以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。なお、図1〜図5において、各工程と、各工程での主要な装置又はユニットには共通の符号を付す場合がある。特に断りがなければ、分液(又は二相分液)により生成したアセトアルデヒドを含む水相は、軽質相又は上相と同義に用い、分液(又は二相分液)により生成したヨウ化メチルを含む有機相は、重質相、ヨウ化メチル相又は下相と同義に用いる。抽出により生成する水相を抽出液(エクストラクト)と同義に用い、抽出により生成する有機相をラフィネートと同義に用いる。
蒸留塔に関し、用語「段数」とは、理論段数若しくは実段数を意味する。例えば、理論段1段は、段効率が50%の実段2段と同義である。蒸留塔の形態は、棚段(オールダーショウ)塔に限らず、充填塔であってもよく、蒸留塔の種類は特に制限されない。以下の説明において、単に用語「段数」と記載するとき、特に断りがない限り、棚段塔での実段数を意味する。充填塔において流体が流入/流出する位置(流入/流出位置)は、棚段塔の段の高さ位置に対応した位置を意味する。例えば、実段数50段の棚段塔の下から20段目の段は、充填塔において、下から20段/50段に相当する高さ位置(充填塔の充填層(又は充填床)の高さ「1」に対して「0.4」の高さ位置)を意味する。
図1に示す実施形態では、金属触媒としてのロジウム触媒、助触媒[ハロゲン化金属としてのヨウ化リチウム、及びヨウ化メチル]で構成された触媒系、並びに酢酸、酢酸メチル、有限(又は限定)量の水の存在下、メタノールと一酸化炭素とのカルボニル化反応により生成した反応混合物(又は液体反応媒体)から酢酸を製造する連続プロセス(又は製造装置)が示されている。
このプロセス(又は製造装置)は、メタノールのカルボニル化反応を行うための反応工程(反応系又は反応器)(1)と;生成酢酸を含む反応混合物(又は反応液)を、揮発相(又は低沸点成分)(2A)と低揮発相(又は高沸点成分)(2B)とに分離するためのフラッシュ蒸発工程(フラッシャー)(2)と;前記揮発相(2A)を、第1のオーバーヘッド(3A)と、サイドカット流としての酢酸流(3B)と、缶出液体流(高沸点成分)(3C)とに分離するための第1の蒸留工程(スプリッターカラム又は蒸留塔)(3)と;第1のオーバーヘッド(3A)を凝縮して二相に分液するための第1の分液工程(4)と;この分液工程(4)で分液した水相及び/又は有機相(ヨウ化メチルに富む重質相)を、第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)(上部流(5A)(5B))と、下部流又は底部流(5C)とに分離するための第2の蒸留工程(第2の蒸留塔)(5)と;第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)を二相に分液するための第2の分液工程(分離ユニット6a及び/又はホールドタンク6b並びにデカンタ6c)(6)と;この第2の分液工程(6)で分液した水相(軽質相)を、第3のオーバーヘッド流(7A)と、液体流(7B)とに分離する第3の蒸留工程(第3の蒸留塔)(7)と;第3のオーバーヘッド流(7A)を水抽出蒸留してオーバーヘッド流(8A)と缶出液体流(8B)とに分離する第4の蒸留工程(第4の蒸留塔)(8)とを含んでいる。
なお、前記方法は、これらの工程のうち、少なくとも第2の蒸留工程(5)及び第2の分液工程(6)を含んでいればよい。他の工程(例えば、第1の分液工程(4)、第3の蒸留工程(7)及び第4の蒸留工程(8))は必ずしも必要ではない。いくつかの実施形態において、前記方法は、第1の蒸留工程(3)と、分液工程(4)と、第2の蒸留工程(5)とを含んでいる。第2の蒸留工程(5)は単一の蒸留工程に限らず、複数の蒸留塔による複数の蒸留工程で形成してもよい。酢酸の製造のために、前記方法は、通常、反応工程(1)とフラッシュ蒸発工程(フラッシャー)(2)とを含んでいる。
以下に、図1に示すプロセスをより詳細に説明する。
(1)反応工程(反応器)
反応工程(反応器)(1)では、カルボニル化触媒系と水とを含む反応媒体の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応器に供給してメタノールをカルボニル化し、酢酸を生成する。
カルボニル化触媒系は、通常、金属触媒(コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒など)と、触媒安定化剤又は反応促進剤と、助触媒とを含んでいる。金属触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい金属触媒としては、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)が挙げられる。
金属触媒は、金属単体、金属酸化物(複合酸化物を含む)、金属水酸化物、金属ヨウ化物、カルボン酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、錯体などの形態でも使用できる。金属触媒は液相(又は反応液)中で可溶な形態(錯体などの形態)で使用するのが好ましい。ロジウム触媒としては、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI3、[RhI2(CO)4]−、[Rh(CO)2I2]−など)、ロジウムカルボニル錯体などが好ましい。金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して100〜5000ppm(重量基準、以下同じ)、好ましくは200〜3000ppm、さらに好ましくは300〜2000ppm、特に500〜1500ppm程度である。
触媒安定化剤又は反応促進剤としては、反応液中でヨウ素イオンを発生可能な金属ヨウ化物、例えば、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)が挙げられ、中でもヨウ化リチウムが好ましい。これらの助触媒又は促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒安定化剤又は反応促進剤の濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜25重量%、好ましくは2〜22重量%、さらに好ましくは3〜20重量%程度である。さらに、反応系でのヨウ化物イオンの濃度は、例えば、0.05〜2.5モル/リットル、好ましくは0.25〜1.5モル/リットル程度であってもよい。
前記助触媒としては、ヨウ化メチルが利用される。ヨウ化メチルの濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは6〜20重量%(例えば、8〜18重量%)程度である。
好ましいカルボニル化触媒系は、ロジウム触媒と、触媒安定剤としてのヨウ化金属(ヨウ化リチウム)及びヨウ化メチル助触媒とで構成できる。なお、前記反応器には、カルボニル化触媒系を含む触媒混合物(触媒液)及び水を供給してもよい。
反応媒体(又は液相)は、通常、生成した酢酸、生成した酢酸と原料メタノールとの反応により生成した酢酸メチル、及び水を含んでいる。酢酸は溶媒としても機能する。また、反応媒体(又は液相)は、通常、未反応の原料メタノールも含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応液全体の0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、0.5〜6重量%)程度の割合であってもよい。反応媒体中の水濃度は、低濃度であってもよく、反応液全体に対して、例えば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは0.8〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であり、1〜10重量%(例えば、2〜5重量%)程度であってもよい。
反応器中の一酸化炭素分圧は、例えば、2〜30気圧、好ましくは4〜15気圧程度であってもよい。後続の工程から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応系にリサイクルしてもよい。
前記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応により、水素が発生する。この水素は触媒活性を高める。そのため、前記反応器には、必要により水素を供給してもよい。また、プロセスから排出された気体成分(水素、一酸化炭素などを含む)を、後続の工程で、必要により精製/分離して反応系にリサイクルすることにより、水素を供給してもよい。反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.5〜250kPa(例えば、1〜200kPa)、好ましくは5〜150kPa、さらに好ましくは10〜100kPa(例えば、10〜50kPa)程度であってもよい。
カルボニル化反応温度は、例えば、150〜250℃、好ましくは160〜230℃、さらに好ましくは170〜220℃程度であってもよい。反応圧力(全反応器圧)は、副生成物の分圧を含めて、例えば、15〜40気圧程度であってもよい。
反応器内では、反応成分と金属触媒成分とを含む液相反応系と、一酸化炭素及び反応により生成した水素、メタン、二酸化炭素、並びに気化した低沸成分(ヨウ化メチル、生成した酢酸、酢酸メチルなど)などで構成された気相系とが平衡状態を形成しており、メタノールのカルボニル化反応が進行する。反応器(1)の塔頂から蒸気成分(ベントガス)を抜き出してもよく、蒸気成分(ベントガス)を吸収処理により一酸化炭素及び/又は水素を回収して反応器へリサイクルしてもよい。
反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い低沸成分又は低沸不純物(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、水、副反応生成物であるアセトアルデヒドなど)、及び酢酸よりも沸点の高い高沸成分又は高沸不純物[金属触媒成分(ロジウム触媒など)、触媒安定剤としてのヨウ化リチウム、プロピオン酸などのC3−12アルカンカルボン酸など]などが含まれる。さらに、アセトアルデヒドに由来の副生成物(アセトアルデヒドからの誘導体)も生成する。アセトアルデヒドからの誘導体としては、例えば、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;これらのアルドール縮合生成物;ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C2−12アルキルなどが挙げられる。また、副生成物としては、3−ヒドロキシアルカナール(3−ヒドロキシブタナールなど);蟻酸や、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸などのC3−12アルカンカルボン酸;ブチルアルコール、2−エチルブチルアルコールなどのC3−12アルキルアルコールなど);メタノール又は上記アルキルアルコールと酢酸又は前記カルボン酸とのエステル;メタノール及び/又は前記アルキルアルコールのエーテル類(ジメチルエーテルなどのジアルキルエーテル類):メタン及び炭素数2以上の炭化水素類(例えば、C2−12アルカン)なども挙げられる。これらの副生成物は、アセトアルデヒド濃度の2〜3乗に比例して副生する場合が多い。アセトアルデヒド及びアセトアルデヒド由来の副生物(例えば、アルデヒド類、ケトン類、アルドール縮合生成物など)は、過マンガン酸還元性物質(PRC類)を形成する。そのため、反応混合物及び/又はプロセス流から副生物の主たる成分であるアセトアルデヒドを分離して除去し、有用な成分(例えば、ヨウ化メチルなど)は、プロセス流から回収して有効に利用するのが好ましい。なお、ヨウ化メチルを含め、ヨウ化C2−12アルキルなどもPRC類に属するが、本発明の実施形態の方法では、ヨウ化メチルはPRC類には含めない。
本発明の一実施形態では、アセトアルデヒドを効率よく分離除去できるため、連続反応であっても、反応器のアセトアルデヒドの濃度を低減できる。アセトアルデヒド濃度の低減又はアセトアルデヒドの除去と相まって、アセトアルデヒド由来の副生成物の生成は著しく抑制できる。例えば、反応器におけるアセトアルデヒド濃度は、プロセス全体を通して、反応器内の液相全体の1000ppm以下(例えば、0又は検出限界〜700ppm)、好ましくは400ppm以下(例えば、5〜300ppm)、さらに好ましくは10〜250ppmであってもよい。
反応系での目的カルボン酸(酢酸)の空時収量は、例えば、5mol/Lh〜50mol/Lh、好ましくは8mol/Lh〜40mol/Lh、さらに好ましくは10mol/Lh〜30mol/Lh程度であってもよい。
なお、前記反応系は、発熱を伴う発熱反応系であり、除熱した凝縮成分のリサイクル、除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケットなど)などにより反応温度をコントロールしてもよい。また、反応熱の一部を除熱するため、反応器からの蒸気成分(ベントガス)を、コンデンサや熱変換器などにより冷却し、液体成分と気体成分とに分離し、液体成分及び/又は気体成分を反応器にリサイクルしてもよい。
(2)フラッシュ蒸発工程
フラッシュ蒸発工程(2)では、前記反応器1から反応混合物の一部を連続的に抜き取りつつ、供給ライン11を通じてフラッシャー(触媒分離塔)(2)に導入又は供給し、反応混合物をフラッシュ蒸発させ、生成酢酸、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、酢酸メチル、水などを含む揮発相(2A)と、ロジウム触媒及びヨウ化リチウムを含む低揮発相(2B)とに分離される。少なくとも第1の部分の揮発相(2A)は、供給ライン22を通じて、第1の蒸留工程(3)の蒸留塔に供給され、低揮発相(2B)は、リサイクルライン21を通じて、反応工程(1)の反応器にリサイクルされる。
第2の部分の揮発相(2A)は、ライン23のコンデンサC1で冷却して凝縮してもよい。得られた凝縮液はホールドタンクHTで貯留し、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。コンデンサC1からの冷却物(凝縮液及び/又は非凝縮成分)は、ライン26を通じて分液工程(4)に供給し、デカンタ(4)内で、第1の蒸留工程(スプリッターカラム)(3)からのオーバーヘッド(3A)とともに二相に分液してもよい。
(揮発相の凝縮)
第2の部分の揮発相(2A)は、凝縮することなく、直接的に又は分液工程(4)を介して間接的に第2の蒸留工程(5)に供給してもよく、1又は複数のコンデンサC1で冷却して凝縮させて二相(水相及び有機相)に分液し、分液した水相又は有機相(少なくとも水相)を、直接的又は分液工程(4)を介して間接的に、第2の蒸留工程(5)に供してもよい。例えば、第2の部分の揮発相(2A)は、必要により上記のように凝縮して(さらには必要であれば分液し)、分液工程(4)での凝縮液と合流させて、第2の蒸留工程(5)に供してもよい。
必要であれば、低揮発相(2B)から、単一又は複数の工程で触媒成分(金属触媒成分)を分離し、反応工程(1)にリサイクルしてもよい。
フラッシュ蒸発としては、反応混合物を加熱して減圧する恒温フラッシュ、反応混合物を加熱することなく減圧する断熱フラッシュ、若しくはこれらのフラッシュ条件を組み合わせたフラッシュなどが挙げられる。これらのフラッシュ蒸発により、反応混合物を蒸気成分と液体成分とに分離してもよい。フラッシュ蒸発は、例えば、反応混合物の温度80〜200℃程度、圧力(絶対圧力)50〜1000kPa(例えば、100〜1000kPa)、好ましくは100〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPa程度で行うことができる。
(3)第1の蒸留工程(スプリッターカラム)
第1の蒸留工程(スプリッターカラム)(3)では、前記揮発相(2A)を、塔頂又は塔の上段部から留出ライン32を通じて留出する第1のオーバーヘッド(塔頂ガス、低沸点流分又は低沸点成分)(3A)と、ライン38を通じてサイドカットされ、主に酢酸を含む酢酸流(3B)と、塔底又は塔の下段部から缶出ライン31を通じて流出する缶出液体流(高沸点流分又は高沸点成分)(3C)とに分離している。なお、第1のオーバーヘッド流又はオーバーヘッド(3A)の割合は、揮発相(2A)全体の35〜50重量%程度であってもよい。
第1のオーバーヘッド流(3A)は、第1の混合物(3A)に対応し、少なくとも1つの過マンガン酸還元性物質(PRC類)、ヨウ化メチル及び水を含んでいる。PRC類は、少なくとも副生したアセトアルデヒドを含んでいる。第1のオーバーヘッド流(3A)は、通常、酢酸メチルを含んでおり、さらに、酢酸、メタノール、水、ジメチルエーテル、アセトアルデヒド由来の副生成物(クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類、ヨウ化C2−12アルキル、C3−12アルカンカルボン酸などのアセトアルデヒドからの誘導体、C2−12アルカン)などを含んでいる場合が多い。
