JP2018521982A5 - - Google Patents

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必要とする対象に飽満感を誘発し満腹感を持続させる医薬組成物および食品組成物
本発明は、必要とする対象に飽満感を誘発し満腹感を持続させる医薬組成物および食品組成物に関する。
腸内細菌叢の組成と宿主の代謝表現型との間には相関が認められ(Leyら,2006)、「肥満」細菌叢の移植によって肥満(Turnbaughら,2006)および過食症(Vijay−Kumarら,2010)が起こり得ることから、腸内細菌叢が宿主の摂食行動に影響を及ぼし得ることが示唆されている。宿主の食欲に対する腸内細菌の作用の根底にある機序は明らかにされていないが、腸内細菌が摂食量を制御する宿主分子経路を利用している可能性がある。
現時点での摂食量制御のモデルは、摂食の恒常性および快楽の局面を調節するいくつかの脳の回路にシグナルを伝達する腸由来の空腹ホルモンおよび満腹ホルモンに関係している(Berthoud,2011;Inui,1999;MurphyおよびBloom,2006)。とりわけよく知られているのが、視床下部弓状核(ARC)を起点とする食欲抑制経路および食欲促進経路であり、それぞれ、室傍核(PVN)で中継されるプロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンおよび神経ペプチドY(NPY)/アグーチ関連タンパク質(AgRP)ニューロンを含む(Atasoyら,2012;Cowleyら,1999;Garfieldら,2015;Shiら,2013)。ARC経路とPVN経路は、扁桃体中心核(CeA)に食欲抑制性の投射を行ってカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を発現する外側腕傍核で合流する(Carterら,2013;Garfieldら,2015).
腸内細菌叢が宿主の食欲制御に及ぼす作用の機序として考えられるものに、腸内細菌叢のエネルギー摂取活動(Turnbaughら,2006)ならびに神経刺激性の伝達物質および代謝産物の産生(Dinanら,2015;ForsytheおよびKunze,2013;Sharonら,2014)がある。本発明者らは、腸内で局所的に、または全身で食欲制御経路に直接作用する細菌タンパク質が関係する証拠を得た。実際、食欲を調節するペプチドホルモンとの配列相同性を示す細菌タンパク質が数種類示されており(Fetissovら,2008)、最近、腸内共生大腸菌(E.coli)の産生するClpBタンパク質が、αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)の抗原模倣体として同定された(Tennouneら,2014)。α−MSHは、メラノコルチン受容体4(MC4R)の活性化により飽満感のシグナル伝達に重要な役割を果たすPOMC由来神経ペプチドである(Cone,2005)。MC4Rを介するα−MSHの食欲抑制作用は、主としてその中枢作用部位によるものとされてきた(Mulら,2013)が、最近の研究では、腸内分泌細胞におけるMC4Rの活性化が、満腹ホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびペプチドYY(PYY)の放出を刺激することが示された(Panaroら,2014)。したがって、腸内細菌由来のα−MSH様分子は、満腹ホルモンを合成させる腸内分泌細胞に直接作用することができる。
本発明は、必要とする対象に飽満感を誘発し満腹感を持続させる医薬組成物および食品組成物に関する。具体的には、本発明は特許請求の範囲によって定められるものである。
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌が、必要とする対象において飽満感を誘発する、満腹感を維持する、摂食量を減少させる、体重増加を制御する、体重減少を刺激するおよび/または体脂肪量/除脂肪量比を減少させることができることを証明した。驚くべきことに、本発明者らは実際に、前記細菌が発現するClpBタンパク質が、細菌投与によって誘発され得る免疫反応とは無関係に、おそらくMCR受容体を介して、飽満感、満腹感および摂食量に直接作用を及ぼすことを示した。
したがって、本発明の一態様は、必要とする対象に飽満感を誘発する方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象に飽満感を誘発するのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象に飽満感を誘発するため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
本発明のさらなる一態様は、必要とする対象の満腹感を持続させる方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象の満腹感を持続させるのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象の満腹感を持続させるため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
したがって、本発明の一態様は、必要とする対象の食餌量を減少させる方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象の食餌量を減少させるのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象の食餌量を減少させるため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
本発明のさらなる一態様は、必要とする対象の摂食量を減少させる方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象の摂食量を減少させるのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象の摂食量を減少させるため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
本発明のさらなる一態様はまた、必要とする対象の体重増加を制御する、特に減少させる方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象の体重増加を制御する、特に減少させるのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象の体重増加を制御する、特に減少させるため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
本発明のさらなる一態様はまた、必要とする対象の体重減少を刺激する方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象の体重減少を刺激するのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象の体重減少を刺激するため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
本発明のさらなる一態様は、必要とする対象の除脂肪量に対する脂肪量の比を減少させる方法であって、対象に有効量のClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する有効量の細菌を投与することを含む、方法に関する。
本発明のまた別の態様は、必要とする対象、特に肥満対象の除脂肪量に対する脂肪量の比を減少させるのに使用するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、特に正常体重または合併症のない体重過多の対象の体脂肪量/除脂肪量比を減少させるため、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を美容目的で非治療的に使用することに関する。
本発明の方法は、ヒト、ペットまたは家畜を対象とするものであり、ペットまたは家畜は、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマおよび/または家禽からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、対象は雄性の対象または雌性の対象である。
いくつかの実施形態では、対象は肥満である。本明細書では、「肥満」は、対象のBMIが好ましくは30を上回っている医学的状態を指す。「BMI」または「体格指数」は、対象の体重を対象の身長の平方で割ったものと定義される。医学で一般に用いられる公式では、尺度の単位がkg/ となる。
いくつかの実施形態では、対象は中等度の肥満である。「中等度の肥満」の対象は、BMIが30〜35の対象を指す。
いくつかの実施形態では、対象は、体格指数が18.5〜30である。
いくつかの実施形態では、対象は肥満ではない。非肥満対象は通常、正常体重である。本明細書では、「正常体重」は、BMIが18.5〜25となる体重を指す。
いくつかの実施形態では、対象は体重過多である。本明細書では、「体重過多」は、BMIが25〜30となる体重を指す。いくつかの実施形態では、対象は健康な体重過多または合併症のない体重過多の対象である。本明細書では、「健康な体重過多」または「合併症のない体重過多」の対象は、体重を直接の原因とする疾患も病態も認められない体重過多の対象を意味する。
いくつかの実施形態では、対象は、減量のための食餌療法を実施しており、かつ/または体重を減らすことを望んでいる。他の実施形態では、対象は、減量のための食餌療法を実施しておらず、かつ/または体重を減らすことを望んでいない。
本明細書で使用される「満腹感」という用語は、個体が、自身の欲求が満たされている、または最小限に抑えられていると感じる、本質的に恒常的状態を指す。個体の満腹感には多数の生理学的要因が影響を及ぼしていると考えられる。例えば、味覚または味、嗅覚または匂い、ならびに胃部膨満感はいずれも、個体が「満腹である」と感じるかどうかに寄与し得る。より具体的には、「満腹感」は、それ以上食べることが抑制された状態であり、食事の間隔および次の食餌で摂取する食物の量を決定する。「満腹感の増大」などは、対照状態よりも満腹感が強く、かつ/または持続することを意味する。
本明細書で使用される「飽満感」という用語は、食餌中に食べることを停止する状態であり、通常、食餌摂取の開始後一定の時間(例えば、20〜30分)以内に起こる/観察される、状態を指す。したがって、本明細書で「飽満感を誘発する」などと言及する場合、対象が食餌中に食物の摂取を停止する傾向を生じさせることを意味する。飽満効果は、食餌終了の時点をスコア化することによって求めることができる。飽満効果は、食餌終了時点の摂取カロリー量が対照よりも有意に少ない、例えば少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%またはそれ超少ない場合などに認められるものである。さらに長期間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ超)にわたって、体重減少または体重変化を対照食と比較してスコア化することができる。一定量の被験組成物を(例えば、1日1回、1日2回またはそれ以上)投与される対象の体重は、対照の対象よりも有意に制御される(減少する、または増加が少なくなる)のが望ましい。本明細書で使用される「対照の対象」は、本発明のプロバイオティクス菌株を投与されなかった対象を指す。
本明細書で使用される「ClpB」という用語は、当該技術分野で一般的な意味を有し、六量体AAA+ATPアーゼのHsp100/ClpBファミリーに属する熱ショックタンパク質F84.1としても知られる。ClpBは、獲得熱耐性ならびにいくつかのグラム陰性およびグラム陽性の病原性細菌、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella turalensis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella thyphimurium)などのビルレンスおよび感染性に不可欠な因子として記載されている。大腸菌(E.coli)K12のシャペロンタンパク質ClpBは熱ショックタンパク質F84.1またはhtpMとしても知られ、857個のアミノ酸からなるタンパク質である。シャペロンタンパク質ClpBは通常、配列番号1を有する大腸菌(E.coli)K12由来シャペロンタンパク質ClpBのアミノ酸配列(2013年11月6日の時点で利用可能なNCBI参照番号NP_417083.1および/または2013年11月6日の時点で利用可能なUniProtKB/Swiss−Prot番号P63284)を含むか、これよりなるものである。シャペロンタンパク質ClpBのアミノ酸配列は通常、配列番号1のアミノ酸配列と96〜100%同一のアミノ酸配列を含むか、またはこれよりなるものである。好ましくは、ClpBのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸540〜550位の配列(ARWTGIPVSR)と96、97%、98%、99%または100%同一である。本願においては、グローバルアライメント(すなわち、2つの配列をその長さ全体にわたって比較すること)を用いて同一性のパーセントを算出する。2つまたはそれ超の配列の同一性を比較する方法は当該技術分野で周知である。例えば、ニードルマン・ヴンシュのグローバルアライメントアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch,1970 J.Mol.Biol.48:443−453)を用いて2つの配列の完全長を考慮したときの最適アライメント(ギャップを含む)を求める「needle」プログラムを使用し得る。needleプログラムは、例えばebi.ac.ukワールドワイドウェブサイトで入手可能である。本発明による同一性のパーセントはEMBOSS:needle(グローバル)プログラムを使用して、「ギャップオープン」パラメータが10.0に等しく、「ギャップ伸長」パラメータが0.5に等しく、、Blosum62行列により算出するのが好ましい。本発明では、ClpBタンパク質は、α−MSHタンパク質を模倣して飽満感を誘発するものである。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のClpBタンパク質は抗α−MSH抗体によって認識される。抗体は通常、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナルウサギ抗α−MSH IgG(1:1000、Peninsula Laboratories社、サンカルロス、カリフォルニア州、米国)などのポリクローナル抗体である。α−MSHのアミノ酸配列は、好ましくは、アミノ酸配列SYSMEHFRWGKPV(配列番号2)(2013年12月2日の時点で利用可能なGen Pept配列ID,PRF:223274)を含むか、またはこれよりなるものである。
配列番号1:
MRLDRLTNKF QLALADAQSL ALGHDNQFIE PLHLMSALLN QEGGSVSPLL TSAGINAGQL RTDINQALNR LPQVEGTGGD VQPSQDLVRV LNLCDKLAQK RGDNFISSEL FVLAALESRG TLADILKAAG ATTANITQAI EQMRGGESVN DQGAEDQRQA LKKYTIDLTE RAEQGKLDPV IGRDEEIRRT IQVLQRRTKN NPVLIGEPGV GKTAIVEGLA QRIINGEVPE GLKGRRVLAL DMGALVAGAK YRGEFEERLK GVLNDLAKQE GNVILFIDEL HTMVGAGKAD GAMDAGNMLK PALARGELHC VGATTLDEYR QYIEKDAALE RRFQKVFVAE PSVEDTIAIL RGLKERYELH HHVQITDPAI VAAATLSHRY IADRQLPDKA IDLIDEAASS IRMQIDSKPE ELDRLDRRII QLKLEQQALM KESDEASKKR LDMLNEELSD KERQYSELEE EWKAEKASLS GTQTIKAELE QAKIAIEQAR RVGDLARMSE LQYGKIPELE KQLEAATQLE GKTMRLLRNK VTDAEIAEVL ARWTGIPVSR MMESEREKLL RMEQELHHRV IGQNEAVDAV SNAIRRSRAG LADPNRPIGS FLFLGPTGVG KTELCKALAN FMFDSDEAMV RIDMSEFMEK HSVSRLVGAP PGYVGYEEGG YLTEAVRRRP YSVILLDEVE KAHPDVFNIL LQVLDDGRLT DGQGRTVDFR NTVVIMTSNL GSDLIQERFG ELDYAHMKEL VLGVVSHNFR PEFINRIDEV VVFHPLGEQH IASIAQIQLK RLYKRLEERG YEIHISDEAL KLLSENGYDP VYGARPLKRA IQQQIENPLA QQILSGELVP GKVIRLEVNE DRIVAVQ
