JP2019023478A - シール付き転がり軸受及びベルト式無段変速機 - Google Patents

Abstract

【課題】軸受の大型化・低効率化を招くことなく、異物の侵入を抑制して、軸受寿命の低下を抑制することができるシール付き転がり軸受及びベルト式無段変速機を提供する。
【解決手段】内周面に外輪軌道面１１ａを有する外輪１１と、外周面に内輪軌道面１２ａを有する内輪１２と、外輪軌道面１１ａと内輪軌道面１２ａとの間に転動自在に配置される複数の転動体１３と、外輪１１の軸方向端部に取り付けられるシール２０と、を備え、シール２０は、内輪１２と非接触であり、シール２０と内輪１２との隙間Ａ〜Ｃが、０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍに設定される。
【選択図】図２

Description

本発明は、シール付き転がり軸受及びシール付き転がり軸受が使用されたベルト式無段変速機に関する。

従来のシール付き転がり軸受として、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面と内輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の玉と、外輪の軸方向両端部に固定される一対のシール部材と、を備え、シール部材が内輪のシール溝に接触する密封型転がり軸受が知られている（例えば、特許文献１参照。）。

特開２００８−１７５３１２号公報

ところで、自動車用変速機は、燃費向上の点から、軸受に対して小型化・高効率化の要求が高くなってきている。しかし、変速機の内部には、バリの脱落や摩耗粉等の異物が存在しており、その異物が軸受寿命の低下を引き起こしている。また、効率を重視してオープン型軸受とした場合、異物による軸受寿命の低下が懸念されるため、軸受サイズを大きくする（軸受寿命に余裕を持たせる）必要がある。また、小型化を重視して上記特許文献１のような密封型転がり軸受とした場合、接触シール（通常、シール部材とシール溝との締め代は０．０５ｍｍ〜０．５０ｍｍ程度）により効率が低下する課題があった。

本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸受の大型化・低効率化を招くことなく、異物の侵入を抑制して、軸受寿命の低下を抑制することができるシール付き転がり軸受及びベルト式無段変速機を提供することにある。

本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
（１）内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面と内輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の転動体と、外輪の軸方向端部に取り付けられるシールと、を備えるシール付き転がり軸受であって、シールは、内輪と非接触であり、シールと内輪との隙間が、０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍに設定されることを特徴とするシール付き転がり軸受。
（２）内輪の外周面の軸方向端部にシール溝が形成され、シール溝の軸方向外側の側面が、軸方向外側且つ径方向外側に向かって延びる傾斜面に形成されることを特徴とする（１）に記載のシール付き転がり軸受。
（３）シールの径方向内端部にシールリップ部が形成され、シールリップ部は、異物を留めるラビリンス空間を有することを特徴とする（１）又は（２）に記載のシール付き転がり軸受。
（４）自動車用ベルト式無段変速機で使用される（１）〜（３）のいずれか１つに記載のシール付き転がり軸受を使用したベルト式無段変速機。

本発明によれば、シールが内輪と非接触であり、シールと内輪との隙間が、０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍに設定されるため、軸受の大型化・低効率化を招くことなく、異物の侵入を抑制して、軸受寿命の低下を抑制することができる。

本発明に係るシール付き転がり軸受の一実施形態を説明する要部断面図である。 図１に示すシールのシールリップ部の周辺の拡大断面図である。

以下、本発明に係るシール付き転がり軸受の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。

本実施形態のシール付き転がり軸受１０は、図１に示すように、内周面に外輪軌道面１１ａを有する外輪１１と、外周面に内輪軌道面１２ａを有する内輪１２と、外輪軌道面１１ａと内輪軌道面１２ａとの間に転動自在に配置される複数の玉（転動体）１３と、複数の玉１３を周方向に略等間隔に保持する保持器１４と、外輪１１の軸方向両端部にそれぞれ取り付けられるシール２０と、を備え、内輪１２が回転する内輪回転の軸受である。

また、シール付き転がり軸受１０は、自動車用ベルト式無段変速機において、自動車用ベルト式無段変速機及びポンプから直接潤滑されない位置で使用される。

また、外輪１１の内周面の軸方向両端部には、シール２０を取り付けるためのシール取付溝１１ｂがそれぞれ形成されている。また、内輪１２の外周面の軸方向両端部には、シール溝１２ｂがそれぞれ形成されている。

シール２０は、図１に示すように、一枚の円環板状体を所要の形状に加工してなる芯金２１に、ゴムやエラストマー等の弾性材２２を被覆して成形され、全体が円環板状に形成されている。また、シール２０は、その外周縁部を外輪１１のシール取付溝１１ｂに嵌合することによって、外輪１１の内周面の軸方向端部に支持固定される。

