JP2019011315A - 腸バリア改善用組成物 - Google Patents

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【課題】腸バリアを改善する手法を提供すること。【解決手段】プロテオグリカン、及び/又はイチジクの乳酸菌醗酵物を含有する、腸バリア改善用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、腸バリア改善用組成物等に関する。
ヒトを含む脊椎動物は水や食物を摂取し吸収することにより生命を維持する。当該吸収は、消化管(特に腸)によって行われており、口から摂取する食物を含む外来の異物は消化管を通過する。また、それとともに様々な細菌が腸管に侵入し、栄養が豊富な環境のもと腸管に定着して増殖し、腸内フローラといわれる細菌叢を形成する。宿主が腸内細菌と良好な関係性を維持するため、腸管に特有の免疫機構が発達している。例えば、腸管上皮細胞は粘膜バリアを構築することにより腸内細菌と腸管上皮組織とを分けへだて、さらに、免疫担当細胞にシグナルを伝達することにより腸管免疫系を制御する。
腸管内部表面に存在する吸収上皮細胞は栄養や水分の吸収に特化した細胞であり,腸管上皮細胞の大部分を占めている。吸収上皮細胞の頂端面の表面は糖衣とよばれる糖鎖の集合体により覆われており、腸内細菌の腸管上皮細胞への侵入を防止する。同じく、腸管内部表面に存在する杯細胞は、粘液の主成分である糖タンパク質(ムチン)を多量に産生し分泌することにより腸の粘膜をおおう粘液の恒常性を維持し、腸管上皮細胞への腸内細菌の侵入を防いでいる。
このように、腸バリア機能(特に腸内の粘膜バリア)を維持することは、腸内の環境を維持し、健康を保つために重要である。このため、腸バリアを改善させる方法が求められている。
特開2014−14372号公報 国際公開第12/099216号 特開2014−187948号公報 特開2014−187949号公報 特開2017−066097号公報
本発明は、腸バリアを改善する手法を提供することを課題とする。
本発明者らは、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物が腸バリアを改善させる可能性を見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
プロテオグリカン、及び/又は
イチジクの乳酸菌醗酵物
を含有する、腸バリア改善用組成物。
項2.
整腸用である、項1に記載の腸バリア改善用組成物。
項3.
腸内ムチン量を増加させるための、項1又は2に記載の腸バリア改善用組成物。
項4.
腸内細菌叢を改善させるための、項1又は2に記載の腸バリア改善用組成物。
項5.
イチジクの乳酸菌醗酵物が、イチジクのラクトバチルス・ペントサス醗酵物である、項1〜4のいずれかに記載の腸バリア改善用組成物。
項6.
経口組成物である、項1〜5のいずれかに記載の腸バリア改善用組成物。
項7.
プロテオグリカン、及び
イチジクの乳酸菌醗酵物
を含有する、項1〜6のいずれかに記載の腸バリア改善用組成物。
本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア機能が不調である場合にこれを改善して通常の状態に戻す効果のみならず、腸バリア機能を通常の状態からさらに優れた状態にする効果をも有する。すなわち、本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア修復用組成物としてのみならず、腸バリア亢進用組成物としても用いることができる。またさらに、本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア機能を低下することを予め予防する効果も奏し得る。例えば、腸内炎症惹起物質等により腸バリア機能が低下する場合に、その惹起物質に暴露される以前に本発明の腸バリア改善用組成物を摂取しておくことにより、惹起物質に暴露された場合に生じるバリア機能低下を抑制又は防止すること効果が得られうる。すなわち、本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア低下予防組成物としても用いることができる。また例えば、当該腸バリア改善用組成物は、特に整腸用組成物として好ましく用いることができる。
