JP2019014986A - 書籍用紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット印刷のインクの定着が良好であり、裏抜け防止性と手触り感(ぬめり感)に優れた書籍用紙を提供する。【解決手段】基紙と、当該基紙の少なくとも一方の面に設けられたインク受容層とを有する書籍用紙であって、前記基紙は、炭酸カルシウムおよびホワイトカーボンを含有し、前記インク受容層は、バインダーとポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂を含有することを特徴とする書籍用紙である。前記基紙は広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプを含有することが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット印刷が可能な書籍用紙に関するものである。
書籍の印刷は、主にオフセット印刷による大量部数の印刷方式によって行われている。しかし、近年、特定の読者をターゲットとした少部数の印刷に対する需要が増大している。さらに、インターネットの普及に伴い、書籍をオンデマンドで受注し、注文に応じて印刷するという方式によって書籍を供給する形態が増大しつつある。
このような形態に対応し得る印刷方法として、インクジェット印刷が注目されている。インクジェット印刷では、オフセット印刷のように製版する必要がなく、時期を選ばず迅速に、少部数を印刷することが可能である。そのため、上記のような多品種少量の書籍の出版やオンデマンドによる書籍の出版に適合している。
このような背景から、インクジェット印刷に適用し得る書籍用紙が求められている。インクジェット印刷が可能な書籍用紙の開発は既に行われている。例えば、特許文献1には、水溶性高分子物質及び疎水性高分子のエマルジョンから選ばれる少なくとも1種とサイズ剤とを含有するクリア塗工層を有する書籍用紙が開示されている。
特開2015−190087号公報
しかし、特許文献1に記載の書籍用紙は、インクジェット印刷用インクの定着が十分ではなく、また坪量をさらに下げたときに裏抜けが不十分となる懸念を有するものであった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、インクジェット印刷用インクの定着が良好であり、裏抜け防止性と手触り感(ぬめり感)に優れた書籍用紙を提供することを課題とする。
本発明者らは、基紙に炭酸カルシウムとホワイトカーボンを含有させ、インク受容層にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂を含有させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下のような構成を有している。
(1)本発明の書籍用紙は、基紙と、当該基紙の少なくとも一方の面に設けられたインク受容層とを有する書籍用紙であって、前記基紙は、炭酸カルシウムおよびホワイトカーボンを含有し、前記インク受容層は、バインダーとポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂を含有することを特徴としている。
(2)前記基紙は、広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプを含有することが好ましい。
(3)前記基紙における広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとの質量比は、98:2〜60:40であることが好ましい。
(4)前記インク受容層は、カチオン系サイズ剤を含有することが好ましい。
(5)前記ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の含有量は、前記インク受容層に対して10〜25質量%であることが好ましい。
(6)前記基紙は、タルクを含有することが好ましい。
(7)前記書籍用紙の坪量は、40〜65g/mであることが好ましい。
本発明の書籍用紙は、インクジェット印刷用インクの定着が良好であり、裏抜け防止性と手触り感(ぬめり感)に優れている。
本発明の実施形態について説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の書籍用紙は、基紙と、当該基紙の少なくとも一方の面に設けられたインク受容層とを有している。本実施形態の書籍用紙は、オフセット印刷およびインクジェット印刷のいずれの印刷方法にも使用可能である。以下、書籍用紙の各層を構成する材料について説明する。
[基紙]
基紙は、木材パルプを主成分とすることが好ましい。ここで、「木材パルプを主成分とする」とは、基紙を構成する材料として、木材パルプを50質量%以上含有することを意味している。基紙を構成するパルプとしては、木材パルプであれば特に限定されず、通常製紙用として使用される木材パルプが使用できる。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(GP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の未晒、半晒、あるいは晒パルプ、亜硫酸パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。
