JP2019002743A - 高分子材料のシミュレーション方法 - Google Patents

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【課題】 高分子成分とフィラーとの相互作用を精度良く解析する。【解決手段】 高分子材料に含まれる高分子成分とフィラーとの相互作用を、コンピュータを用いて解析するための方法である。このシミュレーション方法は、コンピュータが、ポリマー粒子モデル7、及び、フィラー粒子モデル14を対象として分子動力学計算を行う工程とを含んでいる。フィラーモデル13は、第1フィラーモデル13Aと第2フィラーモデル13Bとを含んでいる。第1フィラーモデル13Aは、複数のフィラー粒子モデル14が、見かけ上の球面を構成するように配置されかつ互いに連結されている。第2フィラーモデル13Bは、第1フィラーモデル13Aのフィラー粒子モデル14の少なくとも一つが欠損したものである。第2フィラーモデル13Bは、セル4内に定義された分子鎖モデル6と相互作用するように、セル4の中心側に位置して第1フィラーモデル13Aと重ねられている。【選択図】図6

Description

本発明は、高分子材料のシミュレーション方法に関し、詳しくは、高分子材料に含まれる高分子成分とフィラーとの相互作用を、コンピュータを用いて解析するための方法に関する。
近年、フィラーが配合された高分子材料の開発のために、コンピュータを用いたシミュレーションが行われている。下記特許文献1のシミュレーション方法では、フィラーをモデル化したフィラーモデル、及び、高分子成分の分子鎖をモデル化した分子鎖モデルを用いた分子動力学計算が行われ、両者の反応状態等を推定する試みがなされている。
特開2014−203262号公報
上記特許文献1のフィラーモデルは、仮想空間であるセルを構成する一対の面に、均一な平面を構成するように配置された複数のフィラー粒子モデルで定義されている。このようなフィラーモデルを用いたシミュレーション方法では、例えば、フィラーの表面状態等に起因するフィラーと分子鎖との相互作用の変化を考慮することができず、高分子成分とフィラーとの相互作用を精度良く解析できないという問題があった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、高分子成分とフィラーとの相互作用を精度良く解析することができる高分子材料のシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、高分子材料に含まれる高分子成分とフィラーとの相互作用を、コンピュータを用いて解析するための方法であって、前記高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルを、前記コンピュータに入力する工程と、前記セル内に、複数のポリマー粒子モデルを用いて前記高分子成分の分子鎖をモデル化した分子鎖モデルを定義する工程と、前記セル内に、複数のフィラー粒子モデルを用いて前記フィラーをモデル化したフィラーモデルを定義する工程と、前記ポリマー粒子モデル間、及び、前記フィラー粒子モデルと前記ポリマー粒子モデルとの間に、引力及び斥力が作用するポテンシャルを定義する工程と、前記コンピュータが、前記ポリマー粒子モデル、及び、前記フィラー粒子モデルを対象として分子動力学計算を行う工程とを含み、前記フィラーモデルは、第1フィラーモデルと第2フィラーモデルとを含んで定義され、前記第1フィラーモデルは、複数の前記フィラー粒子モデルが、見かけ上の球面を構成するように配置されかつ互いに連結されており、前記第2フィラーモデルは、前記第1フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルの少なくとも一つが欠損したものであり、前記第2フィラーモデルは、前記セル内に定義された前記分子鎖モデルと相互作用するように、前記セルの中心側に位置して前記第1フィラーモデルと重ねられていることを特徴とする。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1フィラーモデルの前記フィラー粒子モデル、及び、前記第2フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルは、それらの半径方向で互いに結合されていてもよい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記高分子材料は、前記フィラーに対する前記分子鎖の親和性を高める官能基を含み、前記官能基を少なくとも一つの官能基粒子モデルでモデル化した官能基モデルを、前記フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルに結合させる工程と、前記官能基粒子モデルと前記ポリマー粒子モデルとの間に、前記ポテンシャルを定義する工程とをさらに含み、前記分子動力学計算を行う工程は、前記ポリマー粒子モデル、前記フィラー粒子モデル、及び、前記官能基粒子モデルを対象として、前記分子動力学計算を行ってもよい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記官能基粒子モデルは、前記第2フィラーモデルの前記欠損した部分に配置されてもよい。
本発明の高分子材料のシミュレーション方法の前記フィラーモデルは、前記第1フィラーモデルと前記第2フィラーモデルとを含んで定義される。前記第1フィラーモデルは、複数の前記フィラー粒子モデルが、見かけ上の球面を構成するように配置されかつ互いに連結されている。前記第2フィラーモデルは、前記第1フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルの少なくとも一つが欠損したものである。前記第2フィラーモデルは、前記セル内に定義された前記分子鎖モデルと相互作用するように、前記セルの中心側に位置して前記第1フィラーモデルと重ねられている。
