以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態のエレベータ群管理システムは、以下に詳述するように、複数台の号機1(A)〜1(N)と、各号機1(A)〜1(N)をそれぞれ制御する号機制御装置15と、行先階登録システム2で取得した行先階呼びに対して、乗り込み可能な号機を決定する群管理装置3とを備える。群管理装置3は、かごの到着後から登録猶予時間が経過するまでの間に発生した行先階呼びを、いずれか一つのかごに割り当てる。そして、群管理装置3は、行先階呼びを割り当てた所定のかごに対して設定される所定の戸開時限と行先階呼びとに基づいて、所定のかごに関する所定の指令を出力する。これにより、本実施形態では、登録猶予時間内の行先階呼びだけを許可するため、かごの出発を遅らせずにすみ、複数のかごの全体としての運行効率とサービス品質の向上を両立することができる。
本実施形態によれば、登録猶予時間内に発生した行先階呼びだけを許可すると共に、行先階登録装置から乗り場の号機までの歩行時間を考慮して戸開時限を延長する。従って、本実施形態によれば、行先階呼びに割り当てたかご(号機)に対して、登録猶予時間内に発生した新たな行先階呼びを割り当てることができるため、乗車人数の増加を図ることができると共に、出発の遅延を抑制することができる。
図1〜図6を用いて第1実施例を説明する。図1は、本実施例によるエレベータ群管理システムの全体構成を示す。エレベータ群管理システムは、複数のエレベータ号機1(A)〜1(N)と、各号機1(A)〜1(N)をそれぞれ制御する号機制御装置15と、行先階登録システム2と、群管理装置3とを備える。以下、エレベータ号機を「号機」と略称する。号機1(A)〜1(N)を特に区別しない場合は、号機1と呼ぶ。
号機1は、複数の階床間を昇降して利用者を輸送する。以下では階床を階と略記する場合がある。号機1は、例えば、かご10と、主索13を用いてかご10を巻き上げたり巻き降ろしたりする巻上機12と、主索13の移動に応じてかご10と逆方向に昇降する釣り合い重り14とを備える。
また、かご10には扉11が開閉可能に設けられている。かご10が乗り場4に到着すると、扉11が開き、その開扉動作により乗り場ドア41(図5参照)も開く。かご10は、乗り場4に到着した後、所定の時間だけ扉11を開いた状態で待機する。かご10が扉11を開いたままで乗り場4に待機することを、戸開待機と呼ぶ。乗車した利用者(乗客)がかご10内の操作器の戸閉ボタン(不図示)を操作したり、最大戸開時限が経過したりした場合には、かご10は扉11を閉める。その閉扉動作により乗り場ドア41も閉まる。かご10は、戸閉状態になると乗り場4を出発し、行先階呼びで指定された階床に移動する。かご10の開閉や移動は、号機制御装置15が担当する。号機制御装置15は、群管理装置1からの指令に応じて、かご10の戸開状態などを制御する。
行先階登録システム2は、利用者が乗り場4に到着する前に、利用者の目的とする行先階を群管理装置3へ入力して登録するためのシステムである。行先階登録システム2は、例えば、行先階登録装置20と、行先階読取り部21と、入出力制御システム22と、タグまたは端末23を備えることができる。
乗り場行先階登録装置20は、例えば、建物の廊下の付近、建物の出入口付近、乗り場4の付近などに設置される装置である。以下では、行先階登録装置20と略する場合がある。図5に示すように、行先階登録装置20は、例えば、入力装置200、表示装置201、特殊ボタン202などを備える。入力装置200は、利用者が行先階を示す数値を入力するための装置である。入力装置200は、例えば、テンキーなどから構成される。表示装置201は、入力装置200から入力した値を表示したり、入力した行先階に割り当てられた号機を表示したりする装置である。表示装置201は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(OLED:Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイなどから構成される。特殊ボタン202は、例えば、小さな子供連れの場合、車椅子利用者の場合、病人を連れている場合、重い荷物を持っている場合などの、特殊事情を入力するためのボタンである。利用者は、入力装置200から乗車予定人数などを入力することもできる。
