JP2019019017A - 球状シリカエアロゲル、その製造方法、及び、その用途 - Google Patents

球状シリカエアロゲル、その製造方法、及び、その用途 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、良好な球形性状を有するシリカエアロゲルにおいて、D50径が20μmを越え200μm以下のものを得ることである。【解決手段】本発明は、BET法による比表面積が300〜1000m2/gであり、BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が20μmを越え200μm以下であり、画像解析法により求めた平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状シリカエアロゲルである。【選択図】図1

Description

本発明は、球状シリカエアロゲル、詳しくは粒子のD50径が20μmを越え200μm以下の球状シリカエアロゲル、及びその製造方法に関する。
近年、地球環境問題である温暖化の防止や抑制することの重要性から、省エネルギー化が望まれており、居住環境の保冷や保温、冷房や暖房のための機器などにおいては熱を効率的に利用するための断熱材の開発が行われてきた。また、住宅・ビル等の冷暖房によるエネルギー消費の削減のために、超断熱壁材料の開発も活発化している。
一般の断熱材としては、グラスウール・ロックウールなどの無機繊維体や無機発泡体、ウレタンフォームなどの樹脂系発泡体などがあるが、省エネルギー化に向けては、さらに高性能の断熱材が強く求められている。
シリカエアロゲルは、高い空隙率を有する材料であり、優れた断熱性を有する。ここで言うシリカエアロゲルとは、多孔質な構造を有し分散媒体として気体を伴う固体材料を意味し、特に空隙率60%以上の固体材料を意味する。なお、空隙率とは、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。
物体の内部における熱伝導には、固体伝導(熱振動の伝播)、対流、及び輻射がそれぞれ寄与しており、空隙率の大きな材料においては一般に対流の寄与が最も大きい。これに対してシリカエアロゲルにおいては細孔径が10〜100nm程度とごく小さいため、空隙における気体の移動が大幅に制限され、対流による熱伝導が著しく阻害される。そのためシリカエアロゲルは優れた断熱性を有する。
例えばシリカエアロゲルの製法としては、アルコキシシランを原料として用い、該アルコキシシランの加水分解生成物を重縮合させて得られるゲル状化合物を、分散媒の超臨界条件下で乾燥する方法が知られている(特許文献1)。あるいは、ケイ酸アルカリ金属塩を原料として用い、該ケイ酸アルカリ金属塩を陽イオン交換樹脂に接触させるか、又は該ケイ酸アルカリ金属塩に鉱酸を添加することによってゾルを作成し、該ゾルをゲル化させた後に、該ゲルを分散媒の超臨界条件下で乾燥する方法も知られている(特許文献2及び3)。
このような方法によって製造されるシリカエアロゲルは微細なシリカ骨格を有するため、高い空隙率を有するにも関わらず、優れた機械的強度を示す。
上記公知の製造方法においては、ゲル中の分散媒を超臨界条件下で乾燥除去することにより、乾燥収縮を抑制しつつ分散媒を気体に置換し、高い空隙率を有するシリカエアロゲルの製造を可能にしている。しかし、上記の超臨界条件により乾燥したシリカエアロゲルは、超臨界条件を実現するためにかかるコストが多大であるため、実際の用途はそのような高いコストに見合う特殊なものに限定される。そのため、コスト低減を目的とした常圧乾燥法が提案されている(特許文献4)。
シリカエアロゲルの断熱性付与剤としての用途には、断熱塗料用の添加剤として用いる用途、真空断熱材の芯材として用いる用途、不織布と複合化して断熱シートとして用いる用途などがある。このような用途においては、断熱性能に寄与するシリカエアロゲルの特徴として、細孔容量が大きいこと、また嵩密度が小さく空隙率が大きいことが挙げられ、シリカエアロゲルは有効な断熱材料と考えられる。
断熱塗料用添加剤として樹脂等の基材に充填する際には、断熱性能は添加量に依存するが、シリカエアロゲルにおいては、添加した際の粘度上昇が著しく添加量を増やすことが難しい。
基材の粘度上昇を抑制するには、基材に対するフィラーの表面積を小さくすることが効果的であると考えられる。例えば、フィラーの形状を不定形ではなく球形にする、フィラーの粒径を大きくする、粒度分布をブロードにする方法などがある。
球状シリカエアロゲルを作製するにあたっては、出願人の先願特許(特許文献5)にあるように、シリカゾル水溶液を、ホモジナイザーを用いて乳化させてW/O型エマルションを得た後、シリカゾルをゲル化させる方法が提案されている。上記ホモジナイザーはエマルションにおける分散粒子の微細化に優れるため、より安定したエマルションが得られるものの、粒径の大きい分散粒子を得ることが難しく、実際にD50径が20μmを越える球状シリカエアロゲルは得られていない。
また、シリカゾルをチューブから排出して液滴とする球状エアロゲルの製造方法も提案されている(特許文献6、7)。しかしながらこの方法は、結果的に得られるエアロゲルのD50径が数百μm〜数mm程度と巨大であり、200μm以下の球状シリカエアロゲルを得ることは困難であった。
米国特許第4402927号公報 特開平10−236817号公報 特開平06−040714号公報 特開平07−257918号公報 特許第4960534号公報 特表2002−500557号公報 特開2002−509069号公報 特開2014−088307号公報
上記従来技術で得られた球状シリカエアロゲルは、斯様に球形状であることから樹脂等の基材にかなりに良好な充填性で配合することができる。しかし、より効果的に断熱効果を発揮させる等、それぞれの用途において、その配合目的の効果を十分に発揮させるためには、前記充填性はさらに向上させることが望まれている。しかしながら、従来の製法で得られる球状エアロゲルは、D50径が1〜20μmの範囲のものと数百μm〜数mmの範囲のものであり、20μmを越え200μm以下の範囲の球状シリカエアロゲルは存在していなかった。そのため、粒径の異なるエアロゲルを組みわせて添加することで、密に充填する観点からは、D50径が20μmを越え200μm以下の球状シリカエアロゲルの出現が必要である。
従って、本発明の課題は、良好な球形性状を有するシリカエアロゲルにおいて、上記のD50径の範囲のものを得ることである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、球状シリカエアロゲルの製法におけるエマルション形成時に、該水性シリカゾルの分散を、回転翼を有するミキサーを用いて実施することにより、目的のD50径を有する新規な球状シリカエアロゲルが得られ、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、BET法による比表面積が300〜1000m/gであり、
BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、
レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が20μmを越え200μm以下であり、
画像解析法により求めた平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状シリカエアロゲルである。
本発明の球状シリカエアロゲルは、適度な粒径を有しているため、特許文献5、6、7の製法で得られたエアロゲル粒子と組み合わせてバインダーへ混合した場合、エアロゲル粒子の充填率が高く、断熱性能の高い断熱材が得られる。
例えば、断熱フィラーとして基材に添加した場合には、より効果的に断熱効果を発揮する。また、他の用途を例示するのであれば、化粧品用途、医薬用担体用途など、一般的なシリカエアロゲルの使用方法が挙げられる。
本発明のエアロゲルの好適な製造方法を示すフローチャート。 回転翼を有するミキサーを説明する模式図。 実施例2で製造された本発明の球状エアロゲルのSEM像。
