JP2019001950A - 制振部材用ポリアミド樹脂、および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらの成形品 - Google Patents

制振部材用ポリアミド樹脂、および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらの成形品 Download PDF

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淳史 増永
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健 須藤
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Kenichi Utazaki
憲一 歌崎
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Abstract

【課題】
本発明は、特定の末端変性ポリアミド樹脂を含むことにより得られる、溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性に優れた制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらの制振部材を提供する。
【解決手段】
本発明の制振部材は、下記一般式(I)で表される末端構造を1〜20質量%および下記一般式(II)で表される末端構造を0.1〜5質量%含有する末端変性ポリアミド樹脂を含む、(A)制振部材用ポリアミド樹脂である。
−X−(R−O)−R (I)
上記一般式(I)中、mは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。一般式(I)中に含まれるm個のRは同じでも異なってもよい。
−Y−R (II)
上記一般式(II)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す。
【選択図】 なし

Description

本発明は、溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性に優れた、特定の末端構造を有する制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらの成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂成形品は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を有するため、自動車や電気・電子部品用途へ好ましく用いられている。また、前記特性に加え、制振性にも優れるため、ソレノイド、インシュレーター、エンジン周辺部品等の制振性を必要とする制振部材用部品へも適用が拡大している。一般に、制振部材用部品は、軽量化に対する需要の高まりにより、樹脂部品の小型化、モジュール化も進みつつあり、高い制振性を有するとともに、成形加工時の高い溶融流動性が求められている。
従来、制振性を改良する技術として、例えば、ポリアミド樹脂に、ガラス繊維などの無機充填材を配合することにより、マトリックス相となるポリアミド樹脂と分散相となる無機充填材との界面における機械的摩擦に基づく減衰効果を利用することが提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリアミド樹脂に、可塑剤と補強繊維を配合することにより、制振性を改良する技術(例えば、特許文献2)や、半芳香族ポリアミドに特定のブロック共重合体を配合することにより、制振性を改良する技術(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
また、流動性を改良する技術として、特定の末端構造を0.05〜4.5質量%含有し、相対粘度ηrが2.1〜10である末端変性ポリアミド樹脂(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
特開平1−263151号公報 特開平4−89863号公報 特開2003−171550号公報 国際公開第2015/182693号
しかしながら、特許文献1の成形品は、弾性率が高くなることにより逆に制振性が大幅に低下してしまい、溶融流動性も低下する課題があった。また、特許文献2の成形品は、制振性を向上させるものの、剛性が低下する課題があった。特許文献3の成形品は、制振性を向上させるものの未だ十分ではなく、特定のブロック共重合体を多量に配合すると高温剛性や溶融流動性、成形サイクル性が低下する課題があった。特許文献4の成形品は、溶融流動性に優れるものの、ポリアルキレンオキサイド構造を有するモノアミン化合物により、ポリアルキレンオキサイド構造をポリアミド樹脂に導入すると同時にカルボキシル末端基を封鎖している一方、アミノ末端基は全く封鎖していないため、成形加工時などの溶融滞留時にアミノ末端基からの熱分解とポリアルキレンオキサイド構造の熱分解が促進され、ポリアルキレンオキサイド変性による溶融流動性の効果が低下する課題があった。
本発明は、溶融流動性、溶融滞留時の熱安定性(滞留安定性ということもある)、成形サイクル性、制振性および高温剛性に優れた制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらを含む成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、制振部材用ポリアミド樹脂の溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性を達成すべく検討を重ねた結果、ポリアミド樹脂の末端に、特定のポリアルキレンオキサイド構造(I)および特定の炭化水素基構造(II)を特定量含有することにより、上記した課題を解決できることを見出し、本発明に達した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
[1]下記一般式(I)で表される末端構造を1〜20質量%および下記一般式(II)で表される末端構造を0.1〜5質量%含有する末端変性ポリアミド樹脂を含む、(A)制振部材用ポリアミド樹脂。
−X−(R−O)−R (I)
上記一般式(I)中、mは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。一般式(I)中に含まれるm個のRは同じでも異なってもよい。
−Y−R (II)
上記一般式(II)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す。
[2]末端変性ポリアミド樹脂が、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を合計60〜250[mol/t]含有し、かつ前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]と前記一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比((I)/(II))が0.3〜2.5である、前記[1]記載の制振部材用ポリアミド樹脂。
[3]末端変性ポリアミド樹脂が、アミノ末端基とカルボキシル末端基を合計50〜150[mol/t]含有し、かつ前記アミノ末端基の含有量[mol/t]と前記カルボキシル末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)が0.3〜2.5である、前記[1]または[2]のいずれかに記載の制振部材用ポリアミド樹脂。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の(A)制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)可塑剤を0.1〜40重量部含有する制振部材用ポリアミド樹脂組成物。
[5]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の制振部材用ポリアミド樹脂、または前記[4]に記載の制振部材用ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
[6]前記成形品が制振部材である前記[5]に記載の成形品。
本発明によれば、溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性に優れ、成形品とした際に制振性および高温剛性に優れる、特定の末端変性ポリアミド樹脂を含んでなる制振部材用ポリアミド樹脂、および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらを含む成形品を得ることができる。
本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本発明の制振部材用ポリアミド樹脂は、下記一般式(I)で表される末端構造を1〜20質量%および下記一般式(II)で表される末端構造を0.1〜5質量%含有する末端変性ポリアミド樹脂を含む。
−X−(R−O)−R (I)
上記一般式(I)中、mは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。一般式(I)中に含まれるm個のRは同じでも異なってもよい。
−Y−R (II)
上記一般式(II)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す。
次に、本発明の制振部材用ポリアミド樹脂を構成する末端変性ポリアミド樹脂について、具体的に説明する。
本発明において用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、ジアミンおよびジカルボン酸からなる組み合わせ、アミノ酸、ならびにラクタムからなる群より選ばれる少なくとも1種を主たる原料として得ることができるポリアミド樹脂であって、ポリアミド樹脂を構成するポリマーの少なくとも一部が、変性された構造をポリマーの末端基に有するものである。
ポリアミド樹脂の主たる構造単位を構成する化学構造としては、アミノ酸またはラクタムを原料とする場合、炭素数が4〜20の範囲のものであることが好ましい。また、ジアミンとジカルボン酸とを原料とする場合は、ジアミンの炭素数は2〜20の範囲であることが好ましく、ジカルボン酸の炭素数は2〜20の範囲であることが好ましい態様である。これらの原料の代表例としては、次の化合物が挙げられる。
すなわち、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸。ε−カプロラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどのジアミン、およびシュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;これらジカルボン酸のジアルキルエステル、およびジクロリドなどが挙げられる。
本発明においては、末端構造を導入するポリアミド樹脂として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを用いることができる。ポリアミドが2種以上混合されてポリアミド樹脂となっていることも許容される。本発明においては、機械特性および滞留安定性をより向上させるという観点から、前記し例示した原料に由来する構造単位を、変性された構造を除いたポリアミド樹脂を構成する全構造単位100モル%中、80モル%以上有することが好ましく、90モル%以上有することがより好ましく、100モル%有することがさらに好ましい態様である。また、前記し例示した原料に由来する重合構造は、直鎖構造であることが好ましい態様である。
本発明において用いられる末端変性ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、200℃以上であることが好ましい態様である。ここで、末端変性ポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。測定方法は、次のとおりである。末端変性ポリアミド樹脂5〜7mgを秤量する。窒素雰囲気下中、20℃の温度から昇温速度20℃/分でTm+30℃まで昇温する。引き続き、降温速度20℃/分で20℃の温度まで降温する。再度20℃の温度から昇温速度20℃/分でTm+30℃まで昇温したときに現れる吸熱ピークの頂点の温度を、融点(Tm)と定義する。
