JP2019010003A - 軟骨組織塊及びその製造方法、並びに幹細胞から軟骨組織塊を誘導するための培地 - Google Patents

軟骨組織塊及びその製造方法、並びに幹細胞から軟骨組織塊を誘導するための培地 Download PDF

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Abstract

【課題】関節疾患の治療に必要とされる良質な軟骨組織塊を簡便に調製するために有用な技術の提供。【解決手段】デルタ様リガンド4タンパク質(DLL4)又はその断片を含む培地中で幹細胞から分化させた軟骨細胞から形成されてなる軟骨組織塊。前記断片は、(A)ヒトDLL4の細胞外ドメインに位置し、ヒトDLL4のアミノ酸配列の27番目〜524番目のアミノ酸(498アミノ酸残基)を含むポリペチド。又は(B)該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織隗の分化、形成を促進する活性を有するポリペプチド。【選択図】なし

Description

本発明は、軟骨組織塊及びその製造方法、並びに幹細胞から軟骨組織塊を誘導するための培地に関する。より詳しくは、デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む培地中で幹細胞から分化させた軟骨細胞から形成されてなる軟骨組織塊等に関する。
関節の軟骨組織は加齢、疾患、過度の運動や事故により劣化、破損ないし欠損すると、変形性膝関節症、関節リウマチ、離断性骨軟骨炎や軟骨欠損症を発症し生活の質を低下させる。これら関節疾患に対する治療法として、ヒアルロン酸投与、マイクロフラクチャー、自家骨軟骨移植法、骨切り手術、人工関節などが開発されている。
また、膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎を自家培養軟骨を用いて治療する方法も開発されている(非特許文献1)。この治療方法では、治療に用いる自家培養軟骨を調製するため、手術前に、荷重がかからない部位から軟骨組織を採取する必要がある。また、軟骨細胞の分裂回数にも制限がある。このため、良質な軟骨組織塊を多量に調製することは困難であった。
そこで、間葉系幹細胞から軟骨組織塊を分化、形成させ、治療に用いる試みがなされてきている。間葉系幹細胞は、臍帯血、さい帯、胎盤、骨髄、滑膜、歯髄、脂肪組織などの種々の組織から得られ、軟骨組織に比べ入手が容易である。また、間葉系幹細胞は、軟骨細胞に比べ高い分裂増殖能を持っている。しかし、間葉系幹細胞から分化させて得られた軟骨組織塊は、本来の軟骨組織に比べて質的に劣る細胞壊死、骨化、細胞希薄な部位や結節が確認されるため、関節疾患治療への応用はされていない(非特許文献2)。
デルタ様リガンドDLL4は、細胞内シグナリング経路であるNotch経路の重要な構成要素である。Notch経路は、進化的に保存されており、細胞の分化、増殖、生存、アポトーシスを含む、様々な生物学的な工程に関与している。DLL4は、細胞の増殖、遊走、平滑筋分化、血管新生及び動脈静脈分化を含む、血管発生の複数の局面に関与することが知られている(非特許文献3)。また、腫瘍細胞や腫瘍血管系はDLL4を過剰発現しており、DLL4が腫瘍血管新生における重要な因子であることが示されている(非特許文献4、5)。
DLL4結合タンパク質、DLL4アンタゴニスト又はDLL4結合抗体により、Notchシグナル経路を遮断することで、血管新生を阻害し、癌、腫瘍、その他の血管新生依存性疾患を予防及び/又は治療する試みがなされている(特許文献1〜3)。これまで、動物細胞の培地にDLL4タンパク質又はその断片を添加することや、DLL4タンパク質又はその断片存在下で幹細胞を培養することは報告されていない。
特表2013−520993号公報 特表2009−519944号公報 特表2009−539384号公報
Journal of Orthopaedic Science,2012,17,4,p.413−424 Expert Opinion on Biological Therapy,2012,12,10,p.1361−1382 Arteriosclerosis,Thromblosis,and Vascular Biology,2003,23,4,p.543−553 Cancer Research,2005,65,19,p.8690−8697 Blood,2006,98,13,p.3793−3799
本発明は、関節疾患の治療に必要とされる良質な軟骨組織塊を簡便に調製するために有用な技術を提供することを主な目的とする。
上記課題解決のため、本発明は、以下の[1]〜[17]を提供する。
[1] デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む培地中で幹細胞から分化させた軟骨細胞から形成されてなる軟骨組織塊。
[2] デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片と、軟骨細胞と、を含んでなる軟骨組織塊。
[3] 前記断片が、以下の(A)又は(B)のポリペプチドである、[1]又は[2]の軟骨組織塊。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性を有するポリペプチド。