以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。また、特に断らない限り、数値範囲について「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
一般的にシリカエアロゲルとは、湿潤シリカゲル中に含まれる溶媒を、固体ネットワーク構造を保ったまま乾燥させ、空気に置換した多孔質シリカであり、空隙率が80%以上である。本明細書における球状シリカエアロゲルは超臨界乾燥によって得られるものに限らず、常圧乾燥によるものも含む。
また、本発明のシリカエアロゲルの形状は球状であり、これに起因して破砕型よりも充填性に優れる。
本発明の球状シリカエアロゲルを構成する個々の独立粒子(二次粒子)は、その平均円形度が0.8以上である。好ましくは0.85以上である。なお「平均円形度」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、二次電子検出、低加速電圧(1kV〜3kV)、倍率100倍で観察したSEM像を得、個々の粒子について下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め(画像解析)、この円形度Cを2000個以上の粒子について相加平均値として出した値である(画像解析法)。なおこの際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
Figure 2019019017
[式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。]
平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、当該球状シリカエアロゲルを構成する個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。
本発明の球状シリカエアロゲルは、BET法による比表面積(BET比表面積)が300〜1000m/gであり、好ましくは、400〜900m/g、より好ましくは、500〜800m/gである。比表面積が大きいほど、球状シリカエアロゲルの独立粒子(二次粒子)の多孔質構造(網目構造)を構成する一次粒子の粒子径が小さく、より複雑な網目構造を有することにより粒子強度が向上し、基材に添加、分散させた際の細孔破壊を防止する上で好ましい。しかしながら、上記範囲を超えて大きくなると、球状シリカエアロゲルの細孔構造を形成することが難しくなり、結果的に細孔が潰れてしまう。
なお、当該BET法による比表面積は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得し、BET法により解析して求めた値である。
本発明の球状シリカエアロゲルは、BJH法による細孔容積が3〜8mL/gであって、好ましくは3〜7mL/g、より好ましくは3.5〜6mL/gである。細孔容積が上記範囲を超えて小さい場合には、重量あたりの断熱効果が小さくなる為、好ましくない。
また、細孔容積が上記を超えて大きい球状シリカエアロゲルを得ることは難しく、得られた場合でも、細孔構造を形成する骨格強度が小さくなる為、基材に添加、分散させる際の負荷等により細孔が潰れるおそれがある。
本発明において、BJH法による球状シリカエアロゲルの細孔容積は、上記のBET比表面積測定の際と同様に吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951) により、解析して得られたものである。(以下において、「BJH細孔容積」ということがある。)本方法により測定される細孔は、半径1〜100nmの細孔であり、この範囲の細孔の容積の積算値が本発明における細孔容積となる。
本発明の球状シリカエアロゲルにおいて、比表面積と細孔容積が上記の好適な範囲内の場合には、上記BJH法による細孔半径のピークが、通常10〜50nmの範囲にあって、好ましくは10〜40nm、より好ましくは10〜30nmの範囲にある。細孔半径ピークが上記範囲を超えて大きい場合には、気体の対流伝熱により断熱効果が小さくなる為好ましくない。また、細孔半径ピークが上記範囲よりも小さい場合には球状シリカエアロゲルを得ることは難しい。なお、上記BJH法による細孔半径のピークは、前述の細孔容積と同様に吸着等温線の吸着側をBJH法により解析して得られたものであり、細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸により細孔半径を横軸にとってプロットした細孔分布曲線(体積分布曲線)が最大のピークを取る細孔半径である。
本発明の球状シリカエアロゲルは、レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布における体積基準累積50%径(D50)、いわゆるメジアン径が、20μmを越え200μm以下であり、好ましくは50を越え150μm以下であり、さらに好ましくは、60〜150μmである。
上記メジアン径は、具体的には、サンプル0.3gをエタノール(99.5vol%)40mLに加えたものを入れた容器を超音波洗浄機に入れ、90Wで5分間分散したものをサンプル液とし、レーザー回折・散乱法により測定し、得られた体積基準の累計50%径である。なお、同様に体積基準累計10%径をD10、体積基準累計90%径をD90と表す。
本発明の球状シリカエアロゲルにおいて、D10/D90が0.1〜0.5であることが好ましく、0.15〜0.45であることがより好ましく、0.15〜0.25であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、基材に充填する際の充填性に優れる。一般に、D10/D90の値が大きい程、シャープな粒度分布を有することを意味し、D10/D90の値が小さい程、ブロードな粒度分布を有することを意味する。即ち、D10/D90が小さいほど充填性に優れるが、D10/D90が上記下限範囲を超えて小さい球状シリカエアロゲルを得ることは難しい。仮に得られたとしても、球状シリカエアロゲルの平均円形度が低下して前記範囲に入らない、もしくは、球状シリカエアロゲルの中に破砕型シリカエアロゲルが混在し、球状シリカエアロゲルの歩留まりが低下するのが通常である。
本発明の球状シリカエアロゲルは、通常は疎水性を呈する。一般に、シリカエアロゲルが疎水化されている場合、経時劣化の原因となる水分の吸着が少ないため、極めて有用である。また、超臨界乾燥プロセスを用いなくとも製造できるという観点からも、疎水化されていることは好ましい。
本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されている態様の具体例としては、シリル化剤等により処理されていることにより、表面にメチルシリル基が導入された態様を挙げることができる。
本発明の球状シリカエアロゲルが疎水性であるか否かは、当該粉末を純水と一緒に容器に入れ撹拌等を行うことにより極めて容易に確認できる。疎水化されていれば、その粉末は水に分散することなく、かつ、静置すれば水を下層、粉末を上層とする2層に分かれた状態を取り戻す。
また、本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されていることを示す指標の一つとして、後述する方法でM値を測定することでも疎水性であるか否かを判断できる。
M値の測定方法は、まず、本発明の球状シリカエアロゲルサンプル0.2gを50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより撹拌する。ここに、ビュレットを使用してメタノールをサンプルに直接接触しないようにチューブを用いて添加し、サンプルの全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定する。終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(vol%)をM値とする。
Figure 2019019017

球状シリカエアロゲルが疎水化処理されている場合のM値は20〜70vol%であって、好ましくは、30〜60vol%であり、より好ましくは、40〜60vol%である。
