本発明に係る実施例について、図1乃至図3を用いて説明する。
図1を参照して、燃料噴射弁1の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る燃料噴射弁の一実施例について、弁軸心(中心軸線)に沿う断面を示す断面図である。なお、符号1xは、燃料噴射弁1の中心軸線を示す。可動子27の軸心(弁軸心)27xは中心軸線に一致するように配置され、筒状体5及び弁座部材15の中心軸線と一致している。
図1において、燃料噴射弁1の上端部(上端側)を基端部(基端側)と呼び、下端部(下端側)を先端部(先端側)と呼ぶ場合がある。基端部(基端側)及び先端部(先端側)という呼び方は、燃料の流れ方向或いは燃料配管に対する燃料噴射弁1の取り付け構造に基づいている。また、本明細書において説明される上下関係は図1を基準とするもので、燃料噴射弁1を内燃機関に搭載した実装状態における上下方向とは関係がない。
燃料噴射弁1には、金属材製の筒状体(筒状部材)5によって、その内側に燃料流路(燃料通路)3がほぼ中心軸線1xに沿うように構成されている。筒状体5は、磁性を有するステンレス等の金属素材を用い、深絞り加工等のプレス加工により中心軸線1xに沿う方向に段付きの形状に形成されている。これにより、筒状体5は、一端側5aの径が他端側5bの径に対して大きくなっている。
筒状体5の基端部には燃料供給口2が設けられ、この燃料供給口2に、燃料に混入した異物を取り除くための燃料フィルタ13が取り付けられている。
筒状体5の基端部は径方向外方に向けて拡径するように曲げられた鍔部(拡径部)5dが形成され、鍔部5dと樹脂カバー(外装樹脂)47の基端側端部47aとで形成される環状凹部(環状溝部)4にOリング11が配設されている。
樹脂カバー47の基端側端部47aにおいて、樹脂カバー47と筒状体5との界面には、両部材の間に介在するように第3の部材81が設けられている。第3の部材81については、後で詳細に説明する。
筒状体5の先端部には、弁体27cと弁座部材15とからなる弁部7が構成されている。弁座部材15は、筒状体5の先端部の内周側に圧入され、レーザ溶接19により筒状体5に固定されている。レーザ溶接19は、筒状体5の外周側から全周に亘って実施されている。
弁座部材15にはノズルプレート21nが固定され、弁座部材15及びノズルプレート21nはノズル部8を構成する。弁座部材15及びノズルプレート21nは、弁座部材15が筒状体5の内周面5gに挿入されて固定されることにより、筒状体5の先端側に組み付けられている。
本実施例の筒状体5は、燃料供給口2が設けられる部分から弁座部材15及びノズルプレート21nが固定される部分までが一部材で構成されている。筒状体5の先端側部分はノズル部8を保持するノズルホルダを構成する。本実施例では、ノズルホルダが筒状体5の基端側部分と共に一部材で構成されている。
筒状体5の中間部には弁体27cを駆動するための駆動部9が配置されている。駆動部9は電磁アクチュエータ(電磁駆動部)で構成されている。
具体的には、駆動部9は、筒状体5の内部(内周側)に固定された固定鉄心(固定コア)25と、筒状体5の内部において固定鉄心25に対して先端側に配置された可動子(可動部材)27と、筒状体5の外周側に外挿された電磁コイル29と、電磁コイル29の外周側で電磁コイル29を覆うヨーク33と、を備える。
可動子27は、弁体27c、ロッド部(接続部)27b及び可動鉄心27aが一体に設けられて構成される。可動子27は基端側に固定鉄心25と対向する可動鉄心(可動コア)27aを有し、中心軸線1xに沿う方向に移動可能に組み付けられている。また電磁コイル29は、固定鉄心25と可動鉄心27aとが微小ギャップδ1を介して対向する位置の外周側(径方向外方)に配置されている。これにより、可動鉄心27a及び固定鉄心25は、相互間に電磁力を働かせて弁体27cを駆動する。
筒状体5の内側には可動子27及び固定鉄心25が収容されており、筒状体5は固定鉄心25と当接すると共に、可動鉄心27aの外周面と対向して可動鉄心27a及び固定鉄心25を囲繞するハウジングを構成している。すなわち筒状体5は、可動鉄心27a及び固定鉄心25を内包している。