作製した小腸上皮モデルの概要を示す。 図1に示す小腸上皮モデルを用いて、経上皮電気抵抗(TER)測定により膜電位差を測定することにより、腸バリアの評価を行った結果を示す。横軸は時間(h)を示し、縦軸は膜電位差変化率(%)を示す。 プロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物を摂取したヒトの、糞便中ムチン量検査の結果を示す。 プロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物を摂取したヒトへのアンケートの集計結果を示す。 プロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物を摂取したヒトの、腸内フローラの細菌種の解析の結果を示す。 大腸炎誘発モデルヘアレスマウスに対する、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物の炎症予防効果を検討した結果を示す。 プロテオグリカンを摂取したヒトの、糞便中フェノール量の解析結果を示す。
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本発明に包含される腸バリア改善用組成物は、プロテオグリカン、及び/又は、イチジクのラクトバチルス・ペントサス醗酵物、を含有する。なお、当該組成物によりバリア機能が改善される腸は、小腸及び/又は大腸であることが好ましく、小腸がより好ましい。
プロテオグリカンはタンパク質をコアとして、コンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸等のグリコサミノグリカンが共有結合した複合多糖であり、動物組織、特に軟骨組織に多く存在する。プロテオグリカンは生体内で、コア蛋白質がさらにヒアルロン酸に結合した構造で存在することも知られており、その分子量は、数万〜数千万と大きい。その中でも、分子量が20万〜2000万程度のものが好ましく、100万〜1800万程度のものがより好ましく、150万〜1600万程度のものがより好ましく、250万〜1500万程度のものがさらに好ましく、500万〜1500万のものがよりさらに好ましい。なお、プロテオグリカンは分離精製したものだけでなく、粗精製物も使用できる。プロテオグリカンの定量は、ゲルクロマトグラフィーを用いて分子量分画を行ない(分子量マーカー;分子量既知デキストラン)、分子量が1万以上でかつ酸性糖および蛋白質の存在が確認された画分(又はその乾燥物)を測定することで行なう事ができる。なお、酸性糖の存在及び量は、カルバゾール硫酸法でウロン量を測定することにより、確認することができる。また、蛋白質の存在及び量は、280nm付近における吸光度により測定することができる。このような好ましいプロテオグリカンは、例えば国際公開第12/099216号及び特開2017−066097号公報に記載の手法により調製し、また分子量を測定することができる。
本発明に係る腸バリア改善用組成物による、成人一日あたりのプロテオグリカン摂取量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はされない。例えば、乾燥質量換算で、10〜10000mg/dayが好ましく、50〜5000mg/dayがより好ましく、100〜1000mg/dayがさらに好ましく、100〜500mg/dayがよりさらに好ましい。
イチジクの乳酸菌醗酵物としては、イチジク破砕物を乳酸菌で醗酵処理したものが好ましく挙げられる。
イチジク(無花果)は、中近東原産のクワ科イチジク属の落葉高木であり、カプリフィッグ型(雄品種)とフィッグ型(雌品種)に区分される雌雄異株の植物であることが知られている。本発明では、イチジクのフィッグ型株が実らせる、果実内部に花が着生する隠花果を用いることが好ましい。品種としては限定するものではないが、「蓬莱柿」や「桝井ドーフィン」を好適に用いることができる。
イチジク破砕物は、イチジクの実(特に隠花果)を摘果後、必要に応じて花軸を除去し、収穫時の状態のまま(丸ごと)粉砕処理して得られるもの(全果破砕物)が好ましい。破砕方法については特に限定されるものではなく常法を使用することができる。また破砕度合いについては、醗酵処理において支障が出ない程度の流動性を有する破砕物であれば特に制限はされず、適宜設定することができる。破砕処理時の温度は常温でも良いが、15℃以下、更に好ましくは10℃以下の温度において処理することが好ましい。また、凍結した状態の果物をそのまま粉砕処理して得られるイチジク破砕物も、好ましい態様の一つである。
用いられる乳酸菌としては、例えばラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)およびラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)等が好ましく挙げられ、特にラクトバチルス・ペントサスが好ましい。
