JP6932572B2 - 球状シリカエアロゲル、その製造方法、及び、その用途 - Google Patents

球状シリカエアロゲル、その製造方法、及び、その用途 Download PDF

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本発明は、球状シリカエアロゲル、詳しくは粒度分布がブロードな球状シリカエアロゲルに関し、さらにその製造方法、及びその用途に関する。
近年、地球環境問題である温暖化の防止や抑制することの重要性から、省エネルギー化が望まれており、居住環境の保冷や保温、冷房や暖房のための機器などにおいては熱を効率的に利用するための断熱材の開発が行われてきた。また、住宅・ビル等の冷暖房によるエネルギー消費の削減のために、超断熱壁材料の開発も活発化している。
一般の断熱材としては、グラスウール・ロックウールなどの無機繊維体や無機発泡体、ウレタンフォームなどの樹脂系発泡体などがあるが、省エネルギー化に向けては、さらに高性能の断熱材が強く求められている。
シリカエアロゲルは、高い空隙率を有する材料であり、優れた断熱性を有する。ここで言うシリカエアロゲルとは、多孔質な構造を有し分散媒体として気体を伴う固体材料を意味し、特に空隙率60%以上の固体材料を意味する。なお、空隙率とは、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。
物体の内部における熱伝導には、固体伝導(熱振動の伝播)、対流、及び輻射がそれぞれ寄与しており、空隙率の大きな材料においては一般に対流の寄与が最も大きい。これに対してシリカエアロゲルにおいては細孔径が10〜100nm程度とごく小さいため、空隙における気体の移動が大幅に制限され、対流による熱伝導が著しく阻害される。そのためシリカエアロゲルは優れた断熱性を有する。
例えばシリカエアロゲルの製法としては、アルコキシシランを原料として用い、該アルコキシシランの加水分解生成物を重縮合させて得られるゲル状化合物を、分散媒の超臨界条件下で乾燥する方法が知られている(特許文献1)。あるいは、ケイ酸アルカリ金属塩を原料として用い、該ケイ酸アルカリ金属塩を陽イオン交換樹脂に接触させるか、又は該ケイ酸アルカリ金属塩に鉱酸を添加することによってゾルを作成し、該ゾルをゲル化させた後に、該ゲルを分散媒の超臨界条件下で乾燥する方法も知られている(特許文献2及び3)。
このような方法によって製造されるシリカエアロゲルは微細なシリカ骨格を有するため、高い空隙率を有するにも関わらず、優れた機械的強度を示す。
上記公知の製造方法においては、ゲル中の分散媒を超臨界条件下で乾燥除去することにより、乾燥収縮を抑制しつつ分散媒を気体に置換し、高い空隙率を有するシリカエアロゲルの製造を可能にしている。しかし、上記の超臨界条件により乾燥したシリカエアロゲルは、超臨界条件を実現するためにかかるコストが多大であるため、実際の用途はそのような高いコストに見合う特殊なものに限定される。そのため、コスト低減を目的とした常圧乾燥法が提案されている(特許文献4)。
例えば、断熱塗料用の添加剤として用いる用途、真空断熱材の芯材として用いる用途、不織布と複合化して断熱シートとして用いる用途などがある。このような用途においては、断熱性能に寄与するシリカエアロゲルの特徴として、細孔容量が大きいこと、また嵩密度が小さく空隙率が大きいことが挙げられ、シリカエアロゲルは有効な断熱材料と考えられる。
断熱塗料用フィラーとして樹脂等の基材に充填する際には、断熱性能は添加量に依存することが一般的だが、シリカエアロゲルにおいては、添加した際の粘度上昇が著しく、添加量を増やすことが課題となっている。
基材の粘度上昇を抑制するには、基材に対するフィラーの表面積を小さくすることが効果的であると考えられる。例えば、フィラーの形状を不定形ではなく球形にする、フィラーの粒径を大きくする、粒度分布をブロードにする方法などがある。
球状シリカエアロゲルを作製するにあたっては、出願人の先願特許(特許文献5)にあるように、シリカゾル水溶液を、ミキサーやホモジナイザーを用いて乳化させてW/O型エマルションを得た後、シリカゾルをゲル化させる方法が提案されている。また、上記ミキサーの内でも特に、エレメントを複層内蔵した静止型混合機(スタティックミキサー)を用いることにより、粒度分布がシャープな球状シリカゲルを得ることが提案されている(特許文献6)。
米国特許第4402927号公報 特開平10−236817号公報 特開平06−040714号公報 特開平07−257918号公報 特開2014−088307号公報 特許第3500979号公報
上記従来技術で得られた球状シリカエアロゲルは、斯様に球形状であることから樹脂等の基材にかなりに良好な充填性で配合することができる。しかし、例えば、断熱フィラーとして基材に添加した場合において、より効果的に断熱効果を発揮させる等、それぞれの用途において、その配合目的の効果を十分に発揮させるためには、前記充填性はさらに向上させることが望まれている。しかしながら、これら従来の製法で得られた球状シリカエアロゲルは、シリカゾル水溶液を乳化させて得たW/O型エマルションにおいて、水性シリカゾルを分散質(W相)が球形状であるだけでなく、その粒径も狭い分布で揃っており、そのため得られる該シリカエアロゲルは粒度分布もかなりにシャープで、これらを用いたのでは粒径を違えて密に充填する観点からは十分に充填性は高められなかった。特に、乳化する際に、前記スタティックミキサーを用いる方法では、このスタティックミキサーは、一般的には、ヒネリ板が複数枚設けられたヒネリ型(スクリュー型)が使用されており、これを用いたのではやはり、エマルションにおいてW相の分布はやはりシャープになり、上記充填性の高い球状シリカエアロゲルを得る目的に対して満足できていなかった。
従って、本発明の課題は、良好な球形性状を有するシリカエアロゲルにおいて、粒度分布が適度にブロードであり、充填性に高度な優れる上記球状シリカエアロゲルを提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エマルジョン形成時に、特定の衝突型スタティックミキサーを用いれば、粒度分布がブロードな新規な球状シリカエアロゲルが得られ、前記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、BET法による比表面積が400〜1000m/gであり、BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、コールターカウンター法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が1〜50μmであり、体積基準累積10%径(D10)と体積基準累積90%径(D90)との比(D10/D90)が0.40以下であることを特徴とする球状シリカエアロゲルである。
本発明の球状シリカエアロゲルは、見掛嵩密度が不定形シリカエアロゲルと比べて大きく、かつ、粒度分布がブロードである為、フィラーとして基材へ添加した場合、基材への充填率が高く、効率よくフィラー添加の効果が得られる。
例えば、断熱フィラーとして基材に添加した場合には、より効果的に断熱効果を発揮する。また、その応用例を例示するのであれば、化粧品用途、塗料用艶消し剤用途など、一般的なシリカエアロゲルの使用方法が挙げられる。
本発明の球状シリカエアロゲルの好適な製造工程を示すフローチャート。 衝突型スタティックミキサーの一構成例を示す模式断面図。 衝突型スタティックミキサーの好適例を示す模式断面図。
以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。また、特に断らない限り、数値範囲について「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
一般的にシリカエアロゲルとは、湿潤シリカゲル中に含まれる溶媒を固体ネットワーク構造を保ったまま乾燥させ、空気に置換した多孔質シリカを言う。本明細書における球状シリカエアロゲルは超臨界乾燥に限らず、常圧乾燥によるものと同等の構造をもつ低密度多孔質シリカも含む。
また、シリカエアロゲルの形状は球状であり、これに起因して不定形よりも充填性に優れる。
