JP2016023648A - 玉軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】外輪軌道面と玉の外周面との間の良好なグリース潤滑を実現できる玉軸受を提供すること。
【解決手段】玉軸受1は、外周に内輪軌道面11を有する内輪2と、内周に外輪軌道面15を有する外輪3と、これら内外輪軌道面11,15間に配置された複数の玉4と、保持器5とを備える。内輪2の外周において、内輪2の軸方向Xの一方には内輪肩部12が、内輪2の軸方向Xの他方にはカウンタボア13がそれぞれ設けられている。各ポケット穴27の周壁30、軸方向Xの一方側の端部には、玉4側に向かうに従って径方向Zの外方に向かって延びるテーパ面41が形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】玉軸受1は、外周に内輪軌道面11を有する内輪2と、内周に外輪軌道面15を有する外輪3と、これら内外輪軌道面11,15間に配置された複数の玉4と、保持器5とを備える。内輪2の外周において、内輪2の軸方向Xの一方には内輪肩部12が、内輪2の軸方向Xの他方にはカウンタボア13がそれぞれ設けられている。各ポケット穴27の周壁30、軸方向Xの一方側の端部には、玉4側に向かうに従って径方向Zの外方に向かって延びるテーパ面41が形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、グリース潤滑の玉軸受に関する。
玉軸受の潤滑方式として、従来から、グリース潤滑が広く用いられている。グリース潤滑の玉軸受として、たとえば、下記の特許文献1が提案されている。
特許文献1は、内輪、外輪、およびこの内輪と外輪と間に介在した玉と、これら複数の玉を周方向に沿って所定間隔毎に保持する円環状の保持器とを備えた、グリース潤滑の高速回転玉軸受を開示している。この玉軸受では、内輪の外周の軸方向一方側には内輪肩部が設けられており、一方、内輪の外周の軸方向他方側にはカウンタボアが設けられている。また、特許文献1では、保持器の内周は、その全域が円筒面によって構成されている。
特許文献1は、内輪、外輪、およびこの内輪と外輪と間に介在した玉と、これら複数の玉を周方向に沿って所定間隔毎に保持する円環状の保持器とを備えた、グリース潤滑の高速回転玉軸受を開示している。この玉軸受では、内輪の外周の軸方向一方側には内輪肩部が設けられており、一方、内輪の外周の軸方向他方側にはカウンタボアが設けられている。また、特許文献1では、保持器の内周は、その全域が円筒面によって構成されている。
特許文献1の内輪の外径は、軸方向一方側よりも軸方向他方側の方が小径であるので、内輪の回転状態では、内輪の外周の軸方向一方側と他方側との間に作用する遠心力の差と、内輪におけるグリースの付着とに起因して、内輪の外周に、軸方向の他方側から軸方向の一方側へと向かうグリースの流れが発生する。内輪の外周付近に塗布されているグリースは、この流れに乗って、軸方向の他方側から軸方向の一方側へと移動する。このグリースが、外輪の内周へと導かれ、ひいては外輪軌道面に供給されることが望ましい。
しかしながら、特許文献1では、軸方向の他方側から軸方向の一方側へと移動するグリースは、保持器の内周面と内輪の外周面との間を通って、内外輪間の、保持器に対して軸方向一方側の空間へと移動し、滞留してしまう。したがって、外輪軌道面と玉の外周面との間のグリース潤滑のために用いられるグリースの量が低減し、その結果、潤滑不良が発生するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、外輪軌道面と玉の外周面との間の良好なグリース潤滑を実現できる玉軸受を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、外周に内輪軌道面(11)を有する内輪(2)と、内周に外輪軌道面(15)を有する外輪(3)と、これら内外輪軌道面間に配置された複数の玉(4)と、前記玉を収容する複数のポケット穴(27)を有し、前記内輪および前記外輪の間に配置された保持器(5)とを備えた玉軸受(1)であって、前記内輪と前記外輪との間にグリースが封入されており、前記内輪の外周において、前記内輪の軸方向(X)の一方には内輪肩部(12)が、前記内輪の軸方向の他方にはカウンタボア(13)がそれぞれ設けられていて、各ポケット穴の周壁(30)の内周端部(30A)の、前記保持器の軸方向(X)の一方側の端部(5A)には、前記玉側に向かうに従って前記保持器の径方向(Z)の外方に向かって延びるテーパ面(41)が形成されている、玉軸受を提供する。