[4] 前記幹細胞が間葉系幹細胞、多能性又は複能性幹細胞である、[1]〜[3]のいずれかの軟骨組織塊。
[5] 前記幹細胞がヒト由来である、[1]〜[4]のいずれかの軟骨組織塊。
[6] 前記培地が無血清培地である、[1]〜[5]のいずれかの軟骨組織塊。
[7] デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む培地中で幹細胞から軟骨細胞の分化を誘導する工程を含む、軟骨組織塊の製造方法。
[8] 前記断片が、以下の(A)又は(B)のポリペプチドである、[7]の製造方法。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性を有するポリペプチド。
[9] 前記幹細胞が間葉系幹細胞又は多能性幹細胞である、[7]又は[8]の製造方法。
[10] 前記幹細胞がヒト由来である、[7]〜[9]のいずれかの製造方法。
[11] 前記培地が無血清培地である、[7]〜[10]のいずれかの製造方法。
[12] デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む、幹細胞から軟骨組織塊を分化、形成するための培地。
[13] 前記断片が、以下の(A)又は(B)のポリペプチドである、[12]の培地。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性を有するポリペプチド。
[14] 前記幹細胞が間葉系幹細胞又は多能性幹細胞である、[12]又は[13]の培地。
[15] 前記幹細胞がヒト由来である、[12]〜[14]のいずれかの培地。
[16] 前記培地が無血清培地である、[12]〜[15]のいずれかの培地。
[17] [1]〜[6]のいずれかの軟骨組織塊又は[7]〜[11]のいずれかの製造方法により得られた軟骨組織塊を用いる、関節疾患の治療方法。
本発明において、「軟骨組織塊」とは、シート状に培養された軟骨細胞が細胞集積を起こして、立体的な軟骨組織を形成したものをいう。「幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性(軟骨組織塊形成促進活性)」とは、幹細胞から分化誘導された軟骨細胞の集積と立体的な軟骨組織塊の形成を誘導する活性を意味する。また、「幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性」には、ある物質について、当該物質の存在下での培養における幹細胞からの軟骨組織塊の形成が、当該物質の非存在下での培養における軟骨組織塊の形成に比して促進されることも意味する。具体的には、当該物質の存在下で一定期間培養した後に得られる軟骨組織塊のサイズあるいは数が、当該物質の非存在下で同期間培養した後に得られる軟骨組織塊のサイズあるいは数に比べて、5%以上、10%以上又は20%以上、好ましくは30%以上、40%以上、50%以上、より好ましくは60%以上、70%以上又は80%以上、さらに好ましくは90%以上、100%以上又はそれ以上増大することを意味する。
本発明により、関節疾患の治療に必要とされる良質な軟骨組織塊を簡便に調製するために有用な技術が提供される。
DLL4ポリペプチドの存在下で間葉系幹細胞から分化誘導して形成した軟骨組織塊を示す図である(実施例1)。
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
1.幹細胞から軟骨組織塊を分化、形成するための培地
[DLL4]
本発明に係る培地は、幹細胞から軟骨細胞を分化、誘導し、軟骨組織塊を形成させるために用いられるものであって、デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含むことを特徴とする。本発明に係る培地の組成は、デルタ様リガンド4タンパク質(DLL4)又はその断片を含有する点を除いて、従来、幹細胞から軟骨細胞を誘導するために用いられている培地と同様であってよい。すなわち、本発明に係る培地は、従来の軟骨細胞誘導用培地に、DLL4又はその断片を添加することにより調製できる。
DLL4及びその断片は、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性(軟骨組織塊形成促進活性)を有する限りにおいて由来種は限定されず、ヒトの他、ラット、マウス、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類であってよい。ヒトDLL4のアミノ酸配列を配列番号1(GenBank Accession No.NM_019074)に示す。
DLL4及びその断片の由来種は、培養する幹細胞の由来種に応じて適宜選択することができ、好ましくは培養する幹細胞と同じ由来種とされる。例えば、ヒト由来の細胞を培養する場合は、ヒト由来のDLL4等を用いるのが好ましい。
DLL4の断片は、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性(軟骨組織隗形成促進活性)を有する限りにおいて、DLL4の全長アミノ酸配列のうちの一部のアミノ酸配列を有する任意長のポリペプチドであってよい。具体的には、ヒトDLL4のアミノ酸配列(配列番号1)の27番目〜524番目のアミノ酸(498アミノ酸残基)が挙げられる。ポリペプチドの長さとしては、アミノ酸残基数で、例えば、45〜503、より好ましくは346〜503とされる。
