JP5543327B2 - 石英ガラスルツボ - Google Patents

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Description

本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)によって単結晶を育成しながら引き上げる際に用いられる石英ガラスルツボに関する。
シリコン単結晶の育成に関し、CZ法が広く用いられている。この方法は、図5に示すように、ヒータ52の熱により石英ガラスルツボ50内にシリコン溶融液Mを形成し、その表面に種結晶Pを接触させる。そして、石英ガラスルツボ50を回転させるとともに、この種結晶Pを反対方向に回転させながら上方へ引上げることによって、種結晶Pの下端に単結晶Cを形成していくものである。
このCZ法を実施する単結晶引上装置にあっては、図5に示すように石英ガラスルツボ50はルツボ形状のカーボンサセプタ53(或いは黒鉛サセプタ)内に抱持されるように収容される。
そして、前記石英ガラスルツボ50内にシリコン溶融液を形成するためにヒータ52による加熱が開始されると、石英ガラスルツボ50も加熱され高温となる。
このとき、高温となった石英ガラスルツボ50は軟化し、カーボンサセプタ53に対し隙間無く密着するようになされている。即ち、鉛直軸周りに回転するカーボンサセプタ53に石英ガラスルツボ50が密着することによって、ルツボ50が安定して支持され、シリコン単結晶の引き上げが安定して行われる。
ところで、石英ガラスルツボ50をカーボンサセプタ53内に配置した場合、通常、図6に示すように石英ガラスルツボ50の上端部50aはカーボンサセプタ53の上端部53aよりも高くなるように設計され、ルツボ内に不純物が混入しないようになされている(例えば特許文献1)。
しかしながら、図6に示す構成にあっては、石英ガラスルツボ50が加熱されると、ルツボ下部がルツボ上部よりも高温となってより軟化し、カーボンサセプタ53と接触していないルツボ上端部50aが、図7に示すようにルツボの径方向内側に倒れ込む変形が生じることがあった。
即ち、そのように石英ガラスルツボ50に変形が生じると、石英ガラスルツボ50とカーボンサセプタ53との密着性が低下し、シリコン単結晶の引き上げを安定して行うことができないという課題があった。
そのような課題に対し、特許文献2及び特許文献3に開示された石英ガラスルツボの製造方法においては、単結晶育成中に硝酸塩水溶液を用いて外面の結晶化を促進し、外面を失透させることにより、ルツボ上部の倒れ込みを防止している。
特開2010−52982号公報 特開平6−219768号公報 特開平8−2932号公報
しかしながら、特許文献2,3に開示の構成のように硝酸塩水溶液などの薬液を使用する場合には、薬液添加量の制御が困難である上、薬液使用後の処理に手間を要し、コストも嵩張るといった課題があった。
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を引上げる際に用いる石英ガラスルツボにおいて、ルツボ上部の径方向内側への倒れ込みの発生を抑制し、サセプタとの密着性を向上することのできる石英ガラスルツボを提供することを目的とする。
前記課題を解決するためになされた、本発明に係る石英ガラスルツボは、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を引上げる際に用いる石英ガラスルツボであって、第1の曲率を有する底部と、前記底部の周囲に形成され、第2の曲率を有する底部コーナーと、前記底部コーナーから上方に延設され、上端が開口する直胴部とを有し、前記底部コーナーの外周面には、周方向に沿って環状に溝部が設けられていることに特徴を有する。
尚、前記底部コーナーの外周面において前記溝部が設けられる位置は、前記底部コーナーの内面における前記第2の曲率の位置を0°として、上下方向に±5°の範囲内であることが望ましい。
また、前記溝部の深さ寸法は、前記底部コーナーの肉厚寸法に対して1/4倍乃至1/3倍のいずれかの深さ寸法であることが望ましい。
また、前記溝部は、前記底部コーナーの外周面に、周方向に沿って複数設けてもよい。
