい。
上記の通り、本発明の方法では溶液の一部を急冷し、かつ溶液の他の部位を徐冷することによって細胞の凍結を行う。徐冷は、−0.01℃/min以上、−0.05℃/min以上、−0.1℃/min以上、−0.2℃/min以上、−0.3℃/min以上、−0.4℃/min以上、−0.5℃/min以上、−0.7℃/min以上、好ましくは−0.8℃/min以上、又は−0.9℃/min以上の速度であってよく、−2℃/min以下、−1.5℃/min以下、好ましくは−1.3℃/min以下、−1.1℃/min以下、−1℃/min以下、−0.5℃/min以下、又は−0.3℃/min以下の速度であってよく、例えば、−0.01℃/min〜−2℃/min、−0.05℃/min〜−1℃/min、−0.1℃/min〜−0.3℃/min、又は約−1℃/min又は約−0.3℃/minの速度であってよい。本明細書において、「徐冷」は細胞全体が凍結されるまで、又は温度がほぼ一定になるまでの冷却を指し、通常急冷と同時に始まるが、その終期が急冷より遅いため、徐冷の方が急冷よりも時間が長い。徐冷を行う時間は限定されないが、例えば10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、60分以上、120分以上、又は240分以上であってよく、600分以下、480分以下、360分以下、240分以下、120分以下、100分以下、80分以下、又は60分以下であってよい。徐冷の速度は、細胞の生存率及び凍結の作業効率等を考慮して、本明細書の記載に基づいて容易に定めることができる。
冷却前の細胞を含む凍結保護溶液及び容器の温度は限定しないが、例えば-15℃以上、-10℃以上、-5℃以上、0℃以上、4℃以上、10℃以上、15℃以上であってよく、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、10℃以下、又は0℃以下であってよく、例えば-20℃〜20℃、約20℃又は室温であってよい。
本発明の方法において、冷却を行う方法は特に限定しない。例えば、溶液の一部の急冷及び他の部位の徐冷は、溶液の一部を例えばアルミニウム等金属性の熱伝導性冷却手段に接触させることにより行うことができる。ここで、冷却手段はディープフリーザー等の他の冷却機構により冷却することができる。
より具体的には、冷却は、例えば実施例及び図1に概要を示した装置により行うことができる。図1に示す装置は、外側を断熱性の樹脂容器で覆うことにより、樹脂容器101内部の空気、プラスチックシャーレ102及びそこに含まれる溶液の緩慢な冷却を可能としている。106に示す局部冷却手段であるアルミ棒によってプラスチックシャーレ102の一部を急冷し、該部位において氷晶核を形成する。107はプラスチックシャーレを固定するための押さえ樹脂ピンである。103〜105は発泡ポリエチレンであり、108はアルミプレートである。実施例では、図1に示す装置をディープフリーザー内に配置することによりアルミプレート108及びアルミ棒106を冷却し、これを介してプラスチックシャーレ102の一部を急冷した。図1に示す装置の構成を、以下でより詳細に説明する。
樹脂容器101は、内部の空洞に、化学物質名が2−プロパノール、慣用名がイソプロピルアルコールのいわゆるイソプロパノールからなる液体および空気が充填され密閉された構成を有し、樹脂容器101の内部と外部との間を断熱する構成を有している。容器の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。樹脂容器101は、例えば、外径が68mm程度、内径が49mm程度、厚みが9.5mm程度、高さが90mm程度で形成することができる。具体的には、日本フリーザー製の凍結処理容器バイセルを使用してもよい。
樹脂容器101は、プラスチックシャーレ102を室内空間に収容して外部から熱的に隔離し、プラスチックシャーレ102に対して冷熱を伝えるルートを、物理的に接触するアルミ棒106及び押さえ樹脂ピン107のみに限定することができる。これにより、装置は、低温槽庫内における配置位置などの周囲環境から外乱を受けることなく、プラスチックシャーレ102に対して冷熱を安定して供給することができる。
