JP2018508941A - 電解液用の固体緩衝物質及びそれを利用したフロー電池 - Google Patents

電解液用の固体緩衝物質及びそれを利用したフロー電池 Download PDF

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Abstract

【課題】フロー電池やその他の電気化学システム用の電解液は、活物質として溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有することができる。活物質の安定性を促進するために、この電解液をアルカリ性に緩衝することが望ましい場合がある。但し、一方では、緩衝物質がヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を容認できないレベルにまで不必要に低下させてしまう場合がある。【解決手段】ヘキサシアノ鉄の濃度が高められた組成物は、溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する水溶液と、当該水溶液に接触している固体緩衝物質とを含み得る。固体緩衝物質は、水溶液において固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量より多い量で存在している。フロー電池や他の電気化学システムは、この組成物を電解液として含むことができる。適切な固体緩衝物質を使用することにより、ヘキサシアノ鉄錯体以外の活物質を含有する電解液の安定化も可能である。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2015年1月21日に出願した米国特許仮出願第62/105,768号の優先権の利益を主張するものであり、そのすべての内容は参照により本出願に組み込まれる。
連邦政府資金による研究開発に関する記載
該当なし。
本発明は、一般にエネルギー貯蔵に関し、より詳細には、活物質としての配位化合物を電解液中に含有するフロー電池及びその他の電気化学システムに関する。
大規模なエネルギー貯蔵の用途のために、電池やスーパーキャパシタなどの電気化学エネルギー貯蔵システムが幅広く提案されている。この目的のために、フロー電池などの様々な電池設計が採用されてきた。フロー電池は、電力密度のパラメータとエネルギー密度のパラメータとを互いに切り離すことができるため、他の種類の電気化学エネルギー貯蔵システムと比較して、特に、大規模用途において有利であり得る。
フロー電池は概して負活物質及び正活物質を、対応する各電解液中に含み、これらの電解液は、負極と正極とを有する電気化学セル内において、膜又はセパレータの両側をそれぞれ別々に流れる。フロー電池は、セル内部で起こる活物質の電気化学反応によって充放電される。本明細書で用いる場合、「活物質」、「電気活物質」、「レドックス活物質(redox-active material)」という用語又はこれらの変化形は、フロー電池又はこれに類似する電気化学エネルギー貯蔵システムの動作中(すなわち、充放電中)に酸化状態(oxidation state)が変化する物質を指す。フロー電池は、大規模なエネルギー貯蔵用途に有望ではあるが、いくつかある要因の中でも特に、期待を下回るエネルギー貯蔵性能(例えば、往復(round trip)エネルギー効率)や短いサイクル寿命といった問題に悩まされる場合が多かった。これまでの多大な開発努力にもかかわらず、商業的価値のあるフロー電池技術は未だ開発されていない。
ヘキサシアノ鉄錯体は、フロー電池や他の電気化学的エネルギー貯蔵システムにおいて活物質として使用するのに非常に望ましい場合が多い。同錯体は、水溶液の熱力学的な酸化安定性限界付近において、電極反応を起こし易く且つ酸化還元電位で電気化学的挙動が可逆的に変化する。さらに、同錯体は大量に存在する元素から成り、コストが高過ぎるということもない。本明細書で用いる場合、「ヘキサシアノ鉄錯体」という用語は、フェロシアン化物(すなわちFe(CN)6 4-)とフェリシアン化物(すなわちFe(CN)6 3-)の酸化還元対を指す。これらの錯イオンは、フェロシアン化物及びフェリシアン化物の含有量が計100%となる任意の組み合わせで存在することができ、これにはフェロシアン化物100%の場合やフェリシアン化物100%の場合も含まれる。このように組成が一方に偏った状態は、完全放電状態と完全充電状態のいずれか一方に相当し、当該活物質がどちらの半電池に含まれるかによってそのいずれであるかが決まる。ヘキサシアノ鉄錯体の電荷は、種々の対イオンで完全に平衡させることができる。
ヘキサシアノ鉄錯体の酸化還元挙動は十分に解明され且つ望ましいものであるにもかかわらず、残念ながら水溶液におけるこの錯体の溶解度が比較的限られているため、エネルギー密度の低下を招いてしまう。更に、この活物質は、電解液がその飽和濃度に近い場合に、望ましくない沈殿を起こす場合がある。特に、フロー電池では、望ましくない沈殿のリスクや、フロー電池内の循環路や他のコンポーネントを閉塞させる潜在リスクを低減するために、活物質の濃度をその飽和濃度より幾分低い濃度とすることが望ましい。これにより、エネルギー密度が更に低下するおそれがある。
ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度の低さは、対イオンの選択に基づいてある程度は軽減させることができるが、それでもなお、溶解度が懸念材料として残ることは多い。さらに、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を改善する対イオンの多くは、程度の差こそあるが、フロー電池の一部のコンポーネントとの相性が悪い。例えば、カルシウムやその他の二価の対イオンは、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を劇的に改善することができるが、一方で、このような対イオンは、フロー電池を半電池に分離する薄膜を詰まらせ、それにより薄膜の性能を低下させる可能性がある。さらに、多くの二価の金属イオンが、アルカリ条件下では不溶性の水酸化物を生成する傾向がある。
様々な理由から、ヘキサシアノ鉄錯体をアルカリ条件下で可溶化することが望ましい場合がある。他の理由の中でも特に、シアン配位子が酸と反応する潜在リスクを回避することができる。電解液中のpH条件は、充放電サイクルが繰り返される過程で(例えば、寄生反応のために)頻繁に変動する場合があるので、電解液に緩衝剤(buffer)を入れてこの悪影響をもたらし得るpH変動を防ぐことが望ましい場合がある。緩衝剤は、確かに、電解液内の望ましくないpH変動の防止に役立つが、一方で、溶解した緩衝物質によってヘキサシアノ鉄錯体の飽和濃度が不本意にも低下してしまい、ただでさえ厳しい溶解度プロファイルの問題がさらに深刻化する可能性がある。この緩衝電解液におけるヘキサシアノ鉄錯体の溶解度の低下は、高エネルギー密度が望まれる大規模なエネルギー貯蔵用途においては、特に問題となり得るものである。
以上のことを考慮すれば、高濃度の溶存(dissolved)ヘキサシアノ鉄錯体を含有する緩衝電解液は、当技術分野において非常に望ましいと考えられる。本発明は、上記のニーズを満たすと共に関連する利点も提供するものである。
いくつかの実施形態において、本発明は、溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する水溶液と、前記水溶液に接触している固体緩衝物質と、を含む組成物を提供する。前記固体緩衝物質の量は、前記水溶液において前記固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い。
他の種々の実施形態において、本発明は、上記で規定した組成物を含有する電解液を有する半電池を含むフロー電池を提供する。
さらに他の種々の実施形態において、本発明は、溶存電気活物質を含有する水溶液を含む電解液を内部に有する半電池と、前記水溶液に接触している固体緩衝物質と、を含むフロー電池を提供する。前記固体緩衝物質の量は、前記水溶液において前記固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い。
上述の記載は、以下の詳細な説明をより良く理解できるように、本発明の特徴をやや大まかに概説したものである。以下に、本発明のさらなる特徴及び利点を説明する。上記及び上記以外の利点や特徴は、以下の説明からさらに明らかになるであろう。
本発明及びその利点のより完全な理解のために、以下に、本発明の具体的な実施形態を示す添付の図面と併せて読まれるべき説明を記す。
例示的なフロー電池の概略を示す。 炭酸リチウムで飽和した水溶液におけるFe(CN)6 3-/4-の例示的なサイクリックボルタモグラムを示す。
本発明は、部分的には、溶存ヘキサシアノ鉄錯体と固体緩衝物質とを含有する組成物に関する。また、本発明は、部分的には、溶存ヘキサシアノ鉄錯体と固体緩衝物質とを含有する電解液及びフロー電池に関する。さらに、本発明は、溶存電気活物質と固体緩衝物質とを含有する電解液及びフロー電池に関する。