このように構成することにより、例えばカーボンサセプタに収容された石英ガラスルツボが加熱され、軟化すると、前記溝部を軸にして直胴部が径方向外側に傾倒する。これにより直胴部がカーボンサセプタの内周面に圧着され、直胴部が径方向内側に倒れ込むことなく石英ガラスルツボとカーボンサセプタとを密着させることができる。
本発明によれば、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を引上げる際に用いる石英ガラスルツボにおいて、ルツボ上部の径方向内側への倒れ込みの発生を抑制し、サセプタとの密着性を向上することのできる石英ガラスルツボを得ることができる。
図1は、本発明に係る石英ガラスルツボの一実施形態を示す断面図である。 図2は、図1の石英ガラスルツボの一部拡大断面図である。 図3は、図1の石英ガラスルツボをカーボンサセプタに収容した状態を示す断面図である。 図4は、図1の石英ガラスルツボの一部拡大断面図であって、溝部の寸法を示す図である。 図5は、従来の単結晶引上装置の概略構成を示す断面図である。 図6は、従来の加熱前におけるカーボンサセプタとそれに収容された石英ガラスルツボを示す断面図である。 図7は、従来の加熱後におけるカーボンサセプタとそれに収容された石英ガラスルツボを示す断面図であって、石英ガラスルツボの上端が径方向内側に倒れ込んだ状態を示す図である。
以下、本発明に係る石英ガラスルツボの実施形態について図面に基づき説明する。
図1は本発明に係る石英ガラスルツボの断面図である。図2は、図1の石英ガラスルツボ1の一部拡大断面図である。
この石英ガラスルツボ1は、単結晶引上装置(図示せず)において用いられ、装置内で例えばカーボンサセプタ(図示せず)によって抱持された状態で使用される。
即ち、単結晶引上装置では、石英ガラスルツボ1内に原料シリコンが溶融され、溶融液からシリコン単結晶が引き上げられる。
図1に示すように石英ガラスルツボ3は、上端が開口する円筒状の直胴部1aと、直胴部1aの下端側に設けられた底部1bと、底部1bの周囲に形成され、直胴部1aの下端に繋がる底部コーナー1cとを有する。
図2に示すように、底部1bの中央は、半径Rの曲率(第1の曲率)を有しており、底部コーナー1cは、半径rの曲率(第2の曲率)を有している。
また、石英ガラスルツボ1は、2層構造となされる。即ち、石英ガラスルツボ1は、天然原料シリカガラス層からなる不透明外層2と、この不透明外層2の内側に形成され、シリコン単結晶引き上げ時にシリコン溶融液と接する合成原料シリカガラス(または天然原料シリカガラス)からなる透明内層3とで構成されている。
尚、ここで不透明とは、シリカガラス中に多数の気孔が内在し、見かけ上、白濁した状態を意味する。また、天然原料シリカガラスとは、水晶等の天然質原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味し、合成原料シリカガラスとは、例えばシリコンアルコキシドの加水分解により合成された合成原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味する。
また、図示するように、底部コーナー1cにおいて、不透明外層2の外周面には、周方向に沿って環状の溝部2aが形成されている。
この溝部2aが底部コーナー1cに設けられることによって、図3に示すように、石英ガラスルツボ1がカーボンサセプタ5に収容された際の相互の密着性を向上することができる。
即ち、石英ガラスルツボ1に原料シリコン(図示せず)が装填され、周囲のヒータ(図示せず)によって加熱されると、石英ガラスルツボ1全体が軟化する。このとき、溝部2aを軸として径方向外側(矢印に示す方向)に向けて直胴部2が傾倒し、直胴部2がカーボンサセプタ5の内周面に対し圧着される。
したがって、直胴部2が径方向内側に倒れ込むことが無く、石英ガラスルツボ1をカーボンサセプタ5に対し密着させることができる。
尚、直胴部2が軟化した際、径方向外側に傾倒しやすくするために、底部コーナー1c外周面において溝部2aが設けられる位置は、図2に示すように底部コーナー1c内面における半径rの曲率の位置を0°として、上下方向に±5°の範囲内となされている。
