JP2019011380A - 低曳糸性増粘剤、及び該増粘剤を配合した化粧料 - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明により、重量平均分子量が50万〜800万であり、分子量が1000万以上の化合物の含有量が10質量%以下である、ポリアクリル酸又はその塩、あるいはPAMPS又はその塩を配合したことを特徴とする化粧料用原料が提供される。
さらに、本発明により、重量平均分子量が50万〜800万であり、分子量が1000万以上の化合物の含有量が10質量%以下である、ポリアクリル酸又はその塩、あるいはPAMPS又はその塩を配合したことを特徴とする化粧料組成物が提供される。
[合成高分子化合物]
本発明に用いることができるのは、重量平均分子量が30万〜800万、好ましくは50万〜800万で、分子量が1000万以上の化合物の含有量が10質量%以下であるポリアクリル酸又はその塩、及びPAMPS又はその塩である。重量平均分子量が30万未満ではのびが悪くなる傾向があり、また、800万を超えると、分子量が1000万以上である化合物の含有量を10質量%以下に抑えることが技術的に難しくなるからである。後述するように、分子量が1000万以上の化合物の含有量が10質量%を超えると、曳糸性が顕著となって、曳糸感やぬるつき、さらにはべたつきが生じ易くなるので好ましくない。
さらに、本発明の合成高分子化合物においては、重量平均分子量の3倍以上の分子量を有する化合物の含有量が10質量%以下であると、曳糸性が一段と抑制される傾向があるので好ましい。
また、本発明に係る合成高分子化合物は、分子量分布(すなわち、重量平均分子量/数平均分子量)が2.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0−1.8である。分子量分布が2.0を超えると、曳糸性が顕著となる場合があるからである。
なお、本発明において、ポリアクリル酸塩又はPAMPS塩とは、ポリアクリル酸又はPAMPSを前記塩基(すなわち、前記アルカリ金属、有機アミン、塩基性窒素含有化合物等)で中和することで得られる化合物、あるいは、前記塩基であらかじめ酸部分を中和したアクリル酸又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、AMPSと略記)を重合することで得られる化合物を指す。
このような合成高分子化合物の例としては、後述するRAFT重合法によって合成できるものが好ましく、モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸エステル等のアクリル酸系モノマー、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、カルボキシビニル、ビニルメチルエーテル等のビニル系モノマー、及び、スチレン、ウレタン等を構成単位とするホモポリマー及び/又はその塩、並びに、これらのモノマーとアクリル酸、AMPSから選ばれた2種類以上のモノマーからなるコポリマー及び/又はその塩が挙げられる。このうち、アクリル酸系、又はアクリルアミド系モノマーを構成単位とするものが特に好ましい。また、前記モノマーに、側鎖としてポリエチレングリコール、シリコーン系高分子化合物等が付加されたマクロモノマーも、構成単位として好適に用いることができる。
具体的な化合物例としては、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、及びカルボキシビニルポリマー等、並びに、(アクリル酸/アクリル酸アルキル)共重合体、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)共重合体、(アクリル酸アルキル/スチレン)共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、(ジメチルアクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)共重合体とそれらの塩が挙げられる。
本発明に係る合成高分子化合物は、公知のリビング重合法により合成することができる。リビング重合には、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合(精密ラジカル重合、又は制御ラジカル重合)が挙げられる。