また、本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されていることを示す指標の一つとして、炭素含有量を挙げることができる。球状シリカエアロゲルに含まれる炭素含有量は、1000〜1500℃程度の温度において、空気中、若しくは酸素中で酸化処理した際に発生する二酸化炭素の量を定量することにより、測定することができる。
本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されている場合、これに含まれる炭素含有量としては、3〜12質量%であり、好ましくは4〜11質量%、より好ましくは5〜10質量%である。一般的な疎水化処理により、本発明の球状シリカエアロゲルの上記物性を有したまま12質量%を超えて大きなものを得ることは難しい。
なお、前記の如く空気中若しくは酸素中で酸化処理することにより、疎水化処理剤を除去し、親水性の球状シリカエアロゲルとすることもできる。酸化処理は一般的に使用される電気炉で行うことができ、400〜700℃、好ましくは500〜600℃の温度で、3時間以上保持することで、行うことができる。
本発明の球状シリカエアロゲルには、製造する際に使用した界面活性剤が残存する場合がある。界面活性剤の残存量の上限は、1%以下とすることが好ましく、好ましくは、8000ppm以下、更に好ましくは、6000ppm以下である。界面活性剤の残存量の下限としては、100ppm以上、好ましくは、1000ppm以上である。
界面活性剤の残存量が多すぎる場合には、例えば樹脂が分散した水性エマルション中に球状シリカエアロゲルを分散させて断熱塗料用の添加剤とする用途において、細孔中に樹脂が浸潤しやすく、十分に断熱性能が発揮できない場合がある。
また、界面活性剤の残存量が上記範囲を超えて少なくなると、球状シリカエアロゲルの分散性が低下する傾向があり、例えば断熱塗料用の添加剤とする用途においては、系内に十分に分散できず、熱架橋が起こり断熱性が低下する場合がある。
球状シリカエアロゲル中に残存する界面活性剤の量は、熱分解ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。その原理は、熱分解装置であるパイロライザーにより界面活性剤を熱分解させて、分解生成物をガスクロマトグラフィーにより定量するものである。
本発明の球状シリカエアロゲルの製法は特に限定されないが、本発明者らの検討によれば、図1に示すように、特許文献8と同様のフローにより好適に製造することができる。特に、上記フローのエマルション形成工程S2において、水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させる手法として、回転翼を有するミキサーを選択することが重要である。具体的には、
(1)水性シリカゾルを調製する工程(水性シリカゾル調整工程S1);
(2)該水性シリカゾルをW相とする、W/O型エマルションを形成する工程(エマルション形成工程S2);
(3)前記シリカゾルを加熱によりゲル化させて、前記W/O型エマルションをゲル化体の分散液とする工程(ゲル化工程S3);
(4)O相とW相の2層に分離させる工程(W相分離工程S4);
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程(W相回収工程S5);
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程(シリル化処理工程S6);
(7)疎水性有機溶媒でゲル化体を抽出する工程(ゲル化体抽出工程S7) ;
(8)ゲル化体を回収する工程(ゲル化体回収工程S8);
を上記順に含んでなることを特徴とする球状シリカエアロゲルの製造方法である。
本発明では、上記「(2)エマルション形成工程S2」において、水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させる手法として、回転翼を有するミキサーを用いることを最大の特徴としている。即ち、特定のミキサーを用いることにより、本願発明の粒径範囲のエアロゲルを得ることが可能となった。以下、順に説明する。
(水性シリカゾル調整工程S1)
水性シリカゾル調整工程S1(以下、「S1」と略記することがある。)は、水性シリカゾルの公知の調整方法を適宜選択して実施すればよい。代表的な水性シリカゾルの調製方法としては、原料としてケイ酸アルカリ金属塩等を使用する方法や、アルコキシシランを加水分解する方法が挙げられる。
本発明において好ましく使用可能なアルコキシシランを具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
上記ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられ、組成式は、下記の式(3)で示される。
m(M2O)・n(SiO2) (3)
[式(3)中、m及びnはそれぞれ独立に正の整数を表し、Mはアルカリ金属原子を示す。]
上記のシリカゾル作製原料のなかでも、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムが好適である。以下、シリカゾル作成の原料としてケイ酸ナトリウムを用い、球状シリカエアロゲルとしてシリカを製造する形態を代表例として説明するが、他の原料を用いた場合でも、公知の方法で水性シリカゾルの作製及びゲル化を行うことにより、同様にして本発明の球状シリカエアロゲルを得ることができる。
ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を用いる場合には、塩酸、硫酸等の鉱酸で中和する方法や、あるいは対イオンが水素イオン(H)とされている陽イオン交換樹脂(以下、「酸型陽イオン交換樹脂」ということがある。)を用いる方法によって、ケイ酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属原子を水素原子で置換することで、シリカゾルを調製することができる。
上記の酸により中和することによってシリカゾルを調製する方法としては、酸の水溶液に対して、該水溶液を撹拌しながらケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を添加する方法や、酸の水溶液とケイ酸アルカリ金属塩の水溶液とを配管内で衝突混合させる方法が挙げられる(例えば特公平4−54619号公報参照)。
本発明において、調整したシリカゾルのpHを酸性域とすることが好ましい。具体的には、水性シリカゾルを調整する際に用いる酸の量は、ケイ酸アルカリ金属塩のアルカリ金属分に対する水素イオンのモル比として、1.05〜1.2とすることが望ましい。酸の量をこの範囲にした場合には調製したシリカゾルのpHは、1〜5程度となる。好ましくは2.5〜3.5である。
上記の酸型陽イオン交換樹脂を用いてシリカゾルを調製する方法は、公知の方法により行うことができる。例えば、酸型陽イオン交換樹脂を充填した充填層に適切な濃度のケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を通過させる手法、あるいは、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液に、酸型陽イオン交換樹脂を添加及び混合し、アルカリ金属イオンを陽イオン交換樹脂に化学吸着させて溶液中から除去した後に濾別するなどして酸型陽イオン交換樹脂を分離する手法等が挙げられる。その際に、用いる酸型陽イオン交換樹脂の量は、溶液に含まれるアルカリ金属を交換可能な量以上とする必要がある。
上記の酸型陽イオン交換樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、スチレン系、アクリル系、メタクリル系等のイオン交換樹脂であって、イオン交換性基としてスルフォン酸基やカルボキシル基を有するものを用いることができる。このうち、スルフォン酸基を有する、いわゆる強酸型の陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
