上述の如く、前記インクリメンタルエンコーダを用いる方法は基準角度の検出方法として原点センサを使う。前記アブソリュートエンコーダを用いる方法は、機械的に原点の位置を定める必要がある。更に、正確なロボットアームの制御のためには、斯かるモータの回転角度の原点の位置を正確に設定する必要がある。一般には、いわゆるアイマークを設け、作業者がアイマークの整合を肉眼にて確認することで前記原点の位置を定めていたが、このような方法は正確とは言えない。
また、前記工作機械を搬送する場合、ロボットアームの関節部に負荷がかかることを防ぐため、一般には、搬送固定具を介して加工テーブルにロボットアームのハンド部を固定していた。しかし、加工テーブル上に加工用治具等が配置してある等の場合は、その通度、搬送固定具を作り直す必要があった。
このような問題について、上述の特許文献1の扉開閉制御装置は工夫しておらず、このような問題を解決することが出来ない。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転角度の原点をより正確に定めることができ、搬送の際には、より容易にアームを固定することができるアーム装置、工作機械、治具部材、及び、原点設定方法を提供することにある。
本発明に係るアーム装置は、アームと、前記アームを回転可能に保持する保持部とを備えるアーム装置において、前記アームに設けてある、少なくとも一つの第1印と、前記保持部に設けてある、少なくとも一つの第2印と、前記保持部及び前記アームに着脱可能であって、取り付けの際、回転角度の原点に位置する前記アームの前記第1印及び前記保持部の前記第2印と整合する第3印を有する治具部材とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、前記アームが回転角度の原点に位置している場合に前記治具部材を取り付けると、前記アームの前記第1印及び前記保持部の前記第2印と、前記治具部材の前記第3印が互いに整合する。従って、前記第1印及び前記第2印と、前記第3印との整合性に基づいて、前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係るアーム装置は、前記治具部材は板状であり、前記第3印は、前記治具部材を厚み方向に貫通する貫通孔を含むことを特徴とする。
本発明にあっては、前記第3印の貫通孔は前記治具部材を厚み方向に貫通している。前記アームが回転角度の原点に位置している場合に前記治具部材を取り付けると、前記第1印及び前記第2印と前記第3印が互いに整合するので、前記第3印の貫通孔を通して前記第1印及び前記第2印が視認できる。従って、前記第3印の貫通孔を通した前記第1印及び前記第2印の視認可否に基づいて、前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係るアーム装置は、前記治具部材は前記アーム又は前記保持部との係合に係る係合部を有しており、前記アーム又は前記保持部は、前記第1印及び前記第2印と前記第3印が整合する場合、前記係合部と係合する被係合部を有することを特徴とする。
本発明にあっては、前記治具部材は前記係合部を有しており、前記アーム又は前記保持部は、前記第1印及び前記第2印と前記第3印が整合する場合、すなわち前記アームが回転角度の原点に位置する場合、前記係合部と係合する被係合部を有する。従って、前記第1印と前記第2印、及び、前記第3印の整合性に加え、前記治具部材の前記係合部が前記アーム又は前記保持部の前記被係合部と係合するか否かに基づいて、より正確に前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係るアーム装置は、前記第1印又は前記第2印は凹部を有しており、前記第3印の前記貫通孔を通って前記凹部に結合する結合部材を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、前記アームが回転角度の原点に位置している場合には、前記アームの前記第1印及び前記保持部の前記第2印と、前記治具部材の前記第3印(貫通孔)を互いに整合させることができる。この際、前記第3印の前記貫通孔を通って前記第1印又は前記第2印の前記凹部に前記結合部材を挿入して結合させ、前記治具部材を取り付ける。従って、前記治具部材の取り付け可否に基づいて正確に前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係るアーム装置は、前記治具部材には、自機械の搬送に用いる吊り具を着脱可能に設けてあることを特徴とする。
本発明にあっては、前記治具部材には前記吊り具を着脱可能に設けてある。従って、前記治具部材を取り付け・取り外すのみで、前記吊り具の取り付け・取外しを共に行うことができる。また、前記吊り具を取り付けるための場所を別途に確保する必要もない。