本発明は、添付の図面及び例に関連付けて以下の記載を参照することによって、さらに容易に理解することができる。添付の図面及び例はいずれも本発明の一部をなす。本発明が本明細書に記載及び/又は図示する具体的な製品、方法、条件又はパラメータに限定されないことが理解されよう。本明細書で用いる用語は、単に一例としての特定の実施形態を説明するためのものであって、特に明記しない限り、限定を意図するものではない。同様に、特に明記しない限り、本明細書内において、ある組成物に対する説明はいずれも、該組成物の固体、液体の双方を対象とすることを意図しており、さらに該組成物を含有する溶液並びに電解液、及び、そのような溶液並びに電解液を含む電気化学セル、フロー電池並びにその他のエネルギー貯蔵システムをも対象とすることが意図されている。さらに、本発明において、電気化学セル、フロー電池又は他のエネルギー貯蔵システムについて説明していると考えられる場合には、電気化学セル、フロー電池又は他のエネルギー貯蔵システムを動作させる方法についても暗に説明していると認められよう。
また、本明細書では、わかりやすくするため、本発明のいくつかの特徴を別個の実施形態と関連させて記載しているが、これらの特徴を、相互に組み合わせて単一の実施形態において備えることができることが認められよう。すなわち、明らかに両立できないか又は明示的に排除される場合を除いて、個々の実施形態は1以上の他のいずれかの実施形態と組み合わせることができると考えられ、そのような組み合わせは全く別の実施形態であると見なされる。逆に、簡潔にするため、本発明の種々の特徴を単一の実施形態に関連させて説明する場合があるが、これらの特徴を、別々に又は任意のより小さい組み合わせで備えることも可能である。最後に、ある特定の実施形態を一連のステップの一部として又はより包括的な構造の一部として記載する場合があるが、各ステップ又は各下位構造はそれ自体で独立した実施形態と見なすことも可能である。
特に明記しない限り、要素をリストアップしている場合には、リストアップした各要素及び同リスト内の各要素のすべての組み合わせをそれぞれ別個の実施形態として解釈すべきであることが理解されよう。例えば、「A、B又はC」と示される実施形態のリストは、「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B又はC」という実施形態を含むものとして解釈される。
本発明において、文脈上明らかに他の意味を示す場合を除き、単数の冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」及び「the(その/前記)」は、対応する複数に対する言及も包含するものであり、特定の数値に対する言及は、少なくともその特定の値を包含するものである。このため、例えば「a material(1つの物質)」は、そのような物質及びその均等物の少なくとも1つを指す。
一般に、「約」という用語を使用する場合、開示する主題が達成しようとする所望の特性によって変動する可能性のある近似値を示し、機能に基づいて状況に応じて解釈されるべきものである。従って当業者であれば、個々の状況に応じてある程度の変動範囲を汲み取ることができるであろう。「約」という用語が許容する変動を規定する代表的な技法として、特定の値を表す際に有効桁数を使用することが考えられる。あるいは、「約」という用語が許容する変動範囲を、一連の値に段階を設けることによって規定することもできる。さらに、本発明におけるすべての範囲は上下限値を含みかつ連結可能であり、ある範囲で規定される値に対して言及する場合、その言及は範囲内のすべての個々の値を包含するものである。
上述したように、大規模に動作し、高い動作効率を維持することができるエネルギー貯蔵システムが非常に望ましい場合がある。フロー電池はこの点で大きな関心を集めてきたが、その動作特性にはまだかなり改善の余地が残されている。以下に、例示的なフロー電池、その用途、及び動作特性の例を説明する。
ヘキサシアノ鉄錯体は、酸化還元プロファイル(図2参照)が十分に解明されており、且つ酸化還元反応を起こしやすいため、フロー電池やこれに類似する電気化学エネルギー貯蔵システムと共に用いられる電解液の活物質として選択される場合がある。しかしながら、この活物質は、対水溶解度が低いため高エネルギー密度が望ましい用途においてはその有用性が制限される場合がある。特に、緩衝作用の高い電解液においては、このただでさえ低いヘキサシアノ鉄錯体の溶解度が、許容できない程度まで低下する場合がある。
水溶液を緩衝するための代表的なアプローチとして、所望の程度の緩衝能が得られるまで可溶性の緩衝物質を溶解させることが挙げられる。所望の程度の緩衝能は、多くの場合、最終的に水溶液に接触すると予想される酸又は塩基の量によって決まるものである。すなわち、酸又は塩基の量が多い場合には、溶解させる緩衝物質の量もその分すなわちモルベースで増加する。緩衝物質を大量に溶解させると、ヘキサシアノ鉄錯体の対水溶解度の低下を招く場合があるため、特に高エネルギー密度を維持する必要がある場合には、溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する電解液を高度に緩衝化することが望ましくない場合がある。理論的規定やメカニズム上の規定はないが、溶解した緩衝物質が、ヘキサシアノ鉄錯体の平衡溶解度を非溶解状態に近づくようにシフトさせる共通イオン効果を生んでいると考えられている。すなわち、緩衝物質を溶解させることによって、ヘキサシアノ鉄錯体がもはやその最大溶解度には到達しない程度にまで電解液のイオン強度が増加する。この溶解度の低下は、溶解した緩衝物質が、ヘキサシアノ鉄錯体に初めから存在している対イオンと同一の対イオンを生成する場合に特によく見られる。この化学現象が、しばしば「共通イオン(common ion)」効果と呼ばれるものである。
本願の発明者は、固体緩衝物質ベースの緩衝系を溶存ヘキサシアノ鉄錯体と組み合わせて使用すると、多くの利点が得られることを確認した。同様の利点は、他の種類の活物質を含有する水系電解液を緩衝する場合にも得られるものである。より具体的には、本願の発明者は、難溶性の緩衝物質を、その緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い量で水溶液に接触させることにより、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解性が改善され得ることを確認した。したがって、本明細書に記載の水溶液においては、固体緩衝物質は部分的にのみ溶解しており、溶解していない緩衝物質が水溶液に接触した状態で残っている。以下でより詳細に説明するように、溶存ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度に対して部分的に溶解した緩衝物質が与える影響は、全て溶解した緩衝物質が与える影響よりも低い場合がある。固体緩衝物質の飽和濃度は所定の温度では一定であるため、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を同程度に保持するために、全て溶解可能な緩衝物質の濃度を調整するアプローチをとる場合よりもこのアプローチをとる場合の方が、必要な実験的試験の回数を低減することができる。実際に、本明細書に記載された実施形態に従って固体緩衝物質をその飽和濃度で使用することにより、溶存ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を、同等のpH及びイオン強度を有する緩衝作用のない(unbuffered)水溶液中に溶解した場合と少なくとも同程度とすることができる。
リチウム塩は、本発明の種々の実施形態での使用に特に適した固体緩衝物質を構成することができる。リチウム塩の多くはイオン化傾向が小さく、そのため比較的低い対水溶解度値を有する。さらに、リチウムイオンは、他のアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムやカリウム)と比較して、はるかにサイズが小さく、したがって、溶解度に与える影響もはるかに小さい。また溶存リチウムイオンは、イオン強度に及ぼす影響がはるかに少なく、溶存ヘキサシアノ鉄錯体由来のナトリウム対イオン及び/又はカリウム対イオンの存在下では、共通イオン効果を発揮しないと考えられる。したがって、リチウムイオンは、ヘキサシアノ鉄錯体の平衡溶解度を非溶解状態に近づける傾向がはるかに少ない。さらに、他のアルカリ金属イオンと同様、リチウムイオンも、フロー電池や他の種類の電気化学システムで使用される薄膜への悪影響は概ねないと考えられる。