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、フィラーの表面に、フィラーの原子に置き換わる官能基が存在し、フィラーと分子鎖との相互作用に変化が生じることを知見した。本実施形態のシミュレーション方法では、前記第2フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルが欠損した部分と、欠損していない部分とにより、前記分子鎖モデルに対する前記ポテンシャルを変化させることができる。従って、本発明のシミュレーション方法は、前記フィラーの表面状態等に起因する前記フィラーと前記分子鎖との相互作用の変化を考慮して、前記高分子成分と前記フィラーとの相互作用を精度良く解析することが可能となる。
また、本実施形態の第1フィラーモデル及び第2フィラーモデルは、見かけ上の球面を構成するように前記フィラー粒子モデルが配置されているため、現実のフィラーの表面形状に近似させることができる。従って、本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、フィラーモデル及び分子鎖モデルを用いた分子動力学計算が実施されることにより、現実のフィラー近傍での分子鎖の分布を精度良く再現することができる。
高分子材料のシミュレーション方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。 ポリイソプレンの構造式である。 高分子材料のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。 セル、分子鎖モデル及びフィラーモデルの一例を示す概念図である。 分子鎖モデルの一例を示す概念図である。 フィラーモデルの一例を示す概念図である。 第1フィラーモデルの一例を示す部分斜視図である。 第2フィラーモデルの一例を示す部分斜視図である。 ポテンシャルの一例を示す概念図である。 本発明の他の実施形態の高分子材料のシミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の他の実施形態の第2フィラーモデル及び官能基モデルを示す部分斜視図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の高分子材料のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある。)は、高分子材料に含まれる高分子成分とフィラーとの相互作用を、コンピュータを用いて解析するための方法である。
図1は、シミュレーション方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んで構成されている。本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するための処理手順(プログラム)が予め記憶されている。
高分子材料は、少なくとも1種類、本実施形態では1種類の高分子成分を含んでいる。高分子成分の一例は、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、又は、スチレンブタジエンゴム等である。本実施形態の高分子成分としては、イソプレンゴム(cis-1,4ポリイソプレン(以下、単に「ポリイソプレン」ということがある。))である場合が例示される。図2は、ポリイソプレンの構造式である。
ポリイソプレンを構成する分子鎖2は、メチン基等(例えば、−CH=、>C=)、メチレン基(−CH−)、及び、メチル基(−CH)によって構成されるイソプレンのモノマー(イソプレン分子)3が、重合度nで連結されて構成されている。なお、高分子材料には、ポリイソプレン以外の高分子材料が用いられてもよい。
フィラーの一例としては、グラファイト(カーボンブラック)、又は、シリカ等である。本実施形態のフィラーとしては、グラファイトである場合が例示される。また、高分子鎖には、フィラーに対する分子鎖の親和性を高める官能基が含まれている。官能基の一例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、又は、カルボン酸塩である。本実施形態の官能基としては、アルデヒド、及び、ケトンである場合が例示される。
図3は、シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセル4が、コンピュータ1に入力される(工程S1)。図4は、セル、分子鎖モデル及びフィラーモデルの一例を示す概念図である。
セル4は、少なくとも互いに向き合う一対の面5、5、本実施形態では、互いに向き合う三対の面5、5を有しており、直方体又は立方体(本実施形態では、立方体)として定義されている。各面5、5には、周期境界条件が定義されている。このようなセル4が用いられることにより、後述の分子動力学計算において、例えば、高分子成分の分子鎖2(図2に示す)をモデル化した後述の分子鎖モデル6について、一方側の面5aから出て行った分子鎖モデル6の一部が、他方側の面5bから入ってくるように計算することができる。従って、一方側の面5aと、他方側の面5bとが連続している(繋がっている)ものとして取り扱うことができる。
セル4の一辺の各長さL1(L1a、L1b及びL1c)は、適宜設定することができる。本実施形態の長さL1は、後述の分子鎖モデル6の拡がりを示す量である慣性半径(図示省略)の3倍以上が望ましい。これにより、セル4は、後述の分子動力学計算において、周期境界条件による自己のイメージとの衝突の発生を防げるため、分子鎖モデル6の空間的拡がりを適切に計算することができる。また、セル4の大きさは、例えば1気圧で安定な体積に設定される。これにより、セル4は、解析対象の高分子材料の少なくとも一部の体積を定義することができる。セル4は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、セル4内に、高分子成分の分子鎖をモデル化した分子鎖モデル6が定義される(工程S2)。本実施形態の分子鎖モデル6は、全原子モデルとして構成されている。
