JP2018503597A5 - - Google Patents

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その必要がある対象の飽食を誘導し、満腹を延長させる医薬組成物および食品組成物
本発明は、その必要がある対象の飽食を誘導し、満腹を延長させる医薬組成物および食品組成物に関する。
腸内細菌叢の組成は、宿主の代謝の表現型に関連しており(Ley et al., 2006)、「肥満」の細菌叢を移行すると、脂肪症(Turnbaugh et al., 2006)および過食症(Vijay−Kumar et al., 2010)を誘導する場合があり、このことにより、腸内細菌叢が宿主の摂食事象に影響し得ることが示唆されている。宿主の食欲に及ぼす腸内細菌の効果の基礎となる機構は未知であるが、食物摂取量を制御する宿主の分子経路を使用し得る可能性がある。
現在の食物摂取量の制御モデルは、摂食の恒常的態様および快楽的態様を調節する一部の脳の回路網に、腸由来の空腹ホルモンおよび満腹ホルモンがシグナルを伝達していることを暗示している(Berthoud, 2011; Inui, 1999; Murphy and Bloom, 2006)。これらのうち、特に、それぞれが室傍核(PVN)を中継する、プロオピオメラノコルチン(POMC)およびニューロペプチドY(NPY)/アグーチ関連タンパク質(AgRP)ニューロンを含む視床下部弓状核(ARC)を起源とする食欲不振誘発性および食欲促進性の経路が重要である(Atasoy et al., 2012; Cowley et al., 1999; Garfield et al., 2015; Shi et al., 2013)。ARCおよびPVNの経路は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を発現する、扁桃体中心核(CeA)に食欲不振誘発性の投射を送る外側結合腕傍核に集束する(Carter et al., 2013; Garfield et al., 2015)。
宿主の食欲の制御に及ぼす腸内細菌叢の効果の仮想機構は、エネルギーを収集活動(Turnbaugh et al., 2006)、ならびに向神経活性の伝達物質および代謝物の産生((Dinan et al., 2015; Forsythe and Kunze, 2013; Sharon et al., 2014)を伴い得る。本発明者らは、腸で局所的にまたは全身的に食欲を制御する経路において直接作用する細菌タンパク質が関与することを証明した。実際に、いくつかの細菌タンパク質は、食欲を調節するペプチドホルモンとの配列相同性を呈することが示されており(Fetissov et al., 2008)、近年では、腸に共生する大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)により産生されたClpBタンパク質が、α−メラニン細胞刺激ホルモン(α‐MSH)の抗原模倣剤として同定された(Tennoune et al., 2014)。α‐MSHは、メラノコルチン受容体4(MC4R)の活性化により飽食をシグナリングする際に鍵となる役割を果たすPOMC由来のニューロペプチドである(Cone, 2005)。MC4R媒介型α‐MSHの食欲不振誘発性作用は、主にα−MSHの中心的な作用部位によるものであり(Mul et al., 2013)、近年の研究は、腸の腸内分泌細胞におけるMC4Rの活性化が、満腹ホルモンであるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)およびペプチドYY(PYY)の放出を刺激する(Panaro et al., 2014)ことを示した。よって腸内細菌由来のα‐MSH様分子は、満腹ホルモンを合成する腸内分泌細胞に直接作用することができる。
本発明は、その必要がある対象の飽食を誘導し、満腹を延長させる食品組成物および医薬組成物に関する。特に、本発明は特許請求の範囲によって定義されている。
発明の詳細な説明
本発明者らは、ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌が、その必要がある対象において、飽食を誘導し、満腹を延長させ、食物摂取量を減少させ、体重増加を制御し、および/または体重減少を刺激することができることを例証した。
よって、本発明の一態様は、その必要がある対象の飽食を誘導する方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。
本発明のさらなる一態様は、その必要がある対象の満腹を延長させる方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。
よって、本発明の一態様は、その必要がある対象の食事量を減少させる方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。
本発明のさらなる一態様は、その必要がある対象の食物摂取量を減少させる方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。
また本発明のさらなる一態様は、その必要がある対象の体重増加を制御する方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。
また本発明のさらなる一態様は、その必要がある対象の体重減少を刺激する方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を対象に投与することを含む、方法に関する。
本発明の方法は、ヒト、ペット、または家畜のために意図されているが、ペットまたは家畜は、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、および/または家禽からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、対象は雄性または雌性の対象である。
一部の実施形態では、対象は肥満ではない。一部の実施形態では、対象は肥満である。「肥満」は、本明細書中で、好ましくは対象が30超のBMIを有する医学的状態を表す。「BMI」または「ボディマス指数」は、対象の身長の2乗により除算した対象の体重として定義されている。医学において一般に使用される式は、kg/m2の測定単位をもたらす。概して非肥満の対象は正常な体重を有する。「正常」かつ「単純な過体重」は、本明細書中、18.5〜30のBMIをもたらす体重を表す。
本明細書中使用されるように、用語「満腹」は、自身の欲求が満たされているまたは最小限であると個体が感じる本質的に恒常的な状態を表すことを意味する。多くの生理的な要因が、個体の満腹を担うと考えられている。たとえば、味覚または味、嗅覚または匂い、および胃の満腹感はすべて、個体が「満たされた」と感じるかどうかに寄与し得る。より具体的には、「満腹」は、さらなる摂食が阻害され、食事の間隔および次の食事で消費される食物の量を決定する状態である。「満腹感の亢進」などは、対照の状況と比較してより明らかである、および/またはより長い満腹感を意味する。本明細書中使用される用語「飽食」は、食事中に摂食を終了させる状態を表し、概して、食事の消費を開始してからある期間経過した後(たとえば20〜30分以内)に起こる/観察される状態を表す。よって、本明細書において「飽食を誘導する」などと言及する場合、食事の最中に食物の消費を対象が停止させる傾向を喚起することを意味する。飽食に及ぼす効果は、食事の終了時点を点数化することにより決定することができる。飽食の効果は、食事の終了時に消費されたカロリー量が、たとえば少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、またはそれ以上、対照よりも有意に少ない場合に認められる。長期間にわたり(1、2、3、4、5週間またはそれ以上)、対照の食事と比較して体重の減少または体重の変化を点数化することもできる。通常量の試験組成物が投与される(たとえば1日1回、1日2回、またはそれ以上)対象の体重は、好ましくは対照の体重と比較して有意に制御されている(減少または増加が少なくなる)。本明細書中使用される「対照の対象」は、本発明のプロバイオティック細菌株を投与しなかった対象を表す。
本明細書中使用されるように、用語「ClpB」は、当該分野における一般的な意味を有し、六量体AAA+−ATPasesのHsp100/ClpBファミリーの一員である、ヒートショックタンパク質F84.1としても知られている。ClpBは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、野兎病菌(Francisella turalensis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびネズミチフス菌(Salmonella thyphimurium)などのいくつかのグラム陰性およびグラム陽性の病原性細菌の熱耐性の獲得、ならびにビルレンスおよび感染性に必須の因子として説明されている。大腸菌K12において、シャペロンタンパク質ClpBは、ヒートショックタンパク質F84.1またはhtpMとしても知られており、アミノ酸857個のタンパク質である。概して、シャペロンタンパク質ClpBは、配列番号1(NCBI参照番号:NP_417083.1、2013年11月6日で利用可能な限り、および/またはUniProtKB/Swiss−プロット番号:P63284、2013年11月6日で利用可能な限り)を有する大腸菌K12由来のシャペロンタンパク質ClpBのアミノ酸配列を含む、またはからなる。概して、シャペロンタンパク質ClpBのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と96〜100%同一のアミノ酸配列を含む、またはからなる。好ましくは、ClpBのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列540−550位(ARWTGIPVSR)と96、97、98、99、または100%同一である。本願の文脈では、同一性のパーセンテージは、グローバルアライメントを使用して計算される(すなわち2つの配列を、全長にわたり比較する)。2つ以上の配列の同一性を比較する方法は、当該分野でよく知られている。たとえば、2つの配列の全体の長さを考慮する場合に、2つの配列の最適なアライメント(ギャップを含む)を見出すためにNeedleman−Wunsch global alignment algorithm(Needleman and Wunsch, 1970 J. Mol. Biol. 48:443−453)を使用する「needle」プログラムを使用してもよい。needleプログラムは、たとえば、ebi.ac.uk world wide web site上で利用可能である。本発明に係る同一性のパーセンテージは、好ましくは、EMBOSS:10.0に相当する「Gap Open」パラメータ、0.5に相当する「Gap Extend」パラメータ、およびBlosum62マトリックスを含むneedle(global)プログラムを使用して計算する。本発明において、ClpBタンパク質は、飽食の誘導に関してα―MSHタンパク質を模倣する。よって一部の実施形態では、本発明のClpBタンパク質は、抗α‐MSH抗体により認識される。概して、この抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体、たとえばポリクローナルウサギ抗α―MSH IgG(1:1000、Peninsula Laboratories, San Carlos, CA, USA)である。α―MSHのアミノ酸配列は、好ましくは、アミノ酸配列SYSMEHFRWGKPV(配列番号2)(Gen Pept Sequence ID, PRF: 223274,2013年12月2日で利用可能な限り)を含む、またはからなる。
配列番号1:
Figure 2018503597
一部の実施形態では、ClpBタンパク質を、医薬組成物の形態で対象に投与する。一部の実施形態では、ClpBタンパク質を、薬学的に許容可能な賦形剤、および任意に生分解性ポリマーなどの徐放性マトリックスと組み合わせて、医薬組成物を形成する。用語「薬学的に」または「薬学的に許容可能な」は、適宜、哺乳類、特にヒトに投与する場合に有害な、アレルギー性の、または他の望ましくない反応を生成しない分子実体および組成物を表す。薬学的に許容可能な担体または賦形剤は、いずれかの種類の、非毒性の固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、または製剤補助剤を表す。本発明の医薬組成物では、活性成分は、単独または別の活性成分と組み合わせて、従来の薬学的な補助剤との混合物としての単位投与形態で動物およびヒトに投与することができる。適切な単位投与形態は、錠剤、ゲルカプセル、散剤、顆粒剤、および経口懸濁剤または液剤などの経口投与形態、舌下および頬側投与形態、エアゾール剤、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮的、髄腔内、および鼻腔内の投与形態、ならびに直腸投与形態を含む。好ましくは、医薬組成物は、注射できる製剤にとって薬学的に許容可能であるビヒクルを含む。これらは、特に等張で無菌の生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、もしくは塩化マグネシウムなど、または当該塩の混合物)であってもよく、または、場合によっては滅菌水または生理食塩水の添加により注射可能な溶液を構成できる、乾燥、特に凍結乾燥組成物であってもよい。注射可能な用途に適した薬学的な形態として、無菌性水溶液または分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌性注射可能な液剤または分散剤の即時調製のための無菌性散剤が挙げられる。すべての場合において、形態は無菌性でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性でなければならない。医薬組成物は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩として本発明の化合物を含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適宜混合した水の中で調製することができる。また分散剤を、グリセロール、液体のポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で調製することができ、油中で調製することができる。