可動鉄心27aと固定鉄心25とヨーク33とは、電磁コイル29に通電することにより生じる磁束が流れる閉磁路を構成する。磁束は微小ギャップδ1を通過するが、微小ギャップδ1の部分で筒状体5を流れる漏れ磁束を低減するため、筒状体5の微小ギャップδ1に対応する位置に、非磁性部或いは筒状体5の他の部分よりも弱磁性の弱磁性部5cが設けられている。以下、この非磁性部或いは弱磁性部5cは、単に非磁性部5cと呼んで説明する。
電磁コイル29は、樹脂材料で筒状に形成されたボビン31に巻回され、筒状体5の外周側に外挿されている。電磁コイル29はコネクタ41に設けられたターミナル43に電気的に接続されている。コネクタ41には図示しない外部の駆動回路が接続され、ターミナル43を介して、電磁コイル29に駆動電流が通電される。
固定鉄心25は、磁性金属材料からなる。固定鉄心25は筒状に形成され、中心部を中心軸線1xに沿う方向に貫通する貫通孔25aを有する。貫通孔25aは、可動鉄心27aの上流側の燃料通路(上流側燃料通路)3を構成する。固定鉄心25は、筒状体5の小径部5bの基端側に圧入固定され、筒状体5の中間部に位置している。小径部5bの基端側に大径部5aが設けられていることにより、固定鉄心25の組付けが容易になる。固定鉄心25は溶接により筒状体5に固定してもよいし、溶接と圧入を併用して筒状体5に固定してもよい。
可動鉄心27aは円環状の部材である。弁体27cは弁座15b(図3参照)と当接する部材である。弁座15b及び弁体27cは協働して燃料噴射孔51(図3参照)の上流側で燃料通路を開閉する。ロッド部27bは細長い円筒形状であり、可動鉄心27aと弁体27cとを接続する接続部である。可動鉄心27aは、弁体27cと連結され、固定鉄心25との間に作用する磁気吸引力によって、弁体27cを開閉弁方向に駆動するための部材である。
本実施例では、可動鉄心27aとロッド部27bとが固定されているが、可動鉄心27aとロッド部27bとが相対変位可能に連結された構成であってもよい。
本実施例では、ロッド部27bと弁体27cとを別部材で構成し、ロッド部27bに弁体27cを固定している。ロッド部27bと弁体27cとの固定は、圧入又は溶接により行われる。ロッド部27bと弁体27cとは一つの部材で一体化されて構成されてもよい。
ロッド部27bは円筒形状であり、ロッド部27bの上端が可動鉄心27aの下端部に開口し、軸方向に延設された孔27baを有する。ロッド部27bには内側(内周側)と外側(外周側)とを連通する連通孔(開口部)27boが形成されている。ロッド部27bの外周面と筒状体5の内周面との間には燃料室37が形成されている。
固定鉄心25の貫通孔25aにはばね部材39が設けられている。本実施例では、ばね部材39はコイルばねで構成される。以下、コイルばね39と呼んで説明する。
コイルばね39の一端は、可動鉄心27aの内側に設けられたばね座27agに当接している。コイルばね39の他端部は、固定鉄心25の貫通孔25aの内側に配設されたアジャスタ(調整子)35に当接している。コイルばね39は、可動鉄心27aに設けられたばね座27agとアジャスタ(調整子)35の下端(先端側端面)との間に、圧縮状態で配設されている。
コイルばね39は、弁体27cが弁座15bに当接する方向(閉弁方向)に可動子27を付勢する付勢部材として機能している。中心軸線1xに沿う方向におけるアジャスタ35の位置を貫通孔25a内で調整することにより、コイルばね39による可動子27(すなわち弁体27c)の付勢力が調整される。
アジャスタ35は、中心部を中心軸線1xに沿う方向に貫通する燃料流路3を有する。燃料供給口2から供給された燃料は、アジャスタ35の燃料流路3を流れた後、固定鉄心25の貫通孔25aの先端側部分の燃料流路3に流れ、可動子27内に構成された燃料流路3に流れる。
ヨーク33は、磁性を有する金属材料でできており、電磁コイル29を囲繞する、燃料噴射弁1のハウジングを兼ねている。ヨーク33は大径部33aと小径部33bとを有する段付きの筒状に形成されている。大径部33aは電磁コイル29の外周を覆って円筒形状を成しており、大径部33aの先端側に大径部33aよりも小径の小径部33bが形成されている。小径部33bは筒状体5の小径部5bの外周に圧入又は挿入されている。これにより、小径部33bの内周面は筒状体5の外周面に緊密に接触している。このとき、小径部33bの内周面の少なくとも一部は、可動鉄心27aの外周面と筒状体5を介して対向しており、この対向部分に形成される磁路の磁気抵抗を小さくしている。
