本明細書で示されるように、本願発明者らは、さまざまな分解酵素を使用して、各種のアミロイドオリゴマー及びアミロイド線維の形成抑制及び/または分解が可能であることを発見した。これらのオリゴマー及び線維は、さまざまなアミロイド関連の疾患及び障害の発症に寄与し得るため、本発明は、対象のアミロイドーシスを治療または予防するための方法及び組成物を提供する。
アミロイドは、特定の構造特性を共有する不溶性の線維状タンパク質凝集体である。通常、可溶性のタンパク質が沈着してこの不溶性形態になると、細胞死及び組織変性をもたらし得る。現在までのところ、疾患関連のアミロイド沈着において18種の異なるタンパク質及びポリペプチドが同定されている。参照によりその全体が組み込まれるWestermark et al.(“Nomenclature of amyloid fibril proteins.Report from the meeting of the International Nomenclature Committee on Amyloidosis,August 8−9,1998.Part1.”Amyloid.1999 Mar;6(1):63−6.)を参照のこと。アミロイド線維は、直径約40〜120Åの長い直線状の非分岐フィラメントであり、コンゴーレッド及びチオフラビンTなどの生理的色素に結合し、プロテアーゼによる消化に対し耐性である。
本明細書で使用する場合、アミロイドーシスは、アミロイドの蓄積によって生じる疾患を指す。そのような疾患で本発明による治療または予防の対象となるものには、全身性ALアミロイドーシス、アルツハイマー病、2型真性糖尿病、パーキンソン病、伝達性海綿状脳症(例えば、ウシ海綿状脳症)、致死性家族性不眠症、ハンチントン病、甲状腺髄様癌、不整脈、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、家族性アミロイドポリニューロパチー、遺伝性非神経障害性全身性アミロイドーシス、透析アミロイドーシス、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、脳アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー(アイスランド型)、孤発性封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルト・ヤコブ病のようなプリオン関連脳症または海綿状脳症、レビー小体型認知症、パーキンソン症状を伴う前頭側頭型認知症、脊髄小脳失調症、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症、遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、家族性イギリス型認知症、家族性デンマーク型認知症、非神経障害性限局性疾患、例えば、II型真性糖尿病、甲状腺髄様癌、心房アミロイドーシス、遺伝性アミロイド性脳出血、下垂体プロラクチノーマ、注射部位限局性アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜ジストロフィー、腱毛乱生に関連した角膜アミロイドーシス、白内障、石灰化上皮性歯原性腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、皮膚苔癬アミロイドーシス、ならびに非神経障害性全身性アミロイドーシス、例えば、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、血液透析アミロイドーシス、ApoAIアミロイドーシス、ApoAIIアミロイドーシス、ApoAIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチーム・アミロイドーシス、フィブリノゲン・アミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、家族性アミロイドーシス、ならびに複数の組織に生じる全身性アミロイドーシス、例えば、軽鎖アミロイドーシス、ならびに他のさまざまな神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な実施形態では、アミロイドーシスは軽鎖(AL)アミロイドーシスである。さらなる例示的実施形態では、ALアミロイドーシスは、心臓、腎臓、神経系、及び胃腸管から選択される1つ以上の臓器に影響を与える。
いくつかの実施形態では、本発明は、対象のアミロイドーシスに関連する疾患を治療または予防するための方法及び組成物を提供し、ここで、かかる疾患はアミロイド−ベータ(AβまたはAベータ)ペプチドの形成に関連する。これらのペプチドはアミロイド前駆体タンパク質(APP)から生じ、アミロイド前駆体タンパク質がベータセクレターゼ及びガンマセクレターゼによって切断されてアミロイド−ベータができる。いくつかの実施形態では、アミロイド−ベータ形成に関連する疾患は、アルツハイマー病、脳アミロイドアンギオパチー、レビー小体認知症、及び封入体筋炎から選択される。
代替的実施形態では、本発明は、対象のアミロイドーシスに関連する疾患を治療または予防するための方法及び組成物を提供し、ここで、かかる疾患はアミロイドベータ形成に関連しない、すなわち、かかる疾患は、アミロイドベータ形成に関連する疾患以外の疾患、例えば、アルツハイマー病、脳アミロイドアンギオパチー、レビー小体認知症、及び封入体筋炎以外の疾患である。
一実施形態では、アミロイドーシスに関連する疾患は軽鎖(AL)アミロイドーシスである。別の実施形態では、アミロイドーシスに関連する疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、関節リウマチ、及びプリオン関連疾患から選択される。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスである。全身性アミロイドーシスには、進行性の臓器損傷をもたらすミスフォールドタンパク質の組織沈着を原因とする疾患の複合群が包含される。
上記のように、いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは軽鎖(AL)アミロイドーシス(原発性全身性アミロイドーシス(PSA)または原発性アミロイドーシスとしても知られる、すなわち、かかる別名もある)である。ALアミロイドーシスは、対象の抗体産生細胞が適切に機能せず、軽鎖と呼ばれる抗体成分で構成される異常なタンパク質繊維を産生する場合に生じる状態を指す。いくつかの実施形態では、そのような軽鎖は1つ以上の異なる臓器でアミロイド沈着を形成し、これらの臓器を損傷し得る、または既に損傷を起こしている。いくつかの実施形態では、異常な軽鎖は血液中及び/または尿中にある。いくつかの実施形態では、異常な軽鎖は「ベンス−ジョーンズ蛋白」である。いくつかの実施形態では、ALアミロイドーシスは心臓、末梢神経系、胃腸管、血液、肺及び/または皮膚に影響を与える。ALアミロイドーシスの臨床像には一群の症状及び臓器機能不全も含まれ得、それらには心機能不全、腎機能不全、肝機能不全、消化管障害、神経障害及び巨舌症を挙げることができる。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスはAAアミロイドーシス(別名、続発性アミロイドーシス、AA)であり、血清アミロイドA蛋白(SAA)と呼ばれる沈着したタンパク質によって生じる。いくつかの実施形態では、SAAタンパク質は主に肝臓、脾臓及び/または腎臓に沈着している。いくつかの実施形態では、AAアミロイドーシスはネフローゼ症候群をもたらす。いくつかの実施形態では、AAアミロイドーシスは、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、強直性脊椎炎、またはクローン病及び潰瘍性大腸炎)、慢性感染症(例えば、結核、気管支拡張症、または慢性骨髄炎)、自己炎症性疾患(例えば、家族性地中海熱(FMF)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)、癌(例えば、ホジキンリンパ腫、腎細胞腫)、及び/または慢性異物反応(例えば、シリコーンによる肉芽腫性反応)によって生じる。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは家族性アミロイドーシスである。いくつかの実施形態では、家族性アミロイドーシスは、ATTRアミロイドーシス(別名、または老人性全身性アミロイドーシス)であり、異常なトランスサイレチンタンパク質を産生するトランスサイレチン(TTR)遺伝子変異など、1つ以上の遺伝性アミロイドーシスが原因である。いくつかの実施形態では、家族性アミロイドーシスは、アポリポタンパク質A−I(AApoAI)、アポリポタンパク質A−II(AApoAII)、ゲルソリン(AGel)、フィブリノゲン(AFib)、リゾチーム(ALys)、及び/またはLect2の1つ以上の変異によって生じる。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスはベータ−2ミクログロブリンアミロイドーシス(Aベータ2m)である。ベータ−2ミクログロブリンアミロイドーシスは慢性腎不全によって生じ、長年にわたり透析を受けている患者に生じることが多い。アミロイド沈着は、腎不全のため腎臓からの排泄が行えない場合に組織、特に関節周辺に蓄積したベータ−2ミクログロブリン蛋白で構成されている。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは限局性アミロイドーシス(ALoc)である。いくつかの実施形態では、限局性アミロイドは、気道(気管または気管支)、目、または膀胱に沈着する。いくつかの実施形態では、ALocは、骨髄由来ではない免疫グロブリン軽鎖の局所的産生によって生じる。いくつかの実施形態では、ALocは、内分泌タンパク質、または皮膚、心臓、及び他の部位で産生されるタンパク質に関連している。これらは通常、全身性とはならない。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは、対象の腎臓に生じる。いくつかの実施形態では、腎アミロイドーシスはAAアミロイドーシスである。いくつかの実施形態では、AAアミロイドーシスはネフローゼ症候群をもたらす。いくつかの実施形態では、腎アミロイドーシスはALアミロイドーシスである。いくつかの実施形態では、ALアミロイドーシスに関連した腎疾患及び腎不全の症状としては、体液貯留、腫脹、及び息切れが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは、対象の心臓に生じる。いくつかの実施形態では、心アミロイドーシスはALアミロイドーシスである。いくつかの実施形態では、心アミロイドーシスは心不全及び/または不整脈をもたらす。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは、対象の胃腸管に生じる。いくつかの実施形態では、GIアミロイドーシスの症状として、食道逆流、便秘、悪心、腹痛、下痢、体重減少、及び早期満腹感が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは、十二指腸、胃、大腸、及び/または食道に生じる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療方法により、アミロイドーシスに関連した症状の1つ以上の軽減、重症度低下、または発生率低下が提供される。そのような症状には、軽鎖(AL)アミロイドーシス(原発性全身性アミロイドーシス)及び/またはAAアミロイドーシス(続発性アミロイドーシス)に関連した症状が含まれる。いくつかの実施形態では、症状には、体液貯留、腫脹、息切れ、疲労、不整脈、手足のしびれ感、発疹、息切れ、嚥下困難、手足の腫脹、食道逆流、便秘、悪心、腹痛、下痢、早期満腹感、脳卒中、胃腸障害、肝腫大、脾機能低下、副腎及び他の内分泌腺の機能低下、皮膚の色の変化または腫瘍、肺の問題、出血及び挫傷の問題、疲労及び体重減少、尿量減少、下痢、嗄声または声の変化、関節痛、ならびに脱力が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、症状は、アミロイド−ベータ(Aβ)アミロイドーシスに関連した症状である。いくつかの実施形態では、症状には、記憶喪失、錯乱、視覚イメージと空間的関係の理解障害、及び会話または書字の問題を含む、アルツハイマー病の一般的症状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法による「対象」という用語には、疾患または病態に罹患している、罹患が疑われる、または罹患のリスクがある、任意の対象が含まれる。好適な対象(または患者)には、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、家畜、及び飼育動物またはペット(例えば、ネコ、イヌ)などの哺乳類が含まれる。非ヒト霊長類及びヒト患者も含まれる。「リスクがある」対象は、検出可能な疾患に罹患していても罹患していなくてもよく、本明細書に記載の予防または治療の方法より以前に、検出可能な疾患が認められていても認められていなくてもよい。「リスクがある」とは、対象がいわゆる危険因子を1つ以上有していることを意味し、それらの危険因子は、本明細書に記載する疾患、障害、病態、または症状のいずれか1つと相関する測定可能なパラメータである。これらの危険因子を1つ以上有する対象は、これらの危険因子(複数可)がない対象よりも、本明細書に記載する疾患、障害、病態、または症状のいずれか1つを発症する確率が高い。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、アミロイドーシスに罹患しているか、またはアミロイドーシスに起因もしくは関連する疾患/症状があると診断されたヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、アミロイドーシスが疑われるヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、アミロイドーシスを発症するリスクが高いヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載する疾患/病態/症状の1つ以上が見られるアミロイドーシス患者である。
本明細書で使用する「治療すること」及び「治療」という用語は、臨床結果を含め、有益であるかまたは所望される結果を得るための方法を指し、それには、治療される疾患または病態の測定可能マーカーの1つ以上における変化または改善がたとえ最小限であっても含まれ得る。治療は通常、病態、疾患、障害、傷害または損傷の少なくとも1つの症状の軽減に有効である。臨床的改善の例示的マーカーは当業者には明らかであろう。例としては、疾患により生じる1つ以上の症状の重症度及び/もしくは頻度の低下、疾患の程度の軽減、疾患の安定化(例えば、疾患悪化の予防または遅延)、疾患進行の遅延もしくは減速、疾患状態の改善、疾患の治療に要する他剤の1つ以上の用量減少、ならびに/または生活の質の向上などのうち1つ以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「予防投与」、「予防治療」、「予防」、または「予防的治療」は、1つ以上の症状及び/もしくはその基礎原因の発生または重症度を予防するかまたは低下させること、例えば、疾患または病態を発症しやすい対象(例えば、遺伝的素因、環境因子、素因となる疾患または障害等の結果として、リスクが高い対象)の疾患または病態の予防を指す。
