JP2019019161A - インクジェット記録用水性インク - Google Patents

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Abstract

【課題】水性インクの安定性を維持しつつ、印字物がカールすることを防止する。【解決手段】水性インクは、5質量%以上15質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、6質量%以上のジオールと、2質量%以上7質量%未満のグリセリンと、2質量%以上7質量%未満の2−ピロリドンとを含有する。多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである。ジオールは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、及び1、2−ペンタンジオールからなる群より選択される少なくとも1つである。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水性インクに関する。
水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うと、印字後の印刷用紙(印字物)がカールすることがある。印字物がカールすることを防止する方法として、例えば、水性インクにおいて有機溶媒の含有量を多くすることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
特開2010−42544号公報
水性インクにおいて有機溶媒の含有量を多くすると、水性インクの安定性が低下することがある。その結果、吐出不良が起こることがある。本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、インクの安定性を維持しつつ印字物がカールすることを防止可能な水性インクの提供を目的とする。
本発明に係るインクジェット記録用水性インクは、5質量%以上15質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、6質量%以上のジオールと、2質量%以上7質量%未満のグリセリンと、2質量%以上7質量%未満の2−ピロリドンとを含有する。前記多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである。前記ジオールは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、及び1、2−ペンタンジオールからなる群より選択される少なくとも1つである。
本発明に係るインクジェット記録用水性インクによれば、インクの安定性を維持しつつ、印字物がカールすることを防止できる。
本発明の実施形態について説明する。なお、粉体に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製の「Zetasizer nano−ZS(ゼータサイザー ナノZS)」)を用いて測定した値である。
また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
本実施形態に係るインクジェット記録用水性インク(以下、単に「水性インク」と記載することがある)は、記録媒体への記録に好適に用いられる。例えば、本実施形態に係る水性インクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドの吐出面から記録媒体の印字面へ向かって吐出されて、記録媒体に記録される。記録媒体は、印刷用紙であることが好ましい。印刷用紙には、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、及び光沢紙が含まれる。
[水性インクの基本構成]
本実施形態に係る水性インクは、次に示す構成(以下、「基本構成」と記載することがある)を有する。詳しくは、本実施形態に係る水性インクは、5質量%以上15質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、6質量%以上のジオールと、2質量%以上7質量%未満のグリセリンと、2質量%以上7質量%未満の2−ピロリドンとを含有する。多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである。ジオールは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、及び1、2−ペンタンジオールからなる群より選択される少なくとも1つである。
以下、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを「BDG」と記載する。トリエチレングリコールモノブチルエーテルを「BTG」と記載する。BDGとBTGとを区別する必要がない場合には、BDGとBTGとの各々を「特定エーテル」と記載する。多価アルコールアルキルエーテルの種類を特定する必要がない場合には、「エーテル類」と総称する。多価アルコールアルキルエーテルには、多価アルコールモノアルキルエーテルと多価アルコールイソアルキルエーテルとが含まれる。
また、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを「MPD」と記載する。へキシレングリコールを「HD」と記載する。1、2−ペンタンジオールを「PD」と記載する。MPDとHDとPDとを区別する必要がない場合には、MPDとHDとPDとの各々を「特定ジオール」と記載する。ジオールの種類を特定する必要がない場合には、「ジオール類」と記載する。
本実施形態に係る水性インクは、特定エーテルと特定ジオールとを含有する。特定エーテルと特定ジオールとは、各々、水性インクに含有される水(より具体的にはイオン交換水)に比べ、強い疎水性を有する。そのため、印字物がカールすることを防止できる。
また、本実施形態に係る水性インクは、グリセリンと2−ピロリドンとを含有する。グリセリンと2−ピロリドンとは、各々、特定エーテルに比べて強い親水性を有し、特定ジオールに比べて強い親水性を有する。そのため、本実施形態では、水性インクが特定エーテルと特定ジオールとを含有するにも関わらず、水性インクの安定性を維持できる。