分子鎖モデル6は、複数のポリマー粒子モデル7を用いてモデル化され、セル4内に移動可能に定義されている。移動可能とは、後述の分子動力学計算において、分子鎖モデル6がセル4内を移動することができることを意味している。本実施形態の分子鎖モデル6は、複数のポリマー粒子モデル7と、隣接するポリマー粒子モデル7、7間を結合する結合鎖モデル8とを含んで構成されている。図5は、分子鎖モデルの一例を示す概念図である。
ポリマー粒子モデル7及び結合鎖モデル8は、図2に示した分子鎖2のモノマー3をなす単位構造に基づいて連結される。これにより、モノマーモデル11が設定される。本実施形態の分子鎖モデル6は、一つのモノマーモデル11のみで定義されている。これにより、本実施形態のシミュレーション方法は、後述の分子動力学計算において、計算対象のポリマー粒子モデル7の鎖長を大幅に短くすることができるため、構造緩和に要する計算時間を短縮しうる。しかも、分子鎖モデル6は、モノマー3をなす単位構造に基づいて定義されるため、計算精度の低下も抑えることができる。なお、分子鎖モデル6は、計算精度をさらに高めるために、モノマーモデル11を、分子量(重合度)Mnに基づいて連結されることで定義されてもよい。
ポリマー粒子モデル7は、後述する分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、ポリマー粒子モデル7は、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。本実施形態のポリマー粒子モデル7は、図2に示した分子鎖2の炭素原子をモデル化した炭素粒子モデル7C、及び、水素原子をモデル化した水素粒子モデル7Hを含んでいる。
結合鎖モデル8は、主鎖8aと側鎖8bとを含んでいる。主鎖8aは、炭素粒子モデル7C、7Cを連結するためのものである。側鎖8bは、炭素粒子モデル7Cと水素粒子モデル7Hとの間を連結するためのものである。また、結合鎖モデル8には、一対の原子間の一重結合を定義した一重結合ボンドモデル8Aと、一対の原子間の二重結合を定義した二重結合ボンドモデル8Bとを含んでいる。
結合鎖モデル8を介して隣り合うポリマー粒子モデル7、7間には、引力及び斥力が作用するポテンシャルP1が定義される。一重結合ボンドモデル8A及び二重結合ボンドモデル8Bには、異なる値のポテンシャルP1がそれぞれ定義される。
ポテンシャルP1については、従来と同様に、適宜定義することができる。本実施形態のポテンシャルP1は、論文1(Stephen L. Mayo, Barry D. Olafson, and William A. Goddard III 著 「DREIDING: A Generic Force Field for Molecular Simulations」、J. Chem Phys. vol.94, No.26 ,8897-8909, 1990)に基づいて、図2に示した分子鎖2の構造に応じて設定されている。
図4に示したセル4内に定義される分子鎖モデル6の個数については、適宜設定することができる。本実施形態の分子鎖モデル6の個数は、セル4内に配置される全ての分子鎖モデル6の密度が、ポリイソプレンの密度に一致するように調整されるのが望ましい。
本実施形態の分子鎖モデル6は、全原子モデルとして構成されたが、このような態様に限定されない。分子鎖モデル6は、例えば、粗視化モデル(Kremer-Grestモデル等)として定義されてもよい。さらに、分子鎖モデル6は、特開2014−225226号公報の記載に基づいて、緩和された粗視化モデルにモノマーモデル11を割り当てるリバースマッピングが実施されることによって、全原子モデルが構成されてもよい。分子鎖モデル6は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、セル4内に、フィラーをモデル化したフィラーモデルが定義される(工程S3)。図6は、フィラーモデル13の一例を示す概念図である。フィラーモデル13は、複数のフィラー粒子モデル14を用いてモデル化され、セル4内に移動可能に定義されている。ここで、「移動可能」とは、後述の分子動力学計算において、フィラーモデル13がセル4内を移動することができることを意味している。なお、フィラーモデル13は、移動不能に定義されていてもよい。
本実施形態のフィラーモデル13は、第1フィラーモデル13Aと、第2フィラーモデル13Bとを含んで定義されている。図7は、第1フィラーモデル13Aの一例を示す部分斜視図である。図7では、第2フィラーモデル13Bを省略して表示している。
図7に示されるように、第1フィラーモデル13Aは、複数のフィラー粒子モデル14が、見かけ上の球面を構成するように配置されており、互いに連結されている。なお、見かけ上の球面としては、隣接するフィラー粒子モデル14によって形成される凹凸が許容されるものとする。
フィラー粒子モデル14は、後述の分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、フィラー粒子モデル14には、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。フィラー粒子モデル14の粒子径については、適宜設定することができる。本実施形態のフィラー粒子モデル14の粒子径は、ポリマー粒子モデル7の粒子径と同一、又は、やや大きく設定されている。
第1フィラーモデル13Aは、フィラー粒子モデル14を連結した複数のユニット16が、見かけ上の球面を構成するように連結されるのが望ましい。ユニット16は、例えば、フィラー(本実施形態では、グラファイト)の構造に基づいて、六角形の頂点に配されたフィラー粒子モデル14が連結されることで定義される。また、隣接するユニット16、16のフィラー粒子モデル14、14間も同様に、連結されている。これにより、現実のフィラーの構造に基づくフィラーモデル13を、容易に定義することができる。