入力装置200、表示装置201、特殊ボタン202の構成は上述の例に限らず、例えば、表示装置201と入力装置200および特殊ボタン202をタッチパネルとして一体的に構成してもよい。入力装置200として、音声入力装置を用いてもよい。
図1に戻る。行先階読取り部21は、行先階登録装置20と通信し、行先階登録装置20に入力された情報(行先階、人数)を受領したり、群管理装置3からの情報を行先階登録装置20へ送信したりする。行先階読取り部21は、例えば、情報取得部210と、報知部211を備える。情報取得部210は、上述のように、行先階登録装置20へ入力された行先階を取得する。報知部211は、群管理装置3で行先階呼びが割り当てられた号機1の情報を行先階登録装置20へ送信する。
入出力制御システム22は、行先階読取り部21と群管理装置3との間に位置し、行先階読取り部21と群管理装置3との間の情報入出力を担当する。入出力制御システム22は、群管理装置3のサブシステムであると考えてもよいし、群管理装置3および行先階登録システム2のいずれからも独立したシステムであると考えてもよい。
行先階登録装置20に代えて、あるいは行先階登録装置20と共に、タグまたは端末23を用いることもできる。いわゆるICカード、携帯電話、携帯情報端末、タブレットPCなどの持ち運び可能な端末装置を用いて、行先階を入力することもできる。
例えば、ICタグやICカード式の社員証の場合、建物の入館ゲートに行先階読取り部21を設け、社員証から読み取った社員番号から行先階を自動的に設定してもよい。例えば、群管理装置3は、社員番号と階床との組を管理するテーブルを保持し、社員証から読み取られた社員番号に対応付けられている階床を行先階として決定する。または、利用者は、携帯電話や携帯情報端末を介して、行先階を入力することもできる。
群管理装置3は、各号機1を群として管理するコンピュータ装置である。群管理装置3は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、入出力回路などのハードウェアと、オペレーティングシステムや制御プログラムなどのソフトウェアを備える。
以下、上述のハードウェアとソフトウェアが協働する結果として実現される機能を説明する。群管理装置3は、エレベータ群管理装置としての通常機能の他に、例えば学習系30、知能系31、運行管理制御部32を備える。
群管理装置3は、通常の機能の一つとして、各号機1の日々の運行状況を監視し、保存している。例えば、学習系30は、現在の運行状況データを解析して学習することで、現在の運行パターンが既知の運行パターンのいずれに該当するか判断する。知能系31は、運行状況データを解析することで、未知の運行パターンを検出する。例えば、建物内のテナントが入れ替わったりした場合、エレベータを使用する時刻や頻度が変化し、新たな運行パターンが生まれる。知能系31は、新たな運行パターンを検出すると、学習系30に知らせる。
運行管理制御部32は、行先階呼びに号機1を割り当てたり、各号機1の戸開時限などを管理する。運行管理制御部32は、例えば、時間設定部P1と、行先階呼び割当て処理部P2と、指令部P3とを備える。
時間設定部P1は、登録猶予時間設定部320と、歩行時間設定部321を備える。登録猶予時間設定部320は、階床毎に、あるいは号期毎に、登録猶予時間を設定する機能である。ここで登録猶予時間とは、行先階呼びを登録可能な時間である。登録猶予時間は、行先階呼びの発生した階床に号機1が到着すると開始し、登録猶予時間が満了すると終了する。図6で後述するように、ある時刻T0で号機1Aが行先階呼びの発生した階床に到着したとすると、その時刻T0から登録猶予時間t1は開始する。登録猶予時間t1の満了する時刻T1(=T0+t1)になると、登録猶予時間t1の満了した号機に対して行先階呼びは割り当てられない。
換言すれば、登録猶予時間設定部320は、割当て可能号機選択部322によって除外されずに割当て可能とされた号機候補に対する行先階呼びの登録をどの時点まで許可するかを決定する猶予時間を設定する。
図1に戻る。歩行時間設定部321は、歩行時間を設定する。「移動所要時間」の一例としての歩行時間とは、利用者が行先階登録装置20の設置場所から所定の号機1の乗り場ドア41までの移動に要する時間である。歩行時間は、各行先階登録装置20と各号機1の乗り場ドア41までの距離に応じて、それぞれ設定される。