上述したように、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度は、存在する一種類以上の対イオンが何イオンであるかの影響を受ける場合がある。驚くべきことに、ナトリウム対イオンとカリウム対イオンの混合物は、一種類の対イオンのみを含有する錯体と比較して、アルカリ性のpH値でのヘキサシアノ鉄錯体の溶解度の向上に特に有効であり得る。また、部分的に溶解した緩衝物質由来のリチウムイオンによって溶存ヘキサシアノ鉄錯体の対イオンプロファイルをさらに多様化させることにより、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度をより一層向上させることができる。ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度の向上は、リチウムイオンとの相互作用の前に一種類の対イオン(例えば、ナトリウム対イオンとカリウム対イオンの両方ではなく一方)のみが存在する場合でも可能ではあるが、ナトリウムイオンとカリウムイオンの両方が溶存リチウムイオンと共に存在する場合により顕著となり得る。
通常、フロー電池の電解液の成分はすべて溶解した形態で存在するのが望ましいが、固体緩衝物質の存在が、動作上の大きな障害となることはない。緩衝作用のない(unbuffered)ヘキサシアノ鉄溶液中において、pHは、フロー電池の動作中に急速に且つ予想以上に変化する可能性があり、このpHの変化によりヘキサシアノ鉄の分解及び/又は沈殿物の形成が起こる場合がある。ヘキサシアノ鉄錯体の微粒子が予想以上に形成されて循環すると、半電池間の薄膜セパレータ、フロー導管、ポンプなどを含むフロー電池の各種コンポーネントを直ちに且つ不可逆的に損傷させる可能性がある。一方、固体緩衝物質は、フロー電池の設計及び製造段階でそれらの存在を考慮することができるため、このような問題を生じない。すなわち、固体緩衝物質は、フロー電池の各種コンポーネントに損傷を与える循環微粒子を生成することなく水溶液と効果的に相互作用して緩衝作用を発揮するように拘束され得る。以下に、固体緩衝物質を拘束するための保持エンクロージャ及びフロー電池内におけるその配置を説明する。
最後に、本明細書の開示は主に、水溶液中でのヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を向上することに向けられているが、本発明の実施形態は溶解度の低い他の種類の活物質にも利用することができ、同様のメリットを実現することができることが認められよう。すなわち、固体緩衝物質は、緩衝物質由来の溶存イオンの存在下で溶解度が低下する他の種類の活物質と併用する場合にも、溶解度に関する同様の利点をもたらすことができる。さらに、本発明の固体緩衝物質は、溶液由来のCa2+などの望ましくない金属イオンと反応して徐々に不溶性種を形成することにより、これら望ましくない金属イオンの除去にも役立つことができる。
従って、本発明は、ヘキサシアノ鉄錯体が緩衝水溶液中に比較的高濃度で存在する組成物を提供するものである。緩衝水溶液は、フロー電池内の電解液の少なくとも1つとして使用することができる。そのような高濃度電解液は、低濃度電解液を使用して達成可能な性能と比較して、フロー電池のエネルギー密度やその他の動作特性を改善することができる。以下、動作特性の例をより詳細に説明する。
種々の実施形態において、本発明の組成物は、溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する水溶液と、水溶液に接触している固体緩衝物質とを含み得る。固体緩衝物質の量は、当該水溶液においてその固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い。固体緩衝物質は、該水溶液において、部分的に可溶であるか、又は、難溶性であると考えられる。従って、固体緩衝物質の溶解分(dissolved portion)で水溶液は飽和され、残りの固体緩衝物質は固液界面にて水溶液との接触を維持する。固体緩衝物質の溶解分によって、水溶液のpH変化を抑制することができる。固体緩衝物質の溶解分が酸又は塩基と反応すると、固液界面から固体緩衝物質の追加的な溶解が起こる。これにより、緩衝効果は維持されるが、溶存ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度が容認できないほど損なわれることはない。種々の実施形態においては、水溶液は、約−10℃〜約60℃の範囲の温度でヘキサシアノ鉄錯体の沈殿に対して安定であり得る。
本明細書で用いる場合、「飽和濃度」という用語は、所定の温度においてその濃度に達するとそれ以上物質が安定的に溶解することがない濃度を指す。それ以上溶解しなくなるまで、水溶液に固体緩衝物質を少しずつ添加し、撹拌することにより、その水溶液における固体緩衝物質の飽和濃度を求めることができる。固体が残っているかどうかの判定は、視覚的に行うことができるほか、濁度測定など、種々の機器を用いた技法を用いて行うことができる。
本明細書で用いる場合、用語「水溶液」は、水を主溶媒とし、対象の成分(例えば、ヘキサシアノ鉄錯体)を完全に可溶化した均一な液相を指す。この定義は、水溶液、及び、水相に少量成分として水混和性の有機溶媒を含有する溶液の両方を包含するものである。本発明の種々の実施形態によれば、固体緩衝物質は、溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する水溶液中に存在する。すなわち、固体緩衝物質の存在により、本発明の水溶液がヘキサシアノ鉄錯体を溶解した形態で維持するという事実が変わることはない。
本発明の水溶液中に存在することができる例示的な水混和性の有機溶媒としては、例えば、アルコール及びグリコールが挙げられ、場合により、以下に記載する界面活性剤又はその他の成分のうち1種類以上を存在させてよい。より具体的な実施形態においては、水溶液は、少なくとも約98重量%の水を含有することができる。他のより具体的な実施形態においては、水溶液は、少なくとも約55重量%の水、又は、少なくとも約60重量%の水、又は、少なくとも約65重量%の水、又は、少なくとも約70重量%の水、又は、少なくとも約75重量%の水、又は、少なくとも約80重量%の水、又は、少なくとも約85重量%の水、又は、少なくとも約90重量%の水、又は、少なくとも約95重量%の水を含有してよい。いくつかの実施形態では、水溶液は水混和性の有機溶媒を含有せず、水のみを溶媒として含んでよい。
さらなる実施形態において、水溶液は、粘度調整剤、湿潤剤、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。適切な粘度調整剤としては、例えば、コーンスターチ、コーンシロップ、ゼラチン、グリセロール、グアーガム、ペクチンなどを挙げることができる。他の適切な例については、当業者にはよく知られているであろう。適切な湿潤剤としては、例えば、様々な非イオン性の界面活性剤及び/又は洗剤を挙げることができる。いくつかの又は他の実施形態において、水溶液は、グリコール又はポリオールを更に含むことができる。適切なグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び、ポリエチレングリコールを挙げることができる。適切なポリオールとしては、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、及び、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを挙げることができる。水溶液にこれらの成分のいずれかを含有させることは、例えば、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解を促進させること、及び/又は、フロー電池内での水溶液輸送を目的とした水溶液の粘度を低下させることに役立ち得る。さらに、湿潤剤は、水溶液と電極との接触性を向上させて電気化学反応を促進することができる。
ヘキサシアノ鉄錯体を採用した本発明の種々の実施形態で使用される固体緩衝物質(すなわち、固体緩衝物質の溶解分(dissolved portion))は、水溶液をアルカリ性のpHに維持することができるものである。本明細書で用いる場合、「アルカリ性のpH」という用語は、7〜14の間の任意のpH値を指す。より具体的な実施形態においては、固体緩衝物質の溶解分は水溶液を約9〜約12のpHに維持することができる。約9〜約12の範囲内にあるpHは、ヘキサシアノ鉄錯体を、ヘキサシアノ鉄錯体が最適な溶解性及び安定性を有する領域に維持するのに特に望ましい場合がある。これらのpH条件は、また、フロー電池及びその各種コンポーネントと組み合わせて使用するのに特に適している場合がある。固体緩衝物質の溶解分によって維持することができる他の例示的なアルカリ性のpH範囲としては、例えば、約7〜約7.5、約7.5〜約8、約8〜約8.5、約8.5〜約9、約9.5〜約10、約10〜約10.5、約10.5〜約11、約11〜約11.5、約11.5〜約12、約12〜約12.5、約12.5〜約13、約13〜約13.5、又は約13.5〜約14が挙げられる。以下、上記のpH範囲を実現するのに適した固体緩衝物質について、より詳細に説明する。
ヘキサシアノ鉄錯体にとってはアルカリ性のpH値が望ましいが、他の種類の活物質にとっては、酸性のpH範囲などの他のpH範囲が望ましい場合がある。このように、当業者であれば、本発明を手がかりにして、水溶液中に他の活物質を採用する代替的な実施形態に対しても適切な固体緩衝物質及び適切な動作可能pH範囲を選択することができる。