酢酸流又はサイドカット流(3B)は、脱水、又は高沸点成分などの不純物を除去するため、さらに蒸留塔(図示せず)などによる精製工程に供給され、精製された高純度酢酸が生成する。液体流(3C)は、通常、少なくとも水及び酢酸を含んでおり、さらにメタノール、プロピオン酸などを含んでいる場合が多い。液体流(3C)には、飛沫同伴により金属触媒成分が混入している場合がある。液体流(3C)は、ライン31を通じて排出してもよく、液体流(3C)の一部又は全部は、ライン90を通じて反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。
本発明の一実施形態では、前記方法は、少なくとも1つのPRC類、ヨウ化メチル及び水を含む第1の混合物又はオーバーヘッド流に適用できる。第1のオーバーヘッド(3A)はガス状の形態で第2の蒸留工程(5)に供してもよい。好ましい態様では、第1の混合物はさらに酢酸メチルを含んでいる。本発明の一実施形態では、前記方法は、少なくともヨウ化メチル、特に少なくともヨウ化メチル及びPRC類の双方の濃度が高い第1の混合物又はオーバーヘッド流(3A)に有効に適用される。なお、第1の混合物又はオーバーヘッド流(3A)では、揮発相(2A)に対して水濃度が濃縮又は増加していてもよい。そのため、図1に示すように、所定の又は先行する工程又は単位操作(蒸留工程(3)、分液工程(4)など)により、ヨウ化メチル、特にヨウ化メチル及びPRC類の双方が濃縮された第1の混合物(3A)を生成させている。この実施形態では、分液工程(4)で凝縮して二相分液し、分液した有機相及び/又は水相を第2の蒸留工程(5)に供している。
第1の蒸留工程(3)の蒸留塔(スプリッターカラム)の塔内温度は、その塔内圧力に依存する。常圧(1気圧=約0.1MPa)の塔内圧力において、蒸留塔の塔頂温度は、例えば、20〜100℃(例えば、30〜80℃)、好ましくは40〜70℃(例えば、50〜60℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、40〜120℃(例えば、50〜100℃)、好ましくは60〜90℃(例えば、70〜85℃)程度であってもよく、蒸留塔の圧力は、絶対圧力で、例えば、0.1〜0.5MPa、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段数は、例えば、2〜100段(例えば、5〜70段)、好ましくは7〜50段(例えば、10〜30段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、全還流(全還流は、蒸留塔塔頂の凝縮液を全て蒸留塔の塔頂にリサイクルすることを意味する)、若しくは、例えば、1〜5000(例えば、10〜4000)、好ましくは100〜3000(例えば、500〜2000)程度であってもよい。
(4)凝縮/分液工程
第1の蒸留工程(スプリッターカラム又は蒸留塔)(3)からの第1のオーバーヘッド(3A)は、留出ライン32のコンデンサC2で冷却・凝縮され、デカンタ(デカンタ装置、貯蔵器)(4)内で、アセトアルデヒドに富む水相と、ヨウ化メチルに富む有機相との二相に分液可能である。凝縮液(水相及び/又は有機相)の一部は、還流ライン42(42a,42b)によりスプリッターカラム(3)に還流される。少なくとも一部の水相は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給され、少なくとも一部の有機相はライン41を通じて反応工程(1)にリサイクルされる。図示する例では、水相の一部を還流ライン42bによりスプリッターカラム(3)に還流するとともに、水相の残りを供給ライン43bを通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給し、有機相の第1の部分を還流ライン42aによりスプリッターカラム(3)に還流し、有機相の第2の部分を供給ライン44を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給し、有機相の残部をライン41を通じて反応工程(1)にリサイクルしている。
なお、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔には、上部流(5A)(5B)が分液可能である限り、少なくとも一部の水相(又は全部の水相)を供給してもよく、少なくとも一部の有機相(又は全部の有機相)を供給してもよく、前記有機相と水相との混合物を供給してもよい。好ましい態様では、少なくとも一部の有機相(ヨウ化メチルに富む有機相)を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給する場合が多い。少なくとも一部の水相を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給してもよい。
凝縮液を一時的にホールド又は貯蔵して二相に分液するための分液工程(デカンタ)(4)に加えて、必要であれば、デカンタ(4)の凝縮液(分液した下相又は上相)を一時的に貯蔵する(又は滞留させる)ためのバッファタンクを利用し、プロセス流の流量変動などを抑制してもよい。
凝縮液(並びに水相及び有機相)の温度は、例えば、20〜110℃(例えば、25〜90℃)、好ましくは30〜80℃(例えば、35〜70℃)程度であってもよい。
オーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)は、蒸留により、分液可能な上部流(5A)(5B)を生成できればよい。第1の混合物(3A)は二相に分液可能であってもよい。また、第1の混合物(3A)が二相に分液可能であるとき、少なくとも一部の有機相、少なくとも一部の水相、若しくは第1の混合物(前記有機相及び水相)を含むフィード液を蒸留工程(5)に供給できる。そのため、第1の混合物(3A)中のヨウ化メチル、各PRC類(代表的なPRC類の化合物はアセトアルデヒドである)、水などの濃度は広い範囲から選択できる。
以下に、プロセス流の組成に関し、代表的な成分(アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸、水及びジメチルエーテル)の濃度について記載するが、これらのプロセス流中には、後述するように、不可避的に混入する他の成分(不純物を含む)も含まれている。プロセス流としては、第1の混合物(3A)とその分液相、第2のオーバーヘッド流(5A)、サイドカット流(5B)とその分液相、オーバーヘッド流(7A)(8A)又はそれらの凝縮液、缶出液体流(7B)(8B)などが挙げられる。なお、本明細書において、成分割合について、各プロセス流(又は各相)の総量は不純物も含め、重量基準で100重量%である。
第1の混合物(3A)は、下記の分液形態などに応じて、代表的な成分を広い濃度範囲で含んでいてもよく、例えば、アセトアルデヒドを10ppm〜30重量%(例えば、100ppm〜25重量%、好ましくは500ppm〜20重量%)、ヨウ化メチルを0.1〜90重量%(例えば、1〜85重量%、好ましくは3〜70重量%)、水を0.1〜90重量%(例えば、0.5〜80重量%、好ましくは1〜70重量%)程度の濃度で含んでいてもよい。また、第1の混合物は、酢酸メチルを1〜30重量%(例えば、3〜25重量%、好ましくは5〜20重量%)、酢酸を0〜60重量%(例えば、0.3〜40重量%、好ましくは0.5〜35重量%)、ジメチルエーテルを0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.5重量%、好ましくは10ppm〜0.2重量%)程度の濃度で含んでいてもよい。
第1の混合物(3A)(分液しない均一液又は水相と有機相との混合液)のアセトアルデヒド濃度は、例えば、10ppm〜10重量%(例えば、100ppm〜5重量%)、好ましくは500ppm〜1重量%(例えば、0.1〜0.5重量%)程度であってもよい。また、本発明の一実施形態では、少量であってもPRC類(アセトアルデヒドなど)を有効に分離できるため、第1の混合物(3A)中の各PRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、100〜5000ppm(例えば、500〜3000ppm)、通常、750〜2500ppm(例えば、1000〜2000ppm)程度であってもよい。第1の混合物(3A)中のヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜85重量%(例えば、25〜80重量%)、好ましくは40〜75重量%(例えば、50〜70重量%)程度であってもよい。第1の混合物(3A)中の酢酸メチル濃度は、例えば、0〜30重量%(例えば、0.1〜25重量%)、好ましくは1〜20重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜17重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。第1の混合物(3A)の酢酸濃度は、例えば、0〜12重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく;1〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよい。第1の混合物(3A)中の水濃度は、例えば、1重量%以上(例えば、5〜87重量%)、好ましくは10重量%以上(例えば、15〜85重量%)、さらに好ましくは20重量%以上(例えば、30〜83重量%)であってもよく;5〜50重量%(例えば、10〜40重量%)、好ましくは15〜35重量%(例えば、17〜30重量%)程度であってもよい。第1の混合物(3A)中のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.5重量%)、好ましくは5ppm〜0.3重量%(例えば、10〜500ppm)程度であってもよい。
オーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)が分液している(又は有機相と水相とを形成している)とき、有機相(ライン41,42a、44)のアセトアルデヒド濃度は、例えば、1ppm〜10重量%(例えば、100ppm〜5重量%)、好ましくは300ppm〜1重量%(例えば、500ppm〜0.5重量%)程度であってもよい。有機相のヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜95重量%(例えば、30〜93重量%)、好ましくは50〜90重量%(例えば、70〜90重量%)程度であってもよく;例えば、10重量%以上(例えば、15〜90重量%)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜90重量%)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、30〜80重量%)、特に40〜70重量%(例えば、50〜65重量%)程度であってもよい。有機相の酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜16重量%)程度であってもよい。第1の混合物(3A)の有機相の酢酸濃度は、例えば、0〜10重量%(例えば、0.1〜7重量%)、好ましくは0.3〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよい。有機相の水濃度は、例えば、0〜50重量%(例えば、0.01〜40重量%)、好ましくは0.1〜30重量%(例えば、0.2〜20重量%)、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよく;0〜5重量%(例えば、0.1〜3重量%)、好ましくは0.3〜2重量%(例えば、0.5〜1.5重量%)程度であってもよい。有機相のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.5重量%)、好ましくは5ppm〜0.3重量%(例えば、10ppm〜0.1重量%)程度であってもよい。
オーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)が分液している(又は有機相と水相とを形成している)とき、水相(ライン43a,43b)のアセトアルデヒド濃度は、例えば、500ppm〜30重量%(例えば、1000ppm〜25重量%)、好ましくは2000ppm〜20重量%(例えば、3000ppm〜15重量%)程度であってもよい。水相のヨウ化メチル濃度は、例えば、0.1〜30重量%(例えば、1〜25重量%)、好ましくは3〜20重量%(例えば、5〜15重量%)程度であってもよく;1.5重量%以上(例えば、2〜50重量%)、好ましくは2重量%以上(例えば、3〜40重量%)、さらに好ましくは4重量%以上(例えば、5〜30重量%)であってもよい。水相の酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜15重量%)程度であってもよい。水相の酢酸濃度は、例えば、5〜60重量%(例えば、10〜50重量%)、好ましくは20〜40重量%(例えば、25〜35重量%)程度であってもよい。水相の水濃度は、例えば、10〜90重量%(例えば、25〜80重量%)、好ましくは30〜75重量%(例えば、40〜70重量%)程度であってもよい。水相のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.8重量%)、好ましくは5ppm〜0.5重量%(例えば、10〜2000ppm)程度であってもよい。
なお、第1の混合物が分液しない均一液又は水相と有機相との混合液であるとき、均一液又は混合液の各成分の濃度は、通常、前記有機相と水相とでの対応する各成分の濃度の範囲内にある。第1の混合物が分液していない場合、若しくは有機相と水相との混合物の場合は、第1の混合物中の各成分の濃度は、両相の対応する成分の最大及び最小の範囲内の濃度である。
酢酸流又はサイドカット流(3B)の各PRC類(代表的には、アセトアルデヒド)の濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0〜1000ppm)、好ましくは0〜500ppm(例えば、1〜100ppm)、さらに好ましくは0〜50ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。酢酸流(3B)のヨウ化メチル濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜7重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。酢酸流(3B)の酢酸メチル濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。酢酸流(3B)の水濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよい。酢酸流(3B)のジメチルエーテル濃度は、0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.8重量%)、好ましくは5ppm〜0.5重量%(例えば、10〜2000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。酢酸流又はサイドカット流(3B)において、これらの成分及び不可避的な混入成分(不純物又は副生物を含む)の残余を酢酸が占めている。酢酸流(3B)の酢酸濃度は、例えば、87〜99重量%(例えば、88〜98重量%)、好ましくは90〜97重量%(例えば、90〜95重量%)程度であってもよい。
缶出液体流(高沸点流分又は高沸点成分)(3C)(ライン31)の各PRC類(代表的には、アセトアルデヒド)の濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0〜1000ppm)、好ましくは0〜500ppm(例えば、1〜100ppm)、さらに好ましくは0〜50ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。缶出液体流(3C)のヨウ化メチル濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.01〜10重量%)、好ましくは0.1〜8重量%(例えば、0.2〜5重量%)、さらに好ましくは0.5〜3重量%程度であってもよい。缶出液体流(3C)の酢酸メチル濃度及び水の濃度は、それぞれ、例えば、0〜15重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.3〜8重量%(例えば、0.5〜5重量%)、さらに好ましくは0.7〜3重量%(例えば、1〜2重量%)程度であってもよい。缶出液体流(3C)の酢酸濃度は、例えば、60〜99重量%(例えば、70〜99重量%)、好ましくは80〜98重量%(例えば、85〜98重量%)、さらに好ましくは90〜98重量%程度であってもよい。缶出液体流(3C)のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜1000ppm(例えば、0〜100ppm)、好ましくは0〜50ppm(例えば、0〜10ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。