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含む。活性成分は、中性または塩の形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基によって形成される)を含み、たとえば塩酸または硫酸などの無機酸によって形成され、または酢酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸によって形成される。遊離カルボキシル基によって形成される塩は、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来することもできる。また担体は、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、ならびに植物油を含む溶媒または分散媒体でありうる。適切な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合に必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合、たとえば糖および塩化ナトリウムといった等張剤を含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによりもたらすことができる。無菌性の注射可能な溶液は、上記に列挙された様々な他の成分と共に適切な溶媒に、必要量の活性ポリペプチドを組み込み、必要に応じて滅菌濾過することにより調製される。一般に、分散剤は、基本的な分散媒体および上記に列挙された必要とされる他の成分を含む無菌性ビヒクルに様々な滅菌した活性成分を組み込むことにより、調製される。無菌性の注射可能な液剤の調製のための無菌性散剤の場合、好ましい調製方法は、予めろ過滅菌したそれらの溶液から、活性成分の散剤に加えて追加的な望ましい成分の粉末を生じる真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。製剤化された後、液剤は、剤形と適合可能な方法で、かつ治療上有効な量で投与される。本製剤は、上述の注射可能な液剤の種類などの様々な剤形で容易に投与されるが、薬剤放出カプセルなども使用することができる。水溶液での非経口投与では、たとえば溶液は、必要に応じて適宜緩衝されるべきであり、液体の希釈剤は、十分な生理食塩水またはグルコースによって等張性にすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用できる無菌性の水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知である。たとえば1つの用量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、皮下注入流体100mlに添加するか、または提案される点滴部位に注入することができる。用量の何らかの変動は、治療される対象の状態に応じて、必要に応じて起こるものである。投与の責任者は、いずれの場合であっても、個々の対象に適した用量を決定する。
本明細書中使用されるように、「ClpBを発現する細菌」との表現は、上記に定義されたシャペロンタンパク質ClpB、または配列番号1のアミノ酸配列と96〜100%同一、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列と96、97、98、99、もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むもしくはからなるポリペプチドを、発現または過剰発現する細菌を表す。
一部の実施形態では、ClpBタンパク質を発現する細菌はプロバイオティック細菌株である。
本明細書中使用されるように、用語「プロバイオティック」は、十分量で組み込まれ、健康、快適さ、およびウェルネスに対して従来の栄養学的な効果を超える積極的な効果を発揮する、生きた微生物を示すことを意味している。プロバイオティック微生物は、「適切な量で投与する場合に、宿主に健康利益を提供する生きた微生物」として定義されている(FAO/WHO 2001)。本明細書中使用されるように、「プロバイオティック細菌株」との表現は、宿主の健康および幸福に有益な効果を有する細菌株を表す。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、生きたプロバイオティック細菌株である。「生きたプロバイオティック細菌株」との表現は、代謝的に活性であり、対象の消化管でコロニー形成することができる微生物を意味する。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、細菌のフラグメントの混合物からなる非生存可能なプロバイオティック細菌株である。一部の実施形態では、本発明の細菌フラグメントの混合物は、細菌株由来のタンパク質からなる。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、食品グレードの細菌から選択される。「食品グレードの細菌」は、食品で使用され、かつ食品での使用に安全であると一般的に認識されている細菌を意味する。
細菌株は、天然に存在する細菌株であってもよく、遺伝子改変細菌株であってもよい。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、ClpBタンパク質を構成的に発現した細菌である。
一部の実施形態では、ClpBタンパク質は細菌で過剰発現されている。一般的に、タンパク質の発現は「アップレギュレート」されており、またはタンパク質は、標準的な条件で自然に起こる所定のベースラインの収率よりも多い量または収率で発現または産生される場合に、「過剰発現」されている。タンパク質の過剰発現は、たとえば(a)宿主細胞の増殖条件または生存条件、(b)タンパク質をコードするポリヌクレオチド、(c)細胞におけるポリヌクレオチドの発現およびそのコピー数を制御するために使用されるプロモーター、ならびに(d)宿主細胞自体のうちのいずれか1つまたは複数を変化させることにより、達成することができる。
一部の実施形態では、ClpBタンパク質の発現が細菌においてアップレギュレートされるように、細菌をストレス状態に供した。ストレスは、熱への曝露、温度変化、力学的なストレス、または長期間の保存、低湿度での保存、および/または凍結乾燥もしくは噴霧乾燥からなる群から選択され得る。
一部の実施形態では、細菌を、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20回、栄養供給に供した。概して、この栄養は、細菌の増殖に都合のよい培養培地、たとえば実施例に記載されるミューラー・ヒントンにより供給される。一部の実施形態では、上記の繰り返した栄養供給に続く定常期の段階で細菌を単離する。これは、この定常期の間でClpBタンパク質の濃度が最大であるためである。
一部の実施形態では、細菌は、ClpBタンパク質の発現がアップレギュレートされるように少なくとも1つの点変異を含む。本明細書中使用される用語「点変異」は、核酸の置換および/または欠失を意味する。あるいはまたは同時に、少なくとも1つの変異は、ClpB遺伝子の調節DNA配列内、たとえば転写および翻訳制御配列に位置しており、この変異はタンパク質の発現を調節することが好ましい。調節DNA配列内の変異は、タンパク質の発現をアップレギュレートするよう作用し得る。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、ClpBタンパク質を発現するために遺伝子改変されている細菌である。概して、細菌株は、ClpBタンパク質をコードする核酸で形質転換された。用語「形質転換」は、宿主細胞が所望の物質、概して導入された遺伝子または配列によりコードされたタンパク質または酵素を産生するために、導入された遺伝子または配列を発現するように、宿主細胞に対して「外来」(すなわち外因性または細胞外)の遺伝子、DNAまたはRNAを導入することを意味する。導入したDNAまたはRNAを受容して発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。この核酸は、親の微生物の形質転換の際に染色体外に保持されていてもよく、または微生物のゲノムに組み込まれるように改変されてもよい。よって、核酸は、細胞外染色体構築物(たとえば複製開始点、プロモーター、および他の調節配列)の組み込み(たとえば相同組み換えおよび宿主のゲノムへの標的化組み込みを可能にする領域)、または安定した発現および複製を補助するように改変された追加的なヌクレオチド配列を含んでもよい。一部の実施形態では、核酸は核酸構築物またはベクターである。一部の実施形態では、核酸構築物またはベクターは発現構築物またはベクターであるが、クローニングに使用されるものなどの他の構築物およびベクターが、本発明に含まれる。一部の実施形態では、発現構築物またはベクターはプラスミドである。概して、発現構築物/ベクターは、以前に本明細書中に記載されるように、プロモーターをさらに含む。一部の実施形態では、プロモーターは、その制御下の遺伝子の構成的な発現を可能にする。しかしながら、誘導型プロモーターを使用してもよい。本発明の発現構築物/ベクターは、必要に応じてClpBタンパク質の発現に適したプロモーターおよび追加的な遺伝子に加えて、いずれかの数の調節要素を含んでもよい。細胞外核酸を用いて細菌細胞を形質転換する方法は、当該分野でよく知られている。
一部の実施形態では、プロバイオティック細胞株はグラム陰性菌株である。
一部の実施形態では、プロバイオティック細菌株は、腸内細菌科の一員である。
一部の実施形態では、プロバイオティック細菌株は大腸菌株である。一部の実施形態では、本発明の教示により使用するプロバイオティック大腸菌株は、プロバイオティック活性を発揮する非病原性大腸菌株を含む。プロバイオティック大腸菌株の例として、プロバイオティック大腸菌(Escherichia coli)株BU−230−98, ATCC寄託番号202226(DSM 12799)があり、これは、既知の市販されているプロバイオティック大腸菌(Escherichia coli)株M−17の単離菌である。非病原菌の例として、大腸菌Nissle 1917がある。プロバイオティックとして知られていなかった大腸菌株の例として、研究室の大腸菌株K12がある。
概して、本発明のプロバイオティック細菌株は、当該分野でよく知られたいずれかの適切な培養培地を用いて産生される。たとえば(限定するものではないが)、まず菌株が増殖し、かつそのまま、または濃縮(たとえば乾燥)後、または別の食品基剤または食品の添加後に使用される工業用培地などの様々な発酵培地が本発明に適している。あるいは細菌細胞、培地(たとえば発酵ブロス)を含む細菌細胞、または培地を含む当該細胞の分画(すなわち上記細菌株を含む培地)を使用してもよい。細胞または培地を含む細胞は、菌株の、生きているもしくは生存可能な細菌細胞、および/または死細胞もしくは生存可能ではない細菌細胞を含む。よってこの培地は、限定するものではないが、加熱または超音波処理により処理してもよい。また、凍結乾燥または凍結した細菌および/または無細胞培地(濃縮してもよい)は、本発明のプロバイオティック細菌株を調製する方法に含まれている。
概して、本発明のプロバイオティック株は、摂取(すなわち経口経路)により対象に投与される。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、胃から保護されるようにカプセル化されている。よって一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株は、細菌株の生存時間を著しく改善するために、カプセル化された形態の組成物に製剤化されている。このような場合、カプセルの存在は、特に消化管での微生物の分解を遅らせる、または防止し得る。本実施形態の組成物は、腸溶コーティングされた徐放性のカプセルまたは錠剤にカプセル化されていると理解されている。腸溶コーティングは、カプセル/錠剤が小腸に達する時間まで、消化管を通過する際にカプセル/錠剤を無傷(すなわち溶解していない)のままにすることができる。生きた細菌細胞をカプセル化する方法は、当該分野でよく知られている(たとえば米国特許第6,723,358号などの、General Mills Incに対する米国特許を参照)。たとえば、アルギン酸塩およびHi−Maize(商標)スターチでマイクロカプセル化し、続いて、凍結乾燥を行うことは、乳製品において細菌細胞の保存可能期間の延長に成功している(たとえばKailasapathy et al. Curr Issues Intest Microbiol. 2002 September; 3(2):39−48参照)。あるいはカプセル化は、コンニャク(Amorphophallus konjac)から抽出された繊維などのグルコマンナン繊維を用いて行うことができる。あるいは、ゴマ油エマルジョンへの生きたプロバイオティックの封入も使用してもよい(たとえばHou et al. J. Dairy Sci. 86:424−428参照)。一部の実施形態では、腸溶コーティング用の薬剤は、好ましくはEudragit(登録商標)ポリマーなどのメタクリル酸‐アクリル酸アルキルのコポリマーである。ポリ(メタ)クリレートは、コーティング材料として特に適していると証明されている。EUDRAGIT(登録商標)は、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルに由来するコポリマーの商標名であり、これらの特性は官能基によって決定される。個々のEUDRAGIT(登録商標)のグレードは、中性、アルカリ性、または酸性の基の特性、よって物理化学的な特性が異なる。異なるEUDRAGIT(登録商標)ポリマーをうまく使用して組み合わせると、様々な薬学的かつ技術的な用途における薬剤の制御放出にとって理想的な溶液を提供する。EUDRAGIT(登録商標)は、徐放性の錠剤およびペレットのコーティングのための機能的なフィルムを提供することができる。このポリマーは、Ph.Eur.、USP/NF、DMF、およびJPEなどの国際的な薬局方に記載されている。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、薬剤の制御放出に関して以下の可能性:消化管の標的化(胃での耐性、結腸での放出)、保護コーティング(味覚および臭覚のマスキング、水分からの保護)、および薬剤の遅延放出(徐放性製剤)を提供することができる。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、水溶液、水性分散剤、有機溶液、および固体の物質を含む、幅広い範囲の異なる濃度および物理的な形態で利用可能である。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーの薬学的特性は、その官能基の化学的な特性により決定される。以下のように分類される:
