JP2019002797A - 転がり軸受用寿命試験装置 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、車両のリアデファレンシャルでは、転がり軸受を潤滑するために、ギアの潤滑に使用される潤滑油が供給されている。長期にわたって使用された潤滑油中には、ギアの摩耗粉などが混入するので、この摩耗粉が転がり軸受の軌道面に浸入することによって、転がり軸受の寿命が低下する恐れがある。
そこで、リアデファレンシャルのように、異物を生じる環境下で使用される転がり軸受については、あらかじめ潤滑油中に鉄粉などを混入した条件で、寿命試験が行われている。
しかし、ポンプを試験装置の外部に設置するため、潤滑油が流動する配管が長くなり、配管の途中で異物が堆積する恐れがある。また、ポンプ自体が異物によって摩耗し、故障する場合がある。このため、試験装置のメンテナンスに大きな工数が必要となるという問題があった。
図1は、試験装置20の軸方向断面図である。図1では、被試験体である転がり軸受としての円すいころ軸受について、寿命試験を行っている状態を示している。図2は、図1において、円すいころ軸受が組み込まれている部分を拡大した要部拡大図である。試験装置20では、二つの円すいころ軸受10,10が、同時に寿命試験に供されており、各円すいころ軸受10,10は、互いに同一の形態である。なお、以下の説明では、試験装置20に組み込まれたときの、円すいころ軸受10の軸mの方向を軸方向といい、軸mと直交する方向を径方向、軸mの周りを周回する方向を周方向という。
図2を参照して説明する。円すいころ軸受10は、外輪11と、内輪12と、複数の円すいころ13(転動体)と、保持器14とを備えている。
外輪11は、環状で、内周に外側軌道面15を有している。外側軌道面15は、円錐面で形成されている。
内輪12は、環状で、外周に内側軌道面16を有している。内側軌道面16は、円錐面で形成されている。内側軌道面16の小径側には小鍔17が形成されており、大径側には大鍔18が形成されている。大鍔18の内側軌道面16側の側面は、円すいころ13が転動するときの案内面となっている。
円すいころ13は、外側軌道面15と内側軌道面16との間に転動自在に組み込まれている。各円すいころ13は、保持器14によって周方向に等しい間隔で保持されている。
なお、円すいころ軸受10が回転している状態で環状空間K1に潤滑油が供給されると、潤滑油は遠心力によって径方向外方に飛散し、外側軌道面15に沿って流れる。これにより、回転中の円すいころ軸受10では、外輪11の背面側(外側軌道面15の小径側である)から正面側(外側軌道面15の大径側である)に向けて、潤滑油が、環状空間K1を流れるようになる。この現象を、「ポンプ作用」という。以下の説明において、円すいころ軸受10の外輪11の背面側を「流入側」といい、その反対側を「流出側」という場合がある。
図1を参照する。試験装置20は、円すいころ軸受10を組付ける装置本体22と、円すいころ軸受10を回転させる主軸24と、円すいころ軸受10に潤滑油を供給する油供給部と、円すいころ軸受10に軸方向の荷重を負荷する負荷装置28を備えている。
外輪11の外周は、軸受嵌合面36に締りばめの状態で嵌め合わされている。外輪11の背面側の端面は、第2側面39と軸方向で当接している。
次に、図を参照しつつ、油供給部について説明する。
油供給部は、貯留部30に貯留された潤滑油を、円すいころ軸受10に、供給している。当該潤滑油には、100μm程度の大きさの鉄粉が、異物として混入されている。図示を省略するが、貯留部30では、鉄粉が沈殿しないように、例えば、空気を吹き込む等によって潤滑油が常時撹拌されている。
本試験装置20では、各円すいころ軸受10,10に対して、それぞれ個別に油供給部が設けられている。各油供給部の形態は互いに同様であるので、以下の説明では、図1において右方に取り付けられた円すいころ軸受10の油供給部を例にして説明する。
油搬送部49は、油搬送部49は、ハウジング34に設けられた第1内周面35及び第1側面38と、ロータ47と、スリンガ45とで構成されており、円すいころ軸受10の流入側である軸方向の一方の側(一側)で、円すいころ軸受10に近接して設置されている。
ロータ47の外周には、径方向外方に突出する複数の羽55(凸部)が、周方向に所定の間隔で形成されている。羽55の軸方向両側の側面は、ロータ47の側面c及び側面dと同一の面で形成されている。