図1に示す装置は、台座(アルミプレート108)と、台座から突出して台座の上にプラスチックシャーレ102を支持する複数の支持部材、すなわちアルミ棒106及び押さえ樹脂ピン107を有している。図1に示す装置によれば、押さえ樹脂ピン107の熱伝導率がアルミ棒106の熱伝導率よりも低いので、恒温槽庫内に配置された際に、アルミ棒106によりプラスチックシャーレ102を冷却する冷熱の量と、押さえ樹脂ピン107によりプラスチックシャーレ102を冷却する冷熱の量との間に意図的に差を設けることができ、プラスチックシャーレ102内の凍結保護溶液に所定の温度勾配を生じさせることができる。したがって、プラスチックシャーレ102のアルミ棒106との接触箇所をその他の箇所よりも速く冷却して、凍結保護溶液全体が過度の過冷却になる前に、凍結保護溶液のアルミ棒106との接触箇所に対応する部分に氷晶核を局所的に発生させる。そして、その局所的に発生させた氷晶核を、その他の箇所に向けて緩速に成長させる植氷操作を行うことができ、氷晶核を成長させる方向及び速度を精密に制御することができる。
図1に示す装置は本発明の方法を実施するために使用できる装置の一例であり、例えば求める冷却速度に応じて、様々な改変(例えば冷却手段、押さえ樹脂ピン、及び細胞を含む容器の材質、大きさ、及び形状等の変更)を加えた装置を用いて、又はこれとは異なる手段を用いて本発明の方法を実施することができる。本発明の方法を実施するための具体的な手段は、本明細書に記載される実施例に限定されることなく選択することができる。例えば、求める冷却速度に応じて、冷却に用いる装置の構成を変更してもよいし、冷却装置の運転条件を制御してもよい。
冷却に用いる装置の構成の変更の例として、例えば凍結装置における細胞容器の上に蓄熱体(例えば金属ブロック)、及び細胞容器を覆うカバーを含めることができる。蓄熱体は、予め設定された熱容量を有し、対象物の仕様条件に合わせた緩慢凍結の温度降下となるように調整する機能を有する。カバーは、金属材料又は合成樹脂材からなる、両端で開口する円筒で構成されており、細胞容器の側面の周囲に所定の厚みの気相が形成されるように構成される。この実施形態において、細胞容器の上に載置されている金属ブロックは、細胞容器の冷熱がカバーを通じて樹脂容器の室内空間の気相に伝えられ、その気相の冷熱が蓄熱体に伝えられることによって冷却される。蓄熱体は、予め設定された熱容量を有する蓄熱体であり、細胞容器とともに室内空間に収容されるので、細胞容器内の対象物である細胞を凍結させる際の温度降下の速度を、細胞の仕様条件に合わせた緩慢凍結の温度降下の速度となるように調整することができる。
冷却装置の運転条件の制御は、例えば図4に示す凍結装置を用いて行うことができる。図4に示す凍結装置は、図1に示す装置を低温槽庫403内に含み、冷凍手段401に接続したものである(図1の装置と同一の構成要素は、同一の符号を付した)。冷凍手段401はさらに制御手段402に接続され、図示していないが制御手段402はさらに温度測定部位109(例えば、dはバイセル気相、eはアルミ棒、fはアルミプレート、gは庫内、及びhはプレート下部)に接続することができる。冷凍手段401は、例えばコンプレッサにより冷媒を圧縮して熱交換器に供給することより庫内を冷却する構造を有する。図4に示す装置では、各部の温度計測に基づいて所定の冷却速度が得られるように、制御手段402が冷凍手段401の温度を制御することができる。また、凍結対象物と温度履歴に基づいて制御手段402により運転方法をプログラムして運転制御をしてもよい。冷凍手段401は、必要に応じて、凍結装置を記録手段や表示手段等の手段に接続してもよい。上記凍結装置によれば、各部109d〜109hの温度に基づいて冷凍手段401を制御し、低温槽庫403の庫内を所定の冷却速度で冷却することができる。したがって、例えば凍結初期の過冷却解除の発生や徐冷などのプラスチックシャーレ102内の凍結状態を把握することができる。そして、プラスチックシャーレ102内の対象物である細胞を凍結させる際の温度降下の速度を、細胞の仕様条件に合わせた徐冷の温度降下の速度となるように調整することができる。したがって、徐冷により確実に細胞の凍結が行われ、解凍後の細胞の生存率が高められるという効果が得られる。