DLL4及びその断片は、軟骨組織塊形成促進活性を有する限りにおいて、野生型DLL4等のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる改変タンパク質等であってもよい。
「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、置換、挿入もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下、最も好ましくは1又は2個)のアミノ酸が欠失、置換又は挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を意味する。
タンパク質のアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、当該タンパク質の構造又は機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、天然に存在するタンパク質において、当該タンパク質の構造又は機能を有意に変化させない多型(ポリモルフィズム)が存在することもまた周知である。従って、「1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列」には、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に変異を導入して得られる改変配列に加えて、天然に存在する多型配列も含まれる。
DLL4の断片の具体例としては、例えば、以下の(A)又は(B)のポリペプチドが挙げられる。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、好ましくは配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の分化、形成を促進する活性を有するポリペプチド、好ましくは配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、幹細胞からの軟骨組織塊の分化、形成を促進する活性を有するポリペプチド。
上記(A)に関し、配列番号2で示されるアミノ酸配列は、ヒトDLL4の細胞外ドメインに位置し、ヒトDLL4のアミノ酸配列(配列番号1)の27番目〜524番目のアミノ酸(498アミノ酸残基)に相当する。DLL4の断片の他の好適な具体例としては、ヒトDLL4の細胞外ドメインに位置し、ヒトDLL4のアミノ酸配列(配列番号1)の324番目〜518番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(195アミノ酸残基)等も挙げられる。
さらに、DLL4及びその断片は、軟骨組織塊形成促進活性を有する限りにおいて、天然から単離・精製されたタンパク質に加えて、組換えタンパク質又は融合タンパク質であってよく、化学修飾されたものであってもよい。天然タンパク質の単離、組換えタンパク質の発現、タンパク質の合成あるいはこれらのタンパク質の精製は、従来公知の手法によって行うことができる。
融合タンパク質としては、DLL4及びその断片のC末側にFcタンパク質やHis tagを融合させたタンパク質等が挙げられる。好ましい組換えタンパク質の具体例としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列のC末端にHis tagを融合した組換えタンパク質(実施例1参照)が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用されるものとする。以下、DLL4及びその断片を、単に「DLL4ポリペプチド」とも称する。
[軟骨細胞誘導用培地]
DLL4ポリペプチドが添加される軟骨細胞誘導用培地としては、例えば、90% αMEM培地、10%牛胎児血清(FBS)、2mM Lーグルタミン、0.1μMデキサメタゾンの組成の培地がある。また、市販のキット(Human Mesenchymal Stem Cell Chondrogenic Differentiation Medium BulletKit、Takara社)を用いた場合には、その内容成分(dexamethasoneb、ascorbate、ITS + supplement、GA−1000、sodium pyruvate、proline、L−glutamine、TGF−b3)を分化誘導剤として添加した基礎培地を用いることができる。本発明に係る幹細胞培養用の培地の組成は、上記のDLL4ポリペプチドを含有する点を除いて、従来幹細胞培養に用いられている培地と同様であってよい。すなわち、本発明に係る培地は、動物組織に由来する細胞の培養に従来用いられている基礎培地にDLL4ポリペプチドを添加することにより調製できる。基礎培地として具体的には以下を挙げることができる。