いくつかの実施形態では、ClpBタンパク質を医薬組成物の形態で対象に投与する。いくつかの実施形態では、ClpBタンパク質を薬学的に許容される賦形剤および任意選択で生分解性ポリマーなどの徐放マトリックスと組み合わせて医薬組成物を形成する。「薬学的に」または「薬学的に許容される」という用語は、必要に応じて哺乳動物、特にヒトに投与しても有害反応、アレルギー反応、または他の不都合な反応を引き起こすことのない分子的実体および組成物を指す。薬学的に許容される担体または賦形剤は、無毒性の固体、半固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、封入材料または任意の種類の製剤助剤を指す。本発明の医薬組成物では、有効成分を単独で、または別の有効成分と組み合わせて、従来の薬学的補助物との混合物として単位投与形態で動物およびヒトに投与することができる。適切な単位投与形態は、錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤および経口懸濁剤もしくは液剤、舌下およびバッカル投与形態などの経口経路形態、エアロゾル、インプラント、皮下投与形態、経皮投与形態、局所投与形態、腹腔内投与形態、筋肉内投与形態、静脈内投与形態、皮下投与形態、経皮投与形態、髄腔内投与形態および鼻腔内投与形態ならびに直腸内投与形態を含む。医薬組成物は、注射可能な製剤に関して薬学的に許容されるビヒクルを含有するのが好ましい。これらは、特に等張滅菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなどまたは上記の塩の混合物)または場合に応じて滅菌水もしくは生理食塩水を加えると注射用液剤を構成することが可能な乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であり得る。注射用途に適した医薬形態としては、滅菌水溶液剤または分散液剤;ゴマ油、ラッカセイ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌注射用液剤または分散液剤の即時調製のための滅菌散剤が挙げられる。いずれの場合も、形態は無菌状態でなければならず、かつ注射針を容易に通過する程度に流動性のあるものでなければならない。形態は、製造および保管の条件下で安定であり、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。本発明の化合物を遊離塩基または薬理学的に許容される塩の形で含む液剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水を用いて調製することができる。同様に、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物ならびに油を用いて分散液剤を調製することができる。通常の保管および使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を抑えるため保存剤を含有する。有効成分は、中性型または塩型で組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸と形成される、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来し得る。担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒子径を維持することによって、また界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって抑えることができる。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めるのが好ましい。吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによって、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。滅菌注射用液剤は、上記で列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に必要量の活性ポリペプチドを組み込み、必要に応じてろ過滅菌することによって調製する。分散液は一般に、基礎となる分散媒と上記で列挙した中から必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに様々な滅菌済みの有効成分を組み込むことによって調製する。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、有効成分に任意の所望の成分を追加した溶液を予め滅菌ろ過したものからその粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥技術である。製剤化後、液剤を投与製剤と適合性のある方法で、治療効果のある量で投与する。製剤は、上記の種類の注射用液剤などの様々な投与剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども用いることができる。水溶液を非経口投与するには、例えば、必要に応じて溶液を適切に緩衝し、最初に液体希釈剤を十分な量の生理食塩水またはグルコースで等張にするべきである。このような特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1用量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、皮下注入液1000mlに加えるか、または提案される注入部位に注射することが可能である。治療する対象の状態によっては、必然的に用量がいくぶん変化する。いずれにせよ、投与の責任者が個々の対象に適した用量を決定する。
本明細書で使用される「ClpBを発現する細菌」という表現は、上で定義したシャペロンタンパク質ClpB、または配列番号1のアミノ酸配列と96〜100%同一のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号1アミノ酸配列と96%、97%、98%、99%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むか、またはこれよりなるポリペプチドを発現または過剰発現する細菌を指す。
いくつかの実施形態では、ClpBを発現する細菌は食品用細菌である。
いくつかの実施形態では、ClpBタンパク質を発現する細菌はプロバイオティクス菌株である。
本明細書で使用される「プロバイオティクス」という用語は、十分量で組み込まれると、健康、快適さおよび快調さに対して従来の栄養学的効果を上回る正の効果を発揮する生きた微生物を表すものとする。プロバイオティクス微生物は、「適切な量を投与したとき宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義されている(FAO/WHO 2001)。本明細書で使用される「プロバイオティクス菌株」という表現は、宿主の健康および幸福に対して有益な効果を示す細菌株を表す。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、生存可能な細菌株、特に生存可能なプロバイオティクス菌株である。「生存可能な細菌株」という表現は、代謝的に活性であり、対象の消化管に生着することが可能な微生物を意味する。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、細菌断片の混合物からなる生存可能でない細菌株、特にプロバイオティクス菌株である。いくつかの実施形態では、本発明の細菌断片の混合物は細菌株由来のタンパク質からなる。
いくつかの実施形態では、本発明のプロバイオティクス菌株は、食品用細菌から選択される。「食品用細菌」は、食品に使用され、一般に食品への使用が安全であると見なされる細菌を意味する。
細菌株は、天然起源の細菌株であっても遺伝子操作された細菌株であってもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、ClpBタンパク質を構成的に発現した細菌である。
いくつかの実施形態では、細菌内でClpBタンパク質を過剰発現させる。一般に、タンパク質が、標準的な条件下で自然にみられる所定のベースライン産生量よりも多い量または産生量で発現または産生される場合、タンパク質発現は「アップレギュレート」される、またはタンパク質が「過剰発現」される。タンパク質の過剰発現は、例えば、以下のうちのいずれか1つまたは複数のものを変化させることによって達成することができる:(a)宿主細胞の増殖条件または生存条件;(b)タンパク質をコードするポリヌクレオチド;(c)細胞におけるポリヌクレオチドの発現およびそのコピー数を制御するのに使用するプロモーター;ならびに(d)宿主細胞そのもの。
いくつかの実施形態では、細菌内でのClpBタンパク質の発現がアップレギュレートされるよう、細菌をストレス条件に曝露した。ストレスは、熱への曝露、温度変化、機械的応力長期保管もしくは低湿度保管および/または凍結乾燥もしくは噴霧乾燥からなる群より選択され得る。
いくつかの実施形態では、細菌に、栄養供給を少なくとも5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回または20回実施した。通常、細菌の増殖に好都合な培養培地、例えば実施例に記載されるミューラー・ヒントン培地によって栄養供給する。いくつかの実施形態では、定常期の間にClpBタンパク質の濃度が定常期に最大になることから、前記反復栄養供給後の定常期の段階で細菌を単離する。
いくつかの実施形態では、細菌は、ClpBタンパク質の発現がアップレギュレートされるよう少なくとも1つの点変異を含む。本明細書で使用される「点変異」という用語は、核酸の置換および/または欠失を意味する。あるいはまたはこれと同時に、ClpB遺伝子の調節DNA配列内、例えば転写および翻訳制御配列内に少なくとも1つの変異が存在し、この変異がタンパク質の発現を調節するのが好ましい。調節DNA配列内の変異は、タンパク質の発現をアップレギュレートする役割を果たし得る。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、ClpBタンパク質を発現するよう遺伝子操作されている細菌である。細菌株は通常、ClpBタンパク質をコードする核酸で形質転換された。「形質転換」という用語は、宿主細胞に「外来性」(すなわち、外因性または細胞外)の遺伝子、DNAまたはRNAの配列を導入することにより、宿主細胞が導入遺伝子または導入配列を発現して所望の物質、通常、導入遺伝子または導入配列がコードするタンパク質または酵素を産生することを意味する。導入DNAまたは導入RNAを受け取って発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。核酸は、親微生物の形質転換後も染色体外に留まっている場合もあれば、微生物のゲノム内に組み込まれるよう適応する場合もある。したがって、核酸は、染色体外構築物の組込み(例えば、相同組換えおよび宿主ゲノム内への標的化組み込みを可能にする領域)または安定な発現および複製を補助するように適合させたさらなるヌクレオチド配列(例えば、複製起点、プロモーターをはじめとする制御配列)を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は核酸構築物またはベクターである。いくつかの実施形態では、核酸構築物またはベクターは、発現構築物または発現ベクターであるが、他の構築物およびベクター、例えばクローン化に使用するものなども本発明に包含される。いくつかの実施形態では、発現構築物または発現ベクターはプラスミドである。発現構築物/ベクターは通常、本明細書で上に記載したプロモーターをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、その制御下にある遺伝子の構成的発現を可能にする。しかし、誘導プロモーターも同様に用いてもよい。本発明の発現構築物/ベクターは必要に応じて、プロモーターに加えて任意の数の調節エレメント、ならびにClpBタンパク質の発現に適した追加の遺伝子を含み得ることが理解されよう。細菌細胞を細胞外核酸で形質転換する方法は当該技術分野で周知である。
いくつかの実施形態では、細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、グラム陰性菌株である。
いくつかの実施形態では、細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、腸内細菌科のメンバーである。具体的には、細菌株は腸内細菌科の非病原性のメンバーである。
興味深いことに、本発明者らは、腸内細菌科の全細菌のClpBタンパク質が互いに100%の同一性を示すことを示した。
いくつかの実施形態では、細菌株、特にプロバイオティクス菌株は、大腸菌(E.coli)株である。いくつかの実施形態では、本発明の教示に従って使用する大腸菌(E.coli)株、特にプロバイオティクス大腸菌(E.coli)株には、プロバイオティクス活性を示す非病原性大腸菌(E.coli)株が含まれる。プロバイオティクス大腸菌(E.coli)株の例は、公知の市販のプロバイオティクス大腸菌(Escherichia coli)株M−17の単離体であるATCC寄託番号202226(DSM12799)のプロバイオティクス大腸菌(Escherichia coli)株BU−230−98である。非病原性大腸菌(E.coli)株の例は、大腸菌(E.coli)Nissle 1917である。プロバイオティクスとしては知られていなかった大腸菌(E.coli)株の例は、実験用大腸菌(E.coli)株K12である。
他の実施形態では、細菌株はハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)株、例えばBioprox社が商品化したハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)AF036株である。さらに別の実施形態では、細菌株はプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)株である。
さらに別の実施形態では、ClpBタンパク質を発現する細菌株の組合せを使用する。
本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は通常、当該技術分野で周知の任意の適切な培養培地を用いて産生される。様々な発酵培地が本発明に適しており、例えば(特に限定されないが)第一に、菌株(1つまたは複数)を増殖させ、それをそのまままたは濃縮(例えば乾燥)後または別の食品主成分もしくは食品に添加後に使用する産業用培地が本発明に適している。あるいは、細菌細胞もしくは細菌細胞と培地(例えば、発酵ブロス)またはそのような細胞含有培地の画分(すなわち、前記細菌株の入った培地)を使用してもよい。細胞または細胞含有培地は、その菌株の生きた細菌細胞もしくは生存可能な細菌細胞および/または死滅した細菌細胞もしくは生存可能でない細菌細胞を含む。したがって、特に限定されないが、加熱または超音波処理によって培地を処理してもよい。同様に、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株の調製方法には、凍結乾燥もしくは凍結させた細菌および/または無細胞培地(濃縮されていてもよい)が包含される。