例えば、利用者の標準歩行速度が予め設定されていれば、行先階登録装置20と各号機1の乗り場ドア41までの距離を標準歩行速度(標準移動速度)で割ることで、歩行時間を算出できる。小さな子供連れの場合や重い荷物を持っている場合などのように、歩行速度が標準歩行速度よりも遅くなる場合に備えて、歩行時間設定部321は、標準歩行速度よりも遅い速度を保持することもできる。行先階登録装置20の設置場所を変更した場合や、行先階登録装置20を新たに設置した場合に、歩行時間設定部321は歩行時間を設定する。
行先階呼び割当処理部P2は、行先階呼びをいずれか一つの号機1に割り当てる機能である。行先階呼び割当処理部P2は、例えば、割当て可能号機選択部322と、行先階登録処理部323を備える。
割当て可能号機選択部322は、行先階呼びを割当て可能な号機を各号機1の中から少なくとも一つ選択する。割当て可能号機選択部322は、図2で後述するように、予め設定される少なくとも一つの除外条件に基づいて、割当て可能な号機候補を抽出する。具体的には、予め設定される複数の除外条件のそれぞれについて、行先階呼びの割り当てに不適切な号機を決定して、割当て可能な号機候補から取り除く。除外条件とは、図2で後述するように、例えば、登録猶予時間を経過して出発準備中であるか(S3)、満員になると予測されるか(S5)、利用者が乗り場に間に合わないか(S7)、である。
いずれかの除外条件に該当する号機1は、行先階呼びを割当て可能な号機候補から除外される。全ての除外条件をクリアした号機のみ、行先階呼びを割当て可能な号機候補として選択される。
行先階登録処理部323は、割当て可能な号機候補の中から、最適な運行が可能な号機1を一つ選択し、選択した号機1に行先階呼びを割り当てて登録する。最適な運行が可能な号機1であるかは、例えば、その号機1に割り当てられているかご呼びや乗り場呼び、その号機1の乗客数(または総荷重)などを考慮して判定する。
指令部P3は、行先階呼びの割り当てられた号機1に対して所定の指令を発行する機能である。指令部P3は、例えば、時限管理処理部324と、戸開指令処理部325とを備える。
時限管理処理部324は、登録猶予時間、歩行時間、戸開時限などの時間管理に関する要素を管理する。戸開指令処理部325は、行先階呼びの割り当てられた号機1について使用された戸開時限をその号機1に適用させるための指令を、号機制御装置15へ送るものである。
なお、指令部P3は、図2で後述するように、行先階呼びを割り当てた号機1を特定する情報を行先階登録装置20へ送信して案内したり(S10)、乗り場ドア41の近辺に号機1の停止予定階を表示させたりしてもよい(S11)。
群管理装置3の機能構成は、図1に示す例に限定されない。ある機能と他の機能を統合して一つの機能にまとめたり、ある機能を複数の機能に分割したり、図1に示していない機能を追加したりしてもよい。
各機能30,31,32の役割分担は、上述の例に限定しない。要するに、階床ごとにまたは号機ごとに(乗り場ドアごとに)、登録猶予時間を設定することができ、号機1が乗り場4に到着してから登録猶予時間が過ぎるまでの間に生じた行先階呼びを、いずれかの号機1へ割り当てることができる構成であればよい。
図2は、群管理装置3の運行管理制御部32における処理動作を示すフローチャートである。
通常の構成の群管理装置と同様に、本実施例の群管理装置3は、各号機制御装置1(A)〜1(N)から号機データを受信する(S1)。号機データとは、号機1の状態や動作などに関するデータであり、例えば、移動方向、総荷重、かご呼びの状況、戸開閉状態などが含まれる。
群管理装置3は、ステップS1で受信した各号機データに基づいて各号機状態を把握した後、入出力制御システム22を介して、乗り場行先階登録装置20による行先階呼びが登録されたかを判定する(S2)。行先階呼びが登録されていない場合(S2:NO)、号機1を割り当てる必要がないので、ステップS10へ移る。
行先階呼びが登録されている場合(S2:YES)、群管理装置3は、以下に述べるように、その行先階呼びに対して一つの号機1を割り当てる(S3〜S9)。
割当て可能号機選択部322は、割当て号機候補としての条件を満たさないものを除外する(S3〜S8)。本実施例では、3つの除外条件を設けている。これに限らず、4つ以上の除外条件を設定してもよい。
割当て可能号機選択部322は、全ての号機1を対象として、登録猶予時間設定部320で設定された登録猶予時間t1を満了して出発準備中になっている号機1が存在するか判定する(S3)。本実施例では、登録猶予時間を過ぎた号機1には行先階呼びを割り当てない。出発遅れを防止するためである。