請求項2に記載の発明は、前記保持器は、前記軸方向の前記一方側の内径(D1)が、前記軸方向の他方側の内径(D2)よりも小径に設けられている、請求項1に記載の玉軸受である。
なお、前記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
なお、前記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
請求項1に記載の構成によれば、内輪の外周の軸方向一方側には内輪肩部が設けられており、一方、内輪の外周の軸方向他方側にはカウンタボアが設けられている。すなわち、内輪の外径は、軸方向一方側よりも軸方向他方側の方が小径である。したがって、内輪の回転状態では、内輪の外周の軸方向一方側と他方側との間に作用する遠心力の差と、内輪におけるグリースの付着とに起因して、内輪の外周に、軸方向の他方側から軸方向の一方側へと向かうグリースの流れが発生する(ポンプ作用)。そのため、内輪の外周付近に配置されているグリースは、この流れに乗って、軸方向の他方側から軸方向の一方側へと移動する。
また、ポケット穴の周壁の、前記保持器の軸方向の一方側の端部には、玉側に向かうに従って保持器の径方向の外方に向かって延びるテーパ面が形成されている。テーパ面には、小径側に比べて大径側に、より大きな遠心力が作用する。そのため、テーパ面に付着しているグリースが、保持器の径方向の外方(すなわち、ポケット穴に進入する方向)に引っ張られる。したがって、保持器のポケット穴の内部にグリースを良好に導くことができ、これにより、内輪の外周のグリースを、外輪の内周、ひいては外輪軌道面に円滑に供給できる。したがって、外輪軌道面と玉の外周面との間の良好なグリース潤滑を実現でき、ゆえに、グリース潤滑の玉軸受として高速化を実現できる。
請求項2の構成によれば、保持器において、保持器の軸方向の一方側の内径が、軸方向の他方側の内径よりも小径に設けられている。したがって、前記のようなテーパ面を有する保持器を成形品により設ける場合であっても、テーパ面がアンダーカットにならないので、成形品である保持器を金型から容易に離型できる。したがって、アンダーカット処理を行うことなく、保持器の周壁に前記のようなテーパ面を形成することができる。
また、保持器において、保持器の軸方向の一方側の内径が、軸方向の他方側の内径よりも小径に設けられているので、保持器の内周面の軸方向の一方側と、内輪の外周面との間の間隔(W2)が狭くされる。この場合、内輪の外周に、軸方向の他方側から軸方向の一方側へと向かうグリースが、保持器の内周面と内輪の外周面との間を通って、内外輪間の、保持器に対して軸方向一方側の空間(45)に移動するのを抑制でき、これにより、当該空間にグリースが溜まるのを効果的に防止でき、ゆえに、グリース潤滑のために用いられるグリースの量を増大できる。
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る玉軸受1の断面図である。図2は、図1のテーパ面41の周囲の拡大図である。
玉軸受1は、たとえば工作機械(図示しない)の回転軸(図示しない)を支持するための高速回転用の玉軸受である。玉軸受1は、工作機械以外にも、コンプレッサやポンプ等のタービン用回転軸を支持する玉軸受として用いられる。
図1は、本発明の一実施形態に係る玉軸受1の断面図である。図2は、図1のテーパ面41の周囲の拡大図である。
玉軸受1は、たとえば工作機械(図示しない)の回転軸(図示しない)を支持するための高速回転用の玉軸受である。玉軸受1は、工作機械以外にも、コンプレッサやポンプ等のタービン用回転軸を支持する玉軸受として用いられる。
玉軸受1は、たとえばアンギュラ型の玉軸受である。玉軸受1は、回転軸に外嵌固定される内輪2と、工作機械のハウジング(図示しない)に内嵌固定される外輪3と、内輪2の内輪軌道面11と外輪3の外輪軌道面15との間に配置された複数の玉4と、複数の玉4を周方向に一定間隔おきに保持するポケットを有する円筒状の保持器5と、内輪2と外輪3と間の環状空間の軸方向の一方端(図1の右端)に設けられた第1のシール6と、内輪2と外輪3と間の環状空間の軸方向の他方端(図1の左端)に設けられた第2のシール7とを含む。玉軸受1では、グリース潤滑が実現されている。