特定の実施形態では、本発明の細菌株を凍結乾燥させた後、好ましくは、投与する前に再懸濁させる。
本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は通常、経口摂取(すなわち、経口経路)によって対象に投与する。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を胃から保護するためにカプセル封入する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株の生存時間が有意に改善するよう、カプセル封入形態の組成物に製剤化する。このような場合、カプセルの存在によって、特に消化管内での微生物の分解が遅延または防止され得る。本発明の実施形態の組成物は、腸溶コーティングされた持効性のカプセルまたは錠剤に封入することが可能であることが理解されよう。腸溶コーティングによって、カプセル/錠剤が消化管の中を通過し、小腸などに到達する時間までインタクトの(すなわち、溶解していない)状態を維持することが可能となる。生きた細菌細胞をカプセル封入する方法は当該技術分野で周知である(例えば、General Mills社に対する米国特許、例えば米国特許第6,723,358号などを参照されたい)。例えば、アルギン酸とHi−Maize(商標)デンプンでマイクロカプセル化した後、凍結乾燥させることにより、乳製品中の細菌細胞の有効期間を延ばすことに成功することが証明されている[例えば、Kailasapathyら,Curr Issues Intest Microbiol.2002 September;3(2):39−48を参照されたい]。あるいは、コンニャク(Amorphophallus konjac)から抽出される繊維などのグルコマンナン繊維を用いてカプセル封入を実施してもよい。あるいは、生きた細菌のゴマ油乳剤への捕捉を用いてもよい[例えば、Houら,J.Dairy Sci.86:424−428を参照されたい]。いくつかの実施形態では、腸溶コーティング剤は、Eudragit(登録商標)ポリマーなどのメタクリル酸−アルキルアクリル酸コポリマーであるのが好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸は、コーティング材料として特に適していることが証明されている。EUDRAGIT(登録商標)は、アクリル酸とメタクリル酸のエステルに由来するコポリマーの商標名であり、その特性は官能基によって決まる。個々のEUDRAGIT(登録商標)のグレードは、中性、アルカリ性または酸性基の割合が異なり、このため物理化学的特性が異なる。様々な薬学的応用および技術的応用において、様々なEUDRAGIT(登録商標)ポリマーを上手く用いて組み合わせることにより、薬物放出を制御するのに理想的な溶液が得られる。EUDRAGIT(登録商標)は、徐放錠およびペレットコーティングのための機能的フィルムを提供する。このポリマーは、Ph.Eur.、USP/NF、DMFおよびJPEなどの国際薬局方に記載されている。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、薬物放出の制御に以下のような可能性をもたらし得る:消化管標的化(胃酸耐性、結腸での放出)、保護コーティング(味および匂いのマスキング、水分からの保護)および薬物放出の遅延(徐放性製剤)。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、広範囲の様々な濃度ならびに水溶液、水分散液、有機溶液および固体物質を含む広範囲の物理的形態で入手可能である。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーの薬学的特性は、その官能基の化学的特性によって決まる。以下が異なる:
−(塩形成によって)消化液に可溶性のポリ(メタ)アクリル酸:酸性またはアルカリ性の基を有するEUDRAGIT(登録商標)L(メタクリル酸コポリマー)、S(メタクリル酸コポリマー)、FSおよびE(塩基性ブチル化メタクリル酸コポリマー)ポリマーは、有効成分のpH依存性の放出を可能にする。用途:胃酸のみに対する抵抗性による単純な味のマスキングから、腸管のあらゆる区画での薬物放出の制御まで。
−消化液に不溶性のポリ(メタ)アクリル酸:アルカリ性の基を有するEUDRAGIT(登録商標)RLおよびRS(アンモニオメタクリル酸コポリマー)ポリマーならびに中性の基を有するEUDRAGIT(登録商標)NEポリマーは、pH依存性の膨潤により有効成分の持効放出の制御を可能にする。
腸溶EUDRAGIT(登録商標)コーティングにより、胃内での薬物放出からの保護が得られ、腸内での放出制御が可能となる。主な放出の基準は、胃(pH1〜5)ではなく腸の特定の区画(pH5〜7超)で起こるコーティングのpH依存性の溶解である。このような用途のために、カルボキシル基を含有するアニオン性EUDRAGIT(登録商標)グレードを互いに混合することができる。これにより溶解pHを微調整し、これにより腸内の薬物放出部位を定めることが可能となる。EUDRAGIT(登録商標)LグレードおよびSグレードは腸溶コーティングに適している。EUDRAGIT(登録商標)FS30D(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸をベースとするアニオン性コポリマーの水性分散液)は、特に結腸での放出制御に用いられる。
本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は通常、食品組成物の形態で対象に投与する。したがって、本発明のさらなる一態様は、一定量の本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む食品組成物に関する。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む食品組成物は、完全食品組成物、栄養補助食品、栄養補給組成物などから選択される。本発明の組成物は、食品成分および/または飼料成分として使用し得る。
食品成分は、用途、適用様式および/または投与様式に応じて、液体形態であっても固体であってもよい。
本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株は通常、組成物の製造工程の任意の時点で添加され、例えば、製造工程の開始時に食品主成分に添加しても、あるいは、最終的な食料製品に添加してもよい。
「食品」は、液体(すなわち、飲料)、固体または半固体の食餌用組成物、特に、追加の栄養摂取または栄養補助食品組成物を必要としない完全食品組成物(代替食品)を指す。栄養補助食品組成物は、他の手段による栄養摂取に完全に代わるものとはならない。食品組成物および栄養補助食品は、例えば、好ましくは1日1回または複数回、経口的に投与または摂取する、発酵乳製品または乳製品を主体とする製品である。発酵乳製品は、製造工程に本発明による細菌を直接用いて、例えば、それ自体が公知の方法を用いて食品主成分に添加することによって、製造することができる。このような方法では、通常使用する微生物に加えて本発明の菌株(1つまたは複数)を使用してもよく、および/または通常使用する微生物の1つもしくは複数または一部と置き換えてもよい。例えば、ヨーグルトまたはヨーグルトを主体とする飲料などの発酵乳製品の調製において、本発明の細菌を開始培養物に添加するか、もしくは開始培養物の一部として使用してもよく、またはそのような発酵の過程で適切に添加してもよい。任意選択で、細菌を製造工程でのちに不活化または死滅させてもよい。発酵乳製品としては、乳を主体とする製品、例えば(特に限定されないが)デザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、クワルク、ケフィア、発酵乳を主体とする飲料、バターミルク、チーズ、ドレッシング、低脂肪スプレッド、フレッシュチーズ、ダイズを主体とする飲料、アイスクリームなどが挙げられる。あるいは、食品組成物および/または栄養補助食品組成物は、非乳製品または非発酵乳製品(例えば、非発酵乳または別の食品培地中の菌株または無細胞培養培地)であってもよい。いくつかの実施形態では、本発明のプロバイオティクス菌株をカプセル封入して食品培地(例えば、乳)または非食品培地に分散させる。非発酵乳製品としては、アイスクリーム、栄養補助バーおよびドレッシングなどが挙げられる。非乳製品としては、粉末飲料および栄養補助バーなどが挙げられる。製品は、公知の方法、例えば、無脂肪乳、乳または乳を主体とする組成物などの食品主成分に有効量の菌株および/または無細胞培養培地を添加すること、および公知の発酵などを用いて製造し得る。細菌細胞および/または無細胞培養培地(を含む組成物)を添加し得る他の食品主成分は、肉、代替肉または植物性主成分である。
本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む組成物は、固体、半固体または液体であり得る。本発明の組成物は、食品または栄養補助食品の形態、例えば、錠剤、ゲル、粉末、カプセル、飲料、バーなどの形態であり得る。例えば、組成物は、小袋に詰められて、水、フルーツジュース、乳、または別の飲料に溶解することができる粉末の形態であり得る。
本明細書で使用される「食品成分」または「飼料成分」という用語は、栄養補給剤として機能性食品または機能性食材に添加する、または添加することが可能な製剤を包含する。
「栄養食品」、「栄養補給」食品または「機能性」食品は、健康に有益な効果をもたらす成分または生理機能を改善することが可能な成分を含有する食材を意味する。
「栄養補助食品」とは、通常の食事を補完する目的を有する食材を意味する。栄養補助食品は、単独で、または少量を組み合わせて摂取したときに栄養効果または生理効果を有する、栄養素または他の物質の濃縮供給源である。
本発明では、「機能性食品」とは、栄養および味の点で価値が高いのみならず、特定の成分物質により重要である、最近開発された食材および対応する製品の総称である。本発明では、健康を中期または長期にわたって維持および増進することが重要である。この点では、非治療的使用が好ましい。「栄養補給食品」、「フードシューティカル(foodsceutical)」および「デザイナーフード」という用語も本発明の実施形態を表し、同義語として使用されるが、一部異なるように使用されることもある。しかし、健康の予防的側面および促進ならびに製品の食品特性は、機能性食品という用語によって最も明瞭になる。多くの場合、これらは、品揃え選定(本発明にも当てはまる)、精製、濃縮によって蓄積された製品に関するが、添加によって蓄積された製品にもますます関連する。特に錠剤または丸剤の形態では単独の有効物質は含まれない。機能性食品の法的定義は存在しないが、この領域に関心のある団体の多くは、機能性食品が、基本的な栄養効果を上回る特定の健康効果を有するものとして販売される食品であるという点で一致している。したがって、機能性食品は、純粋な栄養効果ではなく特定の機能的利益、例えば医学的または生理学的利益を食品にもたらす構成要素または成分(本明細書に記載されるものなど)を組み込んだ通常の食品である。
いくつかの実施形態では、飲料は、機能性飲料または治療用飲料、喉の渇きを癒す飲料または通常の飲料である。例を挙げれば、本発明の組成物をソフトドリンク、フルーツジュースまたは乳清タンパク質を含む飲料、健康茶、ココア飲料、乳飲料および乳酸菌飲料、ヨーグルトおよび飲むヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、水氷およびデザート、糖菓、ビスケットケーキおよびケーキミックス、スナック食品、バランス食品およびバランス飲料、フルーツフィリング、ケアグレーズ(care glaze)、チョコレートベーカリーフィリング、チーズケーキ風味フィリング、フルーツ風味ケーキフィリング、ケーキおよびドーナツのアイシング、インスタントベーカリーフィリングクリーム、クッキー用フィリング、すぐに使えるベーカリーフィリング、低カロリーフィリング、成人用栄養飲料、酸性化大豆/ジュース飲料、無菌/レトルトチョコレート飲料、バーミックス、飲料粉末、カルシウムを強化した豆乳/プレーンミルクおよびチョコレートミルク、カルシウム強化コーヒー飲料の成分として使用することができる。
組成物はさらに、食品、例えばアメリカンチーズソース、粉チーズおよび細切りチーズの凝固防止剤、チップディップ、クリームチーズ、乾燥混合ホイップトッピング無脂肪サワークリーム、凍結/融解した生ホイップクリーム、凍結/融解した安定なホイップドチッピング(whipped tipping)、低脂肪/低カロリーナチュラルチェダーチーズ、低脂肪スイス式ヨーグルト、気泡の入った冷菓、ハードパックアイスクリーム、ラベルフレンドリー(label friendly)で経済性および嗜好性が改善されたハードパックアイスクリーム、低脂肪アイスクリーム、バーベキューソース、チーズディップソース、カッテージチーズドレッシング、ドライミックスアルフレッドソース、ミックスチーズソース、ドライミックストマトソースおよびその他などの成分として使用することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む組成物をヨーグルト、例えば発酵ヨーグルト飲料、ヨーグルト、飲むヨーグルト、チーズ、発酵クリーム、乳を主体とするデザートおよびその他などの製造に使用する。組成物はさらに、チーズ用途、肉用途または防御培養物を含む用途のうちの1つまたは複数の成分として適切に使用することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む食品組成物は、ミールリプレイスメント製品の調製に適している。本明細書で使用される「ミールリプレイスメント製品」という用語は、本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミンおよびミネラルを含有し、組み合わせると食餌の唯一のまたは主要な栄養源として適切なものとなる、任意の栄養製品を含む。ミールリプレイスメント製品は通常、少なくとも1つの炭水化物源、少なくとも1つの脂質源および/または少なくとも1つのタンパク質源を含む。タンパク質源としては、任意の適切な食物タンパク質、例えば、動物タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質および卵タンパク質など);植物タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質およびエンドウマメタンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;またはその組合せを使用し得る。カゼインおよび乳清などの乳タンパク質および大豆タンパク質が特に好ましい。タンパク質は、未加工タンパク質、加水分解タンパク質または未加工タンパク質と加水分解タンパク質の混合物であり得る。例えば牛乳アレルギーを発症するリスクがあると考えられる動物には、部分的に加水分解したタンパク質(加水分解の程度は2〜20%)を与えるのが望ましい場合がある。加水分解タンパク質が必要な場合、所望の通りに、また当該技術分野で公知の通りに加水分解工程を実施し得る。例えば、乳清タンパク質の加水分解物は、乳清画分を1つまたは複数の段階で酵素的に加水分解することによって調製し得る。出発物質として使用する乳清画分が実質的にラクトースを含まなければ、加水分解工程でタンパク質が受けるリジン遮断はかなり少ないことが見出される。これにより、リジン遮断範囲を総リジン重量の約15%からリジン重量の約10%未満まで、例えばリジン重量の約7%まで低下させることが可能となり、タンパク質源の栄養品質価を大幅に改善する。組成物が脂肪源を含む場合、組成物のエネルギーの5%〜40%、例えばエネルギーの20%〜30%が脂肪源によって供給されるのが好ましい。適した脂肪プロファイルは、キャノーラ油、トウモロコシ油および高オレイン酸ヒマワリ油の混和物を用いて得ることができる。炭水化物源は、組成物のエネルギーの40%〜80%を供給するのが好ましい。任意の適切な炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固体、マルトデキストリンおよびその混合物を使用することができる。通常、1日1食をミールリプレイスメントによるエネルギー制限食餌療法に置き換えることが、体重減少後の体重の維持に寄与する。