RPMI-1640培地、EagleのMEM培地、ダルベッコ改変MEM培地、Glasgow’s MEM培地、α-MEM培地、199培地、IMDM培地、DMEM培地Hybridoma Serum free培地、Chemically Defined Hybridoma Serum Free培地、Ham’s Medium F-12、Ham’s Medium F-10、 Ham’s Medium F12K、ATCC-CRCM30、DM-160、DM-201、BME、Fischer、McCoy’s 5A、Leibovitz’s L-15、RITC80-7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、CMRL-1066、William’s medium E、Brinster’s BMOC-3 Medium、Essential8 Medium(以上サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、mTeSR1(ステムセルテクノロジーズ社)、TeSR−E8 medium(ステムセルテクノロジーズ社)、StemSure(和光純薬社)、mESF培地(和光純薬社)、StemFit(味の素社)、S−medium(DSファーマ社)、ReproXF(リプロセル社)、PSGro-free Human iPSC/ESC Growth Medium(StemRD社)、hPSC Growth Medium(タカラバイオ社)、ReproFF2(リプロセル社)、EX-CELL 302培地(SAFC社)、EX-CELL-CD-CHO(SAFC社)又はSTEMdiff APEL Medium(ステムセルテクノロジーズ社)など及びこれらの混合物。
本発明に係る培地は、これらの基礎培地にBMP阻害剤、Wnt阻害剤、Nodal阻害剤、レチノイン酸などの分化誘導剤とDLL4ポリペプチドを予め添加あるいは細胞培養中に添加することによっても調製できる。
本発明に係る培地におけるDLL4ポリペプチドの添加濃度は、軟骨組織塊形成促進活性を示す限りにおいて特に限定されないが、例えば、1.0pg/ml〜100.0μg/ml、好ましくは1.0ng/ml〜10.0μg/ml、より好ましくは10.0ng/ml〜1000ng/mlである。
[添加物]
本発明に係る培地には、必要に応じて細胞の生存又は増殖に必要な生理活性物質及び栄養因子などを添加できる。これらの添加物は、培地に予め添加されていてもよく、細胞培養中に添加されてもよい。培養中に添加する方法は、1溶液または2種以上の混合溶液などいかなる形態によってもよく、連続的又は断続的な添加であってもよい。
生理活性物質としては、インシュリン、IGF−1、トランスフェリン、アルブミンまたは補酵素Q10などが挙げられる。
栄養因子としては、糖、アミノ酸、ビタミン、加水分解物または脂質などが挙げられる。
糖としては、グルコース、マンノースまたはフルクトースなどの中性糖、シアル酸などの酸性糖、アミノ糖、糖アルコールなどが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
アミノ酸としては、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシンまたはL−バリンなどが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
ビタミンとしては、d−ビオチン、D−パントテン酸、コリン、葉酸、myo−イノシトール、ナイアシンアミド、ピロドキサール、リボフラビン、チアミン、シアノコバラミンまたはDL−α―トコフェロールなどが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
加水分解物としては、大豆、小麦、米、えんどう豆、とうもろこし、綿実、酵母抽出物などを加水分解したものが挙げられる。
脂質としては、コレステロール、リノール酸またはリノレイン酸などが挙げられる。
さらに、培地には、カナマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリンまたはハイグロマイシンなどの抗生物質を必要に応じて添加してもよい。シアル酸等の酸性物質を培地に添加する場合には、培地のpHを細胞の成育に適した中性域であるpH5〜9、好ましくはpH6〜8に調整することが望ましい。
本発明に係る培地は、血清含培地であっても無血清培地であってもよい。異種動物由来成分の混入防止の観点からは血清を含有しないか、培養される幹細胞と同種動物由来の血清が用いられることが好ましい。
無血清培地とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味する。無血清培地は、精製された血液由来成分や増殖因子などの動物組織由来成分を含有していてもよい。
本発明に係る培地は、血清と同様に、血清代替物を含んでいても含んでいなくともよい。血清代替物としては、例えば、アルブミン、脂質リッチアルブミン及び組換えアルブミン等のアルブミン代替物、植物デンプン、デキストラン、タンパク質加水分解物、トランスフェリン又は他の鉄輸送体、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオグリセロールあるいはこれらの均等物などが挙げられる。