なお、上記の酸型陽イオン交換樹脂は、アルカリ金属の交換に使用した後に、公知の方法、例えば硫酸や塩酸を接触させることで再生処理を行うことができる。再生に用いる酸の量は、通常は、イオン交換樹脂の交換容量に対して2〜10倍の量が用いられる。
上記の方法により作成したシリカゾルの濃度としては、ゲル化が比較的短時間で完了し、またシリカ粒子の骨格構造の形成を十分なものとして乾燥時の収縮を抑制でき、大きな細孔容量を得られやすい点で、シリカ分の濃度(SiO2換算)として20g/L以上とすることが好ましく、40g/L以上とすることがより好ましく、50g/L以上とすることが特に好ましい。その一方で、シリカ粒子の密度を相対的に小さくして、良好な細孔容積を得て、シリカ骨格自体による熱伝導(固体伝導)を低減することにより、良好な断熱性能が得られやすい点で、160g/L以下とすることが好ましく、120g/L以下にすることがより好ましく、100g/L以下とすることが特に好ましい。
(エマルション形成工程S2)
エマルション形成工程S2(以下、単に「S2」ということがある。)は、S1によって得た水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/Oエマルションを形成する工程である。すなわち、上記水性シリカゾルを分散質、疎水性有機溶媒を分散媒としてエマルションを形成させる。このようなW/Oエマルションを形成することにより、分散質であるシリカゾルは表面張力等により球状になるので、該球状形状で疎水性溶媒中に分散しているシリカゾルをゲル化させることにより、球状のゲル化体を得ることができる。また、このように、W/Oエマルションを形成するエマルション形成工程S2を経ることにより、0.8以上の高い円形度を有するエアロゲルを製造することが可能になる。
特に、本発明では、当該S2において、上記分散質(W相)の液滴の粒度分布において、液滴のD50径が大凡目的とする球状シリカエアロゲルのD50径となるようW/Oエマルションを形成することが重要である。W/Oエマルション中のシリカゾル液滴の平均粒径と目的物である球状シリカエアロゲルの平均粒径とは概ね対応関係にあるからである。
W/Oエマルションを形成する、即ち、水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させる方法として、膜乳化、機械乳化などの手段が挙げられるが、膜乳化では膜出口付近でエマルションの合一化が起こりやすく、粒径制御が難しい為、撹拌混合装置を用いた機械乳化が好ましい。上記撹拌混合装置として、ミキサー、ホモジナイザー、スタティックミキサー等が挙げられるが、一般に、分散粒子の粒子径が小さいほどエマルションの安定性が向上するため、従来は、ホモジナイザーが好適に用いられた。
上記ホモジナイザーは、一般的に固体と液体、液体と液体、等の2相流に激しい機械的作用を加えて,均一で安定したエマルションあるいはサスペンションをつくる機械装置であり、高速の回転翼の強い撹拌作用を利用する方法,高圧流体を狭い流路を通して流す際に受ける強い剪断作用を利用する方法、超音波を利用する方法等があり、回転翼の強い撹拌作用を利用する方法では、一般的に回転数は1000rpm以上で使用される。具体的には、マツボー社製 マイルダー、IKA社製 ウルトラタラックスホモジナイザー、プライミクス社製 ラボ・リューション等が挙げられる。
上記スタティックミキサーは駆動部の無い静止型の混合器であり、具体的には、ノリタケ社製 スタティックミキサー、シンユー技研社製 SS.M、OHR流体工学研究所社製 OHRミキサー等が挙げられる。
上記ミキサーは一般的に均一層に動力を加えて撹拌混合する装置であり、一般的に回転数は1000rpm未満で使用される。具体的には、回転翼を有するミキサー、流体をジェット噴射して撹拌するミキサー等が挙げられる。
本発明の球状シリカエアロゲルを得るためには、上記撹拌混合装置の中でも、回転翼を有するミキサーを用いることが必要である。
ところで、本発明の如くW/O型エマルションを形成して、球状シリカエアロゲルを製造する場合、エマルション形成後、後述するゲル化工程S3でシリカゾルがゲル化するまで、ゲル化時間を要する。したがって、ゲル化が終了するまでの間、エマルションにおける分散状態を安定に保つ必要がある。
ここで、機械乳化のための撹拌混合装置としてミキサーを選択した場合に、前記ホモジナイザーを選択した場合と比較して粒径が大きいため得られるエマルションの安定性が低い。しかしながら、後述するゲル化工程において、回転翼を有するミキサーを用いて撹拌を継続しても、円形度を大きく損ねない。したがって、エマルションを形成した後、ゲル化工程においても回転翼を有するミキサーを用いて同条件で撹拌し続けることができる。即ち、エマルションの安定性が低くても、同条件で撹拌を継続することによりエマルションにおける水性シリカゾルの分散状態を維持することが可能となるのである。
一方で、ホモジナイザーを用いた場合には、ゲル化工程において同様にホモジナイザーで撹拌すると、その原理ゆえの回転速度や剪断作用等により円形度を維持することが困難となる。すなわち、ホモジナイザーを用いた場合には、エマルション形成後ゲル化が終了するまでの間、エマルションの分散状態が維持できる安定性の高いエマルションが求められる。
本発明において、「回転翼を有するミキサー」とは、水性シリカゾルと疎水性溶媒とを所定量投入することができる容器において、容器上部から回転数を調整可能な回転翼が設けられた装置である。
回転翼の形状としては、パドル翼、傾斜パドル翼、後退翼、アンカー翼等が挙げられ、翼の枚数としては、2〜6枚が一般的である。この中で、均一な撹拌を行いつつ適度なせん断力の調整が行える点で、四枚傾斜パドル翼、三枚後退翼が好適に用いられる。
本発明の粒径範囲を有する球状シリカエアロゲルを得るためには、前述の回転翼を有するミキサーを用い、さらに、その撹拌条件として、回転翼の周速が30m/s〜400m/sであり、好ましくは50〜350m/sである。回転翼の形状等にもよるが、同じ回転翼を使用した場合、周速が小さいほどW相液滴の粒径が大きく、粒度分布も大きくなる傾向にある。したがって、目的とする球状シリカエアロゲルの粒径に合わせて、回転翼の周速を上記範囲で調整してやればよい。また、周速が大きい程、容器内が均一化しやすいため、粒度分布が狭くなる傾向がある。
上記周速を得る際の回転翼の回転速度は、用いる回転翼の大きさ等に因るため、一概には言えないが20〜1000rpmであり、好ましくは40〜800rpmである。即ち、回転翼の中心からの長さが長くなるほど低い回転速度とすることができる。一般に、同じ周速とした場合に回転翼の長さが長いほど、回転翼の中心部の速度が小さくなるため、得られる球状シリカエアロゲルの粒度分布が広くなる傾向がある。
本発明において、所望の粒子径、粒度分布を有する球状シリカエアロゲルが得られるよう、回転翼の形状、長さ、周速等を随時選択すればよい。
なお、ミキサーの容量は特に制限されないが、通常は、選択した回転翼の大きさや能力、及び処理量等勘案して決定されればよい。具体的には0.5L〜20m、好ましくは0.5〜15m、さらに好ましくは1〜10mである。
また、W層を形成する水性シリカゾルがゲル化した時点でW/OエマルションがW/Oサスペンジョン(懸濁液)に変化することで粒子形状が固定され、それ時点以降は球状の形状を保ったまま微細化することができなくなるため、撹拌時間は撹拌を開始してから水性シリカゾルがゲル化するまでの時間に限定される。
一方で、撹拌速度が低速であるため全体を均一に混合するためには最低限の時間が必要であることから、撹拌に必要となる時間は5〜180分であり、より好ましくは15〜120分、さらに好ましくは30〜60分である。
撹拌容器内において、前記回転翼以外の付属品の有無、例えば邪魔板等の有無やその形状は特に限定されないが、低速撹拌における均一混合を行う上では邪魔板等の液混合を補助する付属品が設置されていることが好ましい。
疎水性有機溶剤と水性シリカゾルの液温は水性シリカゾルのゲル化時間に影響を与えるが、回転翼の回転によりW/OエマルションのD50径を調整する時間は、水性シリカゾルはゲル化せずにゾルの状態を保つ必要があるため、疎水性有機溶剤と水性シリカゾルの液温はゲル化を抑制するために5〜20℃に保持されていることが好ましい。
