JP2018531210A - リン酸カルシウム組成物を生産すること - Google Patents
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Abstract
本開示は、第1のカルシウムイオン濃度を含む第1の水酸化カルシウム溶液および第2のカルシウムイオン濃度を含む第2の水酸化カルシウム溶液を得る工程、リン酸溶液を第1の水酸化カルシウム溶液に添加して、リン酸二水素カルシウム粒子の水性懸濁液を特徴とする合わせた溶液を生成する工程、および第2の水酸化カルシウム溶液を合わせた溶液に添加してリン酸カルシウム組成物の粒子の水性懸濁液を含む生成物溶液を形成する工程を含む、方法を特徴とする。
Description
関連出願への相互参照
本出願は、2015年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/232,961号、2015年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/232,999号、および2015年10月27日に出願された米国仮特許出願第62/246,796号に対する優先権を主張し、これらの出願の全内容が本明細書において参照として援用される。
本出願は、2015年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/232,961号、2015年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/232,999号、および2015年10月27日に出願された米国仮特許出願第62/246,796号に対する優先権を主張し、これらの出願の全内容が本明細書において参照として援用される。
技術分野
本開示は、リン酸カルシウム組成物およびかかる組成物を生産する方法に関する。
本開示は、リン酸カルシウム組成物およびかかる組成物を生産する方法に関する。
背景
リン酸カルシウムは、カルシウム(II)イオンおよびオルトリン酸イオンを含む化合物ファミリーである。水酸化物イオンなどの他のイオンも存在し得る。リン酸カルシウムは、重要な工業材料であり、肥料生産、ベーキング、栄養補給、歯学、および医学が含まれる種々の用途のために使用される。
リン酸カルシウムは、カルシウム(II)イオンおよびオルトリン酸イオンを含む化合物ファミリーである。水酸化物イオンなどの他のイオンも存在し得る。リン酸カルシウムは、重要な工業材料であり、肥料生産、ベーキング、栄養補給、歯学、および医学が含まれる種々の用途のために使用される。
概要
リン酸カルシウム化合物は、直接的な回収操作および工業製造によって得ることができる。採鉱などの直接的な回収操作には重要な課題が存在する。リン酸カルシウムは組成が多様であるので、これらのうちで、所望の組成を有するリン酸カルシウム化合物の探索および回収が困難である。他の困難には、回収した産物を精錬して実質的に全ての天然に存在するリン酸カルシウム供給源中に存在する不純物を減少させることが含まれる。
リン酸カルシウム化合物は、直接的な回収操作および工業製造によって得ることができる。採鉱などの直接的な回収操作には重要な課題が存在する。リン酸カルシウムは組成が多様であるので、これらのうちで、所望の組成を有するリン酸カルシウム化合物の探索および回収が困難である。他の困難には、回収した産物を精錬して実質的に全ての天然に存在するリン酸カルシウム供給源中に存在する不純物を減少させることが含まれる。
従来の工業的生産方法も、多くの点で制約がある。一定範囲で組成にばらつきのあるリン酸カルシウム組成物を生産することができるが、広範な組成物を再現可能に制御することは困難である。さらに、従来の工業的過程は、有用な製品を生産するために大量の試薬に依存し、そのうちのいくつかは比較的高額である。さらに、一定のタイプの経済価値の高いリン酸カルシウム化合物(ヒドロキシアパタイトなど)を製造するために使用される条件では、高い経済的コストで製品が得られる。
本開示は、比較的単純な生産過程での多種多様なリン酸カルシウム組成物の制御された低コストの生産方法を特徴とする。組成が予想できる製品が得られるように本方法を体系的に変動させることができる。さらに、物理的性質(比表面積、結晶性、および粒度など)の変動が制御された製品を得るために本方法を調整することができる。したがって、本明細書中に開示の方法は、工業規模で採算性があり、且つ制御可能に多種多様なリン酸カルシウム組成物の合成をもたらす。
一般に、第1の態様では、本開示は、炭酸カルシウムを含む第1の複数の粒子を得る工程であって、粒子が8mmと12mmとの間のサイズ分布を有する、工程、および第1の複数の粒子を900℃と1200℃との間の温度に少なくとも1時間の期間、加熱して酸化カルシウムを含む第2の複数の粒子を生成する工程を含む方法を特徴とする。
方法の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含み得る。
粒子の平均最大寸法は約10mmであり得、粒子の最大寸法分布の半値全幅は4mmまたはそれ未満であり得る。第1の複数の粒子中の炭酸カルシウム濃度は、少なくとも94%(例えば、少なくとも98%)であり得る。第2の複数の粒子中の炭酸カルシウム濃度は、0.5%未満(例えば、0.1%未満)であり得る。
第1の複数の粒子中の炭酸カルシウムの第2の複数の粒子中の酸化カルシウムへの変換効率は、95%またはそれを超え得る(例えば、99%またはそれを超え得る)。第1の複数の粒子を、1100℃と1200℃との間の温度(例えば、1000℃超の温度)に加熱して第2の複数の粒子を生成することができる。
本方法は、第1の複数の粒子が期間中加熱される温度を上昇させる工程を含むことができる。本方法は、一連の工程において期間中温度を上昇させる工程を含むことができ、各々の連続する工程で、第1の複数の粒子を直前の工程の温度より高い一定の温度に、前述の期間のうちの一部の期間、加熱する。一連の工程は、少なくとも3つの工程を含むことができ、前述の一連の工程中の第1の工程は第1の複数の粒子を900℃と1000℃との間の温度に加熱する工程を含み、前述の一連の工程中の第2の工程は第1の複数の粒子を1000℃と1100℃との間の温度に加熱する工程を含み、前述の一連の工程中の第3の工程は第1の複数の粒子を1100℃と1200℃との間の温度に加熱する工程を含む。
本方法は、第1の複数の粒子が期間中加熱される温度を連続的に上昇させる工程を含むことができる。本方法は、900℃と1000℃との間の第1の温度と1100℃と1200℃との間の第2の温度との間の温度を線形に上昇させる工程を含むことができる。
期間は、1時間と2時間との間(例えば、2時間と3時間との間)であり得る。
第1の複数の粒子の最大寸法分布の半値全幅は、3mmまたはそれ未満(例えば、2mmまたはそれ未満)であり得る。第2の複数の粒子の比表面積は、少なくとも10.0m2/gであり得る。第2の複数の粒子の比多孔度(specific porosity)は、少なくとも15.0cm3/gであり得る。
方法の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
別の態様では、本開示は、8mmと12mmとの間の平均最大寸法を有し、且つ少なくとも99%の酸化カルシウム濃度であることを特徴とする複数の粒子を含む組成物を特徴とし、ここで、粒子の表面積は少なくとも10.0m2/gであり、粒子の比多孔度は少なくとも15.0cm3/gである。
組成物の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含むことができる。
粒子の表面積は、少なくとも14.0m2/g(例えば、少なくとも20.0m2/g)であり得る。粒子の比多孔度は、少なくとも20.0cm3/g(例えば、少なくとも30.0cm3/g)であり得る。
組成物の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
1つのさらなる態様では、本開示は、第1のカルシウムイオン濃度を特徴とする第1の水酸化カルシウム溶液および第2のカルシウムイオン濃度を特徴とする第2の水酸化カルシウム溶液を得る工程、リン酸溶液を第1の水酸化カルシウム溶液に添加して、リン酸二水素カルシウム粒子の水性懸濁液を含む合わせた溶液を生成する工程、および第2の水酸化カルシウム溶液を合わせた溶液に添加してリン酸カルシウム材料の粒子の水性懸濁液を含む生成物溶液を形成する工程を含む方法を特徴とする。
方法の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含み得る。
第1および第2のカルシウムイオン濃度は異なり得る。
第1の水酸化カルシウム溶液を得る工程は、酸化カルシウムを含む第1の複数の粒子を水と合わせる工程を含むことができ、粒子は少なくとも10.0m2/gの比表面積を有する。第2の水酸化カルシウム溶液を得る工程は、第2の複数の粒子を水と合わせる工程を含むことができる。粒子は、少なくとも15.0cm3/gの比多孔度を有し得る。
本方法は、合わせた溶液のpHが1と2との間になるまでリン酸溶液を第1の水酸化カルシウム溶液に添加する工程を含むことができる。合わせた溶液のpHは、約1.66であり得る。
本方法は、リン酸溶液を3つの部分に分けて第1の水酸化カルシウム溶液に添加する工程を含むことができ、3つの部分のうちの第1の部分の添加後、第1の水酸化カルシウム溶液のpHは8.5と9.5との間である。第1の水酸化カルシウム溶液とリン酸溶液の第1の部分とを合わせてリン酸イオンおよび重リン酸イオンの第1の緩衝液を形成することができる。
3つの部分のうちの第2の部分の添加後、第1の水酸化カルシウム溶液のpHは、3.5と4.5との間であり得る。第1の水酸化カルシウム溶液とリン酸溶液の第1および第2の部分とを合わせて重リン酸イオンおよびリン酸二水素イオンの第2の緩衝液を形成することができる。
生成物溶液のpHは、6.5と7.5との間であり得る。生成物溶液のpHは、11.5と12.5との間であり得る。
本方法は、リン酸カルシウム材料を生成物溶液から分離する工程、およびリン酸カルシウム材料を少なくとも700℃(例えば、少なくとも800℃、少なくとも900℃)の温度に少なくとも1時間(例えば、1.5時間と2.5時間との間)の期間、加熱する工程を含むことができる。
本方法は、リン酸カルシウム材料の温度を15分未満の期間で少なくとも450℃上昇させてリン酸カルシウム材料から水蒸気を排出させることによる熱衝撃処理にリン酸カルシウム材料を供する工程を含むことができる。
リン酸カルシウム材料は、2つの相を含むことができ、各相は異なるリン酸カルシウム化合物に相当する。相のうちの第1の相はヒドロキシアパタイトに相当することができ、相のうちの第2の相はβ−リン酸三カルシウムに相当することができる。相のうちの第1の相がヒドロキシアパタイトに相当することができ、相のうちの第2の相は非晶質リン酸カルシウムに相当することができる。相のうちの第1の相はβ−リン酸三カルシウムに相当することができ、相のうちの第2の相は非晶質リン酸カルシウムに相当することができる。
リン酸カルシウム材料は3つの相を含むことができ、各相は異なるリン酸カルシウム化合物に相当する。相のうちの第1の相はヒドロキシアパタイトに相当することができ、相のうちの第2の相はβ−リン酸三カルシウムに相当することができ、相のうちの第3の相は非晶質リン酸カルシウムに相当することができる。相のうちの第1の相はリン酸水素カルシウム二水和物に相当することができ、相のうちの第2の相は無水リン酸水素カルシウムに相当することができ、相のうちの第3の相はβ−リン酸三カルシウム一水和物に相当することができる。
リン酸カルシウム材料の粒子は80%またはそれを超える(例えば、95%またはそれを超える)結晶性を有し得る。リン酸カルシウム材料の粒子は60m2/gまたはそれを超える(例えば、80m2/gまたはそれを超える)比表面積を有し得る。
方法の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
別の態様では、本開示は、1つまたは複数の固体の統合単位を形成する3つのリン酸カルシウム相を特徴とする材料を含む組成物であって、3つの相のうちの第1の相が、ヒドロキシアパタイトから形成された1つまたは複数の領域を特徴とし、3つの相のうちの第2の相が、β−リン酸三カルシウムから形成された1つまたは複数の領域を特徴とし、3つの相のうちの第3の相が、非晶質リン酸カルシウムから形成された1つまたは複数の領域を特徴とし、第1、第2、および第3の相に相当する領域のうちの少なくともいくつかが、前述の1つまたは複数の固体の統合単位中で相互に接触する、組成物を特徴とする。
組成物の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含み得る。
組成物中のヒドロキシアパタイトの濃度百分率(concentration percentage)は、5%と95%との間(例えば、20%と80%との間)であり得る。組成物中のβ−リン酸三カルシウムの濃度百分率は、10%と80%との間(例えば、20%と60%との間)であり得る。非晶質リン酸カルシウムの濃度百分率は、10%と80%との間(例えば、20%と60%との間)であり得る。
材料の結晶性は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%)であり得る。材料の比表面積は、少なくとも50m2/g(例えば、少なくとも70m2/g)であり得る。材料の比多孔度は、少なくとも25cm3/g(例えば、少なくとも30cm3/g)であり得る。
1つまたは複数の統合単位は粒子を含むことができ、ここで、粒子の平均最大寸法は100nmと500nmとの間であり得、粒子の平均アスペクト比は50:1またはそれを超え得る。粒子の平均アスペクト比は100:1またはそれを超え得る。
組成物の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
1つのさらなる態様では、本開示は、1つまたは複数の固体の統合単位を形成する3つのリン酸カルシウム相を特徴とする材料を含む組成物であって、3つの相のうちの第1の相が、ヒドロキシアパタイトから形成された1つまたは複数の領域を特徴とし、3つの相のうちの第2の相が、リン酸水素カルシウム二水和物から形成された1つまたは複数の領域を特徴とし、3つの相のうちの第3の相が、無水リン酸水素カルシウムから形成された1つまたは複数の領域を特徴とし、第1、第2、および第3の相に相当する領域のうちの少なくともいくつかが、前述の1つまたは複数の固体の統合単位中で相互に接触する、組成物を特徴とする。
組成物の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含み得る。
組成物中のヒドロキシアパタイトの濃度百分率は、10%と60%との間(例えば、20%と50%との間)であり得る。組成物中のリン酸水素カルシウム二水和物の濃度百分率は、10%と75%との間(例えば、20%と60%との間)であり得る。無水リン酸水素カルシウムの濃度百分率は、5%と70%との間(例えば、10%と60%との間)であり得る。
材料の結晶性は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%)であり得る。材料の比表面積は、少なくとも50m2/g(例えば、少なくとも70m2/g)であり得る。材料の比多孔度は、少なくとも25cm3/g(例えば、少なくとも30cm3/g)であり得る。
1つまたは複数の統合単位は粒子を含むことができ、ここで、粒子の平均最大寸法は100nmと500nmとの間であり得、粒子の平均アスペクト比は50:1またはそれを超え得る。粒子の平均アスペクト比は100:1またはそれを超え得る。
組成物の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
別の態様では、本開示は、1つまたは複数の固体の統合単位を形成する2つのリン酸カルシウム相を特徴とする材料を含む組成物であって、2つの相のうちの第1の相が、ヒドロキシアパタイトから形成された1つまたは複数の領域を含み、3つの相のうちの第2の相が、β−リン酸三カルシウムから形成された1つまたは複数の領域を含み、第1および第2の相に相当する領域のうちの少なくともいくつかが、前述の1つまたは複数の固体の統合単位中で相互に接触する、組成物を特徴とする。
組成物の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含み得る。
組成物中のヒドロキシアパタイトの濃度百分率は、8%と95%との間(例えば、20%と80%との間)であり得る。組成物中のβ−リン酸三カルシウムの濃度百分率は、5%と92%との間(例えば、20%と80%との間)であり得る。
材料の結晶性は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%)であり得る。材料の比表面積は、少なくとも50m2/g(例えば、少なくとも70m2/g)であり得る。材料の比多孔度は、少なくとも25cm3/g(例えば、少なくとも30cm3/g)であり得る。
1つまたは複数の統合単位は粒子を含むことができ、ここで、粒子の平均最大寸法は100nmと500nmとの間であり得、粒子の平均アスペクト比は50:1またはそれを超え得る。粒子の平均アスペクト比は100:1またはそれを超え得る。