本発明に係る工作機械は、前述の発明の何れか一つに記載のアーム装置と、加工を行う加工テーブルとを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、前記アーム装置を用いて、前記加工テーブルに加工物を搬送し、加工テーブル上の加工用治具に加工物を固定の上、加工物の加工を行う。前記アーム装置の回転角度の原点が正確に設定できるので、精度の高い加工物の搬送が可能である。
本発明に係る治具部材は、アームと、前記アームを回転可能に保持する保持部と、前記アームに設けてある少なくとも一つの第1印と、前記保持部に設けてある少なくとも一つの第2印とを備えるアーム装置の前記保持部及び前記アームに着脱可能な治具部材において、取り付けの際、回転角度の原点に位置する前記アームの前記第1印及び前記保持部の前記第2印と整合する第3印を有することを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、前記アームが回転角度の原点に位置している場合に前記治具部材を取り付けると、前記アームの前記第1印及び前記保持部の前記第2印と、前記第3印が互いに整合する。従って、前記第1印及び前記第2印と、前記第3印との整合性に基づいて、前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係る治具部材は、板状であり、前記第3印は厚み方向に貫通する貫通孔を含むことを特徴とする。
本発明にあっては、前記第3印の貫通孔は前記治具部材を厚み方向に貫通している。前記アームが回転角度の原点に位置している場合に前記治具部材を取り付けると、前記第1印及び前記第2印と前記第3印が互いに整合するので、前記第3印の貫通孔を通して前記第1印及び前記第2印が視認できる。従って、前記第3印の貫通孔を通した前記第1印及び前記第2印の視認可否に基づいて、前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係る治具部材は、前記アーム又は前記保持部との係合に係る係合部を有しており、前記アーム又は前記保持部は、前記アームが回転角度の原点に位置する場合、前記係合部と係合する被係合部を有することを特徴とする。
本発明にあっては、前記アーム又は前記保持部は、前記アームが回転角度の原点に位置する場合前記係合部と係合する被係合部を有する。従って、前記第1印と前記第2印、及び、前記第3印の整合性に加え、前記係合部が前記被係合部と係合するか否かに基づいて、より正確に前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係る治具部材は、前記第1印又は前記第2印は凹部を有しており、前記第3印の前記貫通孔を通って前記凹部に結合する結合部材を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、前記アームが回転角度の原点に位置している場合、前記第1印及び前記第2印の凹部と、前記第3印の貫通孔を互いに整合させることができる。この際、前記第3印の前記貫通孔を通って前記第1印又は前記第2印の前記凹部に前記結合部材を挿入して結合させ、前記治具部材を取り付ける。従って、前記治具部材の取り付け可否に基づいて正確に前記アームの回転角度の原点を定めることができる。
本発明に係る治具部材は、前記アーム装置の搬送のための吊り具が着脱可能に設けてあることを特徴とする。
本発明にあっては、前記治具部材には前記吊り具を着脱可能に設けてある。従って、前記治具部材を取り付け・取り外すのみで、前記吊り具の取り付け・取外しを共に行うことができる。また、前記吊り具を取り付けるための場所を別途に確保する必要もない。
本発明に係る原点設定方法は、アームと、前記アームを回転可能に保持する保持部と、前記アームに設けてある少なくとも一つの第1印と、前記保持部に設けてある少なくとも一つの第2印と、前記保持部及び前記アームに着脱可能に設けてある治具部材とを備えるアーム装置にて、前記アームの回転角度の原点を設定する原点設定方法において、前記治具部材は第3印を有しており、前記治具部材を取り付けた場合、前記第3印は、回転角度の原点に位置する前記アームの前記第1印及び前記第2印と整合し、前記第1印と前記第2印、及び前記第3印が整合する場合、前記回転角度の原点の設定を受け付けることを特徴とする。
本発明にあっては、取り付けた前記治具部材の前記第3印が、前記アームの前記第1印及び前記第2印と整合するのは、前記アームが回転角度の原点に位置する場合なので、前記第1印と前記第2印、及び前記第3印が整合する場合、前記アームに対する前記回転角度の原点の設定を受け付ける。従って、前記第1印と前記第2印、及び前記第3印が整合するか否かに基づいて、前記アームの前記回転角度の原点を定めることができる。
本発明によれば、より正確に回転角度の原点を定めることができ、斯かるアーム装置を搬送する際、より容易にアームを固定することができる。