前記の疎水性有機溶媒の種類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロプロパン、動粘度が0.65〜10cSのジメチルシリコーンオイル等を好適に用いることができる。この中でも、適度な粘度を有するヘプタンを特に好適に用いることができる。なお必要に応じて、複数の溶媒を混合して用いても良い。
使用する疎水性有機溶媒の量は、エマルションがW/O型となる程度の量であれば特に限定されることはない。ただし、水性シリカゾル1体積部に対して疎水性有機溶媒が1〜10体積部程度となる量が好ましく、更には、1〜5体積部、特に好ましくは、1〜2体積部とする。
本発明において、上記のW/Oエマルションを形成する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。使用する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤のいずれも使用することが可能である。これらの中でも、W/Oエマルションを形成しやすい点で、ノニオン系界面活性剤が好ましい。本発明においては、シリカゾルが水性であるため、界面活性剤の親水性及び疎水性の程度を示す値であるHLB値が3以上5以下の界面活性剤を好適に用いることができる。なお本発明において「HLB値」とは、グリフィン法によるHLB値を意味する。好適に用いることができる界面活性剤の具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノセスキオレート等が挙げられる。
界面活性剤の使用量は、使用する疎水性有機溶媒の種類や量によって変わるが、疎水性有機溶媒としてヘプタンを用い、量をシリカゾル1体積部に対して2体積部とした場合には、シリカゾル100mlに対して、0.4〜1.2gとすることが好ましい。界面活性剤の使用量が、この範囲を超えて多いとゲル化体抽出工程S7での分離性が悪くなる傾向にあり、分離が困難となる。またこの範囲を超えて少ないと、エマルションの安定性が悪くなり、最終的に得られる球状シリカエアロゲルの円形度が低くなる傾向にある。
(ゲル化工程S3)
ゲル化工程S3(以下、「S3」と略記することがある。)は、上記S2におけるW/Oエマルションの形成に引き続き、水性シリカゾルの液滴が疎水性有機溶媒中に分散している状態において水性シリカゾルをゲル化させる工程である。当該工程では、ゲル化が終了するまでの間、S2で形成されたエマルジョンの分散状態が維持されることが好ましく、具体的には、前記S2工程でエマルションを形成する時と同様に回転翼を有するミキサーを用いて撹拌を継続しながらゲル化させることが好ましい。これにより、ゲル化が終了するまでの間エマルションの分散状態を維持することが容易である。
エマルションの分散状態を維持する観点から、撹拌条件等はS2工程と同じにすることが好ましい。
上記水性シリカゾルの液滴中では、分散質としてシリカの1次粒子が分散しており、該工程のゲル化により、該1次粒子が3次元網目構造を形成し、2次粒子を形成する。
通常、シリカゾルをゲル化する手段として、高温に加熱する手法や、或いはシリカゾルのpHを弱酸性ないし塩基性に調整する手法が用いられるが、本発明のゲル化工程では、pHを酸性域に維持したまま加熱することによりゲル化を行うことが好ましい。
上記pHは、前述のエマルション形成工程と同様にpHを2〜5の範囲内にしておくことが好ましく、2.5〜3.5の範囲内としておくことがより好ましく、2.5〜3.0の範囲内としておくことが特に好ましい。
ゲル化温度の上限は、用いる疎水性有機溶剤に依存し、疎水性有機溶剤が沸騰する温度以下とすることが好ましい。また、ゲル化に必要な時間を短くする上では、温度は高い方が好ましく、疎水性有機溶剤としてヘプタンを用いた場合には、50〜70℃、好ましくは、60〜70℃で行うことが好ましい。
ゲル化時間(ゲル化が開始して、ゲル化が終了するまでの時間)は、ゾルのpHや温度、シリカゾル中のシリカ分の濃度に依存するため一概には言えないが、例えばpH3、温度70℃、シリカゾル中のシリカ分の濃度(SiO2換算)が80g/Lの場合には、30分〜24時間とすることが好ましく、5〜12時間とすることがより好ましい。ゾルのpH、温度、シリカ分の濃度が低いほど、ゲル化時間が長くなる。
(W相分離工程S4)
W相分離工程S4(以下、「S4」と略記することがある。)においては、前記分散溶媒をO相とW相に分離するものであり、一般的には解乳とも呼ばれている操作である。上記工程より得たゲル化体は、分離して得られたW相側に存在している。
当該W相分離方法としては、公知の方法を採用することが可能であるが、具体的には、水溶性有機溶媒の添加、塩の添加、遠心力の付与、酸の添加、濾過、容積比の変化(水又は疎水性有機溶媒の添加)等から選ばれる一つ、あるいは複数を組み合わせて実施することができる。好適には、一定量の水溶性有機溶媒をエマルション中に加えてO相とW相に分離することができる。この工程を経ると、一般に上層がO相、下層がW相となる。
上記の水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。このうち、イソプロピルアルコールは、後述のシリル化処理の際にも、処理の効率を高める上で効果があるため、好適に用いることができる。
上記の水溶性有機溶媒の添加量としては、エマルション形成時に用いた界面活性剤の種類および量によって調整することが好ましい。例えば、W/O型エマルションの界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを用いた場合には、O相の量に対して質量で0.1〜0.4倍程度の水溶性有機溶媒を加え、必要に応じて撹拌後、静置することにより、好適にO相とW相に分離することができる。また、上記水溶性有機溶媒と供に、水も、O相の量に対して質量で0.6〜0.9倍程度の添加量で加えるのが好ましい。
また、S4工程を行う場合の温度は特に限定されないが、通常は、20〜70℃程度で行うことができる。
(ゲル化体熟成工程S4’)
上記S4工程の後には、ゲル化体熟成工程S4’(以下、「S4’」と略記することがある。)を実施して、前述の操作によってゲル化した後、ゲルの熟成を行うのが好ましい。
本発明の球状シリカエアロゲルを構成する粒子の圧縮強度を向上させるという観点から、ゲル化後に0.5〜12時間程度、熟成を行うことによってゲル化反応(脱水縮合反応)を更に進行させることが好ましい。当該熟成は室温〜80℃程度で保持することによって行うことができる。好ましくは50〜70℃、より好ましくは60〜70℃で保持する。
また、当該熟成工程ではゲル化反応(脱水縮合反応)を促進させるため、アルカリ剤を添加することでW相のpHを調整してもよい。アルカリ剤としては特に限定されないが、一般的にはNaOH、KOH、アンモニア等が用いられる。調整後のW層のpHは3〜10であり、好ましくは5〜8である。
本S4’工程においては、分離しているO相をそのまま系内に残しておくことが好ましい。O相を残しておくことにより、ゲル化体に吸着している界面活性剤をO相に抽出することができるため、最終的に得られる球状シリカエアロゲルに含まれる界面活性剤の量を調整することが可能となる。
(W相回収工程S5)
W相回収工程S5(以下、「S5」と略記することがある。)においては、前記W相の回収を行う。引き続き行われるゲル化体のシリル化処理の処理効率を向上させるため、上記S4で得られたO相とW相の分離溶媒から、例えばデカンテーション等でO相を除去し、W相を回収することができる。
なおここで、完全にO相を除去する必要はないが、当該W相に含まれるゲル化体をシリル化処理する工程において、効率的にシリル化処理を行うためにはW相に含まれるO相の割合はなるべく少ない方が良く、W相中に含まれる量としては、20wt%以下が好ましく、さらに好ましくは10wt%以下である。
(シリル化処理工程S6)