(5)第2の蒸留工程(蒸留塔)
図1に示す実施形態では、供給ライン43b及び/又は44を通じて供給される第1のオーバーヘッド流(3A)(図示する実施形態では、分液工程(4)からの凝縮液)を、水を供給(又は添加)することなく、第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)で蒸留(例えば、共沸蒸留)する。第1のオーバーヘッド流(3A)を蒸留しつつ、第1のオーバーヘッド流(3A)中の水の一部を蒸留塔(5)への供給口よりも上部に移行又は上昇させて、水分の移行量又は分配量が増加した第2の混合物(例えば、凝縮により二相に分液可能な第2の混合物)を形成する。この第2の混合物を第2のオーバーヘッド流(5A)として抜き取るとともに、水分の移行量が低減した下部流又は底部流(5C)を供給口よりも下部から抜き取っている。すなわち、第1のオーバーヘッド流(3A)中の水を、下部流又は底部流(5C)よりも上部流としての第2のオーバーヘッド流(5A)に優位に移行させている。このような分配蒸留では、蒸留塔(5)への第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)のPRC類(特に、アセトアルデヒド)の濃度に比べて、著しく高いPRC類(特に、アセトアルデヒド)濃度を有する第2のオーバーヘッド流(5A)を生成できる。この第2のオーバーヘッド流(5A)を凝縮させて二相に分離することにより、PRC類がさらに有利に濃縮された水相を形成できる。
第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)での蒸留により、通常よりも水が優位に移行又は分配される第2の混合物(5A)と、通常よりも水が劣位に移行又は分配される下部流又は底部流(5C)とが形成される。
水含有量が増加した第2の混合物は、前記上部流として抜き取られる。第2の混合物は、オーバーヘッド流(5A)に限定されない。図1に点線で示すように、第2の混合物は、ライン63を通じてサイドカット流(5B)として抜き取ってもよい。すなわち、蒸留塔内で形成される第2の混合物の高さレベル(又は位置)に応じて、第2の混合物をサイドカット流(5B)として抜き取っても、第1の混合物(3A)の水濃度、量よりも下部流又は底部流(5C)の水濃度、量の方が濃度、量を低減できる。そのため、第2の混合物は、二相分液によりPRC類が有利に濃縮された水相を形成できる。第2の混合物は、オーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)の双方として抜き取ってもよい。
第2の混合物は、水を含む共沸組成の混合物(例えば、凝縮により二相に分液可能な共沸混合物)を形成してもよい。共沸混合物を形成すると、混合物において本来の(当初の)気液平衡での水含有量よりも、第2の混合物(5A)(5B)への水の分配量(移行量)を有効に増加でき、下部流又は底部流(5C)への水の分配量(移行量)を有効に低減できる。そのため、共沸混合物(第2の混合物)を上部流(オーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B))として抜き取り、抜き取った混合物を凝縮して二相に分液することにより、PRC類が有利に濃縮された水相を得ることができる。
第1の混合物(3A)の蒸留により、第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)の供給口よりも上部にPRC類及びヨウ化メチルの濃縮域を形成するとともに、第1の混合物(3A)中の少なくとも一部の水を前記濃縮域に上昇させ;この濃縮域の流体(第2の混合物)を上部流(5A)(5B)(すなわち、オーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B))として抜き取ってもよい。この態様では、蒸留塔(5)内で上昇する水分をオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)として蒸留塔(5)から抜き取ることにより、水分を蒸留塔(5)内で降下させることなく分離(又は除去)できる。抜き取ったオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)を分液することにより、水分(又は水相)を分離できる。すなわち、オーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)を単に抜き取り、分液した水相を蒸留塔(5)内に還流することなく(又は水相の一部を還流させ)、全部若しくは殆どの水相を系外に除去することにより、蒸留塔(5)内での水分の降下を規制(又は抑制)できる。第1の混合物(3A)は、前記濃縮域への気化又は蒸発成分(第1の混合物の気化又は蒸発成分)の上昇を許容しつつ、濃縮域からの降下液(液化成分)の降下を規制(又は抑制)可能な手段(を備えた蒸留塔で蒸留してもよい。このような手段としては、例えば、下記のチムニートレイなどのトレイ又は受け部が挙げられる。チムニートレイなどのトレイ又は受け部からは、サイドカット流(5B)の全量を抜き取ってもよい。
第2の蒸留塔(5)に対する第1の混合物又はオーバーヘッド流(3A)(図示する実施形態では、分液工程(4)からの有機相及び/又は水相)の仕込み位置(供給口又は供給段若しくはトレイ)は、蒸留塔の全段数を100段とし、ボトムを「0」段としたとき、蒸留塔の下から1〜50段(例えば、3〜45段)、好ましくは4〜40段(例えば、5〜35段)程度であってもよい。例えば、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、第1の混合物(3A)の仕込段は、蒸留塔の下から1〜43段、好ましくは2〜40段、さらに好ましくは4〜30段、また5〜20段、6〜10段程度であってもよい。
第2の蒸留工程(5)での蒸留により、第1の混合物又はオーバーヘッド流(3A)中の水分の上部流(5A)及び/又は(5B)への移行量又は分配量は、例えば、1重量%以上(例えば、3〜85重量%)、好ましくは5重量%以上(例えば、5〜80重量%)、さらに好ましくは10重量%以上(例えば、15〜75重量%)、特に30重量%以上(例えば、30〜70重量%)程度であってもよく、50重量%以上(例えば、50〜80重量%)程度であってもよい。第1の混合物又はオーバーヘッド流(3A)中の水分の下部流又は底部流(5C)への移行量又は分配量は、99重量%以下(例えば、15〜97重量%)、好ましくは95重量%以下(例えば、20〜95重量%)、さらに好ましくは90重量%以下(例えば、25〜85重量%)、特に70重量%以下(例えば、30〜70重量%)程度であってもよく、50重量%以下(例えば、20〜50重量%)程度であってもよい。このように、水分を上部流(5A)(5B)に優位に移行又は分配できるため、第1の混合物(3A)中の水分量に対して、水分量(絶対量)が低減した下部流又は底部流(5C)と、水分量(絶対量)又は水濃度が増加した上部流(5A)(5B)とを生成できる。第2の蒸留塔(5)内で形成された第2の混合物(又は共沸混合物)を上部流(5A)(5B)として抜き取ることにより、二相(有機相及び水相)を形成可能である。例えば、有機相に対する溶解度を超える水濃度の共沸混合物は、二相分離して、水相中にはPRC類(特に、アセトアルデヒド)が選択的に含有される。そのため、水相にPRC類を有利に濃縮でき、水相を系外に除去するだけで、水を新たに添加して水抽出することなく、効率的にPRC類(特に、アセトアルデヒド)を除去できる。
第1の混合物(3A)の蒸留(又は共沸蒸留)により下部流又は底部流(5C)中の水濃度が低下すると、下部流又は底部流(5C)では水との親和性の高いアセトアルデヒドの濃度がさらに低下する。その結果、下部流又は底部流(5C)中のアセトアルデヒド濃度を低減でき、上部流(5A)(5B)からのアセトアルデヒド分離効率が首尾よく向上する。このような効果は、従来技術にはない効果である。
前記第1の混合物(3A)の蒸留により、ヨウ化メチル(MeI)に対する水(H2O)の割合(H2O/MeI)は、第1の混合物(3A)よりも、下部流又は底部流(5C)で小さく、第2の混合物又は上部流(5A)(5B)で高くてもよい。第1の混合物又は第1のオーバーヘッド流(3A)での重量割合H2O/MeIは、例えば、0.0001〜10000、好ましくは0.001〜1000、さらに好ましくは0.005〜500程度であってもよく、0.01〜100(例えば、0.05〜50)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)での重量割合H2O/MeIは、例えば、0.00005〜5000、好ましくは0.0005〜5000、さらに好ましくは0.01〜2500程度であってもよく、0.005〜500(例えば、0.1〜250)程度であってもよい。第2の混合物又は上部流(5A)(5B)での重量割合H2O/MeIは、0.0002〜5000、好ましくは0.002〜500、さらに好ましくは0.01〜250程度であってもよく、0.05〜50(例えば、0.1〜25)程度であってもよい。
前記分液可能な第2の混合物(例えば、共沸混合物)は、第1の混合物又はオーバーヘッド流(3A)中の成分濃度(アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、酢酸などの各濃度)及び蒸留条件をコントロールすることにより形成できる。すなわち、アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、酢酸及び他の微量不純物成分の蒸留条件(例えば、共沸条件)は、それぞれの成分の濃度や還流量、理論段数などの蒸留条件を調整することにより達成できる。理論段数が大きすぎたり、還流量が多すぎると、塔頂でのアセトアルデヒド濃度が高くなりすぎて、塔頂で水との共沸組成が形成されなくなり、この共沸組成が供給口(仕込段)と塔頂段との間で形成され、蒸留塔の塔頂付近の水濃度は極端に低下してしまい、計算で導き出されるほどの高濃度のアセトアルデヒド濃縮は起こらない。この点、上記に説明される蒸留は、通常の蒸留操作と異なる。
一方、水濃度が低下すると、アセトアルデヒドの分離効率が低下する。すなわち、塔頂ではなく、塔の中段付近の排出口(又は系外への抜き取り口)のない箇所で水濃度が高くなると、その箇所でアセトアルデヒドが高濃度に濃縮してしまい、アセトアルデヒドの蒸気圧が低下して、蒸発しにくくなる。そのため、中段付近より上段部にアセトアルデヒドが移動(濃縮)し難くなり、塔頂にアセトアルデヒドが効率よく濃縮されなくなる(理論段数が大きく、還流量が多い割にはアセトアルデヒドの濃縮率(又は割合)が上がりにくくなる)。このような現象は、先行技術又は特許文献に記載の水抽出蒸留にも当てはまる。
逆に、アセトアルデヒド(AD)は水との親和性が強いため、分配蒸留により、水を供給口(仕込段)よりも上方に上昇又は移行させ、下部流又は底部流(缶出流)中の水濃度を第1の混合物(3A)中の水濃度よりも低減した条件下で、アセトアルデヒド(AD)を容易に濃縮して分離できる。この濃縮又は分離は、アセトアルデヒド(AD)を分離するのに必要な通常の理論段数や還流量を利用しなくても達成できる。また、蒸留後、上部流(5A)(5B)に十分な水が共存すると、ヨウ化メチル(MeI)相と水相とに二相分離するため、分液した水相を除去すれば、水相に溶解したアセトアルデヒド(AD)も自動的に除去可能である。そのため、従来技術のように、わざわざヨウ化メチル(MeI)中に濃縮したアセトアルデヒド(AD)を取り出した後、別途水抽出したり、水をアセトアルデヒド(AD)濃縮塔に仕込んで水抽出蒸留する必要がなく、プロセス条件を簡便化できる。
なお、アセトアルデヒド(AD)濃度が高すぎると、分配蒸留又は共沸蒸留の条件を満たさない。他の成分の組成が変化しても、分配蒸留又は共沸蒸留の条件から外れる場合がある。そのため、理論段数や還流量、仕込組成などを調整することにより、分配蒸留又は共沸蒸留の条件を最適にすべきである。理論段数は、塔頂からの留出物(オーバーヘッド)を抜き取ることのほか、塔頂より下の段にサイドカット段を設けることにより調整できる。還流量は塔底のリボイラー負荷を変更することにより調整できる。仕込液(第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A))の組成は、デカンタ4の有機相と水相との混合割合により調整できる。水相の仕込み率を多くすると、蒸留塔内での水の上昇量(分配量又は共沸量)も多くなるため、上部流(5A)(5B)からの水相量も多くなり、アセトアルデヒドの除去量を増大できる。
分配蒸留又は共沸蒸留において、第2の混合物をオーバーヘッド流(5A)として抜き取る場合は、蒸留塔の塔頂よりも下の供給口(仕込み段)から水を仕込んで分配又は共沸させてもよい。第2の混合物をサイドカット流(5B)として抜き取る場合、抜き取り口(サイドカット段)よりも下の供給口(仕込み段)から水を仕込んで分配又は共沸させてもよい。
第2の蒸留工程(5)の蒸留塔の塔内温度は、その塔内圧力に依存する。常圧の塔内圧力において、蒸留塔の塔頂温度は、例えば、15〜120℃(例えば、18〜100℃)、好ましくは20〜90℃(例えば、20〜80℃)、さらに好ましくは20〜70℃(例えば、25〜70℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、35〜150℃(好ましくは40〜120℃)程度であってもよく、蒸留塔の塔頂圧力(絶対圧力)は、例えば、0.1〜0.5MPa程度であってもよい。第2の蒸留工程(5)において、他の蒸留条件(蒸留塔の理論段数、環流比など)は、前記第1の蒸留工程(3)での条件と同様であってもよい。
第2の混合物(例えば、共沸混合物)の組成は、図1に示すプロセスでは、第2のオーバーヘッド流(5A)(第2の混合物が水相と有機相に分液している場合はその混合液;ライン53の混合液,ライン61の流分とライン62の流分とを合わせた混合液)の組成に対応していてもよい。
第2の混合物又は濃縮域(アルデヒドが濃縮される領域)(蒸留塔(5)の仕込み位置からオーバーヘッド抜き取り口に至る間の領域に形成される濃縮域の流体又は流分)のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、PRC類が水と共沸可能な濃度、例えば、90重量%以下(例えば、80重量%以下)、好ましくは70重量%以下(例えば、60重量%以下)、さらに好ましくは50重量%以下(例えば、40重量%以下)程度であってもよく、30重量%以下、好ましくは28重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下(例えば、24重量%以下)であってもよい。
第2のオーバーヘッド流(5A)(このオーバーヘッド流が水相と有機相に分液している場合はその混合液;ライン53の混合液,ライン61の流分とライン62の流分とを合わせた混合液)及びサイドカット流(5B)(サイドカット流が水相と有機相に分液している場合はその混合液;ライン63の混合液)のそれぞれにおける各PRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、例えば、0.5〜40重量%(例えば、1〜20重量%)、好ましくは2〜10重量%(例えば、3〜7重量%)程度であってもよく;0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%程度であってもよい。第2のオーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)のそれぞれにおけるヨウ化メチル濃度は、例えば、1〜99重量%(例えば、5〜97重量%)、好ましくは10〜95重量%(例えば、20〜95重量%)、さらに好ましくは30〜95重量%程度であってもよく;50〜99重量%(例えば、65〜98重量%)、好ましくは75〜98重量%(例えば、85〜97重量%)、さらに好ましくは90〜97重量%程度であってもよい。第2のオーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)のそれぞれにおける酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜10重量%)、好ましくは0.7〜7重量%(例えば、0.7〜5重量%)程度であってもよく、0.5〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよい。第2のオーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)のそれぞれにおける酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.01〜3重量%)、好ましくは0.1〜2重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。第2のオーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)のそれぞれにおける水濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは0.8〜3重量%(例えば、1〜2重量%)程度であってもよい。第2のオーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)のそれぞれにおけるジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜3重量%(例えば、0.0001〜2重量%)、好ましくは0.001〜1.7重量%(例えば、0.01〜1.5重量%)程度であってもよく、0.1〜1重量%程度であってもよい。
