JP2009534034A - 原核微生物におけるo−グリコシル化治療用タンパク質の発現 - Google Patents

原核微生物におけるo−グリコシル化治療用タンパク質の発現 Download PDF

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    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
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Abstract

本発明は、治療用タンパク質と、治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプターに糖部分を転移する異種グリコシルトランスフェラーゼとを同時発現させることにより、原核微生物においてO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する方法に関する。

Description

関連特許出願の相互参照
本出願は、2006年4月19日出願の米国特許仮出願第60/793,531号および2006年9月6日出願の米国特許仮出願第60/842,926号の恩典を主張し、これらはいずれもすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は、治療用タンパク質、および治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプターに糖部分を転移する少なくとも1つの異種グリコシルトランスフェラーゼを発現させることにより、原核微生物においてO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する方法に関する。治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼは、別々の微生物で発現させ、細胞溶解後に混合することができ、または治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼは、同じ微生物において発現させることができる。
発明の背景
組換えタンパク質の生成用の最も効率的な宿主の1つは原核宿主細胞である。ヒトおよび他の高等哺乳動物を治療するために、多くの治療用タンパク質が用いられている。しかしそのようなタンパク質を生成するための効率的かつ経済的な方法の必要性にもかかわらず、治療用タンパク質は、例えば、CHO細胞などの哺乳動物組織培養細胞、昆虫細胞、および酵母細胞といった真核細胞系で、費用をかけて生成されている。原核生物生成系を用いることの主な障害は、多くの原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)において不溶性の治療用タンパク質が生成されること、および原核細胞が、例えば真核生物タンパク質のグリコシル化といった真核生物タンパク質の適切な翻訳後修飾を生じ得ないことである。したがって、現在、原核生物宿主における治療タンパク質の生成は、誤って折りたたまれたタンパク質の再折りたたみ、再折りたたみされた治療用タンパク質の精製、および再折りたたみされたグリコシルトランスフェラーゼの精製という、手間がかかりかつ費用のかかる段階を含まねばならない。本発明は、これらおよびその他の必要性を解決する。
発明の概要
1つの局面において、本発明は、原核微生物において可溶性治療用タンパク質および異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を発現させ、異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質によって触媒される、第1ドナー基質から治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプター基質への第1糖部分の細胞内転移を可能にする条件下で微生物を培養して、O-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成することにより、原核微生物においてO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する方法を提供する。
1つの態様において、原核微生物は細胞内酸化環境を有する。原核微生物の例には、例えば、大腸菌およびシュードモナス属(Pseudomonas)細菌が含まれる。1つの態様において、原核微生物は、細胞内酸化環境を有するように遺伝子改変される。内因性還元酵素核酸を変異させることによる大腸菌の遺伝子操作は、細胞の酸化還元状態に影響を及ぼし、細胞内酸化環境をもたらすことが知られている。
1つの態様において、異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼは、可溶性活性真核生物N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAcT)タンパク質である。
別の態様において、本方法は、原核微生物において第1異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼを発現させ、それが、ドナー基質から治療用タンパク質上のO-結合型糖への糖部分の細胞内転移を触媒できるようにする、さらなる段階を有する。例示的な異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼタンパク質には、例えば、真核生物コアIガラクトシルトランスフェラーゼ(コア1 GalT1)タンパク質およびST6 GalNAc 1タンパク質が含まれる。さらなる態様において、本方法は、原核微生物において第2異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼを発現させ、それが、ドナー基質から治療用タンパク質上の第2アクセプター基質、例えばO-結合型グリカンの一部への糖部分の細胞内転移を触媒できるようにする、さらなる段階を有する。例示的な第2異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼタンパク質には、例えば、真核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(ST3Gal1)タンパク質および細菌α(2,3)シアリルトランスフェラーゼタンパク質が含まれる。
別の態様においては、ドナー基質の前駆体、例えば、GalNAc、GlcNAc、グルコース、またはシアル酸を含む培地で微生物を培養する。増殖培地は、例えばLBのような富栄養培地、または微生物の増殖に用いられる最小培地であってよい。微生物、例えば大腸菌は、ドナー基質の産生を増強するように遺伝子改変することもできる。そのような遺伝子改変の例を本明細書に含む。
さらに別の態様では、微生物からN-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を単離する。N-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を商業規模で生産することができる。N-グリコシル化治療用タンパク質を、例えばPEG部分の付加によって、インビトロでさらに修飾することができる。
別の態様において、原核微生物はまた、必要とされる任意のドナー基質の合成において役割を有する補助的酵素も発現する。補助的酵素は、例えば、UDP-グルコース4'エピメラーゼタンパク質、UDP-GlcNAc 4'エピメラーゼタンパク質、または二重機能UDP-グルコース4'エピメラーゼタンパク質/UDP-GlcNAc 4'エピメラーゼタンパク質であってよい。
別の局面において、本発明は、O-グリコシル化可溶性治療用タンパク質および異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼを両方発現する原核微生物を提供する。いくつかの態様において、O-グリコシル化可溶性治療用タンパク質および異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼはいずれも、微生物の細胞内空間で発現される。1つの態様において、異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼは細胞内空間で発現され、細胞内空間で治療用タンパク質をグリコシル化する。次に、O-グリコシル化治療用タンパク質は細菌細胞膜を通してペリプラズムに輸送され、そこで再折りたたみが起こる。いくつかの態様において、原核微生物は細胞内酸化環境を有する。
定義
本発明の方法によって生成された組換えグリコシルトランスフェラーゼタンパク質は、糖類をドナー基質からアクセプター基質に転移するのに有用である。この付加は、一般的に、生体分子上のオリゴ糖または炭水化物部分の非還元末端で起こる。本明細書で定義される生体分子には、炭水化物、タンパク質(例えば、糖タンパク質)、および脂質(例えば、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、およびガングリオシド)など、生物学的に重要な分子が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書では、以下の略語を使用する:
Ara=アラビノシル;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコシル;
Gal=ガラクトシル;
GalNAc=N-アセチルガラクトシルアミノ;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N-アセチルグルコシルアミノ;
Man=マンノシル;および
NeuAc=シアリル(N-アセチルノイラミニル)
FTまたはFucT=フコシルトランスフェラーゼ
ST=シアリルトランスフェラーゼ
GalT=ガラクトシルトランスフェラーゼ
アラビア数字またはローマ数字は、特定のグリコシルトランスフェラーゼの同一性を示すために、当技術分野で用いられる命名規則に従って、本明細書において互換的に用いられる(例えば、FTVIIおよびFT7は、同じフコシルトランスフェラーゼを指す)。
オリゴ糖は、還元末端にある糖類が実際に還元糖であるかどうかを問わず、還元末端および非還元末端を有すると見なされる。一般に認められている命名法に従って、オリゴ糖は本明細書において、非還元末端を左側にして、および還元末端を右側にして示す。
「シアル酸」という用語は、9炭素カルボキシル化糖のファミリーの任意のメンバーを指す。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N-アセチル-ノイラミン酸(2-ケト-5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノヌロピラノース-1-オン酸(多くの場合、Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと略記される)である。このファミリーの第2のメンバーは、NeuAcのN-アセチル基がヒドロキシル化されているN-グリコリル-ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)である。第3のシアル酸ファミリーメンバーは、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソン酸(KDN)である(Nadano et al. (1986) J. Biol. Chem. 261: 11550-11557;Kanamori et al., J. Biol. Chem. 265: 21811-21819 (1990))。9-置換シアル酸、例えば、9-O-ラクチル-Neu5Acまたは9-O-アセチル-Neu5Acのような9-O-C1〜C6アシル-Neu5Ac、9-デオキシ-9-フルオロ-Neu5Ac、および9-アジド-9-デオキシ-Neu5Acもまた含まれる。シアル酸ファミリーの総説については、例えば、Varki, Glycobiology 2: 25-40 (1992);Sialic Acids: Chemistry, Metabolism and Function, R. Schauer, Ed. (Springer-Verlag, New York (1992))を参照されたい。シアリル化手順におけるシアル酸化合物の合成および使用は、1992年10月1日に公開されたWO 92/16640に開示されている。
グリコシルトランスフェラーゼの「アクセプター基質」とは、特定のグリコシルトランスフェラーゼのアクセプターとして働き得るオリゴ糖部分である。アクセプター基質が、対応するグリコシルトランスフェラーゼおよび糖ドナー基質ならびに他の必要な反応混合物成分と接触し、反応混合物が十分な時間インキュベートされると、グリコシルトランスフェラーゼは、糖残基を糖ドナー基質からアクセプター基質に転移する。アクセプター基質は、多くの場合、異なるタイプの特定のグリコシルトランスフェラーゼに応じて異なる。例えば、哺乳動物ガラクトシド2-L-フコシルトランスフェラーゼ(α1,2-フコシルトランスフェラーゼ)のアクセプター基質は、オリゴ糖の非還元末端においてGalβ1,4-GlcNAc-Rを含み、このフコシルトランスフェラーゼは、フコース残基をα1,2結合を介してGalに付着させる。末端Galβ1,4-GlcNAc-RおよびGalβ1,3-GlcNAc-Rならびにそのシアリル化類似体は、それぞれα1,3-フコシルトランスフェラーゼおよびα1,4-フコシルトランスフェラーゼのアクセプター基質である。しかしながら、これらの酵素は、フコース残基をアクセプター基質のGlcNAc残基に付着させる。したがって、「アクセプター基質」という用語は、特定の用途のための関心対象の特定のグリコシルトランスフェラーゼに関連して解釈される。さらなるグリコシルトランスフェラーゼのアクセプター基質が、本明細書に記載されている。アクセプター基質には、例えば、糖脂質、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、および治療用タンパク質もまた含まれる。
「アミノ酸アクセプター基質」とは、ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質によって触媒される反応において糖部分に結合されるタンパク質またはペプチド中のアミノ酸を指す。ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質のアミノ酸アクセプター基質には、例えば、スレオニン、セリン、ヒドロキシプロリン、チロシン、またはその他のヒドロキシ含有アミノ酸が含まれる。
グリコシルトランスフェラーゼの「ドナー基質」とは、活性化されたヌクレオチド糖である。このような活性化糖は、一般的に、糖のウリジン、グアノシン、およびシチジン一リン酸誘導体(それぞれ、UMP、GMP、およびCMP)、または糖のウリジン、グアノシン、およびシチジン二リン酸誘導体(それぞれ、UDP、GDP、およびCDP)からなり、ヌクレオシド一リン酸または二リン酸は脱離基として働く。例えば、フコシルトランスフェラーゼのドナー基質はGDP-フコースである。シアリルトランスフェラーゼのドナー基質は、例えば、所望のシアル酸を含む活性化糖ヌクレオチドである。例えば、NeuAcの場合、活性化糖はCMP-NeuAcである。その他のドナー基質には、例えば、GDPマンノース、UDP-ガラクトース、UDP-N-アセチルガラクトサミン、CMP-NeuAc-PEG(CMP-シアル酸-PEGとも称される)、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルコース、UDP-グルコリオン酸(glucorionic acid)、およびUDP-キシロースが含まれる。糖には、例えば、NeuAc、マンノース、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、グルコース、グルコリオン酸、およびキシロースが含まれる。細菌系、植物系、および真菌系は、場合により、他の活性化ヌクレオチド糖を用いることができる。
本明細書で使用する「タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドを再構築する方法」とは、グリコシルトランスフェラーゼを用いた、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドへの糖残基の付加を指す。好ましい態様において、糖残基はPEG分子に共有結合している。
本明細書で使用する「グリコシルトランスフェラーゼ」とは、ドナー基質、すなわち活性化ヌクレオチド糖から、例えば、オリゴ糖、糖脂質、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、または糖タンパク質といったアクセプター基質への糖残基の転移を触媒する酵素を指す。好ましい態様において、グリコシルトランスフェラーゼは、ドナー基質、すなわちヌクレオチド糖から、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、または糖タンパク質へ糖を転移する。別の好ましい態様において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼはII型膜貫通グリコシルトランスフェラーゼである。改変されていないII型膜貫通グリコシルトランスフェラーゼは、典型的に、アミノ末端細胞質ドメイン、シグナルアンカーまたは膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを含む。例えば、Paulson and Colley, J. Biol. Chem. 264:17615-17618 (1989)を参照されたい。多くの非改変II型膜貫通グリコシルトランスフェラーゼは細胞膜と結合しており、したがって、真核細胞で発現された場合、不溶性物質と共に分画される。真核生物グリコシルトランスフェラーゼのアミノ末端細胞質ドメイン、シグナルアンカーまたは膜貫通ドメイン、およびステム領域を除去すると、真核細胞の膜画分と結合しない活性可溶性酵素が得られる。例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、1989年10月24日に出願されたPaulson et al.、米国特許第5,032,519号を参照されたい。グリコシルトランスフェラーゼは、例えば単細胞または多細胞真核生物といった真核生物、植物、ショウジョウバエ(Drosophila)または線虫(C. elegans)などの無脊椎動物、脊椎動物、両生類または爬虫類、哺乳動物、げっ歯類、霊長類、ヒト、ウサギ、ラット、マウス、ウシ、またはブタなどに由来し得る。多くの真核生物グリコシルトランスフェラーゼの例については、例えば、それぞれがすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2005年3月24日に出願された米国特許仮出願第60/665,396号;2005年4月5日に出願された米国特許仮出願第60/668,899号;2005年10月31日に出願された米国特許仮出願第60/732,409号;および2006年3月24日に出願された国際出願PCT/US06/11065を参照されたい。本発明の方法では、原核生物グリコシルトランスフェラーゼも使用することができる。
本明細書で使用する「シアリルトランスフェラーゼ」とは、CMP-シアル酸ドナーからアクセプター分子へのシアル酸部分の転移を触媒する酵素を指す。真核生物シアリルトランスフェラーゼはまた、保存されている構造モチーフ、例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Tsuji, J. Biochem. 120:1-13 (1996)に記載されるシアリルモチーフLおよびシアリルモチーフSの存在により認識され得る。さらなるシアリルトランスフェラーゼモチーフ、例えば、微小(very small;VS)モチーフおよびモチーフIIIが、2005年10月5日に電子出版されたPatel and Balaji, Glycobiology, 16:108-116 (2006)に記載されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。シアリルトランスフェラーゼには、α2→3、α2→6、α2→8を含む様々な結合を形成する酵素が含まれる。シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸部分を、アクセプター分子上の異なるアクセプター糖、例えば、ガラクトース、GalNAc、および別のシアル酸分子に転移する。特定の反応を触媒する、すなわち、ST3Gal、ST6Gal、ST6GalNAc、またはST8Siaファミリーのメンバーである真核生物シアリルトランスフェラーゼは、これらのファミリー内に保存されているアミノ酸残基の存在により同定することができる。ファミリーに基づくこのような保存アミノ酸残基は、2005年10月5日に電子出版されたPatel and Balaji, Glycobiology, 16:108-116 (2006)に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。原核生物シアリルトランスフェラーゼが公知であり、開示の方法においてこれらも使用することができる。
α(2,3)シアリルトランスフェラーゼとは、α(2,3)結合の形成によりシアル酸をアクセプター基質に転移するシアリルトランスフェラーゼである。真核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼの一例は、ST3Gal3タンパク質である。この酵素は、Galβ1,3GlcNAc、Galβ1,3GalNAc、またはGalβ1,4GlcNAcグリコシドのGalへのシアル酸の転移を触媒する(例えば、Wen et al. (1992) J. Biol. Chem. 267: 21011;Van den Eijnden et al. (1991) J. Biol. Chem. 256: 3159を参照されたい)。シアル酸はGalに連結されて、2つの糖類間でα結合が形成される。糖類間の結合(連結)は、NeuAcの2位とGalの3位との間で起こる。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、ST3Gal3酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。この特定の酵素はラット肝臓から単離することができ(Weinstein et al. (1982) J. Biol. Chem. 257: 13845)、ヒトcDNA(Sasaki et al. (1993) J. Biol. Chem. 268: 22782-22787;Kitagawa & Paulson (1994) J. Biol. Chem. 269: 1394-1401)およびゲノム(Kitagawa et al. (1996) J. Biol. Chem. 271: 931-938)DNA配列は公知であるので、組換え発現によりこの酵素を生成することは容易である。ラットST3Gal3はクローニングされており、配列は公知である。例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる、Wen et al., J. Biol. Chem. 267:21011-21019 (1992)およびアクセッション番号M97754を参照されたい。例えば、ナイセリア属(Neiserria)種由来の酵素、ならびにカンピロバクター属(Campylobacter)由来のCstI、CstII、およびCstIII酵素といった、原核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼもまた公知であり、本発明の方法において使用することができる。
本明細書で使用する「真核生物α-N-アセチルガラクトサミニドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼI(ST6GalNAcT1またはST6GalNAc-1)」とは、真核生物から単離されたα(2,6)シアリルトランスフェラーゼを指す。この酵素は、CMP-シアル酸ドナーからアクセプター分子へのシアル酸の転移を触媒する。転移は、N-アセチルガラクトサミン-O-Thr/Serへのα2,6結合である。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、ST6GalNAcT1酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。いくつかのST6GalNAcT1酵素、例えば全長マウス配列、Kurosawa et al., J. Biochem. 127:845-854 (2000)およびアクセッション番号JC7248が単離され、特徴づけられており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。α-2,6結合を触媒する原核生物シアリルトランスフェラーゼもまた公知であり、本発明の方法において使用することができる。
本明細書で使用する「真核生物Gal β1,3GalNAc α2,3-シアリルトランスフェラーゼ(ST3GalIまたはST3Gal-1)」は、真核生物から単離されたGal β1,3GalNAc α2,3-シアリルトランスフェラーゼを指す。この酵素は、CMP-シアル酸ドナーからアクセプター分子へのシアル酸の転移を触媒する。転移は、N-アセチルガラクトサミン-O-Thr/Serへのα2,3結合である。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、ST3GalI酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。いくつかのST3GalI酵素、例えば全長ブタ配列、Gillespie et al., J. Biol. Chem. 267:21004-21010 (1992)およびアクセッション番号A45073が単離され、特徴づけられており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
本発明において使用できる他のシアリルトランスフェラーゼには、例えば「真核生物βガラクトシドα2, 6-シアリルトランスフェラーゼ(ST6Gal I)タンパク質が含まれる。
本発明において用いられる真核生物シアリルトランスフェラーゼタンパク質には、α2,8シアリルトランスフェラーゼタンパク質、例えば、ST8Sia I、ST8Sia II、ST8Sia III、およびST8Sia IVもまた含まれる。
例えば、ナイセリア属種由来の酵素、ならびにカンピロバクター属由来のCstI、CstII、およびCstIII酵素といった、原核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼもまた公知であり、本発明の方法において使用することができる。例示的なナイセリア属シアリルトランスフェラーゼは、例えば、2000年8月1日に発行された米国特許第6,096,529号に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。例示的なカンピロバクター属シアリルトランスフェラーゼは、例えば、2004年2月10日に発行された米国特許第6,689,604号、2003年1月7日に発行された米国特許第6,503,744号、および2004年3月2日に発行された米国特許第6,699,705号に開示されており、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。他の例示的な細菌シアリルトランスフェラーゼは、2005年9月16日に出願された国際出願PCT/CA2005/001432に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。原核生物α(2,6)シアリルトランスフェラーゼもまた公知であり、本発明の方法において使用することができる。原核生物α(2,6)シアリルトランスフェラーゼの一例は、フォトバクテリウム属(Photobacterium)に由来する。例えば、Yamamoto et al., J. Biochem. 120:104-110 (1996)を参照されたい。
本明細書で使用する「真核生物N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ」とは、真核生物に由来するN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼを指す。この酵素は、UDP-GlcNAcドナーからアクセプター分子へのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の転移を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼも膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。
本明細書で使用する「β-1,2-N-真核生物N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTIまたはGNTI)」とは、真核生物に由来するβ-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIを指す。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、GnTIも膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。真核生物GnT1タンパク質には、例えば、ヒト、アクセッション番号NP_002397;チャイニーズハムスター、アクセッション番号AAK61868;ウサギ、アクセッション番号AAA31493;ラット、アクセッション番号NP_110488;ゴールデンハムスター、アクセッション番号AAD04130;マウス、アクセッション番号P27808;ゼブラフィッシュ、アクセッション番号AAH58297;アフリカツメガエル(Xenopus)、アクセッション番号CAC51119;ショウジョウバエ、アクセッション番号NP_525117;ハマダラカ(Anopheles)、アクセッション番号XP_315359;線虫、アクセッション番号NP_497719;ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)、アクセッション番号CAD22107;ジャガイモ(Solanum tuberosum)、アクセッション番号CAC80697;タバコ(Nicotiana tabacum)、アクセッション番号CAC80702;イネ(Oryza sativa)、アクセッション番号CAD30022;ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、アクセッション番号CAC82507;およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アクセッション番号NP_195537が含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。本発明において使用できる他の真核生物N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質には、例えば、BGnT-I、GnT-II、GnT-III、GnT-IV(例えば、GnT-IVaおよびGnT-IVb)、GnT-V、GnT-VI、ならびにGnT-IVHが含まれる。