周方向に互に隣り合う羽55と羽55との間には、径方向外方及び軸方向に開口する溝57(凹部)が形成されている。溝57を周方向に画定する面571,572は、互いに平行であり、径方向内方に凸となった円弧面573でつながっている。
各羽55の外周面59は、軸mと同軸の円筒面である。その外径寸法は、第1内周面35の内径寸法よりわずかに小さく、第1内周面35と羽55の外周面59との間には、すきまs1が形成されている。すきまs1の大きさは、概ね0.5mm程度である。
本実施形態では、ロータ47とハウジング34の第1側面38との間に、すきまs2が形成されている。すきまs2の大きさは、概ね0.5mm程度である。
また、ロータ47の板厚と第1内周面35の軸方向長さが等しいので、スリンガ45とハウジング34の側面aとの間においても、すきまs2と同等の大きさで、すきまs3が形成されている。
こうして、ロータ47は、ハウジング34の内側で回転することができる。
本実施形態では、油通路は、軸mより鉛直方向の上方で軸方向に設置された5本の円筒孔51で形成されている。円筒孔51は、油搬送部49が設置されている側と反対の側の側面bから、軸方向に延在する向きに形成されており、油搬送部49に向けて開口している。
各円筒孔51の中心軸は、軸mを中心とするピッチ円C上にあり、ピッチ円Cの直径寸法は第1内周面35の内径寸法とほぼ等しい。また、各円筒孔51の軸方向長さLは、側面bから第1側面38までの寸法より長く、ハウジング34の板厚(側面aと側面bの間の軸方向の寸法)より短い。これにより、各円筒孔51は、その中心軸と直交する断面の約半分が第1側面38に開口するとともに、その他の半分は更に軸方向に延在して、第1内周面35に開口している。
カバー部材53は、ハウジング34を挟んでロータ47と反対の側(他側)に設置されており、開口部の側の端面をハウジング34に当接させて、ハウジング34と同軸に組付けられている。カバー部材53は、円すいころ軸受10の流入側を全面にわたって覆っており、カバー部材53と円すいころ軸受10との間には、密閉された空間K2が形成されている。円筒部分の内径寸法は、ハウジング34に形成された円筒孔51より大径となっており、各円筒孔51は、カバー部材53の内側の空間K2に開口している。
負荷装置28は、装置本体22に固定されており、油圧等によって軸方向に伸縮するロッド68を備えている。ロッド68は、軸mと同軸に設置されており、カバー部材53を介してハウジング34と軸方向に当接している。負荷装置28は、ロッド68が軸方向に伸びることにより、ハウジング34を軸方向に付勢することができる。
円すいころ軸受10の外輪11の背面と、ハウジング34の第2側面39とが、軸方向で当接しているので(図2参照)、ロッド68による軸方向の荷重は、円すいころ軸受10を介して主軸24に伝達される。
次に、図4によって、本試験装置20を使用して、円すいころ軸受10の寿命試験を行うとき潤滑油の流れを説明する。図4は、図1のA−Aの位置における断面を示しており、ロータで搬送される潤滑油の動きを説明する説明図である。
また、潤滑油の油面高さは、軸受嵌合面36より、下方に設定されている。これにより、貯留部30の潤滑油が、円すいころ軸受10の流出側から直接環状空間K1に流入することがない。
このとき、ロータ47が回転しているので、溝57の中の潤滑油には、遠心力が作用している。このため、潤滑油が、速やかに円筒孔51に向けて排出される。
本実施形態では、円筒孔51が、羽55の外周面59と径方向のほぼ同等の位置に形成されており、円筒孔51は、各溝57の径方向の最外方に開口している。溝の中の潤滑油は遠心力によって各溝57の径方向の最外方に移動するので、溝57の中の潤滑油の全量が排出される。
特に、本実施形態では、図2に示したように、円筒孔51が、側面bの側から第1側面38を越えて軸方向に延在している。このため、円筒孔51の一部が、溝57の径方向外方に形成されるとともに、第1内周面35に開口している。このため、溝57の中の潤滑油は、遠心力によって径方向に飛散して、直接円筒孔51に向けて排出される。このため、本実施形態では、溝57の中の潤滑油を、更に速やかに円筒孔51に排出することができる。
潤滑油が溝57に捕捉されて、円すいころ軸受10の上方に移動する過程では、溝57の容積は一定であり、変化しない。このため、溝57の中に捕捉された潤滑油が、ロータ47と第1側面38とのすきまs2や、羽55の外周面59と第1内周面35とのすきまs1に向けて、大きな圧力で押し出されることがない。したがって、これらのすきまに、鉄粉等の異物がかみ込むのを抑制できるので、ハウジング34やロータ47の摩耗を低減することができる。