凍結後の細胞の保存期間は限定しない。例えば、1日以上、2日以上、3日以上、7日以上、14日以上、1カ月以上、2カ月以上、3カ月以上、半年以上、一年以上、又は数年以上であってよい。また、保存期間は、十年以下、数年以下、一年以下、又は半年以下であってよい。
凍結後の細胞の解凍は常法によりおこなうことができる。例えば、凍結細胞を含む容器を、伝熱手段(例えば、アルミブロック等の金属性の伝熱手段)に接触させ(例えば、伝熱手段上又は中で静置し)、解凍することができる。その後の培養は常法に従って行うことができる。一実施形態において、本発明の方法は、解凍後の培養にY-27632等のROCK阻害剤を必要としない(この実施形態において、凍結は培養容器にて行われてもよい)。ROCK阻害は従来のチューブ凍結等において行われるシングルセル化で生ずる細胞死の阻害剤である。本実施形態では、ROCK阻害を必要としない点で、試薬コストが削減されるという効果を奏し得る。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<実施例1:細胞凍結>
(播種用プレートの準備)
15 mlコニカルチューブにPBS(ナカライテスク)を1.5 ml入れ、iMatrix-511 E8(TaKaRa)を9.5μl加え、よく混和した。混和後のPBSを、プレート(IWAKI 35mm Tissue Culture Dish)に1.5 ml/well添加し、37℃、CO25%インキュベーターで60 min以上静置し、溶液を除去し、これを播種用プレートとして使用した。
(播種用プレートの準備)
15 mlコニカルチューブにPBS(ナカライテスク)を1.5 ml入れ、iMatrix-511 E8(TaKaRa)を9.5μl加え、よく混和した。混和後のPBSを、プレート(IWAKI 35mm Tissue Culture Dish)に1.5 ml/well添加し、37℃、CO25%インキュベーターで60 min以上静置し、溶液を除去し、これを播種用プレートとして使用した。
(細胞培養)
培養細胞としては、iPS細胞1231A3株を用いた。必要量の維持培養培地StemFit AK02N(味の素)に培地の1/1000量の10 mM Y-27632(和光純薬)を加え、よく混合したものを細胞培養培地として使用した。37℃、CO2 5%インキュベーターで行い培養を行った。
培養細胞としては、iPS細胞1231A3株を用いた。必要量の維持培養培地StemFit AK02N(味の素)に培地の1/1000量の10 mM Y-27632(和光純薬)を加え、よく混合したものを細胞培養培地として使用した。37℃、CO2 5%インキュベーターで行い培養を行った。
(細胞継代)
培養iPS細胞のwellから培地を除去した後に、PBS 2mlを加えて洗浄し、PBSを除去した。続いて0.5×TrypLE Select(Thermo Fisher Scientific)を1 ml/well加え、well全体になじませ、37℃、CO2 5%インキュベーターで5 min静置した。インキュベーターからプレートを取り出し、0.5×TrypLE Selectを除去した後、PBS 2 ml/wellを静かに加えて洗浄し、PBSを除去した。続いて、StemFit+Y-27632 1 mlを細胞に直接かけ、細胞を剥がした。その後、細胞懸濁液をチューブに回収し、セルカウンターで生細胞数をカウントした。
培養iPS細胞のwellから培地を除去した後に、PBS 2mlを加えて洗浄し、PBSを除去した。続いて0.5×TrypLE Select(Thermo Fisher Scientific)を1 ml/well加え、well全体になじませ、37℃、CO2 5%インキュベーターで5 min静置した。インキュベーターからプレートを取り出し、0.5×TrypLE Selectを除去した後、PBS 2 ml/wellを静かに加えて洗浄し、PBSを除去した。続いて、StemFit+Y-27632 1 mlを細胞に直接かけ、細胞を剥がした。その後、細胞懸濁液をチューブに回収し、セルカウンターで生細胞数をカウントした。