ヨーク33の先端側端部の外周面には周方向に沿って環状凹部33cが形成されている。環状凹部33cの底面に形成された薄肉部において、ヨーク33と筒状体5とがレーザ溶接24により全周に亘って接合されている。
筒状体5の先端部にはフランジ部49aを有する円筒状のプロテクタ49が外挿され、筒状体5の先端部がプロテクタ49によって保護されている。プロテクタ49はヨーク33のレーザ溶接部24の上を覆っている。
プロテクタ49のフランジ部49aと、ヨーク33の小径部33bと、ヨーク33の大径部33aと小径部33bとの段差面とによって環状溝34が形成され、環状溝34にOリング46が外挿されている。Oリング46は、燃料噴射弁1が内燃機関に取り付けられる際に、内燃機関側に形成された挿入口の内周面とヨーク33における小径部33bの外周面との間で液密及び気密を確保するシールとして機能する。
燃料噴射弁1の中間部から基端側端部の近傍までの範囲に、樹脂カバー47がモールドされている。樹脂カバー47の先端側端部はヨーク33の大径部33aの基端側の一部を被覆している。また、樹脂カバー47を形成する樹脂によりコネクタ41が一体的に形成されている。
樹脂カバー47の先端側端部において、樹脂カバー47とヨーク(ハウジング)33との界面には、両部材の間に介在するように第3の部材82が設けられている。第3の部材82については、後で詳細に説明する。
図2を参照して、可動子27近傍の構成について、詳細に説明する。図2は、図1に示す可動子27の近傍を拡大して示す断面図である。
本実施例では、可動鉄心27aとロッド部27bとが一部材で一体に形成されている。可動鉄心27aの上端面(上端部)27abの中央部には、下端側に向けて窪んだ凹部27aaが形成されている。凹部27aaの底部27agにはばね座が形成され、コイルばね39の一端(先端側端部)が底部27agに支持されている。さらに、凹部27aaの底部27agには、ロッド部27bの孔27baの内側に連通する開口部27afが形成されている。開口部27afは、固定鉄心25の貫通孔25aから凹部27aa内の空間27aiに流入した燃料を、ロッド部27bの孔27baの内側の空間27biに流す燃料通路を構成する。
本実施例では、ロッド部27bと可動鉄心27aとを一部材で構成しているが、別々の部材で構成したものを一体に組み付けてもよい。
可動鉄心27aの上端面(基端側端面)27abは、固定鉄心25側に位置する端面であり、固定鉄心25の下端面(先端側端面)25bと対向する。上端面27abに対して反対側の可動鉄心27aの端面は、燃料噴射弁1の先端側(ノズル側)に位置する端面であり、以下、下端面(下端部)27akと呼ぶ。
可動鉄心27aの上端面27abと固定鉄心25の下端面25bとは、相互に磁気吸引力が作用する磁気吸引面を構成する。
磁気吸引面の外周側には、非磁性部5cが設けられている。本実施例では、非磁性部5cは、筒状体5の外周面に形成した環状凹部5hにより構成される。環状凹部5hは非磁性部5cに相当する部分を薄肉化して薄肉部5iを構成する。すなわち環状凹部5hは、可動鉄心27aと固定鉄心25とが対向する対向部の外周部に位置する筒状体5の部位に、肉厚の薄い薄肉部5iを周方向に形成する。薄肉部5iは筒状体5の他の部分よりも肉厚(厚さ寸法)が薄くなっており、ここを通る磁束の磁気抵抗を増大させ、磁束を流れ難くしている。この非磁性部5cは、筒状体5の肉厚を他の部分と同じ厚さとし、非磁性化処理を行うことにより構成してもよい。
可動鉄心27aの外周面27acに、筒状体5の内周面5eに摺動する摺動部が構成される。この摺動部として、外周面27acには径方向外方に向かって突出する凸部27alが設けられる。内周面5eは、可動鉄心27aの凸部27alが摺接する上流側ガイド部50Bを構成する。
一方、弁座部材15には、弁体27cの球面27cbが摺接するガイド面15c(図3参照)が構成され、ガイド面15cが球面27cbをガイドするガイド部は下流側ガイド部50Aを構成する。これにより、可動子27は上流側ガイド部50Bと下流側ガイド部50Aとの二点で案内されて、中心軸線1xに沿う方向(開閉弁方向)に往復動作する。
