JP2008545705A - 軸索再生を促進する組成物及び方法 - Google Patents

軸索再生を促進する組成物及び方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008545705A
JP2008545705A JP2008513744A JP2008513744A JP2008545705A JP 2008545705 A JP2008545705 A JP 2008545705A JP 2008513744 A JP2008513744 A JP 2008513744A JP 2008513744 A JP2008513744 A JP 2008513744A JP 2008545705 A JP2008545705 A JP 2008545705A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sialidase
agent
activity
axonal
axon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008513744A
Other languages
English (en)
Inventor
ロナルド エル. シュナー,
リンダ ジェイ. エス. ヤン,
ローレンス ピー. シュラム,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Johns Hopkins University
Original Assignee
Johns Hopkins University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Johns Hopkins University filed Critical Johns Hopkins University
Publication of JP2008545705A publication Critical patent/JP2008545705A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/43Enzymes; Proenzymes; Derivatives thereof
    • A61K38/46Hydrolases (3)
    • A61K38/47Hydrolases (3) acting on glycosyl compounds (3.2), e.g. cellulases, lactases
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/43Enzymes; Proenzymes; Derivatives thereof
    • A61K38/51Lyases (4)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P19/00Drugs for skeletal disorders
    • A61P19/08Drugs for skeletal disorders for bone diseases, e.g. rachitism, Paget's disease
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P7/00Drugs for disorders of the blood or the extracellular fluid
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/10Drugs for disorders of the cardiovascular system for treating ischaemic or atherosclerotic diseases, e.g. antianginal drugs, coronary vasodilators, drugs for myocardial infarction, retinopathy, cerebrovascula insufficiency, renal arteriosclerosis

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Physical Education & Sports Medicine (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Orthopedic Medicine & Surgery (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Rheumatology (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

以下のように、本発明は、CNS疾患又は損傷の治療のための組成物及び方法を、一般的に特徴付けている。特に、本発明は、対象において軸索の伸張を増大させるための組成物及び方法を提供する。一態様では、本発明は、CNS修復手術の成功を向上させる。