以降の説明において、回転軸(図示しない)の軸方向を軸方向Xとする。外輪3の軸方向および保持器5の軸方向は、軸方向Xと一致する。また、便宜上、軸方向Xのうち、内輪軌道面11(接触点)における転動体荷重が作用する側(接触角を生じる側)の軸方向(図1の右側の方向)を、軸方向の一方側とし、軸方向Xのうち、外輪軌道面15(接触点)における転動体荷重が作用する側(接触角を生じる側)の軸方向(図1の左側の方向)を、軸方向の他方側とする。また、玉軸受1の径方向を径方向Zとする。外輪3の径方向は、径方向Zと一致する。径方向Zにおいて回転軸(図示しない)に近づく側を「内側」ということにし、径方向Zにおいて回転軸(図示しない)から離れる側を「外側」という。さらに、玉軸受1の周方向を周方向Yとする。
内輪2は、回転軸と一体回転可能である。内輪2の外周には、軸方向Xの中央部に、玉4を転走させるための内輪軌道面11が形成されている。内輪軌道面11は、当該内輪軌道面11と玉4との接触角が予め定める角度になるように形成されている。内輪2の外周の軸方向Xの一方側(図1の右側)に、内輪肩部12が形成されている。また、内輪2の外周の軸方向Xの他方側(図1の左側)には、接触角を生じる側と軸方向Xの反対側(軸方向Xの一方側。図1の右側)に、カウンタボア13(肩落とし部)が設けられている。内輪2の外周の軸方向Xの両端部には、径方向Zの内方に凹む第1のシール溝14が形成されている。
外輪3はハウジング(図示しない)に固定的に設けられている。外輪3の内周には、軸方向Xの中央部に、玉4を転走させるための外輪軌道面15が形成されている。外輪軌道面15は、当該外輪軌道面15と玉4との接触角が予め定める角度になるように形成されている。外輪3の内周には、外輪軌道面15を除く部分に、当該外輪軌道面15から見て軸方向Xの双方に第1および第2の外輪肩部16,17が形成されている。第1および第2の外輪肩部16,17の内周は、それぞれ、互いに同径を有する円筒面からなる内周面18,19を有している。すなわち、内周面18と内周面19とは互いに面一の円筒面である。
外輪3の内周には、外輪軌道面15の軸方向Xの一方側(図1の右側)に隣接して(すなわち、外輪軌道面15と第1の外輪肩部16との間に)、グリース(図示しない)を溜めるためのグリース貯留溝20が形成されている。グリース貯留溝20は、軸方向X回りに延びる円筒壁21と、径方向Zに沿って延びる垂直壁22と、円筒壁21と垂直壁22とを繋ぐ湾曲壁9とによって区画された断面略L字状の溝である。円筒壁21は、外輪軌道面15に連続している。グリース貯留溝20の底面をなす円筒壁21は、外輪軌道面15の最深部15A(外輪軌道面15の軸方向Xの中央位置における底部)よりも、径方向Zの内方に位置している。換言すると、グリース貯留溝20の底部が、外輪軌道面15の最深部15Aよりも径方向Zの内方に位置している。グリース貯留溝20の底部が、テーパ面等でなく円筒壁21によって区画されているので、グリース貯留溝20の底部への玉4の乗り上がりを効果的に抑制できる。また、グリース貯留溝20の底部が、外輪軌道面15の最深部15Aよりも外輪3の径方向の内方に位置しているので、グリース貯留溝20の底部への玉の乗り上がりを効果的に抑制できる。
垂直壁22は、内周面18に連続している。円筒壁21の軸方向Xの長さは、垂直壁22の径方向Zの長さよりも長い。換言すると、垂直壁22の径方向Zの長さが、円筒壁21の軸方向Xの長さよりも短い。したがって、グリース貯留溝20を径方向Zの外方に深くすることなく、グリース貯留溝20の容積を大きく保つことができる。これにより、グリース貯留溝20の底部への玉4の乗り上がりを、より一層効果的に抑制できる。
外輪3の内周の軸方向Xの両端部には、第2のシール溝24が形成されている。軸方向Xの一方側(図1の右側)の第2のシール溝24は、第1の外輪肩部16の内周面18に、内周面18と外輪3の一方側端面3Aとを接続する第1の段部36を形成することにより設けられる。第1の段部36は、内周面18と垂直な面である。軸方向Xの他方側(図1の左側)の第2のシール溝24は、第1の外輪肩部17の内周面19に、内周面19と外輪3の他方側端面3Bとを接続する第2の段部37を形成することにより設けられる。第2の段部37は、内周面19と垂直な面である。第2のシール溝24には、対応するシール(第1または第2のシール6,7)の外周部25が嵌っている。