ロッド部27bには、内側(孔27ba)と外側(燃料室37)とを連通する開口部(連通孔)27boが形成されている。連通孔27boは、ロッド部27bの内側と外側とを連通する燃料通路を構成する。これにより、固定鉄心25の貫通孔25a内の燃料は、孔27ba及び連通孔27boを通じて燃料室37に流れる。
次に、図3を参照して、ノズル部8の構成ついて、詳細に説明する。図3は、図2に示すノズル部8の近傍を拡大して示す断面図である。
弁座部材15には、中心軸線1xに沿う方向に貫通する貫通孔15d,15c,15v,15eが形成されている。
貫通孔15d,15c,15v,15eの途中には、下流側に向かって縮径する円錐面(円錐台面)15vが形成されている。円錐面15v上には弁座15bが構成され、弁体27cが弁座15bに離接することにより、燃料通路の開閉が行われる。なお、弁座15bが形成された円錐面15vを弁座面と呼ぶ場合もある。
弁座15bと弁体27cとの相互に当接する当接部は、閉弁時に燃料をシールするシール部を構成する。なお、弁座15b側の当接部を弁座側(固定弁側)シート部と呼び、弁体27c側の当接部を弁体側(可動弁側)シート部と呼ぶ場合がある。
貫通孔15d,15c,15v,15eにおける、円錐面15vから上側の孔部分15d,15c,15vは、弁体27cを収容する弁体収容孔を構成する。弁体収容孔15d,15c,15vの内周面に、弁体27cを中心軸線1xに沿う方向に案内するガイド面15cが形成されている。ガイド面15cは可動子27を案内する二つのガイド面のうち、下流側に位置する下流側ガイド面50Aを構成する。
ガイド面15cの上流側には、上流側に向かって拡径する拡径部15dが形成されている。拡径部15dは、貫通孔15d,15c,15v,15eの上端部分に位置し、燃料室37に向かって開口する基端側開口部を構成する。拡径部15dは、基端側から先端側に向かって縮径するテーパー面として構成される。このテーパー面15dの傾斜角度は後述する弁座面15vの傾斜角度よりも急である。
弁体収容孔15d,15c,15vの下端部は燃料導入孔15eに接続され、燃料導入孔15eの下端面が弁座部材15の先端面15tに開口している。すなわち燃料導入孔15eは、貫通孔15d,15c,15v,15eの先端側開口部を構成する。
弁座部材15の先端面15tには、ノズルプレート21nが取り付けられている。ノズルプレート21nは弁座部材15にレーザ溶接23により固定されている。レーザ溶接部23は、燃料噴射孔51が形成された噴射孔形成領域を取り囲むようにして、この噴射孔形成領域の周囲を一周している。
また、ノズルプレート21nは板厚が均一な板状部材(平板)で構成されており、中央部に外方に向けて突き出すように突状部21naが形成されている。突状部21naは曲面(例えば球状面)で形成されている。突状部21naの内側には燃料室21aが形成されている。この燃料室21aは弁座部材15に形成された燃料導入孔15eに連通しており、燃料導入孔15eを通じて燃料室21aに燃料が供給される。
突状部21naには複数の燃料噴射孔51が形成されている。燃料噴射孔51の形態は特に問わない。燃料噴射孔51の上流側に燃料に旋回力を付与する旋回室を有するものであってもよい。燃料噴射孔の中心軸線51aは燃料噴射弁の中心軸線1xに対して平行であってもよいし、傾斜していてもよい。また、突状部21naが無い構成であってもよい。
燃料噴霧の形態を決定する燃料噴射部21はノズルプレート21nによって構成される。弁座部材15と燃料噴射部21とは、燃料噴射を行うためのノズル部8を構成している。弁体27cはノズル部8を構成する構成要素の一部とみなしてもよい。
また本実施例では、弁体27cは、球状を成すボール弁を用いている。このため、弁体27cにおけるガイド面15cと対向する部位には、周方向に間隔を置いて複数の切欠き面27caが設けられ、この切欠き面27caによってシート部に燃料を供給する燃料通路が構成されている。弁体27cはボール弁以外の弁体で構成することも可能である。例えば、ニードル弁を用いてもよい。
弁座部材15は、筒状体5の先端部の内周面5gに圧入した後、溶接部19により筒状体5に溶接して固定する。