第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)、例えば、少なくとも第2のオーバーヘッド流(5A)が分液している(又は有機相と水相とを形成している)場合、有機相(ライン64,68)の各PRC類の濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜20重量%)、好ましくは1〜10重量%(例えば、2〜5重量%)程度であってもよい。有機相のヨウ化メチル濃度は、例えば、50〜99重量%(例えば、60〜98重量%)、好ましくは70〜97重量%(例えば、80〜95重量%)程度であってもよく、85〜98重量%(例えば、90〜97重量%)程度であってもよい。有機相の酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜10重量%)、好ましくは0.7〜7重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよく、2〜4重量%程度であってもよく;0.3〜7重量%(例えば、0.5〜5重量%)程度であってもよい。有機相の酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.01〜2重量%、0.1〜0.5重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。有機相の水濃度は、0〜5重量%(例えば、0.01〜3重量%)、好ましくは0.05〜1重量%(例えば、0.1〜0.3重量%)程度であってもよい。有機相のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜3重量%(例えば、1ppm〜2重量%)、好ましくは10ppm〜1.5重量%(例えば、100〜5000ppm)程度であってもよい。
第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)、例えば、少なくとも第2のオーバーヘッド流(5A)が分液している(又は有機相と水相とを形成している)場合、水相(ライン66、69)の各PRC類の濃度は、1〜50重量%(例えば、5〜40重量%)、好ましくは10〜30重量%(例えば、15〜25重量%)程度であってもよい。水相のヨウ化メチル濃度は、例えば、0.01〜10重量%(例えば、0.1〜5重量%)、好ましくは0.5〜4重量%(例えば、0.8〜3重量%)程度であってもよく、1〜2重量%程度であってもよい。水相の酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜10重量%(例えば、0.2〜5重量%)、好ましくは0.3〜2重量%(例えば、0.5〜1重量%)程度であってもよく、0.1〜1.5重量%程度であってもよい。水相の酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.01〜2重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。水相のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜3重量%(例えば、1ppm〜2重量%)、好ましくは0.001〜1.5重量%(例えば、0.01〜1重量%)程度であってもよい。水相において、通常、これらの成分及び不可避的な混入成分(不純物又は副生物を含む)の残余を水が占めている。水相の水濃度は、例えば、50〜95重量%(例えば、60〜93重量%)、好ましくは70〜90重量%(例えば、75〜85重量%)程度であってもよい。
第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)(例えば、少なくとも第2のオーバーヘッド流(5A))が分液した水相(ライン66,69)にはPRC類(アセトアルデヒドなど)が濃縮されており、ヨウ化メチル濃度に対して高いPRC類(アセトアルデヒドなど)濃度を有している。水相でのアセトアルデヒド(AD)とヨウ化メチル(MeI)との比率(AD/MeI)は、例えば、3/1〜50/1(例えば、4/1〜40/1)、好ましくは5/1〜30/1(例えば、7/1〜20/1)程度であってもよく、8/1〜15/1(例えば、10/1〜15/1)程度であってもよい。
第2のオーバーヘッド流(5A)(コンデンサC3の直前のライン53)(第2のオーバーヘッド流が水相と有機相に分液している場合はその混合液)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、18〜90℃)、好ましくは20〜80℃(例えば、20〜70℃)程度であってもよい。
サイドカット流(5B)(ライン63)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、20〜90℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよい。
蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が分液しない均一液又は水相と有機相の混合液であるとき、下部流又は底部流(5C)(ライン52)のアセトアルデヒド濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、5〜1000ppm)、10〜100ppm、20〜50ppm程度であってもよく、実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。下部流又は底部流(5C)のヨウ化メチル濃度は、例えば、5〜99重量%(例えば、10〜95重量%)、好ましくは20〜90重量%(例えば、30〜85重量%)、さらに好ましくは40〜85重量%(例えば、50〜80重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の酢酸メチル濃度は、例えば、0〜30重量%(例えば、0.1〜25重量%)、好ましくは1〜20重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜17重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の酢酸濃度は、例えば、0〜12重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく;1〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の水濃度は、例えば、0〜80重量%(例えば、0.001〜70重量%)、好ましくは0.005〜60重量%(例えば、0.01〜50重量%)、さらに好ましくは0.05〜40重量%(例えば、0.1〜30重量%)であってもよく;0.2〜30重量%(例えば、0.25〜20重量%)、好ましくは0.3〜10重量%(例えば、0.35〜5重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0.001〜1500ppm)、好ましくは0.01〜500ppm(例えば、0.1〜100ppm)、さらに好ましくは0.2〜10ppm程度であってもよい。
蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が分液した(分液において形成された)有機相であるとき、下部流又は底部流(5C)のアセトアルデヒド濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、5〜1000ppm)、さらに好ましくは10〜100ppm(例えば、20〜50ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。下部流又は底部流(5C)のヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜99重量%(例えば、30〜95重量%)、好ましくは40〜90重量%(例えば、50〜85重量%)、さらに好ましくは60〜85重量%程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の酢酸メチル濃度は、例えば、0〜30重量%(例えば、0.1〜25重量%)、好ましくは1〜20重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜17重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の酢酸濃度は、例えば、0〜12重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく;1〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の水濃度は、0〜52重量%(例えば、0.01〜42重量%)、好ましくは0.1〜32重量%(例えば、0.2〜22重量%)、さらに好ましくは0.5〜11重量%(例えば、1〜6重量%)程度であってもよく;0〜6重量%(例えば、0.1〜4重量%)、好ましくは0.3〜3重量%(例えば、0.5〜2重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0.001〜1500ppm)、好ましくは0.01〜500ppm(例えば、0.1〜100ppm)、さらに好ましくは0.2〜10ppm程度であってもよい。
蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が分液した(分液において形成された)水相であるとき、下部流又は底部流(5C)のアセトアルデヒド濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、10〜1000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。下部流又は底部流(5C)のヨウ化メチル濃度は、例えば、0.1〜30重量%(例えば、1〜25重量%)、好ましくは3〜20重量%(例えば、5〜15重量%)程度であってもよく;1.5重量%以上(例えば、2〜50重量%)、好ましくは2重量%以上(例えば、3〜40重量%)、さらに好ましくは4重量%以上(例えば、5〜30重量%)であってもよい。下部流又は底部流(5C)の酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜15重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の酢酸濃度は、例えば、5〜60重量%(例えば、10〜50重量%)、好ましくは20〜40重量%(例えば、25〜35重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)の水濃度は、例えば、10〜92重量%(例えば、25〜82重量%)、好ましくは30〜77重量%(例えば、40〜72重量%)程度であってもよい。下部流又は底部流(5C)のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、1〜1500ppm)、好ましくは10〜1000ppm(例えば、50〜500ppm)程度であってもよい。
下部流又は底部流(5C)の温度は、常圧において、例えば、30〜160℃(例えば、35〜120℃)、好ましくは40〜100℃(例えば、40〜80℃)程度であってもよい。
下部流又は底部流(5C)の各PRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、第1のオーバーヘッド流(3A)よりも大きく低減している。下部流又は底部流(5C)の各PRC類の濃度は、例えば、1〜800ppm、好ましくは10〜300ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。そのため、下部流又は底部流(5C)は、ライン52を通じて、反応系にリサイクルしてもよい。必要であれば、下部流又は底部流(5C)を、ライン52を通じて、さらなる蒸留と、必要によりその後の水抽出とに供して、PRC類(アセトアルデヒドなど)を分離して除去してもよい。
本発明の一実施形態では、第2の蒸留工程(5)で、第1のオーバーヘッド流(3A)を蒸留し、第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)と、底部流又は缶出流(5C)とを形成する。第2の蒸留工程(5)の蒸留塔は、脱アルデヒド塔として機能させることができる。そのため、第1のオーバーヘッド流(3A)は少なくとも1つのPRC類(アセトアルデヒドなど)、ヨウ化メチル、及び水を含んでいればよく、前記第1の混合物の組成に対応する組成を有している。第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)は、さらに酢酸メチルを含んでいてもよい。前記のように、第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)は、さらに、酢酸、メタノール、ジメチルエーテル及びアセトアルデヒド誘導体(アルデヒド類、ケトン類、ヨウ化アルキル、高沸点アルカンカルボン酸、アルカン類など)、ジアルキルエーテル類などから選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。
蒸留工程(5)の蒸留塔は、少なくとも1つの受け部(チムニートレイなど)を備えていればよい。蒸留塔は、複数の受け部(チムニートレイ)を備えていてもよい。複数の受け部(チムニートレイ)を有する蒸留塔では、最上部のチムニートレイよりも上方に形成された濃縮域に、ライン50を通じて抽出溶媒を添加できる。
(6)分液工程
図1に示す実施形態では、第2のオーバーヘッド流(5A)を、流出ライン53のコンデンサC3で冷却して凝縮し、分離ユニット(デカンタ)6a内で二相分液して有機相(下相)と水相(上相)とを形成する。有機相を還流ライン61を通じて、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔(例えば、塔頂部)に還流又はリサイクルする。デカンタ6a内で分液した水相の第1の部分は、ライン62を通じて、ライン66の冷却ユニット(クーラー)C4で冷却され、デカンタ6c内でさらに二相(有機相及び水相)に分液される。デカンタ6a内で分液した水相の第2の部分は、ライン67を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。デカンタ6c内で分液した有機相(ヨウ化メチルに富む重質相又は下相)は、ライン68を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。デカンタ6c内で分液した水相は、ライン69を通じて、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)に供給され、さらにPRC類とヨウ化メチルとを分離する。
コンデンサC3で冷却された凝縮液(水相、有機相若しくはその混合液)、及び冷却ユニットC4で冷却した液体流(並びに水相及び有機相)の温度は、それぞれ、例えば、0〜60℃(例えば、1〜50℃)、好ましくは3〜30℃(例えば、3〜20℃)、さらに好ましくは5〜15℃程度であってもよい。
(混和性溶媒)
酢酸メチルが共存していてもヨウ化メチルとPRC類(アセトアルデヒドなど)とを効率よく分離するために、第2の蒸留工程(5)へのリサイクル流(有機相及び/又は水相)には、有機相と混和可能な混和性溶媒を供給してもよい。この混和性溶媒としては、両親媒性化合物(酢酸メチルなど)又はPRC類のうち一方に対して親和性の高い溶媒;両親媒性化合物(酢酸メチルなど)と他の化合物(特に、水、アセトアルデヒドなどのPRC類)との共沸組成の形成を回避可能な溶媒;両親媒性化合物(酢酸メチルなど)の揮発性(蒸気圧)を低下させる溶媒などが挙げられる。前記混和性溶媒は、通常、酢酸メチルの共存下でのPRC類とヨウ化メチルとの共沸組成(又はガス組成)を変化させるか、若しくは共沸組成の形成を防止し、蒸留塔の高さ方向において酢酸メチルの濃度分布を生じさせるか;及び/又は酢酸メチルの揮発性(蒸気圧)を低下させる。そのため、混和性溶媒の添加により、水相中の酢酸メチル濃度を低減でき、水相へのヨウ化メチルの混入を抑制できる。