播種用プレートに13,000生細胞/wellとなるよう細胞懸濁液を加え、すぐにプレートを揺らして均一に細胞を拡げ、37℃、CO2 5%インキュベーターで培養した。
(細胞凍結)
播種1日後にwellから培地を除去し、凍結保護剤CP-5E(極東製薬) 1.5 mlを静かに加えた。プレート側面にパラフィルムを巻き、植氷ありで凍結を行うためにプレートを図1に示す装置に移し、これをディープフリーザーにて-80℃で凍結した。図1に示す装置において、101は、外径φ68mm、内径φ49mmの樹脂容器(バイセル、日本フリーザー)を指す。102はφ40mm、h13mm、t2mmのプラスチックシャーレ(IWAKI)を指す。103はφ49mm、t10mmの発泡ポリエチレンを指す。104はφ49mm、t10mmの発泡ポリエチレンを指す。105はφ85mm、t10mmの発泡ポリエチレンを指す。106はアルミ棒(A5056、D=6mm、L=35mm、片側タップ加工=M3)を指す。107は押さえ樹脂ピン(ポリアセタール、D=6mm、L=35mm、片側タップ加工=M3)を示す。108はφ95mm、t3mmのアルミニウムプレート(A5056)を指す。109は温度測定部位(aは液中のアルミ棒右側、bは液中中央、cは液中アルミ棒真上、dはバイセル気相、eはアルミ棒、fはアルミプレート、及びgは庫内)を指す。
播種1日後にwellから培地を除去し、凍結保護剤CP-5E(極東製薬) 1.5 mlを静かに加えた。プレート側面にパラフィルムを巻き、植氷ありで凍結を行うためにプレートを図1に示す装置に移し、これをディープフリーザーにて-80℃で凍結した。図1に示す装置において、101は、外径φ68mm、内径φ49mmの樹脂容器(バイセル、日本フリーザー)を指す。102はφ40mm、h13mm、t2mmのプラスチックシャーレ(IWAKI)を指す。103はφ49mm、t10mmの発泡ポリエチレンを指す。104はφ49mm、t10mmの発泡ポリエチレンを指す。105はφ85mm、t10mmの発泡ポリエチレンを指す。106はアルミ棒(A5056、D=6mm、L=35mm、片側タップ加工=M3)を指す。107は押さえ樹脂ピン(ポリアセタール、D=6mm、L=35mm、片側タップ加工=M3)を示す。108はφ95mm、t3mmのアルミニウムプレート(A5056)を指す。109は温度測定部位(aは液中のアルミ棒右側、bは液中中央、cは液中アルミ棒真上、dはバイセル気相、eはアルミ棒、fはアルミプレート、及びgは庫内)を指す。
植氷なしで凍結を行う場合は、図1の106のアルミ棒を除く以外は、同様の装置を用いて行った。
植氷を行って凍結した際の、液中(アルミ棒右側、中央、アルミ棒真上)、バイセル気相、アルミ棒、アルミプレート、及び庫内の温度の推移を図2aに示す。温度の測定部位は図1に示す通りであり、温度の測定はK型熱電対で行った。この場合、一部冷却は樹脂容器101の底部のアルミプレート108に複数の支持部材(アルミ棒106及び樹脂ピン107)を設け、恒温槽-80℃を熱源として台座から支持部材を介して細胞容器を冷却した。過冷却時点までの温度降下は-3℃/min〜-6℃/min程度であった。その後温度降下徐冷が継続した。図2aから、アルミ棒真上では過冷却が生じ、これが−20℃付近で解除され、いったん急激に温度が上昇しているが、液中の他の部位ではこのような現象が観察されず、全体として緩慢な冷却(例えば、凍結後60分でみれば−0.5℃/min〜−2℃/min)が観察され、過冷却が抑制されていることがわかる。
同様に、植氷を行わずに凍結を行った場合の液中、気層、及び庫内の温度の推移を図2bに示す。植氷を行わずに凍結を行った場合、容器内は急冷部がない緩慢凍結となり、気相温度が先行して下がり液中温度が遅れて低下した。図2bに示す通り、約45分後に一気に溶液の過冷却解除が生した。その後徐冷が継続された。過冷却までの温度降下は-0.5〜-1.3℃/min程度であった。図2bにおいても、液中では過冷却が生じ、これが−20℃付近で解除され、いったん急激に温度が上昇していることがわかる。
<実施例2:解凍後の生存率>
(細胞の解凍)