次に、図4を参照して、燃料供給口2の近傍で、ハウジング(筒状体)5と樹脂カバー47との界面に第3の部材81を介在させたシール部の構成、及びハウジング(ヨーク)33と樹脂カバー47との界面に第3の部材82を介在させたシール部の構成について、説明する。
図4は、本発明の一実施例に係り、燃料供給口2の近傍で、ハウジング(筒状体)5と樹脂カバー47との界面に第3の部材81を介在させた構成を示す断面図である。
樹脂カバー47の基端側端部47aには、樹脂カバー(第1の部材)47と筒状体(第2の部材)5との間に、両部材(樹脂カバー47及び筒状体5)の界面に介在するように第3の部材81が設けられている。第3の部材81は内周面81eが筒状体(第2の部材)5に接し、上端面(基端側端面)81b、外周面81c及び下端面(先端側端面)81dが樹脂カバー47に接している。すなわち第3の部材81は、樹脂カバー47に埋設されている。
筒状体5は上述したようにハウジングを構成する部材であり、以下ハウジングと呼んで説明する。樹脂カバー47は樹脂材料であり、ハウジング5は金属材料である。本実施例では、ハウジング5を構成する金属製部品(金属製部材)が樹脂カバー47の樹脂で外装される。第3の部材81は、樹脂カバー47及びハウジング5とは異なる第3の材料で構成される。
図5は、本発明の一実施例に係り、ハウジング(ヨーク)33と樹脂カバー47との界面に第3の部材82を介在させた構成を示す断面図である。
樹脂カバー47の先端側端部には、樹脂カバー(第1の部材)47とヨーク(第2の部材)33との間に、両部材(樹脂カバー47及びヨーク33)の界面に介在するように第3の部材82が設けられている。第3の部材82は内周面82eがヨーク(第2の部材)33に接し、上端面(基端側端面)82b、外周面82c及び下端面(先端側端面)82dが樹脂カバー47に接している。すなわち第3の部材82は、樹脂カバー47に埋設されている。
ヨーク33は上述したようにハウジングを構成する部材であり、以下ハウジングと呼んで説明する。樹脂カバー47は樹脂材料であり、ハウジング33は金属材料である。本実施例では、ハウジング33を構成する金属製部品(金属製部材)が樹脂カバー47の樹脂で外装される。第3の部材81は、樹脂カバー47及びハウジング33とは異なる第3の材料で構成される。
なお、第3の部材81,82の材料は、樹脂材料や金属材料を否定するものではなく、第3の部材81,82の材料の線膨張係数α3が第1の部材(樹脂カバー)47の材料の線膨張係数α1及び第2の部材(ハウジング)5,33の材料の線膨張係数α2とは異なる材料であればよい。そして線膨張係数α1,α2,α3は、α1<α3<α2の関係を有する。また、第3の部材81の材料と第3の部材82の材料とは異なる材料であってもよい。
図6は、第3の部材81,82の外観を示す斜視図である。なお図6では、一つの図で第3の部材81,82を表しているが、第3の部材81と第3の部材82とは外径D1、内径D2、溝81a,82aの幅及び深さ、及び溝81a,82aの間隔等が異なる。
第3の部材81,82は、円環形状を成す環状部材であり、上端面(基端側端面)81b,82b、外周面81c,82c及び下端面(先端側端面)81d,82dには凹凸形状が形成されている。本実施例では、凹凸形状は、周方向に沿って形成された環状溝81a,82a、によって構成される。第3の部材81,82の内周面には環状溝81a,82aは設けられておらず、第3の部材81,82は角部に形成される面取り部を除く全内周面がハウジング5,33に密着するように構成されている。
第3の部材81,82は、ハウジング5,33に組み付ける際に、内周面がハウジング5,33の外周面に密着するようにして組み付ける。第3の部材81,82は、樹脂をモールドする際に加熱されてハウジング5,33との間に隙間が生じても、冷却されればハウジング5,33に密着した状態が復元される。このため、第3の部材81,82とハウジング5,33との界面は高いシール性を有する。第3の部材81,82の内周面に環状溝81a,82aを形成してもよいが、本実施例では中心軸線1xに沿う方向における接触長さを長くすることで、第3の部材81,82とハウジング5,33との界面におけるシール性を向上させている。