リビングラジカル重合には、ニトロキシドを介した(ラジカル)重合、又はニトロキシド媒介(ラジカル)重合(NLRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加−開裂連鎖移動(RAFT)重合等が挙げられる。原子移動ラジカル重合(ATRP)には、電子移動由来アクチベーターATRP、又は電子移動により生成する活性化剤ATRP(AGET ATRP)、電子移動由来再生アクチベーターATRP又は電子移動により再生される活性化剤ATRP(ARGET ATRP)、連続的に活性種を再生するための開始剤ATRP又は活性化剤が定常的に再生する開始剤ATRP(ICAR ATRP)、逆ATRP(Reverse ATRP)が挙げられる。可逆的付加−開裂連鎖移動(RAFT)重合の派生技術として、有機テルルを成長末端とするリビングラジカル重合、又は有機テルル媒介リビングラジカル重合(TERP)、アンチモン媒介リビングラジカル重合(SBRP)、ビスマス媒介リビングラジカル重合(BIRP)が挙げられる。その他のリビングラジカル重合として、ヨウ素移動ラジカル重合(IRP)、コバルト媒介ラジカル重合(CMRP)等が挙げられる。
アクリル酸の直接重合は重合の簡便さから好ましいが、触媒などの不溶塩の生成等で重合が困難な場合には、t−ブチルアクリレート、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メチル等の保護アクリル酸エステルを使用し、その後脱保護を行うことで、目的の高分子化合物を得ることができる。
本発明においては、特に精密合成(すなわち、分子量分布の狭い高分子化合物の合成)が可能な点で可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT重合法)が好ましい(特許文献4)。連鎖移動剤はジチオ型、トリチオ型が好ましい。重合開始剤は連鎖移動剤と化学構造が近いものが好ましく、アゾ系開始剤が好ましい。重合溶媒は特に限定されず、モノマー、ポリマーへの溶解性が高いものが適宜選択される。重合時間は、数時間から50時間程度が好適である。
本発明に係る方法によって合成した高分子化合物の分子量は、重量平均分子量については光散乱法、超遠心法、クロマトグラフィー法等、数平均分子量については浸透圧法、クロマトグラフィー法等の公知の方法によって測定することができる。なかでも、少量の試料で簡便に重量平均分子量、数平均分子量、及び分子量分布が得られる点でクロマトグラフィー法が好ましく、さらには、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下、GPCと略記)が好適である。
なお、本願で用いる分子量分布は、GPC解析によって得られた重量平均分子量を数平均分子量で除した値である。
本発明に係るポリアクリル酸又はその塩、及びPAMPS又はその塩は、低曳糸性増粘剤又は低曳糸性化粧料原料として、種々の化粧料に好適に配合することができる。最も好適な配合方法は、分子量制御されていない市販品のポリアクリル酸又はその塩、あるいはPAMPS又はその塩との置換である。この置換により、前記市販品を含む化粧料の曳糸感、ぬるつきやべたつき、のびの悪さといった不快な使用性を改善することができる。本発明の合成高分子化合物は、曳糸性が低く、前記不快な使用性を呈しないので、当該市販品よりも多く配合することが可能である。
また、本発明に係るポリアクリル酸又はその塩、及びPAMPS又はその塩は、分子量制御されていない異なる化合物からなる増粘剤の代わりに好適に配合することができる。特に、曳糸性が強いことで知られる増粘剤、具体的には、合成高分子化合物のカルボキシルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、半合成高分子化合物のメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、天然高分子化合物のカラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ヒアルロン酸又はその塩の代わりに化粧料に配合することが好適である。
なお、本発明に係るポリアクリル酸又はその塩、及びPAMPS又はその塩は、目安として、化粧料全体に対し、0.01〜5.0質量%、さらに好適には0.05〜2.5質量%配合することができる。
これらの製品は常法に従って製造することができるが、本発明はこれらの製品に限定されるものではない。
リビングラジカル重合のRAFT重合法を用いて、重量平均分子量が異なる6種類のポリアクリル酸と4種類のPAMPSナトリウムを精密合成した。以下に詳細な手順を示す。下記合成反応では、重合開始剤として4,4’−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)(V−501、和光純薬工業社製)、連鎖移動剤としては、4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート(非特許文献1に従い合成、以降、CPDと略記)を用いた。なお、連鎖移動剤として、α−(メチルトリチオカルボネート)−S−フェニル酢酸(非特許文献2に従い合成、通常、MTPAと略記)を用いることもできる。