本発明の方法を用いて、他の真核生物N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質を生成することができ、これには、例えば、マニアックフリンジ(maniac fringe)タンパク質およびMGNT1タンパク質が含まれる。
本明細書で使用する「ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質」とは、ドナー基質からアミノ酸アクセプター分子への糖部分の転移を触媒するグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を指す。アミノ酸アクセプターとは、ヒドロキシル基を含むアミノ酸、例えば、スレオニン、セリン、ヒドロキシプロリン、チロシン、または他のヒドロキシ含有アミノ酸である。真核生物ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の場合、アミノ酸アクセプターは、典型的にセリンまたはスレオニン残基である。原核生物ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の場合、アミノ酸アクセプターにはより高い可変性が見られ、最も一般的に用いられるアミノ酸残基は、スレオニン、セリン、およびチロシンである。真核生物ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質には、以下に記載するGalNAcTタンパク質が含まれる。ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質のいくつかの例は、例えばCAZyファミリー27(図18)に開示されている。
本明細書で使用する「真核生物N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAcT)」とは、真核生物から単離されたN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを指す。この酵素は、UDP-GalNAcドナーからアクセプター分子へのN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の転移を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、GalNAcT酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。いくつかのGalNAcT酵素、例えば、GalNAcT1、アクセッション番号X85018;GalNAcT2、アクセッション番号X85019(いずれもWhite et al., J. Biol. Chem. 270:24156-24165 (1995)に記載されている);およびGalNAcT3、アクセッション番号X92689(Bennett et al., J. Biol. Chem. 271:17006-17012 (1996)に記載されている、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)が単離され、特徴づけられている。現在、真核生物の20のGalNacTタンパク質、すなわちGalNAcT1〜20が公知であり、本発明の方法において使用することができる。
本明細書で使用する「真核生物ガラクトシルトランスフェラーゼ」とは、真核生物に由来するガラクトシルトランスフェラーゼを指す。この酵素は、UDP-Galドナーからアクセプター分子へのガラクトースの転移を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、ガラクトシルトランスフェラーゼも膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。
本明細書で使用する「真核生物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT1)」とは、真核生物に由来するβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを指す。この酵素は、UDP-Galドナーからアクセプター分子へのガラクトースの転移を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、GalT1酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。いくつかのGalT1酵素、例えば、全長ウシ配列、D'Agostaro et al., Eur. J. Biochem. 183:211-217 (1989)およびアクセッション番号CAA32695が単離され、特徴づけられており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書で使用する「真核生物コアIガラクトシルトランスフェラーゼ(コア1 GalT1またはコア-1-Gal-T1)」とは、コア1 β1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を指す。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、コア1 GalT1酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。いくつかのコア1 GalT1酵素、例えば、ショウジョウバエ配列およびヒト配列が単離され、特徴づけられている。ヒトタンパク質は、Ju et al., J. Biol. Chem. 277 (1), 178-186 (2002)において特徴づけられており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書で使用する「β-1,3-ガラクトシル-O-グリコシル-糖タンパク質β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(コア2 GlcNAcTまたはコア-2-GlcNAcT)」とは、コア2 β1,6-GlcNAcトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を指す。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、コア2 GlcNAcT酵素も膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。いくつかのコア2 GlcNAcT酵素が単離され、特徴づけられており、例えばCAZyファミリー14に開示されている。CAZyファミリー14は、コア2 β1,6-GlcNAcトランスフェラーゼ活性を有する原核生物タンパク質の例を含む。そのような原核生物タンパク質もまた、本発明において使用することができる。
本明細書で使用する「真核生物フコシルトランスフェラーゼ」とは、真核生物に由来するフコシルトランスフェラーゼを意味する。この酵素は、UDP-フコースドナーからアクセプター分子へのフコースの転移を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、フコシルトランスフェラーゼも膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。
本発明において使用できる他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質には、例えば、ドリコールリン酸マンノシルトランスフェラーゼポリペプチド1またはDpm1、α-1,6-マンノシルトランスフェラーゼ、α-1,3-マンノシルトランスフェラーゼ、およびβ-1,4-マンノシルトランスフェラーゼタンパク質が含まれる。
例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼ、GalNAcトランスフェラーゼ、GlcNAcトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、およびフコシルトランスフェラーゼといった多くの原核生物グリコシルトランスフェラーゼもまた公知であり、本発明の方法において使用することができる。
本明細書で使用する「治療用タンパク質」とは、疾患もしくは機能障害を治療するため、または対象の健康状態を改善するために対象に投与されるタンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドを指す。好ましい態様において、対象はヒトである。さらなる好ましい態様において、治療用タンパク質はヒトタンパク質である。可溶性治療用タンパク質とは、水溶液中で可溶性である治療用タンパク質を指す。いくつかの態様において、可溶性治療用タンパク質は、原核細胞の細胞内区画において可溶性である。治療用タンパク質の大部分または発現された治療用タンパク質の一部が、原核細胞の細胞区画において可溶性であってよい。別の態様において、可溶性治療用タンパク質は活性タンパク質であり、例えば、ヒトなどの哺乳動物において酵素活性、結合活性、または免疫応答を誘発する能力を有する。さらなる態様において、治療用タンパク質は、細胞内酸化環境を有する微生物において生成された1種または複数種のグリコシルトランスフェラーゼによってグリコシル化されるか、またはその他の方法で修飾される。別の態様において、治療用タンパク質は、細胞内酸化環境を有する微生物において生成され、同じ微生物において生成された1種または複数種の異種グリコシルトランスフェラーゼ、例えば真核生物グリコシルトランスフェラーゼによってグリコシル化される。1つの態様において、治療用タンパク質は以下のうちの1つである:FGF-20、FGF-21、NT-3、またはグルコセレブロシダーゼ。別の態様において、治療用タンパク質は以下のうちの1つである:ヒトFGF-20、ヒトFGF-21、ヒトNT-3、またはヒトグルコセレブロシダーゼ。治療用タンパク質は上記のものに限定されず、これには、例えば表1に記載されるタンパク質が含まれ得る。
本明細書で使用する「O-グリコシル化治療用タンパク質」または「O-グリコシル化可溶性治療用タンパク質」とは、治療用タンパク質のアミノ酸上のヒドロキシル基に結合された少なくとも1つの糖残基を含むように修飾されている治療用タンパク質を指す。
本明細書で使用する「不対システイン残基」とは、正しく折りたたまれたタンパク質(すなわち、生物活性を有するタンパク質)において、別のシステイン残基とジスルフィド結合を形成しないシステイン残基を指す。
「酸化還元対」とは、還元型チオール試薬と酸化型チオール試薬の混合物を指し、これには、還元型グルタチオンおよび酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)、システイン/シスチン、システアミン/シスタミン、DTT/GSSG、およびDTE/GSSGが含まれる。(例えば、Clark, Cur. Op. Biotech. 12:202-207 (2001)を参照されたい)。
「酸化体」または「酸化剤」という用語は、その環境において分子を酸化する化合物、すなわち、その環境において分子をより酸化した状態に、およびより酸化しつつある状態に変える化合物を指す。酸化体は電子を受け入れることにより作用し、それによって、基質の酸化後にそれ自体は還元された状態になる。したがって、酸化体とは電子を受け入れる薬剤である。
「酸化条件」または「酸化環境」という用語は、基質が還元されるより酸化された状態になる可能性が高い条件または環境を指す。例えば、野生型大腸菌細胞のペリプラズムは酸化環境を構成するのに対して、野生型大腸菌細胞の細胞質は還元環境である。酸化環境では、ジスルフィド結合が生じる可能性がより高い。
「酸化状態」にある酵素とは、還元型より少ない電子を有する酵素を指す。
「還元体」または「還元剤」という用語は、その環境において分子を還元する化合物、すなわち、その環境において分子をより還元した状態に、およびより還元しつつある状態に変える化合物を指す。還元剤は、電子を供与することにより作用し、それによって、基質の還元後にそれ自体は酸化された状態になる。したがって、還元剤とは電子を供与する薬剤である。還元剤の例には、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、システイン、チオグリコール酸、システアミン、グルタチオン、および水素化ホウ素ナトリウムが含まれる。
「還元酵素」という用語は、チオレドキシン還元酵素、グルタチオンもしくはグルタチオン還元酵素(「酸化還元酵素」とも称される)、またはチオレドキシン系もしくはグルタレドキシン系のメンバーを還元し得る任意の他の酵素を指す。
「還元酵素経路」という用語は、環境を還元条件に維持する細胞内の系を指し、これにはグルタレドキシン系およびチオレドキシン系が含まれる。
「還元条件」または「還元環境」という用語は、基質が酸化されるより還元された状態になる可能性が高い条件または環境を指す。例えば、真核細胞の細胞質は還元環境を構成する。
本明細書において互換的に用いられる「ジスルフィド結合形成」または「ジスルフィド結合酸化」とは、1つまたは2つのポリペプチド中に存在する2つのシステイン間で共有結合を形成する過程を指す。ジスルフィド結合の酸化は、酵素の活性部位システインと標的タンパク質中のシステインとの間のチオール-ジスルフィド交換によって媒介され得る。ジスルフィド結合形成は、ジスルフィド結合形成の触媒と称される酵素によって触媒され得るか、または化学的手段、例えば細胞内環境によって触媒され得る。
「還元状態」にある酵素は、その酸化型よりも多くの電子を有する。
「ジスルフィド結合の還元」とは、ジスルフィド結合の切断によって、2つのチオール基が生じる過程を指す。ジスルフィド結合の還元は、酵素の活性部位システインと標的タンパク質中のシステインとの間のチオール-ジスルフィド交換によって媒介される。
「ジスルフィド結合の異性化」という用語は、異なるシステイン間のジスルフィド結合の交換、すなわちジスルフィド結合の再編成を指す。ジスルフィド結合の異性化は、酵素の活性部位システインと標的タンパク質中のシステインとの間のチオール-ジスルフィド交換によって媒介され、イソメラーゼによって触媒される。大腸菌において、異性化は、ペリプラズムのジスルフィド結合酸化還元酵素であるDsbCまたはDsbGによって触媒される。
「ジスルフィド結合形成の触媒」とは、ジスルフィド結合形成を促進する薬剤である。このような薬剤は、活性を有するために酸化状態になければならない。
「ジスルフィド結合異性化の触媒」は「ジスルフィド結合イソメラーゼ」とも称され、ジスルフィド結合異性化を促進する薬剤である。このような薬剤は、活性を有するために還元型でなければならない。
「接触させる」という用語は、本明細書において以下の用語と互換的に用いられる:〜と組み合わせる、〜に添加する、〜と混合する、〜を通過させる、〜とインキュベートする、〜の上を流す、など。
「シャペロンタンパク質」とは、新たに合成されたタンパク質の適切な折りたたみを促進することが知られているタンパク質である。シャペロンタンパク質には、例えば、トリガー因子;Hsp70シャペロンファミリーのメンバー、例えばDnaK;Hsp100シャペロンファミリーのメンバー、例えばClpB、およびHsp60シャペロンファミリーのメンバー、例えばGroELが含まれる。例えば、Sorensen and Mortensen, BioMed Central, www.microbialcellfactories.com/content/4/1/1を参照されたい。4℃でタンパク質の折りたたみを可能にするシャペロン、例えば、オレイスピラ・アンタルチカ(Oleispira antartica) RB8T由来のCpn60およびCpn 10も公知である。例えば、同上、およびFerrer et al., Nat. Biotechnol. 21:1266-1267 (2003)を参照されたい。
「タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ」または「PDIタンパク質」は、ジスルフィド結合を作製または再編成することができる。PDIタンパク質は、例えば、Georgiou et al. 米国特許第6,027,888号に記載されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。PDIタンパク質は、真核生物および原核生物に由来する。真核生物PDIタンパク質には、InterproファミリーIPR005792タンパク質ジスルフィドイソメラーゼのものが含まれる。例示的な真核生物PDIタンパク質には、例えば、ラット肝臓PDI、サッカロミセス属(Sacchromyces)由来のEro1pおよびPdi1pタンパク質からのPDIタンパク質が含まれる。原核生物タンパク質には、例えば、大腸菌由来のDsbCが含まれる。例えば、Frand et al., Trends in Cell Biol. 10:203-210 (2000)を参照されたい。
タンパク質ジスルフィド結合の酸化還元状態を維持するように作用する他の原核生物タンパク質には、例えば、大腸菌由来のDsbB、DsbA、DsbC、DsbD、およびDsbGが含まれる。これらのタンパク質は当技術分野において周知であり、例えば、Beckwith et al. 米国特許第6,872,563号に記載されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
「PEG」という用語は、ポリ(エチレングリコール)を指す。PEGは、ペプチドに結合されている例示的なポリマーである。ペプチド治療剤を誘導体化するためのPEGの使用は、ペプチドの免疫原性を低下させ、循環からのクリアランス時間を延ばすことが実証されている。例えば、米国特許第4,179,337号(Davis et al.)は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールと結合している酵素およびペプチドホルモンなどの非免疫原性ペプチドに関する。ペプチド1モル当たり10〜100モルのポリマーが用いられ、生理学的活性の少なくとも15%が維持される。
本明細書で使用する「比活性」という用語は、酵素、例えば本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼの触媒活性を指し、活性単位で表すことができる。本明細書で使用する場合、1活性単位は、所与の温度(例えば、37℃)およびpH値(例えば、pH7.5)で、1分間に1μmolの産物の形成を触媒する。したがって、10単位の酵素とは、例えば37℃の温度および例えば7.5のpH値で、1分間に10μmolの基質が10μmolの産物に変換される、その酵素の触媒量である。
「N-結合型」オリゴ糖とは、アスパラギン-N-アセチルグルコサミン結合によって、アスパラギンを介してペプチド骨格に連結されたオリゴ糖である。N-結合型オリゴ糖は、「Nグリカン」とも称される。天然のN-結合型オリゴ糖は、Man3GlcNAc2の共通した五糖コアを有する。これらは、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、フコース、およびシアル酸などの周辺糖の分枝(アンテナとも称される)の存在および数の点で異なる。任意に、この構造はまた、コアフコース分子および/またはキシロース分子を含み得る。本発明の方法によって生成された可溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼを用いて、天然のN-結合型構造を模倣するオリゴ糖、または使用者によって設計されたオリゴ糖を作製することができる。N-結合型オリゴ糖を生じる可溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、GnT1、GalT1、およびST3Gal3酵素が含まれる。
「O-結合型」オリゴ糖とは、スレオニン、セリン、ヒドロキシプロリン、チロシン、またはその他のヒドロキシ含有アミノ酸を介してペプチド骨格に連結されたオリゴ糖である。本発明の方法によって生成された可溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼを用いて、天然のO-結合型構造を模倣するオリゴ糖、または使用者によって設計されたオリゴ糖を作製することができる。本発明の1つの態様では、細胞内酸化環境を有する1つまたは複数の微生物において、O-結合型オリゴ糖を生じる可溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼを発現させる。O-結合型オリゴ糖を生じる可溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、GalNAc-T2、コア-1-Gal-T1、ST6GalNAc-1、およびST3Gal-1酵素が含まれる。
糖タンパク質種に言及する場合の「実質的に均一なグリコフォーム」または「実質的に均一なグリコシル化パターン」とは、関心対象のグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、フコシルトランスフェラーゼ)によってグリコシル化されたアクセプター基質の割合を指す。出発物質がグリコシル化アクセプター基質を含んでもよいことが、当業者に理解されるであろう。したがって、計算されるグリコシル化量は、本発明の方法によってグリコシル化されたアクセプター基質、および出発物質において既にグリコシル化されていたアクセプター基質を含む。
「生物活性」という用語は、例えばタンパク質の酵素活性を指す。例えば、シアリルトランスフェラーゼの生物活性とは、シアル酸部分をドナー分子からアクセプター分子へ転移する活性を指す。GalNAcT2の生物活性とは、N-アセチルガラクトサミン部分をドナー分子からアクセプター分子へ転移する活性を指す。GalNAcT2タンパク質の場合、アクセプター分子は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドであってよい。GnT1タンパク質の生物活性とは、N-アセチルグルコサミン部分をドナー分子からアクセプター分子へ転移する活性を指す。ガラクトシルトランスフェラーゼの生物活性とは、ガラクトース部分をドナー分子からアクセプター分子へ転移する活性を指す。他の生物活性には、例えばホルモンまたは受容体による結合、例えばサイトカインによる二次メッセンジャ系の誘導、および免疫応答を誘発する能力が含まれる。
「商業規模」とは、1回の反応におけるグリコシル化産物のグラム規模の生産を指す。好ましい態様において、商業規模とは、1回の反応における、少なくとも約0.2、0.5、1、2、5、10、15、25、50、75、80、90、もしくは100、125、150、175、200、500、または1000グラムのグリコシル化産物の生産を指す。可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の商業規模の生産とは、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質のグラム規模の生産を指す。
「実質的に均一な」の上記定義における「実質的に」という用語は、一般的に、特定のグリコシルトランスフェラーゼについて、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはより好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%のアクセプター基質がグリコシル化されることを意味する。
「アミノ酸」という用語は、天然および非天然のアミノ酸、例えば合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわちα炭素に水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基が結合している化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の様式で機能する化合物を指す。
「タンパク質」、「ポリペプチド」、または「ペプチド」とは、単量体がアミノ酸であって、それらがアミド結合により結合した、代わりにポリペプチドとも称される重合体を指す。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれかを用いることができる。さらに、例えば、β-アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンといった非天然アミノ酸も含まれる。遺伝子によってコードされないアミノ酸も、本発明において使用することができる。さらに、反応基を含むように修飾されたアミノ酸も、本発明において使用することができる。本発明において用いられるアミノ酸はすべて、D-異性体またはL-異性体のいずれかであってよい。L-異性体が一般的に好ましい。加えて、他のペプチド模倣体も本発明において有用である。一般的な総説については、Spatola, A. F., in CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS, PEPTIDES AND PROTEINS, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983)を参照されたい。
細胞に関して用いられる場合の「組換え」という用語は、細胞が異種核酸を複製するか、または異種核酸によってコードされるペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞内には見出されない遺伝子を含み得る。組換え細胞はまた、人為的な手段によって改変され、細胞に再導入された、天然型の細胞に見出される遺伝子を含んでもよい。この用語はまた、細胞から核酸を取り出すことなく改変された、細胞にとって内因性の核酸を含む細胞も包含し、このような改変には、遺伝子置換、部位特異的変異、および関連技法によって得られる改変が含まれる。「組換えタンパク質」とは、組換え細胞によって産生されたタンパク質である。好ましい態様において、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、組換え細菌細胞によって産生される。
「融合タンパク質」とは、元のもしくは天然の全長タンパク質をコードするアミノ酸配列またはその部分配列に付加された、その代わりの、それに満たない、および/またはそれとは異なるアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。本明細書に記載のグリコシルトランスフェラーゼに、2つ以上の付加的ドメイン、例えば、補助的ドメインおよびエピトープタグもしくは精製タグ、または複数のエピトープタグもしくは精製タグを付加することができる。
融合タンパク質の成分には、「補助的酵素」および/または「精製タグ」が含まれる。本明細書において言及される「補助的酵素」とは、例えばグリコシルトランスフェラーゼの基質を形成する反応の触媒に関与する酵素である。補助的酵素は、例えば、グリコシルトランスフェラーゼによりドナー部分として用いられるヌクレオチド糖の形成を触媒し得る。補助的酵素はまた、ヌクレオチド糖の形成に必要なヌクレオチド三リン酸の生成、またはヌクレオチド糖に取り込まれる糖の生成に用いられる酵素であってもよい。補助的酵素の例および補助的酵素の融合は、例えば、1998年12月15日に出願されたPCT出願CA98/01180に開示されている。
本発明の組換えタンパク質は、タンパク質の精製を容易にする分子である「精製タグ」を一端に有する融合タンパク質として構築し、発現させることができる。このようなタグはまた、グリコシル化反応中の関心対象のタンパク質の固定化に用いることもできる。適切なタグには、抗体によって特異的に認識されるタンパク質配列である「エピトープタグ」が含まれる。エピトープタグは、一般的に、融合タンパク質に取り込まれて、容易に利用可能な抗体を用いて、融合タンパク質を明確に検出または単離することを可能にする。「FLAGタグ」は一般的に用いられるエピトープタグであり、モノクローナル抗FLAG抗体により特異的に認識され、配列AspTyrLysAspAspAspAspLysまたはその実質的に同一な変種からなる。本発明において使用できる他のエピトープタグには、例えば、mycタグ、AU1、AU5、DDDDK(EC5)、Eタグ、E2タグ、Glu-Glu、ポリオーマミドルTタンパク質に由来する6残基ペプチドであるEYMPME、HA、HSV、IRS、KT3、Sタグ、S1タグ、T7タグ、V5タグ、VSV-G、β-ガラクトシダーゼ、Gal4、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、プロテインC、プロテインA、セルロース結合タンパク質、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)、ステップタグ、Nus-S、PPIアーゼ、Pfg 27、カルモジュリン結合タンパク質、dsb Aおよびその断片、ならびにグランザイムBが含まれる。エピトープペプチドおよびエピトープ配列に特異的に結合する抗体は、例えば、Covance Research Products, Inc.;Bethyl Laboratories, Inc.;Abcam Ltd.;およびNovus Biologicals, Inc.から市販されている。