本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む食品組成物は通常、担体またはビヒクルを含む。「担体」または「ビヒクル」は、投与に適した材料を意味し、これには、無毒性で、組成物の任意の構成要素、特に細菌株と有害に相互作用しない当該技術分野で公知の任意のそのような材料、例えば任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などがこれに含まれる。栄養学的に許容される担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ロウ、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよび脂肪酸ジグリセリド、石油エーテル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル−セルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む食品組成物は、一定量の食物繊維を含む。食物繊維は酵素による消化を受けずに小腸を通過し、天然の増量剤および緩下剤として機能する。食物繊維は可溶性であっても不溶性であってもよく、一般には両者の混合物が好ましい。適切な食物繊維源としては、大豆、エンドウマメ、エンバク、ペクチン、グアーガム、アラビアゴム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリルラクトースおよび動物の乳に由来するオリゴ糖が挙げられる。いくつかの実施形態では、食物繊維はマンナン類の中から選択される。マンナン類(グルコマンナンおよびガラクトマンナンなど)、例えばグアーガム、イナゴマメガム、コンニャクおよびキサンタンガムなどは、一部の植物細胞壁に存在する。グルコマンナンは一般に、(1−4)−β結合したグルコースとマンノースの単位からなり、ガラクトマンナンは一般に、(1−4)−β−マンナン骨格を(1−6)−α−ガラクトースの単一単位で置換したものからなる。グアーおよびイナゴマメなどの多くの内胚乳のある豆果は、種子発達時の内胚乳にガラクトマンナンを含む。グルコマンナンはまた、穀粒の微量成分として見出されている。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む食品組成物は、USRDAなどの政府機関の推奨に従って、ミネラルおよび微量栄養素、例えば微量元素およびビタミンなどを含有する。例えば、組成物は、以下の微量栄養素のうちの1つまたは複数のものを所定の範囲の1日量で含有し得る:カルシウム300〜500mg、マグネシウム50〜100mg、リン150〜250mg、鉄5〜20mg、亜鉛1〜7mg、銅0.1〜0.3mg、ヨウ素50〜200μg、セレン5〜15μg、ベータカロテン1000〜3000μg、ビタミンC10〜80mg、ビタミンB11〜2mg、ビタミンB60.5〜1.5mg、ビタミンB20.5〜2mg、ナイアシン5〜18mg、ビタミンB120.5〜2.0μg、葉酸100〜800μg、ビオチン30〜70μg、ビタミンD1〜5μg、ビタミンE3〜10μg。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む組成物は、乳化剤を含有する。食品用乳化剤の例としては通常、モノグリセリドおよびジグリセリのジアセチル酒石酸エステル、レシチンならびにモノグリセリドおよびジグリセリドが挙げられる。同様に、適した塩および安定剤が含まれ得る。
いくつかの実施形態では、本発明のプロバイオティクス菌株を含む食品組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクスを含有する。「プロバイオティクス」は、腸内での本発明のプロバイオティクス菌株の増殖を促進することを目的とする食物物質を意味する。プレバイオティクスは、オリゴ糖類からなる群より選択することができ、任意選択で、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズおよび/もしくはイヌリン;ならびに/または食物繊維を含有する。
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株、特にプロバイオティクス菌株を含む組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、修飾デンプンなど)、結合剤、フィルム形成剤、カプセル封入剤/材料、壁材料/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ロウ、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤および抗菌剤を含有する。組成物はまた、従来の医薬品添加剤および医薬品補助剤、賦形剤ならびに希釈剤を含有してよく、特に限定されないが、水、任意の起源のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホン酸塩、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、香味剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、滑沢剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などがこれに含まれる。いずれの場合も、上記のさらなる成分は、意図されるレシピエントに対して適しているかどうかを考慮して選択する。
いくつかの実施形態では、ClpBタンパク質または同タンパク質を発現する細菌株、特にプロバイオティクス菌株の投与を例えば、1日間またはそれ超にわたって、一般には、必要に応じて1つまたは複数の休止期間を挟み少なくとも4日間または場合によっては4〜15週間の長期間にわたって、1日2〜3回反復する。いくつかの実施形態では、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌株を対象の1回の食餌と同時にまたは逐次的に投与する。いくつかの実施形態では、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌株を対象の食餌の前に投与する。
本明細書で使用される「有効量」という用語は、有益な効果(例えば、満腹感の刺激、飽満感の持続、摂食量の減少、体重増加の制御、特に体重増加の減少、体重減少の刺激および/または体脂肪量/除脂肪量比の減少)を得るのに十分なClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌の量を指す。本発明においては、対象に投与するClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌の量は、個体の特徴、例えば全般的健康状態、年齢、性別、体重などに左右される。当業者であれば、これらおよび他の要因に応じて適切な用量を決定することが可能であろう。例えば、ClpBタンパク質をプロバイオティクスの形態で対象に投与すると、本発明の菌株は、対象に有益な効果をもたらすのに十分なコロニーを形成することができる。細菌株、特にプロバイオティクス菌株を食品の形態で投与する場合、それは通常、食品組成物の乾燥重量1g当たり10 〜10 12 cfuの本発明の細菌株を含み得る。
以下の図面および実施例により本発明をさらに説明する。しかし、これらの実施例および図面は、決して本発明の範囲を限定するものではないものとして解釈されるべきである。
正常C57Bl6成体マウスへの大腸菌(E.coli)K12野生型(WT)またはClpB遺伝子欠失大腸菌(E.coli)(ΔClpB)の連日胃内送達が体重、24時間の摂食量および食餌パターンに及ぼす効果を3週間の強制投与の開始前および終了時に解析したものを示す図である。対照マウス(Ctr)には強制投与を実施しなかった。食餌パターンは、1食で摂取した飼料の平均量に相当する食餌量および少なくとも5分の間隔を空けた24時間当たりの食餌回数に相当する食餌頻度として測定した。食餌量の減少は、より急速な飽満感を反映し、食餌頻度の減少は、より長い満腹感を反映している。A.繰り返し測定のある二元配置ANOVA、ボンフェローニ事後検定 p<0.05。B、D、G、H.ANOVA、チューキーの事後検定、 p<0.05、 ** p<0.01、 *** p<0.001。E.スチューデントのt検定、 p<0.05。 ARC POMCニューロンの電気的活動に対するClpBの効果を示す図である。活動電位頻度は基底レベルに対する変化のパーセントで表した;平均±SEM。ボンフェローニ事後検定 p<0.05、 ** p<0.01。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12、大腸菌(E.coli)K12ΔClpB(ともにミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr)を胃内強制投与する前および胃内強制投与した期間(第0〜21日)の体重動態を示す図である。二元配置ANOVA、処置の効果:p=0.01、ボンフェローニ事後検定Ctr対大腸菌(E.coli)K12、 p<0.05および ** p<0.01。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12(n=8)、大腸菌(E.coli)K12ΔClpB(n=8)(ともにミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr.、n=7)を3週間胃内強制投与した後の(無作為化当日(=100%)からの)平均体重変化の百分率を示す図である。ANOVA p=0.01、チューキーの事後検定、 p<0.05。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12(n=8)、大腸菌(E.coli)K12ΔClpB(n=8)(ともにミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr.、n=7)を3週間胃内強制投与した後、EchoMRIにより測定した同マウスの脂肪含有量を示す図である。ANOVA p=0.005、チューキーの事後検定 ** p<0.01。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12(n=8)、大腸菌(E.coli)K12ΔClpB(n=8)(ともにミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr.、n=7)を3週間胃内強制投与した後、EchoMRIにより測定した同マウスの除脂肪量/脂肪量比を示す図である。ANOVA p=0.05、スチューデントのt検定 p<0.05。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12(n=8)、大腸菌(E.coli)K12ΔClpB(n=8)(ともにミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr.、n=7)を3週間胃内強制投与した期間の同マウスの1日の平均摂食量を示す図である。ANOVA p<0.0001、チューキーの事後検定 *** p<0.001。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12(n=8)、大腸菌(E.coli)K12ΔClpB(n=8)(ともにミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr.、n=7)を3週間胃内強制投与した期間の同マウスの1日の平均食餌回数を示す図である。ANOVA p<0.0001、チューキーの事後検定 *** p<0.001。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12、大腸菌(E.coli)Niessle 1917、凍結乾燥した大腸菌(E.coli)Niessle 1917(lyo)(いずれもミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr)を胃内強制投与した期間の同マウスの毎日の体重増加を示す図である。二元配置ANOVA、p=0.02、ボンフェローニ事後検定a、Ctr.対大腸菌(E.coli)Niessle 1917 lyoおよびb、Ctr.対大腸菌(E.coli)Niessle 1917、 p<0.05および ** p<0.01。平均±SEM。 肥満ob/obマウスに大腸菌(E.coli)K12、大腸菌(E.coli)Niessle 1917、凍結乾燥した大腸菌(E.coli)Niessle 1917(lyo)(いずれもミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr)を2週間胃内強制投与した後の同マウスの(無作為化当日(=100%)からの)平均体重変化の割合を示す図である。クラスカル・ウォリス p<0.01、ダンの事後検定 p<0.05、マン・ホイトニーの検定##p<0.01。平均±SEM。 大腸菌(E.coli)K12、大腸菌(E.coli)Niessle 1917、凍結乾燥した大腸菌(E.coli)Niessle 1917(lyo)(いずれもミューラー・ヒントン(MH)培地に入れて)または対照としてのMH培地のみ(Ctr)を2週間胃内強制投与した後、EchoMRIにより測定した同マウスの脂肪含有量を示す図である。スチューデントのt検定 ** p<0.01。平均±SEM。 ラットの脳室内に異なる用量のClpBを直接注射したときの摂食量に対する効果を示す図である。
実施例1:
材料および方法
定期的な栄養供給後のin vitroでの大腸菌(E.coli)の増殖
牛肉浸出液30%、カゼイン加水分解物1.75%およびデンプン0.15%を含有するpH7.3、25℃のMH培地(Becton社、ディキンソン、メリーランド州)40mLを入れた50ml Falconバイアル中で大腸菌(E.coli)K12菌を37℃にて培養した。ヒトの1日2食のスケジュールを模倣するため、細菌に5日間連続で新たなMH培地を12時間毎に供給した。細菌の増殖を、MH培地の1回目の供給後は2時間毎に、3回目の供給後は1時間毎に、5回目の供給後は10分毎に、分光光度計によってλ=600nmでのODとして測定した。12時間の各サイクルの終了時、細菌を室温(RT)、6,000rpmで5分間遠心分離した。上清を捨て、代わりに等量(約40ml)の新たなMH培地に入れた。MH培地を最後に供給した後、対数期およびそれに続く定常期の細菌の試料を採取しタンパク質抽出に供した。
タンパク質抽出
大腸菌(E.coli)K12菌を4℃、4,000gで30分間遠心分離した。細菌残渣をトリスヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)緩衝液(pH7.4)2mlに溶解し、RTで3分間、超音波処理によりホモジナイズした。未溶解の細胞断片からタンパク質を分離するため、細菌ホモジネートを10,000g、4℃で30分間遠心分離した。上清を回収した後、4℃、60,000gで45分間超遠心分離し、タンパク質を細胞質画分(上清)と膜画分(残渣)とにさらに分離した。膜タンパク質をTRIS緩衝液(pH7.4)に溶解した。2−D Quant Kit(GE Healthcare社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いてタンパク質濃度を測定した。
二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動