Description

(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2005年5月25日申請の米国仮出願番号第60/684,340号の優先権を主張するものであり、その全開示は、本明細書にその全体を取り込む。
本発明は、国立衛生研究所による助成番号第5R21NS046669号及び同第2R01NS037096号のもとでの支援でなされたものである。米国政府は、本発明に関して特定の権利を有する。
(発明の背景)
脊髄損傷及び中枢神経系(CNS)を含むその他の損傷は、しばしば外傷により惹起される。脊髄損傷は、しばしば運動及び感覚機能の欠損により生涯にわたる身体障害を結果として生じる。損傷を受けたCNSは、軸索再生に対して機能修復を甚だしく制限する極めて阻害的な環境であるため、その様な傷害からの修復は一般的には芳しくない。これは、一部は、損傷部位に蓄積する特定の分子である軸索再生の阻害物質に起因する。軸索再生の阻害物質には、残留ミエリン上のミエリン関連の糖タンパク質(MAG)、NogoA及びオリゴデンドロサイト−ミエリン糖タンパク質(OMgp)、並びにグリア性瘢痕の星状細胞上のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン等がある。これらの軸索再生の阻害物質の一部は、軸索成長円錐上の相補的受容体に結合し、軸索の伸長を止めるシグナルを出す。
脊髄損傷の一つのタイプは、腕神経叢(神経根)剥離である。腕神経叢は、脊椎から肩、腕及び手にシグナルを送る神経の網目組織である。腕神経叢剥離は、1つ又はそれ以上の腕神経叢神経が、脊椎から引き裂かれた時に発現するこの網目組織に対する重症な損傷である。このタイプの損傷は、すべての外傷性腕神経叢損傷の>70%にみられる特徴である。その様な損傷を受けた後に感覚運動を修復させることは、不可能であると考えられていた。近年、神経移行術が、二頭筋の機能及び肩の安定性を提供するために利用されている。末端神経系(PNS)へCNSを連結するための剥離脊髄神経根の移植又は脊髄への末端神経移植は、一部の患者では機能の再接続を引き起こしている。しかしながら、顕微鏡手術環境においては軸索再生の阻害物質の存在によって機能改善に限りがある。一般に脊髄損傷を処置するため、及び腕神経叢剥離の治療におけるCNSへの末端神経植え込み移植の成功率を高めるために、軸索伸長を向上させる方法が、早急に必要とされている。
(発明の概要)
下記のように、本発明は、一般にCNS疾患又は損傷の治療のための組成物及び方法を特色とする。
一態様においては、本発明は、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を細胞又は細胞基質に接触させることにより、細胞における軸索伸長を促進させる方法を一般に提供し、それにより軸索伸長が促進される。一態様では、シアリダーゼ活性又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤は、細胞又は細胞基質に存在しているシアル酸を修飾する。一態様では、当該細胞は神経細胞(例えば、運動又は感覚神経細胞)のような中枢神経系の細胞であり、例えば腕神経叢に存在する軸索を有する神経細胞である。別の態様では、本方法は、CNSから末梢神経移植片への伸長を促進する。さらに別の態様では、本薬剤は、修復CNS手術(例えば、末梢神経移植又は剥離神経根の再挿入)前に、手術時に、又は手術後に投与される。さらに別の態様では、シアリダーゼ作用を有する薬剤は、コンドロイチナーゼ(chondroitinase)ABC活性を有する薬剤と併用投与される。併用投与は、同時期に、又はコンドロイチナーゼABC活性を有する薬剤の投与後5日以内に行われる。一態様では、投与により未処置の対照条件に比較して、軸索伸長が少なくとも2倍に増大する。
別の態様において、本発明は、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を対象に投与し、それにより対象における軸索再生の阻害物質を遮断する方法であり、それを必要とする対象に対して、軸索再生の阻害物質を遮断する方法を提供する。
関連する態様において、本発明は、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を対象に投与し、それにより対象における軸索伸長を促進する方法であり、それを必要とする対象に対して、軸索伸長を促進する方法を提供する。一態様では、対象は、中枢神経系疾患、又は脳卒中、頭部外傷、脊髄の損傷(例えば、腕神経叢の剥離)、虚血、低酸素症、神経変性疾患、多発性硬化症、感染症、癌及び自己免疫疾患からなる群より選ばれる損傷を有している。別の態様では、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤は、修復手術(例えば、末梢神経移植又は剥離神経根の再挿入)の前、手術時又は手術後に投与される。さらに別の態様では、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤は、例えば浸透圧式のポンプによる脊髄への注入、留置カテーテル又は除放性の生体材料により対象の中枢神経系に直接投与される。さらに別の態様では、本方法は、対象のCNSから末梢神経移植片への軸索伸長を促進する。さらに別の態様では、シアリダーゼは、コンドロイチナーゼABC投与と同時に、又は投与後の5日以内に投与される。
さらに別の態様においては、本発明は、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を、CNS修復手術を受けた対象に投与し、それにより軸索伸長を促進させる方法であり、脊髄損傷(例えば、腕神経叢の剥離)を有する対象の軸索伸長を促進する方法を提供する。一態様では、本方法は、CNSから末梢神経移植片への伸長を促進する。別の態様では、本方法は、軸索再生の阻害物質の活性を遮断又は修飾する。
さらに別の態様において、本発明は、軸索再生の阻害物質存在下での神経細胞に、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を接触させ、そして前記薬剤存在下での軸索伸長を対照条件に対して比較する方法であり、ここにおいて、薬剤存在下での軸索伸長の増加により、軸索伸長を促進させる薬剤を同定する、軸索伸長を促進させる薬剤を同定する方法を提供する。
関連する態様において、本発明は、軸索伸長を促進させる薬剤を同定する方法を提供する。その方法には、軸索再生の阻害物質にシアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を接触させ、そして軸索再生の阻害物質の生化学的修飾を同定することを含み、ここにおいて、軸索再生の阻害物質を生化学的に修飾する薬剤は、軸索伸長を促進させるものとして同定される。
上記態様の種々の形態においては、本発明は、軸索再生の阻害物質の存在下での神経細胞に薬剤を接触させ、そして薬剤存在下での軸索伸長を対照条件に対して比較することを更に含み、ここにおいて、薬剤存在下における軸索伸長の増加により、軸索伸長を促進させる薬剤が同定される。さらに別の態様では、薬剤は、シアリダーゼポリペプチド断片、変異体又は類似体である。
さらに別の態様において、本発明は、軸索伸長を必要とする対象に対して軸索伸長を促進させるのに用いる医薬組成物を提供する。当該組成物は、薬学的に許容される賦形剤に有効量のシアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を含有している。
関連する態様においては、本発明は、軸索伸長を必要とする対象に対して軸索伸長を促進させるのに用いる医薬組成物を提供する。当該組成物は、薬学的に許容される賦形剤に有効量のシアリダーゼ活性を有する薬剤を含有している。
関連する態様において、本発明は、軸索伸長を必要とする対象に対して軸索伸長を促進させるのに用いる医薬組成物を提供する。当該組成物は、薬学的に許容される賦形剤に有効量のシアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCを含有している。別の態様においては、本発明は、シアリダーゼ活性又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を含有している治療用送達器具(delivery device)を提供し、ここにおいて、当該器具は、CNS疾患又は損傷治療のために、CNSに薬剤を局所に放出する。一態様では、前記器具は、コンドロイチナーゼABC作用を有する薬剤を更に含有する。別の態様では、前記器具は、浸透圧式のポンプ、留置カテーテル又は徐放性の生体材料である。
上記態様の種々の形態では、薬剤は、シアリダーゼである。上記態様の他の形態では、シアリダーゼ活性を有する薬剤は、細胞、基質又は細胞環境に存在している、シアロ複合糖質(sialiglycoconjugates)を修飾し、末端シアル酸を開裂させ、又はガングリオシド(gangliosides)、シアロ糖タンパク質又はポリシアル酸(polysialic acid)を修飾する。さらに他の態様では、修飾を受けたガングリオシドは、GD1a及びGT1bである。上記態様の別の形態では、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、1、2、3、4又は5U/mlのコンドロイチナーゼABCが、投与される。更なる他の態様では、約0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、1、2、3、4又は5U/mlの中間のコンドロイチナーゼABCが、投与される。更なる他の態様では、投与により軸索伸長が、非処置の対照に対して少なくとも2倍に増加する。さらに他の態様では、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABC活性を有する薬剤が併用投与される。併用投与の場合には、薬剤(例えば、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABC)は、同時に、又は少なくとも1、2、3、4、5、7又は10日以内に投与される。
本発明のその他の特徴及び利点は、詳細な説明及び請求の範囲から明らかにされる。
(定義)
「薬剤」とは、ポリペプチド、ペプチド、核酸分子、小分子又は模倣物質を意味する。
「類似体」とは、参照薬剤に対して構造的又は機能的に相同の薬剤を意味する。
「軸索再生の阻害物質」とは、軸索伸長を遅延又は低減させるすべての薬剤を意味する。軸索伸長に対するインビトロ及びインビボでのアッセイは、当該技術分野で公知であり、本明細書に記載する。
「軸索再生の阻害物質を遮断する」とは、軸索再生の阻害物質の効果を低下させる傾向を有する、生化学的修飾又はその他の作用を意味する。軸索再生の阻害物質を「遮断する」薬剤は、遮断する薬剤(例えば、シアリダーゼ又はコンドロイチナーゼABC)の存在下又は非存在下での神経細胞が軸索再生の阻害物質と接触するインビトロ及びインビボでのアッセイにおいて、軸索伸長を増加させる。
「細胞基質」とは、細胞と接触する細胞性又は非細胞性物質(例えば、細胞外マトリックス、ポリペプチド、ペプチド、又はその他の分子成分)を意味する。
「細胞環境」とは、神経細胞及び神経細胞の軸索を直接囲んでいる及び直接接触している領域を意味する。
「中枢神経系(CNS)」とは、脳又は脊髄、及び細胞外物質及び液を含むそれらの細胞性又は分子成分を意味する。
「中枢神経系疾患又は損傷」とは、正常な機能、又は脳若しくは脊髄の接続性を妨害するすべての疾病、疾患又は外傷を意味する。
「コンドロイチナーゼABC」とは、野生型コンドロイチナーゼ酵素の50%に相当する酵素活性を有するコンドロイチナーゼABCポリペプチド又はそれらのフラグメントを意味する。その他の態様では、コンドロイチナーゼポリペプチドは、野生型酵素活性の少なくとも65%、75%、85%、95%を有するコンドロイチナーゼABCのフラグメント、変異体又は類似体である。その他の態様では、前記フラグメント、変異体又は類似体は、活性が増加している(天然に存在している酵素の2、3、5又は10倍の活性)。典型的なコンドロイチナーゼABCのアミノ酸配列は、NCBI受入番号P59807(Proteus vulgaris)に示されている。
「対照」とは、標準又は参照条件を意味する。
「疾患」とは、細胞、組織又は器官の正常機能を損なう又は阻害する全ての症状又は疾患を意味する。
「有効量」とは、非処置の患者に比較して疾患の症状を改善するのに要する薬剤の量を意味する。CNS疾患又は損傷の治療に対し、本発明を実行するために用いられる活性な治療薬剤の有効量は、投与方法、対象の年齢、体重及び一般的健康状態により異なる。最終的には、参加する臨床医が、適切な量及び投与計画を決定する。このような量を、「有効な」量と称する。
「軸索伸長を促進させる」とは、対照条件に比較して軸索の数又は軸索伸長の長さを増加させることを意味する。その増加は、少なくとも2倍、2.5倍、3倍又はそれ以上である。
「フラグメント」とは、フラグメントが由来するポリペプチドの少なくとも50%の生物学的活性を有するポリペプチドの一部分を意味する。当該部分には、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が含有される。ポリペプチド又は核酸分子のフラグメントには、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300,400、500、600、700、800、900又は1000個の核酸又はアミノ酸が含有される。
「修飾する」とは、変化することを意味する。本発明との関連において、細胞、基質、又は細胞環境を修飾する薬剤は、細胞、基質又は細胞環境の成分(例えば、ポリペプチド、ヌクレオチド又は分子成分)における生化学的変化をもたらす。
「神経細胞」とは、哺乳動物の神経系に由来するすべての神経細胞を意味する。
「末梢神経移植片」とは、異種環境に移植された末梢神経系由来のすべての細胞性又は非細胞性の物質を意味する。ひとつのアプローチでは、末梢神経移植片は、一般に軸索伸長をサポートする非細胞性のマトリックスからなる。
「修復CNS手術」とは、神経機能を高めるために中枢神経系に施されるすべての手順を意味する。典型的な修復CNS手術には、末梢神経移植又は剥離神経根の再挿入がある。
「シアリダーゼ」とは、野生型シアリダーゼ酵素の50%の酵素活性を少なくとも有するシアリダーゼポリペプチド又はそれらのフラグメントを意味する。その他の態様では、シアリダーゼポリペプチドは、野生型酵素の少なくとも65%、75%、85%、95%の活性を有する天然に存在しているシアリダーゼのフラグメント、変異体又は類似体である。その他の態様では、当該フラグメント、変異体又は類似体は、活性が増加している(例えば、天然に存在している酵素の2、3、5又は10倍の活性)。典型的なシアリダーゼは、これらに限定されないが、NCBI受入番号CAA44916(Clostridium perfringents)、AAA27546(Vibrio chloerae)、P29768(Salmonella typhimurium LT2)、BAB40435(Erysipelothrix rhusiophahiae)、AAC95494(Trypanosoma rangeli)、BAD66680(Arthrobacter ureafaciens)、CAA44166(Actinomyces viscosus)、BAB39152(Mus musculus)、BAB32z440(Rattus norvegicus)、CAA55356(Homo sapiens)及びCAB96131(ノイラミニダーゼ、Homo sapiens)に示されるアミノ酸配列を含む。当業者は、科学文献において「シアリダーゼ」という用語が、「ノイラミニダーゼ」という用語と互換性をもって使用されていることが認識されるであろう。
「シアル酸修飾の活性」とは、シアル酸のすべての生化学的修飾を意味する。このような修飾には、ヒドロキシル基、N−アセチル基、又はカルボン酸基の付加又は削除が含まれる。典型的な修飾には、これらに限定されないが、ヒドロキシル基のシアル酸N−アセチル基への付加及びアセチル基のシアル酸ヒドロキシル基への付加が含まれる。シアル酸修飾の活性を有する典型的なポリペプチドには、これらに限定されないが、N−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(NCBI受入番号Q8MJC8)及びシアル酸O−アセチルトランスフェラーゼ(NCBI受入番号Q8MJC8及びAAG43983)が含まれる。
「対象」とは、これらに限定されないが、ヒト又はウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ又はネコのような非ヒト哺乳動物を含めた哺乳動物を意味する。
「治療用送達器具」とは、治療用薬剤の放出を行うすべての器具を意味する。典型的な治療用送達器具には浸透圧式のポンプ、留置カテーテル及び徐放性の生体材料が含まれる。
「変異体」とは、参照薬剤に構造的に相同であるが、生物学的作用に関して参照物質から変化している薬剤を意味する。本発明により提供される変異体には、1つ又はそれ以上の望ましい特徴を有するものとして、本明細書に記述された方法に用いるように選択された、最適化されたアミノ酸及び核酸配列が含まれる。
本明細書に用いる「治療する」、「治療している」、「治療」等の用語は、それを以って関連する疾患及び/又は症状を軽減又は改善することを意味する。当然のことならが、疾患又は症状を治療することは、これを除外するものではないが、それと関連した疾患、状況又は症状が完全に消失させることを要するものではない。
本明細書に用いる「阻害する」、「阻害している」、「阻害」、「予防治療」等の用語は、疾患を患っていないが、疾患又は症状の進行のリスクを有する又は進行し易い対象における疾患又は症状の進行の可能性を低下させることを意味する。
(発明の詳細な説明)
本発明は、中枢神経システムの疾患又は損傷の治療に有用な組成物及び方法を一般に特色としている。特に、本発明は、対象での軸索の伸張を促進する方法を提供する。本発明は、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCがそれぞれ脊髄損傷後のインビボでの軸索の伸張を促進するとの発見に一部基づく。本発明の方法は、CNS又は脊髄の外傷性損傷の治療、及び末梢神経移植のようなCNS修復手術の成功を促進するに特に有用である。
(CNSでの軸索再生)
損傷した中枢神経システム(CNS)は、軸索再生に対し極めて抑制的な状態にあり、外傷性損傷後の機能修復が極度に制限される。これは、部分的には軸索再生の阻害物質のためで、この物質は、損傷部位に蓄積する特異的な分子である。軸索再生の阻害物質としては、残存ミエリンではミエリン関連の糖タンパク質(MAG),NogoA及びオリゴデンドロサイトミエリン糖タンパク質(OMgp)、そしてグリア性瘢痕の星状細胞では硫酸コンドロイチンプロテオグリセリン(GSPG)が挙げられる。これら軸索再生の阻害物質のあるものは、軸索成長円錐上の相補的受容体に結合し、中止するようにシグナルを送る。軸索再生の阻害物質の活性を低減すれば、軸索の伸張及びCNS損傷後の修復が促進される。
CNS環境とは対照的に、末梢神経鞘は、軸索成長をサポートし、軸索再生の阻害物質を遮断する薬剤としての末梢神経の中枢神経への移植は、魅力的な治療目標となる。末梢神経移植片へのCNS軸索の成長促進により、目標の神経分布及び機能が向上すると考えられる。CNSへの末梢神経移植の一つの治療応用は、腕神経叢剥離の治療である。神経根が剥離すると、CNS内の切断された軸索のミクロ的な環境は、前角と軟膜の間の軸索通路上の特徴的な末端退縮球(terminal retraction balls)で示されるように極めて抑制的である
(軸索再生の阻害物質)
軸索再生の阻害物質及びそれらの軸索受容体は、当該技術分野で公知であり、表1に示す。
Figure 2008545705
これら軸索再生の阻害物質をターゲットとする組成物は、軸索再生の阻害物質の活性を低減する新しい分子治療を提供する。膜貫通性のミエリンタンパク質NogoA及びミエリン関連の糖タンパク質(MAG)並びにグリコシルホスファチジリイノシトール(GPI)結合のミエリンタンパク質のオリゴデンドロサイトミエリン糖タンパク質(Omgp)は、軸索のGPI結合の受容体系であるNogo受容体(NgR)に結合することにより作用すると仮定される2−4。MAGはまた、シアル酸結合レクチンのシグレック系(Siglec family)の一員で、ガングリオシドGDIa及びGTIb6−9を含む軸索のシアロ複合糖質に結合し、軸索再生を抑制すると提案されている。硫酸コンドロイチンプロテオグリカン(CSPG)の軸索受容体は未知であるが、そのグルコサミノグリカン鎖は、軸索の伸張を阻害するのに必要とされる10。これら所見は、酵素を損傷部位に注入することにより軸索再生の阻害物質機能を遮断する機会を提供する。
(軸索再生の阻害物質を遮断する治療)