上記のように、適切な固体緩衝物質は、アルカリ性のpH範囲で緩衝効果を発揮し、水溶液への溶解度が低いという条件を満たせば、特に限定されないと考えられる。本発明の実施形態に適した低い溶解度の一例として、固体緩衝物質は、約25℃の温度で約0.05M〜約0.5Mの範囲の飽和濃度を有することができる。飽和濃度がこの範囲内に収まれば、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度を容認できないほど損なうことなく、しかもなお十分な緩衝能を発揮することができる。より特定的な実施形態では、固体緩衝物質は、約25℃の温度で約0.05M〜約0.1Mの範囲の飽和濃度、約0.05M〜約0.2Mの範囲の飽和濃度、約0.1M〜約0.25Mの範囲の飽和濃度、又は約0.25M〜約0.5Mの範囲の飽和濃度を有することができる。
例示的な実施形態では、固体緩衝物質をリチウム塩とすることができる。リチウム塩のイオン化傾向は小さいため、所与のアニオンを有するリチウム塩はこれに対応するナトリウム塩やカリウム塩の形態と比較して低い溶解度を示し得る。必要に応じて、より溶解度の高いナトリウム塩又はカリウム塩の形態を分析することによって、所与の濃度でのリチウム塩の緩衝能を推定することができる。以下に、適切なリチウム塩について説明する。
より特定的な実施形態においては、適切なリチウム塩として、例えば、リチウムアセチルアセトネート、リチウムバルビタール(リチウム5,5−ジエチルピリミジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン)、炭酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、二リン酸リチウム、三リン酸リチウム、ホスホン酸リチウム、カルボン酸リチウム塩、α−ヒドロキシカルボン酸リチウム塩、アミノ酸リチウム塩、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。より特定的な実施形態においては、固体緩衝物質を炭酸リチウムとすることができる。
α−ヒドロキシカルボン酸リチウム塩やアミノ酸リチウム塩などのカルボン酸リチウム塩は、リチウムイオンと結合して難溶性の塩形態を生成する任意のカルボン酸を含むことができる。適切なカルボン酸としては、例えば、限定されない実施形態においてモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸であり得る脂肪族及び芳香族のC1〜C12カルボン酸を挙げることができる。2つ以上のカルボン酸が存在する場合、複数のリチウムイオンが存在し得る。適切なカルボン酸の具体例としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、及びフタル酸が挙げられる。他の適切なカルボン酸及びα−ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸及びグルコン酸を挙げることができる。適切なアミノ酸としては、天然及び非天然のα−アミノ酸及びそのオリゴマーなどの、アミノ基とカルボン酸基の両方を有する任意の化合物を挙げることができる。本明細書で用いる場合、「オリゴマー」という用語は、最大10の、詳細には最大5の、さらに詳細には最大3の、互いにペプチド結合したアミノ酸残基を有する任意の化合物を指す。固体緩衝物質中において様々な形態で存在し得る例示的なアミノ酸としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及び、トリプトファン並びにそのN−アルキル誘導体(例えば、N−メチルグリシンなどのN−メチル誘導体)を挙げることができる。
他の種々の実施形態では、固体緩衝物質を、難溶性のリチウム塩であって、塩基性の官能基を待つスルホン酸化合物のリチウム塩とすることができる。例示的なこの種の固体緩衝物質としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸のリチウム塩(Li−HEPES)、及び、ピペラジン−N,N’−ビス(エタンスルホン酸)のリチウム塩(Li−PIPES)を挙げることができる。
さらに他の種々の実施形態では、固体緩衝物質を、例えば、難溶性のリチウム塩であって、エチレンジアミン四酢酸の一リチウム塩、二リチウム塩、三リチウム塩又は四リチウム塩などのキレート剤のリチウム塩とすることができる。キレート剤の存在は、水溶液中に何かの事情で存在し得る問題のある金属イオンの封鎖(sequester)に役立つことができる。
本発明の種々の実施形態においては、固体緩衝物質をリチウム塩とすることができるが、これは必ずしも必須ではない。上述したように、ヘキサシアノ鉄錯体を採用する本発明の種々の実施形態では、水溶液中に部分的に溶解できるだけの溶解度を有してアルカリ性のpHを維持する任意の固体緩衝物質を使用することができる。他の適切な固体緩衝物質としては、例えば、不溶性の固体担体に付着させた緩衝剤を挙げることができる。そのような緩衝物質は、また、同様に、固液界面からの緩衝剤の溶解を起こすことができる。付着した緩衝剤は、上に挙げた物質など、可溶性又は部分可溶性の緩衝物質とすることができる。適切な固体担体としては、例えば、固相合成法で使われるポリマー担体などのポリマー担体及びセラミック担体を挙げることができる。具体的な例については、ポリマー担持イオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)など、当業者にはよく知られているであろう。
さらに他の代替的な実施形態では、固形緩衝物質の少なくとも一部には、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、及びそれらの任意の組み合わせから選択される固体緩衝物質が含まれ得る。いくつかの実施形態では、これらの固体緩衝物質を単独で使用することができ、他の実施形態では、リチウム塩の緩衝剤と組み合わせて使用することができる。この種の固体緩衝物質は、多孔質セパレータ材料との組み合わせによってより容易に使用され得る。
上述したように、水溶液におけるヘキサシアノ鉄錯体の最大溶解度は、少なくとも部分的には、その対イオンによって規定される塩形態(salt form)によって決定され得る。ヘキサシアノ鉄錯体に特に適した対イオン形態としては、例えば、ナトリウム塩形態、カリウム塩形態、又はこれらの塩形態の組み合わせを挙げることができる。上述のように、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含有する混合塩における溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、ナトリウムイオン及びカリウムイオンのいずれかを含有する塩形態と比較して、高い溶解度を示し得る。さらに、上述のように、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はそれらの任意の組合せと一緒にリチウムイオンを存在させることで、溶解度を更に向上させることができる。
より一般的には、溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、第1の対陽イオンと第2の対陽イオンとを含有することができる。いくつかの実施形態では、第1の対陽イオンと第2の対陽イオンは互いに異なるものであってよい。リチウム塩の緩衝剤と共に用いる場合には、ヘキサシアノ鉄錯体に関連付けられる対陽イオンの一方をリチウムイオンとすることができる。リチウムイオンは、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンと共に存在することができる。
より具体的な実施形態では、溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、ナトリウムイオンとカリウムイオンの両方を含有する混合塩であり得る。すなわち、ヘキサシアノ鉄錯体は、Naxy[Fe(CN)63-/4-の化学式を有することができる。ここで、ヘキサシアノ鉄錯体が酸化形態と還元形態のいずれであるかに応じて、X+Y=3又はX+Y=4である。ナトリウムイオンとカリウムイオンとのモル比は、約1:10〜約10:1の範囲、約1:5〜約5:1の範囲、又は、約1:2〜約2:1の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、実質的に等しいモル比のナトリウムイオンとカリウムイオンが存在することができる(すなわち、X=Y)。固体緩衝物質由来のリチウムイオンの存在下において、ヘキサシアノ鉄錯体の溶存形態は、NaxyLiz[Fe(CN)63-/4-で表すことができる。ここで、ヘキサシアノ鉄錯体が酸化形態と還元形態のいずれであるかに応じて、x+y+z=3又はx+y+z=4である。さらなる実施形態では、リチウムと、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの総和とのモル比は、約1:5〜約1:20の範囲(すなわち、z=1かつ5<x+y<20)、より特定的には、約1:10〜約1:20の範囲とすることができる。