一般的に、インクジェット記録装置を用いて印刷用紙に記録を行う場合、環境負荷低減などの観点から水性インクの使用が提案されている。しかし、水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うと、水(水性インクに含有される水)が印刷用紙に吸収されるため、印刷用紙に含まれるセルロース繊維の膨潤(以下、単に「セルロース繊維の膨潤」と記載する)、又はセルロース繊維の分子間水素結合の切断が起こり易い。そのため、印字物では、非印字面から印字面へ向かう方向に突出するカール(凸状カール)が起こり易い(第1の不具合)。
疎水性溶媒を含有する水性インクを用いて印刷用紙に記録を行えば、セルロース繊維の膨潤とセルロース繊維の分子間水素結合の切断とが起こり難いと考えられる。そのため、第1の不具合の発生を防止し易い。ところで、従来、画質の向上を目的として、エーテル類の使用が提案されている。ここで、エーテル類は、水に比べて強い疎水性を有する。そのため、本発明者らは、水性インクにおけるエーテル類の含有量を調整すれば第1の不具合の発生を防止できるのではないか、と考えた。しかし、エーテル類の含有量が多くなるほど、水性インクの安定性が低下した(第2の不具合)。また、第1の不具合の発生を防止可能な程度にまでエーテル類の含有量を増やすと、サテライトの発生が顕著となった(第3の不具合)。ここで、サテライトとは、記録ヘッドから吐出されたインク滴が分裂することを意味する。サテライトが発生すると、印刷用紙において着弾位置ずれが起こり易い。
第2の不具合の発生を防止する方法として、親水性溶媒の使用が考えられる。従来、水性インクに含有される親水性溶媒としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、又は2−ピロリドンが提案されている。しかし、提案されている親水性溶媒のうちの何れか1つを用いても、第2の不具合の発生を防止できなかった。また、エーテル類と親水性溶媒とを併用しただけでは、第3の不具合の発生を防止できなかった。
第3の不具合の発生を防止する方法として、エーテル類でない疎水性溶媒(他の疎水性溶媒)の使用が考えられる。しかし、他の疎水性溶媒として強い疎水性を有する溶媒を使用すると、第2の不具合の発生が顕著となった。
このような検討結果を踏まえ、本発明者らは、さらなる鋭意検討を行った。その結果、水性インクが前述の基本構成を有することで第1〜第3の不具合の発生を防止できることが分かった。
詳しくは、エーテル類は、例えば、一般式R−O−(Cm2mO)nHで表される。ここで、Rは、置換基を有しても良い炭化水素基を表す。また、m及びnは、各々独立に、1以上の整数を表す。エーテル類では、Rの炭素数が多いほど、疎水性が強い傾向にあるが、水に対する溶解度が低下する傾向にある。特定エーテルでは、Rの炭素数が4である。今般、Rの炭素数が4であるエーテル化合物は、疎水性と水溶性という相反する性質を有し易いことが分かった。そのため、特定エーテルは、疎水性と水溶性という相反する性質を有し易い。さらに、特定エーテルでは、mが2である。今般、mが2以下であるエーテル化合物は、mが3以上であるエーテル化合物に比べ、水に溶解し易いことが分かった。このことからも、特定エーテルは、水溶性を有し易い。
同様に、ジオール類では、炭化水素基の炭素数が多いほど、疎水性が強い傾向にあるが、水に対する溶解度が低下する傾向にある。MPD及びHDでは、各々、炭化水素基の炭素数が6であり、PDでは、炭化水素基の炭素数が5である。今般、ジオール類のうち炭化水素基の炭素数が5又は6である化合物は、疎水性と水溶性という相反する性質を有し易いことが分かった。そのため、特定ジオールは、水溶性を有し易い。また、特定ジオールは、疎水性を有し易く、例えば、従来の水性インクに含有されているジオール(例えば、1,3−プロパンジオール、又は1,3−ブタンジオール)に比べて強い疎水性を有する。
以上説明したように、本実施形態に係る水性インクでは、特定エーテルと特定ジオールとが疎水性溶媒として機能し得るため、第1の不具合の発生を防止できる。例えば、特定エーテルの含有量が5質量%以上であり、且つ特定ジオールの含有量が6質量%以上であれば、第1の不具合の発生を防止し易い。第1の不具合の発生を防止できれば、印字物の品質を維持できる。それだけでなく、本実施形態に係る水性インクを用いて両面印刷を行えば、2面目への印字時においても印刷用紙をインクジェット記録装置の搬送ベルトへ吸着させることができる。よって、印字不良を発生させることなく2面目への印字を行うことができる。なお、本発明者らは、水性インクが特定エーテルを含有するが特定ジオールを含有しない場合には第1の不具合の発生を防止できないことを確認している(後述の比較例6参照)。また、本発明者らは、水性インクが特定ジオールを含有するが特定エーテルを含有しない場合には第1の不具合の発生を防止できないことを確認している(後述の比較例1参照)。
また、本実施形態に係る水性インクでは、特定エーテルと特定ジオールとが疎水性溶媒として機能し得るため、特定エーテルの含有量を所定量以下に抑えることができる。例えば、特定エーテルの含有量が15質量%以下であっても、特定ジオールの含有量を調整することで、第1の不具合の発生を防止できる。ここで、特定エーテルの含有量が15質量%以下であれば、水性インクの動的表面張力を適正な範囲に維持し易い。そのため、本実施形態に係る水性インクでは、第3の不具合の発生を防止することもできる。第3の不具合の発生を防止できれば、印刷用紙における着弾位置ずれを防止できるため、画質の低下を防止できる。