融点が200℃以上の末端変性ポリアミド樹脂としては、下記のポリアミドおよびこれらの共重合体の末端に、変性された構造を有する末端変性ポリアミド樹脂が挙げられる。耐熱性および靭性などの必要特性に応じて、これらを2種以上用いることができる。
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリメタキシリレンセバカミド(MXD10)、ポリパラキシリレンセバカミド(PXD10)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド5T/6T)、ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドM5T/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド66/6T/6I)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドMACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドMACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドMACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドPACMI)、およびポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)などが挙げられる。
とりわけ好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド9T、およびポリアミド10Tなどの末端に、変性された構造を有するポリアミドを挙げることができる。
本発明において用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、下記一般式(I)で表される末端構造を有する。下記一般式(I)で表される末端構造は、アルキレンオキシド構造を有するため、得られるポリマーの分子運動性が高く、また、アミド基との親和性に優れる。ポリアミド樹脂の末端にある下記一般式(I)で表される構造が、ポリアミド分子鎖の間に介在して、ポリマーの自由体積が増加し、絡み合いが減少する。その結果、ポリマーの分子運動性が大幅に増大して溶融粘度を低減させることができ(すなわち、溶融時の流動性をより向上させることができ)、それにより振動を与えられたときのエネルギーを分子運動が吸収しやすく制振性も向上させることができる。さらに、本発明における末端変性ポリアミド樹脂は分子運動性が高いため、降温結晶化温度を向上させることができ、成形する際の成形サイクル性に優れる。本発明における末端変性ポリアミド樹脂は分子運動性が高いためまた結晶化度を向上させることができ、成形品としたときの高温剛性や制振性をさらに向上させることができる。かかる効果は、ポリアルキレンオキシド構造をポリアミド樹脂の主鎖に主として有する場合に比べて、極めて高い。
−X−(R−O)−R (I)
上記一般式(I)中、mは2〜100(2以上100以下)の範囲を表す。mが小さいほど、溶融粘度の低減効果が不十分となる。mは5以上が好ましく、8以上がより好ましく、16以上がさらに好ましい。一方、mが大きすぎると、耐熱性が不十分となる。mは70以下が好ましく、50以下がより好ましい。なお、ポリアミド樹脂の主たる構造単位に由来する特性を維持する観点から、本発明における末端変性ポリアミド樹脂は上記一般式(I)で表される構造をポリマーの末端のみに有することが好ましい。
上記一般式(I)中、Rは炭素数2〜10(2以上10以下)の2価の炭化水素基を表す。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性の観点から、炭素数2〜6の炭化水素基がより好ましく、炭素数2〜4の炭化水素基がより好ましい。末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、飽和炭化水素基がさらに好ましい。Rとしては、例えば、エチレン基、1,3−トリメチレン基、イソプロピレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基、および1,6−ヘキサメチレン基などが挙げられ、m個のRは、異なる炭素数の炭化水素基の組合せであってもよい。Rは、炭素数2の2価の飽和炭化水素基および炭素数3の2価の飽和炭化水素基から少なくとも構成されることが好ましい。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるエチレン基および自由体積の大きいイソプロピレン基から構成されることがより好ましく、溶融粘度への低減効果をより効果的に発現させることができる。この場合、一般式(I)で表される末端構造はエチレン基を10個以上含有し、かつイソプロピレン基を6個以下含有することが好ましく、所望に近い量の末端構造をポリアミド樹脂に導入することができ、溶融粘度低減効果をより高めることができる。
また、Rは炭素数1〜30(1以上30以下)の1価の炭化水素基を表す。Rの炭素数が少ないほどポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10の炭化水素基がより好ましく用いられる。また、末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rは1価の飽和炭化水素基であることがさらに好ましい態様である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、その中でもポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるメチル基およびエチル基がより好ましい。
上記一般式(I)中、−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。これらのうちポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れる−NH−がより好ましい。
本発明の末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(I)で表される末端構造を、末端変性ポリアミド樹脂を構成するポリマーの少なくとも一方の末端に有する。
本発明において用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(I)で表される末端構造を、末端変性ポリアミド樹脂100質量%中1〜20質量%(1質量%以上20質量%以下)含むことが必要である。一般式(I)で表される末端構造の含有量が1質量%未満であると、末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度の低減効果が十分ではなく、成形品における優れた制振性、成形サイクル性および高温剛性を十分に発現することができない。
一般式(I)で表される末端構造の含有量は、3質量%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは5質量%以上である。一方、一般式(I)で表される末端構造の含有量が20質量%を超えると、滞留安定性が低下し、溶融滞留時に一般式(I)で表される構造の熱分解および酸化劣化による分解物が増加するため、末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を含む成形品における成形サイクル性、制振性および高温剛性が低下する。また、末端変性ポリアミド樹脂の分子量を高く設計できないため、高温剛性がさらに低下する。上記一般式(I)で表される末端構造の含有量は、15質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂中における一般式(I)で表される末端構造の含有量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
また本発明において用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、さらに下記の一般式(II)で表される末端構造を有する。
前述のとおり、一般式(I)で表される末端構造を導入することにより、末端変性ポリアミド樹脂からなる制振部材用ポリアミド樹脂の溶融流動性を向上すると同時に、優れた制振性を発現することができる。しかしながら、溶融加工時などの長期間にわたる高温での滞留時に、一般式(I)で表される末端構造の熱分解が進行し、溶融粘度低減効果が低下しやすい傾向がある。特に、ポリアミド樹脂のアミノ末端基とカルボキシル末端基が、一般式(I)で表される末端構造の熱分解および酸化劣化の触媒として作用するため、本発明者らは、ポリアミド樹脂中のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量を低減することにより、一般式(I)で表される末端構造の熱分解を抑制し、滞留安定性に優れ、制振性効果を維持できることを見出した。
例えば、本発明においては、両方の末端構造が変性されていないポリアミド樹脂のカルボキシル末端基に、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物を反応させることにより、一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を得ることができる。しかしながら、これによって得られる末端変性ポリアミド樹脂は、一方の末端が一般式(I)で表される構造で変性されているものの、他方の末端は変性されておらず、アミノ末端またはカルボキシル末端のままである。そのため、前記アミノ末端基またはカルボキシル末端基が一般式(I)で表される末端構造の熱分解触媒として作用し、一般式(I)で表される構造の熱分解が進行しやすくなる。そこで、例えば、かかるポリアミド樹脂(すなわち、一方の末端のみが一般式(I)で表される構造で変性されているポリアミド樹脂)に、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物をさらに反応させることなどによって、当該他方の末端を変性せしめ、下記一般式(II)で表される末端構造をさらに有するポリアミド樹脂を得ることができる。
ポリアミド樹脂に一般式(I)で表される末端構造のみを導入する場合に比べて、下記一般式(II)で表される末端構造をさらに導入することにより、一般式(I)で表される構造の熱分解および酸化劣化を抑制でき、滞留安定性に優れる。そして、それによって、溶融粘度の上昇を抑制でき、溶融流動性に優れる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の熱分解および酸化劣化を抑制することができるため、優れた成形品の制振性および高温剛性を維持できる。
−Y−R (II)
上記一般式(II)中、Rは炭素数1以上30以下の1価の炭化水素基を表す。Rの炭素数が少ないほどポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。具体的には、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘネイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rは1価の炭素数1以上20以下の飽和炭化水素基またはアリール基であることがさらに好ましい態様である。
前記の一般式(I)におけるXが、−NH−または−N(CH)−の場合、上記の一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記の一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記の一般式(II)におけるYは、−NH−または−N(CH)−を表す。
通常、両方の末端が変性されていないポリアミド樹脂の末端基は、その一方の末端基がアミノ末端基であり、他方の末端基がカルボキシル末端基である。
詳しくは後述するように、末端が変性されていないポリアミド樹脂に後述の一般式(III)で表される末端変性用化合物を反応せしめることによって、一般式(I)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂を得ることができる。