種々の実施形態においては、溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の水溶液において約1M〜約3Mの範囲の濃度を有することができる。溶存ヘキサシアノ鉄錯体の量は、少なくとも部分的には、ヘキサシアノ鉄錯体の対イオン形態とその最大溶解限度によって決定され得る。ナトリウム対イオンとカリウム対イオンの両方が存在する場合、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度をある程度高め、溶液の安定性を向上させることができる。
より特定的な実施形態では、溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の水溶液において約1M〜約2Mの範囲の濃度を有することができる。さらにより特定的な実施形態では、溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の水溶液において、約1M〜約1.8Mの範囲、約1.2M〜約1.8Mの範囲、約1.2M〜約1.6Mの範囲、又は、約1.4M〜約1.6Mの範囲の濃度を有することができる。
したがって、本発明の種々の実施形態では、固体緩衝物質は、その溶存形態と平衡状態にある水溶液中に存在することができる。固体緩衝物質の未溶解分(undissolved portion)は、任意の形態で水溶液中に存在することができる。ただし、循環微粒子の発生を回避するため、固体緩衝物質が水溶液に接触しているときに何らかの方法で固体緩衝物質を拘束することが望ましい。以下に、固体緩衝物質を水溶液に接触させた状態で所望の位置に拘束するのに適した構成について説明する。
いくつかの実施形態では、固体緩衝物質は、水溶液中の保持エンクロージャ内に収容され得る。保持エンクロージャは、固体緩衝物質の溶解分を水溶液中に放出するように構成されている。いくつかの実施形態では、適切な保持エンクロージャは、固体緩衝物質の物理的に保持しつつ、水溶液が固体緩衝物質と相互作用して固体緩衝物質の部分的な溶解に作用することができるように、水溶液に対して透過性を有する物質で構成され得る。例示的な実施形態では、固体緩衝物質を、多孔質紙又は多孔質のポリマー材料で形成された袋、小袋又はこれらに類する構造物内に収容することができる。この袋や小袋は、水溶液中又は水溶液などを含むフロー電池内の定位置に保持することができるほか、水溶液中を自由に動くようにすることもできる。いずれの場合においても、保持エンクロージャは、固体緩衝物質の微粒子が放出されて循環することを防ぐことができる。フロー電池内の適切な配置場所としては、例えば、水溶液を収容する貯蔵タンク内、又は、水溶液をフロー電池の半電池に供給する配管内を挙げることができる。いくつかの実施形態では、保持エンクロージャ及びその固体緩衝物質を、電解液がそのフロー電池の対応する半電池から排出される出口位置に近接して配置することができる。
他の種々の実施形態では、固体緩衝物質を、水溶液が通流するカートリッジ内に収容することができる。水溶液は、カートリッジ内を流れる際にカートリッジ内の固体緩衝物質と相互作用して、固体緩衝物質の部分的な溶解に作用することができる。カートリッジは、固体緩衝物質の微粒子が放出、輸送されて循環することを防ぐフィルタや膜などを更に含むことができる。
更に別の実施形態では、固体緩衝物質を多孔スクリーンの後方に拘束することができる。水溶液は多孔スクリーンの両側に浸入して固体緩衝物質の部分的な溶解に作用することができる一方、固体緩衝物質はスクリーンの一方側の後方に拘束されたままとすることができる。
代替的な実施形態では、固体緩衝物質を、水溶液に接触する固体担体に付着させることができる。他の実施形態と同様に、水溶液は、循環微粒子を生成することなく固体緩衝物質と相互作用して固体緩衝物質の部分的な溶解に作用することができる。
上記のように、本発明の種々の実施形態により、本明細書に開示した組成物を電解液として有するフロー電池やエネルギー貯蔵媒体も想到される。より具体的には、本発明のフロー電池は、上述の種々の組成物を含有する電解液を内部に有する半電池を含むことができる。いくつかの実施形態においては、電解液を、溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する水溶液とすることができる。他の実施形態では、電解液を、異なる電気活物質を含有する水溶液とすることができる。いずれの場合においても、固体緩衝物質は、水溶液においてその固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い量で該水溶液に接触することができる。以下、本発明のフロー電池及びその動作特性に関して追加的に開示する。
上述の水溶液を電解液として組み込むことができる例示的なフロー電池についてさらに詳細に説明する。いくつかの実施形態において、本発明のフロー電池は、数時間の持続時間を有する持続性のある充放電サイクルに適している。従って、本発明のフロー電池を使用して、エネルギー供給/需要プロファイルを平滑化し、(例えば、太陽光エネルギーや風力エネルギーなどの再生可能エネルギー源からの)間欠性発電資産(intermittent power generation assets)を安定化させる機構を提供することができる。よって、本発明の種々の実施形態では、このような長い充電又は放電の持続時間が望ましいエネルギー貯蔵の用途が含意されていることを理解されたい。例えば、限定を意図しない実施例においては、本発明のフロー電池は、配電網に接続されて、再生可能エネルギーの統合、ピーク負荷シフト、配電網の安定化、ベースロード発電及び電力消費、エネルギー裁定取引、送配電資産の繰延、弱配電網のサポート、周波数調整、又はそれらの任意の組み合わせを可能とする。本発明のフロー電池は、配電網に接続されない場合には、遠隔キャンプ、前線作戦基地、オフグリッド電気通信、遠隔センサなど、及び、それらの任意の組み合わせのための電源として使用され得る。
更に、本明細書の開示は概してフロー電池を対象とするが、他の電気化学エネルギー貯蔵媒体、特に流れない(stationary)電解液を利用するものにも、本明細書に記載される電解液を組み込み得ることが認められよう。
いくつかの実施形態においては、本発明のフロー電池は、第1の水系電解液に接触している負極を収容する第1のチャンバと、第2の水系電解液に接触している正極を収容する第2のチャンバと、第1及び第2の電解液間に配置されたセパレータと、を含むことができる。これら電解液チャンバのそれぞれはセル内で別個の貯留槽となるものであり、第1及び/又は第2の電解液はこれら電解液チャンバを通過してそれぞれの電極及びセパレータに接触するように循環する。各チャンバと、それに関連付けられた電極及び電解液とは、対応する半電池を形成している。溶存ヘキサシアノ鉄錯体を含有する電解液を用いる場合、当該水溶液は、正極を収容する半電池内に存在している。セパレータは、例えば、(1)第1及び第2の電解液の混合を防ぐ障壁(barrier)として機能すること、(2)正極と負極との短絡を低減又は防止するように電気的に絶縁すること、及び、(3)正の電解液チャンバと負の電解液チャンバとの間のイオン輸送を容易にし、これにより充放電サイクル中の電子輸送のバランスをとることなど、いくつかの機能を備える。負極及び正極の表面では、充放電サイクル中に電気化学反応を発生させることができる。充放電サイクル中、各別個の貯蔵タンク内の電解液は対応する電解液チャンバを通過して輸送され得る。充電サイクルにおいては、セルに電力を印加することで、第2の電解液に含まれる活物質が1以上の電子酸化を受けると共に、第1の電解液中の活物質が1以上の電子還元を受けることができる。同様に、放電サイクルにおいては、第2の電解液が還元されると共に第1の電解液が酸化されて電力が生成される。
より具体的な実施形態においては、本発明の例示的なフロー電池は、(a)第1の配位化合物を含有する第1の水系電解液と、(b)第2の配位化合物を含有する第2の水系電解液と、(c)前記第1及び第2の水系電解液間に配置されたセパレータと、(d)第1及び第2の水系電解液中の可動イオン(mobile ion)と、を含むことができる。以下により詳細に説明するように、セパレータはアイオノマー膜であってよく、100ミクロン未満の厚さを有することができると共に、第1及び第2の配位化合物と同じ符号を持つと共に関連する正味の電荷(net charge)を有することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の配位化合物うち少なくとも1つがカテコラート(catecholate)配位子を含むことができる。いくつかの又は他の実施形態において、第1及び第2の配位化合物の一方は、フェリシアン化物[Fe(CN)6 3-]とフェロシアン化物[Fe(CN)6 4-]のレドックス対であってよい。より具体的な実施形態においては、フェリシアン化物/フェロシアン化物のレドックス対を第2の配位化合物として用い、第1の配位化合物を、カテコラート配位子を含有する配位化合物、特にチタン配位化合物とすることができる。ヘキサシアノ鉄化合物は、充電サイクル中に酸化され、放電サイクル中に還元され得る。