基紙のパルプとしては、広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプを含有することが好ましい。広葉樹クラフトパルプは、地合と寸法安定性に優れているため、多量に含有させることが好ましい。一方、針葉樹クラフトパルプは、繊維が太くて長いため、針葉樹クラフトパルプを含有させると、引張強度を増大させて紙を破れにくくさせる。しかし、針葉樹クラフトパルプは、フェザリングが発生する原因となり、細線再現性を低下させるため、多量に含有させることは好ましくない。そこで、広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとの質量比は、98:2〜60:40とすることが好ましい。さらに、広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとの質量比は、95:5〜70:30であることがより好ましい。
書籍用紙では、文字を読む際の目の疲れを低減させるため、白色度を低下させ、クリーム色等に着色させる場合が多い。したがって、白色度を低下させる目的で、着色している脱墨古紙パルプ(DIP)を全パルプに対して10質量%以下の少量添加してもよい。
基紙のパルプのJIS P 8121:1995に準じて測定したカナダ標準パルプ濾水度(フリーネス、叩解度)は、基紙の強度、基紙の厚み不足によるインクジェット印刷におけるインク裏抜け防止の観点から、400〜600mlとすることが好ましく、520〜580mlとすることがより好ましい。400ml以下であるとパルプ繊維がつぶれている為、基紙の厚みが低下し、インクジェット印刷におけるインク裏抜けが発生し、600ml以上であると基紙の強度が低下する。
基紙に使用されるパルプは、例えば、ビーター、ジョルダン、シングルディスク・リファイナー、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、デラックス・ファイナー、ダブル・ディスク・リファイナー(DDR)、媒体攪拌ミル、振動式ミル等の叩解機により上記した叩解度となるように調製される。叩解の条件は特に限定されないが、叩解後のパルプの物性は、各種リファイナーの刃の形状、回転数、パルプの濃度、パルプの繊維長、パルプの粗度等による影響を受けるので、所望の叩解度が得られるように適宜叩解条件が選択される。
(填料)
基紙には填料として、炭酸カルシウムとホワイトカーボンが添加され、必要に応じてタルクが添加される。
炭酸カルシウムは、インクジェット印刷用インクの溶剤(Vehicle)の吸収材として働き、書籍用紙のインクの吸収性を向上させるのに有効である。さらに炭酸カルシウムは、インクの裏抜け防止にも有効である。炭酸カルシウムの含有量は、填料総質量100%に対して60〜100質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましい。
ホワイトカーボンは、湿式シリカの一種であり、沈降シリカとも呼ばれ、多孔質の嵩高な微粒子である。そのため、インクの裏抜けを防止することが可能であり、特に低坪量の紙のときに有効である。また、ホワイトカーボンは、水分やインクを吸収するので、ぬめりやべたつき等の手触り感を改善し、臭気を低減させることにも有効である。ホワイトカーボンの含有量は、填料総質量100%に対して1〜10質量%が好ましく、2〜6質量%がより好ましい。
タルクは、着色顔料として、クリーム色等に着色するのに有効である。タルクの含有量は、填料総質量100%に対して10〜30質量%が好ましい。
填料としては、他に、例えば、二酸化チタン、カオリン、亜硫酸カルシウム、石膏、非晶質シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等が挙げられる。また、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。これらの填料は必要に応じて添加される。
填料は、合計の含有量として、基紙の総質量100%に対して7〜30質量%が好ましく、13〜20質量%がより好ましい。
基紙は、サイズ剤を含有することが好ましい。サイズ剤を基紙に含有させることにより、インクジェット印刷用インクの裏抜けを抑制することができる。サイズ剤としては特に限定されないが、インクの吸収性を高めることが可能な中性サイズ剤が好ましい。サイズ剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系等のサイズ剤が挙げられる。これらの中では、中性サイズ剤である、アルケニル無水コハク酸系およびアルキルケテンダイマー系から選択される少なくとも一種であることが好ましく、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤がより好ましい。サイズ剤の含有量は、基紙の総質量100%に対して0.01〜0.20質量%が好ましく、0.05〜0.10質量%より好ましい。
基紙にはさらに、他の添加剤を含有させてもよい。他の添加剤としては、硫酸アルミニウム、カチオン澱粉、カチオン性高分子電解質等に代表される定着剤、ポリアクリルアミド系ポリマー、澱粉等に代表される紙力増強剤、メラミン樹脂、尿素樹脂等の湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、pH調整剤等を挙げることができる。
基紙の坪量は、特に限定されないが、40〜65g/mであることが好ましく、55〜62g/mがより好ましい。基紙の坪量を上記範囲内とすることにより、書籍用紙として必要な強度を保持させることができる。
[インク受容層]
インク受容層は、インクジェット印刷するときは、インクジェット印刷用インクを受容する層であり、オフセット印刷するときは、オフセット印刷用インクを受容する層である。インク受容層は、バインダーとポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂を含有している。また、インク受容層は基紙表面から内部に向かって浸透した状態で形成される。
