JP2019011489A - 溶融Zn系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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[1]めっき皮膜がAl:1.0mass%超15mass%以下、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板であって、地鉄−めっき界面にAlを含有する酸化膜が点在し、該酸化膜は、最大膜厚が3nm以下又は最大面積が3mm2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
[2]上記[1]の溶融Zn系めっき鋼板において、めっき皮膜が、さらにMg:0.1〜10mass%を含有することを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
[3]めっき皮膜がAl:0.16〜1.0mass%、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板であって、地鉄−めっき界面にAlを含有する酸化膜が点在し、該酸化膜は、最大膜厚が3nm以下又は最大面積が3mm2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの溶融Zn系めっき鋼板において、酸化膜は、最大膜厚が3nm以下で且つ最大面積が3mm2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの溶融Zn系めっき鋼板において、片面当たりのめっき付着量が100g/m2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
[8]上記[7]の製造方法において、めっき浴が、さらにMg:0.1〜10mass%を含有することを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
[9]上記[7]又は[8]の製造方法において、めっき浴が、さらにNi:0.01〜0.5mass%、Si:0.01〜0.5mass%の1種以上を含有することを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
スナウト内の雰囲気を、露点が−40℃以下で且つ酸素濃度が20ppm以下となるように制御して鋼板を通板させることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
[11]上記[10]の製造方法において、めっき浴が、さらにMg:0.1〜1.0mass%を含有することを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
[12]上記[7]〜[11]のいずれかの製造方法において、鋼板の通板速度が60mpm以上であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
[13]上記[7]〜[12]のいずれかの製造方法において、片面当たりのめっき付着量が100g/m2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
まず、溶融Zn系めっき鋼板の製造において発生するピット欠陥について説明する。図1は、ピット欠陥の形状を模式的に示したものである。ピット欠陥は、図1中のA点のようにめっきの一部が薄くなり、その進行方向直上のB点が厚くなる形状をしている。
このようなピット欠陥は、片面当たりのめっき付着量が100g/m2以下となる製造時に特に発生しやすい。これは、片面当たりのめっき付着量が100g/m2以下において、特にはじき現象が発現し易いことに起因する。
まず初めに、本発明の最も重要な要件である地鉄−めっき界面に存在するAlを含有した酸化膜の形態について説明する。このAlを含有する酸化膜は、スナウト内の浴面酸化物が、スナウト内で鋼板がめっき浴に浸漬する際に巻き込まれ、地鉄−めっき界面に付着したものであるため、地鉄−めっき界面に点在した状態で存在している。上述したピット欠陥を引き起こすめっきのはじき現象は、地鉄−めっき界面に点在する酸化膜の最大膜厚が3nm超で且つ最大面積が3mm2超の場合に発生することが判った。酸化膜の膜厚が3nm以下では、酸化膜の緻密性が低下し、地鉄とめっき液(めっき金属)の合金化反応が酸化膜を透過して起こるため、はじき現象が起こりにくい。一方、酸化膜の面積が3mm2以下の場合、酸化膜上のめっき液と周囲のめっき液の密着力がはじかれる力に比べ大きくなるため、はじき現象が起こりにくい。よって、ピット欠陥の発生を抑制するためには、地鉄−めっき界面に点在する酸化膜を最大膜厚が3nm以下又は最大面積が3mm2以下となるようにすることが必要である。また、より確実にピット欠陥の発生を抑制するためには、酸化膜を最大膜厚が3nm以下で且つ最大面積が3mm2以下となるようにすることが好ましい。