イオン交換水(9ml)にアクリル酸(2511mg)とV−501(0.17mg)を溶解し、CPD(0.17mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.0〜7.0に調整(=完全中和)した後、精製水に対して4日間透析し、凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−1(1.82g、収率72%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は730万、分子量分布は1.2であった。
イオン交換水(9ml)にアクリル酸(2504mg)、メチレンビスアクリルアミド(38.4μg)、及びV−501(0.68mg)を溶解し、CPD(0.68mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して完全中和した後、精製水に対して4日間透析し、その後凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−2(1.71g、収率68%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は633万、分子量分布は1.4であった。
イオン交換水(9ml)にアクリル酸(2514mg)、メチレンビスアクリルアミド(9.6μg)、及びV−501(0.17mg)を溶解し、CPD(0.17mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して完全中和した後、精製水に対して4日間透析し、その後凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−3(1.99g、収率79%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は326万、分子量分布は1.7であった。
アクリル酸(120g)にメタノール(120ml)を加え、CPD(0.120mg)とV−501(0.120mg)を溶解した。アルゴンを用いた脱気を24時間行い、60℃で96時間重合反応を行った。水酸化ナトリウムによる部分中和後に、水/エタノールを用いた再沈殿を行い精製した。その後、減圧乾燥を行うことで、精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−4(75.6g、収率63%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は69.5万、分子量分布は1.3であった。
アクリル酸(10g)にメタノール(69.94ml)を加え、CPD(21.4mg)とV−501(8.7mg)を溶解した。アルゴンを用いた脱気を30分間行い、60℃で44時間重合反応を行った。NMR測定によりコンバージョン(44.4%)を確認した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して完全に中和した。精製水に対して2日間透析し、その後凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−5(3.65g、収率36.5%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は21万、分子量分布は2.0であった。
アクリル酸(10g)にメタノール(69.46ml)を加え、CPD(193.6mg)とV−501(77.6mg)を溶解した。アルゴンを用いた脱気を30分間行い、60℃で44時間重合反応を行った。NMR測定によりコンバージョン(43.4%)を確認した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して完全に中和した。精製水に対して2日間透析し、その後凍結乾燥を行うことで精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−6(3.82g、収率38.2%)を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は2.0万、分子量分布は1.1であった。
水酸化ナトリウムでpH7.0に調整したAMPS(2500mg)、イオン交換水(9ml)にV−501(0.84mg)を溶解し、CPD(0.85mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、精製水に対して4日間透析を行い、その後凍結乾燥を行うことで精密合成PAMPS−1を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は403万、分子量分布は1.4であった。
水酸化ナトリウムでpH7.0に調整したAMPS(2510mg)、イオン交換水(9ml)にV−501(0.70mg)を溶解し、CPD(0.70mg)を溶解させたメタノール溶液(1ml)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で24時間重合反応を行った。重合反応後、精製水に対して4日間透析を行い、その後凍結乾燥を行うことで精密合成PAMPS−2を回収した。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は224万、分子量分布は1.2であった。