(バインダー)
バインダーは、基紙上に塗膜を形成するために用いられる。バインダーは、紙用の塗工層に用いられるものであれば、特に制限されない。バインダーとしては、例えば、水溶性セルロース類、天然水溶性高分子誘導体類、水溶性高分子、樹脂水分散液等を挙げることができる。ここで、水溶性セルロース類には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等がある。天然水溶性高分子誘導体類には、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、プルラン、カゼイン等がある。水溶性高分子には、澱粉、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等がある。樹脂水分散液には、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等がある。また、澱粉誘導体には、アルキル変性澱粉、カチオン化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等がある。これらの中では、オフセットパイリングの防止効果と耐水性に優れているという観点から、アルキル変性澱粉が好ましい。ここで、オフセットパイリングとは、オフセット印刷のときに、粘着性のあるインクによって紙表面のパルプが製版に付着し蓄積して、印字がされなくなる現象である。
バインダーの含有量は、インク受容層に対して5.0g/m以下含有されていることが好ましく、1.0〜3.0g/m質量%であることがより好ましい。バインダーの含有量を上記範囲内とすることにより、表面強度の低下を抑制でき、印刷部のこすれ汚れの発生を防ぐことができる。
(ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂)
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂は、ポリアミドポリアミンをエピクロルヒドリンによって変性した樹脂であり、カチオン性樹脂である。インクジェット印刷用インクは通常アニオン性である。そのため、カチオン性樹脂をインク受容層に含有させることによって、書籍用紙に対するインクジェット印刷用インクの定着性を高め、画像を鮮明なものとすることができる。また、インクがパルプ繊維に沿って走るフェザリングを抑制することができる。
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の含有量は、インク受容層に対して10〜25質量%(固形分)が好ましく、10〜20質量%がより好ましく、10〜15質量%がさらに好ましい。ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の含有量が25質量%を超えると、インクジェット印刷時の画像は良好であるが、ぬめりが生じて、手触り感が低下し、オフセット印刷時においては地汚れが発生するおそれがある。一方、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の含有量が10質量%未満であると、インクジェット印刷用インクの定着性が低下し、画像濃度の低下やインクの裏抜けが生じるおそれがある。
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の重量平均分子量は、1000〜5000が好ましく、1000〜3000がより好ましく、1000〜2000がさらに好ましい。ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の重量平均分子量を上記範囲内とすることによって、インクジェット印刷時の画像を鮮明なものとすることができる。また、重量平均分子量が比較的小さいと、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂自体の変色や臭気を抑制することができる。ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の市販品としては、例えば、星光PMC社製のDK6802(重量平均分子量1000)、DK6810(重量平均分子量2000)、DK6854(重量平均分子量20000)などがある。
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:水蒸留水
カラム:OHpak SB−806M HQ Shodexを2本接続して使用
カラム温度:40℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:1200シリーズ検出器(アジレートテクノロジー社製)
ポンプ:1200シリーズ検出器(アジレートテクノロジー社製)
流速:0.5ml/min
校正曲線:Shodex Standard P−82(プルラン)(Shodex社製)Mw=1000〜20,000の6サンプルによる校正曲線を使用した。
インク受容層には、他のカチオン性樹脂を含有させてもよい。他のカチオン性樹脂としては、例えば、アルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合物、第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性樹脂、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合物に代表されるポリアミン系カチオン性樹脂、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ビニルベンジルトリアリルアンモニウム塩の単独重合体又は共重合体、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物等が挙げられる。