醗酵処理としては、例えば、イチジク全果破砕物1gあたり10個以上、好ましくは10〜10個接種する方法が挙げられる。好ましい態様としては、10〜1011CFU/mlの乳酸菌を含有するスターターをイチジク全果破砕物に対して0.5〜10質量%添加することで接種する方法が挙げられる。醗酵過程では醗酵液のpHが徐々に低下する。本発明ではpHが5.0以下になるまで醗酵させることが好ましく、4.6以下がより好ましく、4.3以下がさらに好ましい。また、醗酵は、好気醗酵、嫌気醗酵のいずれでも可能であるが、好ましくは嫌気醗酵である。好気醗酵の場合には撹拌醗酵よりも静置醗酵が好ましい。乳酸菌醗酵は、15℃〜45℃、好ましくは20℃〜40℃、より好ましくは25℃〜37℃の温度で行うことができる。醗酵させるイチジク全果破砕物が殺菌等の目的で行う加熱処理により温度が高い場合には、その余熱を利用し、乳酸菌スターターを上記温度内で加えることで醗酵を開始させることもできる。乳酸菌醗酵の時間は、例えば5時間〜72時間、好ましくは10時間〜36時間である。なお、長時間醗酵を行うと、乳酸菌以外の残存微生物が増殖して品質を劣化させることがあるため、前述の発酵時間を目安に、出来るだけ短時間で終末酸度に達するように、接種される乳酸菌の菌種と菌数を調整することが好ましい。
本発明に係る腸バリア改善用組成物による、成人一日あたりのイチジクの乳酸菌醗酵物摂取量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はされない。例えば、乾燥質量換算で、10〜10000mg/dayが好ましく、50〜5000mg/dayがより好ましく、100〜1000mg/dayがさらに好ましく、200〜800mg/dayがよりさらに好ましい。
また、本発明に係る腸バリア改善用組成物における、プロテオグリカンとイチジクの乳酸菌醗酵物との含有質量比(プロテオグリカン:イチジクの乳酸菌醗酵物)は、例えば、1:0.1〜10程度が好ましく、1:0.5〜5程度がより好ましく、1:1〜4程度がさらに好ましく、1:2〜3程度がよりさらに好ましい。
本発明に係る腸バリア改善用組成物における、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物の含有量は、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜設定することができる。例えば、プロテオグリカンについては、1〜90質量%程度、10〜80質量%、もしくは20〜50質量%程度等が挙げられる。また例えば、イチジクの乳酸菌醗酵物については、0.1〜99質量%程度、10〜80質量%、もしくは20〜50質量%程度等が挙げられる。
本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア機能が不調である場合にこれを改善して通常の状態に戻す効果のみならず、腸バリア機能を通常の状態からさらに優れた状態にする効果をも有する。すなわち、本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア修復用組成物としてのみならず、腸バリア亢進用組成物としても用いることができる。またさらに、本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア機能を低下することを予め予防する効果も奏し得る。例えば、腸内炎症惹起物質等により腸バリア機能が低下する場合に、その惹起物質に暴露される以前に本発明の腸バリア改善用組成物を摂取しておくことにより、惹起物質に暴露された場合に生じるバリア機能低下を抑制又は防止すること効果が得られうる。すなわち、本発明に係る腸バリア改善用組成物は、腸バリア低下予防組成物としても用いることができる。また例えば、当該腸バリア改善用組成物は、特に整腸用組成物として好ましく用いることができる。
また、当該腸バリア改善用組成物は、上記プロテオグリカン又は上記イチジクの乳酸菌醗酵物を含有することにより、腸バリア改善という効果を奏することができる。ここで、上記プロテオグリカンは、特に経口摂取してから腸バリア改善効果(特に整腸効果)が奏されるまでの時間が比較的長い。つまり、当該効果がゆっくりと発現する。このため、上記プロテオグリカンを含有する腸バリア改善用組成物は、特に徐放性腸バリア改善用組成物ということもできる。一方、上記イチジクの乳酸菌醗酵物は、特に経口摂取してから腸バリア改善効果(特に整腸効果)が奏されるまでの時間が比較的短い。つまり、当該効果がすぐに発現する。このため、上記イチジクの乳酸菌醗酵物を含有する腸バリア改善用組成物は、特に即効性腸バリア改善用組成物ということもできる。このことから、特に上記プロテオグリカン及び上記イチジクの乳酸菌醗酵物を含有する腸バリア改善用組成物は、即効性及び徐放性の両方の効果を奏することができ、特に好ましい。
