JP2019001064A - 多層フィルム及び包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、このような誤飲・誤食を防止するものとして、苦み成分を含む水溶性フィルムを用いて構成された包装体が開示されている(特許文献1参照)。このような包装体を口に含むと、水溶性フィルムから苦み成分が口内に移行するため、口に含んだ者は強い苦みを感じ、不快になるとともに異常を感じて、包装体を飲み込まずに、吐き出すように導かれる。
[1].一方の最表層となるように配置された苦み成分含有層と、他方の最表層となるように配置されたシーラント層と、を備え、前記苦み成分含有層は、苦み成分として安息香酸デナトニウム又はその誘導体を含み、かつ水溶性である、多層フィルム。
[2].前記苦み成分含有層の内部ヘーズが40%以下である、[1]に記載の多層フィルム。
[3].前記苦み成分含有層の、安息香酸デナトニウム及びその誘導体の合計含有量が、1.2質量%以下である、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4].前記苦み成分含有層が、水溶性樹脂を含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[5].前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[7].前記多層フィルムの前記シーラント層側に、さらに、カバーフィルムを備え、前記多層フィルムが、その一部の領域において、前記苦み成分含有層側に突出した突出部を有し、前記多層フィルムの前記突出部と、前記カバーフィルムと、により、前記収納部が形成されており、前記多層フィルムの前記突出部以外の領域が、前記カバーフィルムと接着されている、[6]に記載の包装体。
本発明の多層フィルムは、一方の最表層となるように配置された苦み成分含有層と、他方の最表層となるように配置されたシーラント層と、を備え、前記苦み成分含有層は、苦み成分として安息香酸デナトニウム又はその誘導体を含み、かつ水溶性となっているものである。
以下、まず、本発明の多層フィルムの全体構成について説明する。
多層フィルム1において、接着層13はシーラント層11上に、シーラント層11と直接接触して積層され、苦み成分含有層12は接着層13上に、接着層13と直接接触して積層されている。
接着層13は、任意の構成要素であり、多層フィルム1においては省略可能である。ただし、接着層13を備えていることで、多層フィルム1の多層構造がより安定化する。
一方、多層フィルム1の、シーラント層11側の他方の表面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)1b、換言すると、シーラント層11の露出面11bは、後述する包装体においては、包装体対象物を収納するための収納部を構成する面となり、包装体対象物との接触面となる。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
すなわち、多層フィルム2は、シーラント層11及び苦み成分含有層12が、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。多層フィルム2において、苦み成分含有層12はシーラント層11上に、シーラント層11と直接接触して積層されている。
一方、多層フィルム2の、シーラント層11側の他方の表面(第2面)2b、換言すると、シーラント層11の露出面11bは、後述する包装体においては、包装体対象物を収納するための収納部を構成する面となり、包装体対象物との接触面となる。
例えば、図1に示す多層フィルム1、及び図2に示す多層フィルム2は、いずれも、シーラント層11、苦み成分含有層12及び接着層13以外の他の層(図示略)を備えていてもよい。
前記他の層は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
次に、本発明の多層フィルムの構成要素について、詳細に説明する。
前記苦み成分含有層は、前記多層フィルムの一方の最表層(最も表側、換言すると最も外側に位置する層)であり、苦み成分として安息香酸デナトニウム又はその誘導体を含み、かつ水溶性である。
苦み成分含有層は、多層フィルムと、これを用いて構成された包装体と、が誤飲防止効果を発現するために、必須の構成となる。包装体において、多層フィルム中の苦み成分含有層は露出する。
安息香酸デナトニウムは、極めて微量で不快な苦みを呈するため、苦み成分含有層(苦み成分含有フィルム)と、これを備えた前記多層フィルムと、これを用いて構成された包装体は、いずれも優れた誤飲防止効果を有する。
なお、本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個(2個以上)の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