以下本発明の実施の形態に係るアーム装置を工作機械に適用した場合を図面に基づいて説明する。以下の説明では、図に示す上下左右前後を使用する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る工作機械100を略示する斜視図である。工作機械100は工具マガジンの周囲を囲む壁101を備えている。壁101の右部には開口が設けてあり、該開口の右側に扉ユニット4が設けてある。扉ユニット4の更に右側にはワーク交換装置1が設けてある。
扉ユニット4は、直方体状をなし、上下前後方向に延びた薄い筐体41を備える。筐体41は開口42を備え、開口42は、筐体41の右側面と左側面を左右に貫通する。筐体41の開口42は、壁101の開口に対応した位置に配してある。筐体41は前後方向に移動可能な開閉扉43を有する。開閉扉43は筐体41と略平行に設けてあり、前後に移動して開口42を開閉する。
ワーク交換装置1は加工に用いるワークの交換を行う。ワーク交換装置1はワークの搬送を行うアーム装置10、アーム装置10を保持する基台部12を備える。基台部12は前後方向に延びる筐体形状をなしており、上側の開口を介してアーム装置10の一端部を保持し、アーム装置10を前後方向に移動させる。
図2は実施の形態1に係る工作機械100の右側から見たアーム装置10の側面図、図3は実施の形態1に係る工作機械100のアーム装置10の斜視図である。
アーム装置10は、第1アーム31、第2アーム32、保持部33を備えている。保持部33は第1アーム31を回転可能に保持し、第1アーム31は第2アーム32を回転可能に保持する。図2、図3においては、第1アーム31と第2アーム32が、後述する回転角度の原点の位置にある場合を示している。
保持部33は前後方向を軸方向とした筒状であり、保持部33の下部には保持部33の軸を中心に第1アーム31を回転させる第1アーム用モータ(図示せず)が設けてある。
保持部33の後側には第1アーム31が配置してあり、第1アーム31より後側には第2アーム32が配置してある。第1アーム31と第2アーム32は、一方向に長い箱の形状をなす。長さ方向における第1アーム31と第2アーム32の寸法は第1アーム31が長い。
第1アーム31の一端部311は直交ギアを内包した第1アーム用減速機(図示せず)を介して第1アーム用モータの回転軸と連結している。換言すれば、保持部33は、前記第1アーム用モータの回転軸を介して第1アーム31の一端部311を保持しており、これによって、第1アーム31は回転可能になる。
第1アーム31の他端部312には直交ギアを内包した第2アーム用減速機(図示せず)が設けてあり、第2アーム用減速機は第2アーム32の一端部321と連結している。即ち、第1アーム31の他端部312は前記軸部を介して第2アーム32を回転可能に保持しており、第1アーム31が第2アーム32の保持部としての役割をなす。
第1アーム31の一端部311の内側には、第2アーム32を回転させるための第2アーム用モータ(図示せず)が配置している。第2アーム用モータの回転は、直交ギアを内包した第2アーム用減速機を介して前記軸部に伝わり、これによって第2アーム32が該軸部を中心に回転する。第2アーム32の他端部322の内側には、後述する把持部60を回転させる把持部用モータが設けてある。
第2アーム32の他端部322より下方には、直交ギアを内包した把持部用減速機35が設けてある。直交ギアを内包した把持部用減速機35は有底円筒状をなし、直交ギアを内包した把持部用減速機35の中心には回転軸(図示せず)が設けてある。直交ギアを内包した把持部用減速機35より後側にはワークを把持する把持部60が配置してある。直交ギアを内包した把持部用減速機35の前記回転軸の一端部には前記把持部用モータの回転軸が連結してある。一方、前記回転軸の他端部には把持部60が連結してある。従って、前記把持部用モータの回転は直交ギアを内包した把持部用減速機35を介して前記回転軸の一端部に伝わり、該回転軸の他端部に連結している把持部60が回転する。
工作機械100は、ワーク交換装置1(アーム装置10)の駆動を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU、ROM、RAM等を備える。CPUはROMに格納した制御プログラムをRAMにロードして実行することで、工作機械100とワーク交換装置1の駆動を制御する。例えば、CPUは前記第1アーム用モータ、前記第2アーム用モータ、前記把持部用モータの回転角度に基づいて、アーム装置10の駆動を制御する。以下、説明の便宜上、前記第1アーム用モータ、前記第2アーム用モータをまとめてアームモータともいう。
前記アームモータ、前記把持部用モータの回転角度を取得する為、前記アームモータ、前記把持部用モータには夫々エンコーダを設けてある。前記アームモータはアブソリュートエンコーダを備える。各エンコーダは前記アームモータ、前記把持部用モータの回転角度を検出し、入力インタフェース(図示せず)を介して、検出した回転角度を制御装置50に入力する。