装置の中からプレートを取り出し、37℃の20mm厚アルミブロック上で2分間静置し解凍した。凍結保護剤を除去し、PBS 2 ml/wellを静かに加えて洗浄し、PBSを除去した。StemFit+Y-27632 1.5 mlを静かに加え、37℃、CO2 5%インキュベーターで培養した。
(細胞の解凍)
装置の中からプレートを取り出し、37℃の20mm厚アルミブロック上で2分間静置し解凍した。凍結保護剤を除去し、PBS 2 ml/wellを静かに加えて洗浄し、PBSを除去した。StemFit+Y-27632 1.5 mlを静かに加え、37℃、CO2 5%インキュベーターで培養した。
(生存率計測)
培養3-4日後に顕微鏡下で細胞コロニー数を測定した。生存率を、(凍結解凍後プレートの単位面積当たりのコロニー数)÷(未凍結プレートの単位面積当たりのコロニー数)×100にて算出した。
培養3-4日後に顕微鏡下で細胞コロニー数を測定した。生存率を、(凍結解凍後プレートの単位面積当たりのコロニー数)÷(未凍結プレートの単位面積当たりのコロニー数)×100にて算出した。
その結果、植氷なしで凍結を行った場合の生存率は2%であったのに対し、植氷ありで凍結を行った場合の生存率は46%であり、植氷なしで凍結を行った場合に比べ顕著に細胞の生存率が改善していた(図3)。
<実施例3:冷却速度の検討>
実施例1で用いたプレート上にてiPS細胞1231A3株を実施例1同様の方法で接着培養し、液体培地を凍結保護剤に置換した。過冷却解除に伴う急速な相変化を避けるため、プレート底面より-150℃に冷却したアルミプローブ(A5056、D=6mm、L=35mm、片側タップ加工=M3)を接触させ、人為的に氷核を生成させた。その後、プログラムフリーザー(エスペック、MC-812)を用いて-1.0℃/min、-0.5℃/min、-0.3℃/min、又は-0.1℃/minの庫内冷却速度にて-80℃まで冷却した。冷却後は-80℃の低温恒温槽(パナソニック)にて3日間保存した。解凍は、実施例2に従い37℃に保温したアルミブロック上に凍結プレートを静置し、融解後、速やかに凍結保護剤を液体培地に置換した。実施例2に従い、解凍直後、3日培養後、7日培養後の生細胞数をセルカウンターにて測定した(但し、本実施例では、解凍後の培養ではY-27362を加えなかった)。
実施例1で用いたプレート上にてiPS細胞1231A3株を実施例1同様の方法で接着培養し、液体培地を凍結保護剤に置換した。過冷却解除に伴う急速な相変化を避けるため、プレート底面より-150℃に冷却したアルミプローブ(A5056、D=6mm、L=35mm、片側タップ加工=M3)を接触させ、人為的に氷核を生成させた。その後、プログラムフリーザー(エスペック、MC-812)を用いて-1.0℃/min、-0.5℃/min、-0.3℃/min、又は-0.1℃/minの庫内冷却速度にて-80℃まで冷却した。冷却後は-80℃の低温恒温槽(パナソニック)にて3日間保存した。解凍は、実施例2に従い37℃に保温したアルミブロック上に凍結プレートを静置し、融解後、速やかに凍結保護剤を液体培地に置換した。実施例2に従い、解凍直後、3日培養後、7日培養後の生細胞数をセルカウンターにて測定した(但し、本実施例では、解凍後の培養ではY-27362を加えなかった)。
結果を図5に示す。図5は、庫内冷却温度が-1℃/minから-0.1℃/minまで低下する程、解凍後の生存細胞数が増加する傾向があることを示している。
-0.3℃/minで凍結を行った場合の温度変化を、図6に示す。
-0.3℃/minで凍結を行った場合の温度変化を、図6に示す。
なお、本実施例では、上記の通り、解凍後の培養にY-27362を加えなかった。Y-27632は従来のチューブ凍結等において行われるシングルセル化で生ずる細胞死の阻害剤である。本発明のプレート凍結では、従来のチューブ凍結において必要であったY-27632が必要なくなり、試薬コストが削減され得ると考えられる。
<実施例4:凍結法による増殖速度の比較>
(プレート凍結)
実施例3と同様の方法により、庫内冷却温度-0.3℃/minでプレート凍結を行った。解凍直後、及びその後(3日培養後、7日培養後)の生細胞数測定は実施例2に従って行った。
(プレート凍結)