当該腸バリア改善用組成物は、摂取することにより、腸内細菌叢を改善する効果も奏し得る。より好ましくは、腸内フローラの細菌種のバランスを改善することができる。腸内フローラの細菌種のバランスが崩れている対象はもちろん、それほど崩れてはいない対象であっても、より好ましい細菌種バランスとなるよう促進することができる。
特に、摂取することにより、腸バリア改善に資する細菌を増加させる効果を奏し得る。より具体的には、Bifidobacteriumを増加させる効果、及び/又は、Bacteroidesを増加させる効果を好ましく奏し得る。Bifidobacteriumはいわゆる善玉菌の代表格であり、整腸作用に優れる。Bacteroidesは腸管免疫系に対して免疫修飾作用を有すると考えられている。
また、当該腸バリア改善用組成物は、継続摂取した後、しばらく摂取を行わない場合であっても、整調効果が持続し得る。特に、腸内環境悪化に寄与する可能性のある細菌群(いわゆる悪玉菌)の増加抑制又は低下効果を奏し得る。例えば、クロストリジウムサブクラスターXIVaやクロストリジウムクラスターIXといった細菌群の増加抑制又は低下効果を奏し得る。クロストリジウムサブクラスターXIVaはデオキシコール酸を産生する菌であり、デオキシコール酸は細胞老化に関連すると考えられている。
またさらに、当該腸バリア改善用組成物は、摂取することにより、腸内ムチン量を増加させる効果も奏し得る。これにより、腸の粘膜バリアが亢進され得る。
本発明に係る腸バリア改善用組成物は、特に制限されないが、経口組成物であることが好ましく、特に飲食品組成物であることが好ましい。腸内フローラや腸内環境を整える目的の飲食品組成物であることが最も好ましい。また、組成物の形態も、特に制限はされず、例えば固形状、液状、ゲル状等であり得る。また例えば、タブレット、カプセル、ドリンク、ゼリー、顆粒等であり得る。このような各組成物は常法によって調製することができる。
また、当該腸バリア改善用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物以外の成分を含有させることもできる。このようなその他成分としては、例えばpH調整剤、増粘剤、界面活性剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤等が挙げられるが、特に限定はされない。このような成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物が液状又はゲル状であって、pH複合電極を用いて測定することができる場合において、組成物のpHは、例えば、好ましくは3.0〜8.0、より好ましくは3.0〜7.さらに好ましくは3.0〜5.5である。pH複合電極による測定は、組成物を希釈等を行なわずに、組成物そのままの状態で行なう。測定温度は20℃で測定時間は2分とする。また、組成物のpHを調整する場合は、通常使用されるpH調整剤、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルクロン酸、フマル酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびこれらの塩や、重炭酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することができる。
増粘剤としては、例えばグアーガム、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、アラビアガム等を挙げることができる。増粘剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン付加係数が4〜15、アルキル基の炭素数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系またはポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレンラノリン、ポリエチレンステロール、ポリエチレンラノリンアルコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤、N−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤、N−ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。ただ、食品組成物として用いる場合には、多量の界面活性剤を配合することは刺激性を高めることにつながるため、好ましくなく、留意すべきである。
香味剤としては、例えばメントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油などの香料を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。香味剤の配合量は、組成物全量に対して、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.03〜1質量%配合することができる。