血清代替物の具体例としては、例えば、国際公開第98/30679号記載の方法により調製されるものや、市販のknockout Serum Replacement(KSR社)、Chemically-defined Lipid concentrated(Life Technologies社)及びGlutamax(Life Technologies社)などが挙げられる。
2.軟骨組織塊の製造方法
[幹細胞]
本発明が対象とする「幹細胞」は、自己複成能及び分化増殖能を有する未熟な細胞をいい、分化能力に応じて、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、複能性幹細胞(multipotent stem cell)、単能性幹細胞(unipotent stem cell)等が含まれる。「幹細胞」は、一般に、未分化状態を保持したまま増殖できる「自己再生能」と、三胚葉系列すべてに分化できる「分化多能性」とを有する未分化細胞と定義されている。
多能性幹細胞とは、生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。
複能性幹細胞とは、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。
単能性幹細胞とは、特定の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。
幹細胞の由来種も特に限定されず、例えば、ラット、マウス、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ブタ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類などの細胞であってもよい。また、本発明に用いられる幹細胞は、自家、他家のいずれであってもよい。
幹細胞としては、間葉系幹細胞、スフェロイド状態から胚様体(EB体)と呼ばれる擬似的な胚の形成を経て様々な組織への分化・誘導のステップに進むことが知られている胚性幹細胞(Embryonic stem cell:ES細胞)や誘導性多能性幹細胞(induced pluripotent cell:iPS細胞)、始原生殖細胞に由来する胚性生殖(EG)細胞、精巣組織からのGS細胞の樹立培養過程で単離されるmultipotent germline stem(mGS)細胞、骨髄から単離されるmultipotent progenitor cell(MPC)等の多能性幹細胞などが挙げられるが、機能を有する骨芽細胞、軟骨細胞等へ分化能を保持する細胞であれば特に限定されない。
多能性幹細胞としては、特に、上述のES細胞またはiPS細胞を挙げることができる。体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立した幹細胞も、多能性幹細胞としてまた好ましい(Nature,1997,385,p.810、Science,1998,280,p.1256、Nature Biotechnology,1999,17,p.456、Nature,1998,394,p.369、Nature Genetics,1999,22,p.127、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999,96,p.14984、Nature Genetics,2000,24,p.109)。
ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES−1、KhES−2及びKhES−3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。
iPS細胞としては、例えば、皮膚細胞等の体細胞に複数の遺伝子(初期化因子)を導入して得られる、ES細胞同様の多分化能を獲得した細胞が挙げられる。例えばOct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、C-Myc遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞(Nature Biotechnology,2008,26,101-106)等が挙げられる。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO2010/111409、WO2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Nat. Biotechnol., 2008,26,p.795−797、Cell Stem Cell, 2008,2,p.525−528、Stem Cells. 2008,26,p.2467−2474、Nat Biotechnol. 2008,26,p.1269−1275、Cell Stem Cell, 2008,3, p.568−574、Cell Stem Cell, 2008,3,p.475−479、Cell Stem Cell, 2008,3, p.132−135、Nat Cell Biol.,2009,11,p.197−203、Nat. Biotech., 2009,27,p.459−461、Proc Natl Acad Sci U S A.,2009,106,p.8912−8917、Nature,2009,461,p.643−649、Cell Stem Cell,2009, 5,p.491−503、Cell Stem Cell,2010,6,p.167−74、Nature,2010,463,p.1096−100、Stem Cells,2010,28,p.713−720、Nature,2011,474,p.225−9に記載の組み合わせが例示される。iPS細胞は、所定の機関(理研バイオリソースセンター、京都大学など)より入手可能である。