(A)めっき皮膜(下地鋼板との界面合金層の上のめっき層。以下同様)がAl:1.0mass%超15mass%以下、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板。
(B)めっき皮膜(下地鋼板との界面合金層の上のめっき層。以下同様)がAl:0.16〜1.0mass%、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板。
また、めっき皮膜中には、さらにMg:0.1〜10mass%を含有させることが好ましい。Mg:0.1〜10mass%を含有させることで、めっき鋼板が腐食する際に、腐食生成物を安定化させて耐食性を著しく向上させる効果が得られる。Mg含有量が0.1mass%未満では、耐食性の向上効果が十分に得られない。また、Mg含有量が10mass%を超えると、耐食性の向上効果が飽和するだけでなく、Mgを含有した酸化物系ドロスが発生し易くなり、粒状のドロスが付着するドロス欠陥の発生により、外観が劣化する。
また、めっき皮膜中には、さらにMg:0.1〜1.0mass%を含有させることが好ましい。Mg:0.1〜1.0mass%を含有させることで、めっき鋼板が腐食する際に、腐食生成物を安定化させて耐食性を著しく向上させる効果が得られる。Mg含有量が0.1mass%未満では、耐食性の向上効果が十分に得られない。また、Mg含有量が1.0mass%を超えると、耐食性の向上効果が飽和する。
また、本発明の溶融Zn系めっき鋼板の下地鋼板の種類に特別な制限はなく、例えば、酸洗脱スケールした熱延鋼板若しくは鋼帯、又は、それらを冷間圧延して得られた冷延鋼板若しくは鋼帯などを用いることができる。
まず、上述した(A)の溶融Zn系めっき鋼板、すなわち、めっき皮膜がAl:1.0mass%超15mass%以下を含有し、必要に応じて、さらにMg:0.1〜10mass%を含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板(溶融Zn−Alめっき鋼板)の製造方法について説明する。
なお、NiやSiを含有しためっき浴で製造された溶融Zn−Al系めっき鋼板のめっき皮膜(界面合金層の上層のめっき層)には、不可避的不純物として、界面合金層に取り込まれなかったNiやSiが含まれることがある。
本発明の溶融Zn系めっき鋼板の特徴である、地鉄−めっき界面に点在する酸化膜の最大膜厚を3nm以下にするためには、連続式溶融めっき設備におけるスナウト内の雰囲気を、露点が−50℃以下で且つ酸素濃度が20ppm以下となるように制御することが好ましい。
4Al+3O2→2Al2O3 …(1)
2Mg+O2→2MgO …(2)
2Al+Mg+2O2→MgAl2O4 …(3)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 …(4)
Mg+H2O→MgO+H2 …(5)
2Al+Mg+4H2O→MgAl2O4+4H2 …(6)
スナウト内の雰囲気の露点が−50℃を超える場合や、酸素濃度が20ppmを超える場合には、浴面の酸化が激しく起こり、地鉄−めっき界面に付着する酸化膜の膜厚が大きくなるため、ピット欠陥の発生を適切に抑制することができない。
この溶融Znめっき鋼板の製造で使用されるめっき浴(Znめっき浴)には、Alが0.16〜1.0mass%含まれる。めっき浴中のAlは、Feに対する親和力がZnより大きいため、めっき浴中で地鉄−めっき界面に薄膜のFe−Al系合金層を形成し、硬くて脆いFe−Zn合金の形成を抑制する効果を有する。これにより、地鉄とめっきの密着性が高い溶融Znめっき鋼板を得ることができる。また、めっき浴中にさらにMgを含有させる場合にドロスの発生を抑制する効果を有する。Al含有量が0.16mass%未満では、Fe−Zn合金の形成を抑制する効果が十分ではなく、またMgを含有した酸化物系ドロスの発生を抑制する効果も低い。
めっき浴中のAlは、スナウト内で酸素や水により下記(1)式及び(2)式のようにして酸化される。
4Al+3O2→2Al2O3 …(1)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 …(2)
スナウト内の雰囲気の露点が−40℃を超える場合や、酸素濃度が20ppmを超える場合には、浴面の酸化が激しく起こり、地鉄−めっき界面に付着する酸化膜の膜厚や面積が大きくなるため、ピット欠陥の発生を適切に抑制することができない。
