JP2019001693A - 棒状種結晶保持具 - Google Patents
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Abstract
【課題】棒状種結晶への加工時のダメージが小さく、保持具から種結晶が落下し難く、育成された単結晶にクラックが入り難い棒状種結晶保持具を提供すること。【解決手段】保持具本体1が、基端側に雄螺子部がそれぞれ設けられた第一半筒体10a並びに第二半筒体10bと、雄螺子部と螺合する雌螺子部が設けられ上記半筒体を一体化する固定具20とで構成されると共に、一体化された第一と第二半筒体の先端側内壁面に4本の凸條12が設けられ、棒状種結晶外周面の先端側から基端側近傍までの領域で上記凸條形成部に対応した部位に切欠き部が形成されており、種結晶における切欠き部終端側の段差面が第一と第二半筒体の内壁面に設けられた凸條の基端側端面に係合して棒状種結晶が保持されるようになっていることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、坩堝内の原料融液に棒状種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながらタンタル酸リチウム(LiTaO3;以下、LTと略称する)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3;以下、LNと略称する)等の単結晶を育成する回転引き上げ法に係り、特に、加工時における棒状種結晶へのダメージが小さく、かつ、単結晶育成中に保持具から棒状種結晶が落下し難いと共に、育成された単結晶を保持具から取り出すときに単結晶にクラックが入り難い棒状種結晶保持具の改良に関するものである。
LTやLN等の単結晶は、主に移動体通信機器において電気信号ノイズを除去する表面弾性波素子(SAWフィルター)の材料として用いられている。
また、LT、LN等の単結晶は、産業的には主にチョクラルスキー法(以下、Cz法と略称する)等の回転引き上げ法により育成されており、この種の回転引き上げ法は、例えば図10に示す単結晶育成装置を用いて行われている。
この育成装置aは、外側が保温材bにより覆われ内部に単結晶用原料cが投入される坩堝dと、保温材bの外側に配置され坩堝d内の単結晶用原料cを加熱する高周波加熱コイルeと、先端に棒状種結晶fが保持される棒状種結晶保持具gと、棒状種結晶保持具gが連結され該棒状種結晶保持具gを回転させながら昇降する引き上げ軸(図示せず)とでその主要部が構成されており、これ等構成部材は図示外の密封された圧力容器(育成炉)内に組込まれている。
そして、この育成装置aを用いてLT等の単結晶を育成するには、まず、坩堝d内に単結晶用原料cを投入し充填した後、高周波加熱コイルeに通電して上記坩堝dを発熱させ、坩堝d内の単結晶用原料cをその融点以上の温度に加熱して融解させ、かつ、引き上げ軸を降下させて融解した原料融液の中心部にLT等の棒状種結晶fを接触させる。そして、高周波加熱コイルeに通電する高周波電力を調節して原料融液を徐々に固化させると同時に、上記棒状種結晶fを回転させながら上昇させるという操作を連続的に行うことにより種結晶と同一方位の大型単結晶hが製造される。
尚、棒状種結晶の回転速度や引上速度は、育成する結晶の種類、育成時の温度環境に依存し、それら条件に応じて適切に選定する必要がある。また、上述したように棒状種結晶fは棒状種結晶保持具gによって保持され、更に、棒状種結晶保持具gは図示外の引き上げ軸(ロッド)下端に吊り下げられた構造になっている。そして、棒状種結晶保持具は、耐熱性や強度の面からイリジウム(Ir)、白金(Pt)等金属製のものを使用することが多い。
また、近年のスマートホン等の普及により移動体通信機器用のSAWフィルター市場は拡大を続けており、これに伴ってSAWフィルターの材料となるLT、LN等の単結晶基板の需要も伸びている。そして、SAWフィルター製造プロセスのコストダウンを図るため、LT、LN等の単結晶基板のサイズも、従来のφ3インチから、φ4インチ、φ6インチへと大面積化が進み、育成結晶が大型化している。更に、結晶の大型に伴って、結晶育成の成功率(すなわち、単結晶化率)向上が望まれている。
ところで、上記単結晶化率を向上させるには、単結晶育成中における棒状種結晶の落下率を減少させる必要があり、従来、各種の棒状種結晶保持具が開発されている。
例えば、特許文献1においては図11に示す棒状種結晶保持具が提案されている。