また、周方向に隣り合う溝57は、羽の側面(すなわちロータの側面cである)と第1側面38との間のすきまs2によって仕切られるとともに、第1内周面35と羽55の外周面59とのすきまs1によって仕切られている。すきまs1及びすきまs2は極めて小さいので、一の溝57から隣接する他の溝57に向けて潤滑油が流れるのを抑制することができる。
更に、スリンガ45の側面fとハウジング34の側面aとの間には、すきまs3が形成されている。すきまs3は極めて小さいので、溝57からハウジング34の外部に向けて潤滑油が流れるのを抑制することができる。
このとき、カバー部材53は、円すいころ軸受10の全面を覆っている。したがって、円筒孔51から空間K2に流入した潤滑油は、外部に流出することがなく、その全量が、環状空間K1を貫通して流れる。
図1の左側の円すいころ軸受10においては、固定板70は、円すいころ軸受10の流入側の全面を覆っており、カバー部材53と同様の作用効果を有している。ガイド部72の内径寸法は、図1の左側のハウジング34に形成された円筒孔51より大径となっており、円筒孔51は、固定板70と円すいころ軸受10とで囲まれた空間K4に向けて開口している。
また、入力軸43と固定板70との間には、オイルシールなどの密封部材74が組み込まれており、空間K4は密閉されている。このため、円筒孔51から空間K4に流入した潤滑油の全量が、図1の左側の円すいころ軸受10を貫通して流れる。
こうして、図の左側の円すいころ軸受10においても、供給される潤滑油量のばらつきを抑えて、所定の量の潤滑油を安定して供給することができる。
仮に、油搬送部49と負荷装置28とが、円すいころ軸受10に対して同一の側に設置されていると仮定した場合には、カバー部材53の内側に潤滑油を供給するための配管等を設置する必要がある。これらの配管は、流路が長くならざるを得ず、配管の途中における異物の堆積等の不具合を回避するために、大きな工数を必要とする。
これに対して、本実施形態ではかかる不具合を抑制できる。
Claims (4)
- 環状の内輪と、環状の外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成された環状空間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた被試験体としての転がり軸受に潤滑油を供給して試験を行う転がり軸受用寿命試験装置であって、
装置本体と、
前記装置本体の内側に設置され前記潤滑油を貯留する貯留部と、
前記装置本体の内側で軸を水平方向に向けて配置され、前記内輪が外嵌固定される主軸と、
前記装置本体に回転不能に取り付けられ、前記外輪が内嵌固定される軸受支持部材と、
前記転がり軸受の軸方向の一側で、前記貯留部に貯留された前記潤滑油を前記転がり軸受の上方に搬送する油搬送部と、
前記転がり軸受の軸方向の他側で、前記転がり軸受を覆うカバー部材と、を備え、
前記軸受支持部材には、前記転がり軸受の上方で、前記油搬送部に向けて開口するとともに、前記カバー部材の内側に開口する油通路が形成されていることを特徴とする転がり軸受用寿命試験装置。 - 前記油搬送部は、前記軸受支持部材に前記主軸と同軸に形成され、円筒形状の内周を有する筒部と、前記筒部の内側で前記主軸とともに回転するロータとを備えており、
前記ロータの外周には、径方向に突出する複数の凸部が形成されており、周方向で隣り合う一対の前記凸部の間に、前記貯留部の前記潤滑油を捕捉して前記転がり軸受の上方に搬送する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載する転がり軸受用寿命試験装置。 - 前記油通路は、少なくとも一部が、前記筒部の内周に開口し、前記凹部と径方向に連通していることを特徴とする請求項2に記載する転がり軸受用寿命試験装置。
- 前記軸受支持部材が、前記装置本体に対して前記転がり軸受の軸方向に変位可能であり、
前記転がり軸受の軸方向の前記他側に設置され、前記軸受支持部材に、前記転がり軸受の軸方向の荷重を負荷する負荷装置が設置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載する転がり軸受用寿命試験装置。
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