ここで、一般式(III)で表される末端変性用化合物がアミノ末端基を有する場合、かかる末端変性用化合物はポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と反応し、一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−となる。この場合、ポリアミド樹脂の他方の末端であるアミノ末端基を、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物と反応せしめることによって、ポリアミド樹脂の当該他方の末端に、上記の一般式(II)の末端構造を導入することができる。この場合、上記の一般式(II)におけるYは−(C=O)−となる。
一方、一般式(III)で表される末端変性用化合物がカルボキシル末端基を有する場合、かかる末端変性用化合物はポリアミド樹脂のアミノ末端基と反応し、一般式(I)におけるXが−(C=O)−となる。この場合、ポリアミド樹脂の他方の末端であるカルボキシル末端基を、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物と反応せしめることによって、ポリアミド樹脂の当該他方の末端に、上記の一般式(II)の末端構造を導入することができる。この場合、上記の一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−となる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(II)で表される末端構造を、末端変性ポリアミド樹脂100質量%中0.1〜5質量%(0.1質量%以上5質量%以下)含むことが必要である。一般式(II)で表される末端構造の含有量が0.1質量%未満になると、末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される構造の熱分解が進み、溶融流動性向上効果が低下し、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性が低下する。一般式(II)で表される末端構造の含有量は、0.2質量%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.4質量%以上である。
一方、一般式(II)で表される末端構造の含有量が5質量%より多いと、末端変性ポリアミド樹脂の分子量を高く設計できないため、制振性および高温剛性が低下する。一般式(II)で表される末端構造の含有量は、3質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1質量%以下である。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂中における一般式(II)で表される末端構造の含有量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
本発明における末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(I)で表される末端構造、および一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂(すなわち、一方の末端は一般式(I)で表される末端構造で変性されており、他方の末端は一般式(II)で表される末端構造で変性されているポリアミド樹脂)を含有することが好ましい。一般式(I)で表される末端構造のみを有するポリアミド樹脂(例えば、一方の末端は一般式(I)で表される末端構造で変性されているが、他方の末端は変性されていないポリアミド樹脂)、および、一般式(II)で表される末端構造のみを有するポリアミド樹脂(例えば、一方の末端は一般式(II)で表される末端構造で変性されているが、他方の末端は変性されていないポリアミド樹脂)を含有する態様でもよい。
また、本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]と一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の合計が60〜250mol/t(60mol/t以上250mol/t以下)であることが好ましい。一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を、末端変性ポリアミド樹脂1t中に合計60mol以上含むことにより、溶融流動性、滞留安定性を十分に発現するとともに、一般式(I)で表される末端構造の熱分解および酸化劣化を抑制できるため、流動性向上効果を低下させることなく、優れた成形サイクル性、制振性および高温剛性を維持することができる。これらの末端構造の合計含有量は、70mol/t以上であることがより好ましく、さらに好ましくは80mol/t以上である。
一方、末端変性ポリアミド樹脂1t中に、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を合計250mol/t以下含有させることにより、滞留安定性、成形サイクル性に優れ、優れた成形品の制振性および高温剛性を維持できる。これらの末端構造の合計含有量は、225mol/tであることがより好ましく、さらに好ましくは200mol/t以下である。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂中における一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造の合計量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
さらに、本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]に対する一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比((I)/(II))が、0.3〜2.5(0.3以上2.5以下)であることが好ましい態様である。
ポリアミド樹脂は、溶融滞留時に熱分解による分子量低下と同時に、アミノ末端基とカルボキシル末端基との重合反応による分子量増大が進行する。前記のモル比((I)/(II))が1から離れるほど、変性される(封鎖される)アミノ末端基量とカルボキシル末端基量の差が大きくなることを示しており、差が大きくなるほど溶融滞留時の重合反応は進みにくく、熱分解による分子量低下のほうが大きくなるため、溶融滞留時の溶融粘度や分子量低下が大きくなる傾向にある。
また、溶融滞留時に重合反応が進行しにくく末端基(アミノ末端基やカルボキシル末端基)が重合反応に消費されないため、上述したようにこれらの末端基が一般式(I)で表される末端構造の熱分解および酸化劣化の触媒となり、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の熱分解を促進するため、流動性向上効果が低下し、また制振部材における制振性および高温剛性が低下する。上記のモル比((I)/(II))を0.3以上とすることにより、溶融流動性、滞留安定性を向上させることができる。さらに一般式(I)で表される構造の熱分解および酸化劣化を抑制できるため、流動性向上効果を低下させることなく、優れた成形サイクル性、制振性および高温剛性を維持できる。
モル比((I)/(II))は、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上であり、最も好ましくは0.8以上である。一方、モル比((I)/(II))を2.5以下とすることにより、滞留安定性に優れ、かつ一般式(I)で表される構造の熱分解および酸化劣化を抑制できるため、流動性向上効果を低下させることなく、優れた成形サイクル性、制振性および高温剛性を維持できる。モル比((I)/(II))は、より好ましくは2.2以下であり、さらに好ましくは2.0以下である。
ここで、ポリアミド樹脂(A)中の、一般式(I)で表される末端構造および一般式(II)で表される末端構造の含有量は、それぞれH−NMR測定によって求めることができる。測定および計算方法は、次のとおりである。
まず、ポリアミド樹脂の濃度が50mg/mLである重水素化硫酸溶液を調製し、積算回数256回によってH−NMR測定を行う。Rのスペクトル積分値、Rのスペクトル積分値、Rのスペクトル積分値、およびポリアミド樹脂骨格の繰り返し構造単位(ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位)のスペクトル積分値から、各末端構造の含有量(質量%、または、mol/t)、および末端構造(II)の含有量(mol/t)に対する末端構造(I)の含有量(mol/t)の比を算出することができる。なお、末端構造(II)の含有量(mol/t)に対する末端構造(I)の含有量(mol/t)の比((I)/(II))および、後述するカルボキシル末端基の含有量[mol/t]に対するアミノ末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)を、以下「モル比」と称することもある。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂中における上記のモル比((I)/(II))は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合比を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、アミノ末端基とカルボキシル末端基を合計50〜150mol/t(50mol/t以上150mol/t以下)含有することが好ましい態様である。これらの末端基を末端変性ポリアミド樹脂1t中に合計50mol以上含むことにより、溶融滞留時の分子量低下を抑制し、滞留安定性をより向上させることができる。加えて、成形サイクル性、制振性および高温剛性も向上する。これらの末端基の合計含有量は、より好ましくは60mol/t以上であり、さらに好ましくは80mol/t以上である。
一方、末端変性ポリアミド樹脂1t中に、アミノ末端基とカルボキシル末端基を、合計150mol/t以下含有させることにより、溶融滞留時における末端変性ポリアミド樹脂中の上記の一般式(I)で表される構造の熱分解、酸化劣化、および末端変性ポリアミド樹脂の分子量増加をより抑制できるため、滞留安定性に優れ、かつ流動性向上効果を低下させることなく、優れた成形サイクル性、制振性および高温剛性を維持することができる。これらの末端基の合計含有量は135mol/t以下がより好ましく、120mol/t以下がさらに好ましい。
さらに、本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、アミノ末端基の含有量[mol/t]とカルボキシル末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)が、0.5〜2.5(0.5以上2.5以下)であることが好ましい態様である。前述のとおり、アミノ末端基量とカルボキシル末端基量の差が大きくなるほど溶融滞留時の重合は進みにくく、熱分解による分子量低下の方が大きくなるため、溶融滞留時の溶融粘度や分子量低下が大きくなる傾向にある。また、溶融滞留時に重合が進行しにくく末端基量(アミノ末端基やカルボキシル末端基)が重合反応に消費されないため、上述したようにこれらの末端基が一般式(I)の熱分解および酸化劣化の触媒となり、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の熱分解を促進するため、溶融流動性向上効果が低下し、また制振部材における制振性および高温剛性が低下する。
上記のモル比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)を0.5以上とすることにより、滞留安定性を向上させることができるとともに、一般式(I)で表される構造の熱分解および酸化劣化を抑制できる。そして、それによって、流動性向上効果を低下させることなく、優れた成形サイクル性、制振性および高温剛性を維持できる。モル比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)は、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。
一方、モル比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)を2.5以下とすることにより、滞留安定性を向上させることができるとともに、一般式(I)で表される構造の熱分解および酸化劣化を抑制できる。そして、それによって、流動性向上効果を低下させることなく、優れた成形サイクル性、制振性および高温剛性を維持できる。モル比(アミノ末端基含有量/カルボキシル末端基含有量)は、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。