消化液に可溶性のポリ(メタ)クリレート(塩の形成による):酸性基またはアルカリ性の基を有するEUDRAGIT(登録商標)L(メタクリル酸コポリマー)、S(メタクリル酸コポリマー)、FSおよびE(塩基性ブチル化メタクリル酸コポリマー)ポリマーは活性成分のpH依存的放出を可能にする。活性成分応用:胃液に対する単なる抵抗性による単純な味覚のマスキングから腸のすべての部分での薬剤の制御放出。
消化液に不溶性のポリ(メタ)クリレート:アルカリ性の基を有するEUDRAGIT(登録商標)RLおよびRS(アンモニオメタクリレートコポリマー)ポリマー、および中性基を有するEUDRAGIT(登録商標)NEポリマーは、pH依存性の膨張により活性成分活性成分の制御放出を可能にする。
EUDRAGIT(登録商標)腸溶コーティングは、胃での薬剤放出に対して保護を提供し、腸での制御放出を可能にする。放出を支配する基準は、胃(pH1〜5)ではなくて腸の特定の部分(pH5〜7超)で起こるコーティングのpH依存性の溶解である。これらの応用の場合、カルボキシル基を含む陰イオン性EUDRAGIT(登録商標)のグレードを、互いに混合することができる。これにより、溶解pHを細かく調節することが可能となり、よって腸での薬剤放出部位を定義することが可能となる。EUDRAGIT(登録商標)LおよびSのグレードは、腸溶コーティングに適している。EUDRAGIT(登録商標)FS 30D(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸基材の陰イオン性コポリマーの水性分散剤)は、特に結腸での制御放出に使用される。
概して、本発明のプロバイオティック細菌株は、食品組成物の形態で対象に投与される。よって本発明のさらなる一態様は、ある量の本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物に関する。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物は、完全食品組成物、食品サプリメント、栄養組成物などから選択される。本発明の組成物は、食品成分および/または供給成分として使用されてもよい。
食品の成分は、用途、および/または応用形式、および/または投与形式に応じて、溶液の形態または固体としての形態であってもよい。
本発明のプロバイオティック細菌株は、概して、本組成物の生成工程の間の任意の時間に添加され、たとえば生成工程の開始時に食品基材に添加されてもよく、または最終的な食品に添加されてもよい。
「食物」は、液体(すなわち飲料)、固体、または半固体の食用の組成物、特に食品組成物全体(代替食品)を表し、追加的な栄養摂取または食品サプリメント組成物を必要としない。食品サプリメント組成物は、栄養の摂取を他の手段に完全に置き換えるものではない。食品組成物および食品サプリメント組成物は、たとえば発酵乳製品または乳製品ベースの製品であり、好ましくは1日に1回または複数回経口的に投与または摂取される。発酵乳製品は、たとえばそれ自体が知られている方法を使用して、食品基材に添加することにより、生成工程において本発明に係る細菌を使用して直接作製することができる。このような方法では、本発明の細菌株を、通常使用される微生物に加えて使用してもよく、および/または通常使用される微生物の1つもしくは複数または一部と置き換えてもよい。たとえば、ヨーグルトまたはヨーグルトベースの飲料などの発酵乳製品の調製では、本発明の細菌を、開始培養物の一部に添加してもよく、もしくは開始培養物の一部として使用してもよく、または発酵などの間に適宜添加してもよい。任意に、細菌は、生成工程の後半で不活性化または死滅させてもよい。発酵乳製品として、ミルクベースの製品、たとえば(限定するものではないが)、デザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、クヴァーク(quark)、ケフィア、発酵乳ベースの飲料、バターミルク、チーズ、ドレッシング、低脂肪スプレッド、フレッシュチーズ、豆乳ベースの飲料、アイスクリームなどが挙げられる。あるいは、食品組成物および/または食品サプリメント組成物は、非乳製品または非発酵乳製品(たとえば非発酵乳または別の食品媒体中の細菌株または無細胞培地)であってもよい。一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株はカプセル化されており、食品(たとえば乳中)または非食品媒体に分散されている。非発酵乳製品は、アイスクリーム、栄養バーおよびドレッシングなどを含み得る。非乳製品は、粉末飲料および栄養バーなどを含み得る。この製品は、食品基材、たとえばスキムミルクまたはミルクベースの組成物などの食品基材に細菌株および/または無細胞培養培地の有効量を添加すること、および公知の発酵などの既知の方法を使用して、作製されてもよい。細菌細胞および/または無細胞培養培地(を含む組成物)を添加し得る他の食品基材は、肉、代用肉、または植物の基材であってもよい。
本発明のプロバイオティック細菌株を含む組成物は、固体、半固体、または液体であってもよい。組成物は、食品または食品サプリメントの形態、たとえば錠剤、ゲル、散剤、カプセル、飲料、バーなどの形態であってもよい。たとえば本組成物は、水、フルーツジュース、乳、または別の飲料に溶解できる小袋に封入した散剤の形態であってもよい。
本明細書中で使用される用語「食品の成分」または「供給成分」は、機能性食品または栄養サプリメントとしての食料である、またはこれらに添加することができる製剤を含む。
「栄養性食品」または「栄養補助」食品または「機能性」食品は、健康に有益な効果を有する、または生理機能を改善できる成分を含む食料を意味する。
「食品サプリメント」は、通常の食事を完全にする目的を有する食料を意味する。食品サプリメントは、単独または組み合わせて少量を摂取する際に、栄養的または生理的な作用を有する栄養素または他の物質の濃縮起源である。
本発明では、「機能性食品」は、その重要性が、栄養および味に関して価値が高くなるようにすることだけでなく、特定の成分の物質に起因する、近年開発された食料および対応する製品を表す。本発明によると、中または長期間の健康の維持および促進は重要である。この文脈では、非治療的使用が好ましい。本発明の実施形態を同様に表す用語「ニュートラシューティカル(nutriceutical)」または「フードシューティカル」、および「デザイナーフード(designer food)」は、同義語としても部分的に使用されるが、また異なる方法でも使用される。しかしながら、健康の予防的態様および促進、ならびに製品の食品としての特徴は、機能性食品との用語により最も明確となる。多くの場合、これらは、分類および選択(また本発明の事例でもある)、精製、濃縮によって、また添加によってますます蓄積された製品に関する。単離された有効物質、特に錠剤または丸剤の形態の物質は含まれない。機能性食品の法的な定義は存在しないが、この領域に関心を有する団体のほとんどが、基本的な栄養効果を超える特定の健康の効果を有する食品として販売される食品であることに同意している。よって機能性食品は、食品に特定の機能、たとえば純粋な栄養作用以外の医学的または生理的な利点を与える構成要素または成分(本明細書中に記載されるものなど)が組み込まれている通常の食品である。
一部の実施形態では、飲料は、機能性飲料または治療用飲料、飲み物(thirst−quencher)、または通常の飲料である。例として、本発明の組成物は、ソフトドリンク、フルーツジュース、または乳清タンパク質を含む飲料、健康茶、ココア飲料、乳飲料、および乳酸菌飲料、ヨーグルトおよび飲用ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、氷果およびデザート、菓子、ビスケットケーキおよびケーキミックス、スナック食品、栄養バランスのとれた食品および飲料、フルーツフィリング、ケアグレーズ(care glaze)、製パン用チョコレートフィリング、チーズケーキ風味のフィリング、果物風味のフィリング、ケーキおよびドーナッツのアイシング、インスタントの製パン用フィリングクリーム、クッキー用のフィリング、すぐに使用できる製パン用フィリング、低カロリーのフィリング、成年の栄養性飲料、酸性化ダイズ/ジュース飲料、無菌性/レトルトのチョコレート飲料、バーミックス、粉末飲料、カルシウム強化ダイズ/プレーンおよびチョコレートの乳飲料、カルシウム強化コーヒー飲料に対する成分として使用することができる。
さらに本組成物は、アメリカンチーズソース、おろして細かくしたチーズ用凝固剤、チーズディップ、クリームチーズ、乾燥混合ホイップトッピング用無脂肪サワークリーム、凍結/解凍ホイップクリーム、凍結/解凍安定ホイップ済みクリーム、低脂肪およびライトナチュラルなチェダーチーズ、低脂肪のスイス式ヨーグルト、空気を入れたフローズンデザート、ハードパックアイスクリーム、ラベルフレンドリー(label friendly)で安価な嗜好食品のハードパック(hard pack)アイスクリーム、低脂肪アイスクリーム:ソフトクリーム、バーベキューソース、チーズディップソース、カッテージチーズドレッシング、乾燥混合アルフレイドウ・ソース、混合チーズソース、乾燥混合トマトソース、およびその他などの食品の成分として使用することができる。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む組成物は、発酵ヨーグルト飲料、ヨーグルト、飲用ヨーグルト、チーズ、発酵クリーム、ミルクベースのデザートおよびその他などのヨーグルト製品と共に使用される。適宜、本組成物は、チーズへの応用、肉への応用、または保護的な培養物を含む応用のうちの1つまたは複数における成分としてさらに使用することができる。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物は、食品代替製品の調製に適している。本明細書中使用されるように、用語「食品代替製品」は、特段他の記載がない限り、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、および無機質を含むいずれかの栄養製品を含み、これらの組み合わせは、食事のための唯一または主な栄養供給源として適している。概して、食品代替製品は、少なくとも1つの炭水化物供給源、少なくとも1つの脂質供給源、および/または少なくとも1つのタンパク質供給源を含む。タンパク質の供給源として、たとえば動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、および卵タンパク質など);植物性タンパク質(ダイズタンパク質、コムギタンパク質、コメタンパク質、およびエンドウマメタンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;またはそれらの組み合わせといったいずれかの適切な食事性タンパク質を使用してもよい。カゼインおよび乳清などの乳タンパク質およびダイズタンパク質が特に好ましい。タンパク質は無処置もしくは加水分解されていてもよく、または無処置のタンパク質および加水分解したタンパク質の混合物であってもよい。たとえば、牛乳アレルギーを発症するリスクがあると考えられる動物に関しては、部分的に加水分解したタンパク質(2〜20%の度合いの加水分解)を供給することが望ましいであろう。加水分解したタンパク質が必要とされる場合、加水分解の工程は、望ましいように、かつ当該分野で知られているように実行し得る。たとえば、乳清タンパク質の加水分解物は、1つまたは複数のステップで乳清分画を酵素的に加水分解することにより、調製され得る。開始材料として使用される乳清分画が実質的にラクトースを含まない場合、タンパク質は、加水分解工程の間でリジン損失が少ないことが見いだされる。これによって、リジン損失の度合いを、総リジンの約15重量%からリジンの約10重量%未満に減少させることができ、たとえば、約7重量%のリジン損失は、タンパク質供給源の栄養の質を大きく改善する。本組成物が脂肪供給源を含む場合、脂肪供給源は、好ましくは本組成物のエネルギーの5%〜40%、たとえばエネルギーの20%〜30%を提供する。適切な脂肪プロファイルは、キャノーラ油、トウモロコシ油、高オレイン酸ヒマワリ油の混合物を使用して得ることができる。炭水化物供給源は、好ましくは本組成物のエネルギーの40%〜80%を提供する。たとえばスクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップの固体、マルトデキストリン、およびそれらの混合物といった、任意の適切な炭水化物を使用することができる。概して、ミールリプレイスメントで日常の食事をエネルギー制限食に置き換えることは、体重減少後の重量の維持に貢献する。