幾つかの酵素が、軸索再生の阻害物質を生化学的に分裂させることが知られている。例えば、コンドロイチナーゼABCは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのグルコサミノグリカン鎖を消化する10。ホスファチジルイノシトール特異性のホスホリパーゼC(PI−PLC)は軸索表面からNogo受容体を、またミエリンからOMgpを除去する11−12。シアリダーゼは、MAGのグリカン結合決定因子を破壊する6,9,13。以下に更に詳細に報告するが、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCは、腕神経叢剥離のラットモデルで末梢神経移植と一緒に投与すると、軸索の伸張をそれぞれ促進する。
剥離は腕神経叢損傷の70%以上で発生し14、また前根を含む剥離損傷は、軸索及びそれらの神経鞘が中枢神経システム中のそれらに相当する神経細胞体から物理的に分離するために、機能再生能力に乏しい。主な治療は手術であり、神経又は筋肉移転のような一時的手術、また最近の検討で用いられる移植モデルのような修復手術が含まれる15,16−19。2つのタイプの脊髄移植で、前角ニューロンとそれらの末端ターゲットの間の結合を修復することができる。すなわち、剥離した根の脊髄への再移植、及び脊髄と遠位の神経幹又は筋肉の間の移植が実施できる。しかし、損傷と手術の間の遅延時に通常生じるような剥離神経根が収縮した場合、再移植は利用できない。ヒトで用いられる移植片としては、人工の基質から冷凍乾燥した筋肉まであるが、自己神経移植片が最も実行可能性が高いとされる16
再生した軸索が、筋肉とタイムリーに適切な接触を確立しないかぎり、筋肉の再神経分布は、機能を顕著に回復しない。軸索再生の速度は、本質的に遅いので、機能を修復するよう設計された治療の臨床効果が限定される。移植は脊髄に損傷を与えるリスクがあるので、この方法を利用する手術医は、再生を改良する神経生物学的方策を用いて、機能上の転帰を最適化することを求めている15,16,20。本明細書に報告されているように、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCは、それぞれ脊髄に移植された末梢神経移植片への軸索再生を促進し、再生を改善する潜在的な治療ターゲットを2つ提供する。従って、本発明は、軸索再生の阻害物質の量又は生物学的活性を低減するシアリダーゼ及び/又はコンドロイチナーゼABC活性を有する薬剤を提供する。そのような薬剤は、軸索の伸張を促進し、感覚運動接続の再生が要求される脊髄損傷のような、CNS疾患の治療に有効である。
(シアリダーゼ)
シアリダーゼ(ノイラミニダーゼとしても知られている)は、糖加水分解酵素の一種で、シアロ−オリゴ糖、ガングリオシド、又はシアロ糖タンパク質を含む糖タンパク質及び糖脂質のオリゴ糖成分から、シアル酸残基を開裂する。シアリダーゼは、バクテリア、ウイルス、原生動物、脊椎動物を含む種々の生物に見出される。シアリダーゼ活性を有する薬剤は、本発明の方法で有用である。そのような薬剤には、これらに限定されないが、シアリダーゼ活性を有するポリペプチド、その生物活性を有する断片、シアリダーゼ類似体及び変異体、更にそのような薬剤をコードする核酸分子が含まれる。一般に、シアロ複合糖質を修飾する組成物、O−グリコシド結合によりオリゴ糖に結合する末端シアル酸を触媒的に加水分解する組成物、インビトロ又はインビボでのアッセイで軸索の伸張を促進する組成物、又は軸索再生の阻害物質の活性を低減する又は遮断する組成物の何れかは、本発明の方法で利用できる。シアリダーゼ活性を有する組成物として、Clostridium perfringens、Vibrio cholerae,Arthrobacter ureafaciens及びSalmonella typhimuriumからの細菌シアリダーゼが含まれる。哺乳類シアリダーゼもまた、本発明の方法で有用であり、プラズマ膜(Schengrund et al. (1976) J. Biol. Chem., 79:555)、リソソーム及びシトソル(Tulsiani et al., (1970) J. Biol. Chem., 245:1821)を含む幾つかの細胞小器官で同定されている。本発明で有用な他のシアリダーゼは、例えば米国特許第6,114,386号及び同第5,312,747号に記述されている。
シアリダーゼ活性の試験法は、当該技術分野で公知であり、実施例1に記述されている。米国特許第6,844,346第を参照されたい。シアリダーゼポリペプチドは、内因性でそれを発現する細胞又は生体から分離できるか、又は適切な発現システムで組み替えポリペプチドとして発現させることができる。そのような方法は、当該技術分野で公知であり、例えは米国特許第6,436,687号に記述されている。治療又はその他の使用のために十分な量のシアリダーゼポリペプチドを提供するためには、ポリペプチドを発現する宿主細胞に適切なコード配列を導入することができる。例えば、「ビブリオ・コレラエ・ノイラミニダーゼによるシリル酸認識」(Moustafa et al., (2004) J. Biol. Chem. 279:40819?40826)を参照されたい。当業者は、多くの可能な発現システムが存在し、公知であり、またポリペプチドをコードするベクターの導入法及び目的のポリペプチドを単離、精製する手段の存在を認識している。適切な発現システムの例には、これらに限定されないが、バクテリア宿主細胞システム(例えば、大腸菌)、真核細胞システム(例えば、イースト、哺乳動物細胞及び昆虫細胞)が含まれる。一態様では、組み換えシアリダーゼポリペプチド又はその生物学的に活性な断片を、CNS疾患又は損傷の部位に局所投与(例えば、注入)で導入する。別な態様では、シアリダーゼポリペプチドをコードする核酸分子又はその生物学的に活性の断片を、遺伝子的手段、例えば、シアリダーゼポリペプチドをコードする遺伝子を所望の細胞に導入する等、直接CNS疾患又は損傷の部位の細胞に導入する。当業者は、これに限定されないが、以下に記すように担体分子(例えば、ベクター及び脂質)を用い、細胞中に核酸を導入する多様な方法が存在することを認識している。本発明のシアリダーゼ核酸分子及びシアリダーゼ酵素は、投与に適した医薬品に組み込むことができる。望むならば、シアリダーゼポリペプチド、その生物学的に活性の断片又は変異体は、コンドロイチナーゼABCのような軸索再生の阻害物質を遮断する別な薬剤と共に導入される。
(コンドロイチナーゼ)
コンドロイチナーゼABCは、硫酸コンドロイチンプロテオグリカンを含む軸索再生の阻害物質を分解する、代表的なコンドロイチナーゼ酵素の一つである。コンドロイチナーゼは、軸索の伸張の促進のためのシアル酸修飾の活性を有する薬剤と組み合わせると有用である。コンドロイチナーゼABCは、それを産生する細胞又は生体から単離でき、又は遺伝子組み換えにより発現できる。一態様では、コンドロイチナーゼABC核酸のシーケンスが、proteus vulgarisから誘導され(Prabhakar et al., Biochem. J. (2005) 386: 103-112)、そして遺伝子組み換えタンパク質が、本発明の方法で使用するために産生された。
本発明の方法は、CNS疾患及び損傷に広範囲に適用できる。これに関して、本明細書に記す治療方法は、外傷による脳及び脊髄の損傷、虚血、低酸素症、神経変性疾患、感染症、癌、自己免疫疾患、及び代謝障害の治療に有効である。代表的CNS疾患又は損傷には、脳卒中、頭部外傷、脊髄の損傷、低血圧、呼吸停止、心臓停止、レイ症候群、脳血栓症、塞栓症、脳出血、脳腫瘍、脳脊髄炎、水頭脳炎(hydroencephalitis)、手術及び手術後脳傷、アルツハイマー病、ハンティングトン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、パーキンソン病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症が含まれる。血栓、塞栓及び全身性低血圧は、脳虚血症状の最も一般的な原因である。脳虚血の他の原因としては、高血圧、高血圧の脳血管疾患、動脈瘤破裂、血管腫、血液疾患、心臓麻痺、心臓停止、心臓性ショック、敗血性ショック、頭部外傷、脊髄外傷、発作、腫瘍からの出血、又はその他の血液損失が挙げられる。CNS外傷に関しては、擦り傷、切開、打撲傷、穿刺、又は圧迫のような組織損傷が関連する外傷が挙げられる。そのような外傷は、頭部、首、脊柱と異物の外傷的接触により生じる。外傷性の損傷の他の形態は、不適切な液体の蓄積(例えば、通常の脳脊髄液の遮断又は機能不全又は硝子体液の産生、ターンオバー、体積調節、又は硬膜下若しくは頭蓋内の血腫又は浮腫)によるCNS組織の圧迫、狭窄から生じる。同様に、外傷的圧迫又は狭窄は、転移又は一次腫瘍のような多量の異常組織の存在からも生じる。
本発明の方法は、シアリダーゼ活性又はコンドロイチナーゼABC活性を有する医薬品又は関連する化合物の治療有効量を、対象(例えば、ヒトのような哺乳動物)で軸索の伸張が必要とされる部位に投与することからなる。一態様では、本発明は、脊髄又は中枢神経システムの損傷又はその関連する疾患、障害若しくは症状の対象を治療する方法で、疾患又は障害が治療されるような状況下で損傷、疾患、障害又は症状を治療するに十分な量の化合物を対象に投与する方法を提供する。
本明細書における方法は、対象(そのような治療を必要と同定される対象を含む)にその効果を生むために本明細書に記述した化合物又は組成物の有効量を投与することからなる。そのような治療を必要とする対象の同定には、対象又はヘルスケア専門家の判断に基づくが、それは主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば、テスト又は診断法により測定できる)でありうる。
一般に、本発明の治療法(予防治療を含む)は、本明細書の処方の化合物のような化合物の治療有効量を哺乳動物、特にヒトを含む、治療を必要とする対象(例えば、動物、ヒト)に投与することからなる。そのような治療は、これら疾患、障害又は症状に罹っている、有している、疑いのある又は罹るリスクのある対象、特にヒトに適切に適用される。
(CNS疾患又は損傷の治療)
本明細書に報告する結果は、シアリダーゼ又はコンドロイチナーゼABCの投与が、インビボで軸索の伸張を促進することを示している。従って、シアリダーゼ活性を有する薬剤は、単独又はコンドロイチナーゼABCと組み合わせて軸索の伸張又は感覚運動接続を促進するために提供することができる。あるいはその代わりに、そのような組成物をコードする核酸分子を、軸索の伸張が望まれるCNS損傷又は疾患の部位の細胞での発現用に提供される。
シアル酸修飾の活性を有する薬剤は、軸索再生の阻害物質の存在が軸索の伸張を制限する、CNS内の細胞環境で特に有用である。一態様では、シアリダーゼ又はシアリダーゼとコンドロイチナーゼの組み合わせが、軸索再生を必要とするCNS疾患又は損傷の部位に局所的に送達される。疾患又は損傷のためにニューロン接続性が失われた場合、薬剤は、例えば、軸索の伸張を増大させる又はニューロン接続を修復するに十分な形態で送達される。一般的には、ニューロン接続性は、損傷を受けたニューロンがターゲットとなるニューロン又は筋肉との機能接続の確立した時に、修復したとされる。
本発明に含まれる一治療アプローチでは、シアリダーゼ又はシアリダーゼとコンドロイチナーゼの組み合わせ、その生物的活性を有する断片、変異体又は類似体のような組み換え体の治療薬を、CNS損傷の部位に直接又は実際に疾患で影響を受けた組織に投与することが含まれる。一態様では、治療薬剤を、カテーテル又は浸透圧のポンプを用いて局所注入し、損傷又は疾患部位に局所的に投与する、又は部位に連結している脳脊髄液に注入又は送達して投与する。あるいは、通常の組み換えタンパク質の投与技術を用いて、全身に薬剤を送達する。投与するタンパク質の投与量は、幾つかの要因に依存するが、それら要因としては、個々の患者のサイズ、健康状態が挙げられる。ある特定の対象には、特別の投与計画が、個人のニーズ及び組成物の投与又はその投与を監視する専門家の判断に基づいて、長期にわたって調整される。一般に、1日に0.1mgから100mgが、医学的に許容される医薬品として認められる剤形で成人に投与される。シアリダーゼでは、投与量は、0.1、0.2、0.3、0.38、0.5及び1.0U/mlの間であり、コンドロイチナーゼABCでは、0.1,0.2,0.3,0.4、0.5、1、2、3、4及び5.0U/mlの間である。
軸索の伸張の増大又は軸索再生の阻害物質の活性の低減が望まれる場合、シアリダーゼ核酸分子又はポリペプチドの発現又は活性は、CNS疾患また損傷を防止又は改善するための一つの治療アプローチである。一態様では、核酸分子コードのシアリダーゼを、CNS疾患又は損傷の部位の細胞に投与する。核酸分子は、十分な量のタンパク質が軸索の伸張を促進する又は軸索再生の阻害物質の減少又は遮断するのに産生できるように、細胞が取り込めるような形態で細胞に送達される。あるいは、シアリダーゼにコードされる核酸分子からなる発現ベクターは、遺伝子組み換えシュワン細胞のような遺伝子組み換え細胞を産生するのに用い、シアリダーゼを発現する遺伝子組み換え細胞を、CNS疾患又は損傷の部位に送達する。
形質導入ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連のウイルス)のベクターは、特にその感染効率が高いこと、安定な一体化及び発現のために、身体の細胞遺伝子治療に用いられる(例えば、「ヒト遺伝子治療」(Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997;「現在の眼科研究」(Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996);Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1977;Naldimi et al., Science 272:263-267, 1996;Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997)。例えば、全長のシアリダーゼ遺伝子又はその一部は、レトロウイルスベクターにクローンし、発現はその内因性プロモータ、レトロウイルス長末端繰り返し、又は目的のターゲット細胞タイプに特異的なプロモータ(例えば、中枢神経システムの細胞)から誘導できる。他の利用できるウイルスベクターとしては、例えば、ワクシニア・ウイルス、牛パピローマ・ウイルス、又はエプスタイン−バールウイルス(Epstein-Barr Virus)のようなヘルペスウイルスが挙げられる(例えば、以下のベクター:Miller, Humane Gene Therapy 15-14, 1990;Friedman, Science 244:1275-1281, 1989;Eglitis et al., Bio Techniques 6;608-614, 1988;Tolstosheve et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61、1990;Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991;Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987;Anderson, Science 226 :401-409, 1984;Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991;Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989;Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993;and Johnson, Chest 107:778-838, 1995)。レトロウイルスベクターは、特に良く開発され、臨床で利用されている(Rosenberg et al., N. Engl. J. Med. 323:370, 1990;Anderson et al., U.S. Pat. No. 5,399,346)。最も望ましくは、ウイルスベクターは、目的の遺伝子を全身に投与する、又はCNS疾患又は損傷の部位の細胞に投与するために用いられる。
非ウイルスのアプローチはまた、CNS疾患又は損傷を有する患者の細胞への治療薬剤の導入に用いることもできる。例えば、核酸分子は、リポフェクチン(lipofectin)の存在下(Feinger et al., Porc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987;Ono et al., Nueroscience Letters 17:259, 1990;Brigham et al., Am. J. Med. Sci., 298:278, 1989;Stanbinger et al., Methods in Enzymology 101:512, 1983)、アシアロオロソムコイド−ポリリシン接合体の存在下(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263:14621, 1988;Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)での核酸投与により、又は手術条件下でのマイクロ注入(Wolffら、Science 247:1465、1990)により細胞中に導入することができる。望ましくは、核酸は、リポゾーム及びプロタミンと共に投与するのが良い。
遺伝子移転はまた、インビボでのトランスフェクションによる非ウイルス手段を用いて実施できる。このような方法には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合の使用が含まれる。リポゾームもまた、DNAを細胞中に導入するのに潜在的に有効であろう。患者の影響を受けた組織に健康な遺伝子を移植することも、生体外で、培養可能なタイプの細胞(例えば、自己又は異種の一次細胞若しくはその後代細胞)中に正常な核酸を移転し、その後その細胞を疾患又は損傷の部位のターゲット組織に注入することにより達成できる。一態様では、CNSからの軸索の伸張を促進するための末梢神経の移植時に、その移植が実施される。
このような方法で用いるためのcDNA発現は、適切なプロモータ(例えば、ヒト・シトメガロウイルス(CMV)、サルのウイルス40(SV40)、又はメタロチオネイン・プロモータ)の何れかから指向でき、適切な哺乳動物の調整エレメントにより調整される。例えば、もし望むならば、遺伝子発現を腸上皮細胞のような特定の細胞タイプに優先的に指向することが知られるエンハンサーは、核酸発現を指向するのに用いることができる。使用されるエンハンサーには、これに限定されないが、組織又は細胞の特異的なエンハンサーとして特定化されるものが含まれる。又は、治療体としてゲノムクローンが用いられるならば、調整は、同族の制御配列により、又は望むならば、上記のプロモータ又は調節エレメントの何れかを含む異種ソースから誘導される制御配列により仲介され得る。
(スクリーニングアッセイ)
シアル酸活性又はシアル酸修飾の活性を有する化合物は軸索の伸張を促進する上で有用である。部分的にこの発見に基づき、本発明の化合物は、軸索の伸張のアッセイでの活性を増加させる、酵素の活動を増大させる、安定性を向上させる、酵素の特異性を増大させる、毒性を低減する、又は血液脳関門を通過する能力を増大させる、ポリペプチド、その生物的に活性のある断片、変異体、類似体を含む薬剤候補の高度に完全な低コストでのスクリーニングに有用である。一アプローチでは、最適化されたシアリダーゼポリペプチド変異体又は類似体が、向上した安定性又は生物活性のような望ましい特性を有するものに対する変性ポリペプチドのライブラリーをスクリ−ニングすることにより同定される。潜在的な生物活性類似体のライブラリーを作成するには、多くの方法がある。一態様では、シアリダーゼ又はコンドロイチナーゼ変異体のライブラリーが、核酸レベルで遺伝子組み換え突然変異によって生成し、遺伝子ライブラリーでコードされる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、潜在的シアリダーゼシーケンスの変性セットが、個々のポリペプチドとして又はポリペプチドのセットとして発現できるように、遺伝子シーケンスに酵素的に結合することができる。変性遺伝子シーケンスの化学合成は、自動DNA合成装置で実施できる。次に合成遺伝子は、適切な発現ベクターに結合される。遺伝子の変性セットの目的は、一つの混合物で望まれる生物活性類似体にコードされるシーケンス全てを提供することである。変性オリゴヌクレオチドの合成は、当該技術分野で公知で(例えば、「Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3」;「Itakura et al. (1981) Recombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam: Elsevier pp. 273-289」;「Itakura et al. (1984) Science 198:1056」を参照されたい)、そのような技術はまた、他のタンパク質の指向エボリューションでも用いられている(例えば、「Scott et al. (1990) Science 249:386-390」;「Roberts et al. (1992) PNAS 89:2429-2433」;「Devlin et al. (1990) Science 249:404-406」;「Cwirla et al. (1990) PNAS 87:6378-6382」;米国特許第5,223,409号及び同第5,096,815号を参照されたい)。