組成物の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
1つのさらなる態様では、本開示は、ヒドロキシアパタイトから形成された複数の粒子を含む組成物であって、ここで、粒子の平均最大寸法が100nmと500nmとの間であり、粒子の平均アスペクト比が50:1またはそれを超え、粒子の比表面積が70m2/gまたはそれを超える、組成物を特徴とする。
組成物の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは複数を含み得る。
粒子の平均最大寸法は、150nmと400nmとの間(例えば、200nmと400nmとの間、200nmと350nmとの間)であり得る。粒子の平均アスペクト比は、75:1またはそれを超え得る(例えば、100:1またはそれを超え得る、150:1またはそれを超え得る、200:1またはそれを超え得る)。
粒子の比表面積は、75m2/gまたはそれを超え得る(例えば、80m2/gまたはそれを超え得る、85m2/gまたはそれを超え得る)。粒子の結晶性は、85%またはそれを超え得る(例えば、90%またはそれを超え得る、95%またはそれを超え得る)。
組成物の実施形態はまた、本明細書中に開示の任意の他の特徴(具体的に記述されている場合を除いて任意の組み合わせで異なる実施形態と併せて開示された特徴が含まれる)を含み得る。
定義
本明細書中で使用される場合、用語「約」および「およそ」を互換的に使用し、数値を修飾するために使用される場合、数値の±10%の範囲を含む。
本明細書中で使用される場合、用語「約」および「およそ」を互換的に使用し、数値を修飾するために使用される場合、数値の±10%の範囲を含む。
本明細書中で使用される場合、用語「形態」は、化学的化合物中の原子の構造または分布をいう。例えば、形態は、材料の結晶構造もしくは微細構造、材料内の異なる組成の相の空間的分布、および/または材料内の構造の他の変動をいうことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「酸化カルシウム」は、公称化学式CaOを有する化合物をいう。用語「酸化カルシウム」は、固体CaO、溶媒和CaO(すなわち、水などの溶媒に溶解したCaO)、およびCaOを含む粒子をいい、流体中に懸濁されているか、そうでなければ分散されている。いくつかの実施形態では、酸化カルシウムは、本明細書中で考察される場合、反応性酸化カルシウムであり得る(本明細書中で、「反応性酸化カルシウム」ということができる)。
本明細書中で使用される場合、用語「水酸化カルシウム」は、公称化学式Ca(OH)2を有する化合物をいう。用語「水酸化カルシウム」は、固体Ca(OH)2、溶媒和Ca(OH)2(すなわち、水などの溶媒に溶解したCa(OH)2)、およびCa(OH)2を含む粒子をいい、流体中に懸濁されているか、そうでなければ分散されている。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸カルシウム組成物」は、1つまたは複数のリン酸カルシウム化合物を含む組成物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸カルシウム」、「リン酸カルシウム化合物」、および「リン酸カルシウム材料」は、少なくとも1つのカルシウム(II)イオンならびに1つまたは複数のオルトリン酸イオン、メタリン酸イオン、およびピロリン酸イオンを含む化学式を有する物質をいう。これらのイオンのうちのいくつかまたは全てはまた、リン酸カルシウム、リン酸カルシウム化合物、およびリン酸カルシウム材料内に組み合わせて存在し得る。
本明細書中で使用される場合、用語「非晶質リン酸カルシウム(ACP)」は、化学式Ca3(PO4)2・nH2Oを有し、且つ化合物内の原子またはイオンの分布の周期性を実質的に欠くことを特徴とするリン酸カルシウム化合物をいう。ACP中のCa:P比は1.5:1である。
本明細書中で使用される場合、用語「β−リン酸三カルシウム(β−TCP)」は、化学式Ca3(PO4)2を有するリン酸カルシウム化合物をいう。いくつかの実施形態では、β−TCP化合物は、菱面体結晶構造を有する。β−TCP中のCa:P比は1.5:1である。
本明細書中で使用される場合、用語「β−リン酸三カルシウム一水和物(β−TCPM)」は、化学式Ca3(PO4)2・H2Oを有し、Ca:P比が1.5:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドロキシアパタイト(HA)」は、化学式Ca10(PO4)6(OH)2を有するリン酸カルシウム化合物をいう。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイト化合物は、六方晶系結晶構造を有する。HA中のCa:P比は1.67:1である。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸四カルシウム」は、化学式Ca4O(PO4)2を有し、Ca:P比が2:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「α−リン酸三カルシウム(α−TCP)」は、化学式Ca3(PO4)2を有するリン酸カルシウム化合物をいう。α−TCP中のCa:P比は1.5:1である。
本明細書中で使用される場合、用語「α’−リン酸三カルシウム(α’−TCP)」は、化学式Ca3(PO4)2を有するリン酸カルシウム化合物をいう。α’−TCP中のCa:P比は1.5:1である。
本明細書中で使用される場合、用語「γ−リン酸三カルシウム(γ−TCP)」は、化学式Ca3(PO4)2を有するリン酸カルシウム化合物をいう。γ−TCP中のCa:P比は1.5:1である。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸八カルシウム(OCP)」は、化学式Ca8H2(PO4)6・5H2Oを有し、Ca:P比が1.33:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)」は、化学式CaHPO4・2H2Oを有し、Ca:P比が1:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸水素カルシウム」、「モネタイト」、および「無水リン酸水素カルシウム(DCPA)」は、化学式CaHPO4を有し、Ca:P比が1:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「ピロリン酸カルシウム(CPP)」は、化学式Ca2P2O7を有し、Ca:P比が1:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「ピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)」は、化学式Ca2P2O7・2H2Oを有し、Ca:P比が1:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸七カルシウム(HCP)」は、化学式Ca7(P5O16)2を有し、Ca:P比が0.7:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸二水素四カルシウム(TDHP)」は、化学式Ca4H2P6O20を有し、Ca:P比が0.67:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸二水素カルシウム一水和物」は、化学式Ca(H2PO4)・H2Oを有し、Ca:P比が0.5:1であるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「α−メタリン酸カルシウム(α−CMP)」、「β−メタリン酸カルシウム(β−CMP)」、および「γ−メタリン酸カルシウム(γ−CMP)」は、それぞれ、同一の化学式Ca(PO3)2を有し、Ca:P比が0.5:1である異なるリン酸カルシウム化合物をいう。
本明細書中に開示のリン酸カルシウム組成物は、1つまたは複数の相を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「相」は、リン酸カルシウム組成物内のリン酸カルシウム化合物をいう。いくつかの実施形態では、組成物内の異なる相は組成物の異なる空間領域に分布し、したがって、本組成物は、個別のリン酸カルシウム化合物に相当する個々の空間領域を特徴とする。異なる空間領域は、分離することができ、別の空間領域と接触することができ、そうでなければ種々の方法で分布することができるが、一般に、固体の1つまたは複数の統合単位(粒子など)を形成することができる。例えば、リン酸カルシウム組成物内の相は、組成物内に別々のドメインを形成することができる。一定の実施形態では、ドメインは、サイズが異なり得、化学組成に加えて異なる他の性質を有し得る(例えば、ドメインは、結晶性、融点、表面構造、比表面積、および他の物理的性質が異なり得る)。用語「単相性」は、組成物内に単一の相のみを有する組成物をいい;「二相性」および「三相性」は、それぞれ、2つおよび3つの相を有する組成物をいう。「多相性」は、2つまたはそれを超える相を有する組成物をいう。2つまたはそれを超える相を有する全ての組成物では、組成物は、各相に相当する複数のドメインを含むことができる。例えば、第1の相(すなわち、第1のリン酸カルシウム化合物)に相当する複数の領域および第2の相(すなわち、第2のリン酸カルシウム化合物)に相当する複数の領域を有し、且つ他のリン酸カルシウム化合物を有さない組成物は、二相性組成物である。
本明細書中で使用される場合、材料の「結晶性」という用語は、結晶状態(すなわち、原子レベルでいくつかの長距離配列を有する)の材料部分である。材料の結晶性を、材料の粉末X線回折ピークから、ピーク幅と標準ピーク幅との比較および材料の結晶性を定量するためのリートベルト法の使用によって測定することができる。結晶性は、0%と100%との間の数字である。
本明細書中で使用される場合、材料の「比表面積」という用語は、質量単位あたりの材料の総表面積である。比表面積を、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法を使用した材料の表面積上の窒素吸着の測定によって決定することができる。
本明細書中で使用される場合、材料の「比多孔度」または「比細孔容積」(同一事項を意味するために互換的に使用される)という用語は、材料構造中の細孔、チャネル、および他の空隙に相当する質量単位あたりの材料の容積である。材料の比多孔度を、BET法および/またはバレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)細孔容積分析を使用して決定することができる。
本明細書中で使用される場合、用語「反応」は、化学試薬が分子レベルで相互作用して化学的変換または物理的変換することが可能な様式で化学試薬を引き合わせることをいう。反応は、2つの試薬が関与し得、ここで、第1の試薬に対して1つまたは複数の当量の第2の試薬を使用する。反応はまた、2つを超える試薬が関与し得る。
本開示では、炭酸カルシウム組成物、酸化カルシウム組成物、およびリン酸カルシウム組成物などの材料を、具体的な温度にまたは具体的な範囲内の温度に加熱する種々の調製工程で言及している。一般に、特定の温度への材料を加熱することは、オーブン、炉、または他の加熱デバイスの内部温度を特定の温度に設定することを含む。オーブン、炉、または他の加熱デバイス内で加熱される材料を、特定の温度に均一に(すなわち、材料の厚み全体にわたって)加熱することができるか、あるいは例えば、材料の外面の少なくとも一部が特定の温度の±10%に加熱される一方で、材料の内部領域を前述の特定の温度未満の温度に加熱することができるように、材料内に熱勾配が存在し得る。本開示の目的のために、材料を特定の温度に加熱するとは、材料の少なくとも一部(すなわち、少なくとも材料の外面領域)が特定の温度の±10%以内に加熱されることを意味するが、材料全体が指定の温度に加熱されることも、材料全体が均一な無勾配温度に加熱されることも必ずしも意味しないと理解すべきである。
別段の定義がない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示に属する当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料に類似するか等価な方法および材料を本明細書中の主題の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書中で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、その全体が参考として援用される。矛盾がある場合、定義を含む本明細書を優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しない。
1つまたは複数の実施形態の詳細を、添付の図面に示し、以下で説明する。他の特徴および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなる。
種々の図面中の類似の参照符号は類似の要素を示す。
詳細な説明
I.序文
リン酸カルシウムは、広く使用されている工業化合物である。特に、単相性リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトなど)は、歯科用製品および医療製品、肥料生産、食糧生産および食品、ならびに工業化学製品生産での用途が見出されている。しかし、単相性化学的ホスフェート化合物の生産に関連する経済コストおよび環境コストが、これらの化合物の使用を制限している。
I.序文
リン酸カルシウムは、広く使用されている工業化合物である。特に、単相性リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトなど)は、歯科用製品および医療製品、肥料生産、食糧生産および食品、ならびに工業化学製品生産での用途が見出されている。しかし、単相性化学的ホスフェート化合物の生産に関連する経済コストおよび環境コストが、これらの化合物の使用を制限している。
二相性および三相性の化学的ホスフェート組成物は、おそらくかかる組成物の性質を種々の用途において有利に使用されるようにさらにより特異的に適合させることができるので、さらに有用性が広がる見込みがある。しかし、現時点では、化学的性質および物理的性質が十分に制御された二相性および三相性の化学的ホスフェート組成物の工業規模の再現性のある生産方法は存在しない。この実現可能な大規模生産ルートが存在しないことにより、かかる組成物の見込みが実現されないままである。
本開示は、化学的ホスフェート組成物の制御された再現性のある大規模生産方法を記載する。関連する試薬および条件の調整により、組成物の化学的性質および物理的性質を体系的な様式で制御することができる。これにより、所望の製品を要求に応じて従来の生産方法よりも有意に低いコストで大量に調製することが可能となる。さらに、本明細書中に開示の方法により、他の大規模生産ルートが存在しない一定の製品(一定の組成範囲内の二相性および三相性のリン酸カルシウム組成物など)を生産可能である。
以下の節では、生産方法の総括を最初に考察し、その後に、生産方法の個別の段階を考察する。本開示はまた、化学的性質と物理的性質の種々の組み合わせを有する多種多様な異なるリン酸カルシウム組成物の制御された要求に応じた作製を示す多数の例を提供する。
II.総括
本明細書中に開示の方法は、水酸化カルシウム水溶液との二段階反応においてリン酸カルシウム組成物を生産する。ここで、水酸化カルシウム水溶液を、反応性酸化カルシウム生成物を水に溶解することによって調製する。酸化カルシウムは、その反応性により、工業規模の生産量で既存の合成スキームよりも有意に安価であるリン酸カルシウムへの合成ルートを提供する。さらに、本明細書中に開示の方法により、従来の合成方法に対して等価な期間で遥かに大量のリン酸カルシウム組成物が得られる。
本明細書中に開示の方法は、水酸化カルシウム水溶液との二段階反応においてリン酸カルシウム組成物を生産する。ここで、水酸化カルシウム水溶液を、反応性酸化カルシウム生成物を水に溶解することによって調製する。酸化カルシウムは、その反応性により、工業規模の生産量で既存の合成スキームよりも有意に安価であるリン酸カルシウムへの合成ルートを提供する。さらに、本明細書中に開示の方法により、従来の合成方法に対して等価な期間で遥かに大量のリン酸カルシウム組成物が得られる。
リン酸カルシウム組成物の一般的な合成方法を以下に示す。第1に、反応性酸化カルシウム(CaO)前駆体材料を水に添加して水酸化カルシウム溶液を形成させる:
反応性CaO+H2O→Ca(OH)2 [1]
反応性CaO+H2O→Ca(OH)2 [1]
次いで、水酸化カルシウム溶液の一部をリン酸と合わせて中間体リン酸二水素カルシウム生成物の溶液またはスラリーを得る:
Ca(OH)2+H3PO4→Ca(H2PO4)2 [2]
Ca(OH)2+H3PO4→Ca(H2PO4)2 [2]