2D−PAGEに関して、大腸菌(E.coli)タンパク質抽出物300μgを用いて固定化pH勾配(IPG)ストリップ(pH4〜7;18cm;BIO−RAD社、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)を再水和した。次いで、IPGphor等電点電気泳動システム(GE Healthcare社)を用いて、計85,000V−hの等電点電気泳動により、タンパク質を第一次元に分離した。泳動後、IPGストリップを平衡化緩衝液[尿素6mol/L、30%(vol:vol)グリセロール、2%(wt:vol)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリス−HCl 50mmol/L(pH8.8)および2%(wt:vol)ジチオスレイトールを含有する0.25%(wt:vol)ブロモフェノールブルー]中で15分間インキュベートし、次いで、4%(wt:vol)ヨードアセトアミドを含有する平衡化緩衝液中で15分間アルキル化した。次いで、IPGストリップをSDS−PAGE用の10%ポリアクリルアミド勾配ゲル(20cm×18cm×1mm)上に貼り付けた。12mA/ゲルのEttan Daltsix垂直電気泳動システム(GE Healthcare社)を用いて25℃で一晩、第二次元を実施した。SDS−PAGE後、2Dゲルを2%(vol:vol)オルトリン酸中および50%(vol:vol)メタノール中、RTで2時間固定した。次いで、ゲルを水で洗浄し、CBB G−250(BIO−RAD社)染色[1リットル当たり34%(vol:vol)メタノール、17%(wt:vol)硫酸アンモニウム、2%(vol:vol)オルトリン酸およびCBB G−250 0.66g]によりタンパク質スポットを可視化した。
差次的タンパク質発現の解析
染色した2Dゲル画像を、グレースケールマーカー(Kodak社、ロチェスター、ニューヨーク州ロチェスター、ニューヨーク州)で較正したImageScanner II(GE Healthcare社)によりスキャンし、Labscan 6.0ソフトウェア(GE Healthcare社)でデジタル化した。スポット検出、定量化、マッチングおよび比較解析を含む差次的タンパク質発現の解析は、ImageMaster 2D Platinum 5.0ソフトウェア(GE Healthcare社)を用いて実施した。実施間の変動を最小限に抑えるため、各タンパク質試料を2D−PAGEに少なくとも3回(膜タンパク質)および4回(細胞質タンパク質)供し、3個(または4個)のゲルの各組を、ImageMasterを用いて比較し、ゲルの組内に統計的に差があるスポットが出現しないことを確認した。各組の最も代表的なゲル(ゲル移動、スポットの鮮明度およびスポット数)を用いて、大腸菌(E.coli)タンパク質を対数期と定常期とで比較した。ゲル中の各スポットの相対体積により発現レベルを求め、(スポット体積)/(ゲルで分離された全スポットの総体積)で算出される%体積で表した。このスポット体積の正規化は、ゲル中に存在する全スポットの総体積を考慮に入れることにより、タンパク質のローディングおよび染色による変動を計算に入れる。存在量の変動を2つの期の間の一群のスポットの%体積の平均値の比として算出した。体積の変動比が1.5を上回るスポットのみを重要であると見なした。ゲル内にスポットが存在しなければ、選択した実験条件下ではタンパク質の検出可能な発現は報告されないことが示された。スポット体積を対数変換した後、スチューデントのt検定(有意レベルはp<0.05)により対応するp値を決定した。
液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化MS/MSによるタンパク質同定
目的のタンパク質スポットを、Ettan Spot Picker(GE Healthcare社)を用いて、CBB G−250染色した2Dゲルから切り出し、既に記載されている(Goichonら,2011)通りに、Ettan Digester(GE Healthcare社)で自動タンパク質ゲル内消化を実施した。次いで、タンパク質抽出物を5%(vol:vol)アセトニトリル/0.1%(vol:vol)ギ酸10μLに再懸濁させた後、ナノスプレー源とHPLCチップキューブインターフェースとを備えた6340イオントラップ質量分析計と連結したナノLC1200システム(Agilent Technologies社、クールタブフ、フランス)で分析した。簡潔に述べれば、40nL RP−C18トラップカラムでペプチドを濃縮および脱塩し、Zorbax(細孔径30nm、粒子径5μm)C18カラム(長さ43mm×内径75μm;Agilent Technologies社)で分離した。9分間の直線勾配(0.1%ギ酸中3%〜80%のアセトニトリル)を流速400nL/分で用い、溶出液をイオントラップ質量分析計で分析した。
タンパク質同定のために、MS/MSピークリストを抽出し、MASCOT Daemonバージョン2.2.2(Matrix Science社)検索エンジンを用いてタンパク質データベースと比較した。検索は以下の特定のパラメータを用いて実施した:酵素特異性、トリプシン;切り残し許容数1;固定修飾無し;可変修飾、メチオニンの酸化、システインのカルバミドメチル化、セリン、チロシンおよびトレオニンのリン酸化;モノアイソトピック;ペプチド電荷、2+および3+;前駆体イオンの質量許容差、1.5Da;フラグメントイオンの質量許容差、0.6Da;機器としてのESI−TRAP;分類、大腸菌(E.coli);米国立生物工学情報センター(NCBI)データベース[NCBInr 20120531(配列数18280215、残基数6265275233)](ベセスダ、メリーランド州)。タンパク質ヒットが以下の基準のうちの一方を満たせば自動的に有効なものとした:それぞれMASCOTスコアが54を上回る(p<0.01)少なくとも上位2つのトップランクのペプチド(太字および赤文字)またはそれぞれMASCOTスコアが47を上回る(p<0.05)少なくとも上位2つのペプチド(太字および赤文字)の同定。偽陽性率を評価するため、最初のデータベース検索はいずれも、MASCOTの選択肢「デコイ」を用いて実施した。結果については、偽陽性率が1%を超えなければ重要なものであると見なした。
ATPアッセイ
ATP比色定量/蛍光定量アッセイキット(BioVision社、カリフォルニア州)を製造業者の指示通りに用いてin vitroのATP産生を測定した。簡潔に述べれば、対数期または定常期の細菌タンパク質を各濃度(ATPアッセイ緩衝液中1μg/mL、10μg/mLおよび25μg/mL)に関して2回の反復実験で一連のウェルに入れ、ATPアッセイ緩衝液で50μL/ウェルとなるように調整した。次いで、異なる栄養素の溶液、15%スクロースまたはMH培地10μLを対応するウェルに加え、ATPアッセイ緩衝液で50μL/ウェルとなるように調整し、対照ウェルには50μL/ウェルのATP緩衝液のみを加えた。プレートを37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルにATP反応混合物(ATPアッセイ緩衝液、ATPプローブ、ATP変換剤発色剤ミクスを含有する)50μLを加えた。昼光から保護しながらRTで30分間インキュベートした後、570nmでのODを測定した。
ClpBイムノアッセイの開発および検証
ClpB検出アッセイの設計は、直線濃度範囲内での特異的かつ高感度の検出など、いくつかの基準に基づいた。1つの特定の条件は、ClpB分子内にα−MSH様エピトープ(1つまたは複数)が存在することによって起こり得るα−MSH交差反応を起こさずにClpBが検出されることであった。技法およびシグナル検出を簡略化するため、本発明者らは、標準的な96ウェルELISAプレートと、分光光度計によるOD読取りの選択肢とを用いた。ClpBのELISAおよびウエスタンブロット(WB)の詳細なプロトコルについては別の節に記載する。
顕色抗体(Ab)と捕捉Abが結合するのを防ぐため、本発明者らは、ClpB捕捉AbとClpB検出Abをそれぞれウサギとマウスという異なる種を用いて作製した。複雑な生体試料からClpBタンパク質を最も効率的に捕捉するため、複数の抗ClpBエピトープを有するウサギポリクローナルAbでELISAプレートをコートした。ClpBとα−MSHとの間の交差反応を回避するため、複数のAbクローンのELISAスクリーニングによって予め選択した、ClpBを高い感度および特異性で認識するがα−MSHを認識しないことによって特徴付けられているマウスモノクローナル抗ClpB Abを検出Abとして用いた。通常のELISAツールとしてアルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス顕色Abを用いて、分析物の濃度に比例するODとして読み取ることが可能な発色酵素反応を得た。組換え大腸菌(E.coli)ClpBタンパク質について2pM〜150pMの範囲の7つの連続希釈物の検出から得られるODの直線変化が、プラトーに達することなく、ODシグナルの飽和も起こらずに得られた。
開発したClpBアッセイの特異性を検証するため、大腸菌(E.coli)K12 WTの10種類の異なる培養物および大腸菌(E.coli)ΔClpB変異体の1種類の培養物から抽出したタンパク質試料中のClpB濃度を測定した。ΔClpB変異体および対応する野生型(WT)菌株は、Axel Mogk博士(ZMBH、ハイデルベルク大学、ドイツ)の厚意により寄贈されたものである。さらに、抗ClpBポリクローナルウサギAbを用いたWBにより上記の細菌タンパク質試料中のClpBの有無を分析し、WBのバンドとELISAのClpB濃度との間でシグナル強度値を比較した。全てのWT大腸菌(E.coli)培養物にClpBが検出され、そのうち7種類の培養物はClpB濃度が1000pMを上回ったが、ΔClpB大腸菌(E.coli)から抽出したタンパク質試料にはClpBは検出されなかった。WBでは、予想される96KDaサイズの主要なバンドがWTに見られたが、ΔClpB大腸菌(E.coli)には見られなかった。これらのバンドのOD強度は、個々の試料の間で差が認められ、大腸菌(E.coli)培養物の同じ試料でELISAにより測定したClpB濃度との間に正の相関が認められた。このように、ΔClpB大腸菌(E.coli)のタンパク質調製物にはClpBが検出されなかったことからアッセイの特異性が確認され、ELISAとWBとの間に良好な一致がみられたことにより、両ClpB免疫検出技術の交差検証がもたらされた。
ClpB血漿アッセイによって腸内細菌由来のClpBが検出されることを確認するため、WTまたはΔClpB大腸菌(E.coli)を3週間、胃内強制投与により連日与えたマウスの血漿中のClpBをClpB ELISAを用いて測定した。血漿試料は、本発明者らが既に発表している研究(Tennouneら,2014)から得た。対照マウスおよび細菌を含まない培養ブロスを強制投与したマウスはともに、その血漿中にClpBが通常に存在することが見出された。WT大腸菌(E.coli)を投与したマウスでは血漿中ClpBレベルが増加したが、ClpB欠損大腸菌(E.coli)を与えたマウスでは血漿中ClpBレベルは変化しなかったことから、血漿中ClpBの起源が腸内細菌であることが確認されたたのは重要なことである。
ClpB ELISA
100mM NaHCO 緩衝液(pH9.6)中2μg/mlの濃度のウサギポリクローナル抗大腸菌(E.coli)ClpB抗体(Delphi Genetics社(ゴスリ、ベルギー)が注文により作製したもの)100μlを用いて、96ウェルMaxisorpプレート(Nunc社、ロチェスター、ニューヨーク州)を4℃で12時間コートした。0.05%Tween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)でプレートを洗浄した(5分×3)。組換え大腸菌(E.coli)ClpBタンパク質(Delphi Genetics社が注文により作製したもの)を試料緩衝液(PBS、アジ化ナトリウム0.02%、pH7.4)で5pM、10pM、25pM、50pM、70pM、100pMおよび150pMに連続希釈し、2回の反復実験でウェルに加えて標準物質を作製した。分析物試料は、マウスおよびラットの結腸粘膜および血漿の試料または大腸菌(E.coli)K12培養物のタンパク質抽出物を含んだ。分析物試料を残りのウェルに2回の反復実験で加え、RTで2時間インキュベートした。プレートを0.05%Tween 20を含むPBS(pH7.4)で洗浄した(5分×3)。ウェルにマウスモノクローナル抗大腸菌(E.coli)ClpB抗体(試料緩衝液中1:500、Delphi Genetics社が注文により作製したもの)を加え、RTで90分間インキュベートした。0.05%Tween 20を含むPBS(pH7.4)でプレートを洗浄した(5分×3)。Jackson ImmunoResearch Laboratories社(ウエストグローブ、ペンシルベニア州)製のアルカリホスファターゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(試料緩衝液中1:2000)をウェルに加え、RTで90分間インキュベートした。0.05%Tween 20を含むPBS(pH7.4)でプレートを洗浄し(5分×3)、次いで、リン酸p−ニトロフェニル溶液(Sigma社、セントルイス、ミズーリ州)100μlをアルカリホスファターゼ基質として加えた。RTで40分間インキュベートした後、3N NaOHを50μL加えることにより反応を停止させた。マイクロプレートリーダーMetertech 960(Metertech社、台北、台湾)を用いて405nmでのODを決定した。血漿試料もClpBタンパク質標準物質希釈液も添加していないプレートの読みから得たブランクOD値を試料OD値から減じた。
ClpBウエスタンブロット
大腸菌(E.coli)K12のタンパク質抽出物を用いてウエスタンブロットを実施した。トリス−グリシン緩衝液中20%のアクリルアミドSDSゲル上でタンパク質試料(10μg)を分離してニトロセルロース膜(GE Healthcare社、オルセー、フランス)に転写し、0.05%(w/v)Tween 20を含むTBS(10mmol/Lトリス、pH8;150mmol/L NaCl)中5%(w/v)の脱脂粉乳で少なくとも1時間、RTにてブロックした。次いで、膜をウサギポリクローナル抗大腸菌(E.coli)ClpB抗体(1:2000、Delphi Genetics社)と4℃で一晩インキュベートした。TBS/0.05%Tween 20中5%(w/v)脱脂粉乳のブロッキング溶液で3回洗浄した後、膜をペルオキシダーゼコンジュゲート抗ウサギIgG(1:3000、SantaCruz Biotechnology社)と1時間インキュベートした。3回洗浄した後、ECL検出キット(GE Healthcare社)を用いてペルオキシダーゼ反応を可視化した。タンパク質バンドを分子量標準物質(Precision Plus、BioRad社)と比較し、ImageScanner III(GE Healthcare社)を用いてフィルムをスキャンし、ImageQuant TLソフトウェア7.0(GE Healthcare社)を用いてバンドのピクセル密度を解析した。
ラット腸管内への大腸菌(E.coli)タンパク質の投与
動物
動物の飼育および実験は、米国国立衛生研究所によって確立されフランスとヨーロッパ両方の地域法令(Official Journal of the European Community L 358,18/12/1986)に準拠したガイドラインに従った。完全に整った動物施設で、制御された環境条件下(22±1℃、午前7:30に点灯する12時間の明暗サイクル)、体重200〜250gの雌性Sprague−Dawley系ラット(Janvier社、ジュネスト=サン=ティスル、フランス)を収容ケージ(1ケージ当たりラット3匹)で1週間飼育して飼育条件に馴化させた。標準的なげっ歯類用ペレット飼料(RM1 diet、SDS社、イギリス)および飲料水を自由摂取させた。
実験1