水酸化ナトリウムでpH6.0に調整したAMPS(9.98g)、イオン交換水(40ml)にV−501(0.001g)を溶解し、CPD(0.027g)を溶解させたメタノール溶液(3.78ml)を加え、アルゴン雰囲気下、70℃で16時間重合反応を行った。重合反応後、精製水に対して2日間透析を行い、その後凍結乾燥を行うことで精密合成PAMPS−3を回収した(8.5g、収率85.1%)。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は13万、分子量分布は1.4であった。
水酸化ナトリウムでpH6.0に調整したAMPS(9.98g)、イオン交換水(40ml)にV−501(0.01g)を溶解し、CPD(0.27g)を溶解させたメタノール溶液(3.78ml)を加え、アルゴン雰囲気下、70℃で16時間重合反応を行った。重合反応後、精製水に対して2日間透析を行い、その後凍結乾燥を行うことで精密合成PAMPS−4を回収した(9.2g、収率92.2%)。GPCを用いて解析した結果、重量平均分子量は1.5万、分子量分布は1.1であった。
前記方法により合成したポリアクリル酸及びPAMPSナトリウムは、プレフィルター(アドバンテック社製、DISMIC−13HP PTFEフィルター、孔径0.45μm)で濾過した後に、GPC解析を行って分子量を測定した。
<GPCの測定条件>
ガードカラム:ショーデックス OHpak SB−G、1本(昭和電工(株)社製)、
カラム:ショーデックス OHpak SB−804HQ、2本(昭和電工(株)社製)、
カラム温度:40℃、
カラムオーブン:CTO−10ASVP(島津製作所)、
脱気装置:ERC−3215α(イー・アール・シー(株)社製)、
ポンプ:DP−8020デュアルポンプ(東ソー(株)社製)、
屈折率検出器:RI−8020示差屈折計(東ソー(株)社製)、
溶離溶媒:5mM リン酸緩衝液(pH 8.0)+90%アセトニトリル
流速:0.6ml/分、
注入量:10μl、
分子量スタンダード:標準ポリスチレンスルホン酸ナトリウム。
前記精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−2について、GPC解析で得られた溶出ピーク(GPC解析チャート)を図1に示す。重量平均分子量は6.33×106、数平均分子量は4.376×106であるから、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.4である。よって、本発明に係る方法で合成した精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−2は、分子量の揃った化合物であることがわかる。
領域1:分子量が、重量平均分子量の3倍以上の化合物、
領域2:分子量が、重量平均分子量の3倍以下〜2倍以上の化合物、
領域3:分子量が、重量平均分子量の2倍以下〜重量平均分子量以上の化合物、
領域4:分子量が、重量平均分子量以下〜重量平均分子量の2分の1以上の化合物、
領域5:分子量が、重量平均分子量の2分の1以下〜3分の1以上の化合物、
領域6:分子量が、重量平均分子量の3分の1以下の化合物。
同様の解析を、前記すべての精密合成ポリアクリル酸ナトリウム及びPAMPSナトリウムについて行った。また、分子量が1000万以上の巨大高分子の含有率についても算出した。結果を表2及び表3に示す。
孔径0.45μmのプレフィルターによる濾過は、GPCで解析不能な巨大分子を除去するために通常行われる操作である。そして、本発明者は、重量平均分子量が約1000万である直鎖状水溶性高分子化合物の10質量%溶液が当該プレフィルターで濾過できることを確認している。このことから、本願で用いた市販のポリアクリル酸ナトリウム及びPAMPSナトリウムには、分子量が1000万以上の巨大分子が10質量%より多く含まれていると考えられる。
<ポリアクリル酸ナトリウム>
試験例1:カーボポール981(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)のナトリウム塩(完全中和)
試験例2:シンタレンL(3V シグマ社製)のナトリウム塩(完全中和)
試験例3:アロンビスS(日本純薬社製)のナトリウム塩(完全中和)
試験例4:ポリアクリル酸(306223、シグマ・アルドリッチ社製)のナトリウム塩(完全中和)
試験例5:ポリアクリル酸(306215、シグマ・アルドリッチ社製)のナトリウム塩(完全中和)
試験例6:ポリアクリル酸(和光純薬工業社製)のナトリウム塩(完全中和)
試験例7:試験例1と試験例14を5:5(質量比)で混合した混合物
試験例8:試験例1と試験例14を1:9(質量比)で混合した混合物
試験例11:精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−1