他の適切な精製タグは当業者に公知であり、これには、例えば、ニッケルイオンまたはコバルトイオンなどの金属イオンに結合するヘキサヒスチジンペプチドまたは他のポリヒスチジンペプチドなどの親和性タグが含まれる。精製タグを含むタンパク質は、精製タグと結合する結合パートナー、例えば、精製タグに対する抗体、ニッケルまたはコバルトのイオンまたは樹脂、およびアミロース、マルトース、またはシクロデキストリンを用いて精製することができる。精製タグにはまた、デンプン結合ドメイン、大腸菌チオレドキシンドメイン(ベクターおよび抗体は、例えば、Santa Cruz Biotechnology, Inc.およびAlpha Diagnostic International, Inc.から市販されている)、およびSUMOタンパク質のカルボキシ末端側の半分(ベクターおよび抗体は、例えばLife Sensors Inc.から市販されている)も含まれる。大腸菌由来のマルトース結合ドメインおよびクロコウジカビ(A. niger)のアミラーゼ由来のSBD(デンプン結合ドメイン)などのデンプン結合ドメインは、参照により本明細書に組み入れられるWO 99/15636に記載されている。βシクロデキストリン(BCD)誘導体化樹脂を用いた、デンプン結合ドメインを含む融合タンパク質のアフィニティ精製は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2003年5月5日に出願されたUSSN 60/468,374に記載されている。
組換えタンパク質はまた、「インテイン」などの自己切断タンパク質タグを含んでもよい。インテインは、例えば精製タグまたはエピトープタグの除去を容易にする。インテインおよびそれを使用するためのキットは、例えばNew England Biolabsから市販されている。
グリコシルトランスフェラーゼに関する「機能ドメイン」という用語は、酵素の活性、例えば、アクセプター基質特異性、触媒活性、結合親和性、ゴルジ体内の局在性、細胞膜への固着、またはその他の生物活性もしくは生化学的活性を付与または調節する、グリコシルトランスフェラーゼのドメインを指す。グリコシルトランスフェラーゼの機能ドメインの例には、触媒ドメイン、ステム領域、シグナルアンカーまたは膜貫通ドメイン、およびアミノ末端細胞質尾部が含まれるが、これらに限定されない。
タンパク質に関する「発現レベル」または「発現のレベル」という用語は、細胞によって産生されたタンパク質の量を指す。細胞によって産生されたタンパク質の量は、本明細書に記載の、または当業者に公知のアッセイ法および活性単位によって測定することができる。当業者は、様々なアッセイ法および単位をそれぞれ用いて、細胞によって産生されたタンパク質の量を測定および記述する方法を知っていると考えられる。したがって、タンパク質、例えばグリコシルトランスフェラーゼの発現のレベルの定量および定量的記述は、それぞれ、活性の測定に用いられるアッセイ法、または活性の記述に用いられる単位に限定されない。細胞によって産生されたタンパク質の量は、標準的な公知のアッセイ法、例えば、Bradford (1976)によるタンパク質アッセイ法、Pierce(イリノイ州、ロックフォード)のビシンコニン酸タンパク質アッセイキットによって、または米国特許第5,641,668号に記載されるように決定することができる。タンパク質発現を決定する別の方法は、例えばSDS-PAGEといったゲル電気泳動、およびその後の可視化段階を用いて、タンパク質を含む溶解物または他の試料を解析することである。可視化段階は、タンパク質の着色および染色、例えばクマシー染色もしくは銀染色、または関心対象のタンパク質に特異的に結合する抗体を用いたウェスタンブロット解析などの免疫測定法を含む。抗体は、グリコシルトランスフェラーゼに対するものであってよく、またはタンパク質に共有結合している精製タグもしくはエピトープタグに対するものであってもよい。
「酵素活性」という用語は酵素の活性を指し、本明細書に記載の、または当業者に公知のアッセイ法および単位によって測定することができる。グリコシルトランスフェラーゼの活性の例には、酵素の機能ドメインに関連する活性、例えば、アクセプター基質特異性、触媒活性、結合親和性、ゴルジ体内の局在性、細胞膜への固着、またはその他の生物活性もしくは生化学的活性が含まれるが、これらに限定されない。
グリコシルトランスフェラーゼに関する「ステム領域」とは、天然グリコシルトランスフェラーゼにおいて、膜領域と最短触媒ドメインの間でシグナルアンカーまたは膜貫通ドメインに隣接して位置し、グリコシルトランスフェラーゼをゴルジ体内に維持するための保持シグナルとして、およびタンパク質切断部位として機能することが報告されているタンパク質ドメインまたはその部分配列を指す。ステム領域は、一般的に、疎水性膜貫通ドメイン後の最初の親水性アミノ酸から始まり、触媒ドメインで終わるか、または場合によっては膜貫通ドメイン後の最初のシステイン残基で終わる。例示的なステム領域には、フコシルトランスフェラーゼVIのステム領域、アミノ酸残基40〜54;哺乳動物GnT1のステム領域、アミノ酸残基約36〜約103(例えば、ヒト酵素を参照されたい);哺乳動物GalT1のステム領域、アミノ酸残基約71〜約129(例えば、ウシ酵素を参照されたい);哺乳動物ST3GalIIIのステム領域、アミノ酸残基約29〜約84(例えば、ラット酵素を参照されたい);無脊椎動物コア-1-Gal-T1のステム領域、アミノ酸残基約36〜約102(例えば、ショウジョウバエ酵素を参照されたい);哺乳動物コア-1-Gal-T1のステム領域、アミノ酸残基約32〜約90(例えば、ヒト酵素を参照されたい);哺乳動物ST3Gal1のステム領域、アミノ酸残基約28〜約61(例えば、ブタ酵素を参照されたい)、またはヒト酵素についてはアミノ酸残基約18〜約58;哺乳動物ST6GalNAc-1のステム領域、アミノ酸残基約30〜約207(例えば、マウス酵素を参照されたい)、ヒト酵素についてはアミノ酸35〜278、またはニワトリ酵素についてはアミノ酸37〜253;哺乳動物GalNAc-T2のステム領域、アミノ酸残基約71〜約129(例えば、ラット酵素を参照された)が含まれるが、これらに限定されない。
「触媒ドメイン」とは、酵素によって行われる酵素反応を触媒するタンパク質ドメインまたはその部分配列を指す。例えば、シアリルトランスフェラーゼの触媒ドメインは、ドナーからアクセプター糖類へシアル酸残基を転移するのに十分なシアリルトランスフェラーゼの部分配列を含む。触媒ドメインは、酵素全体、その部分配列を含んでよく、または天然で見出されるようにその酵素に付着していない付加的なアミノ酸配列またはその部分配列を含んでもよい。例示的な触媒領域は、フコシルトランスフェラーゼVIIの触媒ドメイン、アミノ酸残基39〜342;哺乳動物GnT1の触媒ドメイン、アミノ酸残基約104〜約445(例えば、ヒト酵素を参照されたい);哺乳動物GalT1の触媒ドメイン、アミノ酸残基約130〜約402(例えば、ウシ酵素を参照されたい);および哺乳動物ST3Gal3の触媒ドメイン、アミノ酸残基約85〜約374(例えば、ラット酵素を参照されたい)であるが、これらに限定されない。GalNAc-T2タンパク質の触媒ドメインおよび切断変異体は、2004年6月3日に出願されたUSSN 60/576,530;および2004年8月3日に出願された米国仮特許出願代理人整理番号040853-01-5149-P1に記載されており、これらはいずれもすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。触媒ドメインはまた、公知のグリコシルトランスフェラーゼとのアラインメントによって同定することもできる。
「部分配列」とは、核酸またはアミノ酸(例えば、タンパク質)それぞれのより長い配列の一部を構成する核酸またはアミノ酸の配列を指す。
「グリコシルトランスフェラーゼ切断物」もしくは「切断型グリコシルトランスフェラーゼ」または文法上の変化形は、天然グリコシルトランスフェラーゼより少ないアミノ酸残基を有するが、酵素活性を保持しているグリコシルトランスフェラーゼを指す。切断型グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、切断型GnT1酵素、切断型GalT1酵素、切断型ST3GalIII酵素、切断型GalNAc-T2酵素、切断型コア1 GalT1酵素、アミノ酸残基約32〜約90(例えば、ヒト酵素を参照されたい);切断型ST3Gal1酵素、切断型ST6GalNAc-1酵素、および切断型GalNAc-T2酵素が含まれる。酵素が活性を保持する限り、任意の数のアミノ酸残基を欠失させることができる。いくつかの態様では、ドメインまたはドメインの一部を欠失させることができ、例えば、シグナルアンカードメインを欠失させて、ステム領域および触媒ドメインを含む切断物を残すことができ;シグナルアンカードメインおよびステム領域の一部を欠失させて、残りのステム領域および触媒ドメインを含む切断物を残すことができ;またはシグナルアンカードメインおよびステム領域を欠失させて、触媒ドメインを含む切断物を残すことができる。グリコシルトランスフェラーゼ切断はまた、タンパク質のC末端で行われてもよい。例えば、GalNAcT酵素の中には、酵素活性を減少させることなく欠失させることができるC末端レクチンドメインを有するものもある。
「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖型いずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド重合体を指し、他に特別の限定がない限り、天然ヌクレオチドと同様の様式で核酸とハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知の類似体も包含する。特記しない限り、特定の核酸配列はその相補配列も含む。
「組換え発現カセット」または単に「発現カセット」とは、このような配列と適合する宿主において構造遺伝子の発現に影響を及ぼし得る核酸エレメントを有する、組換えまたは合成により作製された核酸構築物である。発現カセットは、少なくともプロモーター、および任意に転写終結シグナルを含む。典型的に、組換え発現カセットは、転写しようとする核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)およびプロモーターを含む。発現をもたらすのに必要なまたは役立つさらなる因子もまた、本明細書に記載されるように使用することができる。例えば、発現カセットは、宿主細胞からの発現タンパク質の分泌を指示するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列も含んでよい。転写終結シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響を及ぼす他の核酸配列もまた、発現カセット中に含めることができる。好ましい態様において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼを含むアミノ酸配列をコードする組換え発現カセットは、細菌宿主細胞において発現される。
本明細書で使用する「異種配列」または「異種核酸」とは、特定の宿主細胞にとって外来性の供給源に由来するか、または同じ供給源に由来する場合には、元の形から改変されたものである。したがって、真核宿主細胞内の異種糖タンパク質遺伝子は、特定の宿主細胞にとって内因性の、改変された糖タンパク質コード遺伝子を含む。異種配列の改変は、例えば、プロモーターに機能的に連結され得るDNA断片を生じるように、DNAを制限酵素で処理することによって行うことができる。部位特異的突然変異誘発などの技法もまた、異種配列の改変に有用である。
「単離された」という用語は、酵素の活性を妨げる成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。本発明の糖類、タンパク質、または核酸に関して、「単離された」という用語は、その天然状態で見出される、その物質に通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。典型的に、本発明の単離された糖類、タンパク質、または核酸は、銀染色ゲル上でのバンド強度または純度を決定する他の方法によって測定して、少なくとも約80%の純度であり、通常は少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%の純度である。純度または均一性は、当技術分野で周知のいくつかの手段によって示すことができる。例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって試料中のタンパク質または核酸を分離することができ、次にそのタンパク質または核酸を染色によって可視化することができる。特定の目的には、タンパク質または核酸の高分離が望ましい場合があり、例えばHPLCまたは類似の精製手段を利用することができる。
「機能的に連結された」という用語は、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、または一連の転写因子結合部位)と、第2の核酸配列との間の機能的な連結を指し、発現制御配列は、第2配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。
2つまたはそれ以上の核酸配列またはタンパク質配列との関連における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかまたは目視検査による測定により、最大限一致するように比較およびアラインメントした場合に、同じであるか、または特定の割合の同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。
2つの核酸またはタンパク質配との関連における「実質的に同一の」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかまたは目視検査による測定により、最大限一致するように比較およびアラインメントした場合に、少なくとも約60%超の核酸配列またはアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約50残基長の配列領域にわたって、より好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。最も好ましい態様において、配列はコード領域の全長にわたって実質的に同一である。
配列比較では、典型的に1つの配列が、試験配列を比較する参照配列となる。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムにより、指定したプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性が計算される。
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI.のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または目視検査によって行うことができる(一般的には、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)。
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例はBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410、およびAltschuel et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に利用可能である。このアルゴリズムはまず、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントした場合にある正値の閾値スコアTと一致するかまたはこれを満たす問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより、スコアの高い配列ペア(HSP)を同定する段階を含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al、前記)。これら最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出す検索を開始するための元となる。次いで、ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増大し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致した残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列については、スコア行列を用いて累積スコアが計算される。各方向へのワードヒットの伸長は、以下の場合に中断される:累積アラインメントスコアが、最大達成値からX量減少した場合;1つまたは複数の負のスコア残基アラインメントの累積に起因して、累積スコアがゼロ以下になった場合;またはどちらか一方の配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータ、W、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、初期設定としてワード長(W) 11、期待値(E) 10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムでは、初期設定としてワード長(W) 3、期待値(E) 10、およびBLOSUM62スコア行列(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照されたい)を使用する。
BLASTアルゴリズムはまた、パーセント配列同一性を計算することに加えて、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの基準は最小総和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸の比較における最小総和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、核酸は参照核酸に類似していると見なされる。
2つの核酸配列またはタンパク質が実質的に同一であることのさらなる指標は、下記ように、第1核酸によってコードされるタンパク質が、第2核酸によってコードされるタンパク質と免疫学的に交差反応することである。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、タンパク質は典型的に第2タンパク質と実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下記のように、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
「〜と特異的にハイブリダイズする」という語句は、特定のヌクレオチド配列が複合混合物(例えば、全細胞)DNAまたはRNA中に存在する場合に、ある分子がストリンジェントな条件下で前記ヌクレオチド配列のみに結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズすることを指す。
「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブがその標的部分配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況下では異なる。長い配列ほど、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHにおいて、特定の配列の融解温度(Tm)よりも約15℃低くなるように選択される。Tmとは、平衡状態で、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリダイズする(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度における)温度である。(標的配列は一般的に過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される)。典型的に、ストリンジェントな条件とは、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0 M未満のNaイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0 MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)に関しては少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションでは、陽性シグナルは、典型的にバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下の通りであってよい:50%ホルムアミド、5×SSC、および1% SDS、42℃でのインキュベーション、または5×SSC、1% SDS、65℃でのインキュベーション、0.2×SSCおよび0.1% SDS、65℃での洗浄。PCRでは、約36℃という温度が低ストリンジェンシーの増幅に典型的であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに応じて約32〜48℃で変動し得る。高ストリンジェンシーのPCR増幅では、約62℃という温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に応じて約50℃〜約65℃であってよい。高ストリンジェンシーおよび低ストリンジェンシー増幅の典型的なサイクル条件は、90〜95℃、30〜120秒の変性段階、30〜120秒続くアニーリング段階、および約72℃、1〜2分の伸長段階を含む。低ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシー増幅反応に関する手順書および指針は、例えば、Innis et al. (1990) PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications Academic Press, N.Y.において入手可能である。
抗体に言及する場合の「タンパク質に特異的に結合する」または「〜と特異的に免疫反応する」という語句は、タンパク質および他の生物製剤の不均一な集団の存在下で、前記タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定の免疫測定条件下で、特定の抗体は特定のタンパク質に優先的に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない。このような条件下でのタンパク質への特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体を必要とする。様々な免疫測定形式を用いて、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択することができる。例えば、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するには、固相ELISA免疫測定法が日常的に用いられる。特異的免疫反応性を決定するために用いることができる免疫測定形式および条件の説明については、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照されたい。
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的改変変化」とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを指し、またはポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重により、数多くの機能的に同一な核酸が所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGはすべて、アミノ酸アルギニンをコードする。したがって、アルギニンがコドンによって指定されるいかなる位置においても、コードされるタンパク質を変化させることなく、コドンを記載の対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸変化は、「保存的改変変化」の一種である「サイレント変化」である。タンパク質をコードする本明細書に記載のいかなるポリヌクレオチド配列も、特記しない限り、あらゆる可能なサイレント変化を表す。当業者は、機能的に同一の分子を生じるように、核酸内の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるUGGを除く)を標準的な技法により改変できることを認識するであろう。したがって、記載される各配列には、タンパク質をコードする核酸の各「サイレント変化」が暗に意味されている。
さらに、コードされる配列内の単一アミノ酸またはほんの少数のアミノ酸(典型的に5%未満、より典型的には1%未満)を変化、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加は、その変化によってアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸で置換される場合に「保存的改変変化」であることを、当業者は認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。
当業者は、タンパク質、例えばグリコシルトランスフェラーゼ、およびタンパク質をコードする核酸の多くの保存的変化が、本質的に同一の産物を生じることを理解するであろう。例えば、遺伝暗号の縮重により、「サイレント置換」(すなわち、コードされるタンパク質に変化をもたらさない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードするすべての核酸配列の暗黙の特徴である。本明細書に記載されるように、配列は好ましくは、キメラグリコシルトランスフェラーゼの生成に用いられる特定の宿主細胞(例えば、酵母、ヒトなど)における発現に関して最適化される。同様に、アミノ酸配列中の1個または数個のアミノ酸が非常に類似した特性を有する異なるアミノ酸で置換される「保存的アミノ酸置換」(前記の定義の項を参照されたい)もまた、特定のアミノ酸配列またはアミノ酸をコードする特定の核酸配列と非常に類似していると容易に見なされる。任意の特定配列のこのような保存的置換変化は、本発明の特徴である。Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyも参照されたい。加えて、コードされる配列内の単一アミノ酸またはほんの少数のアミノ酸を変化、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加もまた、「保存的改変変化」である。
本発明の実施は、組換え核酸の構築、および宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞における遺伝子の発現を伴い得る。これらの目的を達成するための分子クローニング技法は、当技術分野において公知である。発現ベクターなどの組換え核酸の構築に適した多種多様なクローニング法およびインビトロ増幅法が、当業者に周知である。当業者を多くのクローニング実習に導くのに十分なこれらの技法および説明書の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA(Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1999 Supplement)(Ausubel)に見出される。組換えポリペプチドの発現に適した宿主細胞は当業者に公知であり、これには、例えば、大腸菌などの原核細胞、ならびに昆虫細胞、哺乳動物細胞、および真菌細胞(例えば、クロコウジカビ(Aspergillus niger))を含む真核細胞が含まれる。
当業者を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅、およびRNAポリメラーゼを介したその他の技法を含むインビトロ増幅法に導くのに十分な手順書の例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis et al. (1987) 米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990)(Innis);Arnheim & Levinson (October 1, 1990) C&EN 36-47;The Journal Of NIH Research (1991) 3: 81-94;(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci USA 86: 1173;Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874;Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem. 35: 1826;Landegren et al. (1988) Science 241: 1077-1080;Van Brunt (1990) Biotechnology 8: 291-294;Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560;およびBarringer et al. (1990) Gene 89: 117に見出される。インビトロで増幅された核酸をクローニングする改良法は、Wallace et al.、米国特許第5,426,039号に記載されている。
発明の詳細な説明
I. 序論
本発明は、原核生物において可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質を生成する方法を初めて提供する。いくつかの態様では、細胞内酸化環境を有する原核生物での発現により、治療用タンパク質の溶解度が向上する。細胞内酸化環境はジスルフィド結合形成を高め、治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼ両方の正確な折りたたみを可能にする。それらタンパク質の活性および溶解度は、一般的に、タンパク質の再折りたたみおよびジスルフィド結合形成よりも測定が簡便である。したがって、タンパク質の活性および溶解度は、正確なタンパク質折りたたみの決定の代わりに用いられる。治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプターに糖部分を転移する異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の同時発現により、O-グリコシル化が提供される。治療用タンパク質のグリコシル化は、原核生物の細胞質内で起こる。好ましい態様において、アミノ酸アクセプターはセリンまたはスレオニン残基である。このようにして、本発明は、原核細胞において真核生物翻訳後修飾の系を再現し、かつ原核細胞において大量の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質を作製する効率的な方法を提供する。