第3の部材81,82は、第1の部材(樹脂カバー)47のモールド成型前に、ハウジング5,33に組み付ける。第3の部材81,82は、ハウジング5,33との間に隙間ができないように、ハウジング5,33に密着させて組み付けられる。第3の部材81,82がハウジング5,33に組み付けられた組付体に対して第1の部材である樹脂がモールド成型されて樹脂カバー47が形成される。
第1の部材(樹脂カバー)47のモールド成型時には、高温に温められた第1の部材(樹脂カバー)47、第2の部材(ハウジング)5,33及び第3の部材81,82が熱膨張し、冷却されることによって熱収縮する。このとき、各部材の線膨張係数α1,α2,α3はα1<α3<α2の関係を有しており、第1の部材(樹脂カバー)47と第2の部材(ハウジング)5,33との間に、両部材の線膨張係数α1とα2の中間の線膨張係数α3を有する第3の部材81,82が介在することになる。このような第3の部材81,82の材料として、エラストマー樹脂を用いることができる。
第1の部材(樹脂カバー)47の線膨張係数α1と第2の部材(ハウジング)5,33の線膨張係数α2との差分をΔα12とする。第1の部材(樹脂カバー)47の線膨張係数α1と第3の部材81,82の線膨張係数α3との差分をΔα13とする。第2の部材(ハウジング)5,33の線膨張係数α2と第3の部材81,82の線膨張係数α3との差分をΔα23とする。Δα13及びΔα23はいずれもΔα12よりも小さく、特にΔα13をΔα12よりも小さくできることにより、以下の効果が得られる。
第3の部材81,82が無い場合、第1の部材(樹脂カバー)47と第1の部材(樹脂カバー)47に接する第2の部材(ハウジング)5,33との間には線膨張係数に大きな差(差分Δα12)があり、モールド成型時の熱収縮により第1の部材(樹脂カバー)47と第2の部材(ハウジング)5,33との界面に隙間が生じる可能性がある。
本実施例では、第1の部材(樹脂カバー)47と第1の部材(樹脂カバー)47に接する第3の部材81,82との間の線膨張係数の差分Δα13は、第1の部材(樹脂カバー)47と第2の部材(ハウジング)5,33との間の線膨張係数の差分Δα12よりも小さい。このため、第3の部材81,82が無い場合と比べて、第1の部材(樹脂カバー)47と第3の部材81,82との界面における、熱収縮による隙間の発生を抑制することができる。
さらに本実施例では、第3の部材81,82の上端面(基端側端面)81b,82b、外周面81c,82c及び下端面(先端側端面)81d,82dに、凹凸形状を設けている。この凹凸形状は、環状溝81a,82a、によって構成している。
第3の部材81では、凹凸形状81aを設けたことにより、樹脂カバー47の基端側縁部83から液体が浸入した場合に、上端面81bを内周側から外周側に向かい、その後、外周面81cを上端面81b側から下端面81d側に向かい、さらに下端面81dを外周側から内周側84に向かう液体の浸入経路長を長くすることができる。
また第3の部材82では、凹凸形状82aを設けたことにより、樹脂カバー47の先端側縁部85から液体が浸入した場合に、下端面82dを内周側から外周側に向かい、その後、外周面82cを下端面82d側から上端面82b側に向かい、さらに上端面82bを外周側から内周側86に向かう液体の浸入経路長を長くすることができる。
本実施例では、第1の部材(樹脂カバー)47と第3の部材81,82との界面に発生する隙間の距離を小さくすることができ、さらに界面に沿って形成される液体の浸入経路長を長くすることができるため、樹脂カバー47の内側への液体の浸入を効果的に防ぐことができる。このように第3の部材81,82は、樹脂カバー47の内側への液体の浸入を防止するシール部品として機能する。
樹脂カバー47の内側には電磁コイル29や、電磁コイル29とターミナル43とを接続する配線部材等の電気部品が設けられている。本実施例では、樹脂カバー47の内側への液体の浸入を効果的に防ぐことができるため、電気部品の絶縁不良の発生及び腐食を防ぐことができる。また、樹脂カバー47の内側に設けられた金属部品の腐食を防ぐことができる。例えば、磁気回路を構成する金属部品に腐食が発生すると磁気抵抗が増加し、電磁駆動部9の性能が低下するが、本実施例では金属部品の腐食を防ぐことによって電磁駆動部9の性能を維持することができる。これにより、燃料噴射弁の信頼性を向上することができる。