最後に、リン酸二水素カルシウム中間体生成物を式(1)に示した様式と同一の様式で調製した別の水酸化カルシウム溶液と合わせて、リン酸カルシウム生成物を得る:
Ca(H2PO4)2+Ca(OH)2→Ca3(PO4)2 [3]
Ca(H2PO4)2+Ca(OH)2→Ca3(PO4)2 [3]
式(3)では、例証を目的として、リン酸カルシウム生成物を公称化学式Ca3(PO4)2を用いて示す。しかし、式(1)〜(3)中の反応条件に依存して、生産されたリン酸カルシウム組成物がリン酸イオン(すなわち、オルトリン酸イオン)、メタリン酸イオン、および/またはピロリン酸イオン(これらのアニオン種の混合物が含まれる)を含み得ると理解すべきである。反応条件の調整によって、生産されたリン酸カルシウム組成物の組成、構造、および物理的性質の制御を達成することができる。
さらに、本明細書中で考察した方法は共通の反応性CaO前駆体から生産されたCa(OH)2溶液について言及しているが、異なるCaO前駆体材料(非反応性CaO前駆体材料が含まれる)から生産されたCa(OH)2溶液も使用することができると理解すべきである。反応性CaO前駆体材料を使用することにより、反応性CaOが水に迅速に溶解することに起因して、高い収率および変換率、ならびに生産時間の短縮が保証される。しかし、本明細書中に開示の生産過程以外の生産過程(すなわち、反応性CaOが得られない過程)由来のCaO材料を使用して、式(2)および(3)に従い、且つ本明細書中に開示の方法を使用してリン酸カルシウム組成物を調製するために使用することができるCa(OH)2溶液を調製することもできる。したがって、非反応性酸化カルシウム材料から出発するリン酸カルシウム組成物の生産は、本開示の範囲内である。
図1は、種々の異なるリン酸カルシウム組成物の調製のための一連の一般的工程を示すフローチャート100である。第1工程102では、反応性CaOを、CaCO3粒子の熱処理によって前駆体炭酸カルシウム(CaCO3)材料から調製する。工程104では、第1の量の反応性CaOを水に溶解してCa(OH)2水溶液を形成させ、次いで、工程106でリン酸(H3PO4)などのホスフェート源と合わせてCa(H2PO4)2の水性スラリーを形成させる。次いで、工程108で、第2の量の反応性CaOを水に溶解して第2のCa(OH)2水溶液を形成させ、これをCa(H2PO4)2水溶液と反応させてリン酸カルシウム組成物を形成させる。この過程は工程112で終了する。
本開示の以後の節は、図1に示す工程をより詳細に考察し、且つ図1に示す手順にしたがって調製したリン酸カルシウム組成物の化学的性質および物理的性質を考察している。
III.反応性酸化カルシウムの調製
フローチャート100の第1の工程102は、炭酸カルシウム前駆体材料からの反応性酸化カルシウムの生産を含む。一般に、生産方法は、式(1)に示すように、炭酸カルシウムを熱分解してCaOおよびCO2を得ることを含む。炭酸カルシウムの天然供給源には、石灰石および貝殻などの材料が含まれる。原則的に、任意の供給源由来の炭酸カルシウムを、熱分解して反応性CaOを得ることができる。しかし、生産された反応性CaOが低不純物であり、且つ比較的均一なサイズ分布を有することを保証するため、および、変換率が高く、且つ生産される副生成物の量が比較的少ないことを保証するために、典型的には、CaCO3供給源として高品質の石灰石が使用される。
フローチャート100の第1の工程102は、炭酸カルシウム前駆体材料からの反応性酸化カルシウムの生産を含む。一般に、生産方法は、式(1)に示すように、炭酸カルシウムを熱分解してCaOおよびCO2を得ることを含む。炭酸カルシウムの天然供給源には、石灰石および貝殻などの材料が含まれる。原則的に、任意の供給源由来の炭酸カルシウムを、熱分解して反応性CaOを得ることができる。しかし、生産された反応性CaOが低不純物であり、且つ比較的均一なサイズ分布を有することを保証するため、および、変換率が高く、且つ生産される副生成物の量が比較的少ないことを保証するために、典型的には、CaCO3供給源として高品質の石灰石が使用される。
熱分解によってCaOに変換される石灰石粒子について、分解過程は粒子表面上で開始され、より多くの熱が吸収されるにつれて粒子の中心に向かって進行する。室温では、固体石灰石(CaCO3)粒子は安定している。適切な温度への加熱の際に、CO2が脱離し、固体CaO粒子が残存する。加熱によって粒子内に熱勾配が樹立されるので、熱分解開始後の特定の期間において、粒子はCaOの焼成層に囲まれた石灰石コアを含む。2領域間の狭い境界上の反応ゾーンで活発な脱離反応が起こる。
反応中に2つの過程が生じる。CaCO3へ(CaCO3粒子表面へ)の熱伝達によってCaCO3の温度が上昇し、CO2解離が開始される。CO2の解離が生じているゾーンでは、温度はほぼ一定である。反応ゾーンが粒子のより深部に移動するにつれて、その後の熱量はCaCO3粒子の既に変換された部分(この時点でCaOからなる)を貫通して反応ゾーンに到達し、脱離反応を維持する。
CaCO3粒子内で物質移動も起こる。反応ゾーン内で生産されたCO2ガスは、新規に形成されたCaO層を通じて粒子内部から粒子外面に拡散する。
CaCO3が解離してCaOを形成する温度は、反応ゾーンに接触しているCaO層内のCO2の圧力/濃度に依存する。式(1)に示した反応が平衡反応であるので、反応ゾーンと接触しているCO2の濃度または分圧が高いと、式(1)中の反応物(すなわち、CaCO3)を好む傾向があり、それにより、変換率およびCaOの収率は制限される。対照的に、CaO層内のCO2の濃度/圧力が低いほど、式(1)中の生成物(すなわち、CaO)が好まれる程度が広くなる。同様に、式(1)中でCaOが好まれる程度が広いほど、CaCO3のCaOへの変換を促進するのに必要な温度が低くなる。
典型的な石灰石か焼炉では、総ガス圧力はおよそ1atmであり、CO2は炉内のガス量の約30%を占める。このCO2濃度では、石灰石粒子の外面のCaCO3は、約830℃の温度で解離する。
粒子内部では、CaO層を介した反応ゾーンから粒子外面へのCO2解離は、反応ゾーン内のCO2圧力が炉内の粒子に対して外面のCO2分圧を超える場合のみにおいて起こる。炉内のCO2圧力/濃度の低下により、式(1)由来のCaOの収率を増加させることができ、そして/または反応が行われ得る温度を低下させる。前述のように、炉内のCO2の分圧がおよそ0.33atmである場合、およそ830℃およびそれを超える温度でCaCO3解離が起こる。炉内のCO2の分圧がおよそ1atmである場合、およそ902℃およびそれを超える温度でCaCO3解離が起こる。
式(1)中の反応を開始および維持するために、包囲しているCaO層を介して粒子の外部から内部へ熱が伝達され、CaO層は経時的に厚みが増す。効率的な熱伝達のために、温度勾配は粒子の外面と反応ゾーンとの間に存在すべきである。CaOは比較的熱伝達の低い熱伝導体であるので、CaOに効率的に変換するための勾配の規模は、最初のCaO層が形成された時点の粒度に依存する。一般に、粒子の外面と反応ゾーンとの間の温度差が大きいほど、反応ゾーンへの熱の伝播が速い。
しかし、表面CaO層が加熱されたとき、結晶の成長および再成長、ならびに結晶の合体による副生成物として層内の細管の収縮が起こる。CaO層の多孔度の低下により、より深い反応ゾーン由来の粒子からのCO2拡散が妨げられる。上記で考察するように、CO2の粒子の内部領域からの拡散が防止されるにつれて、反応ゾーンに隣接する粒子領域のCO2の分圧/濃度が増加し、それにより、式(1)中の反応物CaCO3が好まれる。したがって、粒子内部からのCO2拡散が妨害される場合、CaCO3のCaOへの変換を維持するために反応ゾーンの温度を増加させる必要があり得る。
非常に高い温度(例えば、1300〜1400℃)では、熱分解を受ける粒子上の表面CaOは焼結し得、それにより、CaO層内の細孔の数およびサイズが有意に減少する。同様に、反応ゾーン内に生成されたCO2がCaO層を介して粒子から拡散されることがさらにより困難になり、CaCO3のCaOへの変換速度が低下(またはさらに停止)する。焼結は、種々の粒度を有する供給源由来の石灰石を使用するときの克服すべき困難な問題である。例えば、30mm〜120mmのサイズ分布のCaCO3粒子を使用する場合、最大粒子中の全てのCaCO3をCaOに変換するために、1300〜1400℃の温度が適切である。しかし、これらの温度では、多くのより小さな粒子は焼結し、これらの粒子のCaOへの完全な変換は阻止される。あるいは、より低温では、より小さなCaCO3の焼結を回避することができ、これらの粒子のより高いCaO変換率が生じる。しかし、より低温では、粒子内部の熱勾配は、反応ゾーンが粒子の中央に向かってさらに移動するように式(1)中の反応を駆動するのに十分ではないので、より大きな粒子中の全てのCaCO3がCaOに変換されるわけではない。
高温での大きなCaCO3および小さなCaCO3の両方の細孔容積の喪失も、生産されたCaO粒子の反応性に悪影響を及ぼし得る。種々の試薬(水が含まれる)とのCaO反応性は、細孔の存在に強い影響を受ける。一般に、生産されるCaO粒子の細孔の数および直径が大きいほど、粒子の表面積は大きい。化学反応は粒子の表面上で起こるので、多くの反応速度は、反応が起こる粒子の有効表面積に依存する。単位時間あたりの反応部位がより多いほど反応が起こるので、全ての他の条件が等しい場合、典型的には、粒子の表面積が大きいほど反応が速い。
したがって、CaCO3粒子が細孔容積を有意に減少させる温度に加熱される場合、細孔容積の減少がCaCO3のCaOへの変換を弱める可能性があるだけでなく、細孔容積の減少がその後の過程(水への溶解など)において得られたCaO粒子の反応性を低くする可能性もある。
天然由来のCaCO3粒子(例えば、石灰石粒子など)中に存在し得る一定のタイプの不純物もまた、処理温度が高いほど問題になり得る。例えば、温度が高いほど一定の不純物とCaOとの間の反応が増加する。したがって、反応材料中の天然に存在する不純物との反応および副生成物の形成により、一定の百分率のCaO生成物が利用できなくなる。これにより、総変換率が低下し、その結果、CaO生成物の「反応性」が低下する。
前述の検討事項は、CaCO3からCaOへの高い変換率を確実にし、且つ反応性CaO生成物を生産するために、出発物質(CaCO3粒子)の性質および反応条件の両方を慎重に制御すべきであるということを意味している。換言すれば、これらの要因の組み合わせによりほぼ100%の変換率で高反応性生成物が生産される。
粒度制御に関して、典型的には広範囲のサイズを有する未加工の石灰石チャンクを入手し、衝撃粉砕してより小さな粒子を生産する。次いで、これらのより小さな粒子を、連続的な篩いにかけて一定範囲のサイズに分離する。この選別過程により、比較的狭い範囲のサイズの粒子の分布が得られる。一般に、粒子の分布数は、衝撃粉砕後の粒子を選別するために使用した篩の数および配置に依存する。いくつかの実施形態では、例えば、3つの異なる粒子分布が得られ、これらはそれぞれ異なる平均粒度に相当する。
熱分解を介して処理される粒子の分布は、典型的には、慎重に選択された範囲の粒度を有する。上で考察するように、粒度は、変換過程を成功させるための重要な役割を果たす。大きすぎる粒子は、CaOに完全に変換されない可能性があり、それにより、かなりの(appreciate)量のCaCO3を依然として含む純粋でない生成物が得られ得る。小さすぎる粒子もまた、焼結が粒子内部からのCO2の効率的な拡散を防止し得るので、CaOに完全に変換されない可能性がある。さらに、焼結により、焼結の副産物である細孔容積の低下を原因とする予想より反応性が低いCaO生成物が得られる可能性がある。
いくつかの実施形態では、CaOを生産するために使用されるCaCO3粒子の平均サイズは約6mmである。約6mmの平均サイズを有する粒子を分布させるために、粒度分布の半値全幅(FWHM)は約4mmまたはそれ未満(例えば、約3mmまたはそれ未満、約2mmまたはそれ未満、約1mmまたはそれ未満)である。一定の実施形態では、CaOを生産するために使用されるCaCO3粒子の平均サイズは約10mmである。約10mmの平均サイズを有する粒子を分布させるために、粒度分布の半値全幅(FWHM)は、約4mmまたはそれ未満(例えば、約3mmまたはそれ未満、約2mmまたはそれ未満、約1mmまたはそれ未満)である。いくつかの実施形態では、CaOを生産するために使用されるCaCO3粒子の平均サイズは約14mmである。約14mmの平均サイズを有する粒子を分布させるために、粒度分布の半値全幅(FWHM)は、約4mmまたはそれ未満(例えば、約3mmまたはそれ未満、約2mmまたはそれ未満、約1mmまたはそれ未満)である。
いくつかの実施形態では、CaOを生産するために使用されるCaCO3粒子は4mmと8mmとの間のサイズ分布を有する。一定の実施形態では、粒子は8mmと12mmとの間のサイズ分布を有する。いくつかの実施形態では、粒子は12mmと16mmとの間のサイズ分布を有する。
別の重要な検討事項は、CaCO3反応体粒子中の不純物の存在である。上記で説明するように、CaCO3中の一定の不純物は、CaO生成物と反応することができ、それにより、CaOが結合した生成物を形成し、もはやその後の反応に利用できない。一例として、一定の石灰石は、比較的高い石英(すなわち、SiO2)濃度を有する。石英はCaOと反応し、ケイ酸カルシウム生成物(2CaO・SiO2)を生じる。換言すれば、各SiO2分子は2つのCaO分子と反応して、比較的不活性なシリケート生成物を生じ、CaOはもはやほとんどの試薬(水が含まれる)と反応させるために利用できない。
この様式で低反応性CaO生成物の生産を回避するために、反応性CaOを生産するために式(1)で使用されるCaCO3粒子が、CaCO3濃度が少なくとも94%である化学組成を有するべきであることが一般的に見出されている。さらにより高い反応性のCaO生成物を生産するために、試薬粒子中のCaCO3濃度は、95%またはそれを超える(例えば、97%またはそれを超える、98%またはそれを超える、99%またはそれを超える、99.5%またはそれを超える、99.9%またはそれを超える)。
CaCO3粒子からCaO粒子を生産するために、CaCO3粒子を炉内で比較的高温に加熱する。種々の異なる炉をこの目的のために使用することができ、炉には、水平型回転炉、垂直型炉、自然通風炉、強制空気炉、強制通風炉、凝縮炉、一段炉または多段炉、調整炉、溶鉱炉、パッドル炉、反射炉、平炉、および誘導炉が含まれるが、これらに限定されない。炉は、変換過程中の炉内温度を測定するための1つまたは複数の温度測定デバイスを含むことができる。かかるデバイスの例には、サーミスタ、熱電対、抵抗温度計、およびシリコンバンドギャップ温度センサが含まれるが、これらに限定されない。
CaCO3粒子をCaO粒子に効率的に変換するために、CaCO3粒子を、比較的高温に加熱する。一般に、焼結を回避し、且つ高変換率を達成するためには、CaCO3粒子を均一に加熱することが重要である。上で考察するように、最低温度またはそれを超える温度へのCaCO3粒子の加熱により、CaCO3の熱分解が開始される。いくつかの実施形態では、例えば、CaCO3粒子を、熱分解を開始させるために900℃超(例えば、950℃超、1000℃超、1050℃超、1100℃超、1150℃超)に加熱する。一定の実施形態では、温度は、1000℃と1200℃との間(例えば、1050℃と1200℃との間、1100℃と1200℃との間、1150℃と1200℃との間)である。
CaO粒子の多孔度を実質的に低下させないことを確実にするために、CaCO3粒子の温度を、最高温度未満に維持することができる。例えば、一定の実施形態では、熱分解過程を通したCaCO3粒子の温度を、1200℃の温度未満(例えば、1150℃未満、1100℃未満、1050℃未満、1000℃未満)に維持する。
CaCO3粒子の熱分解中、粒子の温度を、900℃と1200℃との間(例えば、950℃と1200℃との間、900℃と1150℃との間、950℃と1150℃との間、1000℃と1150℃との間、1000℃と1100℃との間、約1150℃)に維持することができる。CaCO3粒子を熱分解が起こる温度に加熱することにより、同時に多孔度の有意な低下が回避され、反応性CaO粒子を形成するための粒子の変換が比較的迅速に起こる。いくつかの実施形態では、例えば、CaCO3粒子を、CaO粒子を形成させるために、3.0時間またはそれ未満(例えば、2.75時間またはそれ未満、2.50時間またはそれ未満、2.25時間またはそれ未満、2.0時間またはそれ未満、1.75時間またはそれ未満、1.5時間またはそれ未満、1.25時間またはそれ未満、1.0時間またはそれ未満)の期間、加熱する。一定の実施形態では、CaCO3粒子を、CaO粒子を形成させるために、少なくとも1.0時間(例えば、少なくとも1.5時間、少なくとも2.0時間、少なくとも2.5時間)の期間、加熱する。いくつかの実施形態では、CaCO3粒子を、1.0時間と3.0時間との間(例えば、1.5時間と3.0時間との間、2.0時間と3.0時間との間)の期間、加熱する。