実施例3と同様の方法により、庫内冷却温度-0.3℃/minでプレート凍結を行った。解凍直後、及びその後(3日培養後、7日培養後)の生細胞数測定は実施例2に従って行った。
(チューブ凍結)
継代適期のwellから培地を除去し、0.5×TrypLE Selectにて細胞をシングルセル化し、凍結保護剤CP-5E(極東製薬)中に細胞密度1×106 cell/mlとなるよう調製し、クライオチューブ(IWAKI)に0.2 mlずつ分注した。樹脂容器(バイセル、日本フリーザー)にクライオチューブを入れ液体窒素容器の気相中にて3日間保存した。解凍は37℃の温浴にて速やかに行い、凍結保護剤を除去した。解凍直後、及びその後(3日培養後、7日培養後)の生細胞数測定は実施例2に従って行った。
継代適期のwellから培地を除去し、0.5×TrypLE Selectにて細胞をシングルセル化し、凍結保護剤CP-5E(極東製薬)中に細胞密度1×106 cell/mlとなるよう調製し、クライオチューブ(IWAKI)に0.2 mlずつ分注した。樹脂容器(バイセル、日本フリーザー)にクライオチューブを入れ液体窒素容器の気相中にて3日間保存した。解凍は37℃の温浴にて速やかに行い、凍結保護剤を除去した。解凍直後、及びその後(3日培養後、7日培養後)の生細胞数測定は実施例2に従って行った。
結果を図7に示す。図7は、プレート凍結の方が、従来法であるチューブ凍結に加えて早く増殖することを示している。
<実施例5:凍結保存期間の検討>
実施例3のプレート凍結と同様の方法により、細胞を凍結した。冷却後は-80℃の低温恒温槽にて3日間、18日間、57日間保存した。解凍、及びその後の生細胞数測定は実施例2に従って行った。
実施例3のプレート凍結と同様の方法により、細胞を凍結した。冷却後は-80℃の低温恒温槽にて3日間、18日間、57日間保存した。解凍、及びその後の生細胞数測定は実施例2に従って行った。
結果を図8に示す。図8は、凍結保存期間が長くなっても生細胞数は顕著には低下しないことを示している(3日保存の場合を100%とすると、18日及び57日保存の生存率は、それぞれ86%及び63%であった)。
<実施例6:スフェロイドの凍結>
スフェロイド形成用プレート(EZSPHERE(登録商標)35mm Dish:4860-900)にiPS細胞1231A3株を80,000細胞播種し、1日間培養し、スフェロイドを作製した。その後実施例1と同様に液体培地を凍結保護剤に置換した。その後、実施例3と同様の方法により、細胞を凍結した。庫内冷却温度は-0.1℃/minとした。冷却後は-80℃の低温恒温槽にて3日間保存した。解凍は、37℃に保温したアルミブロック上に凍結プレートを静置し、融解後、遠心分離(200×g、3分)により凍結保護剤を液体培地に置換した。実施例2に従い、解凍直後の生細胞数をセルカウンターにて測定した。
スフェロイド形成用プレート(EZSPHERE(登録商標)35mm Dish:4860-900)にiPS細胞1231A3株を80,000細胞播種し、1日間培養し、スフェロイドを作製した。その後実施例1と同様に液体培地を凍結保護剤に置換した。その後、実施例3と同様の方法により、細胞を凍結した。庫内冷却温度は-0.1℃/minとした。冷却後は-80℃の低温恒温槽にて3日間保存した。解凍は、37℃に保温したアルミブロック上に凍結プレートを静置し、融解後、遠心分離(200×g、3分)により凍結保護剤を液体培地に置換した。実施例2に従い、解凍直後の生細胞数をセルカウンターにて測定した。
結果を図9に示す。図9は、スフェロイドに対しても、本発明が適用可能であることを示している(未凍結細胞に対して、凍結解凍後の細胞の生存率は34%であった)。
<実施例7:幹細胞マーカー遺伝子の発現確認>
実施例3と同様の方法により、庫内冷却温度-0.3℃/minでプレート凍結を行った。解凍は実施例2に従って行った。解凍後3日間培養し、iPS細胞1231A3株からRNeasy(QUIAGEN)を用いて、製造業者の推奨に従ってRNAを抽出した。ReverTra Ace(TOYOBO)を用いてRNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを用いて、SYBR Green(タカラバイオ株式会社)及び機器により常法に従って定量PCRを実施し、幹細胞特異的なマーカー遺伝子(OCT4、NANOG、PAX6)の発現を測定し、GAPDHの発現量に対する相対値を求めた。用いたプライマーは以下の表に示す通りである。