シアリダーゼの1つ又はそれ以上の変異体を作成した場合、望まれる特性(例えば、向上した安定性、軸索再生の阻害物質の活性の遮断、軸索の伸張の活性化刺激の促進)を有する変異体を特定するために種々の方法が用いられる。ペプチドのアミノ酸シーケンスの1つ又はそれ以上の変化が生物活性類似体を産出しているか否かは、野生型のペプチドと類似した様式での細胞での応答を生み出す、又はこのような応答を競合的に阻害する変異ペプチドの能力を評価することにより容易に決定できる。更に、ターゲットの軸索再生の阻害物質を生化学的に修飾するポリペプチドの能力も測定することができる。
遺伝子組み換えライブラリーの遺伝子産生物のスクリーニング、及びある特性を有する遺伝子産生物のcDNAライブラリーのスクリーニングに関する広範囲に亘る技術は、当該技術分野で公知である。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングで最も一般に利用されている技術は、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローンすること、得られたベクターのライブラリーで適切な細胞を変性すること、そして望まれる活性の検出でその産生物が検出される遺伝子をコードするベクターを容易に分離するような条件下で遺伝子組み換え遺伝子を発現することからなる。以下に記す例示的アッセイの各々は、遺伝子組み換え突然変異生成技術で作成される多数の変異体シーケンスをスクリ−ニングするに必要な高度な処理能力の分析に適切である。
その他の態様では、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する化学的に修飾された薬剤が提供される。ポリペプチドは、化学的に修飾することができて、グリコシルグループ、脂質、リン酸塩、アセチルグループ等のようなその他の化学構成成分と複合体を形成して誘導体を作り出す。共有結合の誘導体は、アミノ酸側鎖又はポリペプチドのN−末端若しくはC−末端での機能性の基と化学構成成分を結合することにより作成できる。例えば、タンパク質に関連する天然のシーケンス以外で、細胞外母組織の成分を結合し、類似体の細胞表面への局在化を促進する、構成成分を含む生物的に活性の薬剤が作成される。
本発明で有用なポリペプチドは、細胞培養、組織サンプル、生体液又は他の生体物質である、それらの原料物質から実質的に精製されることが好ましい。実質的に精製されるとは、精製された物質が、例えばシアリダーゼポリペプチドのような目的のポリペプチドを少なくとも60重量%(乾燥重量)を含むことを意味する。好ましくは、ポリペプチド組成物が、目的のポリペプチドの少なくとも重量で75%又は85%、更に望ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%を含む。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析等の、適切な標準的な方法で測定される。患者に投与した場合、ポリペプチドが十分に効果を発揮できる濃度である限り、実質的に精製したポリペプチドは、担体又は細胞のような他の望ましい成分と組み合わせてポリペプチドが60%より少ない組成でも提供できる。
本発明で有用なポリペプチド薬剤は、天然に存在するもの、合成又は例えば、一部はシアリダーゼで第二の部分は明白なポリペプチドであるキメラ又はハイブリッドポリペプチドから成る組み換え分子でも可能である。これら因子は、生物サンプルから精製される、化学的に合成される、又は標準的技術で遺伝子組み換えにより製造することができる(例えば、「Agubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, New York, John Wiley and Sons, 1993」;「Pouwels et al., Cloning Vectors:A Laboratory Manual, 1985, Suppl.1987」を参照されたい)。
一態様では、シアリダーゼ活性は、実施例1に記載のように免疫組織化学的に評価され、そこでは酵素有効性が、GT1bの消失及びGM1の免疫染色による染色をアッセイすることにより免疫組織化学的に評価された。別の態様では、薬剤候補のシアリダーゼ活性をHaraら(Anal Biochem. 1987:164:138-145)が記述しているように基質として2‘−(4−メチルウンベリフェリル)−α―D−N−アセチルノイラミン酸(Sigma)を用いてインビボでアッセイされた。簡単に言えば、蛍光発生基質を、酵素活性に適切な条件で薬剤候補に添加する。次に蛍光測定を用い、シアリダーゼ活性の存在又は非存在を示す。コンドロイチナーゼABC活性は、実施例1に示したようにアッセイし、リアーゼ生成物の免疫染色による染色で示されるようにコンドロイチナーゼABCはCSPGを開裂する。
あるいはこのような酵素アッセイに続き、軸索再生の阻害物質の活性の遮断又は軸索の伸張を促進する薬剤の能力を、インビトロ又はインビボでアッセイする。薬剤候補で処理した組織又は細胞を、未処理の対照サンプルと比較することにより、軸索の伸張を促進する治療薬剤の効果が同定される。軸索の伸張に対する薬剤の効果のインビボアッセイは、実施例2に記述してある。軸索の伸張に対するインビトロアッセイは、当該技術分野で公知である。例えば、インビトロでのラット小脳顆粒ニューロンからの軸索の伸張のアッセイは、Vyasら(J. Biol. Chem. 280:16305-16310, 2005)が記しており、インビトロでの後根神経節ニューロンからの軸索の伸張のアッセイは、DeBellardら(Mol. Cell. Neurosci. 7:89-101, 1996)が記述し、また幹細胞派生の運動ニューロンからの軸索の伸張のアッセイは、Harperら(Proc. Natl. Acad Sci. USA 101:7123-7128)が記述している。シアリダーゼ活性、シアル酸修飾の活性、又は軸索の伸張の促進活性を有する薬剤候補を、同定するスクリーニングアッセイを実施するための幾つかの方法が存在する。
一実用的な例では、薬剤候補を、軸索再生の阻害物質から成る組成物上にプレートした神経細胞の培地に、種々の濃度で加える。その後、標準的な方法で軸索の伸張を測定する。薬剤候補の存在下での伸張レベルを、薬剤不在の対照培地で測定したレベルと比較する。軸索伸張の促進又は軸索再生の阻害物質の活性を低減又は逆転する薬剤は、本発明で有用と考えられ、このような薬剤は、例えば、CNS損傷又は障害(例えば、腕神経叢剥離のような脊髄損傷)を、防止、遅延、改善、安定化又は治療する治療物として使用される。その他の態様では、その薬剤は、軸索増生を必要とする又は過度の軸索再生の阻害物質の活性で特徴付けられる疾患又は障害を、防止、遅延、改善、安定化又は治療する。そのような治療化合物は、修復手術後の軸索の伸張にインビボにおいて有用である。
別な実用的な実施例では、軸索再生の阻害物質に特異的に結合する薬剤候補が、スクリーンされる。そのような薬剤候補の有効性は、軸索再生の阻害物質又はその機能的同等物と相互作用する能力に依存する。そのような相互作用は、標準的なバインディング技術及び機能性のアッセイを用いて、容易にアッセイできる(例えば、Ansubelらが記述、上記)。一態様では、結合する及び軸索の伸張の促進することを、インビトロにおいて細胞内で薬剤をアッセイする。ある特別な実用的な実施例では、軸索再生の阻害物質に結合する薬剤候補が、クロマトグラフィーに基づく技術を用いて同定される。例えば、本発明の組み換えポリペプチドは、ポリペプチドを発現するように設計された細胞(例えば、上記の)から精製され、カラムに固定される。候補化合物の溶液をカラムに通し、軸索再生の阻害物質に特異的な化合物が、ポリペプチドに結合できることで同定されて、カラムに固定化される。その化合物を分離するには、カラムを非特異的結合分子を除去するために洗滌し、そして目的の化合物をカラムから遊離させて収集する。同様の方法で、ポリペプチドのマイクロアレイに結合した化合物を単離できる。そのような方法を用いて同定された化合物及びポリペプチドは、次に軸索再生の阻害物質を減少させる又は遮断する能力、又は本明細書に記述したように軸索の伸張を促進する能力についてアッセイされる。
これらの方法(又は、他の適切な方法)で同定された薬剤は、もし望むならば、さらに精製される(例えば、高性能液体クロマトグラフィー)。このアプローチで分離された薬剤は例えば、対象のCNS損傷又は疾患を治療する治療薬として用いられる。
別な態様では、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、内因性又は異種プロモータのコントロールの下において単離された細胞(例えば、バクテリア、哺乳類又は昆虫の細胞)中で発現する。異種酵素、その生物的に活性のある断片又は類似体を分離し、シアリダーゼ活性、軸索再生の阻害物質を減少させる又は遮断する能力、又は軸索伸張の促進能力についてインビトロアッセイで活性をテストする。
選択した薬剤候補は、ラットの腕神経叢剥離モデル、脊髄打撲傷モデル又は脊髄障害モデルのような、軸索伸張のインビボモデルでテストする。当業者は、軸索の伸張に対する薬剤候補の効果が通常薬剤候補の不在下での軸索の伸張と比較されることを認識している。かくして、スクリーニング方法には、非処理の対照細胞の参照値と薬剤候補により調整された細胞の値の比較が含まれる。
シアリダーゼ発現又は活性は、酵素活性の評価で当該技術分野で公知の手法で比較されうる。酵素の発現又は活性の評価法には、ウエスターンブロッティング、フロー血球計算、免疫細胞化学、磁性体及び/又は抗体被覆ビーズへの結合、in siteハイブリッド形成法、蛍光発光in situハイブリッド形成法(FISH)、フローチェンバー接着アッセイ、ELISA、マイクロアレイ分析、RT−PCR、ノーザンブロティング、又はブラッドフォード(Bradford)アッセイ及びロウリー(Lowry)アッセイ等の比色法が挙げられる。
軸索の伸張又は接続性のインビボ変化は、神経活動に対する機能性アッセイ又は核磁気共鳴画像法、PETを含む当該技術分野で公知の方法を用いる神経画像検討によりアッセイでき、軸索の伸張はインビボでの逆行性又は順行性の標識により決定される。通常、ビオチン標識化又は蛍光染料を神経システムに注入し、そこでニューロン及びその軸索がそれを取り込む。これにより、固定化及び適切な染色に続いて、軸索がトレースされる。機能性の接続は、生理的テストを用いて決定できる。これには、例えば、腎臓神経シミュレーション後の血圧の応答の変化が含まれる。あるいは、機能性接続は、運動行動のテストで決定できる。これには、回転ドラム上でテスト動物がバランスを取った状態に留まれる時間の測定、又はオープンフィールドでの徒歩パターンの観察が含まれる。
本明細書にリストアップしたポリペプチドをコードするDNAシーケンス(例えば、コンドロイチナーゼ又はシアリダーゼをコードするシーケンス)は、CNS損傷又は疾患の治療用の治療化合物の発見及び開発にも利用できる。コードしたタンパク質は、発現すると、その活性を向上させる薬剤のスクリーニング用の標的として利用できる。更に、コードしたタンパク質、Shine−Delgarno又はそれぞれのmRNAのシーケンスを促進するその他のトランスレイションの、アミノ末端域をコードするDNAシーケンスは、目的のコード配列の発現を促進するシーケンスを構築するのに用いられ得る。そのようなシーケンスは、標準的な技術で単離できる(Ausubelその他、上記)。
(テスト化合物及び抽出物)
一般に、シアリダーゼ活性、シアル酸修飾の活性を有する薬剤、軸索再生の阻害物質活性を遮断する薬剤、又は軸索の伸張を促進する薬剤は、天然物、又は合成(又は、準合成)抽出物の大きなライブラリー、化学ライブラリー、又はポリペプチド又は核酸ライブラリーから、当該技術分野で公知の方法で同定できる。薬品発見及び開発の当業者は、本発明のスクリーニング過程にとって、テスト抽出物又は化合物の正確な供給源が重要ではないことを理解している。スクリーニングに用いられる薬剤は、公知の化合物(例えば、他の疾患又は障害に用いられる公知の治療剤)である。あるいは、幾つかの未知の化学抽出物又は化合物も、本明細書に記述した方法でスクリーニングできる。そのような抽出物又は化合物の例としては、これらに限定されないが、植物、カビ、原核生物、動物由来の抽出物、発酵液及び合成化合物、更に現存の化合物の変性品が含まれる。
数多くの方法が、これらに限定されないが、糖、脂質、ペプチド及び核酸ベースの化合物を含む幾つかの化合物の無作為の又は指示された合成(例えば、準合成又は総合成)をするのに利用できる。合成化合物ライブラリーは、商業的にBrandon Associates(Merrimack, N.H.)及びAldrich Chemical(Milwaukee, Wis.)から入手できる。あるいは、候補化合物として用いられる化合物は、当業者に公知の標準合成技術及び方法で、容易に入手できる出発原料から合成できる。本明細書に記述した方法で同定される化合物を合成するに有用な合成化学変換及び保護基を用いた方法(保護及び非保護)は、当該技術分野で公知で、「R. Larock, Comprehesive Organic Transformations, VCH Publishers (1989)」;「T.W. Greene and P.G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley and Sons (1991)」;「L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagentds for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994)」;「L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, Joh Wiley and Sons (1995)」及びそれ以後の版に記述されているものが含まれる。
あるいは、バクテリア、かび、植物、動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、幾つかの商業的供給源から入手できる:Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft. Pierce, Fla.)及びPharmaMar、USA(Cambridge, Mass.)等。更に、もし望むならば、天然及び合成的に製造されたライブラリーが、例えば標準的抽出及び分別法による当該技術分野で公知の方法で製造される。分子ライブラリーの合成法の例も,当該技術分野で公知である:例えば、「Dewitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909, 1993」;「Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994」;「Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678, 1994」;「Cho et al., Science 261:1303, 1993」;「Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059、1994」;「Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061, 1994」;「Gallop et al., J. Med. Chem. 37:1233, 1994」等。更に、望むなら、ライブラリー又は化合物の何れも、標準的な化学、物理、生物化学の手法を用い容易に修飾される。
化合物のライブラリーは、溶液(例えば、「Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992」)、ビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、バクテリア(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullらの「Proc. Natl. Acad Sci USA 89:1865-1869, 1992)又はファージ(Scott and Smith, Science 249:386-390、1990; Devlin, Science 249:404-406, 1990」;「Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382, 1990」;「Felici, J. Mol. Biol. 222:301-310, 1991」;「Ladner, supra.」)として提示可能である。
更に、薬剤発見及び開発の当業者は、既知物質同定(dereplication)(例えば、分類学的既知物質同定、生物学的既知物質同定及び化学的既知物質同定、又はそれらの組み合わせ)、又はその活性がすでに知られている材料の複製又は複写の除去法を可能な限り利用すべきことを理解している。
粗製抽出物が、シアリダーゼ活性、コンドロイチナーゼ活性を有し、軸索再生の阻害物質の活性を遮断し、又は軸索の伸張を促進することを見出された場合は、観察された効果を有する化学成分を単離するには、その抽出物を更に分画することが必要となる。かくして、抽出、分画及び精製工程の目標は、軸索再生の阻害物質の活性を遮断し、軸索の伸張を促進し、又はシアリダーゼ若しくはコンドロイチナーゼ活性を有する、粗製抽出物内の化学物質を注意深く特性化し、同定することである。このような不均一抽出物の分画及び精製の方法は、当該技術分野で公知である。望むならば、CNS疾患又は損傷の処置用治療薬として有用であると示された化合物は、当該技術分野で公知の方法で化学的に修飾される。
(医薬治療薬)
本発明はCNS損傷又は外傷の処置用治療薬として作用できる組成物(核酸、ペプチド、小分子阻害剤、類似体を含む)を同定する簡単な手段を提供する。従って、本明細書に記した方法を用いて医療上の価値を有することが発見された化学物質は、薬剤として有用であり、かつ例えば、合理的なドラッグデザインによる現存の化合物の構造を修飾するための情報として有用である。そのような方法は、軸索の伸張の促進が必要な種々の神経系の症状に効果を有する化合物のスクリーニングに有用である。
治療用途には、本明細書に開示した方法を用いて同定した化合物又は薬剤は、例えば生理食塩水のような薬学的に許容されている緩衝液に製剤した形で、全身的に投与することができる。望ましい投与経路には、例えば、患者の薬剤濃度が連続的に持続されるように、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内注射がある。ヒト患者又はその他の動物の治療は、生理的に容認される担体にシアリダーゼ治療薬の有効治療量を用いて実施される。適切な担体及びその処方は、例えば、E.W.Martinの「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記されている。投与する治療薬剤の量は、投与法、患者の年齢及び体重、CNS損傷の臨床症状により変わる。化合物は、軸索再生の阻害物質の濃度又は活性を低減し、又は軸索の伸張を増大させる投与量、更に当業者に知られた神経系のアッセイで決定される感覚運動機能を確立又は修復する投与量で投与される。
(薬剤成分の処方)
CNS損傷の治療又は神経機能の修復のための化合物の投与は、他の組成物との併用で、脊髄損傷のような神経系の欠陥又は障害を改善、低減又は安定化する治療剤の濃度をもたらす適切な手段で実施される。化合物は適切な担体物質に適切な量含有可能であり、一般に組成物の総重量の1〜95重量%存在する。その化合物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉又は腹腔内)投与経路に適切な剤型でも提供される。本発明の医薬組成物は、通常の製薬法で製剤化される(例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), A. R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J.Swarbrick and J.C. Boylan, 1988-1999,Marcel Dekkor, New York」を参照されたい)。