本発明の球状シリカエアロゲルを構成する個々の独立粒子(二次粒子)は、その平均円形度が0.8以上である。好ましくは0.85以上である。なお「平均円形度」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、二次電子検出、低加速電圧(1kV〜3kV)、倍率1000倍で観察したSEM像を得、個々の粒子について下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め(画像解析)、この円形度Cを2000個以上の粒子について相加平均値として出した値である(画像解析法)。なおこの際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
Figure 0006932572

[式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。]
平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、当該球状シリカエアロゲルを構成する個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。
本発明の球状シリカエアロゲルは、BET法による比表面積(BET比表面積)が400〜1000m/gであり、好ましくは、500〜900m/g、より好ましくは、500〜800m/gである。比表面積が大きいほど、球状シリカエアロゲルの独立粒子(二次粒子)の多孔質構造(網目構造)を構成する一次粒子の粒子径が小さく、より複雑な網目構造を有することにより粒子強度が向上し、基材に添加、分散させた際の細孔破壊を防止する上で好ましい。しかしながら、上記範囲を超えて大きくなると、球状シリカエアロゲルの細孔構造を形成することが難しくなり、結果的に細孔が潰れてしまう。
なお、当該BET法による比表面積は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得し、BET法により解析して求めた値である。
本発明の球状シリカエアロゲルは、BJH法による細孔容積が3〜8mL/gであって、好ましくは3〜7mL/g、より好ましくは3.5〜6mL/gである。細孔容積が上記範囲を超えて小さい場合には、重量あたりの断熱効果が小さくなる為、好ましくない。
また、細孔容積が上記を超えて大きい球状シリカエアロゲルを得ることは難しく、得られた場合でも、細孔構造を形成する骨格強度が小さくなる為、基材に添加、分散させる際の負荷等により細孔が潰れるおそれがある。
本発明において、BJH法による球状シリカエアロゲルの細孔容積は、上記のBET比表面積測定の際と同様に吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951) により、解析して得られたものである。(以下において、「BJH細孔容積」ということがある。)本方法により測定される細孔は、半径1〜100nmの細孔であり、この範囲の細孔の容積の積算値が本発明における細孔容積となる。
本発明の球状シリカエアロゲルにおいて、比表面積と細孔容積が上記の好適な範囲内の場合には、上記BJH法による細孔半径のピークが、通常10〜50nmの範囲にあって、好ましくは10〜40nm、より好ましくは10〜30nmの範囲にある。細孔半径ピークが上記範囲を超えて大きい場合には、気体の対流伝熱により断熱効果が小さくなる為好ましくない。また、細孔半径ピークが上記範囲よりも小さい場合には球状シリカエアロゲルを得ることは難しい。なお、上記BJH法による細孔半径のピークは、前述の細孔容積と同様に吸着等温線をBJH法により解析して得られたものであり、細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸により細孔半径を横軸にとってプロットした細孔分布曲線(体積分布曲線)が最大のピークを取る細孔半径である。
本発明の球状シリカエアロゲルは、コールターカウンター法により測定された粒度分布における体積基準累積50%径(D50)、いわゆるメジアン径が、1.0〜30μmであり、好ましくは1.3〜25μmであり、より好ましくは1.5〜20μmである。メジアン径が上記範囲を超えて大きな球状シリカエアロゲルを作成することは難しく、得られた場合であっても基材に添加した際に脱落や割れが発生しやすい傾向にある。また、上記範囲を超えて小さい粒径の球状シリカエアロゲルは基材が細孔内部に埋没しやすくなり、断熱のような空隙を活かした用途には不向きである。
上記メジアン径は、具体的には、サンプル0.005gをエタノール(99.5voL%)40mLに加えたものを入れた容器を超音波洗浄機に入れ、90Wで15分間分散したものをサンプル液とし、コールターカウンター法により、粒度分布を測定し、得られた体積基準の累計50%径である。なお、同様に体積基準累計10%径をD10、体積基準累計90%径をD90と表す。
本発明の最大の特徴は、以上の基本的粒子性状を有する球状シリカエアロゲルにおいて、D10/D90が0.40以下であり、好ましくは、0.39以下であり、より好ましくは、0.38以下である点にある。一般に、D10/D90の値が大きい程、シャープな粒度分布を有することを意味する。
一方で、D10/D90の値が小さい程、ブロードな粒度分布を有するため、上記D10/D90の下限は特に限定されないが、敢えて挙げるならば、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。
なお、D10/D90が上記上限範囲を超えて大きな球状シリカエアロゲルは、粒度分布がシャープな為、基材に充填した際の充填性が悪化する。また、D10/D90が上記下限範囲を超えて小さい球状シリカエアロゲルを得ることは難しい。仮に得られたとしても、球状シリカエアロゲルの平均円形度が低下して前記範囲に入らない、もしくは、球状シリカエアロゲルの中に不定形シリカエアロゲルが混在し、球状シリカエアロゲルの歩留まりが低下するのが通常である。
本発明の球状シリカエアロゲルは、通常は疎水性を呈する。
一般に、シリカエアロゲルが疎水化されている場合、経時劣化の原因となる水分の吸着が少ないため、極めて有用である。また、超臨界乾燥プロセスを用いなくとも製造できるという観点からも、疎水化されていることは好ましい。
本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されている態様の具体例としては、シリル化剤等により処理されていることにより、表面にメチルシリル基が導入された態様を挙げることができる。
本発明の球状シリカエアロゲルが疎水性であるか否かは、当該粉末を純水と一緒に容器に入れ攪拌等を行うことにより極めて容易に確認できる。疎水化されていれば、その粉末は水に分散することなく、かつ、静置すれば水を下層、粉末を上層とする2層に分かれた状態を取り戻す。
また、本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されていることを示す指標の一つとして、後述する方法でM値を測定することでも疎水性であるか否かを判断できる。
M値の測定方法は、まず、本発明の球状シリカエアロゲルサンプル0.2gを50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより撹拌する。ここに、ビュレットを使用してメタノールをサンプルに直接接触しないように添加し、サンプルの全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定する。終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(VOL%)をM値とする。
Figure 0006932572

球状シリカエアロゲルが疎水化処理されている場合のM値は30〜60vol%であって、好ましくは、35〜60vol%であり、より好ましくは、40〜60vol%である。
また、本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されていることを示す指標の一つとして、炭素含有量を挙げることができる。球状シリカエアロゲルに含まれる炭素含有量は、1000〜1500℃程度の温度において、空気中、若しくは酸素中で酸化処理した際に発生する二酸化炭素の量を定量することにより、測定することができる。
本発明の球状シリカエアロゲルが疎水化されている場合、これに含まれる炭素含有量としては、5〜12質量%であり、好ましくは6〜11質量%、より好ましくは7〜10質量%である。一般的な疎水化処理により、本発明の球状シリカエアロゲルの上記物性を有したまま12質量%を超えて大きなものを得ることは難しい。