この棒状種結晶保持具gは、棒状種結晶fを収容する種結晶挿入孔iと、種結晶保持ピンkが嵌入されるピン孔jを有しており、切欠き部lが形成された棒状種結晶fを種結晶挿入孔iに収容し、該棒状種結晶fの切欠き部lに位置整合された種結晶保持ピンkをピン孔jから嵌入して棒状種結晶fが保持される構造になっている。但し、特許文献1の棒状種結晶保持具gにおいては、種結晶保持ピンkに係合させる切欠き部lを棒状種結晶fの外周面全体に形成する必要があることから種結晶の断面積が減少し、かつ、切欠き部lの加工量が多いことから種結晶に微細なクラックが入り易い欠点があった。このため、結晶育成中にクラックに起因する種結晶の折れが発生し、棒状種結晶が落下して上記単結晶化率を低下させてしまう問題を有していた。
また、特許文献2においては図12に示す棒状種結晶保持具が提案されている。
この棒状種結晶保持具gは、基端側に較べ貫通孔の先端側が小径に加工されたテーパ部mを有しており、貫通孔の基端側から挿入される棒状種結晶fが貫通孔のテーパ部mを利用して保持されるようにするため、棒状種結晶f外周面が上記テーパ部m形状に対応した形状に加工された構造になっている。このため、特許文献1と同様、棒状種結晶f外周面をテーパ形状に加工する際、種結晶に与えるダメージが大きく、かつ、テーパ形状に加工する手間と費用も必要となる問題を有していた。更に、育成された単結晶(図示せず)を保持具gから取り出す際、単結晶は、棒状種結晶fの先端から下方へ向けて成長しているため、棒状種結晶fと単結晶との界面で棒状種結晶fを折って取り出す必要があり、そのストレスにより単結晶にクラックが入り易い問題を有していた。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、加工時における棒状種結晶へのダメージが小さく、かつ、単結晶育成中に保持具から棒状種結晶が落下し難いと共に、育成された単結晶を保持具から取り出すときに単結晶にクラックが入り難い棒状種結晶保持具を提供することにある。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
筒状の保持具本体内に棒状種結晶を収容し、該棒状種結晶の先端側を原料融液に接触させ、かつ、その中心軸を回転軸にして棒状種結晶を回転させながら単結晶を育成する回転引き上げ法に使用される棒状種結晶保持具において、
上記保持具本体が、その中心軸を通る平面で二分割されかつ基端側における各半外周面に雄螺子部が設けられた第一半筒体並びに第二半筒体と、これ等半筒体の上記雄螺子部と螺合する雌螺子部が内壁面に設けられかつ上記第一半筒体と第二半筒体を接合させてこれ等半筒体を連結一体化する固定具とで構成され、該固定具により連結一体化された第一半筒体と第二半筒体の先端側における内壁面の軸対称位置となる部位には少なくとも2本の凸條が設けられていると共に、第一半筒体と第二半筒体が一体化される前に組み込まれる棒状種結晶外周面の先端側から基端側近傍までの領域でかつ第一半筒体と第二半筒体内壁面の上記凸條形成部に対応した部位には上記凸條との接触を防止する切欠き部が形成されており、上記棒状種結晶における切欠き部終端側の段差面が第一半筒体と第二半筒体内壁面における上記凸條の基端側端面に係合して連結一体化された第一半筒体と第二半筒体内に棒状種結晶が保持されるようになっていることを特徴とする。
筒状の保持具本体内に棒状種結晶を収容し、該棒状種結晶の先端側を原料融液に接触させ、かつ、その中心軸を回転軸にして棒状種結晶を回転させながら単結晶を育成する回転引き上げ法に使用される棒状種結晶保持具において、
上記保持具本体が、その中心軸を通る平面で二分割されかつ基端側における各半外周面に雄螺子部が設けられた第一半筒体並びに第二半筒体と、これ等半筒体の上記雄螺子部と螺合する雌螺子部が内壁面に設けられかつ上記第一半筒体と第二半筒体を接合させてこれ等半筒体を連結一体化する固定具とで構成され、該固定具により連結一体化された第一半筒体と第二半筒体の先端側における内壁面の軸対称位置となる部位には少なくとも2本の凸條が設けられていると共に、第一半筒体と第二半筒体が一体化される前に組み込まれる棒状種結晶外周面の先端側から基端側近傍までの領域でかつ第一半筒体と第二半筒体内壁面の上記凸條形成部に対応した部位には上記凸條との接触を防止する切欠き部が形成されており、上記棒状種結晶における切欠き部終端側の段差面が第一半筒体と第二半筒体内壁面における上記凸條の基端側端面に係合して連結一体化された第一半筒体と第二半筒体内に棒状種結晶が保持されるようになっていることを特徴とする。
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載の棒状種結晶保持具において、