本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物は、概して担体またはビヒクルを含む。「担体」または「ビヒクル」は投与に適した物質を意味し、たとえばいずれかの液体、ゲル、溶媒、液体の希釈剤、可溶化剤などの、非毒性で、本組成物のいかなる成分とも有害に相互作用しない、当該分野で知られているいかなる物質も含む。栄養学的に許容可能な担体の例として、限定するものではないが、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ワックス、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペトロエスラル脂肪酸エステル(petroethral fatty acid ester)、ヒドロキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物は、ある量の食物繊維を含む。食物繊維は、小腸を通過し、酵素により消化されず、天然の増量剤および緩下剤として機能する。食物繊維は、不溶性または可溶性であり得ることから、一般的に二種類の混合物が好ましい。適切な食物繊維の供給源として、ダイズ、エンドウマメ、カラスムギ、ペクチン、グアーガム、アラビアゴム、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリル−ラクトース、および畜乳由来のオリゴ糖が挙げられる。一部の実施形態では、食物繊維は、マンナン類から選択される。グアーガム、ローカストビーンガム、コンニャク、およびキサンタンガムなどのマンナン類(グルコマンナンおよびガラクトマンナンなど)は、一部の植物細胞壁に存在する。グルコマンナンは、一般的に、(1−4)‐β結合のグルコースおよびマンノース単位から構成されており、ガラクトマンナンは、一般的に、(1−6)‐α‐ガラクトース1単位で置換されている(1−4)‐β‐マンナン骨格から構成されている。グアーおよびローカストビーンなどの多くのマメ科植物の胚乳は、種子の発達の間、胚乳にガラクトマンナンを含む。またグルコマンナンは、穀粒の微量成分としても見いだされている。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物は、USRDAなどの政府機関の推奨に従って、微量元素およびビタミンなどの無機質および微量元素を含む。たとえば、本組成物は、1日投与量あたり、以下の微量栄養素の1つまたは複数を、与えられた範囲で含み得る:300〜500mgのカルシウム、50〜100mgのマグネシウム、150〜250mgのリン、5〜20mgの鉄、1〜7mgの亜鉛、0.1〜0.3mgの銅、50〜200μgのヨウ素、5〜15μgのセレン、1000〜3000μgのβカロテン、10〜80mgのビタミンC、1〜2mgのビタミンB1、0.5〜1.5mgのビタミンB6、0.5〜2mgのビタミンB2、5〜18mgのナイアシン、0.5〜2.0μgのビタミンB12、100〜800μgの葉酸、30〜70μgのビオチン、1〜5μgのビタミンD、3〜10μgのビタミンE。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む組成物は、乳化剤を含む。食品グレードの乳化剤の例として、概して、モノ‐およびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン、ならびにモノ‐およびジグリセリドが挙げられる。同様に、適切な塩および安定剤(stabiliser)が含まれてもよい。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む食品組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクを含む。「プレバイオティク」は、腸において本発明のプロバイオティック細菌株の増殖を促進するように意図される食品の物質である。プレバイオティクは、オリゴ糖からなる群から選択されてもよく、任意にフルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズ、および/もしくはイヌリン;ならびに/または食物繊維を含む。
一部の実施形態では、本発明のプロバイオティック細菌株を含む組成物は、保護性の親水コロイド(ガム、タンパク質、変性スターチなど)、結合剤、フィルム形成剤、カプセル化剤/材料、壁/シェルの材料、マトリックス化合物、コーティング剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着材、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤、および抗菌剤を含む。また本組成物は、限定するものではないが、水、任意の起源のゼラチン、植物性ガム、リグニンスルホン酸塩、タルク、糖、スターチ、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香料、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、賦形剤などを含む、薬学的な添加剤およびアジュバント、賦形剤、および希釈剤を含んでもよい。すべての場合で、このようなさらなる成分は、意図するレシピエントに適切であることを考慮して選択されている。
一部の実施形態では、ClpBタンパク質(またはこのタンパク質を発現するプロバイオティック細菌株)の投与は、適宜1つまたは複数の期間で中断しつつ、たとえば1日にまたはそれ以上の期間、一般的には少なくとも4日の長期間、さらには4〜15週間の間、1日に2〜3回反復される。一部の実施形態では、ClpBタンパク質は、対象の食事と同時またはそれと連続して投与される。一部の実施形態では、ClpBタンパク質は、対象の食事の前に投与される。
本明細書中使用されるように、用語「有効量」は、有益な作用(たとえば満腹の刺激、飽食の延長、食物摂取量の減少、体重増加の制御、および/または体重減少の刺激)を達成するために十分な量のClpBタンパク質を表す。本発明の文脈では、対象に投与されるClpBタンパク質の量は、一般的な健康状態、年齢、性別、体重などの個体の特徴に依存する。当業者は、これら要因および他の要因に応じて用量を適切に決定することができる。たとえばClpBタンパク質が、プロバイオティックの形態で対象に投与される場合、本発明の菌株は、対象に有益な効果をもたらすために十分なコロニーを作製することができる。プロバイオティック細菌株が食品の形態で投与される場合、概して、食品組成物の乾燥重量1gあたり、10 10 12 cfuの本発明のプロバイオティック細菌株を含んでもよい。
本発明を、以下の図面および実施例によってさらに説明する。しかしながら、これら実施例および図面は、本発明の範囲を限定するようには解釈すべきでは全くない。
正常な成体のC57Bl6マウスにおける大腸菌K12 野生型(WT)またはClpB遺伝子を欠失した大腸菌K12(ΔClpB)の毎日の強制経口投与による胃内送達の、開始時および3週間の終了時に分析した体重、24時間の食物摂取量、および食事パターンに及ぼす効果。対照のマウス(Ctr)には、強制経口投与を行わなかった。食事パターンは、1回の食事の間に摂食した平均食物量に対応する食事量、および、少なくとも5分間離れた24時間あたりの食事の回数に対応する食事の頻度として、測定した。食事量の減少は、飽食が早いことを反映しており、食事の頻度の減少は、満腹期間が長いことを反映する。二元配置反復測定ANOVA、ボンフェローニ(Bonferroni)の事後検定、*p<0.05。B,D,G,H, ANOVA、テューキー(Tukey)の事後検定、*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001. E. スチューデントt−検定、*p<0.05。
実施例1
材料および方法
定期的な栄養供給後のIn vitroでの大腸菌の増殖
大腸菌K12細菌を、50mlのFalconのバイアル中、30%のブイヨン、1.75%のカゼイン加水分解物、および0.15%のスターチを含む25℃、pH7.3のMH培地40ml(Becton, Dickinson, MD)で、37℃で培養した。ヒトにおいて予定される1日2回の食事をモデル化するために、5日間連続して12時間ごとに、細菌に新規のMH培地を与えた。MH培地の1回目の供給から2時間おき、3回目の供給から1時間おき、および5回目の供給から10分おきに、分光光度計によりλ=600nmでのODとして細菌の増殖を測定した。それぞれの12時間サイクルの終わりに、細菌を、室温(RT)で5分間、6,000rpmで遠心した。上清を廃棄し、当量(〜40ml)の新規のMH培地と交換した。MH培地の最後の補充の後、対数期およびその後の定常期において、タンパク質の抽出のため、細菌をサンプリングした。
タンパク質の抽出
大腸菌K12細菌を、4,000gで30分間、4℃で遠心した。細菌の残渣をトリスヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)バッファー(pH7.4)2mlに溶解し、超音波処理により室温で3分間ホモジナイズした。溶解していない細胞フラグメントからタンパク質を分離するために、細菌のホモジネートを、10,000gで30分間、4℃で遠心した。上清を回収し、次に60,000gで45分間、4℃で超遠心して、さらにタンパク質を、細胞質(上清)および膜(残渣)の分画に分離した。膜タンパク質をTRISバッファー(pH7.4)に溶解した。タンパク質の濃度を、2−D Quant Kit(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を使用して測定した。
二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動
2D−PAGEのために、大腸菌タンパク質抽出物300μgを使用して、固定pH勾配(IPG)ストリップ(pH4−7;18cm;BIO−RAD, Hercules, CA)を再水和した。次にタンパク質を、IPGphor等電点電気泳動法システム(GE Healthcare)を使用することによる合計85,000V−hでの等電点電気泳動法により、第1の次元に分離した。この後、IPGストリップを、平衡バッファー(尿素6mol/L、30%(容積:容積)のグリセロール、2%(重量:容積)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Tris−HCl50mmol/L(pH8.8)、2%(重量:容積)のジチオスレイトールを含む0.25%(重量:容積)ブロモフェノールブルー)中で、15分間インキュベートし、次に、4%(重量:容積)のヨードアセトアミドを含む平衡バッファー中で15分間アルキル化した。その後IPGストリップを、SDS−PAGEのため10%のポリアクリルアミド勾配ゲル(20cm 18cm 1mm)上に固定した。第2の次元を、25℃、12mA/ゲルで、Ettan Daltsix垂直電気泳動システム(GE Healthcare)で一晩行った。SDS−PAGEの後、2Dゲルを、2%(容積:容積)オルトリン酸および50%(容積:容積)のメタノール中、室温で2時間固定した。次にゲルを水ですすぎ、タンパク質のスポットをCBB G−250(BIO−RAD)染色[34%(容積:容積)のメタノール、17%(重量:容積)の硫酸アンモニウム、2%(容積:容積)のオルトリン酸、および0.66gのCBB G−250/L]により可視化した。
異なるタンパク質発現の解析
染色した2Dゲルの画像を、グレイスケールのマーカー(Kodak, Rochester, NY)で較正したImageScanner II(GE Healthcare)によりスキャンし、Labscan 6.0ソフトウェア(GE Healthcare)でデジタル化した。スポット検出、定量化、マッチング、および比較解析を含む異なるタンパク質発現の解析を、ImageMaster 2D Platinum 5.0ソフトウェア(GE Healthcare)を使用して行った。各タンパク質の試料を、実験間の変動を最小限にするために、少なくとも3回(膜タンパク質)および4回(細胞質タンパク質)、2D−PAGEに供し、3つ(または4つ)のゲルの各セットを、ImageMasterを使用して比較して、ゲルのセット内に統計学的に異なるスポットが出現していないことを確認した。各セットのうち最も代表的なゲル(ゲルの遊走、スポットの定義、およびスポット数)を使用して、対数期と定常期の大腸菌タンパク質を比較した。発現レベルを、ゲル中の各スポットの相対量により決定し、%体積として表し、スポット体積/ゲル中で分離されたすべてのスポットの体積の総和として計算した。この正規化したスポット体積は、ゲルに存在するすべてのスポットにわたる総体積を考慮することにより、タンパク質のローディングおよび染色による変動を考慮するものである。量の変動は、2つの期の間のスポットのグループに関する%体積の平均値の比率として計算した。1.5超の体積の変動を伴うスポットのみ妥当であると考慮した。ゲル中にスポットが存在しないことは、選択した実験条件下でタンパク質に関して検出可能な発現が記録できないことを示した。対応するp値を、スポット体積の対数変換後に、スチューデントt検定(有意水準p<0.05)により決定した。
液体クロマトグラフィー―エレクトロスプレーイオン化MS/MSによるタンパク質の同定
対象となるタンパク質のスポットを、Ettan Spot Picker(GE Healthcare)を使用して、CBB G−250で染色した2Dゲルから切除し、自動化されたゲル内のタンパク質の消化を、上述のEttan Digester(GE Healthcare)で行った(Goichon et al., 2011)。次にタンパク質の抽出物を、5%(容積:容積)のアセトニトリル/0.1%(容積:容積)のギ酸10μlに再懸濁し、ナノスプレー供給源およびHPLCチップキューブインターフェースを備える6340 Ion Trap質量分析計に接続したnano−LC1200 systemを用いて解析した(Agilent Technologies, Courtaboeuf, France)。簡潔に説明すると、ペプチドを濃縮して、40nLのRP−C18トラップカラムで脱塩し、Zorbax(30−nmの孔径、5−μmの粒径)C18カラム(長さ43mm×内径75μm、Agilent Technologies)上で分離した。流速400nl/分の9分間の線形勾配(3%〜80%のアセトニトリルを含む0.1%のギ酸)を使用し、溶離液を、イオントラップ質量分析計で解析した。
タンパク質同定のため、MS/MSピークのリストを抽出し、MASCOT Daemonバージョン2.2.2(Matrix Science)検索エンジンを使用することによりタンパク質データベースと比較した。この検索を、以下の特定のパラメータ:酵素特異性、トリプシン:切れ残ったペプチドの割合1は許容;修飾の固定なし;可変の修飾、メチオニンの酸化、システインのカルバミドメチル化、セリン、チロシン、およびスレオニンのリン酸化;モノアイソトピック;ペプチドの電荷、2+および3+;前駆体イオンに関する質量許容差、1.5Da;フラグメントイオンに関する質量許容差、0.6Da;器具としてのESI−TRAP;分類、大腸菌;国立生物情報工学センター(NCBI)のデータベース[NCBInr 20120531(18280215個の配列、6265275233個の残基)](Bethesda, MD)を用いて行った。以下の基準:54超のMASCOTスコアをそれぞれが含む少なくとも2つの上位にランク付けされたペプチド(太線および赤色)(p<0.01)、または47超のMASCOTスコアをそれぞれが含む少なくとも2つの上位にランク付けされたペプチド(太線および赤色)(p<0.05)のうちの1つを満たす場合、タンパク質のヒットを自動的に検証した。偽陽性率を評価するために、すべての最初のデータベース検索を、MASCOTの「decoy」のオプションを使用して行った。偽陽性率が1%を超えなければ、結果は適切であると考えられた。
ATPアッセイ