安息香酸デナトニウム誘導体1分子中の、前記置換基の数が2個以上である場合、これら2個以上の置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。そして、安息香酸デナトニウム誘導体1分子中の前記置換基が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
安息香酸デナトニウム誘導体において、前記置換基の位置は、この誘導体が苦み成分である限り特に限定されない。
安息香酸デナトニウム又はその誘導体とともに、前記樹脂を含む苦み成分含有層は、その構造を安定して維持でき、例えば、安息香酸デナトニウム又はその誘導体の、苦み成分含有層から他の箇所への目的外の移行を、強く抑制できる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール又はビニルエステル化合物から誘導された構成単位を有すると見做せる樹脂であり、より具体的なものとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
なかでも、前記ビニルエステル化合物は、酢酸ビニルであることが好ましい。
アニオン性基変性ポリビニルアルコールにおけるアニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(−C(=O)−OH)、スルホ基(−S(=O)2−OH)、リン酸基(−O−P(=O)−OH2)等が挙げられる。
親水性基変性ポリビニルアルコールは、例えば、親水性基を有するモノマーと、前記ビニルエステル化合物と、を共重合させた後、得られた共重合物をケン化する方法で製造できる。ただし、親水性基変性ポリビニルアルコールの製造方法は、これに限定されない。
前記他の成分は特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
苦み成分含有層中の前記他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
他の苦み成分としては、例えば、無機金属塩、植物性アルカロイド、ステロイド、ペプチド、テルペノイド、配糖体、フラボノイド等が挙げられる。
他の苦み成分として、より具体的には、例えば、塩化マグネシウム、カフェイン、ベルベリン、ジケトピペラジン、リモネン、ゲンチオピクロシド、カテキン、ナリンジン、モルデシン、ケルセチン、アウクビン、アマロゲンチン、ジヒドロフォリアメンチン、ゲンチオピクリン、スウェルチアマリン、スウエロシド、ゲンチオフラボシド、センタウロシド、メチアフォリン、ハルパゴシド、センタピクリン、サイリシン、コンジュランジン、アブシンチン、アルタブシン、クニシン、ラクチュシン、ラクチュコピクリン、サロニテノリド、α−ツジョン、β−ツジョン、デソキシリモネン、イチャンギン、イソオバクン酸、オバクノン、オバクン酸、ノミリン、ノミリン酸、マルビ、プラマルビン、カルノソール、カルノシン酸、クァシン、塩酸キニーネ、硫酸キニーネ、二塩酸キニーネ、二硫酸キニーネ、コロンバイン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、バリン、アスパラギン酸、オクタアセチルスクロース、ホップ抽出物(例えば、フムロン等)、マンネンタケ抽出物等が挙げられる。
例えば、前記合計含有量は、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.04〜2質量%、さらに好ましくは0.06〜1.6質量%、特に好ましくは0.08〜1.2質量%とすることができるが、これら数値範囲は、前記合計含有量の好ましい数値範囲の一例である。
一方、前記合計含有量の上限値は100質量%である。
一方、前記含有量の下限値は0質量%である。
苦み成分含有層の内部ヘーズの下限値は、特に限定されない。ただし、内部ヘーズが1%以上である苦み成分含有層は、より容易に形成できる。
苦み成分含有層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい苦み成分含有層の厚さとなるようにするとよい。
前記シーラント層は、前記多層フィルムの他方の最表層(最も表側、換言すると最も外側に位置する層)であり、多層フィルムが後述するように包装体を構成することを容易とする。包装体において、多層フィルム中のシーラント層は、包装対象の収納物に接触する。
シーラント層が含む前記樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂;ポリエチレン系樹脂;ポリスチレン;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;環状オレフィンポリマー;環状オレフィンコポリマー;石油樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン系樹脂(ハロゲン原子を有する樹脂);エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂共重合体等が挙げられる。