本実施例では、樹脂カバー47の内側への液体の浸入を防ぐために、第3の部材(シール部材)81は樹脂カバー47の基端側端部(基端側縁部83の近傍)に配置され、第3の部材(シール部材)81は樹脂カバー47の先端側端部(先端側縁部85の近傍)に配置される。樹脂カバー47の基端側端部では樹脂の径方向における厚さ寸法を大きくすることができるため、第3の部材81の径方向における厚さ寸法(D1−D2)/2を大きくすることができる。
一方、樹脂カバー47の先端側端部では径方向における樹脂の厚さ寸法を小さくする必要があるため、第3の部材82の径方向における厚さ寸法(D1−D2)/2を大きくすることができない。そのため、第3の部材81の径方向における厚さ寸法は第3の部材82の径方向における厚さ寸法よりも大きくする。言い換えれば、第3の部材82の径方向における厚さ寸法は第3の部材81の径方向における厚さ寸法よりも小さくする。
また本実施例では、第3の部材82の径方向における厚さ寸法(D1−D2)/2を大きくすることができないため、上端面(基端側端面)81b,82b及び下端面(先端側端面)81d,82dには環状溝81a,82aを設けていない。
第3の部材81,82は、必ずしも両方を設ける必要はなく、いずれか一方のみを設けてもよい。第1の部材(樹脂カバー)47と第2の部材(ハウジング)5,33との間の隙間の出来具合、或いは液体の浸入具合によって、第3の部材81又は82のいずれかを設ければよい。
第3の部材81,82の上端面(基端側端面)81b,82b、外周面81c,82c及び下端面(先端側端面)81d,82dに設けられる環状溝81a,82aは単数でも複数でもよい。また、第3の部材81,82の上端面(基端側端面)81b,82b、外周面81c,82c又は下端面(先端側端面)81d,82dのうち、いずれか1面或いは2面にだけ環状溝81a,82aを設けてもよい。第3の部材81,82を設けるだけでも液体の浸入経路長を長くすることができるため、環状溝81a,82aを設けない構成であってもよい。しかし、環状溝81a,82aの本数は多いほど液体の浸入経路長を長くすることができ、第3の部材81,82のシール性能を向上することができる。
第3の部材81,82は、一部が第1の部材(樹脂カバー)47から露出していてもよい。しかし第3の部材81,82は、上端面(基端側端面)81b,82b、外周面81c,82c及び下端面(先端側端面)81d,82dの全体を第1の部材(樹脂カバー)47に埋設する方が、液体の浸入経路長を長くすることができるため、第3の部材81,82のシール性能を向上することができる。
上述した線膨張係数の関係を満たすことができれば、第3の部材81,82として金属材料を用いてもよい。第3の部材81,82を金属材料で構成する場合は、第3の部材81,82とハウジング5,33とを溶接してもよい。
図7を参照して、本発明に係る燃料噴射弁を搭載した内燃機関について説明する。図7は、燃料噴射弁1が搭載された内燃機関の断面図である。
内燃機関100のエンジンブロック101にはシリンダ102が形成されおり、シリンダ102の頂部に吸気口103と排気口104とが設けられている。吸気口103には、吸気口103を開閉する吸気弁105が、また排気口104には排気口104を開閉する排気弁106が設けられている。エンジンブロック101に形成され、吸気口103に連通する吸気流路107の入口側端部107aには吸気管108が接続されている。
燃料噴射弁1の燃料供給口2(図1参照)には燃料配管110が接続される。
吸気管108には燃料噴射弁1の取付け部109が形成されており、取付け部109に燃料噴射弁1を挿入する挿入口109aが形成されている。挿入口109aは吸気管108の内壁面(吸気流路)まで貫通しており、挿入口109aに挿入された燃料噴射弁1から噴射された燃料は吸気流路内に噴射される。二方向噴霧の場合、エンジンブロック101に吸気口103が二つ設けられた形態の内燃機関を対象として、それぞれの燃料噴霧が各吸気口103(吸気弁105)を指向して噴射される。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、一部の構成の削除や、記載されていない他の構成の追加が可能である。