ヒトiPS細胞としてより具体的には253G1株(理研セルバンクNo. HPS0002)、201B7株(理研セルバンクNo. HPS0063)、409B2株(理研セルバンクNo. HPS0076)、454E2株(理研セルバンクNo. HPS0077)、HiPS-RIKEN-1A株(理研セルバンクNo. HPS0003)、HiPS-RIKEN-2A株(理研セルバンク No. HPS0009)、HiPS-RIKEN-12A株(理研セルバンク No. HPS0029)、Nips-B2株(理研セルバンクNo. HPS0223)などを挙げることができる。
複能性幹細胞としては、特に、間葉系幹細胞、造血系幹細胞、神経系幹細胞、骨髄幹細胞及び生殖幹細胞等の体性幹細胞等が挙げられる。複能性幹細胞は、好ましくは間葉系幹細胞、より好ましくは骨髄間葉系幹細胞である。なお、間葉系幹細胞とは、骨芽細胞、軟骨芽細胞及び脂肪芽細胞等の間葉系の細胞全て又はいくつかへの分化が可能な幹細胞又はその前駆細胞の集団を広義に意味する。間葉系幹細胞としてより具体例には、ヒト間葉系幹細胞(PT034,Takara)、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC−BM,Takara)、ヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞(hMSC−UC,Takara)、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(hMSC−AT,Takara)などを挙げることができる。
[軟骨組織塊の製造方法]
本発明に係る軟骨組織塊の製造方法は、DLL4ポリペプチドを含む培地中で幹細胞から軟骨細胞の分化を誘導する工程を含むことを特徴とする。また、本発明に係る軟骨組織塊の製造方法は、前段工程として、幹細胞を培養し増殖させる培養工程を含んでいてもよい。
本発明に係る幹細胞の培養工程は、従来公知のバッチ培養(Bach Culture)、流加培養(Fed−Bach Culture)、連続培養(Continuous Culture)又は灌流培養(Perfusion Culture)等により行えばよい。
培養器は、特に限定されないが、フラスコ、ディッシュ、シャーレ、マイクロウエルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、チューブ、トレイ、培養バック又はタンクなどの培養槽などが挙げられる。これらの培養器の基材も、特に限定されず、ガラスや、ポリプロピレン又はポリスチレンなどの各種プラスチック、ステンレスなどの金属並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明に係る幹細胞の培養方法としては、培養器の基材表面への足場依存性細胞の接着を誘導するため、基材表面にコラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ラミニン、ラミニンの一部構造体、フィブロネクチン及びこれら混合物(例えばマトリゲル)並びに溶解細胞膜調製物(Lancet,2005,365,p1636-1641)などの足場をコーティングする接着培養や、メチルセルロースなどの高分子ポリマー(Stem Cell Reports,2014,2,5,734−745)、MFG−E8(Milk fat globule−EGF factor 8)又は該タンパク質の断片を用いた上記足場が不要な浮遊培養が挙げられる。
培養される幹細胞は、分散細胞又は非分散細胞であり得る。分散細胞とは、細胞分散を促進するために処理された細胞をいう。分散細胞としては、例えば、2〜50個、2〜20個、又は2〜10個の細胞からなる小さな細胞塊を形成している細胞が挙げられる。分散細胞は、浮遊(懸濁)細胞又は接着細胞であり得る。
培養工程における幹細胞の培養密度は、細胞の生存及び増殖を促進する効果を達成し得るような密度である限り特に限定されない。培養密度は、例えば1.0×101〜1.0×107細胞/ml、好ましくは1.0×102〜1.0×107細胞/ml、より好ましくは1.0×103〜1.0×107細胞/ml、さらに好ましくは3.0×104〜1.0×107細胞/mlである。
温度、溶存CO2濃度、溶存酸素濃度及びpHなどの培養条件は、動物組織に由来する細胞の培養に従来用いられている技術に基づいて適宜設定できる。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが30〜39℃、好ましくは37℃であり得る。溶存CO2濃度は、1〜10%、好ましくは2〜5%であり得る。酸素分圧は、1〜22%であり得る。