隣接するフィラー粒子モデル14、14は、結合鎖モデル15によって連結されている。結合鎖モデル15を介して隣り合うフィラー粒子モデル14、14間には、引力及び斥力が作用するポテンシャルP2が定義される。ポテンシャルP2については、従来と同様に、適宜定義することができる。本実施形態のポテンシャルP2は、上記論文1に基づいて、フィラーの構造に応じて設定されている。
第1フィラーモデル13Aを構成するフィラー粒子モデル14の半径方向内側は、他のフィラー粒子モデル14が配置されない空間として形成されている。これにより、本実施形態のシミュレーション方法は、例えば、フィラー粒子モデル14が半径方向内側まで密に配置されたフィラーモデル(図示省略)が用いられるシミュレーション方法に比べて、後述の分子動力学計算での計算対象のフィラー粒子モデル14の数を大幅に減らすことができるため、計算時間を短縮しうる。
第1フィラーモデル13Aにおいて、隣接するフィラー粒子モデル14、14間に形成される隙間は、図4に示したポリマー粒子モデル7の粒子径よりも小さく設定されるのが望ましい。これにより、第1フィラーモデル13Aは、第1フィラーモデル13Aの半径方向内側に、ポリマー粒子モデル7が浸入するのを阻止できるため、後述の分子動力学計算において、分子鎖モデル6がフィラーモデル13の内部に浸入するような非現実的な計算を防ぐことができる。
図8は、第2フィラーモデル13Bの一例を示す部分斜視図である。なお、図8では、第1フィラーモデル13Aを省略して表示している。第2フィラーモデル13Bは、図7に示した第1フィラーモデル13Aのフィラー粒子モデル14の少なくとも一つが欠損したものである。このため、図8に示されるように、第2フィラーモデル13Bは、第1フィラーモデル13Aと同様に、複数の前記フィラー粒子モデル14が、見かけ上の球面を構成するように配置されかつ互いに連結されている。本実施形態の第2フィラーモデル13Bでは、例えば、フィラーに結合している官能基の数や種類に基づいて、フィラー粒子モデル14を欠損させている。なお、フィラー粒子モデル14は、ランダムに欠損させてもよい。官能基の数や種類については、例えば、実験等によって求められる。
図6に示されるように、第2フィラーモデル13Bは、第1フィラーモデル13Aに対してセル4の中心側に位置するように、第1フィラーモデル13Aと重ねられている。本実施形態の第2フィラーモデル13Bは、第1フィラーモデル13Aの半径方向外側において、第1フィラーモデル13Aよりも大きな外径を有する見かけ上の球面を構成している。これにより、本実施形態のフィラーモデル13は、第1フィラーモデル13Aと第2フィラーモデル13Bとが重なる2層で構成される。フィラーモデル13は、セル4の対角線上で互いに向き合って配置されている。
第2フィラーモデル13Bは、第1フィラーモデル13Aに対してセル4の中心側に位置しているため、後述の分子動力学計算において、第1フィラーモデル13Aよりも分子鎖モデル6と優先的に相互作用するように計算することができる。
このように、フィラーモデル13は、第1フィラーモデル13Aと、第1フィラーモデル13Aのフィラー粒子モデル14を欠損させた第2フィラーモデル13Bとが重ねられることにより、フィラーの表面に形成される凹凸を表現することができる。しかも、本実施形態の第1フィラーモデル13A及び第2フィラーモデル13Bは、見かけ上の球面を構成するようにフィラー粒子モデル14が配置されているため、現実のフィラーの表面形状(球に近い形状)に近似させることができる。
セル4内に定義されるフィラーモデル13の個数としては、適宜設定することができる。本実施形態では、1個のフィラーモデル13が定義されているが、複数個のフィラーモデル13が定義されてもよい。なお、複数個のフィラーモデル13が定義される場合、フィラーモデル13、13間の距離は、フィラーの体積分率に基づいて設定されるのが望ましい。
第1フィラーモデル13A及び第2フィラーモデル13Bの半径方向において、第1フィラーモデル13Aと第2フィラーモデル13Bとの間の距離L2(図9に示す)については、適宜設定することができる。本実施形態の距離L2は、高分子成分とフィラーとの相互作用を精度良く解析するために、例えば、グラファイトの壁間距離に基づいて設定することができる。なお、距離L2は、フィラー粒子モデル14、14の中心14c(図8に示す)間の距離として定義される。
第1フィラーモデル13Aのフィラー粒子モデル14、及び、第2フィラーモデル13Bのフィラー粒子モデル14は、半径方向において互いに結合されてもよい。連結方法については、上述したフィラー粒子モデル14、14の連結方法(本実施形態では、図8に示した結合鎖モデル15及びポテンシャルP2)のとおりである。これにより、フィラーモデル13は、シリカのような三次元の網目構造に形成される。従って、フィラーモデル13は、半径方向内側に空間が形成されていても、その剛性が大きく定義されるため、後述の分子動力学計算において、解析精度を高めることができる。フィラーモデル13は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、ポリマー粒子モデル7、7間(即ち、結合鎖モデル8を介さずに隣り合うポリマー粒子モデル7、7間)、及び、フィラー粒子モデル14とポリマー粒子モデル7との間に、引力及び斥力が作用するポテンシャルが定義される(工程S4)。図9は、ポテンシャルの一例を示す概念図である。
先ず、ポリマー粒子モデル7、7間のポテンシャルP3は、下記式(1)のLJポテンシャルULJ(rij)によって定義される。

ここで、各定数及び変数は、Lennard-Jones ポテンシャルのパラメータであり、次のとおりである。
