JP2019019017A - 球状シリカエアロゲル、その製造方法、及び、その用途 - Google Patents
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Description
BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、
レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が20μmを越え200μm以下であり、
画像解析法により求めた平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状シリカエアロゲルである。
平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、当該球状シリカエアロゲルを構成する個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。
球状シリカエアロゲルが疎水化処理されている場合のM値は20〜70vol%であって、好ましくは、30〜60vol%であり、より好ましくは、40〜60vol%である。
また、界面活性剤の残存量が上記範囲を超えて少なくなると、球状シリカエアロゲルの分散性が低下する傾向があり、例えば断熱塗料用の添加剤とする用途においては、系内に十分に分散できず、熱架橋が起こり断熱性が低下する場合がある。
(1)水性シリカゾルを調製する工程(水性シリカゾル調整工程S1);
(2)該水性シリカゾルをW相とする、W/O型エマルションを形成する工程(エマルション形成工程S2);
(3)前記シリカゾルを加熱によりゲル化させて、前記W/O型エマルションをゲル化体の分散液とする工程(ゲル化工程S3);
(4)O相とW相の2層に分離させる工程(W相分離工程S4);
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程(W相回収工程S5);
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程(シリル化処理工程S6);
(7)疎水性有機溶媒でゲル化体を抽出する工程(ゲル化体抽出工程S7) ;
(8)ゲル化体を回収する工程(ゲル化体回収工程S8);
を上記順に含んでなることを特徴とする球状シリカエアロゲルの製造方法である。
水性シリカゾル調整工程S1(以下、「S1」と略記することがある。)は、水性シリカゾルの公知の調整方法を適宜選択して実施すればよい。代表的な水性シリカゾルの調製方法としては、原料としてケイ酸アルカリ金属塩等を使用する方法や、アルコキシシランを加水分解する方法が挙げられる。
m(M2O)・n(SiO2) (3)
[式(3)中、m及びnはそれぞれ独立に正の整数を表し、Mはアルカリ金属原子を示す。]
上記のシリカゾル作製原料のなかでも、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムが好適である。以下、シリカゾル作成の原料としてケイ酸ナトリウムを用い、球状シリカエアロゲルとしてシリカを製造する形態を代表例として説明するが、他の原料を用いた場合でも、公知の方法で水性シリカゾルの作製及びゲル化を行うことにより、同様にして本発明の球状シリカエアロゲルを得ることができる。
エマルション形成工程S2(以下、単に「S2」ということがある。)は、S1によって得た水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/Oエマルションを形成する工程である。すなわち、上記水性シリカゾルを分散質、疎水性有機溶媒を分散媒としてエマルションを形成させる。このようなW/Oエマルションを形成することにより、分散質であるシリカゾルは表面張力等により球状になるので、該球状形状で疎水性溶媒中に分散しているシリカゾルをゲル化させることにより、球状のゲル化体を得ることができる。また、このように、W/Oエマルションを形成するエマルション形成工程S2を経ることにより、0.8以上の高い円形度を有するエアロゲルを製造することが可能になる。
(ゲル化工程S3)
ゲル化工程S3(以下、「S3」と略記することがある。)は、上記S2におけるW/Oエマルションの形成に引き続き、水性シリカゾルの液滴が疎水性有機溶媒中に分散している状態において水性シリカゾルをゲル化させる工程である。当該工程では、ゲル化が終了するまでの間、S2で形成されたエマルジョンの分散状態が維持されることが好ましく、具体的には、前記S2工程でエマルションを形成する時と同様に回転翼を有するミキサーを用いて撹拌を継続しながらゲル化させることが好ましい。これにより、ゲル化が終了するまでの間エマルションの分散状態を維持することが容易である。