上記棒状種結晶が横断面矩形状を有しており、該棒状種結晶の外周面における4箇所の長尺角部に上記切欠き部が形成されていることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明に記載の棒状種結晶保持具において、
上記棒状種結晶が横断面略円形状を有しており、該棒状種結晶の円周面における中心角が90度となる4箇所に上記切欠き部が形成されていることを特徴とするものである。
第1の発明に記載の棒状種結晶保持具において、
上記棒状種結晶が横断面矩形状を有しており、該棒状種結晶の外周面における4箇所の長尺角部に上記切欠き部が形成されていることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明に記載の棒状種結晶保持具において、
上記棒状種結晶が横断面略円形状を有しており、該棒状種結晶の円周面における中心角が90度となる4箇所に上記切欠き部が形成されていることを特徴とするものである。
本発明に係る棒状種結晶保持具によれば、
保持具本体が、その中心軸を通る平面で二分割されかつ基端側における各半外周面に雄螺子部が設けられた第一半筒体並びに第二半筒体と、これ等半筒体の上記雄螺子部と螺合する雌螺子部が内壁面に設けられかつ上記第一半筒体と第二半筒体を接合させてこれ等半筒体を連結一体化する固定具とで構成され、該固定具により連結一体化された第一半筒体と第二半筒体の先端側における内壁面の軸対称位置となる部位には少なくとも2本の凸條が設けられていると共に、第一半筒体と第二半筒体が一体化される前に組み込まれる棒状種結晶外周面の先端側から基端側近傍までの領域でかつ第一半筒体と第二半筒体内壁面の上記凸條形成部に対応した部位には上記凸條との接触を防止する切欠き部が形成されており、上記棒状種結晶における切欠き部終端側の段差面が第一半筒体と第二半筒体内壁面における上記凸條の基端側端面に係合して連結一体化された第一半筒体と第二半筒体内に棒状種結晶が保持されるようになっていることを特徴としている。
保持具本体が、その中心軸を通る平面で二分割されかつ基端側における各半外周面に雄螺子部が設けられた第一半筒体並びに第二半筒体と、これ等半筒体の上記雄螺子部と螺合する雌螺子部が内壁面に設けられかつ上記第一半筒体と第二半筒体を接合させてこれ等半筒体を連結一体化する固定具とで構成され、該固定具により連結一体化された第一半筒体と第二半筒体の先端側における内壁面の軸対称位置となる部位には少なくとも2本の凸條が設けられていると共に、第一半筒体と第二半筒体が一体化される前に組み込まれる棒状種結晶外周面の先端側から基端側近傍までの領域でかつ第一半筒体と第二半筒体内壁面の上記凸條形成部に対応した部位には上記凸條との接触を防止する切欠き部が形成されており、上記棒状種結晶における切欠き部終端側の段差面が第一半筒体と第二半筒体内壁面における上記凸條の基端側端面に係合して連結一体化された第一半筒体と第二半筒体内に棒状種結晶が保持されるようになっていることを特徴としている。
そして、棒状種結晶の外周面に形成する切欠き部の加工箇所が、先端側から基端側近傍までの領域でかつ固定具により連結一体化された第一半筒体と第二半筒体内壁面の凸條形成部に対応した部位に限定されるため、特許文献1〜2の棒状種結晶保持具と比較して加工時における種結晶のダメージを低減させることができると共に単結晶育成中における棒状種結晶の落下を低減することが可能となる。
更に、第一半筒体と第二半筒体における基端側の各半外周面に設けられた雄螺子部と固定具内壁面に設けられた雌螺子部との螺合を解いて上記固定具を取り外すことで一体化された第一半筒体と第二半筒体が分離され、これにより第一半筒体と第二半筒体内に組み込まれた棒状種結晶を取り出すことが可能となる。
従って、育成された単結晶を保持具から取り出す際、棒状種結晶と単結晶との界面で棒状種結晶を折る必要がないため、ストレスに起因した単結晶のクラック発生を回避することが可能となる。
このため、結晶育成の成功率(単結晶化率)を向上でき、種結晶の加工時間、加工費用も低減できると共に、単結晶の生産性向上とコストダウンが図れる効果を有する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
尚、図1は実施の形態に係る棒状種結晶保持具を示し、図1(A)はその上面図、図1(B)はその側面図、図1(C)はその底面図、図2は上記棒状種結晶保持具の斜め上方側から観た概略斜視図、図3は上記棒状種結晶保持具の斜め下方側から観た概略斜視図であり、図4は実施の形態に係る棒状種結晶保持具の一部を構成する固定具を示し、図4(A)はその上面図、図4(B)はその側面図、図4(C)はその底面図、図5は実施の形態に係る棒状種結晶保持具の一部を構成する第一半筒体並びに第二半筒体を示し、図5(A)はその上面図、図5(B)はその側面図、図5(C)はその底面図であり、また、図6(A)は加工前における棒状種結晶の斜視図、図6(B)は外周面における4箇所の長尺角部に切欠き部が形成されかつ実施の形態に係る棒状種結晶保持具に収納される棒状種結晶の斜視図を示す。