いくつかの実施形態では、CaO粒子への変換をもたらすために、CaCO3粒子を、一定の温度に加熱する。しかし、上記で考察するように、CaO「シェル」が粒子上に形成され、且つ反応ゾーンが粒子の中心に向かって移動するので、反応ゾーン内の温度が分解反応を起こすための最低温度に到達することを確実にするためにより大きな熱勾配を必要とし得る。したがって、一定の実施形態では、2段階またはそれを超える段階で加熱が起こり、各段階の温度は、直前の段階の温度より高く、各段階は総加熱時間の一部の時間起こる。例えば、2段階加熱過程では、CaCO3粒子を、最初に900〜1150℃の範囲の温度に5分間〜1時間の期間、加熱し、次いで、1150〜1200℃の範囲の温度に5分間〜1時間の期間、加熱する。別の例として、3段階加熱過程では、CaCO3粒子を、最初に900℃と1000℃との間の温度に加熱し、次いで、1000℃と1100℃との間の温度に加熱し、次いで、1100℃と1200℃との間の温度に加熱する。各段階を、5分間〜2時間の期間、行うことができる。
一般に、任意の工程数、各工程について900℃〜1200℃の任意の温度範囲、および各工程について5分間と3時間との間の任意の期間を含む多段階加熱過程を実施することができる。多段階加熱過程を使用することにより、CaCO3粒子内の熱勾配を、反応ゾーンが粒子内を移動し、それにより、より高い変換率を可能にし、総変換時間を短縮することができるように調整することができる。
いくつかの実施形態では、加熱過程を、下限温度から上限高温までの連続的な温度上昇として実施することができる。一般に、この目的のために900℃から1200℃までの下限温度および上限温度を使用することができる。例えば、温度を、加熱期間内で900〜1000℃の範囲の第1の温度と1100〜1200℃の範囲の第2の温度との間で線形に上昇させることができる。
段階的温度上昇に類似して、連続的温度上昇を使用して、CaCO3粒子内の温度勾配を反応ゾーンの移動に適合させることができる。いくつかの実施形態では、温度は線形に変動(すなわち、上昇)し得る。しかし、非線形の温度変動も使用することができる。特に、例えば、反応ゾーンの移動がCaCO3粒子を介して時間的に非線形に起こると予想される場合、温度を時間的に非線形に上昇させることもできる。
前述の方法では、温度測定デバイスによる測定値に基づいて炉内温度を確立し、維持する。かかる測定値により、特定の温度を達成することが可能であり、熱分解過程中の炉内温度をモニタリング可能である。温度測定をフィードバックシグナルとして使用して、過程の任意の段階での炉加熱を制御することができる。
上に開示した方法を使用して、反応性CaOをCaCO3から生産する。「反応性」CaOは、水と迅速に反応し、それにより、より迅速に溶解するCaOである。生産されるCa(OH)2水溶液が組成物の生産において鍵となる試薬であるので、より迅速に溶解することは、工業規模でのリン酸カルシウム組成物の生産に重要である。
上で考察するように生産されたCaOの水との反応性は、CaOの表面積、多孔度、粒度、および純度の帰結である。上で考察した方法は、各観点で好ましい性質を有するCaO生成物を得られるようにデザインされており、それにより、CaO生成物が高い反応性であることを確実する。例えば、上で考察した方法を使用すると、CaO粒子の表面積は、少なくとも6.0m2/g(例えば、少なくとも8.0m2/g、少なくとも10.0m2/g、少なくとも12.0m2/g、少なくとも14.0m2/g、少なくとも20.0m2/g)である。
本方法はまた、比較的高い多孔度を有するCaO粒子が得られる。例えば、上で考察したように生産されたCaO粒子は、少なくとも15.0cm3/g(例えば、少なくとも20.0cm3/g、少なくとも25.0cm3/g、少なくとも30.0cm3/g、少なくとも35.0cm3/g、少なくとも40.0cm3/g、少なくとも50.0cm3/g)の比多孔度を有する。
上で考察するように生産したCaO粒子は、CaO粒子を生産するために使用されるCaCO3粒度の分布に適合する比較的狭いサイズ分布を有する。いくつかの実施形態では、例えば、CaO粒子の分布は、6mmの平均粒度、および4mmまたはそれ未満(例えば、3mmまたはそれ未満、2mmまたはそれ未満、1mmまたはそれ未満)のFWHMを有する。一定の実施形態では、CaO粒子の分布は、10mmの平均粒度、および4mmまたはそれ未満(例えば、3mmまたはそれ未満、2mmまたはそれ未満、1mmまたはそれ未満)のFWHMを有する。いくつかの実施形態では、CaO粒子の分布は、14mmの平均粒度、および4mmまたはそれ未満(例えば、3mmまたはそれ未満、2mmまたはそれ未満、1mmまたはそれ未満)のFWHMを有する。
いくつかの実施形態では、生産されるCaO粒子は4mmと8mmとの間のサイズ分布を有する。一定の実施形態では、粒子は8mmと12mmとの間のサイズ分布を有する。いくつかの実施形態では、粒子は12mmと16mmとの間のサイズ分布を有する。
比較的純粋なCaCO3粒子で開始し、且つこの粒子を比較的高温に加熱する(存在し得る一定の不純物を熱化する)ことにより、高純度のCaO粒子を生産することができる。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書中に開示のように生産されたCaO粒子中のCaO濃度は、97%またはそれを超える(例えば、98%またはそれを超える、99%またはそれを超える、99.5%またはそれを超える、99.9%またはそれを超える)。
CaO中の残存CaCO3濃度は、典型的には、非常に低い。例えば、いくつかの実施形態では、上で考察した加熱後のCaO粒子中のCaCO3濃度は、0.5%またはそれ未満(例えば、0.3%またはそれ未満、0.1%またはそれ未満、0.05%またはそれ未満、0.01%またはそれ未満、0.005%またはそれ未満、0.001%またはそれ未満)である。
変換過程の全効率は、一般に非常に高い。効率は、生成物粒子中でCaOに変換されたCaCO3粒子中のCaCO3の百分率と定義される。典型的には、変換効率は、95%またはそれを超える(例えば、97%またはそれを超える、99%またはそれを超える、99.5%またはそれを超える、99.9%またはそれを超える、99.99%またはそれを超える)。
酸化カルシウムの反応性を、Wueher法を使用して決定することができる。Wueher法は、酸化カルシウムの水和能力を測定する。CaO試料の反応性を、水との反応の進行(水酸化カルシウムを形成するため)および得られた塩基性溶液の4N塩酸での中和によって決定する。固体CaO粒子と水溶液との間の境界で水との反応が起こるので、CaO粒子の比表面積は、決定される反応性指数に有意な影響を及ぼす。
試験中、CaOの水との反応の際に形成されるアルカリ性Ca(OH)2を塩酸で中和し、塩酸の使用体積を記録する。反応開始からの経過時間も記録する。より反応性の高いCaO試料は、早期であるほどより大きな体積の塩酸が中和のために必要であり、これはCaO試料がより迅速に水と反応することを示している。
図2は、50gの本明細書中に開示のように生産した反応性酸化カルシウム材料(曲線202)および50gの2つの市販の酸化カルシウム材料の試料(曲線204および206)についてのWueher試験の結果を示すグラフである。グラフに示すように、反応性酸化カルシウム材料の反応性は、市販の酸化カルシウム材料の反応性より有意に高かった。50gの純粋なCaOを中和するために必要な4N塩酸の最大理論体積は、約446mLである。曲線202に示した反応性CaOは、418mLを必要として、これは、理論値に非常に近かった。
IV.リン酸カルシウム組成物の生産
図1に戻って、次の工程104は、工程102由来の反応性CaO粒子を水に溶解することによってCa(OH)2水溶液を調製することを含む。工程108が工程102で調製した反応性CaO粒子からのCa(OH)2水溶液の調製も含むことに留意すべきである。2つのCa(OH)2溶液を、典型的には、適量の反応性CaOを水に溶解して各溶液を調製することによって同時に調製する。反応性CaO粒子の水への溶解により、アルカリ性pHで完全に溶媒和したカルシウムイオンの均一な溶液が得られる。このため、溶液を調製するために反応性CaOを使用することは生産時間をより速くするという観点では一定の利点があるが、他のCaO粒子から調製されたCa(OH)2溶液も本明細書中に開示のリン酸カルシウム組成物の調製に使用することができることにも留意すべきである。
図1に戻って、次の工程104は、工程102由来の反応性CaO粒子を水に溶解することによってCa(OH)2水溶液を調製することを含む。工程108が工程102で調製した反応性CaO粒子からのCa(OH)2水溶液の調製も含むことに留意すべきである。2つのCa(OH)2溶液を、典型的には、適量の反応性CaOを水に溶解して各溶液を調製することによって同時に調製する。反応性CaO粒子の水への溶解により、アルカリ性pHで完全に溶媒和したカルシウムイオンの均一な溶液が得られる。このため、溶液を調製するために反応性CaOを使用することは生産時間をより速くするという観点では一定の利点があるが、他のCaO粒子から調製されたCa(OH)2溶液も本明細書中に開示のリン酸カルシウム組成物の調製に使用することができることにも留意すべきである。
2つの溶液中のカルシウムイオン(Ca2+)濃度は、同一でも異なっていてもよい。濃度が異なる場合、生産すべきリン酸カルシウム組成物の性質に応じて、第1のCa(OH)2溶液中のカルシウムイオン濃度は、第2のCa(OH)2溶液中のカルシウムイオン濃度より高くあり得、または低くあり得る。
いくつかの実施形態では、第1の溶液中のカルシウムイオン濃度は、1.0mol/Lまたはそれを超える(例えば、1.25mol/Lまたはそれを超える、1.5mol/Lまたはそれを超える、1.75mol/Lまたはそれを超える、2.0mol/Lまたはそれを超える、2.5mol/Lまたはそれを超える、3.0mol/Lまたはそれを超える)。一定の実施形態では、第2の溶液中のカルシウムイオン濃度は、1.0mol/Lまたはそれを超える(例えば、1.25mol/Lまたはそれを超える、1.5mol/Lまたはそれを超える、1.75mol/Lまたはそれを超える、2.0mol/Lまたはそれを超える、2.5mol/Lまたはそれを超える、3.0mol/Lまたはそれを超える)。
次に、工程106では、リン酸(H3PO4)水溶液を、第1のCa(OH)2溶液に添加して、最終的にCa(H2PO4)2の水性スラリーを生成する。Ca(H2PO4)2中間体種は多種多様な最終リン酸カルシウム組成物を生成することができる共通の「ベースライン」化合物として役割を果たすので、溶液中で安定な中間体種としてのこの化合物の生成は、全合成方法における鍵となる工程である。
Ca(H2PO4)2中間体生成物を生成するために、H3PO4溶液を、第1のCa(OH)2溶液に撹拌しながらゆっくり添加する。例えば、溶液中で2つの逆回転ブレードを使用して撹拌を実施することができる。非晶質のCa3(PO4)2が溶液から沈殿してしまうので、H3PO4溶液をあまり急速に添加しないことが重要である。一旦この比較的不活性な形態で沈殿すると、カルシウムイオンおよびリン酸イオンはもはや合成方法でのさらなる工程に利用できない。いくつかの実施形態では、H3PO4溶液中のリン酸濃度は、4.0mol/Lまたはそれを超える(例えば、4.5mol/Lまたはそれを超える、5.0mol/Lまたはそれを超える、5.25mol/Lまたはそれを超える、5.50mol/Lまたはそれを超える、5.75mol/Lまたはそれを超える)。
H3PO4溶液をゆっくり添加することが必要であるのは、リン酸イオンの多価性に起因する。異なるpH値の水溶液では、リン酸イオンは、その完全に脱プロトン化した形態PO4 3−、その二つ脱プロトン化した形態HPO4 2−、およびその一つ脱プロトン化した形態H2PO4 −で多様に存在し得る。溶液のpHが制御された形式でゆっくり変化する場合、リン酸イオンのこれらのアニオン形態の各々を生成することができる。しかし、溶液のpHが急速に変化し、且つpH変化の結果として比較的不溶なリン酸塩の対イオンが溶液中に存在する場合、塩が沈殿する傾向がある。
実際には、種々の形態のリン酸アニオンは、pH変化があまり急激でない場合、多段階緩衝液を形成する。しかし、例えば、大量の酸を溶液に添加した場合、溶液の緩衝性は打ち負かされ、可能であれば、塩の沈殿が起こる傾向がある。
撹拌しながらH3PO4溶液をゆっくり添加することは、Ca(OH)2溶液のpHがゆっくり変化することを確実にし、溶液から不溶性リン酸塩が沈殿しない。溶液のpHがゆっくり低下すると、中間体リン酸二水素生成物(Ca(H2PO4)2)がスラリーとして生成されるまで、自然に緩衝化された溶液中に各中間体リン酸イオン種が生成され得る。
Ca(OH)2溶液とH3PO4溶液とを合わせた溶液のpHが変化する様式を、図3のグラフに概略的に示す。最初に、第1のCa(OH)2溶液は、約12のpHを有する。合わせた溶液のpHが一連の段階で低下するようにH3PO4溶液を添加する。図3中のプラトー領域302に示すように、第1段階では、該溶液のpHが8.5と9.5との間に到達するまでH3PO4溶液を撹拌しながらゆっくり添加し続ける。溶液のpHはこの値で安定化し、この値はPO4 3−イオンとHPO4 2−イオンとの間の緩衝によって維持される。
第1段階のpHに到達し、且つ溶液のpHが少なくとも1分間安定化した後、溶液のpHが図3中のプラトー領域304に示す3.5と4.5との間に到達するまで、第2段階においてH3PO4溶液の添加を撹拌しながらゆっくり再開する。このpH値で、溶液のpHは安定化し、この値はHPO4 2−イオンとH2PO4 −イオンとの間の緩衝によって維持される。
第2段階のpHに到達し、且つこのpHが少なくとも1分間安定化した後、合わせた溶液のpHが図3中のプラトー領域306に示す1と2との間(特に、1.4と1.7との間)の値に到達するまで、さらなるH3PO4溶液を合わせた溶液に撹拌しながらゆっくり添加する。このpH値で、リン酸イオンのH2PO4 −イオンへの変換は最適化されており(または、ほぼ最適であり)、塩Ca(H2PO4)2はわずかに不溶性であるので、この塩が溶液から少し沈澱する。
上で考察するように、例えば、H3PO4溶液を非常に急速に添加したために3つの段階302、304、および306の各々での溶液のpHの安定化が起こらない場合、不活性且つ非晶質のCa3(PO4)2が溶液から沈殿し、生産される目的のリン酸カルシウム組成物の総収率が有意に減少する。つまり、大過剰濃度のPO4 3−が溶液中に瞬間的に存在するようにH3PO4水溶液を急速に添加した場合、比較的不溶性の固体Ca3(PO4)2が迅速に沈殿するという結果になる。
一定の実施形態では、H3PO4を添加すると溶液のpHが変化する速度を調整するために、H3PO4溶液の温度を制御することができる。例えば、H3PO4溶液の温度は、0℃と40℃との間(例えば、5℃と15℃との間、5℃と30℃との間、10℃と40℃との間、15℃と25℃との間、15℃と40℃との間、20℃と40℃との間、25℃と40℃との間、30℃と40℃との間)である。
次に、工程108では、リン酸カルシウム組成物を、in situでCa(H2PO4)2中間体生成物から調製する。リン酸カルシウム組成物を調製するために、第2のCa(OH)2溶液を、撹拌しながらCa(H2PO4)2スラリーにゆっくり添加する。第2のCa(OH)2溶液の添加によってCa(H2PO4)2スラリーのpHが上昇する。上で考察するように、第2のCa(OH)2溶液中のカルシウムイオン濃度は、第1のCa(OH)2溶液中のカルシウムイオン濃度と異なる。カルシウムおよびリン酸イオンの相対モル比ならびにCa(H2PO4)2スラリーと第2のCa(OH)2溶液とを合わせたもののpHにより、生産されるリン酸カルシウム組成物の化学量論が制御され、組成物の物理的性質にも影響を及ぼす。
一般に、スラリー中のカルシウムイオンのリン酸二水素イオンに対するモル比は、生成物であるリン酸カルシウム組成物における相の数および相の化学組成に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、リン酸二水素カルシウムイオンの水酸化カルシウムイオンに対するモル比は、約0.25:1〜約4:1(例えば、約0.4:1〜約1.17:1、約0.5:1〜約1.1:1、約1:1.7、約1:1)である。
全ての第2のCa(OH)2溶液が添加された後の生成物溶液の最終pHは、第2のCa(OH)2溶液の濃度および体積に依存する。いくつかの実施形態では、最終pHは、6.0と8.0との間(例えば、6.5と7.5との間、約7.0)である。一定の実施形態では、最終pHは、9.0と13.0との間(例えば、10.0と13.0との間、11.0と13.0との間、11.5と12.5との間、約12.0)である。
第2のCa(OH)2溶液の濃厚なCa(H2PO4)2スラリーへの添加は、半固体塊の形成を回避するために典型的にはゆっくり起こる。最終生成物であるリン酸カルシウム組成物は、水性スラリーとして、約12:1の水:生成物比で得られる。工程110では、生成物であるリン酸カルシウム組成物がスラリーとして形成された後、スラリーを単離および精製する。生成物の組成物を単離するために、スラリーを回転炉内で加熱していくらかの水を除去して、水:生成物比が約4:1の減量した混合物を得ることができる。次いで、減量した混合物を、第2の炉内で加熱して残存する水を除去して、固体形態のリン酸カルシウム組成物を得ることができる。典型的にはこの2段階の単離および精製過程を使用して、機械的処理が困難な強固な塊の形態の固体リン酸カルシウム組成物の生成を回避する。両方の乾燥フェーズ中に蒸発したプロセス水を回収し、合成方法の上流工程で再利用して、さらなる量の第1および第2のCa(OH)2溶液を生成することができる。