例えば、制御装置50は、エンコーダ(アブソリュートエンコーダ)からのアームモータの回転角度に基づいて、第1アーム31の回転角度(以下、第1回転角度とも言う。)を演算し、又は、第2アーム32の回転角度(以下、第2回転角度とも言う。)を演算する。
エンコーダとしてアブソリュートエンコーダを用いる場合、回転角度の絶対値を検出するので、回転角度の原点の位置を機械的に定める必要がある。即ち、第1回転角度と第2回転角度の検出における原点の位置を設定することが必要である。第1アーム31、第2アーム32が特定位置に存在する場合、該位置を原点の位置として設定する。回転角度の原点の設定に応じてアブソリュートエンコーダは、第1回転角度と第2回転角度を検出する。従って、回転角度の原点の設定は正確性を要する。
従来、所謂一対のアイマークを設け、一対のアイマークの位置が整合しているかを作業者が肉眼で確認することで、原点の位置の設定を行っていた。しかし、一対のアイマークの位置が整合しているか否かの判断は作業者の主観的判断となり、正確性に乏しい。
また、工作機械100は、保持部33が第1アーム31と第2アーム32を回転可能に保持しているので、工作機械100を搬送する場合、第1アーム31と第2アーム32が自由に動くことによる故障を防ぐために、第1アーム31、第2アーム32を固定する必要がある。一般には、搬送固定具を介して壁101の内側の加工テーブルTに把持部60を固定していた。しかし、加工テーブルT上に加工用治具等が配置してある場合等は、その通度、搬送固定具を作り直す必要があった。
実施の形態1に係るアーム装置10は、このような問題に対応できる構成を有している。以下、説明する。
実施の形態1に係るアーム装置10は、治具部材70,71の取り付けと、治具部材70,71の取外しが可能である。例えば、図2、図3は、第1アーム31と第2アーム32が回転角度の原点の位置にある場合を示しており、治具部材70,71がアーム装置10に取り付けてある。
図4は実施の形態1に係るアーム装置10から取り外した治具部材70,71を示す斜視図、図5は治具部材70,71を取り外したアーム装置10を示す斜視図である。図4Aは治具部材70を示しており、図4Bは治具部材71を示している。治具部材70は扁平な矩形の板状をなしており、治具部材71は所定の段差を有し、断面視クランク状をなす。
第1アーム31の一端部311の右側面は第1印部314が設けてあり、保持部33の右側面には第1印部314に対応して第2印部34が設けてある。第1印部314は第1アーム31の一端部311の右側面から突出した矩形の領域である。第2印部34は保持部33の右側面から突出した矩形の領域である。保持部33の右側面と、第1アーム31の一端部311の右側面が同一面上に配置してあるので、第1印部314の端面と第2印部34の端面も同一面上にて間隔を挟んで隣り合っている。
第1アーム31の右側面における長さ方向の中央部には第3印部313が設けてあり、第2アーム32の他端部322の右側面には第3印部313に対応して第4印部323が設けてある。第3印部313は第1アーム31の前記中央部の右側面から突出した矩形の領域である。第4印部323は第2アーム32の他端部322の右側面から突出した矩形の領域である。第3印部313と第4印部323は間隔を挟んで隣り合っている。第1アーム31の前記中央部の右側面と、第2アーム32の他端部322の右側面が左右方向における位置が異なるので、斯かる位置の違いに対応する段差が治具部材71に設けてある。以下においては、説明の便宜上、主に治具部材70を用いて説明する。
図6は実施の形態1に係るアーム装置10において、治具部材70の取り付けを説明する説明図である。図6においては、治具部材70、第1印部314、第2印部34を除く他部分の表示は省略している。以下、第1印部314と第2印部34をまとめて印部80とも言う。
第1印部314は後側の上下隅に夫々1つずつの取付凹部81(第1印)を有し、第2印部34は前側の上下隅に夫々1つずつの取付凹部81(第2印)を有する。取付凹部81は円形であり、取付凹部81の内側にはネジ山が設けてある。後述の如く、取付凹部81を用いてネジ止めを行い、治具部材70を取り付ける。
更に、第2印部34と第1印部314は夫々係合溝82を有している。係合溝82は前後方向に延びる直線状であり、第1印部314と第2印部34において、上下方向の中央に設けてある。第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合、第1印部314の係合溝82と、第2印部34の係合溝82は同一直線の延長線上に位置する。従って、作業者は、第1印部314と第2印部34の係合溝82,82が同一直線上にあるか否か判断することで、第1アーム31が回転角度の原点の位置にあるか否かを一次的に判定できる。