甘味剤としては、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、キシリトール、ラクチトールなどが挙げられる。これら甘味剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
湿潤剤としては、例えばグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、低分子量のポリエチレングリコール、単糖類、2糖類、オリゴ糖、還元水飴などの糖類などを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
人工小腸上皮モデルを用いた腸バリア評価試験
Caco細胞を用いて小腸上皮モデルを作製し、当該モデルに炎症性物質(TNF−α及びIFN−γ)により刺激を与え、刺激によるバリア破壊の程度をプロテオグリカン及びイチジク乳酸菌醗酵物がどの程度改善できるかを検討した。作製した小腸上皮モデルの概要を図1に示す。また、使用材料の詳細を以下に示す。
<使用材料>
細胞:CACO−2(DSP社ECACC細胞) P=45
培地:
・D−MEM high glucose(Sigma−Aldrich)
・FBS(Biowest)
・抗生物質 Anti−Anti(gibco)
*FBSを10%、抗生物質を1%になるよう調製した
継代・プレーティング時試薬:
・0.25% Trypsin−EDTA(gibco)を0.1%希釈して使用
*中和は培地で行った。トリプシンを添加して5分以内に中和を行った。
プレーティング:
・トランズウェル ポリカーボネート メンブレン パーミアブルサポート
24ウェルインサートセット(COSTAR)
メンブレン直径:6.5mm、培養面積:0.33cm、孔サイズ:0.4μm
使用試薬(添加素材):
・TNF−α、INF−γ(gibco):各10ng/mL
・プロテオグリカン(調製方法は下述)
・イチジクの乳酸菌醗酵物 (調製方法は下述)
・D−MEM培地(FBS10%)
〔プロテオグリカンの調製〕
国際公開第12/099216号の実施例における、凍結サケ鼻軟骨からプロテオグリカンを抽出する方法に準じてプロテオグリカンを調製した。具体的には、凍結サケ鼻軟骨を破砕機で2mm程度サイズに粗粉砕し、水および温水による洗浄後、2.5倍量の蒸留水を加えて95℃で3.5時間加熱し、加熱後、ろ過及び16000rpmの遠心分離により不要物(残渣)を除き、得られた上清を減圧濃縮により濃縮し、濃縮液を得た。下記の小腸上皮モデル又はヒト試験には、当該濃縮液を凍結乾燥して得た凍結乾燥物を用いた。また、下記の大腸炎モデルマウスの検討には、当該濃縮液を水で希釈して用いた。
なお、特開2017−066097号公報実施例に記載の方法で、得られた濃縮液に含有されるプロテオグリカン分子量(カルバゾール硫酸法により測定したウロン酸量クロマトグラムにより確認)を測定したところ、当該濃縮液は分子量180万以上のプロテオグリカンを含有していた。なお、分子量分布は180万〜2000万程度であった。
〔イチジクの乳酸菌醗酵物の調製〕
桝井ドーフィンのイチジクの花軸部分を除去し、水で洗浄した。水分を除去した後に、フードプロセッサーを用いて粉砕し、イチジクの全果破砕物を得た。当該イチジクの全果破砕物200gに対して、乳酸菌菌液を10g加え、均一になるように軽く混合した後、嫌気的条件下にて、30℃、24時間静置にて醗酵した。乳酸菌としては、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)を使用した。醗酵処理においては、醗酵処理物のpH及び酸度を測定することにより醗酵処理の終点の確認を行った。得られた醗酵処理物を凍結乾燥させ、イチジクの乳酸菌醗酵物として用いた。
<小腸上皮モデルの作製及び評価試験>
トランズウェル ポリカーボネート メンブレン パーミアブルサポートに、Caco細胞を播種して培養し、小腸上皮モデル(図1)を作製した。播種後、13日間細胞培養し(2〜3日ごとに培地交換した)、14日目にIFN−γを添加し、15日目にTNF−αとともにプロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物あるいはケルセチンを添加した。ケルセチンは炎症性物質抑制効果を有しており、従ってケルセチンを添加した場合には刺激物質の作用が抑制され腸バリア改善効果が得られる(ポジティブコントロール)。