割当て可能号機選択部322は、登録猶予時間を満了して出発準備中の号機1が存在すると判定すると(S3:YES)、その号機1を行先階呼びの割当て号機候補から除外する(S4)。これに対し、割当て可能号機選択部322は、ステップ3の除外条件に該当する号機1が存在しないと判定すると(S3:NO)、ステップ4をスキップしてステップS5へ移る。
割当て可能号機選択部322は、割当て号機候補から除外されなかった全ての号機1を対象にして、満員が予測される号機があるか判定する(S5)。満員とは、かご10の最大定員に達する状態である。群管理装置3は、荷重センサの検出する荷重信号に基づいて、かご内の利用者数(乗客数)を推定することができる。または、群管理装置3は、乗り場4に設置する画像センサの検出信号に基づいて、かご10へ乗降する利用者を検出することもできる。
利用者が、行先階登録装置20に行先階を登録するに際して、一人の一入力を一人としてカウントし、乗車予定人数を検出することが可能である。利用者の人数を入力することもできる様にしても良い。検出された乗車予定人数から群管理装置3は、利用者の平均体重に基づいて、号機1のかご10が満員状態になるか否かを予測することができる。
割当て可能号機選択部322は、行先階呼びを登録した一人または複数の利用者を乗車させると、かご10が満員状態になる号機1があると判定した場合(S5:YES)、その満員のおそれのある号機1を割当て号機候補から除外する(S6)。これに対し、割当て可能号機選択部322は、満員状態になると予測されない場合(S5:NO)、ステップS6をスキップしてステップS7へ移る。
割当て可能号機選択部322は、割当て号機候補から除外されなかった全ての号機1を対象にして、行先階呼びを行先階登録装置20に登録した利用者が乗り場ドア41へ到達するまでに要する歩行時間t5と、判断対象の号機1が行先階呼びの登録された階床へ到着するまでに要する到着予測時間と予め設定されている最大戸開時限t4との合計値を比較する(歩行時間>(到着予測時間+最大戸開時限))。割当て可能号機選択部322は、ステップS7の判断に際して、歩行時間設定部321により設定された歩行時間を用いることができる。
割当て可能号機選択部322は、歩行時間の方が号機1の到着予定時間と最大戸開時限の合計値よりも大きいと判定すると(S7:YES)、その号機を割当て号機候補から除外する(S8)。この場合は、行先階呼びを登録した利用者が乗り場ドア41に到達するまでに長い時間(>到着予定時間+最大戸開時限)がかかり、出発が遅延し、既に乗り込んでいる他の利用者に対するサービス品質が低下するためである。これに対し、割当て可能号機選択部322は、行先階呼びを登録した利用者の歩行時間が号機1の到着予定時間と最大戸開時限の合計値以下であると判定すると(S7:NO)、ステップS8をスキップしてステップS9へ移る。
行先階登録処理部323は、割当て可能号機選択部322により抽出された号機候補の情報を受け取ると、号機候補の中から行先階呼びを割り当てるのに最も適切な号機を一つ選択する(S9)。行先階登録処理部323は、例えば、行先呼びの発生した階床に到着する時刻の最も速い号機、総荷重が最も少ない号機などを選択基準として、一つの号機を選択する。
さらに、行先階登録処理部323は、ステップS7において割当て号機の決定に使用した戸開時限情報を、時限管理処理部324から戸開指令処理部325に与えさせる。戸開指令処理部325は、ステップS7の除外条件に対応させた戸開時限を実行するように、行先階呼びの割り当てられた号機の号機制御装置1に指令を与える。
その後、群管理装置3は、号機案内処理(S10)と停止予定階表示処理(S11)を実行し、本処理を終了する。ステップS10の号機案内処理では、行先階呼びを割り当てた号機を特定する情報が、入出力制御システム22から報知部211および行先階登録装置20を介して、利用者に通知される。報知部211は、利用者の保持する携帯電話や携帯情報端末などのディスプレイや音声出力装置を通じて、行先階呼びの割り当てられた号機の情報(号機番号)を利用者へ通知してもよい。利用者は、案内された号機の乗り場ドア41に向けて移動する。
ステップS11の停止予定階乗り場4では、各号機1の停止予定階を表示することができる。例えば、群管理装置3は、乗り場4に設置したディスプレイや乗り場ドア41の近辺に設置する表示灯などを用いて、各号機1の停止予定階を表示することができる。乗り場4に到着した利用者は、ステップS10で通知された号機1の停止階を確認し、そこで待機する。