なお、前記の如く、空気中若しくは酸素中で酸化処理することにより、疎水化処理剤を除去し、親水性の球状シリカエアロゲルとすることもできる。酸化処理は一般的に使用される電気炉で行うことができ、400〜700℃、好ましくは500〜600℃の温度で、3時間以上保持することで、行うことができる。
上述の物性を有する本発明の球状シリカエアロゲルの製法は、特に限定されないが、本発明者らの検討によれば、以下に述べる方法によりしく製造することができる。
一般に、前記本発明の球状シリカエアロゲルの物性の内、その最大の特徴である粒度分布がブロードであることを除いた基本的性状を満足する該シリカエアロゲルは、前記した特許文献5に記載の方法により製造することができる。具体的には、図1に示すように、
(1)水性シリカゾルを調製する工程(水性シリカゾル調整工程S1);
(2)該水性シリカゾルをW相とする、W/O型エマルションを形成する工程(エマルション形成工程S2);
(3)前記シリカゾルを加熱によりゲル化させて、前記W/O型エマルションをゲル化体の分散液とする工程(ゲル化工程S3);
(4)O相とW相の2層に分離させる工程(W相分離工程S4);
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程(W相回収工程S5);
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程(シリル化処理工程S6);
(7)疎水性有機溶媒でゲル化体を抽出する工程(ゲル化体抽出工程S7);
(8)ゲル化体を回収する工程(ゲル化体回収工程S8);
を上記順に含んでなることを特徴とする球状シリカエアロゲルの製造方法である。
而して、この製造方法の上記「エマルション形成工程S2」において、水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させる手法は、ミキサー、ホモジナイザー等を使用する方法が行われている。ところが、斯様にホモジナイザーや、或いはミキサーでも、その混合が撹拌翼を流体内で回転させる通常方式のものを用いたのでは、混合は均質に行われ、得られるW/O型エマルションにおいて、水性シリカゾルを分散質(W相)の粒度分布は狭いものになり、結果として、製造される球状シリカエアロゲルの粒度分布も同じく狭く揃ったものにしかならない。また、仮に、この混合を弱める等して、W相の粒度分布をブロードなものとして得ようとしても、逆に、エマルション形状を安定化することが難しくなり、粒子同士が付着合一して良好な球状を保つことが難しくなる等の不具合が生じる。
さらに、このW/O型エマルション形成を、前記特許文献6のように、スタティックミキサーを用いて行っても、種々の形状のエレメントを複数内蔵していたり、汎用的なスタティックミキサーであった場合には、混合が均質に行われれば、得られる球状シリカエアロゲルの粒度分布は、やはりシャープになる結果を招く。
このような状況あっても、上記スタティックミキサーとして、衝突型と称される特異なもの用いる等して、
この「エマルション形成工程S2」を
(2)上記水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/O型エマルションを形成させる工程であって、該水性シリカゾルの分散を、衝突型スタティックミキサーを用い、該衝突型スタティックミキサーの圧力損失が0.02〜0.7MPaの範囲で実施するW/O型エマルション形成工程
とすれば、分散質(W相)はD50値が小粒径でかつ適度にブロードな粒度分布を有するものになり、得られる球状シリカエアロゲルは前記本発明での性状を全て満足するものになる。以下、この「エマルション形成工程S2」における、衝突型スタティックミキサーの使用の詳しい説明も含めて、係る球状シリカエアロゲルの製造方法の各工程を順に説明する。
(水性シリカゾル調整工程S1)
水性シリカゾル調整工程S1(以下、「S1」と略記することがある。)は、水性シリカゾルの公知の調整方法を適宜選択して実施すればよい。代表的な水性シリカゾルの調製方法としては、原料としてケイ酸アルカリ金属塩等を使用する方法や、アルコキシシランを加水分解する方法が挙げられる。
本発明において好ましく使用可能なアルコキシシランを具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
上記ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられ、組成式は、下記の式(3)で示される。
m(M2O)・n(SiO2) (3)
[式(3)中、m及びnはそれぞれ独立に正の整数を表し、Mはアルカリ金属原子を示す。]
上記のシリカゾル作製原料のなかでも、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムが好適である。以下、シリカゾル作成の原料としてケイ酸ナトリウムを用い、球状シリカエアロゲルとしてシリカを製造する形態を代表例として説明するが、他の金属源を用いた場合でも、公知の方法で水性シリカゾルの作製及びゲル化を行うことにより、同様にして本発明の球状シリカエアロゲルを得ることができる。
ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を用いる場合には、塩酸、硫酸等の鉱酸で中和する方法や、あるいは対イオンが水素イオン(H+)とされている陽イオン交換樹脂(以下、「酸型陽イオン交換樹脂」ということがある。)を用いる方法によって、ケイ酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属原子を水素原子で置換することで、シリカゾルを調製することができる。
上記の酸により中和することによってシリカゾルを調製する方法としては、酸の水溶液に対して、該水溶液を撹拌しながらケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を添加する方法や、酸の水溶液とケイ酸アルカリ金属塩の水溶液とを配管内で衝突混合させる方法が挙げられる(例えば特公平4−54619号公報参照)。
本発明において、調整したシリカゾルのpHを酸性域とする。具体的には、水性シリカゾルを調整する際に用いる酸の量は、ケイ酸アルカリ金属塩のアルカリ金属分に対する水素イオンのモル比として、1.05〜1.2とすることが望ましい。酸の量をこの範囲にした場合には調製したシリカゾルのpHは、1〜5程度となる。好ましくは2.5〜3.5である。
上記の酸型陽イオン交換樹脂を用いてシリカゾルを調製する方法は、公知の方法により行うことができる。例えば、酸型陽イオン交換樹脂を充填した充填層に適切な濃度のケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を通過させる手法、あるいは、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液に、酸型陽イオン交換樹脂を添加及び混合し、アルカリ金属イオンを陽イオン交換樹脂に化学吸着させて溶液中から除去した後に濾別するなどして酸型陽イオン交換樹脂を分離する手法等が挙げられる。その際に、用いる酸型陽イオン交換樹脂の量は、溶液に含まれるアルカリ金属を交換可能な量以上とする必要がある。
上記の酸型陽イオン交換樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、スチレン系、アクリル系、メタクリル系等のイオン交換樹脂であって、イオン交換性基としてスルフォン酸基やカルボキシル基を有するものを用いることができる。このうち、スルフォン酸基を有する、いわゆる強酸型の陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
なお、上記の酸型陽イオン交換樹脂は、アルカリ金属の交換に使用した後に、公知の方法、例えば硫酸や塩酸を接触させることで再生処理を行うことができる。再生に用いる酸の量は、通常は、イオン交換樹脂の交換容量に対して2〜10倍の量が用いられる。
上記の方法により作成したシリカゾルの濃度としては、ゲル化が比較的短時間で完了し、またシリカ粒子の骨格構造の形成を十分なものとして乾燥時の収縮を抑制でき、大きな細孔容量を得られやすい点で、シリカ分の濃度(SiO2換算)として20g/L以上とすることが好ましく、40g/L以上とすることがより好ましく、50g/L以上とすることが特に好ましい。その一方で、シリカ粒子の密度を相対的に小さくして、良好な細孔容積を得て、シリカ骨格自体による熱伝導(固体伝導)を低減することにより、良好な断熱性能が得られやすい点で、160g/L以下とすることが好ましく、120g/L以下にすることがより好ましく、100g/L以下とすることが特に好ましい。