in vitroでのATP産生を、製造社の説明書に従ってATP比色分析/蛍光定量アッセイキット(BioVision, CA)を使用して測定した。簡潔に述べると、対数期または定常期の細菌タンパク質を、各濃度(ATPアッセイバッファー中1、10、および25μg/ml)に関して2個ずつ一連のウェルに入れて、ATPアッセイバッファーで50μl/ウェルに調節した。次に、異なる栄養溶液、15%のスクロースまたはMH培地10μlを、対応するウェルに添加し、ATPアッセイバッファーで50μl/ウェルに調節した;ATPバッファー50μl/ウェルのみを対照のウェルに添加した。このプレートを、37℃で2時間インキュベートした。インキュベートした後、ATP反応混合物50μl(ATPアッセイバッファー、ATPプローブ、ATPコンバーターおよび展開剤の混合物を含む)を各ウェルに添加した。室温で遮光して30分のインキュベーションの後、570nmでODを測定し、日光から保護した。
ClpBイムノアッセイの開発および検証
ClpB検出アッセイの設計は、線形濃度範囲における特異的かつ感受性の検出などのいくつかの基準に基づくものであった。特定の条件は、ClpB分子におけるα―MSH様エピトープの存在によって起こり得る、α―MSHの交差反応性のないClpBの検出であった。この手法およびシグナル検出を簡便にするため、本発明者らは、標準的な96ウェルELISAプレートおよび分光光度計によるODの読み取りの選択肢を使用した。ClpBのELISAおよびウェスタンブロット(WB)の詳細なプロトコルを、別の段落に提示する。
捕捉Abに対する曝露抗体(Ab)の結合を防止するために、本発明者らは、異なる種、ウサギおよびマウスにおいてそれぞれClpB 捕捉抗体(Capture Ab)およびClpB検出抗体(Detection Ab)を作製した。複雑な生物学的試料からClpBタンパク質を最も有効に捕捉するために、本発明者らは、複数の抗ClpBエピトープを有するウサギのポリクローナル抗体でELISAプレートをコーティングした。ClpBとα−MSHとの間の交差反応性を回避するために、本発明者らは、いくつかのAbクローンのELISAスクリーニングによりあらかじめ選択した、ClpBを認識するがα―MSHを認識しない高い感受性および特異性を特徴とするマウスのモノクローナル抗ClpBAbを検出Abとして使用した。アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス曝露抗体を、検体濃度に比例するODとして読み取り可能な色素生成酵素反応を得るための一般的なELISAツールとして使用した。2pM〜150の範囲の組み換え大腸菌のClpBタンパク質の7つの連続希釈液の検出からもたらされるODの線形変化が、プラトーに達することなく、かつODシグナルの飽和を伴うことなく得られた。
開発したClpBアッセイの特異性を検証するために、本発明者らは、大腸菌K12 WTの10個の異なる培養物およびΔClpB変異体大腸菌培養物から抽出したタンパク質試料中のClpBの濃度を測定した。ΔClpB変異体および対応する野生型(WT)の菌株は、Dr.Axel Mogk(ZMBH, Heidelberg University, Germany)により快く提供されたものであった。さらに、本発明者らは、抗ClpBポリクローナルウサギ抗体を使用したWBによりこれら細菌タンパク質試料中のClpBの存在を解析し、WBのバンドとELISAにおける濃度との間のシグナル強度の値を比較した。ClpBは、すべての野生型大腸菌培養物において検出され、ここで7つの培養物は、1000pM超のClpBの濃度を有したが、ClpBは、ΔClpB大腸菌から抽出したタンパク質試料では検出することができなかった。WBにより、WTで予測される96kDaの大きさの主要なバンドが明らかとなったが、ΔClpB大腸菌では明白ではなかった。これらバンドのOD強度は、個々の試料間で変動し、同じ大腸菌培養物の試料においてELISAにより測定したClpBの濃度と正の相関を示した。よってΔClpB大腸菌のタンパク質調節物においてClpBが検出されなかったことは、アッセイの特異性を確認するものであり、ELISAとWBとの間の良好な一致は、両方のClpBの免疫検出技術の交差検証を提供した。
ClpBの血漿アッセイが腸内細菌に由来するClpBを検出することを検証するために、本発明者らは、ClpBのELISAを使用して、WTまたはΔClpBの大腸菌を、強制経口投与により3週間与えたマウスの血漿中のClpBを測定した。血漿試料は、本発明者らが以前に公表した試験から入手した(Tennoune et al., 2014)。本発明者らは、ClpBが、対照および細菌を含まない培養ブロスを強制経口投与したマウスの両方を含むマウスの血漿に通常存在することを見出した。ClpBの血漿中レベルは、WT大腸菌を投与したマウスでは増加したが、ClpB欠損大腸菌を与えたマウスでは変化しないままであったことは重要であり、血漿中のClpBが腸内細菌を起源とすることを確認した。
ClpBのELISA
ウサギのポリクローナル抗大腸菌ClpB抗体(Delphi Genetics, Gosselies, Belgiumによりカスタム生成)を、100mNaHCO3バッファー(pH9.6)中2μg/mlの濃度100μlを使用して、96ウェルのMaxisorpプレート上に、4℃で12時間コーティングした。プレートを、0.05%のTween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)で洗浄した(5分×3回)。組み換え大腸菌ClpBタンパク質(Delphi Geneticsによりカスタム生成)を、試料バッファー(PBS、アジ化ナトリウム0.02%,pH7.4)中で5、10、25、50、70、100、および150pMに連続希釈し、ウェルに1試料あたり2個ずつ加えて標準物質を作製した。検体試料は、マウスおよびラット由来の結腸粘膜および血漿の試料、または大腸菌K12培養物から抽出したタンパク質を含むものであった。検体試料を、残りのウェルに1試料あたり2個ずつ添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを、0.05%のTween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)で洗浄した(5分×3回)。マウスモノクローナル抗大腸菌ClpB抗体(試料バッファー中1:500、Delphi Geneticsによりカスタム生成)を、ウェルに添加し、室温で90分間インキュベートした。プレートを、0.05%のTween 20を含むPBS(pH7.4)で洗浄した(5分×3回)。Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.(West Grove, PA)製のアルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(試料バッファー中1:2000)をウェルに添加し、室温で90分インキュベートした。プレートを、0.05%のTween 20を含むPBS(pH7.4)で洗浄し(5分×3回)、次に100μlのp−ニトロフェニルリン酸塩溶液(Sigma, St. Louis, MO)を、アルカリホスファターゼの基質として添加した。室温での40分のインキュベーションの後、反応を、3NのNaOH50μlを添加することにより停止した。ODを、マイクロプレートリーダーMetertech 960(Metertech Inc., Taipei, Taiwan)を使用して405nmで決定した。血漿試料またはClpBタンパク質の標準希釈液を添加しなかったプレートの読み取りからもたらされるブランクのODの値を、試料のOD値から減算した。
ClpBのウェスタンブロット
E.coli K12から抽出したタンパク質を使用して、ウェスタンブロットを行った。タンパク質の試料(10μg)を、トリス―グリシンバッファー中の20%のアクリルアミドSDSゲル上で分離し、ニトロセルロース膜(GE Healthcare, Orsay, France)に移し、TBS(10mmol/LのTris,pH8;150mmol/LのNaCl)+0.05%(重量/容積)のTween 20中5%(重量/容積)脱脂粉乳で、室温で少なくとも1時間ブロッキングした。次に、この膜を、ウサギポリクローナル抗大腸菌ClpB抗体(1:2000, Delphi Genetics)と共に、4℃で一晩インキュベートした。TBS/0.05%のTween 20中5%(重量/容積)脱脂粉乳のブロッキング溶液中で3回洗浄した後、膜を、ペルオキシダーゼコンジュゲート抗ウサギIgG(1:3000, SantaCruz Biotechnology)と共に1時間インキュベートした。3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ反応を、ECL検出キット(GE Healthcare)を使用して顕色した。タンパク質のバンドを、分子量標準物質(Precision Plus, BioRad)と比較し、フィルムを、ImageScanner III(GE Healthcare)を使用してスキャンし、ImageQuant TL ソフトウェア7.0(GE Healthcare)を使用してバンドの画素密度を解析した。
ラットにおける大腸菌タンパク質の腸管投与
動物
動物の飼育および実験は、米国の国立衛生研究所により確立されたガイドラインに従い、仏国および欧州の規則の両方に準拠するものであった(Official Journal of the European Community L 358, 18/12/1986)。体重200〜250gの雌性のスプラーグドーリー系ラット(Janvier, Genest−Saint−Isle, France)を、制御された環境条件(22±1℃、午前7時半に点灯する12時間の照明サイクル)下の完備された動物施設において、飼育ケージ(ケージあたり3匹のラット)に1週間収容して、収容条件にラットを順化させた。標準的なペレット状のげっ歯類固形飼料(RM1 diet, SDS, UK)および飲料水を自由に与えた。
実験♯1
この実験は、腸における細菌増殖のin vivoでの状況に対する、本発明者らのin vitroでの大腸菌増殖モデルの関連性を評価するために設計した。ラットに、ケタミン(75mg/kg, Virbac, Carros, France)/キシラジン(5mg/kg, Bayer, Leverkusen, France)溶液(3:1 vol.,0.1mL/100g体重 I.P)により麻酔した。開腹手術の後、2か所の結紮:1つ目:盲腸結腸接合部(caecocolonic junction)および2つ目:その4cm下を配置することにより、結腸を準備した。結腸への注入および管腔の内容物のサンプリングを、上行結腸の中に挿入したポリプロピレンカテーテルを使用して行い、1つ目の結紮術で固定した。MH培地または水2mlを、結腸にゆっくりと注入し、その直後に、OD測定のために回収した。ODの測定の後、結腸の内容物の試料のすべてを結腸に戻した。新たなMH培地または水を用いない結腸の内容物のそのようなサンプリングを、最初の20分間に5分毎、次に、30分目および60分目に繰り返した。細菌の密度を、分光光度計によりλ=600nmでのODとして測定した。血液試料を、1つ目の注入の前、注入から30分後および60分後に、門脈から採取した。糞便試料を、ClpB DNA抽出およびPCRのため、実験の最後に結腸から採取した。
リアルタイム定量的ポリメラーゼ鎖反応
CFX 96 q−PCR機器(BioRad, CA)を使用して、定量的PCR(qPCR)を行って、ClpB DNAを発現する細菌の密度を解析した。総DNAを、QAMP DNA stool mini kit(QIAGEN Venlo, Netherlands)を使用して、ラットの糞便から抽出した。qPCR混合物は、SYBR Green Master(QIAgen,West Sussex, UK)5μl、それぞれ0.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、試料由来のDNA、および全量を10μlにするための水を含むものであった。プライマーは、Invitrogen(Cergy−Pontoise, France)から購入した。3ステップPCRを、40サイクル行った。この試料を、95℃で10分間変性し、60℃で2分間アニーリングし、95℃で15秒間伸長させた。
実験♯2
この実験は、全身循環への腸管ペプチド(GLP−1およびPYY)の放出に及ぼす大腸菌タンパク質の効果を評価することを目的とした。ラットを麻酔して、結腸を上述のように準備し、対数期(n=6)または定常期(n=6)に抽出した大腸菌タンパク質(PBS2ml中0.1μg/kgのタンパク質)の結腸注入を、20分間に1回行った。血液試料を、GLP−1、PYYおよびClpBのアッセイのために、20分の結腸注入の前および後に、門脈から採取した。結腸粘膜の試料を、ClpBアッセイの実験の終わりに採取した。GLP−1およびPYYのアッセイを、蛍光酵素イムノアッセイキット(Phoenix Pharmaceutical inc., CA)を使用して、製造社の説明書に従い行った。蛍光を、マイクロプレートリーダーChameleon(HIDEX Inc., Turku, Finland)を使用して、励起に関して325nm、発光に関して420nmで測定した。
ラットにおける大腸菌タンパク質の投与、食物摂取量、および脳のc−fos試験
動物
体重200〜250gの雄性ウィスター系ラット(Janvier, Genest−Saint−Isle, France)を、収容条件に順化させて、上述のように餌を与えた。実験の3日前に、ラットを、個々の代謝ケージ(Tecniplast, Lyon France)に移し、ここで同じRM1 dietではあるが、粉末の形態(SDS)を自由に与えた。飲料水は常に自由に与えた。ラットを処置に慣れさせるために、順化期間の間、毎日数分間、ラットを優しく扱った。順化の終わりに、ラットを、類似の平均体重となるように3つのグループに分け、実験1〜3に使用した。食物の制限を含む2つの実験を、4日間隔をあけて同じラットで行った。自由に摂食するラットにおける3番目の実験は、新規の種を含むものであった。
実験1♯
第1の実験は、対数期および定常期で抽出した大腸菌の膜タンパク質の効果を比較することを目的とした。ラットを、水を自由に与えつつ、一晩(18.00時間〜10.00時間)絶食させた。絶食後に、大腸菌タンパク質を、10.00時間目にI.P注射し、すぐにラットを、あらかじめ重量計測した量の食物を備える代謝ケージに戻した。食物摂取量を、1時間、2時間、および4時間目に測定した。第1のグループのラット(n=6)には、PBS300μl中対数期の大腸菌から抽出した膜タンパク質0.1mg/kgを投与し、第2のグループのラット(n=6)には、定常期の大腸菌から抽出した膜タンパク質0.1mg/kgを投与し、対照のグループ(n=6)には、PBS300μlを投与した。