治具部材70は矩形の板状であり、厚み方向に貫通する貫通孔701(第3印)を四隅に夫々設けてある。貫通孔701は円形であり、少なくとも取付凹部81の内径以上の内径を有する。第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合、印部80(第1印部314と第2印部34)の4つの取付凹部81と、取り付けた治具部材70の貫通孔701が整合する。換言すれば、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70を取り付けたときのみ、治具部材70の貫通孔701が印部80の取付凹部81と整合する。
第1アーム31が回転角度の原点の位置にあり、且つ治具部材70の貫通孔701が印部80の取付凹部81と整合する場合、貫通孔701を通して取付凹部81にネジS(結合部材)を挿入し、ネジSと取付凹部81を螺合させる。これによって、治具部材70の印部80への取り付けができる。
第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合、治具部材70の貫通孔701が印部80の取付凹部81と整合するので、この場合のみ、ネジSが貫通孔701を通して取付凹部81に挿入可能である。換言すれば、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合のみ、治具部材70を印部80に取り付けることができる。従って、治具部材70を印部80に取り付けることができるか否かに基づいて第1アーム31の回転角度の原点を定めることが出来る。
治具部材70の印部80への取り付け後、工作機械100(制御装置50)は第1アーム31の回転角度の原点の設定(入力)を受け付ける。原点の設定(入力)は第1アーム31及び第2アーム32の制御を司るパソコン(図示せず)を制御盤50に接続し、第1アーム31及び第2アーム32の位置情報を0にすることで、その場所を原点とすることができる。以降、工作機械100(アーム装置10)を稼働させる場合は、アーム装置10から治具部材70を取り外して工作機械100を稼働させる。
工作機械100を搬送する時、上述の如く、治具部材70を取り付けて第1アーム31を保持部33に固定する。
従って、実施の形態1に係るアーム装置10は、第1アーム31および第2アーム32を治具部材70、71にて固定し、治具部材70、71が第1アーム31および第2アーム32の回転角度の原点の設定の役割を兼ねるため、アーム装置10を簡素化できる。
以上においては、治具部材70、第1印部314、第2印部34を用いて、第1アーム31の回転角度の原点を定めること、また、第1アーム31を固定することについて説明した。実施の形態1に係るアーム装置10はこれに限るものでない。治具部材71、第3印部313と第4印部323を用いて、第2アーム32の回転角度の原点を定めること、第2アーム32を固定することについても同様であることは言うまでもない。
また、印部80が取付凹部81を有する場合を例として説明したが、実施の形態1に係るアーム装置10はこれに限るものでない。取付凹部81の代わりに、治具部材70,71の貫通孔701より小さい目印を取付凹部81の位置に設けても良い。治具部材70,71の全ての貫通孔701を介して、印部80の前記目印が確認できる場合、第1アーム31(第2アーム32)が回転角度の原点の位置にあると定めることができる。
なお、この場合、取付凹部81がないことからネジ止めによって治具部材70,71を取り付けることはできないが、例えば磁力を用いて治具部材70,71を取り付けることができる。
ネジSを用いて治具部材70,71の取り付けを行う場合を例として説明したが、実施の形態1に係るアーム装置10はこれに限るものでない。ネジSの代わりに、ボルト、リベット、ボスなどを用いても良い。
(実施の形態2)
図7は実施の形態2に係るアーム装置10において、治具部材70Aの取り付けを説明する説明図である。図7においては、治具部材70A、第1印部314、第2印部34を除く他部分の表示は省略している。印部80は実施の形態1と同一なので説明を省略する。
治具部材70Aは矩形の板状であり、実施の形態1と同様に、貫通孔701を四隅に夫々設けてある。貫通孔701は、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合における、印部80の4つの取付凹部81と整合する位置に夫々設けてある。換言すれば、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Aを取り付けたときのみ、治具部材70Aの各貫通孔701が印部80の各取付凹部81と整合する。