本発明による医薬組成物は、投与後直ちに有効成分がかなりの量放出されるように、又は投与後の所定の時点若しくは期間放出されるように製剤化が可能である。後者のタイプの組成物は、一般に放出制御製剤と呼ばれ、(i)長期にわたり体内の薬剤濃度が実質的に一定な製剤、(ii)所定の遅れ時間の後、長期にわたり体内の薬剤濃度が実質的に一定な製剤、(iii)有効成分の血漿の変動(鋸歯様動態パターン)に関連する望ましくない副作用を同時に最小としつつ体内の薬品濃度を比較的、一定な有効レベルに維持し、所定の期間その作用を保持する製剤、(iv)例えば、中枢神経システム中若しくはその周辺に又は脳脊髄液に組成物をコントロール下に放出することにより局所的に作用を示す製剤、(v)例えば、一週に一回又は二週に一回投与するような便利な投与ができる製剤、(vi)CNS外傷又は疾患により機能が撹乱された特定の細胞種(例えば、神経細胞)に治療薬剤を送達するために担体又は化学誘導体を用いた、軸索生長が炎症又は残留ミエリンの存在により阻害されているCNS損傷部位をターゲットとする製剤がある。ある適用の場合には、徐放性製剤により酵素活性を治療レベルに保つための頻回投与が不要となる。
当該化合物の放出速度が代謝速度を上回るように放出を制御するために、幾つかの方法が利用できる。一例では、放出制御は、例えば、種々のタイプの放出制御組成物又はコーティングを含む種々の製剤パラメータ及び成分を適切に選択することにより達成される。従って、治療薬は、適切な賦形剤と共に製剤化して、投与により制御された形で治療薬を放出する医薬組成物とする。その例としては、単一ユニット若しくは複数ユニット錠剤、又はカプセル組成物、油液、懸濁液、エマルジョン、マイクロカプセル、ミクロスフィア、分子複合体、ナノ粒子、パッチ及びリポゾームが挙げられる。
医薬組成物は、剤型、製剤、又は従来の非毒性の薬学的に許容される担体及びアジュバントを含む適切な送達デバイス又はインプラント経由で、非経口的に注射、注入又は移植(皮下、静脈、筋肉、腹腔内、その他)にて投与可能である。そのような組成物の製剤また調合は、製薬製剤の当業者にはよく知られている。製剤は、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, supra」に記載されている。
非経口用の組成物は、単一投与量形態(例えば、単回投与量アンプル)、又は数回の投与量を含むバイアルとして供給可能であり、またそこに適切な保存剤を添加しても良い(以下を参照されたい)。組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、注入デバイス、又は移植用の送達デバイスの形態のいずれでも良く、また使用前に、水又は適切な賦形剤で再構成できる乾燥粉末として提供可能である。活性のあるシアリダーゼ治療薬とは別に、組成物は、適切な非経口の許容される担体又は賦形剤を含むことができる。
上記に示したように、本発明よる医薬組成物は、無菌注射に適切な形態をとることが可能である。そのような組成物を調整するには、適切な活性のシアリダーゼ治療薬(複数含む)を、非経口の許容される液体賦形剤に溶解又は懸濁する。使用できる許容される賦形剤又は溶剤としては、水、適量の塩酸、水酸化ナトリウム又は適切な緩衝液を加えて適したpHに調整した水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液及びデクストローズ溶液が挙げられる。水性製剤には、1つ又はそれ以上の保存剤(例えば、メチル、エチル又はn−プロピル−p−ヒドロキシベンゾエート)を添加しても良い。
活性のシアリダーゼ治療薬は、放出制御のためにミクロスフィア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポゾームその他に組み込むことが可能である。更に、組成物は、懸濁、溶液化、安定化、pH調整剤、等張化剤及び/又は分散剤を含んでも良い。あるいは、活性のある薬物を、生体適合性担体、埋め込み又は持続注入デバイスに組み込むこともできる。
ミクロスフィア及び/又はマイクロカプセルの製造に利用される材料は、例えば、ポリガラクチン、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタミン)及びポリ乳酸のような生分解性/生腐食性ポリマーがある。非経口の放出制御製剤を処方する場合に用いられる生体適合性担体としては、炭水化物(例えば、デクストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポプロテイン又は抗体がある。埋め込みに用いる材料は、非生分解性(例えば、ポリジメチルシロキサン)又は生分解性(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はポリ(オルソエステル)又はそれらの組み合わせがある。
経口用の製剤には、非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物に、活性の成分を含む錠剤が含まれる。このような製剤は、当業者には公知である。賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、充填剤(例えば、蔗糖、ソルビトール、糖質、マニトール、微結晶性セルロース、ポテトでんぷんを含むでんぷん、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースを含むセルロース誘導体、ポテトでんぷんを含むでんぷん、クルスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩又はアルギン酸);結合剤(例えば、蔗糖、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、でんぷん、前ゼラチン化でんぷん、微結晶性セルロース、珪酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニールピロリドン又はポリエチレングリコール);及び潤滑剤、流動促進剤、抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油又はタルク)である。その他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、着香剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤等である。
(送達方法)
本発明の医薬組成物は、シアリダーゼポリペプチド、生物活性を有するその断片、変異体又は類似体を含む、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を包含し、頭蓋内、脳内、脳室内、髄腔内、脊髄内、経口、局所、直腸内、経皮、皮下、静脈、筋肉、鼻腔内等を含む適切な経路の何れかで投与される。一態様では、その組成物は、脳脊髄液、血液、滑膜液のような保持されている生理液に添加される。開示された治療薬剤は、CNS疾患又は損傷の部位に直接注射又は注入できる。一アプローチでは、本発明の治療薬は、浸透圧式のポンプのような埋め込み、又は適切に変換した細胞(つまり、シアリダーゼ又はコンドロイチナーゼを発現する細胞)から成る移植片内に供給される。導入の方法はまた、再充電可能な又は生体分解性デバイスを用いて実施できる。種々の徐放性重合体デバイスが開発されており、タンパク性のバイオ製剤を含む薬剤の送達の制御用にテストされている。生体分解性及び非分解性ポリマーの両方を含む生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)は、ある特定の標的部位で生物活性因子の持続的な放出の埋め込みを形成するのに用いることができる。一般にシアリダーゼ又はコンドロイチナーゼABC活性を有する投与薬剤の量は、経験的に決定される。通常、薬剤の投与量は、レシピエントのkg当たり10〜1000μgの範囲である。ペプチド薬剤では、濃度は投与量のml当たり50〜500μgの範囲である。他の態様では、約0.1,0.2,0.3,0.38,0.5,1、2、3、4及び5.0U/mLの用量の治療剤が用いられる。安定剤、殺菌剤及びカビ予防剤のような他の添加剤も含まれる。これら添加剤は、通常の量で利用される。
(キット)
本発明はCNS疾患及び損傷の治療用キットを提供する。一態様では、キットにはシアリダーゼ若しくはコンドロイチナーゼABCポリペプチド、又は治療シアリダーゼ若しくはコンドロイチナーゼABCのコードの発現ベクターの有効量を単一用量形態で含む治療組成物が含まれる。複数の態様では、キットは、治療薬を含む滅菌容器からなり、その容器としては、箱、アンプル、びん、バイアル、チューブ、袋、パウチ、ブリスターパック又はその他当該技術分野で公知の容器形態でありうる。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネートした紙、金属フォイル又はその他医薬品を入れるに適切な材料から作られる。
望むならば、本発明の治療薬は、CNS疾患又は損傷を患う対象に投与する説明書と共に提供される。説明書には、軸索の伸張を促進する組成物の使用についての情報が通常含まれる。一態様では、説明書には、末梢神経移植のような修復手術の前、手術時又は後の治療薬の使用に関する情報が含まれる。他の態様では、説明書には、少なくとも以下の情報の一つが含まれ、情報には:ポリペプチド又は発現ベクターの記述;CNS疾患、損傷又はその症状の治療のための投与量スケジュール及び投与;事前注意;警告;適応症;非適応症;過量摂取情報;副作用;動物薬理;臨床試験;及び/又はその他の参考項目がある。説明書は、容器(ある場合には)に直接印刷する、若しくは容器に付するラベルとして、又は容器と一緒に又は容器内に別のシート、パンフレット、カード又はフォルダとして提供される。
(実施例)
シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCのインビボ活性
C8腕神経叢を、ラットの脊髄隣接部で切断し、自己腓骨神経移植片を同じ位置で脊髄に挿入した(図1A及び1B)。このモデルは、移植片の遠位端を局所(肩甲骨の上の)末端神経への接合する脊髄への末端神経移植片の治療移植を組み合わせたヒト腕神経叢剥離損傷に類似している。異なったARIの作用を妨げる3つの酵素である、PI−PLC、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCは、負荷用量を浸透圧式のポンプに連結したカテーテル経由で移植片挿入部位に14日間送達する。コンドロイチナーゼABCの濃度(0.5及び5.0U/ml)は、以前のインビボでの検討で有効な量と同等又はそれ以上である21−23。PI−PLCの濃度(2及び20U/ml)及びシアリダーゼ(0.1及び0.38U/ml)のはインビトロでの有効な量と同等又はそれ以上である6,11−12
インビボでの酵素の有効性は、免疫組織化学で確認された(図2A〜2I)。インビボでのシアリダーゼ、PI−PLC及びコンドロイチナーゼABCは、治療実験で用いられた条件に類似した条件下で胸部脊髄障害に注入した後、免疫組織化学的に評価した。シアリダーゼは、GT1bの消失及びGM1の免疫染色での染色で証明されたように末端シアル酸を開裂した。PI−PLCは、Thy−1免疫染色の消失で証明されているようにGPI結合タンパク質を放出し、コンドロイチナーゼABCは、リアーゼ産生物の免疫染色での染色で証明されているようにGSPG鎖を切断する。インビボで注入すると、これら酵素は、実験中の処理した動物の行動に基づくと明白な毒性は示さなかった。固定した脊髄の組織学的検査では、5U/mlのコンドロイチナーゼABC投与で組織悪化の誘導が見られた、5U/mlのコンドロイチナーゼABC投与以外では、どの処置も組織の損傷をもたらさなかった。
シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCのインビボでの軸索の伸張の促進
移植後4週間で、脊髄軸索の幾つかが腓骨神経移植片に延長しているのが逆行性の標識で測定された。末梢神経移植片の一様な、再現可能なそして完全な逆行性標識は、脊髄への挿入点から7mmで移植片を離断し、フルオロルビー染料を満たしたミクロリザーバ中に近末端を浸し、シールして達成した。3日後に、ラットを犠牲とし、逆行性標識の脊髄ニューロンの数を、顕微鏡で決定した。末梢神経移植片中によく伸びる軸索を有する標識ニューロンが、移植部位近くの前角中に観察された(図3A〜3D)。対照動物では、移植片は縫込むが、脊髄中に挿入はしない。これら移植片を、ミクロリザーバに取り付けると、脊髄ニューロンは染色されず、染色脊髄ニューロンは、移植片の神経分布を介した逆行性標識だけであった。
対照(食塩水で処理した)動物は、移植片の神経分布をある程度示し(図3A)、これは、有効性に限りはあるが、腕神経叢剥離傷に対する末梢神経移植の臨床利用と一貫性がある。PI−PLC(2又は20U/ml)で処理した動物での移植片の神経分布は、対照と類似していた(図3B)。更に多くの脊髄ニューロンが、シアリダーゼ(0.38U/ml,図3C、D)又はコンドロイチナーゼABC(0.5U/ml、図3E,F)で処理した動物で、逆行性に標識された。定量的分析で、この結論は確認された(図3A〜F)。分散分析(ANOVA)では、テストグループ間で高度に有意な差異が見られた(p<0.005)。神経分布は、2.6倍(p=0.005)の増大を見た。コンドロイチナーゼABC(0.5U/ml)での処理では、神経分布に同様な2.5倍の増大(p=0.002)が生じた。それに対比し、低濃度のシアリダーゼ(0.1U/ml)又はPI−PLC(2又は20U/ml)での処置では、対照とは有意に異ならず(p>0.4)、神経分布の小さい増大が得られた。
シアリダーゼ処理(0.38U/ml)又はコンドロイチナーゼABC処理(0.5U/ml)の動物では、最も逆行性に標識されたニューロンは、移植片部位近く(図3C〜F)での増大した軸索の伸張は、局所的に活性化されることを示唆している。また標識されたニューロンは、対側性の前角内及び中心管の近隣に見出された(矢印、図5A,B)。移植動物の全ての水平切片の標識ニューロンの総数(平均すると、対照動物で170、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABC処置動物で>400である、図4)は、最初の移植片断片の脊髄に存在する軸索の極めて強い軸索染色と一致するものであった、特に、有効な処置を受けた動物では顕著であった(図3A〜3F,5A〜5C)。これは、最初の移植片断片に存在する標識の軸索のほとんどが、水平切片背部及び腹部から挿入位置に存在する細胞本体から広がることを示す。標識の軸索が単一の水平切片内のそれらの対応する細胞本体と連続する例もまた、同定され(色付で示す、図5A,B)、また時折標識の軸索が、頭蓋又は仙骨から移植部位への多重断片の橋渡しをした(図5C)。
腕神経叢の損傷部位にシアリダーゼ又はコンドロイチナーゼABCを送達すると、食塩水のみ又はPI−PLCのみを与えられた動物と比較して、末梢神経移植の神経分布を>2.5倍増大させた。これは、CNS損傷におけるシアリダーゼの潜在的治療利点を示す最初のデータである。これら所見は、軸索再生の阻害物質の活性を遮断又は低減することにより、インビボでの軸索再生を促進し、CNS損傷後の回復を促進することの証拠を更に増大させるものである24
シアリダーゼがインビボで軸索の伸張を促進する機構は、いまだ確立されていない。理論に縛られることは望むものではないが、一態様では、シアリダーゼは、ガングリオシドGD1a及びGT1bのようなMAGに対する軸索受容体を破壊する6,8,9,25,26。この検討で用いられたウェルシュ菌(C. perfringen)シアリダーゼは、酵素注入部位のガングリオシドから末端シアル酸を開裂する(図2A〜2I)。免疫組織化学は、インビボでの各基質上のそれぞれの酵素の活性と一貫性があった。シアリダーゼ注入により、注入部位でGT1b免疫染色が非対称に減少し(図5B,C)、GM1免疫染色が増大している(図2D、E)。Thy−1の免疫染色は、対照部分の全ての解剖レベルで一様ではないが、PI−PLCの注入位置で免疫染色の非対称減少を示した(図2F、G)。最後に、モノクローナル抗体2−B−6での染色では、コンドロイチナーゼABCを注入したラットでリアーゼ産生物が非対称に出現した(図2H、I)。
従って、シアリダーゼ処置後の促進された軸索の伸張は、GD1a及びGT1bの破壊によるもので、MAG媒介の阻害の消失をもたらす。あるいは、ウェルシュ菌シアリダーゼは、ガングリオシド、シアロ糖タンパク質及びポリシアル酸に作用し27、これが軸索の伸張に影響するようである。更に、主要な脳ガングリオシドGM1に対するシアリダーゼ物の作用は、MAGとは独立して保護的又は栄養上の効果を有するであろう28
具体的にどのシアロ複合糖質が関与したかは別として、これら結果は、インビボでの軸索の伸張促進に有用である。更に、シアリダーゼによる効果は、コンドロイチナーゼABCによるものとは機構的に別であるようである。CSPGの糖鎖は、シアリダーゼにより影響を受けず、シアル複合糖質は、コンドロイチナーゼABCの影響を受けない。軸索再生の阻害において、シアログリカンとCSPGの機能的リンクを示す証拠は存在しない。これは、シアリダーゼとコンドロイチナーゼABCを提供する併用治療が、軸索の伸張の促進を増大させることを示唆する。
定量的にもシアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCによる末梢神経移植片への軸索の伸張の活性化は、非常に強いものである。図4は、移植片への軸索の延伸の数が、約170(対照)から>400(シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABC)に増大することを示す。神経分布のこのレベルは、影響を受けていない動物での逆行性標識によりC7神経分布を定量化した場合に観察されたものと比較されうる。例えば、Jivanら29は、非常に効果的な逆行性標識であるファーストブルー(Fast Blue)にC7脊髄神経の腹側枝の横断近接端を浸したとき、440の運動ニューロンが標識されたと報告している。また同報告で、末梢神経移植片での逆行性標識(移植後16週間)では僅か170のニューロンが標識され、これは本明細書に報告した非処理動物での結果と一致する。
シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCで処置された場合、末梢神経移植片への軸索の延伸を誘導する脊髄ニューロンは、移植片に隣接した前角のみに限られていない(図5)。この所見は、少数の対側性のニューロンが移植片に細胞分布する、ラット脊髄への剥離腰部前根の緊急の移植の効果についての以前の研究と一致する30。同様に、多重脊髄片からのニューロンが、単一の再移植の腹部根へ軸索が伸びることが示された31。現検討での逆行性標識のニューロンの形態学は、主として運動ニューロンとしてのそれらの同定と一致した。
本明細書に報告された結果は、シアリダーゼがインビボ動物モデルで軸索の伸張を促進することを初めて確立した。シアリダーゼは単独で、又は他の軸索再生の阻害物質の遮断剤と組み合わせで、その他の神経損傷モデルで軸索の伸張を促進するようである。同じモデルでコンドロイチナーゼABCが独立して、軸索の伸張を促進するとの所見は、標的の軸索再生の阻害物質、特にシアログリカン及びCSPGは、腕神経叢の剥離損傷の修復手術治療後の軸索の伸張及び機能回復を促進することを示唆している。
上記の結果は、以下の方法及び資材を用いて得られた。
(酵素と浸透圧式のポンプ)
以下の酵素を、カルシウム、マグネシウム無しの殺菌Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水で希釈した:セレウス菌からのPI−PLCの2又は20U/ml(P−5542,Sigma Aldrich, St. Louis, Mo.)、ウェルシュ菌からのシアリダーゼの0.1又は0.38U/ml(ノイラミニダーゼ、480708、Calbiochem, San Diego, CA)、プロテウス・ブルガリスからのコンドロイチナーゼABCの0.5又は5.0U/ml(Seikagaku100332,Associates of Cape Cod, East Palmouth, MA)。浸透圧式のポンプ(Alzet、200μl、0.5μl/時、14日間、Durect Corp, Cupertino, CA)に、5cmのPE−60チューブを2−0絹で固定し、殺菌食塩水又は酵素液を満たし、その後37℃にて一晩殺菌食塩水中で前培養し、ポンプに呼び水を導入した。
(末梢神経(移植片)採取)