実験♯2
第2の実験は、対数期および定常期で抽出した大腸菌の細胞質タンパク質の効果を比較することを目的とした。実験♯1と同様の実験プロトコルを使用した。
実験♯3
この実験は、自由に摂食するラットにおける食物摂取量に及ぼす総大腸菌タンパク質の効果を評価するために設計した。対数期(n=6)もしくは定常期(n=6)で抽出した大腸菌タンパク質(300μlのPBS中0.1mg/kgのタンパク質、I.P.)、または対照(n=6)としてのPBSのみの注射を、19.30時間目に行い、動物をあらかじめ重量計測した量の食物を備える代謝ケージに戻した。累積食物摂取量を2時間後に測定した。その直後に、ナトリウムペントバルビタール(0.2mg/kg, I.P.)によりラットを麻酔して、脳におけるc−fos発現の免疫組織化学的試験のため灌流した。
組織の調製および免疫組織化学
脳を、4%のパラホルムアルデヒドでの灌流/浸漬により固定し、クリオスタット(Leica Microsystems, Nanterre, France)上で凍結かつ切断(14μm)し、次に、チラミドシグナル増幅(TSA)+フルオレセインキット(NEN, Boston, MA)を使用して免疫組織化学のために処理した。単染色の場合、cfosに対するウサギのポリクローナル抗血清(1:4,000, Ab−5, Calbiochem, Merck KGaA, Darmstadt, Germany)を使用した。二重染色の場合、TSAの後に、抗ウサギシアニン‐3抗体1:200(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)により顕色するβ‐エンドルフィン(β−end)に対するウサギモノクローナル抗体(Life Technologies, Frederick, MD)の1,000倍希釈液、または抗マウスローダミンレッドコンジュゲート抗体1:200(Jackson ImmunoResearch)により顕色するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に対するマウスモノクローナルIgG(Santa Cruz Biotechnology, inc., TX)の1,000倍希釈液のいずれかを使用して、直接免疫蛍光技術を適用した。視床下部弓状核および視床下部腹内側核、および扁桃体中心核において、陽性細胞を、6つの連続した切片から倍率20倍で計数した。ラットあたりの陽性細胞の平均数を使用して、グループの平均値を計算した。デジタル画像を、Adobe Photoshop 6.0ソフトウェア(Adobe Systems, San Jose, CA)において輝度およびコントラストに関して最適化した。
マウスにおける大腸菌タンパク質の長期投与
2ケ月齢の雄性C57Bl6マウス(n=32)をJanvier Labsから購入し、8:00に点灯する12時間の照明サイクルで1週間動物施設に順化させた。次に、マウスを、それぞれ自動摂食モニターを備えたBioDAQマウスケージ(Research Diets, Inc., New Brunswick, NJ)に個別に収容した。BioDAQケージに3日間順化させた後、マウスを3つのグループ(n=8)に分け、それぞれに(i)PBS、(ii)対数期で抽出した細菌タンパク質(0.1mg/kg体重)、(iii)定常期で抽出した細菌タンパク質(0.1mg/kg体重)を、9:00および18:30に毎日2回I.P.注射することからなる異なる治療を行った。食物(SERLAB, Montataire, France)および飲料水を自由に与え、体重を毎日測定した。摂食データを1週間連続的にモニタリングし、BioDAQ data viewer 2.3.07(Research Diets)を使用して解析した。食事パターンの解析のため、食事間隔を300秒に設定した。満腹の比率を、その前の食事で消費された食物の量(g)により除算した食後間隔の時間(s)として計算した。実験の後、マウスを断頭により屠殺し、脳を摘出し、ニューロペプチドmRNAのマイクロアレイのため視床下部を精査した。
視床下部性ニューロペプチドmRNAのマイクロアレイ
総RNAを、製造社のプロトコルに従いNucleoSpin(登録商標)RNA II kit(Macherey−Nagel, Duren, Germany)を使用して、大腸菌タンパク質の長期投与を行ったマウスの視床下部から抽出した。消化されたRNAを、ImProm−II(商標)Reverse Transcription System kit(Promega, Madison, WI)を使用して、42℃で60分間逆転写した。得られたcDNAを、リアルタイムPCR反応に使用した。9個のプライマー対のパネルを、Primer expressソフトウェア(Life Technologies, Saint−Aubin, France)を用いて設計し、有効性および特異性に関して検証した。cDNA6μl、および100nMの濃度の特異的なリバースプライマーおよびフォワードプライマーを含むFast SYBR Green Master Mix(Life Technologies)6μlで構成されるPCR反応物を、Bravo liquid handling system (Agilent)を用いて96ウェルプレートに分配し、QuantStudio 12K Flex(Life Technologies)で増幅させた。標的遺伝子に関するcDNA生成シグナルを、投入されたmRNA量の変動のために、参照遺伝子シグナルによって内部補正した。次に、遺伝子発現レベルを、対照試料のグループと比較し、 −ΔΔCq 法を使用して調節を決定した。
電気生理学の記録
脳の切片(250μm)を、既に記述されているように(Fioramonti et al., 2007)、成年のPOMC−eGFPマウス(5〜7週齢、Ref: C57BL/6J−Tg(Pomc−EGFP)1Low/J, The Jackson Laboratory)から調製した。切片を、118mM NaCl、3mM KCl、1mM MgCl 、25mM NaHCO 、1.2mM NaH PO 、1.5mM CaCl 、5mM Hepes、2.5mM D−グルコース(スクロースで310 mOsMに調節したモル浸透圧濃度、PH7.4)を含む酸素付加した細胞外培地中、室温で、少なくとも60分の回収期間の間インキュベートした。記録チャンバーに入れた後、切片を同じ細胞外培地で2〜3ml/分で還流した。切片を、蛍光(フルオレセインフィルター)を備えたNikon顕微鏡EF600(Nikon France, Champigny sur Marne)およびIR−DICビデオ顕微鏡を用いて観察した。生きているARC POMCニューロンを、蛍光ビデオカメラ(Nikon)を用いて40倍の水浸対物レンズ(Nikon)を使用して可視化した。ホウケイ酸ピペット(4〜6MΩ;1.5mm OD, Sutter Instruments, Novato, CA)に、ろ過した細胞外培地を充填した。セルアタッチ記録を、Multiclamp 700B増幅器を使用して行い、Digidata 1440Aインターフェースを使用してデジタル化し、pClamp 10.3ソフトウェア(Axon Instruments, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を使用して3kHzで得た。ピペットおよび細胞の容量は、完全に相殺された。安定したベースラインを確立した後、1nMのClpB(Delphi Genetics)を、5〜10分間灌流した。POMCのニューロンの発火頻度(firing rate)を、灌流から7〜10分後の、ClpBの灌流の最後の3分間にわたり測定し、灌流前に3分に測定した発火頻度と比較した。
統計解析
GraphPad Prism 5.02(GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を使用してデータを解析し、グラフをプロットした。正規性を、コルモゴロフ−スミルノフ検定により評価した。グループの差異を、正規性の結果に従い、分散分析(ANOVA)またはテューキーもしくはダンの事後検定を伴うノンパラメトリッククラスカル・ワリス(K−W)検定により、解析した。適宜、正規性の結果に従い、スチューデントt検定およびピアソン相関またはマン・ホイットニー(M−W)検定を使用して個々のグループを比較した。連続した実験の効果を、反復測定(RM)ANOVAおよびボンフェローニの事後検定を使用して解析した。データを平均値±平均値の標準誤差(s.e.m)として示し、すべての検定に関して、p<0.05は統計学的に有意であると考えられた。
結果
定期的な栄養供給後の大腸菌の増殖
大腸菌培養物へのMueller−Hinton(MH)栄養培地の1回目の供給の後、3つの大腸菌増殖相:1)2時間の誘導期;2)4時間の対数増殖期、および3)6時間安定して0.35の光学密度(OD)を維持する定常期が、観察された。3回目および5回目のMH培地の供給後では、2つの増殖相:対数期および定常期のみが見いだされ、最初の増殖期は、栄養供給の直後に始まった。それぞれの新たな摂食サイクルは、より短い持続期間の対数増殖期、すなわち3回目の供給後から2時間および5回目の供給後から20分を特徴とした。5回目の栄養供給の後に、細菌タンパク質を抽出し、膜および細胞質の分画に分離して、絶食したラットにおけるプロテオミクス解析およびin vivoでの実験に使用した。新規の実験では、持続的な定期的な栄養供給が細菌増殖の動態をさらに促進し得るかどうかを検証するために、大腸菌K12に栄養を9回供給した。本発明者らは、7回目および9回目の栄養供給の後に、対数増殖期がこれ以上変化せず、ODの同じ相対的な増加(Δ0.3)を伴い20分間持続することを見出したが、これは各栄養供給後の細菌増殖が同一であることを反映するものであった。マクファーランド濁度標準液により、0.3のODの増加は、細菌の10 10 個の増分に対応する。9回目の栄養供給の後、細菌タンパク質を対数期および定常期で抽出したところ、それぞれ0.088mg/mlおよび0.15mg/mlの総タンパク質濃度を示した。抽出したタンパク質をClpBレベルに関して試験し、ATP産生アッセイ、ならびに自由に摂食するマウスおよびラットでの結腸内の注入および全身注射後に、脳でのc−fosの検出を含むin vivoでの実験に使用した。
プロテオミクス解析
タンパク質の発現プロファイルが、栄養によって誘導された細菌の増殖相により変動するかどうかを解析するために、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)を、対数期および定常期に対応する、5回目のMH培地の添加から10分後および2.3時間後に抽出した大腸菌K12の膜および細胞質分画について個別に行った。検出したタンパク質のスポットの合計数は2895(膜では1367個および細胞質では1528個)であった。
対数期および定常期の間の膜タンパク質の2D−PAGEの比較から、異なるように(少なくとも1.5倍)発現されたタンパク質20個が明らかとなった。これらのうち、17個のタンパク質は、対数期において発現の増加を示し、15個を質量分析により同定した。細胞質タンパク質の2D−PAGEの比較から、異なるように(少なくとも1.5倍)発現されたタンパク質20個が示された。膜タンパク質とは対照的に、細胞質タンパク質の大部分(19個)は、定常期において発現の増加を示した。フラゲリンに対応する1つのみのタンパク質スポットが、対数期において高い発現を有した。同定したタンパク質の大部分は、同化または異化の工程のいずれかに関与し、いずれの増殖相においても総合的な混合代謝プロファイルを示した。
in vitroにおける大腸菌タンパク質によるATPの産生
増殖相の間の細菌のプロテオ―ムの変化が、そのエネルギー抽出能力に影響を及ぼしうるかどうかを試験するために、対数期および定常期の大腸菌K12のタンパク質による栄養素からのATP産生をin vitroで試験した。本発明者らは、両方の増殖相由来のタンパク質が異なるエネルギー供給源からのATP産生を増加させることができることを見出した。ATPの濃度は、スクロース溶液と比較して、MH培地などのタンパク質含有混合エネルギー供給源を使用する場合ではより高かった。ATPの産生は、細菌タンパク質の濃度に伴い用量依存的に増加したが、対数期または定常期からのタンパク質のATP産生効果の間では、有意差は見られなかった。
in vitroにおける大腸菌によるClpBの産生
本発明者らは、この試験に使用されている、大腸菌ClpBの検出のための酵素結合免疫吸着法(ELISA)を開発および検証した。ClpBタンパク質の産生が細菌の増殖期の間で異なるかどうかを、4つの別々の大腸菌K12培養物で試験した。ウェスタンブロットは、すべてのタンパク質の調製物においてClpBに対応する96kDaのバンドを検出し、レベルは定常期の間増加した。これらの変化は、同じ細菌タンパク質の調製物においてClpBのELSAを使用してさらに確認されており、定常期においてClpBの濃度がほぼ倍化することが示された。
栄養素および大腸菌タンパク質の腸管への注入
本発明者らの栄養誘導性の大腸菌の増殖のin vitroモデルがin vivoでの腸内細菌の増殖の動態に関連するかどうかを検証するために、MH培地または水を、麻酔したラットの結腸に注入した。本発明者らは、水ではなく、MH培地の滴下が、腸における細菌の増殖を誘導し、対数増殖期が20分間持続し、これがin vitroでのデータと一致することを見出した。門脈で測定した血漿中のClpBレベルは、MH注入から30または60分後に有意差はなかった。しかしながら、血漿中ClpBの濃度は、糞便のClpB DNA含有量と正の相関を示した。
次に、大腸菌のプロテオ―ムの増殖依存性の変化が、腸において局所的に食欲制御の宿主の機構に影響を与えることができるかどうかを判定するために、別々の実験で、麻酔したラットに、0.1mg/kgの対数期または定常期由来の大腸菌タンパク質の、20分間の結腸の注入を行った。注入から20分後に測定した結腸粘膜におけるClpBの濃度は、定常期のタンパク質を投与したラットにおいてより高かったが、ClpBの血漿中のレベルは、対数期または定常期のいずれに由来する細菌タンパク質にも影響されなかった。宿主の食欲のシグナリングに及ぼす大腸菌タンパク質の効果が細菌の増殖相に依存し得るという本発明者の仮説と一致して、本発明者らは、定常期ではなく、対数期由来の大腸菌タンパク質の結腸への滴下がGLP−1の血漿中レベルを刺激したが、対照的に、PYYの血漿中レベルの増加が、対数期ではなく定常期由来のタンパク質の注入の後に検出されたことを見出した。
ラットにおける大腸菌タンパク質の急性投与後の食物摂取量および脳のc−fos