W相分離工程S4(以下、「S4」と略記することがある。)においては、前記分散溶媒をO相とW相に分離するものであり、一般的には解乳とも呼ばれている操作である。上記工程より得たゲル化体は、分離して得られたW相側に存在している。
上記S4工程の後には、ゲル化体熟成工程S4’(以下、「S4’」と略記することがある。)を実施して、前述の操作によってゲル化した後、ゲルの熟成を行うのが好ましい。
W相回収工程S5(以下、「S5」と略記することがある。)においては、前記W相の回収を行う。引き続き行われるゲル化体のシリル化処理の処理効率を向上させるため、上記S4で得られたO相とW相の分離溶媒から、例えばデカンテーション等でO相を除去し、W相を回収することができる。
シリル化処理工程S6(シリル化処理工程S6。以下単に「S6」と略記することがある。)においては、上記W相回収工程S5の後にシリル化剤を用いてゲル化体をシリル化処理する。シリル化処理に得られる球状シリカエアロゲルは疎水性を呈するものになり、後に施される、ゲル化体回収工程S7で、該ゲル化体を乾燥する際に収縮が抑制されて、エアロゲルとしての多孔質な構造を保持した粉体を得ることを可能にさせる。
M−OH (4)
[式(4)中、Mは金属原子を表す。式(4)においてはMの残りの原子価は省略されている。]
と反応し、これを
(M−O−)(4−n)SiRn (5)
[式(5)中、nは1〜3の整数であり、Rは炭化水素基であり、nが2以上である場合には、複数のRは同一でも相互に異なっていてもよい。]へと変換することが可能なシリル化剤を一例として挙げることができる。
RnSiX(4−n) (6)
[式(6)中、nは1〜3の整数を表し;Rは炭化水素基等の疎水基を表し;Xはヒドロキシ基を有する化合物との反応においてSi原子との結合が開裂して分子から脱離可能な基(脱離基)を表す。nが2以上のとき複数のRは同一でも異なっていてもよい。また、nが2以下のとき複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
[式(7)中、R1はアルキレン基を表し;R2及びR3は各々独立に炭化水素基を表し;R4及びR5は各々独立に水素原子又は炭化水素基を表す。]
[式(8)中、R6及びR7は各々独立に炭化水素基を表し、mは3〜6の整数を表す。複数のR6は同一でも異なっていてもよい。また、複数のR7は同一でも異なっていてもよい。]
上記式(6)において、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基である。
(M−O−)2SiR2 (9)
という結合が生じることになる。また、nが3であれば:
M−O−SiR3 (10)
という結合が生じることになる。このようにヒドロキシ基がシリル化されることにより、シリル化処理がなされる。
(M−O−)2SiR2R3 (11)
という結合が生じることになる。このように上記式(7)の環状シラザン類によっても、ヒドロキシ基がシリル化され、シリル化処理がなされる。
(M−O−)2SiR6R7 (12)
という結合が生じることになる。このように上記式(8)の環状シロキサン類によっても、ヒドロキシ基がシリル化され、シリル化処理がなされる。
ゲル化体抽出工程S7(以下、「S7」と略記することがある。)においては、上記S7におけるシリル化処理の後にゲル化体を疎水性有機溶媒中に抽出する。ゲル化体抽出に用いる疎水性有機溶媒の選定基準としては、後の乾燥工程の際、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。具体的にはヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等を用いることができ、好適にはヘキサン、ヘプタン、トルエンを用いることが出来る。
ゲル化体回収工程S8(以下、「S8」と略記することがある。)においては、上記S8におけるゲル化体抽出工程において得られた疎水性有機溶媒に分散しているゲルを濾別し、疎水性有機溶媒を除去(すなわち乾燥)する。乾燥する際の温度は、溶媒の沸点以上で、表面処理剤の分解温度以下であることが好ましく、圧力は常圧ないし減圧下で行うことが好ましい。
本発明の疎水性シリカエアロゲルは、適度な粒度分布を有しているため、特許文献4、5、6の粒子と組み合わせてバインダーへ混合した場合、エアロゲル粒子の充填率が高く、断熱性能の高い断熱材が得られる。従って、幅広い用途に好適に用いることができるが、特には、下記詳述するように、断熱塗料、断熱シート等の断熱性付与剤、化粧品用添加剤、として適している。
本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として樹脂や塗料に充填して用いる場合、基材となるものが、シリカエアロゲルの細孔構造を埋没、あるいは、破壊しないことが好ましい。