一部の治療用タンパク質は、還元環境を有する原核微生物内で可溶性であり、同様に、ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を含む一部のグリコシルトランスフェラーゼ、例えば原核生物グリコシルトランスフェラーゼも、還元環境を有する原核微生物内で可溶性である。したがって、いくつかの態様において、本発明の方法は、例えば還元環境において可溶性でありかつ活性を有するO-治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼの発現など、還元環境を有する原核宿主細胞を用いて行うことができる。還元環境を有する原核微生物の一例は、非改変の大腸菌細胞である。
本発明はまた、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質および異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を含む原核細胞を初めて提供する。原核細胞は、細胞内酸化環境または細胞内還元環境を有し得る。異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質、任意の他の異種グリコシルトランスフェラーゼ、および可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、原核細胞の細胞質内で発現される。
II. タンパク質のO-グリコシル化
O-グリコシル化は、ヒドロキシル基を有するアミノ酸を介した、タンパク質への糖基の結合である。タンパク質のO-グリコシル化は、真核生物および原核生物の両方で起こる。
真核生物において、O-グリコシル化は、小胞体内でタンパク質上のセリンまたはスレオニン残基において起こる。真核生物O-グリコシル化タンパク質は、例えば小胞体、ゴルジ体内で認められ、細胞外に分泌される場合が多い。真核生物タンパク質上のアミノ酸O-グリコシル化部位に転移される糖には、GalNAc、GlcNAc、マンノース、キシロース、グルコース、およびフコースが含まれる。最もよく付加される糖はGalNAcであり、これはセリンまたはスレオニンとムチン型結合を形成する。GalNAcは、ヒトだけで少なくとも24のメンバーを含むGalNAcトランスフェラーゼのファミリーによってタンパク質に転移される。例えば、Ten Hagen et al., Glycobiol. 13:1R-16R (2003)を参照されたい。さらなる異種グリコシルトランスフェラーゼにより、最初に結合された糖にさらなる糖が付加され得る。
原核生物、すなわち古細菌および細菌もまた、典型的に、例えばS層の一部としての細胞の外層上に、またはフラジェリンおよびピリンなどの細胞外タンパク質上に見出される内因性のO-グリコシル化タンパク質を有する。例えば、Schaffer et al., Proteomics, 1:248-261 (2001);Benz and Schmidt, Mole. Microbiol. 45:267-276 (2002);およびEichler, Microbiol. 149:3347-3351 (2003)を参照されたい。例えば、GalNAc、GlcNAc、マンノース、キシロース、グルコース、およびフコースといった種々の糖が、O-結合を介して原核生物タンパク質上のアミノ酸に付加される。さらなる異種グリコシルトランスフェラーゼにより、最初に結合された糖にさらなる糖が付加され得る。
O-結合でタンパク質に付加されたオリゴ糖の組成を決定すること、および/または特定のタンパク質上のO-結合のアミノ酸部位を決定することは、当業者にとって有用であり得る。例えば、当業者は、開示される本方法を用いる前に、例えばホルモンまたは増殖因子などの天然の治療用タンパク質上のO-結合型オリゴ糖の組成および/またはアミノ酸部位を決定することができる。または、当業者は、開示される本方法を用いた後に、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の組成またはアミノ酸部位を決定して、所望の産物の生成を確認することができる。
タンパク質上のO-結合型オリゴ糖の組成および/またはアミノ酸部位を決定する方法は、当業者に公知である。例えば、Schaffer et al., Proteomics, 1:248-261 (2001)を参照されたい。例えばシッフ染色法を用いて、SDS-PAGEによって分離されたタンパク質において複合糖質を検出することができる。分離されたタンパク質をナイロン膜またはPVDF膜に転写し、次いで、ジゴキシゲニンによる標識後に複合糖質の存在についてアッセイすることもできる。タンパク質のグリコシル化により、SDS-PAGEにおけるその挙動が変化する。したがって、グリコシル化されたと考えられるタンパク質を、SDS-PAGE上で非グリコシル化対照と比較することができる。レクチンもまた、グリコシル化されたと考えられるタンパク質を解析するため、および結合された糖部分を同定するために用いることができる。O-結合型オリゴ糖部分の同一性は、例えば、ガスクロマトグラフィー、質量分析技法(MALDI-MS)、または液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレー質量分析を用いて決定することができる。例えば、Benz and Schmidt, Mole. Microbiol. 45:267-276 (2002)を参照されたい。
特定の治療用タンパク質について、複合糖質のグリコシル化部位および組成が決定されたならば、可溶性活性O-結合型治療用タンパク質の生成に用いるための、適切な異種グリコシルトランスフェラーゼおよび原核細胞を選択することができる。好ましい態様において、治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼは原核細胞の細胞質内で発現され、治療用タンパク質のO-結合型グリコシル化は原核細胞の細胞質内で起こる。さらなる好ましい態様において、治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼは原核細胞の細胞質内で発現され、治療用タンパク質は細胞質内でグリコシル化され、その後ペリプラズムまたは細胞外に輸送され、そこで治療用タンパク質においてジスルフィド結合が形成される。別の好ましい態様では、生存原核細胞のペリプラズムまたは外部における治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼの移行は、本発明から除外される。
III. 可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質
治療用タンパク質は、典型的に、疾患を治療するためまたは疾患の症状を軽減するために、対象、例えば、高等哺乳動物および好ましくはヒトに投与される組換え真核生物タンパク質である。治療用タンパク質の他の用途には、例えば、対象において免疫応答を誘発するワクチンとしての用途が含まれる。治療用タンパク質は、典型的に、商業的には細菌などの原核生物で生産されない。その理由には、例えば、封入体(不溶性タンパク質)としての発現、またはグリコシル化されないもしくは正確にグリコシル化されないタンパク質の生成による不十分な生成が含まれる。本発明の方法は、第一に、原核生物で発現された治療用タンパク質の溶解度を高めることにより、第二に、原核細胞内での治療用タンパク質のグリコシル化を可能にすることにより、これらの問題を克服する。治療用タンパク質には、表1に記載されるタンパク質が含まれ、これらはいずれも、本明細書に開示する方法を用いてO-グリコシル化することができる。
(表1)好ましい治療用タンパク質
Figure 2009534034
多くの潜在的可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質のアミノ酸配列は、当業者に公知である。複合糖質のアミノ酸部位および組成は、例えば、天然の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質のO-グリコシル化パターンのすべてまたは一部を反復することにより、決定することができる。天然の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質上の複合糖質のアミノ酸部位および組成は、上記のように実験的に決定することができる。または、当業者は、天然の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質上の複合糖質の以前に決定されたアミノ酸部位および組成を利用することができる。多くは公知であり、当業者による使用のために、例えばO-グリコシル化タンパク質のデータベースであるO-GLYCBASEに収集されている。例えば、www.cbs.dtu.dk/databases/OGLYCBASE/を参照されたい。
本発明の方法を用いて生成することができる他の好ましい治療用タンパク質は、2002年10月9日に出願された出願番号第PCT/US02/32263号;2003年2月19日に出願された仮特許出願第60/448,381号;2003年1月6日に出願された仮特許出願第60/438,582号;2002年8月28日に出願された仮特許出願第60/407,527号;2002年8月16日に出願された仮特許出願第60/404,249号;2002年7月17日に出願された仮特許出願第60/396,594号;2002年6月25日に出願された仮特許出願第60/391,777号;2002年6月7日に出願された仮特許出願第60/387,292号;2001年11月28日に出願された仮特許出願第60/334,301号;2001年11月28日に出願された仮特許出願第60/334,233号;2001年10月19日に出願された仮特許出願第60/344,692号;および2001年10月10日に出願された仮特許出願第60/328,523号;ならびに以下の米国特許出願公開第20040142856号、第20040137557号、第20040132640号、第20040126838号、第20040115168号、第20040082026号、第20040077836号、第20040063911号、および第20040043446号に開示されている。上記参考文献における好ましい治療用タンパク質は、再構築に好ましいペプチドとも称される。
治療用タンパク質のアミノ酸配列は、O-結合型グリコシル化部位を含む。O-結合型グリコシル化部位は天然の部位であってよく、またはアミノ酸配列にO-結合型グリコシル化部位を導入するための操作によるものであってもよい。O-結合型グリコシル化部位を有する例示的なタンパク質には、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、例えば175および178アミノ酸野生型(N末端メチオニン残基を含む、または含まない)、インターフェロン(例えば、インターフェロンα、例えばインターフェロンα2bまたはインターフェロンα2a)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ヒト成長ホルモン、インターロイキン(例えば、インターロイキン2)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)が含まれる。野生型および変異体のタンパク質およびペプチドの例は、例えば、2004年5月7日に出願されたPCT/US2004/014254;2003年5月9日に出願された米国仮特許出願第60/469,114号;2003年8月13日に出願された米国仮特許出願第60/494,751号;2003年8月14日に出願された米国仮特許出願第60/495,076号;2003年1月8日に出願された米国仮特許出願第60/535,290号;2005年1月10日に出願されたPCT/US05/000799;2005年1月10日に出願されたUSSN 11/033365;2004年1月8日に出願された米国仮特許出願第60/535284号;2004年2月12日に出願された米国仮特許出願第60/544411号;2004年2月20日に出願された米国仮特許出願第60/546631号;2004年3月23日に出願された米国仮特許出願第60/555813号;2004年5月12日に出願された米国仮特許出願第60/570891号;2005年10月31日に出願されたPCT/US05/39226;および2004年10月29日に出願された米国仮特許出願第60/623342号に見出され、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
アミノ酸配列に挿入することができる合成O-グリコシル化部位の例は、2006年7月21日に出願された米国仮特許出願第60/832,461号に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
本発明はまた、プロテアーゼに対する抵抗性を増すように改変された治療用タンパク質も包含する。1つの態様において、プロテアーゼ抵抗性治療用タンパク質はヒト成長ホルモンタンパク質である。例示的なプロテアーゼ抵抗性治療用タンパク質は、例えば、2005年4月8日に出願された米国仮特許出願第60/669736号;2005年8月22日に出願された米国仮特許出願第60/710401号;および2005年9月23日に出願された米国仮特許出願第60/720030号に見出され、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の方法を用いた可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の発現後、この可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、好ましくは活性を有するタンパク質である。当業者は、O-グリコシル化治療用タンパク質の活性を決定する方法を認識するであろう。O-グリコシル化酵素または阻害剤、例えば凝固因子の酵素アッセイを行って、活性を決定することができる。いくつかのO-グリコシル化治療用タンパク質は、生物活性についてアッセイすることができる。例えば、O-グリコシル化ホルモンまたは増殖因子は、細胞に基づくモデルまたは動物モデルにおいて、適切な受容体への結合または適切な応答についてアッセイすることができる。O-グリコシル化受容体タンパク質は、細胞に基づくモデルまたは動物モデルにおいて、適切なリガンドへの結合または適切な応答についてアッセイすることができる。O-グリコシル化抗体または免疫グロブリンタンパク質は、適切な抗原への結合についてアッセイすることができる。O-グリコシル化サイトカインは、適切な細胞に基づくモデルまたは動物モデルを用いて、活性についてアッセイすることができる。ワクチンであるO-グリコシル化治療用タンパク質は、モデル動物またはヒトにおいて、免疫応答を誘発する能力についてアッセイすることができる。
1つの態様において、本明細書に記載の方法により作製された可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、還元環境を有する微生物において発現された同じ治療用タンパク質の活性レベルの1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍まで、または10,000倍までの活性レベル、例えばU/細胞またはU/mgタンパク質を有する。別の態様において、本明細書に記載の方法により作製された可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、異種グリコシルトランスフェラーゼを含まない微生物において発現された同じ治療用タンパク質の活性レベルの1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍まで、または10,000倍までの活性レベル、例えばU/細胞またはU/mgタンパク質を有する。
好ましい態様において、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、例えば、異種グリコシルトランスフェラーゼを発現しない原核細胞または真核細胞で発現された治療用タンパク質と比較して、向上した治療特性を有する。向上した治療特性には、例えば、対象における治療用タンパク質の生物利用能の増加、対象における治療用タンパク質の半減期の延長、薬物動態の向上、薬力学の向上、体内分布の改善、多価種の提供、水溶性の向上、親油性の増大または減少、および組織標的化が含まれる。向上した治療特性に関する試験は、例えば、ヒトならびにモデル動物系、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ、および非ヒト霊長類で行うことができる。
1つの態様において、本明細書に記載の方法により作製された可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、還元環境を有する微生物において発現された同じ治療用タンパク質の治療特性の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍まで、または10,000倍までの向上した治療特性を有する。別の態様において、本明細書に記載の方法により作製された可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼを含まない微生物において発現された同じ治療用タンパク質の治療特性の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍まで、または10,000倍までの向上した治療特性を有する。
IV. 可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼ
本発明の可溶性活性治療用タンパク質にO-結合型糖またはオリゴ糖を結合させるには、可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼが用いられる。結合は、細胞内酸化環境を有する原核生物の細胞内で行われる。可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質およびその他のグリコシルトランスフェラーゼが含まれる。
本発明の方法では、少なくとも1種の異種グリコシルトランスフェラーゼが用いられる。グリコシルトランスフェラーゼの総数は、使用者の必要性に依存する。グリコシルトランスフェラーゼは、真核生物グリコシルトランスフェラーゼまたは原核生物グリコシルトランスフェラーゼであってよい。酸化環境を有する原核生物において、活性を有する真核生物グリコシルトランスフェラーゼを生成することができる。例えば、それぞれがすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2005年3月24日に出願された米国特許仮出願第60/665,396号;2005年4月5日に出願された米国特許仮出願第60/668,899号;2005年10月31日に出願された米国特許仮出願第60/732,409号;および2006年3月24日に出願された国際出願PCT/US06/11065を参照されたい。還元環境を有する原核生物、例えば非改変の大腸菌種では、真核生物グリコシルトランスフェラーゼおよび他の異種タンパク質は、不溶性であり封入体として発現される場合が多い。異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼと、選択した治療用タンパク質とを同時発現させる能力により、原核宿主細胞の細胞質内で、治療用タンパク質のインビボO-結合型グリコシル化が行われるようになる。
第1グリコシル化段階は、ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質、すなわちドナー基質から治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプターに糖部分を転移するグリコシルトランスフェラーゼタンパク質により行われる。真核生物において、一般的に用いられるヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質には、GalNAcトランスフェラーゼタンパク質が含まれる。これらのタンパク質は、UDP-GalNAcからタンパク質上のセリンまたはスレオニン残基にGalNAc部分を転移する。1つの態様においては、単一のヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質が本発明において用いられ、O-結合型アミノ酸を含む可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質が生成される。
N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼは、本発明の実施において、特にペプチドのO-結合型グリコシル化部位のアミノ酸へのGalNAc部分の結合に有用である。適切なN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼには、α(1,3) N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4) N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Nagata et al., J. Biol. Chem. 267: 12082-12089 (1992)、およびSmith et al., J. Biol Chem. 269: 15162 (1994))、およびポリペプチドN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homa et al., J. Biol. Chem. 268:12609 (1993))が含まれる、これらに限定されない。
遺伝子操作によるクローン化遺伝子からの酵素GalNAc T1〜XXなどのタンパク質の生成は周知である。例えば、米国特許第4,761,371号を参照されたい。1つの方法は十分な試料の収集を伴い、次に酵素のアミノ酸配列をN末端配列決定により決定する。次にこの情報を用いて、昆虫細胞株Sf9で発現された場合に完全に活性のある酵素の合成をもたらす全長(膜結合型)トランスフェラーゼをコードするcDNAクローンを単離する。次に、16の異なるタンパク質における公知のグリコシル化部位の周囲のアミノ酸の半定量的解析、およびその後の合成ペプチドのインビトログリコシル化研究により、酵素のアクセプター特異性を決定する。この研究から、グリコシル化ペプチドセグメントにおいて特定のアミノ酸残基が大きな比率を占めること、ならびにグリコシル化セリンおよびスレオニン残基の周囲の特定の位置の残基が、他のアミノ酸部分よりもアクセプター効率に対してより顕著な影響を及ぼし得ることが実証された。
第2のグリコシル化段階は、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質上のアミノ酸結合糖に糖部分を転移し得るグリコシルトランスフェラーゼによって行われる。1つの態様において、第1グリコシル化段階はGalNAcトランスフェラーゼタンパク質によって行われ、第2グリコシル化段階は、ガラクトース部分をアミノ酸結合GalNAc部分に転移するコア1ガラクトーストランスフェラーゼ1タンパク質(コア1 Gal T1)によって行われる。または、第2のグリコシルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼ、例えばST6GalNAc1タンパク質であってもよい。
第3のグリコシル化段階は、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質上の末端結合糖へ糖部分を転移し得るグリコシルトランスフェラーゼによって行われる。例えば、第2グリコシル化段階がコア1 Gal T1タンパク質によって行われた場合、第3グリコシル化段階は、例えば、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質にシアル酸部分を付加するためのST3Gal1タンパク質によって行うことができる。使用者の所望通りに、さらなるまたは異なる段階を行うことができる。
いくつかの態様では、グリコシル化段階のすべてまたは一部において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼが用いられる。本発明の方法では、任意の真核生物グリコシルトランスフェラーゼを用いることができる。真核生物グリコシルトランスフェラーゼは天然の非改変タンパク質であってよく、またはタンパク質の触媒活性、もしくは安定性、もしくはその他の特徴を高めるように改変されたグリコシルトランスフェラーゼであってもよい。真核生物グリコシルトランスフェラーゼの改変には、例えば、例えばステム領域、シグナルアンカードメイン、もしくはステム領域もしくはシグナルアンカードメインの一部を除去するためのタンパク質の切断、またはステム領域およびシグナルアンカードメインの両方の除去;または別のアミノ酸残基への置換による不対システイン残基の除去が含まれる。1つまたは複数の非触媒ドメインを除去するように、グリコシルトランスフェラーゼをC末端で切断することもできる。例えば、酵素活性を減少させることなく、GalNAcT酵素からC末端レクチンドメインを除去することができる。改変グリコシルトランスフェラーゼは、例えば、2004年2月4日に出願されたUSSN 60/542,210;2004年8月6日に出願されたUSSN 60/599,406;2004年11月12日に出願されたUSSN 60/627,406;2004年6月3日に出願されたUSSN 60/576,433;2005年2月4日に出願されたUSSN 60/650,011;2005年6月3日に出願されたPCT/US05/19583;2004年6月3日に出願されたUSSN 60/576,530;2004年8月3日に出願されたUSSN 60/598,584;2005年6月3日に出願されたPCT/US05/19442;2005年2月4日に出願されたPCT/US05/03856;WO 2004/063344;2005年3月24日に出願された米国特許仮出願第60/665,396号;2005年4月5日に出願された米国特許仮出願第60/668,899号;2005年10月31日に出願された米国特許仮出願第60/732,409号;および2006年3月24日に出願された国際出願PCT/US06/11065に記載されており、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の好ましい態様は、例えば、真核生物N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIもしくはGNTI、GnTIIもしくはGNTII、GnTIIIもしくはGNTIII、GnTIVもしくはGNTIV、GnTVもしくはGNTV、GnTIVもしくはGNTIV、またはコア2 GalNAcT);真核生物N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAcT、例えば、GalNAcT1、GalNAcT2、またはGalNAcT3);任意のガラクトシルトランスフェラーゼ、例えば、真核生物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT1)または真核生物コアIガラクトシルトランスフェラーゼ(コア-1-Gal-T1);任意の真核生物シアリルトランスフェラーゼ、例えば、真核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(ST3Gal3)、または真核生物α-N-アセチルガラクトサミニルα-2,6-シアリルトランスフェラーゼI(ST6GalNAc-1)、または真核生物gal β1,3GalNAc α2,3-シアリルトランスフェラーゼ(ST3Gal-1);および任意の真核生物フコシルトランスフェラーゼの使用を含む。上記に列挙した活性を有するタンパク質の多くの例は公知であり、例えばafmb.cnrs-mrs.fr/CAZY/、特にグリコシルトランスフェラーゼファミリー2、4、6、7、10、1、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、25、26、27、28、29、31、32、34、37、38、41、42、49、52、54、65、または68を参照されたい。他の好ましい態様は、原核生物グリコシルトランスフェラーゼの使用を含む。
上記の通り、グリコシルトランスフェラーゼは、開示の方法を用いて生成する前に改変することができる。改変には、例えば、細胞質ドメイン、シグナルアンカードメイン、ステム領域、およびまたはレクチンもしくはリシンドメインなどの非触媒ドメインのすべてまたは一部を除去するためのグリコシルトランスフェラーゼの切断が含まれる。本発明において生成することができる例示的な切断型グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、2005年3月24日に出願された米国特許仮出願第60/665,396号;2005年4月5日に出願された米国特許仮出願第60/668,899号;2005年10月31日に出願された米国特許仮出願第60/732,409号;および2006年3月24日に出願された国際出願PCT/US06/11065に記載されるようなST3Gal III(Δ27、Δ28、Δ73、Δ85、Δ86)、ヒトGnTI(Δ103)、ウシGalT1(Δ40、Δ129、Δ70)、ヒトGalNAcT2(Δ51、Δ40、Δ73、Δ94、Δ51Δ445、Δ53、Δ53Δ445)、ST3Gal1(Δ45)、ショウジョウバエコア-1-Gal-T1(Δ31、Δ50)、およびヒトST6GalNAc1変異体が含まれ、これらの文献はそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
好ましい態様において、第1グリコシル化段階は真核生物GalNAcTタンパク質によって行われる。このようなタンパク質はCAZyファミリー27として例証され、例えば図18を参照されたい。GalNAcTタンパク質はアラインメントされており、このアラインメントは、例えば、膜貫通ドメイン、ステムドメイン、触媒ドメイン、およびレクチンまたはリシンドメインといった、タンパク質内のドメインを同定するために用いられる。例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Ten Hagen et al. Glycobiology 13:1R-16R (2003)を参照されたい。そのようなアラインメントはまた、タンパク質の活性を保持したまま行うことができる切断、置換、およびその他の改変を同定するために、当業者によって用いられ得る。例えば、Ten Hagen et al.、前記を参照されたい。