試験例12:精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−2
試験例13:精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−3
試験例14:精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−4
試験例15:精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−5
試験例16:精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−6
<天然・半合成高分子化合物>
試験例9:ケトロール(CPケルコ社製)
試験例10:ナトロゾール250HHR(ハークレス社製)
<PAMPSナトリウム>
試験例17:ホスタセリンAMPS(クラリアント社製)
試験例18:精密合成PAMPSナトリウム−1
試験例19:精密合成PAMPSナトリウム−2
試験例20:精密合成PAMPSナトリウム−3
試験例21:精密合成PAMPSナトリウム−4
これに対し、本願で作製した精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(試験例11−16)は、重量平均分子量が2万〜730万の範囲において、分子量分布は1.1−2.0と狭く、分子量が1000万以上の巨大分子の含有量は9.2質量%以下であった。さらに、重量平均分子量の3倍以上、又は3分の1以下の分子量である化合物の含有量はそれぞれ5.1質量%以下、又は14.3質量%以下であり、このことからも、本発明に係る方法で作製したポリアクリル酸ナトリウムは、分子量的に均一な集団であることがわかる。
次に、前記高分子化合物について、以下に説明する方法に従って曳糸性及び使用性を評価した。
各高分子化合物の1質量%溶液を調製し、室温にて容器内に収容した。当該容器をテクスチャーアナライザー(TA XT PLUS、ステーブルマイクロシステムズ社製)にセットし、前記溶液の表面に直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させた後、5mm/秒の速度で前記容器を降下させて、当該溶液が糸を曳く様子を観察した。当該溶液の糸曳きが切れるまでに前記容器が降下した距離を“曳糸長”として測定した。この曳糸長は、当該高分子化合物の曳糸性の指標となる値で、数値が大きいほど曳糸性が強いことを示す(特許文献5)。本願では、曳糸長が10mm以下である場合に、低曳糸性と判断した。
下記処方の組成物(組成物1、2)を作製し、専門パネル3名を用いて実使用試験を行った。組成物1を右顔面に、組成物2を左顔面に塗布してもらい、組成物2と比較した場合の組成物1の下記使用性について、以下の基準に従って評価してもらった。
高分子化合物 0.1質量g
グリセリン 15.0質量g
精製水 84.9質量g
・組成物2:高分子化合物を含まない組成物
グリセリン 15.0質量g
精製水 85.0質量g
◎:パネル3名が、組成物1は組成物2と同様に曳糸感はないと回答した。
○:パネル2名が、組成物1は組成物2と同様に曳糸感はないと回答した。
△:パネル1名が、組成物1は組成物2と同様に曳糸感はないと回答した。
×:パネル3名が、組成物1は組成物2よりも曳糸感があると回答した。
ぬるつき
◎:パネル3名が、組成物1は組成物2と同様にぬるつきはないと回答した。
○:パネル2名が、組成物1は組成物2と同様にぬるつきはないと回答した。
△:パネル1名が、組成物1は組成物2と同様にぬるつきはないと回答した。
×:パネル3名が、組成物1は組成物2よりもぬるつきがあると回答した。
べたつき
◎:パネル3名が、組成物1は組成物2と同様にべたつきはないと回答した。
○:パネル2名が、組成物1は組成物2と同様にべたつきはないと回答した。
△:パネル1名が、組成物1は組成物2と同様にべたつきはないと回答した。
×:パネル3名が、組成物1は組成物2よりもべたつきがあると回答した。
のび
◎:パネル3名が、組成物1は組成物2と同様にのびが良いと回答した。
○:パネル2名が、組成物1は組成物2と同様にのびが良いと回答した。
△:パネル1名が、組成物1は組成物2と同様にのびが良いと回答した。
×:パネル3名が、組成物1は組成物2よりものびが重いと回答した。
化粧料に増粘剤として汎用される市販の高分子化合物(市販ポリアクリル酸ナトリウム(試験例1−6)、市販キサンタンガム(試験例9)、市販ヒドロキシエチルセルロース(試験例10))はいずれも曳糸性が高く(曳糸長:10mm超)、0.1質量%配合した組成物(すなわち、組成物1)を肌に塗布した際にも曳糸感及びぬるつきを呈するものであった。また、曳糸長の大きい化合物(例えば、試験例3、5、6)ほど曳糸感及びぬるつきが強いことから、高分子化合物が示す曳糸性と人が肌で感じる曳糸感は良く相関していることがわかる。