また、本実施形態に係る水性インクでは、疎水性溶媒として機能し得る特定エーテル及び特定ジオールが、各々、水に溶解し易い。そのため、本実施形態に係る水性インクがグリセリンと2−ピロリドンとを含有することで、第2の不具合の発生を防止できる。例えば、グリセリンの含有量が2質量%以上であり、且つ2−ピロリドンの含有量が2質量%以上であれば、第2の不具合の発生を防止し易い。さらに、グリセリンは、本実施形態に係る水性インクにおいて、水と特定エーテル及び特定ジオールとの相溶を助ける溶剤として機能し易い、と考えられる。また、2−ピロリドンは、本実施形態に係る水性インクにおいて、特定エーテルと特定ジオールとの相溶を助ける溶剤として機能し易い、と考えられる。これらのことからも、水性インクがグリセリンと2−ピロリドンとを含有することで、第2の不具合の発生を防止し易い。第2の不具合の発生を防止できれば、吐出不良の発生を防止できる。なお、本発明者らは、水性インクがグリセリン及び2−ピロリドンのうちのどちらか一方のみを含有する場合には第2の不具合の発生を防止できないことを確認している(後述の比較例10及び12参照)。以下、水性インクに含有される材料について、具体的に説明する。
[水性インクに含有される材料]
水性インクは、顔料分散体と、水性媒体とを含有する。本実施形態では、水性インクは、特定エーテルと特定ジオールとグリセリンと2−ピロリドンとをさらに含有する。水性インクは、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、及び浸透剤のうちの少なくとも1つをさらに含有してもよい。
<顔料分散体>
顔料分散体は、複数の顔料粒子を含む。顔料粒子は、各々、顔料コアと、被覆樹脂とを含む。
(顔料コア)
顔料コアは、顔料を含有する。顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、又は黒色顔料を使用できる。黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、又は193が挙げられる。橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、又は71が挙げられる。赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド122又は202が挙げられる。青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15又は15:3が挙げられる。紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット19、23、又は33が挙げられる。黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック7が挙げられる。
水性インクにおける顔料コアの含有量は、4質量%以上8質量%以下であることが好ましい。これにより、所望の画像濃度を有する画像が得られ易い。また、記録媒体に対する水性インクの浸透性を確保し易い。顔料コアの含有量が少なすぎると、所望の画像濃度を有する画像が得られないことがある。一方、顔料コアの含有量が多すぎると、記録媒体に対する水性インクの浸透性を確保できないことがある。また、水性インクにおいて顔料粒子の流動性を確保できないことがあるため、所望の画像濃度を有する画像が得られないことがある。
顔料コアの体積中位径(D50)は、30nm以上200nm以下であることが好ましい。これにより、水性インクの色濃度、色相、及び安定性が向上し易い。より好ましくは、顔料コアの体積中位径(D50)が70nm以上130nm以下である。
(被覆樹脂)
被覆樹脂は、顔料コアの表面に設けられる。被覆樹脂は、アニオン性を有することが好ましく、例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、及びビニルナフタレン−マレイン酸共重合体のうちの少なくとも1つであることが好ましい。より好ましくは、被覆樹脂は、スチレン−アクリル酸系樹脂である。被覆樹脂がスチレン−アクリル酸系樹脂であれば、顔料粒子を容易に作製できる。また、顔料コアの分散性を高めることができる。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレンに由来する単位と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルに由来する単位とを含む樹脂である。好ましくは、スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレンとアクリル酸とアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとマレイン酸とアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、及びスチレンとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体のうちの少なくとも1つである。より好ましくは、スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体である。より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとの共重合体である。
被覆樹脂の含有量は、100質量部の顔料コアに対して、15質量部以上100質量部以下であることが好ましい。これにより、記録後の記録媒体において裏抜けが生じることを防止し易い。また、所望の画像濃度を有する画像が得られ易い。被覆樹脂の含有量が少なすぎると、記録後の記録媒体において裏抜けが生じることがある。一方、被覆樹脂の含有量が多すぎると、所望の画像濃度を有する画像が得られないことがある。
<水性媒体>
水性媒体は、水を含有することが好ましく、より好ましくはイオン交換水を含有する。水性インクにおける水の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。これにより、適切な粘度を有する水性インクを提供し易い。例えば、水性媒体は、イオン交換水とグリコールとを含有することが好ましい。水性インクがグリコールを含有すれば、水性インクの乾燥を防止し易い。
<特定エーテル>