ここで、末端変性ポリアミド樹脂中のアミノ末端基の含有量は、フェノール/エタノール混合溶液(比率:83.5/16.5質量比)に末端変性ポリアミド樹脂を溶解し、チモールブルーを指示薬として使用し、塩酸水溶液で滴定することにより測定することができる。また、末端変性ポリアミド樹脂中のカルボキシル末端基の含有量は、ベンジルアルコールに末端変性ポリアミド樹脂を195℃の温度で溶解し、フェノールフタレインを指示薬として使用し、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定することにより測定することができる。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂のアミノ末端基の含有量とカルボキシル末端基の含有量の合計または比は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合比や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、樹脂濃度が0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が、1.3〜4.0の範囲であることが好ましい。ηrを1.3以上とすることにより、機械物性を向上させることができる。相対粘度(ηr)は、より好ましくは1.4以上であり、さらに好ましくは1.5以上である。一方、ηrを4.0以下とすることにより、溶融流動性と機械物性をバランスよく制御することができる。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂の相対粘度は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(Mw)は、15,000以上であることが好ましい。Mwを15,000以上とすることにより、機械物性をより向上させることができる。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは18,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上である。また、Mwは100,000以下であることが好ましい。Mwを100,000以下とすることにより、溶融流動性をより向上させることができる。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは60,000以下であり、さらに好ましくは50,000以下である。
本発明における重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を用い、カラムとしてShodex HFIP−806M(2本)およびHFIP−LGを用いて、30℃の温度でGPC測定して得られるものである。分子量基準物質として、ポリメチルメタクリレートを使用する。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃で、せん断速度9728sec−1の条件における溶融粘度が、30Pa・s以下であることが好ましい。融点+60℃、せん断速度9728sec−1の条件における溶融粘度を30Pa・s以下とすることにより、成形加工性を向上することができる。この溶融粘度は、より好ましくは20Pa・s以下であり、さらに好ましくは15Pa・s以下であり、さらに好ましくは10Pa・s以下である。一方、取扱い性の観点から、溶融粘度は0.1Pa・s以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、1.0以上が最も好ましい。
この溶融粘度は、末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で、末端変性ポリアミド樹脂を溶融させるため5分間滞留させた後に、せん断速度9728sec−1の条件下で、キャピラリーフローメーターによって測定することができる。本発明においては、溶融粘度を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択し、射出成形品作製時を想定したせん断速度として9728sec−1を選択した。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃の条件下60分間滞留前後における、一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率((滞留後含有量/滞留前含有量)×100)が、80%以上であることが好ましい態様である。一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率を80%以上とすることにより、優れた成形品の制振性および高温剛性を維持できる。一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率は、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。また、成形加工性と機械特性の両立の観点から、一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率は100%以下が好ましい。
この含有量保持率は、末端変性ポリアミド樹脂について、上述したH−NMR測定によって一般式(I)で表される末端構造の含有量を求め、次いで、キャピラリーフローメーター中において、末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で60分間滞留させた後に、同様に一般式(I)で表される末端構造の含有量を求め、溶融滞留前の一般式(I)で表される末端構造の含有量により除して100を乗ずることにより、算出することができる。本発明においては、溶融粘度を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択した。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂における一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃の条件下60分間滞留前後における溶融粘度保持率((滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100)が、80〜120%(80%以上120%以下)であることが好ましい態様である。この溶融粘度保持率を80%以上とすることにより、機械特性をより向上させることができる。溶融粘度保持率は、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。一方、溶融粘度保持率を120%以下とすることにより、摺動性を向上させることができる。溶融粘度保持率は、より好ましくは115%以下であり、さらに好ましくは110%以下である。
この溶融粘度保持率は、末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で、末端変性ポリアミド樹脂を溶融させるため5分間滞留させた後に、せん断速度9728sec−1の条件下で、キャピラリーフローメーターによって測定した溶融粘度(滞留前溶融粘度)と、末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で、末端変性ポリアミド樹脂を60分間滞留させた後に、せん断速度9728sec−1の条件下で、キャピラリーフローメーターによって測定した溶融粘度(滞留後溶融粘度)から、(滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100により算出することができる。
本発明においては、溶融粘度保持率を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択し、射出成形品作製時を想定したせん断速度として9728sec−1を選択した。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度保持率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明の末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃の条件下60分間滞留前後における重量平均分子量保持率((滞留後重量平均分子量/滞留前重量平均分子量)×100)が80〜120%(80%以上120%以下)であることが好ましい。かかる重量平均分子量保持率を80%以上とすることにより、機械特性をより向上することができる。重量平均分子量保持率は85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。一方、重量分子量保持率を120%以下とすることにより、溶融流動性をより向上させ、成形加工性をより向上させることができる。重量平均分子量保持率は115%以下がより好ましく、110%以下がさらに好ましい。
なお、この重量分子量保持率は、末端変性ポリアミド樹脂について、上述したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって重量平均分子量を測定し、次いで、キャピラリーフローメーター中において、末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で60分間滞留させた後に、同様に重量平均分子量を測定し、溶融滞留前の重量平均分子量により除して100を乗ずることにより、算出することができる。本発明においては、溶融粘度を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択した。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂の質量減少率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間により所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、窒素雰囲気下で、融点+60℃の条件下40分間滞留前後における質量減少率が、4%以下であることが好ましい態様である。この質量減少率を4%以下とすることにより、加工時の熱分解によって発生したガス起因による靭性低下をより抑制することができる。質量減少率は、3%以下であることがより好ましい。この質量減少率は、熱質量分析装置(TGA)を用いて測定することができる。
本発明においては、質量減少率を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択した。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂の質量減少率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間により所望の範囲に調整することができる。
次に、本発明において用いられる末端変性ポリアミド樹脂の製造方法について説明する。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば、(1)ポリアミド樹脂と末端変性用化合物、必要に応じてその他の成分を、ポリアミド樹脂の融点以上において溶融混練する方法や、これらを溶液中において混合した後に溶媒を除く方法、および、(2)ポリアミド樹脂の主たる構造単位を構成する原料と末端変性用化合物、必要に応じてその他の成分を添加して反応させる方法(反応時添加方法)などが挙げられる。
本発明の末端変性用化合物は下記一般式(III)および(IV)で表される末端変性用化合物が挙げられる。
H−X’−(R−O)−R (III)
上記の一般式(III)中、mは2〜100の範囲を表す。このmは、前記の一般式(I)におけるmと同様に、5以上が好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは16以上がさらに好ましい。一方、mは70以下が好ましく、より好ましくは50以下である。
は、炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。それぞれ、一般式(I)におけるRおよびRとして例示したものが挙げられる。X’−は、−NH−、−N(CH)−または−O(C=O)−を示す。ポリアミドの末端との反応性に優れている−NH−がより好ましい。