所望の粒度を有するリン酸カルシウム生成物を得るために、固体リン酸カルシウム組成物を、所望のサイズ分布を有する粒子に機械的に粉砕することができる。ミクロナイザーでのさらなる処理を使用して、特定の用途における使用のための非常に小さな粒子を生産することができる。双峰分布および他の多峰分布の粒度を有するリン酸カルシウム組成物を、同一生成物であるリン酸カルシウム組成物の異なるバッチを粉砕および篩にかけて平均サイズおよびサイズ分布が異なる粒子を得ること、次いで、バッチを合わせて二峰性または他の多峰性の粒度分布を有するリン酸カルシウム組成物を得ることによって生産することができる。
さらに小さな粒子(例えば、マイクロメートルサイズの粒子および/またはナノメートルサイズの粒子)を、生成物を熱衝撃処理に供することによって生成することができる。熱衝撃処理を使用して、生成物であるリン酸カルシウム組成物の細孔の分布およびサイズを導入および/または増大することもできる。この手順では、生成物の組成物の温度を、上で考察した単離および精製の第2段階中に迅速に上昇させる。別の固体生成物の組成物中に補足された水の沸点を超えて温度が上昇すると、水は蒸気に変換される。蒸気が生成物の組成物の粒子から逸脱すると、粒子の内部構造が破壊され、粒子中に細孔およびチャネルが作製される。
熱衝撃処理を以下のように行うことができる。オーブンを約500℃の温度に加熱し、オーブン内の温度が約450℃を超えたままであるように、20〜30℃の温度で生成物の部分をゆっくり導入する。生成物の各部分をオーブン中にて450〜500℃で約15分間加熱して熱衝撃をもたらす。
熱衝撃処理由来の生成物の組成物の多孔度の増加は、生成物の組成物の粒子が加熱される温度に有意に依存する。いくつかの実施形態では、生成物の粒子を、200℃またはそれを超える(例えば、300℃またはそれを超える、400℃またはそれを超える、500℃またはそれを超える、600℃またはそれを超える、700℃またはそれを超える、800℃またはそれを超える、900℃またはそれを超える)温度に加熱する。熱衝撃処理中の生成物の粒子の温度上昇は、典型的には、少なくとも400℃(例えば、少なくとも450℃、少なくとも500℃、少なくとも550℃、少なくとも600℃、少なくとも700℃)である。粒子を、典型的には、5分間と30分間との間(例えば、5分間と20分間との間、10分間と30分間との間、10分間と20分間との間、30分間またはそれ未満、20分間またはそれ未満、15分間またはそれ未満、10分間またはそれ未満)の持続時間で加熱する。
リン酸カルシウム組成物を単離および精製した後、組成物をさらなる加熱処理に供して、生成物の組成物の相および/または形態の分布を調整することができる。いくつかの実施形態では、例えば、生産されたリン酸カルシウム組成物を、約40℃〜約1200℃(例えば、約40℃〜約1200℃、約75℃〜約1200℃、約100℃〜約1200℃、約150℃〜約250℃、約150℃〜約1200℃、約180℃〜約220℃、約250℃〜約1200℃、約350℃〜約1200℃、約450℃〜約1200℃、約550℃〜約1200℃、約600℃〜約1200℃、約650℃〜約1200℃、約700℃〜約1200℃、約750℃〜約1200℃、約775℃〜約1200℃、約800℃〜約1200℃、約850℃〜約950℃、約850℃〜約1200℃、約900℃〜約1200℃、約950℃〜約1200℃、約1000℃〜約1200℃、約1050℃〜約1200℃、約1100℃〜約1200℃)の温度で加熱することができる。上記温度範囲のいずれかで、約0.25時間〜約5時間(例えば、約1.5時間〜約5時間、約1時間〜約3時間、約1.5時間〜約2.5時間)の期間、加熱を行うことができる。
V.リン酸カルシウム組成物
多種多様なリン酸カルシウム組成物を、本明細書中に開示の合成方法を使用し、そして上で考察した種々の反応条件および試薬を適切に制御することによって生産することができる。一般に、非官能化リン酸カルシウム生成物の組成物の生産に加えて、本明細書中に開示の方法を使用して、1つまたは複数の置換基(ハライド基および水酸化物基が含まれるが、これらに限定されない)を特徴とする置換リン酸カルシウム組成物を生産することもできる。適切なハライドには、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物が含まれ得る。リン酸カルシウム組成物は、一般に、1つまたは複数のハライド置換基および/または1つまたは複数の水酸化物置換基を含むことができる。別段の記載が明確にない限り、以下の考察を置換リン酸カルシウム組成物および非置換リン酸カルシウム組成物に等しく適用すると理解すべきである。
多種多様なリン酸カルシウム組成物を、本明細書中に開示の合成方法を使用し、そして上で考察した種々の反応条件および試薬を適切に制御することによって生産することができる。一般に、非官能化リン酸カルシウム生成物の組成物の生産に加えて、本明細書中に開示の方法を使用して、1つまたは複数の置換基(ハライド基および水酸化物基が含まれるが、これらに限定されない)を特徴とする置換リン酸カルシウム組成物を生産することもできる。適切なハライドには、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物が含まれ得る。リン酸カルシウム組成物は、一般に、1つまたは複数のハライド置換基および/または1つまたは複数の水酸化物置換基を含むことができる。別段の記載が明確にない限り、以下の考察を置換リン酸カルシウム組成物および非置換リン酸カルシウム組成物に等しく適用すると理解すべきである。
本明細書中に開示の方法を使用して生産することができるリン酸カルシウム組成物の例には、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、生産されるリン酸カルシウム組成物には、ヒドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択される1つまたは複数のリン酸カルシウムが含まれる。
いくつかの実施形態では、生産されるリン酸カルシウム組成物は、非晶質リン酸カルシウムのモル百分率が0%〜100%(例えば、0%〜約30%、約30%〜約70%、約70%〜100%、約45%〜約55%、約25%〜約35%)である。一定の実施形態では、リン酸カルシウム組成物は、完全に非晶質リン酸カルシウムからなる。いくつかの実施形態では、生産されるリン酸カルシウム組成物は、0%〜100%(例えば、0%〜約30%、約30%〜約70%、約70%〜100%、約5%〜約15%、約25%〜約35%、約30%〜約40%、約45%〜約55%)のモル百分率のβ−リン酸三カルシウムを有する。一定の実施形態では、リン酸カルシウム組成物は、完全にβ−リン酸三カルシウムからなる。いくつかの実施形態では、生産されるリン酸カルシウム組成物は、0%〜100%(例えば、0%〜約30%、約30%〜約70%、約70%〜100%、約5%〜約15%、約10%〜約20%、約55%〜約65%、約85%〜約90%、約95%〜100%)のモル百分率のヒドロキシアパタイトを有する。一定の実施形態では、リン酸カルシウム組成物は、完全にヒドロキシアパタイトからなる。
(1)単相性リン酸カルシウム
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されるリン酸カルシウム組成物は、単相性リン酸カルシウム組成物(MpCP)である。単相性リン酸カルシウム組成物は、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択されるリン酸カルシウム化合物を含むことができる。
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されるリン酸カルシウム組成物は、単相性リン酸カルシウム組成物(MpCP)である。単相性リン酸カルシウム組成物は、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択されるリン酸カルシウム化合物を含むことができる。
(2)二相性リン酸カルシウム
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されるリン酸カルシウム組成物は、二相性リン酸カルシウム組成物(BpCp)である。いくつかの実施形態では、二相性リン酸カルシウム組成物は、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択される2つのリン酸カルシウム化合物を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されるリン酸カルシウム組成物は、二相性リン酸カルシウム組成物(BpCp)である。いくつかの実施形態では、二相性リン酸カルシウム組成物は、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択される2つのリン酸カルシウム化合物を含む。
いくつかの実施形態では、二相性リン酸カルシウム組成物は、ヒドロキシアパタイトおよびβ−リン酸三カルシウムを含む。ヒドロキシアパタイトのβ−リン酸三カルシウムに対するモル比は、約1:100〜約50:50(例えば、約10:90〜約50:50、約20:80〜約50:50、約30:70〜約50:50、約40:60〜約50:50)であり得る。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトのβ−リン酸三カルシウムに対するモル比は、約100:1〜約50:50(例えば、約90:10〜約50:50、約80:20〜約70:30、約60:40〜約50:50、約80:20〜約95:5、約55:45〜約75:25、約90:10、約60:35)である。
いくつかの実施形態では、二相性リン酸カルシウム組成物は、ヒドロキシアパタイトおよび非晶質リン酸カルシウムを含む。ヒドロキシアパタイトの非晶質リン酸カルシウムに対するモル比は、約1:100〜約50:50(例えば、約10:90〜約50:50、約20:80〜約50:50、約30:70〜約50:50、約40:60〜約50:50)であり得る。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトの非晶質リン酸カルシウムに対するモル比は、約100:1〜約50:50(例えば、約90:10〜約50:50、約80:20〜約70:30、約60:40〜約50:50)である。
いくつかの実施形態では、二相性リン酸カルシウム組成物は、β−リン酸三カルシウムおよび非晶質リン酸カルシウムを含む。β−リン酸三カルシウムの非晶質リン酸カルシウムに対するモル比は、約1:100〜約50:50(例えば、約10:90〜約50:50、約20:80〜約50:50、約30:70〜約50:50、約40:60〜約50:50)であり得る。いくつかの実施形態では、β−リン酸三カルシウムの非晶質リン酸カルシウムに対するモル比は、約100:1〜約50:50(例えば、約90:10〜約50:50、約80:20〜約70:30、約60:40〜約50:50)である。
(3)三相性リン酸カルシウム
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されるリン酸カルシウム組成物は、三相性リン酸カルシウム組成物(TpCP)である。いくつかの実施形態では、三相性リン酸カルシウム組成物は、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択される3つのリン酸カルシウム化合物を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されるリン酸カルシウム組成物は、三相性リン酸カルシウム組成物(TpCP)である。いくつかの実施形態では、三相性リン酸カルシウム組成物は、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、塩素リン灰石、アパタイト、リン酸八カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムからなる群から選択される3つのリン酸カルシウム化合物を含む。
いくつかの実施形態では、三相性リン酸カルシウム組成物は、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatide)、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムを、約10:35:55、約10:40:50、約20:30:50、約20:35:45、約15:30:55、約15:40:45、約15:35:50、約5:65:30、約5:60:35、約15:55:30、約15:60:25、約10:55:35、約10:65:25、または約10:60:30のモル比で含む。
三相性リン酸カルシウム組成物がヒドロキシアパタイト(hydroxyapatide)、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウムを含む一定の実施形態では、組成物中の各化合物の割合は、0%〜約95%(例えば、10%〜約80%、20%〜約70%、30%〜約60%、30%〜約90%、20%〜約90%、10%〜約90%、30%〜約70%、20%〜約70%、10%〜約70%、20%〜約50%、10%〜約50%)であり得る。
(4)物理的性質
一般に、本明細書中に開示の方法を使用して、比較的広範囲の比表面積を有するリン酸カルシウム組成物を生産することができる。例えば、組成物は、約30m2/g〜約90m2/g(例えば、約40m2/g〜約90m2/g、約50m2/g〜約90m2/g、約60m2/g〜約90m2/g、約70m2/g〜約90m2/g、約80m2/g〜約90m2/gの比表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、組成物の比表面積は、50m2/gまたはそれを超える(例えば、60m2/gまたはそれを超える、70m2/gまたはそれを超える、80m2/gまたはそれを超える、85m2/gまたはそれを超える、90m2/gまたはそれを超える)。
一般に、本明細書中に開示の方法を使用して、比較的広範囲の比表面積を有するリン酸カルシウム組成物を生産することができる。例えば、組成物は、約30m2/g〜約90m2/g(例えば、約40m2/g〜約90m2/g、約50m2/g〜約90m2/g、約60m2/g〜約90m2/g、約70m2/g〜約90m2/g、約80m2/g〜約90m2/gの比表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、組成物の比表面積は、50m2/gまたはそれを超える(例えば、60m2/gまたはそれを超える、70m2/gまたはそれを超える、80m2/gまたはそれを超える、85m2/gまたはそれを超える、90m2/gまたはそれを超える)。
走査型電子顕微鏡法を使用して測定した場合の生産されたリン酸カルシウム組成物の平均粒度(すなわち、最大粒子寸法の平均サイズ)は、約100nm〜約50μm(例えば、約500nm〜約50μm、約1μm〜約50μm、約5μm〜約50μm、約10μm〜約50μm、約15μm〜約30μm、約20μm〜約30μm、約20μm〜約50μm、約30μm〜約50μm、約40μm〜約50μm)である。
一定の実施形態では、本明細書中に開示のように生産されるリン酸カルシウム組成物の比多孔度は、約0.1cm3/gと約0.25cm3/gとの間(例えば、約0.1cm3/gと約0.17cm3/gとの間、約0.15cm3/gと約0.25cm3/gとの間、約0.15cm3/gと0.17cm3/gとの間、約0.15cm3/gより大きく)である。
本明細書中に開示のように生産されるリン酸カルシウム組成物の粒子は、任意の配向の最大総粒子寸法の、前述の最大総粒子寸法に対して垂直の任意の方向の最大粒子寸法に対する比として定義されるアスペクト比を有する。工程108中の生成物スラリーの最終pHの調整および生産されたリン酸カルシウム組成物の加熱により、多種多様な異なるアスペクト比を有する粒子を生産することができる。例えば、いくつかの実施形態では、生産されるリン酸カルシウム組成物の平均アスペクト比は、5:1またはそれを超える(例えば、10:1またはそれを超える、25:1またはそれを超える、50:1またはそれを超える、100:1またはそれを超える、200:1またはそれを超える、300:1またはそれを超える、500:1またはそれを超える、750:1またはそれを超える)。
カルシウムとリン酸二水素イオンとのモル比、生成物スラリーの最終pH、および生産されたリン酸カルシウム組成物の精製後加熱も、組成物の結晶性に影響を及ぼす。一定の実施形態では、例えば、リン酸カルシウム組成物の結晶性は、50%を超える(例えば、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、98%を超える、99%を超える)。