(エマルション形成工程S2)
エマルション形成工程S2(以下、「S2」と略記することがある。)は、S1によって得た水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/Oエマルションを形成する工程である。すなわち、上記水性シリカゾルを分散質(W相)、疎水性有機溶媒を分散媒(O相)としてエマルションを形成させる。このようなW/Oエマルションを形成することにより、分散質であるシリカゾルは表面張力等により球状になるので、該球状形状で疎水性有機溶媒中に分散しているシリカゾルをゲル化させることにより、球状のゲル化体を得ることができる。このように、W/Oエマルションを形成する「エマルション形成工程S2」を経ることにより、0.8以上の高い円形度を有するシリカエアロゲルを製造することが可能になる。
特に、本発明では、該S2において、上記分散媒(O相)に、上記分散質(W相)が本願発明の規定する粒度分布を有するシリカエアロゲルが得られるよう、分散質(W相)のD50値が小粒径でかつ適度にブロードな粒度分布を有した状態で分散した、W/Oエマルジョンを形成することが重要である。
W/Oエマルジョンを形成する、即ち、水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させる方法としては、膜乳化、機械乳化などの手段が挙げられるが、膜乳化では膜出口付近でエマルションの合一化が起こりやすく、粒径制御が難しい為、機械乳化が好ましい。機械乳化の中でも駆動部を有する、高速回転型乳化装置(ホモミクサー、ローターステータ―)では、粒度分布が小さくて、かつ、シャープになり過ぎてしまう傾向があることから、圧力損失の小さい衝突型スタティックミキサーを用いる。
衝突型スタティックミキサーは、撹拌翼を流体内で回転する方式に対して、その名称のように動的な部位がなく駆動回転撹拌翼を有さず、流体流路の途中に介装され移送中の流体の流れに乱れ(渦流などの乱流)を発生させて撹拌・混合を行うようになしたものである。
本発明において、用いる衝突型スタティックミキサーの圧力損失が、好ましくは0.02〜0.7MPa、より好ましくは0.05〜0.65MPa、更に好ましくは0.07〜0.6MPaである。圧力損失が上記範囲を超えて大きくなると、粒度分布がシャープになってしまう傾向があり好ましくない。また、圧力損失が上記範囲を超えて小さくなると、シリカゾルと疎水性有機溶媒とが混合不足になり、W/Oエマルションを形成することが難しくなる
衝突型スタティックミキサーの圧力損失は、衝突型スタティックミキサーの流入口と流出口との圧力差で表され、衝突型スタティックミキサーの内部構造、邪魔板の構造、邪魔板の数、衝突型スタティックミキサーの長さ、流入口での線速、流体の密度等に帰因する。ここで、(2)W/O型エマルション形成工程において、衝突型スタティックミキサーの圧力損失の測定は、衝突型スタティックミキサーの流入口と流出口に設置された圧力計の指示値の差を取ることにより実施する。
ここで、スタティックミキサーには、ヒネリ型と衝突型(特開2001−335520号公報参照)があり、通常は前者のヒネリ型が汎用されている。即ち、ヒネリ型のスタティックミキサーは、流体流路中にヒネリ板を多数枚収納して、その下流側で流体を旋回流となして撹拌・混合するようになしたものである。上記流体の旋回流は下流側に比較的長距離に渡って存在することが認められており、上記ヒネリ板に加えて、この旋回流自体も流れの抵抗となる為、全体としての圧力損失が大きくなる。そして、斯様なヒネリ型スタティックミキサーを用いてエマルション形成した場合には、長い距離に渡って強く抵抗を受けつつエマルションが形成されるため、分散質(W相)はD50値が小粒径になるだけでなく、その均一性も過度に進行し粒度分布はシャープになり、本発明における、前記性状の球状シリカエアロゲルを得ることは困難になる。
本発明において、前記小粒径かつブロードな粒度分布を有する球状シリカエアロゲルを得るためには、スタティックミキサーとして、衝突型のもの、特には、被混合流体の流通経路の途中に介装連結されてなる、該被混合流体の流通経路よりも内径が大きい該スタティックミキサーを用いることが好ましい。即ち、衝突型スタティックミキサーは、被混合流体の流通経路中において、被混合流体の流れ方向に対して一定の角度で配設された邪魔板に該被混合流体を衝突させることによって、被混合流体の流れを変え、或いは流れの乱れを生じさせ、被混合流体の攪拌・混合を行うものである。例えば、流通経路の内周壁に邪魔板を植設し、この邪魔板によって被混合流体の流れを乱流にする形式のもの、あるいは、被混合流体の流れ方向に対して垂直に流体が衝突する衝突板を配設した形式などの各種のものがある。
好適には、図2に示した構造のものが使用される。図2に示す衝突型スタティックミキサーは、被混合流体の流通経路の途中に介装連結されるものであり、連結される流通経路より内径が大きいミキサー本体筒部20と、ミキサー本体筒部20の一端に配設され、流通経路の上流側と連結される上流側流入部21と、ミキサー本体筒部20の他端に配設され、流通経路の下流側と連結される下流側流出部22とを有する。
上流側流入部21には、流通経路の上流側から被混合流体が流入する流入口23が開口され、流入口23から流入筒部24が流入側に向けて突出され、流入筒部24の先端には、流通経路の上流側と連結するための流入側フランジ部25が連設されている。
下流側流出部22には、流通経路の下流側に被混合流体が流出する流出口26が開口され、流出口26から流出筒部27が流出側に向けて突出され、流出筒部27の先端には、流通経路の下流側と連結するための流出側フランジ部28が連設されている。
ミキサー本体筒部20内には、衝突筒体30が、その開口部31側を流入口23側に向けて配設される。衝突筒体30は、流入口23の内径以上の径であって、ミキサー本体筒部20の内径よりも小さい外径を有するのが好ましい。こうした衝突筒体30は、その外周面からミキサー本体筒部20の内周面に向けて放射状に配設された複数の固定用翼板32によって、ミキサー本体筒部20内に同心状に固定されている。
また、この衝突型スタティックミキサーにおいて、衝突筒体30の内底面33、衝突筒体30の筒体内周面36、上流側流入部21の上流側内面部37、下流側流出部22の下流側内面部38、さらにミキサー本体筒部20の本体内周面39のいずれか一カ所、あるいはいずれかの複数箇所に、凹部が設けられていると、凹部に衝突した水性媒体は小さな渦流を多数発生(微分的撹拌)してより細かく撹拌・混合され、細かい渦流が全体的に大きな反転流に乗って攪拌され(積分的撹拌)、この強力な撹拌作用により、被混合流体における分散質(W相)と分散媒(O相)との混合が十分に行われて好ましい。例えば、図3に示す通り、衝突筒体30の内底面33に多数の凹部34が形成されていると、好ましい。
凹部34,34,34・・・はその形状(平面形状、断面形状とも)を適宜設定すればよく、通常は半球状のものを使用するが、各種断面形状等となしてもよく、さらには、図示はしていないが凹部の平面形状も適宜選定することができる。また、個々の凹部は、それぞれ異なる形状であってもよく、同一の形状であってもよい。
上記図2に示す構造の衝突型スタティックミキサーでは、流入口23と衝突筒体30の開口部31とは対向する位置にあり、流入口23から矢印Aで示すように流入した被混合流体は、そのほとんどが矢印Bで示すように開口部31を通って衝突筒体30内に流入し、衝突筒体30の中心軸周辺に沿って流入した被混合流体は、内底面33に向けて流れ内底面33に衝突して矢印Cで示すように筒体内周面36に沿って逆流する。この逆流した流れは、矢印Dで示すように、流入口23から、衝突筒体30の内周面に沿って流入した流れと衝突し混合される。次に、合流した流れは、矢印Eで示すように、衝突筒体30の外周側に移動し、衝突筒体20とミキサー本体筒部20との間を通って、下流側流出部22の下流側内面部38に衝突し、矢印Fで示すような中心に向かう流れとなり、四方から流れてくる被混合流体同士は相互に衝突し、矢印Gに示すように、流出口26より下流側流通経路に流出する。