これに対し、本発明に係る精密合成ポリアクリル酸ナトリウムはいずれも曳糸性が低く(曳糸長:10mm以下)、0.1質量%配合した組成物を肌に塗布しても、曳糸感やぬるつきはほとんど感じられなかった(試験例11−16)。前述したように、高分子化合物の曳糸性は粘度に依存した性質なので、一般には重量平均分子量が増加するにつれて曳糸性も高くなると考えられている。しかしながら、本願試験例11と試験例12の精密合成ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量:730万と621万、曳糸長:6mmと4mm)は、試験例3−6の市販ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量:400万−100万、曳糸長:12−20mm)よりも、重量平均分子量が非常に大きいにも関わらず、曳糸性及び曳糸感は非常に低いものであった。
この結果は、高分子化合物が示す曳糸性は、重量平均分子量以外の要因によっても大きく制御されていることを示すものである。
さらに、精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−4に、市販ポリアクリル酸−1を10質量%だけ添加した混合物を作製した(試験例8)。驚くべきことに、当該混合物は高曳糸性を示し(曳糸長11mm)、前述の等質量混合物(試験例7)と同様に、曳糸感、ぬるつき、及びべたつきを呈するものであった。
この結果は、精密合成ポリアクリル酸(又はその塩)であっても、分子量が1000万以上である化合物の割合が10質量%を超えると、曳糸性が高くなり、曳糸感やぬるつき、さらにはべたつきを生じるようになることを示唆するものである。
よって、重量平均分子量が800万以下のポリアクリル酸及びその塩については、分子量が1000万以上の巨大分子の含有量を10質量%以下に抑えることで、曳糸性、曳糸感、ぬるつき、及びべたつきを抑えることができると考えられる。
よって、曳糸性が低く、肌に塗布した際に曳糸感、ぬるつき、べたつきを生じることなく、のびの良さにも優れるポリアクリル酸又はその塩を得るには、重量平均分子量が30万〜800万、好ましくは50万〜800万の範囲内で、分子量が1000万以上である化合物の含有量を10質量%以下に抑えればよいことが明らかとなった。
よって、PAMPS及びその塩についても、重量平均分子量が50万―800万の範囲において、分子量が1000万以上である巨大分子の含有量が10質量%以下であれば、曳糸性が低く、曳糸感、ぬるつき、及びべたつきがほとんどみられず、のびの良さにも優れると考えられる。
本発明に係るポリアクリル酸又はその塩、及びPAMPS又はその塩は、曳糸性が低く、曳糸感、ぬるつき、及びべたつきを呈しない化粧料用原料として、特に好ましくは低曳糸性増粘剤として、化粧料に好適に使用できるものである。
本願では割愛したが、下記処方例中の精密合成ポリアクリル酸ナトリウム又はPAMPSナトリウムを、分子制御されていない市販品のポリアクリル酸ナトリウム又はPAMPSナトリウムに代えた化粧料は、曳糸感及びぬるつきが感じられるものであった。
<処方>
成分 配合量(質量%)
(1)精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−2 0.1
(2)グリセリン 1.0
(3)ジプロピレングリコール 12.0
(4)エタノール 8.0
(5)POE(10)メチルグルコシド 3.0
(6)POE(24)POP(13)デシルテトラデシルエーテル
0.5
(7)クエン酸 0.02
(8)クエン酸ナトリウム 0.08
(9)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 0.5
(10)チオタウリン 0.1
(11)アデノシン3リン酸−2ナトリウム 0.1
(12)ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
(13)EDTA3ナトリウム 0.01
(14)パラベン 適量
(15)香料 適量
(16)精製水 残余
<製造方法>
成分(4)に(6)、(15)を溶解させたもの(=A)、及び、成分(3)に(14)を溶解させたもの(=B)を調整する。成分(16)に残りの成分を溶解させた溶解液に前記溶解液(A)及び(B)を混合・溶解させ、所定の化粧水を得る。
<処方>
成分 配合量(質量%)
(1)精密合成PAMPSナトリウム−2 0.1
(2)グリセリン 6.0
(3)ジプロピレングリコール 7.0
(4)1,3−ブチレングリコール 7.0
(5)ポリエチレングリコール(分子量約1500) 5.0
(6)POE(10)メチルグルコシド 2.0
(7)トリエチルヘキサノイン 0.3
(8)PEG−60水添ヒマシ油 0.5
(9)ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2 0.4
(10)トラネキサム酸 1.0