H−Y’−R (IV)
上記の一般式(IV)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記の一般式(II)と同様に、末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rは1価の飽和炭化水素基がさらに好ましい。前記の一般式(III)におけるX’−が−NH−または−N(CH)−の場合、上記の一般式(IV)における−Y’−は、−O(C=O)−を表し、前記の一般式(III)におけるX’−が−O(C=O)−の場合、上記の一般式(IV)におけるY’−は−NH−または−N(CH)−を表す。
本発明における末端変性ポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば、ポリアミド樹脂の原料と前記の一般式(III)で表される末端変性用化合物および前記の一般式(IV)で表される末端変性用化合物を重合時に反応させる方法や、ポリアミド樹脂と末端変性用化合物とを溶融混練する方法などが挙げられる。重合時に反応させる方法としては、例えば、ポリアミド樹脂の原料と末端変性用化合物をあらかじめ混合した後、加熱して縮合を進行させる方法や、主成分となる原料の重合途中に末端変性用化合物を添加して結合させる方法などが挙げられる。
一般式(III)で表される末端変性用化合物の数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。数平均分子量を500以上とすることにより、溶融粘度をより低減し、接着性をより向上させることができる。数平均分子量は、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは900以上である。一方、数平均分子量を10000以下とすることにより、ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性をより向上させることができ、機械特性をより向上させることができる。数平均分子量は、より好ましくは5000以下であり、さらに好ましくは2500以下であり、さらに好ましくは1500以下である。
一般式(III)で表される末端変性用化合物の具体的な例としては、メトキシポリ(エチレングリコール)アミン、メトキシポリ(トリメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(トリメチレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(プロピレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)カルボン酸、およびメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)カルボン酸などが挙げられる。2種類のポリアルキレングリコールが含まれる場合、ブロック重合構造をとることができ、ランダム共重合構造をとることもできる。また、上記した末端変性用化合物を、2種以上用いることもできる。
一般式(IV)で表される末端変性用化合物の具体的な例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、セロチン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、ベンジルアミン、およびβ−フェニルエチルアミンなどの芳香族モノアミンなどが挙げられる。上記した末端変性用化合物を、2種以上用いることもできる。
本発明の末端変性ポリアミド樹脂が、前記の一般式(I)で表される末端構造および前記の一般式(II)で表される末端構造を有する、末端変性ポリアミド樹脂を得るための方法の例を説明する。先に(1)および(2)の方法を先述したが、以下により詳細に説明する。
(1)ポリアミド樹脂と末端変性用化合物とを溶融混練することにより、末端変性ポリアミド樹脂を製造する場合には、溶融混練温度をポリアミド樹脂の融点(Tm)よりも10℃以上40℃以下高い温度で反応させることが好ましい態様である。例えば、押出機を用いて溶融混練する場合、押出機のシリンダー温度を前記範囲とすることが好ましい。溶融混練温度をこの範囲にすることにより、末端変性用化合物の揮発とポリアミド樹脂の分解を抑制しつつ、ポリアミド樹脂の末端と末端変性用化合物とを効率的に結合させることができる。ポリアミド樹脂としては、前述のポリアミド樹脂が例示される。
(2)ポリアミド樹脂の原料と末端変性用化合物とを重合時に反応させる方法により末端変性ポリアミド樹脂を製造する場合には、ポリアミド樹脂の融点以上で反応させる溶融重合法、ポリアミド樹脂の融点未満で反応させる固相重合法のいずれを用いてもよい。ポリアミド樹脂を与える原料としては、前述のアミノ酸、ラクタムおよび「ジアミンとジカルボン酸との混合物」が例示される。
具体的には、末端変性ポリアミド樹脂の原料を反応容器に仕込み、窒素置換して、加熱をすることにより反応させることが好ましい。この際の反応時間が短すぎると、分子量が上がらないだけでなく、オリゴマー成分が増加することから、機械的物性が低下することがある。そのため、反応時間に占める窒素フローの時間は15分以上であることが好ましい。一方、反応時間が長すぎると、熱分解が進行し着色などが生じるため、反応時間に占める窒素フローの時間は8時間以下であることが好ましい。
ポリアミド樹脂の原料と末端変性用化合物とを重合時に反応させる方法により末端変性ポリアミド樹脂を製造する際、必要に応じて、重合促進剤を添加することができる。重合促進剤としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸およびこれらのアルカリ金属塩、およびアルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物などが好ましく用いられ、特に亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムが好適に用いられる。重合促進剤は、ポリアミド樹脂の原料(末端変性用化合物を除く)100質量部に対して、0.001〜1質量部の範囲で使用することが好ましい。重合促進剤の添加量を0.001〜1質量部とすることにより、機械特性と溶融流動性のバランスにより優れる末端変性ポリアミド樹脂を得ることができる。
本発明で用いられる(A)制振部材用ポリアミド樹脂は、前記末端変性ポリアミド樹脂を含む。すなわち、制振部材用ポリアミド樹脂(A)は、末端変性ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(例えば、両方の末端が変性されていないポリアミド樹脂)を2種以上含んでも良い。末端変性ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂としては特に限定されず、融点が200℃以上のポリアミド樹脂として例示したポリアミド樹脂を用いることができる。
そして、本発明においては、前記(A)制振部材用ポリアミド樹脂に、(B)可塑剤を配合して、制振部材用ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
(B)可塑剤は、(A)制振部材用ポリアミド樹脂の制振性を向上させるものであれば特に制限はなく、任意に選択することができる。通常、可塑剤を添加することでポリアミド樹脂を柔軟化して制振性を向上させることができるが、剛性が大きく低下する課題があった。本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂に、(B)可塑剤を配合した場合、剛性を大きく低下させることなく、制振性をより向上させることができる。原因は定かではないが、運動性の高い末端変性ポリアミド樹脂の分子鎖に、可塑剤分子が均一に入り込むことで制振性の向上効果がより増加するのではないかと考える。また、運動性の高い末端変性ポリアミド樹脂は可塑剤を含有してもなお、降温結晶化温度を高く保つことができ、高結晶性、高結晶化度に起因して剛性の低下を抑制できるのではないかと考える。
そのような(B)可塑剤としては、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、スルホンアミド系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1 , 3 − ブタンジオール、1 , 4 − ブタンジオール、1 , 6 − ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n − オクチル− n − デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ− 2 − エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ− 2 − エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
スルホンアミド系可塑剤の具体例としては、芳香族スルホンアミド系可塑剤が挙げられ、具体的には、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、o,p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、N−メチル−p−トルエンスルホンアミドが挙げられる。好ましくは、N−ブチルベンゼンスルホンアミドである。
リン酸エステル系可塑剤の具体例としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ− 2 − エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル− 2 − エチルヘキシル、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステルや脂肪族や芳香族の縮合リン酸エステルを挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ( エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド) ブロックおよび/ 又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールA とエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ− 2 − エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、ポリカルボン酸ビニルエステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類などを挙げることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、(B)可塑剤の含有量は、(A)制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して0.1〜40重量部である。(B)可塑剤の含有量が0.1重量部以上であれば、得られる成形品の制振性を向上できる。(B)可塑剤の含有量は、(A)制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、1重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましい。一方、(B)可塑剤の含有量が40重量部以下であれば、滞留安定性、成形サイクル性の低下を抑制し、得られる成形品の高温剛性が十分に得られる。(B)可塑剤の含有量は、(A)制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂を含む(A)制振部材用ポリアミド樹脂に、他種ポリマー、靭性改良剤、耐衝撃改良剤および各種添加剤などを配合して、末端変性ポリアミド樹脂を含有する制振部材用ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
他種ポリマーとしては、例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどのエラストマーや、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、およびポリスチレンなどを挙げることができる。これらを2種以上含有させることもできる。