保持器5は円環板状の保持器本体26を有している。保持器本体26には、保持器本体26を径方向Zに貫通する複数のポケット穴27が、周方向Yに等間隔で並んで形成されている。保持器5は、保持器本体26が内輪2と同軸になるように配置されている。保持器5の各ポケット穴27には、玉4が1つずつ配置されている。玉軸受1では、保持器5の案内方式として、外輪3の内周(すなわち、第1および第2の外輪肩部16,17の内周面18,19)と保持器5の外周面28とを滑り接触させて保持器5の外径を案内する外輪案内方式が採用されている。これにより、玉軸受1の回転時における保持器5の挙動を安定させることができる。
各ポケット穴27は、円筒面をなす周壁30によって区画されている。前述のように、外輪3の内周に滑り接触することにより、保持器5の姿勢が安定させられている。
保持器5を玉軸受1内に収容した状態では、保持器5のポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側(図1の右側)端部が、軸方向Xに関し、グリース貯留溝20の垂直壁22と略揃っている(軸方向Xの一方側にやや寄っている)。換言すると、グリース貯留溝20の軸方向Xの一方側の端縁40が、軸方向Xに関し、保持器5のポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側端部と略揃っている(やや外輪軌道面15側に寄っている)。前述のように、第1および第2の外輪肩部16,17の内周面18,19が面一の円筒面を有している(外輪3の内周のグリース貯留溝20を除く領域が円筒面をなしている)ので、軸方向Xの一方側の保持器5の外周面28全域が外輪の内周に案内される。
保持器5を玉軸受1内に収容した状態では、保持器5のポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側(図1の右側)端部が、軸方向Xに関し、グリース貯留溝20の垂直壁22と略揃っている(軸方向Xの一方側にやや寄っている)。換言すると、グリース貯留溝20の軸方向Xの一方側の端縁40が、軸方向Xに関し、保持器5のポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側端部と略揃っている(やや外輪軌道面15側に寄っている)。前述のように、第1および第2の外輪肩部16,17の内周面18,19が面一の円筒面を有している(外輪3の内周のグリース貯留溝20を除く領域が円筒面をなしている)ので、軸方向Xの一方側の保持器5の外周面28全域が外輪の内周に案内される。
保持器5の内周面29においてポケット穴27に対し軸方向Xの一方側(図1の右側)の端部には、径方向Zの内方側に突出する突条42が設けられている。そのため、保持器5の、軸方向Xの一方側の端部5Aの内径D1は、端部5Aを除く部分の内径D2よりも小径である。換言すると、保持器5は、軸方向Xの一方側の内径D1が、軸方向Xの他方側の内径D2よりも小径に設けられている。
保持器5において、ポケット穴27の周壁30の内周端部30Aの、軸方向Xの一方側の端部には、玉4側(すなわち、軸方向Xの他方側)に向かうに従って保持器5の径方向Zの外方に向かって延びる断面直線状のテーパ面41が形成されている。後述するように、テーパ面41は、保持器5の内周面29に付着しているグリースを、ポケット穴27の内部へと誘導するように機能する。
保持器5において、軸方向Xの一方側の内径D1が、軸方向Xの他方側の内径D2よりも小径に設けられているので、テーパ面41がアンダーカットにならず、そのために、成形品である保持器5を金型(図示しない)から容易に離型できる。したがって、アンダーカット処理を行うことなく、保持器5の周壁30にテーパ面41を形成することができる。
保持器5の、軸方向Xの一方側の端部5Aの内径D1は、内周面29の他の部分の内径D2よりも小径であるので、内外輪2,3間の空間に保持器5を収容した状態において、保持器5の端部5Aの内周面(突条42の内周面)と内輪3の内輪肩部12の外周面43との間の間隔W2(図2参照)が狭く設定されている。具体的には、間隔W2の寸法は、保持器5の内周面の内周面29と内輪3のカウンタボア13の外周面44との間の間隔をW1とし、保持器5の外周面28と、外輪3の内周面18,19との間の隙間をW3すると、W3<W2<W1である。