水性インクにおける特定エーテルの含有量は、5質量%以上15質量%以下である。水性インクがBDGとBTGとの両方を含有する場合、BDGの含有量とBTGの含有量との合計が5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。特定エーテルの含有量が少なすぎると、セルロース繊維の膨潤を効果的に防止できないことがあり、セルロース繊維の分子間水素結合の切断を効果的に防止できないことがある。そのため、第1の不具合が発生することがある。一方、特定エーテルの含有量が多すぎると、水性インクの動的表面張力が著しく低下することがあるため、水性インクを液滴の状態で吐出させることが難しいことがある(第3の不具合の発生)。特定エーテルの含有量は、好ましくは6質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは6質量%以上13質量%以下である。水性インクが特定エーテルを含有するため、画質が向上するという効果を得ることもできる。
<特定ジオール>
水性インクにおける特定ジオールの含有量は、6質量%以上である。水性インクがMPDとHDとPDとのうちの少なくとも2つを含有する場合、それらの含有量の合計が6質量%以上であることが好ましい。例えば、水性インクがMPDとHDとを含有する場合、MPDの含有量とHDの含有量との合計が6質量%以上であることが好ましい。特定ジオールの含有量が少なすぎると、セルロース繊維の膨潤を効果的に防止できないことがあり、セルロース繊維の分子間水素結合の切断を効果的に防止できないことがある。そのため、第1の不具合が発生することがある。特定ジオールの含有量が多すぎると、水性インクの粘度が高くなることがある。そのため、吐出不良が起こることがある。特定ジオールの含有量は、好ましくは6質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは6質量%以上20質量%以下である。
<グリセリン>
水性インクにおけるグリセリンの含有量は、2質量%以上7質量%未満である。グリセリンの含有量が少なすぎると、水と特定エーテル及び特定ジオールとの相溶を助ける溶剤として機能し難いことがある。そのため、第2の不具合が発生することがある。また、グリセリンの含有量が少なすぎると、水性インクの粘度が低くなることがある。そのため、吐出不良が起こることがある。グリセリンの含有量が多すぎると、セルロース繊維が膨潤することがあり、セルロース繊維の分子間水素結合が切断されることがある。そのため、第1の不具合が発生することがある。グリセリンの含有量は、好ましくは2質量%以上6質量%以下である。
<2−ピロリドン>
水性インクにおける2−ピロリドンの含有量は、2質量%以上7質量%未満である。2−ピロリドンの含有量が少なすぎると、特定エーテルと特定ジオールとの相溶を助ける溶剤として機能し難いことがある。そのため、第2の不具合が発生することがある。また、2−ピロリドンの含有量が少なすぎると、水性インクの粘度が低くなることがある。そのため、吐出不良が起こることがある。2−ピロリドンの含有量が多すぎると、セルロース繊維が膨潤することがあり、セルロース繊維の分子間水素結合が切断されることがある。そのため、第1の不具合が発生することがある。2−ピロリドンの含有量は、好ましくは2質量%以上5質量%以下である。
<界面活性剤>
水性インクが界面活性剤を含有すれば、記録媒体に対する水性インクの濡れ性が向上する。界面活性剤は、ノニオン界面活性剤であることが好ましい。水性インクにおけるノニオン界面活性剤の含有量は、0.05質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。これにより、画像のオフセットを抑制しつつ、画像濃度が向上する。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ノニオン性アクリル樹脂又はそのプレポリマーが挙げられる。ノニオン性アクリル樹脂は、水溶性を有することが好ましく、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体であることが好ましい。親水性モノマーは、例えば、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、又はメタクリル酸エチル(EMA)であることが好ましい。疎水性モノマーは、例えば、アクリル酸n−ブチル(BA)、ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ラウリルアクリレート(LA)、ステアリルアクリレート(SA)、ベンジルアクリレート、又はベンジルメタクリレートであることが好ましい。ノニオン界面活性剤の一例としては、PEGAとMMAとBAとPPGAとLAとの共重合体が挙げられる。
ノニオン界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤であってもよい。市販のアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」が挙げられる。「オルフィンE1010」は、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物を含む。ノニオン性アクリル樹脂又はそのプレポリマーとアセチレングリコール系界面活性剤とが併用されてもよい。
<溶解安定剤>
水性インクが溶解安定剤を含有すれば、水性インクに含まれる成分が相溶し易くなるため、水性インクの溶解状態を安定化できる。溶解安定剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチローラークトンが挙げられる。水性インクにおける溶解安定剤の含有量は、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
<保湿剤>