ただし、シーラント層は、石油樹脂を含む場合、石油樹脂以外の樹脂も含む。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、結晶性ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
前記結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体、結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン及びα−オレフィンの一方又は両方と、プロピレンと、が共重合してなる、結晶性ブロック共重合体等が挙げられる。
前記α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の、炭素数4〜10のα−オレフィン等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセンLLDPE)中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレン系共重合体等が挙げられる。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、アイオノマー等のエチレン共重合体等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。
シーラント層における前記他の成分としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等の、公知の各種添加剤等が挙げられる。
シーラント層が含む前記他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
一方、シーラント層の前記樹脂の含有量の上限値は100質量%である。
一方、前記樹脂を含むシーラント層の、前記他の成分の含有量の下限値は0質量%である。
シーラント層において、前記樹脂の総含有量に対する、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び石油樹脂の合計含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。すなわち、シーラント層は、前記樹脂として、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上、並びにさらに必要に応じて石油樹脂、のみを含んでいてもよい。前記合計含有量の割合が前記下限値以上であることで、シーラント層はより優れたシール性を有する。
シーラント層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましいシーラント層の厚さとなるようにするとよい。
前記接着層は、苦み成分含有層とシーラント層との間に配置され、これらの層を接着させて、多層フィルムの多層構造をより安定化させる。
接着層は、このような特性を有するものであれば、特に限定されない。ただし、包装体外部からの収納物の視認が容易となる点から、接着層は、光線透過率が高いものが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン系共重合体、ブテン系共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、接着性がより向上する点においては、ランダム共重合体、グラフト共重合体又はブロック共重合体であることが好ましい。
前記ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体や、その変性物(変性共重合体)等が挙げられ、より具体的には、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
前記ブテン系共重合体としては、例えば、1−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい接着層の厚さとなるようにするとよい。
多層フィルムの内部ヘーズの下限値は、特に限定されない。ただし、内部ヘーズが1%以上である多層フィルムは、より容易に製造できる。
本発明の多層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
本発明の包装体は、上述の本発明の多層フィルムを備えた包装体であって、前記多層フィルムの前記シーラント層によって、包装対象物の収納部が形成されており、前記多層フィルムの前記苦み成分含有層が、前記包装体の前記収納部側とは反対側の最表層となっているものである。本発明の包装体は、このような構成を有することにより、優れた誤飲防止効果を有する。
包装体10は、ブリスターパックとしてのPTPフィルム(包装容器)であり、収納部10aには、錠剤102を密封収納できる。
また、包装体10は、多層フィルム1とカバーフィルム101との密着性に優れるため、包装体10の収納部10aは気密性が高く、収納部10aに収納された錠剤102は、品質の劣化が抑制される。