一対のシール6,7は、内輪2と外輪3と間の環状空間を封止して、当該環状空間からのグリースの飛散を防止するためのものであり、互いに同じ諸元を有している。本実施形態では、各シール6,7は円環状をなす非接触シールである。なお、接触シールであってもかまわない。各シール6,7は、円環状の鋼板製の芯金31と、ゴムまたは樹脂を用いて形成されて、芯金31が埋設されたシール本体32とを含む。芯金31は、径方向Zに沿うように配置された環状板33と、環状板33の外周縁から軸方向Xに沿うように延設された板状の円筒部34とを備えている。環状板33の径方向Zの内方部分は、軸方向Xの他方側(図1の左側)に向かうようにやや折り曲げられている。シール6,7が内輪2および外輪3に装着された状態では、シール6,7の外周部25(シール本体32の外周部)が、外輪3の第2のシール溝24に嵌合しており、各芯金31の円筒部34の先端縁34Aが、対応する段部36,37に突き当てられている。このような装着状態で、各円筒部34の内周面34Bが、対応する内周面18,19と略面一である。
このように、各芯金31の円筒部34の先端縁34Aが、対応する段部36,37に突き当てられているので、第2のシール溝24へのグリースの侵入が阻止される。そのため、第2のシール溝24におけるグリースの滞留を防止でき、これにより、グリース潤滑のために用いられるグリースの量の増大を図ることができる。また、この実施形態では、各円筒部34の内周面34Bが、対応する内周面18,19と略面一であるので、第2のシール溝24におけるグリースの滞留をより一層確実に防止でき、その結果、グリース潤滑のために用いられるグリースの量の、より一層の増大を図ることができる。
前述のように、内輪2の外周の軸方向Xの一方側(図1の右側)には内輪肩部12が設けられており、その一方、内輪2の外周の軸方向Xの他方側(図1の左側)にはカウンタボア13(肩落とし部)が設けられている。すなわち、内輪2の外径は、軸方向Xの一方側(図1の右側)よりも軸方向Xの他方側(図1の左側)の方が小径である。したがって、内輪2の回転状態では、内輪2の外周の軸方向Xの一方側と他方側との間に作用する遠心力の差に起因して、内輪2の外周に、軸方向Xの他方側から軸方向Xの一方側へと向かうグリースの流れが発生する(ポンプ作用)。そのため、内輪2の外周付近に配置されているグリースは、軸方向Xの他方側から軸方向Xの一方側へと移動する。すなわち、図1および図2に破線で示すように、玉4に対し軸方向Xの他方側寄りに配置されているグリースの一部は、内輪軌道面11と玉4の外表面との間を通って、玉4に対し軸方向Xの一方側へと移動し、その後、内輪2の回転による遠心力を受けて径方向Zの外方に向けて飛散する。
前述のように、保持器5の、軸方向Xの一方側の端部5Aの内径D1は、内周面29の他の部分の内径D2よりも小径であるので、内輪2の外周を、軸方向Xの他方側から軸方向Xの一方側へと向かうグリースは、保持器5の端部5Aの突条42(すなわちテーパ面41)によって捕獲される。
テーパ面41には、径方向Zの内方に比べて径方向Zの外方に、より大きな遠心力が作用する。そのため、テーパ面41によって捕獲されたグリースは、図2に実線の矢印で示すように、テーパ面41を、大径側(すなわち、ポケット穴27に進入する方向)に引っ張られる。したがって、テーパ面41に捕獲されたグリースを、保持器5のポケット穴27の内部に円滑に供給できる。
テーパ面41には、径方向Zの内方に比べて径方向Zの外方に、より大きな遠心力が作用する。そのため、テーパ面41によって捕獲されたグリースは、図2に実線の矢印で示すように、テーパ面41を、大径側(すなわち、ポケット穴27に進入する方向)に引っ張られる。したがって、テーパ面41に捕獲されたグリースを、保持器5のポケット穴27の内部に円滑に供給できる。
ポケット穴27内のグリースは、保持器5の回転による遠心力を受けて、ポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側端部を伝って、保持器5を径方向Zの内端(図1の下端)から径方向Zの外端(図1の上端)まで移動する。ポケット穴27の周壁30の径方向Zの外端に達したグリースは、保持器5の回転による遠心力を受けて、径方向Zの外方に向けて飛散する。