体重200〜250gのオスSprague−Dawleyラットは、誘発後にハロセン麻酔を続けた。皮膚の殺菌後、腓骨神経の線に沿い切り込み、神経を曝露し、周りの組織が残らないようにひざから坐骨神経の元まで鋭く切断した。2〜3cmの断片を収集し、使用まで食塩水で湿った殺菌ガーゼ内に保存した。
(移植位置の準備)
皮膚の殺菌後、頚部の筋肉組織を曝露するよう中線後部頚部切開を行った。僧帽筋の外側縁及び肩甲骨の脊椎への僧帽筋の接合部を曝露した。肩甲骨脊椎への上部僧帽筋の接合部を切り離し、肩甲切痕域への肩甲舌骨筋の接合部を曝露した。肩甲切痕に近接する肩甲骨神経は、周りの結合組織を除外し切断し、肩甲切痕前1cmで離断し、棘上筋前部に見えるようにした。
(神経根剥離及び移植片埋め込み)
頚部椎弓切除術(C6−T1)の後、移植片埋め込みの線に沿って、傍脊椎線筋肉が離断された。移植片の遠位端を、9−0ナイロン縫合糸でレシピエントの肩甲骨神経に接合した。浸透圧式のポンプからのPE−60チューブを、傍脊椎筋肉組織2cm下の脊椎に平行に通し、意図した移植片挿入部位に末端が横たわるように切断する。チューブは、8−0ナイロンで硬膜及び隣接する筋肉の末端に固定し、チューブの開端が脊髄の左側に硬膜内で隣接するようにする。神経剥離のモデル形成のため、C8背部及び前部細根は、推移区域で離断された。腓骨神経移植片の近位端を、細い斜めシリンジチップを用いC8脊髄の腹側両面に1.5mm埋め込んだ。移植片の神経上膜は、9−0ナイロンで硬膜に固定した。移植片挿入後直ちに、50μlの食塩水又は酵素溶液(浸透圧式のポンプにロードするに用いたと同じ溶液)を、硬膜内を通して手術位置に導入した。僧帽筋及び傍脊椎筋肉を、4−0絹縫合糸で再び近接させ、皮膚を手術ステープルで閉じた。
(フルオロルビーによる逆行性標識)
最初の手術の4週間後に、ハロセン麻酔を続けたまま、ラットは、末梢神経移植片経由の逆行性標識のため第二の手術を受けた。前の頚部切開の側面に2cmの切開を行い、皮下組織を鋭く切り開いた。僧帽筋に再び近い縫合線を切り、肩甲骨神経と移植片へのその接合を曝露した。その移植片を硬膜への移植片の神経上膜を固定する縫合糸が見える(脊髄の側面端をマークする)まで内側にトレースした。移植片は、縫合糸に7mm側方(遠位)に離断し、新しく切った端片を、殺菌水中の5%のフルオロルビー染料(テトラメチルローダミン/リシンデクストラン、D1817、Invitrogen-Molecular Probes, Carsbad, CA)5μlを含む熱シールした200μlのミクロピペットチップの3mm先端からなるミクロリザーバ中に挿入した。約100μlのTissceelフィブリン封止剤(Baxter, Deerfield, IL)を加え、リザーバの上部を封止し、封入した逆行性トレーサーと移植片の切断遠位端の連続性を保証した。僧帽筋と傍脊椎筋肉を、4−0絹縫合糸で再び近接させ、皮膚を手術ステープルで閉じた。
(潅流固定、切片作成(sectioning)及び顕微鏡検査)
逆行性標識開始の3日後、ハロサン麻酔下で、水(2ml)に飽和したウレタンを腹腔内に注入した。ラットが自然呼吸困難に陥った時に、噴門を通じた灌流を食塩水で、次いで食塩水中の4%のパラフォルムアルデヒドで灌流を行った。末梢神経移植片に連続した脊髄を遮断で取り除き(図1B)、一晩4%のパラフォルムアルデヒド中に固定し、続いて30%の蔗糖中に24時間冷蔵保存した。冷凍マイクロトームを用い水平切片(40μm)を切断し、ガラススライド上に取り付けた。ローダインフィルタを用い、ニコンTE200蛍光顕微鏡に付けたSONY CCDカメラで蛍光画像を得た。全ての切片で逆行性標識したニューロンを計数し、その場合二重に数えるのを防止するために、核が明白に見えるニューロンのみを数えた。治療状況を知らない検査者が計数を行った。検討群の間の統計的比較は、AVNOVAで実施し、各酵素処理群と食塩水対照群と統計的比較は、スチューデントT検定を実施した。
(インビボでの酵素効力テストのための抗体及び免疫化合物)
抗ガングリオシドモノクローナル抗体を、以前に記したように準備した(Schnaar et al. (2002) Anal. Biochem. 302:276-284)。抗GT1b(GT1b−2b)及び抗GM1(GM1−1)を、それぞれ0.5及び1.1μg/mlの最終濃度で用いた。ウェルシュ菌シアリダーゼは、GT1b及び他の豊富に存在する複合ガングリオシドをGM1に変換したが、GM1から単一のシアル酸を開裂させることは唯一つともできなかった(Schauer et al., (1980) Adv. Exp. Med. Biol 125, 283-294)。従って、シアリダーゼ効能は、GT1b免疫染色の減少及び同時のGM1免疫染色増大で示される。PI−PLC効能は、Chemicon International、Temercula、CA.(製品CBL1500)からの抗Thy−1マウスモノクローナル抗体(0.5μg/mlの最終濃度)を用い、豊富に存在する神経システムのGPI固定のタンパク質、Thy−1の免疫染色の減少で示される。コンドロイチナーゼABCの効能は、硫酸コンドロイチンの開裂のリアーゼ産生品(Sorrell et al., (1988) J. Immunol. 140, 4263-4270)に結合するマウスモノクローナル抗体2−B−6(10μg/mlの最終濃度、Associates of Cape Cod, East Palmouth, MA)での免疫染色の増大で示される。主要な抗体の結合が、ビオチン複合体のヤギ抗マウスIgG(Fc特有、Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA, USA)、アビジン/ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体(Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA)及びVectorレッドアルカリホスファターゼ基質を用い検出された。
(インビボでの酵素効能のテストのための手術及び酵素注入)
ハロセン麻酔下で、ラット(Charles River、約250g)を胸郭筋肉組織を露出するよう腹部中線を切開し、脊椎線筋肉を背部脊椎T8−T10及びT12−T13から取り除いた。椎弓切除術をT9で、また部分的椎弓切除術をT12/T13接合部で実施した。直径約200μmに引き抜いたPE−60チューブを、T12/T13で硬膜の小さな切込み部を通して挿入し、T9尾部にその先端が届くまで吻方に導入し、カテーテルを筋肉に縫合した。硬膜に小さな切開をし、微細なピンセットで圧迫し(末梢神経移植を模倣)T9で側面脊髄に小さな傷を作った。圧迫後直ちに、50μlの酵素溶液(ウェルシュ菌シアリダーゼ、0.4U/ml;PI−PLC、2U/ml;又はコンドロイチナーゼABC、0.5U/ml)を、カテーテルを通じ傷部位に導入し、カテーテルの近隣端を同じ酵素溶液を含む皮下浸透圧式のポンプに接続した(対照動物には脊髄傷を付けたが、酵素は供給されなかった)。切り傷は2層で閉じた。
最初の手術の5日後、ラットを麻酔し、犠牲し、4%のパラフォルムアルデヒドを灌流した。胸部脊髄が露出し、背部から腹腔表面まで固定の脊髄中にピンを挿入し、カテーテル先端の吻部尾部(rostrocaudal)位置をマークした。脊髄を切断し、固定した後(postfixed)、冷蔵保存し、40μmの水平切片を本文に記述したように冷凍マイクロトームを用い準備した。
(インビボでの酵素効能テストのための免疫組織化学)
自由浮遊の脊髄片を、IHC緩衝液(10mg/mlの牛血清アルブミン及び5%(v/v)のヤギ血清を含むトリス緩衝食塩水)中で常温にて2時間遮断し、同じ緩衝液中の一次抗体中、4℃にて一晩培養した。その切片をトリス緩衝食塩水で3回洗浄し、4℃で4時間ビオチン複合体のヤギ抗マウスIgG(IHC緩衝液中の2μg/ml)中で培養した。上記のように、切片を洗浄し、2時間アビジン/ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体(Vector Laboraties, Burlingame, CA, USA)で培養し、製造者の指示に従いVectorレッドアルカリホスファターゼ基質(Vecror Laboratory)で展開した。染色し、洗浄した切片は、ガラススライド上に移し、乾燥し、マウントし、画像を明るい視野照明のもとで収集した。酵素処置したラットでは、注入カテーテルの先端の吻部尾部は、隣接水平切片の同じ相対位置に現れるピンホールにより曝露された。
(その他の実施例)
上記の記述から、種々の条件及び使用に適用するように、種々の変更及び修正が本明細書に記載の発明に行うことができるのは当然のことであり、このような態様は、本発明の特許請求の範囲内でもある。
本明細書の変数の定義でのリストの成分の詳述は、リストの成分の単一の成分の何れか、又はそれらの組み合わせ(副組み合わせ)としての変数の定義を含む。本明細書での態様の詳述は、単一の態様の何れか、又はその他の態様又はその部分との組み合わせとしての態様を含む。
本明細書で述べた特許及び出版物を含む全ての参考文献は、各々の独立の特許及び出版物が、具体的にまた個別的に引例により組み入れられるように、その同じ範囲で引例により本明細書に組み入れられる。
(参考文献)
1 .Griffiths, I. R. (1974) J. Small Anim Pract. 15, 165-176. 2 .He, Z. & Koprivica, V. (2004) Annu. Rev. Neurosci. 27, 341-368.
3 .McGee, A. W. & Strittmatter, S. M. (2003) Trends Neurosci. 26, 193-198.
4 .Venkatesh, K, Chivatakarn, O., Lee, H., Joshi, P. S, Kantor, D. B., Newman, B. A., Mage, R., Rader, C., & Giger, R. (2005) J. Neurosci. 25, 808-822
5. Varki, A. & Angata, T. (2006) Glycobiology 16, 1R-27R.
6. Vyas, A. A., Patel, H. V., Fromholt, S. E., Heffer-Lauc, M, Vyas, K. A., Dang, J., Schachner, M., & Schnaar, R. L. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 99, 8412-8417.
7. Vyas, A. A., Blixt, O., Pauloson, J. C., & Schnaar, R. L. (2005) J. Biol. Chem. 280, 16305-16310.
8. Vinson, M., Strijbos, P. J., Rowles, A., Facci, L., Moore, S. E., Simmons, D. L., & Walsh, F. S. (2001) J. Biol. Chem. 276, 20280-20285.
9. DeBellard, M.-E., Tang, S., Mukhopadhyay, G., Shen, Y.-J., & Filbin, M. T. (1996) Mol. Cell. Neurosci. 7, 89-101.
10. Carulli, D., Laabs, T., Geller, H. M, & Fawcett, J. W. (2005) Curr. Opin. Neurobiol. 15, 116-120.
11. Liu, B. P., Fournier, A., GrandPre, T., & Strittmatter, S. M. (2002) Science 297, 1190-1193.
12. Wang, K. C., Koprivica, V., Kim, J. A, Sivasankaran, R., Guo, Y., Neve, R. L., & He, Z. (2002) Nature 417, 941-944.
13. Collins, B. E, Yang, L. j. S., Mukhopadhyay, G, Filbin, M. T., Kiso, M., Hasegawa, A, & Schnaar, R. L. (1997) J. Biol. Chem. 272, 1248-1255.
14. Narakas, A. O. (1993) Clin. Neurol. Neurosurg. 95 Suppl, S56-S64.
15. Bertelli, J. A. & Ghizoni, M. F. (2003) Neurosurgery 52, 1385-1389.
16. Holtzer, C. A., Marani, E, Lakke, E. A., & Thomeer, R. T. (2002) J. Peripher. Nerv. Syst. 7, 233-242.
17. Cullheim, S., Carlstedt, T, & Risling, M. (1999) Spinal Cord. 37, 811-819.
18. Carlstedt, T. (1993) Clin, Neurol. Neurosurg. 95 Suppl, S109-S111.
19. Carlstedt, T., Grane, P, Hallin, R. G., & Noren, G. (1995) Lancet 346, 1323-1325.
20. Carlstedt, T., Anand, P, Hallin, R., Misra, P. V., Neoren, G., & Seferlis, T. (2000) J. Neurosurg. 93, 237-247.
21. Moon, L. D., Asher, R. A., Rhodes, K. E., & Fawcett, J. W. (2001) Nat. Neurosci. 4, 465-466.
22. Bradbury, E. J., Moon, L. D., Popat, R. J., King, V. R., Bennett, G. S., Patel, P. N., Fawcett, J. W., & McMahon, S. B. (2002) Nature 416, 636-640.
23. Caggiano, A. O., Zimber, M. P., Ganguly, A., Blight, A. R., & Gruskin, E. A. (2005) J. Neurotrauma 22, 226-239.
24. David, S. & Lacroix, S. (2003) Annu. Rev. Neurosci. 26, 411-440.
25. Yang, L. J. S., Zeller, C. B., Shaper, N. L., Kiso, M., Hasegawa, A., Shapiro, R. E., & Schnaar, R. L. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93, 814-818.
26. Collins, B. E., Kiso, M., Hasegawa, A., Tropak, M. B., Roder, J. C., Crocker, P. R., & Schnaar, R. L. (1997) J. Biol. Chem. 272, 16889-16895.
27. Cassidy, J. T., Jourdian, G. W., & Roseman, S. (1965) J. Biol. Chem. 240, 3501-3506.
28. Wu, G., Lu, Z. H., Wang, J., Wang, Y., Xie, X., Meyenhofer, M. F., & Ledeen, R. W. (2005) J. Neurosci. 25, 11014-11022.
29. Jivan, S, Novikova, L. N., Wiberg, M., & Novikov, L. N. (2006) Exp. Brain Res. 170, 245-254.
30. Carlstedt, T., Linda, H., Cullheim, S., & Risling, M. (1986) Acta Physiol Scand. 128, 645-646.
31. Hoang, T. X. & Havton, L. A. (2006) Exp. Brain Res. 169, 208-217.
図1A及び1Bは、末梢神経移植による腕神経叢の剥離損傷のラットモデルの写真である。図1Aは、脊髄の腹外側部の挿入部分から、図では見えないが肩甲上神経との接合部にかけて伸びる腓骨神経移植片を有するC8域の脊髄の閉鎖前の手術の前処理を示す。浸透圧式のポンプから延びるカテーテルは、縫合により移植片挿入点の丁度尾部の硬膜に固定される。図1Bは、ラットモデルの固定の前処理を示す。ラットの潅流の固定の後、脊髄、腓骨神経移植片、接合の肩甲上神経を解剖し、架橋移植片を見られるようにしている。 図2A〜Iは、注入した酵素のインビボでの効果を示す顕微鏡写真である。免疫組織化学の分析が、対照の動物(左パネル、A、B、D、F、H)および酵素注入の動物(右パネル、C、E、G、I)の水平切片で行われた。一次のモノクローナル抗体を以下に示す:パネルA、無し(対照);パネルB&C、抗GT1b;パネルD&E、抗GM1;パネルF&G,抗Thy−1;及びパネルH&I、コンドロイチナーゼABCリアーゼ生成物に対するモノクローナル抗体2−B−6。酵素治療(処置)は、シアリダーゼ(0.4U/ml、パネルC&E)、ホスファチジルイノシトール特異性ホスホリパーゼC(PI−PLC、2U/ml、パネルG)及びコンドロイチナーゼABC(0.5U/ml、パネルI)であった。横方向に位置する注入カテーテルの先端近くの酵素活性の増大によると思われる、脊髄横側の免疫染色の非対称的な増減に注目されたい。スケールバー=1mm。 図3A〜3Fは、腓骨神経移植により逆行性に標識されるラットの脊髄神経細胞を示す顕微鏡写真である。移植の4週間後に軸索を、標識するために逆行性トレーサーを用いた。腓骨神経移植片は、脊髄挿入点から7mmの長さで再切断し、フルオロルビー染料のマイクロリザーバー中に封入した。脊髄の水平切片は、末梢神経移植片の周辺部分に示されている。移植片は、逆行性に標識された脊髄ニューロンにより囲まれた、標識された脊髄軸索を含むほぼ円形の横断切片として見られる。赤い蛍光イメージ(フルオロルビーの逆行性の染色を含む)は明確にするために逆グレイスケールとして示してある。図3Aは、対照(食塩水)処理した動物を示し、それは逆行性に標識された神経細胞を示す。図3Bは、PI−PLC(20U/ml)で処理したラットから得た切片を示す。これら切片は、対照動物から得られたものに類似している。これに対して、シアリダーゼ(0.38U/ml、図3C&D)及びコンドロイチナーゼABC(0.5U/ml,図3E&F)で処理したラットから得られた切片では、著しく多くの数の染色された軸索及び脊髄神経細胞が認められる。逆行性に標識された神経細胞のほとんどは、移植片に隣接している。スケールバー=200μm。 図4は、対照及び酵素処置の動物での逆行性に標識された脊髄神経細胞の定量化を示すグラフである。食塩水(対照、n=12)、コンドロイチナーゼABC(ChABC、n=11)、PI−PLC(各濃度毎に、n=6)及びシアリダーゼ(各濃度毎に、n=6)で処置した動物の脊髄片の逆行性に標識された総神経細胞の平均が示されている(平均±SEM)。食塩水処置対照に比較し、コンドロイチナーゼABC(0.5U/ml)及びシアリダーゼ(0.38U/ml)で処理では、それぞれ有意に大きな末消神経移植片の神経分布が認められた(*、スチューデントT検定にて、p≦0.005)。 図5A、5B及び5Cは、リモートニューロンによる末梢神経移植片の神経分布を示す脊髄切片である。逆行性に標識された神経細胞のほとんどは、移植片に隣接しているが(図3を参照されたい)、脊髄の中心管近く又は反対側で、遠位の標識された神経細胞が見出されることも通常認められている(図5A、5B、矢印の図5Bの挿入図)。ある切片では、軸索が、遠位の標識された脊髄神経細胞から移植片まで連続していることがトレースされる(図5A,5B、色彩で強調)。ある軸索は、水平切片の複数の部分にまたがっている(図5C,矢印)。処置は、以下のとおりである:図5A、0.38U/mlシアリダーゼ、図5B及び図5C、0.5U/mlコンドロイチナーゼABC。スケールバー=200μm(挿入図のスケールバー=50μm) 図6は、図1A及び図1Bの拡大図である。 図7−1は、図2A、図2B及び図2Cの拡大図である。 図7−2は、図2D、図2E及び図2Fの拡大図である。 図7−3は、図2G、図2H及び図2Iの拡大図である。 図8−1は、図3A、図3B及び図3Cの拡大図である。 図8−2は、図3D、図3E及び図3Fの拡大図である。 図9は、図4の拡大図である。 図10−1は、図5A及び図5Bの拡大図である。 図10−2は、図5Cの拡大図である。