すなわち、この実施の形態に係る棒状種結晶保持具は、図1〜図5に示すように保持具本体1が、その中心軸を通る平面で二分割されかつ基端側における各半外周面に雄螺子部11が設けられた第一半筒体10a並びに第二半筒体10bと、これ等半筒体10a、10bの雄螺子部11と螺合する雌螺子部21が内壁面に設けられかつ上記第一半筒体10aと第二半筒体10bを接合させてこれ等半筒体10a、10bを連結一体化する固定具20とで構成され、該固定具20により連結一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10bの先端側における内壁面の軸対称位置(上記中心軸を中央にして互いに向かい合う位置)となる部位(本実施の形態では内壁面の互いに向かい合う4箇所の隅部)に凸條12が形成された構造になっている。尚、図1〜図4の符号22は、図示外の引き上げ軸(ロッド)に棒状種結晶保持具が連結される際に使用される連結孔を示している。
また、第一半筒体10aと第二半筒体10bが一体化される前に組み込まれる棒状種結晶3は、図6(A)に示すように直方体形状(すなわち、横断面矩形状)を有しており、かつ、図6(B)に示すように棒状種結晶3外周面の先端側から基端側近傍までの領域でかつ固定具20により連結一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10b内壁面の凸條12形成部に対応した部位(すなわち、棒状種結晶3の外周面における4箇所の長尺角部30)に、凸條12との接触を防止する切欠き部31が形成されている。
そして、第一半筒体10aと第二半筒体10bが一体化される前に第一半筒体10aまたは第二半筒体10bの半筒内に棒状種結晶3を収容し、第一半筒体10aと第二半筒体10bを接合させた後、図7に示すように第一半筒体10aと第二半筒体10bの基端側から固定具20を嵌め込み、かつ、第一半筒体10aと第二半筒体10bの雄螺子部11に上記固定具20の雌螺子部21を螺合させて第一半筒体10aと第二半筒体10bを連結一体化することにより、棒状種結晶3の切欠き部31終端側における段差面31a(図6B参照)が、第一半筒体10aと第二半筒体10bの内壁面に形成された凸條12の基端側端面に係合し固定されるため、連結一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10bの筒部13内に棒状種結晶3を保持させることが可能となる。
実施の形態に係る棒状種結晶保持具を用いた場合、棒状種結晶3の外周面に形成する切欠き部31の加工箇所が、先端側から基端側近傍までの領域でかつ固定具20により連結一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10b内壁面の凸條12形成部に対応した部位(図6Bに示すように棒状種結晶3における4箇所の長尺角部)に限定されるため、特許文献1〜2で提案された従来の棒状種結晶保持具と比較して加工時における種結晶のダメージを低減させることが可能となり、この結果、上記クラックに起因した種結晶の折れ等が防止されることから単結晶育成中における棒状種結晶の落下を低減(単結晶化率を向上)させることが可能となる。
更に、第一半筒体10aと第二半筒体10bにおける基端側の各半外周面に設けられた雄螺子部11と固定具20の内壁面に設けられた雌螺子部21との螺合を解いて上記固定具20を取り外すことで一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10bが分離され、これにより第一半筒体10aと第二半筒体10b内に組み込まれた棒状種結晶3を取り出すことが可能となる。このため、棒状種結晶3の下端側に育成された単結晶を保持具から取り出す際、棒状種結晶3と単結晶との界面で棒状種結晶3を折る必要がなくなり、この結果、ストレスに起因した単結晶のクラック発生も回避することが可能となる。