斯くして被混合流体は、複雑に攪拌・混合され、球状シリカエアロゲルを製造する際のW/Oエマルジョン形成であれば、分散質(W相)は、該球状シリカエアロゲルに所望される、前記小粒径の要件を満足したものになる。しかも、斯様に小粒径でありながら、その粒度分布は、得られる球状シリカエアロゲルにおいて、前記本発明において所望される適度にブロードな要件が維持される。
この理由は必ずしも明確ではないが、その発現には、前記衝突型スタティックミキサーの特異構造が作用している。即ち、上記衝突型スタティックミキサーにおいて、ミキサー本体筒部に設けられる、邪魔板(衝突筒体30)が、小数部数(通常1部)で設けられること、さらに該スタティックミキサーの内径(ミキサー本体筒部20の内径)が、被混合流体の流通経路の内径(上流側流入部21及び下流側排出部22の各口径)よりも大きいことが作用している。
斯様な構造の場合、ミキサー本体筒部に設けられる邪魔板(衝突筒体30)は、前記小数部数であるため、分散質(W相)と分散媒(O相)は短時間しか混合作用を受けない。よって、その前記D50値が小粒径の範囲になるように、高効率に混合されたとしても、その粒度分布が過度にシャープになるほど、長くは混合されない。しかも、前記スタティックミキサーにおける、その内径が被混合流体の流通経路の内径よりも大きい構造は、被混合流体流通経路からの流入口の下流側周縁付近において、流体の流れによるオリフィス作用を生じさせ減圧効果を生む。そして、この減圧域の存在が、被混合流体の流れが邪魔板に衝突し流れ方向を変更して逆流する助けとなり、圧力損失が低減される。これらから、分散質(W相)が受ける抵抗はさらに穏やかになり、エマルション形状は安定化し、粒子同士の付着合一も抑制されるため、前記適度にブロードな性状が維持されると考えられる。
ここで、衝突型スタティックミキサーの内径は、被混合流体の流通経路の内径に対して、2〜10倍の大きさであるのが好ましく、さらには5〜9倍の大きさであるのがより好ましい。
上記構造の衝突型スタティックミキサーは、詳しくは、前記特開2001−335520号公報や、特開平11−8291号公報、特開平9−299776号公報に記載のものが良好に使用できる。また、市販品としては、シンユー技研(製)スーパースタティックミキサー(以下、SS.Mと記述する)、(株)OHR流体工学研究所製OHRミキサー等が挙げられる。なかでも粒度分布の広いエマルジョンを形成し易い点でSS.Mを用いることが好ましい。
本発明で規定する範囲の粒度分布を有する球状シリカエアロゲルを得る為の衝突型スタティックミキサーの運転条件は使用するスタティックミキサーによって圧力損失が上記範囲となるよう設定すればよく、特に限定されるものではないが、被混合流体の流通経路からの流入口部分の線速を0.1〜12m/s、好ましくは、0.2〜10m/s、より好ましくは、0.3〜8m/sに制御するのが好ましい。なお、線速の制御には、被混合流体の流通経路からの入口圧力を調整することで調整できるが、言うまでもなく、線速は係る流入口の口径に依存する為、入口圧力の明確な数値は特に規定しない。
線速が上記範囲を超えて大きくなると、粒度分布がシャープになってしまう傾向があり好ましくない。また、線速が上記範囲を超えて小さくなると、シリカゾルと疎水性有機溶媒とが混合不足になり、W/Oエマルションを形成することが難しくなる。
また、W/Oエマルションの形成は、混合される疎水性有機溶媒と水性シリカゾルの液温によっても、大きく影響を受ける。一般に液温が高くなると、形成される分散質(W相)の粒径は大きくなる傾向がある。本発明において、これら疎水性有機溶媒と水性シリカゾルの夫々の液温は、通常、0〜50℃、より好適には10〜40℃であり、この範囲から、使用する衝突型スタティックミキサーの形状的要件やその運転条件と組合わせて採択し、所望するW/O型エマルションを形成させれば良い。
(ゲル化工程S3)
ゲル化工程S3(以下、「S3」と略記することがある。)は、上記S2におけるW/Oエマルションの形成に引き続き、水性シリカゾルの液滴が疎水性有機溶媒中に分散している状態において水性シリカゾルをゲル化させる工程である。
上記水性シリカゾルの液滴中では、分散質としてシリカの1次粒子が分散ししており、該工程のゲル化により、該1次粒子が3次元網目構造を形成し、2次粒子を形成する。
通常、シリカゾルをゲル化する手段として、高温に加熱する手法や、或いはシリカゾルのpHを弱酸性ないし塩基性に調整する手法が用いられるが、本発明のゲル化工程では、pHを酸性域に維持したまま加熱することによりゲル化を行う。
上記pHは、前述のエマルジョン形成工程と同様にpHを2〜5の範囲内にしておくことが好ましく、2.5〜3.5の範囲内としておくことがより好ましく、2.5〜3.0の範囲内としておくことが特に好ましい。
ゲル化温度は、50℃〜80℃にすることが好ましく、60℃〜70℃にすることがより好ましい。ゲル化温度が上記範囲を超えて高いと比表面積が低くなり、低いとゲル化が十分に進行しない。
ゲル化にかかる時間(ゲル化時間)は、pHやゲル化温度、及びシリカゾル中のシリカ分の濃度にもよるが、例えばpH5、温度50℃、シリカゾル中のシリカ分の濃度(SiO2換算)が80g/Lの場合には、数分程度である。
ゲル化時間は、ゾルのpHや温度、シリカゾル中のシリカ分の濃度に依存するため一概には言えないが、30分〜24時間とすることが好ましく、5〜12時間とすることがより好ましい。ゾルのpH、温度、シリカ分の濃度が低いほど、ゲル化時間が長くなる。
(W相分離工程S4)
W相分離工程S4(以下、「S4」と略記することがある。)においては、前記分散溶媒をO相とW相に分離するものであり、一般的には解乳とも呼ばれている操作である。上記工程より得たゲル化体は、分離して得られたW相側に存在している。
当該W相分離方法としては、公知の方法を採用することが可能であるが、具体的には、水溶性有機溶媒の添加、塩の添加、遠心力の付与、酸の添加、濾過、容積比の変化(水又は疎水性有機溶媒の添加)等から選ばれる一つ、あるいは複数を組み合わせて実施することができる。好適には、一定量の水溶性有機溶媒をエマルション中に加えてO相とW相に分離することができる。この工程を経ると、一般に上層がO相、下層がW相となる。
上記の水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。このうち、イソプロピルアルコールは、後述のシリル化処理の際にも、処理の効率を高める上で効果があるため、好適に用いることができる。
上記の水溶性有機溶媒の添加量としては、エマルション形成時に用いた界面活性剤の種類および量によって調整することが好ましい。例えば、W/O型エマルジョンの界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを用いた場合には、O相の量に対して質量で0.1〜0.4倍程度の水溶性有機溶媒を加え、必要に応じて撹拌後、静置することにより、好適にO相とW相に分離することができる。また、上記水溶性有機溶媒と供に、水も、O相の量に対して質量で0.6〜0.9倍程度の添加量で加えるのが好ましい。
また、S4工程を行う場合の温度は特に限定されないが、通常は、20〜70℃程度で行うことができる。
(ゲル化体熟成工程S4’)
上記S4工程の後には、ゲル化体熟成工程S4’(以下、「S4’」と略記することがある。)を実施して、前述の操作によってゲル化した後、ゲルの熟成を行うのが好ましい。
本発明の球状シリカエアロゲルを構成する粒子の圧縮強度を向上させるという観点から、ゲル化後に0.5〜12時間程度、熟成を行うことによってゲル化反応(脱水縮合反応)を更に進行させることが好ましい。当該熟成は室温〜80℃程度で保持することによって行うことができる。好ましくは60℃で6時間、より好ましくは70℃で3時間保持することである。
(W相回収工程S5)
W相回収工程S5(以下、「S5」と略記することがある。)においては、前記W相の回収を行う。引き続き行われるゲル化体のシリル化処理の処理効率を向上させるため、上記S4で得られたO相とW相の分離溶媒から、例えばデカンテーション等でO相を除去し、W相を回収することができる。
なおここで、完全にO相を除去する必要はないが、当該W相に含まれるゲル化体をシリル化処理する工程において、効率的にシリル化処理を行うためにはW相に含まれるO相の割合はなるべく少ない方が良く、W相中に含まれる量としては、20wt%以下が好ましく、さらに好ましくは10wt%以下である。
(シリル化処理工程S6)