水性インクが保湿剤を含有すれば、水性インクからの液体成分の揮発を抑制できるため、水性インクの粘性を安定化できる。保湿剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール類、又はアルキレングリコール類が挙げられる。ポリアルキレングリコール類は、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールであることが好ましい。アルキレングリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、又は1,5−ペンタンジオールであることが好ましい。水性インクにおける保湿剤の含有量は、好ましくは2質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上25質量%以下である。
<浸透剤>
水性インクが浸透剤を含有すれば、記録媒体への水性インクの浸透性が向上する。浸透剤としては、例えば、1,2−へキシレングリコール、1,2−オクタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、又は2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。水性インクにおける浸透剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下である。
[水性インクの好ましい製造方法]
まず、被覆樹脂を合成する。詳しくは、所定の溶媒に、重合により被覆樹脂を合成可能なモノマー又はプレポリマーと、重合開始剤とを加え、所定の温度で加熱還流を行う。このようにして、被覆樹脂が合成される。より具体的には、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンとの混合液に、スチレンと、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、重合開始剤とを加え、70℃で加熱還流を行う。これにより、スチレン−アクリル酸系樹脂が合成される。
次に、メディア型分散機を用いて、合成された樹脂と、顔料コアと、水性媒体とを混練する。このようにして、多数の顔料粒子を含む顔料分散液を得る。メディア型分散機で用いるメディアの粒子径(例えば、ビーズの径)を変えることで、顔料粒子の分散度合、顔料分散液に遊離する樹脂の量、又は顔料粒子の粒子径を調整できる。例えば、メディアの粒子径を小さくするほど、顔料粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。
得られた顔料分散液と、他のインク成分とを混合する。攪拌機(例えば、新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標) BL−600」)を用いて、顔料分散液と他のインク成分とを混合することが好ましい。他のインク成分は、特定エーテルと特定ジオールとグリセリンと2−ピロリドンとを含む。他のインク成分は、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、及び浸透剤のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。顔料分散液と他のインク成分とを混合した後、必要に応じてろ過を行う。このようにして、水性インクが得られる。
本発明の実施例を説明する。なお、複数の粒子を含む粉体に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。
評価1〜6では、実施例及び比較例に係る水性インクを用いて、カール量と画像濃度とサテライトの発生の有無と水性インクの粘度の変化率とを評価した。評価1〜6では、水性インクの構成は異なるが、水性インクの製造方法は共通する。また、評価1〜6では、水性インクの評価方法が共通する。そのため、以下では、まず、水性インクの製造方法のうち評価1〜6で共通する部分と、水性インクの評価方法とを説明する。次に、評価1〜6を順に説明する。
[水性インクの製造方法のうち、評価1〜6で共通する部分]
<被覆樹脂Aの合成>
まず、被覆樹脂A(以下、単に「樹脂A」と記載する)を合成した。詳しくは、四つ口フラスコ(容量:1000mL)に、スターラーと、窒素導入管と、コンデンサー(攪拌機)と、滴下ロートとをセットした。次に、フラスコに、100gのイソプロピルアルコールと300gのメチルエチルケトンとを入れた。フラスコの内容物に窒素をバブリングしながら、70℃で加熱還流を行った。
また、40.0gのスチレンと、10.0gのメタクリル酸と、40.0gのメタクリル酸メチルと、10.0gのアクリル酸n−ブチルと、0.4gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)とを混合して、モノマー溶液を得た。70℃で加熱還流した状態で、約2時間かけて、モノマー溶液をフラスコに滴下した。滴下後、さらに6時間、70℃で加熱還流を行った。
0.2gのAIBNを含有するメチルエチルケトン溶液を、15分かけて、フラスコに滴下した。滴下後、さらに5時間、70℃で加熱還流を行った。このようにして、樹脂A(スチレン−アクリル酸系樹脂)を得た。得られた樹脂Aでは、質量平均分子量(Mw)が20000であり、酸価が100mgKOH/gであった。
樹脂Aの質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC−8020GPC」)を用いて、下記条件で、測定された。
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
なお、検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンから、F−40、F−20、F−4、F−1、A−5000、A−2500、及びA−1000の7種とn−プロピルベンゼンとを選択して作成された。
また、樹脂Aの酸価は、「JIS(日本工業規格)K0070−1992(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)」に記載の方法に準拠して、求められた。
<顔料分散液Lの調製>