図3は、登録猶予時間設定部320で使用する登録猶予時間設定テーブルT1の構成例を示す。登録猶予時間設定テーブルT1は、階床ごとに(または号機ごとに)、行先階呼びの割当てを許可するための登録猶予時間t1を設定して管理する。
登録猶予時間設定テーブルT1は、例えば、階床欄C10、利用人数欄C11、猶予時間欄C12を対応付けて管理する。本実施例では、各階床での利用人数に応じて、猶予時間の値t1を猶予時間欄C12に設定する。本実施例では、例えば利用者数閾値を50人に設定し、利用人数欄C11の値を利用者数閾値で除算した値を猶予時間t1として算出する(猶予時間t1=利用人数/利用者数閾値)。
利用人数欄C11には、学習系30による日々の運行状況の学習結果に基づいて利用人数を設定することができる。例えば、学習系30は、各階床での利用人数を5分ごとや10分ごと、30分ごとのように、所定時間ごとに算出して出力する。各階床での利用人数とは、出発階での利用者の数である。登録猶予時間設定テーブルT1は、時間帯に応じて更新できる。図3に示すテーブルT1は、例えば出勤時の猶予時間を示す。
図3に示す或る時点(例えば朝の出勤時刻)において、1階の利用人数は「250人」と最も多く、閾値「50人」で割った商は「5」となる。従って、1階の猶予時間は「5秒」に設定される。
これに対し、2階の利用人数は「20人」と比較的少なく、閾値「50人」で割った商は「0」である。従って、2階の猶予時間は「0秒」に設定される。4階の利用人数は「30人」であり、閾値「50人」で割った商は「0」である。従って、4階の猶予時間も「0秒」に設定される。3階の利用人数は「60人」であるので、閾値「50人」で割った商は「1」となる。従って、3階の猶予時間は「1秒」に設定される。5階の利用人数は「50人」であるので、閾値「50人」で割った商は「1」となる。従って、5階の猶予時間も「1秒」に設定される。
猶予時間欄C12に設定される猶予時間t1は、号機1が乗り場4に到着した時を起点にして開始する。例えば、1階では、号機が乗り場に到着したときを起点にしてカウントを開始し、5秒後には猶予時間が満了となる。猶予時間t1の満了前に利用者が行先階呼びを登録した場合、その行先階呼びは当該号機に割当て可能であるため、利用者はその号機に乗車可能である。これに対し、猶予時間t1の満了後に利用者が登録した行先階呼びに対しては、その行先階呼びは当該号機に割り当てられないので、利用者はその号機に乗車できない。
猶予時間t1を大きい値に設定すると、その階床から号機1が出発するまでの時間が長くなる。従って、本実施例では、交通量の少ない階では、猶予時間t1の値を小さく設定することで、他階での呼びに応答し易くしている。一方、交通量の多い階では、猶予時間t1の値を比較的大きく設定することで、乗客がかご10に乗り込み易くし、乗車率を高める。これにより、本実施例では、利用者の少ない階では戸開待機状態の待ち時間を短くして号機1の出発を早め、利用者の多い階では戸開待機状態の待ち時間を長くして乗車率向上を図ることができる。これにより、本実施例では、サービス品質と輸送効率(運行効率)との両方を向上することができる。
利用者数閾値は、固定値でもよいし、運行状況に応じて変化させてもよい。利用者数閾値は、建物の構造、建物内の人数、エレベータ設置台数、かごの最大乗客数(最大荷重)などのパラメータから算出してもよいし、あるいは、日本工業規格に記載されているビル設置計画に使用される交通計算手法から算出してもよい。
図3では、或る時刻での階床ごとの猶予時間を示している。登録猶予時間設定テーブルT1は、運行状況の学習結果が更新されるたびに更新してもよいし、所定の時刻で更新してもよい。曜日や祝祭日などを考慮して猶予時間を調整してもよい。さらには、エレベータ群管理システムの管理者などが、猶予時間を手動で調整してもよい。
図4は、戸開時限を管理するテーブルT2の一例を示す。戸開時限管理テーブルT2は、例えば、階床欄C20、通常の戸開時限欄C21、歩行時間考慮時の戸開時間欄C22、最大戸開時限欄C23を対応付けて管理する。図4では、1階の号機1の戸開時限を示し、他の階及び他の号機戸開時限は図示を省略する。なお、確実に各号機により異なるケースが発生するのは歩行時間考慮時の戸開時間欄C22のみであるため、各号機の各階床毎の通常の戸開時限欄C21、最大戸開時限欄C23が同じ場合には、歩行時間考慮時の戸開時間欄C22を別途管理し、各号機共通のテーブルとしても良い。