CAZyファミリー27はまた、種々の糖、例えば、GlcNAc、グルコース、フコース、およびキシロースをアミノ酸に転移する真核生物または原核生物ポリペプチド:ヌクレオチド糖トランスフェラーゼと同様に、本発明において用いることができる細菌タンパク質も含む。
さらなる態様では、本発明の1つまたは複数のグリコシル化段階を行うために、原核生物グリコシルトランスフェラーゼが用いられる。本発明において用いることができる細菌グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、シアリルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、およびGalNAcトランスフェラーゼが含まれる。細菌グリコシルトランスフェラーゼの例は、例えば、2003年1月7日に発行された米国特許第6,503,744号;2004年3月2日に発行された米国特許第6,699,705号;2000年8月1日に発行された米国特許第6,096,529号;2004年2月10日に発行された米国特許第6,689,604号;2005年1月21日に出願された国際出願第PCT/US2005/001614号;2005年9月16日に出願された国際出願第PCT/CA2005/001432号;2005年4月11日に出願されたUSSN 60/670608;および2006年1月31日に出願されたUSSN 60/764171に開示されている。
V. O-結合型グリカン構造
O-結合型グリカン構造の総説については、Schachter and Brockhausen, The Biosynthesis of Branched O-Linked Glycans, 1989, Society for Experimental Biology, pp. 1-26 (Great Britain)を参照されたい。
以下は、例示的なO-結合型グリカン構造である:
Ser/Thr-α-1-GalNAc[--β-1,6--GlcNAc--β-1,4--Gal--α2,3-Sia]β-1,3-Gal
Ser/Thr-α-1-GalNAc[--β-1,6--GlcNAc--β-1,4--Gal--α2,3-Sia]β-1,3-Gal-α2,3-Sia
Ser/Thr-α-1-GalNAc--β-1,3-Gal-α2,3-Sia
Ser/Thr-α-1-GalNAc--β-1,3-Gal
Ser/Thr-α-1-GalNAc-α2,6-Sia
Ser/Thr-α-1-GalNAc
真核生物グリコシルトランスフェラーゼと原核生物グリコシルトランスフェラーゼの任意の適切な組み合わせを用いて、O-グリカン構造を作製することができる。天然O-グリカン構造の例を図16に提供する。しかし、当業者は、適切なグリコシルトランスフェラーゼおよび活性化糖基質を用いて、別のO-グリカン構造を作製できることを認識するであろう。
アミノ酸残基に転移される糖の同一性は、GalNAcに限定されない。図17に示されるように、適切なグリコシルトランスフェラーゼを用いて、他の糖も酸素含有アミノ酸残基に転移することができる。このように、GalNAcトランスフェラーゼにより、GalNAcがアミノ酸残基に転移され;GlcNAcトランスフェラーゼにより、GlcNAcがアミノ酸残基に転移され;フコシルトランスフェラーゼにより、フコースがアミノ酸残基に転移され;グルコシルトランスフェラーゼにより、グルコースがアミノ酸残基に転移され;およびマンノシルトランスフェラーゼにより、マンノースがアミノ酸残基に転移される。
図16および図17はセリンまたはスレオニン残基上のO-グリコシル化を示すが、例えばヒドロキシプロリンといった他の酸素含有アミノ酸残基も、糖分子を受け入れることができる。加えて、グルコースは、トリプトファン残基にも酵素的に結合され得る。
セリンまたはスレオニン残基へのGalNAcの転移から始まるO-グリコシル化手順の例を以下に挙げる。異種GalNAcTタンパク質により、GalNAc残基がセリンまたはスレオニン残基に結合される。例示的なGalNAcTタンパク質には、真核生物GalNAcT1〜20および細菌酵素が含まれ、これらは図18に記載されている。
異種ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質により、ガラクトース残基がGalNAc糖に結合される。例示的なガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質には、β-1,3結合でGalNAcにガラクトースを結合する真核生物コア1Gal T1タンパク質および細菌タンパク質が含まれる。α2,3活性を有するシアリルトランスフェラーゼタンパク質により、シアル酸残基がガラクトース糖に付加され得る。例示的なシアリルトランスフェラーゼタンパク質には、ST3 Gal1、ST3 Gal2、またはカンピロバクター属CstIタンパク質が含まれる。
異種GlcNAcTタンパク質により、GlcNAc残基がGalNAc糖に結合される。例示的なGlcNAcTタンパク質は、例えばCAZyファミリー14に開示されている。CAZyファミリー14は、本発明で用いることができる、コア2 β1,6-GlcNAcトランスフェラーゼ活性を有する真核生物および原核生物タンパク質の例を含む。例えば、真核生物Gal T1もしくはGal T7またはナイセリア属lgtBタンパク質といった、β(1-4)結合に特異的な異種ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質により、ガラクトース残基がGlcNAc糖に結合される。他の細菌タンパク質は、CAZyファミリー82のメンバーである。α2,3活性を有するシアリルトランスフェラーゼタンパク質により、シアル酸残基がガラクトース糖に付加され得る。例示的なシアリルトランスフェラーゼタンパク質には、ST3 Gal2、ST3 Gal3、ST3 Gal4、またはカンピロバクター属CstIタンパク質が含まれる。
例えばα2,8結合でのシアル酸の付加といったさらなる修飾が、末端シアル酸残基において起こり得る。例示的なタンパク質には、例えば、ST8Sia I、ST8Sia II、ST8Sia III、ST8Sia IV、またはカンピロバクター属CstIIタンパク質が含まれる。例えば、真核生物フコシルトランスフェラーゼV、VI、VIII、またはヘリコバクター属(Helicobacter)フコシルトランスフェラーゼを用いて、フコース残基もまた付加され得る。
VI. 原核生物内の細胞内酸化環境
好ましい態様では、細胞内酸化環境を有する原核生物において、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質と異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼとを同時発現させる。
A. 酸化細胞内環境を有する原核微生物
本発明の方法は、細胞内酸化環境を有する原核微生物を用いて実施される。このような微生物には、内因性の細胞内酸化環境を有する原核微生物、および細胞内酸化環境を有するように遺伝子操作された原核微生物が含まれる。
一部の原核生物は内因性の細胞内酸化環境を有し、したがって、細胞内のタンパク質ジスルフィド結合の形成を促進する。原核生物における細胞内酸化区画は、具体的に、細菌細胞周辺腔を除外する。内因性細胞内酸化環境を有する原核生物は、可溶性活性真核生物グリコシルトランスフェラーゼを細胞内区画において生成するために用いることができる。内因性細胞内酸化環境を有する原核生物には、例えば、テントステロニ(testosteroni)、プチダ(putida)、アエルギノザ(aeruginosa)、シリンガエ(syringae)、およびフルオレセンス(fluorescens)を含むシュードモナス属種のメンバー;一部のグラム陽性細菌;ならびに一部のグラム陰性細菌が含まれる。さらなるシュードモナス属の種および株は、例えば、2005年8月25日に公開された米国特許出願公開第US2005/0186666号に記載されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。グラム陽性細菌には、例えば、バチルス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、およびクロストリジウム属(Clostridium)の種が含まれる。
可溶性活性真核生物グリコシルトランスフェラーゼまたは可溶性活性治療用タンパク質を生成するために、本発明の方法では、酸化還元経路が改変された原核生物も用いることができる。改変は、還元環境を有する原核生物、例えば、大腸菌もしくは他のグラム陰性細菌または一部のグラム陽性細菌に対して行うことができる。これらの原核微生物は、細胞内酸化環境を促進し、それによって、例えば治療用タンパク質および真核生物グリコシルトランスフェラーゼの細胞内ジスルフィド結合形成およびタンパク質再折りたたみが向上するように改変される。
多くの原核生物は、組換え発現タンパク質を含むいくつかの細胞質タンパク質において形成するジスルフィド結合を還元するために2つの経路を使用する。細胞内酸化環境の形成を促進するために、これらの経路の成分を操作することができる。第1の経路はチオレドキシン系であり、これは一般的に、チオレドキシン還元酵素およびチオレドキシンを含む。チオレドキシン還元酵素はチオレドキシンを還元状態に維持する。第2の経路はグルタレドキシン系であり、これは一般的に、グルタチオン酸化還元酵素、グルタチオン、およびグルタレドキシンを含む。これらの酸化還元経路のいくつかの成分の不活化変異は、最終的に、発現されたタンパク質におけるジスルフィド結合形成を高めることができ、原核生物で発現される異種タンパク質の場合には、発現された異種タンパク質の溶解度および活性を高めることができる。例えば、大腸菌では、チオレドキシン還元酵素活性を排除すると、細胞内区画において酸化酵素として働く酸化型チオレドキシンが蓄積する。
いくつかの好ましい例は、還元酵素活性が減少した、または還元酵素活性のない原核微生物である。例えば、細胞内環境を改変し、それによって、ジスルフィド結合の形成に有利な細胞内酸化環境を生じるために、チオレドキシン還元酵素および/またはグルタチオン酸化還元酵素の活性を減少させるか、または排除することができる。
例えば、チオレドキシン還元酵素遺伝子(trxB)およびグルタチオン酸化還元酵素遺伝子(gor)の両方に変異を有する大腸菌株は、高レベルのジスルフィド結合形成を有するタンパク質を発現することができる。例えば、Prinz et al., J. Biol Chem. 272:15661-15667 (1997)を参照されたい。これらのtrxB gor二重変異体は、大部分の増殖培地において非常にゆっくりと増殖するが、DTTなどの還元体を添加することによって増殖を速めることができる。しかしながら、二重変異体は、往々にして、trxB gor変異を保持し、かつDTTを欠く培地中で速く増殖するサプレッサー変異株を生じる。大腸菌におけるtrxB gorサプレッサー変異の一例は、アルキルヒドロペルオキシダーゼAhpCFの触媒サブユニットをコードする遺伝子ahpCの変異である。このサプレッサー変異は、AhpCF酵素の触媒部位をコードするDNAにトリプレットを付加する。速く増殖する二重変異体大腸菌株、例えば、trxB、gor、supp株およびtrxB、gshA、supp株は、例えば米国特許第6,872,563号に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。このような操作された大腸菌株、例えばtrxB、gor、supp株は、例えばEMD Biosciences, Inc.から、例えば商標名ORIGAMI(商標)、ORIGAMI 2(商標)、およびROSETTA-GAMI(商標)で市販されている。他の大腸菌変異から、細胞内酸化環境、例えば、trxB、gshA株およびtrxB、gshA supp株を得ることができる。
タンパク質、例えば治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼにおけるジスルフィド結合形成を高めるために、微生物における酸化還元経路の成分の他の操作を使用することができる。例えば、酸化活性を有するタンパク質、例えばtrxB、gor変異株の大腸菌チオレドキシンタンパク質を、原核微生物において過剰発現させることができる。別の例は、酸化活性が上昇したチオレドキシン変異体の発現または過剰発現である。このような変異体の例は、例えば、Bessette, et al. PNAS 96:13703-13708 (1999)に記載されている。細胞内ジスルフィド結合の形成を高めるために、特定の酸化酵素の標的化細胞質発現を用いることもできる。例えば、典型的に細胞周辺腔で発現される酸化タンパク質、例えばDsbCを、例えば、ペリプラズム標的化配列を欠失させることによって、または細胞質保持配列を含めることによって、細菌細胞質内で発現させることができる。細胞質タンパク質の酸化を高めるために、例えば、ペリプラズム標的化配列を欠失させることによって、または細胞質保持配列を含めることによって、ペリプラズムの他の酸化タンパク質を細菌細胞質内で発現させることができる。
チオレドキシン還元酵素核酸、グルタチオン酸化還元酵素核酸、チオレドキシン核酸、グルタチオン核酸、および細胞内酸化還元環境の維持に関与する他のタンパク質をコードする核酸は、他の細菌、例えば、多くの細菌の中で、アゾトバクター属(Azotobacter)種(例えば、A. ビネランジイ(A. vinelandii))、シュードモナス属種、リゾビウム属(Rhizobium)種、エルウィニア属(Erwinia)種、エシェリキア属(Escherichia)種(例えば、大腸菌)、バチルス属、シュードモナス属、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、シゲラ属(Shigella)、リゾビウム属(Rhizobia)、ビトレオシラ属(Vitreoscilla)、パラコッカス属(Paracoccus)、およびクレブシエラ属(Klebsiella)種において同定され得る。このような遺伝子は、配列解析、ならびに公知のチオレドキシン還元酵素遺伝子、グルタチオン酸化還元酵素遺伝子、および細胞内酸化還元環境の維持に関与する他のタンパク質をコードする遺伝子、またはコードされる産物のアミノ酸配列との比較によって同定することができる。コードされるタンパク質は、酵素アッセイ法により、または適切な遺伝子機能の大腸菌変異体の遺伝子相補アッセイ法によって、さらに機能的に特定することができる。内因性のチオレドキシン還元酵素遺伝子およびグルタチオン酸化還元酵素遺伝子は、例えば、標準的な分子生物学技法を用いて遺伝子産物を不活化するように変異させることができ、これらの変異株もまた、非変異株と比較して高レベルのジスルフィド結合形成を有するタンパク質を発現させるために用いることができる。
B. 細胞内酸化環境の同定
タンパク質の再折りたたみおよびタンパク質の活性は、正しいジスルフィド結合形成に依存する場合が多い。ジスルフィド結合は、タンパク質を取り巻く環境の酸化還元状態に大きく影響される可逆的なチオール-ジスルフィド(SH-SS)交換反応である。大腸菌および他の原核生物を含む多くの細胞において、システインを含むトリペプチドであるグルタチオンは、重要なチオール-ジスルフィド酸化還元緩衝剤である。原核微生物の酸化還元状態はまた、チオレドキシンなどの他のタンパク質にも影響を受ける。そしてまた、還元酵素タンパク質は、グルタチオン、グルタレドキシン、およびチオレドキシンの酸化還元状態を調節する。大腸菌において、gshAおよびgshBによってコードされるグルタチオンは、グルタレドキシンの酸化還元状態を調節する。還元酵素タンパク質には、例えば、チオレドキシン還元酵素およびグルタチオン酸化還元酵素が含まれる。大腸菌は、trxAおよびtrxC遺伝子によってコードされるチオレドキシン、grxA、grxB、およびgrxC遺伝子によってコードされるグルタレドキシン1、グルタレドキシン2、およびグルタレドキシン3を有する。細胞の酸化状態を調節するタンパク質の多く、例えば、チオレドキシン、グルタチオン、チオレドキシン還元酵素、およびグルタチオン酸化還元酵素は、活性部位CX1X2Cモチーフを含む。これらのタンパク質はまた、チオレドキシンフォールドとして知られるタンパク質構造モチーフも含む。
細胞内酸化環境を有する原核生物を同定する1つの方法は、還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の比を測定することである。タンパク質折りたたみに最適なGSH/GSSG比が決定されている。インビトロにおいて、適切に折りたたまれたタンパク質の最大収率は、GSH/GSSG比50未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは20未満、最も好ましくは10未満で得られる。哺乳動物細胞において、細胞質GSH/GSSG比は30/1〜100/1であったのに対して、分泌経路(大部分のタンパク質再折りたたみはここで起こる)のGSH/GSSG比は1/1〜3/1であった。Hwang et al., Science 257:1496-1502 (1992)。大腸菌は、ジスルフィド結合を有する細胞内タンパク質をごくわずかしか発現しない。ジスルフィド結合を有する大腸菌タンパク質は、酸化環境を有する細胞周辺腔に分泌される。典型的な野生型大腸菌の細胞内GSH/GSSG比は50/1〜200/1であった。Hwang et al. 前記。
本発明の方法は、細胞内酸化環境を有する原核生物において可溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼを生成するために用いることができる。細胞内酸化環境を有する微生物は、典型的に、50未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは20未満、最も好ましくは10未満のGSH/GSSG比を有する。したがって、いくつかの態様において、本発明の微生物は、例えば、0〜50、または0.1〜25、または0.5〜10のGSH/GSSGを有する。
細胞内環境を有する原核微生物は、例えば、原核生物の細胞内GSH/GSSG比を決定することによって同定することができる。総グルタチオン濃度のアッセイ法は、例えばSigmaから市販されている。GSH/GSSG比を決定するアッセイ法は、例えば、Hwang et al., Science 257:1496-1502 (1992)に記載されている。N-(1-ピレニル)マレイミド(NPM)による誘導体化の後に、HPLCを用いて定量することにより、GSHおよびGSSGの細胞内含有量を定量する方法が、Ostergaard, et al., J. Cell Biol. 166:337-345 (2004)に記載されている。
原核生物が細胞内酸化環境を有するかどうかを決定するためのいくつかのさらなるアッセイ法が、当業者に利用可能である。これらのアッセイ法には、グルタチオン還元酵素活性およびグルタチオンプール酸化還元状態の測定(Tuggle and Fuchs, J. Bacter. 162:448-450 (1985))、増殖培地中のチオール特異的酸化体に対する感受性(Prinz et al., J. Biol. Chem. 272:15661-15667 (1997))、過酸化水素またはジアミドへの曝露後の大腸菌におけるOxyR遺伝子の転写活性化(Bessette et al., PNAS 96:13703-13708 (1999)、酸化還元感受性緑色蛍光タンパク質(rxYFP)などのレポーター遺伝子の酸化還元状態の測定(Ostergaard et al., J. Cell Biol. 166:337-345 (2004))、例えばMolecular Probesによるモノクロロビマン、CellTracker Green CMFDA、o-フタルジアルデヒド、およびナフタレン-2,3-ジカルボキシアルデヒドなどのグルタチオン感受性色素を用いたグルタチオンの検出、ならびに4-アセトアミド-4'-マレイミジルスチルベン-2,2-ジスルホン酸などのスルフヒドリル-アルキル化試薬への細胞の曝露後のタンパク質中のシステイン残基の酸化(Jurado et al., J. Mol. Biol. 320:1-10 (2002))が含まれる。
VII. タンパク質可溶化の向上
本発明の方法において用いられる治療用タンパク質および真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドなどの、異種的に発現されたタンパク質のジスルフィド結合を還元すると、多くの場合、タンパク質は誤って折りたたまれ、溶液から沈殿する。例えば大腸菌などの細菌細胞において、誤って折りたたまれたタンパク質は不溶性の封入体として発現される。正確なジスルフィド結合形成、ひいては適切な折りたたみを有する酵素は、通常可溶性である。タンパク質の可溶化は、一般的に、適切な速度で適切な期間遠心分離した後に、水性画分にタンパク質が存在することによって示される。加えて、適切に折りたたまれたタンパク質が発現すると、タンパク質活性のレベルが増加する。したがって、適切なタンパク質折りたたみが起こったかどうかを決定するために、酵素活性のアッセイ法を用いることもできる。
例えば、酸化環境を有する微生物において発現されたO-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼの可溶化は、還元環境を有する微生物、例えば還元環境を有する大腸菌株において発現された治療用ポリペプチドおよびグリコシルトランスフェラーゼの可溶化と比較することができる。いくつかの態様において、酸化環境を有する微生物において発現されたO-グリコシル化治療用タンパク質は、還元環境を有する微生物において発現された同じ治療用タンパク質の可溶性レベルの1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍まで、または10,000倍までのレベルで可溶性画分中に発現される。他の態様において、酸化環境を有する微生物において発現されたO-グリコシル化治療用タンパク質は、還元環境を有する微生物において発現された同じ治療用タンパク質の活性レベルの1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍まで、または10,000倍までの活性レベル、例えばU/細胞またはU/mgタンパク質を有する。
A. タンパク質溶解度の特徴づけ
好ましい態様において、治療用タンパク質および真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、原核微生物の細胞内で可溶性タンパク質として発現される。治療用タンパク質および真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの溶解度は、上記で開示されるように、適切な速度で適切な期間遠心分離した後に、水性画分中のタンパク質レベルを測定することによって決定することができる。タンパク質レベルは、当業者に公知の方法、例えば、免疫測定法、または例えばSDS-PAGEによって分離されたタンパク質の直接比較を用いて決定することができる。免疫測定法は、関心対象の治療用タンパク質もしくは真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドに特異的な抗体を用いて、または治療用タンパク質もしくは真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドに共有結合されたエピトープタグもしくは精製タグに特異的な抗体を用いて行うことができる。
溶解度はまた、原核微生物からの可溶性画分中のO-グリコシル化治療用タンパク質の酵素活性をアッセイすることによって決定することもできる。好ましい態様において、O-グリコシル化治療用タンパク質の活性は、原核微生物からの可溶性細胞内画分中で測定可能である。
B. タンパク質溶解度の向上
治療用タンパク質および異種グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの溶解度は、例えば、タンパク質発現の速度を遅らせることによって、またはタンパク質を例えばシャペロンタンパク質と組み合わせて発現させることによって、さらに高めることができる。
適切なジスルフィド結合の形成率を上げることによって、活性可溶性グリコシルトランスフェラーゼおよびO-グリコシル化治療用タンパク質の発現をより高めることができる。活性可溶性グリコシルトランスフェラーゼおよびO-グリコシル化治療用タンパク質の発現を増強する別の方法は、発現速度を遅らせ、それによって、新生ポリペプチドに、安定した可溶性高次構造をとる時間をより多く与えることである。本明細書に記載の2つの方法の併用が、本発明の好ましい態様である。異種タンパク質の最大発現は、一般的に、宿主細胞に最適な増殖条件下で起こる。タンパク質発現を遅くする1つの方法は、細胞の増殖速度を遅くすることである。好ましい態様では、宿主細胞をその最適増殖温度より低い温度で培養する。例えば、大腸菌の最適増殖温度は37℃である。したがって、大腸菌の最適増殖温度より低い温度は、37℃未満、例えば、4℃〜36℃、8℃〜33℃、12℃〜30℃、または18℃〜26℃、または約20℃、または約24℃である。
タンパク質の生成を遅くするために用いられる温度は、宿主細胞の最適増殖温度に依存する。一例として、大腸菌および多くの他の細菌の最適増殖温度は37℃である。したがって、大腸菌または37℃で最適に増殖する他の細菌の最適増殖温度より低い温度は、4〜35℃、12〜30℃、または15〜20℃であってよい。好ましい態様において、大腸菌または37℃で最適に増殖する他の細菌の最適増殖温度より低い温度は18〜23℃である。多くの酵母と同様に、30℃で最適に増殖する細菌の場合、最適増殖温度より低い温度は、10〜25℃、12〜21℃、または15〜20℃であってよい。
異種タンパク質の発現速度を遅らせる別の方法は、誘導性プロモーターからの発現を調節する分子の濃度を変えることである。例えば、lacY変異の中には、培地中の誘導分子IPTGの量を変えることによって、タンパク質発現を制御できるものもある。好ましい態様では、例えば、原核微生物において過剰発現させた場合に封入体を形成しないタンパク質の発現に関して、培地中のIPTGの濃度は最適濃度より低い。
いくつかの態様では、酸化環境を有し、かつ異種シャペロンタンパク質をさらに含む微生物において、O-グリコシル化治療用タンパク質を発現させる。シャペロンタンパク質には、例えば、トリガー因子;Hsp70シャペロンファミリーのメンバー、例えばDnaK;Hsp100シャペロンファミリーのメンバー、例えばClpB、およびHsp60シャペロンファミリーのメンバー、例えばGroELが含まれる。例えば、Sorensen and Mortensen, BioMed Central, www.microbialcellfactories.com/content/4/1/1を参照されたい。4℃でタンパク質の折りたたみを可能にするシャペロン、例えば、オレイスピラ・アンタルチカRB8T由来のCpn60およびCpn10も公知である。例えば、同上、およびFerrer et al., Nat. Biotechnol. 21:1266-1267 (2003)を参照されたい。例示的なシャペロニンタンパク質には、2005年3月24日に出願された米国特許仮出願第60/665,396号;2005年4月5日に出願された米国特許仮出願第60/668,899号;2005年10月31日に出願された米国特許仮出願第60/732,409号;および2006年3月24日に出願された国際出願第PCT/US06/11065号に記載されるものが含まれ、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
シャペロンタンパク質は、本発明の方法において用いられる治療用タンパク質またはグリコシルトランスフェラーゼのいずれかに特異的であってよい。例えば、哺乳動物コア1 Gal T1タンパク質に対するシャペロンタンパク質が記載されており、哺乳動物コア1 Gal T1の生成およびインビボ活性を高めるために本明細書において用いることができる。例えば、それぞれがすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Ju and Cummings, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 99:16613-16618 (2002);アクセッション番号AA578739およびアクセッション番号NP_067525を参照されたい。
他の態様においては、酸化環境を有し、かつ異種タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)をさらに含む微生物において、治療用タンパク質および真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを発現させる。PDIタンパク質は、ジスルフィド結合を作製または再編成することができる。PDIタンパク質は、例えば、Georgiou et al. 米国特許第6,027,888号に記載されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。PDIタンパク質には、例えば、ラット肝臓PDI、サッカロミセス属由来のEro1pおよびPdi1pタンパク質が含まれる。原核生物タンパク質には、例えば、大腸菌由来のDsbCが含まれる。例えば、Frand et al., Trends in Cell Biol. 10:203-210 (2000)を参照されたい。いくつかの態様では、例えば、ペリプラズム標的化配列を欠失させることによって、または細胞質保持配列を含めることによって、DsbCタンパク質を細菌細胞質内で発現させる。したがって、DsbCタンパク質には、細胞内または細胞周辺腔のいずれかでジスルフィドイソメラーゼ活性を示す切断物またはその他の変種が含まれる。
タンパク質ジスルフィド結合の酸化還元状態を維持するように働く他の原核生物タンパク質には、例えば、大腸菌由来のDsbB、DsbA、DsbC、DsbD、およびDsbGが含まれる。これらのタンパク質は当技術分野において周知であり、例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Beckwith et al. 米国特許第6,872,563号に記載されている。いくつかの態様では、細胞質タンパク質の酸化を高めるために、例えば、ペリプラズム標的化配列を欠失させることによって、または細胞質保持配列を含めることによって、DsbB、DsbA、DsbC、DsbD、およびDsbGを細菌細胞質内で発現させる。