シール２０の弾性材２２の径方向内端部には、径方向内側に延びるシールリップ部２３が形成されている。このシールリップ部２３は、図２に示すように、軸方向内側に延び、内輪１２と非接触の内側リップ２４と、径方向内側に延び、内輪１２のシール溝１２ｂと非接触の中間リップ２５と、中間リップ２５より軸方向外側に位置し、径方向内側に延びて、内輪１２の外周面と非接触の外側リップ２６と、を有し、内輪１２との間でラビリンス構造を形成している。従って、シール２０は、内輪１２に対して非接触である。

中間リップ２５は、軸方向外側且つ径方向内側に向かって斜めに延びる第１リップ２５ａと、軸方向内側に向かって延びる第２リップ２５ｂと、を有する。

そして、図２に示すように、シールリップ部２３の外側リップ２６とシール溝１２ｂの肩部外周面１２ｃとの隙間空間Ａ１の径方向の隙間Ａ、中間リップ２５の第１リップ２５ａとシール溝１２ｂの底面１２ｄとの隙間空間Ｂ１の径方向の隙間Ｂ、及び中間リップ２５の第２リップ２５ｂとシール溝１２ｂの軸方向内側の側面１２ｅとの隙間空間Ｃ１の軸方向の隙間Ｃが、０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍにそれぞれ設定されている。また、この隙間Ａ〜Ｃは、０．０５ｍｍ〜０．４ｍｍに設定されていた方がより好ましい。さらに、隙間Ａ〜Ｃは、隙間Ａ＞隙間Ｂ、且つ、隙間Ａ＞隙間Ｃの関係を満たすように設定されている。

また、中間リップ２５の第１リップ２５ａの軸方向内側面と第２リップ２５ｂの内周面との間には、シール溝１２ｂの軸方向内側の側面１２ｅ及び底面１２ｄと対向して、異物を留める第１ラビリンス空間２７が形成されている。第１ラビリンス空間２７は、ラビリンス構造における隙間空間Ｂ１と隙間空間Ｃ１との間に設けられる。

また、中間リップ２５の第１リップ２５ａ及び首部２５ｃの軸方向外側面、中間リップ２５及び外側リップ２６間の内周面、及び外側リップ２６の軸方向内側面との間には、シール溝１２ｂの軸方向外側の側面１２ｆと対向して、異物を留める第２ラビリンス空間２８が形成されている。第２ラビリンス空間２８は、ラビリンス構造における隙間空間Ａ１と隙間空間Ｂ１との間に設けられる。

そして、第２ラビリンス空間２８は、第１ラビリンス空間２７よりも大きく設定されており、具体的には、第２ラビリンス空間２８は、第１ラビリンス空間２７の２倍〜６倍、好ましくは、３倍〜５倍に設定されている。

また、シール溝１２ｂの軸方向外側の側面１２ｆが、軸方向外側且つ径方向外側に向かって延びる傾斜面に形成されている。さらに、このシール溝１２ｂの軸方向外側の側面１２ｆの径方向外側に、シールリップ部２３の第２ラビリンス空間２８が開口して配置されている。

以上説明したように、本実施形態のシール付き転がり軸受１０によれば、シール２０が内輪１２と非接触であり、シール２０のシールリップ部２３の外側リップ２６とシール溝１２ｂの肩部外周面１２ｃとの隙間Ａ、中間リップ２５の第１リップ２５ａとシール溝１２ｂの底面１２ｄとの隙間Ｂ、及び中間リップ２５の第２リップ２５ｂとシール溝１２ｂの軸方向内側の側面１２ｅとの隙間Ｃが、０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍにそれぞれ設定されるため、軸受の大型化・低効率化を招くことなく、異物の侵入を抑制して、軸受寿命の低下を抑制することができる。

また、本実施形態のシール付き転がり軸受１０によれば、シール溝１２ｂの軸方向外側の側面１２ｆが、軸方向外側且つ径方向外側に向かって延びる傾斜面に形成されるため、内輪１２の回転による遠心力によって異物を排出し、シールリップ部２３の第２ラビリンス空間２８に異物を滞留させて、異物の侵入を抑制することができ、これにより、軸受寿命の低下を更に抑制することができる。

なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、外輪１１のシール取付溝１１ｂと内輪１２のシール溝１２ｂを、それぞれ切削加工により形成した後、研削加工を施してもよい。これにより、各溝の形状及び位置精度が向上して、シール隙間を精度良く設定することができる。
また、本発明のシール２０は、少なくとも潤滑油が流入する軸受の上流側の軸方向端部に取り付けられていればよく、潤滑油が流出する下流側の軸方向端部は、他の構造のシール又はシールを設けない構成とすることもできる。