図1は例示的なフロー電池の概略を示す。活物質やその他のコンポーネントが単一のアセンブリに収容される典型的な電池技術(例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池など)とは異なり、フロー電池は、貯蔵タンクのレドックス活性エネルギー貯蔵物質を(例えばポンピングによって)電気化学スタック(stack)を通過させて輸送するものである。この設計上の特徴により電気エネルギー貯蔵システムの電源がエネルギー貯蔵容量から切り離されるため、大幅な設計の柔軟性とコストの最適化が実現可能となる。
図1に示すように、フロー電池システム1は電気化学セルを含む。この電気化学セルは、その2つの電極10、10’を仕切るセパレータ20(例えば膜)を備えることを特徴とするものである。電極10、10’は、金属、炭素、グラファイトなどの適切な導電性材料で形成されている。タンク50は、酸化状態(oxidized state)と還元状態(reduced state)との間を往来可能な第1の活物質30を収容するものである。
ポンプ60は、タンク50から電気化学セルへの第1の活物質30を輸送させるものである。フロー電池は、また、適宜、第2の活物質40を収容する第2のタンク50’を含む。第2の活物質40は、活物質30と同一の物質であってよく、又は、異なる物質であってもよい。第2のポンプ60’は、第2の活物質40を電気化学セルへ輸送させることができる。また、活物質を電気化学セルからタンク50、50’に戻すように輸送させるためにポンプを用いてもよい(図1には示していない)。また例えば、サイフォンなどの流体輸送に作用する他の方法によっても、第1及び第2の活物質30、40を電気化学セル内外に適宜輸送することができる。図1には、また、電源すなわち負荷70が示されている。負荷70によって電気化学セル回路が完成し、回路の動作中、ユーザによる電気の蓄積すなわち貯蔵が可能となる。
図1は、フロー電池の具体的な実施形態を示すものであり、限定を意図するものではないことを理解されたい。従って、本発明の精神と合致するフロー電池が図1の構成とは様々な面で異なることがある。一例として、フロー電池システムは、固体、気体、及び/又は液体に溶解した気体である1つ以上の活物質を含むことができる。活物質は、大気に開放しているか又は単に大気への通気口を設けたタンク又は容器に貯蔵することができる。
本明細書で用いる場合、「セパレータ」及び「膜」という用語は、電気化学セルの正極と負極との間に配置されると共にイオン伝導性及び電気的絶縁性を有する材料を指す。セパレータは、いくつかの実施形態では多孔質膜とすることができ、及び/又は他の種々の実施形態ではアイオノマー膜とすることができる。いくつかの実施形態では、セパレータをイオン伝導性ポリマーから形成することができる。
ポリマー膜は、アニオン伝導性又はカチオン伝導性の電解質とすることができる。「アイオノマー」と記載する場合、この用語は、電気的に中性な繰返し単位(repeating units)及びイオン化した繰返し単位の双方を含有するポリマー膜を指し、ここでイオン化した繰返し単位は、ペンダント型のものであって、ポリマー骨格(polymer backbone)に共有結合している。一般に、イオン化した単位の比率は、約1mol%〜約90mol%の範囲とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、イオン化した単位の含有量は約15mol%未満であり、他の実施形態では、イオン含有量はより高く、例えば約80mol%超である。さらに別の実施形態では、イオン含有量は、例えば約15〜約80mol%の範囲の中間範囲によって規定される。アイオノマーにおけるイオン化した繰返し単位としては、スルホン酸基、カルボン酸基などのアニオン性官能基が挙げられる。これらの官能基は、アルカリ又はアルカリ土類金属などの一価、二価又はこれ以上のカチオンによって電荷を平衡させることができる。アイオノマーとしては、また、結合された又は組み込まれた第四級アンモニウム、スルホニウム、ホスファゼニウム、及びグアニジンの残基又は塩を含有するポリマー組成物が挙げられる。適切な例については、当業者にはよく知られているであろう。
いくつかの実施形態では、セパレータとして有用なポリマーが、高度にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマー骨格を含むことができる。本発明において有用ないくつかのポリマーとしては、テトラフルオロエチレンと1つ以上のフッ素化された酸官能性コモノマーとの共重合体が挙げられる。この共重合体は、DuPont社からナフィオン(NAFION)(登録商標)過フッ素化ポリマー電解質として市販されているものである。他の有用な過フッ素化ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンとFSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF=CFの共重合体、フレミオン(FLEMION)(登録商標)、及びセレミオン(SELEMION)(登録商標)が挙げられる。
さらに、スルホン酸基(又はカチオン交換スルホン酸基)で修飾した実質的にフッ素化されていない膜を用いることもできる。このような膜としては、実質的に芳香族の骨格を有するものが挙げられ、例えばポリスチレン、ポリフェニレン、ビフェニルスルホン(BPSH)、又はポリエーテルケトン及びポリエーテルスルホンなどの熱可塑性物質などを含むことができる。
電池−セパレータ式の多孔質膜は、また、セパレータとして使用可能である。そのような膜はそれ自身ではイオン伝導性能を待たないため、機能を発揮させるために通常、添加物を含浸させている。通常、これらの膜は、ポリマー、無機充填剤、及び多くの開放孔が混成したものを含有する。適切なポリマーとしては、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。適切な無機充填剤としては、炭化ケイ素マトリックス材、二酸化チタン、二酸化ケイ素、リン化亜鉛、及びセリアが挙げられる。
セパレータは、また、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリ(塩化ビニル)、ビニルポリマー、及び置換ビニルポリマーで形成され得る。これらは単独で又は前述のポリマーのいずれかと組み合わせて使用され得る。
多孔質セパレータは、非導電性の膜であり、電解液で満たされた開流路を介した2つの電極間での電荷移動を可能とする。この透過性によって、化学物質(例えば活物質)がセパレータを通過して一方の電極から他方の電極へ移動して、相互汚染及び/又はセルエネルギー効率の低下が引き起こされてしまう可能性が高まる。この相互汚染の程度は、いくつかある特徴のうち、孔のサイズ(有効径及び流路長)、孔の特性(疎水性/親水性)、電解液の性質、及び、孔の電解液に対する濡れ性の程度によって決まり得る。
多孔質セパレータの孔のサイズの分布は、2つの電解液間での活物質のクロスオーバーを実質的に防止するものであれば概ね十分である。適切な多孔質膜の平均孔サイズ分布は、約0.001nm〜20μm、より典型的には約0.001nm〜100nmとすることができる。多孔質膜の孔のサイズ分布はかなり広くとることができる。換言すれば、多孔質膜は、非常に小さい直径(略1nm未満)の第1の複数の孔と、非常に大きい直径(略10μm超)の第2の複数の孔とを含むことができる。孔のサイズが大きくなれば、活物質のクロスオーバー量が増大してしまう可能性がある。多孔質膜が活物質のクロスオーバーを実質的に防止する能力は、平均孔サイズと活物質のサイズとの相対的な差によって決まり得る。例えば、活物質が金属を中心とする配位化合物である場合、当該配位化合物の平均直径は多孔質膜の平均孔サイズよりも約50%大きくなり得る。一方、もし多孔質膜が実質的に均一な孔サイズを有する場合には、配位化合物の平均直径は多孔質膜の平均孔サイズよりも約20%大きくなり得る。同様に、配位化合物が少なくとも1つの水分子とさらに配位結合する場合、配位化合物の平均直径はさらに大きくなる。少なくとも1つの水分子を持つ配位化合物の径は一般に流体力学的径であるとされている。そのような実施形態では、流体力学的径は一般に平均孔サイズより少なくとも約35%大きい。平均孔サイズが実質的に均一である場合には、流体力学的径は平均孔サイズよりも約10%大きくなり得る。
いくつかの実施形態において、セパレータは、また、安定性を高めるための補強材料を含むことができる。適切な補強材料としては、ナイロン、綿、ポリエステル、結晶シリカ、結晶チタニア、非晶質シリカ、非晶質チタニア、ゴム、アスベスト、木材、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