インク受容層には、表面サイズ剤を含有させてもよい。インク受容層に表面サイズ剤を含有させると、紙の表面に疎水性を付与することができ、細かい字の画像をよりシャープなものとすることができる。
表面サイズ剤は、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系等があり、特に限定されないが、カチオン系サイズ剤が好ましい。カチオン系サイズ剤であれば、アニオン性のインクジェット印刷用インクと結合して、インクの定着性を高め、インクのにじみを防止し、画像をより鮮明なものとすることができる。また、カチオン系サイズ剤は、カチオン性のポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂との相溶性に優れている。カチオン系サイズ剤としては、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン型サイズ剤、スチレン系重合体エマルジョン型サイズ剤等がある。これらの中では、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン型サイズ剤が好ましい。サイズ剤の含有量は、基紙の少なくとも片面にインク受容層に対して0.01〜0.2質量%であることが好ましく、0.5〜0.15質量%であることがより好ましい。スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン型表面サイズ剤は、市販品では星光PMC社製SE2220等を挙げることができる。
インク受容層には、必要に応じて助剤を配合してもよい。助剤としては、例えば、界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、香料等を挙げることができる。
インク受容層の厚さは、5〜40μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。インク受容層の厚さを上記範囲内とすることにより、インクの定着性を高め、画像を鮮明なものとし、インクの裏抜けを防止することができる。
[書籍用紙]
書籍用紙の坪量は、40〜65g/mであることが好ましく、50〜62g/mであることがより好ましい。坪量は小さい方が書籍の軽量化を図ることが可能となり、好ましい。
書籍用紙の灰分は、14〜22質量%であることが好ましく、16〜20質量%であることがより好ましい。基紙中の填料を比較的多量に添加しているため、灰分は比較的大きな数値となる。書籍用紙の灰分は、JIS 8251:2003に準拠して測定される。
書籍用紙の色相は、文字を読み易くするために、白色度を60〜70%程度に下げることが好ましい。白色度を下げるためには、基紙のパルプに脱墨古紙パルプ(DIP)を添加したり、基紙の填料としてタルクを添加したり、黄色や赤色の染料や顔料を添加することによって、調整することができる。白色度は、JIS P−8148:2001に準拠して測定される。
[書籍用紙の製造方法]
(基紙の製造方法)
基紙は、常法により各種抄紙機により抄紙され、湿紙を形成した後、乾燥させることにより得ることができる。その後、表面サイズプレス処理マシンカレンダー等による平滑化処理等、常法による処理工程を経て製造される。
抄紙機としては、例えば、エアクッションヘッドボックスあるいはハイドロリックヘッドボックスを有する長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ型ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
(インク受容層用塗工液の調製)
インク受容層用塗工液は、前記のバインダーおよびカチオン性樹脂に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤等の各種助剤を適宜添加して調製される。塗工液の溶剤としては、通常、水が使用される。
(インク受容層の形成方法)
インク受容層は、例えば、基紙の片面にインク受容層用塗工液を塗工した後、塗工液を乾燥させることによって、形成することができる。乾燥後の塗工量(固形分質量)は、好ましくは0.1〜6.0g/m程度であり、より好ましくは0.2〜1.2g/m程度である。
インク受容層用塗工液の塗工方法としては、一般に公知の塗工装置を用いることができる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、ツーロールあるいはロッドメタリング方式のサイズプレスコーター、ポンドサイズプレスコーター、ビルロッドメタリングサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、キャレンダーによるニップコーター等が挙げられる。これらの中でも、生産効率を高めるために、ゲートロールコーター、バーコーター、ブレードコーターを用いることが好ましい。
インク受容層の形成方法としては、紙の抄造と塗工液の塗工を一体で行うオンマシン塗工が生産効率の点で好ましい。さらに、ゲートロールコーターによるオンマシン塗工がより好ましい態様である。
また、インク受容層形成後、必要に応じて平滑化処理を行うことができる。平滑化処理は通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の平滑化処理装置を用いて、オンマシン又はオフマシンで行われる。