以下の具体例は、本明細書中に開示の方法および組成物の態様をさらに例示することを意図しているが、いかなる様式を問わず、本開示の範囲を制限することを意図しない。
実施例は、生産されたリン酸カルシウム組成物の多様な物理的性質の測定を含む。物理的性質を測定するために、種々の技術および装置を使用した。X線回折(XRD)を使用して組成物の解析を行って、熱処理前および熱処理後の組成物中の相の比を決定する。Philips回折計にて40kWおよび20mAで操作するCu−Kα照射、走査速度0.06°/秒を用いて組成物を解析した。リン酸カルシウム(例えば、BpCP組成物およびTpCP組成物中のヒドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム、および非晶質リン酸カルシウム)の百分率の計算を、XRDスペクトルの曲線下面積の積分に基づいて実行した。XRD解析を使用して結晶性測定も決定した。
レーザー回折、走査型電子顕微鏡法、および窒素比重びん測定法(nitrogen pycnometry measurement)を、称呼粒度が38μmと53μmとの間の組成物に対して行い、モレキュラーシーブを使用して単離して、粒度分布を決定した。また、粒度分析器(CILAS 1064装置、CILAS、Orleans、Franceから入手可能)と組み合わせたレーザー回折法を使用して、一定の組成物の粒度分布の測定を行った。
また、粒子形態の解析を、25kVで操作した走査型電子顕微鏡法(SEM)(JEOL 6300走査型電子顕微鏡、JEOL USA、Peabody、MAから入手可能)を使用して行った。エネルギー分散型X線解析(EDXA)を使用して化学的微量分析を行って、組成物中のCa/P比を測定し、可能性のある不純物を同定した。リン酸カルシウムの比表面積を、Quantachrome Autosorb装置(Quantachrome,Boynton Beach,FLから入手可能)における窒素吸着によって決定した。
実施例1.二相性リン酸カルシウム組成物(90%ヒドロキシアパタイト、10%β−リン酸三カルシウム)の調製
工程1:水酸化カルシウム混合物の調製
水(2L)を約20〜26℃の間の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(509.3g、9.08mol、純度95%、本明細書中に考察のように調製)を撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
水(2L)を約20〜26℃の間の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(509.3g、9.08mol、純度95%、本明細書中に考察のように調製)を撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
工程2:リン酸二水素カルシウム混合物の調製
リン酸(29%、2L)を10℃の温度に冷却し、工程1の水酸化カルシウム混合物の一部に30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH3を有した。
リン酸(29%、2L)を10℃の温度に冷却し、工程1の水酸化カルシウム混合物の一部に30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH3を有した。
工程3:非晶質リン酸カルシウムの調製
リン酸二水素カルシウム混合物を、水酸化カルシウム混合物の別の部分に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加し、得られた反応混合物はpH12を有した。次いで、反応混合物を200℃で乾燥させて非晶質リン酸カルシウムを生産した。凝集した粒子を機械的に破壊し、得られた粒子をX線回折解析のために325メッシュ(0.044mm)の篩いにかけた。
リン酸二水素カルシウム混合物を、水酸化カルシウム混合物の別の部分に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加し、得られた反応混合物はpH12を有した。次いで、反応混合物を200℃で乾燥させて非晶質リン酸カルシウムを生産した。凝集した粒子を機械的に破壊し、得られた粒子をX線回折解析のために325メッシュ(0.044mm)の篩いにかけた。
工程4:二相性リン酸カルシウム組成物(90%ヒドロキシアパタイト、10%β−リン酸三カルシウム)の調製
非晶質リン酸カルシウム画分を、900℃で4.0時間か焼して二相性リン酸カルシウム(90%ヒドロキシアパタイト、10%β−リン酸三カルシウム)を生産し、これを、X線回折を使用して解析した。
非晶質リン酸カルシウム画分を、900℃で4.0時間か焼して二相性リン酸カルシウム(90%ヒドロキシアパタイト、10%β−リン酸三カルシウム)を生産し、これを、X線回折を使用して解析した。
実施例2.三相性リン酸カルシウム(15%ヒドロキシアパタイト、35%β−リン酸三カルシウム、50%非晶質リン酸カルシウム)の調製
工程1:水酸化カルシウム混合物の調製
水(2L)を20〜26℃の間の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(509.3g、9.08mol、純度95%、米国特許出願第62/232,999号に提供された手順にしたがって調製)を強く撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
水(2L)を20〜26℃の間の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(509.3g、9.08mol、純度95%、米国特許出願第62/232,999号に提供された手順にしたがって調製)を強く撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
工程2:リン酸二水素カルシウム混合物の調製
22℃の温度のリン酸(31.6%、2L)を、工程1由来の水酸化カルシウム混合物の一部に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH2を有した。
22℃の温度のリン酸(31.6%、2L)を、工程1由来の水酸化カルシウム混合物の一部に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH2を有した。
工程3:三相性リン酸カルシウム(15%ヒドロキシアパタイト、35%β−リン酸三カルシウム、50%非晶質リン酸カルシウム)の調製
リン酸二水素カルシウム混合物を、水酸化カルシウム混合物の別の部分に、pH11で30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。生成物を200℃で乾燥させて三相性リン酸カルシウム(15%ヒドロキシアパタイト、35%β−リン酸三カルシウム、50%非晶質リン酸カルシウム)を生産した。凝集した粒子を機械的に破壊し、得られた粒子をX線回折解析のために325メッシュ(0.044mm)の篩いにかけた。
リン酸二水素カルシウム混合物を、水酸化カルシウム混合物の別の部分に、pH11で30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。生成物を200℃で乾燥させて三相性リン酸カルシウム(15%ヒドロキシアパタイト、35%β−リン酸三カルシウム、50%非晶質リン酸カルシウム)を生産した。凝集した粒子を機械的に破壊し、得られた粒子をX線回折解析のために325メッシュ(0.044mm)の篩いにかけた。
実施例3.二相性リン酸カルシウム(65%ヒドロキシアパタイト、35%β−リン酸三カルシウム)の調製
非晶質リン酸カルシウム(実施例2、工程1〜3の手順にしたがって調製)の画分を900℃で4.0時間か焼して二相性リン酸カルシウム(90%ヒドロキシアパタイト、10%β−リン酸三カルシウム)を生産し、これを、X線回折を使用して解析した。
実施例4.三相性リン酸カルシウム(10%ヒドロキシアパタイト、60%β−リン酸三カルシウム、30%非晶質リン酸カルシウム)の調製
工程1:水酸化カルシウム混合物の調製
水(4L)を40〜60℃の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(509.3g、9.08mol、純度95%、本明細書中で考察した手順にしたがって調製)を強く撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
水(4L)を40〜60℃の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(509.3g、9.08mol、純度95%、本明細書中で考察した手順にしたがって調製)を強く撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
工程2:リン酸二水素カルシウム混合物の調製
22℃の温度のリン酸(34.0%、3L)を、工程1由来の水酸化カルシウム混合物の一部に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH1を有した。
22℃の温度のリン酸(34.0%、3L)を、工程1由来の水酸化カルシウム混合物の一部に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH1を有した。
工程3:三相性リン酸カルシウム(10%ヒドロキシアパタイト、60%β−リン酸三カルシウム、30%非晶質リン酸カルシウム)の調製
工程2由来のリン酸二水素カルシウム混合物を、工程1の水酸化カルシウム混合物の別の部分に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加し、得られた反応混合物はpH10を有した。次いで、反応混合物を200℃で乾燥させて、三相性リン酸カルシウム(10%ヒドロキシアパタイト、60%β−リン酸三カルシウム、30%非晶質リン酸カルシウム)を生産した。凝集した粒子を機械的に破壊し、得られた粒子をX線回折解析のために325メッシュ(0.044mm)の篩いにかけた。
工程2由来のリン酸二水素カルシウム混合物を、工程1の水酸化カルシウム混合物の別の部分に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加し、得られた反応混合物はpH10を有した。次いで、反応混合物を200℃で乾燥させて、三相性リン酸カルシウム(10%ヒドロキシアパタイト、60%β−リン酸三カルシウム、30%非晶質リン酸カルシウム)を生産した。凝集した粒子を機械的に破壊し、得られた粒子をX線回折解析のために325メッシュ(0.044mm)の篩いにかけた。
表1は、三相性リン酸カルシウム(10%ヒドロキシアパタイト、60%β−リン酸三カルシウム、30%非晶質リン酸カルシウム)の性質を示す。粒度分布を、フラウンホーファー法を使用したレーザー回折および走査型電子顕微鏡法によって測定した。最小粒子のサイズを、X線回折を使用したシェラー法によって計算した。アスペクト比を、走査型電子顕微鏡法によって測定した。比表面積、ミクロ細孔およびメソ細孔の容積、ならびに平均細孔直径を、窒素比重びん測定法によって決定した。
実施例5.ヒドロキシアパタイト組成物の代替調製
工程1:水酸化カルシウム混合物の調製
水(5L)を40〜60℃の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(436.7g、7.79mol、純度95%、米国特許出願第62/232,999号に提供された手順にしたがって調製)を強く撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
水(5L)を40〜60℃の温度に冷却し、次いで、反応性酸化カルシウム(436.7g、7.79mol、純度95%、米国特許出願第62/232,999号に提供された手順にしたがって調製)を強く撹拌しながら添加した。反応完了後、得られた水酸化カルシウム混合物を、100メッシュ(0.149mm)フィルターで濾過し、22℃に冷却した。
工程2:リン酸二水素カルシウム混合物の調製
22℃の温度のリン酸(30.5%、5L)を、水酸化カルシウム混合物に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH1を有した。
22℃の温度のリン酸(30.5%、5L)を、水酸化カルシウム混合物に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加した。得られたリン酸二水素カルシウム混合物はpH1を有した。
工程3:ヒドロキシアパタイト組成物の調製
工程2のリン酸二水素カルシウム混合物を、工程1の第1の水酸化カルシウム混合物に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加し、得られた反応混合物はpH7を有した。次いで、反応混合物を200℃で乾燥させた。得られた凝集粒子を機械的に破壊し、粒子を325メッシュ(0.044mm)の篩にかけた。次いで、粒子を950℃で4時間か焼してヒドロキシアパタイト組成物を生産し、これを、X線回折を使用して解析した。
工程2のリン酸二水素カルシウム混合物を、工程1の第1の水酸化カルシウム混合物に、30g/分の速度にて毎分200回転で撹拌しながら添加し、得られた反応混合物はpH7を有した。次いで、反応混合物を200℃で乾燥させた。得られた凝集粒子を機械的に破壊し、粒子を325メッシュ(0.044mm)の篩にかけた。次いで、粒子を950℃で4時間か焼してヒドロキシアパタイト組成物を生産し、これを、X線回折を使用して解析した。
実施例6.非晶質リン酸カルシウム
非晶質リン酸カルシウムの別の試料を、実施例1と併せて上記で考察するように調製し、その性質を測定した。表2は、測定結果をまとめている。粒度分布を、フラウンホーファー法を使用したレーザー回折および走査型電子顕微鏡法によって測定した。最小粒子のサイズを、X線回折を使用したシェラー法によって計算した。アスペクト比を、走査型電子顕微鏡法によって測定した。比表面積、ミクロ細孔およびメソ細孔の容積、ならびに平均細孔直径を、窒素比重びん測定法によって決定した。
図4は、散乱角(2θ)の関数としての強度(CPS)として示した二酸化炭素飽和後の非晶質リン酸カルシウムのX線ディフラクトグラム(曲線402)と重ね合わせた非晶質リン酸カルシウムの試料のX線ディフラクトグラム(曲線400)である。プロット400中のピーク強度と402中のピーク強度との間に有意差は認められない。
図5Aおよび5Bは、それぞれ拡大係数500倍および1500倍の非晶質リン酸カルシウムのSEM顕微鏡写真である。画像は、非晶質リン酸カルシウムが小型の不規則な形状の粒子およびプレートからなり、凝集体を形成していることを示す。ナノメートル規模の粒子も認められ、これらの粒子はより大きな不規則な粒子に接着してクラスターを形成している。これらのクラスターは、認められた多孔度と考え合わせると、非晶質リン酸カルシウムの大きい表面積に寄与すると考えられる。
実施例7.三相性リン酸カルシウム
10%ヒドロキシアパタイト、60%β−リン酸三カルシウム、および30%非晶質リン酸カルシウムからなる三相性リン酸カルシウムの試料を、実施例4と併せて上記で考察した方法を使用して調製し、その性質を測定した。表3は結果をまとめている。粒度および分布を、レーザー回折(CILAS)によって測定し、SEM測定によって確認した。最小粒子のサイズを、X線回折を使用したシェラー法によって計算した。アスペクト比を、走査型電子顕微鏡法によって測定した。比表面積、ミクロ細孔およびメソ細孔の容積、ならびに平均細孔直径を、窒素比重びん測定法によって決定した。
表3で報告したミクロ細孔およびメソ細孔の比表面積、容積、および平均直径を、BET技術を使用して決定した。これらのデータは、三相性リン酸カルシウムと二相性リン酸カルシウムとの間の細孔の有意差、比表面積、容積、平均直径、および分布を示す。三相性リン酸カルシウムの表面積を、BETの式を使用して計算した。窒素を使用したBET法が、この試料に相当するタイプの等温線を持つ材料の表面積を計算するには評価の正確さが一様ではないので、これらの結果から、粒子が大きい表面積を有することが定性的に確認される。図6は、走査型電子顕微鏡を使用して作成された顕微鏡写真であり、生産された三相性リン酸カルシウム組成物の一部を示す。
実施例8.二相性リン酸カルシウム
表4中の粒度分布を、シェラーの式を使用したSEM画像およびレーザー回折(CILAS)測定から決定した。SEMおよびレーザー回折によって提供されたサイズ分布間の比較により、2つの結果の間に粒子クラスターを生じる可能性のある有意差が示された。1つのあり得る説明としては、ゼータ電位(例えば、表面電荷による凝集因子)に起因する粒子集塊によること、および個別の粒子でなく集塊体の予想される測定サイズによることである。粒子密度を、窒素比重びん法によって測定し、この密度は、多孔度が極端に低い場合にヒドロキシアパタイトの理論密度(例えば、3.2g/cm3)に近づいた。