本発明のフロー電池内のセパレータは、約500μm未満、約300μm未満、約250μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満、約30μm未満、約25μm未満、約20μm未満、約15μm未満、又は約10μm未満の膜厚を有することができる。適切なセパレータとしては、セパレータが100μmの厚さを有する場合に、フロー電池が約85%超の電流効率及び100mA/cm2の電流密度で動作可能であるものが挙げられる。さらなる実施形態においては、フロー電池は、セパレータが約50μm未満の厚さを有する場合に99.5%超の電流効率で、セパレータが約25μm未満の厚さを有する場合に99%超の電流効率で、セパレータが約10μm未満の厚さを有する場合に98%超の電流効率で動作することができる。従って、適切なセパレータとして、フロー電池が60%超の電圧効率及び100mA/cm2の電流密度で動作可能であるものが挙げられる。さらなる実施形態では、適切なセパレータとして、フロー電池が70%超、80%超、又は90%超の電圧効率で動作可能であるものが挙げられる。
セパレータを通過して拡散する第1及び第2の活物質の拡散率は、約1×10-5mol/cm2/日未満、約1×10-6mol/cm2/日未満、約1×10-2mol/cm2/日未満、約1×10-9mol/cm2/日未満、約1×10-11mol/cm2/日未満、約1×10-13mol/cm2/日未満、又は、約1×10-15mol/cm2/日未満とすることができる。
フロー電池は、また、第1及び第2の電極に電気的に接続された外部の電気回路を含むことができる。この回路は動作中、フロー電池を充放電することができる。第1の活物質、第2の活物質、又はこれら両方の活物質の正味のイオン電荷の符号についての言及は、フロー電池が動作中の条件下でのレドックス活物質の酸化形態及び還元形態の両方における正味のイオン電荷の符号に関するものである。フロー電池のさらなる例示的な実施形態によって以下が提供される。すなわち、(a)第1の活物質は、関連する正味の正又は負の電荷を有すると共にシステムの負の動作電位の範囲内の電位に対して酸化形態又は還元形態をとることができ、これによって得られる第1の活物質の酸化形態又は還元形態が第1の活物質と同じ電荷符号(正又は負)を有し、アイオノマー膜も同符号の正味のイオン電荷を有すること、(b)第2の活物質は、関連する正味の正又は負の電荷を有すると共にシステムの正の動作電位の範囲内の電位に対して酸化形態又は還元形態をとることができ、これによって得られる第2の活物質の酸化形態又は還元形態が第2の活物質と同じ電荷符号(正又は負の符号)を有し、アイオノマー膜も同じ符号の正味のイオン電荷を有すること、又は(a)及び(b)の双方、である。第1の活物質及び/又は第2の活物質の電荷とアイオノマー膜の電荷とを一致させることにより、高い選択性が得られ得る。より具体的には、このように電荷を一致させることにより、アイオノマー膜を通過する第1の活物質由来又は第2の活物質由来のイオンのモル流束(molar flux)を、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、又は約0.1%未満とすることができる。「イオンのモル流束」という用語は、アイオノマー膜を通過し、外部の電気/電子の流れに関連付けられた電荷を平衡させるイオンの量を指す。すなわち、フロー電池は、アイオノマー膜によって活物質を実質的に遮断しながら動作可能であるか又は動作する。
本発明の電解液を組み込んだフロー電池は、以下の動作特性の1つ以上を有することができる。すなわち、(a)フロー電池の動作中、第1又は第2の活物質が、アイオノマー膜を通過するイオンのモル流束の約3%未満を含むこと、(b)往復電流効率(round trip current efficiency)が約70%超、約80%超又は約90%超であること、(c)往復電流効率が約90%超であること、(d)第1の活物質と第2の活物質のいずれか又は両方の正味のイオン電荷の符号が、該活物質の酸化形態と還元形態の双方において同一であり且つアイオノマー膜の符号と一致すること、(e)アイオノマー膜が約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満又は約250μm未満の厚さを有すること、(f)フロー電池が、約100mA/cm2超の電流密度にて約60%超の往復電圧効率で動作可能であること、及び、(g)電解液のエネルギー密度が、約10Wh/L超、約20Wh/L超、又は約30Wh/L超であること、である。
場合によっては、ユーザが、単一の電池セルから得られるものよりも高い充放電電圧の提供を望む場合がある。このような場合、いくつかの電池セルを直列に接続して、各セルの電圧分の電圧が加算されるようにしてもよい。これにより、バイポーラスタックが形成される。導電性を有する無孔質の材料(例えばバイポーラプレート)を用いて隣接する電池セルを接続してバイポーラスタックにすることで、隣接セル間での電子の移動を可能としながら流体又は気体の移動を防ぐことができる。個々のセルの正極コンパートメント及び負極コンパートメントは、スタック内で共通の正及び負の流体マニホールドを介して流体的に接続することができる。このように、個々のセルを直列に積層(stacked)して、DC用途又はAC用途への変換に適した電圧を得ることができる。
追加の実施形態では、セル、セルスタック又は電池を、より大型のエネルギー貯蔵システム内に組み込むことができる。この大型システムは、これらの大型ユニットの動作に有用な配管及び制御装置を適宜含むものである。そのようなシステムに適した配管、制御装置及びその他の装置は当技術分野において公知であり、例えば、電解液を各チャンバ内外に移動させるためにチャンバと流体連通した配管及びポンプと、充放電した電解液を保持するための貯蔵タンクと、を含み得る。これらの場所はいずれも、本発明の実施形態による固体緩衝物質を配置するのに適している。本発明のセル、セルスタック及び電池は、また、動作管理システムを含むこともできる。動作管理システムは、コンピュータ又はマイクロプロセッサなどの任意の適切なコントローラデバイスであってよく、各種のバルブ、ポンプ、循環回路などのいずれかの動作を設定する論理回路を有することができる。
より具体的な実施形態では、フロー電池システムは、フロー電池(セル又はセルスタックを含む)と、電解液を収容及び輸送するための貯蔵タンク及び配管と、制御ハードウェア及びソフトウェア(安全システムを含んでいてもよい)と、電力調節ユニットと、を含むことができる。フロー電池セルスタックは、充電サイクルと放電サイクルの間の転換を可能とし、ピーク電力を決定する。貯蔵タンクは、正の活物質及び負の活物質を収容し、このタンクの容量によってシステムに貯蔵されるエネルギー量が決定される。制御ソフトウェア、ハードウェア及び任意選択的な安全システムは、センサ、緩和装置、及びその他の電子/ハードウェア制御装置及び安全防護装置を適宜含み、フロー電池システムの安全で自律的かつ効率的な動作を保証する。電力調節ユニットは、エネルギー貯蔵システムのフロントエンド部で用いられ、入力電力及び出力電力を、エネルギー貯蔵システム又は利用用途にとって最適な電圧及び電流に変換することができる。配電網に接続されたエネルギー貯蔵システムの例の場合、充電サイクルにおいて、電力調節ユニットは、入力AC電力を、セルスタックに適した電圧及び電流でのDC電力に変換することができる。一方、放電サイクルにおいては、スタックがDC電力を生成し、電力調節ユニットはこのDC電力を配電網の用途に適した電圧と周波数でのAC電力に変換する。
上記で別の定義を定めている場合を除き、又は、当業者が別の意味で解している場合を除き、以下の段落における定義を本発明に適用することができる。
本明細書で用いる場合、「エネルギー密度」という用語は、活物質において単位体積当たりで貯蔵され得るエネルギーの量を指す。エネルギー密度は、エネルギー貯蔵の理論上のエネルギー密度を指し、式1によって計算することができる。
エネルギー密度=(26.8A−h/mol)×OCV×[e-] (1)
ここで、OCVは50%の充電状態(state of charge)での開路電位(open circuit potential)であり、(26.8A−h/mol)はファラデー定数であり、[e-]は99%の充電状態で活物質に貯蔵される電子の濃度である。活物質が正及び負の電解液の双方について原子種又は分子種を主に含む場合、[e-]は以下の式2によって計算することができる。
[e-]=[活物質]×N/2 (2)
ここで、[活物質]は負又は正の電解液の活物質のモル濃度のうちいずれか低い方であり、Nは活物質1分子当たりで移動した電子(electrons transferred per molecule)の数である。関連する用語の「電荷密度」は、各電解液が含有する電荷の総量を指す。所与の電解液について、電荷密度は式3によって計算することができる。