本発明は、対象のアミロイドーシスを治療または予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、対象に対し、治療的有効量の少なくとも1種の分解酵素またはその生物学的に活性な断片を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象における少なくとも1種の分解酵素の発現、活性、及び/または濃度を高めることを含む。所与の分解酵素の発現、活性、及び/または濃度の増加は、ゲノムDNAレベル、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベル、及び/または翻訳後レベルで達成してよく、それらには、遺伝子コピー数、mRNA転写速度、mRNA存在量、mRNA安定性、タンパク質翻訳速度、タンパク質安定性、タンパク質修飾、タンパク質活性、タンパク質複合体活性などを高めることが挙げられるが、これらに限定されるものではない。所与の分解酵素の濃度上昇はさらに、対象に対し、治療的有効量の少なくとも1種の分解酵素またはその生物学的に活性な断片を含む組成物を投与することによって達成され得る。本明細書で使用する場合、分解酵素という用語は、酵素の天然型だけではなく、天然酵素の任意の精製変異型、単離変異型、合成変異型、組換え変異型、及び機能性変異型、断片、キメラ、ならびに変異体も指す。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、保護タンパク質/カテプシンA(PPCA)、ノイラミニダーゼ1(NEU1)、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、及びカテプシンLからなる非限定的な群から選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、PPCA(別名、保護タンパク質カテプシンA、PPGB、カルボキシペプチダーゼC、EC3.4.16.5、GSL、GLB2、カルボキシペプチダーゼY様キニナーゼ、NGBE、カルボキシペプチダーゼ−L、ベータ−ガラクトシダーゼの保護タンパク質(ガラクトシアリドーシス)、デアミダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リソソームカルボキシペプチダーゼA、ベータ−ガラクトシダーゼ保護タンパク質、リソソーム保護タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼの保護タンパク質、尿キニナーゼ、EC3.4.168、またはカルボキシペプチダーゼL)であり、カテプシン及びカルボキシペプチダーゼの両方に分類される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、PPCAである。PPCAは糖タンパク質であり、リソソーム酵素のベータガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼと会合して高分子多量体の複合体を形成する。この複合体の形成は、安定性及び活性にとって保護機能を果たす。これは、β−ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼにとっての保護となる。いくつかの実施形態では、PPCAは、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、PPCAポリペプチドは、配列番号2、43、または45に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、PPCAポリペプチドは、配列番号2、43、または45のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、ノイラミニダーゼ1(NEU1、別名、シアリダーゼ1、リソソームシアリダーゼ、EC3.2.1.18、アセチルノイラミニルヒドロラーゼ、SIAL1、リソソームシアリダーゼ、エキソ−アルファ−シアリダーゼ、NANH、シアリダーゼ−1、またはG9シアリダーゼ)であり、リソソーム性ノイラミニダーゼ酵素である。NEU1は、糖タンパク質及び糖脂質などの基質から末端シアル酸残基を切断する酵素である。いくつかの実施形態では、NEU1は、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、NEU1ポリペプチドは、配列番号4に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態ではNEU1ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1、脊髄小脳失調症、常染色体劣性7、CLN2、SCAR7、増殖抑制タンパク質1、細胞増殖抑制遺伝子1タンパク質、リソソームのペプスタチン非感受性プロテアーゼ、トリペプチジルアミノペプチダーゼ、トリペプチジル−ペプチダーゼ1、LPIC、リソソームのペプスタチン−非感受性プロテアーゼ、またはEC3.4.14.9)である。TPP1は、基質からN末端トリペプチドを切断する酵素であり、エンドペプチダーゼ活性が弱い。いくつかの実施形態では、TPP1は、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、TPP1ポリペプチドは、配列番号6に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、TPP1ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、カテプシンB(別名、EC3.4.22.1、CPSB、アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼ、システインプロテアーゼ、APPS、APPセクレターゼ、またはEC3.4.22)である。カテプシンBは、単一のタンパク質前駆体から産生された重鎖と軽鎖がジスルフィド結合した二量体で構成される、リソソームのシステインプロテアーゼである。いくつかの実施形態では、カテプシンBは、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、カテプシンBポリペプチドは、配列番号8、47、49、51、53、55、または57に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンBポリペプチドは、配列番号8、47、49、51、53、55、または57のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、カテプシンD(別名、EC3.4.23.5、CTSD)である。カテプシンDは、細胞内のタンパク質分解において活性な、リソソームの酸性プロテアーゼを指す。いくつかの実施形態では、カテプシンDは、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、カテプシンDポリペプチドは、配列番号68に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンDポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンDポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列に対して1つ以上の修飾を有する。ある実施形態では、カテプシンDポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列を含み、ここで、かかるポリペプチドは、位置58(AをVに)、位置229(FをIに)、位置282(GをRに)、及び位置383(WをCに)から選択されるアミノ酸位置での修飾を有する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、カテプシンE(別名、EC3.4.23.34、CTSE)である。カテプシンEはリソソームのアスパルチルプロテアーゼである。いくつかの実施形態では、カテプシンEは、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、カテプシンEポリペプチドは、配列番号69、70、または71に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンEポリペプチドは、配列番号69、70、または71のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンEポリペプチドは、配列番号69、70、または71のアミノ酸配列に対して1つ以上の修飾を有する。ある実施形態では、カテプシンEポリペプチドは、配列番号69のアミノ酸配列を含み、ここで、かかるポリペプチドは、位置82(IをVに)及び位置329(TをIに)から選択されるアミノ酸位置での修飾を有する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、カテプシンK(別名、EC3.4.22.38、CTSO、濃化異骨症、PYCD、カテプシス(Cathepsis)O、PKND、カテプシンX)である。カテプシンKは、骨リモデリング及び骨吸収に関与する、リソソームのシステインプロテアーゼであり、そのキニンに対する高特異性で定義される。いくつかの実施形態では、カテプシンKは、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、カテプシンKポリペプチドは、配列番号10に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンKポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素は、カテプシンL(別名、MEP、CTSL、EC3.4.22.15、CATL、主要排泄タンパク質(Major Excreted Protein))である。カテプシンLは、リソソームのエンドペプチダーゼ酵素であり、タンパク質分解開始に関与している。その基質には、コラーゲン及びエラスチン、ならびに好中球エラスターゼ活性の主要制御エレメントであるアルファ−1プロテアーゼ阻害因子が挙げられる。いくつかの実施形態では、カテプシンLは、天然、合成、または組換え型のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、カテプシンLポリペプチドは、配列番号12、59、61、63、65、または67に対する配列同一性が少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カテプシンLポリペプチドは、配列番号12、59、61、63、65、または67のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、投与は、本発明の少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列の投与を含む。
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、「核酸断片」、「ヌクレオチド配列」、及び「単離された核酸断片」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。これらの用語にはヌクレオチド配列等が包含される。ポリヌクレオチドは、任意選択で、合成、非天然型または改変型のヌクレオチド塩基を含有する、一本鎖もしくは二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーであってよい。DNAのポリマー形態のポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、またはその混合の1つ以上のセグメントで構成されてよい。ヌクレオチド(通常はその5′−一リン酸型で見られる)は、一文字表記によって言及され、すなわち、「A」はアデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれ、RNAまたはDNAの場合)、「C」はシチジル酸またはデオキシシチジル酸、「G」はグアニル酸またはデオキシグアニル酸、「U」はウリジル酸、「T」はデオキシチミジル酸、「R」はプリン(AまたはG)、「Y」はピリミジン(CまたはT)、「K」はGまたはT、「H」はAまたはCまたはT、「I」はイノシン、及び「N」は任意のヌクレオチドである。
本明細書で使用する場合、核酸配列またはタンパク質配列の記載における「キメラ」または「組換え型」という用語は、少なくとも2つの異種ポリヌクレオチドもしくは2つの異種ポリペプチドを連結して単一高分子にするか、または少なくとも1つの天然の核酸もしくはタンパク質の配列のエレメント1つ以上を再構成する、核酸またはタンパク質配列を指す。例えば、用語「組換え型」は、配列の本来別々になっている2つのセグメントを、例えば、化学合成、または遺伝子工学技術で単離された核酸セグメントの操作を手段として、人工的に組み合わせることを指し得る。
本明細書で使用する場合、「合成ヌクレオチド配列」または「合成ポリヌクレオチド配列」は、天然に生じることが既知ではないかまたは天然には生じないヌクレオチド配列である。一般に、そのような合成ヌクレオチド配列には、天然に生じる他の任意のヌクレオチド配列と比較した場合にヌクレオチドの相違が少なくとも1つ含まれることになる。本発明の遺伝子調節エレメントは合成ヌクレオチド配列を含むと認識される。いくつかの実施形態では、合成ヌクレオチド配列は、天然配列に対する伸長相同性をほとんど、または全く共有しない。この場合の伸長相同性とは、一般に、約25ヌクレオチドの連続配列を超えて伸長する100%配列同一性を指す。本発明の合成の遺伝子調節エレメントは合成ヌクレオチド配列を含む。
本明細書で使用する場合、「単離された」または「精製された」核酸分子もしくはポリヌクレオチド、またはその生物学的に活性な部分は、その天然に生じる環境において通常は核酸分子もしくはポリヌクレオチドとの付随または相互作用が見られる成分を実質的または本質的に含まない。したがって、単離または精製された核酸分子もしくはポリヌクレオチドは、組換え技術で作製した場合に他の細胞物質もしくは培地を実質的に含まないか、または化学的に合成した場合に化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない。
いくつかの実施形態では、方法は、発現ベクター(本明細書ではベクターと同じ意味で言及される)を含む組成物を対象に投与することを含み、ここで、かかるベクターは、少なくとも1種の分解酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に対し、コード遺伝子の発現カセットを含む少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、発現ベクターはウイルスベクターである。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象に対し、少なくとも1種の分解酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、発現カセット、発現ベクター、またはウイルスベクターはさらに、シグナルペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドはリソソーム内局在ペプチドである。
少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列は、参照によりその全体が組み込まれる、Rollandにより記載されているような(Pharmaceutical Gene Delivery Systems,ISBN:978−0−8247−4235−5,2003)任意の好適な送達システムを介して対象に送達され得る。いくつかの実施形態では、送達システムはウイルスシステム、物理的システム、及び/または化学的システムである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列を送達するための送達システムはウイルスシステムである。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターを使用する(Thrasher et al.,Gene therapy:X−SCID transgene leukaemologenicity.Nature.2006;443(7109):E5−E6;Zhang et al.,Adenoviral and adeno−associated viral vectors−mediated neuronal gene transfer to cardiovascular control regions of the rat brain.Int J Med Sci.2013;10(5):607−616.を参照のこと)。いくつかの実施形態では、アデノ関連ベクターを使用する(Teramato et al.,Crisis of adenoviruses in human gene therapy.Lancet.2000;355(9218):1911−1912,Okada et al.,Gene transfer targeting mouse vestibule using adenovirus and adeno−associated virus vectors.Otol Neurotol.2012;33(4):655−659.を参照のこと)。いくつかの実施形態では、レトロウイルスベクターを使用する(Anson et al.,The use of retroviral vectors for gene therapy−what are the risks? A review of retroviral pathogenesis and its relevance to retroviral vector−mediated gene delivery.Genet Vaccines Ther.2004;2(1):9.;Frederic D.Retroviral integration and human gene therapy.J Clin Invest.2007;117(8):2083−2086.を参照のこと)。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターを使用する(Goss et al.,Antinociceptive effect of a genomic herpes simplex virus−based vector expressing human proenkephalin in rat dorsal root ganglion.Gene Ther.2001;8(7):551−556.;Real et al.,Improvement of lentiviral transfer vectors using cis−acting regulatory elements for increased gene expression.Appl Microbiol Biotechnol.2011;91(6):1581−91.を参照のこと)。いくつかの実施形態では、単純ヘルペスウイルスベクターを使用する(Lachmann RH,Efstathiou S.The use of herpes simplex virus−based vectors for gene delivery to the nervous system.Mol Med Today.1997;3(9):404−411;Liu S,Dai M,You L,Zhao Y.Advance in herpes simplex viruses for cancer therapy.Sci China Life Sci.2013;56(4):298−305.を参照のこと)。