このような混和性溶媒は、系内の混和性溶媒(例えば、酢酸製造プロセスに存在する溶媒又はプロセス内で生成する溶媒、若しくはプロセス流(例えば、水相又は水性抽出液67などの水性溶媒))であってもよく、系外の混和性溶媒(例えば、水、酢酸などから選択された少なくとも一種)であってもよい。混和性溶媒は、ヨウ化メチル及びPRC類(例えば、アセトアルデヒド)よりも沸点が高くてもよい。プロセス流は、酢酸メチルの揮発性(蒸気圧)を低下可能なプロセス流(粗酢酸流、オーバーヘッド流、缶出流、リサイクル流など)であってもよい。混和性溶媒は両親媒性溶媒であってもよい。混和性溶媒は、通常、水、酢酸、ヨウ化メチル及びメタノールから選択された少なくとも一種を含んでいる。外部から混和性溶媒を供給する場合、水などであってもよいが、通常、有機性の混和性溶媒、例えば、酢酸を含む混和性溶媒(酢酸、粗酢酸など)である場合が多い。好ましい混和性溶媒は、上部流(5A)(5B)から分離された水相(例えば、前記第2の分液工程(6)で生成した水相など)であってもよく、酢酸を含むプロセス流(例えば、粗酢酸流)であってもよい。
図1に示す実施形態では、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に、供給ライン70を通じて混和性溶媒及び/又はライン67を通じて水相(又は抽出液)を供給し、混和性溶媒の存在下で蒸留し、両親媒性化合物(酢酸メチルなど)の存在(共存)下でヨウ化メチルとPRC類(アセトアルデヒドなど)とを分離している。
混和性溶媒は、供給ライン70を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に直接的に供給してもよく、リサイクルライン65などを通じて間接的に第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給してもよい。混和性溶媒は、通常、蒸留塔の中間部又は中間部よりも下部に供給し、この下部供給口から第1のオーバーヘッド流(3A)の仕込段までの間(空間)で、酢酸メチルが濃縮するのを抑制する場合が多い。混和性溶媒は、蒸留塔の中間部よりも上部に供給してもよい。なお、前記空間での酢酸メチルの濃縮抑制は、前記のように、共沸組成の回避、酢酸メチルの揮発性(蒸気圧)の低下などを利用して行うことができる。
混和性溶媒の温度は、前記抽出溶媒と同様の温度であってもよい。混和性溶媒は、抽出溶媒と同様の温度に加温若しくは加熱した溶媒として、又は蒸気の形態で、蒸留塔に添加してもよい。
混和性溶媒の添加量は、蒸留工程(5)での濃縮域からの降下液量(トレイ部への降下液量)に対して30重量%以下、例えば、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜15重量%)、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。
分液工程(6)などからの有機相とともに混和性溶媒(酢酸など)を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔で蒸留する場合(例えば、前記ホールドタンク6b内で分液した有機相と、ライン70からの混和性溶媒(酢酸など)とを蒸留する場合、又はサイドカット流(5B)の抜き出し部よりも下部の蒸留段から有機相と混和性溶媒(酢酸など)とを供給して蒸留する場合)、第2の蒸留塔(5)内では、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、水などの複数の成分の組み合わせによる共沸混合物(又は共沸組成)を形成する(又は酢酸メチルとの共沸組成を形成しない)場合もあり、単に酢酸メチルの蒸気圧を低下(又は低減)する場合もある。このような場合であっても、ライン69を通じて、第3の蒸留工程(7)に供給される処理液(凝縮液、上相及び/又は下相、特にアセトアルデヒドを含有する上相)中の酢酸メチル濃度を低減して、水相中に溶解したヨウ化メチル濃度を低減できる。
酢酸の製造プロセス内では、系外から水を仕込むことなく、系内の水をバランスよく利用するのが好ましいものの、蒸留塔(5)へ水相(例えば、ライン67などの水相)をリサイクルすると、蒸留塔(5)の缶出流(5C)(ライン52)の水濃度が若干増加し、系内の水バランスが変化する。これに対して、酢酸などの有機性混和性溶媒を用いると、系内で水バランスを維持しながら、蒸留塔内での酢酸メチル濃度を低減でき、ヨウ化メチルの排出量を低減できる。例えば、蒸留塔(5)へ混和性溶媒(酢酸など)を添加しながら蒸留塔(5)へ水相(例えば、ライン67などの系内の水相)をリサイクルし、蒸留塔(5)の缶出流(5C)(ライン52)を反応系へリサイクルすると、反応系での水の蓄積を抑制しつつ、蒸留塔内での酢酸メチル濃度を極限まで低減でき、系外へ排出されるヨウ化メチルの量も低減できる。
このような混和性溶媒(酢酸など)の添加は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔内でアルドール縮合を誘発し、塔頂部で濃縮すべきアセトアルデヒドが高沸点物質となり、アセトアルデヒドの分離能が低下することが懸念される。しかし、ヨウ化メチル濃度が高く、水濃度が低い系では、酢酸は極めて弱い酸性しか示さない。このような系において、酸性条件下によるアルドール縮合は最低限に抑制でき、アセトアルデヒドの濃縮には殆ど影響を及ぼさない。
このように、プロセス内で生成する水性溶媒(例えば、分液した水相又は水性の抽出液67など)及び/又は混和性溶媒を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に導入することにより、ヨウ化メチル、水及びアセトアルデヒドから選択された2成分若しくは3成分が共沸組成を形成させ、酢酸メチルとは共沸組成を形成させないか、又は単に酢酸メチルの蒸気圧を低下することができる。これにより、水相中に含まれるヨウ化メチル濃度を大きく低下できる。
なお、混和性溶媒としての酢酸の使用量が多すぎると、上部流(5A)(5B)、及び水相又は抽出液67中の酢酸濃度が増加して、水相中のヨウ化メチル濃度が上昇する可能性がある。しかし、酢酸を適正な供給量で供給すれば、このような事態を回避できる。
(7)蒸留工程
前記分液工程(6)からの水相(アセトアルデヒドに富む軽質相又は上相)は、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)で、過マンガン酸還元性物質(特に、アセトアルデヒド)及びヨウ化メチルに富む第3のオーバーヘッド流(低沸流)(7A)と、抽出溶媒に富む液体流(高沸流、下部流又は缶出流)(7B)とに分離される。第3のオーバーヘッド流(低沸流)(7A)はコンデンサC5で冷却及び凝縮され、凝縮液の第1の部分は、還流ライン73を通じて、第3の蒸留工程の蒸留塔(7)に還流され、凝縮液の第2の部分は、供給ライン74を通じて、第4の蒸留工程(8)に供給される。
第3の蒸留工程(7)の蒸留塔の塔内温度は、その塔内圧力に依存する。常圧の塔内圧力において、蒸留塔の塔頂温度は、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜60℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、70〜170℃(例えば、80〜160℃)、好ましくは90〜150℃(例えば、95〜140℃)程度であってもよく、蒸留塔の塔頂圧力は、絶対圧力で、例えば、0.1〜0.5MPa、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段数は、例えば、1〜50段(例えば、2〜40段)、好ましくは3〜30段(例えば、5〜10段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、例えば、1〜1000(例えば、2〜500)、好ましくは3〜100(例えば、4〜50)、さらに好ましくは5〜30程度であってもよい。
オーバーヘッド流(7A)又はその凝縮液(ライン72,73,74)は、アセトアルデヒドに富んでおり、ヨウ化メチル濃度が低減している。オーバーヘッド流(7A)又はその凝縮液はまた、酢酸メチルも含有する。オーバーヘッド流(7A)の凝縮液のアセトアルデヒド濃度は、例えば、50〜99.9重量%(例えば、60〜99重量%)、好ましくは70〜98重量%(例えば、75〜97重量%)、さらに好ましくは80〜95重量%(例えば、85〜95重量%)程度であってもよい。凝縮液のヨウ化メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく、2〜10重量%(例えば、3〜10重量%)程度であってもよい。凝縮液の酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%(例えば、0.7〜12重量%)、さらに好ましくは1〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。オーバーヘッド流(7A)の凝縮液の酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、さらに好ましくは0〜1重量%であってもよい。いくつかの実施形態において、オーバーヘッド流(7A)の凝縮液は実質的に酢酸を含んでいない(検出限界以下の酢酸濃度である)。オーバーヘッド流(7A)の凝縮液の水濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0〜3重量%)、好ましくは0〜1重量%(例えば、0〜0.1重量%)程度であってもよく、検出限界以下の水濃度であってもよい。凝縮液のジメチルエーテル濃度は、例えば、1ppm〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.01〜2.5重量%(例えば、0.1〜2重量%)、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%程度であってもよい。
オーバーヘッド流(7A)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、20〜90℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよく、20〜55℃程度であってもよい。コンデンサC5で冷却されたオーバーヘッド流(7A)の凝縮液(ライン73、74)の温度は、例えば、0〜60℃(例えば、5〜45℃)、好ましくは7〜30℃(例えば、10〜30℃)程度であってもよい。
缶出液体流(7B)(ライン71)は、通常、主たる成分として抽出溶媒を含んでいる。缶出液体流(7B)は、抽出溶媒のみならず、少量のアセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、メタノール、ジメチルエーテル(DME)、系内に存在する不純物を含んでいてもよい。液体流(7B)中のアセトアルデヒド濃度(重量基準)は、例えば、0.1重量%以下(例えば、1ppb〜0.1重量%)、好ましくは500ppm以下(例えば、10ppb〜300ppm)、さらに好ましくは100ppm以下(例えば、0.1ppm〜100ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。液体流(7B)中のヨウ化メチル濃度は、例えば、1重量%以下(例えば、1ppm〜0.8重量%)、好ましくは0.5重量%以下(例えば、10ppm〜0.1重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。液体流(7B)中の酢酸メチル濃度は、1ppm〜4重量%(例えば、5ppm〜2重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.005〜0.7重量%)程度であってもよい。液体流(7B)中の酢酸濃度は、例えば、10重量%以下(例えば、1ppm〜10重量%)、好ましくは7重量%以下(例えば、0.001〜5重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。液体流(7B)中のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜1000ppm(例えば、0〜100ppm)、好ましくは0〜50ppm(例えば、0〜10ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。缶出液体流(7B)において、通常、これらの成分及び不可避的な混入成分(不純物又は副生物を含む)の残余を水が占めている。液体流(7B)中の水濃度は、例えば、90〜99.99重量%(例えば、93〜99.98重量%)、好ましくは95〜99.95重量%(例えば、97〜99.9重量%)程度であってもよい。このような缶出液体流(7B)は、蒸留工程(5)の抽出溶媒として再利用するため、缶出ライン71を通じて、蒸留工程(5)にリサイクルしてもよい。
缶出液体流(7B)の温度は、常圧において、例えば、70〜160℃(例えば、80〜120℃)、好ましくは85〜110℃(例えば、90〜110℃)程度であってもよく、95〜105℃程度であってもよい。
缶出液体流(7B)に酢酸及び酢酸メチルが優位に移行するためか、酢酸(AC)に対するヨウ化メチル(MeI)の割合(MeI/AC比)及び酢酸メチル(MA)に対するヨウ化メチル(MeI)の割合(MeI/MA比)はそれぞれ、ライン69の供給液よりも第3のオーバーヘッド流(7A)で大きくなるようである。
液体流(7B)は系外に除去又は排出してもよい。
(8)蒸留工程
前記のように、オーバーヘッド流(7A)には、濃度が低減しているものの未だヨウ化メチルが混入している。そのため、前記オーバーヘッド流(7A)を蒸留工程(8)でさらに蒸留し、ヨウ化メチル濃度を低減してもよい。すなわち、蒸留工程(7)からのオーバーヘッド流(7A)はさらに蒸留工程(8)で蒸留し、オーバーヘッド流(8A)と缶出液体流(8B)とに分離できる。この蒸留工程(8)では、オーバーヘッド流(7A)にアセトアルデヒドが濃縮されているため、水抽出蒸留するのが好ましい。すなわち、蒸留工程(8)の蒸留塔(分離塔)の頂部には、供給ライン82から水を供給して水抽出蒸留し、オーバーヘッド流(8A)を、直接的に又は間接的に反応工程(1)にリサイクルするとともに、アセトアルデヒドを含む缶出液体流(8B)を、ライン81を経て抜き取っている。図1に示す実施形態では、オーバーヘッド流(8A)をライン83のコンデンサC6で冷却及び凝縮し、還流ライン84を通じて凝縮液の第1の部分を蒸留塔(分離塔)(8)に還流するとともに、ライン85を通じて凝縮液の第2の部分を抜き取り、反応工程(1)にリサイクルしている。
このような水抽出蒸留では、アセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの割合が、液体流(8B)よりもオーバーヘッド流(8A)又はその凝縮液で大きくなり、ヨウ化メチル濃度の高い凝縮液を生成できる。このような濃縮液は、ライン85を経て、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。
水抽出蒸留において、水の温度は、前記抽出溶媒と同様の温度であってもよい。水は、抽出溶媒と同様の温度に、加温若しくは加熱して、又は蒸気の形態で添加してもよい。
缶出液体流又は底部水性流(8B)は、抽出溶媒(特に、水)及びアセトアルデヒドに富んでいる。そのため、この缶出液体流(8B)は、系外に排出してもよく、さらに蒸留によりPRC類を含む留分と水を含む留分とを分離した後、PRC類を含む留分を系外に排出し、水を含む留分を蒸留工程(5)の抽出溶媒として再利用してもよく、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。
第4の蒸留工程(8)の蒸留塔の塔内温度は、その塔内圧力に依存する。常圧の塔内圧力において、蒸留塔の塔頂温度は、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜65℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、15〜110℃(例えば、20〜100℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよい。蒸留塔の塔頂圧力は、絶対圧力で、例えば、0.1〜0.5MPa、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段数は、例えば、1〜50段(例えば、2〜40段)、好ましくは3〜30段(例えば、5〜10段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、例えば、1〜1000(例えば、3〜500)、好ましくは5〜100(例えば、10〜70)、さらに好ましくは15〜50(例えば、15〜30)程度であってもよい。