更に、治具部材70Aは係合突出部702(係合部)を有してある。係合突出部702は治具部材70Aにおける印部80との対向面から突出している。係合突出部702は前後方向に延びる直線状であり、前記対向面の上下方向における中央に設けてある。係合突出部702は印部80の係合溝82に対応する形状をなしており、係合溝82との係合を行う。
第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Aを取り付けた際、係合突出部702は印部80の係合溝82と整合する。換言すれば、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合にのみ、治具部材70Aの係合突出部702が印部80の係合溝82と整合する。
第1アーム31が回転角度の原点の位置にあり、且つ治具部材70Aの貫通孔701が印部80の取付凹部81と整合し、更に、治具部材70Aの係合突出部702が印部80の係合溝82と係合する場合、上述したようにネジ止めによって、治具部材70Aを印部80に取り付ける。
即ち、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合のみ、治具部材70Aの係合突出部702が印部80の係合溝82と係合し、且つ治具部材70Aの貫通孔701が印部80の取付凹部81と整合する。従ってこの場合のみネジSが貫通孔701を通して取付凹部81に挿入可能である。換言すれば、治具部材70Aの貫通孔701が印部80の取付凹部81と整合するうえ、治具部材70Aの係合突出部702が印部80の係合溝82と係合する場合のみ、第1アーム31が回転角度の原点に位置する。従って、治具部材70Aを印部80に取り付けることができるか否かに基づいてより正確に第1アーム31の回転角度の原点を定めることが出来る。
なお、実施の形態2に係るアーム装置10は以上の記載に限るものでない。例えば、係合溝82の深さを深くし、係合溝82に合わせて左右方向における係合突出部702の寸法を大きくすることによって、ネジ止めをすることなく、係合の機構のみで治具部材70Aを取り付けできる。
(実施の形態3)
図8は実施の形態3に係るアーム装置10において、治具部材70Aの取り付けを説明する説明図である。図8においては、治具部材70A、第1印部314A、第2印部34Aを除く他部分の表示は省略している。
第1印部314Aは後側の上下隅に1つずつの取付突起部81A(第1印)を有し、第2印部34Aは前側の上下隅に1つずつの取付突起部81A(第2印)を有する。取付突起部81Aは円柱形状であり、印部80Aの表面から突出している。取付突起部81Aの外径は、治具部材70Aの貫通孔701以下である。
更に、印部80Aは係合溝82,82(被係合部)を有している。係合溝82は前後方向に延びる直線状であり、第1印部314Aと第2印部34Aにおいて、上下方向の中央に設けてある。
治具部材70Aは矩形の板状であり、実施の形態1と同様に貫通孔701を四隅に夫々設けてある。貫通孔701は印部80Aの取付突起部81Aに対応する円形状を有している。第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Aを取り付けたときのみ、治具部材70Aの貫通孔701が印部80Aの取付突起部81Aと整合する。
更に、治具部材70Aは係合突出部702(係合部)を有してある。係合突出部702は治具部材70Aにおける印部80Aとの対向面から突出している。係合突出部702は印部80Aの係合溝82に対応する形状をなしており、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Aを取り付けた際、係合突出部702が係合溝82と整合する。
第1アーム31が回転角度の原点の位置にあり、治具部材70Aの各貫通孔701が各取付突起部81Aと整合する場合、取付突起部81Aが貫通孔701内に挿入するので、貫通孔701と取付突起部81Aが係合を行う。この際、治具部材70の係合突出部702が印部80Aの係合溝82と係合する。貫通孔701と取付突起部81Aが係合し、係合突出部702が係合溝82と係合するので、治具部材70Aを印部80Aに取り付けできる。従って、治具部材70Aを取り付ける為、別の機構を設ける必要がなく製造コストを削減できる。
また、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合のみ、治具部材70Aの貫通孔701が印部80Aの取付突起部81Aと整合して係合を行い、且つ治具部材70Aの係合突出部702が印部80Aの係合溝82と係合する。換言すれば、治具部材70Aの貫通孔701が印部80Aの取付突起部81Aと係合するうえ、治具部材70Aの係合突出部702が印部80Aの係合溝82と係合する場合のみ、第1アーム31が回転角度の原点に位置する。従って、より正確に第1アーム31の回転角度の原点を定めることが出来る。