ij:ポリマー粒子モデル7、7間の距離
ε:ポリマー粒子モデル7、7間に定義されるLJポテンシャルの強度
σ:ポリマー粒子モデル7の直径に相当
c:カットオフ距離(=2.5σ)
なお、距離rijは、各ポリマー粒子モデル7、7の中心7c間の距離として定義される。
上記式(1)において、ポテンシャルP3は、ポリマー粒子モデル7、7間の距離rijがカットオフ距離rc未満になる場合のみ、斥力及び引力を生じさせる。なお、ポリマー粒子モデル7、7間の距離rijがカットオフ距離rc以上になった場合は、ポテンシャルP3がゼロとなり、斥力及び引力が生じない。
本実施形態では、炭素粒子モデル7C、7C間、水素粒子モデル7H、7H間、及び、炭素粒子モデル7Cと水素粒子モデル7Hとの間に、それぞれ異なるポテンシャルP3が設定されている。各ポテンシャルP3は、上記式(1)の定数がそれぞれ異なっている。なお、各定数は、例えば、上記論文1に基づいて、適宜設定することができる。ポテンシャルP3は、コンピュータ1に記憶される。
次に、フィラー粒子モデル14とポリマー粒子モデル7との間のポテンシャルP4は、ポリマー粒子モデル7、7間のポテンシャルP3と同様に、上記式(1)のLJポテンシャルULJ(rij)によって定義される。このようなポテンシャルP4により、フィラー粒子モデル14とポリマー粒子モデル7との間に作用する引力及び斥力を定義することができる。ポテンシャルP4の各定数及び各変数の値としては、適宜設定することができるが、上記論文1に基づいて設定されるのが望ましい。
ポテンシャルP4は、第1フィラーモデル13Aの各フィラー粒子モデル14、及び、第2フィラーモデル13Bの各フィラー粒子モデル14に、それぞれ定義されている。本実施形態において、第1フィラーモデル13Aの各フィラー粒子モデル14に定義されるポテンシャルP4、及び、第2フィラーモデル13Bの各フィラー粒子モデル14に定義されるポテンシャルP4の各定数及び各変数は、同一に設定されている。上述したように、第2フィラーモデル13Bは、第1フィラーモデル13Aよりもセル4の中心側(即ち、ポリマー粒子モデル7の近く)に位置している。このため、第2フィラーモデル13Bの各フィラー粒子モデル14に定義されるポテンシャルP4は、第1フィラーモデル13Aの各フィラー粒子モデル14に定義されるポテンシャルP4に比べて、ポリマー粒子モデル7に対して優先的に作用させることができる。
さらに、フィラーモデル13において、第2フィラーモデル13Bのフィラー粒子モデル14が欠損していない部分(以下、単に「非欠損部」ということがある。)17では、フィラーモデル13の半径方向において、第1フィラーモデル13Aのフィラー粒子モデル14のポテンシャルP4と、第2フィラーモデル13Bのフィラー粒子モデル14のポテンシャルP4との双方を、ポリマー粒子モデル7に対して作用させることができる。他方、第2フィラーモデル13Bのフィラー粒子モデル14が欠損している部分(以下、単に「欠損部」ということがある。)18では、半径方向において、第1フィラーモデル13Aのフィラー粒子モデル14のポテンシャルP4のみを、ポリマー粒子モデル7に対して作用させることができる。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、非欠損部17と、欠損部18とで、分子鎖モデル6に対するポテンシャルP4の強度を変化させることができる。ポテンシャルP4は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、図4に示したポリマー粒子モデル7、及び、フィラー粒子モデル14を対象として分子動力学計算を行う(工程S5)。
本実施形態の分子動力学計算では、例えば、セル4について所定の時間、分子鎖モデル6が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻でのポリマー粒子モデル7の動きが、単位時間ステップ毎に追跡される。
分子動力学計算では、セル4において、圧力及び温度が一定、又は体積及び温度が一定に保たれる。これにより、工程S5では、実際の高分子材料の分子運動に近似させて、分子鎖モデル6の人為的な初期配置を精度よく緩和することができる。これにより、高分子材料モデル10が設定される。構造緩和の計算は、例えば、従来と同様に、(株)JSOL社製のソフトマテリアル総合シミュレーター(J−OCTA)に含まれるCOGNACを用いて処理することができる。
上述したように、本実施形態のシミュレーション方法では、図9に示したフィラーモデル13の非欠損部17と欠損部18とにより、分子鎖モデル6とフィラーモデル13との間のポテンシャルP4の強度を変化させることができる。さらに、本実施形態のフィラーモデル13は、現実のフィラーの表面形状に近似させることができる。これにより、本実施形態の工程S5では、フィラーの表面状態(例えば、フィラーの原子に置き換わる官能基の存在)等に起因するフィラーと分子鎖との相互作用の変化を考慮して、分子鎖モデル6を緩和することができる。
また、フィラーモデル13は、第2フィラーモデル13Bの欠損部18に分子鎖モデル6が浸入しても、欠損部のない第1フィラーモデル13Aによって、分子鎖モデル6の浸入を阻止できる。これにより、分子鎖モデル6がフィラーモデル13の内部に浸入するような非現実的な計算を防ぐことができる。
次に、図3に示されるように、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、分子鎖モデル6の初期配置を十分に緩和できたか否かを判断する(工程S6)。緩和の判断基準については、従来と同様に、適宜設定することができる。