ところで、この実施の形態に係る棒状種結晶保持具においては、固定具20により連結一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10bの先端側における内壁面の軸対称位置となる部位(互いに向かい合う4箇所の隅部)に凸條12が形成された構造になっているが、図8(C)に示すように連結一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10bの先端側における内壁面の軸対称位置となる部位(互いに向かい合う2箇所の隅部)に凸條12を形成する構造に変更してもよい。この場合、棒状種結晶3の切欠き部31終端側における段差面31aと係合する凸條12基端側の端面数が、図1に示す「4箇所」から図8に示す「2箇所」に変更される関係上、棒状種結晶3に対する棒状種結晶保持具の保持力は若干低下する。このため、棒状種結晶3下端側に育成する結晶の目的重量に対応させて、図1に示す棒状種結晶保持具とするか、あるいは図8に示す棒状種結晶保持具とするかについて適宜選択することが望ましい。尚、図8に示す棒状種結晶保持具が選択された場合、第一半筒体10aと第二半筒体10bの筒部13内に収容される棒状種結晶3については、図6(B)に示した「4箇所」の長尺角部に切欠き部31が形成された棒状種結晶であってもよいし、あるいは、図8に示す凸條12の個数に対応させて「2箇所」の長尺角部に切欠き部31が形成された棒状種結晶であってもよい。
また、本実施の形態に係る棒状種結晶保持具においては、第一半筒体10aと第二半筒体10bを一体化して形成される筒部13と雄螺子部11を形成する基端側の半外周面が、図5(B)に示すように内壁面100で仕切られる構造になっているが、図9(B)に示すように上記内壁面100を設けない構造に変更してもよい。この場合、上記雄螺子部11が形成される半外周内側を筒部13の一部として利用できるため、その分、棒状種結晶保持具の長さ寸法を低減することが可能となる。
更に、本実施の形態に係る棒状種結晶保持具においては、一体化された第一半筒体10aと第二半筒体10bにおける筒部13の横断面形状が矩形状(図1C参照)となっているが、筒部13の横断面形状を円形状に変更しかつ第一半筒体10aと第二半筒体10bの先端側における内壁面の軸対称位置となる部位に4個若しくは2個の凸條12を形成した構造に変更してもよい。この場合、上記筒部13内に収容される棒状種結晶3の横断面形状も円形状であることを要し、かつ、第一半筒体10aと第二半筒体10bの内壁面に形成される凸條12が4個に設定される場合には、棒状種結晶3の円周面における中心角が90度となる4箇所に切欠き部31が形成されることを要する。
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明の技術的範囲が下記実施例の内容に限定されるものではない。
[実施例1]
図1〜図5に示した実施の形態に係る棒状種結晶保持具と同一構造を有する棒状種結晶保持具を作製した。尚、棒状種結晶保持具の材質はイリジウム(Ir)とした。
図1〜図5に示した実施の形態に係る棒状種結晶保持具と同一構造を有する棒状種結晶保持具を作製した。尚、棒状種結晶保持具の材質はイリジウム(Ir)とした。
他方、図6(B)に示す構造のタンタル酸リチウム種結晶(10mm角×8cm)を用意した。また、タンタル酸リチウム種結晶における4箇所の長尺角部30に形成した切欠き部31の深さ寸法は、連結一体化した第一半筒体10aと第二半筒体10bの内壁面における4箇所の隅部に設けられた凸條12の高さ寸法より深くし、更に、無加工部分を2cm残した(すなわち、タンタル酸リチウム種結晶の先端側から6cmまでの長尺角部に切欠き部を形成した)。切欠き部の加工時間は「作業者平均10分/人」以内に終了した。
そして、実施例1に係る棒状種結晶保持具と切欠き部が形成されたタンタル酸リチウム種結晶を用いてチョクラルスキー法によるタンタル酸リチウム単結晶の育成を行ったところ、種結晶の落下率は1%(100回の育成間に1回落下した)であった。
また、上記種結晶の下端側に育成された単結晶を取り出す際、固定具20による一体化を解いて第一半筒体10aと第二半筒体10bを分離し、その後、種結晶と共に単結晶を取り出した。
そして、育成された単結晶の外観について目視による確認を行ったが、クラックの発生は確認できなかった(100個中0個)。
また、次工程以降において、クラックに起因した不具合は発生しなかった。
[比較例1]
特許文献1の種結晶保持ピンを用いた従来のイリジウム(Ir)製棒状種結晶保持具を用いてチョクラルスキー法によるタンタル酸リチウム単結晶の育成を行った。
特許文献1の種結晶保持ピンを用いた従来のイリジウム(Ir)製棒状種結晶保持具を用いてチョクラルスキー法によるタンタル酸リチウム単結晶の育成を行った。
そして、図11に示す種結晶の加工時間は「作業者平均40分/人」を要した。また、種結晶の落下率は4%(100回の育成間に4回落下した)であった。
また、棒状種結晶の下端側に育成された単結晶については、棒状種結晶と単結晶の界面付近を折って取り出したところ、100個中5個の単結晶において上記界面付近に小さなクラックが確認され、かつ、5個の内、2個は次工程以降でクラックに起因した不具合が生じた。