この実験は、本発明者らのin vitro大腸菌(E.coli)増殖モデルと腸内でのin vivo細菌増殖状態との関連性を評価するべく設計した。ケタミン(75mg/kg、Virbac社、カロ、フランス)/キシラジン(5mg/kg、Bayer社、レーバークーゼン、フランス)の3:1(体積)溶液の0.1mL/100g体重I.Pによりラットに麻酔をかけた。開腹術後、結紮を2箇所、すなわち、1箇所目は盲腸結腸接合部に、2箇所目はそこから4cm下の部分に留置することにより結腸を授動した。上行結腸に挿入し1回目の結紮で固定したポリプロピレンカテーテルを用いて、結腸内注入および管腔内容物採取を実施した。結腸内にMH培地または水2mlを穏やかに注入し、その直後に回収してODの測定に供した。OD測定後、結腸内容物の試料全体を結腸内に戻した。このような結腸内容物の採取を、最初の20分間は5分毎に、その後、30分後および60分後に、新たにMH培地も水も加えずに繰り返した。細菌密度を分光光度計によりλ=600nmでのODとして測定した。1回目の注入の前、30分後および60分後、門脈から血液試料を採取した。実験終了時、結腸から糞便試料を採取し、ClpBのDNA抽出およびPCRに供した。
リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応
CFX 96 q−PCR機器(BioRad社、カリフォルニア州)を用いて定量的PCR(qPCR)を実施し、ClpB DNA発現細菌の細菌密度を解析した。QAMP DNA糞便ミニキット(QIAGEN社、フェンロー、オランダ)を用いて、ラットの糞便から全DNAを抽出した。qPCRミックスは、SYBR Green Master(QIAgen社、ウエストサセックス、イギリス)5μl、フォワードプライマーおよびリバースプライマー各0.5μM、試料由来DNA、および水を含み、総体積を10μlとした。プライマーはInvitrogen社(セルジー=ポントワーズ、フランス)から購入した。3ステップPCRを40サイクル実施した。試料を95℃で10分間変性させ、60℃で2分間アニールさせ、95℃で15秒間伸長させた。
実験2
この実験は、全身循環への腸ペプチド(GLP−1およびPYY)放出に対する大腸菌(E.coli)タンパク質の効果を評価することを目的とした。上記のようにラットに麻酔をかけて結腸を授動し、対数期(n=6)または定常期(n=6)に抽出した大腸菌(E.coli)タンパク質(PBS 2mlに溶解したタンパク質0.1μg/kg)の結腸内注入を1回、20分間かけて実施した。結腸内注入の前および20分後、門脈から血液試料を採取し、GLP−1、PYYおよびClpBのアッセイに供した。実験終了時、結腸粘膜の試料を採取し、ClpBアッセイに供した。GLP−1およびPYYのアッセイは、蛍光酵素イムノアッセイキット(Phoenix Pharmaceutical社、カリフォルニア州)を製造業者の指示通りに用いて実施した。マイクロプレートリーダーであるChameleon(HIDEX社、トゥルク、フィンランド)を用いて、325nmでの励起、420nmでの発光により蛍光を測定した。
ラットへの大腸菌(E.coli)タンパク質投与、摂食量および脳c−fosに関する試験
動物
体重200〜250gの雄性Wistar系ラット(Janvier社、ジュネスト=サン=ティスル、フランス)を上記のように飼育条件に馴化させ給餌した。実験の3日前、ラットを個別の代謝ケージ(Tecniplast社、リヨン、フランス)に移し、粉末形態である以外は同じRM1 diet(SDS社)を自由摂取させた。飲料水は常時摂取可能な状態にした。馴化期間中、ラットを毎日数分間、穏やかに触れて操作に慣らした。馴化終了時、ラットを平均体重がほぼ同じになるように3つのグループに割り付け、実験1〜3に用いた。同じラットに対し、食餌制限を含む2つの実験を4日間隔で実施した。自由摂食のラットを用いた第三の実験は新たなシリーズを必要とした。
実験1
第一の実験は、対数期および定常期に抽出した大腸菌(E.coli)の膜タンパク質の効果を比較することを目的とした。ラットを一晩(18.00時〜10.00時)絶食させ、水は自由摂取とした。絶食の翌日、10.00時に大腸菌(E.coli)タンパク質をI.P.注射し、直ちにラットを予め重量を測定した飼料の入ったそれぞれの代謝ケージに戻した。1時間後、2時間後および4時間後に摂食量を測定した。第一群のラット(n=6)には、対数期に大腸菌(E.coli)から抽出した膜タンパク質をPBS 300μlに溶解して0.1mg/kg投与し、第二群のラット(n=6)には、定常期に大腸菌(E.coli)から抽出した膜タンパク質0.1mg/kgを投与し、対照群(n=6)にはPBS 300μlを投与した。
実験2
第二の実験は、対数期および定常期に抽出した大腸菌(E.coli)の細胞質タンパク質の効果を比較することを目的とした。実験1のものとほぼ同じ実験プロトコルを用いた。
実験3
この実験は、自由摂食ラットの摂食量に対する全大腸菌(E.coli)タンパク質の効果を評価するべく設計した。対数期(n=6)もしくは定常期(n=6)に抽出した大腸菌(E.coli)タンパク質(PBS 300μlに溶解したタンパク質0.1mg/kg、I.P.)の注射または対照(n=6)としてPBS単独の注射を、19時30分に実施し、ラットを予め重量を測定した飼料の入ったそれぞれの代謝ケージに戻した。2時間後、累積摂食量を測定した。その直後、ラットにペントバルビタールナトリウム(0.2mg/kg、I.P.)で麻酔をかけて、脳内のc−fos発現の免疫組織化学的試験のために灌流した。
組織の調製および免疫組織化学
脳を4%パラホルムアルデヒドの灌流/浸漬によって固定し、凍結させ、クリオスタット(Leica Microsystems社、ナンテール、フランス)で切片を作製し(14μm)、次いで、チラミドシグナル増幅(TSA)およびフルオレセインキット(NEN社、ボストン、マサチューセッツ州)を用いて免疫組織化学用に処理した。単染色の場合、c−fosに対するウサギポリクローナル抗血清(1:4,000、Ab−5、Calbiochem、Merck KGaA社、ダルムシュタット、ドイツ)を用いた。二重染色の場合、TSAの後、抗ウサギシアニン3抗体の1:200倍希釈液(Jackson ImmunoResearch社、ウエストグローブ、ペンシルベニア州)によって顕色されるβ−エンドルフィン(β−end)に対するウサギモノクローナル抗体の1:1,000倍希釈液(Life Technologies社、フレデリック、メリーランド州)、または抗マウスローダミンレッドコンジュゲート抗体の1:200倍希釈液(Jackson ImmunoResearch社)によって顕色されるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に対するマウスモノクローナルIgGの1:1,000倍希釈液(Santa Cruz Biotechnology社、テキサス州)のいずれかを使用する直接免疫蛍光技術を用いた。6枚の連続切片の視床下部の弓状核および腹内側核ならびに扁桃体中心核について、20倍の倍率で陽性細胞をカウントした。ラット1匹当たりの平均陽性細胞数を用いてグループの平均値を算出した。Adobe Photoshop 6.0ソフトウェア(Adobe Systems社、サンノゼ、カリフォルニア州)でデジタル画像の明度およびコントラストを最適化した。
マウスへの大腸菌(E.coli)タンパク質の長期投与
2か月齢の雄性C57Bl6マウス(n=32)をJanvier Labs社から購入し、8時00分に点灯する12時間の明暗サイクルで1週間、動物施設に馴化させた。次いで、自動摂食モニターをそれぞれ備えたBioDAQマウスケージ(Research Diets社、ニューブランズウィック、ニュージャージー州)にマウスを個別に入れた。BioDAQケージに3日間馴化させた後、マウスを3つのグループ(n=8)に分け、各グループには、(i)PBS、(ii)対数期に抽出した細菌タンパク質(0.1mg/kg体重)、(iii)定常期に抽出した細菌タンパク質(0.1mg/kg体重)のいずれかを1日2回、9時00分と18時30分にI.P.注射することからなる、異なる処置を実施した。飼料(SERLAB社、モンタテール、フランス)および飲料水を自由摂取させ、体重を毎日測定した。摂食データを1週間、常時モニターし、BioDAQデータビューア2.3.07(Research Diets社)を用いて解析した。食餌パターンの解析には、食餌の間隔を300秒に設定した。食餌後の間隔の時間(秒)を前の食餌で摂取した飼料の量(g)で除して飽満度を算出した。実験後、マウスを断頭により屠殺し、脳を摘出し、視床下部を切出して神経ペプチドmRNAマイクロアレイに供した。
視床下部の神経ペプチドmRNAマイクロアレイ
NucleoSpin(登録商標)RNA IIキット(Macherey−Nagel社、デューレン、ドイツ)を製造業者のプロトコル通りに用いて、大腸菌(E.coli)タンパク質を長期投与したマウスの視床下部から全RNAを抽出した。ImProm−II(商標)Reverse Transcription Systemキット(Promega社、マディソン、ウィスコンシン州)を用いて、消化したRNAを42℃で60分間逆転写した。得られたcDNAをリアルタイムPCR反応に用いた。Primer expressソフトウェア(Life Technologies社、サントーバン、フランス)で一連の9組のプライマーペアを設計し、効率および特異性を検証した。cDNA 6μlと、濃度100nMの特異的リバースプライマーおよび特異的フォワードプライマーを含むFast SYBR Green Master Mix(Life Technologies社)6μlとからなるPCR反応物をBravo液体操作システム(Agilent社)で96ウェルプレートに分注し、QuantStudio 12K Flex(Life Technologies社)で増幅した。cDNAから発生する標的遺伝子のシグナルを、投入mRNAの量のばらつきについて参照遺伝子シグナルで内部補正した。次いで、遺伝子発現レベルを対応する対照試料群と比較し、2 −ΔΔCq 法で制御を求めた。
電気生理学的記録
既に記載されている(Fioramontiら,2007)通りに、成体POMC−eGFPマウス(5〜7週齢;Ref:C57BL/6J−Tg(Pomc−EGFP)1Low/J、The Jackson Laboratory社)から脳切片(250μm)を作製した。切片を少なくとも60分の回復時間の間、NaCl 118mM、KCl 3mM、MgCl 1mM、NaHCO 25mM、NaH PO 1.2mM、CaCl 1.5mM、Hepes 5mM、D−グルコース 2.5mMを含有し酸素を含ませた細胞外培地(スクロースでモル浸透圧濃度を310mOsMに調整、pH7.4)中、RTでインキュベートした。記録チャンバに入れた後、同じ細胞外培地を用いて切片を2〜3ml/分で灌流した。蛍光(フルオレセインフィルタ)およびIR−DICビデオ顕微鏡観察の装備を備えたNikon顕微鏡EF600(Nikon France社、シャンピニー=シュル=マルヌ)で切片を観察した。蛍光ビデオカメラ(Nikon社)に40倍の水浸対物レンズ(Nikon社)を用いて、生存ARC POMCニューロンを可視化した。ろ過した細胞外培地をホウケイ酸ピペット(4〜6MΩ;OD 1.5mm、Sutter Instruments社、ノバート、カリフォルニア州)に満たした。Multiclamp 700B増幅器を用いて細胞接着型の記録を行い、Digidata 1440Aインターフェースを用いてデジタル化し、pClamp 10.3ソフトウェア(Axon Instruments社、Molecular Devices社、サニーベール、カリフォルニア州)を用いて3kHzで取得した。ピペットと細胞の静電容量を完全に相殺した。安定なベースラインが確立された後、1nMのClpB(Delphi Genetics社)を5〜10分間灌流した。ClpB灌流の最後の3分間、つまり灌流から7分後〜10分後にPOMCニューロンの発火率を測定し、灌流前の3分間に測定した発火率と比較した。
統計解析
GraphPad Prism 5.02(GraphPad Software社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて、データを解析しグラフをプロットした。コルモゴロフ・スミルノフ検定により正規性を評価した。正規性の結果に応じて、分散分析(ANOVA)またはノンパラメトリックなクラスカル・ウォリス(K−W)検定にチューキーまたはダンの事後検定を用いて群間差を解析した。正規性の結果に応じて必要があれば、スチューデントのt検定およびピイアソンの相関関係またはマン・ホイトニー(M−W)検定を用いて個々のグループを比較した。繰り返し測定のある(RM)ANOVAおよびボンフェローニ事後検定を用いて、連続実験の効果を解析した。データを平均±平均の標準誤差(s.e.m)で表し、いずれの検定でも、p<0.05を統計的に有意であると見なした。
結果
定期的な栄養供給後の大腸菌(E.coli)の増殖
大腸菌(E.coli)培養物に1回目のMueller−Hinton(MH)栄養培地供給を実施したところ、3つの細菌増殖期、すなわち、1)2時間の誘導期;2)4時間の対数増殖期および3)安定状態が6時間維持された吸光度(OD)0.35の定常期が観察された。3回目および5回目のMH培地供給後では、2つの増殖期、すなわち対数期および安定期のみがみられ、前者は栄養供給直後に始まった。新たな供給サイクルはそれぞれ、対数増殖期の時間が短くなるという特徴がみられ、3回目の後が2時間、5回目の後が20分であった。5回目の栄養供給後、細菌タンパク質を抽出して膜画分と細胞質画分とに分離し、プロテオーム解析および絶食ラットのin vivo実験に用いた。新たな実験では、定期的な栄養供給を継続することによって細菌増殖の動態がさらに加速し得るかどうかを検証するため、大腸菌(E.coli)K12に栄養を9回供給した。7回目および9回目の栄養供給後、対数増殖期はそれ以上変化することはなく、ODの相対的増加が同じ(Δ0.3)で20分間継続し、それぞれの栄養供給後も細菌増殖は同じであることを反映していた。マクファーランド標準によれば、ODの0.3の増加は細菌数10 10 の増分に相当する。9回目の栄養供給後、対数期および定常期に細菌タンパク質を抽出したところ、総タンパク質濃度はそれぞれ0.088mg/mlおよび0.15mg/mlであった。抽出したタンパク質を、ClpBレベルに関して試験し、ATP産生アッセイ、ならびに自由摂食させたマウスおよびラットへの結腸内注入および全身注射を含むin vivo実験とそれに続く脳内のc−fos検出に用いた。
プロテオーム解析
タンパク質発現プロファイルが栄養誘導性の細菌増殖期に応じて変化するかどうかを解析するため、5回目のMH培地添加後、それぞれ対数期および定常期に対応する10分後および2.3時間後に抽出した大腸菌(E.coli)K12タンパク質の膜画分と細胞質画分について、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)を別々に実施した。検出されたタンパク質スポットの総数は2895(膜が1367、細胞質が1528)であった。
膜タンパク質の2D−PAGEを対数期と定常期とで比較したところ、差次的に(少なくとも1.5倍)発現したタンパク質が20種類みられた。このうち17種類のタンパク質が対数期に発現の増加を示し、15種類を質量分析によって同定した。細胞質タンパク質の2D−PAGEの比較では、差次的に(少なくとも1.5倍)発現したタンパク質が20種類示された。膜タンパク質とは対照的に、細胞質タンパク質の大部分(19種類)は定常期に発現の増加を示した。フラジェリンに相当するタンパク質スポット1つのみが、対数期でより高い発現を有した。同定されたタンパク質の大部分は同化または異化の過程に関与し、両増殖期において全体として混合代謝プロファイルを示した。
in vitroでの大腸菌(E.coli)タンパク質によるATP産生
増殖期での細菌プロテオームの変化がそのエネルギー抽出能に影響を及ぼし得るかどうかを検討するため、対数期および定常期の大腸菌(E.coli)K12タンパク質による栄養素からのATP産生をin vitroで試験した。両増殖期のタンパク質はともに、様々なエネルギー源からのATP産生を増加させることが可能であることが見出された。ATP濃度は、スクロース溶液よりもMH培地などのタンパク質含有混合エネルギー源を使用したときの方が高かった。ATP産生量は、細菌タンパク質の濃度とともに用量依存的に増加したが、タンパク質のATP産生効果については、対数期と定常期との間に有意差は見出されなかった。
in vitroでの大腸菌(E.coli)によるClpB産生