なお、本発明の溶融Zn系めっき鋼板の製造方法は、上述したスナウト内の雰囲気とめっき浴組成以外は、特別な条件は必要でなく、常法で実施すればよい。
(i)めっき浴組成の測定
連続溶融めっき設備のポットからめっき浴の一部を汲み出して凝固させた後、金属ドリルで切子を採取したものをサンプルとした。このサンプルを塩酸に浸漬して溶解させ、その溶液をICP発光分光分析することで組成を確認(測定)した。
(ii)めっき皮膜組成の測定
サンプルとなる溶融Zn系めっき鋼板を100mmφに打ち抜き、発煙硝酸に浸漬してめっき皮膜(界面合金層を除くめっき層)を剥離させた。その剥離液に塩酸を加えて溶け残りのAlを完全に溶解させた後、溶液をICP発光分光分析することで組成を確認(測定)した。
サンプルとなる溶融Zn系めっき鋼板から、FIB加工で地鉄−めっき界面の断面を薄膜状に任意に20箇所切り抜いた。各薄膜サンプルについて、透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(TEM−EDS)による深さ方向元素分析を施し、プロファイルを見ることで地鉄−めっき界面に存在する酸化膜の膜厚を確認(測定)した。そして、全てのサンプルの分析結果の中で、最も大きな値となった膜厚を、酸化物の最大膜厚とした。
(iv)酸化膜の最大面積
サンプルとなる溶融Zn系めっき鋼板を、無作為に50mm×50mmサイズに10個剪断し、各々を発煙硝酸に浸漬させることで、めっき皮膜(下地鋼板との界面合金層の上のめっき層)を溶解させた後、表裏全面について走査型電子顕微鏡(SEM)で酸化膜の観察を行い、SEM像中の酸化膜をマーキングし、画像解析(二値化しての面積測定)をすることで最も大きい酸化膜の面積を定量化し、これを酸化膜の最大面積とした。
(1)めっき外観の評価:ピット欠陥
コイルの3ヶ所から無作為に採取した巾×1000mmの大板サンプルの外観を目視で確認し、下記の基準で外観品位を評価した。
良:ピット欠陥の発生が認められない。
劣:ピット欠陥の発生が認められる。
コイルの3ヶ所から無作為に採取した巾×1000mmの大板サンプルの外観を目視で確認し、下記の基準で外観品位を評価した。
優:ドロスの付着が認められない。
良:0.5mmφ未満の微小な粒状ドロスの付着が認められるが、外観上で問題とならない。
可:0.5mm以上1mmφ未満の微小な粒状ドロスの付着が認められるが、外観上で問題とならない。
劣:1mmφ以上の大きな粒状ドロスの付着が認められ、外観上で問題となる。
溶融Zn系めっき鋼板を70mm×150mmサイズに剪断後、評価面の端部5mm及び非評価面(背面)にテープでシール処理を施したものをサンプルとした。この評価用サンプルを用いて、塩水噴霧試験(SST):JIS Z2371を実施し、サンプルの表面に赤錆が発生するまでの時間により、下記の基準で耐食性を評価した。
・実施例1
優:赤錆発生時間≧800時間
良:300時間≦赤錆発生時間<800時間
劣:赤錆発生時間<300時間
・実施例2
優:300時間≦赤錆発生時間<800時間
良:200時間≦赤錆発生時間<300時間
劣:赤錆発生時間<200時間
溶融Zn系めっき鋼板を30mm×30mmサイズに剪断したものをサンプルとし、撃心径:3/8インチ、おもりの質量:1.0kg、落下高さ:1000mmの条件でデュポン衝撃試験を行った。試験後の張り出し部外面に、セロテープ(登録商標)を強く貼り付けた後、引き剥がし、張り出し部外面の状態及びセロテープの外観を目視で確認し、下記の基準でめっき密着性を評価した。
優:クラックの発生及びめっきの剥離が共に認められない。
良:クラックの発生が認められるが、めっきの剥離は認められない。
劣:めっきの剥離が認められる。
この実施例1は、上述した(A)の溶融Zn系めっき鋼板、すなわち、めっき皮膜がAl:1.0mass%超15mass%以下を含有し、必要に応じて、さらにMg:0.1〜10mass%を含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板(溶融Zn−Alめっき鋼板)に関するものであり、その皮膜構成、製造条件及び性能を表1及び表2に示す。
表1及び表2によれば、比較例ではピット欠陥やドロス欠陥が発生しているのに対し、本発明例ではピット欠陥やドロス欠陥の発生が抑えられた優れためっき外観を有する溶融Zn−Al系めっき鋼板が得られている。
また、本発明例のなかでも、めっき皮膜中に適量のMgを含有させたものは、優れためっき外観に加えて、特に優れた耐食性が得られている。さらに、本発明例のなかでも、めっき浴中に適量のNi又はSiを含有させたものは、優れためっき外観に加えて、特に優れためっき密着性が得られている。