さらなる態様においては、酸化環境を有し、かつ異種シャペロンタンパク質、ならびに/または異種PDIタンパク質、ならびにまたは大腸菌由来のDsbB、DsbA、DsbC、DsbD、およびDsbGなどのタンパク質もまた含む原核微生物において、治療用タンパク質および真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを発現させる。
VIII. 補助的酵素およびドナー基質の細胞内合成の増強
異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼおよび本発明の方法によって用いられる適切なドナー基質には、UDP-Glc、UDP-GlcNAc、UDP-Gal、UDP-GalNAc、GDP-Man、GDP-Fuc、UDP-GlcUA、UDP-GlcNH2、UDP-GalNH2、およびCMP-シアル酸が含まれるが、これらに限定されない。Guo et al., Applied Biochem. and Biotech. 68: 1-20 (1997)。異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼによって触媒される反応は細胞内で起こるため、本発明はまた、異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼによって用いられるドナー基質、例えばヌクレオチド糖の産生を増強する方法も提供する。
ドナー基質の細胞内合成は、「補助的酵素」の発現によって増強することができる。補助的酵素とは、例えばグリコシルトランスフェラーゼ反応の基質または他の反応物を形成する反応の触媒に関与する酵素である。補助的酵素は、例えば、グリコシルトランスフェラーゼにより糖ドナー部分として用いられるヌクレオチド糖の形成を触媒し得る。補助的酵素はまた、ヌクレオチド糖の形成に必要なヌクレオチド三リン酸の生成、またはヌクレオチド糖に取り込まれる糖の生成において用いられる酵素であってもよい。異種グリコシルトランスフェラーゼを適切な組換え補助的酵素と併用することができ、この補助的酵素はグリコシルトランスフェラーゼに融合されてもされなくてもよい。異種補助的酵素およびグリコシルトランスフェラーゼ対の例には、例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼとエピメラーゼ、例えば、UDP-グルコース4'エピメラーゼタンパク質、UDP-GlcNAc 4'エピメラーゼタンパク質、もしくは二重機能UDP-グルコース4'エピメラーゼタンパク質/UDP-GlcNAc 4'エピメラーゼタンパク質;またはシアリルトランスフェラーゼとシアル酸合成酵素が含まれる。その他の例は、1999年6月24日にWO99/31224として公開されたPCT特許出願PCT/CA98/01180に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
糖ヌクレオチドは、治療用タンパク質のインビボグリコシル化のドナーとして働く。様々な方法で糖ヌクレオチドの産生を増強して、細胞内糖ヌクレオチドプールを増加させることができる。任意の糖ヌクレオチドの産生を増加させる1つの方法は、糖ヌクレオチドを作製する生合成酵素の発現を増加させることである。単一の酵素、複数の酵素、または生合成経路全体、例えばオペロンの発現を増加させることができる。例えば、適切な核酸を、内因性調節配列を有する内因性オペロンにクローニングすることができ、または多シストロン性発現カセットを含む合成発現カセットにクローニングすることができる。糖ヌクレオチドの酵素合成は、Bulter and Elling, Glycoconj J 16:147-159 (1999)に概説されており、いくつかの非限定的なインビボの例を以下に挙げる。
例えば、大腸菌におけるUDP-GlcNAcの合成では、フルクトース-6PをUDP-GlcNAcに変換するために遺伝子産物GlmS、GlmM、およびGlmUが必要である。glmUとglmSはゲノムにおいて隣接しており、調節配列を含む単一断片としてクローニングし、発現構築物に含めるか、または細菌ゲノムに再導入することができる。この発現構築物は、さらにglmM遺伝子も含めて、天然オペロンに別の経路の遺伝子を付加するように、再度操作することができる。
また、UDP-GlcNAcの産生を増加させるために、アセチル-CoA合成酵素(acs)遺伝子の発現を増加させることもできる。例えば、Lin et al., Appl Micro Biotech 71:870-874 (2006)を参照されたい。acsの発現増加は、GlmUによるGlcN-1Pのアセチル化に利用可能なCoAのプールを高める。
UDP-GlcNAcの産生を増加させるために、宿主微生物由来の内因性遺伝子に加えて、オーソログを発現させることができる。遺伝子および経路の一覧については、例えば、Milewski et al. Yeast 23:1-14(2006)を参照されたい。特に、酵母遺伝子産物は、細菌経路とは異なる中間体を用いる。例えば、酵母はGlcN-6Pをアセチル化し、次にホスホ-GlcNAcムターゼがこれをGlcNAc-1Pに変換するが、大腸菌は最初にGlc6PをGlc1Pに変換し、次にこれをアセチル化してGlcNAc-1Pを形成する。
UDP-Galの合成に関して、大腸菌生合成遺伝子の大部分は、発現構築物または宿主細胞ゲノムに全体または一部をクローニングできる単一オペロンとして存在する。細菌は、典型的に2つの経路を用いてUDP-Galを生成する:GalEによるUDP-GlcのUDP-Galへの変換、またはガラクトースからの変換、すなわち、Gal---galK--→Gal-1P---galT+UDP-Glc--→UDP-Gal+Glc1P。第2の経路に関して、大腸菌生合成遺伝子の大部分は、発現構築物または宿主細胞ゲノムに全体または一部をクローニングできる単一オペロンとして存在する。
UDP-Galを合成する別の方法は、スクロース合成遺伝子の付加および発現ならびにスクロースの施与による。例えば、Elling et al. Glycobiology 3:349-355(1993)、およびWang et al., Arch Bioc Biop 371:70-82 (1999)を参照されたい。大部分の大腸菌K12株はスクロースを代謝しない。したがって、この反応は、スクロース+UDP---スクロース合成酵素--→UDP-Glc+フルクトースである。このアプローチの利点は、フルクトースがUDP-GlcNAc経路で用いられ得ることである。一部のスクロースは、他の糖の取り込み経路を介して細胞に入るが、この株に天然のスクロース輸送体を付加することによって取り込みが向上することに留意されたい。例えば、Jahreis et al. J. Bact 184, 5307-5316 (2002)を参照されたい。スクロース輸送タンパク質を操作して、加水分解酵素活性を除去することができる。細胞への取り込みの際にスクロースがリン酸化される場合には、スクロース-リン酸合成酵素も用いることができる;スクロース-6P<->スクロース-1Pの変換に、リン(phosphor)-ムターゼ酵素が必要である場合がある)。例えば、Lunn, Gene 303:187-196 (2003);およびHuynh et al. Acta Crystal 61:116-117 (2005)を参照されたい。
いくつかの方法を用いて、UDP-GalNAcの産生を増加させることができる。例えば、二重特異性Glc/GlcNAc 4'エピメラーゼ、例えばGNEまたはGalEを用いて、UDP-GlcNAcをUDP-GalNcに変換することができる。細菌ガラクトースエピメラーゼタンパク質の中には、UDP-Glcを変換できないものもある。UDP-GalNAcの産生を増加させるために、glmS、glmM、およびglmUを含むUDP-GlcNAc生合成遺伝子を過剰発現させることもできる。
哺乳動物タンパク質は、GalNAc、UTP、およびATPからUDP-GalNAcを直接合成することができる。例えば、哺乳動物GalNAcキナーゼおよびUDP-GalNAcピロホスホリラーゼ(AGX1)を用いている、Bourgeaux et al. Bioorg Med Chem Let 15:5459-5462 (2005)を参照されたい。細菌GlcNAcピロホスホリラーゼ(GlmU)も、この最後の段階を遂行することができる。例えば、Szumilo et al. JBC 271:13147-13154(1996)を参照されたい。
糖キナーゼの一部は、6P糖を生じるが1P糖は生じない。このような場合には、リン酸を6位から1位に転移するためにリン-糖ムターゼが必要である。一例は内因性の細菌GlmMであり、これはUDP-GlcNAc生合成経路においてGlcN-6PをGlcN-1Pに変換する。通常なら細菌では欠如している糖特異的ムターゼ活性を付与することで、特定のUDP-糖合成経路が、現在利用できる前駆体に作用できるようになると考えられる。例えば、酵母AGM1はGlcNAc-6PをGlcNAc-1Pに変換し、これは次に内因性の細菌glmUによってUDP-GlcNAcに変換され得る。
他のヌクレオチド糖に関しては、特定の糖ヌクレオチドの産生を増強するために、他の種由来の、例えば高等真核生物もしくは病原菌由来の合成遺伝子を付加するか、または特定の経路を改変することができる。例えば、細菌rcsAの過剰発現および細菌wcaJの欠失により、GDP-フコースの産生が有意に増強される。例えば、Dumon et al. Glycoconj J 18, 465-474 (2001)を参照されたい。細菌nanAを欠失させ、かつ例えば髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のCMP-NeuAc合成酵素(CNS)を導入することによって、CMP-シアル酸(CMP-NeuAc)を産生させることができる。例えば、Priem et al. Glycobiology 12, 235-240 (2002)、およびGilbert et al. Biotechnol. Lett. 19, 417-420を参照されたい。
ドナー基質の合成は、ドナー基質またはドナー基質の前駆体、例えばガラクトースまたはGalNAcを含む培地中で宿主原核微生物を培養することよって増強することもできる。例えば、Priem et al., Glycobiology 12:235-240 (2002)を参照されたい。培地からの前駆体分子の取り込みを促進するために、例えば糖輸送タンパク質を発現させるなどして、微生物を改変することができる。例えば、ラクトースが用いられる場合には、LacY透過酵素を発現する大腸菌細胞を用いることができる。
ドナー基質の合成は、糖ヌクレオチド前駆体を分解する経路を阻害するかまたはノックアウトすることによって増強することもできる。例えば、大腸菌では、アルドラーゼ活性を欠く宿主株を用いることにより、シアル酸の分解を最小限に抑えることができる。例えば、Priem et al. Glycobiology 12, 235-240 (2002)を参照されたい。また、大腸菌において、ラクトースが例えばグリコシル化治療用タンパク質上のオリゴ糖の一部である場合には、LacZ-である宿主細胞を用いることにより、ラクトース分解を最小限に抑えることができる。糖前駆体を破壊するために、阻害または欠失の標的となる酵素の他の例には、Glc-1PをTDP-Glcに流用することによってUDP-Glc産生を妨げるRfbAおよびRffHが含まれる。Glc-1Pプールはagpによる脱リン酸化後に減少し、したがってagpは標的となり得る。同様に、manAはFruc-6Pからman-6Pに異性化することによりUDP-GlcNAcの産生を妨げるため、これも標的となり得る。
ドナー基質の合成は、糖ヌクレオチド自体を分解する経路を阻害するかまたはノックアウトすることによって増強することもできる。例えば、標的には、UDP-Glcを酸化するugd;UDP-GalをUDP-ガラクトフラノースに変換するglf;およびUDP-GlcNAcをUDP-ManNAcに変換するRffEが含まれる。
ドナー基質の産生を増強するさらなる方法は、2005年9月19日に出願された国際出願第PCT/US05/033532に開示されており、これはすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
IX. 修飾糖残基の結合
修飾糖は、結合を媒介する適切な酵素を用いて、グリコシル化されたまたはグリコシル化されていないペプチドまたはタンパク質と結合される。修飾ドナー糖、酵素、およびアクセプターペプチドまたはタンパク質の濃度は、アクセプターが使い果たされるまでグリコシル化が進行するように選択されることが好ましい。下記の考慮すべき事項はシアリルトランスフェラーゼに関して示したものであるが、他のグリコシルトランスフェラーゼ反応に広く適用することができる。
本発明はまた、修飾ペプチドの産業規模の生成を提供する。本明細書で使用する産業規模は、一般的に、例えば、少なくとも1マイクログラム、1ミリグラム、または1グラムの完成した精製複合物を生成する。
以下の考察において、修飾シアル酸部分とグリコシル化ペプチドの結合により、本発明を例証する。例示的な修飾シアル酸はPEGで標識される。以下の考察でPEG-修飾シアル酸およびグリコシル化ペプチドに焦点を当てたのは、説明を明確にするためであり、本発明がこれら2つのパートナーの結合に限定されることを意味することを目的としていない。当業者は、この考察がシアル酸以外の修飾グリコシル部分の付加に広く適用できることを理解する。さらに、この考察は、他の水溶性ポリマー、治療用部分、および生体分子を含む、PEG以外の薬剤を用いたグリコシル単位の修飾に等しく適用することができる。
PEG化またはPPG化された炭水化物をペプチドまたは糖ペプチドに選択的に導入するには、酵素的アプローチを用いることができる。この方法は、PEG、PPG、またはマスクした反応性官能基を含む修飾糖を使用し、適切なグリコシルトランスフェラーゼと併用される。所望の炭水化物結合を生じるグリコシルトランスフェラーゼを選択し、修飾糖をドナー基質として使用することによって、PEGまたはPPGを、ペプチド骨格、糖ペプチドの既存の糖残基、またはペプチドに付加された糖残基に直接導入することができる。
シアリルトランスフェラーゼのアクセプターは、本発明の方法によって修飾しようとするペプチドに、天然構造として、または組換えにより、酵素的に、もしくは化学的に配置された構造として存在する。適切なアクセプターには、例えば、Galβ1、4GlcNAc、Galβ1、4GalNAc、Galβ1、3GalNAc、ラクト-N-テトラオース、Galβ1、3GlcNAc、Galβ1、3Ara、Galβ1、6GlcNAc、Galβ1、4Glc(ラクトース)、GalNAcおよびシアル酸含有構造、ならびに当業者に公知の他のアクセプターなどのガラクトシルアクセプターが含まれる(例えば、Paulson et al., J. Biol. Chem. 253: 5617-5624 (1978)を参照されたい)。
1つの態様において、シアリルトランスフェラーゼのアクセプターは、修飾しようとする糖ペプチドのインビボ合成時に、その糖ペプチドに存在する。このような糖ペプチドは、糖ペプチドのグリコシル化パターンの前修飾を行うことなく、主張する本方法を用いてシアリル化することができる。または、本発明の方法は、適切なアクセプターを含まないペプチドをシアリル化するために用いることもできる。最初に、当業者に公知の方法によって、アクセプターを含むようにペプチドを修飾する。例示的な態様では、GalNAcトランスフェラーゼの働きによりGalNAc残基が付加される。
例示的な態様において、ガラクトシルアクセプターは、ペプチドに連結している適切なアクセプター、例えばGalNAcにガラクトース残基を付着させることによって構築される。この方法は、修飾しようとするペプチドを、適量のガラクトシルトランスフェラーゼ(例えば、galβ1,3またはgalβ1,4)および適切なガラクトシルドナー(例えば、UDP-ガラクトース)を含む反応混合物と共にインキュベートする段階を含む。反応は実質的に完了するまで継続させるか、またはあるいは予め選択された量のガラクトース残基が付加された時点で終了させる。選択された糖類アクセプターを構築する他の方法は、当業者に明白であろう。
修飾糖をペプチドまたはタンパク質に結合する方法は、例えば、2001年10月10日に出願されたUSSN 60/328,523;2002年6月7日に出願されたUSSN 60/387,292;2002年6月25日に出願されたUSSN 60/391,777;2002年8月16日に出願されたUSSN 60/404,249;およびPCT/US02/32263に見出され、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
X. 原核宿主細胞におけるタンパク質の発現
本発明の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、大腸菌および他の前記の細菌宿主を含む、細胞内酸化環境を有する様々な原核微生物において発現させることができる。
可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドが、細胞内酸化環境を有する原核生物において発現されたならば、標準的なタンパク質精製技法を用いてこれらを単離し、治療に使用するか、またはインビトロでさらに修飾することができる。
典型的に、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、酸化環境を有する所望の原核生物において機能するプロモーターの制御下に配置される。極めて多種多様なプロモーターが周知であり、特定の用途に応じて本発明の発現ベクターにおいて使用することができる。通常、選択されるプロモーターは、プロモーターが活性をもつべき細胞に依存する。リボソーム結合部位、転写終結部位などの他の発現制御配列も任意に含まれる。これらの制御配列の1つまたは複数を含む構築物は、「発現カセット」と称される。したがって、本発明は、酸化環境を有する所望の微生物における高レベル発現のために、融合タンパク質をコードする核酸が組み込まれた発現カセットを提供する。
発現ベクターの例には、例えば、pCWin1ベクターおよびpCWin2ベクターが含まれ、これらはいずれも、すべての目的のために本明細書に組み入れられるWO 2005/067601に開示されている。
特定の宿主細胞における使用に適した発現制御配列は、その細胞で発現される遺伝子をクローニングすることによって得られる場合が多い。一般的に用いられる原核生物制御配列は、リボソーム結合部位配列を伴い、任意にオペレーターと共に、転写開始のためのプロモーターを含むと本明細書で定義されるが、これには、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)のプロモーター系(Change et al., Nature (1977) 198: 1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucleic Acids Res. (1980) 8: 4057)、tacプロモーター(DeBoer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25);ならびにλ由来PLプロモーターおよびN-遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al., Nature (1981) 292: 128)のような一般的に用いられるプロモーターが含まれる。本発明にとって特定のプロモーター系は重要でなく、原核生物において機能する任意の利用可能なプロモーターを用いることができる。
大腸菌以外の原核細胞において可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを発現させるには、特定の原核生物種において機能するプロモーターが必要である。このようなプロモーターは、その種からクローニングされた遺伝子から得ることができ、または異種プロモーターが用いられてもよい。例えば、ハイブリッドtrp-lacプロモーターは、大腸菌に加えてバチルス属においても機能する。他の細菌種、例えばシュードモナス属のプロモーターが公知である。例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2005年8月25日に公開された米国特許出願公開第US2005/0186666号を参照されたい。
本発明の発現カセットには、リボソーム結合部位(RBS)が都合よく含まれる。大腸菌のRBSは、例えば、開始コドンから3〜11ヌクレオチド上流に位置する3〜9ヌクレオチド長のヌクレオチド配列からなる(Shine and Dalgarno, Nature (1975) 254: 34;Steitz, In Biological regulation and development: Gene expression (ed. R.F. Goldberger), vol. 1, p. 349, 1979, Plenum Publishing, NY)。
構成的プロモーターまたは調節性プロモーターのいずれかを、本発明において用いることができる。調節性プロモーターは、融合タンパク質の発現を誘導する前に宿主細胞を高密度まで増殖させることができるため、有利であり得る。異種タンパク質の高レベル発現は状況によっては細胞増殖を遅くし、すべての状況において望ましくない場合がある。下記を参照されたい。誘導性プロモーターとは、例えば、温度、pH、嫌気条件または好気条件、光、転写因子、および化学物質などの環境要因または発生要因によって発現レベルを変更できる、遺伝子発現を指向するプロモーターである。このようなプロモーターは本明細書において「誘導性」プロモーターと称され、グリコシルトランスフェラーゼまたはヌクレオチド糖合成に関与する酵素の発現のタイミングを制御できるようにする。大腸菌および他の細菌宿主細胞について、誘導性プロモーターは当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター、ハイブリッドtrp-lacプロモーター(Amann et al. (1983) Gene 25: 167; de Boer et al. (1983) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 80: 21)、およびバクテリオファージT7プロモーター(Studier et al. (1986) J. Mol. Biol.;Tabor et al. (1985) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 82: 1074-8)が含まれる。これらのプロモーターおよびその使用は、Sambrook et al.、前記で考察されている。原核生物における発現に特に好ましい誘導性プロモーターは、ガラクトース代謝に関与する酵素をコードする1つまたは複数の遺伝子から得られたプロモーター成分(例えば、UDPガラクトース4-エピメラーゼ遺伝子(galE)由来のプロモーター)に連結されたtacプロモーター成分を含む二重プロモーターである。二重tac-galプロモーターは、WO98/20111号に記載されている。
別の誘導性プロモーターはcspAプロモーターであり、このプロモーターは大腸菌において低温で高度に誘導される。例えば、Sorensen and Mortensen, BioMed Central, www.microbialcellfactories.com/content/4/1/1、およびMujacic et al. Gene 238:325-3332 (1999)を参照されたい。
適切な宿主細胞に入れられた場合にポリヌクレオチドの発現を駆動する遺伝子発現制御シグナルに機能的に連結された関心対象のポリヌクレオチドを含む構築物は、「発現カセット」と称される。本発明の融合タンパク質をコードする発現カセットは、宿主細胞に導入するために発現ベクター中に配置される場合が多い。ベクターは、典型的に、発現カセットに加えて、1つまたは複数の選択された宿主細胞においてベクターが独立して複製するのを可能にする核酸配列を含む。一般的に、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAと独立して複製できるようにする配列であり、複製起点または自律複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌について周知である。例えば、プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適している。または、ベクターは、宿主細胞ゲノム相補体に組み込まれ、細胞がDNAを複製する際に複製されることによって、複製することができる。細菌細胞における酵素の発現に好ましい発現ベクターはpTGKであり、このベクターは二重tac-galプロモーターを含み、WO98/20111に記載されている。別の有用なクローニングベクターは、pCWin2-MBPまたはpCWin2の改変5'UTRを有する型である。例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2005年1月6日に出願されたPCT/US05/00302を参照されたい。
ポリヌクレオチド構築物の構築は、一般的に、細菌で複製可能なベクターの使用を必要とする。細菌からプラスミドを精製するために、極めて多くのキットが市販されている(例えば、EasyPrepJ、FlexiPrepJ、いずれもPharmacia Biotech;StrataCleanJ、Stratagene;およびQIAexpress Expression System、Qiagenを参照されたい)。単離および精製されたプラスミドは、次に、他のプラスミドを作製するためにさらに操作することができ、また細胞にトランスフェクションするために用いることができる。例えば、大腸菌、ストレプトミセス属(Streptomyces)、またはバチルス属におけるクローニングが可能である。
本発明のポリヌクレオチドを発現させるために用いられる発現ベクターには、選択マーカーが組み込まれる場合が多い。これらの遺伝子は、選択培地で増殖する形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要な、タンパク質などの遺伝子産物をコードし得る。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、前記培地で生存しない。典型的な選択遺伝子は、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなどの抗生物質または他の毒素に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。または、選択マーカーは栄養要求性欠損を補足するか、または複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードしてもよく、例えば、バチルス属のD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子がある。多くの場合、ベクターは、例えば、大腸菌、またはベクターが宿主細胞に導入される前に複製される他の細胞において機能する1つの選択マーカーを有する。いくつかの選択マーカーが当業者に公知であり、例えば、Sambrook et al.、前記に記載されている。シュードモナス属種について、栄養要求性発現系が公知である。例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2005年8月25日に公開された米国特許出願公開第US2005/0186666号を参照されたい。
上記に列挙した成分の1つまたは複数を含む適切なベクターの構築は、上記で引用した参考文献に記載される標準的な連結技法を使用する。単離されたプラスミドまたはDNA断片を切断し、目的に合わせて加工し、必要とするプラスミドを作製するのに望ましい形態で再連結する。構築されたプラスミドにおける正しい配列を確認するために、制限エンドヌクレアーゼ消化および/または公知の方法に従った配列解析によるなど、標準的な技法により、プラスミドを解析することができる。これらの目的を達成するための分子クローニング技法は、当技術分野において公知である。組換え核酸の構築に適した多種多様なクローニング法およびインビトロ増幅法が、当業者に周知である。当業者を多くのクローニング実習に導くのに十分なこれらの技法および説明書の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, volume 152, Academic Press, Inc., San Diego, CA(Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1998 Supplement)(Ausubel)に見出される。
本発明の発現ベクターを構築するための出発物質として使用するのに適した様々な一般的なベクターが、当技術分野において周知である。細菌におけるクローニングに関して、一般的なベクターには、pBLUESCRIPT(商標)などのpBR322由来ベクターおよびλファージ由来ベクターが含まれる。
選択された原核微生物に発現ベクターを導入する方法は特に重要でなく、このような方法は当業者に公知である。例えば、発現ベクターは、塩化カルシウム形質転換によって大腸菌を含む原核細胞に導入することができ、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションによって真核細胞に導入することができる。他の形質転換方法もまた適している。
発現を増強するために、翻訳共役を用いてもよい。この戦略では、翻訳系に本来ある高発現遺伝子に由来する短い上流オープンリーディングフレームが用いられ、これはプロモーターおよびリボソーム結合部位の下流に配置され、それに続いて数個のアミノ酸コドンの後に終止コドンがくる。終止コドンの直前には第2のリボソーム結合部位があり、終止コドンの後には翻訳開始のための開始コドンがある。この系はRNAの二次構造を解消し、翻訳の効率的な開始を可能にする。Squires, et. al. (1988), J. Biol. Chem. 263: 16297-16302を参照されたい。
可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、好ましくは細胞内で発現される。細胞内発現は、驚くほど高い収率をもたらす場合が多い。別の態様では、例えば、精製、分泌、または安定性を容易にするために、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを、プロテインA、マルトース結合タンパク質、デンプン結合タンパク質、またはウシ血清アルブミン(BSA)の部分配列と融合させる。