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスベクターを使用する(Moss B.Reflections on the early development of poxvirus vectors.Vaccine.2013;31(39):4220−4222.を参照のこと)。参考文献の各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、本発明の少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列を送達するための送達システムは、物理的システムである。いくつかの実施形態では、物理的システムには、ジェット注射、微粒子銃、電気穿孔法、ハイドロダイナミック法(hydrodynamic injection)、及び超音波が挙げられるが、これらに限定されるものではない(Sirsi et al..Advances in ultrasound mediated gene therapy using microbubble contrast agents.Theranostics.2012;2(12):1208−1222.;Naldini et al.,In vivo gene delivery and stable transduction of nondividing cells by a lentiviral vector.Science.1996;272(5259):263−267;Panje et al.,Ultrasound−mediated gene delivery with cationic versus neutral microbubbles:Effect of DNA and microbubble dose on in vivo transfection efficiency.Theranostics.2012;2(11):1078−1091;Gao et al.,Cationic liposome−mediated gene transfer.Gene Ther.1995;2(10):710−722;Orio et al.,Electric field orientation for gene delivery using high−voltage and low−voltage pulses.J Membr Biol.2012;245(10):661−666を参照のこと)。参考文献の各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、本発明の少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列を送達するための送達システムは、化学的システムである。化学的システムには、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム及びポリマー担体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、化学的システムは、DNAを封入するリン酸カルシウムナノコンポジット粒子などのリン酸カルシウム沈殿に基づいている(Nouri et al.Calcium phosphate−mediated gene delivery using simulated body fluid(SBF).Int J Pharm.2012;434(1−2):199−208;Bhakta et al.Magnesium phosphate nanoparticles can be efficiently used in vitro and in vivo as non−viral vectors for targeted gene delivery.J Biomed Nanotechnol.2009;5(1):106−114を参照のこと)。
いくつかの実施形態では、本発明の少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列を送達するための化学的システムは、リポソームに基づいている。いくつかの実施形態では、リポソームはナノサイズである。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)ならびに/またはリガンド及びペプチドなどの他の分子と結合させたリポソームを使用できる(Yang et al.Cationic nucleolipids as efficient siRNA carriers.Org Biomol Chem.2011;1(9):291−296.を参照のこと)。
いくつかの実施形態では、本発明の少なくとも1種の分解酵素をコードするヌクレオチド配列を送達するための化学的システムは、ポリマー担体に基づいている。いくつかの実施形態では、送達すべき遺伝子にポリマー担体を結合させる。いくつかの実施形態では、ポリマー担体には、キトサン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリアミノエステル、ポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、及びPLL、例えば、Choi et al.,Enhanced transfection efficiency of PAMAM dendrimer by surface modification with l−arginine.J Control Release.2004;3(99):445−456;Pfeifer et al.,Poly(ester−anhydride):poly(beta−amino ester)micro− and nanospheres:DNA encapsulation and cellular transfection.Int J Pharm.2005;304(1−2):210−219;Anderson et al.,Structure/property studies of polymeric gene delivery using a library of poly(beta−amino esters).Mol Ther.2005;3(11):426−434;Hwang et al.,Effects of structure of beta−cyclodextrin−containing polymers on gene delivery.Bioconjugate Chem.2001;2(12):280−290;Kean et al.,Trimethylated chitosans as non−viral gene delivery vectors:cytotoxicity and transfection efficiency.J Control Release.2005;3(103):643−653に記載のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、分解酵素の投与は、本発明の少なくとも1種の分解酵素のポリペプチドまたはその断片の投与を含む。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は本明細書では同じ意味で使用される。
本発明はまた、本明細書に記載するリソソーム内分解酵素の機能性変異型または機能性断片の使用を想定し、かつ包含する。本明細書で使用する場合、タンパク質に関して「生物学的に活性な変異型」または「機能性変異型」という語句は、参照配列に関して1つ以上のアミノ酸が改変されているが、参照配列の実質的な生物学的活性は依然として維持されているアミノ酸配列を指す。変異型は、「保存的」変更を有してよく、ここで、置換アミノ酸は、例えば、ロイシンのイソロイシンへの置換のように、構造上または化学的な特性が類似している。以下の表は、例示的な保存的アミノ酸置換を示す。
別法として、変異型は、「非保存的」変更、例えば、グリシンのトリプトファンへの置換を有してよい。同様の軽微な変更には、アミノ酸の欠失もしくは挿入、またはその両方も含まれ得る。生物学的または免疫学的な活性を消失させずに置換、挿入、または欠失が可能なアミノ酸残基を決定する際の指針は、当技術分野で周知のコンピュータプログラム、例えば、DNASTARソフトウェアを使用して見出すことができる。ポリヌクレオチドの場合、変異型は、5’及び/もしくは3’末端での欠失(すなわち、切断)を有するポリヌクレオチド;参照ポリヌクレオチド内部の1つ以上の部位における1つ以上のヌクレオチドの欠失及び/もしくは付加を有するポリヌクレオチド;ならびに/または参照ポリヌクレオチドの1つ以上の部位における1つ以上のヌクレオチドの置換を有するポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用する場合、「参照」ポリヌクレオチドは、本明細書に開示の方法で作成したヌクレオチド配列を含む。変異型ポリヌクレオチドには、例えば、部位特異的変異の導入を使用して作製されてはいるが、遺伝子調節エレメント活性を依然として含んでいる、合成によるポリヌクレオチドも含まれる。一般に、特定のポリヌクレオチドもしくは核酸分子の変異型、または本発明のポリペプチドは、配列アラインメントプログラム及び本明細書の他の箇所に記載のパラメータによって決定した場合に、その特定のポリヌクレオチド/ポリペプチドに対して少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%またはそれ以上の配列同一性を有することになる。
いくつかの実施形態では、本発明の分解酵素をコードする核酸配列とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能な遺伝子を使用できる。「ストリンジェンシー」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、ハイブリッドの安定性に影響を与えるハイブリダイゼーション条件、例えば、温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度等を指す。これらの条件を経験的に最適化して、プライマーまたはプローブとその標的核酸配列との特異的結合を最大化し、かつ非特異的結合を最小化する。これらの用語の使用には、プローブまたはプライマーが、検出可能なほどの高い程度で(例えば、バックグラウンドに対して少なくとも2倍)その標的配列とハイブリダイズするような条件への言及が含まれる。ストリンジェントな条件は配列に依存し、さまざまな状況によって異なってくる。長い配列は特に高温でハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度とpHにおいて特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるよう選択される。Tmは、相補的標的配列の50%が、完全にマッチするプローブまたはプライマーとハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度とpHにおいて)である。典型的に、ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0M未満のNa+イオン、典型的に約0.01〜1.0MのNa+イオン濃度(または他の塩)であり、温度は、短いプローブまたはプライマー(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブまたはプライマー(例えば、50ヌクレオチド超)では少なくとも約60℃である条件となろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤を添加して達成してもよい。例示的な低ストリンジェントな条件または「低ストリンジェンシーの条件」には、30%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液と37℃でのハイブリダイゼーション、及び40℃、2×SSCでの洗浄が含まれる。例示的な高ストリンジェンシー条件には、50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSで37℃でのハイブリダイゼーション、及び60℃、0.1×SSCでの洗浄が含まれる。ハイブリダイゼーションの手順は当技術分野において周知であり、例えば、Ausubelら(1998)及びSambrookら(2001)により記載されている。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件は、1mM Na2EDTA、0.5〜20%のドデシル硫酸ナトリウム、例えば0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%を含有している0.25M Na2HPO4バッファー(pH7.2)中で45℃にてハイブリダイゼーションし、その後、0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム含有5×SSCで55℃〜65℃にて洗浄する。
各分解酵素の定義には、本明細書で言及される特定の分解酵素の核酸配列及び/またはポリペプチド配列に対する類似性または同一性が高い配列が含まれる。本明細書で使用する場合、2つの核酸配列もしくはポリペプチド配列における「配列同一性」または「同一性」には、特定の比較枠にわたり最大一致度についてアラインメントを行った場合に同一である、2つの配列の残基への言及が含まれる。タンパク質に関して配列同一性パーセンテージを使用する場合、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なっていることが多いと認識される。保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は、化学特性(例えば、電荷または疎水性)が類似した他のアミノ酸残基に置換され、そのため、その分子の機能特性が変化することはない。配列が保存的置換において異なる場合、配列同一性パーセントは、上方調節を行ってその置換の保存的性質について補正してよい。そのような保存的置換によって異なっている配列の場合、「配列類似性」または「類似性」と言う。この調節を行う手段は当業者に周知である。その場合、典型的には、保存的置換を完全ミスマッチとしてではなく部分的ミスマッチとしてスコアリングし、これにより配列同一性パーセンテージを高める。したがって、例えば、同一なアミノ酸に1のスコアを、また非保存的置換にゼロのスコアを与える場合、保存的置換にはゼロと1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、Meyers and Miller,Computer Applic.Biol.Sci.,4:11−17(1988)のアルゴリズムに従って計算される。
本発明には、本明細書に記載する分解酵素の生物学的に活性な断片も含まれる。これらの生物学的に活性な断片は、少なくとも10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、またはそれ以上のアミノ酸残基を含んでよく、また本明細書に記載する分解酵素に関連した1つ以上の活性を保持してよい。そのような断片は、欠失変異により、または当技術分野で常套的かつ周知の組換え技術により得てもよいし、または多数ある周知のタンパク質分解酵素の任意のものを使用して、関心対象の分解酵素(複数可)を酵素的に消化させることにより得てもよい。本発明にはさらに、上記の変異酵素及び酵素断片をコードする核酸分子が含まれる。
いくつかの実施形態では、方法は、対象に対し、治療的有効量もしくは予防的有効量の少なくとも1種の分解酵素を含む組成物を投与することを含む。本明細書で使用する「治療的有効量」という用語は、アミロイドーシスの治療、または傷害もしくは損傷の軽減もしくは予防に必要な1種以上の分解酵素のレベルまたは量を指し、任意選択で、重大な負の副作用または有害な副作用を生じさせない。「予防的有効量」は、アミロイドーシスもしくはアミロイドーシスに関連する病態に罹患しやすく、かつ/またはかかる病態を発症し得る対象に投与した場合に、将来的にアミロイドーシス関連の疾患もしくは病態に罹患した際の重症度を抑えるかまたは低下させるために十分な分解酵素の量を指す。
いくつかの実施形態では、方法は、本発明の分解酵素をコードするポリヌクレオチド配列の投与の代わりまたは追加として、本発明の分解酵素もしくはその生物学的に活性な断片を含むポリペプチドを含む組成物を、必要としている対象に直接投与することを含む。
いくつかの実施形態では、分解酵素はリソソーム内空間を標的とする。いくつかの実施形態では、投与されるべき分解酵素は、ポリペプチドをリソソームへ選別するのを助ける1つ以上のシグナルを含む。いくつかの実施形態では、シグナルは、リソソーム局在シグナルポリペプチド、単糖(誘導体を含む)、多糖、またはその組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態では、シグナルはマンノース−6リン酸である。マンノース−6リン酸を含む分解酵素は、マンノース−6リン酸受容体の助けによりリソソームを標的とすることができる。
いくつかの実施形態では、シグナルはマンノース−6リン酸に依存しない。いくつかの実施形態では、シグナルはシグナルペプチドである。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、投与されるべきリソソーム内分解酵素のN末端、C末端、または他の箇所に位置する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドには、DXXLL型(配列番号13)、[DE]XXXL[LI]型(配列番号14)、及びYXXO型(配列番号15)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。各々が参照によりその全体が組み込まれるBonifacino et al.,Signals for sorting of transmembrane proteins to endosomes and lysosomes,Annu.Rev.Biochem.72(2003)395−447;及びBrualke et al.(Sorting of lysosomal proteins,Biochimica et Biophysica Acta 1793(2009)605−614)を参照のこと。