ミクロ細孔およびメソ細孔の比表面積、容積、および平均直径を、BET法を使用して決定した。表面積を、BETの式によって計算した(3試料の平均を分析した)。窒素を使用したBET法が、全材料の表面積を計算するには評価の正確さが一様でないことに留意すべきである。したがって、これらの結果は粒子が大きい表面積を有したことを立証しているが、これらの結果は定性的に解釈する場合に最も有用である。
図7Aおよび7Bは、倍率が50倍(図7A)および5000倍(図7B)での二相性リン酸カルシウム試料のSEM画像である。これらの顕微鏡写真は、二相性リン酸カルシウム粉末が粒子および小型のプレートを有し、これらが不規則な形状のクラスターを形成していることを証明している。ナノスケールの粒子が認められ、この粒子はより大きな粒子に接着して粒子の表面積が増加し得る。スクリーニングによって得られた二相性リン酸カルシウム組成物の粒子のサイズ分布が38μmと53μmとの間であることを、SEMによって得られた測定値によって確認した。
実施例9.X線回折測定
実施例10.ヒドロキシアパタイト含有組成物の合成
CP14〜CP28と命名した一連のリン酸カルシウム組成物を、本明細書中に開示の方法を使用して調製した。2500Lの脱イオン水に溶解した250kg反応性CaOの溶液を調製し、20分間撹拌して完全に溶解し、Ca(OH)2溶液を形成させた。溶液を、100メッシュ(149μm)、170メッシュ(88μm)、および270メッシュ(53μm)の各篩を使用して濾過した。406kgの脱イオン水に406kgの固体リン酸を溶解することによって50%リン酸溶液も調製した。リン酸溶液を、6.8kg/分の速度で一定に撹拌しながら全部で120分の期間にわたってCa(OH)2溶液に添加した。形成されたリン酸二水素カルシウムスラリーの最終pHは、1.66であった。
第2のCa(OH)2溶液を、250kgの反応性CaOを3000kgの脱イオン水に一定に撹拌しながら20分の期間にわたって溶解することによって調製した。第2のCa(OH)2溶液を、100メッシュ(149μm)、170メッシュ(88μm)、および270メッシュ(53μm)の各篩を使用して濾過した。
次いで、第2のCa(OH)2溶液をリン酸二水素カルシウムスラリーに、撹拌を制御しながら17.4kg/分の速度で150分間添加した。得られたスラリーの最終pHは、7.4であった。スラリーの撹拌を、流動学的平衡が達成されるまで、いかなるさらなる試薬も添加することなくさらに30分間継続した。
試料を上記で考察するように乾燥させた。乾燥中、試料CP14〜CP20を熱衝撃に供して、多孔度および比表面積を調整した。試料CP14を、325メッシュフィルターを使用して篩いにかけて、平均粒度が44ミクロンの試料を得た。試料CP17〜CP19も篩いにかけて、0.3mm〜3.35mmの範囲内の粒子分布を有する試料を得た。試料CP20を粉砕に供して、粒度が2mmと4mmとの間の試料を得た。全試料を、200℃のガスオーブン中で最初に乾燥させ、次いで、電気オーブン中にて300℃で6時間乾燥させた。次いで、試料CP15およびCP16をさらなる熱処理に供した;CP15を500℃の温度に1時間加熱し、一方、CP16を600℃の温度に1時間加熱した。
いくつかの試料のSEM画像を得た。図8A〜8Cは、異なる倍率の試料CP14のSEM画像であり、図9Aおよび9Bは、試料CP15のSEM画像であり、図10Aおよび10Bは、試料CP16のSEM画像であり、図11は、試料CP19のSEM画像であり、図12は、試料CP20のSEM画像である。図13は、試料CP14のX線散乱を示すプロットであり、図14は、試料CP14の赤外吸収測定を示すプロットである。
BET法を使用し、Autosorb−6B装置およびデガッサー(Quantachrome Instruments,Germany)を用いて試料CP14〜CP19に対して比表面積の測定を行った。吸着および脱着を測定するために窒素を使用した。試料CP14〜CP19の比表面積の測定値(単位m2/g)は、それぞれ、62.4、47.5、39.7、60.5、61.5、および60.8であった。同一の分析方法を使用して比多孔度も測定した;各試料の比多孔度は、25cm3/gと35cm3/gとの間であった。
表6は、多様なHA含有試料の反応条件および性質を示す。表6では、「単離後処理」カラム中のデータは、試料の任意の単離後処理の温度および持続時間を示す。「相」カラム中のデータは、試料中で同定された相を示し、「結晶性(%)」カラム中のデータは、試料についての結晶性の測定値を示し、「表面積(m2/g)」カラム中のデータは、試料の表面積の測定値(単位m2/g)に相当する。
実施例11.単相性組成物および多相性組成物の合成
CP02〜CP11およびRWK03〜RWK21と命名した一連のリン酸カルシウム組成物を、本明細書中に開示の一般的方法を使用して調製した。
試料CP02〜CP11を調製するために、1800Lの脱イオン水に溶解した163kgの反応性CaOの溶液を調製し、20分間撹拌して完全に溶解し、Ca(OH)2溶液を形成させた。溶液を、100メッシュ(149μm)および140メッシュ(105μm)の篩を使用して濾過した。1536kgの脱イオン水に512kgの固体リン酸を溶解することによって50%リン酸溶液も調製した。リン酸溶液を、12.8kg/分の速度で一定に撹拌しながら全部で40分の期間にわたってCa(OH)2溶液に添加した。形成されたリン酸二水素カルシウムスラリーの最終pHは2.30であった。
第2のCa(OH)2溶液を、250kgの反応性CaOを3000kgの脱イオン水に一定に撹拌しながら20分の期間にわたって溶解することによって調製した。第2のCa(OH)2溶液を、100メッシュ(149μm)および140メッシュ(105μm)の各篩を使用して濾過した。
次いで、第2のCa(OH)2溶液をリン酸二水素カルシウムスラリーに、撹拌を制御しながら150分間添加した。第2のCa(OH)2溶液の添加後、スラリーの撹拌を停止した。
試料を、上記で考察するように、200℃と400℃との間の温度で乾燥させた。次いで、一定の試料(CP02、CP03、CP04、CP06、CP08、CP10、およびCP11)を、以下の通り、700〜800℃の温度で1〜2時間の期間の単離後加熱に供した:CP02、700℃、1.5時間;CP03、800℃、2時間;CP04、700℃、1時間;CP06、800℃、1時間;CP08、800℃、1時間;CP10、700℃、1時間;およびCP11、800℃、2時間。
上で考察するように測定した多様な試料の性質を、表7に示す。表7では、「最終pH」カラム中のデータは、第2のCa(OH)2溶液を添加した後の生成物溶液のpHを示し、「単離後処理」カラム中のデータは、単離後にリン酸カルシウム生成物が供される加熱温度および加熱時間に相当する。「相」カラム中のデータは、多様な試料中で同定された相を示し、「結晶性(%)」カラム中のデータは、試料についての結晶性の測定値に相当する。
試料RWK03〜RWK21を調製するために、1630Lの脱イオン水に溶解した163kgの反応性CaOの溶液を調製し、20分間撹拌して完全に溶解し、Ca(OH)2溶液を形成させた。溶液を、100メッシュ(149μm)の篩を使用して濾過した。916kgの脱イオン水に458kgの固体リン酸を溶解することによって50%リン酸溶液も調製した。リン酸溶液を、11.45kg/分の速度で一定に撹拌しながら全部で40分の期間にわたってCa(OH)2溶液に添加した。形成されたリン酸二水素カルシウムスラリーの最終pHは2.65であった。
第2のCa(OH)2溶液を、250kgの反応性CaOを2500kgの脱イオン水に一定に撹拌しながら20分の期間にわたって溶解することによって調製した。第2のCa(OH)2溶液を、100メッシュ(149μm)の篩を使用して濾過した。
次いで、第2のCa(OH)2溶液をリン酸二水素カルシウムスラリーに、撹拌を制御しながら150分間添加した。第2のCa(OH)2溶液の添加後、スラリーの撹拌を停止した。試料を、上記で考察するように、200℃と400℃との間の温度で乾燥させた。
上で考察するように測定した多様な試料の性質を、表8に示す。表8では、「最終pH」カラム中のデータは、第2のCa(OH)2溶液を添加した後の生成物溶液のpHを示し、「相」カラム中のデータは、多様な試料中で同定された相を示し、「表面積(m2/g)」カラム中のデータは、試料の表面の測定値(単位m2/g)に相当する。
実施例12.反応条件の制御された変動
本明細書中に開示の方法を使用して生産したリン酸カルシウム組成物の化学的性質および物理的性質に及ぼす化学量論の変動の影響を調査するために、多数のリン酸カルシウム組成物を、さまざまな条件下で調製した。試薬および条件を、以下の表6にまとめている。
試料1〜76の各々を調製するために、上で考察するように2つのCaO水溶液を調製した。第1の溶液をH3PO4溶液と合わせ、図3に示すように各工程で合わせた溶液のpHを低下させた。次いで、第2のCaO水溶液を添加し、生成物溶液のpHを表9のカラム2に示す値まで上昇させた。
表9中の試料1〜76の各々について、表のカラム中のデータは、使用した多様な反応条件および生成物の性質を示す。「最終pH」カラム中のデータは、第2のCa(OH)2溶液由来の全てのCa(OH)2をCa(H2PO4)2の水性スラリーに添加した後の生成物スラリーの最終pHを示す。「加熱」カラム中のデータは、得られたリン酸カルシウム組成物の任意の単離後熱処理の条件を示し、この条件には、組成物の粒子を加熱した温度およびその温度での熱処理の持続時間が含まれる。
「相」カラム中のデータは、合成された各々の生成物のリン酸カルシウム組成物中に認められた相を示す。いくつかの組成物は単相性と認められ、一方で、他の組成物は二相性または三相性であった。百分率は、組成物全体における各相化合物の相対量を示し、頭字語は相の化学的性質を示す。各試料において、多様な相を、X線回折法、赤外分光法、および/またはラマン分光法を使用して同定した。X線回折実験では、各相は、相について「フィンガープリント」の機能を果たす散乱ピークの固有のパターンを生成する。同様に、赤外線分光法およびラマン分光法の両方おいて、各相は、相内の原子間で振動共鳴を示す固有のピーク組を生成し、このピーク組は同様に相の同定のためのフィンガープリントとして機能する。
「結晶性(%)」カラム中のデータは、X線回折技術を使用して各試料について測定した結晶性%を示す。「SSA(m2/g)」カラム中のデータは、BET法を使用した乾燥N2吸着によって測定した試料についての比表面の測定値(単位m2/g)に相当する。
(1)リン酸カルシウム組成物の相の制御
前述の実施例で示したデータから明らかなように、本明細書中に開示の方法は、単相性、二相性、および三相性のリン酸カルシウム組成物の制御された合成をもたらす。本方法はまた、種々の異なるリン酸カルシウム化合物を二相性および三相性の組成物中の構成相として合成することが可能である。さらに、本方法は、異なる相の相対的比率を体系的に変動させることが可能である。
前述の実施例で示したデータから明らかなように、本明細書中に開示の方法は、単相性、二相性、および三相性のリン酸カルシウム組成物の制御された合成をもたらす。本方法はまた、種々の異なるリン酸カルシウム化合物を二相性および三相性の組成物中の構成相として合成することが可能である。さらに、本方法は、異なる相の相対的比率を体系的に変動させることが可能である。
例えば、表9中の試料9、10、12〜15、および42〜44はそれぞれ、純粋なヒドロキシアパタイトから形成されたリン酸カルシウム組成物に相当する。これらの試料のうちで、最終pHおよび単離後熱処理が異なっていた。しかし、組成物を生産するために使用したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比で共通の単相性生成物が得られたが、一定の物理的性質が異なっていた。
表9中の試料1〜4はそれぞれ、純粋なβ−TCPから形成されたリン酸カルシウム組成物に相当する。同様に、これらの試料のうちで、単離後熱処理が異なっていたが、組成物を生産するために使用したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比で、同一の化学的独自性を有し、且つ一定の物理的性質のみが異なる単相性生成物が得られた。
異なる相を有する二相性リン酸カルシウム組成物を容易に形成することもできる。例えば、表9中の試料5〜7、20、21、23、25、27、33、37、および40はそれぞれ、β−TCP相およびHA相を有する二相性リン酸カルシウム組成物に相当する。これらの試料のうちで、β−TCPの比率は5%から78%まで変動し、HAの比率は95%から22%まで変動した。多様な試料間での相組成のこの変動は、主に、組成物を生産するために使用したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比が異なることに起因していた。この変動はまた、高温での試料の単離後処理に一部起因しており、この処理により、二相性生成物および三相性生成物の相組成がわずかにシフトする傾向があった。これらの試料ならびに上で考察した純粋な単相性のβ−TCP組成物およびHA組成物由来のデータに基づいて、β−TCP相およびHA相を特徴とする二相性リン酸カルシウム組成物を、β−TCPおよびHAの相対的比率が組成物中でほぼ0%〜ほぼ100%の任意の量であり得るように、組成物を生産するために使用した、適切に変動したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比および高温での組成物の単離後処理を手段とした本明細書中に開示の方法を使用して生産することができる。表9中の具体例に相当する値の間のイオンモル比の内挿および/または外挿により、二相性リン酸カルシウム組成物中のβ−TCPおよびHAの任意の所望の相分布に近い組成物が名目上得られる。
表9中の試料30、46、49、51、53、58、60、65、および70はそれぞれ、DCPA相およびHA相を有し、各相の相対的比率が試料間で変動している二相性リン酸カルシウム組成物に相当する。試料のうちで、DCPAの相対的比率は、5%から70%まで変動し、HAの相対的比率は95%から30%まで変動する。上で考察したβ−TCPおよびHAの二相性組成物と同様に、DCPAおよびHAの両方の相対的比率を、組成物を生産するために使用したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比について適切な値を選択することによって体系的な様式で調整することができ、単離後処理温度を変化させることによってより小規模で調整することができる。表9中の具体例に相当する値の間のイオンモル比の内挿および/または外挿により、二相性リン酸カルシウム組成物中のDCPAおよびHAの任意の所望の相分布(各相の相対的比率がほぼ0%〜ほぼ100%の任意の量である)に近い組成物が名目上得られる。
表9中の試料19および22は、DCPDおよびHAの相を有する二相性リン酸カルシウム組成物に相当する。2つの試料中の相の相対的比率は、ほぼ正確に逆である。試料19および22中に示した比率の中間の量、または2つの試料中の比率より多いかもしくはより少ない量のDCPDおよびHAを有する二相性組成物を、表9中の試料19および22の組成物を生産するために使用したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比の内挿または外挿によって容易に調製することができる。この様式では、DCPDおよびHAの任意の所望の相分布(各化合物のほぼ0%〜ほぼ100%)に近い二相性組成物を、本明細書中に開示の方法を使用して生産することができる。
3つの各相の相対的比率が体系的に変動した三相性リン酸カルシウム組成物を、本明細書中に開示の方法を使用して生産することもできる。表9中の試料18、26、29、31、32、34、35、および47は、DCPD相、DCPA相、およびHA相(各相の相対的比率は試料間で変動する)を有する三相性リン酸カルシウム組成物に相当する。多様な試料のうちで、DCPD相の相対的割合は10%から75%まで変動し、DCPA相の相対的割合は5%から70%まで変動し、HA相の相対的割合は10%から60%まで変動する。多様な試料のうちで、3つの相のうちのいずれかが最大濃度で存在し得る(例えば、試料18において75%DCPD、試料31において70%DCPA、および試料32において60%HA)。さらに、組成物の2つの副構成要素の相対量を、体系的に変動させることもできる。例えば、DCPDが主な相である試料18および26を比較すると、DCPAまたはHAのいずれかを次に豊富な相にすることができる。DCPAが主な相である試料35および47を比較すると、DCPDまたはHAのいずれかを次に豊富な相にすることができる。HAが比較的高濃度で存在する試料29および47を比較すると、DCPDまたはDCPAのいずれが最高濃度で存在し得る。
三相性リン酸カルシウム組成物中のDCPD、DCPA、およびHAの相対的比率は、組成物を生産するために使用したCa2+イオンのH2PO4 −イオンに対するモル比によってかなりの程度まで決定される。したがって、組成物中の3つの相の相対的比率を、モル比について適切な値を選択することによって体系的な様式で調整することができ、単離後処理温度を変化させることによってより小規模で調整することができる。表9中の具体例に相当する値の間のイオンモル比の内挿および/または外挿により、三相性リン酸カルシウム組成物中のDCPD、DCPA、およびHAの任意の所望の相分布(各相の相対的比率がほぼ0%〜ほぼ100%の任意の量である)に近い組成物が名目上得られる。