幹細胞の培養工程を接着培養で行う場合、フィーダー細胞の存在下で培養してもよい。フィーダー細胞には、胎児線維芽細胞等のストローマ細胞を用いることができる(例えば、Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1994、Gene Targeting, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, 1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1981,78,12,p.7634−7638、Nature,1981,292,5819,p.154−156、J. Virol.,1969,4,5,p.549−553、Science,1996,272,5262,p.722−724、J. Cell. Physiol.,1982,112,1,p.89−95、国際公開第01/088100号、同第2005/080554号参照)。
幹細胞の培養工程を浮遊培養で行う場合、担体上での浮遊培養(J. Biotechnology,2007,132,2,227−236)またはメチルセルロースなどの高分子ポリマーを用いた浮遊培養(Stem Cell Reports,2014,2,5,734−745)などが挙げられる。
幹細胞の浮遊培養とは、培地中において、培養器又はフィーダー細胞を用いる場合に対して非接着性の条件下で幹細胞を培養することをいう。幹細胞の浮遊培養としては、幹細胞の分散培養及び幹細胞の凝集浮遊培養が挙げられる。
幹細胞の分散培養とは、懸濁された幹細胞を培養することをいい、例えば、2〜20個の幹細胞からなる小さな細胞塊の分散培養が挙げられる。分散培養を継続した場合、培養された分散細胞がより大きな幹細胞塊を形成し、その後凝集浮遊培養が実行され得る。
凝集浮遊培養としては、胚様体培養法(Curr. Opin. Cell Biol.,1995,7,6,p.862-869参照)、SFEB法(Nature Neuroscience,2005,8,3,p.288-296、国際公開第2005/123902号)、メッシュフィルターを用いて機械的処理により細胞株を継代させるスフェア培養法(Stem Cell Reports,2014,2,5,p.734−745)が挙げられる。
幹細胞からの軟骨細胞の分化誘導工程は、上述の本発明に係るDLL4ポリペプチドを含む培地中で幹細胞を培養することによって行うことができる。本発明に係る軟骨組織塊の製造方法では、幹細胞から軟骨細胞への分化誘導培地にDLL4ポリペプチドを添加して培養することで、簡便なシャーレ等で平板培養において良質な軟骨組織塊を製造することが可能である。
ここで、軟骨組織塊が良質であるとは、軟骨組織塊内部に、均一に密集した軟骨細胞が観察され、細胞壊死、骨化、細胞希薄な部位や結節が確認されないことを意味する。良質な軟骨組織塊では、軟骨が形成され、組織の内部に硝子軟骨が含まれる。
従来、平板培養法によって良質な軟骨組織塊を得ることは難しいとされている。遠心機などを用いた物理的処理により細胞の積層を行ったり、足場を用いて培養を行ったりすることで三次元的な培養を行い、これによって良質な軟骨組織塊を形成する試みがなされてきた(非特許文献2)。これまで、平板培養によって良質な軟骨組織塊を調製できたことは報告されていない。
本発明に係る軟骨組織塊の製造方法では、DLL4ポリペプチドの軟骨組織塊形成促進作用により、平板培養であっても良質な軟骨組織塊を形成させることができるので、細胞に対する何らかの物理的処理や足場が不要となり、簡便に良質な軟骨組織塊を製造することが可能である。
平板培養に用いられる培養器は、特に限定されないが、フラスコ、ディッシュ、シャーレ、マイクロウエルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、トレイなどが挙げられ得る。これらの培養器の基材も、特に限定されず、ガラスや、ポリプロピレン及びポリスチレンなどの各種プラスチック、ステンレスなどの金属又はそれらの組み合わせが挙げられる。
分化誘導工程における幹細胞の播種密度は、軟骨組織塊への組織化及び良質な軟骨組織塊の形成を阻害しない密度であればよく、特に限定されないが、好ましくはコンフルエントまたはサブコンフルエント(80%以上の細胞密度)である。
形成された軟骨組織塊は、例えば、アルシアンブルーを用いて細胞を染色することにより確認できる。
3.軟骨組織塊
上述の製造方法によって得られた軟骨組織塊は、関節疾患の再生医療治療のために利用できる。関節疾患としては、変形性関節症、半月板損傷、関節リウマチ、外傷性関節炎等が挙げられる。ヒト以外の動物由来の軟骨組織塊を同じ動物に利用することもできるが、好ましくはヒト由来の軟骨組織塊をヒト軟骨組織を代替する目的又はヒト軟骨の機能を補完する目的で利用され得る。
培養器を大きくしたり、得られた軟骨組織塊を寄せ集めたりすることで、より大きな軟骨組織塊を製造することも可能である。軟骨組織塊は、患部に適した大きさに成形して提供され得る。また、軟骨組織塊は、症状に応じて複数を患部へ投与、埋設することができる。
本発明に係る軟骨組織塊は、製造工程に起因するDLL4ポリペプチドを含有していてもよい。
[実施例1:DLL4ポリペプチドによる間葉系幹細胞からの軟骨組織塊形成の促進]