(実施の形態4)
図9は実施の形態4に係るアーム装置10において、治具部材70Bの取り付けを説明する説明図、図10は図9のX−X線による治具部材70Bの縦断面図である。図9においては、治具部材70B、第1印部314A、第2印部34Aを除く他部分の表示は省略している。第1印部314A、第2印部34Aは実施の形態3と同じであるので説明を省略する。
治具部材70Bは矩形の板状であり、四隅に取付窪み701A(第3印)を夫々設けてある。取付窪み701Aは、治具部材70Bにおける印部80Aとの対向面703に設けてある。取付窪み701Aは印部80Aの取付突起部81Aに対応する形状を有している。即ち、取付窪み701Aは円形であり、取付突起部81Aより少し大きい内径を有している。各取付窪み701Aは、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Bを取り付けた際、印部80Aの4つの取付突起部81Aと夫々整合する。換言すれば、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Bを取り付けたときのみ、治具部材70Bの取付窪み701Aは印部80Aの取付突起部81Aと整合し、取付突起部81Aと係合を行う。
更に、治具部材70Bは係合突出部702(係合部)を有している。係合突出部702は対向面703から突出している。係合突出部702は印部80Aの係合溝82に対応する形状をなしており、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Bを取り付けた際、係合突出部702は係合溝82と整合する。
即ち、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Bを取り付けると、治具部材70Bの取付窪み701Aが取付突起部81Aと整合するので、取付窪み701Aと取付突起部81Aが係合を行う。また、この際、治具部材70Bの係合突出部702が印部80Aの係合溝82と係合する。この如く、取付窪み701Aと取付突起部81Aが係合し、また、係合突出部702が係合溝82と係合するので、治具部材70Bを印部80Aに取り付けできる。従って、治具部材70Bを取り付ける為、別の機構を設ける必要がなく製造コストを削減できる。
また、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合のみ、治具部材70Bの取付窪み701Aが印部80Aの取付突起部81Aと整合して係合を行い、且つ治具部材70Bの係合突出部702が印部80Aの係合溝82と係合する。換言すれば、治具部材70Bの取付窪み701Aが印部80Aの取付突起部81Aと係合するうえ、治具部材70Bの係合突出部702が印部80Aの係合溝82と係合する場合のみ、第1アーム31が回転角度の原点に位置する。従って、より正確に第1アーム31の回転角度の原点を定めることが出来る。
(実施の形態5)
図11は実施の形態5に係るアーム装置10において、治具部材70Cの取り付けを説明する説明図である。また、図11は後述するアイボルト90の取り付けを合わせて示している。なお、図11においては、治具部材70C、第1印部314、第2印部34、アイボルト90を除く他部分の表示は省略している。印部80は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
治具部材70Cは矩形の板状であり、実施の形態1と同様に、貫通孔701を四隅に設けてある。各貫通孔701は、第1アーム31が回転角度の原点の位置にある場合に治具部材70Cを取り付けた際、印部80の4つの取付凹部81と夫々整合する。
アーム装置10を設置する際にアーム装置10にアイボルト90を取り付けて吊り上げるなどして搬送する必要性が生じる。アーム装置10にはアイボルト90(吊り具)を着脱可能に設けてある。
治具部材70Cはアイボルト90を取り付ける為の取付穴704を有している。取付穴704は治具部材70Cを厚み方向に貫通する貫通孔であり、治具部材70の中央に設けてある。取付穴704はアイボルト90の外径に対応する内径を有する。取付穴704の内壁にはネジ山を設けてあり、取付穴704はアイボルト90と螺合する。
実施の形態5に係るアーム装置10を設置する際には、治具部材70C,71がアイボルト90を有しているので、アーム装置10の設置の際、治具部材70C,71を取り付ける作業のみで、第1アーム31及び第2アーム32を固定する作業と、アイボルト90の取り付けが共に完了する。従って、アイボルト90を取り付ける手間を省くことができ、且つアイボルト90を取り付ける場所を別に確保する必要がない。更に、設置の後、アーム装置10を稼働させる場合には、治具部材70C,71を取り外す作業のみで、アイボルト90の取り外しが共に完了する。従って、アイボルト90を取り外す手間を省くことができる。