シリル化処理工程S6(シリル化処理工程S6。以下単に「S6」と略記することがある。)においては、上記W相回収工程S5の後にシリル化剤を用いてゲル化体をシリル化処理する。シリル化処理に得られる球状シリカエアロゲルは疎水性を呈するものになり、後に施される、ゲル化体回収工程S7で、該ゲル化体を乾燥する際に収縮が抑制されて、エアロゲルとしての多孔質な構造を保持した粉体を得ることを可能にさせる。
本発明において使用可能なシリル化剤としては金属酸化物(ここではシリカである。)表面に存在するヒドロキシ基:
M−OH (4)
[式(4)中、Mは金属原子を表す。式(4)においてはMの残りの原子価は省略されている。]
と反応し、これを
(M−O−)(4−n)SiRn (5)
[式(5)中、nは1〜3の整数であり、Rは炭化水素基であり、nが2以上である場合には、複数のRは同一でも相互に異なっていてもよい。]へと変換することが可能なシリル化剤を一例として挙げることができる。
このようなシリル化剤を用いてシリル化処理を行うことにより、シリカエアロゲル表面のヒドロキシ基が疎水性のシリル基でエンドキャッピングされて不活性化されるので、表面ヒドロキシ基相互間での脱水縮合反応を抑制できる。よって、臨界点未満の条件で乾燥を行っても乾燥収縮を抑制できるので、3mL/g以上のBJH細孔容積を有する疎水性シリカエアロゲルを得ることが可能になる。
上記のシリル化剤としては、以下の一般式(6)〜(7)で示される化合物が知られている。
RnSiX(4−n) (6)
[式(6)中、nは1〜3の整数を表し;Rは炭化水素基等の疎水基を表し;Xはヒドロキシ基を有する化合物との反応においてSi原子との結合が開裂して分子から脱離可能な基(脱離基)を表す。nが2以上のとき複数のRは同一でも異なっていてもよい。また、nが2以下のとき複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
Figure 2019019017

[式(7)中、R1はアルキレン基を表し;R2及びR3は各々独立に炭化水素基を表し;R4及びR5は各々独立に水素原子又は炭化水素基を表す。]
Figure 2019019017

[式(8)中、R6及びR7は各々独立に炭化水素基を表し、mは3〜6の整数を表す。複数のR6は同一でも異なっていてもよい。また、複数のR7は同一でも異なっていてもよい。]
上記式(6)において、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基である。
Xで示される脱離基としては、塩素、臭素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;−NH−SiR3で示される基(式中、Rは式(6)におけるRと同義である)等を例示できる。
上記式(6)で示されるシリル化剤を具体的に例示すると、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。反応性が良好である点で、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンが特に好ましい。脱離基Xの数(4−n)に応じて、シリカエアロゲル骨格上のヒドロキシ基と結合する数は変化する。例えば、例えば、nが2であれば:
(M−O−)2SiR2 (9)
という結合が生じることになる。また、nが3であれば:
M−O−SiR3 (10)
という結合が生じることになる。このようにヒドロキシ基がシリル化されることにより、シリル化処理がなされる。
上記式(7)において、R1はアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。
上記式(7)において、R2及びR3は各々独立に炭化水素基であり、好ましい基としては、式(6)におけるRと同様の基を挙げることができる。R4は水素原子又は炭化水素基を示し、炭化水素基である場合には、好ましい基としては、式(6)におけるRと同様の基を挙げることができる。この式(7)で示される化合物(環状シラザン)でゲル化体を処理した場合には、ヒドロキシ基との反応によりSi−N結合が開裂するので、ゲル化体中のシリカエアロゲル骨格表面上には
(M−O−)2SiR2R3 (11)
という結合が生じることになる。このように上記式(7)の環状シラザン類によっても、ヒドロキシ基がシリル化され、シリル化処理がなされる。
上記式(7)で示される環状シラザン類を具体的に例示すると、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン等が挙げられる。
上記式(8)において、R6及びR7は各々独立に炭化水素基であり、好ましい基としては、式(6)におけるRと同様の基を挙げることができる。mは3〜6の整数を示す。この式(8)で示される化合物(環状シロキサン)でゲル化体を処理した場合、ゲル化体中のシリカエアロゲル骨格表面上には、
(M−O−)2SiR6R7 (12)
という結合が生じることになる。このように上記式(8)の環状シロキサン類によっても、ヒドロキシ基がシリル化され、シリル化処理がなされる。
上記式(8)で示される環状シロキサン類を具体的に例示すると、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
上記のシリル化処理の際に使用する処理剤の量としては、処理剤の種類にもよるが、ヘキサメチルジシロキサンを処理剤として用いる場合には、シリカ100重量部に対して10〜150重量部が好適である。より好ましくは20〜130重量部であり、更に好ましくは30〜120重量部である。
上記のシリル化処理の条件は、S5工程で分離したW相に対して、シリル化処理剤を加え、一定時間反応させることにより行うことができる。例えばシリル化処理剤としてジメチルジクロロシランを用い、処理温度を50℃とした場合には、4〜12時間程度以上保持することで行うことでき、オクタメチルシクロテトラシロキサンを用い、処理温度を70℃とした場合には6〜12時間程度以上保持することで行うことができる。
また、シリル化処理剤としてオクタメチルシロクテトラシロキサン等の環状シロキサン類を用いる場合には、塩酸を添加することで溶液のpHを0.3〜1.0とすることが、反応の効率を高める上で好ましい。
当該シリル化処理工程においては、W相中への処理剤の溶解度を高めて、反応の効率を高める目的で、水溶性有機溶媒を加えることが好ましい。この水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。このうち、イソプロピルアルコールを好適に用いることができる。
上記水溶性有機溶媒は、W相中の濃度が、20〜80wt%程度になるように加えることが好ましい。S4工程において、W相を分離する際に水溶性有機溶媒を加えた場合には、本S6工程においてもそのまま使用することが可能である。
(ゲル化体抽出工程S7)
ゲル化体抽出工程S7(以下、「S7」と略記することがある。)においては、上記S7におけるシリル化処理の後にゲル化体を疎水性有機溶媒中に抽出する。ゲル化体抽出に用いる疎水性有機溶媒の選定基準としては、後の乾燥工程の際、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。具体的にはヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等を用いることができ、好適にはヘキサン、ヘプタン、トルエンを用いることが出来る。
上記の疎水性有機溶媒への抽出を行った後に、ゲル化体に含まれる塩分や、疎水性有機溶媒中に含まれる硫酸塩等を除去するために、当該有機溶媒を水或いはアルコールの水溶液で洗浄を行うことが好ましい。この洗浄操作は、公知の方法で行うことができる。洗浄効率を上げる上では、数10wt%程度のイソプロピルアルコールの水溶液を用いることが好ましい。また、疎水性有機溶媒の沸点を超えない範囲で、高温にすることが洗浄効率を高める上では好ましい。通常は、45〜70℃の範囲で行うことができる。
(ゲル化体回収工程S8)
ゲル化体回収工程S8(以下、「S8」と略記することがある。)においては、上記S8におけるゲル化体抽出工程において得られた疎水性有機溶媒に分散しているゲルを濾別し、疎水性有機溶媒を除去(すなわち乾燥)する。乾燥する際の温度は、溶媒の沸点以上で、表面処理剤の分解温度以下であることが好ましく、圧力は常圧ないし減圧下で行うことが好ましい。