工程S6において、分子鎖モデル6の初期配置を十分に緩和できたと判断された場合(工程S6において、「Y」)、次の工程S7が実施される。他方、工程S6において、分子鎖モデル6の初期配置を十分に緩和できていないと判断された場合(工程S6において、「N」)、単位ステップを一つ進めて(工程S8)、工程S5及び工程S6が再度実施される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、分子鎖モデル6の平衡状態(構造が緩和した状態)を確実に計算することができる。単位ステップは、例えば、0.5〜2.0fsに設定される。
次に、図3に示されるように、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、図9に示したフィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さを評価して、高分子成分とフィラーとの相互作用を解析する(工程S7)。
本実施形態の工程S7では、先ず、ポリマー粒子モデル7及びフィラー粒子モデル14を対象に、予め定められた時間(例えば、2〜10ns)分の分子動力学計算が、単位ステップ毎に計算される。各単位ステップにおいて、各分子鎖モデル6のポリマー粒子モデル7の座標が、コンピュータ1に記憶される。
上述したように、本実施形態のシミュレーション方法では、フィラーモデル13の非欠損部17と欠損部18とにより、分子鎖モデル6とフィラーモデル13との間のポテンシャルP4の強度を変化させることができる。これにより、本実施形態の工程S7での分子動力学計算では、フィラーの表面状態(例えば、フィラーの原子に置き換わる官能基の存在)等に起因するフィラーと分子鎖との相互作用の変化を考慮して、分子鎖モデル6とフィラーモデル13との相互作用を、精度良く計算することができる。さらに、本実施形態のフィラーモデル13は、現実のフィラーの表面形状に近似させることができるため、現実のフィラー近傍での分子鎖の分布を精度良く再現することができる。
また、フィラーモデル13は、第2フィラーモデル13Bの欠損部18に分子鎖モデル6が浸入しても、欠損部のない第1フィラーモデル13Aによって、分子鎖モデル6の浸入を防ぐことができる。これにより、分子鎖モデル6がフィラーモデル13の内部に浸入するような非現実的な計算を防ぐことができる。
次に、本実施形態の工程S7では、コンピュータ1に記憶されているポリマー粒子モデル7の座標値に基づいて、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さが評価される。相互作用の強さの評価については、適宜行うことができる。本実施形態では、分子鎖モデル6のポリマー粒子モデル7の平均二乗変位( Mean-square Displacement:MSD)に基づいて、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さが評価される。本実施形態では、ポリマー粒子モデル7のうち、炭素粒子モデル7Cのみを対象に、平均二乗変位が計算される。平均二乗変位は、下記式(2)で定義される。
MSD=<|r(τ)−r(0)|> …(2)
なお、符号は次のとおりである。
r(0):任意の時刻におけるポリマー粒子モデルの座標値
r(τ):任意の時刻から時間τ後におけるポリマー粒子モデルの座標値
<>:アンサンブル平均
上記式(2)において、上記|r(τ)−r(0)|は、ポリマー粒子モデル7が時間幅τで移動した距離である。この距離|r(τ)−r(0)|を二乗した値について、評価対象となるポリマー粒子モデル7に対してアンサンブル平均をとることにより、時間幅τにおける平均二乗変位が求められる。なお、各座標値r(τ)、r(0)は、各ポリマー粒子モデル7の中心7cで特定されるものとする。なお、「τ」は、シミュレーションに用いられる時間のパラメータである。
平均二乗変位は、各ポリマー粒子モデル7が時間幅τで移動した距離の二乗を、評価対象のポリマー粒子モデル7でアンサンブル平均した値である。このような平均二乗変位の値を調べることにより、ポリマー粒子モデル7の運動量を把握することができる。
平均二乗変位が小さい場合、ポリマー粒子モデル7の運動量が小さいことを示している。このため、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用が強いと評価することができる。これにより、工程S7では、高分子成分とフィラーとの相互作用が大きいと推定することができる。
他方、平均二乗変位が大きい場合、ポリマー粒子モデル7の運動量が大きいことを示している。このため、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用が弱いと評価することができる。これにより、工程S7では、高分子成分とフィラーとの相互作用が小さいと推定することができる。
このように、工程S7では、平均二乗変位に基づいて、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さ、及び、高分子成分とフィラーとの相互作用を、容易かつ正確に評価することができる。
上述したように、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さの評価は、フィラーの表面状態(例えば、フィラーの原子に置き換わる官能基の存在)等に起因するフィラーと分子鎖との相互作用の変化を考慮した分子動力学計算の結果に基づいて行われている。このため、工程S7では、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さに基づいて、高分子成分とフィラーとの相互作用を、精度良く解析することができる。高分子成分とフィラーとの相互作用の解析結果は、高分子材料の開発に役立たせることができる。
これまでの実施形態では、図9に示したフィラーモデル13の非欠損部17と欠損部18とにより、フィラーと分子鎖との相互作用の変化が考慮されたが、このような態様に限定されない。例えば、フィラーモデル13の非欠損部17と欠損部18だけでなく、さらに官能基をモデル化した官能基モデルを用いて、フィラーと分子鎖との相互作用の変化が考慮されてもよい。