本発明者らは、大腸菌(E.coli)ClpB検出するための酵素結合免疫測定法(ELISA)を開発および検証し、本研究に用いてきた。細菌増殖期の間でClpBタンパク質産生量が異なるか否かを4つの別個の大腸菌(E.coli)K12培養物で試験した。ウエスタンブロットでは、全タンパク質調製物でClpBに対応する96kDaのバンドが検出され、定常期にそのレベルが増加した。このような変化はさらに、同じ細菌タンパク質調製物においてClpB ELISAを用いて確認されており、ClpB濃度は定常期のほぼ2倍であった。
栄養素および大腸菌(E.coli)タンパク質の腸内注入
本発明者らのin vitro栄養誘導性大腸菌(E.coli)増殖モデルがin vivoでの腸内細菌の増殖動態と関連するかどうかを検証するため、麻酔ラットの結腸内にMH培地または水を注入した。MH培地の注入では、水の場合とは異なり、腸内に細菌増殖が誘導され、対数増殖期が20分間継続し、in vitroのデータとの一致がみられた。門脈で測定した血漿ClpBレベルは、MH注入から30分後または60分後で有意差は認められなかった。それでも、血漿中ClpB濃度は糞便中のClpB DNA含有量との正の相関が認められた。
次に、大腸菌(E.coli)プロテオームの増殖依存性の変化が宿主の腸での食欲制御機序に局所的に影響を及ぼし得るかどうかを明らかにするため、別の実験で、麻酔ラットの結腸に対数期または定常期の大腸菌(E.coli)タンパク質をともに0.1mg/kgで20分間注入した。注入20分後に測定した結腸粘膜中のClpB濃度は、定常期のタンパク質を投与したラットでは高かったが、ClpBの血漿中レベルは、対数期または定常期のいずれの細菌タンパク質による影響を受けることはなかった。大腸菌(E.coli)タンパク質が宿主の食欲シグナル伝達に及ぼす効果は細菌増殖期に依存し得るとする本発明者らの仮説と一致して、対数期の大腸菌(E.coli)タンパク質の結腸内注入は、GLP−1の血漿中レベルを刺激するが、定常期のタンパク質は刺激せず、これに対し、定常期のタンパク質の注入後は、PYYの血漿中レベルが増加するが、対数期のタンパク質では増加しないことが見出された。
大腸菌(E.coli)タンパク質を急性投与したラットの摂食量および脳c−fos
全ての被験ラットおよび被験マウスの血漿中にClpBが存在していたことから、血漿中の大腸菌(E.coli)タンパク質がその全身作用を介して食欲に影響を及ぼし、その効果は細菌増殖期に関連するタンパク質によって異なり得るという可能性がある。一晩絶食させたラットを用いてこの可能性を試験することにより、定常期に抽出した大腸菌(E.coli)タンパク質の膜画分の単回腹腔内(I.P.)投与(0.1mg/kg体重)が、再給餌したときの1時間および2時間の摂食量を対照群と比較して減少させることが見出された。これに対し、対数期に抽出した大腸菌(E.coli)タンパク質(0.1mg/kg体重、I.P.)の細胞質画分の投与は、再給餌したときの4時間の摂食量を増加させた。
大腸菌(E.coli)全タンパク質が増殖期依存性に自発的摂食量に影響を及ぼし、ARCなどの中枢部位を活性化し得るかどうかをさらに検討するため、自由摂食ラットに細菌タンパク質(0.1mg/kg体重、I.P.)を暗期開始前に注射した。注射後、摂食量を2時間測定し、次いでラットを屠殺し、脳内のc−fos発現の解析に供した。定常期の細菌タンパク質を注射したラットは、対照よりも摂食量が少なかったが、摂食量が対数期の細菌タンパク質の注射によって有意に影響を受けないことが見出された。
自由摂食ラットに大腸菌(E.coli)タンパク質をI.P.注射してから2時間後、視床下部のARCおよび腹内側核(VMN)ならびにCeAでのc−fos発現を免疫組織化学的に解析した。定常期の細菌タンパク質を投与したマウスのARCおよびVMNにc−fos陽性細胞数の増加がみられた。ARCのc−fos発現細胞の大部分がβエンドルフィンを含有し(対照が71.31±12.81%、大腸菌(E.coli)対数期が73.56±10.45%、大腸菌(E.coli)定常期が80.50±9.68%、ANOVA p=0.36)、すなわち、食欲抑制POMCニューロンであると同定された。その結果、ARCの残りのc−fosニューロンの割合に有意な群間差は認められなかった(対照が28.69±12.81%、大腸菌(E.coli)対数期が26.44±10.45%、大腸菌(E.coli)定常期が19.5±9.68%、ANOVA p=0.36)。βエンドルフィン陽性細胞の総数に有意な群間差は認められなかった(対照が54.82±10.67個、大腸菌(E.coli)対数期が66.03±11.43個、大腸菌(E.coli)定常期が66.03±5.06個、ANOVA p=0.09)が、活性化βエンドルフィンニューロンの相対数は、定常期のタンパク質を投与したラットで対照および対数期のタンパク質を投与したラットと比較して増加した。さらに、活性化βエンドルフィンニューロンの数には摂食量と反比例した(ピアソンのr=−0.57、p=0.018)。
CeAのc−fos陽性細胞数は、定常期のタンパク質を注射したラットでは他の2群と比較して増加した。CeAのc−fos陽性細胞のほぼ全部の表現型がCGRP発現ニューロンであった(対照が100±0.01%、大腸菌(E.coli)対数期が100±0.01%、大腸菌(E.coli)定常期が100±0.01%、ANOVA p=0.92)。CeAのCGRP陽性ニューロンの総数は群間でほぼ同じであった(対照が123.8±13.15個、大腸菌(E.coli)対数期が118.3±25.59個、大腸菌(E.coli)定常期が126.1±6.64個、ANOVA p=0.85)が、定常期のタンパク質を投与したラットにのみc−fos活性化CGRPニューロンの百分率が増加した。CGRPニューロンの活性化は摂食量と反比例した(ピアソンのr=−0.89、p=0.001)。
大腸菌(E.coli)タンパク質を長期注射したマウスの摂食パターンおよび視床下部神経ペプチド
細菌タンパク質が摂食パターンに影響を及ぼし得るかどうかを決定するため、自由摂食マウスに大腸菌(E.coli)全タンパク質(0.1mg/kg体重、I.P.)を1日2回、1週間投与した。注射後第1日、定常期の細菌タンパク質を投与したマウスの体重および摂食量が対照と比較して有意に少ないが、対数期の細菌タンパク質を投与したマウスではそのようなことがないという特徴がみられた。1日の食餌量に有意な群間差は認められなかったが、定常期のタンパク質を投与したマウスでは1週間後、注射前日と比較して食餌量の減少が観察された。食餌頻度に有意な群間差は認められなかったが、定常期の細菌タンパク質を投与したマウスでは食餌頻度が増加する傾向が観察された。注射を実施した6日間の総摂食量は3つの群間で有意差がなかったが、明期と暗期について別々に総摂食量を解析したところ、対数期のタンパク質を注射したマウスでは明期の摂食量は増加するが、暗期の摂食量は減少することが示された。これに対し、定常期のタンパク質を投与したマウスでは、暗期で対照より少ない摂食量が示されたが、明期の摂食量は影響を受けなかった。注射後第1日、定常期のタンパク質を投与したマウスでは飽満度が増加し、1週間後、同じ群が飽満度の減少傾向を示した。
細菌タンパク質注射の6日後に観察された摂食パターンの変化の根底にある分子の変化を理解するため、食欲制御に関与する数種類の神経ペプチドの視床下部でのmRNA発現レベルを解析した。定常期のタンパク質を投与したマウスでは、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびオレキシンの前駆体mRNAレベルが対照と比較して上昇し、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の前駆体mRNAレベルが対数期のタンパク質を注射したマウスと比較して上昇し、対数期のタンパク質を注射したマウスもBDNFレベルは上昇するが、QRFPは低下することが見出された
ClpBによる視床下部POMCニューロンの電気生理学的活性化
定常増殖期にアップレギュレートされる大腸菌(E.coli)タンパク質のマーカーであり、α−MSHの模倣体でもあるClpBがARC POMCニューロンを活性化するかどうかを明らかにするため、細胞接着型パッチクランプ電気生理学を用いて、ClpBがPOMC−eGFPマウス由来の脳切片に及ぼす影響を検討した。図2からわかるように、溶液槽にClpB(1nM)を加えると、ARC POMCニューロンの約50%(n=7/13)の活動電位頻度が229±109%(基底値:2.02±0.78Hz対ClpB:3.82±1.36Hz)増加した。全般的に、POMCニューロンの発火率が完全に基底値に戻るには、ClpB添加後少なくとも10分を要した。
したがって、以上の結果は、ClpBタンパク質が飽満感および満腹感に直接影響を及ぼすことを示唆している。
考察
本発明者らの試験は、細菌タンパク質が、腸内細菌と、それぞれ腸内での栄養誘導性細菌増殖およびその全身作用に関連する短期的機序および長期的機序の両方を含む宿主の食欲制御とを生理的に結び付け得ることを明らかにする。以下の主要な結果がこの結論を裏付けている:1)定期的な栄養供給によって、20分間持続する大腸菌(E.coli)の対数増加が促進および安定化され、このことはin vivoのデータと一致する;2)大腸菌(E.coli)の定常増殖期は、総細菌タンパク質含有量の増加、およびClpBの増加を含む異なるプロテオームプロファイルを特徴とした;3)両増殖期の大腸菌(E.coli)タンパク質がin vitroのATP産生を用量依存性に刺激した;4)血漿中のClpBレベルは、腸内での栄養誘導性の細菌増殖の後も変化しなかったが、腸内細菌叢のClpB DNAと相関したこと;5)対数増殖期および定常増殖期の大腸菌(E.coli)タンパク質を腸内に注入したところ、それぞれ血漿中のGLP−1およびPYYを刺激した。6)大腸菌(E.coli)タンパク質を全身注射すると、定常期のタンパク質にのみ、食欲抑制性のARCニューロンおよびCeAニューロンのc−fos活性化を伴って摂食量が有意に減少した、最後に7)ClpBがARC POMCニューロンの発火率を刺激した。
定期的な栄養供給と細菌増殖
ヒトの消化管に生着する様々な細菌のなかでも、大腸菌(E.coli)は最も存在量の多い通性嫌気性菌であり、そのため共生腸内細菌のモデル生物となっている(Foucaultら,2009)。本発明者らは、本発明において、定期的な栄養供給の期間に大腸菌(E.coli)がその増殖動態を変化させ、5回目の供給サイクル直後に対数増殖が生じて20分間継続した後、定常期に入ることを見出した。その後、次の栄養供給後も同じように増殖サイクルが再現されることから、それが細菌機序に固有のペースメーカーセットの役割を果たしている可能性が示唆される。ラットの結腸でも栄養注入に応答して同じような細菌増殖動態がみられたことから、本発明者らのin vitroのデータがin vivoの状況、例えば定期的に食餌を摂るヒトにおいて適切であり得ることが裏付けられる。毎回新たに供給した後も細菌数の増加量が10 10 個で安定に維持されたことから、これに対応する腸内タンパク質含有量の増加を含む細菌バイオマスの安定な産生が、宿主の食餌誘導性調節因子に何らかの役割を果たしている可能性が示唆される。ヒトの平均的な食事相が定期的に栄養供給した細菌の対数増殖の持続時間と類似であることを考慮すれば、摂取した栄養分と接触してから20分後に腸内細菌が定常期に達することによって宿主の満腹感が誘発され得ると推測することは魅力的である。しかし、消化管内の細菌含有量は、胃内の10 個〜結腸内の10 12 個の範囲内にある。さらに、摂取した栄養分が胃と小腸の中を進むのに約2時間、大腸の中を進むのに約10時間を要する。栄養分が大部分の腸内細菌に送達されるまでこれほどの遅延があることから、食事相での細菌増殖は、栄養分の一度の供給と直接接触することのほかにも、腸管内腔に栄養分が放出されることにより食物摂取に対するパブロフの脳反射によって開始され得る可能性がある。
増殖期での細菌タンパク質発現と腸内感知
定期的に栄養供給した大腸菌(E.coli)の増殖動態は宿主の食事相および食後相に関連し得ることから、細菌タンパク質の発現が腸内細菌と宿主の食欲制御とを結びつける可能性があるかどうかを検討した。最初に、対数増殖期と定常増殖期との間で大腸菌(E.coli)のプロテオームを比較した。この解析には、対数期の中間期、すなわち栄養供給から10分後および通常満腹感を感じることを特徴とする時間である2時間後の定常期に大腸菌(E.coli)タンパク質を抽出した。2つの増殖期の間で差次的に発現するタンパク質が少なくとも40種類あることが発見されたことから、両増殖期は、細菌増殖後にタンパク質含有量がほぼ2倍になることにより定量的に異なるのみならず、定性的にも異なることが確認された。次いで、i)細菌タンパク質がエネルギー基質を生成する能力を比較すること、およびii)細菌タンパク質が食欲調節経路に及ぼす可能性がある直接作用を決定することによって、タンパク質発現プロファイルの変化が宿主の食欲制御と関連する可能性を調べた。後者の可能性については、大腸菌(E.coli)ClpBがα−MSHのコンホメーションを模倣するタンパク質であることがプロテオミクスにより最近明らかにされており(Tennouneら,2014)、食欲抑制ペプチドまたは食欲促進ペプチドに相同なエピトープを示す腸内細菌タンパク質が交差反応性自己抗体の産生の原因であり得るとする本発明者らの以前の仮説の妥当性を確認したデータ(Fetissovら,2008)によって裏付けられている。したがって、細菌増殖期に関連するタンパク質発現プロファイルに応じて、そのような細菌模倣タンパク質が組み合わさって食欲に直接影響を及ぼし得ると考えられる。本発明者らは、大腸菌(E.coli)培養物と腸粘膜を解析することによって、ClpBレベルの増加が定常増殖期に関連することを見出した。したがって、ClpBの増加が、栄養誘導性の大腸菌(E.coli)増殖および細菌タンパク質産生量の増加後に起こる食欲抑制経路の活性化に寄与し得る。重要な疑問は、ClpBなどの細菌タンパク質が食欲調節経路のどの部分に作用するのかということである。
細菌タンパク質は腸粘膜に存在する(Haangeら,2012)が、その腸障壁の通過については十分に研究されていない(LimおよびRowley,1985)。理論的には、細菌が腸内で自然にまたは誘導されて溶解した(RiceおよびBayles,2008)後、腸神経系により調節される腸細胞での吸収および傍細胞拡散によって、細菌成分が粘膜上皮バリアを通過することが可能になる(Neunlistら,2012)。例えば、グラム陰性菌が溶解したときに放出されるリポ多糖(LPS)は、健常なヒトおよびマウスの血漿中に自然に存在し、高脂肪食を摂取すると基底レベルが高くなる(Caniら,2007)。LPSの血漿中レベルは食後にも上昇する(Harteら,2012)が、細菌タンパク質に関するそのようなデータはない。本明細書では、ラットの腸内で細菌が増殖した後、またはラットの腸内に細菌タンパク質を注入した後も血漿中ClpBレベルが安定に維持されることを示している。このことから、血漿中ClpBのほか、最も可能性が高いものとして血漿中に存在するほかの細菌タンパク質が、栄養誘導性の細菌増殖による影響を急激に受けることはなく、したがって、脳への短時間の満腹感シグナル伝達に関与するとは考えはずがないことが示される。
それでも、血漿中ClpB濃度には腸内細菌叢中のClpB DNAとの相関が認められ、このことは、ClpB産生細菌の数が、長期的には栄養誘導性の細菌増殖による変動とは比較的無関係なはずであり、長期間にわたる血漿中ClpBレベルの維持に関与する主要な要因であり得ることを示唆する。この結論は、大腸菌(E.coli)を長期間強制投与したマウスは大腸菌(E.coli)ClpB変異株を投与したマウスとは異なり、血漿中ClpB濃度の上昇を示すClpB ELISAの検証で得られた本発明者らのデータによってさらに裏付けられる。したがって、血漿中に存在するClpBを含む腸内細菌タンパク質は、腸内細菌叢の組成と長期的なエネルギー代謝の制御とを系統的に結び付ける可能性がある。
大腸菌(E.coli)タンパク質がin vitroのATP産生に及ぼす影響