シリル化処理工程S6(シリル化処理工程S6。以下単に「S6」と略記することがある。)においては、上記W相回収工程S5の後にシリル化剤を用いてゲル化体をシリル化処理する。シリル化処理に得られる球状シリカエアロゲルは疎水性を呈するものになり、後に施される、ゲル化体回収工程S7で、該ゲル化体を乾燥する際に収縮が抑制されて、エアロゲルとしての多孔質な構造を保持した粉体を得ることを可能にさせる。
本発明において使用可能なシリル化剤としては金属酸化物(ここではシリカである。)表面に存在するヒドロキシ基:
M−OH (4)
[式(4)中、Mは金属原子を表す。式(4)においてはMの残りの原子価は省略されている。]
と反応し、これを
(M−O−)(4−n)SiRn (5)
[式(5)中、nは1〜3の整数であり、Rは炭化水素基であり、nが2以上である場合には、複数のRは同一でも相互に異なっていてもよい。]へと変換することが可能なシリル化剤を一例として挙げることができる。
このようなシリル化剤を用いてシリル化処理を行うことにより、シリカエアロゲル表面のヒドロキシ基が疎水性のシリル基でエンドキャッピングされて不活性化されるので、表面ヒドロキシ基相互間での脱水縮合反応を抑制できる。よって、臨界点未満の条件で乾燥を行っても乾燥収縮を抑制できるので、3mL/g以上のBJH細孔容積を有する疎水性シリカエアロゲルを得ることが可能になる。
上記のシリル化剤としては、以下の一般式(6)〜(7)で示される化合物が知られている。
RnSiX(4−n) (6)
[式(6)中、nは1〜3の整数を表し;Rは炭化水素基等の疎水基を表し;Xはヒドロキシ基を有する化合物との反応においてSi原子との結合が開裂して分子から脱離可能な基(脱離基)を表す。nが2以上のとき複数のRは同一でも異なっていてもよい。また、nが2以下のとき複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
Figure 0006932572

[式(7)中、R1はアルキレン基を表し;R2及びR3は各々独立に炭化水素基を表し;R4及びR5は各々独立に水素原子又は炭化水素基を表す。]
Figure 0006932572

[式(8)中、R6及びR7は各々独立に炭化水素基を表し、mは3〜6の整数を表す。複数のR6は同一でも異なっていてもよい。また、複数のR7は同一でも異なっていてもよい。]
上記式(6)において、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基である。
Xで示される脱離基としては、塩素、臭素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;−NH−SiR3で示される基(式中、Rは式(6)におけるRと同義である)等を例示できる。
上記式(6)で示されるシリル化剤を具体的に例示すると、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。反応性が良好である点で、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンが特に好ましい。脱離基Xの数(4−n)に応じて、シリカエアロゲル骨格上のヒドロキシ基と結合する数は変化する。例えば、例えば、nが2であれば:
(M−O−)2SiR2 (9)
という結合が生じることになる。また、nが3であれば:
M−O−SiR3 (10)
という結合が生じることになる。このようにヒドロキシ基がシリル化されることにより、シリル化処理がなされる。
上記式(7)において、R1はアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。
上記式(7)において、R2及びR3は各々独立に炭化水素基であり、好ましい基としては、式(6)におけるRと同様の基を挙げることができる。R4は水素原子又は炭化水素基を示し、炭化水素基である場合には、好ましい基としては、式(6)におけるRと同様の基を挙げることができる。この式(7)で示される化合物(環状シラザン)でゲル化体を処理した場合には、ヒドロキシ基との反応によりSi−N結合が開裂するので、ゲル化体中のシリカエアロゲル骨格表面上には
(M−O−)2SiR2R3 (11)
という結合が生じることになる。このように上記式(7)の環状シラザン類によっても、ヒドロキシ基がシリル化され、シリル化処理がなされる。
上記式(7)で示される環状シラザン類を具体的に例示すると、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン等が挙げられる。
上記式(8)において、R6及びR7は各々独立に炭化水素基であり、好ましい基としては、式(6)におけるRと同様の基を挙げることができる。mは3〜6の整数を示す。この式(8)で示される化合物(環状シロキサン)でゲル化体を処理した場合、ゲル化体中のシリカエアロゲル骨格表面上には、
(M−O−)2SiR6R7 (12)
という結合が生じることになる。このように上記式(8)の環状シロキサン類によっても、ヒドロキシ基がシリル化され、シリル化処理がなされる。
上記式(8)で示される環状シロキサン類を具体的に例示すると、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
上記のシリル化処理の際に使用する処理剤の量としては、処理剤の種類にもよるが、ヘキサメチルジシロキサンを処理剤として用いる場合には、シリカ100重量部に対して10〜150重量部が好適である。より好ましくは20〜130重量部であり、更に好ましくは30〜120重量部である。
上記のシリル化処理の条件は、S5工程で分離したW相に対して、シリル化処理剤を加え、一定時間反応させることにより行うことができる。例えばシリル化処理剤としてジメチルジクロロシランを用い、処理温度を50℃とした場合には、4〜12時間程度以上保持することで行うことでき、オクタメチルシクロテトラシロキサンを用い、処理温度を70℃とした場合には6〜12時間程度以上保持することで行うことができる。
また、シリル化処理剤としてオクタメチルシロクテトラシロキサン等の環状シロキサン類を用いる場合には、塩酸を添加することで溶液のpHを0.3〜1.0とすることが、反応の効率を高める上で好ましい。
当該シリル化処理工程においては、W相中への処理剤の溶解度を高めて、反応の効率を高める目的で、水溶性有機溶媒を加えることが好ましい。この水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。このうち、イソプロピルアルコールを好適に用いることができる。
上記水溶性有機溶媒は、W相中の濃度が、20〜80wt%程度になるように加えることが好ましい。S4工程において、W相を分離する際に水溶性有機溶媒を加えた場合には、本S6工程においてもそのまま使用することが可能である。
(ゲル化体抽出工程S7)
ゲル化体抽出工程S7(以下、「S7」と略記することがある。)においては、上記S7におけるシリル化処理の後にゲル化体を疎水性有機溶媒中に抽出する。ゲル化体抽出に用いる疎水性有機溶媒の選定基準としては、後の乾燥工程の際、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。具体的にはヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等を用いることができ、好適にはヘキサン、ヘプタン、トルエンを用いることが出来る。
上記の疎水性有機溶媒への抽出を行った後に、ゲル化体に含まれる塩分や、疎水性有機溶媒中に含まれる硫酸塩等を除去するために、当該有機溶媒を水或いはアルコールの水溶液で洗浄を行うことが好ましい。この洗浄操作は、公知の方法で行うことができる。洗浄効率を上げる上では、数10wt%程度のイソプロピルアルコールの水溶液を用いることが好ましい。また、疎水性有機溶媒の沸点を超えない範囲で、高温にすることが洗浄効率を高める上では好ましい。通常は、45〜70℃の範囲で行うことができる。
(ゲル化体回収工程S8)
ゲル化体回収工程S8(以下、「S8」と略記することがある。)においては、上記S8におけるゲル化体抽出工程において得られた疎水性有機溶媒に分散しているゲルを濾別し、疎水性有機溶媒を除去(すなわち乾燥)する。乾燥する際の温度は、溶媒の沸点以上で、表面処理剤の分解温度以下であることが好ましく、圧力は常圧ないし減圧下で行うことが好ましい。
製造方法においては、上記S1からS8を経ることにより、本発明の球状シリカエアロゲルを得ることができる。