電荷密度=(26.8A−h/mol)×[活物質]×N (3)
ここで、[活物質]及びNは上記で定めた通りである。
本明細書で用いる場合、「電流密度」という用語は、電気化学セルに流れる総電流をセルの電極の幾何学的面積で除したものを指し、一般にmA/cm2の単位で表される。
本明細書で用いる場合、「電流効率」(Ieff)という用語は、セルの放電時に生成される総電荷に対する充電時に移動する総電荷の比率であると記述することができる。電流効率は、フロー電池の充電状態の関数であり得る。限定を意図しないいくつかの実施形態では、電流効率は、充電状態が約35%〜約60%の範囲にある場合に求めることができる。
本明細書で用いる場合、「電圧効率」という用語は、所与の電流密度において観察される電極電位のその電極の半電池電位に対する比率(×100%)として記述することができる。電圧効率は、電池の充電工程、放電工程又は「往復電圧効率」に対して記述され得る。所与の電流密度における往復電圧効率(Veff,rt)は、式4を用いて、放電時のセル電圧(Vdischarge)及び充電時の電圧(Vcharge)から計算され得る。
eff,rt=Vdischarge/Vcharge×100% (4)
本明細書で用いる場合、「負極」及び「正極」という用語は、相互に相対的に規定された電極のことであり、充電サイクル及び放電サイクルのいずれにおいてもそれらが動作する実際の電位とは無関係に、負極が正極より負の電位で(またその逆で)動作するか又は動作するように設計若しくは意図されるものである。負極は、可逆水素電極と比較して負の電位で実際に動作するか又は動作するように設計若しくは意図される場合があり、そうでない場合もある。本明細書に記載するように、負極は第1の電解液に関連付けられ、正極は第2の電解液に関連付けられている。負極に関連付けられた電解液をネゴライト(negolyte、負極電解質)、正極に関連付けられた電解液をポソライト(posolyte、正極電解質)と記載することがある。
実施例
各種緩衝システムを表1に記載の通りに作製し、ヘキサシアノ鉄酸のナトリウムとカリウムの混合塩[すなわち、Na22Fe(CN)6]を飽和溶解度まで添加した。この目的のために、等モル量の固体フェロシアン化ナトリウム十水和物及び固体フェロシアン化カリウム三水和物を撹拌しながら脱イオン水に溶解させ、その後0.2μmのフィルタで濾過した。添加量は、320nmの吸光度帯を用いた分光法で測定したFe(CN)6 4−の濃度が1.5Mに達する量とした。緩衝溶液に関して、表1に記載した適切な塩を飽和限界まで溶解させ、その後、等モル量の固体のNa4Fe(CN)6及びK4Fe(CN)6を少しずつ添加した。飽和限界への到達は分光法によって判定した。Li3HEDTAは、水酸化リチウム一水和物と酸性型のH4EDTAを適切な水比率で混合することにより調製された。表1のデータは、ヘキサシアノ鉄錯体の溶解度が、より溶解度が高いナトリウム及び/又はカリウムの緩衝物質を使用した場合に観察された溶解度に比べて、少なくとも同等か又は上回ったことを示している。表1において、計算された緩衝能により、単一の可逆的にプロトン化させることが可能な官能基のみが反応して緩衝効果が促進されたものと考えられる。
図2は、炭酸リチウム(すなわち、表1の最後の項目)で飽和した水溶液におけるFe(CN)6 3-/4-の例示的なサイクリックボルタモグラム(cyclic voltammogram)を示す。図示のサイクリックボルタモグラムの形状特性から、炭酸リチウムが酸化還元特性に特段の影響を与えなかったことがわかる。X軸の電圧は、Ag/AgClを基準に測定されたものである。
以上開示した実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者であれば、これらの実施形態が本発明を例示するものに過ぎないことが容易に認められるであろう。本発明の精神から逸脱することなく種々の変更が可能であることを理解されたい。上記の説明には含まれないが本発明の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、改変、置き換え、又は同等の構成を本発明に組み込むことができる。さらに、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明の態様は記載した実施形態の一部のみを含み得ることが理解されよう。従って、本発明は上述の記載によって限定されると見なされるべきではない。

Claims (22)

  1. 溶存ヘキサシアノ鉄錯体を有する水溶液と、
    前記水溶液に接触している固体緩衝物質と、を含み、
    前記固体緩衝物質の量は、前記水溶液において前記固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い、組成物。
  2. 前記固体緩衝物質の溶解分は、前記水溶液をアルカリ性のpHに維持する、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記固体緩衝物質の溶解分は、前記水溶液を約9〜約12のpHに維持する、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記固体緩衝物質は、リチウム塩を含む、請求項2に記載の組成物。
  5. 前記リチウム塩は、リチウムアセチルアセトネート、リチウムバルビタール、炭酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、ホスホン酸リチウム、カルボン酸リチウム塩、α−ヒドロキシカルボン酸リチウム塩、アミノ酸リチウム塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
  6. 前記溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、第1の対陽イオンを含み、前記固体緩衝物質は、第2の対陽イオンを含み、前記第1の対陽イオンと前記第2の対陽イオンとは、互いに異なるものである、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記第2の対陽イオンは、リチウムイオンを含む、請求項6に記載の組成物。
  8. 前記固体緩衝物質は、前記水溶液中の保持エンクロージャ内に収容されており、前記保持エンクロージャは、前記固体緩衝物質の溶解分を前記水溶液中に放出するように構成されている、請求項1に記載の組成物。
  9. 前記溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の前記水溶液において約1M〜約3Mの範囲の濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、ナトリウム対イオンとカリウム対イオンとを含む、請求項9に記載の組成物。
  11. 前記溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の前記水溶液において約1M〜約2Mの範囲の濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記固体緩衝物質の飽和濃度は、約25℃の温度で約0.05M〜約0.5Mの範囲である、請求項1に記載の組成物。
  13. 請求項1に記載の組成物を含む電解液を内部に有する半電池を含むフロー電池。
  14. 前記溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の前記水溶液において約1M〜約3Mの範囲の濃度を有する、請求項13に記載のフロー電池。
  15. 前記溶存ヘキサシアノ鉄錯体は、約25℃の温度の前記水溶液において約1M〜約2Mの範囲の濃度を有する、請求項13に記載のフロー電池。
  16. 前記固体緩衝物質の溶解分は、前記水溶液をアルカリ性のpHに維持する、請求項13に記載のフロー電池。
  17. 前記固体緩衝物質の溶解分は、前記水溶液を約9〜約12のpHに維持する、請求項16に記載のフロー電池。
  18. 前記固体緩衝物質は、リチウム塩を含む、請求項13に記載のフロー電池。
  19. 前記半電池は、正極を有する、請求項13に記載のフロー電池。
  20. 前記固体緩衝物質は、前記水溶液中の保持エンクロージャ内に収容されており、前記保持エンクロージャは、前記固体緩衝物質の溶解分を前記水溶液中に放出するように構成されている、請求項13に記載のフロー電池。
  21. 前記固体緩衝物質の飽和濃度は、約25℃の温度で約0.05M〜約0.5Mの範囲である、請求項13に記載のフロー電池。
  22. 溶存電気活物質を含む水溶液を含む電解液を内部に有する半電池と、
    前記水溶液に接触している固体緩衝物質と、を含み、
    前記固体緩衝物質の量は、前記水溶液において前記固体緩衝物質の飽和濃度を得るのに必要な量よりも多い、フロー電池。
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