本発明の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを、他の細菌タンパク質にさらに連結することもできる。正常な原核生物制御配列が転写および翻訳を指向するため、このアプローチは高収率をもたらすことが多い。大腸菌では、異種タンパク質を発現させるために、lacZ融合物が用いられる場合が多い。その他の例は以下で考察する。pUR、pEX、およびpMR100系などの適切なベクターが、容易に利用できる(例えば、Sambrook et al.、前記を参照されたい)。特定の用途に対しては、精製後に、融合タンパク質から非グリコシルトランスフェラーゼアミノ酸を切断することが望ましい場合がある。これは、臭化シアン、プロテアーゼ、または第Xa因子による切断を含む、当技術分野で公知であるいくつかの方法のいずれかにより達成することができる(例えば、Sambrook et al.、前記;Itakura et al., Science (1977) 198: 1056;Goeddel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76: 106;Nagai et al., Nature (1984) 309: 810;Sung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83: 561を参照されたい)。切断部位は、所望の切断点で融合タンパク質遺伝子内に作出することができる。
複数の転写カセットを1つの発現ベクターに配置することにより、またはクローニング法に用いられる各発現ベクターに異なる選択マーカーを使用することにより複数種の組換えタンパク質を1つの宿主細胞で発現させることができる。例えば、補助的酵素、治療用タンパク質、およびO-結合型グリコシル化を指向するグリコシルトランスフェラーゼといった複数のタンパク質を、1つの細胞で発現させることができる。
N末端の完全性を維持する大腸菌由来組換えタンパク質を得るのに適した系は、Miller et al. Biotechnology 7:698-704 (1989)に記載されている。この系では、関心対象の遺伝子を、ペプチダーゼ切断部位を含む酵母ユビキチン遺伝子の最初の76残基へのC末端融合物として作製する。2つの部分の接合部で切断すると、無傷である本来のN末端残基を有するタンパク質が生じる。
いくつかの態様においては、複数の異種タンパク質を1つの細胞で発現させる。この発現を達成するための多くの方法が、当業者に利用可能である。いくつかの非限定的な例を以下に挙げる。
いくつかの態様においては、複数の異種タンパク質を多シストロン性発現構築物から発現させる。多シストロン性発現カセットは、以下の一般的形態を有する:[プロモーター]{[エンハンサー/リボソーム結合部位(RBS)][オープンリーディングフレーム]}×n [ターミネーター];「n」は多シストロン性発現カセット中のオープンリーディングフレームの数であり、使用者に必要性に応じて変動し得る。[エンハンサー/RBS]エレメントも、例えば、拡張されたエンハンサー/RBSの組み合わせまたは単一のRBSといったように変動し得る。多シストロン性発現カセット内で変動し得る他のエレメントには、5'UTRが含まれる。
任意の発現カセット、例えば、独立したプロモーターの発現カセットまたは多シストロン性の発現カセットの細胞での位置は異なり得る。例えば、発現カセットは、1つまたは複数のプラスミドに保有されてよく、またはゲノムに組み込まれてもよい(選択マーカーとの、または安定した組込み体に再生された上での、指向性またはランダムな組込み。例えば、Link et al. J. Bact. 179:6228-6237 (1997);Muyrers et al., TIBS 26:325-331 (2001);およびCourt et al., Annu. Rev. Genet. 36:361-388 (2002)を参照されたい。組み込まれた発現カセットは、構築されたプロモーター(例えば、プラスミドから取り出されたlac、pho、tac、T7など)によって、または内因性(天然)のゲノムプロモーターの後ろに多シストロン性アレイを組み込むことによって調節され得る。ゲノムプロモーターは、調節性(例えば、galE遺伝子座に組み込み、内因性のgalプロモーターを用いる)、または構成的(構成的プロモーターの後ろに組み込むか;または酵素を発現するランダムな組込み体をスクリーニングする)であってよい。1つの態様において、異種グリコシルトランスフェラーゼ、補助的酵素、および治療用タンパク質核酸はすべて、プラスミド構築物から発現される。別の態様においては、異種グリコシルトランスフェラーゼおよび補助的酵素核酸のすべて、または治療用タンパク質核酸のいずれか一方が細菌ゲノムに組み込まれ、もう一方がプラスミド構築物から発現される。さらに別の態様では、異種グリコシルトランスフェラーゼ、補助的酵素、および治療用タンパク質核酸のすべてが、細菌ゲノムに組み込まれる。
異種タンパク質の発現は、例えば、特定の遺伝子の発現を使用者の所望通りにオンおよびオフするために異なる誘導性プロモーターを用いて、時間的な様式で調節することができる。例えば、グリコシルトランスフェラーゼの生成前に、核酸の発現を誘導することができる。逆に、グリコシルトランスフェラーゼを先に誘導してから治療用タンパク質を発現させるように、細胞を調製することができる。
XI. 可溶性O-グリコシル化治療用タンパク質の精製およびインビトロ修飾
本発明の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、好ましくは、本発明の方法において細胞内タンパク質として発現され、この形態で使用することができる。例えば、発現された細胞内可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドを含む透過処理済み細胞または粗細胞抽出物を、本発明の方法において、または例えば可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質および/もしくはグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの活性をアッセイするために用いることができる。
または、硫安沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当技術分野の標準的な手順に従って、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質を精製することができる(一般的には、R. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982)、Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照されたい)。少なくとも約70、75、80、85、90%の均一性である実質的に純粋な組成物が好ましく、92、95、98〜99%、またはそれ以上の均一性が最も好ましい。精製されたタンパク質は、例えば、抗体作製用の免疫原として用いることもできる。
本発明の可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の精製および発現を容易にするために、タンパク質をコードする核酸はまた、親和性結合試薬が利用可能なエピトープまたは「タグ」、すなわち精製タグのコード配列を含んでもよい。適切なエピトープの例には、mycおよびV-5レポーター遺伝子が含まれる;これらのエピトープを有する融合タンパク質の組換え生成に有用な発現ベクターは市販されている(例えば、Invitrogen(カリフォルニア州、カールズバッド)ベクターpcDNA3.1/Myc-HisおよびpcDNA3.1/V5-Hisは、哺乳動物細胞における発現に適している)。本発明のグリコシルトランスフェラーゼにタグを付着させるのに適したさらなる発現ベクター、および対応する検出系は当業者に公知であり、いくつかが市販されている(例えば、FLAG"(Kodak、ニューヨーク州、ロチェスター)。適切なタグの別の例は、金属キレート親和性リガンドに結合し得るポリヒスチジン配列である。典型的には、隣接する6個のヒスチジンが用いられるが、6個よりも多いまたは少ないヒスチジンを用いることもできる。ポリヒスチジンタグの結合部分として機能し得る適切な金属キレート親和性リガンドには、ニトリロ三酢酸(NTA)(Hochuli, E. (1990) 「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」 In Genetic Engineering: Principles and Methods, J.K. Setlow, Ed., Plenum Press, NY;Qiagen(カリフォルニア州、サンタクラリタ)から市販)が含まれる。他の精製タグまたはエピトープタグには、例えば、AU1、AU5、DDDDK(EC5)、Eタグ、E2タグ、Glu-Glu、ポリオーマミドルTタンパク質に由来する6残基ペプチドであるEYMPME、HA、HSV、IRS、KT3、Sタグ、S1タグ、T7タグ、V5タグ、VSV-G、β-ガラクトシダーゼ、Gal4、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、プロテインC、プロテインA、セルロース結合タンパク質、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)、ステップタグ、Nus-S、PPIアーゼ、Pfg 27、カルモジュリン結合タンパク質、dsb Aおよびその断片、ならびにグランザイムBが含まれる。エピトープペプチドおよびエピトープ配列に特異的に結合する抗体は、例えば、Covance Research Products, Inc.;Bethyl Laboratories, Inc.;Abcam Ltd.;およびNovus Biologicals, Inc.から市販されている。
精製タグには、マルトース結合ドメインおよびデンプン結合ドメインもまた含まれる。精製タグを含むタンパク質は、精製タグと結合する結合パートナー、例えば、精製タグに対する抗体、ニッケルまたはコバルトのイオンまたは樹脂、およびアミロース、マルトース、またはシクロデキストリンを用いて精製することができる。精製タグにはまた、デンプン結合ドメイン、大腸菌チオレドキシンドメイン(ベクターおよび抗体は、例えば、Santa Cruz Biotechnology, Inc.およびAlpha Diagnostic International, Inc.から市販されている)、およびSUMOタンパク質のカルボキシ末端側の半分(ベクターおよび抗体は、例えばLife Sensors Inc.から市販されている)も含まれる。大腸菌由来のマルトース結合ドメインおよびクロコウジカビのアミラーゼ由来のSBD(デンプン結合ドメイン)などのデンプン結合ドメインは、参照により本明細書に組み入れられるWO 99/15636に記載されている。βシクロデキストリン(BCD)誘導体化樹脂を用いた、デンプン結合ドメインを含む融合タンパク質のアフィニティ精製は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2005年2月17日に公開されたWO 2005/014779に記載されている。いくつかの態様において、可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質は、複数の精製タグまたはエピトープタグを含む。
タグとしての使用に適した他のハプテンは当業者に公知であり、例えば、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th Ed.、Molecular Probes, Inc.、オレゴン州、ユージーン)に記載されている。例えば、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、バルビツール酸(例えば、米国特許第5,414,085号を参照されたい)、および数種類のフルオロフォアがハプテンとして有用であり、同様にこれらの化合物の誘導体も有用である。ハプテンおよび他の部分をタンパク質および他の分子に連結するためのキットが市販されている。例えば、ハプテンがチオールを含む場合、SMCCなどのヘテロ二官能性リンカーを用いて、捕捉試薬に存在するリジン残基にタグを付着させることができる。
生物学的機能を減少させることなく、可溶性活性真核生物グリコシルトランスフェラーゼポリペプチドの触媒ドメインまたは機能ドメインに改変を加えることができることを、当業者は認識するであろう。何らかの改変を行って、触媒ドメインのクローニング、発現、または融合タンパク質への組込みを容易にすることができる。このような改変は当業者に周知であり、例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端において付加されるメチオニン、または都合よく位置する制限酵素部位もしくは終止コドンもしくは精製配列を作出するためにいずれかの末端に配置されるさらなるアミノ酸(例えば、ポリHis)を提供するための、触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端におけるコドンの付加が含まれる。
XII. 可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の生成
酸化環境を有する微生物における可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の生成は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞におけるタンパク質生成の特徴の多くを備えた細菌系を提供する。1つの違いは、細菌細胞を標準的な微生物培地、例えば、最小培地、合成培地、またはLBなどの富栄養培地で培養できる点である。
酸化環境を有する微生物における可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の生成は、O-グリコシル化治療用タンパク質および/またはグリコシル化に用いられる酵素の可溶化、変性、および再折りたたみなどの、多大な時間を要する1つまたは複数の生成段階を排除することによって効率を提供する。
酸化環境を有する微生物における可溶性活性O-グリコシル化治療用タンパク質の生成は、タンパク質生成手順を設計する際に柔軟性を提供する。例えば、グリコシルトランスフェラーゼは、酸化環境を有する微生物において個別に生成し、その後必要時まで保存することができる。必要に応じて、微生物は、グリコシルトランスフェラーゼの基質であるヌクレオチド糖の産生に関与するタンパク質もまた産生し得る。同様に、治療用タンパク質も、酸化環境を有する微生物において個別に生成することができる。ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を含む適切なグリコシルトランスフェラーゼを含む溶解物を、治療用タンパク質のO-グリコシル化を促進する条件下で、可溶性治療用タンパク質を含む溶解物と混合することができる。グリコシルトランスフェラーゼは、治療用タンパク質に順次添加することができ、またはグリコシルトランスフェラーゼの混合物として添加することができる。グリコシルトランスフェラーゼを含む複数の溶解物が利用できることで、使用者は、例えば同時に生成し試験するための、治療用タンパク質の1つまたは複数のグリコシル化パターンを選択することができる。いくつかの態様では、精製または部分精製されたグリコシルトランスフェラーゼを、グリコシルトランスフェラーゼおよび関心対象の治療用タンパク質を含む溶解物と併用する。精製または部分精製されたグリコシルトランスフェラーゼは、例えば、酸化環境を有する微生物;野生型大腸菌などの還元環境を有する微生物;またはサッカロミセス属、シゾサッカロミセス属(Schizosacchromyces)、およびピキア属(Picchia)を含む酵母、Sf9細胞、ならびにCHO細胞およびNIH3T3細胞を含む哺乳動物細胞などの真核生物発現系において生成することができる。
別の例では、ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を含む適切なグリコシルトランスフェラーゼを、酸化環境を有する微生物において共に発現させる。必要に応じて、微生物は、グリコシルトランスフェラーゼの基質であるヌクレオチド糖の産生に関与するタンパク質もまた産生し得る。関心対象の治療用タンパク質は、酸化環境を有する微生物において個別に生成する。混合グリコシルトランスフェラーゼ溶解物を、治療用タンパク質のO-グリコシル化を促進する条件下で、可溶性治療用タンパク質を含む溶解物と混合する。上記のように、種々の供給源に由来する精製または部分精製されたグリコシルトランスフェラーゼも、反応混合物に添加することができる。
別の例では、1つまたは複数のグリコシルトランスフェラーゼを、酸化環境を有する原核微生物において共に発現させ、その他のグリコシルトランスフェラーゼを、酸化環境を有する原核微生物において個別に発現させる。関心対象の治療用タンパク質は、酸化環境を有する微生物において個別に生成する。適切なグリコシルトランスフェラーゼ溶解物を、治療用タンパク質のO-グリコシル化を促進する条件下で、可溶性治療用タンパク質を含む溶解物と混合する。上記のように、種々の供給源に由来する精製または部分精製されたグリコシルトランスフェラーゼも、反応混合物に添加することができる。
別の例では、ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を含む適切なグリコシルトランスフェラーゼと治療用タンパク質を、酸化環境を有する微生物において共に発現させる。必要に応じて、微生物は、グリコシルトランスフェラーゼの基質であるヌクレオチド糖の産生に関与するタンパク質もまた産生し得る。可溶性治療用タンパク質は微生物内でO-グリコシル化され、使用者によって細胞溶解物から回収される。さらなる態様では、O-グリコシル化治療用タンパク質の生成を増強するために、細胞溶解物をさらなる糖前駆体と混合する。
上記のO-グリコシル化反応はいずれも、細胞溶解物、または細胞溶解物および精製もしくは部分精製されたグリコシルトランスフェラーゼを含む反応混合物にヌクレオチド糖ドナー基質を添加することによって、さらに増強することができる。
上記のO-グリコシル化反応はいずれも、細胞溶解物、または細胞溶解物および精製もしくは部分精製されたグリコシルトランスフェラーゼを含む反応混合物に修飾ヌクレオチド糖ドナー基質を添加することによって、さらに増強することができる。修飾糖をペプチドまたはタンパク質に結合する方法は、例えば、2001年10月10日に出願されたUSSN 60/328,523;2002年6月7日に出願されたUSSN 60/387,292;2002年6月25日に出願されたUSSN 60/391,777;2002年8月16日に出願されたUSSN 60/404,249;およびPCT/US02/32263に見出され、これらはそれぞれすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。好ましい修飾糖には、例えば、CMP-シアル酸PEGが含まれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」とは、特に文脈によって明白に指示されていない限り、その対象物の複数形も含むことに留意せねばならない。したがって、例えば、「1つの細胞」への言及は、複数のそのような細胞および当業者に公知のその同等物を含み、以下同様である。
本明細書で考察する出版物は、単に本出願の出願日以前にそれらが開示されたという理由で提供されている。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明のせいでそのような出版物を先行できないことを認めると解釈されるべきではない。さらに、提供する出版物の日付は実際の発行年月日と異なる可能性があり、独立して確認する必要がある場合がある。引用は参照により本明細書に組み入れられる。
実施例
実施例1:粗溶解物および/または精製試薬の混合物を用いるグリコシル化および糖PEG化ヒト成長ホルモンの生成
細胞ペレットの保存
hGH(SEQ ID NO: 7)、MBP-GalNAcT2、MBP-コア-1-GalT1、MBP-ST3Gal1、およびGalEと同時発現させたGalNAcT2のtrxB、gor、supp変異体大腸菌発酵回収物からの非溶解細胞ペレットを-80℃で保存した。
hGHの細胞溶解物
代替5'UTRを有するpCWin2由来ベクターを用いて、trxB、gor、supp大腸菌株においてヒト成長ホルモン変異体(hGH P254;T135INT、Y43A、Y144A、F140A、K141N(SEQ ID NO: 7)を発現させた。細胞ペレットを50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4に再懸濁した。再懸濁した時点で、16,000〜18,000 PSIに設定したマイクロフルイダイザーに3回通すことにより、細胞をホモジナイズした。細胞ホモジネートを直ちに、固定角ローターを備えた遠心分離機で12000×G、4℃で50分間遠心分離した。0.2ミクロン酢酸セルロースフィルターを用いて、上清を濾過した。濾過したホモジネートは、酵素反応前に4℃でごく短時間保存した。
MBP-GalNAcT2およびMBP-コア-1-GalT1の細胞溶解物
MBP-GalNAcT2(SEQ ID NO:28)またはMBP-コア-1-GalT1(SEQ ID NO:46)を発現するtrxB、gor、supp大腸菌培養物からの細胞ペレットを、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、5 mM EDTA、0.02% NaN3、pH 7.4に再懸濁した。再懸濁した時点で、16,000〜18,000 PSIに設定したマイクロフルイダイザーに3回通すことにより、細胞をホモジナイズした。細胞ホモジネートを直ちに、固定角ローターを備えた遠心分離機で12000×G、4℃で30分間遠心分離した。0.2ミクロン酢酸セルロースフィルターを用いて、上清を濾過した。濾過したホモジネートの一部を、5 kDa MWCO遠心フィルターにおいて濃縮すると共に、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4と緩衝液交換した。濃縮溶解物は、酵素反応前に4℃でごく短時間保存した。第2の場合には、MBP-コア-1-GalT1の濃縮溶解物をグリセロールと1:1で混合し、酵素反応前に-20℃で保存した。
GalNAcT2およびGalEまたはMBP-ST3Gal1を含む細胞溶解物
GalNAcT2(SEQ ID NO:27)とGalE(SEQ ID NO:79)とを同時発現する、またはMBP-ST3Gal1(SEQ ID NO:57)を発現するtrxB、gor、supp大腸菌の培養物を調製し、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4に再懸濁した。16,000〜18,000 PSIに設定したマイクロフルイダイザーに3回通すことにより、細胞をホモジナイズした。細胞ホモジネートを直ちに、固定角ローターを備えた遠心分離機で12000〜19000×G、4℃で20〜50分間遠心分離した。0.2ミクロン酢酸セルロースフィルターを用いて、上清を濾過した。濾液を5 kDa MWCO遠心フィルターで濃縮し、グリセロールと1:1で混合し、酵素反応前に-20℃で保存した。
hGH、GalNAcT2とGalE、MBP-コア-1-GalT1、およびMBP-ST3Gal1を用いるhGH-GalNAc-Gal-SA-Cys-PEG-40 kDaの調製
hGH溶解物(SEQ ID NO:7)(200 mcg hGH、0.025 mL、9.1ナノモル)を、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、0.01%ポリソルベート80、pH 7.4(4.8 mcL)およびUDP-GlcNAc溶液(91ナノモル、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、0.01%ポリソルベート80、pH 7.4中の5.8 mcL、10 mg/mL)と混合した。MnCl2溶液(水中で200 mM MnCl2、4 mcL)をhGH溶解物溶液に添加した。粗GalNAcT2/GalE酵素溶解物(0.75 mU GalNAcT2、2mcL)をhGH混合物に添加し、非常に穏やかに混合した。反応混合物を遠心分離(1分、13,000 rpm)して粒子状物質を定着させ、上清を採取し、穏やかに振盪しながら32℃で17時間インキュベートした。図1に示されるように、反応混合物のMALDI解析により、GalNAcの付加が完了したと決定された。hGH-GalNAc溶液(6.8 nmol、30mcL)を、UDP-Gal溶液(34 nmol、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、0.01%ポリソルベート80、pH 7.4中の2.1 mcL、10 mg/mL)と混合した。穏やかに混合しながら、MBP-コア-1-GalT1酵素溶解物(20 mU、3.75 mcL、5.4 U/mL)をhGH-GalNAc反応混合物に添加した。反応混合物を遠心分離(1分、13,000 rpm)して粒子状物質を定着させ、上清を採取し、32℃で22時間インキュベートした。図2に示されるように、反応混合物のMALDI解析により、Galの付加が完了したと決定された。CMP-SA-cys-PEG-40 kDa溶液(5.84ナノモル、50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、0.01%ポリソルベート80、pH 7.4中の4.56 mcL、1.25 mM)を、hGH-GalNAc-Gal反応混合物(15 mcL、2.92ナノモル)に添加した。穏やかに混合しながら、MBP-ST3Gal1溶解物(5.9 mU、4.3 mcL、1.37 U/mL)およびMnCl2(200 mM水溶液、15 mcL)を添加した。反応混合物を32℃で62時間インキュベートした。SDS-PAGEおよびRP-HPLCにより、反応をPEG化の程度についてモニターした(図3)。SDS-PAGE解析およびRP-HPLC解析のいずれによっても、hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDa産物が検出された。
hGH、MBP-GalNAcT2、MBP-コア-1-GalT1の大腸菌溶解物を精製ST3Gal1と共に用いるhGH-GalNAc-Gal-SA-Cys-PEG-40 kDaの調製
hGH溶解物(SEQ ID NO:7)(22 mg hGH、2.8 mL、1マイクロモル)を、50 mM Tris-HCl、pH 7.4、20 mM NaCl、0.02% NaN3(0.61 mL)で希釈した。UDP-GalNAc溶液(3.26 mg、5マイクロモル、50 mM Tris-HCl、pH 7.4、20 mM NaCl、0.02% NaN3中の0.33 mL、10 mg/mL)をhGH溶解物に添加した。得られた溶液を、0.01%ポリソルベート-80(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、20 mM NaCl、0.02% NaN3中の1%溶液、0.04 mL)および200 mM MnCl2水溶液、0.22 mLに調整した。粗MBP-GalNAcT2酵素溶解物(220 mU、0.44 mL)をhGH混合物に添加し、非常に穏やかに混合し、室温で16時間インキュベートした。反応混合物のMALDI解析により、GalNAcの付加が完了したと決定された。UDP-Gal溶液(3.05 mg、5マイクロモル、50 mM Tris-HCl、pH 7.4、20 mM NaCl、0.02% NaN3中の0.31 mL、10 mg/mL)をhGH-GalNAc溶液に添加し、得られた混合液を0.01%ポリソルベート-80(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、20 mM NaCl、0.02% NaN3中の1%溶液、0.01 mL)に再調整した。穏やかに混合しながら、MBP-コア-1-GalT1酵素溶解物(2.8 U、0.44 mL)をhGH-GalNAc反応混合物に添加し、得られた溶液を室温で24時間インキュベートした。反応混合物のMALDI解析により、Galの付加が完了したと決定された。CMP-SA-cys-PEG-40 kDa溶液(27.6 mg、0.69マイクロモル、50 mM Tris-HCl、pH 7.4、20 mM NaCl、0.02% NaN3中の0.55 mL)を、hGH-GalNAc-Gal反応混合物(5 mg、1.2 mL、0.23マイクロモル)に添加した。穏やかに混合しながら、精製ST3Gal1酵素(0.5 U、0.77 mL)およびMnCl2(200 mM水溶液、0.07 mL)を添加した。反応混合物を20℃および32℃で80時間までインキュベートした。SDS-PAGEおよびRP-HPLCにより、反応をPEG化の程度についてモニターした(図4Aおよび4B)。産物hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaの保持時間は23.0分である。hGH出発材料の保持時間は25.5分である(図4C)。Zorbax 300SB-C3 150×2.1 mm、5ミクロンカラム。インキュベーションの間に、非グリコシル化hGH出発材料の大部分が糖PEG化産物に変換され、32℃において収率がより高かった(図4D)。
粗溶解物の混合によって生成されたhGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaの精製
trxB、gor、supp大腸菌株からのグリコシルトランスフェラーゼ含有溶解物によるグリコシル化および糖PEG化後に、粗溶解物からhGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaを精製した。第1段階は、例えばQ-sepharose fast flowカラムといった強陰イオン交換体を用いるイオン交換クロマトグラフィーであった。第2段階は、Superdex 200カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーであった。サイズ排除カラムから、hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDa含有画分を溶出した。RP-HPLCにより、このタンパク質が主に単一ピークとして移動することが実証された(図5)。