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、MPR300/CI−MPR(SFHDDSDEDLL、配列番号16)、MPR46/CD−MPR(EESEERDDHLL、配列番号17)、Sortilin(GYHDDSDEDLL、配列番号18)、SorLA/SORL1(ITGFSDDVPMV、配列番号19)、GGA1(1)(ASVSLLDDELM、配列番号20)、GGA1(2)(ASSGLDDLDLL、配列番号21)、GGA2(VQNPSADRNLL、配列番号22)、及びGGA3(NALSWLDEELL、配列番号23)において識別されるようなDXXLL型に属する。
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、LIMP−II(DERAPLI、配列番号24)、NPC1(TERERLL、配列番号25)、Mucolipin−1(SETERLL、配列番号26)、Sialin(TDRTPLL、配列番号27)、GLUT8(EETQPLL、配列番号28)、インバリアント鎖(Ii)(1)(DDQRDLI、配列番号29)、及びインバリアント鎖(Ii)(2)(NEQLPML、配列番号30)において識別されるような[DE]XXXL[LI]型に属する。
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、LAMP−1(GYQTI、配列番号31)、LAMP−2A(GYEQF、配列番号32)、LAMP−2B(GYQTL、配列番号33)、LAMP−2C(GYQSV、配列番号34)、CD63(GYEVM、配列番号35)、CD68(AYQAL、配列番号36)、エンドリン(Endolyn)(NYHTL、配列番号37)、DC−ランプ(GYQRI、配列番号38)、シスチノシン(GYDQL、配列番号39)、糖リン酸交換体2(GYKEI、配列番号40)、及び酸性ホスファターゼ(GYRHV、配列番号41)において識別されるようなYXXO型に属する。
いくつかの実施形態では、分解酵素は細胞の外部に留まるよう標的化され、すなわち、酵素は細胞外で作用するよう改変される。いくつかの実施形態では、投与されるべき分解酵素は、本来ポリペプチドをリソソームに指向させるはずの1つ以上のシグナルを欠く。いくつかの実施形態では、分解酵素は、1つ以上のマンノース−6リン酸(すなわち、M6P)シグナルを欠き、これにより分解酵素の細胞内侵入を不可能にする。いくつかの実施形態では、分解酵素を組換えにより操作して1つ以上のマンノース−6リン酸シグナルを欠失させる。いかなる理論にも拘束されることなく、M6P含有量を少なくすることにより、組換え型酵素のM6P受容体に対する結合親和性が下がり、その細胞内への取り込みが抑制され、これにより酵素は細胞外部に留まることが可能になることは、当該技術分野において一般に理解されている。
組換えタンパク質、例えば、分解酵素のM6P含有量を少なくする方法は、当技術分野で公知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,354,105号を参照のこと。いくつかの実施形態では、細胞培養条件を、細胞が産生する糖タンパク質のマンノース含有量が低くなるよう操作することによって組換え型分解酵素のマンノース含有量を少なくしてよい。本明細書で使用する場合、「低マンノース含有量」という用語は、マンノース残基を4つ以上有する(すなわち、M5またはそれ以上の種)酵素が組成物中に約20%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、もしくは上記範囲の間にある任意の値、または0%である分解酵素組成物を指す。
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも2種の分解酵素を含む組成物を提供し、ここで、かかる組成物は、細胞リソソームを標的とする少なくとも1種の分解酵素及び細胞の外部に留まる少なくとも1種の分解酵素を含む。いくつかの実施形態では、分解酵素は、保護タンパク質/カテプシンA(PPCA)、ノイラミニダーゼ1(NEU1)、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、及びカテプシンLから選択される。例示的な一実施形態では、本発明は、少なくとも2種の分解酵素を含む組成物を提供し、ここで、かかる組成物は、細胞リソソームを標的とするPPCA分解酵素及び細胞の外部に留まるPPCA分解酵素を含む。いくつかの実施形態では、組成物内のリソソーム内分解酵素と細胞外分解酵素との百分率による比は少なくとも5%:95%である。さらなる実施形態では、組成物内のリソソーム内分解酵素と細胞外分解酵素との百分率による比は少なくとも10%:90%、少なくとも15%:85%、少なくとも20%:80%、少なくとも25%:75%、少なくとも30%:70%、少なくとも35%:65%、少なくとも40%:60%、少なくとも45%:55%、少なくとも50%:50%、少なくとも55%:45%、少なくとも60%:40%、少なくとも65%:35%、少なくとも70%:30%、少なくとも75%:25%、少なくとも80%:20%、少なくとも85%:15%、少なくとも90%:10%、または少なくとも95%:5%である。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象に対し、治療的有効量の少なくとも2種、3種、またはそれ以上の分解酵素を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象において、少なくとも2種、3種、もしくはそれ以上の分解酵素の発現、活性、及び/または濃度を高めることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に対し、少なくとも2種、3種、またはそれ以上の分解酵素をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に対し、少なくとも2種、3種またはそれ以上の分解酵素をコードする少なくとも2つ、3つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列を含む1つ以上の発現カセットを投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に対し、治療的有効量の第1の分解酵素と、第2の分解酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットとを投与することを含む。いくつかの実施形態では、2種以上の分解酵素は、保護タンパク質/カテプシンA(PPCA)、ノイラミニダーゼ1(NEU1)、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、及びカテプシンLからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の分解酵素はPPCA及びNEU1である。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素の投与を使用して、アミロイド形成を抑制する。他の実施形態では、少なくとも1種の分解酵素の投与を使用して、既に形成されているアミロイドを分解する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素の投与を使用して、1つ以上のアミロイドオリゴマーの形成を抑制する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素の投与を使用して、1つ以上のアミロイド線維の形成を抑制する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素の投与を使用して、1つ以上のアミロイドオリゴマーを、それらが既に形成された後に分解する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素の投与を使用して、1つ以上のアミロイド線維を、それらが既に形成された後に分解する。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する本発明の方法はさらに、少なくとも1種の分解酵素またはその断片を、少なくとも1つのさらなるアミロイドーシスの治療もしくは予防用の薬物と共に含む組成物(例えば、医薬組成物)を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬物はステロイド剤である。いくつかの実施形態では、ステロイド剤は、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンまたはその任意の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬物は非ステロイド剤である。いくつかの実施形態では、そのような非ステロイド剤は、ジクロフェナク、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、ジフルニサル、デトプロフェン(detoprofen)、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメアート(meclofenameate)、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメオン(nabumeone)、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン、サリチル酸コリン、サルサルト(salsalte)、ならびにナトリウム及びマグネシウムのサリチル酸塩またはその任意の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬物は化学療法剤である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、シクロホスファミド(例えば、シトキサン、ネオサール)及びメルファラン(例えば、アルケラン)からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、対象に炎症症状がある場合、少なくとも1つのさらなる薬物は抗炎症薬剤である。
いくつかの実施形態では、対象に感染症状がある場合、少なくとも1つのさらなる薬物は抗生物質である。いくつかの実施形態では、感染は慢性感染である。いくつかの実施形態では、感染は微生物感染である。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬物は、カルボニックアンヒドラーゼ(CA)酵素(例えば、CA−I、CA−II、CA−III、CA−IV、CA−V、CA−VI、及びCA−VII)及び/または対象のカルボニックアンヒドラーゼ酵素の活性を高めることができる薬剤である。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬物は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)である。いくつかの実施形態では、DMARDは、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、D−ペニシラミン、ミノサイクリン、金、またはその任意の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬物は組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質はエンブレル(登録商標)(エタネルセプト、可溶性TNF受容体)またはレミケード(登録商標)(インフリキシマブ、キメラ型抗TNFモノクローナル抗体)である。
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる薬物(複数可)は、メルファラン、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、レナリドミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド及びポマリドミドから選択される。
いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、リソソームを酸性化する1つ以上の薬物の投与を含む。本明細書で使用する場合、リソソームを酸性化する薬物は、標的細胞のリソソームのpHを下げることのできる薬物である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、対象に対し、治療的有効量の少なくとも1種の分解酵素またはその生物学的に活性な断片を含む組成物を投与することを含む、対象のアミロイドーシスを治療または予防する方法を提供し、ここで、かかる対象は、リソソームを酸性化する1つ以上の薬物の投与も受ける。本明細書に記載のように、併用療法を実施する場合、それら2つ以上の薬物(例えば、分解酵素またはその生物学的に活性な断片及びリソソームを酸性化する薬物)を同時投与することも、または順次、任意の順序で投与することもできる。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、酸性ナノ粒子、カテコールアミン、β−アドレナリン受容体作動薬、アデノシン受容体作動薬、ドーパミン受容体作動薬、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)の活性化薬、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、cAMP類似体、及びグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)の阻害剤から選択される。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、酸性ナノ粒子である。酸性ナノ粒子は、リソソームに局在化してリソソームのpHを低下させることが示されている。共に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Baltazar et al.,2012,PloS ONE 7(12):e49635、及びLee et al.,2015,Cell Rep.12(9):1430−44を参照のこと。いくつかの実施形態では、酸性ナノ粒子は高分子酸性ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、高分子酸性ナノ粒子は、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)酸性ナノ粒子である。特定の実施形態では、PLGA酸性ナノ粒子は、PLGAレソマーRG503Hを含む。いくつかの実施形態では、PLGA酸性ナノ粒子は、PLGAレソマーRG502Hを含む。他の実施形態では、高分子酸性ナノ粒子は、ポリ(DL−ラクチド)(PLA)酸性ナノ粒子である。特定の実施形態では、PLA酸性ナノ粒子は、PLAレソマーR203Sを含む。いくつかの実施形態では、酸性ナノ粒子の酸価は、約0.5mg KOH/g〜約8mg KOH/gである。いくつかの実施形態では、酸性ナノ粒子の酸価は、約1mg KOH/g〜約6mg KOH/gである。いくつかの実施形態では、酸性ナノ粒子の酸価は、約1mg KOH/g、約2mg KOH/g、約3mg KOH/g、約4mg KOH/g、約5mg KOH/g、または約6mg KOH/gから選択される。特定の実施形態では、酸性ナノ粒子の酸価は、約3mg KOH/gである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子径は約50nm〜約800nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子径は約100nm〜約600nmである。特定の実施形態では、ナノ粒子径は約350nm〜約550nmである。さらなる特定の実施形態では、ナノ粒子径は約375nm〜約400nmである。例示的な一実施形態では、酸性ナノ粒子は球状である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、脳の特定の輸送プロセスを標的とし、これにより、血液脳関門(BBB)を通過する薬物輸送を向上させる。いくつかの実施形態では、そのような輸送プロセスとして、(1)ナノ粒子により内皮細胞間のTJ(タイトジャンクション)を開口させるかまたは局所的毒性作用を誘導してBBBを局所的に透過性にし、それにより遊離形態薬物またはナノ粒子結合薬物の透過を可能にする、(2)ナノ粒子を、経細胞輸送によって内皮細胞を通過させる、(3)ナノ粒子を、エンドサイトーシスによって内皮細胞を通って輸送させ、そこで、その含有物を細胞の細胞質内に放出させ、その後、内皮の反管腔側で細胞外輸送させる、及び(4)各種機序のいくつかの組み合わせという各種プロセスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の標的となる受容体は、トランスフェリン及び低比重リポタンパク質受容体である。いくつかの実施形態では、標的指向は、物理的及び/または化学的にナノ粒子に固定化が可能な、ペプチド、タンパク質、または抗体によって達成可能である。