製造方法においては、上記S1からS8を経ることにより、本発明の球状シリカエアロゲルを得ることができる。
本発明に関する上記説明では、球状シリカエアロゲルの製造方法を主に例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。
(物性、及び用途)
本発明の疎水性シリカエアロゲルは、適度な粒度分布を有しているため、特許文献4、5、6の粒子と組み合わせてバインダーへ混合した場合、エアロゲル粒子の充填率が高く、断熱性能の高い断熱材が得られる。従って、幅広い用途に好適に用いることができるが、特には、下記詳述するように、断熱塗料、断熱シート等の断熱性付与剤、化粧品用添加剤、として適している。
(断熱性付与剤用途)
本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として樹脂や塗料に充填して用いる場合、基材となるものが、シリカエアロゲルの細孔構造を埋没、あるいは、破壊しないことが好ましい。
例えば、断熱塗料として用いる場合、基材は、水性エマルション樹脂や水溶性樹脂が好ましく、水の含有量としては90vol%未満が好ましい。
これらの基材を例示するならば、酢酸ビニルホモポリマー分散液、酢酸ビニル共重合体分散液、エチレン−酢酸ビニル分散液、スチレン−アクリレート共重合体分散液、スチレン−ブタジエン共重合体分散液、アクリレート分散液、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、ポリビニルアルコール水溶液等がある。
また、本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として基材に添加した際に、気泡が発生した場合には、既知の方法で脱泡することができる。例えば、減圧環境下においても良いし、遠心脱泡しても良い。
(化粧品用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、化粧品用添加剤として好適に用いることができる。たとえば、ファンデーションの添加剤として使用した場合には、適度な粒径及び比表面積を有するため、外観保持性に優れ、滑らかな触感が得られる。加えて、シリカエアロゲルの一般的な性質として吸油量が高く、皮膚及び頭皮表面の脂分を効率良く吸収するため、テカリ防止性に優れる。また、疎水性を呈し汗をはじく効果もあることから、上記ファンデーション以外の、ペースト、クリームタイプのメイクアップ・スキンケア化粧料、さらにはデオドラント用品、整髪料などの化粧品としても好適に用いることができる。
(断熱性付与剤用途)
本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として樹脂や塗料に充填して用いる場合、基材となるものが、シリカエアロゲルの細孔構造を埋没、あるいは、破壊しないことが好ましい。
例えば、断熱塗料として用いる場合、基材は、水性エマルション樹脂や水溶性樹脂であることが好ましく、水の含有量としては90VOL%未満が好ましい。
これらの基材を例示するならば、酢酸ビニルホモポリマー分散液、酢酸ビニル共重合体分散液、エチレン−酢酸ビニル分散液、スチレン−アクリレート共重合体分散液、スチレン−ブタジエン共重合体分散液、アクリレート分散液、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、ポリビニルアルコール水溶液等がある。
また、本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として基材に添加した際に、気泡が発生した場合には、既知の方法で脱泡することができる。例えば、減圧環境下においても良いし、遠心脱泡しても良い。
(化粧品用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、化粧品用添加剤として好適に用いることができる。たとえば、ファンデーションの添加剤として使用した場合には、適度な粒度分布及び比表面積を有するため、外観保持性に優れ、滑らかな触感が得られる。加えて、シリカエアロゲルの一般的な性質として吸油量が高く、皮膚及び頭皮表面の脂分を効率良く吸収するため、テカリ防止性に優れる。また、疎水性を呈し汗をはじく効果もあることから、上記ファンデーション以外の、ペースト、クリームタイプのメイクアップ・スキンケア化粧料、さらにはデオドラント用品、整髪料などの化粧品としても好適に用いることができる。
(艶消し用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、艶消し剤として使用した場合、D10/D90が小さく、すなわち、ブロードな粒度分布を有する為、塗膜中への充填率が高く、よって、良好な艶消し性を得ることができる。
艶消し剤として使用する場合には、通常、本発明の球状シリカエアロゲルを有機樹脂に分散させて使用する。
本発明における艶消し剤と有機樹脂とを含む艶消し塗料において、有機樹脂は任意のものを使用できる。例えば、樹脂の種類からいって、油性塗料、ニトロセルロース塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料等の慣用のそれ自体公知の塗料の他に、ロジン、エステルガム、ペンタレジン、クマロン・インデンレジン、フェノール系レジン、変性フェノール系レジン、マレイン系レジン、アルキド系レジン、アミノ系レジン、ビニル系レジン、石油レジン、エポキシ系レジン、ポリエステル系レジン、スチレン系レジン、アクリル系レジン、シリコーン系レジン、ゴムベース系レジン、塩素化物系レジン、ウレタン系レジン、ポリアミド系レジン、ポリイミド系レジン、フッ素系レジン、天然或いは合成の漆等の1種或いは2種以上を含有する塗料が挙げられる。また、用いる塗料は、その用い方によって、溶剤型塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗料等の任意のものであってよい。
この溶剤型塗料の有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘプタン、n−ヘキサン、アイソパー等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等の1種または2種以上を用いることができる。
紫外線(UV)硬化型塗料としては、ハイソリッドレジン、例えばUV硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
粉体塗料としてはポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、セルロース誘導体、ポリエーテル、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂の他、エポキシ樹脂、エポキシ/ノボラック樹脂、イソシアネート或いはエポキシ硬化型ポリエステル樹脂等が挙げられる。
本発明における艶消し剤の樹脂における添加量は、任意の割合で添加できるが有機樹脂100質量部に対して、1〜90質量部、好ましくは、3〜80質量部が適当である。これにより、少量の配合で塗膜表面に高度の艶消し効果を付与することができる。また同時に、塗膜面の耐引っ掻き性も向上することが推測される。
(薬物担体用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、薬物担体として好適に用いることができる。具体的には、薬物を球状シリカエアロゲルに含ませることで、生体内でさらに長時間継続して当該薬物を徐々に放出することができる。したがって、薬効持続時間を長く維持することができる。
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を示す。ただし本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例及び比較例の評価は以下の方法で実施した。
<評価方法>
実施例1〜5で製造した球状シリカエアロゲルに対して、以下の項目について試験を行った。