樹脂Aを用いて、顔料分散液Lを調製した。表1に、顔料分散液Lの構成を示す。表1において、「樹脂A−Na」は、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で中和された樹脂Aを意味する。また、「ノニオン界面活性剤S1」は、日信化学工業株式会社製「オルフィンE1010」を意味する。
Figure 2019019161
詳しくは、メディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB社)製「ダイノミル」)のベッセル(容量:0.6L)に、6.0質量%の樹脂Aと、15.0質量%のフタロシアニンブルー15:3(東洋インキ株式会社製「リオノール(登録商標)ブルーFG−7330」)と、0.5質量%のノニオン界面活性剤S1(日信化学工業株式会社製「オルフィンE1010」)と、イオン交換水(残量)とを入れた。
また、樹脂Aの中和に必要な量の水酸化ナトリウム水溶液をベッセルに加えた。ここで、ベッセルの内容物のpHが8になるように、NaOH水溶液をベッセルに加えた。より具体的には、中和当量の1.1倍の質量のNaOH水溶液をベッセルに加えた。なお、顔料分散液Lを構成する材料の配合量を決定する際には、ベッセルに加えるべきNaの質量を樹脂Aの質量に加えた。また、NaOH水溶液に含まれる水の質量と中和反応で生じた水の質量とをイオン交換水の質量に加えた。
充填量がベッセルの容量に対して70体積%となるように、メディア(径が0.5mmのジルコニアビーズ)をベッセルに充填した。温度が10℃であり且つ周速が8m/秒である条件でベッセルを水冷しながら、顔料粒子の体積中位径(D50)が70nm以上130nm以下の範囲に入るようにメディア型分散機を用いてベッセルの内容物を混練した。このようにして、顔料分散液Lが得られた。
<顔料分散液Lと他のインク成分との混合>
顔料分散液Lと他のインク成分とを混合した。表2に、水性インクの組成を示す。詳しくは、表2に記載の材料を表2に記載の配合量でビーカーに入れた。攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL−600」)を用いてビーカーの内容物を回転速度400rpmで攪拌して、ビーカーの内容物を均一に混合した。フィルター(孔径5μm)を用いて混合液をろ過し、混合液に含有される異物及び粗大粒子を除去した。このようにして、水性インクを得た。なお、エーテルX、ジオールY、及び配合量Z1〜Z4については、各々、評価1〜6で示す。
Figure 2019019161
以下に示すモノマー溶液を用いたことを除いては樹脂Aの合成方法に従い、表2におけるノニオン界面活性剤S2を合成した。詳しくは、60gのポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)と、10gのアクリル酸n−ブチル(BA)と、10gのポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)と、12gのラウリルアクリレート(LA)と、8gのメタクリル酸メチル(MMA)と、0.4gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)とを混合して、ノニオン界面活性剤S2の合成に使用したモノマー溶液を調製した。
樹脂Aの質量平均分子量の測定方法に従ってノニオン界面活性剤S2の質量平均分子量を測定したところ、5000であった。また、ノニオン界面活性剤S2の水溶液(濃度:0.1質量%)を用いて表面張力を測定したところ、30.5mN/mであった。また、ノニオン界面活性剤S2は、イオン交換水に溶解可能であった。
[評価方法]
カール量の評価と画像濃度の評価とサテライトの発生の有無の評価とでは、同一の評価機を用いた。以下では、評価機の準備方法を説明した後、各々の評価方法を説明する。
<評価機の準備>
インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作評価機)の4つの記録ヘッド(それぞれラインヘッド)の各々に、水性インク(評価対象)を充填した。インク一滴あたりのインクの吐出量が11pLになるように、水性インクの吐出条件を設定した。また、搬送ベルトの吸引ユニットが発生させる負圧を0.6KPaとした。このようにして、評価機を準備した。
なお、記録ヘッドは、各々、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のインクジェットヘッド(型番:KJ4B−QA、インク一滴あたりのインクの吐出量:11pL)であった。また、記録ヘッドは、その長手方向が紙の搬送方向に直交するように、間隔20mmで配列されていた。
<カール量の評価>
温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で、評価機を用いて、A4サイズの普通紙(PPC用紙、富士ゼロックス株式会社製の「C2」)の片面の中央に、10cmの角のソリッド画像を記録した。なお、水性インクの種類が異なっても、記録条件を変更しなかった。
普通紙の印字面が下を向くように、普通紙を水平な台の上に静置した。ソリッド画像の記録から15秒が経過した時点で、普通紙が静置された台の面を基準として普通紙の四隅の高さを測定した。普通紙の四隅の高さの平均値を評価値とした。評価値が20mm以下であれば、印字物がカールし難い(良好)と評価した。評価値が20mm超であれば、印字物がカールし易い(不良)と評価した。
良好:普通紙の四隅の高さの平均値が20mm以下であった。
不良:普通紙の四隅の高さの平均値が20mm超であった。
普通紙の四隅の高さの平均値が20mm以下であれば、2面目への印字時においても、吸引ユニット(負圧:0.6KPa)とデカール機構とによって普通紙が搬送ベルトへ吸着され易い。そのため、普通紙の四隅の高さの平均値が20mm以下であれば印字物がカールし難い(良好)と評価した。
<画像濃度の評価>
温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で、評価機を用いて、A4サイズの普通紙(PPC用紙、富士ゼロックス株式会社製の「C2」)に、10cmの角のソリッド画像(印字率:100%)を記録した。なお、水性インクの種類が異なっても、記録条件を変更しなかった。