通常の戸開時限欄C21は、号機1が乗り場4に到着してから扉11(41)を開いている通常の戸開時間t2を管理する欄である。通常の戸開時限t2を過ぎた場合、号機1は扉11(41)を閉めて出発する。通常の戸開時限t2は、登録猶予時間t1以上となるように設定される。通常の戸開時限t2が満了する前に、乗客がかご10へ乗り込んで戸閉ボタンを操作した場合、号機1は扉11を閉めて出発する。
歩行時間考慮時の戸開時限欄C22は、行先階呼びを登録した利用者が行先階登録装置20から所定の号機1の乗り場ドア41まで移動するのに要する時間を考慮した戸開時間t3を管理する欄である。この歩行時間考慮時の戸開時間t3は、猶予時間t1が経過するまで行先階呼びが当該かごに割り当てられ、歩行時間t5を考慮し、戸開時間が延長されるたびに更新される。歩行時間考慮時の戸開時間t3の値には、初期値として通常の戸開時限t2が設定され、最大戸開時限t4を最大値として変化する。最大戸開時限欄C23は、乗り場4に到着した号機1が扉11を開けたままで待機可能な時間の上限値t4を管理する欄である。歩行時間t5を考慮して通常の戸開時限t3を延長した場合でも、最大戸開時限t4を超えることはできない。本実施例では、登録猶予時間t1、通常の戸開時限t2、歩行時間考慮時の戸開時間t3、最大戸開時限t4の順に長くなるように設定されている(t1≦t2≦t3≦t4)。
戸開時限管理テーブルT2で管理する戸開時限t2,t4は、時限管理処理部324で設定する猶予時間t1に連動して設定することができる。これにより、各階の利用状況の変化に応じて猶予時間の値が調整された場合でも、その猶予時間の変更に応じて各戸開時限を自動的に変更できる。
図5は、歩行時間と登録猶予時間と戸開時限との関係を示す説明図である。ここで、1階の乗り場4(1)には、複数の号機1A〜1Nが配置されている。
1階には、複数の行先階登録装置20A,20Bが設置されている。一方の行先階登録装置20Aは、乗り場4(1)から距離LA離れている。他方の行先階登録装置20Bは、乗り場4(1)から距離LB(>LA)離れている。ここで距離LA,LBは、乗り場4(1)と行先階登録装置20A,20Bとの間の最短距離として定義してもよいし、一般的に利用者が辿る距離として定義してもよい。
各行先階登録装置20A,20Bと各号機1A〜1Nの乗り場ドア41(1A)〜41(1N)との間の距離は、それぞれ異なる。ここでは、乗り場ドア41(1A),41(1B),41(1C),41(1N)の順に、各行先階登録装置20A,20Bに近いとする。
各号機1A〜1Nの上側には、行先階登録装置20A,20Bごとの時限管理テーブルT3A,T3Bが示されている。一方の時限管理テーブルT3Aは、一方の行先階登録装置20Aから各号機1A〜1Nの乗り場ドア41(1A)〜41(1N)まで移動するのに要する歩行時間t5と、各号機1A〜1Nでの猶予時間t1および最大戸開時限t4の関係を示す。テーブルT3Aと同様に、他方の時限管理テーブルT3Bも、他方の行先階登録装置20Bから各号機1A〜1Nの乗り場ドア41(1A)〜41(1N)まで移動するのに要する歩行時間t5と、各号機1A〜1Nでの猶予時間t1および最大戸開時限t4の関係を示す。
各テーブルT3A,T3Bの各欄は、号機1A〜1Nに対応する。右端の欄は号機1Nに対応し、右端から2番目の欄は号機1Cに対応し、右端から3番目の欄は号機1Bに対応し、右端から4番目の欄は号機1Aに対応する。
一方の行先階登録装置20Aに着目する。利用者5Aが行先階登録装置20Aに行先階を登録して、乗り場4(1)へ移動する場合を説明する。行先階呼びの割当て先が号機1Aの場合、利用者5Aが乗り場ドア41(1A)に達するのに7秒を要する。猶予時間t1は3秒である。最大戸開時限t4は、10秒となる(7+3=10)。この階床(1階)において、行先階登録装置20Aでの行先階呼びを登録する場合の猶予時間t1は3秒に設定されている。号機1Bが行先階呼びに割り当てられた場合、利用者5Aが乗り場41(1B)に達するのに8秒かかり、猶予時間t1は3秒に設定されているため、最大戸開時限t4は11秒となる(8+3=11)。号機1Cが行先階呼びに割り当てられた場合、利用者5Aが乗り場41(1C)に達するのに9秒かかる。従って、この場合の最大戸開時限t4は、12秒となる(9+3=12)。号機1Nが行先階呼びに割り当てられた場合は、歩行時間t5が10秒、猶予時間t1が3秒なので、最大戸開時限t4は13秒となる(10+3=13)。