混合した大腸菌溶解物を用いるhGH-GalNAc-Gal-SA-Cys-PEG-40 kDaの生成
hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaはまた、以下の試薬を用いてワンポット反応で生成することもできる。GalNAc-T2(Δ445)、GalEまたはGNE、コア-1-GalT1、およびST3Gal1をすべて、単一のtrxB、gor、supp大腸菌細胞で同時発現させる。酵素類は複数のプラスミドから発現させるか、または単一のプラスミドから発現させる。同時発現された酵素を含む細胞溶解物を用いて、以下の試薬成分:CMP-SA-Cys-PEG-40 kDa、UDP-GlcNAc、およびUDP-グルコースの存在下で、trxB、gor、supp大腸菌で発現されたhGHを糖PEG化する。hGHは細胞溶解物の一部として添加することができ、または反応混合物に添加する前にさらに精製することができる。反応図式を図6に示す。
精製グリコシルトランスフェラーゼを用いるhGH-GalNAc-Gal-SA-Cys-PEG-40 kDaの調製
trxB、gor、supp大腸菌発酵溶解物によるhGH(SEQ ID NO:7)を、陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE)およびサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 75)によって精製した。精製hGH(53.6 mg、2.4マイクロモル)を50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中の0.01%ポリソルベート80に調整し、遠心フィルター(5 kDa MWCO)を用いて17.8 mL量に濃縮した。UDP-GalNAc(20マイクロモル)を、50 mM Tris、20 mM NaCl、0.001%ポリソルベート80、0.02% NaN3、pH 7.4中の溶液(0.1 mL)として添加した。MnCl2溶液(50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中の0.1 M MnCl2、12.8マイクロリットル)をGalNAcT2(バキュロウイルスで生成)酵素(270 mU)に添加し、得られた溶液をhGH溶液に添加し、非常に穏やかに混合した。反応混合物を室温で17時間インキュベートし、その時点でさらなるGalNAcT2(270 mU)およびMnCl2溶液(50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中の0.1 M MnCl2、12.8マイクロリットル)を添加した。全部で27.5時間のインキュベーション後、反応混合物のMALDI解析により、GalNAcの付加が完了したと決定された。MnCl2溶液(50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中の0.1 M MnCl2、19マイクロリットル)を、コア-1-GalT1酵素(バキュロウイルスで生成)(0.238 U)に添加した。穏やかに混合しながら、コア-1-GalT1酵素溶液および50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中のUDP-Gal溶液(24マイクロモル、0.1 mL)をhGH-GalNAc反応混合物に添加し、得られた溶液を室温で15時間インキュベートした。この時点で、さらなるコア-1-GalT1酵素(0.238 U)およびMnCl2溶液(50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中の0.1 M MnCl2、19マイクロリットル)をhGH反応混合物に添加した。反応混合物を室温でさらに17.5時間インキュベートし、MALDI解析により、Galの付加が完了したと決定された。CMP-SA-Cys-PEG-40 kDa(4.85マイクロモル)を50 mM Tris-HCl、20 mM NaCl、0.02% NaN3、pH 7.4中の溶液(1 mL)としてhGH-GalNAc-Gal反応混合物に添加し、穏やかに混合しながらST3Gal1酵素(バキュロウイルスで生成)(4.26 U)を添加した。反応混合物を室温で50時間インキュベートし、SDS-PAGEおよびRP-HPLCによってPEG化の程度についてモニターした。SP Sepharose、SEC(Superdex 200)およびPhenyl Sepharoseクロマトグラフィーを用いて、産物であるhGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaを精製した。精製されたhGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaを濃縮し、次に製剤化した。この産物を、BCAタンパク質アッセイ法、SDS-PAGEゲル(銀染色)、RP-HPLCによって、および細胞増殖について解析した。この工程により、>96%の純度で6.11 mgの活性hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaが得られた。
実施例2:細菌における可溶性グリコシル化ヒト成長ホルモンの発現
trxB、gor、supp大腸菌株において、改変5'UTRを有するpCWin2由来の発現カセットを有するpACYC184由来ベクターからhGHを発現させた。この大腸菌は、改変5'UTRを有するpCWin-2由来発現カセットからGalNAc-T2(Δ51 Δ445)とGalE(SEQ ID NO:79)または別のエピメラーゼ、GNE(SEQ ID NO:80)を発現するベクターも含んでいた。したがって、このtrxB、gor、supp大腸菌株は、hGH P254を比較的低い発現レベルで発現し、GalNAc-T2(Δ51 Δ445)および二重特異性Glc/GlcNAcエピメラーゼを比較的高い発現レベルで発現した。細胞を振盪フラスコ中の培地で培養した。RP-HPLCを用いて反応をモニターした。結果を図7に示す。hGHのみを発現した対照大腸菌培養物からの細胞溶解物のクロマトグラム(ピーク26.2)を図7Aに示す。hGH(分裂ピーク約26.0)および酵素を発現する大腸菌株からの細胞溶解物のクロマトグラムを図7Bに示す。hGH溶出プロファイルは2つの培養物で異なり、GalNAc-T2(Δ51 Δ445)タンパク質の存在下で培養した場合に、hGHがグリコシル化されることが示される。図8の表に、GalEまたはGNEのいずれかとGalNAc-T2(Δ51 Δ445)タンパク質を発現した大腸菌細胞における発現収量、およびhGHのhGH-GalNacへの変換率をまとめた。変換率は31.2%〜41.2%であり、GalEタンパク質の発現でわずかに高い変換が認められた。hGH、GalNAc-T2(Δ51 Δ445)、およびエピメラーゼを発現した大腸菌からの溶解物中にhGH-GalNacが存在することが、LC/MSによって検証された。結果を図9に示す。
trxB、gor、supp大腸菌株において、O-結合型グリコシル化経路のさらなるグリコシルトランスフェラーゼをGalNAc-T2(Δ445)およびhGHまたは関心対象の治療タンパク質と同時発現させることができる。例示的な反応図式を図10に示す。
例えば、trxB、gor、supp大腸菌において、単一プラスミド上の多シストロン性発現カセットからhGHとGalNAcT2(Δ53 Δ445)、コア-1-GalT1、およびGNEとを同時発現させることにより、グリコシル化hGHを生成した。振盪フラスコ中、20℃で約16時間にわたり発現を誘導した。2つのカセットを試験した;第1のカセットでは、伸長5'UTRが各シストロンに先行する。第2のカセットでは、伸長5'UTRは最初の2つのシストロンにのみ先行し、単純なシャイン・ダルガルノ配列が最後の2つのシストロンに先行する。これら2つの多シストロン性構築物のいずれか一方を有する誘導細胞からの粗細胞溶解物を、RP-HPLCおよびLC/MSによりhGHレベルおよびグリコシル化についてアッセイした。図11に要約されるように、総hGH発現は約50〜60 mg/Lであり、30%の変換で約15〜18 mg/L hGH-GalNAcが得られた。別の実験では、これらの株から同様に調製した溶解物において、GalNAcT2活性およびコア-1-GalT1活性を測定した(図12)。いずれの酵素も活性を有していた。加えて、多シストロン性発現カセット2から発現された、trxB、gor、supp大腸菌からの溶解物中のhGHを、50 mM Tris pH 7、20 mM NaCl、0.2% NaN3、0.01% Tween-80、20 mM MnCl2、および10 mMの表示の糖ヌクレオチドを含む清澄化溶解物の反応物中で、インビトロでさらにグリコシル化した(図13)。反応は32℃で5時間行い、hGHの変換をLC/MSによってモニターした。図13にプロットしたように、UDP-GlcNAcの添加により、hGH-GalNAcの収率が増加した。代わって、UDP-GalまたはUDP-Glcを添加すると、hGH-GalNAcは直ちにhGH-GalNAc-Galに変換された。UDP-GlcNAcおよびUDP-Glcを両方添加すると、全hGHの60%超がhGH-GalNAc-Galに変換された。最終的に、多シストロン性発現カセット2を有するtrxB、gor、supp大腸菌細胞を、振盪フラスコ中で20℃で40時間まで誘導した。これらの細胞からの粗抽出物中のhGHグリコシル化の分布をLC/MSにより決定し、図14Aにプロットする。別の実験では、多シストロン性発現カセット2を有する細胞を、振盪フラスコ中で20℃で66時間誘導した。これらの細胞からの粗抽出物中のhGHグリコシル化の分布は、LC/MSにより、図14Bに示されるように決定された。66時間誘導した後に、hGH-GalNAc-Gal産物が検出された。
実施例3:グリコシルトランスフェラーゼとタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの同時発現
trxB、gor、supp変異体大腸菌細胞において、MBPタグ化ヒトGalNAcT2 Δ51(SEQ ID NO:28)およびMBPタグ化ラットST3Gal3(Δ72、SEQ ID NO:78)をタンパク質ジスルフィドイソメラーゼと同時発現させた。PCRにより、大腸菌DsbC(D22H Δ20)を、改変5'UTRを有するpCWin2由来の発現カセットを有するpACYC177に由来するアンピシリン選択可能なベクターにクローニングした。N末端欠失およびD22H変異の番号づけは、全長DsbC、SEQ ID NO:18に基づく。DsbC残基1〜20の欠失によりそのシグナル配列が除去され、そのためDsbCの細胞質発現が起こると予測される。タンパク質誘導、溶解物調製、および活性解析を含む方法は、本質的に実施例4および6に記載した通りであった。
GalNAcT2単独またはDsbCおよびGalNAcT2の発現プラスミドの両方のいずれかをtrxB、gor、supp変異体細胞に形質転換し、振盪フラスコ培養において20℃で一晩発現を誘導した。表2に示されるように、MBP-GalNAc-T2は、DsbCと同時発現させた場合により高レベルで可溶性発現された。同様に、trxB、gor、supp変異体細胞においてMBP-ST3Gal3とDsbCを同時発現させると、MBP-ST3Gal3のみの細胞と比較して活性レベルの発現が向上した。
(表2)タンパク質ジスルフィドイソメラーゼと同時発現させたグリコシルトランスフェラーゼの観察された酵素活性に基づく収量
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼの同時発現ありまたはなしでtrxB、gor、supp変異体大腸菌において発現させた表示のグリコシルトランスフェラーゼに関する、溶解物試料中に観察された最も高い活性の一覧
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実施例4:細菌における可溶性タンパク質としての真核生物グリコシルトランスフェラーゼ変異体の発現
O-結合型グリコシル化経路の真核生物グリコシルトランスフェラーゼ
GalNAcT2 Δ51 Δ445野生型構築物、および推定溶媒露出残基を変更するように設計された変異体構築物(Q130E、W131S、Y177K、F316D、およびF395D、表示の変異位置は全長野生型ヒトGalNAcT2に基づく)をtrxB、gor、supp大腸菌株で発現させた。振盪フラスコ中で細胞を培養し、IPTGにより20℃で少なくとも16時間誘導した。粗溶解物を調製し、20 mM Tris pH 7、10 mM MnCl2、1.5 mM UDP-GalNAc、1 mM合成ペプチドアクセプターを含む反応物中で、発現されたGalNAcトランスフェラーゼ活性について試験した。37℃で30分間インキュベートした後、反応を0.01 N HClで停止し、10,000 MWCO濃縮器を通した遠心分離によってペプチドアクセプターを反応物から分離した。RP-HPLCにより、ペプチドおよびGalNAc-ペプチドを検出および定量した。GalNAcT2置換変異体の1つであるF316Dでは、trxB、gor、supp大腸菌において発現される酵素活性が50%向上した(図15)。W131S変異のみが、非変異GalNAcT2タンパク質と比較して酵素活性の低下を示した。他の3つの変異体の活性は、非変異GalNAcT2タンパク質の活性とほぼ等しかった。
コア-1-GalT1 Δ50およびΔ31を、IPTGにより20℃で少なくとも16時間誘導したtrxB、gor、supp大腸菌の振盪フラスコ培養物で発現させた。清澄化細胞溶解物を、GalNAc-Thr残基を含む合成アクセプター糖ペプチドを含む反応物中で、相対ガラクトシルトランスフェラーゼ活性について試験した。RP-HPLCにより、GalNAc-ペプチドおよびGal-GalNAc-ペプチドを検出および定量した。非タグ化コア-1-GalT1のより短いΔ50型は5.1 U/Lで可溶性発現されたのに対し、より長いΔ31型は1.7 U/Lで可溶性発現された。
N-結合型グリコシル化経路の真核生物グリコシルトランスフェラーゼ
MBPタグ化ST3Gal3 Δ72構築物および非タグ化ST3Gal3 Δ72構築物をtrxB、gor、supp大腸菌株で発現させた。両方とも振盪フラスコで培養し、非タグ化ST3Gal3は10 Lバッチ発酵でも培養した。清澄化溶解物を調製し、20 mM MOPS pH 6.5、0.1 mg/ml BSA、10 mM MnCl2、2 mM CMP-NAN、および30 mMラクト-n-テトラオースを含む反応物中で、発現されたシアリルトランスフェラーゼ活性について試験した。30℃で2時間インキュベートした後、反応を熱失活により停止し、HPLCにより反応基質および反応産物を検出および定量した。振盪フラスコでは、MBP-ST3Gal3および非タグ化ST3Gal3は、それぞれ4.6 U/Lおよび1 U/Lで可溶性発現された。発酵槽では、非タグ化ST3Gal3の可溶性発現は、誘導後48時間までに2 U/Lに達した。
本明細書に記載した実施例および態様は説明の目的のためにのみ提供されるものであり、この点を考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。本明細書において引用した出版物、特許、および特許出願はすべて、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
非公式配列表
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精製物質として(左側)または可溶性hGHを含む粗細胞溶解物中(右側)の変異体ヒト成長ホルモン(hGH)のグリコシル化を示す。hGHはtrxB、gor、supp大腸菌株において生成した。反応基質、ならびにヒトGalNAc-T2 Δ51 Δ445タンパク質およびエピメラーゼタンパク質、GalEを発現するtrxB、gor、supp大腸菌株からの粗細胞溶解物の添加を経て、GalNAcをhGHタンパク質に転移した。反応産物をMALDI TOF質量分析によって解析し、非グリコシル化hGHと比較した。各供給源由来のhGHへのGalNAcの付加による予測される質量(予測+203.2、実際+207または+209)が認められた。 hGH-GalNAcのさらなるグリコシル化を示す。出発材料は、精製hGH(左側)またはhGHを含む粗細胞溶解物(右側)に由来した。hGHはtrxB、gor、supp大腸菌株において生成した。最初に、GalNAcを図1に記載した通りにhGHへ転移した。反応基質、およびMBP-コア-1-GalT1タンパク質を発現するtrxB、gor、supp大腸菌株からの粗細胞溶解物の添加を経て、ガラクトースをhGH-GalNAcに転移した。反応産物をMALDI TOF質量分析によって解析し、非グリコシル化hGHと比較した。hGHへのGalNAc-Galの付加による予測される質量(予測+365.6、実際+350または+356)が認められた。 trxB、gor、supp大腸菌において生成したhGH、GalNAcT2 Δ51 Δ445、GalE、MBP-コア-1-GalT1、およびMBP-ST3Gal1の粗溶解物を使用するhGH糖PEG化反応の解析を提供する。図1〜2に記載した通りにhGH-GalNAc-Galを調製し、続いて、反応基質、およびMBP-ST3Gal1タンパク質を発現するtrxB、gor、supp大腸菌株からの粗細胞溶解物の添加を経て糖PEG化した。図3AはSDS-PAGE解析;コロイドブルー染色である。レーン1:分子量マーカー;レーン2:糖PEG化反応、0分;レーン3:糖PEG化反応、19時間;レーン4:糖PEG化反応、46時間;レーン5:糖PEG化反応、62時間。四角で囲んだhGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDa産物が、レーン3、4、および5に認められる。非修飾hGHバンドは、レーン2、3、4、および5において22 kDaバンドの位置に認められる。図3Bは、62時間の時点での糖PEG化反応のRP-HPLC解析を提供する。産物hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaの保持時間は23.2分である。hGH出発材料の保持時間は25.7分である。Zorbax 300SB-C3 150×2.1 mm、5ミクロンカラム。 精製ST3Gal1による、粗溶解物において生成されたhGH-GalNAc-Galの糖PEG化を示す。図4Aに反応図式を示す。グリコシル化出発材料は、trxB、gor、supp大腸菌株において生成したhGHの粗細胞溶解物に由来した。粗溶解物の混合を用いて調製されたhGH-GalNAc-Galタンパク質(例えば、図1〜2)を、反応基質、およびバキュロウイルス系で生成された精製ST3Gal1タンパク質の添加を経てシアル酸-cys-PEG-40 kDaで糖PEG化した。反応物は、20℃または32℃で80時間までインキュベートした。反応産物をSDS-PAGEにより解析した;最終時点を図4Bに示す。hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDa産物を四角で囲んである。最終的な32℃の糖PEG化反応物のRP-HPLC解析を図4Cに示す。産物hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaの保持時間は23.0分である。hGH出発材料の保持時間は25.5分である。Zorbax 300SB-C3 150×2.1 mm、5ミクロンカラム。hGH糖PEG化の時間経過を図4Dに提供する。最良の反応では、出発材料の70パーセントまでがhGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaに変換された。 Q-sepharose fast flowクロマトグラフィーとその後のサイズ排除クロマトグラフィーによる精製後の、hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDaの逆相HPLC(RP-HPLC)解析の結果を示す。 2つの発酵物からの溶解物を用いる糖PEG化hGHの生成の反応図式を示す。trxB、gor、supp大腸菌株において、可溶性活性hGHタンパク質を高レベルで発現させる。これとは別に、必要なグリコシルトランスフェラーゼ類、例えば、GalNAc-T2 Δ445、コア-1-Gal-T1、ST3Gal1、および補助的酵素、例えばGalEまたはGNEをすべて、同じtrxB、gor、supp大腸菌株において同時発現させる。発酵後、hGH細胞および酵素細胞を溶解し、適切な反応基質の存在下で混合して糖PEG化産物を形成させる。 trxB、gor、supp大腸菌株において同時発現させたGalNAc-T2 Δ51 Δ445によるhGHのインビボグリコシル化を示す。インビボ活性を比較するために、エピメラーゼGalEまたはGNEもまたその細胞で発現させた。図7は、RP-HPLCによって解析した同時発現の結果を示す。図7Aは、hGHのみを発現するtrxB、gor、supp大腸菌からの粗溶解物の対照RP-HPLCである。図7Bは、hGHとGalNAc-T2 Δ51 Δ445およびGalEを同時発現するtrxB、gor、supp大腸菌からの粗溶解物のRP-HPLCを示す。対照と比較した下のグラフにおけるピークの移行は、hGHがインビボでグリコシル化されたことを示す。 hGHとGalNAcT2およびGalEまたはGNEの同時発現によって生成された粗溶解物中のhGHおよびhGH-GalNAcの発現レベルおよび収量率を要約する。 生じたグリコシル化反応を検証する、hGHのインビボグリコシル化のLC/MSを示す。hGH、GalNAc-T2 Δ51 Δ445、およびGNE(図9A)またはGalE(図9B)のいずれかを発現するtrxB、gor、supp大腸菌株からの粗細胞溶解物を解析した。hGHに対するGalNAcの付加による予測される質量(予測+203.2、いずれも実際は+203)が認められた。 単一の発酵物を用いるグリコシル化hGHの生成の反応図式を示す。trxB gor supp大腸菌株において、hGHタンパク質を、ここではGalE、GalNAc-T2 Δ445、およびコア-1-Gal-T1と同時発現させる。発酵後、細胞を溶解し、必要に応じて、ST3Gal1タンパク質およびCMP-シアル酸-cys-PEG-40 kDaと混合して、hGH-GalNAc-Gal-SA-cys-PEG-40 kDa産物を形成させる。 細菌によって生成されたhGHおよびhGH-GalNAcの収率を示す。trxB gor supp大腸菌においてhGH、GalNAcT2 Δ53 Δ445、コア-1-GalT1 Δ50、およびGNEを発現する2つの多シストロン性発現カセットに関する粗溶解物中のhGHおよびグリコシル化hGHの収率をRP-HPLCおよびLC/MSによって決定し、比較した。 trxB gor supp大腸菌において多シストロン性発現カセットから発現されたGalNAcT2およびコア-1-GalT1の可溶性粗溶解物活性レベルを示す。偽対照は、並行して操作した空の発現ベクターを有する細胞による。 同時発現粗溶解物をさらなる糖ヌクレオチドとインビトロで反応させた場合の、総hGHの非グリコシル化hGH(白)、hGH-GalNAc(薄灰色)、およびhGH-GalNAc-Gal(濃灰色)としての分布を提供する。hGHは、多シストロン性発現カセットを用いて、trxB gor supp大腸菌においてグリコシルトランスフェラーゼおよび補助的酵素と同時発現させた。偽処理試料は、並行して操作したが、外因性糖ヌクレオチドを添加しなかったものである。 trxB gor supp変異体大腸菌において多シストロン性発現カセットから生成した場合の、インビボにおけるグリコシル化の進行の解析を提供する。hGHは、多シストロン性発現カセットを用いて、trxB gor supp大腸菌においてグリコシルトランスフェラーゼおよび補助的酵素と同時発現させた。各時点における細胞溶解物中のhGHのグリコシル化をLC/MSによってモニターした。図14Aは、16〜40時間の誘導時間経過にわたるインビボグリコシル化hGH産物の分布を示す。図14Bは、誘導66時間後のインビボグリコシル化hGH産物の分布を示す。 trxB gor supp変異体大腸菌において発現させた場合の、触媒ドメインGalNAc-T2置換変異体の非変異GalNAc-T2に対する可溶性溶解物活性レベルの比較を提供する。 いくつかの天然O-グリカン構造の例を提供する。 アミノ酸、例えばセリンまたはスレオニンに糖を結合するために用いることができるグリコシルトランスフェラーゼの例を提供する。O-グリカン構造もまた、提供する。 CAZyファミリー27由来の例示的なヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の一覧を提供する。

Claims (21)

  1. 原核微生物においてO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する方法であって、
    a) 原核微生物において可溶性治療用タンパク質を発現させる段階、
    b) 原核微生物において異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質を発現させる段階、および
    c) 異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質による、第1ドナー基質から治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプター基質への第1糖部分の細胞内転移を可能にする条件下で微生物を培養し、それによってO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する段階
    を含む、方法。
  2. 原核微生物が細胞内酸化環境を有する、請求項1記載の方法。
  3. 細胞内酸化環境を有するように原核微生物が遺伝子改変される、請求項2記載の方法。
  4. 原核微生物が、大腸菌(E. coli)またはシュードモナス属(Pseudomonas)細菌である、請求項1記載の方法。
  5. 微生物が大腸菌である、請求項3記載の方法。
  6. 原核微生物が内因性還元酵素核酸に変異を有する、請求項5記載の方法。
  7. 異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼが、可溶性活性真核生物GalNAcTタンパク質である、請求項1記載の方法。
  8. d) 原核微生物において第1異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼを発現させ、第1異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼタンパク質による第2ドナー基質から治療用タンパク質上の第1アクセプター基質への第2糖部分の細胞内転移を可能にし、それによってO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する段階
    をさらに含む、請求項1記載の方法。
  9. 第1異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼタンパク質が、真核生物コアIガラクトシルトランスフェラーゼ(コア1 GalT1)タンパク質およびST6 GalNAc 1タンパク質から選択される、請求項8記載の方法。
  10. e) 原核微生物において第2異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼを発現させ、第2可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼタンパク質による第3ドナー基質から治療用タンパク質上の第2アクセプター基質への第3糖部分の細胞内転移を可能にし、それによってO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を生成する段階
    をさらに含む、請求項9記載の方法。
  11. 第2異種可溶性活性グリコシルトランスフェラーゼタンパク質が、真核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(ST3Gal1)タンパク質および細菌α(2,3)シアリルトランスフェラーゼタンパク質からなる群より選択されるシアリルトランスフェラーゼである、請求項10記載の方法。
  12. ドナー基質の前駆体含む培地で微生物を培養する、請求項1記載の方法。
  13. ドナー基質の産生を増強するように微生物が遺伝子改変される、請求項1記載の方法。
  14. 微生物が大腸菌である、請求項13記載の方法。
  15. 原核微生物を最適増殖温度より低い温度で培養する、請求項1記載の方法。
  16. 原核微生物からO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を単離する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
  17. O-グリコシル化可溶性治療用タンパク質を商業規模で生産する、請求項1記載の方法。
  18. 原核微生物が補助的酵素を発現し、補助的酵素が、UDP-グルコース4'エピメラーゼタンパク質、UDP-GlcNAc 4'エピメラーゼタンパク質、または二重機能UDP-グルコース4'エピメラーゼタンパク質/UDP-GlcNAc 4'エピメラーゼタンパク質からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  19. O-グリコシル化治療用タンパク質をPEG部分の付加によって修飾する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
  20. O-グリコシル化可溶性治療用タンパク質と異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質とを含む原核微生物であって、
    原核微生物内で、異種可溶性活性ヌクレオチド糖:ポリペプチドグリコシルトランスフェラーゼタンパク質が、第1ドナー基質からO-グリコシル化可溶性治療用タンパク質上のアミノ酸アクセプター基質へ第1糖部分を転移する、原核微生物。
  21. 細胞内酸化環境を有する、請求項20記載の原核微生物。
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