(2)リン酸カルシウム組成物の表面積の制御
本明細書中に開示の方法にしたがって生産されたリン酸カルシウム組成物の表面積を、多様な方法で制御することができる。組成物の比表面積は、組成物の粒子中の細孔およびチャネルの存在に直接関連する。一般に、かかる細孔およびチャネルの数が多いほど、生成物の組成物の表面積が大きくなる。
本明細書中に開示の方法にしたがって生産されたリン酸カルシウム組成物の表面積を、多様な方法で制御することができる。組成物の比表面積は、組成物の粒子中の細孔およびチャネルの存在に直接関連する。一般に、かかる細孔およびチャネルの数が多いほど、生成物の組成物の表面積が大きくなる。
組成物の多孔度、したがって、表面積を、化学的および物理的に調整することができる。組成物の表面積を増加させるために、生成物の粒子の多孔度を、粒子を、上に考察した物理的熱衝撃処理(蒸気が粒子内部から開放されるように粒子構造体内に細孔を導入する)に供することによって増加させることができる。複数の熱衝撃処理を使用して生成物の粒子の多孔度を増加させることができ、その結果、生成物の組成物の表面積を広い範囲にわたって体系的に制御することができる。
生成物の組成物の多孔度および表面積を、生成物のスラリーの最終pHを調整し、リン酸二水素系中間体種に添加されるCa(OH)2溶液の量を制御することによって制御することもできる。一般に、より高いpH値で形成された組成物ほどより小さい細孔を有し、より小さい凝集体の表面積を有する。添加されるCa(OH)2溶液の量を変化させることによるスラリーのpHの調整により、生成物の組成物の比表面積の制御のための化学的方法が得られる。
本明細書中に開示の例によって証明されるように、広範囲の比表面積を有する組成物を、上記の方法を使用して生産することができる。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書中に開示のように生産されたリン酸カルシウム組成物の表面積は、30m2/gまたはそれを超える(例えば、40m2/gまたはそれを超える、50m2/gまたはそれを超える、60m2/gまたはそれを超える、70m2/gまたはそれを超える、80m2/gまたはそれを超える、85m2/gまたはそれを超える、90m2/gまたはそれを超える)。
広範囲の比多孔度を有する組成物も生産することができる。一定の実施形態では、例えば、本明細書中に開示のように生産されるリン酸カルシウム組成物の多孔度は、20cm3/gまたはそれを超える(例えば、25cm3/gまたはそれを超える、30cm3/gまたはそれを超える、35cm3/gまたはそれを超える、40cm3/gまたはそれを超える、45cm3/gまたはそれを超える、50cm3/gまたはそれを超える、またはこれらをさらに超える)。
(3)リン酸カルシウム組成物の結晶性の制御
本明細書中に開示の方法を使用して、体系的に制御された結晶性を有する種々の異なる単相性、二相性、および三相性のリン酸カルシウム組成物を生産することができる。一般に、生成物の組成物の結晶性は、組成物の化学的性質、単離後処理温度(もしあれば)、および単離後処理時間に依存する。典型的には、単離後処理温度が上昇するにつれて、生成物の組成物の結晶性が増加する。同様に、処理時間が増加するにつれて、組成物の結晶性が増加する。
本明細書中に開示の方法を使用して、体系的に制御された結晶性を有する種々の異なる単相性、二相性、および三相性のリン酸カルシウム組成物を生産することができる。一般に、生成物の組成物の結晶性は、組成物の化学的性質、単離後処理温度(もしあれば)、および単離後処理時間に依存する。典型的には、単離後処理温度が上昇するにつれて、生成物の組成物の結晶性が増加する。同様に、処理時間が増加するにつれて、組成物の結晶性が増加する。
表9中の試料は、種々の異なる生成物についての結晶性に関する制御および選択性を証明している。例えば、試料1〜4は、純粋なβ−TCPから形成された単相性カルシウム組成物に相当する。単離後の処理温度および処理時間の増加により、生成物の結晶性は、96.35%から99.30%まで変動し得る。
同様に、試料9、10、および12〜14は、純粋なHAから形成された単相性リン酸カルシウム組成物に相当する。試料のうちで、単離後の処理温度および処理時間の増加により、生成物の結晶性が体系的な様式で49.94%から91.48%まで変化する。
生成物の結晶性を、多相性生成物の組成物の単離後の処理温度および処理時間を制御することによって体系的に調整することもできる。試料5〜8および39は、β−TCP相およびHA相を有する二相性生成物の組成物に相当する。これらの試料の結晶性は、制御された様式で78.31%から96.74%まで変動する。
二相性および三相性の生成物の組成物について、同一の一般的原理の適用(単離後処理温度および処理時間の増加)により、典型的には、生成物の結晶性が増加する。しかし、これらのより複雑な組成物では、生成物の結晶性はまた、存在する多様な相の相対的比率およびこれらの相の化学的性質に依存する。さらに、単離後加熱は、組成物中に存在する相の化学的性質および相対的比率を改変することができる。したがって、例えば、試料26、34、および35は、それぞれ、DCPD相、HA相、およびDCPA相を有する三相性組成物に相当する。200℃で処理した試料26では、DCPD:HA:DCPA比は60:30:10であり、結晶性は40.46%であった。200℃で処理した試料34では、DCPD:HA:DCPA比は60:15:25であり、結晶性は74.80%であった。250℃で処理した試料35では、DCPD:HA:DCPA比は50:20:30であり、結晶性は66.01%であった。試料26および34を比較すると、生成物の組成物中のHAの相対的割合は減少し、DCPAの割合は増加し、それにより、生成物の結晶性が増加した。試料34および35を比較すると、試料35では試料34に対して生成物の組成物中のHAの相対的割合が増加し、一方、DCPDの相対的割合は低下した。したがって、試料35をわずかに高い温度で処理しても試料35の結晶性は試料34に対して低下した。
他の全ての因子が等しい場合、単離後の処理温度および処理時間を増加させるとより高い結晶性の生成物の組成物が得られ、表6中に示す試料の処理条件の間の内挿および処理条件からの外挿により、多種多様な単相性、二相性、および三相性の生成物の組成物について所望の結晶性レベルを有する生成物を得ることができる。一般に、本明細書中に開示の方法にしたがって生産されたリン酸カルシウム組成物の結晶性は、40%またはそれを超え得る(例えば、50%またはそれを超え得る、60%またはそれを超え得る、70%またはそれを超え得る、80%またはそれを超え得る、90%またはそれを超え得る、95%またはそれを超え得る、98%またはそれを超え得る、99%またはそれを超え得る、99.5%またはそれを超え得る)。
(4)リン酸カルシウム組成物の粒度/アスペクト比の制御
本明細書中に開示の方法を使用して、高いアスペクト比のナノメートルサイズの個別の粒子から形成されたリン酸カルシウム組成物を生産することができる。ナノメートルサイズの粒子は、粒子が他の化学物質のためのホストとして作用し、生物に注入またはそうでなければ導入された場合に分解するような多くの用途に有利であり得る。ナノメートルにサイズ範囲が制御された粒子を生産することにより、粒子のin vivo分解速度を制御することができる。さらに、高いアスペクト比のリン酸カルシウム粒子は、より小さいアスペクト比のより嵩高い粒子よりも体腔をより容易に流れるので、有利である。そのようなものとして、高いアスペクト比のリン酸カルシウム粒子は、他のより低いアスペクト比の粒子よりも一定のin vivo用途により適切であり得る。
本明細書中に開示の方法を使用して、高いアスペクト比のナノメートルサイズの個別の粒子から形成されたリン酸カルシウム組成物を生産することができる。ナノメートルサイズの粒子は、粒子が他の化学物質のためのホストとして作用し、生物に注入またはそうでなければ導入された場合に分解するような多くの用途に有利であり得る。ナノメートルにサイズ範囲が制御された粒子を生産することにより、粒子のin vivo分解速度を制御することができる。さらに、高いアスペクト比のリン酸カルシウム粒子は、より小さいアスペクト比のより嵩高い粒子よりも体腔をより容易に流れるので、有利である。そのようなものとして、高いアスペクト比のリン酸カルシウム粒子は、他のより低いアスペクト比の粒子よりも一定のin vivo用途により適切であり得る。
特に、高いアスペクト比のリン酸カルシウム粒子は、生物学的構造体(歯および骨など)中の一定のリン酸カルシウムの天然形態に類似の形状を有する。そのようなものとして、高いアスペクト比の粒子は、有利な生体模倣性を有し、この粒子を、天然に存在するリン酸カルシウム化合物の代替物として使用することができる。高いアスペクト比の粒子の性質は、生物学的構造体中のその天然に存在する対応物の性質を模倣する。特に、高いアスペクト比の形状により、血液および他の体液中の有機材料が粒子を透過することができると同時に、細胞の再生および成長のための適切に密度の高い足場を提供するような特定の範囲の多孔度を有する粒子が得られる。そのようなものとして、本明細書中に開示のように生産された高いアスペクト比のリン酸カルシウム粒子は、バイオインテグレーションが重要な検討事項である用途に特に有用である。
本明細書中に開示のリン酸カルシウム組成物の粒子は、その最大寸法を特徴とし、この最大寸法は、粒子の二次元画像で測定した場合、粒子表面上の任意の2点間の最も大きな直線距離に相当する。本明細書中に記載のいくつかの試料の粒子のSEM画像の例を、図8A〜8C、9A〜9B、および10A〜10Bに示す。これらの図では、粒子は、一般的に細長い形状の非常に小型の結晶として形成される。一般に、本明細書中に開示の方法にしたがって調製されたリン酸カルシウム組成物の粒子は、100nmと500nmとの間(例えば、100nmと400nmとの間、100nmと300nmとの間、150nmと400nmとの間、150nmと300nmとの間、175nmと400nmとの間、175nmと300nmとの間、200nmと400nmとの間)の平均最大寸法を有し得る。
粒子のアスペクト比は、粒子の二次元画像の平面中の粒子の最大寸法(上で考察するように測定)の、前述の最大寸法に直交する方向のその最大の寸法に対する比である。最大粒子寸法と同様に、粒子のアスペクト比を、SEM画像などの粒子の画像から決定することができる。図8A〜8C、9A〜9B、および10A〜10Bに示すように、本明細書中に開示の方法を使用して、粒子の平均アスペクト比が比較的より大きい粒子組成物を生産することができる。例えば、本明細書中に開示の方法にしたがって調製したリン酸カルシウム組成物の粒子は、50:1またはそれを超える(例えば、75:1またはそれを超える、100:1またはそれを超える、150:1またはそれを超える、200:1またはそれを超える、250:1またはそれを超える、300:1またはそれを超える)の平均アスペクト比を有し得る。高温での単離後処理により、典型的には、より高いアスペクト比の粒子が得られる。温度上昇および/または処理時間の増加により、より高い平均アスペクト比を有する粒子組成物を生産することができる。
他の実施形態
多くの実施形態を記載してきた。にもかかわらず、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく種々の改変がなされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
多くの実施形態を記載してきた。にもかかわらず、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく種々の改変がなされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
Claims (29)
- 第1のカルシウムイオン濃度を含む第1の水酸化カルシウム溶液、および第2のカルシウムイオン濃度を含む第2の水酸化カルシウム溶液を得る工程;
リン酸溶液を前記第1の水酸化カルシウム溶液に添加して、リン酸二水素カルシウム粒子の水性懸濁液を含む合わせた溶液を生成する工程;および
前記第2の水酸化カルシウム溶液を前記合わせた溶液に添加してリン酸カルシウム材料の粒子の水性懸濁液を含む生成物溶液を形成する工程
を含む、方法。 - 前記第1および第2のカルシウムイオン濃度が異なる、請求項1に記載の方法。
- 前記第1の水酸化カルシウム溶液を得る工程が、酸化カルシウムを含む第1の複数の粒子を水と合わせる工程を含み、前記粒子が少なくとも10.0m2/gの比表面積を有する、請求項1に記載の方法。
- 前記第2の水酸化カルシウム溶液を得る工程が、第2の複数の粒子を水と合わせる工程を含む、請求項3に記載の方法。
- 前記粒子が少なくとも15.0cm3/gの比多孔度を有する、請求項3に記載の方法。
- 前記合わせた溶液のpHが1と2との間になるまで前記リン酸溶液を前記第1の水酸化カルシウム溶液に添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記合わせた溶液のpHが約1.66になるまで前記リン酸溶液を前記第1の水酸化カルシウム溶液に添加する工程を含む、請求項6に記載の方法。
- 前記リン酸溶液を3つの部分に分けて前記第1の水酸化カルシウム溶液に添加する工程を含み、前記3つの部分のうちの第1の部分の添加後、前記第1の水酸化カルシウム溶液のpHが8.5と9.5との間である、請求項1に記載の方法。
- 前記第1の水酸化カルシウム溶液と前記リン酸溶液の前記第1の部分とを合わせることが、リン酸イオンおよび重リン酸イオンの第1の緩衝液を形成する、請求項8に記載の方法。
- 前記3つの部分のうちの第2の部分の添加後、前記第1の水酸化カルシウム溶液のpHが3.5と4.5との間である、請求項9に記載の方法。
- 前記第1の水酸化カルシウム溶液と前記リン酸溶液の前記第1および第2の部分とを合わせることが、重リン酸イオンおよびリン酸二水素イオンの第2の緩衝液を形成する、請求項10に記載の方法。
- 前記生成物溶液のpHが6.5と7.5との間である、請求項1に記載の方法。
- 前記生成物溶液のpHが11.5と12.5との間である、請求項1に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料を前記生成物溶液から分離する工程;および
前記リン酸カルシウム材料を少なくとも700℃の温度に少なくとも1時間の期間、加熱する工程
を含む、請求項1に記載の方法。 - 前記リン酸カルシウム材料を少なくとも800℃の温度に加熱する工程を含む、請求項14に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料を少なくとも900℃の温度に加熱する工程を含む、請求項14に記載の方法。
- 前記期間が1.5時間と2.5時間との間である、請求項14に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料の温度を15分未満の期間で少なくとも450℃上昇させて前記リン酸カルシウム材料から水蒸気を排出させることによる熱衝撃処理に前記リン酸カルシウム材料を供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料が2つの相を含み、各相が異なるリン酸カルシウム化合物に相当する、請求項1に記載の方法。
- 前記相のうちの第1の相がヒドロキシアパタイトに相当し、前記相のうちの第2の相がβ−リン酸三カルシウムに相当する、請求項19に記載の方法。
- 前記相のうちの第1の相がヒドロキシアパタイトに相当し、前記相のうちの第2の相が非晶質リン酸カルシウムに相当する、請求項19に記載の方法。
- 前記相のうちの第1の相がβ−リン酸三カルシウムに相当し、前記相のうちの第2の相が非晶質リン酸カルシウムに相当する、請求項19に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料が3つの相を含み、各相が異なるリン酸カルシウム化合物に相当する、請求項1に記載の方法。
- 前記相のうちの第1の相がヒドロキシアパタイトに相当し、前記相のうちの第2の相がβ−リン酸三カルシウムに相当し、前記相のうちの第3の相が非晶質リン酸カルシウムに相当する、請求項23に記載の方法。
- 前記相のうちの第1の相がリン酸水素カルシウム二水和物に相当し、前記相のうちの第2の相が無水リン酸水素カルシウムに相当し、前記相のうちの第3の相がβ−リン酸三カルシウム一水和物に相当する、請求項23に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料の粒子が80%またはそれを超える結晶性を有する、請求項14に記載の方法。
- 前記結晶性が95%またはそれを超える、請求項26に記載の方法。
- 前記リン酸カルシウム材料の粒子が60m2/gまたはそれを超える比表面積を有する、請求項18に記載の方法。
- 前記比表面積が80m2/gまたはそれを超える、請求項28に記載の方法。
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