他方の行先階登録装置20Bに着目する。この階床において、行先階登録装置20Bでの行先階呼びを登録可能な猶予時間t1は3秒に設定されている。行先階呼びの割当て先が号機1Aの場合、歩行時間t5が10秒、猶予時間t1が3秒なので、最大戸開時限は13秒となる。行先階呼びの割当て先が号機1Bの場合、歩行時間t5が11秒、猶予時間t1が3秒なので、最大戸開時限t4は14秒となる。行先階呼びの割当て先が号機1Cの場合、歩行時間t5が12秒、猶予時間t1が3秒なので、最大戸開時限t4は15秒となる。行先階呼びの割当て先が号機1Nの場合、歩行時間t5が13秒、猶予時間t1が3秒なので、最大戸開時限t4は16秒となる。
歩行時間t5は、行先階登録装置20A,20Bと乗り場4との距離LA,LBから固定値として設定してもよいし、図5で述べたように行先階登録装置20A,20Bと各乗り場ドア41(1A)〜41(1N)との距離に応じて決定してもよい。あるいは、利用者の歩行時間を画像センサなどを用いて解析し、その解析結果を歩行時間の値として用いたり、日々の利用状況の学習結果を歩行時間に反映させたりしてもよい。
また、図5では各号機1で猶予時限t1は共通の値としたが、異なる値としてもよい。また、行先階登録装置ごとに猶予時限t1は異なる値としてもよい。これはかごに近い行先階登録装置であれば、各号機到着後に行先階を登録したとしても、短時間で利用者が乗車が可能であり、通常戸開時限t2や、最大戸開時限t4以内に乗車可能な期待値が高いためである。
図6は、登録猶予時間と歩行時間と戸開時限と最大戸開時限との関係を示すタイムチャートである。図中の横軸は時間の経過を示しており、乗り場階である1階に号機1Aが到着した時刻T0を基準としている。
時刻T1は、号機の到着時刻T0から猶予時間t1が経過した時刻である。時刻T2は、号機の到着時刻T0から通常の戸開時限t2が経過した時刻である。時刻T3は、号機の到着時刻T0から歩行時間t5が経過した時刻、即ち、時刻T0から歩行時間考慮時の戸開時間t3が経過した時刻である。時刻T4は、号機の到着時刻T0から最大戸開時限t4が経過した時刻である。
図6には、時刻T0で乗り場階に到着した号機1Aに、利用者5A〜5Eが乗り込む場合を示している。図6における各利用者5A〜5Eの位置は、行先階呼びを行先階登録装置20へ登録した時点(行先階呼びの発生した時点)を示す。行先階呼びの発生時点における各利用者の物理的位置は、行先階登録装置20の設置場所である。なお、ここで、各利用者5A〜5Eは猶予時限t1との前後関係の説明上並べただけであり、実際には連続せずに、異なるタイミングで行先階登録装置への登録を行っているものとする。
号機1Aの到着前に行先階を登録した利用者5Aは、号機1Aの左側に位置する。号機1Aの到着とほぼ同時に行先階を登録した利用者5Bは、号機1Aの到着時刻に対応して位置する。号機1Aが到着して猶予時間t1が経過する前に行先階を登録した利用者5Cは、号機1Aの右側であって猶予時間t1の満了前の時刻に位置している。号機1Aの猶予時間t1が経過した後に行先階を登録した利用者5Dは、号機1Aの右側であって猶予時間t1を過ぎた時刻に位置する。なお、利用者5Eは、号機1Aの到着前に行先階を登録したが、移動速度が遅いために号機1Aの最大戸開時限t4の経過後で、乗り場4(1)に到着している。
利用者5Aは、その歩行時間を考慮しても、号機1Aにおける通常の戸開時限t2が満了する時刻T2までに、号機1Aへ乗り込むことができる。具体的には登録から号機1Aの到着までの時間をt6とすると、登録してから号機到着までに、号機に歩行するための時間ができる。この場合、歩行時間t5からt6を減じて、t2>t5-t6となるため、通常の戸開時限t2が満了する時刻T2までに、利用者5Aは号機1Aへ乗り込むことができる。そこで、利用者5Aの場合は、かごの到着時刻T0から通常の戸開時限t2の経過した時刻T2でドアを戸閉する。
利用者5Bは、号機1Aが乗り場(1)に到着したタイミングでに行先階呼びを登録している。従って、上記の登録から号機1Aの到着までの時間t6は0となる。この場合、通常戸開時限t2<歩行時間t5―t6(=0)となるため、利用者5Bは通常の戸開時限t2の満了時刻T2までに号機1Aへ乗り込むことができない。しかし、戸開時限を、通常の戸開時限t2から歩行時間考慮時の戸開時間t3に延長した場合は、利用者5Bは歩行時間考慮時の戸開時限t3が満了する時刻T3までに号機1Aへ乗車できるため、時刻T3でドアを戸閉する