また、前述のように、保持器5のポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側端部が、軸方向Xに関し、グリース貯留溝20の垂直壁22と略揃っているので、ポケット穴27の周壁30の軸方向Xの一方側端部から飛散するグリースは、グリース貯留溝20へと供給され、グリース貯留溝20に貯留される。グリース貯留溝20に溜められたグリースは、外輪軌道面15と玉4の外表面との間に供給される。
また、グリースを封入する際には、径方向Zにおける保持器5の内周面29に対向する内輪2の外周面を主としてグリースが塗布されることが好ましい。
以上によりこの実施形態によれば、内輪2の外周のグリースを、ポケット穴27の周壁30、およびグリース貯留溝20を通して、外輪軌道面15に円滑に供給できる。したがって、外輪軌道面15と玉4の外周面との間の良好なグリース潤滑を実現でき、ゆえに、グリース潤滑の玉軸受として高速化を実現できる。
以上によりこの実施形態によれば、内輪2の外周のグリースを、ポケット穴27の周壁30、およびグリース貯留溝20を通して、外輪軌道面15に円滑に供給できる。したがって、外輪軌道面15と玉4の外周面との間の良好なグリース潤滑を実現でき、ゆえに、グリース潤滑の玉軸受として高速化を実現できる。
また、前述のように、保持器5の端部5Aの内周面(突条42の内周面)と内輪2の内輪肩部12の外周面43との間の間隔W2が狭く設定されているので、グリースが、保持器5の端部5Aの内周面(突条42の内周面)と内輪2の外周面43との間を通って、内外輪2,3間の、保持器5に対して軸方向X一方側の空間45(以下、一方側空間45という)に移動するのを抑制できる。これにより、一方側空間45にグリースが溜まるのを効果的に防止でき、ゆえに、グリース潤滑のために用いられるグリースの量の増大を図ることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
前述の実施形態では、保持器5を、軸方向Xの一方側の内径D1が、軸方向Xの他方側の内径D2よりも小径であるとして説明したが、保持器5の内径が、軸方向Xの一方側と軸方向Xの他方側とで同等にされていてもよい。
前述の実施形態では、保持器5を、軸方向Xの一方側の内径D1が、軸方向Xの他方側の内径D2よりも小径であるとして説明したが、保持器5の内径が、軸方向Xの一方側と軸方向Xの他方側とで同等にされていてもよい。
また、前述の各実施形態では、内輪2が、回転軸に伴って回転する回転側であり、外輪3が固定側である場合を例に挙げて説明した。しかし、外輪3を回転側とし、内輪2を固定側とする場合にも、本願発明を適用できる。
その他、特許請求の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
その他、特許請求の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
1…玉軸受、2…内輪、3…外輪、4…玉、5…保持器、5A…端部、11…内輪軌道面、12…内輪肩部、13…カウンタボア、15…外輪軌道面、27…ポケット穴、30…周壁、30A…内周端部、41…テーパ面、45…一方側空間、D1…端部5Aの内径(軸方向の一方側の内径)、D2…端部5Aを除く部分の内径(軸方向の他方側の内径)
Claims (2)
- 外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、これら内外輪軌道面間に配置された複数の玉と、前記玉を収容する複数のポケット穴を有し、前記内輪および前記外輪の間に配置された保持器とを備えた玉軸受であって、
前記内輪と前記外輪との間にグリースが封入されており、
前記内輪の外周において、前記内輪の軸方向の一方には内輪肩部が、前記内輪の軸方向の他方にはカウンタボアがそれぞれ設けられていて、
各ポケット穴の周壁の内周端部の、前記保持器の軸方向の一方側の端部には、前記玉側に向かうに従って前記保持器の径方向の外方に向かって延びるテーパ面が形成されている、玉軸受。 - 前記保持器は、前記軸方向の前記一方側の内径が、前記軸方向の他方側の内径よりも小径に設けられている、請求項1に記載の玉軸受。
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