このような他の包装体として、より具体的には、例えば、本発明の突出部を有しない多層フィルム同士が、これらのシーラント層同士が対向するように配置され、これらシーラント層の周縁部近傍の領域同士が接着されて構成されたもの;本発明の突出部を有しない多層フィルムと他のフィルムとが、前記多層フィルムのシーラント層が前記他のフィルム側を向くように対向して配置され、前記シーラント層の周縁部近傍の領域と、前記他のフィルムの周縁部近傍の領域と、が接着されて構成されたもの等が挙げられる。前記他のフィルムは、本発明に該当しない他の多層フィルムであってもよいし、単層フィルムであってもよい。
本発明の包装体は、前記多層フィルムを用い、目的とする収納部を形成するように、多層フィルムと他のフィルム、又は多層フィルム同士等とを貼り合わせることにより、製造できる。
より具体的には、まず、真空成形、圧空成形又はプラグ成形等により、多層フィルム1に突出部1cを形成する。このように突出部1cを成形するときに多層フィルム1を加熱しても、苦み成分含有層12中の安息香酸デナトニウム及びその誘導体は、融点が高いことにより、揮発が抑制される。その結果、得られる成形体において、苦み成分含有層12中の安息香酸デナトニウム及びその誘導体の合計含有量の低下が抑制される。
次いで、必要に応じて、多層フィルム1及びカバーフィルム101に、ミシン刃又はハーフカット刃等を用いて、スリット10bを形成する。
以上により、包装体10が得られる。
例えば、苦み成分含有層を備えていない点以外は、前記多層フィルムと同じである原料フィルムを用い、この原料フィルムに、前記多層フィルムに形成されているものと同様の突出部を形成し、次いで、この原料フィルムにおける突出部の突出側の面(シーラント層を備えている側とは反対側の面)に、苦み成分含有層を形成して多層フィルムを製造し、この多層フィルムにカバーフィルムを接着することでも、包装体を製造できる。
このとき、苦み成分含有層は、上述の多層フィルムの製造方法で説明した、各層の形成(積層)方法のいずれかを採用することで、原料フィルム上に形成できる。例えば、苦み成分含有層を形成するための樹脂組成物を原料フィルムの前記突出側の面にコーティングし、必要に応じて乾燥させることにより、苦み成分含有層を形成する方法が好適である。
まず、収納部を形成するように、突出部を有しない多層フィルム同士、又は突出部を有しない多層フィルムと他のフィルムとを、多層フィルムのシーラント層がもう一方のフィルム(すなわち、突出部を有しない多層フィルム又は前記他のフィルム)側を向くように対向させて配置するとともに、これら配置された一対のフィルム間の前記収納部となる領域に、保存対象物を配置する。
次いで、多層フィルムのシーラント層の周縁部近傍の領域を、もう一方のフィルムの表面と重ね合わせて、前記収納部を形成するように接着する。このときの接着は、例えば、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
次いで、必要に応じて、接着した前記多層フィルム同士又は多層フィルム及び他のフィルムに、ミシン刃又はハーフカット刃等を用いて、スリットを形成する。
以上により、前記他の包装体が得られる。
収納部に目的物が収納された本発明の包装体は、以下のように使用される。
すなわち、包装体が前記突出部を有するPTP包装体である場合には、突出部に対して、その苦み成分含有層からシーラント層へと向かう方向の力を加えることで、この突出部における多層フィルムを介して、収納部内の収納物にも力を加える。この力が一定値以上となると、収納部内の収納物がカバーフィルムに加える力によって、カバーフィルムが破れ、収納物が包装体の外部に押し出される。以上により、包装体から収納物が取り出される。
[実施例1]
シーラント層となるポリプロピレン(PP、石油樹脂を5〜30質量%含むホモポリプロピレン、)製フィルム(厚さ300μm)の一方の表面に、酸変性ポリオレフィンを含む接着剤組成物を塗工し、乾燥させることで、接着層(厚さ6μm)を形成した。
次いで、安息香酸デナトニウム、及びポリビニルアルコール(PVA)(ケン化度97.5〜99.0mol%)を含む、苦み成分含有層を形成するための樹脂組成物を、上記の接着層上に塗工し、乾燥させることで、安息香酸デナトニウムの含有量が1質量%、ポリビニルアルコール(PVA)の含有量が99質量%である、苦み成分含有層(厚さ5μm)を形成した。
以上により、シーラント層、接着層及び苦み成分含有層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる多層フィルムを得た。
苦み成分含有層を形成するための樹脂組成物として、安息香酸デナトニウム及びポリビニルアルコールの含有量が異なるものを用いて、安息香酸デナトニウムの含有量が0.1質量%、ポリビニルアルコール(PVA)の含有量が99.9質量%である、苦み成分含有層(厚さ5μm)を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層、接着層及び苦み成分含有フィルム層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる多層フィルムを製造した。