本発明に関する上記説明では、球状シリカエアロゲル、及び球状シリカエアロゲルの製造方法を主に例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。
(物性、及び用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、ブロードな粒度分布を有している為、配合対象に対して高充填が可能となる。従って、幅広い用途に好適に用いることができるが、特には、下記詳述するように、断熱塗料、断熱シート等の断熱性付与剤、化粧品用添加剤、艶消し剤用途、薬物担体用途として適している。
他に、吸着剤や、アクリル板やガラス板などの透明な筐体に充填し採光断熱窓等としても使用できる。
(断熱性付与剤用途)
本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として樹脂や塗料に充填して用いる場合、基材となるものが、シリカエアロゲルの細孔構造を埋没、あるいは、破壊しないことが好ましい。
例えば、断熱塗料として用いる場合、基材は、水性エマルション樹脂や水溶性樹脂が好ましく、水の含有量としては90VOL%未満が好ましい。
これらの基材を例示するならば、酢酸ビニルホモポリマー分散液、酢酸ビニル共重合体分散液、エチレン−酢酸ビニル分散液、スチレン−アクリレート共重合体分散液、スチレン−ブタジエン共重合体分散液、アクリレート分散液、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、ポリビニルアルコール水溶液等がある。
また、本発明の球状シリカエアロゲルを断熱性付与剤として基材に添加した際に、気泡が発生した場合には、既知の方法で脱泡することができる。例えば、減圧環境下においても良いし、遠心脱泡しても良い。
(化粧品用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、化粧品用添加剤として好適に用いることができる。たとえば、ファンデーションの添加剤として使用した場合には、適度な粒度分布及び比表面積を有するため、外観保持性に優れ、滑らかな触感が得られる。加えて、シリカエアロゲルの一般的な性質として吸油量が高く、皮膚及び頭皮表面の脂分を効率良く吸収するため、テカリ防止性に優れる。また、疎水性を呈し汗をはじく効果もあることから、上記ファンデーション以外の、ペースト、クリームタイプのメイクアップ・スキンケア化粧料、さらにはデオドラント用品、整髪料などの化粧品としても好適に用いることができる。
(艶消し用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、艶消し剤として使用した場合、D10/D90が小さく、すなわち、ブロードな粒度分布を有する為、塗膜中への充填率が高く、よって、良好な艶消し性を得ることができる。
艶消し剤として使用する場合には、通常、本発明の球状シリカエアロゲルを有機樹脂に分散させて使用する。
本発明における艶消し剤と有機樹脂とを含む艶消し塗料において、有機樹脂は任意のものを使用できる。例えば、樹脂の種類からいって、油性塗料、ニトロセルロース塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノアルキッド塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料等の慣用のそれ自体公知の塗料の他に、ロジン、エステルガム、ペンタレジン、クマロン・インデンレジン、フェノール系レジン、変性フェノール系レジン、マレイン系レジン、アルキド系レジン、アミノ系レジン、ビニル系レジン、石油レジン、エポキシ系レジン、ポリエステル系レジン、スチレン系レジン、アクリル系レジン、シリコーン系レジン、ゴムベース系レジン、塩素化物系レジン、ウレタン系レジン、ポリアミド系レジン、ポリイミド系レジン、フッ素系レジン、天然或いは合成の漆等の1種或いは2種以上を含有する塗料が挙げられる。また、用いる塗料は、その用い方によって、溶剤型塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗料等の任意のものであってよい。
この溶剤型塗料の有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘプタン、n−ヘキサン、アイソパー等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等の1種または2種以上を用いることができる。
紫外線(UV)硬化型塗料としては、ハイソリッドレジン、例えばUV硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
粉体塗料としてはポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、セルロース誘導体、ポリエーテル、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂の他、エポキシ樹脂、エポキシ/ノボラック樹脂、イソシアネート或いはエポキシ硬化型ポリエステル樹脂等が挙げられる。
本発明における艶消し剤の樹脂における添加量は、任意の割合で添加できるが有機樹脂100質量部に対して、1〜90質量部、好ましくは、3〜80質量部が適当である。これにより、少量の配合で塗膜表面に高度の艶消し効果を付与することができる。また同時に、塗膜面の耐引っ掻き性も向上することが推測される。
(薬物担体用途)
本発明の球状シリカエアロゲルは、薬物担体として好適に用いることができる。具体的には、薬物を球状シリカエアロゲルに含ませることで、生体内でさらに長時間継続して当該薬物を徐々に放出することができる。したがって、薬効持続時間を長く維持することができる。
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を示す。ただし本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例及び比較例の評価は以下の方法で実施した。
<評価方法>
実施例1〜5及び比較例1、2で製造した球状シリカエアロゲルに対して、以下の項目について試験を行った。
(平均円形度、および画像解析によるメジアン径の測定)
2000個以上の球状シリカエアロゲルについてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S−5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率1000倍で観察したSEM像を画像解析し、前述の定義に従って平均円形度を算出した。
(コールターカウンター法による粒度分布、メジアン径の測定)
粒度分布、メジアン径の測定は、前述の定義に従って、ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザーIIIを用いて測定を行った。なお、上記分散時間に関して、分散時間が10、15、20分で各々のメジアン径が0.1μm以上変化しないことを確認した。
(比表面積、細孔容積及び吸油量)
BET比表面積、及びBJH細孔容積の測定は、上述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP−miniにより行った。
(その他の物性値の測定)
熱伝導率の測定は、京都電子工業株式会社製迅速熱伝導率計QTM―500により行った。
炭素含有量(表1中の「C値」)の測定はelementar社vario MICRO cubeを用いて、温度1150℃において酸素とヘリウムをフローしながら参加処理し、発生した二酸化炭素の量を定量する事により測定し、金属酸化物粉末全量を基準(100質量%)とする質量%で算出した。
(断熱性評価サンプルの作製方法)
水性アクリルエマルション塗料(中央ペイント株式会社製、CPエコベース主材)に塗料中の固形分濃度で球状シリカエアロゲルが22重量%になるように添加した後、撹拌機を用い、1500rpm、1分間撹拌した。その後、アルミ皿(100mm×150mm)に硬化後の高さが10mm以上になるように適当な量を流し込み、減圧(−0.1MPaG)に保ったデシケーター内にて25℃で12時間静置して脱泡させ、その後、60℃で3日間乾燥させ、塗膜を作製した。
<実施例1>
(S1:水性シリカゾル調整工程)
硫酸1000gを撹拌羽根で撹拌しながら、珪酸ソーダ1000gを徐々に添加し、水性シリカゾルを調整した。このとき、pHは3.0であった。