TNF−α、IFN−γは、刺激を与える目的で、小腸上皮モデルのBasal(基底膜側)に、プロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物あるいはケルセチンは、小腸上皮モデルのApical(管腔側)に、それぞれ添加した(図1参照)。より詳細には、評価24時間前にIFN−γを終濃度10ng/mLになるように添加した。また、評価開始1時間前(−1h)にプロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物あるいはケルセチンを添加した。ケルセチンは終濃度200μMになるように添加した。また、評価開始直前(0h)にTNF−αを終濃度10ng/mLになるように添加した。評価は、経上皮電気抵抗(TER)測定 装置:Milli-cell ERS(Millipore 社)を用いて膜電位差を経時的に測定することにより行った。バリア機能が低下していれば膜電位差が減少する。また、全く刺激を加えずに同様の試験を行った。
これらの結果を図2に示す。なお、図2において「cont」はネガティブコントロールを示し、刺激も評価物質の添加も行っていないものを表す。「刺激」は刺激のみを加えたものを表す。また、図2においては、「PG」はプロテオグリカンの添加を、「イチジク」はイチジクの乳酸菌醗酵物の添加を、それぞれ表す。
刺激がない場合(すなわち、腸バリアが正常な状態)において(図2右側)、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物の添加群は、いずれも添加無し(cont)に比べて腸バリアの亢進が見られた。また、刺激がある場合(すなわち、腸バリアが不良な状態)において(図2左側)、プロテオグリカン添加群は何ら刺激を与えていない場合(cont)と同等であり、イチジクの乳酸菌醗酵物添加群は何ら刺激を与えていない場合以上に腸バリアを改善した。
ヒト試験1(糞便ムチン量及び整腸作用の検討)
下記成分を含有する3種類のハードカプセルを調製した。
カプセル1(PG):上記プロテオグリカン(乾燥物)200mg及びデキストリン472.5mg/6粒あたり
カプセル2(イチジク):上記イチジクの乳酸菌醗酵物(乾燥物)472.5mg及びデキストリン472.5mg/6粒あたり
カプセル3(プラセボ):デキストリン472.5mg/3粒あたり
そして、30〜50代の女性33名を3グループ(カプセル1(PG)摂取群、カプセル2(イチジク)摂取群、及びカプセル3(プラセボ)摂取群)に分け、プラセボ対照二重盲検並行群間試験にて、6週間各カプセルを経口摂取させた。カプセル1(PG)摂取群及びカプセル2(イチジク)摂取群には一日6粒、カプセル3(プラセボ)摂取群には一日3粒、それぞれ摂取させた。
摂取開始時及び摂取開始4週間目に糞便を採取し、含まれるムチン量を検査した。また検査終了時、腸のはたらきに関し、摂取開始時との変化についてアンケートに回答してもらった。アンケートの質問項目は図4の下に記載した通りであり、いずれの質問項目についても、初期値(試験開始直前)を4とした時の検査終了直後の値を1〜7の7段階(数値が大きいほど回数若しくは量が多い、あるいは調子が良好である)で答えてもらい、平均値を算出した。
糞便中ムチン量検査の結果を図3に、アンケート集計結果を図4に、それぞれ示す。図3及び図4において、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。
図3から、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物の摂取群では、いずれも、腸内でのムチン量が増加したことがわかった。また、図4から、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物は、いずれも整腸効果を奏する傾向があることがわかった。特に、プロテオグリカンは摂取後比較的遅くに整腸効果が奏されること、一方イチジクの乳酸菌醗酵物では摂取後速やかに整腸効果が奏されること、もわかった。
またさらに、当該試験において、摂取終了直後、並びに、当該摂取終了から6週間後(以下「ウォッシュアウト後」ということがある)においても、各被験者から糞便を採取し、当該糞便検体を用いて、腸内フローラの細菌種の解析を行った。腸内フローラの細菌種の解析は、T−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism Analysis)法を用いて行った。当該解析は、株式会社テクノスルガ・ラボに委託した。
カプセル1(PG)摂取群、カプセル2(イチジク)摂取群、及びカプセル3(プラセボ)摂取群の各被験者の各細菌種存在比率の平均を図5に示す。