食物連鎖を通じたエネルギー交換は、あらゆる生物体が普遍的につながっていることを表している(Yunら,2006)。細菌および動物の栄養素の異化作用から生じるATPはともに、同化過程の主要なエネルギー基質としての役割を果たす。動物は、アデノシン−5’−一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性を介してATPの変化を感知することができ、それにより、ATPレベルが低いときは摂食量が増加し、その逆も同様に起こる(DzamkoおよびSteinberg,2009)。そこで本研究では、対数期および定常期の大腸菌(E.coli)タンパク質がin vitroでATPを生成する能力を比較した。実際、同定されたタンパク質の多くが同化特性および異化特性を示した。本発明者らは、大腸菌(E.coli)タンパク質がin vitroでATP産生を刺激することが可能であることを見出し、腸内で溶菌が起こった後も同タンパク質がATP産生を触媒し続け得ることが示唆される。対数期のタンパク質と定常期のタンパク質との間にATP産生能の差は認められなかったが、細菌タンパク質濃度依存性のATP産生は、栄養誘導性の細菌増殖後に起こる細菌タンパク質含有量の増加によってより高いATP合成が起こるはずであることを示している。腸内細菌叢が宿主の代謝のためにエネルギーを摂取する効率の関連性は、肥満および痩身のヒトおよびマウスを比較することによって既に確立されている(Turnbaughら,2006)。本発明者らのデータは、大腸菌(E.coli)タンパク質のATP生成能を示すことにより、これらの結果をさらに裏付けている。ほかにも、食餌誘導性の細菌増殖が腸内ATPの増加を引き起こし、これが管腔でのエネルギー利用率および腸弛緩の感知に寄与するはずであることが示唆されている(Glasgowら,1998)。
満腹ホルモンに対する大腸菌(E.coli)タンパク質の腸内作用
次に、腸内の大腸菌(E.coli)タンパク質がGLP−1およびPYYなどの腸満腹ホルモンの全身放出を刺激し得るかどうかを検討した(Adrianら,1985;Batterhamら,2002;Beglinger and Degen,2006;Flintら,1998)。実際、両ホルモンとも、腸全体に存在し結腸に大量に存在する同じまたは異なる腸内分泌L細胞が産生し(Eisseleら,1992)、このため、L細胞は細菌タンパク質に直接曝される。本発明者らは、大腸菌(E.coli)タンパク質が及ぼす作用がGLP−1放出とPYY放出とで異なることを見出し、対数増殖期のタンパク質がGLP−1を刺激し、定常増殖期のタンパク質がPYYを刺激することを示した。これらの結果は、栄養誘導性の細菌増殖と、既に知られているGLP−1およびPYYの食餌誘導性の放出動態との間に何らかの類似性を指摘している。実際、ヒトで明らかにされているように、血漿GLP−1の急激なピークは胃内に流動食を注入してから15分後に起こるが、長時間持続する血漿中PYYの上昇は食後15〜30分で始まる(Edwardsら,1999;Gerspachら,2011)。GLP−1の放出時間が長くなることは、脂肪の摂取に関連した(van der Klaauwら,2013)。したがって、定期的に栄養供給した腸内細菌の増殖動態は、GLP−1およびPYYの放出動態に時間的に当てはまり、腸内細菌、特に大腸菌(E.coli)タンパク質には、腸の満腹感の食餌誘導性シグナル伝達を誘導する役割があることが示唆される。対数期の大腸菌(E.coli)タンパク質がGLP−1を刺激する差次的効果、血糖コントロールにおけるGLP−1のインクレチンとしての役割をおそらく反映し得る(Edwardsら,1999;Steinertら,2014)。最近、L細胞が機能性MC4Rを発現することが証明された(Panaroら,2014)ことは、α−MSHを模倣する細菌タンパク質によるその起こりうる活性化のバックグランドとなる。大腸菌(E.coli)の定常期にClpBの産生量が増加し、血漿中PYYレベルの増加に関連して腸粘膜のClpBレベルが上昇することは、ClpBが結腸内のPYY産生L細胞の活性化に直接的な役割を果たしていることが示唆される。他方で、対数増殖期におそらくアップレギュレートされるこれまで同定されていない大腸菌(E.coli)タンパク質がGLP−1分泌を優先的に刺激し得る。
摂食量および食欲調節脳経路に対する大腸菌(E.coli)タンパク質の全身作用
本発明者らは本発明において、空腹または自由摂食のラットおよび自由摂食マウスに大腸菌(E.coli)タンパク質を末梢注射すると、大腸菌(E.coli)の増殖期に応じてその摂食量が変化することを明らかにした。血漿中ClpBは栄養素の腸内注入による影響は受けないが、短時間にわたって安定であったことを考えると、細菌タンパク質の全身作用は、その食欲に対する長期的調節作用と関連すると解釈できるはずである。さらに、対数期の時間が短いことから、長期間継続する定常期にアップレギュレートされる細菌タンパク質が血漿中で優勢になるはずであり、したがって、そのタンパク質を全身投与することにより、生理的状況を一層よく表すことができる。これらの実験に使用した濃度0.1mg/kgの大腸菌(E.coli)タンパク質は、ヒトまたはげっ歯類に末梢投与した後に満腹感を誘発するのに有効な量のレプチンまたはPYYなどのペプチドホルモンと同等のものであった(Batterhamら,2002;Halaasら,1995;Heymsfieldら,1999)。
空腹ラットに対数期の細胞質タンパク質を投与したところ、明期の再給餌時の摂食量の増加、および定常期の膜タンパク質による摂食量の減少が観察された。この実験から、同じ細菌の異なるタンパク質の混合物が、その全身作用によって摂食量を増大または減少させることが可能であることが確認された。しかし、より生理的な状況下で総大腸菌(E.coli)タンパク質が暗期の自由摂食ラットに及ぼす影響を試験することにより、定常期のタンパク質によって誘導される摂食量の減少のみが観察された。
さらに、自由摂食マウスへの反復注射の結果は、大腸菌(E.coli)タンパク質には負のエネルギーバランスを促進する役割があることを裏付けている。実際、細菌タンパク質注射の第1日、摂食量および体重の減少が起こり、満腹度の増加を特徴とする、定常期のタンパク質を投与したマウスでは有意であった。その後、これらのマウスの摂食量は平常に戻ったが、食餌量が漸減するとともに食餌頻度が増加し、これは摂食量を維持する補償機序である可能性が最も高い(Meguidら,1998)。さらに、明期と暗期で大腸菌(E.coli)タンパク質の作用が異なることが観察された。このため、視床下部の食欲調節神経ペプチドのmRNA発現パターンは、食欲抑制経路と食欲促進経路の両方の活性化を伴う混合応答を示した。大腸菌(E.coli)タンパク質を投与したマウスの両方の群が、VMNのMC4Rの下流にある食欲抑制経路であるBDNF mRNAの類似の増加を示したことは注目すべきことである(Xuら,2003)。この経路は、両群で観察された暗期の摂食量減少の根底にあり、このような摂食量減少は、食欲促進性のQRFP(Chartrelら,2003)およびNPY(Herzog,2003)のより低レベルを示す、対数期のタンパク質を注射したマウスではさらに顕著であった。これに対し、定常期の細菌タンパク質を投与したマウスは、CRH mRNAレベルの上昇を伴う食欲抑制プロファイルの増強を示し、MC4R発現PVNニューロンが関与している可能性が最も高い(Luら,2003)。注射を6日間実施したこれらのマウスでは、これらの変化が食餌頻度を刺激するオレキシンAのmRNA前駆体の発現増加と組み合わさって(Bairdら,2009)、それぞれ食餌量および飽満度の減少に寄与し得る。
定常期に産生される細菌タンパク質がいくつかの重要な中枢食欲抑制経路を活性化し得るとする本発明者らの仮説に一致して、本発明者らは、自由摂食ラットでは、食欲抑制ARC POMCニューロン、ならびに長い間満腹中枢として知られ、ARC POMCニューロンと相互に連結しているVMN(Sternsonら,2005)においてc−fos発現が増加することを見出した。得られたc−fosパターンは、食物摂取時の(Johnstoneら,2006)、またはPYYもしくは膵ポリペプチドなどの満腹ホルモンによって誘導される(Batterhamら,2002;Challisら,2004;Linら,2009)満腹感誘発応答のパターンと類似している。c−fos活性化POMCニューロンの数が比較的少数(約10%)であることから、循環血中の大腸菌(E.coli)タンパク質がこの視床下部経路を介して作用し、食欲および体重に対して調節効果を示し得ることが示唆される。NPY/AgRPニューロンによるc−fos活性化を決定することは実現不能であったが、これらのニューロンもMC3RおよびMC4Rを発現する(Mounienら,2005)ことから、細菌タンパク質によるシグナル伝達へのその関与を除外することはできない。さらに、CeA CGRPニューロンにおけるc−fosの活性化がARC POMCよりも強い(約40%)ことは、ARC POMCニューロンおよびNPY/AgRPニューロン、および可能性として、本発明では解析しなかった孤束核などの他の食欲調節脳領域から収束する下流の作用があることを示し得る。
最後に、ARC POMCニューロンなどの食欲を調節する脳部位の細菌タンパク質による活性化が細菌タンパク質の局所作用によって引き起こされ得るかどうかを決定するため、これらのニューロンへのClpB添加がその電気的活動を活性化し得るかどうかを調べた。本発明者らの結果から、被験ニューロンの約半数はその活動電位頻度が増加し、活性化状態が少なくとも10分間持続することが示された。ClpBの持続的作用は、機能性のMC3RおよびMC4Rを発現するPOMCニューロンに対するα−MSHの作用(Smithら,2007)と一致し、ClpBが、満腹感を誘発するPYYおよびレプチン(Batterhamら,2002;Cowleyら,2001)といくぶん類似する、視床下部POMCニューロンの生理活性化因子でありうることを示唆している。しかし、ClpBがPOMCニューロンを直接活性化することができたのか、または局所ネットワークを介して活性化することができたのかは明らかではない。
以上のデータを考え合わせると、これらのデータは、全身に存在し定常増殖期に発現が増加するClpBなどの大腸菌(E.coli)タンパク質が、脳の食欲抑制経路の活性化を介して負のエネルギーバランスの促進に何らかの役割を果たしていることを裏付ける。同様に、大腸菌(E.coli)および可能性として腸内細菌科に属するほかの細菌の少ないまたは多い存在量をもたらす微生物叢の組成の変化が、宿主のエネルギーバランスにそれぞれ正の影響または負の影響を及ぼし得ることが示唆される。
実施例2
この実施例は、ClpB発現細菌の摂食量に対する効果を証明する。
1か月齢の雄性C57Bl6マウス(Janvier Laboratories社)を上記の通りに動物施設に1週間馴化させ維持した。マウスを以下の3つの群に割り付けた:(i)10 個の大腸菌(E.coli)K12菌(ClpBを発現する)を強制投与する群;(ii)10 のClpB欠損大腸菌(E.coli)K12菌を個強制投与する群;(iii)いかなる処置も実施しない対照群。ClpB変異株は、Bernd Bukau研究室(ZMBH、ハイデルベルク大学、ハイデルベルク、ドイツ)で作製され、Axel Mogk博士の厚意により、対応する野生型(WT)大腸菌(E.coli)とともに寄贈された。マウスを個別にBioDAQケージ(Research Diets社)に入れ、21日間、細菌を含むLB培地0.5mlを連日、暗期開始前に胃内強制投与した。強制投与の最初の数日は、ClpBタンパク質を発現しない細菌とは対照的に、WT大腸菌(E.coli)を投与したマウスに体重および摂食量の減少がみられた(図1)。
実施例3
この実施例は、ClpB発現細菌の肥満ObObマウスに対する効果を証明する。
遺伝的に肥満のObObマウスを上記の通りに動物施設に1週間馴化させ維持した。マウスに(i)10 個の大腸菌(E.coli)K12菌(ClpB発現する);(ii)10 個のClpB欠損大腸菌(E.coli)K12菌;両菌ともミューラー・ヒントン(MH)培地に入れたもの、または(iii)対照のMH培地のみを胃内強制投与した。ClpB変異株は、Bernd Bukau研究室(ZMBH、ハイデルベルク大学、ハイデルベルク、ドイツ)で作製され、Axel Mogk博士の厚意により、対応する野生型(WT)大腸菌(E.coli)とともに寄贈された。マウスを個別にBioDAQケージ(Research Diets社)に入れ、図のように、21日間、胃内強制投与を連日実施した。
本発明者らは、大腸菌(E.coli)K12 WT菌の強制投与により、体重増加が56%減少し(図3および4)、脂肪量/除脂肪量比が減少し(図5および6)、総摂食量が20%減少する(図7および8)が、ClpB欠損大腸菌(E.coli)K12菌では以上のことは観察されないことを示した。
実施例4
この実施例では、ClpBを発現するほかの菌株の肥満ObObマウスに対する効果を証明する。
遺伝的に肥満のObObマウスを上記の通りに動物施設に1週間馴化させ維持した。マウスに(i)10 個の大腸菌(E.coli)K12菌(ClpBを発現する);(ii)10 個の大腸菌(E.coli)Niessle 1917(ClpBを発現する);(iii)凍結乾燥形態の10 個の大腸菌(E.coli)Niessle 1917菌(ClpBを発現する);いずれの菌ミューラー・ヒントン(MH)培地に入れたもの、または(iv)対照のMH培地のみを胃内強制投与した。図のように、マウスに14日間、胃内強制投与を連日実施した。
本発明者らは、ClpBを発現する大腸菌(E.coli)のいずれの株を強制投与しても、体重増加の減少(図9および10)および脂肪含有量の減少(図11)が引き起こされることを示した。
実施例5
この実施例では、ClpBの直接的な満腹感誘発作用を裏付ける。
脳室内(ICV)にClpBを注射したラットに関する動物実験では、ClpBが視床下部MCR受容体ファミリーを介して摂食行動に作用する可能性が示された。
空調管理された特殊な動物施設で200〜250gのSprague−Dawley系雄性ラット(Janvier社、ラルブレル、フランス)を12時間:12時間の明暗サイクル(明期7〜19時)下、24℃にて維持した。ラットに標準的なペレット固形飼料(RM1 diet、SDS社、エセックス、イギリス)を与えた。飲料水は常時自由摂取とした。
ステンレス鋼カニューレ(C311 GA、外径0.9mm、内径0.58mm、Plastics One社、ロアノーク、バージニア州)を埋め込むため、ケタミン(75mg/kg)/キシラジン(5mg/kg)混合物(3:1vol−0.1mL/100g体重)の腹腔内注射によりラットに麻酔をかけ、New Standard Stereotaxic Instrument for Rats and Mice(Stoelting Europe社、ダブリン、アイルランド)に入れた。手術用顕微鏡(Carl Zeiss社、イェーナ、ドイツ)下、切歯バーを−3.3mmに設定してカニューレを視床下部室傍核内(ブレグマ:+2.8mm、側方:正中より−0.4mmおよび腹側:硬膜より8.2mm)に埋め込んだ。歯科用セメントを用いてカニューレを頭蓋に固定し、アンカースクリューにより補強した。覚醒後、ラットを個別に代謝ケージ(Techniplast社、リヨン、フランス)内で1週間飼育し、同じ標準げっ歯類用固形飼料(RM1、SDS社)を自由に摂食させ、水を常時摂取可能にした。術後期間中、健康状態および体重増加を毎日モニターし、回復が良好であることを確認した。
次いで、自動摂食モニターをそれぞれ備えたBioDAQラットケージ(Research Diets社、ニューブランズウィック、ニュージャージー州)にラットを個別に入れた。BioDAQケージに3日間馴化させた後、ラットを注射前の12時間絶食させ、3つの群(n=3)に分け、それぞれ無菌人工脳脊髄液2mlで希釈した異なる用量、すなわち10ng、100ngおよび1mgのClpBを単回注射で投与した。注射は暗期および給餌の開始の15分前に実施した。暗期に摂食量を測定した。
ラットは摂食量の用量依存的減少を示した(図12を参照されたい)。
(参考文献)
本願全体を通じて、様々な参考文献により本発明に関連する最新技術が記載されている。これらの参考文献の開示は参照により本開示に組み込まれる。
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