画像が記録された普通紙を、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で24時間静置した。その後、反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社販売「RD−19」)を用いて、同一画像内の10箇所の画像濃度を測定した。10個の画像濃度の平均値を評価値とした。
良好:画像濃度の平均値が1.10以上であった。
不良:画像濃度の平均値が1.10未満であった。
<サテライトの発生の有無の評価>
評価機において、インク一滴あたりのインクの吐出量が8pLになるように、水性インクの吐出条件を設定した。その後、評価機を用いて、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で、光沢紙(セイコーエプソン株式会社製「エプソン純正写真用紙<光沢>」)に、1列のドット列を記録した。水性インクの種類が異なっても、記録条件を変更しなかった。得られたドット列を目視で確認し、インク滴の分裂(分滴)が発生していないか否かを確認した。分滴が確認されなければ、サテライトの発生が抑制された(良好)と評価した。分滴が確認されれば、サテライトが発生した(不良)と評価した。
良好:光沢紙において分滴が確認されなかった。
不良:光沢紙において分滴が確認された。
<水性インクの粘度の変化率の評価>
まず、「JIS Z 8803:2011(液体の粘度測定方法)」に記載の方法に準拠して、25℃における水性インクの粘度を測定した。このようにして、初期の粘度を求めた。
次に、水性インクをポリエチレン製容器に入れて密閉した。密閉された容器を恒温槽(設定温度:60℃)に1週間静置した。水性インクを恒温槽から取り出して室温(約25℃)まで冷却した。その後、「JIS Z 8803:2011(液体の粘度測定方法)」に記載の方法に準拠して、25℃における水性インクの粘度を測定した。このようにして、保存後の粘度を求めた。下記式に基づいて、水性インクの粘度の変化率を算出した。水性インクの粘度の変化率を評価値とした。評価値が1.1未満であれば、水性インクの安定性の低下が抑制された(良好)と評価した。評価値が1.1以上であれば、水性インクの安定性が低下した(不良)と評価した。
水性インクの粘度の変化率=保存後の粘度/初期の粘度
良好:水性インクの粘度の変化率が1.1未満であった。
不良:水性インクの粘度の変化率が1.1以上であった。
[評価1]
評価1では、水性インクB−11〜B−15を評価した。表3に、水性インクB−11〜B−15の各々の構成及び評価結果を示す。表3において、配合量の単位は何れも質量%である。「カール量」には、普通紙の四隅の高さの平均値を記す。「サテライト」には、光沢紙において分滴が確認されなかったか否かを記す。光沢紙において分滴が確認されなかった場合には「無」と記す。「粘度の変化率」には、水性インクの粘度の変化率を記す。表4に、エーテルXの材料及び物性を示す。
Figure 2019019161
Figure 2019019161
水性インクB−11〜B−15では、エーテルXの材料が互いに異なる。詳しくは、水性インクB−11はBDGを含有し、水性インクB−12はBTGを含有していた。しかし、水性インクB−13は、エーテル類を含有していなかった。また、水性インクB−14はEDGを含有し、水性インクB−15はiPDGを含有していた。水性インクB−11〜B−15(水性インクB−13を除く)において、エーテルXの配合量は、互いに同一であり、具体的には8.0質量%であった。水性インクB−11〜B−15は、各々、7.0質量%のMPDと、6.0質量%のグリセリンと、2.5質量%の2−ピロリドンとを、さらに含有していた。なお、本発明者らは、水性インクB−13においてMPDの配合量を多くしても、普通紙の四隅の高さの平均値が20mmを超えたことを確認している。
[評価2]
評価2では、水性インクB−21〜B−25を評価した。表5に、水性インクB−21〜B−25の各々の構成及び評価結果を示す。表5において、配合量の単位は何れも質量%である。「カール量」には、普通紙の四隅の高さの平均値を記す。「サテライト」には、光沢紙において分滴が確認されなかったか否かを記す。光沢紙において分滴が確認されなかった場合には「無」と記す。光沢紙において分滴が確認された場合には「有」と記す。「粘度の変化率」には、水性インクの粘度の変化率を記す。
Figure 2019019161
水性インクB−21〜B−25では、BTGの配合量が互いに異なる。詳しくは、水性インクB−21〜B−23では、各々、BTGの配合量が5.0質量%以上15.0質量%以下であった。しかし、水性インクB−24では、BTGの配合量が5.0質量%未満であった。また、水性インクB−25では、BTGの配合量が15.0質量%超であった。水性インクB−21〜B−25は、各々、7.0質量%のMPDと、6.0質量%のグリセリンと、2.5質量%の2−ピロリドンとを、さらに含有していた。なお、水性インクB−22のインク組成は、水性インクB−12のインク組成と同一であった。
[評価3]
評価3では、水性インクB−31〜B−35を評価した。表6に、水性インクB−31〜B−35の各々の構成及び評価結果を示す。表6において、配合量の単位は何れも質量%である。「カール量」には、普通紙の四隅の高さの平均値を記す。「サテライト」には、光沢紙において分滴が確認されなかったか否かを記す。光沢紙において分滴が確認されなかった場合には「無」と記す。「粘度の変化率」には、水性インクの粘度の変化率を記す。表7に、ジオールYの材料及び物性を示す。
Figure 2019019161
Figure 2019019161