ヒト間葉系幹細胞(Takara、PT034)を、ヒト間葉系幹細胞専用完全合成培地キット(MSCGM-CDTM、Takara、B0632)を用いて24ウェルプラスチックディッシュ上でコンフルエントになるまで培養した。配列番号2に示されるヒトDLL4細胞外ドメイン(Ser27−Pro524、GenBank アクセッションナンバー:Q9NR61)のC末端に10個のHis tagを融合させたヒトDLL4−10Hisタンパク質(DLL4 Human Recombinant Carrier-free、R&D、1506-D4-050/CF)を10ng/ml、100ng/ml又は1000ng/ml添加したヒト間葉系幹細胞軟骨細胞分化培地(hMSC Differentiation BulletKitTM、 Chondrogenic、Takara、B3003、血清不含)に交換し、2日毎に該培地を交換しながら20日間培養した。ヒトDLL4−10Hisタンパク質のアミノ酸配列を配列番号3に示す。
軟骨組織塊を識別するために細胞をアルシアンブルー染色し、染色陽性の軟骨組織塊の直径を測定した。結果を「図1」及び「表1」に示す。ヒトDLL4−10Hisタンパク質を添加した実験群では、軟骨組織塊の形成が確認された。一方、ヒトDLL4−10Hisタンパク質を添加していないコントロール群では、アシアンブルー染色陽性の軟骨細胞が観察されるものの、軟骨組織塊の形成は認められなかった。
さらに、形成された軟骨組織塊から切片を作成し、アルシアンブルー染色を行って、軟骨組織塊内部における染色陽性の細胞を観察した(n=3)。組織所見の結果を「表2」に示す。(+)は良好に観察されたこと、(++)はより良好に観察されたことを示し、(−)は観察されなかったことを示す。軟骨組織塊内部には均一に密集した軟骨細胞が観察され、細胞壊死、骨化、細胞希薄な部位や結節も確認されず、良質な軟骨組織塊が形成されていることが確認できた。
配列番号1:ヒトDDL4のアミノ酸配列
配列番号2:ヒトDDL4断片のアミノ酸配列
配列番号3:ヒトDLL4−10Hisタンパク質のアミノ酸配列

Claims (15)

  1. デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む培地中で幹細胞から分化させた軟骨細胞から形成されてなる軟骨組織塊。
  2. 前記断片が、以下の(A)又は(B)のポリペプチドである、請求項1記載の軟骨組織塊。
    (A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
    (B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性を有するポリペプチド。
  3. 前記幹細胞が間葉系幹細胞又は多能性幹細胞である、請求項1又は2記載の軟骨組織塊。
  4. 前記幹細胞がヒト由来である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の軟骨組織塊。
  5. 前記培地が無血清培地である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軟骨組織塊。
  6. デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む培地中で幹細胞から軟骨細胞の分化を誘導する工程を含む、軟骨組織塊の製造方法。
  7. 前記断片が、以下の(A)又は(B)のポリペプチドである、請求項6記載の製造方法。
    (A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
    (B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性を有するポリペプチド。
  8. 前記幹細胞が間葉系幹細胞又は多能性幹細胞である、請求項6又は7記載の製造方法。
  9. 前記幹細胞がヒト由来である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記培地が無血清培地である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. デルタ様リガンド(Delta like ligand)4タンパク質又はその断片を含む、幹細胞から軟骨組織塊を分化、形成するための培地。
  12. 前記断片が、以下の(A)又は(B)のポリペプチドである、請求項11記載の培地。
    (A)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
    (B)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、幹細胞からの軟骨組織塊の形成を促進する活性を有するポリペプチド。
  13. 前記幹細胞が間葉系幹細胞又は多能性幹細胞である、請求項11又は12記載の培地。
  14. 前記幹細胞がヒト由来である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の培地。
  15. 前記培地が無血清培地である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の培地。
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