(11)クエン酸 適量
(12)フェノキシエタノール 適量
(13)メタリン酸ナトリウム 適量
(14)香料 適量
(15)精製水 残余
<製造方法>
成分(7)に(8)、(9)、(14)を加熱・溶解させたもの(=A)、及び、成分(3)、(4)の混合物に(12)を溶解させたもの(=B)を調整する。成分(15)に(2)、(5)、(6)、(10)、(11)、(13)を溶解させ、該溶解液をホモミキサーで攪拌しながら前記溶解液(A)、(B)、及び成分(1)を添加し、攪拌・乳化することによって所定の美容液を得る。
<処方>
成分 配合量(質量%)
(1)精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−3 1.0
(2)水添ポリデセン 1.0
(3)ジメチルポリシロキサン(6cs) 1.0
(4)デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
(5)ベヘニルアルコール 0.2
(6)バチルアルコール 0.1
(7)グリセリン 7.0
(8)1,3−ブチレングリコール 8.0
(9)エチルへキサン酸セチル 2.0
(10)ポリソルベート60 0.1
(11)PEG−60水添ヒマシ油 0.1
(12)クエン酸 適量
(13)クエン酸ナトリウム 適量
(14)水酸化カリウム 適量
(15)メタリン酸ナトリウム 適量
(16)アスコルビルグルコシド 2.0
(17)フェノキシエタノール 適量
(18)エデト酸2ナトリウム 適量
(19)酸化鉄 適量
(20)精製水 残余
<製造方法>
成分(2)〜(6)、(9)〜(11)を加熱溶解させたもの(=A)、及び、成分(8)に(17)を溶解させたもの(=B)を調整する。成分(20)に(7)、(12)〜(15)、(18)〜(19)を溶解させ、該溶解液をホモミキサーで攪拌・加熱しながら前記溶解液(B)、(A)を添加し、さらに(1)を添加して攪拌・乳化を行う。その後、当該混合液を冷却したのちに成分(16)を添加し、所定の乳液を得る。
<処方>
成分 配合量(質量%)
(1)精密合成ポリアクリル酸ナトリウム−3 1.0
(2)水添ポリデセン 1.0
(3)ジメチコン 1.0
(4)シクロメチコン 2.0
(5)ベヘニルアルコール 0.2
(6)バチルアルコール 0.1
(7)グリセリン 7.0
(8)1,3−ブチレングリコール 8.0
(9)エチルへキサン酸セチル 2.0
(10)ポリソルベート60 0.1
(11)PEG−60水添ヒマシ油 0.1
(12)クエン酸 適量
(13)クエン酸ナトリウム 適量
(14)水酸化カリウム 適量
(15)メタリン酸ナトリウム 適量
(16)アスコルビルグルコシド 2.0
(17)フェノキシエタノール 適量
(18)エデト酸2ナトリウム 適量
(19)酸化鉄 適量
(20)精製水 残余
<製造方法>
成分(2)〜(6)、(9)〜(11)を加熱溶解させたもの(=A)、及び、成分(8)に(17)を溶解させたもの(=B)を調整する。成分(20)に(7)、(12)〜(15)、(18)〜(19)を溶解させたものをホモミキサーで攪拌・加熱した状態で、前記溶解液(B)、(A)を添加し、さらに(1)を添加して攪拌・乳化を行う。その後、当該混合液を冷却したのちに成分(16)を添加し、所定の乳液を得る。
Claims (4)
- 重量平均分子量が50万〜800万であり、ジチオ型またはトリチオ型連鎖移動剤を用いた可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT重合法)で製造されたことを特徴とする、ポリアクリル酸又はその塩、あるいは、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)又はその塩、
を0.01〜5.0質量%配合したことを特徴とする化粧料組成物。 - 前記化粧料組成物が、メイクアップ化粧料、並びに、クリーム、乳液、化粧水、ジェル、及びパックから選ばれるスキンケア化粧料である、請求項1に記載の化粧料組成物。
- 前記ポリアクリル酸又はその塩、あるいは、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)又はその塩が、1質量%溶液とした場合の室温における曳糸長(当該溶液の表面に直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させた後、5mm/秒の速度で前記容器を降下させて、当該溶液の糸曳きが切れるまでに前記容器が降下した距離)が10mm以下である、請求項1または2に記載の化粧料組成物。
- 前記ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)又はその塩を0.01〜5.0質量%配合したことを特徴とする、請求項1−3のいずれかに記載の化粧料組成物。
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