さらに、図4に示すように、この溝部2aの幅寸法t2は,半径rの曲率の位置を0°として2°〜4°の寸法(例えば2〜3mm)に形成することが望ましい。
また、溝部2aの深さ寸法t3は、底部コーナー1cの肉厚寸法t1に対し1/4〜1/3の寸法であることが望ましい。これは、1/4より浅いと倒れ込み抑制の効果が得られ難いためであり、1/3より深いとルツボの強度が低下し、破損の虞があるためである。
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、石英ガラスルツボ1の底部コーナー1cにおいて、周方向に沿って環状に所定の幅及び深さの溝部2aが設けられる。
この溝部2aが設けられることにより、カーボンサセプタ5に収容された石英ガラスルツボ1が加熱され、軟化すると、溝部2aを軸にして直胴部1aが径方向外側に傾倒する。これにより直胴部1aがカーボンサセプタ5に圧着され、直胴部1aが径方向内側に倒れ込むことなく石英ガラスルツボ1とカーボンサセプタ5とを密着させることができる。
尚、前記実施の形態においては、前記底部コーナー1cに設けられる溝部2aは1本としたが、1本に限定されるものではなく、複数の溝部を設けることにより、直胴部1aが径方向外側により傾倒し易い構成としてもよい。但し、3本より多くの溝部を設ける場合には、ルツボ強度が低下する虞があるため、1〜3本のいずれかが望ましい。
本発明に係る石英ガラスルツボについて、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に従い石英ガラスルツボを製造し、本発明の効果を検証した。
具体的には、直径600mm、肉厚寸法12mmの石英ガラスルツボを製造し、その底部コーナーにおけるルツボ外周面に、周方向に沿って1本の溝部を設けた。
そして、その石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行い、操業停止後のルツボ形状から、直胴部の倒れ込みの発生、及び変形率について検証した。
尚、溝部の幅は3mmに固定し、溝の深さを変化させ、その影響を検証した。ここで、溝部の幅を3mmとしたのは、石英ガラスルツボ直胴部の外周面とカーボンサセプタ内面との隙間を考慮し、確実に直胴部を径方向外側に傾倒させることが可能な幅であるためである。溝部の幅がより小さい場合は、直胴部を径方向外側に傾倒させる応力が小さくなり、確実性が低くなる。一方、溝部の幅が大きすぎるとルツボ強度の低下により、ルツボ破損によるシリコン融液の漏えいなどが生じる虞がある。
表1に溝部条件、及び検証結果を示す。
Figure 0005543327
表1に示すように、条件2,3の場合に、直胴部の径方向内側への倒れ込みは発生しなかった。また、条件2,3の場合、ルツボの変形率は、溝部を有さないルツボ(条件5)に比べて約2%改善された。
以上の実施例により、溝部の深さは、底部コーナーの肉厚寸法に対し1/4倍乃至1/3倍の深さ寸法が望ましく、その場合に目的とする効果を得られることを確認した。
1 石英ガラスルツボ
1a 直胴部
1b 底部
1c 底部コーナー
2 不透明外層
2a 溝部
3 透明内層

Claims (3)

  1. チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を引上げる際に用いる石英ガラスルツボであって、
    第1の曲率を有する底部と、前記底部の周囲に形成され、第2の曲率を有する底部コーナーと、前記底部コーナーから上方に延設され、上端が開口する直胴部とを有し、
    前記底部コーナーの外周面には、周方向に沿って環状に溝部が設けられていることを特徴とする石英ガラスルツボ。
  2. 前記溝部の深さ寸法は、前記底部コーナーの肉厚寸法に対して1/4倍乃至1/3倍のいずれかの深さ寸法であることを特徴とする請求項1に記載された石英ガラスルツボ。
  3. 前記溝部は、前記底部コーナーの外周面において、周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された石英ガラスルツボ。
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