本実施形態の書籍用紙は、坪量が65g/m以下と小さいときであっても、破れにくく、インクジェット印刷用インクの定着が良好であり、インクの裏抜けを低減化させることができる。また、本実施形態の書籍用紙は、ぬめりやべたつきといった手触り感にも優れたものである。
本実施形態を下記の実施例と比較例によって、さらに具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
[実施例1]
(基紙Aの作成)
カナダ標準パルプ濾水度が550mlのLBKPを80%、カナダ標準パルプ濾水度が550mlのNBKPを20%からなるパルプスラリーに、炭酸カルシウムを80%、ホワイトカーボンを5%、タルクを15%の割合で混合し、合計100%としたものを填料として16%添加した。その後、パルプ固形分100%に対して硫酸アルミニウムを1%、カチオン化デンプン(王子コーンスターチ社製、エースK―100)を1%、内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(荒川化学工業製、サイズパイン SA-864)を0.08%順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料を長網抄紙機で抄紙して、坪量60g/mの基紙Aを得た。
(塗工液Aの調製)
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂として、星光PMC社製DK6810(重量平均分子量2000)を15部、バインダーとして酸化澱粉(王子コーンスターチ社製、エースA)を85部、カチオン性スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン型表面サイズ剤として星光PMC社製SE2220を0.1部使用し、水を加えて、固形分濃度が15%である塗工液Aを調製した。
(書籍用紙1の作製)
前記基紙Aの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Aを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙1を得た。
[実施例2]
(基紙Bの作成)
実施例1のパルプスラリーを、LBKPを100%、NBKPを0%からなるパルプスラリーに変更した以外は実施例1と同様にしての基紙Bを得た。
(書籍用紙2の作製)
前記基紙Bの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Aを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙2を得た。
[実施例3]
(基紙Cの作成)
実施例1のパルプスラリーを、LBKPを0%、NBKPを100%からなるパルプスラリーに変更した以外は実施例1と同様にしての基紙Bを得た。
(書籍用紙3の作製)
前記基紙Cの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Aを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙3を得た。
[実施例4]
(基紙Dの作成)
実施例1の基紙Aの填料を、炭酸カルシウムを92%、タルクを0%、ホワイトカーボンを8%の割合で混合して、合計100%としたものに変更した以外は実施例1と同様にしての基紙Dを得た。
(書籍用紙4の作製)
前記基紙Dの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Aを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙4を得た。
[実施例5]
(塗工液Bの調製)
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂として、星光PMC社製DK6810(重量平均分子量2000)を15部、バインダーとして酸化澱粉(王子コーンスターチ社製、エースA)を85部使用し、水を加えて、固形分濃度が15%である塗工液Bを調製した。
(書籍用紙5の作製)
前記基紙Aの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Bを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙5を得た。
[比較例1]
(基紙Eの作成)
実施例1の基紙Aの填料を、炭酸カルシウムを85%、タルクを15%、ホワイトカーボンを0%の割合で混合して、合計100%としたものに変更した以外は実施例1と同様にしての基紙Eを得た。
(書籍用紙6の作製)
前記基紙Eの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Aを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙6を得た。
[比較例2]
(塗工液Cの調製)
バインダーとして酸化澱粉(王子コーンスターチ社製、エースA)を100部、カチオン性スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン型表面サイズ剤として星光PMC社製SE2220を0.1部使用し、水を加えて、固形分濃度が15%である塗工液Cを調製した。
(書籍用紙7の作製)
前記基紙Aの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Cを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙7を得た。