この実施例2は、上述した(B)の溶融Zn系めっき鋼板、すなわち、めっき皮膜がAl:0.16〜1.0mass%を含有し、必要に応じて、さらにMg:0.1〜1.0mass%を含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板(溶融Znめっき鋼板)に関するものであり、その皮膜構成、製造条件及び性能を表3及び表4に示す。
表3及び表4によれば、比較例ではピット欠陥やドロス欠陥が発生しているのに対し、本発明例ではピット欠陥やドロス欠陥の発生が抑えられた優れためっき外観を有する溶融Zn−Al系めっき鋼板が得られている。
また、本発明例のなかでも、めっき皮膜中に適量のMgを含有させたものは、優れためっき外観に加えて、特に優れた耐食性が得られている。
Claims (13)
- めっき皮膜がAl:1.0mass%超15mass%以下、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板であって、地鉄−めっき界面にAlを含有する酸化膜が点在し、該酸化膜は、最大膜厚が3nm以下又は最大面積が3mm2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
- めっき皮膜が、さらにMg:0.1〜10mass%を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融Zn系めっき鋼板。
- めっき皮膜がAl:0.16〜1.0mass%、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn系めっき鋼板であって、地鉄−めっき界面にAlを含有する酸化膜が点在し、該酸化膜は、最大膜厚が3nm以下又は最大面積が3mm2以下であることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板。
- めっき皮膜が、さらにMg:0.1〜1.0mass%を含有することを特徴とする請求項3に記載の溶融Zn系めっき鋼板。
- 酸化膜は、最大膜厚が3nm以下で且つ最大面積が3mm2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶融Zn系めっき鋼板。
- 片面当たりのめっき付着量が100g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の溶融Zn系めっき鋼板。
- 連続式溶融めっき設備において、Al:1.0mass%超15mass%以下、残部がZn及び不可避的不純物からなるめっき浴にスナウトを通じて鋼板を浸入させ、鋼板を溶融めっきする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法であって、
スナウト内の雰囲気を、露点が−50℃以下で且つ酸素濃度が20ppm以下となるように制御して鋼板を通板させることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。 - めっき浴が、さらにMg:0.1〜10mass%を含有することを特徴とする請求項7に記載の溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
- めっき浴が、さらにNi:0.01〜0.5mass%、Si:0.01〜0.5mass%の1種以上を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
- 連続式溶融めっき設備において、Al:0.16〜1.0mass%、残部がZn及び不可避的不純物からなるめっき浴にスナウトを通じて鋼板を浸入させ、鋼板を溶融めっきする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法であって、
スナウト内の雰囲気を、露点が−40℃以下で且つ酸素濃度が20ppm以下となるように制御して鋼板を通板させることを特徴とする溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。 - めっき浴が、さらにMg:0.1〜1.0mass%を含有することを特徴とする請求項10に記載の溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
- 鋼板の通板速度が60mpm以上であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
- 片面当たりのめっき付着量が100g/m2以下であることを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の溶融Zn系めっき鋼板の製造方法。
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