なお、図5において、*はプラセボ群と比較して有意差があったことを示す。より詳細には、摂取終了直後において、Bifidobacteriumがイチジク>プラセボ (p=0.075)、BacteroidesがPG>プラセボ (p=0.024)、イチジク>プラセボ (p=0.015)であった。また、ウォッシュアウト後において、Clostridium subcluster XIVaがイチジク<プラセボ (p=0.001)、Clostridium cluster IXがPG<プラセボ (p=0.062)であった。
大腸炎モデルマウスを用いた検討
大腸炎誘発モデルヘアレスマウスに対する、プロテオグリカン及びイチジクの乳酸菌醗酵物の炎症予防効果を検討した。
使用動物:HR−1系雌性マウス(日本SLC,8週齢)40匹(n=10)
病態惹起物質:デキストラン硫酸(DSS)(分子量36000〜50000;MP Biomedicals)
試験群:4群(投与物質により群分け)
蒸留水群(陰性対照群)、
1.5%DSS群(陽性対照群)、
1.5%DSS+イチジクの乳酸菌醗酵物群(被験物質A投与群)、
1.5%DSS+プロテオグリカン群(被験物質B投与群)
測定項目:大腸炎スコア(DAIスコア:Disease Activity Index Score)
具体的には、マウスを4群に分け、14日間連続して上記の各投与物質をゾンデにより摂取させた。なお、イチジクの乳酸菌醗酵物は一日あたり1gを、プロテオグリカンは一日あたり5mgを、それぞれ摂取させた。その後、7日間連続してDSSを摂取させ、さらにその後7日間は投与物質及びDSSはいずれも摂取させず、さらにまたその後にDSSを7日間連続して摂取させた。
各投与物質を摂取させた期間の最終日(day0)、その後連続してDSSを摂取させた期間の最終日(day7)、さらにその後投与物質及びDSSのいずれも摂取させなかった期間の最終日(day14)、並びに、さらに又その後にDSS摂取を再開した期間の1日目、2日目、3日目、及び4日目(day15、16、17、18)において、測定したDAIスコアを図6に示す。DAIスコアは大腸炎の重傷度を示す指標であり、数値が大きいほど重傷であることを示す。
プロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物群を最初に摂取させた群では、DSS摂取再開後の期間における大腸炎が抑制された。このことから、プロテオグリカン又はイチジクの乳酸菌醗酵物群には、大腸炎惹起物質(ここではDSS)への暴露が原因である大腸炎を予防する効果があることがわかった。
ヒト試験2(糞便中フェノール量の検討)
下記成分を含有する2種類のハードカプセルを調製した。
カプセル1(PG):上記プロテオグリカン(乾燥物)200mg及びデキストリン472.5mg/3粒あたり
カプセル3(プラセボ):デキストリン472.5mg/3粒あたり
そして、30〜50代の女性31名を2グループ(カプセル1(PG)摂取群、及びカプセル3(プラセボ)摂取群)に分け、プラセボ対照二重盲検並行群間試験にて、6週間各カプセルを経口摂取させた。カプセル1(PG)摂取群には一日3粒、カプセル3(プラセボ)摂取群には一日3粒、それぞれ摂取させた。なお、試験期間中に便秘薬を摂取した対象1名を解析から除外した。このため、カプセル1摂取群15名、カプセル3摂取群15名、で下述する結果解析を行った。
摂取開始時、摂取開始2週間目、及び摂取開始6週間目、に糞便を採取し、含まれるフェノールの量を測定した。糞便中フェノール量の測定は、株式会社テクノスルガ・ラボに委託した。
糞便中フェノール量の群間比較を行った結果を図7に示す。図7において、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。プロテオグリカンは、糞便中フェノール量を有意に減少させる効果を奏すること、ひいては腸内環境を改善すること、がわかった。

Claims (7)

  1. プロテオグリカン、及び/又は
    イチジクの乳酸菌醗酵物
    を含有する、腸バリア改善用組成物。
  2. 整腸用である、請求項1に記載の腸バリア改善用組成物。
  3. 腸内ムチン量を増加させるための、請求項1又は2に記載の腸バリア改善用組成物。
  4. 腸内細菌叢を改善させるための、請求項1又は2に記載の腸バリア改善用組成物。
  5. イチジクの乳酸菌醗酵物が、イチジクのラクトバチルス・ペントサス醗酵物である、請求項1〜4のいずれかに記載の腸バリア改善用組成物。
  6. 経口組成物である、請求項1〜5のいずれかに記載の腸バリア改善用組成物。
  7. プロテオグリカン、及び
    イチジクの乳酸菌醗酵物
    を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の腸バリア改善用組成物。
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