苦み成分含有層を形成するための樹脂組成物として、安息香酸デナトニウム及びポリビニルアルコールの含有量が異なるものを用いて、安息香酸デナトニウムの含有量が0.01質量%、ポリビニルアルコール(PVA)の含有量が99.99質量%である、苦み成分含有層(厚さ5μm)を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層、接着層及び苦み成分含有フィルム層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる多層フィルムを製造した。
[比較例1]
苦み成分含有層を形成するための樹脂組成物として、実施例2で用いたものと同じものを用い、これを剥離フィルム上に塗工し、乾燥させることで、単層フィルムとして、安息香酸デナトニウムの含有量が0.1質量%、PPの含有量が99.9質量%である、比較用の苦み成分含有層(フィルム)(厚さ300μm)を、剥離フィルム上に形成した。なお、本明細書では、以降、「単層フィルム」とは、特に断りのない限り、多層フィルム中の苦み成分含有層(フィルム)ではなく、多層フィルムとして用いることはない、苦み成分を含む単層フィルムを意味する。
[試験例1]
(苦みの有効性)
上記で得られた多層フィルム及び単層フィルム、並びに比較用のPP(ホモPP)製フィルム(厚さ300μm)について、下記方法で、苦みの有効性を官能評価した。
すなわち、各フィルムを2cm×4cmの大きさに切断し、試験片を作製した。
次いで、20代3名、40代6名、50代3名、60代1名、及び70代1名の合計14名の被験者に、各試験片を1片ずつ、時間を空けて口に含んで貰い、下記採点方法に従って、(1)苦みの知覚、(2)苦みを知覚した場合には、その苦みの質、について採点を行い、1人あたりの平均点数を算出して、苦みの有効性を評価した。本評価では、この平均点数が低いほど、苦みの有効性が高く、フィルムの誤飲防止効果が高いといえる。結果を表1に示す。なお、表1中の評価結果の欄における「−」との記載は、その項目が未評価であることを意味する。
(1)苦みの知覚
苦みを感じる・・・1点
どちらかといえば苦みを感じる・・・2点
苦み感じない・・・3点
(2)苦みの質
不快である・・・1点
どちらかといえば不快である・・・2点
特に不快ではない・・・3点
(内部ヘーズ、光線透過率)
上記で得られた実施例1の苦み成分含有層(フィルム)、及び比較用のPP(ホモPP)製フィルム(厚さ300μm)について、ヘーズ測定機を用いて、JIS K 7136に準拠して、光線透過率と内部ヘーズを求めた。結果を表1に示す。
実施例2〜3における苦み成分含有層は、実施例1における苦み成分含有層よりも、安息香酸デナトニウムの含有量がさらに少ないため、これらの内部ヘーズは、実施例1における苦み成分含有層の内部ヘーズに対して、同等以下であると推測される。
実施例1〜3の多層フィルムは、収納物の視認性が高い包装体を構成可能である。
1c・・・多層フィルムの突出部
10・・・包装体
10a・・・包装体の収納部
12・・・苦み成分含有層
11・・・シーラント層
13・・・接着層
101・・・カバーフィルム
Claims (7)
- 一方の最表層となるように配置された苦み成分含有層と、他方の最表層となるように配置されたシーラント層と、を備え、
前記苦み成分含有層は、苦み成分として安息香酸デナトニウム又はその誘導体を含み、かつ水溶性である、多層フィルム。 - 前記苦み成分含有層の内部ヘーズが40%以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
- 前記苦み成分含有層の、安息香酸デナトニウム及びその誘導体の合計含有量が、1.2質量%以下である、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
- 前記苦み成分含有層が、水溶性樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層フィルムを備えた包装体であって、
前記多層フィルムの前記シーラント層によって、包装対象物の収納部が形成されており、
前記多層フィルムの前記苦み成分含有層が、前記包装体の前記収納部側とは反対側の最表層となっている、包装体。 - 前記多層フィルムの前記シーラント層側に、さらに、カバーフィルムを備え、
前記多層フィルムが、その一部の領域において、前記苦み成分含有層側に突出した突出部を有し、
前記多層フィルムの前記突出部と、前記カバーフィルムと、により、前記収納部が形成されており、
前記多層フィルムの前記突出部以外の領域が、前記カバーフィルムと接着されている、請求項6に記載の包装体。
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