(平均円形度、および画像解析によるメジアン径の測定)
2000個以上の球状シリカエアロゲルについてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S−5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率100倍で観察したSEM像を画像解析し、前述の定義に従って平均円形度を算出した。
(レーザー回折・散乱法による粒度分布、メジアン径の測定)
粒度分布、メジアン径の測定は、前述の定義に従って、堀場製作所製LA−950V2にて測定を行った。
(比表面積、細孔容積及び吸油量)
BET比表面積、及びBJH細孔容積の測定は、上述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP−miniにより行った。
(その他の物性値の測定)
熱伝導率の測定は、京都電子工業株式会社製迅速熱伝導率計QTM―500により行った。
炭素含有量(表1中の「C値」)の測定はelementar社vario MICRO cubeを用いて、温度1150℃において酸素とヘリウムをフローしながら参加処理し、発生した二酸化炭素の量を定量する事により測定し、金属酸化物粉末全量を基準(100質量%)とする質量%で算出した。
<実施例1>
(S1:水性シリカゾル調整工程)
硫酸(濃度9.2g/100mL)100gを撹拌羽根で撹拌しながら、珪酸ソーダ(濃度SiO 19.1g/100mL、NaO 6.2g/100mL、SiOモル/NaOモル=3.2)100gを徐々に添加し、水性シリカゾルを調整した。このとき、pHは3.0であった。
(S2:エマルション形成工程)
0.5Lの4枚傾斜パドル翼の回転翼が設置された装置に、S1で調整した水性シリカゾル108gを分取し、160gのヘプタンを加え、ソルビタンモノオレエートを0.8g添加した。この溶液を20℃に冷却し周速57m/sで15分撹拌することでW/Oエマルションを形成した。
(S3:ゲル化工程)
得られたエマルションを撹拌羽で撹拌しながら、70℃で1時間かけてゲル化した。
(S4:W相分離工程)
イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加えて、撹拌羽で撹拌しながらO相とW相を分離した。続けて、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を2g添加した。このとき、W相のpHは5.0であった。
(S4’:ゲル化体熟成工程)
70℃、2.5時間かけて、ゲル化体の熟成を行った。
(S5:W相回収工程)
デカンテーションにより、O相を除去することで、W相を回収した。
(S6:シリル化処理工程)
得られたW相に35%塩酸を17g、ヘキサメチルジシロキサンを12g添加し、撹拌しながら70℃で12時間保持することにより、シリル化処理を行った。
(S7:ゲル化体抽出工程)
シリル化処理後、撹拌羽で撹拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を12.6g添加し、中和処理を行った。続いて、ヘプタン100gを加え、ゲル化体を抽出し、イオン交換水100gで2回洗浄を行った。
(S8:ゲル化体回収工程)
得られたシリル化後のゲル化体を吸引濾過機により濾別した。ゲル化体の乾燥を真空圧力下、150℃で16時間以上加熱することで、本発明の球状シリカエアロゲルを得た。
エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
<実施例2>
S2において、W/Oエマルションを形成する際の撹拌時間を60分にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
<実施例3>
S2において、W/Oエマルションを形成する際の撹拌速度を周速94m/sとし、撹拌時間を60分にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
<実施例4>
S2において、W/Oエマルションを形成する際の撹拌速度を周速170m/sとし、撹拌時間を60分にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
<実施例5>
(S1:水性シリカゾル調整工程)
硫酸(濃度9.2g/100mL)200kgを撹拌羽根で撹拌しながら、珪酸ソーダ(濃度SiO 19.1g/100mL、NaO 6.2g/100mL、SiOモル/NaOモル=3.2)200kgを徐々に添加し、水性シリカゾルを調整した。このとき、pHは3.0であった。
(S2:エマルション形成工程)
1.5mの3枚後退翼の回転翼が設置された装置に、S1で調整した水性シリカゾル324kgを分取し、480kgのヘプタンを加え、ソルビタンモノオレエートを2.4kg添加した。この溶液を20℃に冷却し周速109m/sで60分撹拌してW/Oエマルションを形成した。
(S3:ゲル化工程)
S2で形成したW/Oエマルションを268.8g分取し、以後の操作は、実施例1と同様の操作を行った。エマルション形成時の撹拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性評価の結果を表1に示す。
Figure 2019019017

Claims (7)

  1. BET法による比表面積が300〜1000m/gであり、
    BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、
    レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が20μmを越え200μm以下であり、
    画像解析法により求めた平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状シリカエアロゲル。
  2. 体積基準累積10%径(D10)と体積基準累積90%径(D90)との比(D10/D90)が0.1〜0.5であることを特徴とする請求項1記載の球状シリカエアロゲル。
  3. (1)水性シリカゾルを調製する工程
    (2)上記水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/O型エマルションを形成させる工程であって、該水性シリカゾルの分散を、回転翼を有するミキサーを用いて行うW/O型エマルション形成工程
    (3)前記シリカゾルをゲル化させて、前記W/O型エマルションをゲル化体の分散液とする工程
    (4)O相とW相の2層に分離させる工程
    (5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
    (6)該分散液にシリル化剤を添加してゲル化体を疎水化する工程
    (7)疎水性有機溶媒でゲル化体を抽出する工程
    (8)ゲル化体を回収する工程
    を上記順に含んでなることを特徴とする球状シリカエアロゲルの製造方法。
  4. (2)W/O型エマルション形成工程において、回転翼を有するミキサーにおける撹拌条件である回転翼の周速が30m/s〜400m/s、撹拌時間が5〜180分として、水性シリカゾルの疎水性有機溶媒中への分散を実施する、請求項3記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
  5. (2)W/O型エマルション形成工程において、疎水性有機溶媒と水性シリカゾルの液温が夫々5〜20℃である、請求項3または請求項4記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
  6. 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる断熱性付与剤。
  7. 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる化粧品用添加剤。
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