[確 認]
実施例1と比較例1の結果から、種結晶の加工時間を「30分/回」削減でき、かつ、結晶育成時における落下率を4%から1%に向上できることが確認された。
実施例1と比較例1の結果から、種結晶の加工時間を「30分/回」削減でき、かつ、結晶育成時における落下率を4%から1%に向上できることが確認された。
更に、実施例1においては、育成された単結晶にダメージを与えることなく取り出すことが可能となり、次工程以降の結晶生存率も向上できることが確認された。
本発明に係る棒状種結晶保持具によれば、加工時における棒状種結晶へのダメージが小さく、単結晶育成中に保持具から棒状種結晶が落下し難く、かつ、育成された単結晶を保持具から取り出すときに単結晶にクラックが入り難いため、例えば、チョクラルスキー法によりタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム単結晶を育成する際の種結晶保持具に適用される産業上の利用可能性を有している。
1 保持具本体
3 棒状種結晶
11 雄螺子部
12 凸條
13 筒部
20 固定具
21 雌螺子部
22 連結孔
30 長尺角部
31 切欠き部
10a 第一半筒体
10b 第二半筒体
31a 切欠き部終端側の段差面
100 内壁面
3 棒状種結晶
11 雄螺子部
12 凸條
13 筒部
20 固定具
21 雌螺子部
22 連結孔
30 長尺角部
31 切欠き部
10a 第一半筒体
10b 第二半筒体
31a 切欠き部終端側の段差面
100 内壁面
Claims (3)
- 筒状の保持具本体内に棒状種結晶を収容し、該棒状種結晶の先端側を原料融液に接触させ、かつ、その中心軸を回転軸にして棒状種結晶を回転させながら単結晶を育成する回転引き上げ法に使用される棒状種結晶保持具において、
上記保持具本体が、その中心軸を通る平面で二分割されかつ基端側における各半外周面に雄螺子部が設けられた第一半筒体並びに第二半筒体と、これ等半筒体の上記雄螺子部と螺合する雌螺子部が内壁面に設けられかつ上記第一半筒体と第二半筒体を接合させてこれ等半筒体を連結一体化する固定具とで構成され、該固定具により連結一体化された第一半筒体と第二半筒体の先端側における内壁面の軸対称位置となる部位には少なくとも2本の凸條が設けられていると共に、第一半筒体と第二半筒体が一体化される前に組み込まれる棒状種結晶外周面の先端側から基端側近傍までの領域でかつ第一半筒体と第二半筒体内壁面の上記凸條形成部に対応した部位には上記凸條との接触を防止する切欠き部が形成されており、上記棒状種結晶における切欠き部終端側の段差面が第一半筒体と第二半筒体内壁面における上記凸條の基端側端面に係合して連結一体化された第一半筒体と第二半筒体内に棒状種結晶が保持されるようになっていることを特徴とする棒状種結晶保持具。 - 上記棒状種結晶が横断面矩形状を有しており、該棒状種結晶の外周面における4箇所の長尺角部に上記切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棒状種結晶保持具。
- 上記棒状種結晶が横断面略円形状を有しており、該棒状種結晶の円周面における中心角が90度となる4箇所に上記切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棒状種結晶保持具。
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JP2017119624A JP2019001693A (ja) | 2017-06-19 | 2017-06-19 | 棒状種結晶保持具 |
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Cited By (2)
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JP7563041B2 (ja) | 2020-08-18 | 2024-10-08 | 住友金属鉱山株式会社 | 種結晶及びその製造方法並びに種結晶製造用の研削器具 |
JP7572730B2 (ja) | 2019-03-21 | 2024-10-24 | Orbray株式会社 | リチウム含有酸化物結晶、電池およびリチウム含有酸化物結晶の製造方法 |
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2017
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