靭性改良剤としては、ポリアミド系エラストマー、およびポリエステル系エラストマーなどの靭性改良剤が好ましく用いられる。
耐衝撃性改良剤の具体例としては、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、およびエチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、無機繊維(ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等)、有機繊維(LCP繊維、アラミド繊維、炭素繊維等)、無機粒子(アルミナ、タルク、シリカ等)などが挙げられる。これらを2種以上配合することができる。
本発明の制振部材用ポリアミド樹脂に、他種ポリマー、靭性改良剤、耐衝撃改良剤および各種添加剤などを配合した組成物の製造方法は、溶融混練する方法が好ましい。その際に、溶融混練装置の温度設定としては、用いられるポリアミド樹脂の融点(Tm)+30℃以上、またはガラス転移温度(Tg)+100℃以上で行うことが好ましい。
(A)制振部材用ポリアミド樹脂と(B)可塑剤、および他種ポリマー、靭性改良剤、耐衝撃改良剤、各種添加剤などを供給する溶融混練装置や原料供給位置については、(A)制振部材用ポリアミド樹脂と(B)可塑剤、および他種ポリマー、靭性改良剤、耐衝撃改良剤、各種添加剤などをあらかじめドライブレンドし、主原料供給口から供給することが好ましい。供給する各種添加剤がガラス繊維または炭素繊維の場合、特に制限はないが、供給口が主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置であれば、繊維長のコントロールが容易となり好ましい態様である。その他添加剤においては、(A)制振部材用ポリアミド樹脂とあらかじめドライブレンドして主原料供給口から供給することが好ましい。
ポリアミド樹脂組成物を製造する溶融混練装置としては、(A)制振部材用ポリアミド樹脂と(B)可塑剤、および他種ポリマー、靭性改良剤、耐衝撃改良剤、各種添加剤などとを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、および連続式ニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機およびニーダー、スクリューが2本の二軸押出機およびニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機およびニーダー、さらに、押出機およびニーダーが1台の押出機、押出機及びニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機およびニーダー等が挙げられる。
スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、およびニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はなく、例えば、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
かくして得られる末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物は、公知の方法で成形することができ、制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物からシート、フィルム、繊維などの各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられる。
本発明の実施形態の制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらを成形してなる成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態の制振部材用ポリアミド樹脂および制振部材用ポリアミド樹脂組成物、ならびにそれらを成形してなる成形品は、とりわけ、溶融流動性、滞留安定性、ハイサイクル性、制振性および高温剛性が要求される自動車部品、電気・電子部品、建築用部品、産業用機器部品等に使用される制振部材に特に好ましく用いられる。振動が与えられる制振部材として具体的には、オイルパン、シリンダーヘッドカバー、フロントカバー、タイミングベルトカバー、ロッカーカバーなどの自動車エンジン周辺部品、ドア、ルーフ、フロア、ダッシュボード、インストルメントパネルなどの自動車内装部品、スターターモーター、オルタネーター、バッテリー、バッテリーケーブル、バッテリーチャージャー、ジャンクションボックス、駆動モーター、ジェネレーター、パワーECU、パワーコントロールシステム部品、バッテリーケース、バッテリーECU、キャパシター、充電装置、ブレーキピストン、シャーシなどの自動車モーター周辺部品、コンバーター、トランス、パワー変流器、レギュレーターなどの変換器、ソレノイドコイル、電磁気弁用コイルなどのコイル、液晶バックライトボビン、コイルボビン、フラットボビン、トランスボビン、磁気ヘッドボビン、ソレノイドボビンなどのボビン、タービンベイン、タービンホイールなどのタービン、ディストリビューター、イグニッションコイルなどの点火装置、モーターケース、モーターブラシホルダー、モーター端子台、モーター用冷却ファン、エンドベル、軸受、ブラシ、ブラシアーム、ステップモーターローター、インシュレーター、多極ロッド、発電機、電動機、電動コンプレッサー、ジャンクションブロックなどの電気機器モーター周辺部品、ジャック、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、チューナー、磁気ヘッドベース、半導体、FDDキャリッジ、FDDシャーシなどの電子機器モーター周辺部品、スピーカー、テレビ、ヘッドフォン、ラジカセ、オーディオコンポ、マイクなどの音響機器筐体部品、電動ドリル、電動ドライバー、コンピューター、プロジェクター、サーバー、冷却ファン付電気製品、洗濯機、衣類乾燥機、エアコン室内機、ミシン、食器乾燥機、ファンヒーター、複合機、プリンター、スキャナー、ハードディスクドライブ、ビデオカメラなどの電動モーター付電気製品、電動歯ブラシ、電動シェイバー、マッサージ機などの加振源付電気製品、冷蔵庫、自動販売機、エアコン室外機、除湿機などのコンプレッサー付電気製品、壁、天井、床、間仕切りボード、防音壁、シャッター、カーテンレール、配管ダクト、階段、ドアなどの建築部材、シューター、エレベーター、エスカレーター、コンベアー、トラクター、ブルドーザー、草駆り機などの産業用部材などが挙げられる。
次に、実施例を示し、本発明の末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂からなる制振部材について、更に具体的に説明する。各実施例および各比較例における特性評価は、下記の方法にしたがって行った。
[ポリマー原料]
実施例および比較例において、ポリマー原料には次に示すものを用いた。
・ε−カプロラクタム:和光純薬工業(株)製 和光特級。
・ヘキサメチレンジアミン:和光純薬工業(株)製 和光一級。
・アジピン酸:和光純薬工業(株)製 和光特級。
[ポリアミド樹脂(A−39):ナイロン9T/M8T=80/20]
1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である9T塩と、2−メチル−1,8−オクタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩であるM8T塩を、重量比が80:20となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%の1,9−ノナンジアミンを過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.59、融点290℃の末端変性されていないナイロン9T/M8T=80/20を得た。
[一般式(III)で表される末端変性用化合物]
・下記の構造式で表されるメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) M1000 (数平均分子量Mn1000)。
・下記の構造式で表されるメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) M2070 (数平均分子量Mn2000)。
・下記の構造式で表されるメトキシエチレングリコールポリ(プロピレングリコール)アミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) M600 (数平均分子量Mn600)。
[一般式(III)とは構造の異なる末端変性用化合物]
・下記の構造式で表されるポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)ジアミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) ED900 (数平均分子量Mn900)。
[一般式(IV)で表される末端変性用化合物]
・安息香酸:和光純薬工業(株)製 試薬特級。
[(B)可塑剤]
<B−1>BBSA(N−ブチルベンゼンスルホンアミド):大八化学工業(株)製“BM−4“。
[(C)添加剤]
<C−1>ガラス繊維:セントラル硝子(株)製 “ECS03−350”
<C−2>炭素繊維:東レ(株) “トレカ”(登録商標)カットファイバーTV14−006”
<C−3>スチレンとイソプレンのブロック共重合体の水素添加物:(株)クラレ製 “ハイブラー(登録商標)7125”
<C−4>スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物:(株)クラレ製 “セプトン(登録商標)2006”。
[相対粘度(ηr)]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂の、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液について、25℃の温度でオストワルド式粘度計を用いて相対粘度を測定した。
[分子量]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂2.5mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、得られた溶液を0.45μmのフィルターでろ過した。得られた溶液を用いて、GPC測定により数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)(溶融滞留前重量平均分子量)を測定した。測定条件を、次に示す。
・ポンプ:e−Alliance GPC system(Waters製)
・検出器:示差屈折率計 Waters 2414(Waters製)
カラム:Shodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LG
・溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
・流速:1ml/分
・試料注入量:0.1ml
・温度:30℃
・分子量基準物質:ポリメチルメタクリレート。
[アミノ末端基量[NH]]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂0.5gを精秤し、フェノール/エタノール混合溶液(比率:83.5/16.5質量比)25mlを加えて、常温で溶解した後、チモールブルーを指示薬として、0.02規定の塩酸で滴定してアミノ末端基量(mol/t)を求めた。
[カルボキシル末端基量[COOH]]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂0.5gを精秤し、ベンジルアルコール20mlを加えて195℃の温度で溶解した後、フェノールフタレインを指示薬として、0.02規定の水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定してカルボキシル末端基量(mol/t)を求めた。