図10は、本発明の他の実施形態のシミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。図11は、本発明の他の実施形態の第2フィラーモデル13B及び官能基モデル21を示す部分斜視図である。なお、図11では、第1フィラーモデル13Aを省略して表示している。この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態のシミュレーション方法では、分子動力学計算を行う工程S5に先立って、官能基モデル21を、フィラーモデル13に結合させる(工程S9)。官能基モデル21は、官能基を少なくとも一つの官能基粒子モデル22でモデル化したものである。官能基モデル21としては、例えば、アルデヒド(−CHO)をモデル化したアルデヒドモデル21Aと、ケトン(−CO−)をモデル化したケトンモデル21Bとを含んでいる。
上述したように、官能基は、フィラーの表面に、フィラーの原子に置き換わって存在しており、フィラーと分子鎖との相互作用に変化を生じさせている。このため、本実施形態の官能基モデル21は、第2フィラーモデル13Bの欠損部18に配置される。欠損部18に配置された官能基モデル21は、隣接する第2フィラーモデル13Bのフィラー粒子モデル14に連結されている。
官能基粒子モデル22は、分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、ポリマー粒子モデル7は、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。本実施形態の官能基粒子モデル22は、図11に示されるように、炭素粒子モデル22c、水素粒子モデル22h、及び、酸素粒子モデル22oを含んでいる。
官能基粒子モデル22、22間の連結、及び、官能基粒子モデル22とフィラー粒子モデル14との連結は、適宜定義することができる。本実施形態の官能基粒子モデル22、22間の連結、及び、官能基粒子モデル22とフィラー粒子モデル14との連結は、結合鎖モデル23によって連結されている。結合鎖モデル23を介して隣り合う官能基粒子モデル22、22間、官能基粒子モデル22とフィラー粒子モデル14との間には、引力及び斥力が作用するポテンシャルP5が定義される。ポテンシャルP5については、従来と同様に、適宜定義することができる。本実施形態のポテンシャルP5は、上記論文1に基づいて、官能基の構造に応じて設定されている。官能基モデル21は、コンピュータ1に記憶される。
次に、この実施形態のシミュレーション方法では、官能基粒子モデル22とポリマー粒子モデル7との間、及び、官能基粒子モデル22とフィラー粒子モデル14との間に、引力及び斥力が作用するポテンシャルP6が定義される(工程S10)。ポテンシャルP6は、上記式(1)のLJポテンシャルULJ(rij)によって定義される。ポテンシャルP6の各定数及び各変数の値としては、適宜設定することができるが、上記論文1に基づいて設定されるのが望ましい。
この実施形態の分子動力学計算を行う工程S5では、コンピュータ1が、ポリマー粒子モデル7、フィラー粒子モデル14、及び、官能基粒子モデル22を対象として、分子動力学計算を行う(工程S5)。分子動力学計算の詳細については、前実施形態で説明したとおりである。
この実施形態において、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さを評価する工程S7では、先ず、前実施形態と同様に、ポリマー粒子モデル7、フィラー粒子モデル14、及び、官能基粒子モデル22を対象に、分子動力学計算が行われる。そして、ポリマー粒子モデル7、官能基粒子モデル22、及び、フィラー粒子モデル14の距離に基づいて、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さが評価される。相互作用の強さの評価方法については、前実施形態で説明したとおりである。
この実施形態では、フィラーモデル13の非欠損部17と欠損部18とによって変化するポテンシャルP4(図9に示す)だけでなく、官能基粒子モデル22とポリマー粒子モデル7との間のポテンシャルP6(図11に示す)も、分子鎖モデル6に対して作用している。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、フィラーの原子に置き換わる官能基の存在に起因するフィラーと分子鎖との相互作用の変化を考慮することができるため、分子鎖モデル6とフィラーモデル13との相互作用(高分子成分とフィラーとの相互作用)を、より精度良く計算することができる。また、官能基粒子モデル22は、分子動力学計算において、実際の官能基のように運動できるため、フィラーモデル13と分子鎖モデル6との相互作用の強さを評価する工程S7において、高分子成分とフィラーとの相互作用をより精度良く評価することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図3に示した処理手順に従って、仮想空間であるセル内に、分子鎖モデル、及び、第1フィラーモデルと第2フィラーモデルとを含む2層のフィラーモデルが定義された(実施例1)。第1フィラーモデル及び第2フィラーモデルのフィラー粒子モデルは、見かけ上の球面を構成するように配置された。さらに、図10に示した処理手順に従い、実施例1の分子鎖モデル及び2層のフィラーモデルに加えて、官能基モデルがさらに定義された(実施例2及び実施例3)。
比較のために、仮想空間であるセル内に、分子鎖モデル、及び、第1フィラーモデルと第2フィラーモデルとを含む2層のフィラーモデルが定義された(比較例1)。比較例1の第1フィラーモデル及び第2フィラーモデルのフィラー粒子モデルは、見かけ上の平面を構成するように配置された。さらに、比較例1の分子鎖モデル及び2層のフィラーモデルに加えて、官能基モデルがさらに定義された(比較例2及び比較例3)。