いくつかの実施形態では、アポリポタンパク質AII、B、CII、E、及び/またはJなど、1つ以上のアポリポタンパク質でナノ粒子をコートする(Kreuter et al.,(2002,DOI:10.1080/10611860290031877を参照のこと)。ナノ粒子介在性の脳薬物送達の組成物及び方法の詳細については、Saraiva et al.(Journal of Controlled Release,2016,235:34−37)を参照のこと。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、カテコールアミンである。カテコールアミンはリソソームのpHを低下させることが示されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるLiu et al.,2008,Invest Ophthalmol Vis Sci.49(2):772−780を参照のこと。いくつかの実施形態では、カテコールアミンは、エピネフリン、メタネフリン、シネフリン、ノルエピネフィリン、ノルメタネフリン、オクトパミンまたはノルフェネフリン、ドーパミン、及びドーパから選択される。例示的な実施形態では、カテコールアミンは、エピネフリン、ノルエピネフィリン、及びドーパミンから選択される。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、β−アドレナリン受容体作動薬である。β−アドレナリン受容体作動薬は、リソソームのpHを低下させることが示されている。Liu et al.,2008,Invest Ophthalmol Vis Sci.49(2):772−780を参照のこと。β−アドレナリン受容体作動薬の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2012/0329879号に見出され得る。いくつかの実施形態では、β−アドレナリン受容体作動薬は、イソプロテレノール、メタプロテレノール、ホルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、フェノテロール、及びビランテロールから選択される。例示的な一実施形態では、β−アドレナリン受容体作動薬はイソプロテレノールである。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、アデノシン受容体作動薬である。アデノシン受容体作動薬は、リソソームのpHを低下させることが示されている。Liu et al.,2008,Invest Ophthalmol Vis Sci.49(2):772−780を参照のこと。例示的な一実施形態では、アデノシン受容体作動薬は、非特定のアデノシン受容体作動薬またはA2Aアデノシン受容体作動薬である。A2Aアデノシン受容体作動薬の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2012/0130481号に見出され得る。いくつかの実施形態では、アデノシン受容体作動薬は、5’−N−エチルカルボキサミドアデノシン(NECA)、CGS21680、2−フェニルアミノアデノシン、2−[パラ−(2カルボキシエチル)フェニル]アミノ−5’N−エチルカルボキサミドアデノシン、SRA−082、5’−N−シクロプロピルカルボキサミドアデノシン、5’N−メチルカルボキサミドアデノシン及びPD−125944から選択される。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、ドーパミン受容体作動薬である。ドーパミン受容体作動薬は、リソソームのpHを低下させることが示されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるGuha et al.,2014,Adv Exp Med Biol.801:105−111を参照のこと。いくつかの実施形態では、ドーパミン受容体作動薬は、A68930、A77636、A86929、SKF81297、SKF82958、SKF38393、SKF89145、SKF89626、ジヒドレキシジン、ジナプソリン、ジノキシリン(dinoxyline)、ドキサントリン(doxanthrine)、フェノルドパム、6−Br−APB、ステホリジン、CY−208243、7、8−ジヒドロキシ−5−フェニル−オクタヒドロベンゾ[h]イソキノリン、カベルゴリン、及びペルゴリドから選択される。例示的な一実施形態では、ドーパミン受容体作動薬は、A68930、A77636、及びSKF81297から選択される。さらなる例示的な実施形態では、ドーパミン受容体作動薬はSKF81297であり、6−クロロ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン−7,8−ジオールとしても知られる。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)の活性化薬である。CFTRの活性化薬は、リソソームのpHを低下させることが示されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるLiu et al.,2012,Am J Physiol Cell Physiol 303:C160−9を参照のこと。いくつかの実施形態では、CFTR活性化薬は、CFTRAct01〜CFTRAct17から選択される。Ma et al.,J Biol Chem 277:37235−37241を参照のこと。例示的な一実施形態では、CFTR活性化薬は、以下の構造を有するCFTRAct11及びCFTRAct16
CFTRAct11:
CFTRAct16:
から選択される。いくつかの実施形態では、CFTR活性化薬をフォルスコリンと共に同時投与する。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、cAMPまたはcAMP類似体である。cAMP及び/またはcAMP類似体は、リソソームのpHを低下させることが示されている。Liu et al.,2008,Invest Ophthalmol Vis Sci.49(2):772−780を参照のこと。例えば、細胞透過性類似体クロロフェニルチオ−cAMP(cpt−cAMP)及び8−ブロモ−cAMPは、細胞でリソソームのpHを下げる能力がある。いくつかの実施形態では、cAMP及び/または、cAMP類似体は、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)とフォルスコリンとを含むカクテルにして投与してよい。例えば、一実施形態では、リソソームを酸性化するためにIBMX、フォルスコリン、及びcpt−cAMPを含むカクテルを投与してよい。いくつかの実施形態では、cAMP類似体は、9−pCPT−2−O−Me−cAMP、Rp−cAMPS、8−Cl−cAMP、ジブチリルcAMP、pCPT−cAMP、N6−モノブチリルアデノシン(monobutyryladenosine)3’,5’−サイクリック一リン酸、及びPDE阻害剤から選択される。
いくつかの実施形態では、リソソームを酸性化する薬物は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)の阻害剤である。GSK−3阻害剤は、リソソームのpH低下に有効であることが示されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるAvrahami et al.,2013,Commun Integr Biol 6(5):e25179を参照のこと。例えば、競合的GSK−3阻害剤であるL803−mtsは、リソソームの酸性化を損なわせるよう作用するGSK−3の活性を阻害することによってリソソーム酸性化を促進することが示されている。したがって、一実施形態では、GSK−3阻害剤は、細胞透過性ペプチドL803−mts(配列番号72)である。好適なGSK−3阻害剤は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2013/0303441号及び第2015/0004255号に見出され得る。いくつかの実施形態では、GSK−3阻害剤は、(2’Z,3’E)−6−ブロモインジルビン−3’−アセトキシム、TDZD−8(4−ベンジル−2−メチル−1,2,4−チアジアゾリジン−3,5−ジオン)、SB216763(3−(2,4−ジクロロフェニル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)、NP−103、2−チオ(3−ヨードベンジル)−5−(1−ピリジル)−[1,3,4]−オキサジアゾール、L803、L803−mts、及びGF−109203X(2−[1−(3−ジメチルアミノプロピル)インドール−3−イル]−3−(インドール−3−イル)マレイミド)ならびにその薬理学的に許容される塩及び混合物から選択される。
いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、オートファジーを促進する1つ以上の薬物の投与を含む。本明細書で使用する場合、オートファジーを促進する薬物は、細胞質成分をリソソームに送達する細胞内分解系を促進することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、対象に対し、治療的有効量の少なくとも1種の分解酵素またはその生物学的に活性な断片を含む組成物を投与することを含む、対象のアミロイドーシスを治療または予防する方法、及びオートファジーを促進する1つ以上の薬物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象に対し、治療的有効量の少なくとも1種の分解酵素またはその生物学的に活性な断片を含む組成物を投与することを含む、対象のアミロイドーシスを治療または予防する方法を提供し、ここで、かかる対象は、リソソーム及び/もしくはエンドソームを酸性化する1つ以上の薬物、ならびにオートファジーを促進する1つ以上の薬物の投与も受ける。いくつかの実施形態では、リソソーム及び/またはエンドソームを酸性化する薬物、及びオートファジーを促進する薬物は、同一の薬物であっても、または異なる薬物であってもよい。本明細書に記載のように、併用療法を実施する場合、それらの薬物(例えば、分解酵素もしくはその生物学的に活性な断片、リソソーム及び/もしくはエンドソームを酸性化する薬物、ならびに/または、オートファジーを促進する薬物)を同時投与することも、または順次、任意の順序で投与することもできる。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、リソソーム及び/もしくはエンドソームの酸性化を引き起こすことのできる薬剤ならびに/またはオートファジーを促進することのできる薬剤を用いて治療用分解酵素またはその生物学的に活性な断片を処理することにより、酵素によるタンパク質分解の至適条件までpHを低下させ、かつリソソームのタンパク質分解能を改善することができる。
いくつかの実施形態では、オートファジー促進試薬には、TFEBアクチベーター、PPAR作動薬、PGC−1αアクチベーター、LSD1阻害剤、mTOR阻害剤、GSK3阻害剤等のような直接または間接的にオートファジーを促進する試薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、薬物は、転写因子EB(TFEB)経路の活性化を介してオートファジーを促進する。TFEBはリソソーム生合成のマスター遺伝子である。これは、リソソームの加水分解酵素、膜タンパク質及びオートファジーに関与する遺伝子の発現を協調させる転写因子をコードする。培養細胞でTFEBを過剰発現させるとリソソームの生合成が誘導され、複合体分子の分解が高まった。TFEBはPGC−1αにより活性化され、htt凝集と神経毒性の低下を促進する。
いくつかの実施形態では、TFEB経路の活性化を介してオートファジーを促進する薬物はTFEBの活性化薬である。いくつかの実施形態では、そのようなTFEB活性化薬には、C1(Song et al,2016,Autophagy,12(8):1372−1389)、及び2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Kilpatrick et al.,2015,PLOS ONE DOI:10.1371/journal.pone.0120819)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、TFEB経路の活性化を介してオートファジーを促進する薬物は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマコアクチベータ1−α(PGC−1α)を活性化させることができる薬剤である。いくつかの実施形態では、そのようなPGC−1αアクチベーターには、ピロロキノリンキノン、レスベラトロール、R−α−リポ酸(ALA)、ALA/アセチル−L−カルニチン(ALC)、フラボノイド、イソフラボン及び誘導体(例えば、クエルセチン、ダイゼイン、ゲニステイン、ビオカニンA、及びホルモノネチン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Das and Sharma 2015(CNS&Neurological Disorders − Drug Targets,2015,14,1024−1030)を参照のこと。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、薬物は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマコアクチベータ1−α(PGC−1α)及び/またはForehead box O3(FOXO3)の活性化を介してオートファジーを促進する。PGC−1αは、ミトコンドリア生合成のマスター調節因子である。PGC−1αは核内受容体PPAR−γと相互作用し、これにより、このタンパク質と複数の転写因子との相互作用を可能にしている。このタンパク質は、cAMP応答配列結合タンパク質(CREB)及び核呼吸因子(NRF)と相互作用し、かつそれらの活性調節を行うことができる。これにより、外部の生理刺激とミトコンドリア生合成調節との直接的な繋がりが提供されるほか、筋線維型を決定する主要因子となっている。FOXO3は、PI3Kシグナル伝達経路においてAkt/PKBなどのタンパク質によるリン酸化を受けると、抑制され、核外に移送され得る転写因子である。
いくつかの実施形態では、PGC−1α及び/またはFOXO3の活性化を介してオートファジーを促進する薬物は、リシン(K)特異的脱メチル化酵素1A(LSD1)の阻害剤である。LSD1はフラビン依存性のモノアミン酸化酵素であり、メチル化リシン及びジメチル化リシンを脱メチル化させることができる。LSD1は胚形成及び組織特異的分化において重要な役割を担っている。いくつかの実施形態では、そのようなLSD1阻害剤には、1−(4−メチル−1−ピペラジニル)−2−[[(1R*,2S*)−2−[4−フェニルメトキシ)フェニル]シクロプロピル]アミノ]エタノン二塩酸塩(RN−1;Cui et al.,2015,Blood 2015 126:386−396)、CBB1001〜1009(Wang et al.,2011,Cancer Res.2011 Dec 1;71(23):7238−7249.)、TCP、パルギリン、CGC−11047、及びNamolone(Pieroni et al.,2015,European Journal of Medicinal Chemistry 92(2015)377e386)、フェネルジン類似体(Prusevich et al.,ACS Chem.Biol.2014,9,1284−1293)、ならびに参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015156417に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、1つ以上のLSD1阻害剤を使用する。いくつかの実施形態では、RN−1及びWO2015156417に記載のLSD1阻害剤の両方を使用する。WO2015156417には、式
で表されるLSD1阻害剤が記載されており、
式中、Aは、任意選択で置換された複素環基、または任意選択で置換された炭化水素基であり、Bは、
(1)任意選択で置換された5員環もしくは6員環と任意選択で縮合した、5員または6員の芳香族複素環、及び
(2)任意選択で置換された5員環または6員環と縮合したベンゼン環から選択される環であり、
ここで、Bで表される環は、任意選択で置換され、また、原子1個を挟んで隣接する2個の炭素原子を介して、式
で表される基、及び式
で表される基
[R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、任意選択で置換された炭化水素基、または任意選択で置換された複素環基であり、
AとR1は任意選択で互いに結合しており、隣接する窒素原子と共に、任意選択で置換された環状基を形成し、
R2とR3は任意選択で互いに結合しており、隣接する窒素原子と共に、任意選択で置換された環状基、またはその塩を形成する]
と結合する。そのようなLSD1阻害剤は、より特異的で副作用が少なく、血液脳関門の透過が良好である。
いくつかの実施形態では、LSD1阻害剤は、以下の化合物(化合物1〜30)、及び塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、酸窒化物、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、ラセミ体、プロドラッグ、溶媒和物、代謝物、エステル、ならびにその混合物からなる群から選択される。