試験したすべてのラットおよびマウスにおいて、ClpBが血漿中に存在したため、血漿中の大腸菌タンパク質が、全身性作用を介して食欲に影響を及ぼす可能性があり、このような効果が、細菌の増殖相に関連するタンパク質で異なり得る可能性がある。一晩絶食させたラットでこの可能性を試験することにより、本発明者らは、定常期で抽出した大腸菌タンパク質の膜分画の単回腹腔内(I.P.)投与(0.1mg/kg体重)が、対照のグループと比較して再度摂食するまでの間、1時間および2時間食物摂取を減少させたことを見出した。対照的に、対数期で抽出した大腸菌タンパク質(0.1mg/kg体重、I.P.)の細胞質分画の投与は、再度摂食するまでの間、4時間食物摂取を増加させた。
大腸菌の総タンパク質が、増殖相に依存的に自発的な食物摂取量に影響し得るかどうかをさらに試験するため、およびARCなどの中心的な部位を活性化するために、自由に摂食するラットに、細菌タンパク質(0.1mg/kg体重、I.P.)を、消灯期が始まる前に注射した。注射後2時間にわたり食物摂取量を測定し、次にラットを、脳でのc−fosの発現の解析のため屠殺した。本発明者らは、定常期由来の細菌タンパク質を注射したラットが、対照よりも摂食が少ないが、食物摂取量は、対数期由来の細菌タンパク質の注射により有意に影響されるものではなかったことを見出した。
自由に摂食するラットに対する大腸菌タンパク質のI.P.注射の2時間後に、c−fosの発現を、視床下部のARCおよび腹内側核(VMN)、ならびにCeAにおいて、免疫組織化学により解析した。c−fos陽性細胞の数の増加が、定常期由来の細菌タンパク質を投与したマウスのARCおよびVMNで見いだされた。ARCにおいてc−fosを発現する細胞の大部分は、βエンドルフィン(対照、71.31±12.81%、大腸菌の対数期、73.56±10.45%、大腸菌の定常期、80.50±9.68%、ANOVA p=0.36)を含むものであり、すなわち食欲不振誘発性POMCニューロンとして同定された。よって、ARCにおいて残存するc−fosニューロンのパーセンテージは、グループ間で有意差がなかった(対照、28.69±12.81%、大腸菌の対数期、26.44±10.45%、大腸菌の定常期、19.5±9.68%、ANOVA p=0.36)。βエンドルフィン陽性細胞の総数は、グループ間で有意差がなかったが(対照、54.82±10.67個の細胞、大腸菌の対数期、66.03±11.43個の細胞、大腸菌の定常期、66.03±5.06個の細胞、ANOVA p=0.09)、活性化したβエンドルフィンニューロンの相対数は、対照および対数期タンパク質を投与したラットと比較して、定常期のタンパク質を投与したラットで増加した。さらに、活性化したβエンドルフィンニューロンの数は、食物摂取量と反比例した(ピアソン r=−0.57、p=0.018)。
CeAでは、c−fos陽性細胞の数は、他の2つのグループと比較して、定常期由来のタンパク質を注射したラットで増加した。CeAにおけるほぼすべてのc−fos陽性細胞の表現型が、CGRP発現ニューロンであると決定された(対照、100±0.01%、大腸菌の対数期、100±0.01%、大腸菌の定常期、100±0.01%、ANOVA p=0.92)。CeAにおけるCGRP陽性ニューロンの総数は、グループ間で類似しているが(対照、123.8±13.15個の細胞、大腸菌の対数期、118.3±25.59の細胞、大腸菌の定常期、126.1±6.64の細胞、ANOVA p=0.85)、c−fos活性化CGRPニューロンのパーセンテージは、定常期のタンパク質を投与したラットでのみ増加した。CGRPニューロンの活性化は、食物摂取量と反比例した(ピアソン r=−0.89、p=0.001)。
マウスにおける大腸菌タンパク質の長期間注射後の摂食パターンおよび視床下部性ニューロペプチド
細菌タンパク質が摂食パターンに影響を与えることができるかどうかを判定するために、大腸菌の総タンパク質の1日2回の注射(0.1mg/kg体重、I.P.)を、自由に摂食するマウスに1週間行った。注射後1日目は、対照と比較して、対数期ではなく定常期由来の細菌タンパク質を投与したマウスにおいて、有意に少ない体重および食物摂取量を特徴とした。毎日の食事量はグループ間で有意差はなかったが、注射の前日と比較したこの減少は、定常期のタンパク質を投与したマウスにおいて、1週間後に観察された。増加傾向が、定常期由来の細菌タンパク質を投与したマウスで観察されたが、食事の頻度はグループ間で有意差はなかった。3つのグループ間の総食物摂取量は、6日間の注射の間有意差はなかったが、明暗期に関して別々に解析すると、対数期のタンパク質を注射したマウスでは、点灯期の間食物摂取量が増加し、消灯期の間は減少したことが示された。対照的に、定常期のタンパク質を投与したマウスは、点灯期では全く効果を示さず、消灯期の食物摂取量が対照より少なかった。注射後1日目の間、満腹の比率は、定常期由来のタンパク質を投与したマウスで増加し、同じグループが、1週間後に減少傾向を示した。
6日間の細菌タンパク質の注射後に観察される摂食パターンの変化の根底にある分子の変化についての洞察を得るために、本発明者らは、食欲の制御に関与するいくつかのニューロペプチドの視床下部性mRNA発現レベルを解析した。本発明者らは、定常期のタンパク質を投与したマウスが、対照と比較して上昇した脳由来神経栄養因子脳由来神経栄養因子(BDNF)およびオレキシンの前駆体のmRNAレベルを示したこと、ならびにBDNFレベルの上昇を示すが、QRFPレベルが減少した対数期のタンパク質を注射したマウスと比較して、上昇した副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の前駆体mRNAレベルを示したことを見出した。
ClpBによる視床下部POMCニューロンの電気生理学的な活性化
定常期でアップレギュレートされる大腸菌のタンパク質のマーカーおよびα‐MSHの模倣体としてのClpBが、ARC POMCニューロンを活性化するかどうかを判定するために、ClpBの効果を、セルアタッチパッチクランプの電気生理学を使用して、POMC−eGFPマウス由来の脳の切片上で試験した。ClpB(1μM)をバスに適用すると、ARC POMCニューロン(n=7/13)の〜50%の活動電位の頻度を229±109%(基底値:2.02±0.78Hz対ClpB:3.82±1.36Hz)増加させた。一般的に、POMCニューロンは、ClpBの適用から少なくとも10分後まで基底の発火頻度に完全に戻ることはなかった。
論述
本発明者らの試験から、細菌タンパク質は、腸における栄養誘導性の細菌増殖及びその全身効果にそれぞれ関連する短期間および長期間の機構の両方を含む宿主の食欲の制御に、腸内細菌を生理的に関連させることができることを明らかにする。以下の主な結果は、この結論の裏付けとなる:1)定期的な栄養の供給が、in vivoでのデータと一致して、20分間持続する大腸菌の対数的な増殖を促進し、安定化する;2)定常期の大腸菌は、総細菌タンパク質含有量およびClpBの増加を含む異なるプロテオ―ムプロファイルを特徴とした;3)両方の増殖相由来の大腸菌タンパク質は、in vitroでのATP産生を用量依存的に刺激した;4)ClpBの血漿中レベルは、腸での栄養誘導性の細菌増殖後に変化しなかったが、腸内細菌叢におけるClpB DNAと相関した;5)対数期および定常期由来の大腸菌タンパク質の腸管注入は、それぞれ血漿中のGLP−1およびPYYを刺激した。6)大腸菌タンパク質の全身注射は、定常期由来のタンパク質によってのみ食物摂取量を有意に減少させ、食欲不振誘発性ARCおよびCeAニューロンにおけるc−fosの活性化を伴った。7)ClpBは、ARC POMCニューロンの発火頻度を刺激した。
定期的な栄養供給および細菌の増殖
ヒトの消化管でコロニー形成する幅広く様々な細菌のうち、大腸菌は、最も多い通性嫌気性菌であり、これを共生腸内細菌のモデル生物として使用することは正当である(Foucault et al., 2009)。本明細書において、本発明者らは、大腸菌が定期的な栄養供給の間に増殖の動態を変化させることが、20分間持続する即時型対数増殖期の後に定常期が続くサイクルにおいて、5回目の供給サイクルの後にもたらされることを見出した。次に、増殖周期が、次の栄養供給後でも同一に再現され、このことは、細菌の機構に内因性に設定されるペースメーカーの役割を果たすことができることを示唆している。栄養素の注入に応答する細菌増殖の同様の動態はラットの結腸で観察され、これは、本発明者らのin vitroでのデータが、たとえばヒトの通常の食事の摂取といったin vivoでの状況に関連し得ることの裏付けとなる。10 10 個の細菌数の増加は、それぞれの新たな供給後も安定したままであり、このことは、腸におけるタンパク質含有量の増加を含む対応する細菌バイオマスの安定した生成が、宿主にとっての食事誘導性の制御因子の役割を果たし得ることを示唆している。平均的なヒトの食事の期間が、定期的に栄養を供給される大腸菌の対数増殖の持続時間と類似である場合、宿主の満腹は、摂取した栄養と接触してから20分後に、定常期に達する腸内細菌により引き起こされ得ると推測される。しかしながら、消化管での細菌の含有量は、胃で10 個であり、結腸で10 12 個である。さらに、胃および小腸を介して摂取した栄養が通過するのに約2時間が必要であり、大腸を通過するには約10時間が必要である。このように、大部分の腸内細菌への栄養送達が遅れるため、栄養素の大量と直接接触する場合と比較すると、食事の間の細菌増殖は、摂取に対するパブロフ型の頭相反射により腸管内腔に放出された栄養素により開始される場合がある可能性がある。
増殖相の間の細菌のタンパク質発現および腸管の検知
定期的に栄養を供給される大腸菌の増殖動態は、宿主の食事および食事後の期間と関連し得ることから、本発明者らは、細菌タンパク質の発現が、腸内細菌および宿主の食欲の制御と潜在的に関連し得るかどうかを試験した。まず。本発明者らは、対数期対定常期の大腸菌のプロテオ―ムを比較した。この解析のため、対数期の最中、すなわち栄養供給から10分後、および、通常満腹感を特徴とする時間である、2時間後の定常期において、大腸菌タンパク質を抽出した。2つの増殖相の間で、異なるように発現されたタンパク質が少なくとも40個発見されたことは、これらが、単に、細菌増殖後にほぼ倍化したタンパク質含有量によって定量的に異なるだけでなく、定性的にも異なるものであったことが確認された。次に、宿主の食欲の制御に対する修正されたタンパク質の発現プロファイルの潜在的な関連性は、i)エネルギー基質を作製する細菌タンパク質の能力を比較することにより、ii)食欲制御経路に及ぼす細菌タンパク質の潜在的な直接の効果を決定することにより、試験されている。後者の潜在性は、近年の、α‐MSHの立体構造上のタンパク質の模倣体として大腸菌ClpBがプロテオミクスにより同定されたこと(Tennoune et al., 2014)によって裏付けられる。このデータは、食欲不振誘発性または食欲促進性ペプチドと相同なエピトープを提示する腸内細菌のタンパク質が、交差反応性の自己抗体の産生の原因であり得るという本発明者らの早期の仮説を検証したものである(Fetissov et al., 2008)。よって、このような細菌の模倣タンパク質の組み合わせが細菌の増殖相に関連するタンパク質の発現プロファイルに応じて直接食欲に影響し得ることを、考慮することができる。大腸菌の培養物および腸粘膜を解析することにより、本発明者らは、定常期に関連するClpBレベルの増加を見出した。よって、ClpBの増加は、栄養誘導性の大腸菌の増殖後の食欲不振誘発性経路の活性化および細菌タンパク質産生の増加に寄与し得る。重要な問題は、ClpBなどの細菌タンパク質が食欲調節経路に作用し得ることである。
細菌タンパク質は腸粘膜に存在するが(Haange et al., 2012)、それが腸の障壁を通過することは、十分には研究されてこなかった(Lim and Rowley, 1985)。理論的には、自発的かつ誘導された細菌が腸で溶解した後(Rice and Bayles, 2008)、細菌の成分は、腸神経系により調節される腸細胞での吸収および傍細胞の拡散により、粘膜の上皮障壁を通過することができる(Neunlist et al., 2012)。たとえば、グラム陰性細菌の溶解で放出されるリポ多糖(LPS)は、通常、健常なヒトおよびマウスの血漿に存在し、高脂肪の食事を消費した後に高い基底レベルを有する(Cani et al., 2007)。LPSの血漿中レベルはまた、食事の後に増加する(Harte et al., 2012)が、細菌タンパク質についてこのようなデータは存在しない。本明細書において、本発明者らは、血漿中ClpBレベルが、腸での細菌増殖の後、または細菌タンパク質の腸菅注入の後で、ラットにおいて安定したままであることを示す。これは、血漿中のClpB、および血漿に存在する最も可能性のある他の細菌タンパク質が、栄養誘導性の細菌の増殖により急激に影響されるものではなく、よって、脳に対する短期間の満腹のシグナリングに関与できないことを示す。
しかしながら、血漿中のClpBの濃度は、腸内細菌叢中のClpB DNAと相関しており、このことから、栄養による細菌増殖に関連するその変動とは長期間にわたって相対的に無関係であるべきClpB産生細菌数の数が、血漿中のClpBのレベルの長期間の維持の原因となる主な因子であり得ることが示唆される。この結論は、ClpBのELISAの検証で得られた本発明者らのデータによりさらに裏付けられており、大腸菌を強制経口投与により長期間投与したマウスでは血漿中のClpB濃度の増加を示すが、ClpB変異型大腸菌を投与したマウスでは増加を示さない。よって、ClpBを含む血漿に存在する腸内細菌は、腸内細菌の組成物を、エネルギー代謝の長期間の制御に関連させるように系統的に作用し得る可能性がある。
in vitroにおけるATP産生に及ぼす大腸菌タンパク質の効果