本発明の球状シリカエアロゲルは、化粧品用添加剤として好適に用いることができる。たとえば、ファンデーションの添加剤として使用した場合には、適度な粒径及び比表面積を有するため、外観保持性に優れ、滑らかな触感が得られる。加えて、シリカエアロゲルの一般的な性質として吸油量が高く、皮膚及び頭皮表面の脂分を効率良く吸収するため、テカリ防止性に優れる。また、疎水性を呈し汗をはじく効果もあることから、上記ファンデーション以外の、ペースト、クリームタイプのメイクアップ・スキンケア化粧料、さらにはデオドラント用品、整髪料などの化粧品としても好適に用いることができる。
本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として樹脂や塗料に充填して用いる場合、基材となるものが、シリカエアロゲルの細孔構造を埋没、あるいは、破壊しないことが好ましい。
本発明の球状シリカエアロゲルは、化粧品用添加剤として好適に用いることができる。たとえば、ファンデーションの添加剤として使用した場合には、適度な粒度分布及び比表面積を有するため、外観保持性に優れ、滑らかな触感が得られる。加えて、シリカエアロゲルの一般的な性質として吸油量が高く、皮膚及び頭皮表面の脂分を効率良く吸収するため、テカリ防止性に優れる。また、疎水性を呈し汗をはじく効果もあることから、上記ファンデーション以外の、ペースト、クリームタイプのメイクアップ・スキンケア化粧料、さらにはデオドラント用品、整髪料などの化粧品としても好適に用いることができる。
本発明の球状シリカエアロゲルは、艶消し剤として使用した場合、D10/D90が小さく、すなわち、ブロードな粒度分布を有する為、塗膜中への充填率が高く、よって、良好な艶消し性を得ることができる。
艶消し剤として使用する場合には、通常、本発明の球状シリカエアロゲルを有機樹脂に分散させて使用する。
紫外線(UV)硬化型塗料としては、ハイソリッドレジン、例えばUV硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
粉体塗料としてはポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、セルロース誘導体、ポリエーテル、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂の他、エポキシ樹脂、エポキシ/ノボラック樹脂、イソシアネート或いはエポキシ硬化型ポリエステル樹脂等が挙げられる。
本発明の球状シリカエアロゲルは、薬物担体として好適に用いることができる。具体的には、薬物を球状シリカエアロゲルに含ませることで、生体内でさらに長時間継続して当該薬物を徐々に放出することができる。したがって、薬効持続時間を長く維持することができる。
実施例1〜5で製造した球状シリカエアロゲルに対して、以下の項目について試験を行った。
2000個以上の球状シリカエアロゲルについてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S−5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率100倍で観察したSEM像を画像解析し、前述の定義に従って平均円形度を算出した。
(レーザー回折・散乱法による粒度分布、メジアン径の測定)
粒度分布、メジアン径の測定は、前述の定義に従って、堀場製作所製LA−950V2にて測定を行った。
(比表面積、細孔容積及び吸油量)
BET比表面積、及びBJH細孔容積の測定は、上述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP−miniにより行った。
(その他の物性値の測定)
熱伝導率の測定は、京都電子工業株式会社製迅速熱伝導率計QTM―500により行った。
(S1:水性シリカゾル調整工程)
硫酸(濃度9.2g/100mL)100gを撹拌羽根で撹拌しながら、珪酸ソーダ(濃度SiO2 19.1g/100mL、Na2O 6.2g/100mL、SiO2モル/Na2Oモル=3.2)100gを徐々に添加し、水性シリカゾルを調整した。このとき、pHは3.0であった。
0.5Lの4枚傾斜パドル翼の回転翼が設置された装置に、S1で調整した水性シリカゾル108gを分取し、160gのヘプタンを加え、ソルビタンモノオレエートを0.8g添加した。この溶液を20℃に冷却し周速57m/sで15分撹拌することでW/Oエマルションを形成した。
得られたエマルションを撹拌羽で撹拌しながら、70℃で1時間かけてゲル化した。
イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加えて、撹拌羽で撹拌しながらO相とW相を分離した。続けて、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を2g添加した。このとき、W相のpHは5.0であった。
70℃、2.5時間かけて、ゲル化体の熟成を行った。
デカンテーションにより、O相を除去することで、W相を回収した。