利用者5Cは、号機1Aが乗り場に到着してから行先階呼びを登録している。その行先階呼びは、登録猶予時間t1内に発生しているため、号機1Aに登録可能である。しかし、歩行時間t5を考慮すると、利用者5Cは、通常戸開時間t2内に号機へ乗り込むことができない。具体的には行先階呼びの登録から号機1Aの到着までの時間t6は、号機1Aの到着後に行先階呼びを登録しているため、マイナスの値となり、t2<t5−(−t6)となりt2を超えてしまう。ここで歩行時間考慮時の戸開時間t3を適用するとしてもその最大値は最大戸開時限t4である。したがって、t4≧t5−(−t6)の条件を満たす場合に、利用者5Cは最大戸開時限t4が満了する時刻T4までに号機1Aへ乗り込むことができる。逆に上記の条件を満たさず、(t5−(−t6))がt4を超える場合には、利用者5Cの行先階呼びには号機1Aは割り当てられない。これは戸開時間が長すぎれば運行効率が下がると共に、既にかごに乗車している他のユーザに不快感を与えるためである。
利用者5Dは、猶予時間t1を過ぎてから行先階呼びを登録しているため、その歩行時間t5を考慮すると、最大戸開時限t4が満了する時刻T4までに号機1Aへ乗り込むことはできない。このため、猶予時間t1の満了時刻T1を経過した行先階呼びには、号機1Aは割り当てない。
利用者5Eは、号機1Aの到着前に行先階呼びを登録しており、上記の5Aと同様の計算により号機1Aがこの行先呼びに割り当てられている。、しかし歩行速度が遅い場合や別の場所に立ち寄った場合など、最大戸開時限t4の満了する時刻T4までに号機1Aへ乗り込むことができない場合がある。この場合、号機1Aは時刻T4で扉を閉めて出発する。利用者5Eの行先階呼びは、次の号機に割り当てられる。割当て先の号機が変更された場合、乗り場に設置する表示器などから利用者5Eへ割当て先号機の変更を通知すればよい。なお、ここで利用者5Eが号機1Aに未乗車である事の確認は、号機1Aの重量センサで重量が足りない事を検知するか、無線センサによりかごの内の利用者と割当てられた利用者を比較することで、5Eが号機1Aに未乗車である事は検知する事ができる。
図6で述べたように、本実施例によれば、利用者の多い混雑階(例えば出勤時刻における1階)において、少ない乗車人数による発車を抑制できると共に、不要な乗り込み時間の延長を抑制することができる。従って、本実施例によれば、運行効率の向上とサービス品質の向上とを両立することができる。
歩行速度が遅いために今までであれば乗り込むことができなかった利用者でも、本実施例では、歩行時間を考慮して戸開時限を延長できるため、乗車可能となる。従って、本実施例では、利用者の乗車可能性を高めることができ、サービス品質が向上する。さらに、乗車率を高めることができるため、運行効率を向上できる。
さらに本実施例では、猶予時間の経過後は行先階呼びの登録を許可しないため、不必要に戸開時限を延長することもない。このため、出発の遅れを抑制してサービス品質を向上できると共に、無駄な待ち時間を低減して輸送効率を高めることができる。
本実施例の運行管理制御部32は、歩行時間設定部321や登録猶予時間設定部320を有するため、利用状況に応じた効率的なサービスを提供することができる。上述のように混雑する時間帯の混雑する乗り場では、猶予時間を長く設定したり、歩行時間を考慮して戸開時限を延長したりすることで、乗車率を高めることができる。あるいは、混雑する時間帯における混雑階では、全部の号機または少なくとも一部の号機の戸開時限を最大戸開時限まで延長することもできる。
本実施例では、階毎または号機毎に猶予時間を設定する登録猶予時間設定部320を設けるため、割当て可能号機選択部322は、猶予時間が満了する前に発生した行先階呼びだけを号機に割り当てることができる。このため、本実施例によれば、行先階呼びの発生時刻が猶予時間内であるか否かに基づいて、割当て可能号機選択部322は号機候補を選択することができ、候補選択処理を簡素化できる。
本実施例では、交通量の多い階では、猶予時間を比較的大きくすることで、乗車率を高めて運行効率を向上できる。一方、交通量の少ない階では、猶予時間を小さくして、他階での呼びに応答し易くすることができる。従って、一様に猶予時間を設定する場合に比べて、本実施例では、他階への移動に要する時間が長くなるのを防止でき、サービス品質を向上できる。