一実施形態では、本発明の分解酵素またはその生物学的に活性な断片と共に同時投与されるLSD1阻害剤は、化合物1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはその任意の混合物である。
いくつかの実施形態では、薬物は、PGC−1αの調節因子またはコアクチベーターの活性を修飾することができる。PGC−1αのそのような調節因子またはコアクチベーターには、限定されることなく、パーキン相互作用基質(Parkin Interacting Substrate)(PARIS)、サーチュイン(Sirtuin)1(SIRT1)、5’AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、アミノ酸合成一般制御タンパク質(General control of amino acid synthesis protein)5(GCN5)、核呼吸因子1、2(NRF−1、2)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体−α、β/δ、γ(PPAR−α、β/δ、γ)、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(p38MAPK)、エストロゲン関連受容体(ERR)、筋細胞エンハンサー因子2(MEF2)、及び甲状腺ホルモン受容体(TR)が挙げられ、Das and Sharma(CNS&Neurological Disorders − Drug Targets,2015,14,1024−1030)を参照のこと。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、オートファジーを促進する薬物は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)作動薬である。PPARは、遺伝子発現を調節する転写因子として機能する核内受容体タンパク質である。それらは、細胞の分化、発達、ならびに代謝及び腫瘍形成の制御に重要である。
いくつかの実施形態では、PPARは、PPARα、PPARβ/δ、及びPPARγから選択される。いくつかの実施形態では、PPAR作動薬はPPARα作動薬であり、それには、両親媒性カルボン酸(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、シプロフィブラート、ベザフィブラート、及びフェノフィブラート)、フィブラート、ウレイドフィブラート(ureidofibrate)、オキシベンジルグリシン(oxybenzylglycine)、トリアゾロン(triazolone)、2,4−ジヒド−3H−1,2,4トリアゾール−3−オン(トリアゾロン(triazolone))の核を含有する作動薬(例えば、LY518674)、BMS−687453、Wy−14643、GW2331、GW95798、LY518674、及びGW590735が含まれるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、PPAR作動薬はPPARβ/δ作動薬であり、それには、GW501516(Brunmair;et al.Diabetologia.49(11):2713−22)、L−165041、化合物7(Burdick et al.,Cell Signal 2006,18(1),9−20.)、チアゾール、ビスアリール置換チアゾール、非TZD系化合物(例えば、L−165041)、L−165041、化合物7(Burdick et al.,Cell Signal 2006,18(1),9−20)、38c(Johnson et al.,J Steroid Biochem Mol Biol 1997,63(1−3),1−8)、及びオキサゾールが含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、PPAR作動薬はPPARγ作動薬であり、それには、チアゾリジンジオン系(TZDまたはグリタゾン)、グリタザル、インデノン、NSAID、ジヒドロシンナマート、β−カルボキシエチルローダミン(β−carboxyethyl rhodamine)、及びCorona and Duchen,2016(Free Radical Biology and Medicine,published online June 23,2016)に記載のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、PPARγ作動薬は内因性または天然のアゴニストである。いくつかの実施形態では、PPARγ作動薬は合成作動薬である。いくつかの実施形態では、PPARγ作動薬は、エイコサノイドプロスタグランジン−A1、シクロペンテノンプロスタグランジン15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2(15D−PGJ2)、不飽和脂肪酸、例えばリノール酸及びドコサヘキサエン酸(socosahexaenoic acid)など、ニトロアルケン、例えばニトロ化したオレイン酸及びリノール酸など、酸化リン脂質、例えばヘキサデシルアゼラオイルホスファチジルコリン(hexadecyl azelaoyl phosphatidylcholine)及びリゾホスファチジン酸など、非ステロイド性抗炎症薬、例えばフルフェナム酸、イブプロフェン、フェノプロフェン、及びインドメタシンなど、ピオグリタゾン、GW0072、シグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、イソグリタゾン(isoglitazone)、NC−2100(Loiodice et al.,Curr.Top.Med.Chem.2011,11(7):819−39)、SB−236636、テサグリタザル、ファルグリタザル、GW1929、化合物14c(Haigh et al.,Bioorg Med Chem 1999,7(5):821−30)、SP1818、ラガグリタザル、メタグリダセン、バラグリタゾン、ならびにINT131からなる群から選択される。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、PPAR作動薬は、PPARα、PPARβ/δ、及びPPARγ、例えば、ベザフィブラート、LY465608、インデグリタザル、TIPP−204、GW693085、TIPP−401、及びTIPP−703などに結合する。いくつかの実施形態では、PPAR作動薬は、PPARα及びPPARγ、例えば、ファルグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、GW409544、アレグリタザル、MK−767、TAK−559、化合物18(Kojo et al.,J.Pharmacol Sci 2003,93(3),347−55)、化合物68、70、72、76(Felts et al.,J Med Chem 2008,51(16),4911−9.),メタグリダセン、及びS−2/S−4(Suh et al.,J Med Chem 2008,51(20),6318−33.)などに結合する。いくつかの実施形態では、PPAR作動薬は、PPARβ及びPPARγ、例えば化合物23(Martin et al.,J Med Chem 2009,52(21),6835−50)に結合する。さらなるPPAR作動薬は、Nevin et al.,2011(Current Medicinal Chemistry,2011,18,5598−5623)に記載されている。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、オートファジーを促進する薬物は、ラパマイシンの機構的標的(mTOR)の阻害剤である。mTORは、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)関連キナーゼ(PIKK)のファミリーに属するセリン/スレオニン特異的プロテインキナーゼであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMaiese et al.(Br J Clin Pharmacol,82(5):1245−1266)を参照のこと。mTORは、インスリン、成長因子(IGF−1及びIGF−2など)、及びアミノ酸など、上流経路からのインプットを取り込むほか、細胞の栄養、酸素、及びエネルギーのレベルの感知も行う。いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤には、mTORの抗体、ラパマイシンとその類似体(例えば、テムシロリムス(CCI−779)、エベロリムス(RAD001)、リダホロリムス(AP−23573)、シロリムス、デホロリムス)、クルクミン(Zhang et al.,2016,Oncotarget)、クルクミン類似体(Song et al.2016,Autophagy,12(8):1372−1389)、ATP競合的mTORキナーゼ阻害剤、mTOR/PI3K二重阻害剤(ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI−587等)、deptor(Maiese,Neural Regeneration Research.2016;11(3):372−385.)、及びmTORC1/mTORC2二重阻害剤(TORCdI、例えばsapanisertib(別名、INK128)、AZD8055、及びAZD2014など)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、オートファジーを促進する薬物は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)の阻害剤である。GSK3は、セリン及びスレオニンの両アミノ酸残基へのリン酸分子付加を仲介するセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。いくつかの実施形態では、GSK3阻害剤はATP競合的である。いくつかの実施形態では、GSK3阻害剤はATP非競合的である。いくつかの実施形態では、GSK3阻害剤には、GSK3の抗体、金属陽イオン(例えば、ベリリウム、銅、リチウム、水銀、及びタングステン)、海洋生物由来の薬物(例えば、6−BIO、ジブロモカンタレリン(dibromocantharelline)、ヒメニアルデシン(hymenialdesine)、インジルビン、メリジアニン、マンザミンA、パリヌリン、トリカンチン(tricantine))、アミノピリミジン(例えば、CT98014、CT98023、CT99021、及びTWS119)、ケタミン、アリールインドリルマレイミド(arylindolemaleimide)(例えば、SB−216763及びSB−41528)、チアゾール(例えば、AR−A014418及びAZD−1080)、パウロン(例えば、アルステルパウロン、カズパウロン(Cazpaullone)、ケンパウロン)、チアジアゾリジンジオン(thiadiazolidindione)(例えば、TDZD−8、NP00111、NP031115、及びチデグルシブ)、ハロメチルケトン(例えば、HMK−32)、特定のペプチド(L803−mts)、SB415286、SB216763、及びCT99021(Stretton et al.,2015,Biochem.J.(2015)470,207−221;Marchand et al.,2015,The Journal of Biological Chemistry,290(9):5592−5605)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で言及される参考文献の各々は参照によりその全体が組み込まれる。
いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、リソソームを調節する1つ以上の薬物の投与を含む。いくつかの実施形態では、リソソームを調節する薬物は、初期エンドソームのマーカーであるRab5aのレベルを低下させる能力があり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、対象に対し、治療的有効量の少なくとも1種の分解酵素またはその生物学的に活性な断片を含む組成物を投与することを含む、対象のアミロイドーシスを治療または予防する方法を提供し、ここで、かかる対象はリソソームを調節する1つ以上の薬物の投与も受ける。本明細書に記載のように、併用療法を実施する場合、それら2つ以上の薬物(例えば、分解酵素またはその生物学的に活性な断片及びリソソームを調節する薬物)を同時投与することも、または順次、任意の順序で投与することもできる。
いくつかの実施形態では、リソソームを調節する薬物は、Z−フェニルアラニル−アラニル−ジアゾメチルケトン(phenylalanyl−alanyl−diazomethylketone)(PADK)もしくはPADK類似体、またはその薬理学的に許容される塩もしくはエステルである。いくつかの実施形態では、PADK類似体は、Z−L−フェニルアラニル−D−アラニル−ジアゾメチルケトン(PdADK)、Z−D−フェニルアラニル−L−アラニル−ジアゾメチルケトン(dPADK)、及びZ−D−フェニルアラニル−D−アラニル−ジアゾメチルケトン(dPdADK)から選択される。いくつかの実施形態では、リソソームを調節する薬物は、Z−フェニルアラニル−フェニルアラニル−ジアゾメチルケトン(PPDK)もしくはPPDK類似体、またはその薬理学的に許容される塩もしくはエステルである。好適なリソソーム調節因子の例示的な一覧は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2016/0136229号に見出され得る。
いくつかの実施形態では、併用療法を実施する場合、それら2つ以上の薬物を同時投与することも、または順次、任意の順序で投与することもできる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの薬物を順次投与する場合、かかる2投与間の時間は、約1分、5分、10分、20分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、またはそれ以上であり得る。
いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、対象に実施される手術を含む。いくつかの実施形態では、手術は幹細胞移植及び/または臓器移植である。いくつかの実施形態では、幹細胞移植は自家移植(例えば、対象由来の幹細胞)である。
いくつかの実施形態では、方法はさらに、対象への支持療法の提供を含む。いくつかの実施形態では、対象の心臓または腎臓が侵されている場合、方法は、利尿薬の摂取(水分排泄丸剤)、食事の塩分量の制限、ならびに/または腫脹の量を少なくさせるため弾性ストッキングの着用及び脚を高く上げることを含む。いくつかの実施形態では、胃腸管に障害がある場合、食事の変更及び特定の薬物治療によって、下痢及び胃の膨満感といった症状軽減を試みることができる。
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の好適な方法で患者に投与が可能である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の投与は、経口投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内滴下、移植、腔内もしくは膀胱内への注入、眼内投与、動脈内投与、病変内投与、経皮投与、エアロゾル(例えば、吸入)または粘膜への塗布によって行ってよい。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物はさらに、薬理学的に許容される担体を含む。医薬担体または添加物に言及して「薬理学的に許容される」という用語を使用する場合、かかる用語には、その担体または添加物が、毒性試験及び製造試験の必要基準を満たしていること、または米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug administration)が作成した不活性成分ガイドライン(Inactive Ingredient Guide)に収載されていることが含意される。
経口使用が意図される組成物は、固形または液体のいずれの単位剤形で調製してもよい。液体単位剤形は、医薬組成物製造について当技術分野で公知の手順に従って調製可能であり、そのような組成物は、薬理学的に上品で口当たりのよい調製物を提供するため、甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含有してよい。エリキシル剤は、糖及びサッカリンなどの好適な甘味料を含んだ含水アルコール(例えば、エタノール)ビヒクルを、芳香香味剤と共に使用して調製される。懸濁液は、アラビアゴム、トラガント、メチルセルロース等のような懸濁剤を用いて水溶性ビヒクルで調製することができる。
錠剤などの固形製剤には、有効成分は、錠剤の製造に好適な非毒性の薬理学的に許容される添加物との混合物として含有される。これらの添加物は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムといった不活性希釈剤:造粒剤及び崩壊剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸:結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム、及び滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクならびに他の従来成分、例えば、リン酸二カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸カルシウム、デンプン、乳糖、メチルセルロース、及び機能的に類似の物質などであってよい。錠剤は、コーティングしなくてもよく、または公知の技術でコーティングして胃腸管での崩壊と吸収を遅延させ、それにより長期にわたり持続作用を提供してよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を用いてよい。