[末端構造の同定、ならびに一般式(I)の末端構造の含有量および一般式(II)の末端構造の含有量の定量]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂について、日本電子(株)製FT−NMR JNM−AL400を用いてH−NMR測定を実施した。まず、測定溶媒として重水素化硫酸を用いて、試料濃度50mg/mLの溶液を調製した。積算回数256回にて、ポリアミド樹脂のH−NMR測定を実施した。一般式(I)で表される末端構造におけるRおよびR由来部分のピーク、一般式(II)で表される末端構造におけるR部分由来のピークおよびポリアミド樹脂骨格の繰り返し構造単位由来のピークを同定した。各ピークの積分強度を算出し、算出した積分強度と、それぞれの構造単位中の水素原子数とから、末端変性ポリアミド樹脂における一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t、質量%)(滞留前含有量)、および一般式(II)で表される末端構造の含有量[II](mol/t、質量%)をそれぞれ算出した。
[熱特性]
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSC Q20)を用いて、実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂5〜7mgを秤量し、窒素雰囲気下、20℃の温度から昇温速度20℃/分で融点+30℃の温度まで昇温した。引き続き、降温速度20℃/分で20℃の温度まで降温する。再度20℃の温度から昇温速度20℃/分でTm+30℃まで昇温したときに現れる吸熱ピークの頂点の温度を、融点(Tm)と定義する。
[溶融粘度]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。溶融粘度の測定装置として、キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスによって、融点+60℃、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度(滞留前溶融粘度)を測定した。ただし、末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を溶融させるため、5分間滞留させた後に測定を行った。この溶融粘度の値が小さいほど、高い流動性を有することを示す。
[溶融粘度保持率]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスによって、融点+60℃で60分間溶融滞留後、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度(滞留後溶融粘度)を測定した。前述の方法により測定した溶融粘度(滞留前溶融粘度)と溶融粘度(滞留後溶融粘度)から、(滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100により溶融粘度保持率[%]を算出した。この溶融粘度保持率の値が100%に近いほど、滞留安定性に優れる。
[重量平均分子量保持率]
各実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。キャピラリーフローメーター((株)0東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、融点+60℃で60分間溶融滞留を行った。溶融滞留後の末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂について、前述の分子量測定方法と同様のGPC測定により重量平均分子量(Mw)(滞留後重量平均分子量)を測定した。前述の方法により測定した重量平均分子量(溶融滞留前重量平均分子量)と重量平均分子量(滞留後重量平均分子量)から、(滞留後重量平均分子量/滞留前重量平均分子量)×100により重量平均分子量保持率[%]を算出した。この重量平均分子量保持率が100%に近いほど、滞留安定性に優れる。
[含有量保持率]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスによって、融点+60℃の温度で60分間溶融滞留を行った。溶融滞留後の末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂について、前述の末端構造含有量測定方法と同様のH−NMR測定により、末端変性ポリアミド樹脂における一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t)(滞留後含有量)を算出した。前述の方法により測定した一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t)(滞留前含有量)と、一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t)(滞留後含有量)から、(滞留後含有量/滞留前含有量)×100により、含有量保持率を算出した。
[質量減少率]
各実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。任意部分を20mg切り出し、熱重量分析装置(パーキンエルマー社製、TGA7)を用い、窒素ガス雰囲気下、末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で40分間保持し、熱処理前後の質量減少率[%]を測定した。
[成形サイクル性]
各実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度は、末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂の融点(Tm)+30℃とし、金型温度は80℃、スクリュー回転数:150rpm、射出速度:50mm/秒、冷却時間20秒の条件で、80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)を、射出時間を変化させて成形し、成形品の重量変化がなくなる射出時間からゲートシール時間を確認した。このゲートシール時間が短いほど、成形サイクル性に優れる。
[制振性]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度は、末端変性ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂の融点(Tm)+20℃とし、金型温度は80℃の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片を厚さ3.2mm、幅12.7mm、長さ165mmの棒状試験片に切削加工し、その試験片の中央を損失係数測定装置(小野測器社製CF5200タイプ)の加振器に固定し、23℃、50%RHの雰囲気下、加振器より振動を与え、加速度応答の信号をフーリエ変換して、周波数応答関数を算出し、共振周波数と損失係数を求めた。損失係数ηは、共振周波数fを中心として、その前後において振幅が、共振振幅の1/√2倍になる2点の振動周波数差Δfを求め、下記(5)式より算出した。ηが大きいほど制振性に優れることを示す。5回測定を行い、その平均値を算出して損失係数とした。
η=Δf/f (5)
[高温剛性]
実施例および比較例により得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+20℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、厚さ1/4インチの棒状試験片を作製した。この試験片について、ASTM D790に従い、曲げ試験機テンシロンRTA−1T(オリエンテック社製)を用いて、80℃に温調された恒温槽内で、クロスヘッド速度3mm/minの条件で曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。3回の測定を行い、その平均値を算出して曲げ弾性率とした。
(実施例1)
ε−カプロラクタム20g、イオン交換水20g、“JEFFAMINE”(登録商標)M1000 1.6g、および安息香酸0.14gを反応容器に仕込み密閉し、窒素置換した。反応容器外周にあるヒーターの設定温度を290℃とし、加熱を開始した。反応容器内圧力が1.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら反応容器内圧力を1.0MPaに保持し、反応容器内温度が240℃になるまで昇温した。反応容器内温度が240℃に到達した後、ヒーターの設定温度を270℃に変更して、1時間かけて常圧となるように反応容器内圧力を調節した(常圧到達時の反応容器内温度:243℃)。続けて、反応容器内に窒素を流しながら(窒素フロー)240分間保持して末端変性ポリアミド6樹脂を得た(最高到達温度:253℃)。続いて、得られた末端変性ポリアミド6樹脂を、イオン交換水でソックスレー抽出を行い、未反応の末端変性用化合物を除去し、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した。このようにして得られた末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂<A−1>の相対粘度は1.81、重量平均分子量は3.0万、融点(Tm)は220℃、溶融粘度は5.5Pa・sであった。また、得られた末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂<A−1>は以下の化学式5にて示される構造と以下の化学式6で示される構造を末端に有するものであった。その他の末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂<A−1>の特性をおよび制振部材としての特性を表に示す。
(実施例2〜9、14〜26、比較例1)
ポリマー原料である“JEFFAMINE”(登録商標)M1000を表に示す組成に変更し、または、安息香酸を表に示す組成に変更し、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂は<A−1>と同様の構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(比較例2)
ポリマー原料である安息香酸を表に示す組成に変更し、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂は前記化学式5にて示される構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(実施例10〜12)
ポリマー原料として“JEFFAMINE”(登録商標) M2070を用い、表に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂は以下の化学式7にて示される構造と以下の化学式6で示される構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(実施例13)
ポリマー原料として “JEFFAMINE”(登録商標) M600を用い、表に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして末端変性ポリアミド6樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂は以下の化学式8にて示される構造と以下の化学式6で示される構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(比較例3〜5)
ポリマー原料をε−カプロラクタムとイオン交換水のみに変更し、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。末端変性されていないポリアミド樹脂6が得られた。
(比較例6、7)
ポリマー原料である“JEFFAMINE”(登録商標)M1000を表に示す組成に変更し、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、比較例2と同様にして末端変性ポリアミド6樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂は前記化学式5にて示される構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(比較例8)
ポリマー原料として“JEFFAMINE”(登録商標)M1000を“JEFFAMINE”(登録商標) ED900に変更し、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、比較例2と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。また、得られたポリアミド6樹脂は以下の化学式9にて示される構造を主鎖に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(比較例9)