さらに、フィラー粒子モデルの欠損を有しない第2フィラーモデルを含む2層のフィラーモデルが定義された(比較例4)。また、仮想空間であるセル内に、分子鎖モデル、及び、第2フィラーモデルのみを含む1層のフィラーモデルが定義された(比較例5、比較例6)。
そして、実施例1〜3、及び、比較例1〜6の分子鎖モデル、フィラーモデル、及び、官能基モデルを対象に、分子動力学計算(5ns)がコンピュータを用いて実施され、フィラーと分子鎖との相互作用の強さが評価された。なお、相互作用の強さは、実施例1の平均二乗変位の値を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど、相互作用が強いことを示している。共通仕様は、次のとおりである。
セル:一辺の各長さL1:3.68〜3.83nm
高分子成分:ポリイソプレン(密度:0.9〜1.0g/cm3
分子鎖モデル:
個数:セル内に配置される全ての分子鎖モデルの密度が、
ポリイソプレンの上記の密度に一致するように調整
フィラー:グラファイト(カーボンブラック)
フィラーモデルの個数:1個
第2フィラーモデル:
フィラー粒子モデルの欠損の割合:21%
官能基:アルデヒド、ケトン
テストの結果を表に示す。
一般に、グラファイトの表面が活性化する(即ち、官能基モデルの個数、又は、欠損の割合が大きくなる)ほど、相互作用(界面接着力)が強くなることが知られている(例えば、「カーボンブラック便覧(第3版)」、カーボンブラック協会、1995年、P216)。実施例1〜3において、官能基モデルの個数が大きくなるほど、フィラーと分子鎖との相互作用が強くなる傾向を示した。従って、実施例1〜3の結果より、本発明のシミュレーション方法は、上記文献「カーボンブラック便覧(第3版)」に記載のように、高分子成分とフィラーとの相互作用を精度良く解析できた。
他方、比較例1〜3は、官能基モデルの個数が大きくなるほど、フィラーと分子鎖との相互作用を強くすることができたが、上記文献「カーボンブラック便覧(第3版)」に記載の傾向と一致しなかった。このため、比較例1〜3は、実施例に比べて、高分子成分とフィラーとの相互作用を、精度良く解析することができなかった。
比較例4は、第2フィラーモデルに欠損部及び官能基モデルが定義されなかったため、高分子成分とフィラーとの相互作用を、精度良く解析することができなかった。第2フィラーモデルのみを含む1層のフィラーモデルが定義された比較例5及び比較例6は、欠損部分に分子鎖モデルが浸入し、分子鎖モデルが欠損部分からセルの面にはみ出した。このため、比較例5及び比較例6は、高分子成分とフィラーとの相互作用を解析することができなかった。
4 セル
6 分子鎖モデル
13 フィラーモデル
13A 第1フィラーモデル
13B 第2フィラーモデル
14 フィラー粒子モデル

Claims (4)

  1. 高分子材料に含まれる高分子成分とフィラーとの相互作用を、コンピュータを用いて解析するための方法であって、
    前記高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルを、前記コンピュータに入力する工程と、
    前記セル内に、複数のポリマー粒子モデルを用いて前記高分子成分の分子鎖をモデル化した分子鎖モデルを定義する工程と、
    前記セル内に、複数のフィラー粒子モデルを用いて前記フィラーをモデル化したフィラーモデルを定義する工程と、
    前記ポリマー粒子モデル間、及び、前記フィラー粒子モデルと前記ポリマー粒子モデルとの間に、引力及び斥力が作用するポテンシャルを定義する工程と、
    前記コンピュータが、前記ポリマー粒子モデル、及び、前記フィラー粒子モデルを対象として分子動力学計算を行う工程とを含み、
    前記フィラーモデルは、第1フィラーモデルと第2フィラーモデルとを含んで定義され、
    前記第1フィラーモデルは、複数の前記フィラー粒子モデルが、見かけ上の球面を構成するように配置されかつ互いに連結されており、
    前記第2フィラーモデルは、前記第1フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルの少なくとも一つが欠損したものであり、
    前記第2フィラーモデルは、前記セル内に定義された前記分子鎖モデルと相互作用するように、前記セルの中心側に位置して前記第1フィラーモデルと重ねられている高分子材料のシミュレーション方法。
  2. 前記第1フィラーモデルの前記フィラー粒子モデル、及び、前記第2フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルは、それらの半径方向で互いに結合されている請求項1記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  3. 前記高分子材料は、前記フィラーに対する前記分子鎖の親和性を高める官能基を含み、
    前記官能基を少なくとも一つの官能基粒子モデルでモデル化した官能基モデルを、前記フィラーモデルの前記フィラー粒子モデルに結合させる工程と、
    前記官能基粒子モデルと前記ポリマー粒子モデルとの間に、前記ポテンシャルを定義する工程とをさらに含み、
    前記分子動力学計算を行う工程は、前記ポリマー粒子モデル、前記フィラー粒子モデル、及び、前記官能基粒子モデルを対象として、前記分子動力学計算を行う請求項1又は2に記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  4. 前記官能基粒子モデルは、前記第2フィラーモデルの前記欠損した部分に配置される請求項3記載の高分子材料のシミュレーション方法。
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