本発明の作用効果を確認するため、下記表１に示す参考例１、実施例１〜７、及び比較例１〜５の転がり軸受を作成して、それぞれに対して回転試験を行い、軸受寿命と軸受トルクを確認した。転がり軸受については、図１に示す転がり軸受と同構成のものを使用し、シールの隙間Ａ、Ｂを一定に設定し、隙間Ｃの設定のみを変更した。

なお、軸受寿命において、〇は、要求される寿命を満たし、◎は、要求される寿命を十分に満たし、×は、要求される寿命を満たさないことを意味する。また、軸受トルクにおいて、〇は、要求される低トルクを満たし、◎は、要求される低トルクを十分に満たし、×は、要求される低トルクを満たさないことを意味する。

（軸受寿命の条件）
軸受：６０１３相当（内径φ６５ｍｍ×外径φ１００ｍｍ×幅１８ｍｍ）
荷重：０．３８Ｃｒ
回転数：２０００ｍｉｎ−１
潤滑油：ＣＶＴフルード
混入異物：硬さＨｖ８００の鉄系粉（粒径１５０μｍ〜２００μｍ）
潤滑油中に１８０ｐｐｍ混入
（軸受トルクの条件）
軸受：６０１３相当（内径φ６５ｍｍ×外径φ１００ｍｍ×幅１８ｍｍ）
荷重：０．１Ｃｒ
回転数：１５００ｍｉｎ−１
潤滑油：ＣＶＴフルード

表１から明らかなように、実施例１〜７（隙間寸法が０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍ）の場合、軸受寿命が◎又は○で、軸受トルクが全て◎であることから、軸受寿命の低下を抑制することができると共に、軸受の効率低下を抑制することができるとわかった。さらに、実施例１〜５（隙間寸法が０．０５ｍｍ〜０．４ｍｍ）の場合、軸受寿命が全て◎であることから、軸受寿命の低下をより効果的に抑制することができるとわかった。

これに対して、比較例１〜３の場合、軸受寿命が×で、軸受トルクが◎であることから、軸受の効率低下を抑制することができるものの、軸受寿命の低下を抑制することができないことがわかった。また、比較例４、５の場合、軸受寿命が◎で、軸受トルクが×であることから、軸受寿命の低下を抑制することができるものの、軸受の効率低下を抑制することができないことがわかった。

また、参考例１の場合、軸受寿命が◎で、軸受トルクが○であることから、軸受寿命の低下を抑制することができるものの、軸受の効率低下を抑制する効果が若干低くなることがわかった。これは、外輪と内輪との微小相対変位により、シールリップ部の中間リップの第２リップと内輪とが締め代を有した状態で摺接してしまい、軸受トルクが僅かに上昇してしまうためと考えられる。

１０ シール付き転がり軸受
１１ 外輪
１１ａ 外輪軌道面
１２ 内輪
１２ａ 内輪軌道面
１２ｂ シール溝
１２ｃ 肩部外周面
１２ｄ シール溝の底面
１２ｅ シール溝の軸方向内側の側面
１２ｆ シール溝の軸方向外側の側面
１３ 玉（転動体）
２０ シール
２１ 芯金
２２ 弾性材
２３ シールリップ部
２４ 内側リップ
２５ 中間リップ
２５ａ 第１リップ
２５ｂ 第２リップ
２６ 外側リップ
２７ 第１ラビリンス空間
２８ 第２ラビリンス空間
Ａ 隙間
Ｂ 隙間
Ｃ 隙間

Claims (4)

1. 内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の転動体と、前記外輪の軸方向端部に取り付けられるシールと、を備えるシール付き転がり軸受であって、
   前記シールは、前記内輪と非接触であり、
   前記シールと前記内輪との隙間が、０．０５ｍｍ〜０．６ｍｍに設定されることを特徴とするシール付き転がり軸受。
2. 前記内輪の外周面の軸方向端部にシール溝が形成され、
   前記シール溝の軸方向外側の側面が、軸方向外側且つ径方向外側に向かって延びる傾斜面に形成されることを特徴とする請求項１に記載のシール付き転がり軸受。
3. 前記シールの径方向内端部にシールリップ部が形成され、
   前記シールリップ部は、異物を留めるラビリンス空間を有することを特徴とする請求項１又は２に記載のシール付き転がり軸受。
4. 自動車用ベルト式無段変速機で使用される請求項１〜３のいずれか１項に記載のシール付き転がり軸受を使用したベルト式無段変速機。

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