[比較例3]
(基紙Fの作成)
実施例1の基紙Aの填料を、炭酸カルシウムを0%、タルクを100%、ホワイトカーボンを0%の割合で混合して、合計100%としたものに変更した以外は実施例1同様にしての基紙Fを得た。
(書籍用紙8の作製)
前記基紙Fの両方の表面上に、乾燥時の固形分質量が片面あたり1.0g/mとなるように前記塗工液Aを、塗工装置としてゲートロールコーターを用いてオンマシン塗工し、乾燥させて、書籍用紙8を得た。
<性能評価>
(画像鮮明性)
各実施例及び各比較例で得た書籍用紙をエプソン製、インクジェットプリンターS740で、日本規格協会発行の「カラーディジタル標準画像データ/S7」を印刷した後、ブラックベタ印刷部をグレタグ・マクベス社製反射濃度計RD−19を用いて画像濃度を測定した。
〔評価基準〕画像濃度が1.00以上であれば、画像が鮮明であり実用上問題がない。
(インクの定着性)
各実施例及び各比較例で得た書籍用紙をエプソン製、インクジェットプリンターS740で、日本規格協会発行の「カラーディジタル標準画像データ/S7」を印刷した後、インクジェット印刷部をウェスで10回擦り、印刷部コスレ汚れの程度を目視で評価した。
〔評価基準〕
5:コスレ汚れが全くなく、数字の判別に影響がない。
4:コスレ汚れが微かにあるが、数字の判別に影響がない。
3:コスレ汚れがあるが、全ての数字が判別できる。
2:コスレ汚れがあり、4、6、8、9、10等の一部の数字が判別できない。
1:コスレ汚れがあり、全ての数字が判別できない。
なお、評価が3以上のものが、実用上問題がない。
(裏抜け防止性)
各実施例及び各比較例で得た書籍用紙をエプソン製、インクジェットプリンターS740で、日本規格協会発行の「カラーディジタル標準画像データ/S7」を印刷した後、インクジェット印刷を行った部位の用紙の裏面に1〜10までのゴシック体の8ポイントの数字をインクジェット印刷し、裏抜け防止性の程度について目視判定を行った。
〔評価基準〕
5:裏抜けが全くなく、数字の判別に影響がない。
4:裏抜けが微かにあるが、数字の判別に影響がない。
3:裏抜けがあるが、全ての数字が判別できる。
2:裏抜けがあり、4、6、8、9、10等の一部の数字が判別できない。
1:裏抜けがあり、全ての数字が判別できない。
なお、評価が3以上のものが、実用上問題がない。
(手触り感)
各実施例及び各比較例で得た書籍用紙を被験者5名に手触りを確認して判定を行ってもらい、平均値を算出した。
〔評価基準〕
5:ぬめり感がなく良好。
3:ぬめり感があるが気にならないレベル。
1:ぬめり感があり不快。
なお、評価が3以上のものが、実用上問題がない。
(引張強度)
引張強度は、JIS P−81113:2006に準拠して測定される。縦方向および横方向の引張強度の平均値が2.5kN/m以上のものが、実用上問題がない。
評価結果を表1に示した。
Figure 2019014986
表1から分かるように、実施例1〜5の書籍用紙は、インクジェット印刷に求められるインクジェット適性の全評価項目(画像鮮明性、インクの定着性、裏抜け防止性)をバランスよく満たしていた。さらに、書籍用紙として使用する際にも手触り感が良く、引張強度も強く、取扱い性にも優れていた。
一方、比較例1の書籍用紙は、基紙がホワイトカーボンを含有しないため、裏抜け防止性にやや劣り、手触り感(ぬめり感)も劣るものであった。比較例2の書籍用紙は、インク受容層がポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂を含有していないため、画像鮮明性とインクの定着性に劣り、裏抜け防止性もやや劣るものであった。比較例3の書籍用紙は、基紙が炭酸カルシウムとホワイトカーボンを含有しないため、白色度、裏抜け防止性および手触り感に劣るものであった。

Claims (7)

  1. 基紙と、当該基紙の少なくとも一方の面に設けられたインク受容層とを有する書籍用紙であって、
    前記基紙は、炭酸カルシウムおよびホワイトカーボンを含有し、
    前記インク受容層は、バインダーとポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂を含有することを特徴とする書籍用紙。
  2. 前記基紙が広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプを含有することを特徴とする請求項1に記載の書籍用紙。
  3. 前記基紙における広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとの質量比が、98:2〜60:40であることを特徴とする請求項2に記載の書籍用紙。
  4. 前記インク受容層がカチオン系サイズ剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の書籍用紙。
  5. 前記ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂の含有量が、前記インク受容層に対して10〜25質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の書籍用紙。
  6. 前記基紙がタルクを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の書籍用紙。
  7. 坪量が40〜65g/mであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の書籍用紙。
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