実施例3と同様の方法により、庫内冷却温度-0.3℃/minでプレート凍結を行った。解凍は実施例2に従って行った。解凍後3日間培養し、iPS細胞1231A3株からRNeasy(QUIAGEN)を用いて、製造業者の推奨に従ってRNAを抽出した。ReverTra Ace(TOYOBO)を用いてRNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを用いて、SYBR Green(タカラバイオ株式会社)及び機器により常法に従って定量PCRを実施し、幹細胞特異的なマーカー遺伝子(OCT4、NANOG、PAX6)の発現を測定し、GAPDHの発現量に対する相対値を求めた。用いたプライマーは以下の表に示す通りである。
結果を図10に示す。図10に示される通り、凍結の前後において、幹細胞マーカーの遺伝子量が変化していなかった。これは、凍結前後において幹細胞の未分化性が維持されていることを示す。
Claims (10)
- 細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、細胞凍結方法。 - 細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、凍結細胞の生産方法。 - 細胞を含む凍結保護溶液を入れた容器において、溶液の一部を、−50℃以下で急冷して該部位に氷晶核を発生させること、及び
溶液の他の部位を徐冷して細胞を凍結すること
を含む、凍結細胞を含む容器の生産方法。 - 前記溶液の一部を、氷晶核の形成まで−3℃/min〜−10℃/minの速度で冷却する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶液の他の部位を、−0.05℃/min〜−2℃/minの速度で冷却する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記容器の一部を冷却することによって前記溶液の一部を急冷することを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 細胞が接着細胞である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 容器が培養容器である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 細胞が幹細胞である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 急冷が、−50℃以下の伝熱手段を溶液又は容器の一部に接触させることによって行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018128236 | 2018-07-05 | ||
JP2018128236 | 2018-07-05 |
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JP2019115242A Pending JP2020010681A (ja) | 2018-07-05 | 2019-06-21 | 細胞凍結方法 |
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JP (1) | JP2020010681A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023120420A1 (ja) * | 2021-12-20 | 2023-06-29 | 株式会社カネカ | 多能性幹細胞ストックの大量製造方法 |
-
2019
- 2019-06-21 JP JP2019115242A patent/JP2020010681A/ja active Pending
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