Claims (48)

  1. 細胞又は細胞基質に、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を接触させ、それにより軸索伸張を促進させる、細胞における軸索伸張を促進させる方法。
  2. 前記薬剤が、シアリダーゼである、請求項1に記載の方法。
  3. シアリダーゼ活性を有する薬剤が、細胞又は細胞基質上に存在するシアロ複合糖質(sialiglycoconjugates)を修飾する、又は末端のシアル酸を開裂させる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記薬剤が、細胞上又は細胞環境で、ガングリオシド(gangliosides)、シアロ糖タンパク質(sialoglycoproteins)又はポリシアル酸(polysialic acid)を修飾する、請求項1に記載の方法。
  5. 修飾されたガングリオシドが、GD1a及びGT1bである、請求項4に記載の方法。
  6. シアル酸修飾の活性を有する薬剤が、細胞上又は細胞環境で存在する、シアル酸を修飾する、請求項2に記載の方法。
  7. 前記細胞、中枢神経系の細胞である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記細胞が、神経細胞である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記細胞が、運動神経細胞又は感覚神経細胞である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記細胞の軸索が、腕神経叢に存在する、請求項1に記載の方法。
  11. 前記方法が、CNSから末梢神経移植片への伸張を促進させる、請求項1に記載の方法。
  12. 前記薬剤が、CNSの修復手術の前、手術時又は手術後に投与される、請求項1に記載の方法。
  13. シアリダーゼの活性を有する薬剤が、コンドロイチナーゼ(chondroitinase)のABC活性を有する薬剤と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
  14. シアリダーゼの活性を有する薬剤が、コンドロイチナーゼのABC活性を有する薬剤の投与と同時に、又はその投与後の5日以内に投与される、請求項13に記載の方法。
  15. コンドロイチナーゼABCの約0.1U/ml〜5U/mlが投与される、請求項13に記載の方法。
  16. シアリダーゼの約0.1U/ml〜5U/mlが投与される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記投与が、非処置の対照条件に比べて少なくとも2倍に、軸索の伸張を増加させる、請求項1に記載の方法。
  18. シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を対象に投与し、それにより対象における軸索再生の阻害物質を遮断することを包含する方法であり、それを必要とする対象における軸索再生の阻害物質を遮断する方法。
  19. シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を対象に投与し、それにより軸索の伸張を促進させることを包含する方法であり、それを必要とする対象における軸索再生の阻害物質を遮断する方法。
  20. 前記薬剤が、シアリダーゼである、請求項18又は19に記載の方法。
  21. シアリダーゼの約0.1〜5U/mlが、投与される、請求項20に記載の方法。
  22. 前記投与が、非処置の対照に比べて少なくとも約2倍で、軸索の伸張を増加させる、請求項18又は19に記載の方法。
  23. シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCの活性を有する薬剤の組み合わせが、投与される、請求項18又は19に記載の方法。
  24. コンドロイチナーゼABCの約0.1U/ml〜5U/mlが投与される、請求項23に記載の方法。
  25. 前記薬剤が、同時に又は少なくとも5日以内に投与される、請求項24に記載の方法。
  26. 前記対象が、中枢神経系の疾患、又は脳卒中、頭部外傷、脊髄の損傷、虚血、低酸素症、神経変性疾患、多発性硬化症、感染症、癌及び自己免疫疾患からなる群より選ばれる損傷を有する、請求項18又は19に記載の方法。
  27. 前記脊髄の損傷が、腕神経叢の剥離である、請求項26に記載の方法。
  28. シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤が、修復手術の前、手術時又は手術後に対象に投与される、請求項18又は19に記載の方法。
  29. 前記修復手術が、末梢神経の移植である、請求項28に記載の方法。
  30. シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤が、対象の中枢神経系に直接投与される、請求項18又は19に記載の方法。
  31. シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤が、脊髄への注入により投与される、請求項18又は19に記載の方法。
  32. 前記投与が、留置カテーテルにより行われる、請求項31に記載の方法。
  33. 前記方法が、対象のCNSから末梢神経移植片への軸索の伸張を促進させる、請求項18又は19に記載の方法。
  34. 前記シアリダーゼが、コンドロイチナーゼABCの投与と同時に、又は投与後の5日以内に投与される、請求項18又は19に記載の方法。
  35. シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を、CNSの修復手術を受ける対象に投与し、それにより軸索の伸張を促進させることを包含する方法であり、脊髄損傷の対象における軸索の伸張を促進させる方法。
  36. 前記方法が、CNSから末梢神経の移植片への伸張を促進させる、請求項35に記載の方法。
  37. 前記方法が、軸索再生の阻害物質の活性を遮断又は修飾する、請求項35に記載の方法。
  38. 前記脊髄の損傷が、腕神経叢の剥離である、請求項35に記載の方法。
  39. (a)軸索再生の阻害物質の存在下での神経細胞に、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を接触させること、及び
    (b)前記薬剤の存在下での軸索の伸張を対照条件に対して比較すること
    を包含する方法であり、ここにおいて、薬剤存在下での軸索の伸張の増加により、軸索の伸張を促進させる薬剤を同定する、軸索の伸張を促進させる薬剤を同定する方法。
  40. (a)軸索再生の阻害物質に、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を接触させること、及び
    (b)軸索再生の阻害物質の生化学的な修飾を同定すること
    を包含する方法であり、ここにおいて、軸索再生の阻害物質を生化学的に修飾する薬剤が、軸索の伸張を促進させるものとして同定される、軸索の伸張を促進させる薬剤を同定する方法。
  41. (c)軸索再生の阻害物質の存在下での神経細胞に、前記薬剤を接触させること、及び
    (d)前記薬剤の存在下での軸索の伸張を対照条件と対して比較すること
    を更に包含し、ここにおいて、薬剤存在下での軸索の伸張の増加が、軸索の伸張を促進させる薬剤を同定する、請求項40に記載の方法。
  42. 前記薬剤が、シアリダーゼのポリペプチド断片である、請求項39又は40に記載の方法。
  43. 当該組成物が、シアリダーゼ又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤の有効量を、薬学的に許容される賦形剤に包含し、それを必要とする対象において軸索の伸張を促進させるのに用いる医薬組成物。
  44. 当該組成物が、シアリダーゼ活性を有する薬剤の有効量を、薬学的に許容される賦形剤に包含し、それを必要とする対象において軸索の伸張を促進させるのに用いる医薬組成物。
  45. 当該組成物が、シアリダーゼ及びコンドロイチナーゼABCの有効量を、薬学的に許容される賦形剤に包含し、それを必要とする対象において軸索の伸張を促進させるのに用いる医薬組成物。
  46. 当該装置が、CNSの疾患又は損傷の治療のために前記薬剤を、CNSに局所的に放出する、シアリダーゼ活性又はシアル酸修飾の活性を有する薬剤を含んでなる、治療上の送達器具。
  47. コンドロイチナーゼABCの活性を有する薬剤を、更に含んでなる、請求項46に記載の治療上の送達器具。
  48. 前記装置が、浸透圧式のポンプ又は留置カテーテルである、請求項46に記載の治療上の送達器具。
JP2008513744A 2005-05-25 2006-05-25 軸索再生を促進する組成物及び方法 Pending JP2008545705A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US68434005P 2005-05-25 2005-05-25
PCT/US2006/020371 WO2006127966A2 (en) 2005-05-25 2006-05-25 Compositions and methods for enhancing axon regeneration