得られたW相に35%塩酸を17g、ヘキサメチルジシロキサンを12g添加し、撹拌しながら70℃で12時間保持することにより、シリル化処理を行った。
シリル化処理後、撹拌羽で撹拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を12.6g添加し、中和処理を行った。続いて、ヘプタン100gを加え、ゲル化体を抽出し、イオン交換水100gで2回洗浄を行った。
得られたシリル化後のゲル化体を吸引濾過機により濾別した。ゲル化体の乾燥を真空圧力下、150℃で16時間以上加熱することで、本発明の球状シリカエアロゲルを得た。
エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
S2において、W/Oエマルションを形成する際の撹拌時間を60分にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
S2において、W/Oエマルションを形成する際の撹拌速度を周速94m/sとし、撹拌時間を60分にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
S2において、W/Oエマルションを形成する際の撹拌速度を周速170m/sとし、撹拌時間を60分にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
(S1:水性シリカゾル調整工程)
硫酸(濃度9.2g/100mL)200kgを撹拌羽根で撹拌しながら、珪酸ソーダ(濃度SiO2 19.1g/100mL、Na2O 6.2g/100mL、SiO2モル/Na2Oモル=3.2)200kgを徐々に添加し、水性シリカゾルを調整した。このとき、pHは3.0であった。
1.5m3の3枚後退翼の回転翼が設置された装置に、S1で調整した水性シリカゾル324kgを分取し、480kgのヘプタンを加え、ソルビタンモノオレエートを2.4kg添加した。この溶液を20℃に冷却し周速109m/sで60分撹拌してW/Oエマルションを形成した。
S2で形成したW/Oエマルションを268.8g分取し、以後の操作は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
Claims (7)
- BET法による比表面積が300〜1000m2/gであり、
BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、
レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が20μmを越え200μm以下であり、
画像解析法により求めた平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状シリカエアロゲル。 - 体積基準累積10%径(D10)と体積基準累積90%径(D90)との比(D10/D90)が0.1〜0.5であることを特徴とする請求項1記載の球状シリカエアロゲル。
- (1)水性シリカゾルを調製する工程
(2)上記水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/O型エマルションを形成させる工程であって、該水性シリカゾルの分散を、回転翼を有するミキサーを用いて行うW/O型エマルション形成工程
(3)前記シリカゾルをゲル化させて、前記W/O型エマルションをゲル化体の分散液とする工程
(4)O相とW相の2層に分離させる工程
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
(6)該分散液にシリル化剤を添加してゲル化体を疎水化する工程
(7)疎水性有機溶媒でゲル化体を抽出する工程
(8)ゲル化体を回収する工程
を上記順に含んでなることを特徴とする球状シリカエアロゲルの製造方法。 - (2)W/O型エマルション形成工程において、回転翼を有するミキサーにおける撹拌条件である回転翼の周速が30m/s〜400m/s、撹拌時間が5〜180分として、水性シリカゾルの疎水性有機溶媒中への分散を実施する、請求項3記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
- (2)W/O型エマルション形成工程において、疎水性有機溶媒と水性シリカゾルの液温が夫々5〜20℃である、請求項3または請求項4記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
- 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる断熱性付与剤。
- 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる化粧品用添加剤。
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