食物連鎖を介したエネルギーの変化は、すべての生物間の普遍的な連鎖を表す(Yun et al., 2006)。細菌および動物の両方における栄養の異化に由来するATPは、同化工程の主なエネルギー基質として作用する。動物は、ATPレベルが低い場合、食物摂取量の増加をもたらすアデノシン‐5´‐一リン酸−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性を介したATPの変化を検知することができ、またこの反対もあり得る(Dzamko and Steinberg, 2009)。よって本研究では、本発明者らは、対数期および定常期の大腸菌タンパク質がin vitroでATPを生成する能力を比較した。実際に、多くの同定されたタンパク質は、同化または異化の特性を示した。本発明者らは、大腸菌タンパク質がin vitroでATP産生を刺激できることを見出し、このことは、これらが腸での細菌の溶解後にATPの産生を触媒し続けることができることを示唆している。ATPを産生する能力の差は、対数期および定常期由来のタンパク質の間で見いだされなかったが、細菌タンパク質濃度に依存的なATP産生は、栄養誘導性の細菌増殖後の細菌タンパク質の含有量の増加によって、より多くのATP合成が起こるはずであることを示している。腸内細菌叢が、宿主の代謝のためのエネルギーを収集する効率の関連性は、肥満のヒトおよびラットを痩身のヒトおよびラットと比較することにより以前より確立されている(Turnbaugh et al., 2006)。本発明者らのデータは、大腸菌タンパク質がATPを生成できることを示すことによりこれらの結果をさらに実証している。また、食事誘導性の細菌増殖によって、腸菅のATPの増加が起こり、このことはエネルギーの利用および腸弛緩の管腔での検知に寄与するはずであることも示唆している(Glasgow et al., 1998)。
満腹ホルモンに及ぼす大腸菌タンパク質の腸管での効果
次に、本発明者は、腸の大腸菌タンパク質が、GLP−1およびPYYなどの腸の満腹ホルモンの全身の放出を刺激し得るかどうかを試験した(Adrian et al., 1985; Batterham et al., 2002; Beglinger and Degen, 2006; Flint et al., 1998)。実際に、両方のホルモンが、腸全体および結腸に豊富に存在する同じまたは別々の腸内分泌L細胞により産生されており(Eissele et al., 1992)、よってL細胞は、細菌タンパク質に直接曝露されている。本発明者らは、対数期由来のタンパク質によりGLP−1、および定常期由来のPYYの刺激を示す、GLP−1およびPYYの放出に及ぼす大腸菌細胞の効果が異なることを見出した。これらの結果は、栄養誘導性の細菌増殖と、GLP−1およびPYYの食事誘導性の放出の既知の動態との間のいくつかの類似性を指摘するものである。実際に、ヒトで示されているように、血漿中のGLP−1の急激なピークは、液体の食事の胃内注入の15分後に起こり、長期間持続して血漿中PYYの上昇は、食事から15〜30分後に始まる(Edwards et al., 1999; Gerspach et al., 2011)。GLP−1のより長い放出は、脂肪の摂取に関連するものであった(van der Klaauw et al., 2013)。よって、定期的に栄養を供給された腸内細菌の増殖動態は、一時的にGLP−1およびPYYの放出の動態に適合するものであり、これは、腸管での満腹の食事誘導性のシグナリングにおける腸内細菌の、特に大腸菌タンパク質の誘導性の役割を示唆するものである。GLP−1を刺激する対数期由来の大腸菌タンパク質の効果が異なることは、血糖制御におけるGLP−1のインクレチンの役割をおそらく反映し得る(Edwards et al., 1999; Steinert et al., 2014)。L細胞により発現される機能的なMC4Rが最近証明されたこと(Panaro et al., 2014)は、α‐MSH模倣性細菌タンパク質による潜在的な活性化のバックグラウンドを提供するものである。大腸菌の定常期の間のClpB産生の増加、および腸管粘膜におけるClpBレベルの増加は、血漿中PYYレベルの増加に関連しており、これにより、結腸におけるPYY産生L細胞の活性化におけるClpBの直接的な役割が示唆される。他方で、対数増殖期の間に潜在的にアップレギュレートされたこれまで同定されていない大腸菌タンパク質は、GLP‐1の分泌を優先的に刺激し得る。
食物摂取量および食欲を調節する脳の経路に及ぼす大腸菌タンパク質の全身的な効果
本明細書において、本発明者らは、空腹なラットまたは自由に摂食するラットおよび自由に摂食するマウスの末梢に大腸菌タンパク質を注射すると、大腸菌の増殖相に応じてその食物摂取量が変化することを示した。血漿中ClpBが栄養素の腸管注入により影響されないが、短期間安定であったことを考慮すると、細菌タンパク質の全身作用は、食欲に及ぼす長期間の制御作用に関連すると解釈すべきである。さらに、対数期の短い持続期間のため、長期間持続する定常期の間にアップレギュレートされた細菌タンパク質が血漿中で多くを占めて、よってそれらの全身投与は、生理的な状況をより良好に表すことができる。これらの実験に使用した大腸菌タンパク質の0.1mg/kgの濃度は、ヒトまたはげっ歯類での末梢の投与後のレプチンまたはPYYなどのペプチドホルモンの有効な満腹用量(satietogenic dose)と類似であった(Batterham et al., 2002; Halaas et al., 1995; Heymsfield et al., 1999)。
点灯期に再度摂食する間での空腹ラットにおける食物摂取量の増加が、対数期由来の細胞質タンパク質の投与後に観察され、定常期由来の膜タンパク質(の投与後では)減少が観察された。この実験から、同じ細菌由来の異なるタンパク質混合物が、その全身作用により食物摂取量を増加または減少させることができることが確認された。しかしながら、より生理的な状況では、消灯期に自由に摂食するラットにおける総大腸菌タンパク質の作用を試験することにより、定常期由来のタンパク質により誘導される食物摂取量の減少のみが観察された。
自由に摂食するマウスにおける反復注射の結果は、陰性的なエネルギー収支を促進する大腸菌タンパク質の役割をさらに裏付ける。実際に、細菌タンパク質の注射の初日は、食物摂取量および体重の減少を伴うものであり、これは満腹の比率の増加を特徴とする、定常期のタンパク質を投与したマウスで有意であった。これらマウスにおける食物摂取量はその後正常化したが、食事量の進行性の減少は摂食回数の増加を伴うものであり、これは、食物摂取量を維持する相補的な機構として最も可能性が高い(Meguid et al., 1998)。さらに、点灯期および消灯期の間で大腸菌タンパク質の作用が異なることが観察された。よって、視床下部における食欲を制御するニューロペプチドのmRNAの発現パターンは、食欲不振誘発性および食欲促進性経路の両方の活性化を伴う混合応答を示した。注目すべきは、大腸菌タンパク質を投与したマウスの両方のグループが、VMNにおけるMC4Rへの下流の食欲不振性誘発経路であるBDNF mRNAの類似の増加を示したことであった(Xu et al., 2003)。この経路は、両グループで観察された消灯期の間の食物摂取量の減少の根拠となり得、食欲促進性QRFP(Chartrel et al., 2003)およびNPY(Herzog, 2003)の低いレベルを示す対数期のタンパク質を注射したマウスではさらに顕著であった。対照的に、定常期由来の細菌タンパク質を投与したマウスは、CRHのmRNAのレベルの上昇を伴う亢進した食欲不振誘発性プロファイルを示し、MC4R発現PVNニューロンが関与する可能性が最も高い(Lu et al., 2003)。摂食回数を刺激するオレキシンAのmRNA前駆体の発現の増加と組み合わせたこれらの変化(Baird et al., 2009)は、6日間の注射後のこれらのマウスにおける、それぞれ食事量および満腹の比率の減少に寄与し得る。
定常期の間に産生された細菌タンパク質が鍵となる重要な食欲不振誘発性経路を活性化し得るとの本発明者らの仮説と一致して、本発明者らは、自由に摂食するラットにおいて、食欲不振誘発性ARC POMCニューロン、および満腹中枢として長く知られており、ARC POMCニューロンと相互接続しているVMNにおける、c−fos発現の増加を見出した(Sternson et al., 2005)。得られたc−fosパターンは、食物摂取の間の(Johnstone et al., 2006)、またはPYYもしくは膵臓のポリペプチドなどの満腹ホルモンにより誘導される(Batterham et al., 2002; Challis et al., 2004; Lin et al., 2009)食欲抑制(satietogenic)応答に類似する。相対的に少量(〜10%)のc−fos活性化POMCニューロンは、循環中の大腸菌タンパク質が、この視床下部性経路を介して作用する食欲および体重に及ぼす調節性の効果を有し得ることを示唆する。NPY/AgRPニューロンによるc−fosの活性化を決定することは実現可能ではなかったが、細菌タンパク質によるシグナリングへのこれらの寄与は排除することはできず、これらのニューロンも、MC3RおよびMC4Rを発現する(Mounien et al., 2005)。さらに、CeA CGRPニューロンにおけるc−fosのARC POMC活性化よりも強い活性化(〜40%)は、ARC POMCおよびNPY/AgRPニューロンから、およびおそらくは、孤束核などのここでは解析されていない他の食欲を制御する脳の領域から収束する下流の作用を示し得る。
最後に、細菌タンパク質によるARC POMCニューロンなどの食欲を制御する脳の部位の活性化が、これらの局所的な作用により引き起こされ得るかどうかを決定するために、本発明者らは、これらのニューロンへのClpBの適用が、ニューロンの電気的な活性を活性化できるかどうかを試験した。本発明者らの結果は、試験したニューロンの約半分が、その活動電位の頻度を増加させ、少なくとも10分間活性化したままであることを示した。ClpBの持続的な作用は、機能的なMC3RおよびMC4Rを発現するPOMCニューロンに及ぼすα‐MSHの作用と一致するものであり(Smith et al., 2007)、このことは、ClpBが、食欲抑制PYYおよびレプチンといくらか類似する視床下部性POMCニューロンの生理的活性剤であり得ることを示唆している(Batterham et al., 2002; Cowley et al., 2001)。しかしながら、本発明者らは、ClpBがPOMCニューロンを、直接または局所ネットワークを介して活性化することができたかどうかはわからなかった。
まとめると、これらのデータは、脳の食欲不振誘発性経路の活性化を介した負のエネルギー収支の促進における、ClpBなどの、発現が定常期に増加する全身に存在する大腸菌タンパク質の役割の裏付けとなる。また、大腸菌、およびおそらくは腸内細菌科由来の他の細菌の少量または多量をもたらす微生物叢の組成の変化は、それぞれ宿主のエネルギー収支に正または負に影響し得ることをも示唆している。
実施例2
1ケ月齢の雄性C57Bl6マウス(Janvier Laboratories)を、1週間動物施設に順化させ、上述のように維持した。マウスを以下の3つのグループ:(i)10 個の大腸菌K12細菌の強制経口投与を行うグループ;(ii)ClpB欠損大腸菌K12細菌の10 個の強制経口投与を行うグループ;(iii)いずれの処置も行っていない対照グループに分けた。ClpB変異菌株は、Bernd Bukau’s Laboratory(ZMBH, Heidelberg University, Heidelberg, Germany)で作製され、Dr Axel Mogkにより、対応する野生型(WT)大腸菌5と共に快く提供された。マウスを、BioDAQケージ(Research Diets)の中に個別に収容し、細菌を含むLB培地0.5mlを、消灯期前に毎日21日間、胃内に強制経口投与を行った。強制経口投与の初日は、ClpBタンパク質を発現しない細菌とは対照的に、WTの大腸菌を投与したマウスにおいて体重および食物摂取量の減少が付随して起こった(図1)。
参考文献
本願にわたり、様々な参照文献が、本発明が関連する分野の状態を説明している。これら参照文献の開示は、本開示の中で本明細書中参照として援用されている。
Figure 2018503597
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Claims (15)

  1. その必要がある対象の飽食を誘導する方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
  2. その必要がある対象の満腹を延長させる方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
  3. その必要がある対象の食事量を減少させる方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
  4. その必要がある対象の食物摂取量を減少させる方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
  5. その必要がある対象の体重増加を制御する方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
  6. その必要がある対象の体重減少を刺激する方法であって、ClpBタンパク質の有効量またはClpBタンパク質を発現する細菌の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
  7. 前記対象が肥満である、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法。
  8. 前記ClpBタンパク質が、配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法。
  9. 前記ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を、医薬組成物の形態で前記対象に投与する、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法。
  10. 前記ClpBタンパク質またはClpBタンパク質を発現する細菌を、食品組成物の形態で前記対象に投与する、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法。
  11. 前記ClpBタンパク質を発現する細菌が、プロバイオティック細菌株である、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法。
  12. 前記プロバイオティック細菌株が、食品グレードの細菌から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記プロバイオティック細菌株が、腸内細菌科の一員である、請求項11または12に記載の方法。
  14. 前記プロバイオティック細菌株を、食品組成物の形態で投与する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記食品組成物が少なくとも1つのプレバイオティックを含む、請求項14に記載の方法。
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