水性インクB−31〜B−35では、ジオールYの材料が互いに異なる。詳しくは、水性インクB−31はMPDを含有し、水性インクB−32はHDを含有し、水性インクB−33はPDを含有していた。しかし、水性インクB−34は、ジオール類(1,2−オクタンジオールを除く)を含有していなかった。また、水性インクB−35はBGを含有していた。水性インクB−31〜B−35(水性インクB−34を除く)において、ジオールYの配合量は、互いに同一であり、具体的には10.0質量%であった。水性インクB−31〜B−35は、各々、7.0質量%のBTGと、6.0質量%のグリセリンと、2.5質量%の2−ピロリドンとを、さらに含有していた。なお、本発明者らは、水性インクB−34においてBTGの配合量を多くしても、普通紙の四隅の高さの平均値が20mmを超えたことを確認している。
[評価4]
評価4では、水性インクB−41〜B−46を評価した。表8に、水性インクB−41〜B−46の各々の構成及び評価結果を示す。表8において、配合量の単位は何れも質量%である。「カール量」には、普通紙の四隅の高さの平均値を記す。「サテライト」には、光沢紙において分滴が確認されなかったか否かを記す。光沢紙において分滴が確認されなかった場合には「無」と記す。「粘度の変化率」には、水性インクの粘度の変化率を記す。
Figure 2019019161
水性インクB−41〜B−46では、MPDの配合量が互いに異なる。詳しくは、水性インクB−41〜B−44では、各々、MPDの配合量が6.0質量%以上であった。しかし、水性インクB−45及びB−46では、各々、MPDの配合量が6.0質量%未満であった。水性インクB−41〜B−46は、各々、7.0質量%のBTGと、6.0質量%のグリセリンと、2.5質量%の2−ピロリドンとを、さらに含有していた。なお、水性インクB−42のインク組成は、水性インクB−31のインク組成と同一であった。
[評価5]
評価5では、水性インクB−51〜B−54を評価した。表9に、水性インクB−51〜B−54の各々の構成及び評価結果を示す。表9において、配合量の単位は何れも質量%である。「カール量」には、普通紙の四隅の高さの平均値を記す。「サテライト」には、光沢紙において分滴が確認されなかったか否かを記す。光沢紙において分滴が確認されなかった場合には「無」と記す。「粘度の変化率」には、水性インクの粘度の変化率を記す。
Figure 2019019161
水性インクB−51〜B−54では、グリセリンの配合量が互いに異なる。詳しくは、水性インクB−51及びB−52では、各々、グリセリンの配合量が2.0質量%以上7.0質量%未満であった。しかし、水性インクB−53は、グリセリンを含有していなかった。また、水性インクB−54では、グリセリンの配合量が7.0質量%であった。水性インクB−51〜B−54は、各々、10.0質量%のBTGと、7.0質量%のMPDと、2.5質量%の2−ピロリドンとを、さらに含有していた。なお、本発明者らは、水性インクB−53において2−ピロリドンの配合量を多くしても、水性インクの粘度の変化率が1.1以上となったことを確認している。
[評価6]
評価6では、水性インクB−61〜B−64を評価した。表10に、水性インクB−61〜B−64の各々の構成及び評価結果を示す。表10において、配合量の単位は何れも質量%である。「カール量」には、普通紙の四隅の高さの平均値を記す。「サテライト」には、光沢紙において分滴が確認されなかったか否かを記す。光沢紙において分滴が確認されなかった場合には「無」と記す。「粘度の変化率」には、水性インクの粘度の変化率を記す。
Figure 2019019161
水性インクB−61〜B−64では、2−ピロリドンの配合量が互いに異なる。詳しくは、水性インクB−61及びB−62では、各々、2−ピロリドンの配合量が2.0質量%以上7.0質量%未満であった。しかし、水性インクB−63は、2−ピロリドンを含有していなかった。また、水性インクB−64では、2−ピロリドンの配合量が7.0質量%であった。水性インクB−61〜B−64は、各々、10.0質量%のBTGと、7.0質量%のMPDと、3.0質量%のグリセリンとを、さらに含有していた。なお、本発明者らは、水性インクB−63においてグリセリンの配合量を多くしても、水性インクの粘度の変化率が1.1以上となったことを確認している。
[考察]
上記評価1〜6より、実施例1〜14に係る水性インクは、各々、前述の基本構成を有していた。詳しくは、実施例1〜14に係る水性インクは、各々、5質量%以上15質量%以下の特定エーテルと、6質量%以上の特定ジオールと、2質量%以上7質量%未満のグリセリンと、2質量%以上7質量%未満の2−ピロリドンとを含有していた。これにより、実施例1〜14に係る水性インクを用いて印刷用紙に記録を行えば、各々、印字物がカールし難く、サテライトの発生を防止でき、さらには所望とする画像濃度を有する画像を得ることができた。また、実施例1〜14に係る水性インクでは、各々、粘度の変化率を低く抑えることができた。
本発明に係る水性インクは、例えばカラープリンターにおいて画像の記録に用いることに適している。


Claims (4)

  1. 5質量%以上15質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、
    6質量%以上のジオールと、
    2質量%以上7質量%未満のグリセリンと、
    2質量%以上7質量%未満の2−ピロリドンとを含有し、
    前記多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであり、
    前記ジオールは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、及び1、2−ペンタンジオールからなる群より選択される少なくとも1つである、インクジェット記録用水性インク。
  2. 前記ジオールの含有量が25質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク。
  3. 前記グリセリンの含有量が6質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水性インク。
  4. 前記2−ピロリドンの含有量が5質量%以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
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