オーバーヘッド流(8A)又はその凝縮液(ライン83,84,85)は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富んでいる。オーバーヘッド流(8A)の凝縮液のアセトアルデヒド濃度は、例えば、1〜70重量%(例えば、10〜65重量%)、好ましくは30〜60重量%(例えば、35〜55重量%)程度であってもよい。凝縮液のヨウ化メチル濃度は、例えば、20〜80重量%(例えば、30〜75重量%)、好ましくは40〜65重量%(例えば、45〜60重量%)程度であってもよい。凝縮液の酢酸メチル濃度は、例えば、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜15重量%)、好ましくは1〜10重量%(例えば、2〜8重量%)程度であってもよい。オーバーヘッド流(8A)の凝縮液の酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、さらに好ましくは0〜1重量%であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。凝縮液の水濃度は、例えば、0〜10重量%(例えば、0.01〜8重量%)、好ましくは0.1〜5重量%(例えば、0.3〜3重量%)程度であってもよい。
オーバーヘッド流(8A)の凝縮液のジメチルエーテル濃度は、10ppm〜80重量%程度の広い範囲から選択でき、例えば、100ppm〜60重量%(例えば、0.5〜50重量%)、好ましくは1〜40重量%(例えば、5〜30重量%)程度であってもよい。オーバーヘッド流(8A)のジメチルエーテル濃度は、プロセス条件によって変化し、場合によっては高くなることがある。
オーバーヘッド流(8A)(還流ライン83)の温度は、常圧において、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜65℃)程度であってもよい。コンデンサC6で冷却されたオーバーヘッド流(8A)の凝縮液(ライン84,85)の温度は、例えば、0〜45℃(例えば、3〜35℃)、好ましくは5〜30℃(例えば、7〜25℃)程度であってもよい。
缶出液体流又は底部水性流(8B)(ライン81)は、通常、主たる成分として水を含んでおり、アセトアルデヒドも含んでいてもよい。液体流(8B)中のアセトアルデヒド濃度(重量基準)は、例えば、1〜50重量%(例えば、5〜45重量%)、好ましくは10〜40重量%(例えば、20〜40重量%)程度であってもよい。液体流(8B)中のヨウ化メチル濃度は、例えば、1重量%以下(例えば、1ppm〜0.8重量%)、好ましくは0.5重量%以下(例えば、0.001〜0.2重量%)、さらに好ましくは0.005〜0.15重量%程度であってもよい。液体流(8B)中の酢酸メチル濃度は、例えば、1ppm〜5重量%(例えば、50ppm〜2重量%)、好ましくは0.01〜1.5重量%(例えば、0.05〜1重量%)程度であってもよい。液体流(8B)中の酢酸濃度は、例えば、5重量%以下(例えば、1ppm〜3重量%)、好ましくは1重量%以下(例えば、50ppm〜0.5重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。液体流(8B)中の水濃度は、例えば、40〜90重量%(例えば、50〜85重量%)、好ましくは55〜80重量%(例えば、60〜80重量%)程度であってもよい。液体流(8B)中のジメチルエーテル濃度は、例えば、0〜2重量%(例えば、0.0001〜1.5重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.01〜0.5重量%)、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%程度であってもよい。
缶出液体流又は底部水性流(8B)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、20〜100℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよい。
本発明の範囲は、前記図1に示すプロセスに限定されるものではない。前記のように、種々のプロセスユニット及び/又はプロセスフローの変更が可能である。以下に、代表的な変更例について説明するが、本発明はこれらの変更例に限定されるものではない。
(凝縮性ガス相の分液)
分液工程(4)では、プロセスから発生し、少なくともアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含むガス(オフガス)を凝縮して二相に分液してもよく、プロセスから発生するガスとしては、例えば、反応工程(1)、フラッシュ蒸発工程(2)及び第1の蒸留工程(3)並びに後続の蒸留工程(5)(7)(8)からなる群より選択された少なくとも1つの工程(例えば、少なくとも第1の蒸留工程(3))から発生したガス相(オーバーヘッド)が挙げられる。
(複数の凝縮工程)
酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、メタノール、水、アセトアルデヒドなどの中で、アセトアルデヒドは、ヨウ化メチルに近い沸点を有するとともに、最も低い沸点を有している。そのため、分液工程(4)では、第1のオーバーヘッド流(3A)を、複数のコンデンサ(冷却温度が順次低下した複数のコンデンサ)で順次に冷却して、温度が順次に低下した凝縮液を生成させると、第1段目のコンデンサで凝縮したプロセス液(凝縮液)よりも、後段のコンデンサによる凝縮液中には、低沸点成分であるアセトアルデヒド濃度が高濃度に存在する。また、このような複数のコンデンサで第1のオーバーヘッド流(3A)を順次に冷却すると、第1のコンデンサでは、第1のオーバーヘッド流(3A)を第1の凝縮液とアセトアルデヒド濃度の高い第1のガス成分(非凝縮成分)とに分離でき、第2のコンデンサでは、第1のガス成分を、アセトアルデヒド濃度の高い第2の凝縮液と第2のガス成分(非凝縮成分)とに分離できる。そのため、アセトアルデヒドが高濃度に濃縮された濃縮液を第2の蒸留工程(5)に供し、アセトアルデヒドを分離してもよい。
コンデンサのガス成分(非凝縮成分)はベントガス又はオフガス(排出ガス)として吸収系に供給し、ヨウ化メチルなどの有用成分をさらに収集又は回収してもよい。
(水抽出及び分液)
さらには、図1に示すプロセスは、分液工程(4)に加えて、第1のオーバーヘッド流(3A)と水とを接触させて(又は第1のオーバーヘッド流(3A)を水抽出して)、ヨウ化メチルに富む有機相と、アセトアルデヒドに富む水相とに分液する水抽出工程を有していてもよい。この抽出工程では、第1のオーバーヘッド流(3A)を直接的に水と接触させてアセトアルデヒド抽出物を得て、必要により水相と有機相とに分液してもよい。抽出効率を高めるため、分液工程(4)で分液した水相及び/又は有機相を水と接触させてアセトアルデヒド抽出物を生成してもよい。水抽出して分液した水相及び/又は有機相を蒸留工程(5)に供してもよい。通常、ヨウ化メチルに富む有機相を蒸留工程(5)に供する場合が多い。アセトアルデヒドに富む水相は、下記の図2に示すプロセスにおいて、第2の蒸留工程(5)の抽出溶媒として利用してもよく、塔頂部(最上段を1段として0段)とサイドカット流(5B)(又はサイドカット段)より1段上との間の濃縮域に仕込んでもよい。
(分配蒸留(又は共沸蒸留)と抽出蒸留との組合せ)
一実施形態において、本発明は、蒸留により、下部流又は底部流(5C)よりも上部流(5A)(5B)に第1の混合物中の水を優位に移行又は分配させるための第2の蒸留工程又は分配蒸留工程(5)と、上部流(5A)(5B)を抜き取って二相に分液する分液工程(6)とを備えていてもよい。第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)では、水を添加して、第1の混合物又は第1のオーバーヘッド流(3A)を蒸留してもよい。添加する水の量は、プロセスに大きな負荷を作用させない範囲であるのが好ましく、少量であってもよい。詳細には、本発明の一実施形態では、分配蒸留(又は共沸蒸留)と水抽出蒸留とを並行して行ってもよく、すなわち、抽出蒸留は、分配蒸留(又は共沸蒸留)しつつ水を添加して行ってもよい。例えば、分配蒸留(又は共沸蒸留)において、蒸留に加えて、蒸留塔に抽出溶媒(水など)を仕込んで抽出蒸留すると、水相へのPRC類の濃縮効率を有効にさらに増加でき、プロセスの運転幅を拡げることができる。
このような実施形態では、通常、例えば、蒸留塔の上部(特に、蒸留塔内においてPRC類及びヨウ化メチルが濃縮される濃縮域)に、ライン50を通じて抽出溶媒(水など)を添加し、前記濃縮域から降下する抽出混合液(降下液)をサイドカット流(5B)として抜き取って水相と有機相とを形成し、水相のみを系外に除去してもよく、有機相を蒸留塔にリサイクルしてもよい。
図2に示すプロセスは、第2の蒸留工程(5)及び分液工程(6)を除いて、図1に示すプロセスと実質的に同じである。第2の蒸留工程(5)で、分配蒸留(又は共沸蒸留)と抽出蒸留とを組合せてPRC類とヨウ化メチルとを分離している。すなわち、第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)では、供給ライン43b及び/又は44を通じて供給される第1のオーバーヘッド流(3A)(図示する実施形態では、分液工程(4)からの凝縮液)の蒸留に伴って、蒸留塔の上部に濃縮域(PRC類(特に、アセトアルデヒド)及びヨウ化メチルの高濃度域)を形成し、第1のオーバーヘッド流(3A)中の少なくとも一部の水を前記濃縮域に上昇させるとともに、ヨウ化メチルよりもPRC類(特に、アセトアルデヒド)を優位に抽出可能な抽出溶媒(水)を、ライン50を通じて前記濃縮域に添加し、前記濃縮域から降下する抽出混合液(液化成分、降下液)を蒸留塔からサイドカット流(5B)として抜き取っている。この抜き取った抽出混合液は、濃縮域に移行又は上昇する水と添加する抽出溶媒(水)とで有効に抽出された少なくとも1つのPRC類(特に、アセトアルデヒド)を含み、蒸留塔(5)への第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)及び底部流(5C)のPRC類(特に、アセトアルデヒド)の濃度に比べて、著しく高いPRC類(特に、アセトアルデヒド)濃度を有しており、抽出混合液をサイドカット流(5B)として抜き取ることにより、PRC類を有効に分離又は除去できる。
蒸留工程(5)の蒸留塔は、第1のオーバーヘッド流(3A)(図示する実施形態では、分液工程(4)からの凝縮液)の気化又は蒸発成分の濃縮域への上昇を許容し、この濃縮域から降下する抽出混合液(又は降下液)の全量を受け又はホールド可能なユニット、例えば、受け部(チムニートレイなど)(51)を備えていてもよい。なお、ラフィネート(ヨウ化メチル液)と抽出液との混合物としての降下液を受け可能な受けユニットでは、抽出混合液が分液可能であってもよい。
前記受け部は、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給口よりも上方であり、かつ抽出溶媒の添加口(添加部)よりも下方に配設されている。受け部(チムニートレイなど)は、慣用の構造を有しており、例えば、濃縮域から降下する抽出混合液(液化成分、降下液)を受け可能なトレイ部と、トレイ部の複数の開口部からそれぞれ塔頂部の方向(上方)に向かって突出し、第1のオーバーヘッド流(3A)の気化又は蒸発成分が濃縮域へ上昇可能な中空筒状のチムニー部(煙突部)とを備えている。チムニー部(煙突部)の上部開口部には、気化又は蒸発成分が上昇又は通過可能なカバー部(傘部又は蓋部)が取り付けられている。受け部(チムニートレイなど)は、トレイ部の液体を抜き取るための抜き取り口又は抜き取りラインを備えていてもよい。受け部(チムニートレイ)の構造は、上記の構造に限らない。チムニー部(煙突部)、必要であればカバー部に気化又は蒸発成分が通過可能な細孔を形成してもよい。トレイ部の構造は、ロート型、湾曲型などであってもよい。受け部(チムニートレイ)の開口比(トレイ部の平面全体に対する開口部の割合)は、5〜90%、例えば10〜50%(例えば、15〜40%)、好ましくは15〜35%程度であってもよい。
このようなユニット又は受け部(チムニートレイ)を備えた蒸留塔(5)において、抽出溶媒(例えば、水)は、受け部の上方に形成された濃縮域に添加してもよいし、しなくてもよい。濃縮域は、供給口と塔頂部との間の空間に形成される。アセトアルデヒド及びヨウ化メチルの沸点が低いため、濃縮域は、塔頂部側の上部空間(特に塔頂部に近い空間)に形成できる。そのため、受け部(チムニートレイなど)は、蒸留塔(5)の上部に配設できる。濃縮域からサイドカット流(5B)を抜き出す(サイドカットする)と、PRC類を効率的に抽出できるため、受け部の位置(サイドカット流(5B)の流出口の位置)は、第1の混合物(3A)の供給口よりも上方である場合が多い。受け部の位置(サイドカット流(5B)の流出口の位置)は、特に制限されず、第1のオーバーヘッド流又は混合液(3A)の供給口(又は仕込段)と同じ又は供給口よりも下方の回収域であってもよい。すなわち、受け部の高さ位置は、第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)の供給口と同じであってもよく、第1の混合物(3A)の供給口よりも上方又は下方であってもよい。なお、第1のオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)の供給口よりも下方に受け部を設ける場合、受け部は缶出流(ボトム流)よりも上方に位置してもよい。
蒸留塔の段数にもよるが、受け部(チムニートレイなど)の高さ位置は、塔頂側の最上段(塔頂から1段目の段)と、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段との間、若しくは塔頂に位置する。蒸留塔の全段数を100段としたとき、受け部の高さ位置は、蒸留塔の上から2〜60段(例えば、2〜45段)、好ましくは2〜30段(例えば、2〜25段)、さらに好ましくは2〜10段(例えば、2〜7段)程度に対応していてもよい。例えば、蒸留塔が、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、受け部(チムニートレイなど)は、塔頂側の最上段(塔頂から1段目の段)若しくは塔頂と、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段(例えば、供給段よりも少なくとも5つ上の段)との間の段に代えて設けられてもよく、受け部(チムニートレイなど)は、塔頂の最上段と、最上段から25だけ下の段(25段目)(好ましくは最上段から10段目、さらに好ましくは最上段から5段目、特に最上段から3段目)との間の段に代えて設けられてもよい。より具体的には、サイドカット流(5B)のサイドカット段(受け部)は、蒸留塔の最上段(一段目)、最上段から2段目又は3段目(特に、最上段、又は最上段から2段目)に位置していてもよい。
抽出溶媒は、通常、蒸留塔(5)の上部(例えば、塔頂側の最上段、若しくは塔頂から、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段に至る間)に添加できる。抽出溶媒の仕込み段は、蒸留塔の全段数を100段としたとき、蒸留塔の上から0〜50段(例えば、1〜25段)、好ましくは1〜20段(例えば、1〜15段)、さらに好ましくは1〜10段程度であってもよい。例えば、蒸留塔が、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、抽出溶媒は、蒸留塔(5)の塔頂に近い段(例えば、0〜20段、好ましくは最上段乃至10段、さらに好ましくは最上段乃至5段、特に最上段乃至3段の段)から添加してもよい。上昇する気化又は蒸気成分に対して向流方向に抽出溶媒を添加して抽出効率を高めるため、抽出溶媒は、通常、蒸留塔(5)の最上段から添加してもよい。抽出溶媒は、抽出効率を高めるため、液滴状の形態で添加でき、特に噴霧又は散布して添加されてもよい。抽出溶媒の温度は、例えば、0〜60℃、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃程度であってもよく、常温(例えば、15〜25℃程度)であってもよい。抽出溶媒は、加温若しくは加熱(例えば、30〜150℃、好ましくは50〜110℃程度に加熱)した抽出溶媒として、若しくは蒸気(過熱(スーパーヒート)された蒸気を含む)の形態で添加してもよい。
抽出溶媒は、ヨウ化メチルに比べてPRC類(特に、アセトアルデヒド)を優位に抽出可能であればよい。抽出溶媒は、ヨウ化メチル相から分液可能な抽出溶媒であるのが好ましい。すなわち、抽出混合液(5B)を上相と下相とに分液可能な抽出溶媒が好ましい。特に、抽出溶媒としては、好ましくは、少なくとも水を含む水性抽出溶媒、例えば、水、水と水溶性有機溶媒(メタノールなどのアルコール類(モノオール類)、エチレングリコールなどのグリコール類、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトン、エステル類、エーテル類など)との混合溶媒が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、水が好ましい。抽出溶媒として水を供給すると、抽出混合液(又は液滴状態の抽出混合液)を分液状態に保ち、二相に分液するのに有利である。