経口用製剤は、不活性固体希釈、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンなどと有効成分を混合した硬ゼラチンカプセルとして提示してもよく、水または油媒体、例えば、ピーナツ油、流動パラフィンもしくはオリブ油などと有効成分を混合した軟ゼラチンカプセルとして提示してもよい。軟ゼラチンカプセルは、化合物のスラリと、許容される植物油、軽質流動ワセリンもしくは他の不活性油とを機械でカプセル充填することにより調製される。
水性懸濁液には、活性物質は、水性懸濁液の製造に好適な添加物との混和物として含有される。そのような添加物は、懸濁剤、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(sodium carboxylmethylcellulose)、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース(hydropropylmethylcellulose)、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム及びアラビアゴムなどであり、分散剤または湿潤剤は、天然に生じるリン脂質、例えばレシチンであっても、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアリン酸エステルであっても、または酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えば、ヘプタ−デカエチレンオキシセタノール(decaethyleneoxycetanol)であっても、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート(polyoxyethylene sorbitol monooleate)のような、脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物であっても、または脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアート(polyethylene sorbitan monooleate)であってもよい。水性懸濁液は、例えば、安息香酸エチル、またはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルなどの1つ以上の防腐剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、またはショ糖もしくはサッカリンなどの1つ以上の甘味剤も含有してよい。
油性懸濁液は、例えば、ピーナツ油、オリブ油、ゴマ油またはヤシ油など植物油、または流動パラフィンなどの鉱油に有効成分を懸濁させて処方してよい。油性懸濁液は、濃稠化剤、例えば、ミツロウ、パラフィンワックスまたはセチルアルコールなどを含有してよい。口当たりのよい経口調製物を提供するため上掲のような甘味剤及び香味剤を添加してよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加して保存してよい。
水の添加によって水性懸濁液を調製する場合に好適な、分散可能な粉末及び顆粒では、有効成分は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤及び1つ以上の防腐剤との混合物として提供される。好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤は既に上記で例示されている。さらなる添加物、例えば、甘味剤、香味剤及び着色剤が含まれていてもよい。
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油、例えば、オリブ油もしくはピーナツ油など、または鉱油、例えば、流動パラフィンなど、またはこれらの混合物であってよい。好適な乳化剤は、天然に生じるゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラガントゴムなどであっても、天然に生じるリン脂質、例えば、大豆、レシチンなどであっても、脂肪酸とヘキシトール、無水物に由来するエステルもしくは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレアートであっても、前記部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってもよい。エマルジョンは、甘味剤及び香味剤を含有してもよい。
医薬組成物は、水性または油脂性の注射可能な滅菌懸濁液の形態であってよい。この懸濁液は、上記で言及されている好適な分散剤もしくは湿潤剤及び懸濁剤を使用する公知の技術に従って処方してよい。注射可能な滅菌調製物は、非経口的に許容される非毒性の希釈液もしくは溶媒に溶解させた、注射可能な滅菌液または滅菌懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール溶液であってもよい。用いてよい許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム液がある。さらに、無菌不揮発性油は従来より溶媒または懸濁媒として用いられている。このような用途の場合、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなど、任意の無刺激不揮発性油を使用してよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は注射剤調製に利用される。局所麻酔剤、防腐剤及び緩衝剤などのアジュバントも注射液または懸濁液に含めることができる。
いくつかの実施形態では、好適な送達システムには、時間放出型、遅延放出型、持続放出型、または放出制御型の送達システムが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、徐放性マトリックスなどの放出制御システムで送達可能である。非限定的な徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277及びLanger,1982,Chem.Tech.,12:98−105)による記載にあるようなポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)]、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号;EP58,481)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタマートの共重合体(Sidman et al.,1983,Biopolymers,22:547−556)、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langer et al.,前掲)、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体とリュープロリド酢酸塩(leuprolide acetate)とで構成される注射可能なミクロ粒子)、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体が含まれる。いくつかの実施形態では、静脈内注入、埋込み型浸透圧ポンプ、経皮吸収パッチ、リポソーム、または他の投与方法を使用して組成物を投与してよい。一実施形態では、ポンプを使用してよい(Langer、前掲;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al.、Surgery88:507(1980);Saudek et al.、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態では、高分子材料を使用できる。さらに別の実施形態では、放出制御システムを治療標的、例えば、肝臓などに近接させて留置でき、そのため、全身用量は少量ですむ(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138(1984)を参照のこと)。他の放出制御システムは、Langer(Science 249:1527−1533(1990)による概説で考察されている。いくつかの実施形態では、皮下注射により組成物を投与してよい。
いくつかの実施形態では、組成物は急激に放出される。急激に放出されるシステムの例には、例えば、ポリマーマトリックスに封入されたリポソーム内に組成物が内包(entrapped)されており、かかるリポソームが特定の刺激、例えば、温度、pH、光または、分解酵素に対して感受性であるシステム、及びマイクロカプセルコア分解酵素を有するイオンコートしたマイクロカプセルにより組成物が封入されているシステムが含まれる。
いくつかの実施形態では、組成物の放出は段階的/継続的である。阻害剤の放出が段階的かつ継続的であるシステムの例には、例えば、組成物がマトリックス内部に入った形態で含有されている侵食性システム、及び組成物が、制御された速度で、例えば、ポリマーを介して放出される浸出性(effusional)システムが含まれる。そのような持続放出システムは、例えば、ペレット形態、またはカプセルであり得る。
本発明に従って投与される組成物の他の実施形態には、非経口、肺、鼻及び経口といったさまざまな投与経路用の微粒子形態、保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤、または浸透促進剤が組み込まれる。他の医薬組成物及び医薬組成物調製方法は、当技術分野で公知であり、例えば、”Remington:The Science and Practice of Pharmacy”(旧称”Remingtons Pharmaceutical Sciences”);Gennaro,A.,Lippincott,Williams&Wilkins,Philidelphia,Pa.(2000)に記載されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物にはさらに薬理学的に許容される希釈剤、添加物、担体、またはアジュバントが含まれてよい。
いくつかの実施形態では、投与されるべき用量には明確な制限があるわけではないが、通常は、有効量、または治療的/薬理学的に有効な量となる。用語「有効量」は、所望の治療転帰を与える1つ以上の化合物の量を指す。有効量は、1つ以上の用量内で構成されてよく、すなわち、所望の治療エンドポイント達成のため1回量または複数用量を要する場合がある。本明細書で使用する「治療的/薬理学的に有効な量」という用語は、病態の治療、または傷害もしくは損傷の低減もしくは予防に必要とされ、任意選択で重大な負の副作用もしくは有害な副作用を生じさせない、1つ以上の薬剤のレベルまたは量を指す。通常は、活性遊離薬物の代謝放出時に処方製剤から生成されて、その所望の薬理学的かつ生理的な効果を達成する、薬理学的に活性な遊離形態のモル基準当量ということになる。いくつかの実施形態では、組成物を単位剤形で製剤化してよい。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳類に対する単位用量として好適な物理的個別単位を指し、各単位に、所望の治療効果を与えるよう計算された所定量の活性物質が、好適な医薬品添加物と共に含有されている。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物の投与レジメンには、何ら制限されることなく、投与あたりの量、投与回数、例えば、1日あたり、1週間あたり、もしくは1か月あたりの回数など、投与サイクルあたりの総量、投与間隔、投与サイクルあたりの投与の変動、パターンもしくは変更、最大蓄積投与量、または漸増的ウォームアップ投与量(warm up dosing)、またはその任意の組み合わせが含まれる。
いくつかの実施形態では、投与レジメンには、投与あたりの所定量または一定量と、かかる用量の投与回数の組み合わせが含まれる。例えば、投与レジメンには、対象に投与される、投与あたりの一定量とそのような用量の投与回数の組み合わせが含まれる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の分解酵素(例えば、PPCA、NEU1、TPP1、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、及び/またはカテプシンL)を約0.1〜20mg/kgで連日、毎週、隔週、毎月、または隔月投与する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリソソーム内分解酵素を、約0.2〜15mg/kg、約0.5〜12mg/kg、約1〜10mg/kg、約2〜8mg/kg、または約4〜6mg/kgで連日、週、隔週、毎月、または隔月投与する。
好適用量に基づき、かかる少なくとも1種の分解酵素はさまざまな好適な単位用量で提供され得る。例えば、分解酵素は、1日1回もしくは複数回で週に1〜7日、または1か月に1〜31回という投与単位用量に含まれ得る。そのような単位用量は、1日分、1週分及び/または1か月分の投与として提供され得る。
当業者に理解されるように、治療方法の継続期間は、治療されるアミロイドーシスの種類、アミロイドーシスに関連する任意の基礎疾患、対象の年齢と病態、対象の治療応答の様子などに依存する。
いくつかの実施形態では、アミロイドーシス発症のリスクがある(例えば、遺伝的素因を有する、または以前にアミロイドーシスもしくは関連疾患に罹患している)患者は、アミロイドーシス及び/もしくは関連疾患の発症を阻害するかまたは遅延させるために、本発明の予防治療も受けることができる。
本発明の医薬組成物により、アミロイドーシスに関連した症状の1つ以上の軽減、重症度低下、または発生率低下も可能である。いくつかの実施形態では、症状は、軽鎖(AL)アミロイドーシス(原発性全身性アミロイドーシス)及び/またはAAアミロイドーシス(続発性アミロイドーシス)に関連した症状である。いくつかの実施形態では、症状には、体液貯留、腫脹、息切れ、疲労、不整脈、手足のしびれ感、発疹、息切れ、嚥下困難、手足の腫脹、食道逆流、便秘、悪心、腹痛、下痢、早期満腹感、脳卒中、胃腸障害、肝腫大、脾機能低下、副腎及び他の内分泌腺の機能低下、皮膚の色の変化または腫瘍、肺の問題、出血及び挫傷の問題、尿量減少、下痢、嗄声または声の変化、関節痛、ならびに脱力が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、症状は、アミロイド−ベータ(Aβ)アミロイドーシスに関連した症状である。いくつかの実施形態では、症状には、記憶喪失、錯乱、視覚イメージと空間的関係の理解障害、及び会話または書字の問題を含む、アルツハイマー病の一般的症状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、方法はさらに、過量投与による重篤かつ/または致命的な免疫介在性有害反応を回避するため、投与後、対象の応答を監視することを含む。いくつかの実施形態では、患者に有害反応の持続が見られる場合、本発明の医薬組成物の投与の変更、例えば、減量、休薬または中止などを行う。いくつかの実施形態では、初回投与量の投与から約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間またはそれ以上期間以内に患者が反応しない場合は用量を変更する。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載する1つ以上の病態もしくは関連症状を、臨床的に意義のある様式、統計学的に有意な様式かつ/または持続的な様式で改善、治療、及び/または予防することができる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物の投与により、アミロイドーシスの1つ以上の症状を改善する、治療する、及び/または予防する統計学的に有意な治療効果が提供される。一実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、米国または他の国々の1つ以上の規制当局、例えば、FDAにより提供されている1つ以上の規格または基準に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、規制当局承認の臨床試験の設定及び/または手順から得た結果に基づいて決定される。
いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、少なくとも50人、100人、200人、300人、400人、500人、600人、700人、800人、900人、1000人、またはそれ以上の患者母集団に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、無作為化二重盲検臨床試験設定から得られたデータに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、p値が約0.05、0.04、0.03、0.02または0.01以下であるデータに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、信頼区間が95%、96%、97%、98%または99%以上であるデータに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、本発明が提供する方法の第III相臨床試験の、例えば米国FDAによる承認に基づいて決定される。
いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、本発明の医薬組成物を用いるが他剤を併用しない治療を受ける、少なくとも50人、100人、200人、300人または350人の患者母集団の無作為二重盲検臨床試験によって決定される。いくつかの実施形態では、統計学的に有意な治療効果は、アミロイドーシス症状の評価について一般に認められている任意の基準を使用する、少なくとも50人、100人、200人、300人または350人の患者母集団の無作為臨床試験によって決定される。
一般に、統計解析には、規制当局、例えば、米国または中国のFDA、または他国の規制当局によって許可されている任意の好適な方法を含めることができる。いくつかの実施形態では、統計解析には、非層別解析、ログランク検定、例えば、カプラン・マイヤー法、ヤコブソン−トルアックス(Jacobson−Truax)、グリケン−ロード−ノビック(Gulliken−Lord−Novick)、エドワーズ−ナンナリー(Edwards−Nunnally)、ヘイゲマン−アリンデル(Hageman−Arrindel)及び階層的線形モデル(HLM)など、ならびにCox回帰分析が含まれる。
本発明はまた、包装された医薬組成物またはキットを提供する。いくつかの実施形態では、包装された医薬組成物またはキットには、治療的有効量のリソソーム内分解酵素もしくは本明細書に記載する本発明のリソソーム内分解酵素を含む製剤が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物または製剤は、対象に組成物を投与した場合に、かかる対象において少なくとも1つのリソソーム内分解酵素の発現、活性、及び/または濃度を高めることができる。いくつかの実施形態では、包装された医薬組成物またはキットはさらに、医薬化合物もしくは製剤と、アミロイドーシスを治療または予防する本明細書に記載の第2の薬剤とを併用投与する推奨事項を記載したラベルまたは添付文書を組み合わせて含む。
いくつかの実施形態では、包装された医薬組成物またはキットはさらに、本明細書に記載する治療的有効量の第2の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、包装された医薬組成物またはキットは、第2の薬剤と、リソソーム内分解酵素もしくはリソソーム内分解酵素を含む製剤、または対象において少なくとも1つのリソソーム内分解酵素の発現、活性、及び/または濃度を高めることができる化合物もしくは製剤とを併用投与する推奨事項を記載したラベルまたは添付文書と組み合わせて包装される。
本明細書で使用する場合、「ラベルまたは添付文書」という用語には、本発明の組成物の投与に関し、対象または対象のケアの実質的責任者との書面、電子形式、または口頭によるあらゆる連絡通知が含まれるが、これらに限定されるものではない。添付文書にはさらに、本発明の組成物と他の化合物もしくは組成物との同時投与に関する情報が含まれ得る。さらに、添付文書には、本発明の組成物の投与に関し、食前、食事中、もしくは食後、または食物と一緒/食物なしという指示が含まれ得る。
以下の実施例で本発明のさまざまな態様を例示する。当然のことながら、各実施例は、本発明の特定の実施形態のみを例示しているにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されるべきである。
実施例1:合成アミロイド種に対するリソソーム内分解酵素の分解作用
本実施例では、PPCA(すなわち、カテプシンA)、カテプシンB、カテプシンDなどのリソソーム内酵素、及び/または2種以上のリソソーム内酵素のカクテル混合物をアミロイドーシス治療に使用できることを例証するため、インビトロ試験を実施する。理論に拘束されることなく、PPCA、カテプシンB、カテプシンD、及び他のリソソーム内酵素をリソソームへ送達することにより、異常に蓄積したアミロイド種、例えば、Aβ−アミロイド種を、それらがエキソサイトーシスによって細胞外間隙へ輸送されてアミロイドプラークとして沈着しないうちに分解するのを補助できるという仮説が立てられる。
このインビトロ試験では、試験管内の合成Aβ−アミロイド種に対するPPCA、カテプシンB、及びカテプシンDの分解作用を示す。
第1に、合成Aβ−ペプチドを使用するAβ−アミロイド種のインビトロ凝集アッセイを、チオフラビンT(THT)アッセイ及びウェスタンブロットにより実施する。図1は、生理的条件(図1A)または酸性pH(図1B)にてチオフラビンT(THT)で監視した、Aβ42合成ペプチド及びAβ15−36ペプチド(陰性対照)の凝集を示す。図2は、ウェスタンブロットで検出されたAβ42アミロイド種の24時間の経時的凝集を示す。
第2に、PPCA、カテプシンB、及びカテプシンDを使用したタンパク質分解による合成Aβ−アミロイド種の凝集抑制を、チオフラビンT(THT)アッセイ及びウェスタンブロットにより試験する。図3は、カテプシンA(すなわち、PPCA)がAβ42アミロイドの凝集を抑制することを示す。図4は、PPCAがAβ42アミロイドの凝集を用量依存的に抑制することを示す。図5は、PPCAが、Aβ42アミロイドの高分子種と低分子種の両方の凝集を抑制することを示す。図6は、カテプシンBがAβ42アミロイドの凝集を抑制することを示す。図7は、カテプシンBがAβ42アミロイドの凝集を用量依存的に中程度に抑制することを示す。図8は、カテプシンBが時間依存的に、Aβ42アミロイド低分子種の凝集を抑制し、かつAβ42単量体を分解することを示す。図9は、カテプシンBがAβ42アミロイドの凝集を抑制することを示す。
最後に、PPCA、カテプシンB、及びカテプシンDが、予め形成されている合成Aβ−アミロイド種を分解する能力を試験した。図10は、PPCA、カテプシンB、PPCAとカテプシンB、及びカテプシンDは、Aβ42アミロイドの高分子量オリゴマー/線維を分解することを示す。カテプシンDは低分子オリゴマーを分解し、かつAβ42単量体を完全に消失させる。
実施例1の概要:
(1)選択したリソソーム内分解酵素は、Aβアミロイド種の凝集/形成を抑制できるか否か(いわゆる、抑制)及び(2)選択したリソソーム内分解酵素は、既形成されているAβアミロイド種を分解できるか否か(いわゆる、分解)を決定するため、実施例1の実験を設計した。実施例1の実験では、合成Aβ42ペプチドを使用したインビトロにおいてAβ42アミロイド種は凝集し得ること、及びこのプロセスを、THTアッセイ(図1)及び/またはウエスタンブロット法(図2)によって監視できることが示された。THTアッセイにより、分解酵素で処理した際のAβ42凝集における動的変化のモニタリングが可能になる。
実施例1の実験から得られたデータは、PPCAが、THTアッセイ(図3、図4)及びウェスタンブロット(図5)で示されるように、Aβ42アミロイド種の形成を効率的に抑制できると共に、既形成されているアミロイド種を効率的に分解できる(図10)ことを明らかにしている。PPCAによるアミロイド形成の抑制及び分解は効率的かつ再現可能なものであり、濃度依存的な動態(図4)を示した。カテプシンBを用いた実験から得られたデータは、THTで測定したアミロイド種形成が中程度に低下したことを示した(図6)。ウエスタンブロット法により、カテプシンBはAβ42低分子種の凝集を抑制し、Aβ42単量体を時間依存的に分解する(図8)ことが明らかになった。カテプシンDを使用した実験では、THTで測定した場合、Aβ42種の凝集の強力な抑制が明らかになった(図9)。カテプシンDはまた、予め凝集させたアミロイド種の低分子オリゴマーの分解及びAβ42単量体の完全消失も示した(図10)。
実施例2:カテプシンA、B、及びDによるAβ42オリゴマーと線維の分解
本実施例では、カテプシンA(PPCA)、カテプシンB及びカテプシンDによって分解可能なAβ42種の形態を調べるため、オリゴマー及び線維を形成させる特定の2つのプロトコルを適用してアミロイド材料を凝集させた。その後、凝集したオリゴマー及び線維を酵素処理に供した後、ウエスタンブロット解析を行った。
初めに、オリゴマー及び線維を7日間凝集させ、異なる測定ポイント(0日目、1日目、3日目及び7日目)で採取した材料をSDS−PAGE電気泳動に供し、その後、ウエスタンブロット法を行った。図11では、Aβ42オリゴマー及びAβ42線維をオリゴマー特異的抗体(A11)でプローブした。この抗体は、単量体Aβ42種及び線維Aβ42種を認識しない。オリゴマー形成及び線維形成の各プロトコルを使用して凝集させた材料を装填したウェスタンブロットで、さまざまな形態のオリゴマーが良好に検出された。線維形成手順7日目にオリゴマー形態の有意な減少が観察され(図11、ライン9)、オリゴマーから、A11抗体では検出不可能な線維形態へと時間依存的に移行していることを示している。図12では、図11の場合に示した材料と同一の材料をE610抗体でプローブした。この抗体はAβ42のオリゴマーと線維の両方に特異的である。オリゴマー形成プロトコルを適用した場合、7日目に線維の欠失が観察され(図12、ライン4)、線維形成プロトコルを適用した場合、7日目に線維が強く出現した。
オリゴマー種の酵素分解を調べるため、Aβ42オリゴマーを最初にpH7.0で25℃にて9日間凝集させ、その後、試験で使用する酵素それぞれに至適な各種pH(pH5.0カテプシンA、B及びpH3.5カテプシンD)の酵素を加えた場合と加えない場合で、37℃にてさらに一晩インキュベートした。オリゴマー特異的A11抗体でウェスタンブロットをプローブした(図13)。対照ライン9(25℃で9日間インキュベーション)と比較すると、分子量の高いオリゴマーの存在により指されるように(ライン1、2、4、及び5)、さらなる一晩の間にpH5.0にてオリゴマーの凝集が観察された。対照的に、pH3.5で一晩インキュベートしたオリゴマーではこの凝集は観察されなかった。オリゴマーを90ngのカテプシンAを用いてpH5.0、37℃にて一晩処理したところ、最下部のオリゴマーバンドの分解がもたらされた(ライン4)。90ngのカテプシンB及びDで処理した各オリゴマーではオリゴマーバンドの強さまたはサイズに変化はなかった(ライン5、6)。
線維種の酵素分解を調べるため、Aβ42線維を最初にpH7.0で25℃にて9日間凝集させ、その後、試験で使用する酵素それぞれに至適な各種pH(pH5.0カテプシンA、B及びpH3.5カテプシンD)の酵素を加えた場合と加えない場合で、37Cにてさらに一晩インキュベートした。オリゴマー特異的E610抗体でウェスタンブロットをプローブした(図14)。対照ライン9(25℃で9日間インキュベーション)と比較すると、より強い/濃いなすりつけたように尾を引くバンドの存在により指されるように(ライン1、2、3)、さらなる一晩の間に適用pHすべてにおいて線維の凝集が観察された。線維を、90ngのカテプシンAを用いてpH5.0、37℃にて一晩処理したところ、線維のなすりつけたように尾を引くバンドの減少/分解ならびにオリゴマー種の分解がもたらされた(ライン4をライン1と比較)。線維を、90ngのカテプシンBを用いてpH5.0、37℃にて一晩処理したところ、線維のなすりつけたように尾を引くバンドのわずかな減少/分解がもたらされた(ライン5をライン2と比較)。線維を、90ngのカテプシンDを用いてpH3.5、37℃にて一晩処理したところ、線維のなすりつけたように尾を引くバンドまたはオリゴマーバンドには目視可能な減少/分解はもたらされなかった。
実施例3:ELISAで監視したカテプシンAによるAβ42単量体分解
本実施例の目的は、カテプシンAがAβ42ペプチド(単量体)を分解できるか否かを評価することである。
本実施例では、90ngのカテプシンAを用いたペプチドの酵素処理をpH5.0、37℃で0〜2時間行った。同一の実験を、カテプシンA無添加で並行して実施した。いずれの場合にも、ペプチドが凝集してアミロイド高分子種にならないようフェノールレッド、Aβ凝集阻害剤を使用した。市販のELISA(SensoLyte(登録商標)抗ヒトβ−アミロイド(1−42)定量的ELISA、比色法)を使用して、Aβ42単量体に対するカテプシンAの添加または欠失による影響をさまざまな測定ポイント(0分、10分、30分、60分、120分)で測定した。Sensolite ELISAは、2つの抗体、すなわち、ヒトAβ42ペプチドを特異的に認識するがAβ40もAβ41も認識しないC末端捕捉抗体、及びN末端検出抗体で構成される。カテプシンAはカルボキシルペプチダーゼ(carboxyl peptidase)であるため、Aβ42単量体は、分解されるとすればそのC末端から分解されることになる。この分解が起こればC末端アミノ酸42の欠失となり、そのためC末端特異的抗体の捕捉は起こらないと考えられ、ELISAの蛍光シグナルの消失としてこれを目視できるはずである。カテプシンAで処理した試料をELISAで読み取ったところ、処理後10分以内に既に蛍光シグナルの消失が認められ、これは、カテプシンAによるC末端からのAβ42単量体分解を示している(図15)。カテプシンA無添加試料はELISAで強い蛍光シグナルを示し、これは、酵素非存在下ではC末端の分解がなく、そのためAβ42単量体がC末端抗体により効率的に捕捉されたことを示している。
実施例4:Cath AによるAβ40アミロイド種の分解
凝集実験から、Aβ40アミロイド種は合成Aβ40ペプチドを使用したインビトロで凝集可能であること、及びこのプロセスをTHTアッセイで監視できることが示された(図16)。Aβ42ペプチドの凝集と比較すると、Aβ40は凝集速度がはるかに遅く効率が悪いことが示された(図16A)。
THTアッセイを使用して、Cath A分解酵素で処理した際のAβ42&Aβ40凝集の動的変化を監視するさらなる実験を実施した(図17)。初回実験では、Aβ42&Aβ40両ペプチドの凝集に対するCath A処理の影響をリアルタイムで測定することを目的とした。この目的を達成するため、Cath Aを対応するペプチドと同時にインキュベートし、THT試薬はCath Aタンパク質分解の至適条件で別々に反応させた。上記の実験から、Aβ42(図17A)とは対照的に、Aβ40アミロイドの凝集は、適用した実験設定において高濃度の酵素を使用した場合でもCath Aによる影響を受けない(図17B、C)ことが明らかになった。初回実験の結果がCath AによるAβ40タンパク質分解がなかったことによるものなのか、またはそのようなタンパク質分解の速度がAβ40の凝集速度よりも遅かったことによりTHT蛍光に変化が観察されなかったのかを調べるため、第2の実験を行った。この実験では、Aβ40ペプチドを最初にCath Aと共に、Cath Aタンパク質分解の至適条件で最高で2時間インキュベートし、その後、THTとインキュベーションを行って凝集を測定した。得られたデータから、Aβ40ペプチドは、Cath Aとプレインキュベーションを行った後では凝集しなかったことが明らかになり、Cath Aのタンパク質分解を証明している(図18)。
Aβ40ペプチドの凝集が観察されなかったのは、Cath Aのカルボキシペプチダーゼ活性によるものであることを証明するため、Cath A濃度をさまざまに変えてAβ40ペプチドをpH5、37℃で2時間インキュベートした。その後、反応物を、Aβ40ペプチドにのみ特異的なC末端捕捉抗体でプレコートしたELISAプレートに移し、N末端検出抗体と共に4℃で一晩共インキュベートした。結果は、Cath Aの濃度上昇に伴い、C末端捕捉抗体に対するAβ40ペプチドの結合が徐々に低下することを示した(図19)。これは、Aβ40ペプチドのC末端がCath Aのカルボキシ末端での作用によって除去されたことを証明する。
Aβ40ペプチドからアミロイド種への凝集もウェスタンブロット法を使用して監視した(図20A)。我々は、最高9日を要する凝集プロセスを使用し、Aβ40を凝集させて高分子量線維にすることはできたが、オリゴマー形態にすることはできなかった。Aβ40を、線維形成プロセスの間、最高9日間Cath Aと同時にインキュベートする実験を行った。得られた結果から、Cath Aは、Aβ40アミロイドに対するそのタンパク質分解作用により高分子量線維の形成を有意に抑制することが明らかになった(図20B)。この実験では、単量体Aβ40形態のレベル低下も観察された(図20C)。
特に明記しないかぎり、本明細書のすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者に共通して理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載する方法及び材料と類似または同等である、いかなる方法及び材料も本発明の実施または試験において使用できるが、その好ましい方法及び物質が本明細書に記載されている。引用されているすべての刊行物、特許、及び特許公開は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
本明細書で論じる刊行物は、あくまでも本出願の出願日以前のそれらの開示について提供されるものである。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明を理由として、かかる刊行物に先行する権利がないことを承認するものと解釈すべきではない。
本発明をその具体的な実施形態と関連させて記載してきたが、さらなる変更が可能であり、その適用には、一般に、本発明の原則に従った本発明のいかなる変形、使用、または適応も包含されることが意図され、それには、本開示から発展させたもの、例えば、本発明が属する技術分野の範囲内で既知または慣習的な実施に入るもの、および記載され、かつ添付の特許請求の範囲で後述される本質的な特徴に該当し得るものが含まれることを理解されるであろう。