ポリマー原料として“JEFFAMINE”(登録商標)M1000を“JEFFAMINE”(登録商標) ED900に変更し、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして末端変性ポリアミド6樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂は前記化学式9にて示される構造を主鎖に有し、前記化学式6で示される構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(実施例27,31、比較例10,19)
設定温度融点+30℃、スクリュー回転数200rpmに設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、表に示す制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、表に示す割合で(B)可塑剤をドライブレンドした後、主フィーダーより供給後、次いで前記制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、表に示す割合で(C)添加剤を主原料供給口と吐出口の中間に位置する供給口よりサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、制振部材用ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た。得られた制振部材用ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(実施例28,29,32,33、比較例11〜14,17,18,20,21)
設定温度融点+30℃、スクリュー回転数200rpmに設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、表に示す制振部材用ポリアミド樹脂100重量部を主フィーダーより供給後、次いで前記制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、表に示す割合で(C)添加剤を主原料供給口と吐出口の中間に位置する供給口よりサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、制振部材用ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た。得られた制振部材用ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した後、制振部材としての評価を行った。結果を表に示す。
(実施例30)
ヘキサメチレンジアミン8.85g、アジピン酸11.15g、イオン交換水20g、“JEFFAMINE”M1000 1.0g、安息香酸0.14gを反応容器に仕込み密閉し、窒素置換した。反応容器外周にあるヒーターの設定温度を290℃とし、加熱を開始した。缶内圧力が1.75MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力1.75MPaに保持し、缶内温度が260℃になるまで昇温した。缶内温度が260℃に到達した後、ヒーターの設定温度を290℃に変更し、1時間かけて常圧となるよう缶内圧力を調節した(常圧到達時の缶内温度:270℃)。続けて、缶内に窒素を流しながら(窒素フロー)240分間保持して末端変性ポリアミド66樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を得た(最高到達温度:275℃)。ここで、得られたポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂は前記化学式5にて示される構造と前記化学式6にて示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド66樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂であった。
(比較例15)
ポリマー原料である安息香酸を使用せず、かつ反応容器内圧力を常圧とした後、反応容器内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表7に示す時間に変更したこと以外は、実施例30と同様にして末端変性ポリアミド66樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂を得た。また、得られた末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂は前記化学式5にて示される構造を末端に有するものであった。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
(比較例16)
ポリマー原料である“JEFFAMINE”(登録商標)M1000および安息香酸を使用しないこと以外は、実施例30と同様にしてポリアミド66樹脂を得た。その後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。末端変性されていないポリアミド樹脂66が得られた。
(比較例22)
設定温度融点+30℃、スクリュー回転数200rpmに設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、表に示す制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、表に示す割合で(C−3)および(C−4)の添加剤をドライブレンドした後、主フィーダーより供給後、次いで前記制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対して、表に示す割合で(C−1)の添加剤を主原料供給口と吐出口の中間に位置する供給口よりサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、制振部材用ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た。得られた制振部材用ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した後、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
実施例1〜26と比較例1〜9の比較、実施例30と比較例15,16の比較から、一般式(I)および一般式(II)で表される末端構造を特定量含有する末端変性ポリアミド樹脂を含むことにより、制振部材用ポリアミド樹脂は、流動性、滞留安定性、成形サイクル性に優れ、それらを成形してなる制振部材は、優れた制振性と高温剛性を両立できることがわかる。
実施例31と比較例19の比較、実施例32と比較例17、20の比較、実施例33と比較例18、21の比較から、一般式(I)および一般式(II)で表される末端構造を特定量含有する末端変性ポリアミド樹脂を含む制振部材用ポリアミド樹脂組成物を成形してなる制振部材は、優れた制振性と高温剛性を両立できることがわかる。
実施例9と実施例14、実施例2、23、25と実施例15の比較から、一般式(I)で表される末端構造の含有量[I]と一般式(II)で表される末端構造の含有量[II]の合計量([I]+[II])を250mol/t以下とすることにより、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。一方、実施例3〜5、8、24、26と実施例16の比較から、末端構造の合計量([I]+[II])を60mol/t以上とすることにより、溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。
また、実施例2、23、25と実施例17、19、実施例3〜5、8、24、26と実施例18の比較から、モル比([I]/[II])を2.5以下とすることにより、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。一方、実施例2、23、25と実施例21、実施例3〜5、8、24、26と実施例20の比較から、モル比([I]/[II])を0.3以上とすることにより、溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。
実施例7と実施例22の比較から、アミノ末端基量[NH]とカルボキシル末端基量[COOH]の合計量を50mol/t以上とすることにより、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。一方、実施例2と実施例23、25の比較から、アミノ末端基量[NH]とカルボキシル末端基量[COOH]の合計量を150mol/t以下とすることにより、溶融流動性、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。
実施例3〜5、8と実施例24の比較から、モル比[NH]/[COOH]を0.5以上とすることにより、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。一方、実施例3〜5、8と実施例26の比較から、モル比[NH]/[COOH]を2.5以下とすることにより、滞留安定性、成形サイクル性、制振性および高温剛性をより向上できることがわかる。
また、実施例27と比較例10の比較、および実施例31と比較例19の比較から、本発明の末端変性ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂に可塑剤を配合することにより、高温剛性の低下を抑制しながら、制振性をより向上できることが分かる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I)で表される末端構造を1〜20質量%および下記一般式(II)で表される末端構造を0.1〜5質量%含有する末端変性ポリアミド樹脂を含む、(A)制振部材用ポリアミド樹脂。
    −X−(R−O)−R (I)
    上記一般式(I)中、mは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。一般式(I)中に含まれるm個のRは同じでも異なってもよい。
    −Y−R (II)
    上記一般式(II)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す。
  2. 末端変性ポリアミド樹脂が、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を合計60〜250[mol/t]含有し、かつ前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]と前記一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比((I)/(II))が0.3〜2.5である、請求項1記載の制振部材用ポリアミド樹脂。
  3. 末端変性ポリアミド樹脂が、アミノ末端基とカルボキシル末端基を合計50〜150[mol/t]含有し、かつ前記アミノ末端基の含有量[mol/t]と前記カルボキシル末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)が0.5〜2.5である、請求項1または2のいずれかに記載の制振部材用ポリアミド樹脂。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の(A)制振部材用ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)可塑剤を0.1〜40重量部含有する制振部材用ポリアミド樹脂組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の制振部材用ポリアミド樹脂、または請求項4に記載の制振部材用ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
  6. 前記成形品が制振部材である請求項5に記載の成形品。
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