(S2:エマルション形成工程)
S1で調整した水性シリカゾル1080gを分取し、1600gのヘプタンを加え、ソルビタンモノオレエートを16g添加した。この溶液をシンユー技研(株)製スーパースタティックミキサー(SS.M1.8A)を用いてW/Oエマルションを形成した。このとき、SS.M流入口の線速が2.3m/sになるようにポンプ吐出圧を調整した。このとき、SS.Mの流入口と流出口との圧力損失は0.15MPaであった。
(S3:ゲル化工程)
得られたエマルションを撹拌羽で撹拌しながら、70℃で6時間かけてゲル化した。
(S4:W相分離工程)
イソプロピルアルコール400gとイオン交換水600gを加えて、攪拌羽で攪拌しながらO相とW相を分離した。続けて、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を16g添加した。このとき、W相のpHは5.0であった。
(S4’:ゲル化体熟成工程)
70℃、3時間かけて、ゲル化体の熟成を行った。
(S5:W相回収工程)
デカンテーションにより、O相を除去することで、W相を回収した。
(S6:シリル化処理工程)
得られたW相に35%塩酸を100g、ヘキサメチルジシロキサンを120g添加し、撹拌しながら70℃のウォーターバスで12時間保持することにより、シリル化処理を行った。
(S7:ゲル化体抽出工程)
シリル化処理後、攪拌羽で攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液を71.4g添加し、中和処理を行った。続いて、ヘプタン1000gを加え、ゲル化体を抽出し、イオン交換水1000gで2回洗浄を行った。
(S8:ゲル化体回収工程)
得られたシリル化後のゲル化体を吸引濾過機により濾別した。ゲル化体の乾燥を真空圧力下、150℃で16時間以上加熱することで、本発明の球状シリカエアロゲルを得た。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<実施例2>
S2において、W/Oエマルションを形成する際のSS.M流入口の線速を1.2m/sにした以外は、実施例1と同様の操作を行った。SS.Mの流入口と流出口との圧力損失は0.1MPaであった。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<実施例3>
S2において、W/Oエマルションを形成する際のSS.M流入口の線速を8.2m/sにした以外は、実施例1と同様の操作を行った。SS.Mの流入口と流出口との圧力損失は0.3MPaであった。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<実施例4>
S2において、W/Oエマルションを形成する際のSS.M流入口の線速を11.6m/sにした以外は、実施例1と同様の操作を行った。SS.Mの流入口と流出口との圧力損失は0.6MPaであった。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<比較例1>
S2においてW/Oエマルションを形成する際のSS.M流入口の線速を14.1m/sにした以外は実施例1と同様の操作を行った。SS.Mの流入口と流出口との圧力損失は0.8MPaであった。
得られた球状シリカエアロゲルの物性を評価するため断熱性評価サンプルを作製するにあたり、前記添加量では粘度が上昇し、粘土状のものしか得られなかった。したがって、該比較例1で得られた球状シリカエアロゲルについては、塗料中の固形分濃度で球状シリカエアロゲルが10重量%になるように添加した。それ以外は、実施例と同様の方法で断熱性評価サンプルを作製した。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<比較例2>
S2において、SS.Mに変えて、株式会社プライミクス製ホモミクサーMARK IIを用い、回転数6000rpmで1分間撹拌し、W/Oエマルションを形成した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた球状シリカエアロゲルの物性の評価についても比較例1と同様に、前記添加量では断熱性評価サンプルを作製できなかった為、比較例1と同様の方法で断熱性評価サンプルを作製した。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<比較例3>
S2において、回転数10000rpmで1分間撹拌した以外は、比較例2と同様の操作を行った。
得られた球状シリカエアロゲルの物性の評価についても比較例1と同様に、前記添加量では断熱性評価サンプルを作製できなかった為、比較例1と同様の方法で断熱性評価サンプルを作製した。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
<比較例4>
S2において、回転数12000rpmで3分間攪拌した以外は、比較例2と同様の操作を行った。
得られた球状シリカエアロゲルの物性の評価についても比較例1と同様に、前記添加量では断熱性評価サンプルを作製できなかった為、比較例1と同様の方法で断熱性評価サンプルを作製した。エマルジョン形成時の攪拌条件、得られた球状シリカエアロゲルの物性及び断熱性評価の結果を表1に示す。
Figure 0006932572

Claims (9)

  1. BET法による比表面積が400〜1000m/gであり、
    BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、
    コールターカウンター法により測定された粒度分布において体積基準累積50%径(D50)値が1〜30μmであり、体積基準累積10%径(D10)と体積基準累積90%径(D90)との比(D10/D90)が0.40以下であることを特徴とする球状シリカエアロゲル。
  2. (1)水性シリカゾルを調製する工程
    (2)上記水性シリカゾルを疎水性有機溶媒中に分散させてW/O型エマルションを形成させる工程であって、該水性シリカゾルの分散を、衝突型スタティックミキサーを用い、該衝突型スタティックミキサーの圧力損失が0.02〜0.7MPaの範囲で実施するW/O型エマルション形成工程
    (3)前記シリカゾルを加熱によりゲル化させて、前記W/O型エマルションをゲル化体の分散液とする工程
    (4)O相とW相の2層に分離させる工程
    (5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
    (6)該分散液にシリル化剤を添加する工程
    (7)疎水性有機溶媒でゲル化体を抽出する工程
    (8)ゲル化体を回収する工程
    を上記順に含んでなることを特徴とする球状シリカエアロゲルの製造方法。
  3. (2)W/O型エマルション形成工程において、衝突型スタティックミキサーが、シリカゾル(被混合流体)の流通経路の途中に介装連結されてなる、該被混合流体の流通経路よりも内径が大きい衝突型スタティックミキサーである請求項2記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
  4. 衝突型スタティックミキサーにおける、被混合流体流入口部分の線速が0.1〜12m/sの条件として、水性シリカゾルの疎水性有機溶媒中への分散を実施する、請求項3記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
  5. (2)W/O型エマルション形成工程において、疎水性有機溶媒と水性シリカゾルの液温が夫々0〜50℃である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の球状シリカエアロゲルの製造方法。
  6. 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる断熱性付与剤。
  7. 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる化粧品用添加剤。
  8. 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる艶消し剤。
  9. 請求項1に記載の球状シリカエアロゲルからなる薬物担体。
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