抽出溶媒は、水と、PRC類、ヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、ジメチルエーテル及びプロセス中に存在する成分(前記不純物を含む全ての成分)からなる群より選択された少なくとも1種とを含んでいてもよい。このような抽出溶媒は、プロセス内で生成する水性溶媒(例えば、第1のオーバーヘッド流(3A)の分液工程(4)で生成する水相43a、第2の分液工程(6)で生成する抽出液62,67,69などの水性プロセス流(アセトアルデヒド含有水性プロセス流など)、その他のアセトアルデヒド含有水性プロセス流(例えば、PRC類を水で抽出することにより形成した水相など)であってもよい。抽出溶媒としては、プロセスからのオフガスを水で吸収処理して得られた水溶液(例えば、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含有する水溶液)も挙げられる。オフガスとしては、例えば、反応器(1)、フラッシュ蒸発槽(2)、第1の蒸留塔(3)、第2の蒸留塔(5)又は分離ユニット6a、第3の蒸留塔(7)、第4の蒸留塔(8)などからのオフガスなど、プロセスの種々の単位操作からのオフガスが挙げられる。
前記プロセスでは、蒸留塔全体ではなく、抽出溶媒の添加口(添加部)と受け部(サイドカット部)との間を抽出空間(抽出域)として利用でき、前記濃縮部の気化又は蒸発成分(特に、少なくともアセトアルデヒド及びヨウ化メチル)を、前記濃縮部に上昇する水と、添加する抽出溶媒とで抽出できる。そのため、抽出混合液(5B)を底部流(5C)として抜き取る方法に比べて、抽出溶媒の使用量が少なくても、PRC類(特に、アセトアルデヒド)を効率よく抽出できる。例えば、抽出溶媒の流量と第1のオーバーヘッド流(3A)の流量(液体流換算)との重量割合は、前者/後者=0.0001/100〜100/100(例えば、0.001/100〜50/100)程度の範囲から選択してもよく、通常、0.0001/100〜20/100(例えば、0.001/100〜10/100)、好ましくは0.01/100〜8/100、さらに好ましくは0.1/100〜5/100程度であってもよい。そのため、蒸留塔の抽出混合液又は降下液(又はサイドカット流(5B))は、抽出溶媒の含有量の少ない液体流(又はサイドカット流(5B))を形成でき、二相分液性の液体流は、水相(少量の水相又は抽出液)と有機相(多量の有機相又はラフィネート)とを形成できる。
なお、従来の脱アセトアルデヒド蒸留と水抽出との組合せでは、PRC類が濃縮された有機相(又はヨウ化メチル相)は、その量に対してほぼ(実質的に)同量の抽出水で抽出処理している。これに対して、本発明の一実施形態では、抽出水の量は、有機相の0.1%〜10%程度である。そのため、有機相中のPRC濃度が実質的に同じであれば、水相中のPRC濃度は、従来の水抽出蒸留に比べてはるかに増大している。換言すれば、有機相中のPRC類の濃度が低くても、効率よくPRC類を水に抽出できるため、蒸留塔の分離領域(実段数又は理論段数)を従来技術よりも低減でき、より低いコストで脱アセトアルデヒドが可能である。一方、有機相の量の多少に拘わらず、有機相中のヨウ化メチル濃度は高く(ほぼ(実質的に)同等に高く)、水相中へのアセトアルデヒド(AD)濃度が同じ条件では、水相に溶解したヨウ化メチル(MeI)濃度は、抽出後の水相と有機相との量比に拘わらず、殆ど変わらず少ない。そのため、抽出する有機相の量に対して極めて少量の抽出溶媒を用いても、従来の脱アセトアルデヒド蒸留と水抽出との組合せよりも、アセトアルデヒド(AD)に対するヨウ化メチル(MeI)の割合(MeI/AD比)を有効に小さくでき、ヨウ化メチルの系外へのロスを低減できる条件で、かつ小さな蒸留領域で低コストで、PRC類を有効に除去可能である。
なお、特許文献2の実施例(TABLE 2)には、第2の蒸留塔での水抽出蒸留において、塔頂から水を仕込み、アセトアルデヒド濃度31重量%のフィード液を塔内で蒸留し、水性缶出流を塔底から抜き取ること、及びフィード液中のアセトアルデヒド濃度31重量%が、缶出流で22.4重量%に低減することが記載されている。しかし、特許文献2に記載の水抽出蒸留では、本発明の一実施形態による第2の蒸留工程(5)に比べて、抽出溶媒の仕込量が百倍以上も必要となる。なお、本発明の一実施形態では、ヨウ化メチルをオーバーヘッド流又は第1の混合物(3A)として蒸留塔(5)のサイドから抜き取可能であるのに対し、特許文献2ではヨウ化メチルを主に塔頂から抜き取ることとなり、両者はヨウ化メチルの分離形態が全く異なる。本発明の一実施形態では、蒸留塔(5)からのサイドカット流を抜き取り、抜き取ったサイドカット流を蒸留塔(5)に戻すことにより、ヨウ化メチル濃度の高い缶出流を得ることができる。仮に特許文献2に記載の方法に従って、本発明の一実施形態での抽出溶剤(例えば、水)の量よりも百倍以上も多い抽出溶剤(例えば、仕込み量と実質的に同等若しくはそれ以上の抽出溶剤)を蒸留塔の塔頂から仕込むと、特許文献2の缶出量/仕込み量の比率は、本発明の一実施形態でのサイドカットの水相量/仕込み量の比率の100倍以上となる。そのため、この缶出水性流を直接系外に排出するか、又はさらに蒸留してアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを水から分離すると、缶出流(水性流)中に溶存したヨウ化メチルの影響で、本発明の一実施形態と比較して少なくとも5〜10倍以上の量のヨウ化メチルを系外に排出することになる。また、本発明と異なり、特許文献2によると、仕込んだヨウ化メチルのほとんどは、塔頂から抜き取るために、多量のエネルギーが必要となり、経済的でない。
さらに、抽出混合液を、底部流又は缶出流(5C)としてではなく、受け部(チムニートレイなど)の抜き取り口からサイドカット流(5B)として抜き取るため、蒸留塔の段数を大きく低減しても、PRC類(特に、アセトアルデヒド)をヨウ化メチルから分離できる。例えば、蒸留塔の全段数を100段としたとき、本発明の一実施形態では、蒸留塔の段数を10〜80段(好ましくは12〜60段、さらに好ましくは15〜50段、特に20〜40段)程度にまで低減できる。
蒸留塔(5)での抽出蒸留に後続して、膜分離などによりさらにPRC類とヨウ化メチルを分離する場合、蒸留塔(5)の全段数を特許文献2の蒸留塔の全段数と同じ100段としたとき、本発明の一実施形態では、蒸留塔の段数を5〜20段程度に低減することも可能である。例えば、蒸留塔(5)での抽出蒸留工程において、PRC類を除去する前のプロセス流よりもヨウ化メチル/PRC類比の高い水相を取り出して、後工程(膜分離など)によりPRC類をさらに分離する場合には、前記のように、蒸留塔(5)の段数をさらに大きく低減できる。
蒸留塔からは少なくとも一部の抽出混合液(5B)を抜き取ればよい。通常、トレイ部に貯留する抽出混合液を連続的に抜き取ることができる場合が多い。すなわち、濃縮域から降下する液化成分の降下液量(降下液量の全量)に応じた量の抽出混合液を蒸留塔から抜き取ることができる。
濃縮域を形成する第2の混合物(例えば、共沸混合物)の組成は、図2に示すプロセスでは、サイドカット流(5B)(サイドカット流(5B)が水相と有機相とに分液している場合はその混合液;ライン63の混合液)の組成;又は第2のオーバーヘッド流(5A)の組成とサイドカット流(5B)の組成と両者の流量比とに応じた組成に対応していてもよい。
サイドカット流(5B)は、アセトアルデヒドなどのPRC類、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸、水、ジメチルエーテルなどの成分を含み、各成分の濃度は、混合液(ライン63の混合液)、分液した水相及び分液した有機相の各々における対応する前記の濃度と同様である。サイドカット流(5B)(ライン63)の温度も前記と同様である。
さらに、図2に示す実施形態の分液工程(6)において、第2のオーバーヘッド流(5A)を、流出ライン53のコンデンサC3で冷却して凝縮し、分離ユニット(デカンタ)6a内で二相分液して有機相(下相、ラフィネート)と水相(上相、抽出液)とを形成する。前記有機相を、還流ライン61を通じて、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔(例えば、塔頂部)に還流してリサイクルする。デカンタ6a内で分液した水相を、ライン62を通じて、ホールドタンク6bに供給する。サイドカット流としての抽出混合液(5B)もライン63を通じて、ホールドタンク6bに供給する。ホールドタンク6b内の液体は二相に分液している。ホールドタンク6bは、バッファータンク又はデカンタとしても機能している。
ホールドタンク6b内で分液した有機相(ラフィネート)は、ライン64及びリサイクルライン65を通じて、サイドカット流(5B)の抜き出し部よりも下部から第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。サイドカット流及び抽出混合液(5B)の温度が比較的高いため、ホールドタンク6b内の水相(抽出液)の一部は、ライン66の冷却ユニット(クーラー)C4で冷却され、デカンタ6c内でさらに二相に分液される。ホールドタンク6b内の水相(抽出液)の他の部分は、ライン67を通じて、サイドカット流(5B)の抜き出し部よりも下部から第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。図2に示されるように、ライン66の水相(抽出液)の一部は、点線で示されるように、抽出溶媒として再利用してもよい。
デカンタ6cでは、少量のヨウ化メチルを二相分液(有機相及び水相の形成)により分離できる。デカンタ6cにおいて分液した有機相(ヨウ化メチルに富む重質相又は下相)は、ライン68を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。デカンタ6cにおいて分液した水相(アセトアルデヒドに富む軽質相又は上相)はライン69を通じて、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)に供給され、さらにPRC類とヨウ化メチルとが分離される。上記のように、この実施形態では、サイドカット流(抽出混合液)(5B)について、ホールドタンク6b内で分液した水相の一部と、有機相(ホールドタンク6b内で分液した有機相、及びデカンタ6cで分液した有機相)とを、それぞれライン67及びライン64,68を経て合流させて、第2の蒸留工程(5)にリサイクルしている。
図2に示すプロセスにおいて、混和性溶媒は、通常、蒸留塔の中間部又は中間部よりも下部(受け部(チムニートレイなど)よりも下部)に供給し、この下部供給口から第1のオーバーヘッド流(3A)(分液工程(4)からの凝縮液)の仕込段までの間(空間)で、酢酸メチルが濃縮するのを抑制する場合が多い。混和性溶媒は、蒸留塔の中間部よりも上部(受け部(チムニートレイなど)の上部又は上方(例えば、濃縮域又は抽出域))に供給してもよい。
蒸留塔の全段数を100段としたとき、酢酸などの混和性溶媒を、リサイクルライン65よりも下の段(例えば、リサイクルライン65からのリサイクル段よりも10〜30段目の下の段)に供給すると、図2に示すプロセスでは、ライン63の抽出混合液(5B)に混和性溶媒(酢酸など)が流出するのを有効に抑制できる。そのため、分液工程(6)で分液した水相へのヨウ化メチルの溶解量を低減できる。なお、蒸留塔の全段数を100段としたとき、酢酸などの混和性溶媒は、サイドカット流(5B)のサイドカット段(受け部)よりも下の段であって、最上段から10〜50段目(例えば、20〜40段目)に供給してもよい。
抽出混合液(5B)の蒸留工程(5)へのリサイクル量(例えば、二相に分液した抽出混合液(5B)の水相のリサイクル量)及び/又は混和性溶媒の添加量の合計量は、上記と同様に、蒸留工程(5)での濃縮域からの降下液量に対して30重量%以下(例えば、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜15重量%)、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度)であってもよい。
前記分配蒸留(若しくは分配蒸留と抽出蒸留との組み合わせ)では、第1のオーバーヘッド流(3A)がPRC類(アセトアルデヒドなど)及びヨウ化メチルに対して親和性の高い酢酸メチル、酢酸などの両親媒性成分を含んでいても、第1のオーバーヘッド流(3A)中のPRC類(アセトアルデヒドなど)を、上部流(5A)(5B)に有効に抽出して、PRC類(アセトアルデヒドなど)を分離し除去できる。例えば、上部流(5A)(5B)中のアセトアルデヒド濃度は、第1のオーバーヘッド流(3A)及び底部流(5C)中のアセトアルデヒド濃度よりも大きい。例えば、第2のオーバーヘッド流(5A)(第2のオーバーヘッド流(5A)の水相)及びサイドカット流(5B)(サイドカット流(5B)の水相)中のPRC類(アセトアルデヒドなど)の各濃度は、第1のオーバーヘッド流(ガス流又はその凝縮液流)(3A)に比べて、10〜1000倍(例えば、20〜800倍)、好ましくは30〜500倍(例えば、50〜200倍)、さらに好ましくは50〜170倍(例えば、60〜150倍)も高い。
上部流(5A)(5B)中のヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの割合は、第1のオーバーヘッド流(3A)及び底部流(5C)中のヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの割合よりも大きい。
(分液工程(6))
上部流(5A)及び上部流(5B)はそれぞれ独立して又は両者を合わせて二相分液してもよい。すなわち、前記のように、オーバーヘッド流(5A)及びサイドカット流(5B)をそれぞれ分液してもよく、オーバーヘッド流(5A)をデカンタ6a内で分液させることなくオーバーヘッド流(5A)とサイドカット流(5B)と合わせて、この混合物を分液してもよい。
分液工程(6)は、複数のユニット(分離ユニット6a、ホールドタンク6b及びデカンタ6c)を用いることなく、1又は2つの分液工程(又はホールドタンク及び/又はデカンタ)で構成してもよい。例えば、図2に示すプロセスの前記第2の分液工程(6)において、分離ユニット6aは必ずしも必要ではなく、例えば、図3に示すように、分離ユニット6aに代えて還流ユニット106を用い、蒸留工程(5)からのオーバーヘッド流(5A)をコンデンサC3で冷却して凝縮し、蒸留塔(5)に全還流してもよい。図4に示すように、図3と同様のプロセスにおいて、ホールドタンク6bを用いることなく、サイドカット流(5B)を、冷却ユニット(クーラー)C4を介して、デカンタ6cに供給し、水相(アセトアルデヒドに富む軽質相又は上相)(ライン69)の一部69aを有機相(ライン68)と合わせて、リサイクルライン65を通じて第2の蒸留工程(5)にリサイクルしてもよい。オーバーヘッド流(5A)の全還流において、前記還流ユニット106は必ずしも必要ではない。第2の分液工程(6)は、複数の分液ユニット6b,6cは必ずしも必要ではない。第2の分液工程(6)は、単一の分液ユニット(タンク、デカンタ、ホールドタンク、バッファータンクなど)を用いてもよい。
分液工程(6)で生成した少なくとも一部の水相(アセトアルデヒドが濃縮された水相)はプロセス外に除去してもよく、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよく、図2、図3又は図4に示すプロセスにおいて、前記蒸留工程(5)の抽出溶媒として利用してもよい。工程(6)において生成(分液)した水相(例えば、抽出混合液(5B)からの抽出液)及び/又は有機相(例えば、抽出混合液(5B)からのラフィネート)は、種々の形態(ルート)で第2の蒸留工程(5)にリサイクルしてもよい。少なくとも一部の有機相(ヨウ化メチルを含む有機相)は、直接的に又は間接的に蒸留工程(5)にリサイクルしてもよい。例えば、ヨウ化メチルに富む有機相は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔内の適所にリサイクルすることができ、上部流(5A)(5B)の抜き取り口よりも上方にリサイクルしてもよく、好ましくは上部流(5A)(5B)の抜き取り口よりも下方にリサイクルし、第2の蒸留工程(5)内で第2の混合物(又は濃縮混合物)を形成してもよい。例えば、図4に示されるように、水相(アセトアルデヒドに富む軽質相又は上相)(ライン69)の一部69aを有機相(ライン68)と合わせて、得られた混合物を、リサイクルライン65を通じて、第2の蒸留塔(5)のうち、上部流(5A)(5B)の抜き取り口よりも下方にリサイクルしてもよい。第2の蒸留工程(5)には、有機相(又はラフィネート)の一部をリサイクルしてもよいが、通常、少なくとも一部の有機相(又はラフィネート)、例えば、有機相(又はラフィネート)の全部をリサイクルする場合が多い。