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008545705A true JP2008545705A (ja) 2008-12-18

Family

ID=37452866

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008513744A Pending JP2008545705A (ja) 2005-05-25 2006-05-25 軸索再生を促進する組成物及び方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20070031397A1 (ja)
EP (1) EP1904844A2 (ja)
JP (1) JP2008545705A (ja)
AU (1) AU2006249795A1 (ja)
CA (1) CA2609701A1 (ja)
WO (1) WO2006127966A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010275247A (ja) * 2009-05-29 2010-12-09 Japan Science & Technology Agency 疼痛治療剤

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TW200817015A (en) * 2006-10-06 2008-04-16 Hen-Rich Cheng A method for promoting axonal re-growth and behavior recovery in spinal cord injury
US8012733B2 (en) * 2007-02-20 2011-09-06 Dsm Ip Assets B.V. Sialidases
WO2022240781A1 (en) * 2021-05-10 2022-11-17 Washington University Therapeutic application of skull bone marrow and brain border-derived cells
WO2023212531A1 (en) * 2022-04-27 2023-11-02 Board Of Regents, The University Of Texas System Polyethylene glycol-fusion in nerve repair

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2225691A1 (en) * 1995-06-27 1997-01-16 Research Foundation Of Cuny, Hunter College Compositions and methods using myelin-associated glycoprotein (mag) and inhibitors thereof
WO1997007810A1 (en) * 1995-08-25 1997-03-06 The John Hopkins University School Of Medicine Compounds for stimulating nerve growth
US6479053B1 (en) * 1997-10-23 2002-11-12 President And Fellows Of Harvard College Laser inactivation of inhibitory molecules in central nervous system myelin
WO2000007602A1 (en) * 1998-08-06 2000-02-17 The Johns Hopkins University School Of Medicine Compounds for altering cell surface sialic acids and methods of use therefor
US6268352B1 (en) * 1998-09-02 2001-07-31 The Regents Of The University Of California Promoters of neural regeneration
GB0205022D0 (en) * 2002-03-04 2002-04-17 Univ Cambridge Tech Materials and methods for the treatment of cns damage
US6664266B2 (en) * 2002-03-14 2003-12-16 Children's Medical Center Corporation Axon regeneration with PKC inhibitiors
CA2556161A1 (en) * 2004-01-30 2005-08-18 Emory University Heparan-sulfate proteoglycan degrading enzymes for promotion of nerve regeneration
WO2005122734A2 (en) * 2004-06-14 2005-12-29 The Research Foundation Of State University Of New York Nanosphere/microsphere delivery system for the treatment of spinal cord injury

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010275247A (ja) * 2009-05-29 2010-12-09 Japan Science & Technology Agency 疼痛治療剤

Also Published As

Publication number Publication date
AU2006249795A1 (en) 2006-11-30
WO2006127966A3 (en) 2007-03-01
CA2609701A1 (en) 2006-11-30
WO2006127966A2 (en) 2006-11-30
EP1904844A2 (en) 2008-04-02
US20070031397A1 (en) 2007-02-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Bertrand et al. Application of Rho antagonist to neuronal cell bodies promotes neurite growth in compartmented cultures and regeneration of retinal ganglion cell axons in the optic nerve of adult rats
KR101114800B1 (ko) 간엽 줄기세포 또는 이의 배양액을 포함하는 신경질환의 예방 또는 치료용 조성물
US10240156B2 (en) Modulation of synaptic maintenance
Hauk et al. Neuroprotective and axon growth promoting effects of intraocular inflammation do not depend on oncomodulin or the presence of large numbers of activated macrophages
US9382313B2 (en) Modulation of synaptic maintenance
NO340187B1 (no) Ny anvendelse av antisekretorisk faktor
US9446092B2 (en) Use of a neurofilament peptide for the treatment of glioma
JP2008545705A (ja) 軸索再生を促進する組成物及び方法
AU2017306558B2 (en) Reelin compositions for treatment of neurological disorders
Cao et al. Induction of apoptosis by crambene protects mice against acute pancreatitis via anti-inflammatory pathways
US7939064B2 (en) Phospholipase(s) and use(s) thereof
US20030113325A1 (en) Reducing myelin-mediated inhibition of axon regeneration
KR20190137786A (ko) 뇌 오스테오칼신 수용체 및 인지 장애
US10653760B2 (en) Compositions and methods for reducing organ rejection by reducing heparan sulfate in donor transplants
RU2744453C2 (ru) Таргетная неинвазивная трансплантация в мозг функционально активных митохондрий для лечения нейродегенеративных заболеваний
KR102242040B1 (ko) 줄기세포의 티오레독신 발현을 증진시키는 방법
CN111701021B (zh) Nipa2作为药物靶点在制备治疗2型糖尿病性骨质疏松的药物中的应用
US20090291887A1 (en) Proteins of the SDF-1-Family for the Manufacturing of a Medicament
CN112294958A (zh) 一种含有萘醌和菲醌结构的组织蛋白酶k抑制剂及其组合物和应用
WO2019234125A1 (en) Modulators and pharmaceutical compositions comprising the same for increasing cell hypoxic tolerance
Di Vito et al. Up-regulation of estrogen receptor alpha in human thyroid papillary carcinoma: a possible regulation by hypoxia
Borisoff Intrinsic neuronal determinants of neurite regrowth
Mishra Identification of novel polysialic acid interacting partners and functional relevance of their interaction for peripheral nerve regeneration after injury in Mus musculus (Linnaeus, 1758).