少なくとも水相を、上部流(5A)(5B)の抜き出し口よりも下の蒸留塔(5)の供給口(又は仕込み段)にリサイクルすると、仕込み段よりも上方の蒸留塔(5)内では、アセトアルデヒド濃度と水濃度とが増加し、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、水などの複数の成分の組み合わせによる共沸組成を形成できるとともに、水濃度の増加に伴って酢酸濃度も低減できる場合がある。そのような水相のリサイクルにおいて、酢酸メチルを含まない成分同士の共沸組成を形成すると、蒸留塔(5)の仕込段よりも上方の塔内の空間での酢酸メチル濃度を減少できる。また、このような場合において、蒸留塔(5)内に酢酸が存在すると、仕込み段よりも上方の蒸留塔(5)内の空間で酢酸がヨウ化メチルや酢酸メチルに変換され、酢酸濃度を減少できる場合がある。例えば、供給ライン43b,44から水相と有機相との蒸留塔(5)への供給;ライン64,68からの有機相とライン67からの水相との蒸留塔(5)へのリサイクル;及び/又は供給ライン43bからの水相の蒸留塔(5)への供給などにより、蒸留塔(5)の仕込段(リサイクル段)よりも上方の空間で酢酸メチルや酢酸濃度を低減できる場合がある。また、第2の蒸留工程(5)へのリサイクル流(水相、有機相などを含む)のリサイクルにより、上部流(5A)(5B)の抜き出し口の位置とは関係なく、リサイクル流の濃度が蒸留塔内で上昇し、酢酸メチルなどの両親媒性化合物の濃度上昇を抑制できる。そのため、水相(例えば、オーバーヘッド流(5A)又はサイドカット流(5B)、タンク6bの水相、さらにはライン67からの水相)中の酢酸メチルや酢酸濃度を減少でき、水相へのヨウ化メチルの溶解量を低減できる。なお、水相のリサイクル量は、プロセスの安定性を考慮して適切に選択できる。水相のリサイクル量が多すぎると、第2の蒸留塔(5)の底部缶出流(5C)(ライン52)から、多量の水が流出し、反応系又はプロセス中の水濃度の増加につながるので好ましくない。両親媒性成分である酢酸(混和性溶媒)の添加と蒸留並びにリサイクルに伴って、上部流(5A)(5B)に酢酸が多量に混入すると、酢酸メチルと同様に水相中へのヨウ化メチル溶解量が増加し、ヨウ化メチルのロスにつながる。
図2に示すプロセスにおいて、蒸留工程(5)の蒸留塔内で抽出混合液(5B)が二相分液可能であれば、トレイ内(又は系内のデカンタ)で抽出混合液(5B)を滞留させて二相分液してもよく、塔内で分液した水相を選択的にサイドカットにより抜き取ってもよい。好ましい実施形態では、蒸留工程(5)の蒸留塔から降下液又は抽出混合液(5B)の全量をサイドカットで抜き取り、必要により冷却し、系外のデカンタ内で抜き取った混合物を二相分液してもよい。
本発明のプロセスの一実施形態において、蒸留塔内の蒸留領域及び系外のデカンタ内の前記第2の混合物の全滞留時間(図2に示すプロセスでは蒸留塔内の抽出蒸留領域の滞留時間を含む)は、前記第2の混合物が二相分液可能な時間であればよい。前記全滞留時間は、例えば、10秒以上(例えば、30秒〜120分)、好ましくは1〜100分(例えば、5〜60分)程度であってもよく、10〜120分(例えば、15〜60分)程度であってもよい。
図2に示すプロセスにおいて、第2のオーバーヘッド流(5A)は、冷却・凝縮して凝縮液を分離ユニット6a内で分液する必要はない。第2のオーバーヘッド流(5A)は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔で全還流させてもよい。
図2に示すプロセスにおいて、前記のように、PRC類を効率的に抽出するため、濃縮域からサイドカット流(5B)をサイドカットする場合が多い。このような場合、抽出混合液(有機相など)は、蒸留塔(5)の濃縮域にリサイクルしてもよく、第1のオーバーヘッド流又は混合液(3A)の供給口(又は仕込段)と同じ高さの段又は供給口よりも下の段にリサイクルしてもよい。
必要であれば、分液工程(6)で生成した液体(凝縮液、水相及び/又は有機相)は、バッファタンクに一時的に貯蔵又は滞留させ、プロセス流の流量変動などを抑制してもよい。
分液工程(6)では、上部流(5A)及び/又は上部流(5B)を、二相に分液し、さらにPRC類とヨウ化メチルとを分離してもよい。
(蒸留工程(7)(8))
前記混和性溶媒としての酢酸の使用の如何に拘わらず、上部流(5A)(5B)、並びに後続するプロセス流、例えば、分液工程(6)からの凝縮液(水相及び/又は有機相、特に水相)には、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに加えて、酢酸及び酢酸メチルが含まれている場合が多い。このような成分を含むプロセス流を、前記第3の蒸留工程(7)で蒸留すると、缶出液体流(7B)の抽出溶媒(特に、水)に酢酸や酢酸メチルを分配させ、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを酢酸と分離できる。すなわち、蒸留塔(7)で酢酸と酢酸メチルをプロセス流から効率よく分離できる。そのため、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)には、第2の分液工程(6)で分液した少なくとも一部の水相(又は抽出液)又は水相(又は抽出液)の全部を供給する場合が多い。さらに、前記第3の蒸留工程(7)を経た後、第4の蒸留工程(8)で水抽出蒸留すると、水とアセトアルデヒドとの親和性によって、缶出液体流(8B)にヨウ化メチルが混入するのを防止しつつ、ヨウ化メチル(MeI)に対するアセトアルデヒド(AD)の比率(AD/MeI)が非常に高い缶出液体流又は水溶液(8B)が得られる。すなわち、第2の蒸留工程(5)に加えて、第3の蒸留工程(7)で酢酸及び酢酸メチルを除去した後、さらに第4の蒸留工程(8)で水抽出蒸留することにより、従来のプロセスと比較して、省エネルギー、設備コストの低減に加え、ヨウ化メチルの系外への排出ロスも低減できる。缶出液体流又は水溶液(8B)のAD/MeI比率は、例えば、20/1〜2000/1(例えば、50/1〜1500/1)、好ましくは100/1〜1000/1(例えば、150/1〜750/1)、さらに好ましくは200/1〜500/1(例えば、250/1〜450/1)程度であってもよい。
必要により、有機相(又はラフィネート)の一部を第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)に供給してもよい。
酢酸や酢酸メチルを缶出液体流(7B)として分離することにより、第3の蒸留工程(7)からの第3のオーバーヘッド流(7A)では、水へのヨウ化メチルの分配能又は溶解能が低減している。そのため、第3のオーバーヘッド流(7A)は、第4の蒸留工程(8)に代えて、必要であれば、ミキサー/セトラーなどで形成された1又は複数の水抽出ユニットによって、又は抽出塔によって、アセトアルデヒドを水に抽出してもよい。
分液工程(6)からの凝縮液(水相及び/又は有機相、例えば、水相)は、前記第3の蒸留工程(7)を経ることなく、第4の蒸留工程(8)で水抽出蒸留してもよい。上部流(5A)(5B)又は第2の分液工程(6)からの流体(水相など)を第4の蒸留工程(8)で蒸留してもよい。前記第3の蒸留工程(7)及び/又は第4の蒸留工程(8)は、必ずしも必要ではない。
上部流(5A)(5B)を二相に分液した水相にもヨウ化メチルが混入している。そのため、上部流(5A)(5B)の二相に分液した水相の少なくとも一部を抽出又は抽出蒸留工程(8)で水抽出する場合が多い。なお、上記分液した水相及び/又は蒸留工程(7)からのオーバーヘッド流(7A)を抽出又は抽出蒸留工程(8)で水抽出してもよい。
第4の蒸留工程(8)に代えて、抽出ユニット(抽出塔、抽出器など)を用いてもよい。プロセス内で生成する水性溶媒は、前記第2の蒸留工程(5)での抽出溶媒として利用してもよい。
(プロセス流中の不純物など)
前記のように、前記プロセス流(例えば、第1の混合物(3A)又はその分液相、上部流(5A)(5B)又はその分液相などのプロセス流)には、通常、不可避的に他の成分(不純物を含む)も含まれている。プロセス流中のメタノールの濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.0001〜3重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.01〜0.5重量%)、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%程度であってもよい。プロセス流中のヨウ化水素濃度は、0〜5000ppm(例えば、1〜1000ppm)、好ましくは5〜500ppm(例えば、10〜300ppm)程度であってもよい。プロセス流中の蟻酸及びC3−8アルカンカルボン酸(プロピオン酸など)の各濃度は、例えば、0〜500ppm(例えば、1〜300ppm)、好ましくは0〜100ppm(例えば、5〜50ppm)程度であってもよい。プロセス流中の、アセトアルデヒドから誘導されるアルデヒド類(クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなど)の各濃度は、それぞれ、例えば、0〜500ppm(例えば、1〜300ppm)、好ましくは0〜100ppm(例えば、5〜50ppm)程度であってもよい。プロセス流中のヨウ化アルキル(ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C2−12アルキル)の各濃度は、例えば、0〜100ppm(例えば、1ppb〜50ppm)、好ましくは0〜10ppm(例えば、10ppb〜5ppm)程度であってもよい。
(適用可能な第1の混合物)
前記図1及び図2に示す実施形態では、第1のオーバーヘッド流(3A)(その凝縮物、並びに分液した水相及び/又は有機相を含む)は、前記第1の混合物(又は混合液)に対応している。第1の混合物は、少なくともPRC類(アセトアルデヒドなど)、ヨウ化メチル、及び水を含む限り、前記第1のオーバーヘッド流(3A)又はその凝縮物に限らず、反応工程(反応系又は反応器)(1)、フラッシュ蒸発工程(フラッシャー)(2)、第1の蒸留工程(3)から生成する混合物、第2の蒸留工程(5)に後続する工程(例えば、前記第2の分液工程(6)、第3の蒸留工程(第3の蒸留塔)(7)、第4の蒸留工程(第4の蒸留塔)(8)など)から生成する混合物であってもよい。このような第1の混合物であっても(特に、酢酸メチルが共存する第1の混合物であっても)、本発明の一実施形態では、PRC類(アセトアルデヒドなど)をヨウ化メチルから有効に分離できる。
本発明の一実施形態において、前記方法は、少なくとも1つのPRC類及びヨウ化メチルを含む第1の混合物又はオーバーヘッド流、特に分液(二相分液)可能な第1の混合物又はオーバーヘッド流に適用でき、第2の蒸留塔(5)に限らず、第1の蒸留塔(3)に後続する1又は複数の蒸留塔に適用でき、濃縮域での抽出蒸留を利用して、PRC類を選択的に分離できる。第1の混合物又はオーバーヘッド流では、先行する単位操作で生成する混合流(例えば、第1の蒸留塔(3)へのフィード流)に比べて、過マンガン酸還元性物質(PRC類)及びヨウ化メチルのうち少なくともヨウ化メチルが濃縮されている。第1の混合物又はオーバーヘッド流にはPRC類も濃縮され、水濃度が低減していてもよい。なお、前記単位操作としては、フラッシュ工程、蒸留工程(水抽出蒸留工程を含む)、抽出工程、凝縮分液(二相分液)工程、吸収工程、膜分離工程などの1又は複数の種々の単位操作が例示できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下に、実験結果を示す。実施例及び比較例において、第2の蒸留工程(5)として直径40mmオールダーショウ蒸留を用いた。実施例では、図1に示すプロセスに従って、第2の蒸留工程(5)、分液工程(6)及び分離ユニット6aを設置した。そのため、ライン67を通じて分離ユニット6aの有機相を蒸留工程(5)にリサイクルするとともに、ライン66を通じて分離ユニット6aの水相を排出した。
比較例1のプロセスでは、図5に示すように、第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)206、抽出塔207及び蒸留塔208を用いた。
以下の比較例及び実施例において、数値を以下のように示す。測定値は最終桁を四捨五入して記載した。比較例及び実施例の測定値に関して、濃度値は基本的には小数点1桁で記載し、流量は測定値を四捨五入して記載した。表では、各成分の濃度を、基本的には小数点2桁で記載し、低濃度の成分では濃度を小数点3桁又は4桁で記載した。表中に記載の各成分の濃度を加算すると、厳密には100重量%とならない場合がある。このような場合、最大濃度の成分の量をバランス量として利用し、総量を100重量%と表記した。なお、最大濃度の成分の量をバランス量「BL」として表記した。バランス量「BL」には、少量の不純物などの成分も含まれる。
比較例1
実段数100段の第2の蒸留塔206(脱アセトアルデヒド塔;塔頂温度22℃、塔底温度48℃、塔頂圧力:常圧+10mmH2O(約100Pa))を用意した。この蒸留塔に、フィード液(温度20℃)を1295g/hで、下から32段目に仕込んだ。蒸留により生成したオーバーヘッド262(温度22℃)をコンデンサC3で7℃に冷却した。凝縮液の一部を987g/hで還流(還流ライン263)するとともに、凝縮液の残部6.0g/hでライン264から留出させた。フィード液としては、アセトアルデヒド(AD)濃度1960ppm、酢酸メチル(MA)濃度14.9重量%、水濃度0.7重量%、酢酸(AC)濃度1.9重量%のヨウ化メチル(MeI)溶液を用いた。オーバーヘッドの凝縮液(ライン264)中のAD濃度は41.4重量%であった(MeI溶液)。このMeI溶液を、ライン264を通じて、理論段1段の抽出塔207(塔頂温度15℃、塔底温度15℃、絶対圧約0.1MPa(常圧))の塔頂に仕込み、ライン271から水(温度15℃)を6.0g/hで抽出塔207の缶出から仕込み、塔頂(ライン275)からAD濃度26.4重量%の水抽出液(温度15℃)を流量8.5g/hで抜き取った。供給ライン275を通じてAD含有水抽出液を蒸留塔(AD分離塔)208(塔頂温度21℃、塔底温度102℃、塔頂圧力常圧+10mmH2O)に仕込み、蒸留により、温度21℃のオーバーヘッド282を生成させた。オーバーヘッド282をコンデンサC6で冷却して凝縮液(温度7℃)を得た。凝縮液の一部を25.3g/hで還流し(還流ライン283)、凝縮液の残部(AD濃度88.8重量%、MeI濃度10.8重量%(温度7℃))を流量2.53g/hで留出ライン284から留出させた。塔底から、ライン281を通じて缶出流(温度102℃)を流出させた。このようなプロセスにより、ADを2.25g/h、MeIを0.27g/hの流量でプロセス中から除去した。第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)206のリボイラー熱量は100.2kcal/h、AD分離塔208のリボイラー熱量は4kcal/hであった。
図5の各ラインでの各成分の分析結果を表1に示す。
表1中、ADはアセトアルデヒド、MeIはヨウ化メチル、MAは酢酸メチル、ACは酢酸を示す(以下、同じ)。
実施例1
実段数30段の第2の蒸留塔5(塔頂温度23℃、塔底温度47℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))を用意した。フィード液(温度20℃)を1295g/hでこの蒸留塔の下から7段目に仕込んだ。塔頂上昇蒸気(オーバーヘッド)をコンデンサC3で7℃に冷却し、デカンタ6aで水相と有機相(MeI相)とに二相分離させた。デカンタ6aの有機相のみを還流量590g/hで蒸留塔5に還流した。水相のみをライン66から12.5g/hで抜き取り、ADを除去した。フィード液として、AD濃度2011ppm、MA濃度15.05重量%、水濃度1.1重量%、AC濃度2.31重量%のヨウ化メチル溶液を用いた。蒸留塔底から、ライン52を通じて缶出流(温度47℃)を1280g/hで抜き取った。
このようなプロセスにより、水相(ライン66)においてADを流量2.53g/hで、MeIを流量0.23g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は49kcal/hであった。
図1の各ラインでの各成分の分析結果を表2に示す。
表3に、比較例と実施例1との分離効率及びエネルギー効率の結果を示す。
実施例2及び3
図4に示すプロセスにおいて、ライン44を通じて、第1のオーバーヘッド流(3A)(分液工程(4)からの凝縮液)を実段数10段の蒸留塔(5)に供給しつつ、ライン50から、抽出溶媒としての水を添加することなく(実施例2)又は水を添加し(実施例3)、サイドカット流(5B)を抜き取った。なお、混和性溶媒は蒸留塔(5)に供給しなかった。
図4の各ラインでの各成分の分析結果(マテリアルバランス)を表4及び5に示す。